(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】可溶性CD59を発現する遺伝子療法ベクターにより地図状萎縮を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20241024BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241024BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20241024BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241024BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z
C12N7/01
A61P27/02
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529310
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2022061158
(87)【国際公開番号】W WO2023089564
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,アダム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084BA44
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZA33
(57)【要約】
記載される発明は、対象における加齢性黄斑変性症(AMD)などの補体障害を治療するための方法であって、医薬組成物を眼注射によって対象の罹患眼に投与することを含み、組成物が、プロモーターに作動可能に連結された可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードする核酸を含み、sCD59をコードする核酸が、送達ベクターにパッケージングされ、投与することで、罹患眼の細胞によるsCD59タンパク質の発現及び分泌をもたらし、発現が、罹患眼における罹患細胞の治療をもたらす、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における加齢性黄斑変性症(AMD)を治療するための方法であって、前記方法が、医薬組成物を眼注射によって対象のAMD罹患眼に投与することを含み、前記組成物が、プロモーターに作動可能に連結された可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードする核酸を含み、sCD59をコードする前記核酸が、送達ベクターにパッケージングされ、前記投与することで、前記AMD罹患眼の細胞による前記sCD59タンパク質の発現及び分泌をもたらし、前記発現が、前記AMD罹患眼におけるAMD罹患細胞の治療をもたらす、方法。
【請求項2】
前記AMDが、地図状萎縮(GA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼注射が、硝子体内注射である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記硝子体内注射が、単回注射である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記送達ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記AAVベクターが、AAV2である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記プロモーターが、CAGプロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、約3.56×10
10DNAse耐性粒子(DRP)、約1.071×10
11DRP、約3.56×10
11DRP及び約1.07×10
12DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象における補体活性障害を調節する方法であって、前記方法が、前記対象の罹患細胞を、前記罹患細胞においてヒト可溶性CD59(sCD59)タンパク質の発現を引き起こすプロモーター配列に作動可能に連結された組換え操作されたヒト可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するベクターを含む医薬組成物と接触させることと、ここで、前記sCD59タンパク質が、膜標的化の喪失を引き起こすグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカードメインの機能喪失を引き起こす少なくとも1つの変異を含み、前記接触させた後に、前記補体活性障害の生理学的徴候を、前記接触させる前に観察された前記生理学的徴候の異常な量と比較して観察することと、を含み、前記接触させる前と比較した前記接触させた後の減少が、前記罹患細胞が治療されることの肯定的な指標である、方法。
【請求項10】
前記補体活性障害が、GAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接触させることが、硝子体内注射によるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記硝子体内注射が、単回注射である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記罹患細胞が、網膜細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターが、AAV2である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記生理学的徴候が、最高矯正視力(BCVA)である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
BCVAが、ベースラインからの平均変化として測定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ベースラインからの平均変化が、-7.100文字である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、約3.56×10
10DNAse耐性粒子(DRP)、約1.071×10
11DRP、約3.56×10
11DRP及び約1.07×10
12DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
補体障害を治療する方法であって、細胞を、治療有効量のヒトsCD59タンパク質をコードする核酸又はヒトsCD59タンパク質の発現源を活性薬剤として有する医薬組成物と接触させることを含む、それを必要とする対象に前記医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記補体障害が、GAである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記接触させることが、硝子体内注射によるものである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記硝子体内注射が、単回注射である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記罹患細胞が、網膜細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記治療有効量が、約3.56×10
10DNAse耐性粒子(DRP)、約1.071×10
11DRP、約3.56×10
11DRP及び約1.07×10
12DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月19日出願の米国仮出願第63/281,190号の優先権の利益を主張するものであり、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、本出願と共にXMLファイルフォーマットで提出されたコンピュータ可読配列表を含み、その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願と共に提出された配列表XMLファイルは、「JBI6660WOPCT1_SL.xml」という名称であり、2022年11月9日に作成され、3843バイトのサイズである。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般に、加齢性黄斑変性症(Age-related Macular Degeneration、AMD)及び地図状萎縮(geographic atrophy、GA)を含む網膜疾患を治療するための遺伝子療法の使用に関する。
【0004】
(発明の背景)
加齢性黄斑変性症(AMD)は、黄斑の緩徐進行性疾患である。AMDは、先進国において、60歳を超える患者における失明の主な原因である(Friedman,DS,et al.Prevalence of age-related macular degeneration in the United States.Arch Ophthalmol.2004;122:564-572、van Leeuwen,R,Klaver,CC,Vingerling,JR,Hofman,A,de Jong,PT.Epidemiology of age-related maculopathy:a review.Eur J Epidemiol.2003;18:845-854)。世界的に、AMDは、全ての失明のおよそ9%を占め、2020年までにおよそ1億9600万人が罹患すると予測されている(Wong WL,Su X,Li X,et al.Global prevalence of age-related macular degeneration and disease burden projection for 2020 and 2040:a systematic review and meta-analysis.Lancet Glob Health.2014 Feb;2(2):e106-116)。
【0005】
進行性AMDにおいて、最も顕著な視力喪失が起こる。進行性AMDは、(1)「湿性」又は滲出型AMD、及び(2)地図状萎縮(GA)とも呼ばれる「乾性」AMDの2つのカテゴリーに分けられる。湿性AMDは、脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization、CNV)と関連しており、食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)承認の血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)阻害剤、例えば、ラニビズマブ又はアフリベルセプトを使用して、首尾良く治療することができる。逆に、現時点で、GAに対するFDA承認の治療は存在しない。AMDに寄与する確立されたリスク因子としては、年齢、喫煙、食事、及び遺伝的リスク因子が挙げられる(van Leeuwen,R,Klaver,CC,Vingerling,JR,Hofman,A,de Jong,PT.Epidemiology of age-related maculopathy:a review.Eur J Epidemiol.2003;18:845-854、de Jong,PT.Age-related macular degeneration.N Engl J Med.2006;355:1474-1485)。AMDに罹患している患者は、うつ病及び不安症の発生の増加、運動障害、及び分離を含む、視力喪失以外の病的状態を有する(Dawson SR,Mallen CD,Gouldstone MB,Yarham R,Mansell G.The prevalence of anxiety and depression in people with age-related macular degeneration:a systematic review of observational study data.BMC Ophthalmol.2014 Jun 12;14:78)。
【0006】
ヒト遺伝子研究は、補体系の過剰活性化が、AMDの病因において役割を果たし得ることを示唆している。補体因子H、補体因子I、因子B、及びC3を含む補体経路の複数の構成要素における一塩基多型は、進行性AMDのリスク増加と関連付けられている(Schramm EC,Clark SJ,Triebwasser MP,Raychaudhuri S,Seddon J,Atkinson JP.Genetic variants in the complement system predisposing to age-related macular degeneration:a review.Mol Immunol.2014 Oct;61(2):118-125)。補体経路は、外来病原体を認識し、これを死滅させる際の自然免疫の主要な部分であり、古典的経路、代替経路又はレクチン経路によって活性化され得る。補体経路の末端構成要素は、細胞溶解機能を有する細胞膜上のタンパク質の複合体である膜侵襲複合体(membrane attack complex、MAC)の形成である。複数系統の証拠は、1)AMD患者試料においてMAC沈着が増加することが見出されており、2)MAC複合体の重要な構成要素であるC9中のR95Xナンセンス変異を有する個体が、湿性AMDのリスクを4.7倍減少させることを含め、MAC複合体がAMDの病因に関与していることを示唆している(Nichiguchi KM,Yasuma TR,Tomida D,et al.C9-R95X polymorphism in patients with neovascular age-related macular degeneration.Invest Ophthalmol Vis Sci.2012 Jan 31;53(1):508-512)。
【0007】
したがって、MAC複合体の形成を防止することは、AMDの治療戦略として役立つ可能性がある。MAC複合体の天然阻害剤は、MAC複合体の形成を防止するグリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol、GPI)固定膜結合タンパク質であるCD59である。前臨床研究は、可溶性形態のCD59(sCD59)を発現するAAV2ウイルスベクターの硝子体内注射が、MAC沈着を減少させ得ることを示し、湿性AMDのげっ歯類モデルにおいて有効性を示し(Cashman SM,Ramo K,Kumar-Singh R.A non membrane-targeted human soluble CD59 attenuates choroidal neovascularization in a model of age related macular degeneration.PLoS One.2011 Apr 28;6(4):e19078)、このことは、sCD59の発現が、インビボでMAC沈着を減少させることができ、AMDにおいて治療有効性を有する可能性を示唆している。
【0008】
(発明の概要)
一態様によれば、記載される発明は、対象における加齢性黄斑変性症(AMD)を治療するための方法であって、本方法が、医薬組成物を眼注射によって対象のAMD罹患眼に投与することを含み、組成物が、プロモーターに作動可能に連結された可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードする核酸を含み、sCD59をコードする核酸が、送達ベクターにパッケージングされ、投与することで、AMD罹患眼の細胞によるsCD59タンパク質の発現及び分泌をもたらし、発現が、AMD罹患眼におけるAMD罹患細胞の治療をもたらす、方法を提供する。
【0009】
一実施形態によれば、AMDは、地図状萎縮(GA)である。
【0010】
一実施形態によれば、眼注射は、硝子体内注射である。別の実施形態によれば、硝子体内注射は、単回注射である。
【0011】
一実施形態によれば、送達ベクターは、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)ベクターである。別の実施形態によれば、AAVベクターは、AAV2である。
【0012】
一実施形態によれば、プロモーターは、CAGプロモーターである。
【0013】
一実施形態によれば、医薬組成物は、約3.56×1010DNAse耐性粒子(DNAse-resistant particles、DRP)、約1.071×1011DRP、約3.56×1011DRP及び約1.07×1012DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子を含む。
【0014】
別の態様によれば、記載される発明は、対象における補体活性障害を調節する方法であって、本方法が、対象の罹患細胞を、罹患細胞において組換え操作されたヒト可溶性CD59(sCD59)タンパク質の発現を引き起こすプロモーター配列に作動可能に連結された組換え操作されたヒト可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するベクターを含む医薬組成物と接触させることと、ここで、sCD59タンパク質が、膜標的化の喪失を引き起こすグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカードメインの機能喪失を引き起こす少なくとも1つの変異を含み、接触させた後に、補体活性障害の生理学的徴候を、接触させる前に観察された生理学的徴候の異常な量と比較して観察することと、を含み、接触させる前と比較した接触させた後の減少が、罹患細胞が治療されることの肯定的な指標である、方法を提供する。
【0015】
一実施形態によれば、補体活性障害は、GAである。
【0016】
一実施形態によれば、接触させることは、硝子体内注射によるものである。別の実施形態によれば、硝子体内注射は、単回注射である。
【0017】
一実施形態によれば、罹患細胞は、網膜細胞である。
【0018】
一実施形態によれば、ベクターは、AAV2である。
【0019】
一実施形態によれば、生理学的徴候は、最高矯正視力(best corrected visual acuity、BCVA)である。別の実施形態によれば、BCVAは、ベースラインからの平均変化として測定される。別の実施形態によれば、ベースラインからの平均変化は、-7.100文字である。
【0020】
一実施形態によれば、医薬組成物は、約3.56×1010DNAse耐性粒子(DRP)、約1.071×1011DRP、約3.56×1011DRP及び約1.07×1012DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子を含む。
【0021】
別の態様によれば、記載される発明は、補体障害を治療する方法であって、細胞を、治療有効量のヒトsCD59タンパク質をコードする核酸又はヒトsCD59タンパク質の発現源を活性薬剤として有する医薬組成物と接触させることを含む、それを必要とする対象に医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
一実施形態によれば、補体障害は、GAである。
【0023】
一実施形態によれば、接触させることは、硝子体内注射によるものである。別の実施形態によれば、硝子体内注射は、単回注射である。
【0024】
一実施形態によれば、罹患細胞は、網膜細胞である。
【0025】
一実施形態によれば、治療有効量は、約3.56×1010DNAse耐性粒子(DRP)、約1.071×1011DRP、約3.56×1011DRP及び約1.07×1012DRPからなる群から選択される用量のウイルス粒子である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】地図状萎縮(GA)を伴う進行性乾性加齢性黄斑変性症(AMD)を有する患者の治療のための遺伝子療法ベクターAAVCAGsCD59の単回硝子体内注射の安全性を確立するために行われた用量漸増試験を示す概略図を示す。DRP=DNAse耐性粒子。
【
図2】コホートによってラベル付けされた試験眼における、ベースラインから選択された来院までの変化を、地図状萎縮(GA)病変面積(mm)から変換された平方根で示すスパゲッティプロットを示す。sqrt=平方根。
【
図3】コホートによってラベル付けされた試験眼における、経時的な眼底自発蛍光(fundus autofluorescence、FAF)によって測定された地図状萎縮(GA)病変面積(mm)から変換された平方根でのベースラインからの変化についての95%信頼区間(confidence interval、CI)を有する最小二乗(least square、LS)平均を示すプロットを示す。CHG=変化、sqrt=平方根。
【
図4】試験眼(プールされたコホート)における、経時的な眼底自発蛍光(FAF)によって測定された地図状萎縮(GA)病変面積(mm)から変換された平方根でのベースラインからの変化についての95%信頼区間(CI)を有する最小二乗(LS)平均を示すプロットを示す。CHG=変化、sqrt=平方根。
【
図5】コホートによってラベル付けされた試験眼における、経時的な眼底自発蛍光(FAF)によって測定された地図状萎縮(GA)病変面積(mm
2)のベースラインからの変化についての95%信頼区間(CI)を有する最小二乗(LS)平均を示すプロットを示す。
【
図6】試験眼(プールされたコホート)における、経時的な眼底自発蛍光(FAF)によって測定された地図状萎縮(GA)病変面積(mm
2)のベースラインからの変化についての95%信頼区間(CI)を有する最小二乗(LS)平均を示すプロットを示す。
【
図7】コホートによってラベル付けされた試験眼における、距離最高矯正視力(BCVA)(文字)のベースラインから選択された来院までの変化のスパゲッティプロットを示す。全分析セット。CHG=変化。
【
図8】コホートによってラベル付けされた僚眼における、距離最高矯正視力(BCVA)(文字)のベースラインから選択された来院までの変化のスパゲッティプロットを示す。全分析セット。CHG=変化。
【0027】
(発明の詳細な記述)
記載される本発明は、添付の図及び図面と併せて、例示的な実施形態の以下の説明からより良く理解することができる。本明細書で提供される記載された実施形態は、単に例示的かつ説明的であり、限定的なものではないことが、当業者には明らかなはずである。
【0028】
定義:
本明細書全体で使用される様々な用語は、本明細書に記載される定義を有するものとする。
【0029】
本明細書で使用される「投与する」という用語は、インビボ投与、及びエクスビボでの組織への直接的な投与を含む。一般に、組成物は、所望な場合に従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含有する単位剤形製剤において、経口的に、口腔的に、非経口的に、局所的に、吸入若しくは通気によって(すなわち、口を介して、若しくは鼻を介して)、又は直腸的にのいずれかで全身的に投与され得るか、あるいは注射、移植、接合、局所適用、又は非経口などの手段によって局所的に投与され得るが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「弱める」という用語は、その力、効果、又は値を低下させることを意味する。
【0031】
本明細書で使用される「CD59」という用語は、例えば、内皮細胞、末梢神経線維、ニューロン、ミクログリア、希突起膠細胞、星状細胞、上衣細胞、上皮細胞、唾液腺の腺房細胞、気管支上皮、尿細管及び扁平上皮の上のヒト造血細胞及び非造血細胞の両方を含む細胞の膜に関連して見出される膜結合糖タンパク質を指す。CD59タンパク質は、機能的膜侵襲複合体(MAC)の構築を阻害し、したがって、補体媒介性の活性化及び/又は溶解から細胞を保護する。CD59のタンパク質構造は、単一のシステインリッチドメインと、3つのループを有する疎水性コアと、小さな第4のヘリックスループと、を含む(Yu et al.1997 Journal of Experimental Medicine 185(4):745-753)。ヒトCD59は、C末端に位置する26個のアミノ酸を含み、これは、位置77のアミノ酸アスパラギンでのグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー(GPIアンカー)の結合のためのシグナル配列を指定する。CD59のcDNA配列は、1997年4月29日に登録されたFodor et al.の米国特許第5,624,837号に示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
「状態」という用語は、本明細書で使用される場合、様々な健康状態を指し、何らかの根底にある機構又は傷害によって引き起こされる障害又は疾患を含むことを意味する。
【0033】
「疾患」又は「障害」という用語は、本明細書で使用される場合、健康の障害、又は異常な機能の状態を指す。
【0034】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、治療される患者に適した活性薬剤の物理的に異なる単位を指す。
【0035】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、疾患の予防、診断、緩和、治療、又は治癒に使用される治療剤又は任意の物質を指す。
【0036】
本明細書で使用される「ドルーゼン」という用語は、網膜下の黄色沈着物を指す。
【0037】
本明細書でその様々な文法形態で使用される「増強する」という用語は、質若しくは量の増加若しくは強化する、又はより良くする、若しくは増大させることを指す。
【0038】
「機能的等価」又は「機能的に等価」という用語は、類似又は同一の効果又は使用を有する物質、分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、又はポリペプチドを指すために本明細書において互換的に使用される。配列番号3と機能的に等価なポリペプチドは、例えば、配列番号3の発現されたポリペプチドと実質的に類似又は同一である生物学的活性、例えば、阻害活性、速度論的パラメータ、塩阻害、補因子依存的活性、及び/又は機能的単位サイズを有し得る。
【0039】
「阻害する」という用語、及び「阻害すること」又は「阻害」を含むがこれらに限定されない、その様々な文法形態は、プロセスの量若しくは速度を低下させること、プロセスを完全に停止させること、又はその作用若しくは機能を減少させること、制限すること、若しくはブロックすることを指すために本明細書において使用される。阻害は、物質の量、速度、作用機能、又はプロセスの、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の低下又は減少を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、第1の分子に結合し、それによって第1の分子の活性を減少させる第2の分子を指す。酵素阻害剤は、酵素に結合し、それによって酵素活性を減少させる分子である。阻害剤の結合は、基質が酵素の活性部位に入るのを停止させ、及び/又は酵素がその反応を触媒するのを妨げることができる。阻害剤の結合は、可逆的又は不可逆的のいずれかである。不可逆的阻害剤は、通常、酵素と反応し、例えば、酵素活性に必要な重要なアミノ酸残基を改変することによって、酵素を化学的に変化させる。対照的に、可逆的阻害剤は、非共有結合し、これらの阻害剤が酵素、酵素-基質複合体、又はその両方に結合するかどうかに応じて異なる種類の阻害を生じる。酵素阻害剤は、多くの場合、それらの特異性及び効力によって評価される。
【0041】
「傷害」という用語は、本明細書で使用される場合、物理的又は化学的であり得る外部の因子又は力によって引き起こされる身体の構造又は機能に対する損傷又は害を指す。
【0042】
「膜侵襲複合体」及び「MAC」という用語は、宿主の補体系の活性化の結果として病原体細胞膜の表面上に典型的に形成されるタンパク質の複合体を含む免疫系のエフェクターを指すために本明細書において互換的に使用される。抗体媒介性補体活性化は、感染細胞の表面上へのMAC沈着を引き起こし、感染細胞の細胞膜を破壊する孔を生じさせ、細胞溶解及び死を引き起こす。MACは、補体構成要素C5b、C6、C7、C8及びいくつかのC9分子から構成される。
【0043】
本明細書で使用される「改変する」という用語は、1つ以上の項目において特定の尺度又は割合に変更するか、変動させるか、調整させるか、徐々に変えるか、変化させるか、影響を及ぼすか、又は調節することを意味する。
【0044】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、特定の尺度又は割合に調節するか、変化させるか、適応させるか、又は調整することを意味する。
【0045】
「核酸」という用語は、本明細書において、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指すために使用され、特に限定されない限り、天然に存在するヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)と同様の様式で一本鎖核酸にハイブリダイズするという点で、天然ヌクレオチドの本質的な性質を有する既知のアナログを包含する。
【0046】
「ヌクレオチド」という用語は、本明細書中で、複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基からなる化学化合物を指すために使用される。最も一般的なヌクレオチドでは、塩基は、プリン又はピリミジンの誘導体であり、糖は、ペントースデオキシリボース又はリボースである。ヌクレオチドは、核酸を形成するために3つ以上が一緒に結合している核酸のモノマーである。ヌクレオチドは、RNA、DNA、並びにいくつかの補因子(CoA、FAD、DMN、NAD、及びNADPが挙げられるが、これらに限定されない)の構造単位である。プリンには、アデニン(A)及びグアニン(G)が含まれる。ピリミジンには、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)が含まれる。
【0047】
以下の用語は、2つ以上の核酸又はポリヌクレオチド間の配列関係を記載するために本明細書中で使用される。(a)「参照配列」、(b)「比較ウィンドウ」、(c)「配列同一性」、(d)「配列同一性の割合」、及び(e)「実質的同一性」。
【0048】
(a)「参照配列」という用語は、配列比較の基礎として使用される配列を指す。参照配列は、例えば、全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列として、指定された配列のサブセット又は全体であってもよい。
【0049】
(b)「比較ウィンドウ」という用語は、ポリヌクレオチド配列の連続した特定のセグメントを指し、ポリヌクレオチド配列を参照配列と比較してもよく、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の一部分が、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。一般に、比較ウィンドウは、少なくとも20個の連続したヌクレオチド長であり、任意選択的に、少なくとも30個の連続したヌクレオチド長、少なくとも40個の連続したヌクレオチド長、少なくとも50個の連続したヌクレオチド長、少なくとも100個の連続したヌクレオチド長、又はそれより長くてもよい。当業者は、ポリヌクレオチド配列内にギャップを含むことに起因する参照配列に対する高い類似性を回避するために、ギャップペナルティが典型的には導入され、マッチの数から差し引かれることを理解する。
【0050】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444(1988)の類似性方法についてのサーチによって、限定されないが、Intelligenetics, Mountain View, Calif.によるPC/GeneプログラムのCLUSTAL、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),575 Science Dr.,Madison,Wis.,USAのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAを含むこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって、実行され得る。CLUSTALプログラムは、Higgins and Sharp,Gene 73:237-244(1988)、Higgins and Sharp,CABIOS 5:151-153(1989)、Corpet,et al.,Nucleic Acids Research 16:10881-90(1988)、Huang,et al.,Computer Applications in the Biosciences,8:155-65(1992)、及びPearson, et al.,Methods in Molecular Biology,24:307-331(1994)に十分に記載されている。データベース類似性検索のために使用され得るプログラムのBLASTファミリーとしては、ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのBLASTN、タンパク質データベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのBLASTX、タンパク質データベース配列に対するタンパク質クエリー配列のためのBLASTP、ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質クエリー配列のためのTBLASTN、及びヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のためのTBLASTXが挙げられる。Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 19,Ausubel,et al.,Eds.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York(1995)を参照されたい。
【0051】
特に明記しない限り、本明細書で提供される配列同一性/類似性値は、デフォルトパラメータを使用するBLAST 2.0プログラムスイートを使用して得られた値を指す。Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、例えば、National Center for Biotechnology-Informationを通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときにマッチするか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリー配列における長さWの短いワードを特定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair、HSP)を特定することを伴う。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、上記)。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対についてのリワードスコア、常に0より大きい)及びパラメータN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア、常に<0)を使用して、累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は2つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長が停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリンマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照されたい)。
【0052】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間又は2つのアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の指標を提供する。BLAST検索は、タンパク質がランダム配列としてモデル化され得ることを仮定する。しかし、多くの実際のタンパク質は、ホモポリマートラクト(homopolymeric tract)、短期反復、又は1つ以上のアミノ酸が豊富な領域であり得る非ランダム配列の領域を含む。このような低複雑性領域は、タンパク質の他の領域が完全に非類似であっても、無関係なタンパク質間でアラインメントされ得る。多数の低複雑度フィルタプログラムを用いて、そのような低複雑性アラインメントを低下させることができる。例えば、SEG(Wooten and Federhen,Comput.Chem.,17:149-163(1993))及びXNU(Claverie and States,Comput.Chem.,17:191-201(1993))低複雑性フィルタを単独で、又は組み合わせて使用してもよい。
【0053】
(c)2つの核酸又はポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性」という用語は、本明細書において、特定の比較ウィンドウにわたって最大対応のためにアラインメントされたときに同じである2つの配列中の残基を指すために使用される。配列同一性の割合が、タンパク質を参照しつつ使用される場合、同一ではない残基位置は、多くの場合、保存的アミノ酸置換、すなわち、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、したがって分子の機能的特性を変更しない置換によって異なっていることが認識される。配列が、保存的置換で異なっている場合、配列同一性パーセントは、その置換の保存的性質を修正するために上方に調整され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。典型的には、このことは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコア付けし、それによって配列同一性の割合を増加させることを伴う。したがって、例えば、同一のアミノ酸にスコア1が与えられ、非保存的置換にスコア0が与えられる場合、保存的置換には、0と1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコア付けは、例えば、Meyers and Miller,Computer Applic.Biol.Sci.,4:11-17(1988)のアルゴリズムに従って、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,Calif.,USA)に実装されるように計算される。
【0054】
(d)「配列同一性の割合」という用語は、本明細書において使用され、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアライメントされた配列を比較することによって決定される値を意味し、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の一部分が、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。この割合は、同じ核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列に生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を、比較のウィンドウ内の位置の総数で割り算し、その結果に100をかけ算して配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0055】
(e)ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準パラメータを使用して記載されるアラインメントプログラムのうちの1つを使用して参照配列と比較して、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性及び少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、これらの値が、コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの配置などを考慮することによって、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために適切に調整され得ることを認識する。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は、通常、少なくとも60%、又は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を意味する。ヌクレオチド配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするかどうかである。しかし、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、依然として実質的に同一である。このことは、例えば、遺伝子コードによって許容される最大コドン縮重を用いて核酸のコピーが作製される場合に起こり得る。2つの核酸配列が実質的に同一であることの更なる指標は、第1の核酸がコードするポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。タンパク質配列の「実質的同一性」という用語は、第1及び第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメイン及び/又は共通の機能活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列中のアラインメントされたアミノ酸残基と同一である十分又は最小数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を指す。例えば、少なくとも約60%の同一性、又は少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、98%、又は99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含有する、アミノ酸配列。
【0056】
本明細書で使用される「非経口」という用語は、例えば、眼内(硝子体内としても知られる)(すなわち、眼の硝子体内への注射)、網膜下(すなわち、網膜の光受容体と網膜色素上皮(retinal pigment epithelium、RPE)層との間に存在する網膜下腔への注射)、皮下(すなわち、皮膚の下への注射)、筋肉内(すなわち、筋肉内への注射)、静脈内(すなわち、静脈内への注射)、髄腔内(すなわち、脊髄周囲の空間への注射)、胸骨内注射、又は注入技術を含む、注射(すなわち、注射による投与)による体内への導入を指す。非経口投与される記載される発明の組成物は、針、例えば外科用針を使用して送達される。本明細書で使用される「外科用針」という用語は、選択された解剖学的構造への記載された発明の流体(すなわち、流動し得る)組成物の送達に適合された任意の針を指す。注射可能調製物、例えば、滅菌注射可能な水性又は油性の懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の単離されたポリペプチドが安定かつ生物学的に利用可能なままである、医薬品の投与のために従来から使用可能な任意の実質的に非毒性の担体を指す。薬学的に許容される担体は、治療される哺乳動物への投与に適切なものにするために、十分に高い純度及び十分に低い毒性のものでなければならない。更に、活性薬剤の安定性及びバイオアベイラビリティを維持すべきである。薬学的に許容される担体は、液体又は固体であってもよく、計画された投与様式を考慮して、所定の組成物の活性薬剤及び他の構成要素と組み合わされる場合に、所望のバルク、一貫性などを提供するように選択される。
【0058】
「薬学的に許容される塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに、かつ合理的な利益/リスク比に見合う、ヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに好適な塩を意味する。
【0059】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学アナログであるアミノ酸ポリマー、及び天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。天然に存在するアミノ酸のこのようなアナログの本質的な性質は、タンパク質に組み込まれた場合、そのタンパク質が、同じタンパク質に対して惹起された抗体に対して特異的に反応性であるが、完全に天然に存在するアミノ酸からなることである。
【0060】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語はまた、サブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログ、又はペプチド模倣物の配列を指すために、それらの最も広い意味で本明細書中で使用される。サブユニットは、記載されている場合を除いて、ペプチド結合によって連結されている。本明細書中に記載されるポリペプチドは、化学的に合成され得るか、又は組換え発現され得る。記載される発明のポリペプチドはまた、化学的に合成され得る。固相、液相、若しくはペプチド縮合技術の周知の技術、又はそれらの任意の組み合わせを使用して調製される合成ポリペプチドは、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含み得る。ペプチド合成に使用されるアミノ酸は、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2154)の元々の固相手順の標準的な脱保護、中和、カップリング及び洗浄プロトコルを用いた、標準的なBoc(N-α-アミノ保護されたN-α-t-ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、又はCarpino and Han(1972,J.Org.Chem.37:3403-3409)によって最初に記載された塩基不安定性のN-α-アミノ保護された9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であり得る。Fmoc及びBoc N-α-アミノ保護されたアミノ酸は両方とも、Sigma、Cambridge Research Biochemical、又は当業者によく知られている他の化学会社から入手することができる。加えて、ポリペプチドは、当業者によく知られている他のN-α-保護基を用いて合成することができる。固相ペプチド合成は、当業者によく知られており、例えば、Stewart and Young,1984,Solid Phase Synthesis,Second Edition,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.、Fields and Noble,1990,Int.J.Pept.Protein Res.35:161-214で提供される技術によって、又は自動合成装置を使用することによって、達成され得る。本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸(インビボでL-アミノ酸特異的プロテアーゼに対して抵抗性である)、D及びL-アミノ酸の組み合わせ、並びに特別な特性を伝えるための種々の「デザイナー」アミノ酸(例えば、β-メチルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、及びN-α-メチルアミノ酸など)を含み得る。合成アミノ酸としては、リジンの代わりにオルニチン、及びロイシン又はイソロイシンの代わりにノルロイシンが挙げられる。加えて、ポリペプチドは、新規な特性を有するペプチドを調製するために、ペプチド模倣結合(例えば、エステル結合)を有し得る。例えば、還元されたペプチド結合、すなわちR1-CH2-NH-R2(R1及びR2はアミノ酸残基又は配列である)を組み込んだペプチドを生成してもよい。還元されたペプチド結合は、ジペプチドサブユニットとして導入され得る。このようなポリペプチドは、プロテアーゼ活性に対して耐性であり、インビボで延長された半減期を有する。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学アナログであるアミノ酸ポリマー、及び天然に存在するアミノ酸ポリマーにも適用される。天然に存在するアミノ酸のこのようなアナログの本質的な性質は、タンパク質に組み込まれた場合、そのタンパク質が、同じタンパク質に対して惹起された抗体に対して特異的に反応性であるが、完全に天然に存在するアミノ酸からなることである。
【0061】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語はまた、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADP-リボシル化を含むがこれらに限定されない改変を含む。よく知られているように、また上記のように、ポリペプチドは完全に直鎖状でなくてもよいことが理解されるであろう。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝していてもよく、それらは、一般に、翻訳後事象(天然のプロセシング事象及び天然に存在しないヒト操作によってもたらされる事象を含む)の結果として、分枝を有するか又は有さない環状であり得る。環状、分枝及び分枝環状ポリペプチドは、非翻訳天然プロセス及び完全な合成法によっても合成され得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、任意の長さ又はサイズを有するものである。
【0062】
本明細書で使用される「保存する」、「保存された」、「保存すること」又は「保存」という用語は、維持すること、害又は傷害から安全に保つこと、保護すること、機能を残すこと又は維持することを指す。
【0063】
「予防する」、「予防された」、「予防すること」又は「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、ある事象、行為、又は操作が起こること、発生すること、又は生じることを保つこと、妨げること、又は避けることを指す。
【0064】
「組換え」という用語は、異種核酸の導入によって改変された細胞若しくはベクター、又はそのように改変された細胞に由来する細胞を指す。組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内で同一形態で見出されない遺伝子を発現するか、又はそうでなければ、人為的介入の結果として異常に発現されるか、過小発現されるか、若しくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。本明細書中で使用される「組換え」という用語は、人為的介入を行わずに生じる事象などの天然に生じる事象(例えば、自然発生変異、自然形質転換、形質導入/転位)による細胞又はベクターの改変を包含しない。
【0065】
「組換え発現カセット」という用語は、宿主細胞において特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを有する、組換え的又は合成的に生成された核酸構築物を指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、ウイルス、又は核酸断片に組み込まれ得る。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、他の配列の中でも、特に、転写される核酸、プロモーター、及びポリAシグナルなどの転写終結シグナルを含む。
【0066】
「組換え宿主」という用語は、クローニングベクター又は発現ベクターのいずれかを含有する任意の原核細胞又は真核細胞を指す。この用語はまた、宿主細胞の染色体又はゲノム中にクローニングされた遺伝子又は目的の遺伝子を含有するように遺伝子操作された原核細胞又は真核細胞を含む。
【0067】
本明細書で使用される「組換えタンパク質」という用語は、遺伝子操作によって、例えば、微生物などの遺伝子改変生物の操作によって産生されるタンパク質を指す。
【0068】
本明細書で使用される「低下する」又は「低下すること」という用語は、障害を発症するリスクがある個体における障害の発生を制限することを指す。
【0069】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、プロセス、機能又は機構、例えば生物学的プロセスを制御又は維持することを意味する。
【0070】
「類似」という用語は、類似する、匹敵する、又は似ているという用語と互換的に使用され、共通の形質又は特徴を有することを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「溶液」という用語は、2つ以上の物質の均質な混合物を指す。必ずしも必要ではないが、液体であることが多い。溶液中では、溶質(又は溶解した物質)の分子は、溶媒の分子間に均一に分布している。
【0072】
本明細書で使用される「可溶性CD59」、「sCD59」及び「膜非依存性CD59」という用語は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを欠くか、又は細胞膜若しくは膜結合タンパク質などの細胞膜関連構造に結合する機能及び能力を欠く改変GPIアンカーを有するCD59アミノ酸配列を指す。
【0073】
「刺激する」という用語は、本明細書で使用される場合、その文法的形態のいずれにおいても、活性化を誘導すること又は活性を増加させることを指す。
【0074】
本明細書で使用される「懸濁液」という用語は、微細に分割された種が別の種と組み合わされ、前者が非常に微細に分割され混合されているため急速に沈降しない分散液(混合物)を指す。日常生活において、最も一般的な懸濁液は、液体中の固体の懸濁液である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「個体」又は「患者」又は「参加者」という用語は、ヒトを含む哺乳動物起源の動物種のメンバーを指すために互換的に使用される。「それを必要とする対象」という用語は、左心室リモデリングの疾患徴候を引き起こすAMIを有する対象を含む、心不全を有する対象、又は心不全への進行のリスクがある対象を指すために使用される。
【0076】
本明細書で使用される「そのような治療を必要とする対象」という語句は、疾患、障害、状態、又は病理学的プロセスに罹患している患者を指す。いくつかの実施形態では、「このような治療を必要とする対象」という用語はまた、文脈及び語句の使用が他の意味を示さない限り、(i)記載される発明のヒト可溶性CD59を発現するアデノウイルスベクター構築物の少なくとも1用量が投与され得る患者、(ii)記載される発明のヒト可溶性CD59を発現するアデノウイルスベクター構築物の少なくとも1用量を受けている患者、又は(iii)記載される発明のヒト可溶性CD59を発現するアデノウイルスベクター構築物の少なくとも1用量を受けたことがある患者を指すために使用される。
【0077】
本明細書で使用される「実質的に類似」という用語は、第1の値、態様、形質、特徴、数、又は量が、第2の値、態様、形質、特徴、数、又は量の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%であることを意味する。例えば、(配列番号3)に実質的に類似するポリペプチドは、アミノ酸配列(配列番号3)に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。
【0078】
「置換」という用語は、本明細書では、DNA配列において1つ以上の塩基が別の1つ以上の塩基と交換される状況を指すために使用される。置換は、同義置換又は非同義置換であってもよい。本明細書で使用される場合、「同義置換」は、産生されるアミノ酸配列が改変されないような、タンパク質をコードする遺伝子のエクソンにおける1つの塩基の別の塩基への置換を指す。本明細書で使用される「非同義置換」という用語は、産生されるアミノ酸配列が改変されるような、タンパク質をコードする遺伝子のエクソンにおける1つの塩基の別の塩基への置換を指す。
【0079】
「症状」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の疾患又は障害から生じ、それを伴い、その徴候として役立つ現象を指す。
【0080】
本明細書で使用される「症候群」という用語は、いくつかの疾患又は状態を示す症状のパターンを指す。
【0081】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、治療効果を提供する薬物、分子、核酸、タンパク質、代謝産物、組成物又は他の物質を指す。本明細書で使用される「活性」という用語は、意図された治療効果に関与する記載された発明の組成物の成分、構成要素又は構成成分を指す。「治療剤」及び「活性剤」という用語は、本明細書において互換的に使用される。「治療構成要素」という用語は、本明細書で使用される場合、集団のある割合において特定の疾患徴候の進行を排除、低下、又は予防する治療有効投薬量(すなわち、投与の用量及び頻度)を指す。一般的に使用される治療構成要素の一例は、集団の50%における特定の疾患徴候に対して治療的に有効である特定の投薬量における用量を記載するED50である。
【0082】
活性剤の「治療量」、「治療有効量」、「有効な量」、又は「薬学的有効量」という用語は、治療の意図される利益を提供するのに十分な量を指すために互換的に使用される。記載される発明に従って使用され得る活性剤の有効量は、一般に、用量あたり約1×1010 DNase抵抗性粒子(DRP)~1×1012 DRPの範囲である。しかしながら、投薬量レベルは、損傷の種類、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、及び使用される特定の活性剤を含む様々な因子に基づく。従って、投薬レジメンは、広範に変化し得るが、標準的な方法を使用して医師によって日常的に決定され得る。加えて、「治療量」、「治療有効量」及び「薬学的有効量」という用語は、記載される発明の組成物の防止的量又は予防的量を含む。記載される発明の防止的用途又は予防的用途では、医薬組成物又は医薬は、疾患、障害、又は状態の生化学的、組織学的、及び/又は行動的症状、その合併症、並びに疾患、障害又は状態の発生中に提示される中間病理学的表現型を含む、疾患、障害、又は状態のリスクをなくすか、若しくは低下させる、重症度を低下させる、又は発症を遅延させるのに十分な量で、疾患、障害、又は状態に罹患しやすいか、又はそうでなければリスクを有する患者に投与される。一般に、最大用量、すなわち、いくつかの医学的判断による最高安全用量を使用することが好ましい。「用量」及び「投薬量」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0083】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、その結果が望ましく有益であると判断される治療の結果を指す。治療効果は、直接的又は間接的に、疾患徴候の停止、低下、又は排除を含み得る。治療効果はまた、直接的又は間接的に、疾患徴候の進行の停止、低下又は排除を含み得る。
【0084】
本明細書中に記載される任意の治療剤について、治療有効量は、予備的なインビトロ試験及び/又は動物モデルから最初に決定され得る。治療有効用量はまた、ヒトデータから決定され得る。適用される用量は、投与される化合物の相対的バイオアベイラビリティ及び効力に基づいて調整され得る。上記の方法及び他の周知の方法に基づいて最大効力を達成するために用量を調節することは、当業者の能力の範囲内である。
【0085】
参照により本明細書に組み込まれるChapter 1 of Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)に見出すことができる、治療有効性を決定するための一般原理を以下に概説する。
【0086】
薬物動態原理は、許容することができない有害作用を最小限に抑えながら所望の程度の治療有効性を得るために、投薬レジメンを改変するための基礎を提供する。薬物の血漿濃度を測定し、治療ウィンドウに関連付けることができる状況では、投与量改変のための追加のガイダンスを得ることができる。
【0087】
薬物製品は、それらが同じ活性成分を含有し、強度又は濃度、剤形、及び投与経路が同一である場合、薬学的等価物であるとみなされる。2つの薬学的に等価な薬物製品は、2つの製品中の活性成分のバイオアベイラビリティの速度及び程度が、適切な試験条件下で有意に異ならない場合、生物学的に等価であるとみなされる。
【0088】
「治療ウィンドウ」という用語は、許容することができない毒性を伴わずに治療有効性を提供する濃度範囲を指す。ある用量の薬物の投与後、その効果は、通常、特徴的な時間的パターンを示す。薬物濃度が所望の効果のための最小有効濃度(「minimum effective concentration、MEC」)を超える前に、遅延期間が存在する。応答の開始後、効果の強度は、薬物が吸収され分配され続けるにつれて増加する。これがピークに達し、その後、薬物排除は、薬物濃度がMEC未満に戻るときに消失する効果の強度の低下をもたらす。したがって、薬物の作用の持続時間は、濃度がMECを超える期間によって決定される。治療目標は、最小の毒性で所望の応答のための治療ウィンドウ内の濃度を得て維持することである。所望の効果についてのMEC未満の薬物応答は、治療量未満であり、一方、有害な効果については、毒性の確率がMECを超えて増加する。薬物投薬量の増加又は減少は、応答曲線を強度スケールの上又は下にシフトさせ、これを使用して薬物の効果を調節する。用量の増加はまた、薬物の作用持続時間を延長するが、副作用の可能性を増加させるリスクがある。したがって、薬物が非毒性でない限り、用量を増加させることは、薬物の作用持続時間を延長するための有用な戦略ではない。
【0089】
代わりに、治療ウィンドウ内の濃度を維持するために、別の用量の薬物が与えられるべきである。一般に、薬物の治療範囲の下限は、可能な治療効果の約半分を生じる薬物濃度にほぼ等しいようであり、治療範囲の上限は、患者の約5%以上から約10%までが毒性効果を経験するようなものである。これらの数値は非常に変動しやすく、一部の患者は、治療範囲を超える薬物濃度から大いに恩恵を受ける場合があり、他の患者は、はるかに低い値で有意な毒性を被る場合がある。治療目標は、定常状態の薬物レベルを治療ウィンドウ内に維持することである。ほとんどの薬物について、この所望の範囲に関連する実際の濃度は知られておらず、また、知られている必要もなく、有効性及び毒性が一般に濃度依存的であること、並びに薬物投薬量及び投与頻度が薬物レベルにどのように影響を及ぼすかを理解すれば十分である。効力をもたらす濃度と毒性をもたらす濃度との間の差が小さい(2倍~3倍)少数の薬物については、有効な療法に関連する血漿濃度範囲が定義されている。
【0090】
標的レベル戦略が妥当である場合、有効性及び最小毒性に関連する薬物(通常は血漿中)の所望の標的定常状態濃度が選択され、この値を達成すると予想される投薬量が計算される。その後、薬物濃度を測定し、必要に応じて投薬量を調節して標的により近づける。
【0091】
ほとんどの臨床状況では、薬物は、治療ウィンドウに関連する薬物の定常状態濃度を維持するために、一連の反復用量で、又は連続注入として投与される。選択された定常状態又は標的濃度(「維持用量」)を維持するために、薬物投与速度は、入力速度が損失速度に等しくなるように調整される。臨床医が血漿中の薬物の所望の濃度を選択し、特定の患者におけるその薬物についてのクリアランス及びバイオアベイラビリティを知っている場合、適切な用量及び投薬間隔を計算することができる。
【0092】
「治療する」又は「治療すること」という用語は、疾患、状態又は障害の進行を抑制すること、実質的に阻害すること、緩徐化すること、若しくは逆行させること、状態の臨床症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、疾患、状態、又は障害の臨床症状若しくは審美的症状の外観を実質的に予防すること、及び有害な又は不快な症状から保護することを含む。治療することは、以下のうちの1つ以上を達成することを更に指す。(a)障害の重症度を低下させること、(b)治療される障害に特徴的な症状の発症を制限すること、(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を制限すること、(d)以前に障害を有していた患者における障害の再発を制限すること、(e)以前に障害に対して無症候性であった患者における症状の再発を制限すること。
【0093】
「バリアント」、「変異体」及び「誘導体」という用語は、本明細書中で、参照ヌクレオチド配列又は参照ポリペプチド配列に対して実質的な同一性を有するヌクレオチド配列又はポリペプチド配列を指すために使用される。配列における差異は、配列又は構造における、天然又は設計による変化の結果であり得る。天然の変化は、特定の核酸配列の性質における正常な複製又は重複の過程で生じ得る。設計された変化は、特定の目的のために特異的に設計され、配列に導入され得る。このような特定の変化は、種々の変異誘発技術を用いてインビトロで作製され得る。特異的に生成されたこのような配列バリアントは、元の配列の「変異体」又は「誘導体」と称され得る。
【0094】
当業者は、同様に、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有するが、配列番号3と機能的に等価である、ポリペプチド配列番号3のポリペプチドバリアントを生成し得る。これらのバリアントには、特に、以下のものが含まれ得る。(a)1つ以上のアミノ酸残基が保存的アミノ酸又は非保存的アミノ酸で置換されているバリアント、(b)1つ以上のアミノ酸が付加されたバリアント、(c)少なくとも1つのアミノ酸が置換基を含むバリアント、(d)ある種に由来するアミノ酸残基が、保存された位置又は保存されていない位置のいずれかで、別の種における対応する残基と置換されているバリアント、及び(d)標的タンパク質が、標的タンパク質に有用な特性を付与し得る、融合パートナー、タンパク質タグ又は他の化学的部分などの別のペプチド又はポリペプチド、例えば、抗体に対するエピトープと融合されているバリアント。このようなバリアントを得るための技術(遺伝的技術(抑制、欠失、変異など)、化学的技術、及び酵素的技術が挙げられるが、これらに限定されない)は、当業者に公知である。本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、遺伝子をコードするDNAのヌクレオチド配列の変化を通して、又は染色体の物理的配置の変化を通してのいずれかで、親型に見出されない新しい特徴又は形質の創出をもたらす生物の遺伝子又は染色体内のDNA配列の変化、又はそのような変化が染色体に生じるプロセスを指す。変異の3つの機構には、置換(1つの塩基対の別のものへの交換)、付加(配列への1つ以上の塩基の挿入)、及び欠失(1つ以上の塩基対の喪失)が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、細胞に遺伝子を送達するように遺伝子操作された担体を指す。本明細書で使用される「ウイルスベクター」という用語は、細胞に感染させることによって目的の遺伝子を送達するためのベクターとして使用されるウイルスを指す。このようなウイルスは、ヒトに使用した場合に疾患を引き起こすことができないように改変されている。ウイルスの種類としては、それらの遺伝物質(目的の遺伝子を含む)を細胞内の染色体に組み込むレトロウイルス、及びそれらのDNA(目的の遺伝子を含む)を染色体に組み込むことなく細胞の核に導入するアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で使用される「ビヒクル」という用語は、それと混合される薬物又は他の材料の使用を容易にする物質を指す。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、ヒト可溶性CD59(sCD59)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態によれば、ヌクレオチド配列は、相補的DNA(cDNA)配列である。
【0098】
ヒトCD59をコードするcDNA配列は、当該分野で既知である。例えば、cDNA配列は、Sawada,R.et al.1989 Nucleic Acids Res 17(16):6728によって報告されており、American Type Tissue Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.)から入手可能である。CD59をコードするcDNAはまた、ヒトT細胞白血病(YT)及びヒト赤白血病(K562)細胞株からクローン化されており、CD59は、COS細胞において一過性に発現されている(Walsh,L.A.et al.1990 Eur J.Immol 21(3):847-850)。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、機能的グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの一次アミノ酸配列を欠いている。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、機能的に欠損しており、かつ膜を標的とする能力を欠く改変GPIアンカードメインアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、改変GPIアンカードメインアミノ酸配列は、変異を含む。このような変異としては、限定されないが、GPIアンカーの結合を低下させるか、若しくはなくするか、又はGPIアンカーの有効な機能性を低下させるか、若しくはなくするために使用されるオメガ位置でのアミノ酸をコードする核酸の置換及び欠失が挙げられる。オメガアミノ酸は、GPIが転移されるアミノ酸である。例えば、このような変異としては、限定されないが、疎水性ロイシンをコードする核酸(例えば、核酸CTG)及びアラニンをコードする核酸(例えば、核酸GCA)を、疎水性の低い(すなわち、親水性の高い)アミノ酸であるグリシンをコードする核酸(例えば、核酸CAG)及びグルタミン酸をコードする核酸(例えば、核酸GAA)で置換することが挙げられる。あるいは、変異は、オメガ残基を別のアミノ酸で置換すること(例えば、チロシンをグリシンで置換すること)を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明のヒトsCD59タンパク質は、保存的配列改変を含む。保存的配列改変は、アミノ酸配列を含有するヒトsCD59タンパク質の特徴に有意に影響を及ぼさないか、又は変化させないアミノ酸改変であり、すなわち、同じ相対的位置でこれらの側鎖を提示するsCD59のアミノ酸配列は、ヒトsCD59と類似の様式で機能する。かかる保存的改変は、アミノ酸の置換、付加、及び欠失を含む。アミノ酸配列を改変する方法は、当該分野で知られている(例えば、部位特異的変異誘発又はPCRベースの変異誘発)。このような技術は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1989に記載されている。いくつかの実施形態によれば、記載される発明のヒトsCD59タンパク質は、保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59アミノ酸配列は、野生型配列のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一である。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、配列番号3を含む。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、配列番号3から本質的になる。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、配列番号3である。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明のヒトsCD59は、組換えタンパク質である。
【0104】
様々な市販の発現ベクター/宿主系が、CD59タンパク質をコードする配列を含み、これを発現するのに有用である。これらには、限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミド若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)と接触した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)でトランスフェクトされたか、細菌発現ベクター(例えば、Ti、pBR322、又はpET25bプラスミド)でトランスフェクトされた、植物細胞系;又は動物細胞系が含まれる。Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1989を参照されたい。
【0105】
核酸配列を変化させて組換えタンパク質を産生するための技術は、遺伝学及び分子生物学の分野においてよく知られている。組換えタンパク質発現のための従来の戦略は、所望のタンパク質を発現するためのテンプレートを含有するDNAベクターで細胞をトランスフェクトすること、次いで、細胞が所望のタンパク質を転写し、翻訳するように細胞を培養することを伴う。次いで、細胞を溶解して、その後の精製のために発現されたタンパク質を抽出する。
【0106】
組換えタンパク質発現において使用される細胞の種類としては、原核細胞及び真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。原核細胞としては、細菌細胞が挙げられるが、これに限定されない。細菌細胞の非限定的な例としては、Escherichia coliが挙げられる。真核細胞としては、哺乳動物、昆虫、酵母及び藻類細胞が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞の非限定的な例としては、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK293、HEK293T)、ベビーハムスター腎細胞(例えば、BHK21)、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0)及びマウス非産生ハイブリドーマ細胞(例えば、SP2/O-Ag14)が挙げられる。昆虫細胞の非限定的な例としては、Spodoptera frugiperda pupa卵巣細胞(例えば、Sf9、Sf21)が挙げられる。酵母細胞の非限定的な例としては、Saccharomyces cerevisiaeが挙げられる。藻類細胞の非限定的な例としては、Chlamydomonas reinhardtiiが挙げられる。
【0107】
組換えタンパク質を発現させる方法には、無細胞系も含まれる。無細胞タンパク質発現は、細胞から抽出された生体分子翻訳機構を使用する、溶液(すなわち、細胞溶解物)中の組換えタンパク質のインビトロ産生を含む。
【0108】
タンパク質精製の種々の方法が使用されてもよく、そのような方法は当該分野で知られており、例えば、Deutscher,Methods in Enzymology,182(1990);Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer-Verlag,New York(1982)に記載されている。選択される1つ以上の精製工程は、例えば、使用される生成プロセス及び生成される特定のタンパク質の性質に依存する。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、合成タンパク質である。合成タンパク質を調製する方法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Peptide Synthesis Protocols,Methods in Molecular Biology,vol.35,Pennington,M.W.and Dunn,B.M.,1995,XII,Humana Press,Inc.Totowa,New Jerseyを参照されたい。固相、液相、若しくはペプチド縮合技術の周知の技術、又はそれらの任意の組み合わせを使用して調製される合成タンパク質は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含み得る。ペプチド合成に使用されるアミノ酸は、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2154)の元々の固相手順の標準的な脱保護、中和、カップリング及び洗浄プロトコルを用いた、標準的なBocアミノ酸樹脂、又はCarpino and Han(1972,J.Org.Chem.37:3403-3409)によって最初に記載された塩基不安定性のN-α-アミノ保護された9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であり得る。Boc及びFmocアミノ保護されたアミノ酸は両方とも、Sigma又は当業者によく知られている他の化学会社から入手することができる。ペプチドは、当業者によく知られている他のN-α保護基を用いて合成することもできる。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列を使用して発現ベクターを構築する。いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、ヒトsCD59発現構築物を提供する。発現ベクターを構築するために使用される方法は、当業者によく知られている。例えば、このような方法を使用して、適切な転写及び翻訳制御エレメントに作動可能に連結されたヒトsCD59タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ組換え又は遺伝的組換えが挙げられるが、これらに限定されない。このような技術は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989に記載されている。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、細胞周期特異的プロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、ユビキタスプロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。組織特異的プロモーターの例としては、ヒトロドプシンキナーゼ(human rhodopsin kinase、hRK)プロモーター及び網膜色素上皮特異的プロモーター(例えば、RPE65プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、代謝的に調節されるプロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモート(promote)は、ハイブリッドプロモーターである。ハイブリッドプロモーターの非限定的な例は、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント/ニワトリベータ-アクチン遺伝子の第1のエクソン及び第1のイントロン/ウサギベータ-グロビン遺伝子(CAG)のスプライスアクセプターである。プロモーターの非限定的な例は、2004年1月13日に登録されたEvans et al.の米国特許第6,677,311(B1)号、2006年9月19日に登録されたClark et al.の米国特許第7,109,029(B2)号、及び1999年12月7日に登録されたHallenbeck et al.の米国特許第5,998,205号に示されており、これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として組み込まれる。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターに作動可能に連結されたヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列は、送達ベクターにパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59発現構築物は、送達ベクターにパッケージングされる。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、送達ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、及びヘルパー依存性アデノウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
アデノウイルスベクターは、American Type Tissue Culture Collection(Manassas,Va.)から市販されている。アデノウイルスベクターを構築し、アデノウイルスベクターを使用する方法は、Klein et al.2007 Ophthalmology 114:253-262、及びvan Lecuwen et al.2003 Eur.J.Epidemiol.18:845-854に記載されている。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levrero et al.1991 Gene,101:195-202)及びワクチン開発(Graham et al.1991 Methods in Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols 7,(Murray,Ed.),Humana Press,Clifton,N.J.,109-128)に使用されてきた。更に、組換えアデノウイルスベクターは、遺伝子療法に使用される(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2007年6月26日に登録されたWu et al.の米国特許第7,235,391号)。
【0115】
組換えアデノウイルスベクターは、例えば、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの間の相同組換えから生成される(Wu et al.、2007年6月26日に登録された米国特許第7,235,391号)。本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、複製欠損である。例えば、アデノウイルスベクターは、条件的欠損であり、アデノウイルスE1領域を欠く。目的のタンパク質(例えばヒトsCD59)をコードするポリヌクレオチドは、E1コード配列が除去された位置に導入される。あるいは、目的のタンパク質(例えば、ヒトsCD59)をコードするポリヌクレオチドは、アデノウイルスのE3領域に挿入され得る。
【0116】
欠損アデノウイルスベクターは、ヘルパー細胞株を使用して生成され、増殖され得る。ヘルパー細胞株は、293ヒト胚性腎臓細胞(293 human embryonic kidney cell、HEK293)、筋肉細胞、造血細胞、又は他のヒト胚性間葉細胞若しくは上皮細胞などのヒト細胞に由来し得る。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスを許容する他の哺乳動物種の細胞(例えば、Vero細胞又は他のサル胚性間葉細胞若しくは上皮細胞)に由来し得る。ヘルパー細胞株を使用するこれらの複製欠損アデノウイルスベクターの生成及び増殖は、Graham et al 1977 J.Gen.Virol.36:59-72に記載されている。
【0117】
レンチウイルスパッケージングベクターは、Invitrogen Corporation(Carlsbad Calif.)から市販されている。レンチウイルスベクターの産生のためのHIVベースのパッケージング系は、Naldini et al.1996 Science 272:263-267;Zufferey et al.1997 Nature Biotechnol.15:871-875、及びDull et al.1998 J.Virol.72:8463-8471に記載されている構築物を使用して調製される。第3世代レンチウイルスSINベクター骨格に基づく系を使用してパッケージングされる多数のベクター構築物が利用可能である(Dull et al.1998 J.Virol.72:8463-8471)。例えば、ベクター構築物pRRLsinCMVGFPpreは、HIVプロモーター配列がラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus、RSV)の配列で置き換えられている5’LTR、U3プロモーター領域に欠失を含む自己不活性化3’LTR、HIVパッケージングシグナル、CMVプロモーターによって駆動されるAequora jellyfish緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)からなるマーカー遺伝子カセットに連結されたRRE配列、及び核外輸送を増強するようであるウッドチャック肝炎ウイルスPREエレメントを含有する。GFPマーカー遺伝子は、UV蛍光顕微鏡法又はフローサイトメトリーの直接観察によるトランスフェクション又は形質導入効率の定量化を可能にする(Kafri et al.1997 Nature Genet.17:314-317、及びSakoda et al.1999 J.Mol.Cell.Cardiol.31:2037-2047)。
【0118】
目的の遺伝子(例えば、ヒトsCD59タンパク質をコードする遺伝子)及びパッケージング細胞を含有するレトロウイルスベクターを構築するためのレトロウイルス核酸の操作は、当該技術分野で知られている技術を使用して達成される(例えば、その各々が参照によりその全体が組み込まれる、Ausubel,et al.,1992,Volume 1,Section III(units 9.10.1-9.14.3)、Sambrook,et al.,1989.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Second Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Miller,et al.,Biotechniques.7:981-990,1989、Eglitis,et al.,Biotechniques.6:608-614,1988、米国特許第4,650,764号、同第4,861,719号、同第4,980,289号、同第5,122,767号、及び同第5,124,263号、並びに国際公開第85/05629号、国際公開第89/07150号、国際公開第90/02797号、国際公開第90/02806号、国際公開第90/13641号、国際公開第92/05266号、国際公開第92/07943号、国際公開第92/14829号、及び国際公開第93/14188号を参照されたい)。
【0119】
レトロウイルスベクターを構築し、両種指向性パッケージング系を用いて非感染性形質導入ウイルス粒子(ビリオン)にパッケージングすることができる。このようなパッケージング系の例は、Miller et al.1986 Mol.Cell Biol.6 :2895-2902、Markowitz et al.1988 J.Virol.62:1120-1124、Cosset et al.1990 J.Virol.64:1070-1078、米国特許第4,650,764号、同第4,861,719号、同第4,980,289号、同第5,122,767号、及び同第5,124,263号、並びに国際公開第85/05629号、国際公開第89/07150号、国際公開第90/02797号、国際公開第90/02806号、国際公開第90/13641号、国際公開第92/05266号、国際公開第92/07943号、国際公開第92/14829号、及び国際公開第93/14188号に記載され、その各々が参照によりその全体が組み込まれる。「プロデューサー細胞」の生成は、パッケージング細胞にレトロウイルスベクターを導入することによって達成することができる。そのようなレトロウイルスベクターの例は、例えば、Korman et al.1987 Proc.Natl.Acad.Sci.USA.84:2150-2154、Morgenstern et al.1990 Nucleic Acids Res.18:3587-3596,米国特許第4,405,712号、同第4,980,289号、及び同第5,112,767号、並びに国際公開第85/05629号、国際公開第90/02797号、及び国際公開第92/07943号の中に見出されている。
【0120】
ヘルペスウイルスパッケージングベクターは、Invitrogen Corporation,(Carlsbad,Calif.)から市販されている。例示的なヘルペスウイルスとしては、限定されないが、水痘帯状疱疹ウイルス又は仮性狂犬病ウイルスなどのα-ヘルペスウイルス;HSV-1又はHSV-2などの単純ヘルペスウイルス;又はエプスタイン-バーウイルスなどのヘルペスウイルスが挙げられる。ほとんどのヘルペスウイルスに対して能力があるヘルパーウイルスの非存在下で、所望のヌクレオチドセグメント(例えば、ヒトsCD59ヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列)でパッケージングされ得る空のヘルペスウイルス粒子を調製するための方法は、Fraefel et al.(1999年12月7日に登録された米国特許第5,998,208号(その全体が参考として組み込まれる))に記載される。
【0121】
ヘルペスウイルスDNAベクターは、当業者に知られている技術を用いて構築することができる。例えば、ヘルペスウイルスの全ゲノムをコードするDNAセグメントは、大きなDNAセグメントを保有し得る多くのベクターの中で、例えば、コスミド(Evans,et al.,Gene 79,9-20,1989)、酵母人工染色体(yeast artificial chromosomes、YACS)(Sambrook,J.et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)又はE.coli Fエレメントプラスミド(O’Conner et al.1989 Science 244:1307-1313)に分けられる。例えば、エプスタイン-バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びHSV-1を含む種々のヘルペスウイルスの全ゲノムを表す重複クローンを含むコスミドのセットが単離されている。M.van Ziji et al.1988 J.Virol.62:2191、Cohen et al.1993 Proc.Nat’l Acad.Sci.U.S.A.90:7376、Tomkinson et al.1993 J.Virol.67:7298、及びCunningham et al.1993 Virology 197:116を参照されたい。
【0122】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、培養細胞において増殖性感染を受けるために別のウイルス(アデノウイルス又はヘルペスウイルスファミリーのメンバーのいずれか)との同時感染に依存するという点で、依存性パルボウイルスである(Muzyczka 1992 Curr.Top.Microbiol.Immunol.,158:97 129)。例えば、組換えAAV(recombinant AAV、rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端反復に隣接する目的の遺伝子(例えば、ヒトsCD59遺伝子)を含有するプラスミド(McLaughlin et al.1988 J.Virol.,62(6):1963-1973、Samulski et al.1989 J.Virol,63:3822-3828)、及び末端反復を含まない野生型AAVコード配列を含有する発現プラスミドを共トランスフェクトすることによって作製することができる。細胞はまた、AAVヘルパー機能に必要とされるアデノウイルス遺伝子を保有するアデノウイルス又はプラスミドと接触するか、又はそれらでトランスフェクトされる。
【0123】
ほとんどのウイルスとは異なり、AAVは、本質的に非病原性であり、免疫原性が低く、広範に指向性であり、ウイルスベースの遺伝子療法のための魅力的な遺伝子送達候補となっている。ほとんどの天然に存在するAAVは、細胞表面への最初の付着のためにグリカン部分を利用し、これらの相互作用は、いくつかの血清型について十分に特性決定されてきた。特定された相互作用するグリカン部分には、AAV血清型2(AAV2)、AAV3、AAV6及びAAV8;AAV9の場合のN末端ガラクトース;並びにAAV1、-4、-5、及び-6の場合の特異的なN結合又はO結合シアル酸部分が挙げられる。血清型は、それらが感染する細胞型によって異なり、AAVを、特定の細胞型を優先的に形質導入するための非常に有用な系にしている。
【0124】
アデノ随伴ウイルス(AAV)パッケージングベクターは、GeneDetect(Auckland,New Zealand)から市販されている。AAVは、感染性について広い宿主範囲を有する(Tratschin et al.1984 Mol.Cell.Biol.4:2072-2081、Laughlin et al.1986 J.Virol.,60(2):515-524、Lebkowski et al.1988 Mol.Cell.Biol.8(10):3988-3996、McLaughlin et al.1988 J.Virol.62(6):1963-1973)。
【0125】
AAVベクターを構築する方法及びAAVベクターを使用する方法は、当該技術分野で知られている。このような方法は、例えば、2007年6月26日に登録された米国特許第5,139,941号(Wu et al.)及び1989年1月10日に登録された米国特許第4,797,368号(Carter et al.)に記載されている。遺伝子送達におけるAAVの使用は、LaFace et al.1988 Virology 162(2):483 486、Zhou et al.1993 Exp.Hematol,21:928-933、Flotte et al.1992 Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.7(3):349-356、及びWalsh et al.1994 J.Clin.Invest 94:1440-1448に更に記載されている。
【0126】
組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子のインビトロ及びインビボでの形質導入(Kaplitt et al.1994 Nat Genet.,8(2):148-154、Lebkowski et al.1988 Mol.Cell.Biol.8(10):3988-3996、Samulski et al.1991 EMBO J.10:3941-3950、Shelling and Smith 1994 Gene Therapy,1:165-169、Yoder et al.1994 Blood,82(Supp.):1:347A、Zhou et al.1993 Exp.Hematol 21:928-933、Tratschin et al.1985 Mol.Cell.Biol.5:3258-3260、McLaughlin et al.1988 J.Virol.62(6):1963-1973)並びにヒト疾患に関与する遺伝子の形質導入(Flotte et al.1992 Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.7(3):349-356、Ohi et al.1990 Gene,89(2):279-282、Walsh et al.1994 J.Clin.Invest.94:1440-1448、及びWei et al.1994 Gene Therapy,1:261 268)のために、首尾良く使用されてきた。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターに作動可能に連結されたヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV2である。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV5である。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV8である。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV2である。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV5である。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV8である。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列は、AAVベクター内の逆方向末端反復(inverted terminal repeat、ITR)配列の間にパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、プロモーターに作動可能に連結されたヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列は、AAVベクター内の逆方向末端反復(ITR)配列の間にパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59発現ベクターは、AAVベクター内の逆方向末端反復(ITR)配列の間にパッケージングされる。いくつかの実施形態によれば、ITR配列は、AAV2配列である。いくつかの実施形態によれば、ITR配列は、AAV5配列である。いくつかの実施形態によれば、ITR配列は、AAV8配列である。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、ハイブリッドベクターである。ハイブリッドベクターは、1つのAAV血清型由来のITR配列と、異なるAAV血清型由来のカプシドタンパク質と、を含有する。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV2由来のITR配列と、AAV5由来のカプシドタンパク質(AAV2/5)と、を含む。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV2由来のITR配列と、AAV8由来のカプシドタンパク質(AAV2/8)と、を含む。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV5由来のITR配列と、AAV2由来のカプシドタンパク質(AAV5/2)と、を含む。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV5由来のITR配列と、AAV8由来のカプシドタンパク質(AAV5/8)と、を含む。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV8由来のITR配列と、AAV2由来のカプシドタンパク質(AAV8/2)と、を含む。いくつかの実施形態によれば、ハイブリッドベクターは、AAV8由来のITR配列と、AAV5由来のカプシドタンパク質(AAV8/5)と、を含む。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、送達ベクターは、非ウイルスベクターである。例えば、送達ベクターは、ウイルス粒子に関連せず、かつ標的細胞又は組織に遺伝子材料を特異的に送達する合成遺伝子送達ビヒクル又はベクターである。非ウイルスベクターの例としては、限定されないが、リポソーム、ペプチド、ナノ粒子、エマルション、又は封入された2つ以上の相系若しくは他の適切な調製物が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、組織又は細胞にロードされ、接触する核酸を有する非ウイルスベクターを提供する。例として、膜を標的としない改変GPIアンカーを有するヒトsCD59タンパク質をコードする裸のDNA、又はGPIアンカーを有さないヒトsCD59タンパク質をコードする遺伝子を含有するリポソームをリポソーム内に封入し、核酸が組織又は細胞に効果的に送達されるようにリポソームを組織又は細胞に接触させる。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、位置77のアミノ酸アスパラギンをコードするヌクレオチドにおけるGPIアンカーの結合のためのシグナル配列を除去するように改変されたCD59の全長核酸を含むヒトsCD59タンパク質を含む。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59タンパク質の核酸配列は、GPIアンカー位置に改変アミノ酸配列を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を得るような点突然変異、置換又は欠失によって修飾され、その結果、タンパク質が細胞膜に付着することができない。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、CD59をコードする核酸又はヒトsCD59タンパク質発現源を含む医薬組成物を提供する。様々な実施形態では、CD59タンパク質は、膜非依存性(すなわち、可溶性)CD59タンパク質を含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、眼への投与のための眼科用製剤として配合される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、眼底への送達を増強するように配合される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、網膜への局所的な持続放出を提供するように配合される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、眼疾患に関与する血管及び/又は組織の有効な治療を提供するように製剤化される。いくつかの実施形態によれば、眼疾患は、加齢性黄斑変性症(AMD)である。いくつかの実施形態によれば、AMDは、湿性又は滲出型AMDである。いくつかの実施形態によれば、AMDは、乾性AMD又は地図状萎縮(GA)である。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明の医薬組成物は、ヒト対象への、例えばヒト対象の眼への投与のために十分に純粋に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤を含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、成長因子、抗炎症剤、昇圧剤からなる群から選択され、限定されないが、酸化窒素及びカルシウムチャネル遮断薬、コラゲナーゼ阻害剤、ステロイド(例えば、プレドニゾロン)、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アスコルベート、アンジオテンシンH、アンジオテンシンIII、カルレティキュリン、テトラサイクリン、フィブロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、トランスフォーミング成長因子(transforming growth factor、TGF)、ケラチノサイト成長因子(keratinocyte growth factor、KGF)、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor、FGF)、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、IGF結合タンパク質(IGF binding protein、IGFBP)、上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)、血小板由来成長因子(platelet derived growth factor、PDGF)、neu分化因子(neu differentiation factor、NDF)、肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor、HGF)、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、ヘパリン結合EGF(heparin-binding EGF、HBEGF)、トロンボスポンジン、フォン・ヴィレブランド因子-C、ヘパリン及びヘパリン硫酸、並びにヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤としては、限定されないが、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、抗増殖剤又は抗アポトーシス剤が挙げられる。記載される発明の医薬組成物に含まれる治療剤は、当該技術分野で周知である。例えば、その内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman,et al.,eds.,McGraw-Hill,1996を参照されたい。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、化合物、組成物、生物製剤などである。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、MAC沈着から細胞を保護するヒトsCD59タンパク質の能力を高め、安定化し、相乗作用するか、又は置換する。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、ヒトsCD59タンパク質を含む医薬組成物と同時に提供される。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、ヒトsCD59タンパク質を含む医薬組成物の後に提供される。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤は、ヒトsCD59タンパク質を含む医薬組成物の前に提供される。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の治療剤を使用して、同じ、併発する、又は関連する症状、状態又は疾患を治療する。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体としては、限定されないが、所望される特定の財形に適した、任意の及び全ての溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散助剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences Ed.by Gennaro,Mack Publishing,Easton,Pa.,1995は、医薬組成物を製剤化する際に使用される種々の担体及びその調製のための公知の技術を提供する。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、限定されないが、グルコース及びスクロースなどの糖;カカオバター及び座剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;及びリン酸緩衝溶液、及びラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合性潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、保存剤及び抗酸化剤も、配合者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0137】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、補体障害(例えば、AMD)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本方法は、細胞又は組織を、ヒトsCD59タンパク質源を含む医薬組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、プロモーターに作動可能に連結されたヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、ヒトsCD59発現構築物を含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、送達ベクターにパッケージングされるプロモーターに作動可能に連結されたヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、送達ベクターにパッケージングされるヒトsCD59発現構築物を含む。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59タンパク質は、組換えタンパク質として投与される。
【0139】
理論に束縛されるものではないが、細胞の形質膜は、通常、C9補体タンパクが膜C5b-8に結合した際にC5b-9ポアの活性化を特異的に阻害する細胞表面タンパク(例えば、CD59)によって補体の影響から保護されていることが理解される(Holguin et al.1989 J.Clin.Invest.84:7-17、Sims et al.1989 J.Biol.Chem.264:19228-19235、Davies et al.1989 J.Exp.Med.170:637-654、Rollins et al.1990 J.Immunol.144:3478-3483、及びHamilton et al.1990 Blood 76:2572-2577)。CD59は、C5b-8複合体中のC8補体タンパク質への結合についてC9補体タンパク質と競合し、それによって、C5b-9膜侵襲複合体の形成を減少させるか、又は防止する。したがって、CD59は、終末補体MACによる細胞活性化及び細胞溶解の両方を減少させるように作用する。
【0140】
学説は、加齢性黄斑変性症(AMD)などの疾患の原因と、補体系の活性化及びMACの形成とを結びつけてきた。Dinu(2007年8月23日に公開された米国特許出願第2007/0196367(A1)号)は、AMDの治療薬として補体を阻害することによってデブリ形成を予防することを提案している。
【0141】
制御されない補体活性に関連する疾患には、Haemophilus influenza、Streptococcus pnemoniae、Neisseria meningitidisなどによる細菌感染;血管性浮腫;腎疾患、例えば、非定型溶血性尿毒症症候群;発作性夜間ヘモグロビン尿症;全身性エリテマトーデス;アルツハイマー病、ハンチントン病、及び加齢性黄斑変性症(AMD)を含むがこれらに限定されない網膜の疾患を含む、中枢神経系疾患が挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、ヒト可溶性CD59(sCD59)は、MAC形成を阻害するのに有効である。いくつかの実施形態によれば、MAC形成は、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって阻害される。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、AMDを治療するのに有効である。いくつかの実施形態によれば、AMDは、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって治療される。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、AMDの発症を予防するのに有効である。いくつかの実施形態によれば、AMDの発症は、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって予防される。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、AMDの進行を予防するのに有効である。いくつかの実施形態によれば、AMDの進行は、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって予防される。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、AMDの進行を逆行させるのに有効である。いくつかの実施形態によれば、AMDの進行は、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって逆行する。いくつかの実施形態によれば、AMDは、湿性又は滲出型AMDである。いくつかの実施形態によれば、AMDは、乾性AMD又は地図状萎縮(GA)である。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、脈絡膜新生血管(CNV)を弱めるのに有効である。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、脈絡膜新生血管(CNV)を弱めるのに有効な遺伝子療法の方法を使用するアプローチによって送達される。いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、CNVスポット上のMAC沈着の程度を低下させるのに有効である。いくつかの実施形態によれば、CNVスポット上のMAC沈着の程度は、ヒトsCD59コード核酸を含有するベクターを細胞内に送達することによって低下する。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、網膜細胞の溶解を予防する。いくつかの実施形態によれば、網膜細胞の溶解は、ヒトsCD59をコードする核酸を含有するベクターを細胞に送達することによって予防される。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって送達される。いくつかの実施形態によれば、アデノ随伴ウイルスベクターは、AAV2である。いくつかの実施形態によれば、アデノ随伴ウイルスは、AAV5である。いくつかの実施形態によれば、アデノ随伴ウイルスベクターは、AAV8である。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV2由来のITR配列と、AAV5由来のカプシドタンパク質(AAV2/5)と、を含むハイブリッドベクターである。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV2由来のITR配列と、AAV8由来のカプシドタンパク質(AAV2/8)と、を含むハイブリッドベクターである。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV5由来のITR配列と、AAV2由来のカプシドタンパク質(AAV5/2)と、を含むハイブリッドベクターである。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV5由来のITR配列と、AAV8由来のカプシドタンパク質(AAV5/8)と、を含むハイブリッドベクターである。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV8由来のITR配列と、AAV2由来のカプシドタンパク質(AAV8/2)と、を含むハイブリッドベクターである。いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV8由来のITR配列と、AAV5由来のカプシドタンパク質(AAV8/5)と、を含むハイブリッドベクターである。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、AAVベクターは、注射によって投与される。いくつかの実施形態によれば、注射は、網膜下である。いくつかの実施形態によれば、注射は、硝子体内である。いくつかの実施形態によれば、注射は、単回注射である。いくつかの実施形態によれば、注射は、複数回注射である。
【0148】
理論に束縛されるものではないが、細胞を、ヒトsCD59をコードする核酸を含むベクターと接触させることにより、網膜色素上皮(RPE)細胞及び脈絡膜血管を含む隣接する眼細胞を保護し得る、sCD59の局所的産生及び分泌のための「工場」である細胞のサブセットが産生されると考えられる。
【0149】
ヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列を使用する組成物及び方法は、タンパク質ベースの送達方法を超える更なる利点を提供する。ペプチドは、限られたインビボ半減期を有し、定期的に再投与される必要がある。湿性AMDに対する現在の治療としては、例えば、4~6週間毎の眼内ラニビズマブ抗体注射が挙げられる。この治療方法は、眼内炎などの合併症及び関連する病状に患者をさらす。眼内炎の発生は、強力な免疫系の存在下では比較的低い(1用量当たり0.16%)。しかしながら、眼内炎の割合は、AMDなどの慢性疾患の治療などのために、弱められた補体系及び長年にわたる連続注射の累積効果に起因して、実質的に増加する。したがって、AMD患者の眼への補体阻害剤の頻繁な注射は、望ましくないか、又は有効ではない。本明細書に記載の医薬組成物及び方法は、注射の頻度を制限し、したがって、AMDなどの補体障害に罹患している対象のためのより安全かつ有効な治療を提供する。
【0150】
アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターは、マウスにおいてインビボで導入遺伝子の生涯にわたる発現を提供するために使用されてきた。例えば、AAVベクターは、イヌにおける導入遺伝子発現を7年より長くにわたって促進してきた。ヒトにおいて、AAVは、研究された最長期間である3.7年を超えて治療的導入遺伝子発現を有することが見出されている。アデノウイルスは、眼組織への導入遺伝子の送達のための効率的なベクターであることが見出されており、いくつかの眼遺伝子療法試験において安全であることが見出されている。長期導入遺伝子発現のために操作されたアデノウイルスベクター、及びそのようなベクターの大規模生産のための技術は、当該技術分野において公知である。AAVベクターは、ヒトにおける使用に安全であることが示されており、一般に、アデノウイルスベクターよりも免疫原性が低いと考えられている。
【0151】
いくつかの実施形態によれば、AAVベクターを使用したAMD患者の眼へのヒトsCD59の送達は、長期導入遺伝子発現に有効である。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、AMDを治療するための医薬組成物であって、細胞においてタンパク質の発現を引き起こすプロモーター配列に作動可能に連結された組換え操作されたヒトsCD59タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するベクターを含み、その結果、このヌクレオチド配列が、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー機能の喪失を付与する少なくとも1つの変異を保有し、その結果、このタンパク質が、組換え膜非依存性(すなわち、可溶性)CD59タンパク質として発現され、膜を標的としない、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、薬学的に許容される緩衝液を更に含む。いくつかの実施形態によれば、AMDは、湿性又は滲出型AMDである。いくつかの実施形態によれば、AMDは、乾性又はGAである。
【0153】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、眼送達のために無菌で製剤化される。いくつかの実施形態によれば、無菌眼送達のために製剤化された医薬組成物は、AMDを治療するのに有効な用量である。
【0154】
いくつかの実施形態によれば、眼送達のために製剤化された医薬組成物は、薬学的に許容される緩衝剤、薬学的に許容される塩、及び眼内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、点眼剤、及び軟膏から選択される少なくとも1つの経路による送達に適した薬学的に許容される皮膚軟化剤のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、ベクターは、sCD59タンパク質をコードするヌクレオチド配列に組換えにより連結された操作されたウイルスベクター、及びヒトsCD59をコードするヌクレオチド配列の送達のための合成遺伝子送達ベクターのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態によれば、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、合成遺伝子送達ベクターは、リポソーム、脂質/ポリカチオン(LPD)、ペプチド、ナノ粒子、金粒子、及びポリマーからなる群から選択される。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、全送達用ペプチド(peptide for overall delivery、POD)を更に含み、医薬組成物は、PODがタンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain、PTD)を含むように、コンジュゲート化合物を得るために化合物に作動可能に連結されている。例えば、POD組成物は、2008年8月28日に出願されたKumar-Singh et al.の国際出願PCT/US2008/010179号、又は2010年8月19日に公開されたKumar-Singh et al.の米国特許出願公開第2010/0209447号に示されているものであり、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、罹患した眼に投与されるウイルスベクター粒子の用量を含む。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×107~約1×109の範囲である。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×108~約1×1010の範囲である。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×109~約1×1011の範囲である。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×1011~約1×1012の範囲である。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×1011~約1×1013の範囲である。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、抗増殖剤及び抗アポトーシス剤からなる群から選択される少なくとも1つの治療剤を更に含む。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1×1010のDNase抵抗性粒子(DRP)~約1×1012のDRPの範囲である。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約3.56×1010DRPである。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1.071×1011DRPである。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約3.56×1011DRPである。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子の用量は、約1.07×1012DRPである。
【0158】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、プロモーター配列を含む。いくつかの実施形態によれば、プロモーター配列は、哺乳動物細胞における発現について汎用性のユビキタスプロモーターである。いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、アクチン、ポリヘドロン、又はヒドロ(HMGCR).キシル-メチルグルタリルCoAレダクターゼ(hydroxyl-methylglutaryl CoA reductase、HMGCR)をコードする遺伝子由来のプロモーターである。このようなプロモーターとしては、ニワトリベータ-アクチンプロモーター又はヒトベータ-アクチンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、プロモーター配列は、特定の細胞型における発現のための組織特異的プロモーターである。特定の細胞型プロモーターとしては、ロドプシンプロモーター又は眼若しくは肝臓の組織特異的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、対象における加齢性黄斑変性症(AMD)を治療するための組成物を製剤化するための方法であって、本方法が、ヒトsCD59に対応するアミノ酸配列をコードするヒトsCD59ヌクレオチド配列を送達し、発現するようにベクターを操作することであって、その結果、このヌクレオチド配列が、タンパク質のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカードメインのアミノ酸をコードする変異を含み、その結果、得られるベクターが、操作された組換え膜非依存性(すなわち、可溶性)CD59(sCD59)タンパク質をコードし、ベクターが、ウイルスベクター又は合成遺伝子送達ベクターである、操作することと、対象の少なくとも1つの眼組織を組成物と接触させ、その結果、組織の細胞がCD59を局所的に発現し、分泌し、それによって、対象をAMDについて治療することと、を含む、方法を提供する。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択される少なくとも1つのウイルスの遺伝子操作されたゲノムに由来する。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、合成遺伝子送達ベクターは、リポソーム、脂質/ポリカチオン(LPD)、ペプチド、ナノ粒子、金粒子、及びポリマーからなる群から選択される。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、対象の少なくとも1つの眼組織を接触させることは、硝子体内、網膜下、結膜下、テノン嚢下;皮下及び静脈内からなる群から選択される経路によって注射することを更に含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物が接触する組織は、網膜色素上皮、網膜、脈絡膜、強膜、ブルッフ膜及び脈絡膜血管からなる群から選択される少なくとも1つの組織を含む。
【0163】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、対象において補体活性を調節するか、又は補体活性障害を治療する方法であって、本方法が、補体活性障害のリスクがあるか、又は補体活性障害に罹患している対象の罹患組織又は器官を、細胞においてタンパク質の発現を引き起こすプロモーター配列に作動可能に連結された組換え操作ヒトsCD59タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するベクターを含む組成物と接触させることと、ここで、その結果、タンパク質が、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカードメインの機能喪失をもたらす少なくとも1つの変異を含み、その結果、タンパク質が、組換え膜非依存性(すなわち、可溶性)CD59(sCD59)であり、膜を標的とせず、接触前に観察された生理学的指標の異常な量と比較して、接触後の補体活性障害の生理学的指標を観察し、その結果、接触前と比較した接触後の減少が、罹患組織又は器官が治療されていることの肯定的な指標であることと、を含む方法を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態によれば、罹患組織は、上皮組織、内皮組織及び血管組織からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、罹患臓器は、眼、心臓、腎臓、肺、肝臓、膵臓及び血管系からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、対象は、組織又は臓器のドナー又はレシピエントである。いくつかの実施形態によれば、対象は、臓器レシピエントである免疫不全患者である。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、記載される方法は、加齢性黄斑変性症(AMD)、細菌感染、毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome、TSS)、非定型溶血性尿毒症症候群、膜性増殖性糸球体腎炎、デンスデポジット病、発作性夜間ヘモグロビン尿症、全身性エリテマトーデス、アテローム性動脈硬化症などからなる群から選択される障害を治療することを含む。いくつかの実施形態によれば、AMDは、湿性又は滲出型AMDである。いくつかの実施形態によれば、AMDは、乾性AMD又は地図状萎縮(GA)である。いくつかの実施形態によれば、障害は、AMDである。いくつかの実施形態によれば、AMDは、乾性AMD(GA)である。いくつかの実施形態によれば、観察することは、視力、視覚収差及びMAC沈着の量からなる群から選択される指標を測定することを更に含む。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、補体障害を治療する方法であって、組織又は細胞を医薬組成物と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本方法は、活性剤としてヒトsCD59タンパク質をコードする核酸又はヒトsCD59タンパク質の発現源を有する治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に、所望の結果を達成するのに必要な量及び時間で投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、眼組織又は細胞をヒトsCD59タンパク質又はヒトsCD59タンパク質をコードするベクターと接触させることによってAMDを治療することを含む。
【0167】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、AMD又は他の補体関連疾患及び状態を治療するのに有効な任意の量及び任意の投与経路を使用して投与される。したがって、「AMDを治療するのに有効な量」という表現は、本明細書で使用される場合、AMDの症状を有益に予防又は改善するのに十分な医薬組成物の量を指す。
【0168】
医薬組成物の正確な投薬量は、治療される患者を考慮して個々の医師によって選択され得る。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性剤を提供するように、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮され得る更なる因子としては、疾患状態(例えば、AMDの中間期又は進行期)の重篤度;患者の年齢、体重及び性別;投与の食餌、時間及び頻度;投与経路;薬物の組み合わせ;反応感受性;及び療法に対する耐性/応答が挙げられる。長時間作用する医薬組成物は、特定の組成物の半減期及びクリアランス速度に応じて、1回、毎時間、毎時間2回、3~4時間毎、1日1回、1日2回、3~4日毎、毎週、又は2週間毎に1回投与することができる。
【0169】
記載される発明の活性剤は、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。しかし、本発明の組成物の1日の合計使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の活性剤について、治療有効用量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル(本明細書で提供されるように、通常はマウスであるが、潜在的にはラット、ウサギ、イヌ又はブタからも)のいずれかにおいて最初に推定され得る。次いで、そのような情報を使用して、ヒトへの投与に有用な用量及び経路を決定することができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。ヒトで使用するための投薬量の範囲を公式化するため、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを用いる。
【0170】
治療有効用量は、症状若しくは状態を改善するか、又はAMDの進行を予防する活性剤の量を指す。活性剤の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(用量は集団の50%において治療的に有効である)及びLD50(用量は集団の50%に対して致死的である)によって決定することができる。治療効果に対する毒性効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。
【0171】
医薬組成物の1日投薬量は、1日当たり、成人ヒト当たり0.001~100mgなどの幅広い範囲で変動し得る。眼投与のために、医薬組成物は、治療される患者に対する投薬量の対症的調節のために、0.001、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、又は500.0マイクログラム(μg)の活性成分を含有する溶液の形態で提供され得る。
【0172】
単位用量は、典型的には、約0.001マイクログラム~約500マイクログラムの活性成分、約0.1マイクログラム~約100マイクログラムの活性成分、又は約1.0マイクログラム~約10マイクログラムの活性成分を含有する。有効量の薬物は、1日当たり約0.0001mg/kg体重~約25mg/kg体重の投薬量レベルで供給され得る。例えば、範囲は、1日当たり約0.001~10mg/kg体重、又は1日当たり約0.001mg/kg体重~1mg/kg体重であり得る。医薬組成物は、例えば、1日当たり1~4回、又はそれより多くのレジメンで投与され得る。単位用量を分割して、例えば、2回以上の分割用量で投与することができる。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59タンパク質の発現源は、治療される細胞当たり少なくとも約50、100、500、1000、又は少なくとも約5000個の粒子を用量が含有するように、ウイルスベクター又は核酸ベクターの用量として投与される。細胞数は、当業者に公知の方法によって、治療を必要とする網膜面積から計算することができる。いくつかの実施形態によれば、用量は、約1×1010のDNase抵抗性粒子(DRP)~約1×1012のDRPの範囲である。いくつかの実施形態によれば、用量は、約3.56×1010DRPである。いくつかの実施形態によれば、用量は、約1.071×1011DRPである。いくつかの実施形態によれば、用量は、約3.56×1011DRPである。いくつかの実施形態によれば、用量は、約1.07×1012DRPである。
【0174】
いくつかの実施形態によれば、ヒトsCD59タンパク質の発現源は、眼注射によって投与される。眼注射としては、限定されないが、房水若しくは硝子体液への眼内注射、又は結膜下注射若しくはテノン嚢下注射などによる眼の外層への注射が挙げられる。
【0175】
注射可能調製物、例えば、滅菌注射可能な水性又は油性の懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。いくつかの実施形態によれば、注射可能調製物は、滅菌注射可能調整物である。滅菌注射可能調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液、懸濁液、又はエマルション(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)であってもよい。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、米国薬局方標準品、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として、従来的に用いられる。合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むがこれらに限定されない任意のブランドの不揮発性油を使用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を、注射製剤の調製に使用することができる。注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、又は使用前に滅菌水又は他の滅菌注射可能媒体中に溶解若しくは分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、滅菌注射可能調製物は、賦形剤を含む。このような賦形剤としては、限定されないが、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)を含む分散剤又は湿潤剤、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。
【0177】
滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液又は懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)であってもよい。溶液は、一般に、2つ以上の物質の均質な混合物と考えられる。必ずしも必要ではないが、液体であることが多い。溶液中では、溶質(又は溶解した物質)の分子は、溶媒の分子間に均一に分布している。懸濁液は、微細に分割された種が別の種と組み合わされた分散液(混合物)であり、前者は非常に微細に分割され混合されているので、急速に沈降しない。日常生活において、最も一般的な懸濁液は、液体中の固体の懸濁液である。用いられてもよい許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として、従来的に用いられる。非経口適用のために、特に適切なビヒクルは、溶液、好ましくは油性又は水性溶液、並びに懸濁液、エマルション、又はインプラントからなる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意選択的に、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高濃縮溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。あるいは、活性化合物は、使用前の好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水を用いた構成のために、粉末形態であってよい。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、眼注射のための液体剤形を提供する。そのような液体剤形としては、限定されないが、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。活性剤に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水若しくは他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド)、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤に加えて、眼送達医薬組成物はまた、湿潤剤並びに乳化剤及び懸濁剤などのアジュバントを含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明の医薬組成物は、滅菌注射可能の水性又は油性懸濁液の形態であってもよい。注射可能調製物、例えば、滅菌注射可能な水性又は油性の懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。
【0180】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、開示される組成物(例えば、ガーゼ包帯又はストリップ)を含有する眼科用デバイス、外科用デバイス、聴覚学的デバイス又は製品、及びそのようなデバイス又は製品を作製又は使用する方法を含む。これらのデバイスは、本明細書中に記載される医薬組成物でコーティングされ得るか、それに含浸され得るか、それと結合され得るか、又は他の方法でそれにより処理され得る。
【0181】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明は、医薬組成物を対象に投与することを提供する。いくつかの実施形態によれば、投与する工程は、経口投与、局所投与又は非経口投与を含む。いくつかの実施形態によれば、非経口投与は、硝子体内注射及び網膜下注射からなる群から選択される。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、投与する工程は、医薬組成物を単回用量又は複数回用量として投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、投与する工程は、医薬組成物を単回用量として投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、単回用量は、それを必要とする対象の眼に投与される。いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象は、AMDに罹患している。いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象は、湿性又は滲出型AMDに罹患している。いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象は、GAに罹患している。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、アジュバント、及び任意選択的に他の治療剤を日常的に含有し得る薬学的に許容される溶液で投与される。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、水性懸濁液及びエマルションの製造に適した賦形剤と混合された水性懸濁液又はエマルションである。そのような賦形剤としては、限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴムなどの懸濁剤が挙げられる。分散剤又は湿潤剤は、例えば、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)であってもよい。
【0185】
非経口、皮内、皮下、髄腔内、又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液は、限定されないが、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤;並びに塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度を調整するための薬剤を含み得る。非経口調製物は、ガラス又はプラスチックで作製されたアンプル、使い捨て注射器、又は多数回投与バイアルに封入することができる。静脈内投与される特定の担体は、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)である。
【0186】
注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、又は使用直前に滅菌水又は他の滅菌注射可能媒体中に溶解若しくは分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。注射可能調製物、例えば、滅菌注射可能な水性又は油性懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射可能製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液、懸濁液、又はエマルション(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)であってもよい。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、米国薬局方標準品、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油が、従来的に用いられるか、又は溶媒又は懸濁媒体として用いられる。この目的では、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意のブランドの不揮発性油も用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を、注射製剤の調製に使用することができる。
【0187】
非経口投与のための製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び対象とするレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含んでもよい水性及び非水性の滅菌注射液、並びに、懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単回用量又は複数回用量容器、例えば、封止されたアンプル及びバイアルとして提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水、注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保管されてもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、先に記載した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0188】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0189】
記載される発明の医薬組成物は、従来の賦形剤、すなわち、活性化合物と有害に反応しない非経口適用に適した薬学的に許容される有機又は無機の担体物質を更に含み得る。適切な薬学的に許容される担体としては、限定されないが、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油;脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、石油脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0190】
記載される発明の医薬組成物は、滅菌されてもよく、所望な場合、例えば、活性化合物と有害に反応しない、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤及び/又は芳香物質などの助剤と混合されてもよい。非経口適用のために、適切なビヒクルとしては、溶液(例えば、油性溶液又は水性溶液)、及び懸濁液、エマルション、又はインプラントが挙げられる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランが挙げられるが、これらに限定されない。任意選択的に、懸濁液は、安定剤も含有し得る。これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗細菌剤及び抗真菌剤によって微生物の作用を確実に防ぐことができる。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって、注射可能な医薬形態の長期的にわたる吸収がもたらされ得る。
【0191】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に含まれる治療有効量のヒトsCD59及び任意選択的に他の治療剤を含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物の構成要素はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用がないような様式で混合することができる。
【0192】
いくつかの実施形態によれば、記載される発明の医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに、かつ合理的な利益/リスク比に見合う、ヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに好適な塩である。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。例えば、P.H.Stahl,et al.は、「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」(Wiley VCH, Zurich,Switzerland:2002)において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。
【0193】
ある範囲の値が提供される場合、その間の各値(文脈により別途明確に示されない限り、その範囲及び他に記載された範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1まで、又はその記載された範囲の間の各値)は、本開示に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、独立して、その小さい範囲に含まれる場合もあり、記載された範囲から任意の限界値が具体的に除外され得るものとして、同様に本発明に包含されるものとする。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限界値の一方又は両方を除外する範囲もやはり本発明に含まれるものとする。
【0194】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明を実施又は試験するために使用することが可能であるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書において述べられる全ての刊行物は、当該刊行物の引用が関連する方法及び/又は材料を開示及び説明する目的で本明細書に組み込まれる。
【0195】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、同じ意味を有する。
【0196】
本明細書で論じる刊行物は、本願の出願日よりも前のそれらの開示内容についてのみ示される。本明細書のものはいずれも、記載される発明が、先行発明という理由で、かかる発行物に先行する権利はないことを承認するものとして解釈されない。更に、提供される刊行物の日付は、実際に公開された日付とは異なる可能性があり、これは別個に確認を要する場合がある。
【実施例】
【0197】
以下の実施例は、当業者に、記載される発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するように記載されており、本発明者らがその発明とみなす範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が、実施される実験の全てであるか、又は唯一のものであることを表すことを意図していない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするための努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差は許容されるべきである。別段の指示がない限り、部は、重量によるものであり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧又はその付近である。
【0198】
実施例1:CD59を発現するアデノウイルスベクター構築物
ヒト可溶性CD59(sCD59)を発現するアデノウイルスベクター構築物を、米国特許第8,324,182号及び同第10,351,617号に記載されるように調製した。簡潔に述べると、ヒトCD59 cDNAを、American Type Tissue Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.)から得た。グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの結合のためのシグナル配列を含む、C末端26アミノ酸をコードする配列を欠くヒトCD59を、XhoI部位(5’ccccctcgagtggacaatcacaatggg3’;配列番号1)を含有する順方向プライマー及びEcoRV部位(5’taaggagatatcttaattttcaagctgttcgtta3’;配列番号2)を有する逆方向プライマーを使用してPCR増幅させた。逆方向プライマーは、アスパラギン77の後に終止コドンを導入し、ヒトCD59の可溶性形態(sCD59)をコードする配列をもたらした(MGIQGGSVLFGLLLVLAVFCHSGHSLQCYNCPNPTADCKTAVNCSSDFDACLITKAGLQVYNKCWKFEHCNFNDVTTRLRENELTYYCCKKDLCNFNEQLEN;配列番号3)。PCR産物をゲル精製し、XhoI/EcoRV消化した。XhoI/EcoRV消化したPCR産物を、XhoI/EcoRV消化したpShCAGにクローニングし、得られたプラスミドpShCAGsCD59を使用して、当該技術分野で既知のプロトコルを使用してアデノウイルスAAVCAGsCD59を産生した(例えば、Klein et al.2007 Ophthalmology 114:253-262、及びvan Leeuwen et al.2003 Eur.J.Epidemiol.18:845-854)。したがって、GPIシグナルを組換え法によって除去して、可溶性の分泌された態様のヒトCD59を発現する構築物を得た。
【0199】
実施例2:地図状萎縮を伴う進行性非滲出型(乾性)加齢性黄斑変性症を有する患者におけるAAVCAGsCD59の単回硝子体内注射の第1/2a相の非盲検の単一場所での用量漸増による安全性及び忍容性の試験
この試験では、地図状萎縮(GA)を伴う進行性乾性加齢性黄斑変性症(AMD)を有する患者の治療のために、膜侵襲複合体(MAC)の阻害剤である可溶性CD59(sCD59)を発現する遺伝子療法ベクターAAVCAGsCD59(アデノ随伴ウイルスベクター血清型2)の単回硝子体内注射の安全性を確立するために、非盲検の非無作為化第I相用量漸増試験を行った。この試験スキーマを
図1に示す。計画された総試料サイズは、およそ26名の参加者である。17名の参加者が最終的に登録された。この試験の目的及びエンドポイントを表1に列挙している。参加者の数(計画及び分析)を表2に列挙する。
【0200】
【0201】
【0202】
試験集団;組み入れ/除外基準
試験集団は、試験眼にGAを伴う進行性乾性AMDを有する50歳以上の成人の男性又は女性からなっていた。参加者は、最初の3名の参加者について、試験眼において20/200又はそれより悪いBCVA Snellen当量を有しており、次いで、最初の3名の参加者の後に、試験眼において20/80又はそれより悪いBCVA Snellen当量を有していた。全GA病変サイズは、試験眼において5mm2(2乳頭面積(disc area、DA))~20mm2(8DA)であり、僚眼において20/800又はそれより良いBCVAを有していた。
【0203】
非AMD病因に続発するGA、試験眼における以前又は活動的な脈絡膜新生血管(CNV)、活動的又は制御されていない緑内障を有していた参加者、試験眼における眼内手術の候補であったか、又はその可能性が高かった参加者、あるいは試験眼における急性又は慢性の感染を有していた参加者は、除外した。
【0204】
参加者の傾向
17名の参加者(100%)が、26週目に試験を完了し、16名の参加者(94.1%)が、2年間の長期フォローアップ試験を完了した(表2)。1名の参加者(5.9%)は、試験介入に関連しない死亡に起因して、早期に試験を中止した(表2)。
【0205】
人口統計学的特性及び他のベースライン特性
参加者のより高い割合が女性(64.7%)であり、全ての参加者が白人であった。平均年齢は81歳(69~95歳の範囲)であった(表3)。平均ボディマス指数(body mass index、BMI)は、28.5kg/m2(20~39kg/m2の範囲)であった。平均BMIは、コホート2又は3よりもコホート1の方が高かった(それぞれ27.7kg/m2及び27.5kg/m2に対して、32.9kg/m2。
【0206】
【0207】
【0208】
眼のベースライン特性
試験眼
全ての参加者は、AMDの最初の診断からの平均持続期間が12.13年(2.25~42.67年の範囲)である、GAを伴う進行性乾性AMDを有していた。平均視力は、全体で37.26ETDRS文字であった。プロトコル毎に、コホート1の参加者は、コホート2又は3のいずれかの参加者よりも低い平均視力を有していた(18.67ETDRS文字[コホート1]、50.50ETDRS文字[コホート2]、及び38.73ETDRS文字[コホート3])。平均IOPは、全てのコホートにわたって同様であり、平均IOPは、13.82mmHgであった。表4は、試験眼についての眼のベースライン特性の概要である。
【0209】
【0210】
僚眼
17個の眼のうち15個が、僚眼にGAを伴う進行性乾性AMDの病歴を有していた。最初の診断からのAMDの平均持続期間は、13.02年(2.25~42.67年の範囲)であった。僚眼における平均BCVAは、コホート1、2、及び3においてそれぞれ44.00、59.17、及び59.59 ETDRS文字であり、全体的な平均BCVAは、56.76 ETDRS文字であった。眼内圧(IOP)は、正常範囲内(平均13.88mmHg)であり、全てのコホートにわたって同様であった。
【0211】
GA病変
試験眼
試験眼における平均ベースラインGA病変のサイズは、11.12mm2であり、3つのコホートにわたって同様であった。全ての参加者は、中心窩を伴うGA病変を有していた。接合ゾーンでの眼底自発蛍光(FAF)パターンは、縞模様(11名の参加者[64.7%])、広範性(4名の参加者[23.5%])、及び限局性(2名の参加者[11.8%])を含んでいた。フルオレセイン血管造影(FA)によって、試験眼においてCNVは認められなかった。
【0212】
【0213】
僚眼
14名の参加者(82.4%)が、僚眼にGAを有していた。これらの参加者のうち13名(92.9%)は、中心窩を伴う病変を有しており、1名(7.1%)の参加者は、中心窩温存GAを有していた。平均GA面積は、10.02mm2であった。接合ゾーンでのFAFパターンは、縞模様(8名の参加者[57.1%])、広範性(5名の参加者[35.7%])、及び限局性(1名の参加者[7.1%])を含んでいた。2名の参加者(11.8%)が、FAによるCNVを有しており、1名の参加者は、等級付けすることができなかった。
【0214】
光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography、OCT)特徴
試験眼
全体として、OCT特徴は、GAを有する参加者と一致していた。平均OCT中心サブフィールド厚は、全ての参加者にわたって182.41μmであった。4名の参加者は、色素上皮剥離(pigment epithelial detachment、PED)を有しており、平均厚は143.25μmであった。OCTによる網膜内、網膜下液、又はCNVを有する参加者はいなかった。5mmの円内の平均ドルーゼン体積は、全参加者にわたって0.05mm3であった。
【0215】
僚眼
平均OCT中心サブフィールド厚は、全ての参加者にわたって211.96μmであった。8名の参加者は、平均厚150.63μmのPEDを有していた。1名の参加者は、網膜下液を有し、2名の参加者は、網膜内液を有していた。12名(70.6%)の参加者は、光干渉断層撮影血管造影法(optical coherence tomography angiography、OCTA)において、CNVを有していなかった。4名の参加者は、OCTAでCNV1型を有しており、1名の参加者は、等級付けすることができないCNVを有していた。中心5mmの円におけるOCTによる平均ドルーゼン体積は、全ての参加者にわたって0.11mm3であった。
【0216】
以前の療法及び併用療法
WHO ATC分類による最も一般的な以前の療法のカテゴリーは、ビタミン(94.1%)、利尿薬(58.8%)、脂質改変剤(58.8%)、及び抗血栓剤(52.9%)を含んでいた。最も一般的な以前の眼の療法は、PTマクロゴール400を用いる眼科薬(29.4%)、プロピレングリコールを用いる眼科薬(17.6%)であった。
【0217】
WHO ATC分類による最も一般的な併用療法のカテゴリーは、心血管系(58.8%)(利尿薬、脂質改変剤及びレニン-アンジオテンシン系抗高血圧薬など)、全身性抗感染薬(52.9%、全身性抗菌薬など)、及び眼科薬(52.9%、最も一般的なPTの人工涙液[包括的な用語][23.5%])の治療を含んでいた。
【0218】
病歴
全ての参加者は、組み入れ基準に従って、試験眼において、GAを伴うAMDの診断を有していた。最も一般的な眼以外の病歴は、高血圧(76.5%)及び関節炎(58.8%)であった。参加者の試験眼(82.4%)及び僚眼(82.4%)の両方において実施された最も一般的な眼の処置は、後眼房眼内レンズ移植を伴う水晶体摘出であった。
【0219】
試験介入
参加者に行われた試験介入を表6に概説する。試験介入は、I/E基準を満たし、かつより悪い視力を有する眼に行われた。3名の参加者が、用量1(3.56×1010 DRP)を受け、3名の参加者が、用量2(1.07×1011 DRP)を受け、11名の参加者が、用量3(3.56×1011 DRP)を受けた。
【0220】
【表6】
a最高用量のAAVCAGsCD59は、遅い動員に起因して、
コホート3の後に、責任者終了登録としていずれの試験参加者にも投与されなかった。
bラベルは、適用可能な規制要件を満たす情報を含んでいた。
【0221】
AAVCAGsCD59ベクターの分布
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)を実施して、ベースライン、7日目、4週目、12週目、及び26週目の血清中のAAVCAGsCD59 RNAの存在を検出した。17名の参加者のうち、3名の参加者は、任意の時点で血清中に定量可能なsCD59を有しており、1名の更なる参加者は、単一の時点で定量下限(lower limit of quantification、LLOQ)未満の検出可能なAAVCAGsCD59 RNAを有していた。参加者のいずれも、ベースラインで血清中に検出可能なsCD59を有していなかった。2名の参加者は、7日目にsCD59の定量化可能な値を有しており、4週目までにLLOQを下回った。1名の参加者は、4週目に定量化可能なレベルのsCD59を有しており、12週目までに検出不可能であった。全ての参加者は、高用量コホートに含まれた。
【0222】
AAV2血清中和抗体(Neutralizing Antibody、NAb)力価
AAV2中和抗体力価は、ベースライン時に全ての参加者において検出され、高度に変動した(1:5.10~1:50819.74の範囲)。7名の参加者は、1:100未満のベースライン力価を有しており、5名の参加者は、1:100~1:10000の力価を有しており、5名の参加者は、1:10000を超える力価を有していた。17名の参加者のうち9名が、任意の時点で力価のベースラインにおける4倍の増加を有していた(「治療ブーストされたNAb」と呼ばれる)。1名の参加者は、ベースラインから4倍を超える1つの時点を有していたが、その後の段階は、ベースラインの4倍未満であった(「一過性陽性」と呼ばれる)。眼内炎症の発生と、高いベースラインAAV2中和力価又は試験介入後のベースラインAAV2中和力価からの変化のいずれかとの間に明らかな関係はなかった。
【0223】
抗sCD59血清抗体力価
参加者は、ベースライン時又は試験中の任意の他の測定のいずれにおいても血清抗sCD59抗体を有していなかった。
【0224】
試験評価/測定
安全性評価は、以下のものを含んでいた。
・有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)、
・身体検査及びバイタルサイン、
・血液学、肝機能検査、腎機能検査、血液化学、尿検査、及び妊娠検査を含む臨床検査測定、
・以前の療法及び併用医薬、
・距離視力検査:早期治療糖尿病網膜症検査(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study、ETDRS)視力チャートを使用した、最高矯正視力(BCVA)、
・眼内圧(IOP)、
・生体顕微鏡検査、
・水晶体、網膜及び中心窩の拡張検査、
・スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(Spectral domain optical coherence tomography、SD-OCT)、
・スペクトラルドメイン光干渉断層撮影血管造影法(Spectral domain optical coherence tomography angiography、SD-OCTA)、
・眼底自発蛍光(FAF)撮像、
・カラー眼底写真(Color Fundus Photograph、CFP)、
・フルオレセイン血管造影(FA)、
・血清抗AAV2抗体力価、
・血清AAVCAGsCD59ベクター分布、
・血清抗sCD59抗体、及び
・水性sCD59レベル。
【0225】
試験介入に対する応答の評価
有害事象
表7は、用量レベルによる全体的な全身治療下で発生した有害事象(TEAE)の概要である。全体として、16名(94.1%)の参加者が、1つ以上のTEAEを経験しており、1名の参加者(5.9%)が、試験中に死亡し、9名(52.9%)の参加者が、1つ以上のSAEを経験していた。全身性TEAE、全身性SAE、又は死亡のいずれも、治療介入に関連するものとみなされなかった。
【0226】
【0227】
器官別大分類による全身性有害事象の発生
全身性(眼以外)TEAEについて最も頻繁に報告された優先使用語(preferred term、PT)は、尿路感染(5名の参加者[29.4%])、転倒(5名の参加者[29.4%])、及び徐脈(3名の参加者[17.6%])であった。残りのPTは、1名又は2名の参加者によって報告された。表8は、少なくとも2名の参加者において報告された全身性TEAEの概要である。1つ以上の器官別大分類(system organ class、SOC)内にAEのクラスタリングはなかった。これらのTEAEのいずれも試験介入に関連するものではなかった。
【0228】
【0229】
TEAEの大部分は、重症度が軽度であった。9つのTEAEが重度であり、それらは以下のSOCにおいて生じた。心臓障害:2事象、胃腸障害:1事象、傷害、中毒、及び処置の合併症:1事象、良性、悪性、及び不特定新生物:3事象、呼吸器、胸部、及び縦隔障害:1事象、血管障害:1事象。1名の参加者が、試験中に244日目に死亡した。この参加者は、2016年以降、白血球障害の進行中の病歴を有していた。死因は白血病として報告され、治験責任医師によって試験介入に関連しないと決定された。
【0230】
重篤な有害事象
9名の参加者(52.9%)が、1つ以上の重篤な有害事象(SAE)を経験していた。いずれのSAEも試験介入に関連するとはみなされなかった。SAEは、特定のSOCにおいてクラスタリングされなかった。最も頻繁に報告されたSAEを有するSOCは、良性、悪性、及び不特定新生物、傷害、中毒、及び処置の合併症、並びに心臓障害であり、各SOCは、3名の参加者を有する(17.6%)。TEAEは、研究の中止につながらなかった。
【0231】
眼の有害事象
試験眼
13名の参加者(76.5%)が、試験眼において眼TEAEを経験していた(表9)。これらのTEAEのいずれもSAEとみなされなかった。AEのうち9つは、研究終了時までに解消しなかった。試験眼における全ての眼TEAEは、1つの中等度のAE(基底細胞腫[報告された用語:下部右瞼上の基底細胞])を除いて、重篤度は軽度であった。試験眼におけるTEAEの数は、治療群間でバランスがとれていた。12名の参加者(70.6%)は、眼障害SOCにおける試験眼TEAEを報告した。硝子体炎は、4名の参加者で報告されており(23.5%、全てコホート3)、1名の参加者(5.9%)において前房炎症が報告された。眼内圧増加は、2名の参加者(11.8%)で報告された。網膜出血は、2名の参加者(11.8%)で報告された。残りのPTは、1名の参加者のみに生じた。視力低下が、3名の参加者で報告された(17.6%、全てコホート3)(表10)。視力低下AEを報告した参加者はいずれも、AE時の2回の連続した来院時に、試験眼において臨床的に有意な15文字以上の喪失を有していなかった。
【0232】
6名の参加者(35.3%)は、治験責任医師によって試験治療に関連するとみなされた試験眼における眼の有害事象を報告した。参加者の5名がコホート3に含まれ、1名の参加者がコホート2に含まれた。関連事象についてのPTは、前房炎症(1名の参加者)、視神経障害(1名の参加者)及び硝子体炎(4名の参加者)であった(表11)。前房炎症(報告された用語:軽度の注射後の前房炎症)及び視神経障害(報告された用語:陥凹乳頭径比の悪化両眼[oculus uterque、OU])は、同じ参加者であった。試験眼における全てのTEAEは、試験眼瞼における1つの中程度のTEAE(基底細胞がん)を除き、軽度であった。
【0233】
両眼
両眼に存在する5つのTEAEが存在した。2名の参加者は、視神経障害の両眼の有害事象を有していた(報告された用語:陥凹乳頭径比の悪化)。1名の参加者は、アレルギー性結膜炎を有し、1名の参加者は、季節性アレルギーを有しており、1名の参加者は、白内障の有害事象を有していた(報告された用語:白内障の悪化)。
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
僚眼
9名の参加者(52.9%)が、僚眼において眼TEAEを経験していた。いずれのTEAEもSAEではなかった。1名の参加者(コホート3)は、治験責任医師によって試験治療に関連する可能性があるとみなされた視神経障害の僚眼における有害事象を報告した。7名の参加者(41.2%)が、眼障害SOCにおける僚眼TEAEを報告した。最も頻繁に報告されたPTは、ドライアイ(2名の参加者[11.8%])及び視神経障害OU(2名の参加者[11.8%])であった。視神経障害について報告された用語は両方とも、陥凹乳頭径比の悪化であった。視神経障害の有害事象は、両方とも両眼事象であった。全ての残りのPTは、1回だけ報告された。僚眼には眼炎症AEは存在しなかった。
【0238】
僚眼に1つの重度のTEAE(PT:皮膚障害[報告された用語:上瞼OSの上鱗状紅斑性病変])及び僚眼に1つの中等度のTEAE(PT:網膜裂傷[報告された用語:網膜の蹄鉄状裂傷])が存在した。
【0239】
興味深い眼有害事象
以下のAEが、興味深いと考えられた。
・眼内炎、
・眼内の炎症、
・眼内圧増加、
・眼出血、
・白内障、及び
・網膜構造の変化、沈着及び変性。
【0240】
これらのカテゴリーは、責任者によって決定された特定のPTからなっていた。
【0241】
上記のカテゴリーに加えて、眼TEAEの優先使用語を再検討し、以下の興味深い有害事象が含まれた。
・視神経障害
・網膜症
・新生血管AMD、
・網膜動脈塞栓症、及び
・硝子体飛蚊症。
【0242】
試験眼
9名の参加者における興味深い13のAEが、試験眼において経験されていた(表12)。これらの事象はいずれもコホート1では起こらなかった。これらのAEのうちの5つは、前房炎症のPTを伴う眼内の炎症(29.4%)(コホート2、1事象、27日目に発症、24日間の持続期間)及び硝子体炎(4事象、全てコホート3)として分類された。硝子体炎の4事象は、45日目(持続期間47日)、20日目(持続期間346日)、34日目(持続期間170日)、及び29日目(参加者が試験中に死亡したため、未解決)の発症日を有していた。全ての眼内の炎症AEは、治験責任医師によって試験治療に関連する可能性があるとみなされ、重症度は軽度であった。前眼房炎の事象を、28日目から70日目までジフルプレドナートで治療し、硝子体炎の1事象を、57日目から85日目までプレドニゾロン眼科薬で治療した。硝子体炎の他の3事象は、治療される参加者において生じなかった。
【0243】
2名の参加者における一過性眼内圧の2つのAEが報告され、その両方とも、眼内の炎症の有害事象の発症の当日又はその翌日のいずれかに生じた。両方とも重症度は軽度であり、治験責任医師によって試験介入と無関係であるとみなされた。これらの事象の発症は、28日目及び34日目に起こった。1名の参加者は、15日目の12mmHgから28日目の21mmHgへのIOPの増加を経験していた。圧力は、21日目に同じままであったが、34日目までに14mmHgまで減少した。参加者は、眼圧増加の治療を何ら受けなかった。別の参加者は、9日目の17mmHgから34日目の28mmHgへのIOPの増加を経験していた。圧力は、43日目に10mmHgまで減少した。参加者は、34日目から42日目まで酒石酸ブリモニジン/チモロール点眼剤を受けた。両方の参加者は、一過性眼内圧増加から10日以内に回復し、両方の参加者は、最終的に眼内の炎症のAEから回復した。
【0244】
2名の参加者における3つのAEは、眼出血として分類された。試験眼に発生したものは全て、重症度は軽度であり、治験責任医師によって試験介入と無関係であるとみなされた。眼出血の1つは、727日目に発症した網膜出血であり、試験の終了時点で、参加者はまだ回復していなかった。他の2つの眼出血は、同じ参加者におけるものであり、2日目に発症した硝子体出血であった。これらの2事象について報告された用語は、右眼の小さな硝子体出血(14日目に解消)及び小さな硝子体出血に続発する16VA文字の喪失(28日目に解消)であり、両方とも硝子体出血のPTにコード化された。硝子体出血は、試験介入とは無関係であるとみなされたが、AEの試験手順との関係は、この試験において捕捉されなかった。しかしながら、硝子体出血は、臨床診療及び臨床試験において観察される硝子体内注射のAEである。
【0245】
1つのAEは、白内障として分類された。このAEは、120日目に起こり、重症度は軽度であり、治験責任医師によって試験介入とは無関係であるとみなされた。その参加者は、2009年から白内障の進行中の眼の病歴を有していた。その事象について報告された用語は、白内障の悪化であり、試験終了時まで未解決のままであった。
【0246】
2名の参加者において、陥凹乳頭径比の悪化(PT:視神経障害)の悪化の2つのAEが存在した。両方の参加者が、試験眼及び僚眼の両方においてこの有害事象を経験していた。1名の参加者は、281日目に発症した有害事象を経験しており、治験責任医師によって試験介入に関連しないとみなされ、試験終了時に未解決であった。他の参加者は、244日目に発症した有害事象を経験しており、治験責任医師によって試験介入に関連する可能性があるとみなされ、試験終了時に未解決であった。この参加者は、興味深い他のいかなる併発眼有害事象も経験しなかった。試験眼に眼内炎の症例は存在しなかった。
【0247】
【0248】
僚眼
4名の参加者における興味深い7のAEが、僚眼において報告されていた。7名のうち6名は、重症度が軽度であり、1名は、重症度が中等度であった(PT網膜裂傷)。1を除く全てのAEは、治験責任医師によって試験介入に関連しないとみなされた。244日目に発症した陥凹乳頭径比の悪化(PT:視神経障害)のAEは、治験責任医師によって試験介入に関連する可能性があるとみなされた。このAEは、試験の終了時点で、まだ進行中であった。この参加者はまた、試験眼にも同じAEを有していた。両眼における陥凹乳頭径比の悪化の別のAEが、別の参加者によって経験されていた。それぞれ1名の参加者に生じた残りのAEのPTは、網膜動脈塞栓症、血管新生加齢性黄斑変性症、網膜症及び白内障であった。1名の参加者は、457日目に発症する網膜動脈塞栓症のAE(報告された用語:Hollenhorstプラーク)を有していた。その事象は、重症度が軽度であり、治験責任医師によって関連しているとはみなされず、参加者は、試験終了までに回復しなかった。僚眼における眼内炎の症例は報告されなかった。
【0249】
臨床検査評価
臨床データに臨床的に有意な変化は存在しなかった。検査値の大部分は、グレード0又はグレード1(NCI-CTCAE等級付けによる)であった。1名の参加者(コホート3)は、4週目に毒性グレード4の好中球減少症を有していた。この参加者は、ベースライン時、7日目、及び12週目に毒性グレード3の好中球減少症を有していた。好中球レベルは、試験終了時(190日目)に正常範囲内に戻った。加えて、この参加者は、ベースラインから試験終了(190日目)まで、毒性グレード2又は3のリンパ球減少症を有していた。この参加者は、244日目に白血病の致死的AEを有していた(セクション5.1.2.2)。
【0250】
他の安全性評価
バイタルサイン/身体評価
この試験では、ベースラインからの経時的なバイタルサイン測定において臨床的に意味のある所見はなかった。この試験における試験介入に関連する身体検査において、臨床的に有意な変化はなかった。
【0251】
眼内圧(IOP)
ベースラインIOPは、試験眼については8~21.50mmHgの範囲であり、僚眼については9.5~21.50mmHgの範囲であった。ベースラインからのIOPの平均変化は、26週目及び104週目において、試験眼における全てのコホートについて2mmHg未満であった。ベースラインからのIOPの平均変化は、26週目及び104週目において、僚眼における全てのコホートについて2.5mmHg未満であった。ベースラインからのIOPの最も高い平均変化は、試験眼についてはベースラインから3mmHgであり、僚眼についてはベースラインから2.5mmHgであった。
【0252】
2名の参加者は、興味深いIOP AEの一過性の増加を経験していた。両方の参加者は、IOP有害事象の増加と同じ日又は前日のいずれかに、興味深い眼内の炎症のAEを経験していた。参加者のうちの1名は、治療を受けなかったが、他の参加者は、眼内酒石酸ブリモニジン/チモロールを受けた。
【0253】
細隙灯試験
一般に、細隙灯試験による検査は、参加者集団の人口統計と一致した。試験眼又は僚眼のいずれかにおいて、興味深い上記のAEにおいて認められたものを除いて、試験介入に関連した細隙灯試験において臨床的に有意な変化はなかった。
【0254】
間接/拡張検眼鏡検査
試験眼又は僚眼のいずれかにおいて、興味深い上記のAE以外に、間接/拡張検眼鏡検査において試験介入に関連する臨床的に有意な変化はなかった。
【0255】
副次評価
GA病変の成長速度
試験眼の平方根変換におけるベースラインによるGA成長の変化の個々の参加者データを
図2に示す。平方根で変換された値(mm)でのベースラインGA病変面積は、コホート1では3.4mm(範囲2.85;3.79)、コホート2では3.373mm(範囲3.01;3.58)、コホート3では3.222mm(範囲2.34;4.42)であった。26週目におけるベースラインの平均変化は、コホート1では0.153mm、コホート2では0.263mm、コホート3では0.338mmであった。104週目におけるベースラインの平均変化は、コホート1では0.517mm、コホート2では0.56mm、コホート3では0.487mmであった。
【0256】
混合モデル反復測定(Mixed model repeated measures、MMRM)を使用して、投薬アームのそれぞれについて経時的なGA成長を分析し、全てのコホートのプールされた分析を行った(
図3及び
図4)。このモデルは、共変量として、ベースライン病変サイズ、用量レベル、選択された来院、及び来院インタラクションによる用量レベル(コホート)を組み込んでいた。限られた試料サイズを考慮して、投薬アームによるGA成長の差を見る正式な分析は行わなかった。用量によるGA成長に明らかな差はなかった。
【0257】
平方根で変換された値での僚眼のGA病変面積は、コホート1では2.473mm(範囲0.85;3.54)、コホート2では3.52mm(範囲3.41;3.63)、コホート3では3.041mm(範囲1.25;4.76)であった。104週目におけるベースラインの平均変化は、3つのコホートにわたって0.527~1.124mmの範囲であった。
【0258】
経時的なGA病変の面積の変化
ベースラインGA病変面積は、投薬アームにわたって類似していた。平均ベースラインGA病変面積は、コホート1では11.72mm
2(範囲8.15;14.39)、コホート2では11.467mm
2(9.08;12.84)、コホート3では10.865mm
2(5.47;19.50)であった。26週目におけるベースラインからの変化率は、コホート1では9.235、コホート2では16.037、コホート3では14.888であった。104週目でのベースラインからの変化率は、コホート1では32.572、コホート2では35.830、コホート3では34.406であった。数が少ないことに起因して、GAの成長速度による投薬アームの差の正式な分析はなかった。各投薬コホート及びプールされたコホートについてのGA病変サイズの変化を推定するMMRMを
図5及び
図6に示す。
【0259】
乾性AMDから湿性AMDへの変換
FA、OCT、及びOCTAによって評価されるように、コホートのいずれにも、試験眼において乾性AMDから湿性AMD(CNVの新たな存在として定義される)に変換した参加者はいなかった。コホート2の1名の参加者は、83日目に僚眼において乾性AMDから湿性AMDに変換した。これは、疾患の自然経過に起因すると考えられ、試験介入に関連するものではなかった。
【0260】
ドルーゼン体積
全ての参加者にわたって、試験眼又は僚眼におけるドルーゼン体積に臨床的に有意な変化はなかった。
【0261】
視力
試験眼についての経時的な視力スコアについての個々の参加者データを
図7に示す。注目すべきことに、コホート1についてのETDRS文字における平均ベースラインBCVAは、コホート2及び3についてのものよりも低かった。コホート1についての平均BCVAは、18.667文字(13~26の範囲)、コホート2については50.5文字(48~53)、及びコホート3については38.727文字(22.5~56.50)であった。26週目におけるベースラインからの平均変化は、コホート1、2、3においてそれぞれ+3.667文字、-0.500文字、及び-1.636文字であった。104週目におけるベースラインからの変化は、コホート1、2、及び3においてそれぞれ+4.33文字、-3.833文字、及び-6.40文字であった。3つの用量コホート間の視力の差の有意な傾向は観察されなかった。
【0262】
僚眼における平均ベースラインBCVAは、コホート2及び3と比較して、コホート1について低かった。コホート1の僚眼の平均ベースラインBCVAは、44.000文字(28.50~71.00)、コホート2では59.167文字(50.50~70.00)、コホート3では59.591文字(35.50~78.00)であった。26週目におけるベースラインからの平均ベースラインBCVA変化は、コホート1、2、及び3においてそれぞれ-5.333文字、-7.056文字、及び-0.205文字であった。104週目におけるベースラインからの平均BCVA変化は、コホート1、2及び3においてそれぞれ-21.333文字、-11.167文字及び-7.100文字であった。僚眼についての経時的な視力スコアについての個々の参加者データを(
図8)に示す。
【0263】
ベースラインから距離BCVAにおいて少なくとも1回の10文字以上、15文字以上、20文字以上、及び30文字以上の喪失を経時的に有する参加者の数及び割合を、表13に列挙する。視覚の臨床的に有意な変化に関して、試験眼において、少なくとも1回、15文字以上喪失した参加者は2名であった。試験眼において30文字以上喪失した参加者はいなかった。僚眼では、6名の参加者(各コホートにおいて2名)が15文字以上を喪失し、2名が30文字以上を少なくとも1回喪失した。
【0264】
疾患の自然経過と一致して、試験眼又は僚眼において15文字以上の視力を獲得した参加者はいなかった。
【0265】
【0266】
探索的評価
眼内(房水)sCD59タンパク質のレベル
市販の抗CD59ウサギポリクローナル抗体(Abcam,Cambridge UK、カタログ番号ab124396)を使用するカスタムウェスタンブロットアッセイを使用して、sCD59の房水レベルを決定した。房水を注射前のベースライン時及び8週目に集めた。試験介入投与前に検出可能なレベルの房水sCD59タンパク質を有している参加者はいなかった。房水sCD59タンパク質は、8週目に参加者17名中5名で検出された。タンパク質のレベルは、250ng/ml~5719.4ng/mlの範囲で非常に変動した。検出可能なsCD59タンパク質を有する全ての参加者は、高用量コホートに含まれた。ウェスタンブロット分析は、1名の参加者について利用可能ではなかった(理由不明で電気泳動することができなかった)。
【0267】
まとめると、この試験で試験されたAAVCAGsCD59の3つの用量は、安全であり、用量を制限する毒性を伴わずに良好な耐容性を示した。試験介入に関連する最も臨床的に有意なAEは、参加者の29.4%に生じた眼内の炎症であった。しかし、全ての参加者における眼内の炎症は軽度であり、自己限定性であるか、又は局所ステロイドで解消した。試験介入に関連する全身性TEAEは存在せず、これは、血清中で観察されたAAV2CAGsCD59の低い全身曝露と一致する。遺伝子療法産物sCD59の産生は、参加者のサブセットの房水において検出することができた。
【0268】
本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、様々な変更を行ってもよく、等価物は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく置換され得ることを当業者は理解すべきである。加えて、特定の条件、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの1つ以上の工程を本発明の目的である趣旨及び範囲に適合させるような多くの改変を行うことが可能である。こうした改変は全て、本明細書に添付される特許請求の範囲に含まれるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】