(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サスペンション装置およびサスペンション装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20241024BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60G17/015 B
F16F9/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529285
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022081961
(87)【国際公開番号】W WO2023088882
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021129863.6
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263902
【氏名又は名称】ハセ・エンド・ブレーデ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Hasse & Wrede GmbH
【住所又は居所原語表記】Georg-Knorr-Strasse 4, 12681 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュタイドル
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA74
3D301AA77
3D301DA01
3D301DA31
3D301DA33
3D301DB35
3D301DB55
3J069AA50
3J069EE01
3J069EE53
3J069EE62
(57)【要約】
基部(2)および上部構造体(3)を備えた車両、特に商用車のためのサスペンション装置(1,1’)であって、サスペンション装置(1)が、少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6,6’)とを含み、少なくとも1つの第1のばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6,6’)とが、一方ではそれぞれ上部構造体(3)に、他方では基部(2)に結合されている、サスペンション装置(1,1’)が提供され、少なくとも1つのイナータ(6)が、作動装置(SE)を有している。サスペンション装置(1)を制御する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(2)および上部構造体(3)を備えた車両、特に商用車のためのサスペンション装置(1,1’)であって、該サスペンション装置(1)が、少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6,6’)とを含み、前記少なくとも1つのばね(4)と、前記少なくとも1つのダンパ(5)と、前記少なくとも1つのイナータ(6,6’)とが、一方ではそれぞれ前記上部構造体(3)に、他方では前記基部(2)に結合されている、サスペンション装置(1,1’)において、前記少なくとも1つのイナータ(6)が作動装置(SE)を有していることを特徴とする、サスペンション装置(1,1’)。
【請求項2】
前記作動装置(SE)の第1の位置において、前記イナータ(6)の第1の運転状態が設定されており、該第1の運転状態において、前記イナータ(6)が第1の質量慣性を有しており、前記作動装置(SE)の第2の位置において、前記イナータ(6)の第2の運転状態が設定されており、該第2の運転状態において、前記イナータ(6)が前記第1の質量慣性とは異なる第2の質量慣性を有していることを特徴とする、請求項1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項3】
前記作動装置(SE)が、異なる質量慣性を有する前記イナータ(6)の3つ以上の運転状態に一致する3つ以上の位置を有していることを特徴とする、請求項1または2記載のサスペンション装置(1)。
【請求項4】
前記作動装置(SE)が、2つの位置の間で段階的に中間位置を有しているか、または無段階の位置調節を有していることを特徴とする、請求項3記載のサスペンション装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1のイナータ(6)が、少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を備えた液圧式のイナータ(6)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項6】
前記作動装置(SE)が、作動機構(20,20’)を備えた少なくとも1つのバイパス(19,19’)を有しており、前記少なくとも1つのバイパス(19,19’)が、前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を前記作動機構(20,20’)の1つの位置では迂回し、前記作動機構(20,20’)の別の位置では閉じられていることを特徴とする、請求項5記載のサスペンション装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのバイパス(19,19’)の作動機構(20,20’)が、閉じた状態と開いた状態とを有しており、または前記閉じた状態から開いた状態へかつ開いた状態から閉じた状態への段階的または無段階の移行を有していることを特徴とする、請求項5または6記載のサスペンション装置(1)。
【請求項8】
前記イナータ(6)が、作動装置(SE)として少なくとも1つの電動モータ(21)を有しており、該電動モータ(21)が、前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)のフライホイール(18,18’)に直接または間接的に連結されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項9】
前記イナータ(6)が、前記作動装置(SE)を形成する可変の慣性モーメントを有するフライホイール(18,18’)を備えた少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を有していることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイナータ(6)が、前記少なくとも1つのばね(4)および前記少なくとも1つのダンパ(5)に対して並列に配置されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのイナータ(6)が、前記少なくとも1つのダンパ(5)の機能を統合して有していることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのばね(4)が、調節不能なばねであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)。
【請求項13】
基部(2)と、上部構造体(3)とを備えた車両、特に商用車のための、請求項1から12までのいずれか1項記載のサスペンション装置(1)を制御するための方法であって、前記サスペンション装置(1)が、少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6)とを含み、前記少なくとも1つのばね(4)と、前記少なくとも1つのダンパ(5)と、前記少なくとも1つのイナータ(6、6’)とが、一方ではそれぞれ前記上部構造体(3)に、他方では前記基部(2)に結合されている、方法において、
VS1)少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、作動装置(SE)を備えた少なくとも1つのイナータ(6)とを備えたサスペンション装置(1)を準備するステップであって、前記イナータ(6)は、所属する車両の空の積載状態に適合している第1の質量慣性を有する第1の運転状態にある、ステップと、
VS2)前記作動装置(SE)を用いて、前記イナータ(6)を、所属する車両の部分積載に適合している第2の質量慣性を有する第2の運転位置へと位置調節するステップと、
VS3)前記作動装置(SE)を用いて、前記イナータ(6)を、所属する車両の満載状態に適合している第3の質量慣性を有する第3の運転位置へと位置調節するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項14】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記作動装置(SE)を用いて1つの運転状態から別の運転状態へと段階的に、または/かつ無段階に実施することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記イナータ(6)のフライホイール装置(12,12’)に連結されている電動モータ(21)の形態の前記作動装置(SE)を用いて行うことを特徴とする、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記イナータ(6)の前記フライホイール装置(12,12’)に連結された前記電動モータ(21)が、前記サスペンション装置(1)のレベリングを実施することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記イナータ(6)の前記フライホイール装置(12,12’)を発電機モードに切り換え、したがって同時に、電気的なエネルギの回生、エネルギハーベスティングおよび/または前記サスペンション装置(1)の減衰の最適な調節のためにフライホイール(18)を減衰することに使用することを特徴とする、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記作動装置(SE)を用いて前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)のフライホイール(18)の慣性モーメントを変更することにより行うことを特徴とする、請求項13から17までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載されたサスペンション装置に関する。本発明は、請求項10の前提部に記載された、このようなサスペンション装置の制御方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両、特に商用車の上部構造体またはボディをばね弾性的に支持するためのサスペンション装置は、様々な実施形態で知られている。
【0003】
例えば商用車への積載を補償するために、例えば互いに異なる剛性を有する2つ以上のばねが、互いに並列して使用される。
【0004】
空気ばねは圧縮空気供給部に接続されており、圧縮空気の圧力変化によってその剛性を変化させることができる。したがって、荷重が著しく変化した場合も(積み荷が満載された商用車と積み荷が積載されていない商用車との対比)、固有振動数は小さな範囲に留まることができる。
【0005】
図1は、従来技術によるサスペンション装置1’の概略的なシンボル図を示している。
【0006】
サスペンション装置1’は、基部2に対する上部構造体3をばね弾性的に支持する働きをする。図示の例では、上部構造体3は、車両(図示せず)のボディまたは台車本体であり、基部2は、ホイール懸架部または車両のアクスルである。
【0007】
座標zは、ここでは基部2に対して垂直に、例えば所属する車両の鉛直軸線に延びている。座標zは、基部に対する上部構造体の運動方向を明らかにする働きをする。
【0008】
上部構造体3は、この上部構造体3への積載に応じて異なる位置を占め、したがって基部2に対して異なる距離をとる。
【0009】
さらに上部構造体3は、例えば積降ろし過程のために上昇した位置と降下した位置とへ位置調節されることができる。サスペンション装置1’は、少なくとも1つのばね4と、少なくとも1つのダンパ5とを含んでいる。
【0010】
ばね4の第1のばね端部は、詳細に図示しない形式で基部2に取り付けられている。ばね4の第2のばね端部は、上部構造体3に取り付けられている。
【0011】
同様に、ダンパ5が、ばね4に対して並列に基部2と上部構造体3とに取り付けられている。
【0012】
ばね4は、通常、上部構造体3またはサスペンション装置1’の固有振動数をほぼ一定に保つために調節可能なばねとして、圧縮空気ばねとして形成されている。
【0013】
図2には、従来技術による液圧式のイナータ6’の概略的な斜視断面図が示されている。
【0014】
イナータは、機械的なネットワークを最適化するために比較的新たに開発された部材である。イナータ6’は、比較的小さな付加質量体を用いて、大きな慣性をシミュレートする。イナータの微分方程式は、コンデンサの電気技術的な微分方程式に相当する。
【0015】
以下では、液圧イナータ6’をイナータの例として説明する。別のイナータタイプ、例えば機械的なイナータも存在する。
【0016】
イナータの構造および機能形式の詳細な説明は、以下の文献から読み取ることができる。Fu-Cheng Wang等、“Inerter Nonlinearities and the Impact on Suspension Control”,2008年,American Control Conference、およびDavid J. Wagg,“A review of the mechanical inerter: historical context, physical realisations and nonlinear applications”,[online],2021年2月24日。
【0017】
液圧式のイナータ6’は、2つのチャンバ8,9を備えた液圧シリンダ7と、ピストン11を備えたピストンロッド10と、フライホイール装置12とを含んでいる。フライホイール装置12は、「弾み車(Fly Wheel)」とも呼ばれる。
【0018】
ピストンロッド10は、液圧シリンダ7の長手方向で液圧シリンダ7内に摺動可能に案内されて配置されている。ピストンロッド10の長手方向軸線10aは、液圧シリンダ7の長手方向軸線内に延びている。さらに、長手方向軸線10aは、座標zの方向に延びている。
【0019】
ピストン11がピストンロッド10上に配置されており、このピストンロッド10に固く結合されている。ピストン11は、液圧シリンダ7の内室をチャンバ8とチャンバ9とに分割している。これらのチャンバには、流体、例えば作動液が充填されている。
【0020】
各チャンバ8,9は、それぞれ1つの流入/流出開口8a,9aを有している。第1のチャンバ8の流入/流出開口8aは、第1のチャンバ8に連通する第1の流体管路13の第1の端部に接続されている。同様に、第2のチャンバ9の流入/流出開口9aは、第2のチャンバ9に連通する第2の流体管路14の第1の端部に接続されている。
【0021】
両流体管路13,14のそれぞれの第2の端部はフライホイール装置12に接続されており、これについては下記でさらに詳しく説明する。
【0022】
フライホイール装置12は、駆動装置チャンバ15aを有する駆動装置ハウジング15と、チャンバ17aを有するフライホイールハウジング17と、フライホイール18とを含んでいる。
【0023】
駆動装置チャンバ15aは、2つの流入/流出開口15b,15cを備えている。第1の流入/流出開口15bは、第1の流体管路13の第2の端部に接続されている。第2の流入/流出開口15cには、第2の流体管路14の第2の端部が接続されている。これにより、流体管路13,14は、フライホイール装置12の駆動装置ハウジング15の駆動装置チャンバ15aに連通している。
【0024】
駆動装置チャンバ15a内には、羽根車16が、フライホイール装置12の回転軸線12aを中心として回転可能に支承されて配置されている。回転軸線12aは、図示の例ではピストンロッド10、ひいては液圧シリンダ7の長手方向軸線10aに対して直角に延びている。
【0025】
駆動装置チャンバ15aは、その下面において底部により閉じられている。駆動装置チャンバ15aの上面は、フライホイールハウジング17により閉じられている。フライホイールハウジング17のチャンバ17a内には、フライホイール18が回転軸線12aを中心として回転可能に支承されて配置されている。
【0026】
フライホイール18は、ここでは例えば金属製の、所定の重量および慣性モーメントを有する円筒形のディスクである。
【0027】
フライホイール18は、駆動装置ハウジング15の上面およびフライホイールハウジング17の下面を通って延びる結合部(図示せず)を介して羽根車16に相対回動不能に結合されている。駆動装置チャンバ15aとフライホイールハウジング17のチャンバ17aとは、互いに対して封止されていてもよいし、または互いに連通していてもよい。
【0028】
イナータ6’は、イナータ取付け部6a,6bを備えている。イナータ取付け部6a,6bは、単に参照線によって示唆されている。第1のイナータ取付け部6aは、例えばピストンロッド10に位置しており、この場合に第2のイナータ取付け部6bは、液圧シリンダ7に取り付けられている。
【0029】
液圧式のイナータ6’の機能形式は、2つの接続点(例えば、イナータ取付け部6aにおけるホイールまたはアスクルであり、イナータ取付け部6bの他方の接続点は、ばね弾性的に支持された上部構造体3である)間の相対的な加速に抗して抵抗が作用するようになっている。
【0030】
抵抗は、作動液の押退けにより運動させられなければならないフライホイール18により成される。これは、この例では羽根車16を用いて行われ、羽根車16は、流体管路13,14と直列に、これらの流体管路13,14間に配置されている。ピストンロッド10がピストン11と一緒に液圧シリンダ7に対してz軸線の方向に(
図2において左側に向かって)摺動した場合に、ピストン11は液圧シリンダ7の第1のチャンバ8内の作動液を圧縮すると同時に、液圧シリンダ7の第2のチャンバ9内に負圧を発生させる。作動液は、第1のチャンバ8から第1の流体管路13を通ってフライホイール装置12の駆動装置ハウジング15の駆動装置チャンバ15a内に流れ、駆動装置チャンバ15aから第2の流体管路14内へと流れる。さらに、第2の流体管路14から、作動液は液圧シリンダ7の第2のチャンバ9内へ流れる。
【0031】
羽根車16は、フライホイール装置12の駆動装置チャンバ15a内で作動液の流れによって回転させられる。羽根車16は、その回転をフライホイール18に伝達する。
【0032】
フライホイール18の慣性により、かつ押し退けるべき作動液と、フライホイール18の回転数との間の比により、流れ抵抗が形成されている。この流れ抵抗は、イナータ6’の作動液の流れに抗する。
【0033】
微分方程式は、F=b*(\ddot(x_1)-\ddot(x_2))である。フライホイール18の慣性によって、かつ押し退けるべき流体とフライホイール18の回転数との間の比によって、抵抗(微分方程式の定数b)を調節することができる。概して、このようなシステムは、例えばすでにフォーミュラ1の車両において成功裏に使用されている。
【0034】
独国特許発明第3442622号明細書は、エアサスペンション装置の一例を示している。
【0035】
米国特許出願公開第2009/0139225号明細書は、液圧式のイナータメカニズムを記載している。
【0036】
提案されている解決手段は、実際に有効であると実証されている。しかし、改善されたサスペンション装置に対する需要は常に存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
したがって、本発明の課題は、改善されたサスペンション装置を提供することである。
【0038】
別の課題は、サスペンション装置を制御するための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記課題は、請求項1に記載の対象によって解決される。
【0040】
さらに、請求項13記載の方法によって、別の課題が解決される。
【0041】
本発明の思想は、切換え可能なイナータを従来のばねに対して並列に設置することにより、サスペンション装置において空気ばねを従来の(剛性が適合可能ではない)ばねに置き換えることである。
【0042】
基部および上部構造体を備えた車両、特に商用車のための本発明によるサスペンション装置であって、サスペンション装置が、少なくとも1つのばねと、少なくとも1つのダンパと、少なくとも1つのイナータとを含み、少なくとも1つの第1のばねと、少なくとも1つのダンパと、少なくとも1つのイナータとが、一方ではそれぞれ上部構造体に、他方では基部に結合されているサスペンション装置が提供され、少なくとも1つのイナータが、作動装置を有している。
【0043】
本発明の利点は、圧縮空気によって調節可能な空気ばねが不要になることである。したがって、圧縮空気供給も省くことができる。したがって、特に電気走行車両および/または電気機械式に制動する車両では、圧縮空気提供部(コンプレッサ)を省くことができる。これにより、コストを節約することができ、加えて、圧縮空気は、エネルギ消費に関して極めて非効率的である。
【0044】
作動装置によって、イナータは、切換え可能または制御可能なイナータであり、この切換え可能または制御可能なイナータを用いて、様々な積載状態への適合を簡単に行うことができる。
【0045】
基部および上部構造体を備えた車両、特に商用車のためのサスペンション装置を制御するための本発明に係る方法であって、サスペンション装置が、少なくとも1つのばねと、少なくとも1つのダンパと、少なくとも1つのイナータとを含んでおり、少なくとも1つのばねと、少なくとも1つのダンパと、少なくとも1つのイナータとが、一方ではそれぞれ上部構造体に、他方では基部に結合されている、方法が提供される。この方法は、方法ステップ、すなわち、VS1)少なくとも1つのばねと、少なくとも1つのダンパと、作動装置を備えた少なくとも1つのイナータとを備えたサスペンション装置を準備するステップであって、イナータが、所属する車両の空の積載状態に適合している第1の質量慣性を有する第1の運転状態にある、ステップと、VS2)作動装置を用いて、イナータを、所属する車両の部分積載に適合している第2の質量慣性を有する第2の運転状態へと位置調節するステップと、VS3)作動装置を用いて、イナータを、所属する車両の満載状態に適合している第3の質量慣性を有する第3の運転状態へと位置調節するステップと、を有している。
【0046】
サスペンション装置は、有利には、もはや圧縮空気接続部を必要としない。積載状態へ適合させる調節は、切換え可能または制御可能なイナータによって行われる。これにより、サスペンション装置の最適な運転状態を達成することができる。
【0047】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載されている。
【0048】
一構成では、作動装置の第1の位置において、イナータの第1の運転状態が設定されており、この第1の運転状態では、イナータが第1の質量慣性を有している。作動装置の第2の位置では、イナータの第2の運転状態が設定されており、この第2の運転状態では、イナータが、第1の質量慣性とは異なる第2の質量慣性を有している。イナータが簡単に切換え可能または位置調節可能であるので、このことは有利である。
【0049】
別の一構成では、作動装置が、異なる質量慣性を有するイナータの3つ以上の運転状態に一致する3つ以上の位置を有している。これにより、使用範囲の有利な拡張が可能である。
【0050】
さらに、使用範囲をさらに有利に拡張するためのさらに別の一構成では、作動装置が、2つの位置の間で段階的に中間位置を有しているか、または無段階の位置調節を有していることが規定されている。
【0051】
一構成では、少なくとも1つのイナータが、少なくとも1つのフライホイール装置を備えた液圧式のイナータである。この構造は、有利にはコンパクトである。
【0052】
さらに、作動装置が、作動機構を備えた少なくとも1つのバイパスを有しており、少なくとも1つのバイパスが、少なくとも1つのフライホイール装置を作動機構の1つの位置では迂回し、作動機構の別の位置では閉じられていることが規定されている。このような作動機構は、例えば調節可能な絞りまたは電磁弁であってよい。これは、絞りまたは電磁弁が、高い品質を有する市販の構成部品であるので有利である。
【0053】
少なくとも1つのバイパスの作動機構が、閉じた状態と開いた状態とを有しているか、または閉じた状態から開いた状態への、かつ開いた状態から閉じた状態への段階的または無段階の移行を有している場合に、多数の位置を有する調節可能性の利点が得られる。
【0054】
別の一構成は、イナータが、作動装置として少なくとも1つの電動モータを有しており、電動モータが、少なくとも1つのフライホイール装置のフライホイールに直接または間接的に連結されていることを規定している。調節不能なばねを使用しながら上部構造体の固有振動数をほぼ一定に保つための有利な可能性が生じる。
【0055】
さらに別の一構成は、イナータが、作動装置を形成する可変の慣性モーメントを有するフライホイールを備えた少なくとも1つのフライホイール装置を有していることを規定している。この構造は、有利にはコンパクトである。
【0056】
このために、適切な作動メカニズムが、フライホイール上および/またはフライホイール内の位置調節可能な質量エレメントを位置調節することができる。このような作動メカニズムは、例えばモータまたは電磁駆動装置を備えたレバー伝動装置であってよい。
【0057】
少なくとも1つのイナータが、少なくとも1つのばねおよび少なくとも1つのダンパに対して並列に配置されている。これにより、コンパクトかつ省スペースの構造の利点が生じる。
【0058】
別の一構成は、少なくとも1つのイナータが、少なくとも1つのダンパの機能を統合して有していることを規定している。これにより、サスペンション装置の少なくとも1つのダンパを、有利には節約することができる。
【0059】
付加的な一構成は、絶縁効果を高めるために適した機械的なネットワークからの別のエレメント、例えば、同調質量吸収体または負の剛性を介して連結された同調質量吸収体(K-ダンパ設計として公知)との組み合わせを含んでいる。
【0060】
別の有利な一構成では、少なくとも1つのばねは、調節不能なばねである。したがって、高品質の廉価な部材を使用することができる。
【0061】
方法の別の一構成では、イナータの位置調節を、作動装置を用いて1つの運転状態から別の運転状態へと段階的にまたは/および無段階に実施することを規定している。これは、これによってより細かい適合が可能にされるので有利である。
【0062】
イナータの位置調節を、イナータのフライホイール装置に連結されている電動モータの形態の作動装置を用いて行うと有利である。電動モータは、有利には簡単に制御することができ、高い品質でより廉価に入手可能である。
【0063】
別の利点は、イナータのフライホイール装置に連結された電動モータが、付加的にサスペンション装置のレベリングを実施することができることを規定した構成において得られる。これは特に、傾斜面での積降ろし時の高さ調節のために有利である。なぜならば、レベリングのこの機能が統合されていてよいからである。
【0064】
方法のさらに別の一構成では、さらに、イナータのフライホイールユニットを発電機モードに切り換え、したがって同時に、電気的なエネルギの回生、エネルギハーベスティングおよび/またはサスペンション装置の減衰の最適な調節のためにフライホイールを減衰することに使用できると有利である。
【0065】
さらに、本方法の別の一構成では、イナータの位置調整を、作動装置を用いて少なくとも1つのフライホイール装置のフライホイールの慣性モーメントを変更することにより行うと有利である。
【0066】
本発明の特別な利点は、切換え可能なまたは制御可能なイナータの使用によって、所属する車両の積載状態および非積載状態のために上部構造体のほぼ一定の固有振動数を実現することができることにある。
【0067】
以下に、本発明の実施例について添付の図面を参照しながら説明する。これらの実施例は、本発明を好適な構造につき説明するために用いられるに過ぎず、本発明はこの構造に限定されるものではない。その限りでは、各請求項の枠内で別の実施例ならびに図示の実施例の改良形および等価形が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】従来技術によるサスペンション装置を概略的に示すシンボル図である。
【
図2】従来技術による液圧式のイナータを概略的に示す斜視断面図である。
【
図3】本発明に係るサスペンション装置を概略的に示すブロック図である。
【
図4】本発明による液圧式のイナータの第1の実施例を概略的に示す斜視断面図である。
【
図5】本発明によるイナータの変形例を概略的に示す斜視断面図である。
【
図6】本発明によるイナータの変形例を概略的に示す斜視断面図である。
【
図7】本発明によるサスペンション装置の伝達関数および固有振動数を示すグラフである。
【
図8】本発明によるサスペンション装置の伝達関数および固有振動数を示すグラフである。
【
図9】本発明による方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
「下」、「上」、「左」、「右」、「下面」、「上面」という用語は、図中での配置に関する。
【0070】
【0071】
図3は、本発明に係るサスペンション装置1の一実施例の概略的なブロック図を示している。
【0072】
本発明に係るサスペンション装置1は、少なくとも1つのばね4と、少なくとも1つのダンパ5と、付加的に、作動装置SEを備えたイナータ6とを含んでいる。
【0073】
イナータ6は、この例では液圧式のイナータ6である。イナータ6は、少なくとも1つのばね4および少なくとも1つのダンパ5に対して並列に配置されている。第1のイナータ取付け部6aがピストンロッド10において基部に結合されており、第2のイナータ取付け部6bが液圧シリンダ7において上部構造体3に結合されている。
【0074】
液圧式のイナータ6は、作動装置SEを用いて機能位置から受動位置へと切換え可能または調節可能である。換言すると、イナータ6を、ばね4およびダンパ5に接続するか、または遮断することができる。
【0075】
さらに、イナータ6を、作動装置SEを用いて、様々な形式で実現され得る中間段階に調節することができる。これについては、以下でさらに詳しく説明する。
【0076】
この切換え可能性により、作動装置SEを用いて、サスペンション装置1を備えた上部構造体の固有振動数をほぼ一定に保つことができ、ばね4は、調節不可能なばねであってよい。
【0077】
こうして、調節可能なイナータ6によって、サスペンション装置1を備えた上部構造体の質量を仮想的に高めることができ、または固有振動数を調節することができる。
【0078】
全てのタイプのイナータを使用することができる。図示の例では、液圧式のイナータ6が使用されている。
【0079】
図4には、本発明による液圧式のイナータ6の第1実施例の概略的な斜視断面図が示されている。
【0080】
イナータ6は、切換え可能または制御可能なイナータ6であり、図示の例では2つのフライホイール装置12,12’と、1つの作動装置SEとを有している。
【0081】
フライホイール装置12,12’は、直列に配置されており、流体管路13a,13bを介して互いに接続されている。
【0082】
第1のフライホイール装置12は、第1のバイパス19により迂回されており、第2のフライホイール装置12’は、第2のバイパス19’により迂回されている。
【0083】
第1のバイパス19は、第1のバイパス管路19aにより、第1のフライホイール装置12の上流側で第1の流体管路13に接続されている。第1のバイパス管路19aは、作動機構20を介して第2のバイパス管路19bに接続されている。第2のバイパス管路19bは、液圧シリンダ7の第2のチャンバ9に連通する。
【0084】
第2のバイパス19’は、第1のバイパス管路19’aにより、第2のフライホイール装置12’の上流側で流体管路13aおよび13bに接続されている。第1のバイパス管路19’aは、作動機構20’を介して第2のバイパス管路19’bに接続されている。第2のバイパス管路19’bも、第2のバイパス管路19bと同様に液圧シリンダ7の第2のチャンバ9に連通する。
【0085】
作動機構20を備えた第1のバイパス19と、作動機構20’を備えた第2のバイパス19’とは、イナータ6の作動装置SEを形成している。
【0086】
作動機構20,20’は、一構成では、それぞれ1つの閉位置と1つの開位置とを有する単純な弁である。別の一構成では、作動機構20,20’は、複数の段を有しているか、無段階に調節可能であってよい。作動機構20,20’は、例えば電磁弁、モータ駆動式の作動弁またはこれに類するものとして、電気的に操作される。
【0087】
作動機構20,20’は、調節可能な絞りとして形成されていてもよい。
【0088】
作動機構20,20’または作動装置SE,SE’の操作は、制御ユニット(図示せず)を用いて、かつ/または手動で行うことができる。
【0089】
切換え可能なイナータ6は、3つの運転状態をとることができる。
【0090】
第1の運転状態では、両フライホイール装置12,12’は、開放されたバイパス19,19’(開いた作動機構20,20’)により迂回されている。第1の流体管路13内の作動液の流れは、第1のフライホイール装置12の抵抗なしに、第1のバイパス19を通して液圧シリンダ7の第2のチャンバ9内に導かれる。第1の運転状態では、イナータ6は第1の質量慣性を有している。
【0091】
イナータ6が第2の質量慣性を有している第2の運転状態は、第2のバイパス19’の作動機構20’のみが開放されていることにより設定される。この場合、第2のフライホイール装置12’だけが迂回されている。この場合、第1のフライホイール装置12は、その抵抗で作動液の流れに作用する。
【0092】
第3の運転状態では、両バイパス19,19’の作動機構20,20’が閉じられており、両フライホイール装置12,12’は、それらの両方の抵抗が相前後して、つまり一列にまたは直列に接続して加算されることにより作用する。この第3の運転状態では、イナータ6は第3の質量慣性を有している。
【0093】
第1の質量慣性、第2の質量慣性および第3の質量慣性は相違している。
【0094】
図示しないが、容易に想像可能な変化形では、例えば、バイパス19,19’を備えた唯一のフライホイール装置12,12’だけが存在していてよい。両フライホイール装置12,12’が、バイパス19,19’により迂回される唯一のフライホイール装置12,12’を備えて設けられていることも可能である。
【0095】
当然ながら、所属するバイパスまたはより少ないバイパス19,19’を備えた、3つ以上のフライホイール装置12,12’を備えた別の変化形も考えられる。
【0096】
作動機構20,20’が複数の段を有しているか、または無段階に調節可能である場合、イナータ6の特に多様な調節が、これにより可変の流れ抵抗に基づいて可能である。
【0097】
したがって、イナータ6の遮断または部分的な接続により、上部構造体3またはサスペンション装置1の固有振動数を積載状態に合わせて適切に調節することができる。したがって、例えば、2つのイナータ6を、それぞれバイパス19,19’によって遮断または接続することができる。
【0098】
したがって、減衰の調節は、バイパス(絞り)の部分的な遮断または接続を介して、またはフライホイールハウジング17のチャンバ17a内にフライホイール18が位置する場合には、フライホイール18とフライホイールハウジング17との間の間隙を介して可能である。
【0099】
減衰機能は、完全にまたは部分的にイナータ6によって生じさせることができる。これにより、イナータ6へのダンパ5の統合が可能である。
【0100】
図5および
図6は、本発明によるイナータ6の変化形の概略的な斜視断面図を示している。
【0101】
図5に示したイナータ6の変化形では、フライホイール装置12のフライホイール18が、外側に位置決めされている。これにより、フライホイール18の簡単な交換により、イナータ6の慣性を、ある程度の範囲内で変化させることができる。
【0102】
電動モータ21を用いて、イナータ6を「能動的な」イナータ6として使用することができる。フライホイール18の側面に、電動モータ21がモータピニオン22を用いて係合する。この場合、モータピニオン22は、フライホイール18に直接に、または例えば伝動装置を介して間接的に係合している。モータピニオン22およびフライホイール18は、対応する歯列を有している。電動モータ21は、本実施例では、図示しない制御ユニットと一緒に作動装置SEを形成する。
【0103】
伝動装置は、理想的には、電動モータ21がフライホイール18に比べて高い回転数を有している場合に、極めて高い減速比で形成されている。他方では、電動モータ21が、その制御ユニットと一緒に低い回転数のためにも設計されていてよい。
【0104】
電動モータ21は、いわゆるレベリング、すなわち基部2に対する上部構造体3の高さ調節のために、フライホイール18に相対回動不能に結合された羽根車をポンプホイールとして使用することもでき、これによりレベリングを引き起こすことができる。ピストンロッド10と液圧シリンダ7との間におけるz方向または逆のz方向への位置調節が生じる。
【0105】
所望の高さが調節されると、電動モータ21が停止される。電動モータ21と、フライホイール18との連結部、例えば伝動装置は、この場合にセルフロック式に構成されており、これにより、荷重下での自動的な戻りを阻止することができる。しかし、これは、流体管路13,14内の切換え可能な弁によって阻止することもできる。
【0106】
上部構造体3と基部2との間の組込み状況にイナータ6をさらに適合させるために、ピストンロッド10と基部2または液圧シリンダ7と上部構造体3との間に、適合する延長部および/または調節伝動装置を挿入することができる。
【0107】
この電動モータ21が(制御ユニットにより)発電機モードに切り換えられ、ひいては同時にフライホイール18の減衰(電気エネルギの回生、エネルギハーベスティング、システムの減衰の最適な調節)のためにも使用できる場合には、別の機能も可能である。
【0108】
レベリングのための統合されたバリエーションとの組合せは、例えば伝動装置、リフト装置、K-ダンパとともに可能である。
【0109】
図6は、イナータ6の一変化形を示している。この変化形では、フライホイール装置12が、可変の慣性モーメントを有するフライホイール18を有している。このために、適切な作動メカニズム23を使用することができる。このことは、双方向矢印によって示唆されている。作動メカニズム23は、例えば半径方向で位置調節可能な質量エレメントを有していてよい。フライホイール18は、外部に配置されている。しかし、作動メカニズム23を備えたフライホイール18がフライホイールハウジング17内に配置されていることも可能であり、作動メカニズム23は、外部から、例えば好適なレバー伝動装置を用いて位置調節可能である。
【0110】
図7は、本発明に係るサスペンション装置1の伝達関数および固有振動数のグラフ図を示している。
【0111】
【0112】
ステップ応答、ボード線図、極・零点図および固有振動数として3つのグラフ24,25,26が示されている。
【0113】
グラフ24は、上部構造体3またはサスペンション装置1’(
図1)の通常の積載状態に対応している。グラフ25によって、空の積載状態がプロットされており、グラフ26は、接続されたイナータ6を有する空の積載状態を明示している。
【0114】
ここでは、商用車の従来の上部構造体3のための固有振動数は、積載時には約1.2Hzであり、空の場合に振動数は3Hzを超えていることが判る。接続されたイナータ6によって、空の商用車のための固有振動数を、積載された商用車の範囲へと再び戻すことができる。概して、積載状態に応じて、かつイナータ6の切換え可能性に応じて、1Hz~2Hzの範囲の固有振動数が実現可能であるので、一定のばね定数でも、目標範囲内の固有振動数が実現可能である。
【0115】
イナータ6による伝達関数は、以下の通りである:
xT=(s^2b+s*d+c)/(s^2*(mT+b)+s*d+c)*u
【0116】
変数bにより、固有振動数を、積載量(質量mT)に応じて調節することができる。
【0117】
イナータ6を有しない伝達関数(b=0)は、以下の通りである:
xT=(s*d+c)/(s^2*(mT)+s*d+c)*u
【0118】
さらに、例えばK-ダンパまたはTMA(同調質量吸収体)のような伝達関数に影響を与えるための別の手段を備えた組合せも可能である。
【0119】
図9は、
図4~
図6に関連して
図3に示したサスペンション装置1を制御する本発明による方法の概略的なフローチャートを示している。
【0120】
第1の方法ステップVS1では、ばね4、ダンパ5および作動装置SEを用いて切換え可能なイナータ6を備えたサスペンション装置1が提供される。イナータ6は、所属する車両の空の積載状態に適合している第1の質量慣性を有する第1の運転状態にある。
【0121】
第2の方法ステップVS2では、イナータ6は、所属する車両の部分積載に適合している第2の質量慣性を有する第2の運転状態へと作動装置SEを用いて位置調節される。
【0122】
第3の方法ステップVS3では、イナータ6は、作動装置SEを用いて、所属する車両の満載状態に適合している第3の質量慣性を有する第3の運転状態へと位置調節される。
【0123】
イナータ6の1つの運転状態から別の運転状態への位置調節は、段階的にまたは/かつ無段階に実施される。
【0124】
イナータ6の別の運転状態で、電動モータ21によるサスペンション装置1のレベリングが実施される。電動モータ21は、イナータ6のフライホイール装置12に連結されている。
【0125】
電動モータ21は、切換え可能なイナータ6のさらに別の運転状態では発電機として使用される。
【0126】
イナータ6の位置調節あるいは切換えは、フライホイール装置12,12’のフライホイール18の慣性モーメントの変更によっても実施することができる。
【0127】
本発明は、上述の実施例によって制限されるものではなく、請求項の枠内で変更可能である。
【符号の説明】
【0128】
1,1’ サスペンション装置
2 基部
3 上部構造体
4 ばね
5 ダンパ
6,6’ イナータ
6a,6b イナータ取付け部
7 液圧シリンダ
8,9 チャンバ
8a,9a 流入/流出開口
10 ピストンロッド
10a 長手軸線
11 ピストン
12 フライホイール装置
12a 回転軸線
13,13a;14 流体管路
15,15’ 駆動装置ハウジング
15a,15’a 駆動装置チャンバ
15b,15’b,15c,15’c 流入/流出開口
16,16’ 羽根車
17,17’ フライホイールハウジング
17a,17’a チャンバ
18,18’ フライホイール
19,19’ バイパス
19a,19b;19’a,19’b バイパス管路
20,20’ 作動機構
21 電動モータ
21a モータ軸
22 モータピニオン
23 作動メカニズム
24,25,26 グラフ
SE 作動装置
VS1-3 方法ステップ
z 座標
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(2)および上部構造体(3)を備えた車両、特に商用車のためのサスペンション装置(1,1’)であって、該サスペンション装置(1)が、少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6,6’)とを含み、前記少なくとも1つのばね(4)と、前記少なくとも1つのダンパ(5)と、前記少なくとも1つのイナータ(6,6’)とが、一方ではそれぞれ前記上部構造体(3)に、他方では前記基部(2)に結合されている、サスペンション装置(1,1’)において、前記少なくとも1つのイナータ(6)が作動装置(SE)を有していることを特徴とする、サスペンション装置(1,1’)。
【請求項2】
前記作動装置(SE)の第1の位置において、前記イナータ(6)の第1の運転状態が設定されており、該第1の運転状態において、前記イナータ(6)が第1の質量慣性を有しており、前記作動装置(SE)の第2の位置において、前記イナータ(6)の第2の運転状態が設定されており、該第2の運転状態において、前記イナータ(6)が前記第1の質量慣性とは異なる第2の質量慣性を有していることを特徴とする、請求項1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項3】
前記作動装置(SE)が、異なる質量慣性を有する前記イナータ(6)の3つ以上の運転状態に一致する3つ以上の位置を有していることを特徴とする、請求項1または2記載のサスペンション装置(1)。
【請求項4】
前記作動装置(SE)が、2つの位置の間で段階的に中間位置を有しているか、または無段階の位置調節を有していることを特徴とする、請求項3記載のサスペンション装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1
つのイナータ(6)が、少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を備えた液圧式のイナータ(6)であることを特徴とする、請求項
1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項6】
前記作動装置(SE)が、作動機構(20,20’)を備えた少なくとも1つのバイパス(19,19’)を有しており、前記少なくとも1つのバイパス(19,19’)が、前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を前記作動機構(20,20’)の1つの位置では迂回し、前記作動機構(20,20’)の別の位置では閉じられていることを特徴とする、請求項5記載のサスペンション装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのバイパス(19,19’)の作動機構(20,20’)が、閉じた状態と開いた状態とを有しており、または前記閉じた状態から開いた状態へかつ開いた状態から閉じた状態への段階的または無段階の移行を有していることを特徴とする、請求項5または6記載のサスペンション装置(1)。
【請求項8】
前記イナータ(6)が、作動装置(SE)として少なくとも1つの電動モータ(21)を有しており、該電動モータ(21)が、前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)のフライホイール(18,18’)に直接または間接的に連結されていることを特徴とする、請求項
1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項9】
前記イナータ(6)が、前記作動装置(SE)を形成する可変の慣性モーメントを有するフライホイール(18,18’)を備えた少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)を有していることを特徴とする、請求項
5記載のサスペンション装置(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイナータ(6)が、前記少なくとも1つのばね(4)および前記少なくとも1つのダンパ(5)に対して並列に配置されていることを特徴とする、請求項
1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのイナータ(6)が、前記少なくとも1つのダンパ(5)の機能を統合して有していることを特徴とする、請求項
1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのばね(4)が、調節不能なばねであることを特徴とする、請求項
1記載のサスペンション装置(1)。
【請求項13】
基部(2)と、上部構造体(3)とを備えた車両、特に商用車のための、請求項
1記載のサスペンション装置(1)を制御するための方法であって、前記サスペンション装置(1)が、少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、少なくとも1つのイナータ(6)とを含み、前記少なくとも1つのばね(4)と、前記少なくとも1つのダンパ(5)と、前記少なくとも1つのイナータ(6、6’)とが、一方ではそれぞれ前記上部構造体(3)に、他方では前記基部(2)に結合されている、方法において、
VS1)少なくとも1つのばね(4)と、少なくとも1つのダンパ(5)と、作動装置(SE)を備えた少なくとも1つのイナータ(6)とを備えたサスペンション装置(1)を準備するステップであって、前記イナータ(6)は、所属する車両の空の積載状態に適合している第1の質量慣性を有する第1の運転状態にある、ステップと、
VS2)前記作動装置(SE)を用いて、前記イナータ(6)を、所属する車両の部分積載に適合している第2の質量慣性を有する第2の運転位置へと位置調節するステップと、
VS3)前記作動装置(SE)を用いて、前記イナータ(6)を、所属する車両の満載状態に適合している第3の質量慣性を有する第3の運転位置へと位置調節するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項14】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記作動装置(SE)を用いて1つの運転状態から別の運転状態へと段階的に、または/かつ無段階に実施することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記イナータ(6)のフライホイール装置(12,12’)に連結されている電動モータ(21)の形態の前記作動装置(SE)を用いて行うことを特徴とする、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記イナータ(6)の前記フライホイール装置(12,12’)に連結された前記電動モータ(21)が、前記サスペンション装置(1)のレベリングを実施することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記イナータ(6)の前記フライホイール装置(12,12’)を発電機モードに切り換え、したがって同時に、電気的なエネルギの回生、エネルギハーベスティングおよび/または前記サスペンション装置(1)の減衰の最適な調節のためにフライホイール(18)を減衰することに使用することを特徴とする、請求項1
5記載の方法。
【請求項18】
前記イナータ(6)の前記位置調節を、前記作動装置(SE)を用いて前記少なくとも1つのフライホイール装置(12,12’)のフライホイール(18)の慣性モーメントを変更することにより行うことを特徴とする、請求項1
3記載の方法。
【国際調査報告】