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特表2024-5404822層材料を含む喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】2層材料を含む喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/08 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A24D3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529337
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2022082122
(87)【国際公開番号】W WO2023088957
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2112092
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190440
【氏名又は名称】エスダブリュエム ホルコ ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァディ-ランバート、ダイアン
(72)【発明者】
【氏名】ギルシェ、パトリック
【テーマコード(参考)】
4B045
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BC03
4B045BC04
4B045BC05
4B045BC06
(57)【要約】
本発明によれば、紙基材と、低密度の不織基材とを含む材料であって、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタとして使用することができる材料が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層材料を含むフィルタであって、
500mg/cm~200mg/cmの密度を有する紙基材と、
7mg/cm~60mg/cmの密度を有する不織布基材と、を含むフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタであって、
前記紙基材:前記不織布基材の質量比が、10:90~90:10である、フィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルタであって、
前記紙基材は、50μm~200μmの厚さを有する、フィルタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフィルタであって、
前記不織布基材は、700μm~6000μmの厚さを有する、フィルタ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のフィルタであって、
前記不織布基材は、木質繊維、葉繊維、果実繊維、種子繊維、靭皮繊維、茎繊維、葦繊維、及びそれらの任意の組み合わせから選択される天然繊維を含む、フィルタ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のフィルタであって、
前記不織布基材は、化学的強固化、ニードリング、水流交絡、またはそれらの任意の組み合わせによって強固化される、フィルタ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のフィルタであって、
前記不織布基材は、ドライレイド法またはエアレイド法によって得ることができる、フィルタ。
【請求項8】
喫煙物品または電子たばこ物品用の、請求項1~7のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルタを備えた喫煙物品。
【請求項10】
請求項8に記載のフィルタを備えた電子たばこ物品。
【請求項11】
請求項8に記載の喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタの製造方法であって、
(a)ウェットレイド法によって前記紙基材を製造するステップと、
(b)任意選択で、前記ステップ(a)で製造された前記紙基材を成形するステップと、
(c)ドライレイド法またはエアレイド法によって前記不織布基材を製造するステップと、
(d)前記ステップ(a)または前記ステップ(b)で製造された前記紙基材と、前記ステップ(c)で製造された前記不織布基材とを互いに結合させて2層材料を作製するステップと、
(e)前記ステップ(d)で作製された前記2層材料からロッドを形成するステップと、
(f)前記ロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、
(g)前記プラグラップ紙のシートの接合部を接着剤で接合して、フィルタ材料のロッドを得るステップと、
(h)前記フィルタ材料のロッドを切断してフィルタを製造するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、生分解性の2層材料を含むフィルタであって、紙基材と、エアレイド法またはドライレイド法によって得ることができる基材とを含むフィルタが提供される。本発明のフィルタは、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタとして使用することができる。
【背景技術】
【0002】
喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタは、真円筒形状を有し、通常、プラグラップ紙からなる外包体と、外包体内に配置された基材とから構成される。喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタは、基材によって、ユーザがタバコ粒子を吸入すること防止し、かつ、煙やエアロゾル中に含まれるタールなどの有害な粒子状物質を捕捉することができる。
【0003】
従来のフィルタは、酢酸セルロースから作られている。このような従来の酢酸セルロースフィルタは、フィルタでろ過された煙をユーザが知覚的に満足することができるようなニコチン捕捉能力を有している。加えて、このような従来のフィルタによってろ過された煙は、良好な官能特性(感覚刺激性)を有する。しかしながら、このような従来のフィルタは、分解が非常に遅く、また、水に分散しない。これは、フィルタが喫煙物品/電子たばこ物品の喫煙/吸引中に消費されず、環境中によく見られるため、特に有害である。したがって、酢酸セルロース基材は、環境に対して重大な影響を及ぼす。
【0004】
従来のフィルタの環境に対する影響を抑えるために、酢酸セルロース基材を、ウェットレイド法によって得られる紙基材に置き換えることが提案されている。紙基材は生分解性であるため、迅速に分解される。しかしながら、紙基材から作製されたフィルタのニコチン捕捉能力では、ユーザは、フィルタでろ過された煙を知覚的に満足することができない。加えて、紙基材から作製されたフィルタによってろ過された煙は、ユーザにとって不満足な乾燥した味を有する。したがって、ウェットレイド法で得られた紙基材によって提供されるユーザ体験は、酢酸セルロース基材と比べて、満足できるものではない。
【0005】
また、酢酸セルロース基材を、エアレイド法またはドライレイド法によって得られた不織布基材に置き換えることも提案されている。エアレイド法によって得られた不織布基材を含む分散性フィルタは、特許文献1(FR2009244)に記載されている。ドライレイド法によって得られた不織布基材を含むフィルタは、特許文献2(FR2009247)に記載されている。特許文献1及び特許文献2に記載のフィルタは、従来の酢酸セルロースフィルタと同程度のニコチン捕捉能力を有するとされている。
【0006】
しかしながら、このような従来の不織布基材は、クリンプ(捲縮)することができない。基材をクリンプすることは、フィルタの圧力降下を制御するための最も簡単な手段であり、そのため、従来最も使用されている手段である。したがって、クリンプできないことは、不利である。このような従来の不織布基材を含むフィルタの圧力降下を制御するためには、不織布基材の厚さを変更してフィルタ材料の重量を調節する必要がある。しかしながら、厚さを変更することなくフィルタの圧力降下を制御するためにクリンプすることができる紙基材の場合と同様に、不織布基材を様々なフィルタに容易に適合させることができるようにすることが、喫煙物品または電子たばこ物品用フィルタの製造業者の願いである。さらに、特許文献2のフィルタの機械的特性は不十分である。特に、特許文献2のフィルタは、柔らかく、潰されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】フランス国特許第2009244号明細書
【特許文献2】フランス国特許第2009247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、様々なフィルタに容易に適合させることができる基材であって、酢酸セルロースフィルタと同程度のニコチン捕捉能力を有し、満足のいくユーザ体験を提供し、かつ、満足のいく機械的特性を有するフィルタを製造することを可能にする基材が求められている。
【0009】
本発明者らは、2層材料により、上記の課題を解決できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、2層材料を含むフィルタであって、
500mg/cm~200mg/cm、特に400mg/cm~250mg/cm、とりわけ390mg/cm~300mg/cmの密度を有する紙基材と、
7mg/cm~60mg/cm、特に8mg/cm~55mg/cm、とりわけ10mg/cm~45mg/cmの密度の有する不織布基材と、を含むフィルタが提供される。
【0011】
有利なことには、本発明のフィルタは、酢酸セルロースフィルタと同程度のニコチン捕捉能力を有する。また、本発明のフィルタは、紙基材からなるフィルタよりも優れたニコチン捕捉能力を有する。したがって、ユーザは、本発明のフィルタによってろ過された煙に対して知覚的に満足することができる。
【0012】
さらに、本発明のフィルタによってろ過された煙は、使用者にとって満足のいく官能特性(感覚刺激性)を有する。
【0013】
さらに、2層材料は、例えば、クリンピングにより紙基材の密度を変更することによって、様々なフィルタに容易に適合させることができる。
【0014】
また、本発明のフィルタは、非常に満足のいく機械的特性を有する。具体的には、本発明のフィルタは、特許文献1及び特許文献2に記載のフィルタよりも潰れにくい。
【0015】
加えて、酢酸セルロースフィルタとは対照的に、本発明のフィルタは、2層材料から構成されることに起因して、環境中で非常に迅速に分解することができる。これにより、本発明のフィルタは、酢酸セルロースフィルタよりも環境への影響が小さくなるため、特に有利である。
【0016】
本発明の別の態様によれば、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタの製造方法であって、
(a)ウェットレイド法によって上記の紙基材を製造するステップと、
(b)任意選択で、上記のステップ(a)で製造された紙基材を成形するステップと、
(c)ドライレイド法またはエアレイド法によって上記の不織布基材を製造するステップと、
(d)上記のステップ(a)または上記のステップ(b)で製造された紙基材と、上記のステップ(c)で製造された不織布基材とを互いに結合させて2層材料を作製するステップと、
(e)上記のステップ(d)で作製された2層材料からロッドを形成するステップと、
(f)ロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、
(g)プラグラップ紙のシートの接合部を接着剤で接合して、フィルタ材料のロッドを得るステップと、
(h)フィルタ材料のロッドを切断してフィルタを製造するステップと、を含む、方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によれば、2層材料を含むフィルタであって、
500mg/cm~200mg/cm、特に400mg/cm~250mg/cm、とりわけ390mg/cm~300mg/cmの密度を有する紙基材と、
7mg/cm~60mg/cm、特に8mg/cm~55mg/cm、とりわけ10mg/cm~45mg/cmの密度を有する不織布基材と、を含むフィルタが提供される。
【0018】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、不織布基材の密度を低くすることにより、2層材料が高いフィルタ充填力を有することを可能にすると考えている。この高いフィルタ充填力により、本発明のフィルタが、酢酸セルロースフィルタと同程度のニコチン捕捉能力を有するように、本発明のフィルタ中に含まれる2層材料の量を低減することが可能になる。一見したところ、このような2層材料の量の低減は、本発明のフィルタの機械的特性、特に、潰れ耐性を変化させるように見える。驚くべきことに、それは事実ではない。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、本発明のフィルタは、紙基材の密度が高いことに起因して、良好な機械的特性、特に良好な潰れ耐性を有すると考えている。
【0019】
したがって、高密度の紙基材と低密の度不織布基材との組み合わせにより、本発明のフィルタは、下記の優れた性質を有することができる。
満足のいくニコチン捕捉能力、
様々なフィルタへの適応性、及び
満足のいく機械的特性、特に、十満足のいく潰れ耐性。
【0020】
本願では、「2層材料」は、紙基材が第1の層を形成し、不織布基材が第2の層を形成し、第1の層が第2の層と接触している材料を意味する。
【0021】
本願では、「紙基材」は、ウェットレイド法によって得られる木質繊維からなるシートを意味する。
【0022】
本発明の2層材料の紙基材は、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタを製造するために従来使用されている紙基材である。本発明の2層材料の紙基材は、ウェットレイド法によって得ることができる。
【0023】
本願では、「不織布基材」は、摩擦、凝集、及び/または接着によって互いに結合され、かつ、一方向またはランダムに配向された繊維のウェブまたはプライからなる製造シートを意味する。従来、不織布基材は、ドライレイド法またはエアレイド法によって得られる。したがって、本発明の2層材料の不織布基材は、ドライレイド法またはエアレイド法によって得ることができる。
【0024】
一般的に、2層材料は、10:90~90:10、特に75:25~25:75、とりわけ45:55~55:45の、紙基材:不織布基材の質量比を有する。
【0025】
一般的に、紙基材の密度は、紙基材の坪量を紙基材の厚さで割ることによって算出される。不織布基材の密度も同様に算出される。
【0026】
標準規格ISO 536:2012を用いて、紙基材及び不織布基材の坪量を求めることができる。基材は、測定前に、23°C、湿度50%で、少なくとも16時間コンディショニングされる。
【0027】
紙基材及び不織布基材の厚さは、2つの互いに平行な平面状の円形の圧力面を有する25cmの測定ヘッドを備える自重マイクロメータを使用して測定することができる。測定中、基材は、2つの圧力面間に、10秒間置かれる。厚さの測定中に2つの圧力面間にかかる圧力は、0.5kPaである。基材は、測定前に、23°C、湿度50%で、少なくとも16時間コンディショニングされる。
【0028】
本発明の紙基材の坪量は、例えば20g/m~60g/m、特に23g/m~55g/m、とりわけ25g/m~50g/mである。
【0029】
本発明の紙基材の厚さは、例えば50μm~200μm、特に75μm~150μm、とりわけ90μm~130μmである。
【0030】
或る特定の実施形態では、紙基材は、350mg/cm~360mg/cmの密度、及び、100μm~110μmの厚さを有する。
【0031】
本発明の不織布基材の坪量は、例えば20g/m~65g/m、特に23g/m~60g/m、とりわけ25g/m~55g/mである。
【0032】
本発明の不織布基材の厚さは、例えば700μm~6000μm、特に900μm~4700μm、とりわけ1000μm~4500μmである。
【0033】
第1の特定の実施形態では、不織布基材は、10mg/cm~40mg/cmの密度、及び、1000μmm~2500μmの厚さを有する。
【0034】
ドライレイド法が、この第1の特定の実施形態の不織布基材を得るのに特に適している。したがって、本実施形態の不織布基材は、ドライレイド法によって得ることができる。
【0035】
第2の特定の実施形態では、不織布基材は、20mg/cm~45mg/cmの密度、及び、1200μm~2500μmの厚さを有する。
【0036】
エアレイド法が、この第2の特定の実施形態の不織布基材を得るのに特に適している。したがって、本実施形態の不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。
【0037】
当業者であれば、所望の密度を達成するために、紙基材及び不織布基材の坪量及び厚さをどのように調節すればよいかを知っているであろう。
【0038】
一実施形態によれば、不織布基材は、天然繊維を含む。
【0039】
一般的に、天然繊維は、不織布基材の固形分の70重量%~99重量%、特に80重量%~98重量%、とりわけ85重量%~98重量%を占めることができる。
【0040】
本願では、「天然繊維」という用語は、その物理的特性を最適化するために、任意選択で、化学的処理、物理的処理、またはその両方が施された天然由来の繊維を意味する。
【0041】
例えば、不織布基材の天然繊維は、木質繊維、葉繊維、果実繊維、種子繊維、靭皮繊維、茎繊維、葦繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、木質繊維、葉繊維、種子繊維、靭皮繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、とりわけ、木質繊維、靭皮繊維、及びそれらの組み合わせ、から選択される。
【0042】
本発明の紙基材及び不織布基材に含まれる木質繊維は、広葉樹パルプ、漂白広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、漂白針葉樹パルプ、針葉樹綿毛パルプ、リヨセル繊維(当業者が必要に応じて選択可能な、長さ及び単位長さ当たりの質量が較正された様々な形状の断面(丸い、楕円形、十字形、円形、ラメラ状の断面)を有する繊維を得る目的で、粉砕して、N-メチルモルホリンN-オキシド一水和物に溶解させたセルロース繊維)、ビスコース繊維(当業者が必要に応じて選択可能な、長さ及び単位長さ当たりの質量が較正された様々な形状の断面(丸い、楕円形、十字形、円形、ラメラ状の断面)を有する繊維を得る目的で、セルロースの水酸基を二硫化炭素(CS)で修飾してセルロースを溶解し、次いで、硫酸(HSO)の存在下で沈殿させて得られる繊維)、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、針葉樹綿毛パルプ、リヨセル繊維、ビスコース繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、とりわけ、針葉樹パルプ、針葉樹綿毛パルプ、リヨセル繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、から選択することができる。
【0043】
本願では、「靭皮繊維」は、植物の靭皮に含まれる植物繊維を意味する。
【0044】
靭皮繊維は、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、クズ繊維、コインバイン繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル繊維、エスパルト繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、麻繊維、亜麻繊維、及びそれらの組み合わせ、とりわけ、亜麻繊維、から選択され得る。
【0045】
一般的に、靭皮繊維は、前処理が施される。したがって、靭皮繊維は、綿化された靭皮繊維、個別化された靭皮繊維、レッティングされた靭皮繊維、漂白された靭皮繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、綿化された靭皮繊維、個別化された靭皮繊維、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0046】
本願では、「種子繊維」は、植物の種子から得られる繊維を意味する。種子繊維は、綿繊維、カポック繊維、ヘチマ繊維、トウワタ繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、カポック繊維から選択され得る。
【0047】
第1の特定の実施形態によれば、天然繊維は、針葉樹パルプ、針葉樹綿毛パルプ、特に針葉樹綿毛パルプから選択される木質繊維である。
【0048】
第2の特定の実施形態によれば、天然繊維は、リヨセル繊維、亜麻繊維、綿化亜麻繊維、綿繊維、及びそれらの任意の組み合わせ、特に、綿化亜麻繊維とリヨセル繊維との組み合わせから選択される。
【0049】
第3の特定の実施形態によれば、不織布基材の天然繊維は、綿化亜麻繊維と、リヨセル繊維との組み合わせを含む天然繊維混合物であり、
綿化亜麻繊維は、天然繊維混合物の固形分の50重量%超、特に70重量%~98重量%、とりわけ85重量%~95重量%を占め、
リヨセル繊維は、天然繊維混合物の固形分の50重量%未満、特に2重量%~30重量%、とりわけ5重量%~15重量%を占める。
【0050】
一般的に、紙基材の木質繊維は、1mm~3mm、特に1.5mm~2.7mm、とりわけ2mm~2.7mmの長さを有し得る。
【0051】
一般的に、不織布基材の天然繊維は、1mm~150mm、特に1.5mm~100mm、とりわけ2mm~60mm長さを有し得る。
【0052】
天然繊維の長さは、様々な方法で測定することができる。例えば、天然繊維の長さは、Keisokki社のClassifiber KCF-V/LS装置で測定することができる。天然繊維は、測定前に、櫛で梳かれて個別化される。繊維の長さは、上記の装置を使用して光学的な方法で自動的に測定することができる。繊維の長さは、投影顕微鏡を使用して必要な倍率で顕微鏡的に測定してもよい。当業者であれば、天然繊維の長さに適した測定方法を選択する方法を知っているであろう。
【0053】
或る特定の実施形態によれば、不織布基材の天然繊維は、10mm~150mm、特に15mm~100mm、とりわけ20mm~60mmの長さを有する。
【0054】
ドライレイド法が、上記の範囲の長さの天然繊維を得るのに特に適している。したがって、この或る特定の実施形態の不織布基材は、ドライレイド法によって得ることができる。
【0055】
別の特定の実施形態によれば、天然繊維は、1mm~10mm、特に1.5mm~8mm、とりわけ2mm~5mmの長さを有する。
【0056】
エアレイド法が、上記の範囲の長さの天然繊維を得るのに特に適している。したがって、この別の特定の実施形態の不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。
【0057】
また、天然繊維を上記の範囲の長さに切断してもよい。用いることができる従来の切断技術としては、天然繊維のギロチン切断、及び、過度に短い繊維及び過度に長い繊維を除去するための空気サイクロンまたはスクリーンシステムを伴うまたは伴わない天然繊維の粉砕が挙げられる。
【0058】
不織布基材は、化学的強固化(chemical consolidation)、ニードリング、水流交絡、またはそれらの任意の組み合わせ、特に化学的強固化によって強固化することができる。これらの強固化技術は当業者に既知であり、当業者であれば、それらの技術を本発明の不織布基材に適用する方法を知っているであろう。
【0059】
化学的強固化には、バインダが使用される。したがって、不織布基材は、バインダを含み得る。
【0060】
本願では、「バインダ」は、不織布基材の強固化を可能にする特性を有する化合物を意味する。
【0061】
従来の不織布基材を強固にするために従来使用されているバインダは、本発明の不織布基材を強固にするのに適している。それらのバインダのうちで、水溶性バインダを選択することが有利である。水溶性とは、バインダが、周囲温度で均一な溶液を形成するが、懸濁液を形成しないように、或る温度及び制御された攪拌で水に溶解する能力を指すと理解される。有利なことには、バインダは水溶性であるため、不織布基材に分散可能である。
【0062】
例えば、バインダは、天然ポリマー、合成ポリマーもしくはコポリマー、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0063】
天然ポリマーは、多糖類、セルロース誘導体、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0064】
バインダとして用いることができる多糖類は、多糖類そのものであってもよいし、多糖類の誘導体であってもよい。バインダとして用いることができる多糖類としては、デンプン、デキストリン、アラビアガム、またはそれらの任意の組み合わせ、特にデンプンが挙げられる。
【0065】
セルロース誘導体は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、及びそれらの任意の組み合わせ、特にカルボキシメチルセルロースから選択され得る。
【0066】
カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩としては、カリウム、ナトリウム、及びマグネシウムが挙げられる。
【0067】
合成ポリマーまたはコポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸、エチレン-酢酸ビニル、またはそれらの任意の組み合わせ、特にポリビニルアルコールであり得る。
【0068】
一般的に、バインダは、不織布基材の固体分の1重量%~30重量%、特に2重量%~20重量%、とりわけ2重量%~15重量%を占めることができる。
【0069】
別の特定の実施形態によれば、不織布基材は、10mg/cm~40mg/cmの密度を有し、かつ、
天然繊維混合物であって、天然繊維混合物の固形分の85重量%~95重量%の綿化亜麻繊維、及び、天然繊維混合物の固形分の5重量%~15重量%のリヨセル繊維を含む、該天然繊維混合物と、
バインダ、とりわけデンプンと、を含み、
天然繊維混合物は、不織布基材の固形分の90重量%~98重量%を占め、
バインダは、不織布基材の固形分の2重量%~10重量%を占める。
【0070】
この特定の実施形態の不織布基材は、ドライレイド法によって得ることができる。
【0071】
別の特定の実施形態によれば、不織布基材は、20mg/cm~45mg/cmの密度を有し、かつ、
針葉樹綿毛パルプと、
バインダ、とりわけデンプンと、を含み、
針葉樹綿毛パルプは、不織布基材の固形分の80重量%~95%重量%を占め、
バインダは、不織布基材の固形分の5重量%~20重量%を占める。
【0072】
この特定の実施形態の不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。
【0073】
本発明の2層材料の紙基材は、成形することができ、とりわけ、クリンプ(捲縮)することができる。この成形により、紙基材の特性、したがって、本発明の2層材料を含むフィルタの特性を改変することが可能になる。例えば、クリンプにより、紙基材の密度、したがって、2層材料の密度を改変することが可能になり、これにより、フィルタの重量を変更することなく、本発明の2層材料を含むフィルタの圧力降下を増加または減少させることが可能になる。このようにして、クリンプなどの既知の方法による紙基材の成形によって、2層材料を様々なフィルタに容易に適合させることができる。
【0074】
本発明のフィルタの2層材料は、1または複数の基材と組み合わせることができる。1または複数の基材は、互いに独立して、紙基材または不織布基材であり得る。紙基材は、本発明の紙基材であり得る。不織布基材は、本発明の不織布基材であり得る。
【0075】
一実施形態によれば、フィルタは、上述した本発明の2層材料を含む、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタであり得る。
【0076】
本願では、「喫煙物品」とは、タバコ(tobacco)及び/または喫煙されることが意図される任意の他の植物を含む物品を意味する。例えば、喫煙物品は、機械で製造されたシガレット(紙巻きたばこ)、手巻きシガレット、または、自作のシガレットであり得る。
【0077】
一般的に、喫煙物品用のフィルタは、真円筒形状を有し、喫煙物品用、特にシガレット用のプラグラップ紙の外包体と、外包体内に配置された、上記に定義した本発明の2層材料とを含む。
【0078】
本願では、「電子たばこ物品」は、吸引されることが意図されたタバコ及び/または他の植物を含む物品を意味し、タバコ/植物を燃焼させることなく加熱する装置に挿入し、ユーザへのエアロゾルの送達を可能にするものを指す。例えば、電子たばこ物品は、タバコスティックであり得る。
【0079】
一般的に、電子たばこ物品用のフィルタは、真円筒形状を有し、電子たばこ物品、特にタバコスティック用のプラグラップ紙の外包体と、外包体内に配置された、上記に定義した本発明の2層材料とを含む。
【0080】
本発明のフィルタは、100mg/cm~300g/cm、特に150mg/cm~250g/cm、とりわけ140mg/cm~200g/cmの密度を有し得る。
【0081】
一般的に、フィルタの密度は、フィルタの製造後に、フィルタの質量をその体積で割ることによって測定される。真円筒形状のフィルタの場合、フィルタの体積(Vfilter)は、次の式で計算される。Vfilter=π×L×r。式中、rは、フィルタの半径を示し、Lは、フィルタの長さを示す。
【0082】
本発明のフィルタの密度は、特許文献1及び特許文献2のフィルタの密度よりも高い。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、フィルタの機械的特性、特に、潰れ耐性は、本発明のフィルタの密度が高いことに起因すると考えている。
【0083】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義したフィルタを備える喫煙物品に関する。
【0084】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義したフィルタを備える電子たばこ物品に関する。
【0085】
また、本発明は、フィルタ、特に喫煙物品用のフィルタまたは電子たばこ物品用のフィルタにおける、上記に定義した2層材料の使用に関する。
【0086】
また、本発明は、上記に定義した喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタの製造方法であって、
(a)ウェットレイド法によって上記の紙基材を製造するステップと、
(b)任意選択で、上記のステップ(a)で製造された紙基材を成形するステップと、
(c)ドライレイド法またはエアレイド法によって上記の不織布基材を製造するステップと、
(d)上記のステップ(a)または上記のステップ(b)で製造された紙基材と、上記のステップ(c)で製造された不織布基材とを互いに結合させて2層材料を作製するステップと、
(e)上記のステップ(d)で作製された2層材料からロッドを形成するステップと、
(f)ロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、
(g)プラグラップ紙のシートの接合部を接着剤で接合して、フィルタ材料のロッドを得るステップと、
(h)フィルタ材料のロッドを切断してフィルタを製造するステップと、を含む、方法に関する。
【0087】
一般的に、本発明の製造方法によって製造された喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタは、真円柱形状を有し、かつ、
喫煙物品または電子たばこ物品のフィルタ用のプラグラップ紙の外包体と、
外包体内に配置された上記に定義した2層材料と、を含む。
【0088】
紙基材及び不織布基材は、上記に定義した通りである。
【0089】
紙基材を製造するためのウェットレイド法は、当業者に既知の従来の方法である。当業者であれば、本発明の2層材料の紙基材を製造するために、このウェットレイド法のパラメータを調節する方法を知っているであろう。
【0090】
不織布基材を製造するためのエアレイド法及びドライレイド法は、当業者に既知の従来の方法である。当業者であれば、本発明の2層材料の不織布基材を製造するために、エアレイド法及びドライレイド法のパラメータを調節する方法を知っているであろう。
【0091】
不織布基材の天然繊維は、天然繊維の混合物であってもよい。この天然繊維の混合物は、上記のステップ(c)の前に得ることができる。
【0092】
本発明の方法は、必要に応じて、上記のステップ(c)の前に、上記の範囲内の長さを有する天然繊維を得るために不織布基材の天然繊維を切断するステップを含むことができる。不織布基材の天然繊維を切断するステップは、天然繊維のギロチン切断、及び、過度に短い繊維及び過度に長い繊維を除去するための空気サイクロンまたはスクリーンシステムを伴うまたは伴わない天然繊維の粉砕などの従来技術によって実施することができる。
【0093】
天然繊維は、綿化された靭皮繊維、個別化された靭皮繊維、レッティングされた靭皮繊維、またはそれらの任意の組み合わせなどの前処理が施された靭皮繊維、特に、綿化された靭皮繊維、個別化された靭皮繊維、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0094】
したがって、本発明の方法は、上記のステップ(c)の前に、レッティング、漂白、綿化、個別化、及びそれらの任意の組み合わせから選択される靭皮繊維の処理工程、特に、綿化、個別化、または、個別化及びそれに続いて行われる綿化のステップを含み得る。
【0095】
綿化は、スピニングミルに通過させるために繊維を細径化する既知の処理である。当業者であれば、綿化処理工程を実施する方法を知っているであろう。
【0096】
個別化とは、一連の線維の全部または一部を互いに分離させる処理である。個別化は、例えば、コーミングまたは化学的処理によって実施することができる。
【0097】
この処理工程は、切断ステップの前、後、または前後に実施することができる。
【0098】
上記のステップ(a)で製造された紙基材は、上記のステップ(b)において成形することができる。この成形は、喫煙物品または電子たばこ物品用のフィルタの円筒軸に対して直交する方向のクリンピング、エンボス加工、折り畳み、圧縮、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0099】
上記のステップ(d)は、2つの基材を互いに結合させるための当業者に既知の任意のタイプの工程であり得る。このステップ(d)は、一方の基材を他方の基材上に堆積させるステップ、2つの基材を積層させるステップ、または、2つの基材を接着接合する工程であり得る。
【0100】
別の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、
(a)ウェットレイド法によって上記の紙基材を製造するステップと、
(b)任意選択で、上記のステップ(a)で製造された紙基材を成形するステップと、
(c11)天然繊維混合物であって、天然繊維混合物の固形分の85重量%~95重量%の綿化亜麻繊維と、天然繊維混合物の固形分の5重量%~15重量%のリヨセル繊維とを含む該天然繊維混合物から、ドライレイド法によってウェブを製造するステップと、
(c21)バインダ、とりわけデンプンを含むバインダ水性分散液を、ウェブに対して吹き付けることによって、ウェブにバインダを導入するステップと、
(c31)上記のステップ(c21)で得られたウェブを乾燥させて、10mg/cm~40mg/cmの密度を有し、天然繊維混合物が不織布基材の固形分の85重量%~98重量%を占め、バインダが不織布基材の固形分の2重量%~15%重量を占める不織布基材を得るステップと、
(d)上記のステップ(a)または上記のステップ(b)で製造された紙基材と、上記のステップ(c31)で製造された不織布基材とを互いに結合させて2層材料を作製するステップと、
(e)上記のステップ(d)で作製された2層材料からロッドを形成するステップと、
(f)ロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、
(g)プラグラップ紙のシートの接合部を接着剤で接合して、フィルタ材料のロッドを得るステップと、
(h)フィルタ材料のロッドを切断してフィルタを製造するステップと、を含む。
【0101】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、
(a)ウェットレイド法によって上記の紙基材を製造するステップと、
(b)任意選択で、上記のステップ(a)で製造された紙基材を成形するステップと、
(c12)針葉樹綿毛パルプから、エアレイド法によってウェブを製造するステップと、
(c22)バインダ、とりわけデンプンを含むバインダ水性分散液を、ウェブに対して吹き付けることによって、ウェブにバインダを導入するステップと、
(c32)上記のステップ(c22)で得られたウェブを乾燥させて、20mg/cm~45mg/cmの密度を有し、針葉樹綿毛パルプが不織布基材の固形分の85重量%~95重量%を占め、バインダが不織布基材の固形分の5重量%~15%重量を占める不織布基材を得るステップと、
(d)上記のステップ(a)または上記のステップ(b)で製造された紙基材と、上記のステップ(c31)で製造された不織布基材とを互いに結合させて2層材料を作製するステップと、
(e)上記のステップ(d)で作製された2層材料からロッドを形成するステップと、
(f)ロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、
(g)プラグラップ紙のシートの接合部に接着剤ラインを付着させ、フィルタ材料のロッドを得るステップと、
(h)フィルタ材料のロッドを切断してフィルタを製造するステップと、を含む。
【0102】
上記のステップ(c21)または上記のステップ(c22)におけるバインダ導入は、サイズプレスによる含浸などによる含浸によって、スプレー装置を使用した吹き付けなどによる吹き付けによって、コーティングまたは印刷などによる表面塗布によって、とりわけ、スプレー装置を使用した吹き付けによって実施することができる。有利には、バインダ水性分散液の吹き付けは、ウェブの両面に対して行われる。
【0103】
バインダの水性分散液は、当業者に既知の任意の技術によって得ることができる。当業者であれば、本発明の不織布基材中のバインダの所望の含有量を得るために、水性分散液中のバインダの濃度を調節する方法を知っているであろう。
【0104】
上記のステップ(c31)または上記のステップ(c32)におけるウェブ乾燥は、例えば、空気が通過するトンネルや、赤外線ランプなどの乾燥装置によって行うことができる。
【0105】
上記のステップ(c31)または上記のステップ(c32)におけるウェブ乾燥は、75°C~200°C、特に90°C~150°C、とりわけ100°C~120°Cの温度で実施することができる。上記の範囲内の温度は、有利には、ウェブ乾燥ステップ(c31)または(c32)の実施時間を最小化することを可能にし、一方でそれと同時に、不織布基材の天然繊維の劣化を最小限に抑えることができ、したがって、本発明の製造方法を最適化することができる。
【0106】
有利には、上記のステップ(c21)及び上記のステップ(c31)、または、上記のステップ(c22)及び上記のステップ(c32)の組み合わせにより、天然繊維の凝集力を高めることができ、したがって、本発明の2層材料の不織布基材の構造を強固にすることができる。
【0107】
本発明の方法における上記のステップ(c)は、特に、上記のステップ(c11)と上記のステップ(c21)との間、上記のステップ(c21)と上記のステップ(c31)との間、上記のステップ(c12)と上記のステップ(c22)との間、または、上記のステップ(c22)と上記のステップ(c32)との間に、ウェブを圧縮して圧縮ウェブを得るステップを含むことができ、この圧縮ウェブは、その後、上記のステップ(c21)または上記のステップ(c22)が施される。この圧縮ステップにより、不織布基材の密度を制御するためにウェブの厚さを減少させることが可能になる。
【0108】
実施例
【0109】
実施例1:2層材料の製造
【0110】
実施例1.1:紙基材と、エアレイド法によって製造された不織布基材とを含む2層材料
【0111】
紙基材は、ウェットレイド法によって製造した。紙基材は、356g/cmの密度、101μmの厚さ、及び、36g/mの坪量を有する。
【0112】
エアレイド法によって、針葉樹綿毛パルプからウェブを製造した。固形分0.7%のデンプン(Avebe社製のPerfectafilm X115)を含有する溶液を、ウェブの両面に吹き付けた。次いで、デンプン含有溶液が吹き付けられたウェブを、180°C~190°Cの温度で、赤外線及び熱風オーブンによって乾燥させた。得られた不織布基材は、針葉樹綿毛パルプが不織布基材の固形分の85重量%を占め、デンプンが不織布基材の固形分の15重量%を占めた。得られた不織布基材は、24g/cmの密度、1910μmの厚さ、及び、46g/mの坪量を有する。
【0113】
紙基材をクリンプし、次いで、不織布基材上に堆積させて、紙基材:不織布基材の質量比が50:50の2層材料を製造した。
【0114】
実施例1.2:紙基材と、ドライレイド法によって製造された不織布基材とを含む2層材料
【0115】
紙基材は、実施例1.1の紙基材と同じである。
【0116】
ドライレイド法によって、綿化亜麻繊維(VERVAEKE FIBRE NV社製、長さ22mm)及びリヨセル繊維(LENZIG社製、1.7dtex/長さ38mm)からウェブを製造した。綿化亜麻繊維とリヨセル繊維とを混合し、カードで開いて平行化した後、ウェブ形成布上に堆積させた。固形分5%のデンプン(Avebe社製のPerfectafilm X115)を含有する溶液を、ウェブの両面に吹き付けた。次いで、デンプン含有溶液が吹き付けられたウェブを、100°C~120°Cの温度で、熱風オーブンによって乾燥させた。得られた不織布基材は、綿状亜麻繊維とリヨセル繊維との混合物が不織布基材の固形分の92%を占め(綿状亜麻90%/繊維混合物の固形分10%)、デンプンが不織布基材の固形分の8%を占めた。得られた不織布基材は、12g/cmの密度、2140μmの厚さ、及び、26.2g/mの坪量を有する。
【0117】
紙基材をクリンプし、次いで、不織布基材上に堆積させて、紙基材:不織布基材の質量比が50:50の2層材料を製造した。
【0118】
実施例2:喫煙物品用フィルタの製造及び特性評価
【0119】
実施例1.1または実施例1.2の2層材料を使用して、標準的なフィルタ製造方法により喫煙物品用フィルタを製造した。フィルタ材料のロッドを包むために、非多孔性のプラグラップ紙を使用した。
【0120】
本発明のフィルタを、実施例1.1の2層材料または不織布基材を有するフィルタ、実施例1.2の2層材料または不織布基材を有するフィルタ、紙基材フィルタ(捲縮紙フィルタ)、及び、市販の酢酸セルロース基材フィルタと比較した。捲縮紙フィルタは、実施例1.1の紙基材をクリンプ(捲縮)することによってフィルタを製造する標準的な方法を用いて製造した。各フィルタを、21mmのスティック状に切断した。
【0121】
各フィルタの特性を、下記の表1に示す。
【0122】
潰れに対する耐性(潰れ耐性)は、Filtrona社のDHT200装置を使用して測定した。測定中、フィルタは、300gの重りで15秒間押し潰した。潰れ量(mm)は、電子的に測定した。
【0123】
【表1】
【0124】
表1によれば、本発明の2層材料を有するフィルタは、不織布基材のみを有するフィルタと比べて優れた潰れ耐性を有する。このことは、ドライレイド法により得られた不織布基材と紙基材とを組み合わせることにより、ドライレイド法により得られた不織布基材のみを有するフィルタと比べて潰れ耐性が向上することを示している。
【0125】
実施例3 シガレット(紙巻たばこ)の製造及び特性評価
【0126】
実施例2に記載したフィルタを使用してシガレットを作製した。シガレットを作製するために、チップペーパーを使用して、タバコのロッドにフィルタを結合させた。タバコのロッドは、市販の「アメリカンブレンド」タバコを用いて形成した。シガレットは、市販のシガレットと同様の圧力降下を有するように作製した。シガレットの通気を遮断した。
【0127】
作製したタバコを、標準規格ISO 3308:2000に従って、Borgwaldt RM20喫煙機で喫煙した。圧力降下(表2の「PD」)は、標準規格ISO 6565:2002に従って測定した。煙中のニコチン含有量は、標準規格ISO 10315:2000に従って測定した。喫煙結果を、下記の表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2は、同等の圧力降下において、本発明による2層材料を有するフィルタを備えたシガレット、市販の酢酸セルロースフィルタを備えたシガレット、及び、不織布基材を有するフィルタを備えたシガレットによって生成された煙中のニコチン含有量が同程度であることを示す。特に、これらのシガレットのフィルタは、同程度のニコチン捕捉能力を示した。
【0130】
また、表2は、同等の圧力降下において、捲縮紙フィルタを備えたシガレットによって生成された煙中のニコチン含有量は、市販の酢酸セルロースフィルタを備えたシガレットによって生成された煙中のニコチン含有量よりもはるかに低いことを示す。特に、捲縮紙フィルタは、市販の酢酸セルロースフィルタよりもはるかに大きいニコチン捕捉能力を示した。
【0131】
したがって、この実施例3は、本発明による2層材料を有するフィルタを備えたシガレットによって提供されるユーザ体験が、市販の酢酸セルロースフィルタを備えたシガレットによって提供されるユーザ体験と同等であることを示す。
【国際調査報告】