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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】二重特異性抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K48/00
A61K47/68
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529262
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 CN2021131804
(87)【国際公開番号】W WO2023087255
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521372242
【氏名又は名称】武▲漢▼友芝友生物制▲薬▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN YZY BIOPHARMA CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】方麗娟
(72)【発明者】
【氏名】張敬
(72)【発明者】
【氏名】華珊
(72)【発明者】
【氏名】周鵬飛
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB05
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、二重特異性抗体及びその用途を提供し、前記二重特異性抗体は、EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインとCD3に特異的に結合する抗原結合ドメインとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体であって、EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインとCD3に特異的に結合する抗原結合ドメインとを含み、
ここで、前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
1)以下のCDRs又はその変異体を含むEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及び
(ii)SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:32に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:33に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:34に示され、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:35に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:36に示され、CDRH3の配列は、SEQ ID NO:37に示され、又は
2)以下のCDRs又はその変異体を含むEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン:
(i)SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及び
(ii)SEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムとCDR定義システムに従って、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:38に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO: 39に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:40に示され、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:41に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:42に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:43に示され、
前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
1)以下のCDRs又はその変異体を含むCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン:
SEQ ID NO:50に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及びSEQ ID NO:51に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:44に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:45に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:46に示され、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:47に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:48に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:49に示され、又は
2)以下のCDRs又はその変異体を含むCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン:
SEQ ID NO:58に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及びSEQ ID NO:59に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:52に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:53に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:54に示され、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:55に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:56に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:57に示され、ここで、前記CDRsの変異体と対応するCDRsは、それぞれ3、2又は1つのアミノ酸差を有するか、又はそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、
好ましくは、ここでEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、Fab断片形態であり、CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、ScFV形態である、ことを特徴とする二重特異性抗体。
【請求項2】
前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域、又は
(ii)SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域、及び
ここで、前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(1)SEQ ID NO:50に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:51に示される軽鎖可変領域、又は
(2)SEQ ID NO:58に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:59に示される軽鎖可変領域、
好ましくは、
ここで、前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域、及び
ここで、前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
(1)SEQ ID NO:18に示されるScFv又はその変異体、
(2)SEQ ID NO:19に示されるScFv又はその変異体、
ここで、前記変異体と前記対応する可変領域又はScFvは、それぞれ3、2又は1つのアミノ酸差を有するか、又はそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記二重特異性抗体は、以下を含む:
(1)EpCAMに特異的に結合する軽鎖-重鎖対であって、前記軽鎖-重鎖対は、軽鎖と重鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで、前記軽鎖は、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:1、60~65のいずれか1つに示される)を含み、前記重鎖は、重鎖可変領域、CH1(好ましくは、配列がSEQ ID NO:2に示される)と第1のFc断片を含み、好ましくは、前記第1のFc断片は、ヒンジ領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:3に示される)、CH2(好ましくは、配列がSEQ ID NO:6、7、66~71のいずれか1つに示される)とCH3aを含み、
(2)CD3に特異的に結合する融合ペプチドであって、前記融合ペプチドは、CD3に特異的に結合するScFvと第2のFc断片を含むか、又はそれらからなり、好ましくは、前記ScFvは、N端からC端方向へ順次重鎖可変領域、連結ペプチド(好ましくは、配列がSEQ ID NO:4に示される)と軽鎖可変領域を含み、前記第2のFc断片は、N端からC端方向に順次ヒンジ領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:3に示される)、CH2(好ましくは、配列がSEQ ID NO:6、7、66~71のいずれか1つに示される)とCH3bを含み、好ましくは前記軽鎖可変領域のC端と前記第2のFc断片のヒンジ領域とは、連結ペプチド(好ましくは、配列がSEQ ID NO:5に示される)によって連結され、
好ましくは、前記第1のFc断片と第2のFc断片は、ヒト又はヒト化のFc断片、例えばヒトIgG Fc断片、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5 Fc断片であり、
好ましくは、野生型抗体と比較して、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、該重鎖と融合ペプチドとの間に杵-臼構造対を形成する1つ又は複数の置換を含み、例えば、1つのCH3ドメイン上のT366は、チロシン(Y)又はトリプトファン(W)のような比較的大きなアミノ酸残基で置換され、もう1つのCH3ドメイン上のY407は、スレオニン(T)、アラニン(A)又はバリン(V)のような比較的小さなアミノ酸残基で置換され、例えば、表6の1つ又は複数の置換を含み、
好ましくは、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、1つ又は複数の置換を含み、1)該置換は、該重鎖と融合ペプチドとの間で塩橋対を形成し、例えば1つのCH3ドメインは、1つ又は複数の置換を含み、生理学的条件下で正電荷を有するアミノ酸残基によって置換され、もう1つのCH3ドメインは、1つ又は複数の置換を含み、1つ又は複数の生理学的条件下で負電荷を有するアミノ酸残基によって置換され、例えば該正電荷を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)又はリシン(K)であり、例えば、該負電荷を有するアミノ酸残基は、アスパラギン(D)又はグルタミン酸(E)であり、例えば置換されたアミノ酸残基は、D356、L368、K392、D399及びK409のうちの1つ又は複数を含み、例えば、表7の1つ又は複数の置換であり、2)該置換は、該重鎖と融合ペプチドとの間でジスルフィド結合を形成し、例えば、表8の置換であり、及び/又は3)該置換は、Fcとタンパク質Aとの間の結合能力を著しく低下させ、例えば、1つのCH3ドメイン上のH435とY436は、それぞれ、表9に示されるように、アルギニン及びフェニルアラニンに置換され、
好ましくは、ここで:
a)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、杵-臼構造を形成する置換対を有し、
b)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、イオン結合を形成する置換対を有し、
c)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、ジスルフィド結合を形成する置換対を有し、及び/又は
d)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、タンパク質Aとの結合能の低下をもたらす置換を有し、
好ましくは、CH1は、SEQ ID No:2の配列を含み、及び/又はCLは、SEQ ID Nos:1、60~65のいずれか一項から選択される配列を含み、
好ましくは、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、SEQ ID Nos: 6、7、66~71のいずれか一項から選択される配列のCH2及び/又はSEQ ID Nos:8、9、11、12、72~76のいずれか一項から選択される配列のCH3を含み、
好ましくは、CH3aとCH3bの配列は、以下のものからなる群から選択される:
(1)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:8に示され、別の配列は、SEQ ID NO:11に示され、
(2)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:9に示され、別の配列は、SEQ ID NO:12に示され、
(3)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:72に示され、別の配列は、SEQ ID NO:74に示され、
(4)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:9に示され、別の配列は、SEQ ID NO:75に示され、
(5)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:73に示され、別の配列は、SEQ ID NO:76に示され、
好ましくは、前記二重特異性抗体は、以下のものからなる群から選択される:
(1)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(2)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(3)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(4)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(5)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(6)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(7)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(8)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(9)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(10)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(11)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(12)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなる、請求項1又は2に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする核酸配列を含む核酸組成物であって、好ましくは、
核酸組成物は、
a)請求項1~3のいずれか一項に定義されたEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン又は軽鎖-重鎖対をコードする第1の核酸を含む第1の発現ベクターと、
b)請求項1~3のいずれか一項に定義されたCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン又は融合ペプチドをコードする第2の核酸を含む第2の発現ベクターと、を含む、核酸組成物。
【請求項5】
請求項4の核酸組成物を含む、発現ベクター。
【請求項6】
請求項5の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容可能な担体と、任意的に、癌(EpCAM陽性の腫瘍、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌等)及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等を治療する薬物(例えば小分子薬物又は高分子薬物)を含む医薬組成物であって、好ましくは、前記医薬組成物の剤形は、胃腸投与剤形又は胃腸外投与剤形を含み、より好ましくは、前記医薬組成物の剤形は、静脈注射、静脈点滴、皮下注射、局所注射、筋肉注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、頭蓋内注射、又は腔内注射を含む注射剤である、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含むコンジュゲート又は融合タンパク質であって、好ましくは、それは、前記二重特異性抗体と結合又は融合した物質Aを含み、前記物質Aは、治療剤、薬物前駆体、タンパク質(例えば酵素)、ウイルス、脂質、生物応答調節剤(例えば免疫調節剤)、PEG、ホルモン剤、オリゴヌクレオチド、診断剤、細胞毒性剤からなる群から選択され、それは、薬物又は毒素、超音波増強剤、非放射性マーカーであってもよく、化学発光物マーカー化合物(例えば、ルミノール、イソルミノール、熱性アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル)、又は蛍光発光金属(例えば、152Eu、又はランタノイドマーカー)などのマーカーを検出することができる、コンジュゲート又は融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、任意的に、癌(EpCAM陽性の腫瘍、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌等)及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等を治療する薬物(例えば小分子薬物又は高分子薬物)とを含む、キット。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の、癌の治療、又は癌及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等の治療薬物又はキットの製造における用途であって、前記癌例えばEpCAM陽性の腫瘍は、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌である、用途。
【請求項11】
被験者に治療有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む癌及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水の治療方法であって、前記癌EpCAM陽性の腫瘍は、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌である、治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の技術分野に関する。具体的には、抗EpCAMとCD3の二重特異性抗体及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
二重標的抗体とも呼ばれる二重特異性抗体(bi-specific antibody、BsAb)は、2つの異なる抗原又はエピトープを同時に認識して結合し、2つの異なるシグナル経路をブロックしてその役割を果たすことができる。単一抗原を認識するモノクローナル抗体(monoclonal Ab、mAb)と比較し、二重抗体には多くの優位性がある:(1)腫瘍殺傷を強化するために、特異的免疫エフェクター細胞を近隣の腫瘍細胞にリダイレクティングすることができ、これはmAb治療戦略を組み合わせることでは実現できない;(2)2つの異なる細胞表面抗原の相互作用により結合特異性を増加させる;(3)組み合わせ療法における単一抗体の創薬と比較して、開発コスト、臨床試験、規制審査の予算を削減できる;(4)併用療法における単一抗体の薬物と比較して、発症メカニズムにおいて独特な又は重複した機能を発揮する2つの異なる経路を同時にブロックすることができる。
【0003】
癌とその他の疾患は、いずれも多要素によって引き起こされ、病原学的には多くのシグナル経路があり、単一標的の免疫治療は標的細胞を有効に殺すことができない。mAb治療を受けた患者は、薬剤耐性を持つか、治療に応答しない可能性がある。そのため、二重抗体は、すでに癌、炎症、ウイルス感染及び自己免疫疾患などの多くの疾患治療の主要な選択となっている。しかし、二重抗体は、自然環境下では存在せず、組換えDNA、細胞融合又は化学結合の技術によって実現する必要があり、ここで組換えDNA技術は、現在BsAbの製造に最も多く使用されている技術であるが、依然としてBsAbの発現困難、収量の低さ、精製の難しさ、安定性の悪さなど多くの障害が存在するため、新たな二重特異性抗体を確立し、上記障害を克服し、対応する免疫殺傷動物モデルを樹立することは非常に必要である。本発明は、新規な二重特性抗体を提供し、その薬効学的研究方法及び結果を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインとCD3に特異的に結合する抗原結合ドメインとを含むことを特徴とする新規な二重特異性抗体及びその用途を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には、本発明は、以下のいくつかの態様に関する:
【0006】
1.二重特異性抗体であって、EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインとCD3に特異的に結合する抗原結合ドメインとを含み、
ここで、前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
1)以下のCDRs又はその変異体を含むEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及び
(ii)SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:32に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:33に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:34に示され、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:35に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:36に示され、CDRH3の配列は、SEQ ID NO:37に示され、又は
2)以下のCDRs又はその変異体を含むEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン:
(i)SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及び
(ii)SEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムとCDR定義システムに従って、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:38に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO: 39に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:40に示され、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:41に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:42に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:43に示され、
前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
1)以下のCDRs又はその変異体を含むCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン:
SEQ ID NO:50に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及びSEQ ID NO:51に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:44に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:45に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:46に示され、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:47に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:48に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:49に示され、又は
2)以下のCDRs又はその変異体を含むCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン:
SEQ ID NO:58に示される重鎖可変領域に含まれるCDRH1、CDRH2とCDRH3、及びSEQ ID NO:59に示される軽鎖可変領域に含まれるCDRL1、CDRL2とCDRL3、
好ましくは、Kabat配列番号システムに従って、CDRH1の配列は、SEQ ID NO:52に示され、CDRH2の配列は、SEQ ID NO:53に示され、及びCDRH3の配列は、SEQ ID NO:54に示され、CDRL1の配列は、SEQ ID NO:55に示され、CDRL2の配列は、SEQ ID NO:56に示され、CDRL3の配列は、SEQ ID NO:57に示され、ここで、前記CDRsの変異体と対応するCDRsは、それぞれ3、2又は1つのアミノ酸差を有するか、又はそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する、ことを特徴とする二重特異性抗体。
【0007】
2.前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域、又は
(ii)SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域、及び
ここで、前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(1)SEQ ID NO:50に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:51に示される軽鎖可変領域、又は
(2)SEQ ID NO:58に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:59に示される軽鎖可変領域、
好ましくは、ここでEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、Fab断片形態であり、CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、ScFv形態であり、
好ましくは、ここで、前記EpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域(又はその変異体)を含む:
(i)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:13に示される軽鎖可変領域、及び
ここで、前記CD3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、以下のものからなる群から選択される:
(1)SEQ ID NO:18に示されるScFv又はその変異体、
(2)SEQ ID NO:19に示されるScFv又はその変異体、
ここで、前記変異体と前記対応する可変領域又はScFvは、それぞれ3、2又は1つのアミノ酸差を有するか、又はそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する、項1に記載の二重特異性抗体。
【0008】
3.前記二重特異性抗体は、以下を含む:
(1)EpCAMに特異的に結合する軽鎖-重鎖対であって、前記軽鎖-重鎖対は、軽鎖と重鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで、前記軽鎖は、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:1、60~65のいずれか1つに示される)を含み、前記重鎖は、重鎖可変領域、CH1(好ましくは、配列がSEQ ID NO:2に示される)と第1のFc断片を含み、好ましくは、前記第1のFc断片は、ヒンジ領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:3に示される)、CH2(好ましくは、配列がSEQ ID NO:6、7、66~71のいずれか1つに示される)とCH3aを含み、
(2)CD3に特異的に結合する融合ペプチドであって、前記融合ペプチドは、CD3に特異的に結合するScFvと第2のFc断片を含むか、又はそれらからなり、好ましくは、前記ScFvは、N端からC端方向へ順次重鎖可変領域、連結ペプチド(好ましくは、配列がSEQ ID NO:4に示される)と軽鎖可変領域を含み、前記第2のFc断片は、N端からC端方向に順次ヒンジ領域(好ましくは、配列がSEQ ID NO:3に示される)、CH2(好ましくは、配列がSEQ ID NO:6、7、66~71のいずれか1つに示される)とCH3bを含み、好ましくは前記軽鎖可変領域のC端と前記第2のFc断片のヒンジ領域とは、連結ペプチド(好ましくは、配列がSEQ ID NO:5に示される)によって連結され、
好ましくは、前記第1のFc断片と第2のFc断片は、ヒト又はヒト化のFc断片、例えばヒトIgG Fc断片、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5 Fc断片であり、
好ましくは、野生型抗体と比較して、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、該重鎖と融合ペプチドとの間に杵-臼構造対を形成する1つ又は複数の置換を含み、例えば、1つのCH3ドメイン上のT366は、チロシン(Y)又はトリプトファン(W)のような比較的大きなアミノ酸残基で置換され、もう1つのCH3ドメイン上のY407は、スレオニン(T)、アラニン(A)又はバリン(V)のような比較的小さなアミノ酸残基で置換され、例えば、表6の1つ又は複数の置換を含み、
好ましくは、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、1つ又は複数の置換を含み、1)該置換は、該重鎖と融合ペプチドとの間で塩橋対を形成し、例えば1つのCH3ドメインは、1つ又は複数の置換を含み、生理学的条件下で正電荷を有するアミノ酸残基によって置換され、もう1つのCH3ドメインは、1つ又は複数の置換を含み、1つ又は複数の生理学的条件下で負電荷を有するアミノ酸残基によって置換され、例えば該正電荷を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)又はリシン(K)であり、例えば、該負電荷を有するアミノ酸残基はアスパラギン(D)又はグルタミン酸(E)であり、例えば置換されたアミノ酸残基は、D356、L368、K392、D399及びK409のうちの1つ又は複数を含み、例えば、表7の1つ又は複数の置換であり、2)該置換は、該重鎖と融合ペプチドとの間でジスルフィド結合を形成し、例えば、表8の置換であり、及び/又は3)該置換は、Fcとタンパク質Aとの間の結合能力を著しく低下させ、例えば、1つのCH3ドメイン上のH435とY436は、それぞれ、表9に示されるように、アルギニン及びフェニルアラニンに置換され、
好ましくは、ここで:
a)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、杵-臼構造を形成する置換対を有し、
b)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、イオン結合を形成する置換対を有し、
c)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、ジスルフィド結合を形成する置換対を有し、及び/又は
d)融合ペプチドのCH3bと重鎖のCH3aは、タンパク質Aとの結合能の低下をもたらす置換を有し、
好ましくは、CH1は、SEQ ID No:2の配列を含み、及び/又はCLは、SEQ ID Nos:1、60~65のいずれか一項から選択される配列を含み、
好ましくは、前記第1のFc断片及び/又は第2のFc断片は、SEQ ID Nos: 6、7、66~71のいずれか一項から選択される配列のCH2及び/又はSEQ ID Nos:8、9、11、12、72~76のいずれか一項から選択される配列のCH3を含み、
好ましくは、CH3aとCH3bの配列は、以下のものからなる群から選択される:
(1)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:8に示され、別の配列は、SEQ ID NO:11に示され、
(2)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:9に示され、別の配列は、SEQ ID NO:12に示され、
(3)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:72に示され、別の配列は、SEQ ID NO:74に示され、
(4)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:9に示され、別の配列は、SEQ ID NO:75に示され、
(5)そのうちの1つの配列は、SEQ ID NO:73に示され、別の配列は、SEQ ID NO:76に示され、
好ましくは、前記二重特異性抗体は、以下のものからなる群から選択される:
(1)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(2)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(3)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(4)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(5)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(6)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(7)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(8)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(9)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(10)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:8を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6とSEQ ID NO:11を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(11)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなり、
(12)それは、融合ペプチド、重鎖と軽鎖を含むか、又はそれらからなり、ここで融合ペプチドは、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:9を含むか、又はそれらからなり、重鎖は、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7とSEQ ID NO:12を含むか、又はそれらからなり、軽鎖は、SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:1を含むか、又はそれらからなる、項1又は2に記載の二重特異性抗体。
【0009】
4.項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする核酸配列を含む核酸組成物であって、好ましくは、
核酸組成物は、
a)項1~3のいずれか一項に定義されたEpCAMに特異的に結合する抗原結合ドメイン又は軽鎖-重鎖対をコードする第1の核酸を含む第1の発現ベクターと、
b)項1~3のいずれか一項に定義されたCD3に特異的に結合する抗原結合ドメイン又は融合ペプチドをコードする第2の核酸を含む第2の発現ベクターと、を含む、核酸組成物。
【0010】
5.項4の核酸組成物を含む、発現ベクター。
【0011】
6.項5の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0012】
7.項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容可能な担体と、任意的に、癌(EpCAM陽性の腫瘍、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌等)及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等を治療する薬物(例えば小分子薬物又は高分子薬物)を含む医薬組成物であって、好ましくは、前記医薬組成物の剤形は、胃腸投与剤形又は胃腸外投与剤形を含み、より好ましくは、前記医薬組成物の剤形は、静脈注射、静脈点滴、皮下注射、局所注射、筋肉注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、頭蓋内注射、又は腔内注射を含む注射剤である、医薬組成物。
【0013】
8.項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含むコンジュゲート又は融合タンパク質であって、好ましくは、それは、前記二重特異性抗体と結合又は融合した物質Aを含み、前記物質Aは、治療剤、薬物前駆体、タンパク質(例えば酵素)、ウイルス、脂質、生物応答調節剤(例えば免疫調節剤)、PEG、ホルモン剤、オリゴヌクレオチド、診断剤、細胞毒性剤からなる群から選択され、それは、薬物又は毒素、超音波増強剤、非放射性マーカーであってもよく、化学発光物マーカー化合物(例えば、ルミノール、イソルミノール、熱性アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル)、又は蛍光発光金属(例えば、152Eu、又はランタノイドマーカー)などのマーカーを検出することができる、コンジュゲート又は融合タンパク質。
【0014】
9.項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、任意的に、癌(EpCAM陽性の腫瘍、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌等)及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等を治療する薬物(例えば小分子薬物又は高分子薬物)とを含む、キット。
【0015】
10.項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の癌の治療、又は癌及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水等の治療薬物又はキットの製造における用途であって、前記癌例えばEpCAM陽性の腫瘍は、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌である、用途。
【0016】
11.被験者に治療有効量の項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む癌及び/又は悪性腹水、悪性貯留液、悪性胸水の治療方法であって、前記癌EpCAM陽性の腫瘍は、例えば大腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、膵癌、肝癌、網膜芽細胞腫、食道癌、腎癌、腎透明細胞腫、皮膚鱗癌、皮膚基底細胞癌、肉腫、鼻腔神経膠腫、頭蓋咽頭管腫、甲状腺癌、胆管細胞腫、膀胱癌、頭頸部腫瘍、子宮頸癌、又は口腔癌である、治療方法。
【0017】
本発明の範囲内では、本発明の上記各技術的特徴と、以下の(例えば実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間で、互いに組み合わされて、新規又は好ましい技術的解決手段を構成できることが理解されるべきである。紙幅に限るので、ここではいちいち累述しない。
【0018】
本発明に係る用語は、当業者に理解される通常の意味を備える。本明細書で使用される用語の定義は、本技術分野で使用され、及び/又は許容される場合には、1つの用語が2つ以上の定義を有する時、すべての意味を含むために使用される。
【0019】
当業者であれば、抗体のCDR領域は抗体の抗原に対する結合特異性を担当することを理解することができる。抗体重鎖と軽鎖可変領域配列が知られている場合、現在では、抗体CDR領域を決定する方法は、Kabat、IMGT、ChothiaとAbM番号システムを含むいくつかある。しかしながら、様々な抗体又はその変異体のCDRの定義に関する各適用は、本明細書で定義されて使用される用語の範囲内にある。該抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられている場合、当業者は、通常、該配列自体以外の任意の実験データに依存することなく、特定のCDRを決定することができる。
【0020】
本明細書で使用される「抗体」又は「抗原結合断片」とは、抗原を特定に認識し結合するポリペプチド又はポリペプチド複合体を意味する。「抗体」という用語は広義に使用され、免疫グロブリン又は抗体分子を含み、前記抗体分子は、モノクローナル又はポリクローナルのヒト、ヒト化、複合化及びキメラ抗体、ならびに抗体断片を含む。したがって、「抗体」という用語は、特定の分子を含む任意のタンパク質又はペプチドを含んでおり、前記特定の分子は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む。このような状況の例としては、重鎖又は軽鎖又はそのリガンド結合部分の相補性決定領域(CDR)、重鎖又は軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域又はそのいずれかの部分、又は結合タンパク質の少なくとも一部を含むが、それらに限定されない。本発明において、抗体は、当業者が熟知している技術を用いて作製されたマウス、キメラ、ヒト化又は全ヒト抗体を含む。ヒト及び非ヒト部分を含むキメラ及びヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗体は、本分野でよく知られているDNA組換え技術を用いて作製することができる。本出願の免疫グロブリン分子又は抗体分子は、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAとIgY)、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1とIgA2)又はサブクラスであってもよい。
【0021】
用語「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、Fd、dAb、Fab/c、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖Fvs(ScFv)、ジスルフィド結合安定性Fv(Disulfide-stabilized Fv fragment、dsFv)、(dsFv)2、二重特異性抗体dsFv(dsFv-dsFv’)、二本鎖抗体(Diabody)、ジスルフィド結合安定性二本鎖抗体(ds-Diabody)、ScFv多量体(ScFv二量体、ScFv三量体など)、1つ又は複数のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ナノ抗体、単一ドメイン抗体(sdab)、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を含むが、これらに限定されない。構造にかかわらず、抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片に結合する同一抗原に結合可能なポリペプチド又はポリペプチド複合体を含む。「抗体断片」という用語は、アプタマー、アプタマー鏡像体(spiegelmers)及び二体(diabodies)を含む。「抗体断片」という用語はまた、抗体と同様に特定の抗原に結合して複合体を形成することができる合成された又は遺伝子改変されたタンパク質を含む。一般的には、抗体断片は、本発明の抗体の少なくとも約50個の連続アミノ酸、好ましくは少なくとも約50個の連続アミノ酸、より好ましくは少なくとも約80個の連続アミノ酸、最適には少なくとも約100個の連続アミノ酸を有する。
【0022】
「一本鎖可変断片」又は「ScFv」とは、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質をいう。いくつかの態様では、これらの領域は、10~約25個のアミノ酸の短リンカーペプチドで連結されている。該リンカーは、可撓性を有するようにグリシンに富むことができ、また、可溶性を有するようにセリン又はスレオニンを含むことができ、VHのN-末端をVLのC末端に連結することができ、逆に同様である。該タンパク質は、定常領域を除去し、リンカーを導入するだけで、本来の免疫グロブリンの特性を保持する。ScFv分子は、米国特許5,892,019号に記載されているような、本分野で知られているものである。
【0023】
EpCAMとCD3を結合する抗原結合ドメインは、Fab、又はScFv、又は重鎖可変領域(VH)-軽鎖可変領域(VL)との間の非共有結合(Fv)である。上記のいずれかの抗体又はポリペプチドは、分泌を誘導するための抗体N末端のシグナルペプチド、又は精製のための6×Hisタグのような本明細書に記載の他の異種ポリペプチドなどの、追加のポリペプチドをさらに含んでもよい。本発明は、完全抗体のみならず、免疫活性を有する抗体断片又は抗体と他の配列で形成される融合タンパク質も含む。本発明は、本発明の抗体を有する他のタンパク質又は融合発現産物をさらに提供する。具体的には、本発明は、可変領域が本発明の抗体の重鎖と軽鎖の可変領域と同一又は少なくとも90%の相同性、好ましくは少なくとも95%の相同性、最適には96%、97%、98%又は99%以上の相同性を有する限り、可変領域を含む重鎖と軽鎖を有する任意のタンパク質又はタンパク質コンジュゲート及び融合発現産物(すなわち、免疫コンジュゲート及び融合発現産物)を含む。したがって、本発明は、そのCDRが本発明のCDRと90%以上(好ましくは95%以上、最適には96%、97%、98%、又は99%以上)の相同性を有する限り、CDRを有するモノクローナル抗体の軽鎖と重鎖可変領域を有する分子を含む。
【0024】
本発明は、前記抗体の断片、変異体、誘導体及び類似体をさらに含む。本出願の抗体、抗原結合断片、それらの変異体又は誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体など)、ヒト抗体、動物由来抗体、ヒト化抗体、霊長類化(primatized)抗体、又はキメラ抗体、CDR接ぎ木及び/又は改変抗体、一本鎖抗体(例えば、ScFv)、二本鎖抗体、抗原エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(ScFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合のFv(dsFv)、VLドメイン又はVHドメインを含む断片、Fab発現ライブラリから産生される断片、及び抗イディオティック(idiotypic)(抗-Id)抗体を含むが、これらに限定されない。本発明の抗体断片、抗原結合断片、誘導体又は類似体は、(i)1つ又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド(ここで、そのような置換されたアミノ酸残基は、コドンによってコードされてもいなくてもよい)、又は(ii)1つ又は複数のアミノ酸残基中に置換基を有するポリペプチド、又は(iii)成熟ポリペプチドが他の化合物(ポリエチレングリコールのようなポリペプチドの半減期を延長する化合物)と融合して形成されたポリペプチド、又は(iv)そのようなポリペプチド配列に付加的なアミノ酸配列が融合して形成されたポリペプチド(例えば、プリアンブル配列又は分泌配列、又はそのようなポリペプチドを精製するための配列又はプロタンパク質配列、又は6×Hisタグとの融合タンパク質)であってもよい。本明細書の教示によれば、これらの断片、誘導体及び類似物は、当業者に周知された範囲に属する。
【0025】
本発明の抗体は、ヒトEpCAMとCD3との結合活性を有する、上記CDR領域を含むポリペプチドを指す。該用語は、本発明の抗体と同じ機能を有し、上記CDR領域を含むポリペプチドの変異形態をさらに含む。これらの変異形態は、1つ又は複数(一般的に1~50個、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、最適には1~10個)のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、及びC末端及び/又はN末端における1つ又は複数(一般的に20個以内、より好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸の付加を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、本分野では、性能が近い又は類似しているアミノ酸で置換した場合、通常、タンパク質の機能は変化しない。また、例えば、C末端及び/又はN末端に1個又は数個のアミノ酸を付加しても、通常、タンパク質の機能は変化しない。該用語は、本発明の抗体の活性断片と活性誘導体をさらに含む。該ポリペプチドの変異形態は、相同配列、保存的変異体、等位変異体、天然変異体、誘導変異体、高又は低の厳密条件下で本発明の抗体のコードDNAとハイブリダイズ可能なDNAにコードされるタンパク質、及び本発明の抗体に抗する抗血清を用いて得られるポリペプチド又はタンパク質を含む。
【0026】
本発明の抗体は、(i)1つ又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、又は(ii)1つ又は複数のアミノ酸残基中に置換基を有するポリペプチド、又は(iii)成熟ポリペプチドが他の化合物(ポリエチレングリコールのようなポリペプチドの半減期を延長する化合物)と融合して形成されたポリペプチド、又は(iv)そのようなポリペプチド配列に付加的なアミノ酸配列が融合して形成されたポリペプチド(例えば、プリアンブル配列又は分泌配列、又はそのようなポリペプチドを精製するための配列又はプロタンパク質配列、又は6×Hisタグとの融合タンパク質)であってもよい。本明細書の教示によれば、これらの断片、誘導体及び類似物は、当業者に周知された範囲に属する。
【0027】
「保存的アミノ酸置換」とは、そのうちのアミノ酸残基が類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されることを意味する。類似する側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当分野で定義されており、それは、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐鎖の側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、免疫グロブリンポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基で置換されていることが好ましい。別のいくつかの実施形態では、アミノ酸列は、構造的に類似したアミノ酸列で置換されてもよく、後者は、順序及び/又は側鎖ファミリーの組成が異なる。
【0028】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例を次の表に示し、ここで類似度スコアが0以上であることは、2つのアミノ酸の間に保存的置換があることを示す。
【表1】

【0029】
いくつかの実施形態では、前記保存的置換は好ましくは、以下の群(a)~(e)内の1つのアミノ酸が、同じ群内の別のアミノ酸残基で置換される置換である:(a)小さな脂肪族、非極性又は弱極性の残基:Ala、Ser、Thr、ProとGly;(b)極性、負電荷を有する残基及びその(電荷を持たない)アミド:Asp、Asn、GluとGln;(c)極性、正電荷を有する残基:His、ArgとLys、(d)大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、ValとCys、及び(e)芳族残基:Phe、TyrとTrp。
【0030】
特に好ましい保存的置換は、以下の通りである:AlaをGlyに置換するか又はSerに置換する;ArgをLysに置換する;AsnをGlnに置換するか又はHisに置換する;AspをGluに置換する;CysをSerに置換する;GlnをAsnに置換する;GluをAspに置換する;GlyをAlaに置換するか又はProに置換する;HisをAsnに置換するか又はGlnに置換する;IleをLeuに置換するか又はValに置換する;LeuをIleに置換するか又はValに置換する;LysをArgに置換する;Glnに置換するか又はGluに置換する;MetをLeuに置換する;Tyrに置換するか又はIleに置換する;PheをMetに置換する;Leuに置換するか又はTyrに置換する;SerをThrに置換する;ThrをSerに置換する;TrpをTyrに置換する;TyrをTrpに置換する;及び/又はPheをValに置換する;Ileに置換するか又はLeuに置換する。
【0031】
Fcアミノ酸番号は、Kabat番号に従う。「Kabat番号」とは、Kabatなどが記述した番号システムで、その内容は米国衛生・公共サービス部、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)に記載されている。具体的な番号は次の表のとおりである:
【表2】

【0032】
ここで、
221~227番目のアミノ酸は、ヒンジ(hinge)ドメインであり、
228~340番目のアミノ酸は、重鎖の第2の定常領域CH2ドメインであり、
341~447番目のアミノ酸は、重鎖の第3の定常領域CH3ドメインである。
【0033】
抗体は、ヘテロ二量体ペアリング効率を向上させるように改変されてもよい。例えば、いくつかの態様では、野生型の抗体断片と比較して、該単価ユニット重鎖のFc断片及び/又は融合ペプチドのFc断片は、1つ又は複数の置換を含んでもよく、これらの置換間には、杵-臼構造対を形成する。本分野では、杵-臼の構造が知られている。例えばRidgway等の「‘Knob-into-holes’ engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization」Protein Engineering 9(7):617-21(1996)を参照する。
【0034】
一態様では、1つのCH3ドメイン上のT366は、チロシン(Y)又はトリプトファン(W)のような比較的大きなアミノ酸残基で置換される。そして、別のCH3ドメイン上のY407は、スレオニン(T)、アラニン(A)又はバリン(V)のような比較的小さなアミノ酸残基で置換されてもよい。
【表3】
【0035】
一態様では、該CH3ドメインの1つは、生理学的条件下で正電荷を有するアミノ酸残基で置換された1つ又は複数の置換を含み、別のCH3ドメインは、生理学的条件下で負電荷を有する1つ又は複数のアミノ酸残基で置換された1つ又は複数の置換を含む。一態様では、該正帯電のアミノ酸残基は、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)又はリシン(K)であってもよい。他の態様では、該負帯電のアミノ酸残基は、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)であってもよい。置換されてもよいアミノ酸残基は、D356、L368、K392、D399とK409を含むが、これらに限定されない。
【表4】
【0036】
一態様では、1つのCH3ドメイン上のS354は、システインに置換され、別のCH3ドメイン上のY349もシステインに置換され、置換された2つの残基がジスルフィド結合を形成した。
【表5】
【0037】
一態様では、一つのCH3ドメイン上のH435とY436は、それぞれアルギニンとフェニルアラニンに置換され、該置換は、Fcとタンパク質Aとの間の結合能力を著しく低下させ、それによってヘテロ二量体とホモ二量体との間に異なるタンパク質A結合活性を持たせ、親和性クロマトグラフィー過程で両者を容易に分離する。
【表6】
【0038】
本発明の1つの好ましい例では、ヘテロ二量体を形成するFcのCH3アミノ酸配列は、以下の表に示される:
【表7】


【0039】
本出願の一実施例は、2つの異なる抗原結合ポリペプチドユニットを含むヘテロ二量体抗体を提供する。いくつかの態様では、該ヘテロ二量体は、対応するホモ二量体とはサイズが異なり、サイズの違いは、ヘテロ二量体とホモ二量体との分離を容易にするために利用され得る。
【0040】
いくつかの態様では、図1のように、これらの2つの抗原結合ポリペプチドユニットの1つは、野生型抗体に類似した軽鎖-重鎖対を含む。本出願全体において、該ユニットは、「単価ユニット」とも呼ばれる。いくつかの態様では、図1のように、他の抗原結合ポリペプチドユニットは、一本鎖可変断片(ScFv)を含む。このようなScFvは、融合ペプチドと呼ばれる抗体の定常断片(Fc)のN末端に融合することができる。本出願全体において、この融合ペプチドは、「一本鎖ユニット」とも呼ばれる。
【0041】
上記のいずれかの抗体又はポリペプチドは、本明細書に記載のコードされたポリペプチド、分泌を指導するための抗体定常領域のシグナルペプチド、又は本明細書に記載の他の異種ポリペプチドのような追加のポリペプチドをさらに含んでもよい。本明細書に記載の抗体は、それらのアミノ酸配列が天然に存在する結合ポリペプチドと異なるように修正されてもよい。例えば、特定のタンパク質由来のポリペプチド又はアミノ酸配列は、開始配列と類似していてもよく、例えば、開始配列と一定の割合の同一性を有していてもよく、例えば、開始配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性を有していてもよい。さらに、ヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、又は挿入を行って、「非必須」アミノ酸領域において保存的な置換又は改変を行うこともできる。例えば、特定のタンパク質由来のポリペプチド又はアミノ酸配列は、1つ又は複数の独立したアミノ酸の置換、挿入、又は欠失、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個又はより多くの独立したアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を除いて、開始順序と同じであってもよい。特定の実施例において、特定のタンパク質由来のポリペプチド又はアミノ酸配列は、開始配列に対して、1~5個、1~10個、1~15個、又は1~20個の独立したアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を有する。
【0042】
本明細書で使用される用語「検出可能なタグ」は、「タグ付けされた」組成物を得るために、検出される組成物(例えば、ポリヌクレオチド又は抗体などのタンパク質)に直接又は間接的に結合する、直接又は間接的に検出可能な化合物又は組成物を意味する。該用語は、挿入配列の発現によって緑色蛍光タンパク質(GFP)などのシグナルを提供する該ポリヌクレオチドに結合する配列をさらに提供する。該タグ自体(例えば、放射性同位体タグ又は蛍光タグ)は、検出されることができ、又は酵素タグの場合、基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒することができ、該改変は、検出されることができる。該タグは、小規模検出に使用することができ、又はハイスループットスクリーニングにより適している。同様に、適切なタグは、放射性同位体、蛍光染料、化学発光化合物、染料、及びタンパク質(酵素を含む)を含むが、これらに限定されない。該タグは、検出のみ可能であり、定量化も可能である。検出のみの反応は、一般的に、その存在を確認するだけの反応を含み、ここで、定量化可能な反応は、一般的に、強度、分極、及び/又は他の特性などの定量化可能な(例えば、デジタルで報告可能な)値を有する反応を含む。発光又は蛍光分析では、検出可能な反応は、分析成分に関連する実際には結合に関する発光体又は蛍光基を直接使用するか、又は別の(例えば、レポーター分子又は治療剤)成分に結合した発光体又は蛍光基を間接的に使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の前記抗体は、治療剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチンなどの化学療法薬物)、薬物前駆体、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物応答調節剤、薬剤、又はPEGに結合することができる。本発明の抗体は、放射性マーカー、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤又は診断剤、細胞毒性物質などの検出可能なマーカーを含む治療剤に結合又は融合させることができ、これらは、薬物又は毒素、超音波増強剤、非放射性マーカー、それらの組み合わせ、及びその他のこのような当技術分野で知られている成分であってもよい。
【0044】
ある実施例では、抗原結合ポリペプチドは、通常抗体に結合しないアミノ酸配列又は1つ以上の基を含む。例えば、本出願の一本鎖Fv抗体断片は、可撓性リンカー配列、又は付加するように修正されてもよい官能基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、薬物、毒素、又はマーカー)を含んでもよい。本出願の抗体、その変異体又は誘導体は、修正された誘導体を含み、すなわち、任意の種類の分子は、抗体に共有結合され、該共有結合は、抗体の抗原エピトープへの結合を阻害しない。なお、該抗体は、1つ又は複数の非古典的なアミノ酸を含んでもよい。
【0045】
非明示的な数のエンティティの限定は、1つ又は複数の該エンティティを意味することに注意すべきであり、例えば、「多機能抗体」とは、11つ又は複数の多機能抗体を意味するものと理解すべきである。同様に、非明示的な数で限定される、用語「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」は、本明細書で交換可能に使用される。
【0046】
本明細書で使用される用語「治療」は、治療的治療及び予防又は予防措置を意味し、ここで、癌の進行のような好ましくない生理学的変化又は疾患を予防又は遅らせる(軽減する)ことが被験者に対して行われる。有益な又は必要な臨床結果は、検出の可否にかかわらず、症状を緩和すること、疾患の程度を軽減すること、疾患の状態を安定させること(例えば、悪化させないこと)、疾患の進行を遅延又は遅らせること、疾患の状態を改善又は緩和すること、及び(部分的又は全体的に)緩和することを含むが、これらに限定されない。「治療」とは、治療を受けない場合の予想生存期間に比べて生存期間を延長できることを意味することもある。治療を必要とする状況は、すでに病症又は症状がある場合、又は病症又は症状が生じやすい場合、又は病症又は症状を予防することができる場合を含む。
【0047】
いわゆる「被験者」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後、又は治療を必要とするあらゆる被験者、特に哺乳動物の被験者を指す。哺乳動物の被験者は、ヒト、飼育動物、農場動物、動物園、運動場、又は犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ネズミ、馬、牛、乳牛、霊長類(例えば、カニクイザル、マカク、ヒヒなどのヒト、サル、チンパンジーなど)などを含む。
【0048】
本明細書に記載の、本出願に記載の抗原結合ポリペプチド、変異体又は誘導体は、癌又は伝染病に関連するいくつかの治療及び診断方法において使用することができる。本出願はまた、本明細書に記載された1つ又は複数の疾患又は状態を治療するために、動物、哺乳動物、及びヒトなどの患者に本出願の二重特異性抗体を投与することを含む抗体ベースの治療にも関する。本出願の治療薬は、本出願の抗体(本明細書に記載のそれらの変異体及び誘導体を含む)及び核酸、又は本出願の抗体をコードするポリヌクレオチド(本明細書に記載のそれらの変異体及び誘導体を含む)を含むが、これらに限定されない。本出願の抗体はまた、悪性の疾患、病症、又は免疫応答に関連する疾患などのそのような疾患又は病症に関連する状態を含む疾患、病症又は状態の治療、抑制、又は予防にも使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、免疫抑制剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、自己免疫疾患を治療するために使用することができる。本出願の抗原結合ポリペプチド、その変異体又は誘導体は、癌の成長、進展及び/又は転移、特に上又は下の段落に記載されているものを阻害するために使用される。
【0049】
本出願の抗体又はその変異体又は誘導体を用いて細胞生存の増加に関連する他の疾患又は状態を治療、予防、診断及び/又は予測することができ、癌又は腫瘍(悪性腫瘍の発生及び/又は転移を含む)ならびに関連する疾患(例えば、悪性腹水、悪性胸水、悪心液)、例えばEpCAM陽性腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0050】
抗体、その変異体又は誘導体を投与する方法は、皮内、筋内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外及び経口経路を含むが、これらに限定されない。該抗体又は組成物は、任意の便利な経路、例えば、注入又は大量注入によって投与することができ、上皮又は粘膜を介して皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)に吸収され、他の生物活性剤とともに投与することができる。したがって、本出願の抗体含有医薬組成物は、経口投与、直腸投与、非腸管投与、脳内投与、膣内投与、腹膜内投与、局所投与(例えば、経散薬、軟膏剤、滴剤、経皮パッチ)、経口投与、又は口腔又は鼻腔噴霧剤として投与することができる。本明細書で使用される用語「非腸管」は、静脈内、筋内、腹膜内、胸骨内、皮下及び関節内への注射及び注入を含む投与パターンを意味する。投与は、全身投与又は局所投与であってもよい。また、本出願の抗原結合ポリペプチド又は組成物を治療を必要とする領域に局所的に投与することも必要であり、これは、例えば、手術中の局所的灌流、局所的適用、例えば、手術後の創傷ドレッシングとの組み合わせ、注射、カテーテル、坐剤、又は膜若しくは繊維を含む、多孔性、非多孔性、若しくはゲル状の材料であるインプラントによって、達成され得るが、これらに限定されない。好ましくは、本出願のタンパク質(抗体を含む)を投与する際には、タンパク質を吸収しない材料の使用に注意する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】YBODY抗体の構造概略図である。
図2】二重特異性抗体を介したHCT116とJurkat細胞結合作用の検出である。A:HCT116+Jurkat抗体を加えない陰性コントロールフローグラフであり、ここでQ1は、CFSE染色のJurkat細胞で、Q2は、共結合のJurkatとHCT116細胞で、Q3は、PKH26染色のHCT116細胞で、Q4は、無染色細胞である;B:HCT116+Jurkat+M701A 10μg/ml実験群フローグラフであり、各象限の特徴的意味は、前と同じである;C:異なる抗体を介したHCT116とJurkat細胞結合の濃度勾配曲線である。
図3】二重特異性抗体の生物学的活性検出(レポーター遺伝子系統)である。
図4】二重特異性抗体を介したインビトロ殺傷作用検出である。A:M701AによるB16-EpCAMのインビトロ殺傷;B:M701AによるB16のインビトロ殺傷;C:M701AによるHCT116のインビトロ殺傷;D:M701AによるOVCAR-3のインビトロ殺傷;E:異なる二重特異性抗体によるCHO-K1-huEpCAMのインビトロ殺傷、F:異なる二重特異性抗体によるHCT116のインビトロ殺傷。
図5】二重特異性抗体のHCT116ヒト由来結腸癌モデルにおけるインビボ薬効である。A:マウスの腫瘍体積の成長変化状況;B:マウスの体重変化状況。
図6】二重特異性抗体のOVCAR-3ヒト由来卵巣癌モデルにおけるインビボ薬効である。A:マウスの腫瘍体積の成長変化状況;B:マウスの体重変化状況。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の方法及び用途は、添付図面に関連して以下に説明されるが、例示は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。当業者にとって、本発明の構想を逸脱することなく、いくつかの簡単な推論又は置換を行うことができ、いずれも本発明の保護範囲に属すると見なすべきである。
【0053】
実施例1:二重特異性抗体の発現ベクターの構築
EpCAMとCD3を標的とする二重特異性抗体構造は、抗EpCAM結合領域と抗CD3結合領域を含み、単価ユニットは、抗EpCAM重鎖と軽鎖の対であり、一本鎖ユニットは、抗CD3のScFv-Fc形態であり、YBODY構造(図1)として定義され、ここで抗CD3のVLは、リンカーを介してヒンジ領域とCH2に連結される。ここで単価ユニットの重鎖Fcと一本鎖ユニット(ヒトIgG重鎖Fcを骨格とする)のFcは、それぞれが同二量体(homodimer)を形成しにくく、ヘテロ二量体(heterodimer)を形成しやすいようにアミノ酸変異改造されている。既存のプラスミド又は合成遺伝子断片をテンプレートとし、PCR及び重複PCRにより二重特異性抗体に対応する各鎖を増幅し、そして酵素結合又は組換えの方法により、各抗体鎖をpcDNA3.1ベクター(Invitrogen社)にクローニングした。抗体の各鎖の具体的な配列情報は、表1と配列表に示される。
【表8】
【0054】
実施例2:二重特異性抗体の表現と精製
従来のプラスミド抽出方法でプラスミドの抽出を行い、CHO-S細胞(Gibco由来)の化学トランスフェクションに用いる。トランスフェクション後の細胞は37℃で、5%CO揺動台の中で浮遊揺動培養を7~10日間行った。上清を3000g遠心分離により採取し、0.22μm濾過膜で濾過した。タンパク質A親和性クロマトグラフィーにより予備的に精製された二重特異性抗体を獲得し、280nmにおけるUV吸光度及び対応する消光系数により精製されたタンパク質濃度を測定し、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC-SEC)により抗体純度をテストし、各タンパク質の対応する発現量を計算した。二重特異性抗体分子の発現量は、40mg/L~91mg/Lであり、初期純度は、45%~81%であり、M701A、M701B、M701C、M701D、M701E、M701F、M701G、M701H、M701I、M701JとM701Kの発現量と初期純度は、いずれもM701より明らかに優れている。次に、陽イオン交換クロマトグラフィーにより親和性試料を精製し、最終的にHPLC-SEC純度>95%の二重特異性抗体を得て、それぞれの二重特異性抗体の精製回収率は、表2に示される。
【表9】
【0055】
実施例3:二重特異性抗体の熱安定性検出
各二重特異性抗体の精製試料を緩衝液(25mMクエン酸+50mM NaCl、pH6.0)で0.5mg/mlに希釈し、100μL/チューブで1.5mL EPチューブに分注し、40℃の水浴に入れて14日間の熱加速実験を行い、純度と親和性の変化状況を検出した。40℃の水浴に入れる当日はD0として計数し、14日目はD14とした。
【0056】
アミノカップリング方法を採用してそれぞれヒトEpCAM(SB、Cat: 10694-H08H)とヒトCD3抗原(SB、Cat: CT038-H2508H)をCM5チップに固定し、抗原カップリング量は1500RUで、抗原端結合活性を検出する時、1×HBS-EP+bufferでサンプルを開始濃度まで希釈し、更に2倍勾配で4つの濃度を希釈し、上機して低濃度から高濃度まで検出し、結合流速は30μL/min、結合時間は120s、解離時間は300sであり、pH1.5のGlycine溶液再生チップを用い、再生流速は10μL/min、再生時間は30sであった。検出終了後、ソフトウェアBiacore T200 Evaluation Softwareを用いて1:1 Bindingフィッティング方式で結果スペクトルに対してデータフィッティングを行い、解離平衡定数(KD)を得た。
【0057】
結果は、表3に示すように、M701A、M701B、M701H、M701I、M701J、M701Kの熱加速14日目の純度低下は、5%より小さく、その中でM701A、M701B、M701J、M701Kの純度変化は、2%より小さく、且つ両端の親和性は、基本的に変わらず、M701A、M701B、M701J、M701Kは良好な熱安定性があることを説明した。
【表10】
【0058】
実施例4:二重特異性抗体EpCAM末端細胞の親和性検出
FACS法を用いて、ヒト結腸癌細胞HCT116(中国科学院上海生命研究院)を細胞膜表面にヒトEpCAMを発現する陽性細胞とし、抗体と細胞表面のヒトEpCAMとの親和性を検出した。
【0059】
HCT116細胞を遠心分離して収集し、緩衝液中(PBS+1%FBS)に再懸濁し、2×10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに50μLウェルあたり加えた。その後、350×gで5min遠心分離した後に上清を除去した。二重抗体を緩衝液で1000nMに希釈し、倍比勾配希釈し、その後50μL/ウェルで96ウェルプレートに加え、再懸濁した後に光を避けて1hインキュベートし、遠心分離後に上清を除去し、緩衝液で2回洗浄した後にまた希釈したPE標識抗ヒトIgG Fc抗体(Biolegend、409304)中に再懸濁し、光を避けて30minインキュベートし、緩衝液で2回洗浄した後に100μL緩衝液中に再懸濁し、フローサイトメトリー(BD AccuriTMC6)に上機して検出した。
【0060】
各二重特異性抗体は、HCT116細胞と明らかな結合作用があり、ここでM700は、抗EpCAM末端マブ(mAb)コントロール(軽鎖SEQ ID NO:25と重鎖SEQ ID NO:26)であり、具体的なEC50値は、表4に示された。
【表11】
【0061】
実施例5:二重特異性抗体のCD3末端親和性の検出(Biacore)
アミノカップリング方法を採用してヒトCD3抗原(SB、Cat: CT038-H2508H)をCM5チップに固定し、抗原カップリング量は1500RUで、CD3抗原端結合活性を検出する時、1×HBS-EP+bufferでサンプルを開始濃度まで希釈し、更に2倍勾配で4つの濃度を希釈し、上機して低濃度から高濃度まで検出し、結合流速は30μL/min、結合時間は120s、解離時間は300sであり、pH1.5のGlycine溶液再生チップを用い、再生流速は10μL/min、再生時間は30sであった。検出終了後、ソフトウェアBiacore T200 Evaluation Softwareを用いて1:1 Bindingフィッティング方式で結果スペクトルに対してデータフィッティングを行い、解離平衡定数(KD)を得た。表5に示すように、シリーズ二重特異性抗体は、いずれもヒトCD3抗原と結合作用を有する。ここで、M701AとM701Bの抗EpCAM抗体可変領域配列は、同じ(SEQ ID NO:13とSEQ ID NO:14)であり、抗CD3抗体可変領域配列は、それぞれSEQ ID NO:18とSEQ ID NO:19であり、対応する親和性は、それぞれ21.15nMと28.27nMである。しかし抗EpCAM抗体可変領域配列は、別の種類(SEQ ID NO:15とSEQ ID NO:16)になり、抗CD3抗体可変領域配列は、やはりSEQ ID NO:18とSEQ ID NO:19であり、対応する二重特異性抗体M701HとM701Iの親和性は、それぞれ95.26nMと40.03nMである。これは、異なる抗EpCAM抗体と異なる抗CD3抗体を組み合わせて二重特異性抗体を形成し、親和性の表現に規則性がないことを説明した。
【表12】
【0062】
実施例6:二重特異性抗体を介した細胞ブリッジ作用
EpCAM陽性細胞株HCT116は、PKH26で染色し、CD3陽性細胞株Jurkat(中国科学院上海生命研究院)は、CFSEで染色し、染色後の細胞は、1:1の割合(1×10個のHCT116細胞:1×10個のJurkat細胞)で段階希釈した被測定抗体を加えて混合してインキュベートし、ここでM700は、抗EpCAMマブコントロール(軽鎖SEQ ID NO:25と重鎖SEQ ID NO:26)、M100は、抗CD3マブコントロール(軽鎖SEQ ID NO:27と重鎖SEQ ID NO:28)、Mco101は、抗ルシフェラーゼと抗CD3の二重特異性抗体であり、二重特異性抗体のCD3末端アイソタイプコントロールとする(軽鎖SEQ ID NO:29、重鎖SEQ ID NO:30と一本鎖SEQ ID NO:31、構造は図1と同じ)。1hインキュベートし、洗浄して再懸濁させた後、フローサイトメトリー(BD AccuriTMC6)に上機して検出し、CFSEとPKH26二重陽性細胞は、抗体架橋されたHCT116とJurkat細胞であった。
【0063】
結果は、図2に示すように、1:1の比率でJurkatとHCT116細胞を混合し、hIgG、M700、M100、Mco101を加えて1h作用させた後、HCT116とJurkat細胞は、架橋されなかった;M701AとM701Bを加えた後、架橋された細胞は、PKH26陽性細胞総数の40%前後を占め、M701AとM701Bの作用活性は相当であり、二重特異性抗体を介した細胞相互作用と抗体濃度は、正の量的効果関係を示した。
【0064】
実施例7:二重特異性抗体の生物学的活性検出(レポーター遺伝子法)
Jurkat-CD3-NFAT-RE-Luc細胞(Promega)を用いて二重特異性抗体の生物学的活性を検出した。ヒトEpCAM遺伝子(NCBI配列番号:NM_002354.3)をコードするDNAを含むpLV-puro (Inovogen Tech.Co., cat.No.VL3001)ベクターをCHO-K1細胞にトランスフェクションし、ヒトEpCAMを安定的に発現する細胞株CHO-K1-huEpCAMを得て、CHO-K1-huEpCAMを標的細胞として収集し、緩衝液(PBS+1%FBS)に再懸濁させ、4×10個の細胞/ウェルで全白96ウェル培養プレートに加え、37℃に置き、5%COインキュベータで18~24時間一晩培養し、プレート中の培地を除去し、ウェルあたり40μLの抗体希釈液を加えた。Jurkat-CD3-NFAT-RE-Luc細胞すなわちエフェクター細胞を取り出し、細胞を吹き飛ばし、単細胞懸濁液を作製し、効果標的比E:T=1.5:1により、全白96ウェル培養プレート内に、ウェル当たり40μL、すなわち6×10個/ウェルでプレートに敷き、全白96ウェル培養プレートを37℃に置き、5% COインキュベータで6時間培養し、ウェル当たり80μL Bio-Gloルシフェラーゼ検出液を加え、光を避けて室温で15分間培養し、多機能読み取り器に置き、化学発光で発光値を読み取った。
【0065】
結果は、図3に示すように、該レポーター遺伝子評価体系において、二重特異性抗体M701、M701A、M701B、M701H、M701I、M701J、M701Kは、いずれも生物学的活性を示し、M701A、M701J、M701Kの活性は、M701より強かった。
【0066】
実施例8:二重特異性抗体を介したインビトロ殺傷作用検出
分離して得られたPBMCをエフェクター細胞とし、EpCAM発現細胞を標的細胞として、二重特異性抗体を介したインビトロ殺傷作用を検出した。ヒトEpCAM遺伝子(NCBI配列番号:NM_002354.3)をコードするDNAを含むpLV-puro (Inovogen Tech.Co., cat.No.VL3001)ベクターをマウス黒色腫細胞B16細胞(中国科学院上海生命研究院)にトランスフェクションし、ヒトEpCAMを安定的に発現する細胞株B16-EpCAMを得て、ここで、B16はEpCAMを発現しない陰性細胞とした。その他のEpCAM発現の標的細胞は、ヒト結腸癌細胞HCT116(中国科学院上海生命研究院)、ヒト卵巣癌細胞OVCAR-3(CCTCC、中国典型培養物保存センター)及びCHO-K1-huEpCAMを含む。パンクレアチンで細胞を単細胞懸濁液に消化し、300g遠心5minして細胞を収集し、そして5μMヒドロキシフルオレセイン二酢酸塩スクシンイミジルエステル(5,6-carboxyfluorescein diacetate、succinimidyl ester、CFSE)で細胞を染色(37℃、15min)し、完全培地で2回洗浄した後にVi-cell細胞計数器で計数し、そして実験設計に従って96ウェルプレートに加え、ウェル当たり2×10個のセル/100μLであった。50μL/ウェルで対応する濃度の抗体を加え、hPBMCをCellometer細胞計数器で計数して96ウェルプレートに加えた(ウェル当たり2×10個のセル/50μL、効果標的比10:1)。細胞培養プレートを細胞インキュベータで72h培養し、細胞を単細胞懸濁液に消化した後、最終濃度が1μg/mLのヨウ化プロピジウム(Propidium iodide,PI)溶液に加え、10minインキュベートした後、フローサイトメトリー(BD AccuriTMC6)に上機して検出し、CFSE+PI+双陽性細胞のCFSE+陽性細胞における百分率を分析した。
【0067】
図4Aと4Bに示すように、M701Aは、EpCAM発現のあるB16-EpCAM細胞に対してのみ殺傷作用があり、EpCAM発現のないB16細胞に対しては殺傷作用がなく、コントロール抗体Mco101は、いかなる細胞に対しても殺傷作用がなく、これは、二重特異性抗体作用は標的性があることを説明した。図4C図4Dに示すように、M701Aは、HCT116とOVCAR-3細胞に対して明らかな殺傷作用があり、コントロールMco101より強かった。図4Eに示すように、二重特異性抗体M701A、M701B、M701H、M701Iは、いずれもCHO-K1-huEpCAM細胞に対して明らかな殺傷作用があり、M701AとM701Bの作用は、M701HとM701Iより明らかに強かった。図4Fに示すように、二重特異性抗体M701J、M701Kは、HCT116細胞に対して明らかな殺傷作用があり、殺傷のEC50は、いずれも7.814-25.43ng/mlであり、M701Jの殺傷レベルは、M701Aと明らかな差がなかった。上記二重特異性抗体の殺傷活性は、いずれもM701より明らかに強かった(M701のEC50は69.17ng/ml)。
【0068】
実施例9:二重特異性抗体のHCT116ヒト由来結腸癌の異位異種移植腫瘍モデルにおけるインビボ薬効
培養条件に従って十分な量のHCT116細胞とエフェクター細胞CIK(cytokine-induced killerは、サイトカインによって誘導される殺傷細胞で、ヒト末梢血単核細胞をインビトロで複数のサイトカインを用いて一定期間共同培養した後に得られる異種細胞の集団である。この種の細胞がCD3+とCD56+の2種類の膜タンパク質分子を同時に発現するため、NK細胞様Tリンパ球とも呼ばれる)を培養し、細胞を集めて計数した。それぞれのマウスの右側背部にあらかじめ混合したHCT116細胞(2×10細胞/匹)とCIK(2×10細胞/匹)を接種し、接種体積は0.1ml/匹で、ヒト由来結腸癌HCT116異種移植腫瘍モデルを確立した。接種1h後に投薬治療を開始した。実験は、試験薬M701A 2mg/kg群、M701A 1mg/kg群、M701 1mg/kg群、マブコントロールM700 2mg/kg群及び溶媒コントロール群(生理食塩水)に分けられ、各群は8匹のマウスであった。尾静脈内投与は、それぞれ接種後0、2、4日目に3回投与した。相対腫瘍抑制率と腫瘍完全消退率に基づいて治療効果を評価し、動物の体重変化と死亡状況に基づいて安全性を評価した。
【0069】
腫瘍サイズの計算式:腫瘍体積(mm)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径)。
【0070】
相対腫瘍抑制率TGI(%):TGI=1-T/C(%)。TとCは、それぞれ治療群とコントロール群のある特定の時点における腫瘍体積(TV)である。計算式は次の通りである:T/C%=TTV/CTV×100%(TTV:治療群の平均腫瘍体積;CTV:溶媒コントロール群の平均腫瘍体積)。
【0071】
腫瘍完全消去率(complete regression):治療中又は治療後の腫瘍の体積が63mm未満であると定義される。腫瘍完全消去率(%)=完全消去に達した動物群の数/該群の動物の総数×100%。
【0072】
図5Aに示すように、試験薬M701A(2mg/kg、1mg/kg)は、治療群において休薬後30日目(すなわち接種後33日目)に顕著な腫瘍抑制作用を示し、相対腫瘍抑制率TGI(%)はそれぞれ100%と93.82%であった。相対溶媒コントロール群は、統計学的に有意差があり(p値はいずれも<0.001)、両群の中でM701A(2mg/kg)群のすべての腫瘍は、完全消去標準に達した。M701Aは、この2つの用量での薬効はいずれも2mg/kgのM700(p値<0.001)より明らかに優れ、同じ用量でのM701Aの薬効は、M701(いずれも1mg/kg)より明らかに優れた。図5Bに示すように、治療過程中に動物の体重低下がなく、薬物毒性の表現が見られなかった。
【0073】
同じ腫瘍モデルにおいて、M701B、M701JとM701Kは、同じ用量でM701Aと類似した腫瘍抑制効果を示し、且つ体重は低下しなかった。
【0074】
実施例10:二重特異性抗体のOVCAR-3ヒト由来卵巣癌の異位異種移植腫瘍モデルにおけるインビボ薬効
十分な量のOVCAR-3細胞とエフェクター細胞CIKを培養条件に従って培養し、細胞を収集して計数した。それぞれのマウスの右側背部にあらかじめ混合したOVCAR-3細胞(1×10細胞/匹)とCIK(1×10細胞/匹)を接種し、接種体積は0.2ml/匹で、Matrigelゲル含量は50%(0.1ml/マウス)で、ヒト由来卵巣癌OVCAR-3異位移植腫瘍モデルを確立した。接種後1hに投与治療し、実験は、試験薬M701A(5mg/kg)、CD3末端アイソタイプコントロールMco101(5mg/kg)、マブコントロールM700(5mg/kg)群及び溶媒コントロール群(生理食塩水)に分けられ、各群は8匹のマウスであった。尾静脈内投与は、それぞれ接種後0、2、4日目に3回投与した。相対腫瘍抑制率(TGI)と腫瘍完全消退率に基づいて治療効果を評価し、動物の体重変化と死亡状況に基づいて安全性を評価した。
【0075】
図6Aに示すように、試験薬M701A(5mg/kg)は、治療群において休薬後44日目(すなわち接種後48日目)に顕著な腫瘍抑制作用を示し、相対腫瘍抑制率TGI(%)は98.97%であった。相対溶媒コントロール群は、統計学的にいずれも有意差があり(p値いずれも<0.001)、M701A(5mg/kg)群の腫瘍完全消去率は87.5%であり、該群の薬効は、5mg/kgのM700(TGI=70.42%)(p値<0.001)と5mg/kgのMco101(TGI=68.87%)(p値<0.001)より顕著に優れていた。図6Bに示すように、治療過程中に動物の体重低下がなく、薬物毒性の表現が見られなかった。
【0076】
同じ腫瘍モデルにおいて、M701B、M701JとM701Kは、同じ用量でM701Aと類似した腫瘍抑制効果を示し、且つ体重は低下しなかった。
【0077】
本発明で言及されているすべての文献は、いずれも本出願において参照として引用され、各文献が参照として単独して引用されるようである。また、本発明の上記教示を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解すべきである。
【表13】









【表14】



図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024540461000001.app
【国際調査報告】