(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】耐白化特性に優れた電極ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物及びそれを利用した成形品
(51)【国際特許分類】
H01B 3/44 20060101AFI20241024BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20241024BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241024BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20241024BHJP
H01B 9/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01B3/44 G
C08L53/00
C08L23/00
C08F297/08
H01B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529299
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2022014482
(87)【国際公開番号】W WO2023090625
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0161553
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ボ サン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ギョ ウン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
5G305
【Fターム(参考)】
4J002BB052
4J002BB133
4J002BB152
4J002BP021
4J002BP022
4J002GQ01
4J026HA03
4J026HA04
4J026HA20
4J026HA35
4J026HA41
4J026HB03
4J026HB04
4J026HB20
4J026HB35
4J026HB41
4J026HB48
4J026HD03
4J026HD04
4J026HE01
5G305AA02
5G305AB01
5G305AB17
5G305CA01
5G305CA47
(57)【要約】
リサイクルが可能な電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物であって、優れた柔軟特性と電気的特性を満足しながらも、耐白化性に優れた電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物とそれを利用した成形品が開示される。本発明は、プロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)が分散されているプロピレンブロック共重合体70乃至90重量部と、ポリオレフィンエラストマー(POE)5乃至20重量部と、重量平均分子量100,000g/mol以上の高分子量アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)5乃至20重量部と、を含む電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物とそれを利用した電力ケーブルを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)が分散されているプロピレンブロック共重合体70乃至90重量部と、
ポリオレフィンエラストマー(POE)5乃至20重量部と、
重量平均分子量100,000g/mol以上の高分子量アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)5乃至20重量部と、
を含む電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記プロピレンブロック共重合体のエチレン由来の繰返し単位が、
前記プロピレン-エチレンランダム共重合体のうち0.1乃至5重量%含まれ、
前記エチレン-プロピレンゴム(EPR)のうち30乃至60重量%含まれ、
前記プロピレンブロック共重合体のうち5乃至25重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレンブロック共重合体は、融点が150乃至170℃で、融解エンタルピーが65乃至85J/gで、溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が0.1乃至10g/10minで、キシレン可溶分(Xylene soluble)が前記プロピレンブロック共重合体のうち15乃至50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記プロピレンブロック共重合体は、ループ型反応器でプロピレンとエチレンを反応させてプロピレン-エチレンランダム共重合体を重合した後、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体の存在下、気相反応器でプロピレンとエチレンを連続重合して、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を前記プロピレン-エチレンランダム共重合体内に分散させることで収得されることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンエラストマーは、エチレン由来の繰り返し単位と、プロピレン由来の繰り返し単位と、(C4-C12)のα-オレフィン由来の繰り返し単位とからなる群より選択される2種以上を含むが、前記エチレン由来の繰り返し単位または前記プロピレン由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、下記方法によって測定された白色度(white index)が40以下であることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物:
[白色度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用し、230℃で厚さ2mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却してサンプル(60×45×2mm)を製作して、10Nの力を加えて曲げ評価を行い、曲げ評価を行った試片に対してASTM E313規格に従ってSpectrophotometry装備(Ecolorplus社製、7000A_IQPC)を利用して白色度を測定する。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、下記方法によって測定された屈曲弾性率が300乃至550MPaで、AC絶縁破壊強度が50kV/mm以上で、インパルス(Impulse)絶縁破壊強度が90kV/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁用樹脂組成物:
[屈曲弾性率の測定方法]
ASTM D790規格に従って試片(127×12.7×6.4mm)の支持間隔(Span)を100mmに固定し、28mm/minの速度で屈曲荷重を加えて測定された値を屈曲弾性率とする。
[絶縁破壊強度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用して厚さ1mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却し、ASTM D149規格に従って最初は30kVを5分間印加し、次に10kVずつ上昇させて5分間維持する過程を絶縁破壊が発生するまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をAC絶縁破壊強度とし、前記シートに対して衝撃電圧80kVを正/負極性に各10回ずつ印加し、次に10kVずつ上昇させて3回のインパルス電圧を印加することを破壊が起こるまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をインパルス絶縁破壊強度とする。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の樹脂組成物を絶縁層として含む電力ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境にやさしい電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物に関し、より詳しくは、柔軟性と電気的特性に優れ、リサイクル可能な環境にやさしい電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物に関する。
【0002】
本出願は2021年11月22日付けで出願された韓国特許出願第10-2021-0161553号に対する優先権及び利益を主張し、この出願はその全文が本願に参照として含まれる。
【背景技術】
【0003】
電力ケーブルの絶縁素材としてはポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)などを架橋させた素材が主に利用される。その中でも架橋ポリエチレン(XLPE)は架橋工程によってポリエチレンの線形の分子構造を3次元の網状構造に変換したものであって、従来のポリエチレンの優れた機械的物性及び耐化学特性を保持しながらも、耐熱性をより改善させて高電圧の電力ケーブルの絶縁層として活用されてきた。しかし、架橋ポリエチレンの場合は架橋されたポリマーであるためリサイクルが不可能であり、廃棄するためには焼却しなければならないため、多少環境にやさしくないという問題がある。
【0004】
最近、リサイクルが容易でありながらも高い耐熱性を有するポリプロピレン(PP)素材を利用した配電線(22.9kv以上)に適用し得る絶縁層用樹脂の開発が行われている。ポリプロピレン絶縁層はXLPE絶縁層に比べ製造工法が簡便で、非架橋形態であるため環境にやさしく、耐熱性などの性能と活用性に優れると知られている。ポリプロピレン絶縁層の製造工程上、メタンガスなどの有毒物質と各種副産物が発生せず、製造工程上発生するCO2などの温室ガスもXLPEに比べ30%ぐらい低減し得る。また、ポリプロピレン絶縁層はリサイクルが可能であり、熱にも強いため送電容量を上げ得ることも長所である。
【0005】
しかし、ポリプロピレン絶縁層を含む電力ケーブルの場合、ポリプロピレン固有の特性である高い剛性による低い柔軟性のためケーブルの布設性が落ち、XLPEに比べ電気的特性が多少不十分な問題点がある。よって、環境にやさしいながらもポリプロピレンの高い剛性及び電気的特性が改善された絶縁層用組成物の開発が必要な実情である。
【0006】
最近、ポリプロピレン資材にオレフィン系ゴムを使用して柔軟性と電気的特性を改善しようとする試みが行われている。しかし、ポリプロピレン素材とオレフィン系ゴムは異質な(Heterogeneous)特性があって互いに混ぜられずにマトリックス(Matrix)上と(Domain)との間で境界が発生するようになるが、この境界は電力線の布設作業の際に張力が加えられて界面の境界領域で微細亀裂(Microcraze)が発生し、それによって白化現象を起こすという問題がある。
【0007】
国際公開第WO2013/148028号は、ポリプロピレンにエチレン、α-オレフィン、EPDMなどを混合した熱可塑性絶縁体用ポリプロピレン混合物であって、冷却速度による交流破壊電圧強度の変化についか開示しているが、組成物の耐熱性及び軟質性の改善については言及しておらず、軟質性が劣勢なため布設中に破綻などを問題が発生し得る。
【0008】
韓国公開特許第2014-0040082号は、α-オレフィン共単量体ゴム相とプロピレンの共重合体を混合して軟質性を確保した熱可塑性高分子材料について開示しているが、ゴム相の含量が少なければ絶縁素材として使用する際に軟質性が低下して架設及び設置が難しく、ゴム相の含量が高ければ機械的物性を左右するポリプロピレンの長所がなくなるという問題が発生し、異質な特性の樹脂組成物として発生し得る白化現象によって絶縁破壊強度が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はリサイクルが可能な電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物であって、優れた柔軟特性と電気的特性を満足しながらも、耐白化性に優れた電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物とそれを利用した成形品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、プロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)が分散されているプロピレンブロック共重合体70乃至90重量部と、ポリオレフィンエラストマー(POE)5乃至20重量部と、重量平均分子量100,000g/mol以上の高分子量アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)5乃至20重量部と、を含む電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、前記プロピレンブロック共重合体のエチレン由来の繰返し単位が、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体のうち0.1乃至5重量%含まれ、前記エチレン-プロピレンゴム(EPR)のうち30乃至60重量%含まれ、前記プロピレンブロック共重合体のうち5乃至25重量%含まれることを特徴とする電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、前記プロピレンブロック共重合体は、融点が150乃至170℃で、融解エンタルピーが65乃至85J/gで、溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が0.1乃至10g/10minで、キシレン可溶分(Xylene soluble)が前記プロピレンブロック共重合体のうち15乃至50重量%であることを特徴とする電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、前記プロピレンブロック共重合体は、ループ型反応器でプロピレンとエチレンを反応させてプロピレン-エチレンランダム共重合体を重合した後、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体の存在下、気相反応器でプロピレンとエチレンを連続重合して、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を前記プロピレン-エチレンランダム共重合体内に分散させることで収得されることを特徴とする電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、前記ポリオレフィンエラストマーは、エチレン由来の繰り返し単位と、プロピレン由来の繰り返し単位と、(C4-C12)のα-オレフィン由来の繰り返し単位とからなる群より選択される2種以上を含むが、前記エチレン由来の繰り返し単位または前記プロピレン由来の繰り返し単位を含むことを特徴とする電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0015】
また、前記樹脂組成物は、下記方法によって測定された白色度(white index)が40以下であることを特徴とする電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【0016】
[白色度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用し、230℃で厚さ2mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却してサンプル(60×45×2mm)を製作して、10Nの力を加えて曲げ評価を行い、曲げ評価を行った試片に対してASTM E313規格に従ってSpectrophotometry装備(Ecolorplus社製、7000A_IQPC)を利用して白色度を測定する。
【0017】
また、前記樹脂組成物は、下記方法によって測定された屈曲弾性率が300乃至550MPaで、AC絶縁破壊強度が50kV/mm以上で、インパルス(Impulse)絶縁破壊強度が90kV/mm以上であることを特徴とする電力ケーブルの絶縁用樹脂組成物を提供する。
【0018】
[屈曲弾性率の測定方法]
ASTM D790規格に従って試片(127×12.7×6.4mm)の支持間隔(Span)を100mmに固定し、28mm/minの速度で屈曲荷重を加えて測定された値を屈曲弾性率とする。
【0019】
[絶縁破壊強度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用して厚さ1mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却し、ASTM D149規格に従って最初は30kVを5分間印加し、次に10kVずつ上昇させて5分間維持する過程を絶縁破壊が発生するまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をAC絶縁破壊強度とし、前記シートに対して衝撃電圧80kVを正/負極性に各10回ずつ印加し、次に10kVずつ上昇させて3回のインパルス電圧を印加することを破壊が起こるまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をインパルス絶縁破壊強度とする。
【0020】
前記他の課題を解決するために、本発明は、前記樹脂組成物を絶縁層として含む電力ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、プロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)が分散されたプロピレンブロック共重合体及びポリオレフィンエラストマーに高分子量のアタクチックポリプロピレンを使用し、リサイクル可能な電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物として優れた柔軟特性と電気的特性を満足しながらも、耐白化性に優れた電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物とそれを利用した電力ケーブルを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による樹脂組成物で製造される電力ケーブルの断面を模式的に示す図である。
【
図2】実験例で曲げ評価を行った試片の断面を光学顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施例を介して本発明を詳細に説明する。その前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的であるか辞書的な意味に限って解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。よって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願の時点において、これらを代替し得る多様な均等物と変形例が存在し得るということを理解すべきである。
【0024】
本発明は、プロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)が分散されているプロピレンブロック共重合体70乃至90重量部と、ポリオレフィンエラストマー(POE)5乃至20重量部と、重量平均分子量100,000g/mol以上の高分子量アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)5乃至20重量部と、を含む電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物を開示する。
【0025】
以下、本発明による電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物の各構成成分を詳細に説明する。
【0026】
ポリプロピレンはホモポリプロピレン(H-PP)、プロピレンランダム共重合体(R-PP)、及びプロピレンブロック共重合体(B-PP)に分類し得る。このうち、プロピレンランダム共重合体とプロピレンブロック共重合体はホモポリプロピレンに比べ高い柔軟性と屈曲性を有するため電力ケーブル用としてより適合しており、ここで、プロピレンブロック共重合体の場合はプロピレンランダム共重合体に比べ柔軟性と屈曲特性に優れるという利点があるため、本発明ではプロピレンブロック共重合体を利用する。
【0027】
本発明において、前記プロピレンブロック共重合体はRTPO(Reactor-made Thermoplastic Polyolefin elastomers)の一種であって、プロピレン単量体由来の単位を含む重合体内に多数のゴム特性を示す高分子が含まれている重合体を指す。
【0028】
本発明において、プロピレンブロック共重合体はループ型反応器でプロピレンとエチレンを反応させてプロピレン-エチレンランダム共重合体を重合した後、連続重合で前記プロピレン-エチレンランダム共重合体の存在下、気相反応器でプロピレンとエチレンのガスを共重合反応させて、エチレン-プロピレンゴム(EPR)を前記プロピレン-エチレンランダム共重合体内に分散させて収得されるものであって、前記のように連続重合によって製造されることでポリプロピレンマトリックス内にエチレン-プロピレンゴム(EPR)を小さいサイズのドメインとして均一に分散させ得る。
【0029】
ここで、本発明では前記エチレン-プロピレンゴム(EPR)のドメインサイズと分散程度は限らないが、最終樹脂組成物の柔軟性及び電気的特性を考慮して、ドメインの平均サイズは0.1乃至5μm、好ましくは0.5乃至2μmであり、ドメインの分散度は0.1乃至0.7、好ましくは0.2乃至0.6であり得る。前記ドメインのサイズ及び分散度は、樹脂組成物を圧縮成形(220℃で4分)して製造された試片を幅1mm及び長さ10cmに裁断した後、60℃のキシレンに浸漬してエチレン-プロピレンゴムを溶出させ、試片の表面に存在する空隙に対して走査電子顕微鏡(SEM)で分析して測定され得る。
【0030】
本発明において、前記プロピレンブロック共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体50乃至85重量%、及びエチレン-プロピレンゴム15乃至50重量%を含み得るが、好ましくは、プロピレン-エチレンランダム共重合体60乃至75重量%、及びエチレン-プロピレンゴム25乃至40重量%を含み得る。前記プロピレンブロック共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体のマトリックスにエチレン-プロピレンゴム粒子が分散されている形態である。詳しくは、前記プロピレンブロック共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体にエチレン-プロピレンゴムが反応器内で段階的に重合されたブロック共重合体であり得る。前記プロピレンブロック共重合体は、エチレン-プロピレンゴムが特定含量の範囲で分散されており、プロピレン単独重合体乃至プロピレン-エチレンランダム共重合体に比べ屈曲弾性率が低くて電力ケーブルの絶縁層として適用する際に柔軟性の向上を極大化し得、弾性力に優れて強度を向上させ得る。
【0031】
本明細書において、プロピレンブロック共重合体は、重合反応器で高含量のエチレンを利用して大量のエチレン-プロピレンゴム(EPR)を生成したものであって、従来のプロピレンブロック共重合体に比べ高い含量のエチレン-プロピレンゴム(EPR)由来の繰り返し単位を含んでいて強度が高く、柔軟性に優れる利点がある。
【0032】
理論によって制限されないが、一般に、反応器内で製造されるプロピレンブロック共重合体は、技術的難しさのためエチレン由来の繰り返し単位の含量が全体のブロック共重合体のうち5乃至25重量%であり得るが、好ましくは、10乃至20重量%であり得る。また、エチレン由来の繰り返し単位の含量がプロピレン-エチレンランダム共重合体のうち0.1乃至5重量%、好ましくは、0.1乃至3重量%、より好ましくは0.5乃至2重量%であり得、前記エチレン-プロピレンゴム(EPR)のうち30乃至60重量%であり得るが、好ましくは、40乃至50重量%であり得る。前記エチレン由来の繰り返し単位の含量範囲内で順軟性、屈曲特性、及び電気的特性が極大化され得る。また、エチレン由来の繰り返し単位の含量がプロピレン-エチレンランダム共重合体のうち5重量%を超過すれば、ブロック共重合体の融点が下がって耐熱安定性が低下し得る。
【0033】
また、前記プロピレンブロック共重合体は、融点が150乃至170℃であり得るが、好ましくは、160乃至170℃であり得る。また、融解エンタルピーは65乃至85J/gであり得るが、好ましくは、75乃至85J/gであり得る。プロピレンブロック共重合体の融点及び融解エンタルピーが前記範囲を満足すれば、電力ケーブルの絶縁層として適用する際に本発明で具現しようとする柔軟性及び電気的特性を満足し得る。
【0034】
また、前記プロピレンブロック共重合体は、溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が0.1乃至10g/10minであり得るが、好ましくは0.3乃至5g/10minであり得、より好ましくは0.5乃至2g/10minであり得る。前記溶融指数が0.1g/10min未満であればケーブル押出過程で押出器に負荷がかかり得、10g/10minを超過すればケーブル成形品の絶縁層の偏心が発生し得る。
【0035】
また、前記プロピレンブロック共重合体は、キシレン可溶分(X.S.)が前記プロピレンブロック共重合体のうち15乃至50重量%であり得るが、好ましくは、25乃至40重量%であり得る。前記キシレン可溶分は前記プロピレンブロック共重合体内に含まれているエチレン-プロピレンゴム(EPR)の含量によるが、前記含量範囲内で柔軟性、屈曲特性、及び電気的特性が極大化され得る。
【0036】
本発明において、前記プロピレンブロック共重合体は70乃至90重量部で含まれるが、好ましくは、75乃至85重量部の含量で含まれ得る。プロピレンブロック共重合体の含量が70重量部未満であれば電気的特性が低下して白化現象が発生し得、90重量部を超過すれば柔軟性が低下し得る。
【0037】
本発明では最終樹脂組成物の柔軟性及び屈曲特性を向上させるための改質剤として、ポリオレフィンエラストマー(POE)を含む。
【0038】
前記ポリオレフィンエラストマーは、エチレン由来の繰り返し単位と、プロピレン由来の繰り返し単位と、(C4-C12)のα-オレフィン由来の繰り返し単位とからなる群より選択される2種以上を含むが、前記エチレン由来の繰り返し単位または前記プロピレン由来の繰り返し単位を含み得る。例えば、エチレン及びプロピレンの共重合体、またはエチレン及びプロピレンのうち1種と1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどとのα-オレフィンのランダムまたはブロック共重合体エラストマー、またはこれらのエラストマーの組み合わせであり得る。より好ましくは、プロピレン-エチレンゴム(PER)またはエチレン-1-オクテンゴム(EOR)が使用され得、最も好ましくはプロピレン-エチレンゴム(PER)が使用され得る。
【0039】
前記ポリエチレンエラストマー(POE)は5乃至20重量部で含まれるが、好ましくは、4乃至15重量部の含量で含まれ得る。ポリエチレンエラストマー(POE)の含量が5重量部未満であれば最終樹脂組成物の柔軟性が低下し、20重量を超過すれば電気的特性が低下し得る。
【0040】
前記アタクチックポリプロピレンは前記プロピレンブロック共重合体と前記ポリオレフィンエラストマー(POE)との間の界面で空隙が発生したら効果的に界面を埋める役割をするものであって、本発明では重量平均分子量(Mw)100,000g/mol以上、好ましくは、120,000g/mol以上、より好ましくは、120,000乃至1,000,000g/molの高分子量のアタクチックポリプロピレン(Atatic PP)が使用され得る。
【0041】
前記アタクチックポリプロピレンの分子量が低ければ高電圧下で絶縁破壊強度の劣勢を誘発し得、高い張力の力が加えられる場合の白化現象の改善効果が大きくない。
【0042】
前記アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)は5乃至20重量部の含量で含まれるが、好ましくは、5乃至15重量部の含量で含まれ得る。アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)の含量が5重量部未満であれば樹脂組成物の白化現象の改善効果が微々であり、20重量部を超過すれば絶縁破壊強度が低下する。
【0043】
本発明において、アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)は結晶球晶が柔軟で最終樹脂組成物の屈曲弾性率を下げる役割をし、また、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体を含むプロピレンブロック共重合体と混合されて、プロピレン単独共重合体を含むプロピレンブロック共重合体と混合される場合に比べ白化現象の改善及び絶縁破壊強度の向上に著しい効果を示すようにし得る。
【0044】
このようなアタクチックポリプロピレン(Atatic PP)は立体規則度(isotactisity、Pentad I.I、mmmm)が5乃至20%、好ましくは5乃至15%の非結晶性のポリプロピレンであって、当業界で知られている方法によって製造されるものであり得、例えば、本出願人が提示した特許出願第2011-0033626号を参照して製造され得るが、この特許は本願に参照として引用され得る。
【0045】
本発明による樹脂組成物は、前記成分以外にもケーブルの絶縁層用として適用する際に一般的に使用される添加剤が1種以上更に含まれ得るが、好ましくは、酸化防止剤、中和剤、または水トリー(water tree)防止剤を更に含み得る。
【0046】
前記酸化防止剤は、樹脂組成物の黄変を抑制して色相安定性及び透明性を与えるために添加され得る。前記電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物の酸化を防止し得る酸化防止剤であれば制限なく使用し得るが、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Hindered phenol-based antioxidant)、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(4,4’-thiobis(2-t-butyl-5-methylphenol))、2,2’-チオ-ジエチル-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](2,2’-thio-diethyl-bis[3-(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、4,4’-チオビス-(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)(4,4’-thiobis(2-methyl-6-t-butylphenol))、2.2’-チオビス(6-t-ブチル-メチルフェノール)(2,2’-thiobis(6-t-butyl-4-methylphenol))、オクタデシル[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](octadecyl[3-(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、及びチオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Thiodiethylene-bis[3-(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を使用し得る。
【0047】
前記中和剤は重合後残っている触媒残渣を効果的に除去して樹脂組成物の分解を防ぐために使用するものであって、前記電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物の分解を防止し得る中和剤であれば制限なく使用し得る。
【0048】
前記水トリー防止剤は、破壊電圧以下の電圧で水分と電圧の複合作用によって発生し、次第に成長する微細破壊形態である水トリーを防止するための目的で添加される。水トリー現象は絶縁層の電気絶縁特性を低下させて絶縁層の寿命減少を引き起こす。前記水トリー防止剤は、水分と電圧の複合作用を低減し得る物質であれば制限なく使用し得る。
【0049】
本発明による電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物は、当業界に知られている通常の方法によって前記成分を混合及び押出して製造され得る。例えば、前記成分を2軸押出器に投入し、溶融混錬して樹脂組成物を製造し得る。
【0050】
以上の本発明による電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物は、優れた柔軟性と電気的特性を満足しながらも耐白化性に優れ、環境にやさしいためリサイクルが可能であるが、詳しくは、下記方法によって測定される白色度が40以下、好ましくは、35以下であり得、屈曲弾性率が300乃至550MPa、好ましくは、350乃至500MPaであり得、AC絶縁破壊強度が50kV/mm以上、好ましくは、55kV/mm以上であり得、インパルス絶縁破壊強度が90kV/mm以上、好ましくは、95kV/mm以上であり得る。
【0051】
[白色度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用し、230℃で厚さ2mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却してサンプル(60×45×2mm)を製作して、10Nの力を加えて曲げ評価を行い、曲げ評価を行った試片に対してASTM E313規格に従ってSpectrophotometry装備(Ecolorplus社製、7000A_IQPC)を利用して白色度を測定する。
【0052】
[屈曲弾性率の測定方法]
ASTM D790規格に従って試片(127×12.7×6.4mm)の支持間隔を100mmに固定し、28mm/minの速度で屈曲荷重を加えて測定された値を屈曲弾性率とする。
【0053】
[絶縁破壊強度の測定方法]
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用して厚さ1mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却し、ASTM D149規格に従って最初は30kVを5分間印加し、次に10kVずつ上昇させて5分間維持する過程を絶縁破壊が発生するまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をAC絶縁破壊強度とし、前記シートに対して衝撃電圧80kVを正/負極性に各10回ずつ印加し、次に10kVずつ上昇させて3回のインパルス電圧を印加することを破壊が起こるまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をインパルス絶縁破壊強度とする。
【0054】
以上の本発明による電力ケーブルの絶縁層用ポリプロピレン樹脂組成物で電力ケーブルが製造され得る。
図1は、本発明による樹脂組成物で製造される電力ケーブルの断面を模式的に示す図である。
【0055】
図1を参照すると、本発明による電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物で製造される電力ケーブルは、導体1と、前記導体1を囲む内部半導電層2と、前記内部半導電層2を囲む絶縁層3と、前記絶縁層3を囲む外部半導電層4と、前記外部半導電層4を囲むシース層5とを含むが、前記絶縁層3は本発明による樹脂組成物を含み得る。前記絶縁層を除いて、前記電力ケーブルを構成する各層の細部事項は当業者に通常的に知られているため、本発明では具体的な説明は省略する。
【実施例】
【0056】
以下、本発明による具体的な製造例、実施例、及び比較例を挙げて説明する。
【0057】
<製造例1:プロピレンブロック共重合体の製造(樹脂1)>
ループ型反応器でプロピレンとエチレンを反応させてプロピレン-エチレンランダム共重合体を収得し、ループ型反応器で重合されたプロピレン-エチレンランダム共重合体とエチレン及びプロピレンを気相反応器に投入して、連続工程でエチレン-プロピレンの共重合反応を実施してプロピレンブロック共重合体を製造した。製造されたプロピレンブロック共重合体は、エチレン由来の繰り返し単位がプロピレン-エチレンランダム共重合体のうち1重量%、エチレン-プロピレンゴム(EPR)のうち43%、及び全体共重合体のうち15重量%で、キシレン可溶分の含量が29重量%で、溶融指数が1g/10min、融点が150.7℃、及び融解エンタルピーが67.4J/gであった。プロピレンブロック共重合体の溶融指数、キシレン可溶分、融点、及び溶融エンタルピーはそれぞれ下記方法によって測定された。
-溶融指数(Melt Index、MI):ASTM D1238規格に従って温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定した。
-キシレン可溶分(X.S.):ASTM D5492規格に従って、プロピレンブロック共重合体を沸騰しているキシレンに溶かした後、常温で冷却させてキシレンに溶解された部分と不溶部分に分離した後、キシレンに溶解された部分を別に集めてホットプレートでキシレンを蒸発させ、残りの部分の重量%を測定した。
-融点及び溶解エンタルピー:示差走査熱量計(DSC)を利用し、10℃/minの速度で200℃まで加熱した後、-30℃まで冷却を2回繰り返して、2回目に測定されたデータを使用した。
【0058】
<比較製造例1:プロピレンブロック共重合体の製造(樹脂2)>
前記製造例1でループ型反応器でプロピレンを反応させてプロピレン単独重合体を収得したことを除いては、樹脂1の製造例と同じ方法でプロピレンブロック共重合体を製造した。製造されたプロピレンブロック共重合体は、エチレン由来の繰り返し単位がエチレン-プロピレンゴム(EPR)のうち42%、及び全体共重合体のうち14重量%で、キシレン可溶分の含量が29重量%で、溶融指数が1g/10min、融点が163.7℃、及び融解エンタルピーが77.4J/gであった。
【0059】
<ポリオレフィンエラストマー(POE)(樹脂3)>
ポリオレフィンエラストマーとしてプロピレン-エチレンゴム(PER)(VistamaxxTM 3020FL、Exxonmobil chemical社製、融点60.2℃、比重0.874)を準備した。
【0060】
<製造例2:アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)の製造(樹脂4)>
特許出願第2011-0033626号を参考した。常温で高圧反応器(内部容量:2L、ステンレススチール)の内部を窒素に置換し、前記反応器にメチルアルミノキサントルエン溶液約4.0mL(トルエンのうちメチルアルミノキサン10重量%溶液、Al基準6mmol、Albemarle社製)を加えた後、プロピレン500gを加え、70℃に昇温させた。次に、前記反応器に下記化学式1で表される遷移金属化合物をトルエンに解かした溶液(1.5mL、3.0μmol of Ti)を注入し重合を実施した。重合反応を行った後、温度を常温に下げて余分のプロピレンを除去し、重合体を回収した。得られた重合体を真空オーブン内で80℃に加熱しながら4時間以上乾燥し、アタクチックポリプロピレン(キシレン可溶分の含量98重量%、MI(230℃、2.16kg荷重)2g/10min、Mw(GPC分析法で測定、PL-GPC220、Agilent)320,000g/mol、Tg(ガラス転移温度)-5℃、I.I.(%、mmmm)2)を製造した。
【0061】
<製造例3:アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)の製造(樹脂5)>
製造例2でプロピレンの投入量、触媒の使用量、反応時間などを調節して、キシレン可溶分の含量98重量%、MI(230℃、2.16kg荷重)50g/10min、Mw(GPC分析法で測定、PL-GPC220、Agilent)120,000g/mol、Tg(ガラス転移温度)-5℃、I.I.(%、mmmm)1.5のアタクチックポリプロピレンを製造した。
【0062】
<比較製造例2:アタクチックポリプロピレン(Atatic PP)の製造(樹脂6)>
製造例2でプロピレンの投入量、触媒の使用量、反応時間などを調節して、キシレン可溶分の含量98重量%、MI(230℃、2.16kg荷重)100g/10min、Mw(GPC分析法で測定、PL-GPC220、Agilent)40,000g/mol、Tg(ガラス転移温度)-5℃、I.I.(%、mmmm)1.9のアタクチックポリプロピレンを製造した。
【0063】
<実施例及び比較例>
下記表1の成分組成で構成される混合物をミキサで5分間混合した後、190乃至230℃の条件で2軸押出器で押出して、ペレット状の樹脂組成物を製造した。
【0064】
<試験例>
前記製造されたペレット状の樹脂組成物を利用し、下記方法によって屈曲特性、電気的特性、及び白色度を測定して、その結果を下記表1に示した。
【0065】
[測定方法]
(1)屈曲弾性率
ASTM D790規格に従って試片(127×12.7×6.4mm)の支持間隔を100mmに固定し、28mm/minの速度で屈曲荷重を加えて測定された値を屈曲弾性率とした。屈曲弾性率が550MPa以下であれば柔軟性及び屈曲特性が良好であると、500MPa以下であれば優れると判断する。
【0066】
(2)絶縁破壊強度
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用して厚さ1mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却し、ASTM D149規格に従って最初は30kVを5分間印加し、次に10kVずつ上昇させて5分間維持する過程を絶縁破壊が発生するまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をAC絶縁破壊強度とし、前記シートに対して衝撃電圧80kVを正/負極性に各10回ずつ印加し、次に10kVずつ上昇させて3回のインパルス電圧を印加することを破壊が起こるまで続けて、絶縁破壊が発生したらその時の電圧をインパルス絶縁破壊強度とした。AC絶縁破壊強度が50kV/mm以上、及びImpulse絶縁破壊強度が90kV/mm以上であれば電気的特性に優れると判断する。
【0067】
(3)白色度(白化現象)
前記樹脂組成物をプレス成形機器を利用し、230℃で厚さ2mmのシート状に製造した後、10℃で5分間冷却してサンプル(60×45×2mm)を製作して、10Nの力を加えて曲げ評価を行い、曲げ評価を行った試片に対してASTM E313規格に従ってSpectrophotometry装備(Ecolorplus社製、7000A_IQPC)を利用して白色度を測定した。また、前記曲げ評価を行った試片の断面を光学顕微鏡(観察温度134℃、倍率×100、2min)で観察し、その結果を
図2に示した。
【0068】
【0069】
前記表1及び
図2を参照すると、本発明によってプロピレン-エチレンランダム共重合体内にエチレン-プロピレンゴム(PER)が分散されているプロピレンブロック共重合体、及びポリオレフィンエラストマーに高分子量のアタクチックポリプロピレンを使用した電力ケーブルの絶縁層用樹脂組成物(実施例1乃至3)はリサイクル可能な樹脂組成物であって、優れた柔軟性特性と電気的特性を満足しながらも、優れた耐白化性が具現されることを確認し得る。
【0070】
それに対し、アタクチックポリプロピレンを使用しない場合(比較例1)は柔軟性、電気的特性、及び耐白化性がいずれも劣勢であり、アタクチックポリプロピレンを使用しても分子量が特定レベルに及ばない場合(比較例5)は耐白化性を満足せず、特定レベルの高分子量のアタクチックポリプロピレンを使用してもその含量が過小である場合(比較例2)は電気的特性と耐白化性が低調で、その含量が過度である場合(比較例3)は屈曲特性が低下し、プロピレンブロック共重合体のマトリックス成分をプロピレン単独共重合体にする場合(比較例4)は電気的特性を満足せず、屈曲特性及び耐白化性が著しく低下することが分かる。
【0071】
これまで本発明の好ましい実施例を詳細に説明した。本発明の説明は例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずも他の具体的な形態に容易に変更し得ることを理解できるはずである。
【0072】
よって、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲、及びその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【国際調査報告】