(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スピン・ハーベスティング構造体を有するメモリ装置
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20241024BHJP
H10N 50/80 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/80 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528527
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022082046
(87)【国際公開番号】W WO2023088922
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ザフランスキー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サン、ジョナサン、ツァンホン
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD05
4M119EE22
4M119EE27
4M119GG01
4M119HH17
4M119KK17
5F092AA01
5F092AA04
5F092AB07
5F092AC12
5F092AC26
5F092AD25
5F092BB24
5F092BB44
5F092BC03
5F092BD13
5F092EA05
5F092EA06
(57)【要約】
メモリ装置は、第1の端子および第2の端子と、第2の端子に結合された磁気トンネル接合であって、磁気フリー層を含み、デバイスの中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、磁気トンネル接合と、磁気トンネル接合に結合された非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体であって、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体と、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、電気絶縁性スピン伝導体が非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有し、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集する、電気絶縁性スピン伝導体と、電気絶縁性スピン伝導体および第1の端子に結合されたスピン軌道伝導チャネルとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ装置であって、
第1の電気端子および第2の電気端子と、
前記第2の電気端子に結合された磁気トンネル接合であって、
磁気フリー層を備え、前記メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、磁気トンネル接合と、
前記磁気トンネル接合に結合された非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体であって、
前記磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体と、
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、前記電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、
前記電気絶縁性スピン伝導体および前記第1の電気端子に結合されたスピン軌道伝導チャネルであって、
前記スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、
前記スピン流が、前記電気絶縁性スピン伝導体によって前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに前記磁気トンネル接合の前記磁気フリー層に送出される、スピン軌道伝導チャネルとを備える、メモリ装置。
【請求項2】
前記スピン軌道伝導チャネルが、前記電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続され、前記界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよい、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項3】
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に界面で接続され、前記界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために微小ドープ材料を含む、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項4】
前記磁気フリー層が、前記磁気トンネル接合を、前記メモリ装置の前記中心位置から前記複数の距離だけ変位させることを可能にする、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項5】
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記横方向に非対称な電荷電流フローを引き起こすために前記磁気トンネル接合から前記スピン軌道伝導チャネルへ電荷電流を再分配し、前記横方向に非対称な電荷電流フローが、前記第1の電気端子に向かって強度を増加させている、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項6】
前記磁気フリー層から前記電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、前記第1の電気端子に向かって前記横方向に非対称な電荷電流フローをもたらすように、前記電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されている、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項7】
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体、前記電気絶縁性スピン伝導体、および前記スピン軌道伝導チャネルの組み合わせによって前記磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、前記スピン軌道伝導チャネル上に直接存在する前記磁気フリー層を有する場合と比較して増加される、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項8】
前記磁気トンネル接合が、前記磁気フリー層上にトンネル・バリアと、前記トンネル・バリア上に基準層とをさらに備え、前記基準層が、前記第2の電気端子を前記磁気トンネル接合に結合するように構成されている、請求項1に記載のメモリ装置。
【請求項9】
メモリ装置であって、
第1の電気端子および第2の電気端子を含む2つの端子と、
前記第2の電気端子に結合され、フリー層を備える磁気トンネル接合と、
横方向の寸法が前記磁気トンネル接合よりも大きいスピンおよび電荷伝導体と、
前記スピンおよび電荷伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、
前記スピンおよび電荷伝導体が、前記電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記スピンおよび電荷伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、
前記電気絶縁性スピン伝導体および前記第1の電気端子に結合されたスピン軌道チャネルであって、
前記電気絶縁性スピン伝導体が、非対称な電荷電流フローで前記メモリ装置をアシストし、
前記非対称な電荷電流フローが、前記スピンおよび電荷伝導体によって拡張される、スピン軌道チャネルとを備える、メモリ装置。
【請求項10】
前記スピン軌道伝導チャネルが、前記電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続され、前記界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよい、請求項9に記載のメモリ装置。
【請求項11】
前記フリー層から前記電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、横方向に広がる電流をもたらすように、前記電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されており、前記横方向に広がった電流が、一方の側に向かって引き離された前記スピン軌道チャネルにおける前記非対称な電荷電流である、請求項9に記載のメモリ装置。
【請求項12】
前記スピンおよび電荷伝導体、前記電気絶縁性スピン伝導体、ならびに前記スピン軌道チャネルの組み合わせによって前記磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、前記スピン軌道チャネル上に直接存在する前記磁気フリー層を有する場合と比較して増加される、請求項9に記載のメモリ装置。
【請求項13】
前記磁気トンネル接合が、前記フリー層上にトンネル・バリアと、前記トンネル・バリア上に基準層とをさらに備え、前記基準層が、前記第2の電気端子を前記磁気トンネル接合に結合するように構成されている、請求項9に記載のメモリ装置。
【請求項14】
前記磁気トンネル接合が、前記第1の電気端子および前記非対称な電荷電流フローの下流方向により近い前記メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ横方向に変位するように構成されている、請求項9に記載のメモリ装置。
【請求項15】
前記磁気フリー層が、前記磁気トンネル接合を、前記メモリ装置の前記中心位置から前記複数の距離だけ横方向に変位させることを可能にする、請求項14に記載のメモリ装置。
【請求項16】
メモリ装置を形成するための方法であって、
第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合することであって、
前記磁気トンネル接合が磁気フリー層を備え、前記磁気トンネル接合が前記メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されていることと、
非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体を前記磁気トンネル接合に結合することであって、
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、前記磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有することと、
電気絶縁性スピン伝導体を前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合することであって、
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、前記電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有することと、
スピン軌道伝導チャネルを、前記電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合することであって、
前記スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、
前記スピン流が、前記電気絶縁性スピン伝導体によって前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに前記磁気トンネル接合の前記磁気フリー層に送出されることとを含む、方法。
【請求項17】
前記スピン軌道伝導チャネルを、前記電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続することをさらに含み、前記界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気絶縁性スピン伝導体が、前記横方向に非対称な電荷電流フローを引き起こすために前記磁気トンネル接合から前記スピン軌道伝導チャネルへ電荷電流を再分配し、前記横方向に非対称な電荷電流フローが、前記第1の電気端子に向かって強度を増加させている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記磁気フリー層から前記電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、一方の側に向かって前記横方向に非対称な電荷電流フローをもたらすように、前記電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体、前記電気絶縁性スピン伝導体、および前記スピン軌道伝導チャネルの組み合わせによって前記磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、前記スピン軌道伝導チャネル上に直接存在する前記磁気フリー層を有する場合と比較して増加される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する例示的な実施形態は、概してメモリ装置設計に関し、より詳しくは、スピン・ハーベスティング構造体を有するメモリ装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、メモリ装置は、第1の電気端子および第2の電気端子と、第2の電気端子に結合された磁気トンネル接合であって、磁気フリー層を備え、メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、磁気トンネル接合と、磁気トンネル接合に結合された非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体であって、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体と、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合されたスピン軌道伝導チャネルであって、スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、スピン流が、電気絶縁性スピン伝導体によって非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに磁気トンネル接合の磁気フリー層に送出される、スピン軌道伝導チャネルとを含む。
【0003】
別の態様では、メモリ装置は、第1の電気端子および第2の電気端子を含む2つの端子と、第2の電気端子に結合されたフリー層を備える磁気トンネル接合と、横方向の寸法が磁気トンネル接合よりも大きいスピンおよび電荷伝導体と、スピンおよび電荷伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、スピンおよび電荷伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、スピンおよび電荷伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合されたスピン軌道チャネルであって、電気絶縁性スピン伝導体が、非対称な電荷電流フローでメモリ装置をアシストし、非対称な電荷電流フローが、スピンおよび電荷伝導体によって拡張される、スピン軌道チャネルとを含む。
【0004】
別の態様では、メモリ装置を形成するための方法は、第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合することであって、磁気トンネル接合が磁気フリー層を備え、磁気トンネル接合がメモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、結合することと、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体を磁気トンネル接合に結合することであって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、結合することと、電気絶縁性スピン伝導体を非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合することであって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、結合することと、スピン軌道伝導チャネルを、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合することであって、スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、スピン流が、電気絶縁性スピン伝導体によって非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに磁気トンネル接合の磁気フリー層に送出される、結合することとを含む。
【0005】
例示的な実施形態の上述の態様および他の態様は、添付の図面と合わせて読めば、以下の詳細な説明においてより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本明細書に記載された例に基づくスピン・ハーベスティング構造体の断面図である。
【
図2】スピン・ハーベスティング構造体の別の断面図であり、スピン・ハーベスティング構造体によって伝導される電荷電流を示している。
【
図3】例であるスピン・ハーベスティング構造体の上面図である。
【
図4A】30nmの磁気トンネル接合(MTJ)について、異なる非磁性金属(NM)伝導体層の厚さに対するスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図4B】50nmのMTJについて、異なるNM伝導体層の厚さに対するスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図4C】100nmのMTJについて、異なるNM伝導体層の厚さに対するスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図5A】250nmのスピン拡散長さについて、フリー層の異なるNM伝導体層の厚さおよび様々な位置(δx)にわたるスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図5B】100nmのスピン拡散長さについて、フリー層の異なるNM伝導体層の厚さおよび様々な位置(δx)にわたるスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図5C】50nmのスピン拡散長さについて、フリー層の異なるNM伝導体層の厚さおよび様々な位置(δx)にわたるスピン・ハーベスティング構造体のスピン流ハーベスティング性能を示すグラフである。
【
図6】本明細書で説明する構造体を形成するための方法の例示的な実施形態による、例示的な方法の動作を示す論理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において「例示的」という用語は、「例、事例、または例証としての役割を果たす」という意味で使用される。本明細書において「例示的」と記載されているあらゆる実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好適または有益であると解釈されるものではない。この発明を実施するための形態に記載されている実施形態のすべては、当業者が本発明を作成または使用できるようにするために提供される例示的な実施形態であり、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【0008】
本明細書では、スピン軌道トルク(SOT)アシストのスイッチングのためのスピン・ハーベスティング構造体について述べられている。さらに本明細書では、書き込み特性を改善し、書き込み電流を低減するために、SOTアシスト磁気トンネル接合(MTJ)をベースとするスピン・トランスファ・トルク(STT)メモリ素子を利用するための方法が述べられている。本方法は、スイッチングを加速し、スイッチング電流を低減するように、SOTアシストのスピン流を生成するために、MTJ素子から電荷電流を抽出する、非対称電極の使用を超える改善を表す。スイッチングを加速し、スイッチング電流を低減するように、SOTアシストのスピン流を生成するために、MTJ素子から電荷電流を抽出する、非対称電極を使用することの欠点は、スピン流および電荷電流フローを別個に最適化する能力の欠如であり、結果としてSOTアシストの縮小をもたらす。
【0009】
したがって、本明細書で説明する方法は、MTJメモリのスイッチング動作特性に対するより良好なSOTアシストという目標を達成するために非対称電荷電流フローのスピン流生成と、そのように生成されたスピン流の効率的な収集との両方を増加させる「スピン・ハーベスティング」のための構造体を使用することによって、非対称電極アプローチの欠点を解決する。
【0010】
本明細書で説明する方法および構造体は、MTJのスピン・フィルタリングの電流の大きさからのスピン流の大きさの大幅な(推定4倍)増加を実現する加えて、本明細書で説明する構造体は、材料とデバイスの物理特性を活用する。
【0011】
図1は、本明細書で説明するSOTアシストのスイッチングのためのスピン・ハーベスティング構造体50を示している。構造体50は、スピン軌道トルク(SOT)伝導体100としても知られているスピン軌道伝導チャネル100を含む。構造体50はさらに、2端子メモリ・セルのための第1の電気端子110を含む。構造体50はさらに、電気的に絶縁性またはリーキーな絶縁性スピン伝導体(ISC)200を含む。スピン伝導体200は、例えば、酸化ニッケル(NiO)もしくは酸化鉄(Fe
3O
4)、またはスピン伝導体300を含む材料と比較して低いレベルで電荷電流を伝導するが、スピン流に対して高い伝導性を有する他の材料を含んでもよい。構造体50は、スピン・ハーベスティング伝導体として機能する非磁性金属(NM)スピン伝導体300をさらに含む。NMスピン伝導体300は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、または銀-錫合金(AgSn)あるいはそれらの組み合わせなどの材料、ならびに長いスピン拡散長さおよび高スピン伝導度を有することが知られている他の合金を含み得る。
【0012】
図1にさらに示すように、構造体50は、磁気トンネル接合(MTJ)メモリ素子400を含む。磁気フリー層(FL)401、トンネル・バリア(TB)402、基準層(RL)403が、MTJメモリ素子400を形成する。また、2端子メモリ・セル50のための第2の電気端子410も示されており、第2の電気端子410は、RL403を介してMTJ400に結合されている。MTJベースのメモリ素子400は、NMスピン伝導体300からのスピン流収集を最大限にするために、δx量(420)だけ、構造体50の中心位置415から変位され得る。
図1に示す実施形態では、SOTチャネル(100)の縁部に接触するための絶縁層を通して、かつ(110)が図示されている位置で、第1の電気端子(110)が垂直ビアの金属スタッドによって画定されるように、構造体50が作製されている。同様に、例えば、MTJ層の上方にリソグラフィで画定された回路に接触するために、適合する堆積絶縁体からのそのような金属スタッドの化学機械研磨による開口によって、MTJの第2の端子(410)を形成する上部金属接点が金属スタットの上部に形成されてもよい。
【0013】
フリー層401の厚さは変数tFL(405)で表され、NMスピン伝導体300の厚さは変数tNM(305)で表され、リーキーな絶縁性スピン伝導体200の厚さは変数tISC(205)で表され、スピン軌道伝導チャネル100の厚さは変数tSOT(105)で表される。スピン軌道伝導チャネル100は、スピン軌道トルク(SOT)を生成する。以下、デバイス構造体50は、(10)で示すように、ex(20)、ey(30)、ez(40)の3つの基底ユニット・ベクトルを有する直交座標系に位置するものとする。
【0014】
図2を参照すると、電気的にリーキーなスピン伝導体200は、SOTチャネル100からスピン・ハーベスティング金属(すなわち、スピン・ハーベスティング伝導体300)にスピン流を伝導する。材料のエンジニアリングによってスピン伝導体200を「リーキー」な電荷電流伝導体(完全に絶縁性であることとは対照的)にすることで、リーキーなスピン伝導体200は、MTJメモリ素子400からSOTチャネル伝導体100へ電荷電流を再分配し、-x方向に強度が増加する横方向に非対称な電流フロー500を形成することができる。横方向に非対称な電流フロー500の増加する強度は、
図2の矢印が右から左に向かって太くなることで示されており、第1の電気端子(110)に近い位置で正味の電流が大きいことを記号で表している。この電荷電流500は、スピン軌道伝導チャネル100とリーキーなスピン伝導体200の間の界面120(例えば(100)-(200)界面)で対応するスピン流を生成し、スピン伝導体200を通ってNMスピン伝導体300に伝導され、その後MTJメモリ素子400のFL401に伝導される。
【0015】
したがって、
図2は、SOT伝導体チャネル100が絶縁性スピン伝導体(ISC)200から電荷電流を収集して、端子110に向かって強度が増加する横方向の電流フローを形成するプロセスを示している。この物理的なプロセスは、数値シミュレーションを使用してモデル化できる。
【0016】
界面120に到達する電荷電流510は、成分510-1、510-2から510-N(Nは整数)までを有するものとして示されている。これらの矢印(510-1、510-2から510-N)は、界面120にわたって電荷電流が流れるときの実質的に均一な電流密度を示すためのものである。この電荷電流510は、SOTチャネル(100)に沿って蓄積され、端子(110)に向かって強度が増加する電荷電流フロー(500)を形成する。電荷電流(510)は、電荷電流フロー(500)と同じ電流であり、したがって、
図2に示すように、電荷電流510と電荷電流フロー(500)の両方を表す矢印は、同じクロスハッチングで示されている(これは、電荷電流(510)と電荷電流フロー(500)とを同色で表して示してもよい)。スピン流は、(100)→(200)→(300)と上方に向かって移動する。界面(120)および(130)における局所スピン流密度は、SOTチャネル(100)の内部における横方向の電荷電流密度に実質的に比例する。
【0017】
NM素子300は、NM素子300がリーキーなスピン伝導体200と共有する界面130全体からスピン流を収集し、そのようにして収集されたスピン流をFL401に伝導するため、FL401単独よりもはるかに大きな領域からスピン流を「ハーベスティング」するので、NM素子300はスピン・ハーベスティング伝導体と呼ばれる。
【0018】
構造体50は、左右非対称の大きな横方向の電流フロー500を想定して設計されている。スピン・ハーベスティング層300は、FL401の占有スペースよりも大きい、構造体50の長さ全体を占有するため、スピン・ハーベスティング層300は、より大きなSOTスピン流をピックアップすることができる。この設計は、MTJ400のFLがSOTチャネル(100)上またはスピン伝導体(200)の上部上に直接存在する、より従来型のSOTアシストのメモリ・セルよりも改善され、この場合、
【数1】
に接近する、またはNM素子300の「スピン拡散長さ」λ
sdによって限定される面積比を得ており、それを超えると、NM素子300におけるハーベスティング動作の効果が徐々に低減する。
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、および
図5Cに示すように、輸送方程式に基づく数理的研究では、これらの記述が定量化される。
【0019】
図2および同様に
図1に示すように、SOT伝導体100はISC200に接続され、ISC200はNM伝導体300に接続されている。それらの素子が、ISC/SOT界面120およびNM/ISC界面130などにおいて互いに接続されていることは、いくつかの例において、素子(100、200、300)またはそれぞれの界面(120、130)が、材料特性、電気特性、またはスピン特性、あるいはそれらの組み合わせを促進するための微小ドープ材料を(例えば、界面120、130において)含み得ることを意味し得る。いくつかの例では、SOT伝導体100は、ISC200に直接接続されている。いくつかの例では、ISC200は、NM伝導体300に直接接続されている。
【0020】
図3は、FL(このFLは、
図1および
図2に示すMTJピラー400と考えることができる)のみを含むデバイス構造体50の簡略版の上面図であり、寸法l
FL160およびw
FL170であるのに対し、スピン・ハーベスティングNM層300はL140およびw
c150の寸法を有する。数字は数値モデルで使用される例示のためのものである。
【0021】
図3を参照すると、示したように、得られた面積比は
【数2】
であり、ここで、Lは特徴140(構造体50の長さ、および伝導体200および300のそれぞれの長さ)、w
cは特徴150(または、構造体50の幅、伝導体200の幅、および伝導体300の幅)、l
FLはFL401の長さ160、w
FLはFL401の幅170である。
【0022】
したがって、本明細書(
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、および本明細書全体を含む)では、非対称の電荷電流フローを有する追加スピン軌道チャネル100によってアシストされる2端子磁気トンネル接合ベースのメモリ素子50が説明されており、ここで、電荷電流フローの非対称性は、磁気トンネル接合400のフリー層強磁性メモリ素子401の横方向の寸法よりも横方向の寸法が大きいスピンおよび電荷伝導体300(Ag、Au、Cu、Vなど)によって拡張される。
【0023】
スピン軌道チャネル100は、直接、またはスピン低伝導性電気伝導体200(NiO、YIG、TIG、およびスピン流を伝導する他の比較的低い電気伝導性の導電体または絶縁体など)を介して、スピンおよび電荷伝導体300に接続されている。スピン低伝導性の電気伝導体200の電気伝導率は、わずかな妥当な量の電荷電流伝導を可能にするように材料による最適化によって調整することができるので、フリー層FM401から垂直に入り、フリー層401を通る電荷電流は、横方向に広がり、スピン軌道伝導チャネル100において非対称な電荷電流500をもたらし、端子(110)において一方の側に向かって引き離される。
【0024】
電荷およびスピン伝導体300、スピン伝導体200、ならびにスピン軌道チャネル100の組み合わせのうち、フリー層401に結合されるスピン流の正味量は、スピン軌道チャネル100上に直接存在するフリー層金属401を有する場合と比較して増加される。磁気フリー層401の上部に磁気トンネル・バリア402および磁気基準層403を構築して、磁気トンネル接合400を形成とすることができる。
【0025】
スピン伝導のシミュレーションは、いくつかの定性的な議論を裏付けている。この設計は、δx=0の最も単純な形状から始める。FL401の位置決めは、その後に最適化することができる。
【0026】
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、
図5Cは、スピン流ハーベスティング性能を示し、スピン流ハーベスティング性能は、MTJ400から生成されたスピン流(I
sMTJ)に対するハーベスティングされたスピン流(I
sHarvested)の比率によって測定され、MR比率は120%と仮定され、トンネル・バリア402を挟んで対称的なトンネル界面と仮定される。
【0027】
特に、
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、
図5Cにプロットされた量の定義は、以下の通りである。
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、
図5Cに示すプロットのY軸は、I
sHarvested / I
sMTJである。数量I
sHarvestedは、SOTチャネル100の電流からハーベスティングされたスピン流である。量I
sMTJは、MTJのRL403のスピン・フィルタリングからのスピン流である。量I
sMTJ = I
cgηであり、ここで、I
cgは、端子110と端子410との間の電荷電流であり、トンネル・バリア402を挟んだ対称的なMTJ電極の場合
【数3】
であり、m
rは、MTJ400のトンネル磁気抵抗である。
【0028】
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、
図5Cでは、わかりやすくするため、LはL(特徴140、または構造体50の長さ、ならびに伝導体200および300の各々の長さ)、wCはw
c(特徴150、または構造体50の幅、伝導体200の幅、および伝導体300の幅)、lFLはl
FL(FL401の長さ160)、wFLはw
FL(FL401の幅170)、MRはm
r(MTJ400のトンネル磁気抵抗)である。略語(n.u.)は、プロットされた量が比率であるため、単位がないこと(no units)を表す。
【0029】
図4A、
図4B、および
図4C中の結果は、異なるt
NMに対するλ
sdへの依存性を示しており、ここで、λ
sdはスピン拡散の長さである。
図4A、
図4B、および
図4Cの各々において、プロット450はt
NM=10nm、プロット460はt
NM=25nm、プロット470はt
NM=50nm、プロット480はt
NM=100nm、プロット490はt
NM=200nmに対応する。小さい(30nm)FL401(例えばMTJ400)について、スピン拡散長さがλ
sd>100nm、すなわちCuおよびAgなどの良質の金属で現実的な値、
【数4】
が対称電極のMR=120%に対応するトンネルフィルタリングされたスピン流対応であると仮定すると、小SOT係数Θ
SOT=0.05、NiO透過率θ
i=0.02の場合でも、ゲインは相当の大きさ(4倍)である。
【0030】
δx420の役割については、スピン・ハーベスト拡張は、FL401が電荷電流500の下流方向、すなわち端子110に近づくようδx側で補強される。この効果は、NM層300の厚さtNM305が短くなるほどまたはλsdが薄くなるほど、あるいはその両方になるほど、顕著となる。最良のスピン流ハーベスティングを得るための正確な位置δxは、与えられた材料/デバイス設計に対して最適化することができる。
【0031】
図5A、
図5B、および
図5Cの各々において、プロット550はt
NM=10nm、プロット560はt
NM=50nm、プロット570はt
NM=100nm、プロット580はt
NM=200nmに対応する。
【0032】
図6は、本明細書で説明する実施形態に基づく、例示的な方法600の動作を示す論理フロー図である。601で、方法は、第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合することを含む。602で、方法は、磁気トンネル接合が磁気フリー層を備え、磁気トンネル接合がメモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されていることを含む。603で、方法は、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体を磁気トンネル接合に結合することを含む。604で、方法は、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有することを含む。605で、方法は、電気絶縁性スピン伝導体を非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合することを含む。606で、方法は、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集することを含む。607で、方法は、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有することを含む。608で、方法は、スピン軌道伝導チャネルを、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合することを含む。609で、方法は、スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成することを含む。610で、方法は、スピン流が、電気絶縁性スピン伝導体によって非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに磁気トンネル接合の磁気フリー層に送出されることを含む。
【0033】
図6に示す方法600の様々なブロックは、方法のステップとして、またはコンピュータ・プログラム・コードの動作からもたらされる動作として、または関連する関数を実行するように構成された複数の結合論理回路要素として、あるいはその組み合わせとして見ることができる。方法600は、リソグラフィ・ワークフローであってもよい。
【0034】
ここですべての図を参照すると、例示的な一実施形態では、メモリ装置は、第1の電気端子および第2の電気端子と、第2の電気端子に結合された磁気トンネル接合であって、磁気フリー層を備え、メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、磁気トンネル接合と、磁気トンネル接合に結合された非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体であって、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体と、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合されたスピン軌道伝導チャネルであって、スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、スピン流が、電気絶縁性スピン伝導体によって非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに磁気トンネル接合の磁気フリー層に送出される、スピン軌道伝導チャネルとを含む。
【0035】
メモリ装置は、スピン軌道伝導チャネルが、電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続され、界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよいことをさらに含み得る。メモリ装置は、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に界面で接続され、界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために微小ドープ材料を含むことをさらに含み得る。メモリ装置は、磁気フリー層が、磁気トンネル接合を、メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位させることを可能にすることをさらに含み得る。メモリ装置は、電気絶縁性スピン伝導体が、横方向に非対称な電荷電流フローを引き起こすために磁気トンネル接合からスピン軌道伝導チャネルへ電荷電流を再分配し、横方向に非対称な電荷電流フローが、第1の電気端子に向かって強度を増加させていることをさらに含み得る。メモリ装置は、磁気フリー層から電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、第1の電気端子に向かって横方向に非対称な電荷電流フローをもたらすように、電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されていることをさらに含み得る。メモリ装置は、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体、電気絶縁性スピン伝導体、およびスピン軌道伝導チャネルの組み合わせによって磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、スピン軌道伝導チャネル上に直接存在する磁気フリー層を有する場合と比較して増加されることをさらに含み得る。メモリ装置は、磁気トンネル接合が、磁気フリー層上にトンネル・バリアと、トンネル・バリア上に基準層とをさらに備え、基準層が、第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合するように構成されていることをさらに含み得る。
【0036】
別の例示的な実施形態では、メモリ装置は、第1の電気端子および第2の電気端子を含む2つの端子と、第2の電気端子に結合されたフリー層を備える磁気トンネル接合と、横方向の寸法が磁気トンネル接合よりも大きいスピンおよび電荷伝導体と、スピンおよび電荷伝導体に結合された電気絶縁性スピン伝導体であって、スピンおよび電荷伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、スピンおよび電荷伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、電気絶縁性スピン伝導体と、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合されたスピン軌道チャネルであって、電気絶縁性スピン伝導体が、非対称な電荷電流フローでメモリ装置をアシストし、非対称な電荷電流フローが、スピンおよび電荷伝導体によって拡張される、スピン軌道チャネルとを含む。
【0037】
メモリ装置は、スピン軌道チャネルが、電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続され、界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよいことをさらに含み得る。メモリ装置は、フリー層から電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、横方向に広がる電流をもたらすように、電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されており、横方向に広がった電流が、一方の側に向かって引き離されたスピン軌道チャネルにおける非対称な電荷電流であることをさらに含み得る。メモリ装置は、スピンおよび電荷伝導体、電気絶縁性スピン伝導体、およびスピン軌道チャネルの組み合わせによって磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、スピン軌道チャネル上に直接存在する磁気フリー層を有する場合と比較して増加されることをさらに含み得る。メモリ装置は、磁気トンネル接合が、フリー層上にトンネル・バリアと、トンネル・バリア上に基準層とをさらに備え、基準層が、第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合するように構成されていることをさらに含み得る。メモリ装置は、磁気トンネル接合が、第1の電気端子および非対称な電荷電流フローの下流方向により近いメモリ装置の中心位置から複数の距離だけ横方向に変位するように構成されていることをさらに含み得る。メモリ装置は、フリー層が、磁気トンネル接合を、メモリ装置の中心位置から複数の距離だけ横方向に変位させることを可能にすることをさらに含み得る。
【0038】
別の例示的な実施形態では、メモリ装置を形成するための方法は、第2の電気端子を磁気トンネル接合に結合することであって、磁気トンネル接合が磁気フリー層を備え、磁気トンネル接合がメモリ装置の中心位置から複数の距離だけ変位されるように構成されている、結合することと、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体を磁気トンネル接合に結合することであって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、磁気トンネル接合よりも大きい横方向の寸法を有する、結合することと、電気絶縁性スピン伝導体を非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に結合することであって、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体が、電気絶縁性スピン伝導体からスピン流を収集し、電気絶縁性スピン伝導体が、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体よりも相対的に低い導電率を有する、結合することと、スピン軌道伝導チャネルを、電気絶縁性スピン伝導体および第1の電気端子に結合することであって、スピン軌道伝導チャネルが、横方向に非対称な電荷電流フローからスピン流を生成し、スピン流が、電気絶縁性スピン伝導体によって非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体に伝導され、さらに磁気トンネル接合の磁気フリー層に送出される、結合することとを含む。
【0039】
方法は、スピン軌道伝導チャネルを、電気絶縁性スピン伝導体に界面で接続することをさらに含む、界面が、材料特性、電気特性、またはスピン特性のうちの少なくとも1つを促進するために、微小ドープ材料を誘導してもよく、または含んでもよいことをさらに含み得る。方法は、電気絶縁性スピン伝導体が、横方向に非対称な電荷電流フローを引き起こすために磁気トンネル接合からスピン軌道伝導チャネルへ電荷電流を再分配し、横方向に非対称な電荷電流フローが、第1の電気端子に向かって強度を増加させていることをさらに含み得る。方法は、磁気フリー層から電気絶縁性スピン伝導体内に垂直に入る電荷電流フローが、結果的に、一方の側に向かって横方向に非対称な電荷電流フローをもたらすように、電気絶縁性スピン伝導体が、その導電率が調整され得るように構成されていることをさらに含み得る。方法は、非磁性金属スピン・ハーベスティング伝導体、電気絶縁性スピン伝導体、およびスピン軌道伝導チャネルの組み合わせによって磁気フリー層に結合されるスピン流の正味量が、スピン軌道伝導チャネル上に直接存在する磁気フリー層を有する場合と比較して増加されることをさらに含み得る。
【0040】
略語のリスト:
3D 三次元
FL フリー層
FM 強磁性
ISC 絶縁スピン伝導体
MTJ 磁気トンネル接合
MR 磁気抵抗
NM 非磁性金属
n.u. 単位なし
RL 基準層
sd スピン拡散
SOT スピン軌道トルク
STT スピン・トランスファ・トルク
TB トンネル・バリア
【0041】
上記の記述では、本明細書に開示される例示的な実施形態の十分な理解を提供するために、特定の構造体、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術など、多数の特定の詳細が述べられる。しかしながら、当業者であれば、これらの特定の詳細がなくても、本明細書で開示される例示的な実施形態を実践できることが理解されよう。さらに、よく知られた構造体または処理ステップの詳細は、提示された実施形態を不明瞭にすることを避けるために、省略されているか、または説明されていない場合がある。層、領域、または基板としての要素が他の要素の「上(onもしくはover)」にあるとして表現される場合、それは、他の要素上に直接ある場合もあれば、間に介在する要素が存在する場合もあることが理解されよう。一方、ある要素が他の要素の「直接上にある(directly onもしくはdirectly over)」と表現される場合、間に介在する要素は存在しない。また、ある要素が他の要素の「下(beneathもしくはunder)」にあると表現される場合、その要素は直接他の要素の下(beneathもしくはunder)にある場合もあれば、間に介在する要素が存在する場合もあることが理解されよう。一方、ある要素が他の要素の「直接下(directly beneathもしくはdirectly under)」にあると表現される場合、間に介在する要素は存在しない。
【0042】
本発明の記載は、図示と説明の目的のために提示されたものであり、開示された形態において網羅的または限定的であることを意図したものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更および変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理と実際の用途を最もよく説明するために、また、他の当業者が、企図される特定の用途に適するように様々な変更を加えた様々な実施形態について本発明を理解できるように、選択され、説明されたものである。
【国際調査報告】