(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】血管閉塞デバイスおよびその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529178
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022078935
(87)【国際公開番号】W WO2023091852
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クー,エステル
(72)【発明者】
【氏名】テオ,クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ステラ タン
(72)【発明者】
【氏名】デルガディーロ,ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD53
4C160DD63
4C160MM33
(57)【要約】
血管閉塞デバイスは、拘束された状態の一次構成を有するワイヤを備える。ワイヤは、弛緩した非拘束状態において二次構成を形成する。二次構成は、複数の遠位コイルを含む角錐形状部分を備える。各遠位コイルはワイヤから巻かれ、巻線が、角錐形状部分の内部から外側に向けてテーパが付けられた外周と、各遠位コイルを接続する、各遠位コイル間のワイヤの移行セグメントとを備える。複数の遠位コイルは、各コイルが角錐形状の異なる側面に位置するように、角錐形状に配置されている。また、血管閉塞デバイスは、ワイヤから形成された角錐形状部分よりも近位側にあり、角錐形状部分から近位方向に延びる本体部分も含み得る。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管閉塞デバイスであって、
拘束された状態の一次構成を有するワイヤを備え、
前記ワイヤが、弛緩した拘束されていない状態の二次構成を形成し、前記二次構成が、
ワイヤから巻かれた複数の遠位コイルを含む角錐形状部分であって、各遠位コイルが、360°を超える閉ループを形成する巻線を含み、前記巻線が、前記角錐形状部分の内部から外側に向けてテーパが付けられた外周と、各遠位コイル間のワイヤの移行セグメントであって、各遠位コイルを隣接する遠位コイルに接続する移行セグメントとを備え、前記複数の遠位コイルが角錐形状に配置されて、各コイルが角錐形状の異なる側面に位置する、角錐形状部分と、
前記角錐形状部分よりも近位側にある本体部分であって、ワイヤから形成されて、前記角錐形状部分から近位方向に延びるコイルを含む本体部分とを備えることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記角錐形状が、3つの側面を有する三角錐形状を形成する四面体であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記角錐形状が、4つの側面を有する四角錐形状を形成する五面体であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記角錐形状が、n本の辺を有する多角形の底面と、頂点につながるn個の側面とから形成される多面体形状であることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記遠位コイルの各々が、少なくとも1+2/3ターンを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記遠位コイルの各々が、1+2/3ターン~2ターンを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記遠位コイルが、1つの遠位コイルから隣接する遠位コイルへの移行に際して重なり合うことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記一次構成が、細長い螺旋状コイルを含むことを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記ワイヤが、形状記憶材料から形成され、前記二次構成が、マンドレルにワイヤを巻いて、前記マンドレルに巻かれたワイヤを熱処理することによって設定されることを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記遠位コイルの各々が、当該血管閉塞デバイスが治療するように設計された動脈瘤の直径の10~90%の平均外径を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項11】
請求項1~9の何れか一項に記載の血管閉塞デバイスにおいて、
前記遠位コイルの各々が、当該血管閉塞デバイスが治療するように設計された動脈瘤の直径の55~85%の平均外径を有することを特徴とする血管閉塞デバイス。
【請求項12】
血管閉塞デバイスを製造する方法であって、
マンドレルを提供するステップであって、前記マンドレルが、
中央の球状要素と、
前記中央の球状要素から延びる複数の遠位コイルポストであって、各ポストが、前記球状要素の周りに角度的に間隔を空けて配置され、各ポストが、前記球状要素から離れて延びるに連れて外向きにテーパが付けられた断面直径を有し、各ポストが、長手方向軸を有し、それぞれの長手方向軸に対して垂直なそれぞれの平面が、ポストよりも遠位側に頂点を持つ角錐形状を形成する交線を有するように、前記長手方向軸が向けられている、複数の遠位コイルポストと、
前記球状要素から延びる本体ポストとを含む、ステップと、
一次構成を有するワイヤを提供するステップと、
前記複数の遠位コイルポストのうちの第1の遠位コイルポストの周りに、前記第1の遠位コイルポストから前記第1の遠位コイルポストと前記球状要素との交点に向けて第1の方向にワイヤを巻き付けて、前記第1の遠位コイルポストの周りに少なくとも1+2/3の第1のループを形成し、その後、前記第1のループの少なくとも一部から、前記複数の遠位コイルポストのうちの第1の遠位コイルポストにすぐ隣接する第2の遠位コイルポストまで前記球状要素に沿って形成された第1の移行セグメントに、ワイヤを移すステップと、
次の遠位コイルポストの周りに、前記次の遠位コイルポストと前記球状要素との交点から、第1の巻き方向とは反対の第2の方向にワイヤを巻き付けて、前記次の遠位コイルポストの周りに少なくとも1+2/3の次のループを形成し、その後、前記次のループの少なくとも一部から、前記複数の遠位コイルポストのうちの第1の遠位コイルポストにすぐ隣接する次の遠位コイルポストまで前記球状要素に沿って形成された次の移行セグメントに、ワイヤを移すステップと、
先行する遠位コイルポストから巻き付ける方向を交互に変えながら各遠位コイルポストの周りにワイヤを巻き付けて、各遠位コイルポストへと移すことを繰り返すステップと、
最後の遠位コイルポストの周りにワイヤを巻き付けた後、ワイヤを前記球状要素に沿って前記本体ポストに移行させ、ワイヤを前記本体ポストの周りに少なくとも1のループ巻き付けるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記マンドレルに巻かれたワイヤを熱処理することによって前記血管閉塞デバイスの二次構成を設定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記二次構成が、ワイヤの弛緩した拘束されていない構成であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記一次構成が、拘束された状態のワイヤの構成であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法において、
当該方法が、二次構成を有する血管閉塞デバイスを製造するものであり、前記二次構成が、
ワイヤから巻かれた複数の遠位コイルを含む角錐形状部分であって、各遠位コイルが、360°を超える閉ループを形成する巻線を含み、前記巻線が、前記角錐形状部分の内部から外側に向けてテーパが付けられた外周と、各遠位コイル間のワイヤの移行セグメントであって、各遠位コイルを接続する移行セグメントとを備え、前記複数の遠位コイルが角錐形状に配置されて、各コイルが角錐形状の異なる側面に位置する、角錐形状部分と、
前記角錐形状部分よりも近位側にある本体部分であって、ワイヤから形成されて、前記角錐形状部分から近位方向に延びるコイルを含む本体部分とを備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記角錐形状が、3つの側面を有する三角錐を形成する四面体形状、および4つの側面を有する四角錐を形成する五面体形状のうちの一方であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、
各ポストが、5度~15度の角度で、前記球状要素から離れて延びるに連れて外向きにテーパが付けられた断面直径を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、
前記角錐形状が、n本の辺を有する多角形の底面と、頂点につながるn個の側面とから形成される多面体形状であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項12~19の何れか一項に記載の方法において、
前記一次構成が、細長い螺旋状コイルを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項11~20の何れか一項に記載の方法において、
前記ワイヤが、形状記憶材料から形成されていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスおよび血管内医療処置に関し、より詳細には、動脈瘤などの血管障害を閉塞するためのデバイス、並びに、そのようなデバイスを製造および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管閉塞デバイスまたはインプラントは、血管内動脈瘤の治療など、様々な理由で使用されている。動脈瘤は、血管などの脈管の拡張であり、破裂、凝固または解離により患者の健康に危険をもたらす可能性がある。例えば、患者の脳の動脈瘤が破裂すると、脳卒中を引き起こし、脳の損傷や死亡につながる可能性がある。脳動脈瘤は、例えば、発作や出血の後に患者において検出され、血管閉塞デバイスを適用することによって治療されることがある。
【0003】
一般的に使用される血管閉塞デバイスは、白金(または白金合金)のワイヤストランドを「一次」マンドレルに巻き付けることによって形成される、柔らかい螺旋状に巻かれたコイルを含む。その後、このコイルは、より大きな「二次」マンドレルに巻き付けられ、二次形状を付与するために熱処理される。例えば、Ritchart等に発行された米国特許第4,994,069号(この特許は、引用により全文が本明細書に記載されているかのように完全に援用されるものとする)には、送達カテーテルのルーメンを介して配置するために引き伸ばされると、線形で螺旋状の一次形状となり、送達カテーテルから放出されて血管系に置かれると、折り畳まれた複雑な二次形状となる血管閉塞デバイスが記載されている。動脈瘤をより適切にフレーミングして充填するために、複雑な3次元の二次形状を血管閉塞デバイスに付与することができ、血管閉塞デバイスの剛性/柔軟性を変更することができる。
【0004】
血管系内の所望の部位、例えば動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを送達するために、先ず、ガイドワイヤを用いて小さなプロファイルの送達カテーテルまたは「マイクロカテーテル」をその部位に配置することが知られている。一般に、マイクロカテーテルの遠位端には、主治医または製造業者によって、患者の特定の解剖学的構造に応じて、例えば、45°、26°、「J」字状、「S」字状または他の曲げ形状などの選択された予め成形された曲げが設けられ、その結果、ガイドワイヤが引き抜かれたときに、1または複数の血管閉塞デバイスを動脈瘤嚢内に放出するために望ましい位置に留まるようになる。その後、送達アセンブリの遠位端に結合された血管閉塞デバイスがマイクロカテーテルの遠位端開口部から動脈瘤嚢内に延びるまで、送達アセンブリまたは「プッシャ」アセンブリまたは「ワイヤ」がマイクロカテーテルに通される。動脈瘤嚢内に入ると、血管閉塞デバイスの一部は、より効率的で完全な充填を可能にするために変形または屈曲することができる。その後、血管閉塞デバイスは、送達アセンブリの遠位端から放出または「分離」され、送達アセンブリはマイクロカテーテルを通して引き戻される。患者の特定のニーズに応じて、1または複数の追加の血管閉塞デバイスを、マイクロカテーテルに通して押し込み、同じ動脈瘤嚢内に放出することができる。
【0005】
蛍光透視法は、通常、動脈瘤内への送達中に血管閉塞デバイスを視覚化するために使用され、一方、磁気共鳴画像法(MRI)は、通常、動脈瘤嚢が適切に閉塞されていることを確認するために、処置後(例えば、動脈瘤の初期治療の数週間後)に治療部位を視覚化するために使用される。このため、血管閉塞デバイスは、動脈瘤の治療中にその放射線不透過性を可能にする一方で、処置後のMRI中に生じる視覚化を妨げるアーチファクトを最小限に抑える(すなわち、MRIに適合する)ように構築されることが重要である。また、動脈瘤の繊細な組織の破裂を防止するために、そのような血管閉塞デバイスが「柔らかく」(すなわち、横方向に柔軟または順応性があり)、それにより非外傷性であることが好ましい。
【0006】
また、そのような血管閉塞デバイスは動脈瘤内に長期間保持されることが重要である。しかしながら、一般に「広頚動脈瘤」として知られている大きな口を有する動脈瘤は、動脈瘤嚢内に血管閉塞デバイスを配置して保持することが困難であり、特に、小さくて比較的細い血管閉塞コイルでは、どんなに巧みに配置しても、そのような動脈瘤嚢内の位置を維持するのに十分な機械的強度が不足する。例えば、小さい動脈瘤(例えば、約7mm未満の直径、またはさらに小さい約5mm未満の直径を有する動脈瘤)は、多くの場合、広いネックと短いドームの特徴を有する。より具体的には、小さな動脈瘤は、動脈瘤のサイズと比較して相対的に広いネックを有することが多い(すなわち、動脈瘤の直径に対するネックの幅の比率は、より大きな動脈瘤のそのような比率と比較して、小さな動脈瘤では大きいことが多い)。比較的広いネックにより、小さな動脈瘤(一般に広頚の動脈瘤)は、配置中および保持中の両方で親血管内にコイルが脱離するリスクが高い。
図1は、埋込後に血管閉塞コイルの一部が動脈瘤の外に脱離する様子を示している。配置中のコイルの脱離を軽減するために、いくつかの配置技術が開発されている。そのような配置技術の1つは、「留置技術」と呼ばれ、動脈瘤のネック領域に隣接する血管に配置されたバルーンまたはステントを利用して、血管閉塞コイルが動脈瘤嚢から出るのを防ぐ。
図2は、バルーン作動カテーテルを使用する留置技術を示している。バルーン作動カテーテルは、動脈瘤のネック領域に隣接してバルーンを展開するために使用される。バルーンは、コイルが動脈瘤に埋め込まれる際に、コイルが動脈瘤から脱離するのを防ぐ。しかしながら、
図2に示すように、この技術では、バルーンがカテーテルの先端を動脈瘤のドームに押し込んで、動脈瘤を破裂させる危険性がある。
図3は、ステントを用いた留置技術を示している。ステントを動脈瘤のネックの周りに配置して拡張し、コイルが動脈瘤嚢から外に出るのを阻止する。バルーン作動カテーテルと同様に、ステント技術もカテーテルの先端を動脈瘤のドームに押し込んで動脈瘤を破裂させる危険性がある。
図4は、「リクロス」と呼ばれる血管閉塞デバイスを埋め込むための別の配置技術を示している。この技術では、送達カテーテルが、ステントの開口部を通って延びる。ステントは、コイルが動脈瘤嚢の外に飛び出すのを防ぐことができる。しかしながら、ステントの開口部を介した送達カテーテルの位置決めは本質的に予測不可能であるために、送達カテーテルを誘導して位置決めする操作により、カテーテル先端がドームに押し込まれ、それによって動脈瘤を破裂させる危険性がある。
【0007】
これらの脱離や埋め込みの問題に対処するために、動脈瘤を効果的に「フレーミング」するために、より高いネックのカバレッジと形状安定性を提供する血管閉塞コイルが開発されている。しかしながら、現在の血管閉塞デバイスの3次元形状は、動脈瘤のフレーミングに適していないか、または動脈瘤内への展開中に脱離し易い。小さな動脈瘤は、できるだけ少ないコイルで治療するのが最適であり、現在の血管閉塞デバイスは単体で形状安定性と柔らかさのバランスをとることができない。実際、現在の血管閉塞デバイスの形状や構成は、形状安定性と柔らかさの間に正比例の関係をもたらす。すなわち、デバイスが柔らかいほど(すなわち、外力による変形に対する耐性が低いほど)、デバイスの安定性が低くなり、逆もまた然りである(すなわち、デバイスが柔らかくないほど、血管閉塞デバイスの形状がより安定する)。したがって、より柔らかいコイルは動脈瘤を破裂させる可能性は低いが、その形状を保持することができないため、展開中および/または保持中に動脈瘤からの脱離が発生し易くなる。逆に、コイルが硬いほど、その形状を良好に保持し、動脈瘤をフレーミングすることができるが、動脈瘤壁に高い応力を与え、動脈瘤、特に破裂リスクの高い小さな動脈瘤を破裂させるリスクが高くなる。さらに、特に現在の設計で採用されている外側の複雑な形状では、最初の遠位ループ(例えば、第1および第2のループ)は、展開中に後続のループに押し出されることにより動脈瘤から脱離する可能性がより高くなる。
【0008】
このため、配置中および保持中の脱離の問題を緩和し、動脈瘤の効果的なフレーミングを提供することができると同時に、動脈瘤、特に小さな広頸の動脈瘤を破裂させることのない十分に柔らかく柔軟な構造を有する血管閉塞デバイスが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本開示の医療デバイスおよび血管内医療処置の一態様によれば、血管閉塞デバイスは、動脈瘤嚢に埋め込むように構成された細長い血管閉塞デバイス(例えば、長さが0.5~100cm)を含む。本明細書に開示の血管閉塞デバイスは、小さな広頚の動脈瘤を治療するように構成および使用されることに限定されるものではないが、そのような構成および使用に特に良く適している。血管閉塞デバイスは、典型的には、送達カテーテル内で拘束されるときの(一次形状を有する)送達構成と、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に放出されたときの(一次形状とは異なる二次形状を有する)展開構成とを有する。
【0010】
血管閉塞デバイスは、拘束された状態の一次構成を有するワイヤを含む。例えば、一次構成は、螺旋コイル形状または線形形状など、送達カテーテル内に拘束されるときのワイヤの形状とすることができる。また、ワイヤは、ワイヤに外力が作用していない状態でワイヤが送達カテーテルから放出されたときなどに、弛緩した拘束されていない状態の二次構成に形成されるようにも構成されている。
【0011】
ワイヤの二次構成は、形状安定性と柔らかさの間でバランスのとれた解決策を提供し、血管閉塞デバイスが、展開中および保持中の脱離を防止するとともに、動脈瘤の効果的なフレーミングを提供する安定した形状を有する一方で、動脈瘤の破裂を回避する十分な柔らかさ/柔軟性も有する。角錐形状は、その頂点に加わる力を効果的に消散させる固有の能力を有し、それによって、動脈瘤を破裂させ得る過大な力が動脈瘤の壁に作用するリスクを低減する。すなわち、二次構成は、ワイヤから巻かれた複数の遠位コイルを有する角錐形状部分を含む。各遠位コイルは、360°を超える閉ループを形成する巻線を含み、巻線は、角錐形状部分の内部から外側に向けてテーパが付けられた外周を有する。例えば、螺旋状のコイル形状の巻線の場合、コイルのループの内側部分がコイルのループの外側部分よりも小さい直径を有するように、コイルの直径が外側に向って大きくなる。また、各遠位コイルは、各遠位コイルを1または複数の隣接する遠位コイルに接続する、各遠位コイル間のワイヤの移行セグメントも含む。
【0012】
複数の遠位コイルは、各コイルが角錐形状の異なる側面に位置し、かつ側面に平行になるように、角錐形状に配置されている。明確にするために、角錐形状の底面には遠位コイルはない。例えば、角錐形状は、底面を有し、3つの側面が頂点につながる四面体であり、底面の各辺と頂点が三角形を形成し、各三角形が3つの側面のうちの一つをそれぞれ規定する。角錐形状の底面部分は、以下に説明する本体部分が形成することができる。
【0013】
また、二次構成は、角錐形状部分よりも近位側にある本体部分も有する。本体部分は、ワイヤから形成されて、角錐形状部分から近位方向に延びるコイルを含む。例えば、本体部分は、角錐形状の底面の位置から近位方向に延びることができる。
【0014】
別の態様では、角錐形状が、四面体形状(三角形の底面と3つの側面、三角錐とも呼ばれる)、五面体形状(四角形の底面と4つの側面、方錐または長方錐とも呼ばれる)、六面体形状(五角形の底面と5つの側面、五角錐とも呼ばれる)など、n本の辺を有する多角形の底面と、頂点につながるn個の側面とから形成される多面体形状である。
【0015】
さらに別の態様では、遠位コイルの各々が、少なくとも1+2/3ループまたはターン(600°の巻線)、または1+2/3ループ~2+2/3ループ(960°の巻線)を含むことができる。さらに別の特徴では、遠位コイルが、1つの遠位コイルから隣接する遠位コイルへの移行に際して重なり合っている。換言すれば、移行セグメントは、1つの遠位コイルから後続の隣接コイルに延びる際にコイルと重なる。
【0016】
別の態様では、一次構成が細長い螺旋状コイルを含む。螺旋状コイルは、カテーテルを展開するための適切な送達カテーテルのルーメン内に収まるように構成された外径(OD)を有する。典型的には、細長い螺旋状コイルは、コイルの各ループ間のピッチがゼロであり、最もコンパクトなコイルを提供する。代替的には、細長い螺旋状コイルは、ゼロではないピッチ、あるいは変化するピッチを有することもできる。
【0017】
血管閉塞デバイスの別の態様では、ワイヤが形状記憶材料から形成され、二次構成が、マンドレルにワイヤを巻いて、マンドレルに巻かれたワイヤを熱処理することによって設定されるものであってもよい。
【0018】
別の態様では、遠位コイルの各々は、デバイスが治療するように設計された動脈瘤の直径の10~90パーセントのコイル直径(各遠位コイルの最も内側のループの直径)を有することができ、代替的には、デバイスが治療するように設計された動脈瘤の直径の55~85パーセントのコイル直径(各遠位コイルの最も内側のループの直径)を有することができる。
【0019】
血管閉塞デバイスの別の態様では、一次形状が1~70cmの長手方向の長さを有する。
【0020】
本明細書に記載の血管閉塞デバイスのいずれかを製造する方法、および血管閉塞デバイスを製造するために使用されるマンドレルも開示されている。マンドレルを使用して血管閉塞デバイスを製造する1つの方法では、血管閉塞デバイスを形成するためのマンドレルが提供される。このマンドレルは、中央の球状要素を備える。この中央の球状要素からは、複数の遠位コイルポストが延びている。遠位コイルポストは、球状要素の周りに角度的に間隔を置いて配置されている。各遠位コイルポストは、遠位コイルポストが球状要素から離れて延びるに連れて外向きにテーパが付けられた断面直径を有する。また、各遠位コイルポストは、長手方向軸を有し、それぞれの長手方向軸に対して垂直なそれぞれの平面が、遠位コイルポストよりも遠位側の頂点を有する角錐形状を形成する交線を有するように、長手方向軸が向けられている。
【0021】
また、マンドレルは、球状要素から延びる本体ポストも有する。典型的には、本体ポストは球状要素から近位方向に延びている。
【0022】
そして、一次構成を有するワイヤは、マンドレルに巻き付けられる。ワイヤは形状記憶材料から形成することができる。一次構成は、シースまたは送達カテーテル内などの拘束された状態におけるワイヤの構成であってもよく、螺旋状コイルなどの任意の適切な形状を有することができる。
【0023】
ワイヤは、複数の遠位コイルポストのうちの第1の遠位コイルポストの周りに第1の方向に巻き付けられ、第1の遠位コイルポストと球状要素との交点に向けて内側へと巻き付けられて、第1の遠位コイルポストの周りに少なくとも360°または少なくとも1+2/3の第1のループ(600°)を形成する。本明細書において、巻き付ける「方向」は、中央の球状要素または他の中央構造への巻き付けるポストの取付位置に向けて、巻き付け軸に沿って内側に見たときの相対的な方向となる。第1の遠位コイルポストにワイヤが巻き付けられた後、ワイヤは、複数のポストのうちの第1の遠位コイルポストにすぐ隣接する次の遠位コイルポストまで、第1の移行セグメントにおいて、球状要素に沿ってトラバースされる。その後、ワイヤは、次の遠位コイルポストの周りに、次の遠位コイルポストと球状要素との交点から、第1の方向とは反対の第2の方向に巻き付けられて、次の遠位コイルポストの周りに少なくとも1+2/3の次のループを形成し、その後、先行する遠位コイルポストにすぐ隣接する次の遠位コイルポストまで、次の移行セグメントにおいて、球状要素に沿ってトラバースされる。そして、先行する遠位コイルポストから交互に変わる巻き付け方向でワイヤを各遠位コイルポストの周りに巻き付けて、後続の遠位コイルポストに移行するプロセスは、各遠位コイルポストについて繰り返される。最後の遠位コイルポストの周りにワイヤを巻き付けた後、ワイヤは球状要素に沿って本体ポストに移行する。その後、ワイヤは、本体ポストの周りに少なくとも1のループ分、巻き付けられる。
【0024】
血管閉塞デバイスを製造する方法の別の態様では、マンドレルに巻き付けられたワイヤが熱処理されて血管閉塞デバイスの二次構成が設定される。さらに別の態様では、二次構成が、ワイヤの弛緩した拘束されていない構成である。
【0025】
血管閉塞デバイスの製造方法のさらに別の態様では、二次構成が、角錐形状部分と、角錐形状部分よりも近位側にある本体部分とを含む。角錐形状部分は、それぞれの遠位コイルポストにワイヤから巻かれた複数の遠位コイルを含む。各遠位コイルは、360°を超える閉ループ、または少なくとも1+2/3ループの閉ループを形成する巻線を含み、巻線が、角錐形状部分の内部から外側に向けてテーパが付けられた外周を有する。各遠位コイル間には、各遠位コイルを接続するワイヤの移行セグメントも存在する。複数の遠位コイルは、各コイルが角錐形状の異なる側面に位置するように、角錐形状に配置されている。本体部分は、角錐形状部分よりも近位側にあるコイルであって、本体ポストに巻かれたワイヤから形成されて、角錐形状部分から近位方向に延びるコイルを含む。
【0026】
本方法の別の態様では、角錐形状が、四面体形状(三角形の底面と3つの側面、三角錐とも呼ばれる)、五面体形状(正方形/四角形の底面と4つの側面、方錐とも呼ばれる)、六面体形状(五角形の底面と5つの側面、五角錐とも呼ばれる)など、n本の辺を有する多角形の底面と、頂点につながるn個の側面とから形成される多面体形状である。
【0027】
さらに別の態様では、遠位コイルの各々が、少なくとも1+2/3ループまたはターン、または1+2/3ループ~2ループを含むことができる。別の態様では、各移行セグメントがループの少なくとも一部とクロスオーバーし、そこから移行セグメントが移行して、ある遠位コイルから隣接する遠位コイルへの移行において遠位コイルが重なり合うものとなっている。換言すれば、移行セグメントは、1つの遠位コイルから後続の隣接コイルに延びる際にコイルと重なる。
【0028】
別の態様では、一次構成が細長い螺旋状コイルを含む。螺旋状コイルは、カテーテルを展開するための適切な送達カテーテルのルーメン内に収まるように構成された外径(OD)を有する。典型的には、細長い螺旋状コイルは、コイルの各ループ間のピッチがゼロであり、最もコンパクトなコイルを提供する。代替的には、細長い螺旋状コイルは、ゼロではないピッチ、あるいは変化するピッチを有することもできる。
【0029】
本方法のさらに別の態様では、各ポストが、約5~15度の角度または約1~30度の角度で、ポストが球状要素から離れて延びるに連れて外向きに広がる断面直径を有することができる。
【0030】
本明細書に開示のデバイスの更なる態様では、本明細書に開示の血管閉塞デバイスが、血管閉塞アセンブリおよび送達アセンブリを含む血管閉塞システムの一部であってよい。例えば、血管閉塞アセンブリは、本明細書に記載の血管閉塞デバイスのいずれかと、血管閉塞デバイスの近位端に切り離し可能に結合されたプッシャ部材とを含むことができる。プッシャ部材は、臨床医が血管閉塞デバイスを送達カテーテルに沿って患者の血管系を通して、血管閉塞デバイスで治療される動脈瘤などの標的部位まで進め、その血管閉塞デバイスを送達カテーテルの遠位端から押し出して血管閉塞デバイスを展開することができるよう構成されている。
【0031】
さらに別の態様では、血管閉塞アセンブリが、プッシャ部材を血管閉塞デバイスに切り離し可能に結合する分離デバイスも含むことができる。例えば、分離デバイスは、電解分離、機械的コネクタ、熱作動分離、溶解分離などを含むことができる。送達アセンブリは、血管閉塞デバイスがそのコンパクトな送達構成で導入され得る送達カテーテルを含むことができる。送達アセンブリは、動脈瘤などの患者の血管系内の標的埋込部位に送達カテーテルを案内するためのガイドワイヤも含むことができる。その後、ガイドワイヤは取り外され、血管閉塞デバイスが送達カテーテルを通して標的埋込部位まで進められる。
【0032】
本開示のさらに別の態様では、本明細書に開示のデバイスが血管閉塞デバイスであることに限定されるものではなく、本明細書に開示の血管閉塞デバイスと同一または同様の構造を有する任意の医療デバイスであってもよい。例えば、医療デバイスは、任意の適切な血栓除去デバイス、ステントリトリーバ、塞栓フィルタ、ステント送達システム、他の埋込デバイス、ガイドワイヤ、血管内デバイスまたは他の医療デバイスであってもよい。
【0033】
本明細書に開示の血管閉塞デバイスまたは他の医療デバイスのいずれかを動脈瘤などの解剖学的体腔内に展開する方法も開示されている。一つの方法では、血管閉塞デバイスが送達カテーテルを使用して展開される。送達カテーテルは、最初に患者の血管系内に挿入されて血管系内で進められ、送達カテーテルの遠位端が標的挿入部位に配置される。この例では、標的挿入部位が動脈瘤である。標的挿入部位は、血管閉塞デバイスが展開される血管系内の任意の適切な解剖学的部位または体腔であり得ることを理解されたい。ガイドワイヤが利用される場合、ガイドワイヤは、先ず患者の血管系内に挿入され、血管系を通って動脈瘤の部位まで進められる。その後、送達カテーテルがガイドワイヤに沿って動脈瘤まで進められた後、ガイドワイヤが除去される。
【0034】
その後、血管閉塞デバイスは、そのコンパクトな送達構成で送達カテーテル内に挿入され、血管閉塞デバイスの遠位端が標的挿入部位に位置するまで送達カテーテルに沿って前進される。次いで、血管閉塞デバイスは、血管閉塞デバイスの近位端に着脱可能に取り付けられたプッシャ部材を使用するなどして、送達カテーテルから遠位方向に押し出される。先ず、血管閉塞デバイスの遠位コイルを含むコンパクトな送達構成(例えば、螺旋状コイル)の血管閉塞デバイスの部分が、送達カテーテルから動脈瘤嚢内に進められる。遠位コイルを含むその部分が送達カテーテルから出て動脈瘤内に入ると、その部分が、遠位コイルを含む二次構成を取る。血管閉塞デバイスが送達カテーテルの外に前進し続けると、本体部分も動脈瘤嚢内に前進する。血管閉塞デバイス全体が動脈瘤嚢内に挿入されると、血管閉塞デバイスは、分離デバイスを作動または起動させることなどにより、プッシャ部材から切り離すことができる。二次構成にある血管閉塞デバイスは、内向きのループを有する安定した形状を有する。外向きにテーパが付けられた直径により、遠位コイルの各々のループまたはターンは、内方向に向いている。換言すれば、ループの表面は、角錐形状部分の角錐形状の幾何学的内部に向かって内方向に向いている。内向きのループは、展開および保持中に動脈瘤から脱離するのを回避する傾向があり、遠位コイルの角錐形状構成も、動脈瘤を効果的にフレーミングする形状安定性を提供する一方で、動脈瘤を破裂させ得る過度の力が壁に作用するのを避ける、柔らかくて柔軟な構造も示すものとなる。
【0035】
場合によっては、動脈瘤を充填して閉塞するのに単一の血管閉塞デバイスで十分な場合もある。複数の血管閉塞デバイスが必要な場合は、このプロセスを繰り返して、動脈瘤を充填して閉塞させるのに十分な数の血管閉塞デバイスを送達することができる。
【0036】
このように、配置中および保持中の脱離の問題を緩和し、動脈瘤の効果的なフレーミングを提供することができ、同時に、動脈瘤、特に小さな広頸の動脈瘤を破裂させない十分に柔らかく柔軟な構造を有する血管閉塞デバイスが必要である。
【0037】
開示の発明の実施形態の他のおよび更なる態様および特徴は、添付の図面を考慮した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面は、本明細書に開示のデバイスおよび方法の様々な態様の設計および有用性を示すものであり、同様の要素には共通の符号が付されている。なお、図面は縮尺通りに描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、図面全体を通して同様の符号によって示されいることに留意されたい。また、図面は、開示の技術の様々な態様の説明を容易にすることのみを意図していることに留意されたい。それらは、本技術の網羅的な説明あるいは本技術の範囲の限定として意図されるものではなく、本技術の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定されるものである。さらに、開示の技術の例示的な実施例は、本明細書に開示または記載のすべての態様または利点を有する必要はない。開示の技術の特定の実施例と関連して説明された態様または利点は、必ずしもその実施例に限定されるものではなく、たとえそのように例示されていなくても、他の任意の実施例において実施することができる。本技術の上記および他の利点および目的が如何にして得られるのかをよりよく理解するために、添付の図面に例示されているその具体例を参照することにより、上で簡単に説明した本技術のより具体的な説明を行うこととする。それら図面および対応する説明は、開示の技術の例示的な実施例のみを示しており、よって、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解した上で、添付の図面の使用を通じて、さらに具体的かつ詳細に本技術を説明および記載することとする。
【0039】
【
図1】
図1は、血管閉塞デバイスを展開する送達カテーテルの側断面図であり、血管閉塞デバイスが脱離している状態を示している。
【
図2】
図2は、血管閉塞デバイスを展開する送達カテーテル、および留置技術で使用されるバルーン作動カテーテルの断面側面図である。
【
図3】
図3は、血管閉塞デバイスを展開する送達カテーテル、および留置技術で使用されるステントの断面側面図である。
【
図4】
図4は、血管閉塞デバイスを展開する送達カテーテル、およびリクロス技術で使用されるステントの断面側面図である。
【
図5】
図5は、弛緩した展開構成にある血管閉塞デバイスの側面斜視図である。
【
図6】
図6は、三角錐形状の血管閉塞デバイスの角錐形状部分を形成する
図5の3つの遠位コイルの交差する平面を単純化した上面斜視図である。
【
図7】
図7は、方錐形状の血管閉塞デバイスの角錐形状部分を形成する4つの遠位コイルの交差する平面を単純化した上面斜視図である。
【
図8】
図8は、遠位コイルを形成するための遠位コイルポストの側面図であり、コイルのループのためのテーパ角度を例示している。
【
図9】
図9は、遠位コイルが様々な直径および様々なターン数を有する、
図5の血管閉塞デバイスの代替的な角錐形状部分の一例の側面斜視図である。
【
図10】
図10は、
図5の血管閉塞デバイスを製造するための例示的なマンドレルの側面斜視図である。
【
図11】
図11は、方錐形状の角錐形状部分を形成する4つの遠位コイルを有する血管閉塞デバイスを製造するための例示的なマンドレルの側面斜視図である。
【
図12】
図12Aは、
図5の血管閉塞デバイスを製造するために周囲にワイヤが巻かれた
図10のマンドレルの上面斜視図である。
図12Bは、
図5の血管閉塞デバイスを製造するために周囲にワイヤが巻かれた
図12Aのマンドレルの側面斜視図である。
【
図13】
図13は、本明細書に記載のマンドレルを使用して本明細書に記載の血管閉塞デバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
【
図14】
図14Aは、送達カテーテル内で拘束された送達構成にある
図5の血管閉塞デバイスを含む血管閉塞システムの断面側面図である。
図14Bは、血管閉塞デバイスが送達カテーテルから展開されてその拡張した展開構成にある、
図14Aの血管閉塞システムの断面側面図である。
【
図15】
図15は、動脈瘤の位置まで患者の血管系の一部に進められるガイドワイヤを示す断面側面図である。
【
図16】
図16は、ガイドワイヤの上で送達カテーテルを進めた状態の、
図15のガイドワイヤおよび患者の血管系を示す断面側面図である。
【
図17】
図17は、血管閉塞デバイスを動脈瘤内に展開するために、
図14Aおよび
図14Bの血管閉塞システムが
図16の送達カテーテル内で前進している様子を示す断面側面図である。
【
図19】
図19は、
図14Aおよび
図14Bの血管閉塞システムを使用して、本明細書に開示の血管閉塞デバイスを動脈瘤内に展開するための例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図5を参照すると、本明細書に開示の血管閉塞デバイス100の一例が示されている。
図5は、弛緩した拘束されていない状態の二次構成にある血管閉塞デバイス100を示している。換言すれば、
図5は、血管閉塞デバイス100に外力が作用していないときの血管閉塞デバイス100を示している。血管閉塞デバイス100の二次構成は、遠位角錐形状部分104と、近位本体部分106とを有し、遠位角錐形状部分104が近位本体部分106に対して遠位側にある。本明細書において「遠位」および「近位」という用語は、展開されることが意図されているときの血管閉塞デバイス100を基準とするものであり、「遠位」という用語は、最初に挿入されるデバイス100の端部の方に位置することを指し、「近位」という用語は、最後に挿入されるデバイス100の端部の方に位置することを指している。
【0041】
血管閉塞デバイス100は、拘束された構成の一次構成を有するワイヤ102を含む。例えば、拘束された構成は、ワイヤ102が送達カテーテル内に拘束されているときの細長い螺旋状のコイルであってもよい(
図14Aを参照)。典型的には、一次形状は、1cm~70cmの長手方向の長さを有する。ワイヤ102は、任意の適切な材料から作られるが、典型的には、白金、ロジウム、パラジウムおよびレニウムを含む白金族金属、およびタングステン、金、銀、タンタル、およびそれらの合金のような放射線不透過性の形状記憶材料から形成される。
【0042】
血管閉塞デバイス100の二次構成の角錐形状部分104は、一次構成の血管閉塞デバイス100の遠位部分によって形成されている(
図14Aを参照)。角錐形状部分104は、ワイヤ102から巻かれた複数の遠位コイル108を含む。
図5に示す例では、角錐形状部分104は、底面(遠位コイル108は、角錐形状の底面における遠位コイルを含まない)が三角であり、それぞれのコイル108が三角錐の各側面に位置するため、三角錐とも呼ばれる、3つの側面を有する角錐形状を形成するように配置された3つの遠位コイル108a、108b、108cを含む。各遠位コイル108が位置するそれぞれの平面は、互いに平行ではなく、互いに交差している。
図6に示すように、遠位コイル108の交差する平面を単純化すると、四面体、より具体的には、三角錐を形成する。
図5の血管閉塞デバイス100は一例であり、三角錐形状を形成する遠位コイル108に限定されるものではなく、他の適切な角錐形状であってもよく、例えば、n本の辺を有する多角形の底面と、頂点につながるn個の側面とを有する角錐を形成するn個の遠位コイル108であってもよい。例えば、血管閉塞デバイス100は、正方形の底面と4つの側面を有する方錐、四角形の底面と4つの側面を有する四角錐、五角形の底面と5つの側面を有する五角錐など、それら角錐形状の各側面に遠位コイル108を有することができる。
図7に示すように、角錐形状部分104は、正方形の底面と4つの側面とを有する方錐を形成するように配置された各側面に4つの遠位コイル108を有することができる。
【0043】
図5に戻ると、各遠位コイル108は、360°を超える閉ループ、すなわち、少なくとも完全な閉ループを形成する巻線を含む。図示の血管閉塞デバイス100では、各遠位コイル108が、600°の巻線に相当する1+2/3ループ(「ターン」ともいう)の巻線を含む。代替的には、各遠位コイル108は、少なくとも1+2/3ターン、または1+2/3ターン(600°)と2ターン(720°)との間のターンを有することができる。
【0044】
各遠位コイル108の巻線は、角錐形状部分の内部の基準点から外側に向けてテーパが付けられた幅も有する。
図5の例に示す螺旋状コイルの場合、各遠位コイル108の幅は、コイルの直径となる。遠位コイル108が正方形、五角形または他の多角形または湾曲形状などの様々な形状に巻かれている場合、幅は、形状の幾何学的中心を通って引かれた最大幅と最小幅の平均などの平均幅であってよい。
図5の例に戻ると、各遠位コイル108の直径は、コイル108の外側部分の直径がコイル108の内側部分の直径よりも大きくなるようにテーパが付けられている。これは、
図8に示すように、遠位コイル108が巻かれる筒形のポストの断面を参照すると、よりよく説明することができる。ポストは、
図8に示すように、ポストの内側部分からポストの外側部分に向けて外向きに広がる直径を有する。ポストのテーパの角度114は、血管閉塞デバイス100の二次構成における遠位コイル108のテーパの角度を規定する。外向きにテーパが付けられた直径により、遠位コイル108の各々のループまたはターンは、内方向に向いている。換言すれば、ループの表面は、角錐形状部分104の角錐形状の幾何学的内部に向かって内方向に向いている。
【0045】
遠位コイル108の各々は、血管閉塞デバイス100が治療するように設計された動脈瘤の直径の10~90パーセントの直径(各遠位コイル108の最も内側のループの直径として規定される直径)を有する。代替的には、各遠位コイル108の直径は、血管閉塞デバイス100が治療するように設計された動脈瘤の直径の55~85パーセントであってもよい。
【0046】
血管閉塞デバイス100の代替的な設計では、
図9に示すように、遠位コイル108が、ワイヤ102の異なる直径および/または異なるターン数を有することができる。
図9に示すように、第1の遠位コイル108aは、1+2/3ターン(600°)を有する第2の遠位コイル108bよりも大きな直径およびより多くのワイヤ102のターン(3ターン、すなわち1080°)を有する。また、第3の遠位コイル108cも、第2の遠位コイル108bよりも大きな直径(第1の遠位コイル108aと同じ直径で1+2/3ターン(600°))を有する。
【0047】
また、角錐形状部分104は、ワイヤ102のそれぞれの移行セグメント110を含み、この移行セグメントが、隣接する各遠位コイル108の間にあり、それらを互いに接続するものとなっている。各移行セグメント110は、1つの遠位コイル108の終端から後続の遠位コイル108の始端まで延びる。すなわち、移行セグメント110aは、遠位コイル108aの終端から遠位コイル108bの始端まで延び、移行セグメント110bは、遠位コイル108の終端から遠位コイル108cの始端まで延びている。また、最後の遠位コイル108cの巻線の終端から本体部分106の始端までの移行セグメント112も存在する。
【0048】
本体部分106は、角錐形状104から近位方向に延びるワイヤ102の巻線を含む。本体部分106は、角錐形状部分104の角錐形状の仮想底面から延びることができる。
図5に示す例では、本体部分106が、角錐形状部分104から近位方向に延びる螺旋状コイルである。本体部分106は一定の直径を有することができ、代替的には、本体部分106は、角錐形状部分104から近位方向に延びるに連れて外向きまたは内向きにテーパが付けられた直径を有することができる。本体部分106は、ワイヤ102の少なくとも1の完全なループを備える。本体部分106は、巻線の最大度数を有しておらず、1~20ターンなど、任意の適切なターン数を含むことができる。
図5に示す本体部分106は、ワイヤ102の約2回の完全なターンを有する。
図9に示す本体部分106は、ワイヤ102の約4回の完全なターンを有する。
【0049】
図10を参照すると、方法300(後述)を使用して血管閉塞デバイス100を製造するための例示的なマンドレル200が示されている。マンドレル200は、ワイヤ102を巻き付けて血管閉塞デバイス100の二次構成を形成するために使用される。マンドレル200は、三角錐形状を有する角錐形状部分104を含む血管閉塞デバイス100を形成するように構成されている。
【0050】
マンドレル200は、中央の球状要素202を有する。この中央の球状要素202からは、複数の遠位コイルポスト204が外向きに延びている。遠位コイルポスト204は、血管閉塞デバイス100の遠位コイル108を形成するように構成されている。遠位コイルポスト204は、球状要素202の周りに角度的に間隔を空けて配置されている。図示のマンドレル200では、各遠位コイルのそれぞれの長手方向軸が球状要素202の周りに角度的に等間隔に配置されるように、遠位コイルポスト204が等間隔に配置されている。すなわち、3つの遠位コイルポスト204の場合、遠位コイルポスト204が、120°間隔を空けて配置されている。
【0051】
各遠位コイルポスト204は、遠位コイルポスト204の1つの側面図を示す
図8に示すように、遠位コイルポスト204が球状要素202から離れて延びるに連れて外向きに広がる断面直径を有する。遠位コイルポスト204のテーパの角度114は、本明細書で説明する遠位コイル108のテーパと同じである。また、各遠位コイルポスト204の長手方向軸も遠位方向に傾いており、その結果、それぞれの長手方向軸に垂直なそれぞれの平面が非平行かつ非垂直であり、それら平面が、遠位コイルポスト204よりも遠位側に頂点を有する角錐形状を形成する交線を有するものとなっている。
【0052】
また、マンドレル200は、球状要素202から延びる本体ポスト206も有する。本体ポスト206は、血管閉塞デバイス100の本体部分106を形成するように構成されている。
図10に示す例では、本体ポスト206が、球状要素202から近位方向に、かつ角錐形状の底面に対して垂直に延びる。本体ポスト206は、一定の直径を有する円柱であってもよく、代替的には、本体ポスト206は、球状要素202から延びるに連れて外向きまたは内向きにテーパが付けられていてもよい。
【0053】
本明細書の助けを借りて、当業者であれば、本明細書に開示の他の角錐形状を有する角錐形状部分104を含む血管閉塞デバイス100を製造するように構成するためにマンドレル200を修正する方法を理解するであろう。例えば、
図11は、方錐形状を有する角錐形状部分104を含む血管閉塞デバイス100を製造するように構成されたマンドレル210を示している。このマンドレル210は、中央の球状部材202の周りに等角度間隔で配置された4つの遠位コイルポスト204をマンドレル210が有することを除いて、マンドレル200と同じか実質的に同様である。
【0054】
図12Aおよび
図12Bの図面および
図13のフローチャートを参照すると、マンドレル200を使用して血管閉塞デバイス100を製造する例示的な方法300が示されている。一次構成を有するワイヤ102が、マンドレル300の周りに巻かれる。本明細書に記載されるように、ワイヤ102は形状記憶材料で形成されるものであってもよく、一次構成は、シースまたは送達カテーテル内などの拘束された状態にあるワイヤ102の構成であってもよい。一次構成は、螺旋状コイルなどの任意の適切な形状を有することができる。
【0055】
ステップ302では、最初に、第1の遠位コイルポスト108aの周りに、第1の遠位コイルポスト108aのポストから、第1の遠位コイルポスト204aと球状要素202との交点に向けて第1の方向にワイヤ102を巻き付ける。後続の巻き付けは、ポスト204と球状要素202の交点から始まり、球状要素202から離れるように巻き付ける。本明細書において、巻き付ける「方向」は、中央の球状要素または他の中央構造への巻き付けるポストの取付位置に向けて、巻き付け軸に沿って内側に見たときの方向となる。このため、
図12Aおよび
図12Bの例に示す「第1の方向」は、時計回り方向である。ワイヤ102を、本明細書に記載されるように、第1の遠位コイルポスト204aの周りに巻き付けて、第1の遠位コイル108aのための所望の巻き度合いの巻線を形成する。
【0056】
ワイヤ102を第1の遠位コイルポスト204aの周りに巻き付けた後、ステップ304では、ワイヤ102を、第1の移行セグメント110aを形成するために、球状要素202に沿って、第1の遠位コイルポスト108aにすぐ隣接する第2の遠位コイルポスト108bにトラバースする。ステップ306では、ワイヤ102を、第2の遠位コイルポスト204bと球状要素202との交点から、第1の方向とは反対の第2の方向(
図12Aおよび
図12Bの例に示すように反時計回り)に第2の遠位コイルポスト204bの周囲に巻き付ける。そして、ワイヤ102を、本明細書に記載されるように、第2の遠位コイルポスト204bの周りに巻き付けて、第2の遠位コイル108aのための所望の巻き度合いの巻線を形成する。
【0057】
ワイヤ102を第2の遠位コイルポスト204bの周りに巻き付けた後、ステップ308では、ワイヤ102を、第2の移行セグメント110aを形成するために、球状要素202に沿って、第2の遠位コイルポスト204bにすぐ隣接する第3の遠位コイルポスト204cにトラバースする。ステップ310では、ワイヤ102を、第3の遠位コイルポスト204cと球状要素202との交点から、第2の方向とは反対の第3の方向(
図12Aおよび
図12Bの例に示すように時計回り)に第3の遠位コイルポスト204cの周りに巻き付ける。そして、ワイヤ102を、本明細書に記載されるように、第3の遠位コイルポスト204cの周りに巻き付けて、第3の遠位コイル108cのための所望の巻き度合いの巻線を形成する。
【0058】
回転軸に沿って軸方向に巻かれているポスト204を見ると、他の3つのポスト204の各々は、コイルが巻かれる際に1/3回転を表すことができる。このため、1+2/3ループまたはターン(すなわち、600°)の巻線は、ワイヤ102がポスト204の周りに巻かれるときに、通過する他のポスト204、206の各々が、1/3ループまたはターンの巻線を表すことを意味する。したがって、1+2/3ループの巻線は、3つの他のポスト204、206を1回通過し、その後、3つの他のポスト204、206のうち2つを再通過することにより、合計1+2/3ループになる。約2+2/3(960°)の巻線は、他のポスト204、206の各々を2回通過し、その後、次の2つのポストを再び(3回目)通過する。完全なループ(360°)または複数の完全なループ(360°×整数)+別の2/3のループの巻線は、次の隣接するポスト108で反対方向に巻き付けるようにコイル108の端部を配置する。当業者であれば、4本のポスト108、5本のポスト108など、3本を超えるポスト108を有するマンドレルについて、ループの正確な量を判定する方法を直ちに理解するであろう。
【0059】
3本を超える遠位コイルポスト204を有するマンドレル200の場合、ステップ312では、ワイヤ102を、次の移行セグメント110のために、球状要素202に沿って、先行する遠位コイルポスト204にすぐ隣接する次の遠位コイルポスト204にトラバースする。ステップ314では、ワイヤを、次の遠位コイルポスト204の周りに巻いて、次の遠位コイル108を形成し、追加の各遠位コイルポスト204について、ステップ312~314を繰り返す。ワイヤを最後の遠位コイルポスト204の周りに巻いた後、ステップ316では、ワイヤ102を、球状要素202に沿って本体ポスト206に移行させる。ステップ318では、ワイヤ102を、本明細書に記載されているように、本体ポスト206の周りに巻き付けて、本体部分106のための所望の巻き度合いの巻線を形成する。
【0060】
ステップ320では、ワイヤ102を熱処理して、マンドレル200に巻かれているように血管閉塞デバイス100の二次構成を設定する。その後、ワイヤ102をマンドレル200から取り外す。ワイヤ102は、弛緩した非拘束状態でマンドレルに巻かれているような二次形状を有する二次構成をとることになる。
【0061】
このように、本明細書には、配置中および保持中の脱離の問題を緩和し、動脈瘤の効果的なフレーミングを提供すると同時に、動脈瘤、特に小さくかつ/または広頸の動脈瘤を破裂させない程度に十分に柔らかく柔軟な構造を有する、血管閉鎖デバイス100およびその製造方法300が開示されている。血管閉塞デバイス100の遠位コイル108の角錐形状は、その頂点に加えられる力を効果的に消散させる固有の能力を有し、それによって、小さくかつ/または広頸の動脈瘤を含む動脈瘤を破裂させる可能性のある過剰な力を動脈瘤の壁に加えるリスクを低減する。さらに、遠位コイルは、内側に向かうようにテーパが付けられており、かつ遠位コイルは、完全な閉ループと、クロスして重なるセグメントとを備え、動脈瘤内に配置されたときに開ループよりもしっかりと折り畳まれるため、配置中および保持中の脱離のリスクを低減することができる。同時に、角錐形状が頂点に加えられる力を消散させる固有の能力により、形状の安定性が損なわれることはない。さらに、
図5に示すように、角錐形状の血管閉塞デバイス100は、立方体の8面を形成する8個のコイルを有する立方体形状の血管閉塞デバイスよりもコンパクトである。すなわち、角錐形状の血管閉塞デバイス100の体積は、立方体よりも小さくなる。さらに、血管閉塞デバイス100の遠位コイル108は、血管閉塞デバイス100と同じまたはほぼ同じ全高を有する立方体形状の血管閉塞デバイスのコイルよりも小さい直径を有する。これは、遠位コイル108の各々の直径が血管閉塞デバイス100の全高よりも小さいためである(例えば、血管閉塞デバイス100の全高は3.2mmであるのに対して、遠位コイルの直径が2.4mmである)。一方、立方体形状の血管閉塞デバイスのコイルの直径は、血管閉塞デバイス全体の全高に及ぶ(高さは、立方体形状の血管閉塞デバイスの辺のうちの任意の1つの長さである)。
【0062】
図14Aおよび
図14Bを参照すると、血管閉塞デバイス100は、血管閉塞デバイス100を動脈瘤440(
図15~
図18を参照)などの体腔内に展開するために使用できる血管閉塞システム400の構成要素でもある。血管閉塞システム400は、送達アセンブリ402および血管閉塞アセンブリ404を備える。
図15および
図16に示すように、送達アセンブリ402は、送達カテーテル406および任意のガイドワイヤ408を含むことができる。血管閉塞アセンブリ404は、血管閉塞デバイス100と、分離デバイスまたは接合部412を介して血管閉塞デバイス100に切り離し可能に結合されたプッシャ部材410とを備える。
図14Aは、血管閉塞デバイス100がそのコンパクトな送達構成にあるように送達カテーテル406内にスライド可能に配置された後の血管閉塞アセンブリ404を示している。
【0063】
送達カテーテル406は、典型的には、細長い可撓性チューブであり、例えば、マイクロカテーテルなどとすることができる。送達カテーテル406は、近位部分416と、遠位部分418と、近位部分416から遠位部分418まで延びるルーメン420とを有する細長いシース本体414を備える。送達カテーテル406の近位部分416は、典型的には、血管閉塞システム400が使用されるときに患者の体外に留まり、臨床医がアクセス可能であるが、遠位部分418は、患者の血管系の遠隔位置に到達するようなサイズおよび寸法とされ、動脈瘤などの体腔に血管閉塞デバイス100を送達するように構成されている。送達カテーテル406は、シース本体414内に流体を導入するために、またはシース本体から流体を除去するために、ルーメン420と流体連通する1または複数のポート422も有することができる。シース本体414は、ポリエチレン、ステンレス鋼、または他の適切な生体適合性材料もしくはその組合せなど、適切なポリマー材料、金属および/または合金から構成することができる。場合によっては、近位部分416は、シース本体414の押し込み易さを高めるために、編組層またはコイル層などの補強層を含むことができる。シース本体414は、近位部分416と遠位部分418との間に移行領域を含むことができる。
【0064】
血管閉塞デバイス100は、本明細書に記載の特徴および態様のうちの任意の1または複数を有する、本明細書に開示の血管閉塞デバイス100のうちのいずれであってよい。
【0065】
血管閉塞アセンブリ404は、プッシャ部材410も含む。プッシャ部材410は、送達カテーテル406のルーメン420内にスライド可能に受け入れられるように構成されている。プッシャ部材410は、近位部分450であって、典型的には送達カテーテル406の近位部分416よりも近位側に延びる近位部分と、分離デバイス412を介して血管閉塞デバイス100の近位端に切り離し可能に結合された遠位部分452とを有する。プッシャ部材410は、血管閉塞デバイス100を送達カテーテル406の遠位端418を通して動脈瘤嚢440内に押し出すことを可能にするのに十分な柱強度を有する、コイル、ワイヤ、テンドン、従来のガイドワイヤ、トルク伝達型ケーブルチューブ、ハイポチューブなどであってよい(
図17および
図18を参照)。
【0066】
分離デバイス412は、プッシャ部材410と血管閉塞デバイス100との間に切り離し可能な接続を提供する。分離デバイス412は、電解分離、機械的コネクタ、熱作動分離、溶解分離、または他の機械的、熱的および流体圧機構を含むことができる。例えば、分離デバイス412は、血管閉塞デバイス100をプッシャ部材410から電解的に切り離すための電解的に分解可能なセグメントであってもよい。
【0067】
図15および
図16に示すように、送達アセンブリ402の任意選択的なガイドワイヤ408は、近位端444および遠位端446を有する。
図16に示すように、ガイドワイヤ408が遠位端446を標的挿入部位に位置させた状態で患者の血管系442内に配置された後、送達カテーテル406は、ガイドワイヤ408が送達カテーテル406のルーメン420内に配置された状態でガイドワイヤ408の上を進められる。送達カテーテル406およびガイドワイヤ408の「急速交換」構成では、ガイドワイヤ408が、急速交換ルーメンなどの送達カテーテル406の遠位部分のみを通って延びる。ガイドワイヤ408は、典型的には、最初に患者の血管系を通してガイドワイヤ408を標的挿入部位(例えば、血管閉塞デバイス100によって満たされる動脈瘤のネック448、
図15~
図18を参照)に進めた後、ガイドワイヤ408の上で送達カテーテル406を標的挿入部位まで進めることによって用いられる。
【0068】
次に、
図15~
図19を参照して、血管閉塞システム200を使用して血管閉塞デバイス100を解剖学的体腔内に展開する例示的な方法500を説明する。この方法500は、一例として、血管閉塞デバイス100を動脈瘤嚢440内に展開することに関連して説明される。しかしながら、方法500は、血管閉塞デバイス100を動脈瘤嚢440内に展開することに限定されるものではなく、血管閉塞デバイス100、または本明細書に開示の他の医療デバイスを、患者の血管系を介してアクセスできる任意の適切な解剖学的体腔内に展開するために使用することができる。
図19のフローチャートおよび
図16に示すように、ステップ502では、ガイドワイヤ408を患者の血管系442内に挿入し、標的挿入部位、すなわち動脈瘤嚢440まで前進させる。本明細書に記載されているように、ガイドワイヤ408の使用は任意であり、血管閉塞システム200を使用して血管閉塞デバイス100を展開する方法500では必須ではない。
【0069】
ステップ504では、送達アセンブリ402の送達カテーテル406を、
図17に示すように、開放された遠位端418が動脈瘤440の動脈瘤ネック448に隣接するかまたはその中に入る位置まで、ガイドワイヤ408の上を前進させる。ステップ506では、送達カテーテル406を定位置に残したまま、ガイドワイヤ408を送達カテーテル406から引き抜く。ステップ508では、血管閉塞アセンブリ404を、送達アセンブリ402の送達カテーテル406内に挿入して、送達カテーテル406内を前進させ、
図18に示すように、血管閉塞デバイス100の遠位端を送達カテーテル406の遠位部分418に隣接して配置する。この位置では、プッシャ部材410の近位部分450が、送達カテーテル406の近位部分416よりも近位側にあり、かつ外側に留まる。血管閉塞デバイス100を送達カテーテル406内に挿入する前に、血管閉塞デバイス100がその拘束された送達構成(一次構成)になるように、血管閉塞デバイス100をシース内に予め導入することができる。その後、シースの遠位端を送達カテーテル406の近位端416と当接させて、シースから送達カテーテル406内に血管閉塞デバイス406を押し出すことにより、血管閉塞デバイス100を送達カテーテル406内に挿入し、それにより血管閉塞デバイス100が送達カテーテル206内でその送達構成で留まるようにする。
【0070】
ステップ510では、プッシャ部材412の近位部分450を押すことによって、血管閉塞デバイス100を、送達カテーテル406のルーメン420を通して、送達カテーテル406から遠位方向に押し出す。ステップ512では、送達カテーテル406の開放された遠位端418から血管閉塞デバイス100を押し出すときに、角錐形状部分104を、動脈瘤ネック448を通して動脈瘤嚢440内に前進させ、送達構成(一次構成)にある血管閉塞デバイス100の遠位部分を二次構成(展開構成)に拡張し、角錐形状部分104の遠位コイル108を動脈瘤嚢240内で形成する。また、ステップ512では、プッシャ部材412を介して送達カテーテル406の外に血管閉塞デバイス100を続けて前進させることにより、送達構成(一次構成)にある血管閉塞デバイス100の近位部分を、動脈瘤嚢440内でベース部分106を形成するその二次構成(展開構成)に拡張する。血管閉塞デバイス100全体を動脈瘤嚢440内に挿入したら、ステップ514では、分離デバイス412を作動、起動または他の方法で操作することにより、血管閉塞デバイス100をプッシャ部材410から切り離す。ステップ516では、プッシャ部材410を、送達カテーテル406を介して外に引き出すことによって、患者の血管系442から除去する。動脈瘤嚢440を充填して閉塞するのに単一の血管閉塞デバイス100で十分である場合には、方法500はステップ520に進んで、送達カテーテル406を患者の血管系442から取り除く。また、複数の血管閉塞デバイス100を埋め込む場合には、ステップ508~516のプロセスを繰り返すことにより、動脈瘤嚢440を充填して閉塞するのに十分な数の血管閉塞デバイス100を送達する。十分な数の血管閉塞デバイス100を動脈瘤嚢440に埋め込んだら、ステップ520において、送達カテーテル406を除去する。
【0071】
開示の発明の特定の実施形態を本明細書に示し説明してきたが、それらが本発明を限定することを意図していないことは当業者には理解されるであろう。また、以下の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定される開示の発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および修正(例えば、種々の部品の寸法)を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味として見なされるべきである。本明細書に示され説明される開示の発明の様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれ得る、開示の発明の代替物、修正物および均等物を網羅することを意図している。
【国際調査報告】