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  • 特表-頭頸部がんの治療方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】頭頸部がんの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4155 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/4155
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529272
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022129571
(87)【国際公開番号】W WO2023088105
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/279,985
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg.8,No.8 Life Park Rd.,ZGC Life Science Park,Changping Dist.,Beijing,PRC,102206
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、レンビン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、キャリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
頭頸部がんの治療方法を提供する。この方法は、それを必要とする患者に、有効量のグナグラチニブ又は薬学的に許容される塩を投与することを含む。この方法は、口腔、副鼻腔、咽頭、喉頭及び鼻咽頭の粘膜表面から生じる扁平上皮細胞がんの治療に有効である。好ましい投与ルートは、経口投与である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭頸部がんを治療する医薬の製造における、グナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物の使用。
【請求項2】
グナグラチニブが経口製剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1日用量10~30mgのグナグラチニブを前記患者に投与する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記患者のがん病変のサイズを低減させる、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
患者の頭頸部がんの治療方法での使用のための、グナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物。
【請求項6】
頭頸部がんの治療方法であって、必要とする患者に、有効量のグナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要とする対象に有効量のグナグラチニブ又は薬学的に許容される塩を投与することによる、頭頸部がんの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭頸部がんは、疼痛、外見の変形、機能不全、心理社会的苦難及び死亡に関連する。頭頸部がんは、2018年では世界中で7番目に多いがんであり(890,000人が新たに発症し、450,000人が死亡)、米国における全てのがんの3%及び全がん死の1.5%余りを占めた(Chow, L, N. Engl. J. Med., 382:1, 60-72, 2020参照)。
【0003】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)スーパーファミリーに属する。FGFRは、構造的に、膜外のリガンド結合ドメイン、1回膜貫通ドメイン及び膜内のチロシンキナーゼからなる。FGFRは、高い親和性でリガンドと結合し、下流のSTAT3、MAPK及びPI3K/AKTシグナル伝達カスケードを開始し、器官形成、血管新生、細胞増殖、遊走及び抗アポトーシスのようないくつかの生物学的プロセスに関与する。FGFRシグナル伝達経路の変更は、腫瘍発生において重要な役割を果たし、治療薬の標的となる可能性がある。FGF/FGFR経路の異常はがん促進因子であることから、FGFRを標的とする治療法は臨床研究の新たな領域となってきた。
【0004】
FGFRは、FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4という4つのサブタイプを含み、これらは組織特異的に発現する。FGFR1は主として中胚葉起源の組織で発現し、FGFR2は内胚葉起源の組織で発現し、FGFR3は神経発生中及び神経組織で高度に発現し、FGFR4は、肝臓、胆嚢、肺、腎臓及び筋肉組織内に分布し、内胚葉発生中に高度に発現する。FGF/FGFRの異常な活性化は、いくつかの固形がん及び血液がんで生じ、胆管がん、並びに膀胱、子宮内膜、乳房、胃、肺及び卵巣のがんの促進因子として特定されてきた。
【0005】
非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、膀胱がん、子宮内膜がん、前立腺がん、子宮頸がん、結腸がん、食道がん、骨髄腫及び黒色腫などといったさまざまな腫瘍は、FGF/FGFR発現及び活性化と密接に関係する(Clin. Cancer Res. 2012, 18, 1855)。研究により、非小細胞肺がんの20%でFGFR1の増幅があり、胃がんの約5%でFGFR2の増幅があり、非浸潤性膀胱がんの約70%でFGFR3の変異があり、肝臓がんではFGFR4が増幅されることが示された(PloS One 2012, 7, e36713)。したがって、FGFRを標的とする阻害剤の開発は、抗腫瘍薬研究において注目の話題である(Drug Disc. Today 2014, 19, 51)。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、グナグラチニブで少なくとも2サイクル治療した7人の頭頸部がん患者の結果を示す。それぞれのサイクルは21日である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
定義
「頭頸部がん」は、主要な解剖学的部位:口腔、副鼻腔、咽頭、喉頭及び鼻咽頭の粘膜表面から生じる扁平上皮細胞がんを指す。口腔は、唇、頬粘膜、前舌、口腔底、硬口蓋、上下の歯肉及び臼後三角を含む。咽頭は、鼻咽頭(鼻腔の後ろ)、中咽頭(扁桃領域、舌根、軟口蓋及び後咽頭壁を含む)及び下咽頭(梨状陥凹、喉頭の後面及び輪状後部、並びに下後及び下外側の咽頭壁を含む)を含む。喉頭は、声門上喉頭、声門喉頭(真声帯並びに前及び後交連)及び声門下喉頭を含む。鼻腔及び副鼻腔は、上顎、篩骨、蝶形骨及び前頭洞を含む。
【0008】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、原子結合の性質若しくは配列又は原子の空間的配置が異なる化合物を指す。原子空間が異なって配置されている異性体を、「立体異性体」という。立体異性体は、光学異性体、幾何異性体及び配座異性体を含む。
【0009】
「同位体」は、原子数が同じで質量数が異なる原子を含む。本発明の化合物への組み込みに好適な同位体の例は、例えば、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clであるがこれらには限定されない、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素である。本発明の同位体標識化合物は、概して、当業者に知られている従来技術によって又は実施例で説明する方法と類似の方法によって、非同位体標識試薬に代えて適切な同位体標識試薬を使用して製造できる。H(重水素)のような安定同位体は、生物学的特性、薬理学的特性又は薬物動態特性の変更に有利である。
【0010】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下、in vivoで、例えば酸化、還元、加水分解などによって生物学的に活性な化合物に変換できるグナグラチニブの誘導体を指し、酵素を使用して又は酵素の関与なしに行われる。プロドラッグの例は、本発明の化合物中のアミノ基が、エイコシルアミノ、アラニルアミノ、ピバロイルオキシメチルアミノのようにアシル化、アルキル化若しくはリン酸化されているか、例えば、アセトキシ、パルミトイルオキシ、ピバロイルオキシ、スクシニルオキシ、フマリロキシ、アラニルオキシ等のように、ヒドロキシ基が、アシル化、アルキル化、リン酸化若しくはボレートに変換されているか、カルボキシル基がエステル化若しくはアミド化されている担体分子であるか、又は、ペプチドのようにチオール基が標的に及び/若しくは細胞の細胞質ゾルに薬物を選択的に送達する基とジスルフィド架橋を形成するものである。これらの化合物は、本発明の化合物から公知の方法で製造できる。
【0011】
「薬学的に許容される塩」は、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む薬学的に許容される塩基又は酸によって作られた塩を指す。例えば、薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩を含む。そのような塩のより具体的な例は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又は無機若しくは有機酸との付加塩を含む。好適な酸の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、及び当業者に公知の他の酸を含む。
【0012】
本発明は、頭頸部がんの治療方法を提供する。この方法は、それを必要とする患者に、有効量のグナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物を投与することを含む。
【0013】
グナグラチニブはINN名(国際一般名)であって、化学名は、(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドであり、その構造を以下に示す。
【0014】
【化1】
【0015】
有効量は、FGFRの機能を阻害し、頭頸部がんの治療に有効な、グナグラチニブの量を指す。
【0016】
医薬組成物
本発明は、1種以上の薬学的に許容される担体とグナグラチニブの活性化合物とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物中の活性化合物は、概して、注射用製剤では約0.1~5%、錠剤では約1~90%、カプセル剤では1~100%である。
【0017】
一態様では、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、注射用溶液、パッチ剤等といった剤形であってもよい。医薬組成物は、従来の方法によって調製できる。
【0018】
不活性成分である薬学的に許容される担体は、従来の基準で当業者が選択できる。薬学的に許容される担体は、非水系溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ミセル溶液及びゲルを含むが、これらには限定されない。薬学的に許容される担体は、生理食塩水及び電解質水溶液;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール及びデキストロースといったイオン性及び非イオン性浸透圧剤;水酸化物の塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩といったpH調整剤及び緩衝剤;トロラミン;重亜硫酸塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルの、塩、酸及び/又は塩基といった抗酸化剤;ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールを含むがこれらには限定されないリン脂質、レシチンのような界面活性剤;ポロキサマー及びポロキサミン、ポリソルベート80、ポリソルベート60及びポリソルベート20のようなポリソルベート、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリエーテル;ポリビニルアルコール及びポビドンのようなポリビニル;結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにそれらの塩といったセルロース誘導体;鉱油及び白色ワセリンのような石油派生物;ラノリン、ピーナッツ油、パーム油、大豆油のような脂肪;モノ、ジ及びトリグリセリド;カルボキシポリメチレンゲル及び疎水的に修飾された架橋アクリレートコポリマーのようなアクリル酸ポリマー;デキストランのような多糖、及びヒアルロン酸ナトリウムのようなグリコサミノグリカン;キサンタンガム及びカラギーナンを含むがこれらには限定されない、成分も含有してもよい。そのような薬学的に許容される担体は、周知の保存剤を使用して細菌汚染に対して保存されてもよく、これらは、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール並びにフェニルエチルアルコールを含むがこれらに限定されず、又は単回若しくは複数回使用のいずれかのために保存剤を含まない製剤として製剤化してもよい。
【0019】
例えば、活性化合物の錠剤又はカプセル剤は、生物活性も活性化合物とも反応しない他の賦形剤を含有してもよい。錠剤又はカプセル剤の賦形剤には、フィラー、結合剤、滑沢剤及び流動促進剤、崩壊剤、湿潤剤、並びに放出速度調節剤を含んでもよい。結合剤は、製剤の粒子の接着を促進し、錠剤にとって重要である。錠剤又はカプセル剤の賦形剤の例は、カルボキシメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラヤガム、デンプン、トラガカントガム、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、ポリ(アクリル酸)及びポリビニルピロリドンを含むがこれらには限定されない。例えば、錠剤は、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、ポリエチレングリコール、デンプングリコール酸ナトリウム及び/又は二酸化チタンといった不活性成分を含有してもよい。カプセル剤は、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム及び/又は二酸化チタンのような不活性成分を含有してもよい。
【0020】
使用方法
本発明は、患者における頭頸部がんの方法に関する。グナグラチニブは、薬学的に許容される担体を更に含有する医薬組成物の形態で投与できる。本発明の方法は、それを必要とする患者に、有効量のグナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物を投与することを含む。
【0021】
この方法は、最初に頭頸部がんに罹患している対象を特定する工程を含み、対象に有効量のグナグラチニブを投与する工程も含む。
【0022】
この方法は、口腔、副鼻腔、咽頭、喉頭及び鼻咽頭の粘膜表面から生じる扁平上皮細胞がんの治療に有効である。
【0023】
この方法は、遺伝子変異、増幅、転位/融合、挿入/欠失及びタンパク質の過剰発現を含むがこれらには限定されない、FGF/FGFRシグナル伝達経路の異常によって引き起こされた頭頸部がんを治療する。例えば、この方法は、FGF3、FGF4及び/若しくはFGF19の増幅、並びに/又はFGFR(例.FGFR1/2/3/4)の過剰発現を治療する。
【0024】
本発明は、患者の頭頸部がんを治療する医薬の製造における、グナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物の使用を提供する。
【0025】
本発明は、患者の頭頸部がんの治療方法での使用のための、グナグラチニブ、そのプロドラッグ、安定同位体誘導体、薬学的に許容される塩、立体異性体又はそれらの混合物を提供する。
【0026】
本発明の医薬組成物は、局部的投与及び全身投与によって適用できる。局部的投与は、局所投与を含む。全身投与は、経口、非経口(例.静脈内、筋肉内、皮下、直腸)及び他の全身投与ルートを含む。全身投与では、活性化合物は最初に血漿に到達し、次いで、標的組織に分布する。経口投与は、本発明のための好ましい投与ルートである。
【0027】
組成物の投薬は、傷害及びそれぞれの患者の応答の程度、並びに他の治療剤の使用を含む他の治療的処置との併用の可能性に基づいて変動できる。
【0028】
概して、ヒト対象に経口的に投与されるグナグラチニブの有効量は、1日当たり約5~50mg、好ましくは1日当たり10~30mgである。1日投薬量は、1回で投与しても、等量投与のように2~4回に分けて投与してもよい。
【0029】
一態様では、医薬組成物は対象の皮下に投与される。
【0030】
上述した方法のいずれかにおいて対象にグナグラチニブを投薬する期間は、例えば、約1~2週間から対象の残りの寿命にまで及ぶことができる。グナグラチニブは、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40若しくは50週間、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、11若しくは12月間、又は少なくとも1~2年間、投薬できる。
【0031】
当業者であれば、多種多様な送達機序も本発明に好適であることを認識する。
【0032】
本発明は、ヒト、ウマ及びイヌのような哺乳動物の治療に有用である。本発明は、ヒトの治療に特に有用である。
【0033】
以下の例は、本発明を更に例証するものである。これらの例は、本発明を例証することが意図されているにすぎず、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【実施例
【0034】
実施例1 グナグラチニブで治療した頭頸部がん患者
目的
試験は、患者の頭頸部がんを治療するために経口的に投与したグナグラチニブの効能を評価することである。
【0035】
主要な包含基準:
参加者は、以下の基準の全てが当てはまる場合にのみ、治験に参加するのに適格性を有する:
1.難治性若しくは再発性である組織学的に確認された切除不能な若しくは転移性の進行性悪性固形腫瘍を持つ、全ての標準治療レジメンに不寛容な、又は利用可能な標準治療がない、患者(用量漸増パート)。
2.組織学的に若しくは細胞学的に確認された、切除不能な、再発性若しくは転移性の胆管がんを持つ(AJCC<2017バージョン8>TNM病期IV)、第一選択化学療法に不寛容な(少なくとも2サイクルの化学療法が必要とされる)、又はネオアジュバント/アジュバント化学療法後6月以内に進行した/再発した、患者(用量拡大パート)。
3.既存の試験報告書がFGFR2遺伝子転座/融合を確認した、又は中央検査室がFGFR2遺伝子転座/融合を検出した(用量拡大パート)。
4.年齢18歳以上75歳以下。
5.固形がんの治療効果判定のためのガイドライン、バージョン1.1(RECIST 1.1)に従い、少なくとも1つの評価可能病変(用量漸増パート)及び少なくとも1つの測定可能病変(用量拡大パート)。
6.ECOGパフォーマンスステータス0~1(用量漸増パート);ECOGパフォーマンスステータス0~2(用量拡大パート)。
7.3月を超える平均余命。
8.以下の適正な臓器機能を有さなくてはならない:
a)骨髄: 絶対好中球数(ANC)1.5×10/L(1500/mm)以上、血小板75×10/L以上、ヘモグロビン90g/L(9g/dL)以上。
b)凝固: プロトロンビン時間(PT)、国際標準化比(INR)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、全て1.5×正常上限(ULN)以下。
c)肝臓: 血清ビリルビンは1.5×ULN以下(腫瘍が肝臓に転移している場合、2.5×ULN以下)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスアミナーゼ(ALT)は3×ULN以下(腫瘍が肝臓に転移している場合、5×ULN以下)。
d)血清クレアチニンが1.5×ULN以下、又はクレアチニンクリアランスが60mL/分を超える(コッククロフト・ゴールト式で算出)。
9.自主的に参加し、インフォームドコンセントに署名し、並びに治験計画及び予定された訪問に準拠する。
【0036】
主な除外基準:
参加者は、以下の基準のいずれかが当てはまる場合、治験から除外される:
1.選択的汎FGFR分子阻害剤又は抗体薬(例.エルダフィチニブ、ペミガチニブ、インフィグラチニブ、ロガラチニブ、デラザンチニブ、HMPL-453、3D185、ECO317、E7090等)による治療歴がある。
2.治験薬の初回投与前2週間以内に経口フルオロウラシル化学療法を受け、かつ、4週間以内に、化学療法(経口フルオロウラシル化学療法を除く)、放射線療法、ホルモン又は標的化化合物及びバイオ医薬を含む全身又は局部的抗がん治療を受けた。
3.治験薬の初回投与前、6週間以内の大手術(開胸術、開腹術等)又は2週間以内の小手術(表在性皮膚手術、リンパ節切除術、ヘルニア修復術等)。
4.医学的な治療にもかかわらず、治験薬の初回投与前2週間以内に、患者のリン酸塩のレベルがULNを超え続ける。
5.薬物摂取、輸送又は吸収に影響する可能性がある臨床的に著しい胃腸機能不全(例.嚥下困難、慢性下痢、腸閉塞等)の患者。
6.症候性の中枢神経系転移が判明している。治療が適格となった後4週間以上、症候性の中枢神経系転移がないか、安定疾患でもない。
7.・ 治験薬の初回投与前6月以内に、ニューヨーク心臓協会(NYHA)グレードII以上の、うっ血性心不全、不安定狭心症又は心筋梗塞。
・ スクリーニング時における治療を必要とする不整脈又は左室駆出分画(LVEF)が50%未満。
・ 長期にわたる臨床的に著しいQTc間隔、又はスクリーニング時におけるQTc間隔が470ms超(女性)及び450ms超(男性)。
を含む制御されていない心血管疾患の病歴があるか、現在も継続している。
8.治験薬の初回投与前、6月以内の活動性の出血、2月以内の胃食道静脈出血に至る門脈圧亢進症の兆候、又は明らかな出血傾向(例.食道静脈瘤、局部的活動性潰瘍病変等)があると治験責任医師が確信する。
9.治験責任医師の裁量で、重度の若しくは制御されていない全身疾患の証拠(例.不安定又は非代償性の肺、肝臓若しくは腎臓疾患);又はいずれかの不安定全身疾患(臨床的に重度の活動性感染症、制御されていない高血圧症、又は肝臓、腎臓若しくは代謝性疾患を含む)。
10.間質性肺疾患、肺塞栓症及び深部静脈血栓症の病歴(フェーズI:用量漸増)。
11.治験薬の投与前6月以内に脳卒中又は頭蓋内出血の病歴。
12.臓器移植の経験又は同種造血幹細胞移植の経験(フェーズI:用量漸増)。
13.a)現在中心性漿液性網膜症(CSR)若しくは網膜静脈閉塞(RVO)に罹患しているか、関連する病歴がある。
b)活動性滲出型及び老人性黄斑変性症(AMD)。
c)黄斑浮腫を伴う糖尿病網膜症。
d)制御できない緑内障。
e)角膜炎、角結膜炎、角膜症、角膜剥離、炎症又は潰瘍といった角膜症。
を含むがこれらには限定されない、眼毒性を増大させる可能性がある角膜又は網膜の異常の現在の証拠。
14.活動性B型肝炎ウイルス(HBV DNA>PCRで確認したULN)、活動性C型肝炎、又はHIV感染症。
15.以前の治療の可逆的毒性(グレード1超)(脱毛症、制御可能な悪心及び嘔吐を除く)から回復していない。
16.妊娠中又は授乳中の女性、及びスクリーニングから治験薬投与終了の6月後まで避妊を行うことを望まない又はできない、妊娠の可能性がある女性;並びに、スクリーニングから治験薬投与終了の12週間後まで避妊を行うことを望まない又はできない、生殖能力のある男性。
17.この治験への参加に不適切であると治験責任医師が判断する他の条件。
【0037】
用量及び投与モード:
患者を、21日サイクルにつき1日1回、14mg、16mg、18mg又は22mgのグナグラチニブで治療する。患者を2サイクルごとに21日目に評価する。
【0038】
評価方法
米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスは、がん患者の機能的状態の単純な尺度である。
スコア0: 完全に活動的、疾患前の全ての業務を制限なく続行できる
スコア1: 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能であり、軽い作業又は座り仕事、例えば、軽い家事、事務作業を行うことができる
スコア2: 歩行可能であり、全てのセルフケアができるが、いかなる作業活動も行うことができない。起きている時間の約半分以上は元気に動ける
スコア3: 限られたセルフケアのみができ、起きている時間の半分以上、ベッド又は椅子で過ごす
スコア4: 完全に身体的障害がある。いかなるセルフケアも行うことができない。一日中、ベッド又は椅子で過ごす
スコア5: 死亡している
【0039】
固形がんの治療効果判定のためのガイドライン
ベースライン時に、腫瘍病変/リンパ節を、以下のように測定可能又は測定不能に分類する:
【0040】
測定可能
腫瘍病変:
・ CTスキャンにより10mm(CTスキャンスライス厚5mm以下;イメージングガイダンスについてはAppendix IIを参照)。
・ 臨床検査により10mm(キャリパー測定、キャリパーで正確に測定できない病変は測定不能として記録)。
・ 胸部X線により20mm
の最小サイズを持つ少なくとも1つの次元(測定面の最長径を記録する)で正確に測定されなくてはならない。
悪性リンパ節: 病理学的に拡大した及び測定可能であるとみなされるためには、リンパ節は、CTスキャンによって測定した場合に短軸がP15mmでなくてはならない(CTスキャンスライス厚は5mm以下を推奨)。ベースライン時及びフォローアップ中、短軸のみが測定及び準拠される。リンパ節測定に関する情報については、以下の「標的及び非標的病変のベースライン記録」にも留意。
【0041】
測定不能
小さい病変(最長径が10mm未満又は病理学的リンパ節の短軸がP10~15mm未満)及び真に測定不能な病変を含む全ての他の病変。再現可能なイメージング技術によって測定不能で、身体検査によって特定された、軟髄膜疾患、腹水、胸膜又は心嚢液貯留、炎症性乳房疾患、皮膚又は肺のリンパ管性関与、腹部腫瘤/腹部臓器肥大症を含む、真に測定不能とみなされる病変。
【0042】
評定方法
臨床病変: 臨床病変は、それらが表在性及びキャリパーを使用して特定した際に直径がP10mmである場合、測定可能とみなされるだけである(例.皮膚結節)。皮膚病変の事例では、病変のサイズを推定するためのルーラーを含むカラー写真撮影による記録が示唆される。臨床検査及びイメージングの両者によって病変を評価できる場合、イメージング評価に着手するべきである。
CT、MRI: CTは、現在利用可能な最良の方式であり、応答評定のために選択された病変を測定するための再現可能な方法である。この指針は、CTスライス厚が5mm以下であるという想定に基づき、CTスキャンにおける病変の測定可能性を定義したものである。CTスキャンが5mmよりも大きいスライス厚の場合、測定可能病変についての最小サイズは、スライス厚の2倍となるはずである。MRIも、ある特定の状況において(例.ボディスキャンのために)許容される。
【0043】
標的病変の評価
完全奏効(CR): 全ての標的病変の消失。いかなる病理学的リンパ節(標的であるか非標的であるかにかかわらず)も短軸が10mm未満に減少しなくてはならない。
部分奏効(PR): ベースライン直径の和を基準として、標的病変の直径の和における少なくとも30%の減少。
進行性疾患(PD): 治験における最小の和(これは、治験において最小である場合のベースラインの和を含む)を基準として、標的病変の直径の和における少なくとも20%の増大。20%の相対的な増大に加えて、和は、少なくとも5mmの絶対的な増大も示さなくてはならない。1つ以上の新たな病変の出現も、進行とみなされる。
安定疾患(SD): PRに適格となるための十分な収縮(ベースラインと比較して)又はPDに適格となるための十分な増大(治験中の最小直径和を基準として)のいずれもない。
客観的奏効率は、完全奏効(CR)及び部分奏効(PD)の患者の数を、患者の総数で割ることによって算出する。
病勢制御率(DCR)は、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)及び安定疾患(SD)の患者の数を、患者の総数で割ることによって算出する。
【0044】
頭頸部患者
7人の頭頸部がん患者を、少なくとも2サイクル治療した。結果を図1に示す。患者23、28、38は、FGF3、4、19リガンド増幅がある。患者25は、FGFR2における変異C383Rがある。患者32は、FGFR2における変異R450Hがある。患者34は、FGFR1-P150Sサブクローニングがある。患者37は、FGF3/4/6/12/19/23増幅がある。
【0045】
結果
7人の患者の結果を図1に示す。患者25、34、37及び38は、治療が継続中である。
患者25は、4~22サイクルの治療後に、42%を上回るがん病変の減少という部分奏効(PR)を一貫して示す。
患者37は、2、4及び8サイクルの治療後に、それぞれ33.8%、30%及び37%のがん病変の減少というPRを示す。
患者34は、2~8サイクルの治療後に安定疾患(SD)を示し、10サイクルの治療後にPRを示す。
3人の患者(23、28及び38)は、治療後に安定疾患(SD)を示す。
患者32は、進行性疾患(PD)を示す。
【0046】
これらの説明は、本発明の好ましい態様について説明するものであること、及び、特許請求の範囲で明記した本発明の範囲から逸脱することなく、修正がその中でなされてもよいことを理解されたい。
図1
【国際調査報告】