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特表2024-540484抗PSGL-1抗体をJAK阻害剤と組み合わせて使用してT細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】抗PSGL-1抗体をJAK阻害剤と組み合わせて使用してT細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K31/519
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P17/00
A61P25/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P37/02
A61P1/00
A61P1/04
A61P21/04
A61P13/12
A61P9/00
A61P5/14
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529342
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022079976
(87)【国際公開番号】W WO2023091958
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,463
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521561732
【氏名又は名称】アルトゥルバイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リン, シー-ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, フェン-リン
(72)【発明者】
【氏名】イェー, ヨウ-チア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA361
4C084ZA661
4C084ZA681
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB051
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC061
4C084ZC202
4C084ZC351
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC21
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC45
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB05
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC06
4C086ZC35
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんの治療または防止を、それを必要とする対象において行う方法であって、当該対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、T細胞媒介炎症性疾患はGVHD(例えば、急性GVHDまたは慢性GVHD)である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
がんを治療または防止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記JAK阻害剤がJAK1及び/またはJAK2を阻害する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記JAK阻害剤がJAK1及び/またはJAK3を阻害する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記JAK阻害剤がルキソリチニブである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記JAK阻害剤がトファシチニブである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記VHドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記VLドメインが配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記重鎖が配列番号27のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記軽鎖が配列番号31のアミノ酸配列を含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記重鎖が配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記軽鎖が配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記重鎖が抗体定常ドメインをさらに含む、請求項1~11及び14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記定常ドメインがヒトIgG4定常ドメインである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記定常ドメインが、位置228のS228Pアミノ酸置換を含むヒトIgG4定常ドメインであり、ナンバリングがEUナンバリングに従う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記軽鎖がヒトカッパ軽鎖である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記軽鎖が配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1~10及び21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記T細胞媒介性炎症性疾患が移植片対宿主病(GVHD)である、請求項1及び3~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記T細胞媒介性炎症性疾患が急性GVHDである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記T細胞媒介性炎症性疾患がステロイド抵抗性急性GVHD(SR-aGVHD)である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記T細胞媒介性炎症性疾患が治療抵抗性急性GVHD(TR-aGVHD)である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記T細胞媒介性炎症性疾患が慢性GVHDである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記T細胞媒介性炎症性疾患が、皮膚障害、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節炎、I型糖尿病、ループス、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、及び自己免疫性甲状腺障害からなる群より選択される、請求項1及び3~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がんがT細胞白血病またはT細胞リンパ腫である、請求項2~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記T細胞白血病または前記T細胞リンパ腫が、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、または皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ヒトPSGL-1が配列番号11または配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体が静脈内注入により投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記JAK阻害剤が、前記抗体の投与の前、後、またはそれと同時に前記対象に投与される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記JAK阻害剤が前記対象に経口投与される、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、前記抗体及び前記JAK阻害剤の投与の前に、コルチコステロイドで治療されたことがある、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体及び前記JAK阻害剤の投与の結果、前記対象における前記T細胞媒介性炎症性疾患または前記がんの1つ以上の症状が低減される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
対象におけるT細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止する方法に使用するためのヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の前記抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、前記抗体。
【請求項41】
対象におけるがんを治療または防止する方法に使用するためのヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の前記抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、前記抗体。
【請求項42】
T細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止するための医薬の製造におけるヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体がJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与される、前記使用。
【請求項43】
がんの治療または防止のための医薬の製造におけるヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体がJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与される、前記使用。
【請求項44】
前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の使用または使用のための抗体。
【請求項45】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の使用または使用のための抗体。
【請求項46】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む、請求項40~43のいずれか1項に記載の使用または使用のための抗体。
【請求項47】
対象におけるT細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止するために、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体と、前記抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて使用するための指示を含む添付文書とを含む、キット。
【請求項48】
対象におけるがんを治療または防止するために、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体と、前記抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて使用するための指示を含む添付文書とを含む、キット。
【請求項49】
前記JAK阻害剤をさらに含む、請求項46または請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む、請求項46~49のいずれか1項に記載のキット。
【請求項51】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む、請求項46~49のいずれか1項に記載のキット。
【請求項52】
ヒトPSGL-1に特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、前記VHドメインが、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、前記VLドメインが、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む、請求項46~49のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/280,463号(2021年11月17日出願)の利益を主張し、当該出願は参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
電子配列表の参照
電子配列表(606592001640seqlist.xml、サイズ:38,629バイト、作成日:2022年11月14日)の内容は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0003】
本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんの治療または防止を、それを必要とする対象において行う方法であって、当該対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
T細胞媒介性炎症性疾患(例えば、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚障害、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節炎、I型糖尿病、ループス、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、及び自己免疫性甲状腺障害)、ならびにがん(例えば、白血病及びリンパ腫)は、重篤な健康状態に相当するものである。一例として、急性GvHD(aGvHD)は、非再発死亡率のほとんどを占める造血細胞移植(HCT)の主要な合併症である。aGvHDに対する標準的な第一選択治療は、1~2mg/kgのプレドニゾンまたはそれに相当する用量のステロイドからなり、完全奏効(CR)率は25~41%の範囲である。(a)メチルプレドニゾロン(MP)2mg/kg/日相当量による治療の3日後に進行した患者、(b)MP 2mg/kg/日相当量による治療の7日後に改善しなかった患者、(c)皮膚及び上部胃腸管GVHDに対するMP 1mg/kg/日相当量による治療後に新たな臓器に進行した患者、または(d)ステロイド漸減中または漸減後に再発した患者は、ステロイド抵抗性とみなされる(Przepiorka et al.,(2019)The oncologist,24:1-7)。
【0005】
Janusキナーゼ/転写シグナル伝達兼転写活性化因子(JAK/STAT)シグナル伝達経路は、多くの血液癌及び固形癌の発生及び進行に関連することが知られており[Waldmann and Chen(2017)Annu Rev Immunol 35:533-550;Vainchenker and Constantinescu(2013)Oncogene 32(21):2601-2613;Thomas et al.,(2015)Br J Cancer,113:365-71;O’Shea et al.,(2013)N Engl J Med 368:161-70]、また炎症性サイトカインの免疫系に及ぼす影響にも不可欠である(Villarino et al.,(2017)Nat Immunol,18:374-384)。STAT及びそれらの上流活性化因子のJAKは、がん及び炎症性疾患治療の標的として広く研究されている(Qureshy et al.,(2020)J Cancer Metastasis Treat 6:27-44;Hosseini et al.,(2020)J Cell Physiol.235(9):5903-5924)。多くのJAK阻害剤が、炎症性疾患またはがんの患者において、単剤療法または他の薬剤との組合せとして臨床試験で試験されたか、または積極的に試験中である。これらの阻害剤のうちの少なくとも5つは、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、GvHD(Qureshy et al.,(2020)J Cancer Metastasis Treat 6:27-44;Damsky et al.,(2021)Journal of Allergy and Clinical Immunology 147(3):814-826)、及び骨髄線維症を含む炎症性疾患またはがんの治療用に既に食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。
【0006】
ルキソリチニブはJAK1/2阻害剤であり、ステロイド抵抗性の急性GVHD(sr-aGvHD)及び慢性GVHD(cGVHD)の治療用に最近承認されている。ルキソリチニブが承認され、いくつかのタイプの二次治療を伴うにもかかわらず、sr-aGvHDの長期転帰は非常に不良であり、死亡率は70~80%の範囲である(Levine et al.,(2010)BBMT,16(12):1693-1699)。第二選択治療に失敗した患者(治療抵抗性)の転帰は、さらに一層悲惨なものとなる。
【0007】
急性GvHDは、ドナー由来のアロ反応性T細胞が、皮膚、GI管(track)、及び肝臓を含む患者組織を認識し破壊することにより引き起こされる。高度に増殖性で高度に活性化したアロ反応性T細胞を標的とし、制御または除去することがGvHD治療の基本的な戦略である。
【0008】
白血球輸送に関与する接着分子として長い間知られているPSGL-1が、慢性増殖/活性化T細胞を下方調節する免疫チェックポイント調節因子として認識された(Chen et al.,(2004)Blood,104(10):3233-3242;Huang et al.,(2005)Eur J Immunol,35(7):2239-2249)。PSGL-1に対するヒト化IgG4κモノクローナル抗体(mAb)のネイフリズマブ(AbGn-168H)は、PSGL-1に結合すると、後期活性化T細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を優先的に誘導する。ネイフリズマブはGVHDで試験し、有望な臨床的転帰を得ている。
【0009】
いくつかの研究により、PSGL-1がいくつかの血液悪性腫瘍の免疫療法治療の有力な標的であり得ることが明らかになった。例えば、遺伝子発現プロファイリングにより、PSGL-1が多発性骨髄腫及び未分化大細胞T細胞リンパ腫の細胞により強力に発現されることが明らかになり、また、in vitro処置により誘発される効果をさらに評価したところ、これらの悪性腫瘍における液性免疫療法の有望な候補であることも示された(Tripodo et al.,(2009)Curr Cancer Drug Targets,9(5):617-625;Azab et al.,(2012)Blood,119(6):1468-1478;Belmonte et al.,(2021)Cancers,13(12):2958-2973)。
【0010】
依然として、T細胞媒介性炎症性疾患及びがんに対するより有効な治療が必要とされている。
本明細書で引用する全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的において参照により全体として本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Przepiorka et al.,(2019)The oncologist,24:1-7
【非特許文献2】Waldmann and Chen(2017)Annu Rev Immunol 35:533-550
【非特許文献3】Vainchenker and Constantinescu(2013)Oncogene 32(21):2601-2613
【非特許文献4】Thomas et al.,(2015)Br J Cancer,113:365-71
【非特許文献5】O’Shea et al.,(2013)N Engl J Med 368:161-70
【非特許文献6】Villarino et al.,(2017)Nat Immunol,18:374-384
【非特許文献7】Qureshy et al.,(2020)J Cancer Metastasis Treat 6:27-44
【非特許文献8】Hosseini et al.,(2020)J Cell Physiol.235(9):5903-5924
【非特許文献9】Damsky et al.,(2021)Journal of Allergy and Clinical Immunology 147(3):814-826
【非特許文献10】Levine et al.,(2010)BBMT,16(12):1693-1699
【非特許文献11】Chen et al.,(2004)Blood,104(10):3233-3242
【非特許文献12】Huang et al.,(2005)Eur J Immunol,35(7):2239-2249
【非特許文献13】Tripodo et al.,(2009)Curr Cancer Drug Targets,9(5):617-625
【非特許文献14】Azab et al.,(2012)Blood,119(6):1468-1478
【非特許文献15】Belmonte et al.,(2021)Cancers,13(12):2958-2973
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
このニーズを満たすため、本明細書では、抗PSGL-1抗体をJAK阻害剤と組み合わせて使用して、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療または防止する方法を提供する。これらの方法は、少なくとも部分的には、抗PSGL-1抗体がJAK阻害剤との組合せで相乗的に作用して活性化T細胞のアポトーシス誘導を促進し、GVHD患者の転帰を改善することが分かったという本明細書での実証に基づくものである。
【0013】
したがって、1つの態様において、本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。別の態様において、本明細書では、がん(例えば、T細胞白血病またはT細胞リンパ腫などのT細胞媒介性がん)を治療または防止する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、VHドメインは、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、VHドメインは、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、VHドメインは、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1及び/またはJAK2を阻害する。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1及び/またはJAK3を阻害する。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はルキソリチニブまたはトファシチニブである。いくつかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、VHドメインは、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFGMHWVRQAPGKGLEWVAYINGGSSTIFYANAVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYASYGGGAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態において、VLドメインは、アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQSIVHNDGNTYFEWYQQKPGKAPKLLIYKVSNRFSGVPSRFSGSGSGTHFTLTISSLQPEDFATYYCFQGSYVPLTFGQGTKVEIK(配列番号3)を含む。いくつかの実施形態において、重鎖は抗体定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、定常ドメインはヒトIgG4定常ドメインである。いくつかの実施形態において、定常ドメインは、位置228のS228Pアミノ酸置換を含むヒトIgG4定常ドメインであり、ナンバリングはEUナンバリングに従う。いくつかの実施形態において、軽鎖はヒトカッパまたはラムダ軽鎖である。いくつかの実施形態において、重鎖は配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、VHドメインは配列番号27のアミノ酸配列のVHドメイン配列を含み、及び/またはVLドメインは配列番号31のアミノ酸配列のVLドメイン配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖は配列番号27のアミノ酸配列を含み、及び/または軽鎖は配列番号31のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、VHドメインは配列番号35のアミノ酸配列のVHドメイン配列を含み、及び/またはVLドメインは配列番号39のアミノ酸配列のVLドメイン配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖は配列番号35のアミノ酸配列を含み、及び/または軽鎖は配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体は配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖は配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は移植片対宿主病(GVHD)である。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は急性GVHDまたは慢性GVHDである。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は、ステロイド抵抗性急性GVHD(SR-aGVHD)または治療抵抗性急性GVHD(TR-aGVHD)である。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は、皮膚障害、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節炎、I型糖尿病、ループス、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、及び自己免疫性甲状腺疾患からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、がんはT細胞媒介性がんである。いくつかの実施形態において、がんはT細胞白血病またはT細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、ヒトPSGL-1は配列番号11または配列番号22のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、抗体は静脈内注入により投与される。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤は経口投与される。いくつかの実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤は、抗体の投与の前、後、またはそれと同時に対象に投与される。いくつかの実施形態において、対象は、抗体及びJAK阻害剤の投与前に、コルチコステロイドで治療されたことがある。いくつかの実施形態において、抗体及びJAK阻害剤の投与の結果、対象におけるT細胞媒介性炎症性疾患の1つ以上の症状が低減される。
【0016】
別の態様において、本明細書では、(例えば、上記の実施形態のいずれか1つに従う)対象におけるT細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療または防止する方法に使用するためのヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、対象に、治療有効量の抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む。
【0017】
別の態様において、本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療または防止するための医薬の製造におけるヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体の使用であって、当該抗体がJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与される、使用を提供する。別の態様において、本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんを治療または防止するための医薬の製造における、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体及びJanusキナーゼ(JAK)阻害剤の使用を提供する。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む。
【0018】
別の態様において、本明細書では、対象におけるT細胞媒介性炎症性疾患を治療または防止するために、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体と、当該抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて使用するための指示を含む添付文書とを含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列AYYIH(配列番号24)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RVNPNTGGTSYNPKFKG(配列番号25)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列SGSPYYRYDD(配列番号26)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RASSTVNSTYLH(配列番号28)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列GSSNLAS(配列番号29)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列QQYSGYPLT(配列番号30)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列TNAMN(配列番号32)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列RIRSKSNNYATYYADSVKD(配列番号33)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列GGSYWYFDV(配列番号34)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVNSNGNTYLE(配列番号36)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号37)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSHVPWT(配列番号38)を含むCDR-L3とを含む。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品はJAK阻害剤をさらに含む。
【0019】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、一部、または全てが本発明の他の実施形態を形成するように組み合わされてもよいことを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】ルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せによる相乗効果を試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ルキソリチニブ及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RUXO:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図1A;ドナー2;図1B;ドナー3、図1C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例1に記載のように評価した。
図1B】ルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せによる相乗効果を試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ルキソリチニブ及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RUXO:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図1A;ドナー2;図1B;ドナー3、図1C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例1に記載のように評価した。
図1C】ルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せによる相乗効果を試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ルキソリチニブ及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RUXO:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図1A;ドナー2;図1B;ドナー3、図1C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例1に記載のように評価した。
【0021】
図2】活性化T細胞アポトーシスに対するルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せのコンビナトリアル効果を試験した実験の結果を示しており、本明細書の実施例1に記載のようにChou-Talalay半数効果解析を用いて評価した。指示された固定比(3.3:1、1.1:1、及び0.37:1)のルキソリチニブ及び抗体15A7Hについて、指示されたドナー(N089、N084、N102、及びN103)に由来する細胞における活性化T細胞のアポトーシスに及ぼす効果を試験した。x軸は無処置の対照細胞と比較して観察されたアポトーシス分画を示し、y軸は対応する組合せインデックス(CI)を示している。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
【0022】
図3A】ラパマイシン(「RAPA」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せを試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ラパマイシン及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RAPA:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図3A;ドナー2;図3B;ドナー3、図3C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例2に記載のように評価した。
図3B】ラパマイシン(「RAPA」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せを試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ラパマイシン及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RAPA:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図3A;ドナー2;図3B;ドナー3、図3C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例2に記載のように評価した。
図3C】ラパマイシン(「RAPA」)と抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せを試験したT細胞アポトーシスアッセイの結果を示している。ラパマイシン及び抗体15A7Hを単独でまたは組み合わせて、指示濃度(RAPA:10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μM;抗体15A7H:0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mL)で、3例のドナー(ドナー1、図3A;ドナー2;図3B;ドナー3、図3C)の末梢血単核球(PBMC)由来の活性化T細胞において試験した。アイソタイプ対照抗体(「アイソタイプ対照」)単独またはルキソリチニブとの組合せも3μg/mL対照抗体濃度で試験した。y軸に示す細胞アポトーシスのレベルを、本明細書の実施例2に記載のように評価した。
【0023】
図4A】活性化T細胞のアポトーシスに対するルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体LH10(図4A)、c43B6(図4B)、またはh9F9(図4C)の組合せのコンビナトリアル効果を試験した実験の結果を示しており、本明細書の実施例3に記載のようにChou-Talalay半数効果解析を用いて評価した。指示された固定比(3.3:1、1.1:1、及び0.37:1)のルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体について、指示されたドナー(N98、M1、及びN136)に由来する細胞における活性化T細胞のアポトーシスに及ぼす効果を試験した。x軸は無処置の対照細胞と比較して観察されたアポトーシス分画を示し、y軸は対応するLog10組合せインデックス(CI)を示している。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
図4B】活性化T細胞のアポトーシスに対するルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体LH10(図4A)、c43B6(図4B)、またはh9F9(図4C)の組合せのコンビナトリアル効果を試験した実験の結果を示しており、本明細書の実施例3に記載のようにChou-Talalay半数効果解析を用いて評価した。指示された固定比(3.3:1、1.1:1、及び0.37:1)のルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体について、指示されたドナー(N98、M1、及びN136)に由来する細胞における活性化T細胞のアポトーシスに及ぼす効果を試験した。x軸は無処置の対照細胞と比較して観察されたアポトーシス分画を示し、y軸は対応するLog10組合せインデックス(CI)を示している。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
図4C】活性化T細胞のアポトーシスに対するルキソリチニブ(「RUXO」)と抗PSGL-1抗体LH10(図4A)、c43B6(図4B)、またはh9F9(図4C)の組合せのコンビナトリアル効果を試験した実験の結果を示しており、本明細書の実施例3に記載のようにChou-Talalay半数効果解析を用いて評価した。指示された固定比(3.3:1、1.1:1、及び0.37:1)のルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体について、指示されたドナー(N98、M1、及びN136)に由来する細胞における活性化T細胞のアポトーシスに及ぼす効果を試験した。x軸は無処置の対照細胞と比較して観察されたアポトーシス分画を示し、y軸は対応するLog10組合せインデックス(CI)を示している。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
【0024】
図5】活性化T細胞のアポトーシスに対するトファシチニブ(「TOFA」)と抗PSGL-1抗体15A7HまたはLH10との組合せのコンビナトリアル効果を試験した実験結果を示しており、本明細書の実施例4に記載のようにChou-Talalay半数効果解析を用いて評価した。指示された固定比1:1のトファシチニブ及び抗体15A7HまたはLH10について、指示されたドナー(M1、N93、及びN95)に由来する細胞における活性化T細胞のアポトーシスに及ぼす効果を試験した。x軸は無処置の対照細胞と比較して観察されたアポトーシス分画を示し、y軸は対応するLog10組合せインデックス(CI)を示している。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
【0025】
図6】移植片対宿主病(GvHD)の異種マウスモデルにおいて、ルキソリチニブ、抗PSGL-1抗体15A7H、または両方の組合せの効果を試験した実験の結果を示している。進行性重症免疫不全(ASID)マウスに照射し、ヒトPBMCを移植して異種GvHDを誘導した。ヒトPBMCの生着から72時間後に治療を開始した(1日目として割り当てる)。45mg/kg(45mpk)のルキソリチニブまたはビヒクルを1日2回15日間経口投与し、さらに10mg/kg(10mpk)の抗PSGL-1 15A7H抗体またはビヒクルを3~4日おきに合計5回用量で静脈内投与した。マウスの生存率を毎日評価した。4つ全ての処置群における処置後の経時的な生存率を示している(群当たりn=5~7)。組合せ処置群が最良の生存率を示した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書では、T細胞媒介性炎症性疾患またはがんの治療または防止を、それを必要とする対象において行う方法であって、当該対象に、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体をJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体は、重鎖可変(VH)ドメインを含む重鎖と、軽鎖可変(VL)ドメインを含む軽鎖とを含み、VHドメインは、アミノ酸配列SFGMH(配列番号8)を含むCDR-H1と、アミノ酸配列YINGGSSTIFYANAVKG(配列番号9)を含むCDR-H2と、アミノ酸配列YASYGGGAMDY(配列番号10)を含むCDR-H3とを含み、VLドメインは、アミノ酸配列RSSQSIVHNDGNTYFE(配列番号5)を含むCDR-L1と、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号6)を含むCDR-L2と、アミノ酸配列FQGSYVPLT(配列番号7)を含むCDR-L3とを含む。本明細書ではさらに、関連する使用及びキット/製造品を提供する。
【0027】
I.定義
抗体とは、標的(例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に対し、免疫グロブリン分子の可変領域内にある少なくとも1つの抗原認識部位を介し特異的に結合可能な免疫グロブリン分子のことである。本明細書で使用する場合、この用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を包含するにとどまらず、そのフラグメントを含むポリペプチド(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖可変フラグメント(scFv)、単鎖ダイアボディ(scDb)、タンデム単鎖可変フラグメント(scFv)単位(タンデムscFvはtaFvと称される)、及びこれらの変異体または他の構成、抗体部分を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾構成も包含する。
【0028】
抗体には任意のクラスの抗体(例えば、IgG、IgA、IgM(またはそのサブクラス))が含まれ、抗体は特定のクラスである必要はない。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて種々のクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)に分類することができる。種々のクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構造が周知されている。
【0029】
本開示の抗体はさらに、抗体の少なくとも1つのCDR領域により付与されるポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性、多重特異性、キメラ、ヒト化、及び組換え構築分子を含むことが意図されている。抗体重鎖の可変ドメインまたは抗体軽鎖の可変ドメインのいずれかであるシングルドメイン抗体が当技術分野で知られている。例えば、Holt et al.,Trends Biotechnol.21:484-490,2003を参照。また、抗体由来の天然の6つの相補性決定領域のうちの3つを含む、抗体重鎖の可変ドメインまたは抗体軽鎖の可変ドメインのいずれかを含む抗体を作製する方法も当技術分野で知られている。例えば、Muyldermans,Rev.Mol.Biotechnol.74:277-302,2001を参照。
【0030】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」とは実質的に均質な抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る考えられる天然の変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は概して特異性が高く、単一の抗原部位に対し向けられている。さらに、ポリクローナル抗体調製物(典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対し向けられた異なる抗体を含む)とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対し向けられている。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の生成を要すると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495によって最初に説明されたハイブリドーマ法により作製してもよく、米国特許第4,816,567号に記載のような組換えDNA法により作製してもよい。モノクローナル抗体は、例えば、McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554に記載の技法を用いて生成されるファージライブラリーから単離してもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、第1の生物種由来の可変領域または可変領域の一部と、第2の生物種由来の定常領域とを有する抗体を指す。インタクトなキメラ抗体は、2コピーのキメラ軽鎖及び2コピーのキメラ重鎖を含む。キメラ抗体の生成は当技術分野で知られている(Cabilly et al.(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3273-3277;Harlow and Lane(1988),Antibodies:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory)。典型的には、これらのキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖両方の可変領域は、一方の種の哺乳類に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方、定常部分は他方の種に由来する抗体の配列と相同である。このようなキメラ形態の明確な利点の一つは、例えば、非ヒト宿主生物由来の容易に入手可能なハイブリドーマまたはB細胞を用いて、可変領域を現在知られている供給源から好都合に導出し、例えば、ヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせることができる点である。可変領域は調製が容易であるという利点を有し、特異性がその供給源による影響を受けず、一方、ヒトのものである定常領域は、抗体を注射したときに、非ヒト供給源由来の定常領域よりもヒト対象から免疫応答を誘発する可能性が低い。ただし、当該定義はこの特定の例に限定されない。いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は可変領域及び/または定常領域内で行われる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。ほとんどの部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補的決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、またはウサギ)(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含むことができ、ただし抗体の性能をさらに洗練し最適化するように含まれる。概して、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。またヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(例えば、Fcドメイン)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。抗体は、WO99/58572に記載のように修飾されたFc領域を有してもよい。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に対し改変されている1つ以上(1、2、3、4、5、6つ)のCDRを有し、これは元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも称される。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」とは、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または当技術分野で知られているもしくは本明細書で開示するヒト抗体を作製するための任意の技法を用いて作製された抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。このような例の1つとして、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体がある。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技法を用いて生成することができる。1つの実施形態において、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、このファージライブラリーはヒト抗体を発現する(Vaughan et al.,1996,Nature Biotechnology,14:309-314;Sheets et al.,1998,PNAS,(USA)95:6157-6162;Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581)。またヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに導入することにより、作製することもできる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号で説明されている。代替的に、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を生成するヒトBリンパ球を不死化することにより調製してもよい(このようなBリンパ球は、個体から回収してもよく、in vitroで免疫されていてもよい)。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,1991,J.Immunol.,147(1):86-95;及び米国特許第5,750,373号を参照。
【0034】
抗体の「可変領域」(本明細書では「可変ドメイン」という用語が互換的に使用されることがある)とは、単独または組合せのいずれかでの抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域(それぞれVHドメイン及びVLドメイン)は各々、4つのフレームワーク領域(FR)及びそれに接続する3つの相補性決定領域(CDR)(超可変領域の別名でも知られる)からなる。各鎖内のCDRはFRによって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための技法は少なくとも2つ存在し、(1)異種間の配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD))、及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948))がある。本明細書で使用する場合、CDRは、いずれかのアプローチまたは両方のアプローチの組合せにより定義されたCDRを指し得る。
【0035】
複数のHVR区切りが使用されており、これらは本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。一方、Chothiaは構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRはKabat HVR及びChothia構造ループの折衷案に相当するものであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「コンタクト」HVRは、利用可能な複合結晶構造の解析に基づいている。これらのHVRの各々からの残基を下記に示す。
ループ Kabat AbM Chothia コンタクト
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0036】
可変ドメイン内の残基(軽鎖のおよそ1~107残基及び重鎖の約1~113残基)を指す際には、概してKabatナンバリングシステムが使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、概して、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す際に使用される(例えば、Kabat et al.(前掲)、または及びEdelman,G.M.et al.(1969)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63:78-85で報告されているEUインデックス)。
【0037】
本明細書で使用する場合、「Fv」とは、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小限の抗体フラグメントを指し得る。このフラグメントは、典型的には、緊密な非共有結合における1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各々3つのループ)が生じ、これが抗原結合のためのアミノ酸残基をもたらし、抗体に抗原結合特異性を付与する。ただし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりは親和性が低いが、抗原を認識し抗原に結合する能力を有する。
【0038】
抗体の「定常領域」(本明細書では「定常ドメイン」という用語が互換的に使用されることがある)とは、単独または組合せのいずれかでの抗体軽鎖の定常領域(CL)または抗体重鎖の定常領域(CH)を指す。概して、抗体の定常領域は、構造的安定性及び他の生物学的機能(例えば、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動性、及び補体結合)を提供するが、抗原との結合には関与しない。定常領域の遺伝子内のアミノ酸配列及び対応するエクソン配列は、それが由来する種に依存するが、アロタイプをもたらすアミノ酸配列のバリエーションは、種内の特定の定常領域については比較的限定されている。各鎖の可変領域は、結合ポリペプチド配列によって定常領域に連結している。結合配列は、軽鎖遺伝子の場合「J」配列、重鎖遺伝子の場合「D」配列と「J」配列との組合せによりコードされる。抗体のアイソタイプに応じて、重鎖定常領域はCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及び/またはCH4ドメインを含むことができる。ある特定の実施形態において、重鎖定常領域はCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0039】
「Fc領域」という用語(本明細書では「Fcドメイン」という用語が互換的に使用され得る)は、本明細書では免疫グロブリン重鎖のC末端領域(ネイティブ配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む)を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得る。いくつかの実施形態において、Fc領域はヒンジ領域の1つ以上のアミノ酸を含むことがある。いくつかの実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、EU位置216のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸長するように定義されている。本開示の抗体で使用するのに適したネイティブ配列のFc領域としては、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4が挙げられる。
【0040】
「単鎖Fv」は「sFv」または「scFv」とも略され、接続して単一のポリペプチド鎖になったV及びV抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするV及びVドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994))を参照。
【0041】
「ダイアボディ」という用語は、VドメインとVドメインとの間に短いリンカー(例えば、約5~12残基)を有するsFvフラグメント(前の段落を参照)を構築して、Vドメインの鎖間対合を達成し、ただし鎖内対合は達成せず、それにより二価フラグメント、すなわち2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるように調製される抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVドメインがVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO93/11161、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)でより詳細に説明されている。
【0042】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントしギャップを導入して、必要な場合は最大配列同一性パーセントを達成した後に、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当業者の技量範囲内の様々な方法で、例えば、公的に入手可能なコンピューターソフトウェア(例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア)を用いて達成することができる。当業者は、配列をアラインメントするための適切なパラメーター(比較されている配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む)を決定することができる。
【0043】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸の多量体を指す。多量体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸により中断されてもよい。またこれらの用語は、天然にまたは介入により修飾(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または他の任意の操作もしくは修飾(例えば、標識構成要素との結合体化))がなされたアミノ酸多量体も含む。また、この定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、及び当技術分野で知られている他の修飾も含まれる。本開示のポリペプチドは四価抗体に基づくため、ポリペプチドが単鎖または会合鎖として生じ得ることを理解されたい。
【0044】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、これにはDNA及び/またはRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド、もしくは塩基、及び/またはこれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド(例えば、メチル化ヌクレオチド及びそのアナログ)を含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾はポリマーの構築の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、重合後、例えば標識構成要素との結合体化によってさらに修飾することができる。他のタイプの修飾としては、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上をアナログと置換する「キャップ」、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)の懸垂部分を含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、アルファアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が挙げられる。さらに、糖内に通常存在する任意のヒドロキシル基を、例えばホスホネート基、リン酸基により置き換えたり、標準的な保護基により保護したり、活性化して追加のヌクレオチドへの追加的結合を調製したり、固体担体と結合体化することができる。5’及び3’末端のOHはリン酸化してもよく、アミンまたは1~20個の炭素原子からの有機キャッピング基部分により置換してもよい。他のヒドロキシルも標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で一般的に知られているリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含むことができ、これには例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ、または2’-アジド-リボース、炭素環糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、リキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、及び脱塩基ヌクレオシドアナログ(例えば、メチルリボシド)が含まれる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替的な結合基により置き換えられてもよい。このような代替的な結合基としては、限定されるものではないが、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH(「ホルムアセタール」)で置き換えられる実施形態が挙げられ、式中、各RまたはR’は独立的に、Hであるか、または置換もしくは非置換アルキル(1~20C)(任意選択でエーテル(-O-)結合を含む)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチド(RNA及びDNAを含む)に適用される。
【0045】
本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、宿主細胞内で1つ以上の目的遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達可能であり、望ましくは発現可能である構築物を意味する。ベクターの例としては、限定されるものではないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、及び生産者細胞などのある特定の真核細胞が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」とは、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、プロモーター(例えば、構成的もしくは誘導的プロモーター)またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作用可能に結合している。
【0047】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効量」または「治療有効量」とは、有益な、所望の、及び/または治療結果をもたらすのに十分な量のことである。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発症の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益または所望の結果には、疾患から生じる1つ以上の症状の減少、疾患を患う人々のクオリティーオブライフの向上、疾患の治療に要する他の医薬の用量の減少、例えば標的化を介した他の医薬の効果の増強、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床的結果が含まれる。例えば、移植を待機している個体を治療する場合、有効量の薬物は、個体におけるアロ抗体及び/またはPRAのレベルをある程度低減することができる。移植または輸血を受けている個体を治療する場合、有効量の薬物は、移植または輸血に関連する症状または状態(例えば、T細胞媒介性炎症性疾患)のうちの1つ以上におけるある程度の効果及び/または緩和する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。本開示の目的において、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。有効投与量は、1回以上の投与で投与することができる。本開示の目的において、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、有効投与量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物(例えば、JAK阻害剤)とともに達成される場合も達成されない場合もある。したがって、「有効投与量」は1つ以上の治療薬剤を投与する文脈で検討することができ、単一の薬剤は、望ましい結果が1つ以上の他の薬剤と併せて達成され得るまたは達成される場合、有効量で投与されるとみなすことができる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「~とともに」または「~と組み合わせて」とは、別の治療モダリティーに加えてある治療モダリティーを投与することを指す。そのため、「~とともに」または「~と組み合わせて」とは、一方の治療モダリティーを、個体に他の治療モダリティーを投与する前、その最中、またはその後に投与することを指す。
【0049】
本明細書で使用する場合、「治療」または「治療すること」とは、有益または所望の結果(望ましく臨床的な結果を含む)を得るためのアプローチのことである。有益な、所望の、及び/または治療的な臨床結果としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:炎症もしくは自己免疫(例えば、T細胞媒介炎症性疾患に起因する)の1つ以上の症状の低減もしくは抑制、患者の首尾よい転帰の可能性の増加、及び/または医学的治療(例えば、移植もしくは輸血に関連するもの)に関する1つ以上の禁忌もしくは有害な転帰の軽減、疾患に起因する症状の減少、疾患を患う人々のクオリティーオブライフの向上、疾患の治療に要する他の医薬の用量の減少、疾患の進行の遅延、及び/または個人の生存期間の延長。
【0050】
本明細書で使用する場合、「疾患の発症を遅延させる」とは、疾患(例えば、がん)の発症を延ばす、妨害する、遅らせる、安定化させる、及び/または延期させることを意味する。この遅延の時間の長さは、疾患の履歴、及び/または治療される患者に応じて異なり得る。当業者には明らかであるように、十分または大幅に遅らせることは、個体が疾患を発症しないという点において、実際上防止することを包含し得る。例えば、炎症性疾患(例えば、T細胞媒介性炎症性疾患)の症状を遅延させることができる。
【0051】
「個体」または「対象」とは、哺乳類、より望ましくはヒトのことである。また哺乳類には、限定されるものではないが、家畜、スポーツ動物、ペット(例えば、ネコ、イヌ、またはウマ)、霊長類、マウス、及びラットも含まれる。
【0052】
本明細書で使用する場合、「特異的に認識する」または「特異的に結合する」という用語は、不均質な分子(生物学的分子を含む)の集団の存在下で標的の存在を決定する測定可能で再現可能な相互作用、例えば、標的及び抗体(例えば、完全長抗体、抗体フラグメント、または抗体VH-VL結合単位)の間の引力または結合を指す。例えば、エピトープに特異的または優先的に結合する抗体、抗体フラグメント、または抗体VH-VL結合単位は、それが標的の他のエピトープまたは非標的のエピトープに結合するよりも高い親和性、アビディティで容易に及び/または長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。また、この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異または優先的に結合する抗体、抗体フラグメント、抗体VH-VL結合単位が、第2の標的に特異的または優先的に結合する場合もあれば結合しない場合もあることも理解される。そのため、「特異的な結合」または「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を必要とするわけではない(ただし、これを含むことはできる)。標的に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、または抗体VH-VL結合単位の会合定数は、約10-1もしくは約10-1またはそれ以上、場合によっては約10-1もしくは約10-1またはそれ以上、他の場合では約10-1もしくは約10-1またはそれ以上、約10-1~約10-1、もしくは約1010-1~約1011-1またはそれ以上であり得る。様々なイムノアッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性を有する抗体、抗体フラグメント、または抗体VH-VL結合単位を選択することができる。例えば、固相ELISA免疫測定法は、タンパク質に特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用されている。特異的な免疫反応性の定量に使用することができるイムノアッセイの形式及び条件の説明については、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照。
【0053】
「添付文書」とは、医薬の市販パッケージに通例含まれている指示を指し、医薬の市販パッケージに通例含まれている適応症についての情報を含み、適応症、用法、投与量、管理、禁忌、パッケージ製品と組み合わされる他の医薬、及び/またはこのような医薬の使用に関する警告などの情報を含む。
【0054】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「抗体」に対する言及は、1~多数の抗体(例えば、モル量)に対する言及であり、当業者に知られているその等価物などを含む。
【0055】
本明細書で「約」の値またはパラメーターに対する言及は、その値またはパラメーターをそれ自体で対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」についての記述は「X」の記述を含む。
【0056】
本明細書に記載する本開示の態様及び変形形態が、「~からなる」及び/または「~から本質的になる」態様及び変形形態を含むことを理解されたい。
【0057】
II.抗PSGL-1抗体及び使用方法
本開示のある特定の態様は、治療有効量のヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体を本開示のJanusキナーゼ(JAK)阻害剤と組み合わせて投与することにより、T細胞媒介性疾患を治療または防止する方法に関する。本開示の任意の抗PSGL-1抗体は、本明細書で開示する方法で使用することができる。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性疾患はT細胞媒介性炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性疾患はT細胞媒介性がん(例えば、T細胞白血病またはリンパ腫)である。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書では、例えば、表Aに示されているように、(a)(i)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(iii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含むVLドメインと、(b)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含むVHドメインとを含む抗PSGL-1抗体を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書では、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む抗PSGL-1抗体を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号31の軽鎖配列由来のVLドメインを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号27の重鎖配列由来のVHドメインを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号27の重鎖配列由来のVHドメイン及び/または配列番号31の軽鎖配列由来のVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖及び/または配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号39の軽鎖配列由来のVLドメインを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(a)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH CDR配列を含む抗PSGL-1抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号35の重鎖配列由来のVHドメインを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号35の重鎖配列由来のVHドメイン及び/または配列番号39の軽鎖配列由来のVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖及び/または配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0069】
例示的な抗PSGL-1抗体配列、及び例示的なヒトPSGL-1ポリペプチド配列は、表Aに示されている。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体15A7Hの6つのCDR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体15A7HのVH及び/またはVLドメイン配列(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体(例えば、四価抗PSGL-1抗体)は配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体c43B6の6つのCDR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体c43B6のVH及び/またはVLドメイン配列(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体h9F9の6つのCDR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、抗体h9F9のVH及び/またはVLドメイン配列(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、抗体はヒト化またはキメラである。いくつかの実施形態において、抗体は四価抗PSGL-1抗体である。
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【表A-5】
【表A-6】
【表A-7】
【表A-8】
【表A-9】
【表A-10】
【0070】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体はヒト化抗PSGL1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、本明細書で提供する任意の実施形態のCDRを含み、またヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗PSGL1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、例えば、表Aに示されているように、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(f)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(g)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、及び(h)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのフレームワーク領域(FR)を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、及び(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つ全てのVL FR配列を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、及び(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つ全てのVH FR配列を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1と、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2と、(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3と、(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4とを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1と、(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2と、(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3と、(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4とを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、及び(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てのVL FR配列を含むVLドメインと、(b)(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(iii)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、及び(iv)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てのVH FR配列を含むVHドメインとを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、及び(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4を含むVLドメインと、(b)(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(iii)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、及び(iv)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4を含むVHドメインとを含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(v)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、(vi)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(vii)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(iii)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、(vi)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(vii)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4を含むVHドメインを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL FR1、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL FR2、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(v)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL FR3、(vi)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(vii)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL FR4を含むVLドメインと、(b)(viii)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH FR1、(ix)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(x)配列番号18のアミノ酸配列を含むVH FR2、(xi)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(xii)配列番号19のアミノ酸配列を含むVH FR3、(xiii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(xiv)配列番号20のアミノ酸配列を含むVH FR4を含むVHドメインとを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む。いくつかの実施形態において、配列番号4のアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗PSGL-1抗体はPSGL-1に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態において、配列番号4内で合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態において、配列番号4内で合計1~5個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態において、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は配列番号4のVH配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。いくつかの実施形態において、VHは、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【化1】
【0079】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、配列番号3のアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗PSGL-1抗体はPSGL-1に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、配列番号3内で合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態において、配列番号3内で合計1~5個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は配列番号3のVL配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。いくつかの実施形態において、VLは、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのCDRを含む。
【化2】
【0080】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、本明細書で提供する任意の実施形態のVHと、本明細書で提供する任意の実施形態のVLとを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号4のVH配列及び配列番号3のVL配列をそれぞれ含み、これにはこれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、本明細書で提供する抗PSGL-1抗体と同じエピトープに結合する抗PSGL-1抗体を含む。例えば、いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号4の配列を含むVHと、配列番号3の配列を含むVLとを含む抗PSGL-1抗体と同じエピトープに結合する。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、本明細書に記載の抗PSGL-1抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)フラグメント)である。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、実質的に完全長の抗PSGL-1抗体(例えば、IgG4抗体)、または本明細書に記載の他の抗体クラスもしくはアイソタイプを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体はIgG、IgM、またはIgAクラスである。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体はヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4定常ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体はヒトIgG4定常ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は重鎖を含み、この重鎖は、EUナンバリングに従って残基位置228のS228Pアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、EUナンバリングに従って残基位置228のS228Pアミノ酸置換を含むIgG4ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、アミノ酸配列ESKYGPPCPPCPA(配列番号12)を含むIgG4ヒンジドメインを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗PSGL-1抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【化3】
【0085】
いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、Kabatらのナンバリングに従って、抗PSGL-1抗体15A7HのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、抗PSGL-1抗体15A7HのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、抗PSGL-1抗体15A7HのVHドメイン及び/またはVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、抗PSGL-1抗体15A7HのVHドメイン及びVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、抗PSGL-1抗体15A7Hの重鎖及び/または軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は、抗PSGL-1抗体15A7Hの重鎖及び軽鎖を含む。抗PSGL-1抗体15A7Hは、US20130209449及びUS20130011391に記載されている。本明細書で提供する方法に使用できるさらなる抗PSGL-1抗体が、米国特許第7,604,800号及び同第8,361,472号に記載されている。
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は四価抗PSGL-1抗体である。例示的な四価抗PSGL-1抗体がWO2017120534で開示されている。
【0087】
ヒトPSGL-1はセレクチンPリガンド、SELPG、CLA、CD162、またはPSGL1とも称される。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、例えば、NCBI RefSeq Gene ID No.6404に記載のヒトSELPG遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、アミノ酸配列MPLQLLLLLILLGPGNSLQLWDTWADEAEKALGPLLARDRRQATEYEYLDYDFLPETEPPEMLRNSTDTTPLTGPGTPESTTVEPAARRSTGLDAGGAVTELTTELANMGNLSTDSAAMEIQTTQPAATEAQTTQPVPTEAQTTPLAATEAQTTRLTATEAQTTPLAATEAQTTPPAATEAQTTQPTGLEAQTTAPAAMEAQTTAPAAMEAQTTPPAAMEAQTTQTTAMEAQTTAPEATEAQTTQPTATEAQTTPLAAMEALSTEPSATEALSMEPTTKRGLFIPFSVSSVTHKGIPMAASNLSVNYPVGAPDHISVKQCLLAILILALVATIFFVCTVVLAVRLSRKGHMYPVRNYSPTEMVCISSLLPDGGEGPSATANGGLSKAKSPGLTPEPREDREGDDLTLHSFLP(配列番号11)を含むポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、アミノ酸配列MPLQLLLLLILLGPGNSLQLWDTWADEAEKALGPLLARDRRQATEYEYLDYDFLPETEPPEMLRNSTDTTPLTGPGTPESTTVEPAARRSTGLDAGGAVTELTTELANMGNLSTDSAAMEIQTTQPAATEAQTTPLAATEAQTTRLTATEAQTTPLAATEAQTTPPAATEAQTTQPTGLEAQTTAPAAMEAQTTAPAAMEAQTTPPAAMEAQTTQTTAMEAQTTAPEATEAQTTQPTATEAQTTPLAAMEALSTEPSATEALSMEPTTKRGLFIPFSVSSVTHKGIPMAASNLSVNYPVGAPDHISVKQCLLAILILALVATIFFVCTVVLAVRLSRKGHMYPVRNYSPTEMVCISSLLPDGGEGPSATANGGLSKAKSPGLTPEPREDREGDDLTLHSFLP(配列番号22)を含むポリペプチドに結合する。配列番号11のアミノ酸配列は完全長ヒトPSGL-1(GenBank(商標)アクセッション番号AAA74577.1、GL902797)を示し、配列番号22のアミノ酸配列はより短い402アミノ酸ヒトPSGL-1タンパク質(GenBank(商標)アクセッション番号XP_005269133)を示している。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体は、例えば、ELISAまたは当技術分野で知られているもしくは本明細書に記載の他の抗原結合アッセイによる定量において、ヒトPSGL-1に特異的に結合する。
【0088】
本開示は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドに対する修飾を包含し、これには、これらの特性に顕著に影響を及ぼさない機能的に等価の抗体、ならびに活性及び/または親和性が増強または減少したバリアントが含まれる。ポリペプチドの修飾は、当技術分野では日常的に実施されており、本明細書で詳細に説明する必要はない。修飾ポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換、機能活性を顕著に有害に変化させないアミノ酸の1つ以上の欠失もしくは付加、または化学的アナログの使用が挙げられる。
【0089】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から100残基以上を含むポリペプチドに及ぶアミノ及び/またはカルボキシル末端融合物、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグと融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体の血清中半減期を増加させる酵素またはポリペプチドと抗体のN末端またはC末端との融合が挙げられる。
【0090】
置換バリアントは、抗体分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入される。置換変異誘発において最も大きな関心対象となる部位としては超可変領域が挙げられるが、FRの改変も企図されている。保存的置換は、下記の表の「保存的置換」という見出しの下に示されている。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、下記の表で「例示的な置換」と称された、またはアミノ酸クラスに関し下記でさらに説明されるようなより大幅な変化を導入し、生成物をスクリーニングすることができる。
【表2】
【0091】
抗体の生物学的特性の大幅な修飾は、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造(例えば、シートもしくはヘリックス立体構造として)、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクの維持に及ぼす効果が顕著に異なる置換を選択することにより、達成される。天然の残基は、共通の側鎖特性に基づく群に分類される。
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)電荷なしの極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性(負に帯電):Asp、Glu
(4)塩基性(正に帯電):Lys、Arg
(5)鎖の方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His
【0092】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することにより行われる。
【0093】
また、抗体の適正な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基も、(一般的にはセリンで)置換して分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止することができる。逆に、とりわけ抗体が抗体フラグメント(例えば、Fvフラグメント)である場合、システイン結合(複数可)を抗体に付加して、その安定性を改善することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示の抗PSGL-1抗体は抗体定常ドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体定常ドメインはヒト抗体定常ドメインである。ある特定の実施形態において、抗体定常ドメインはヒトIgG4定常ドメインである。いくつかの実施形態において、ヒトIgG4定常ドメインは、EUインデックスに従ってナンバリングされた重鎖のアミノ酸位置228(Kabatナンバリングを用いた位置241としても知られている)において、セリン→プロリンのアミノ酸置換を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖定常領域及び/または軽鎖定常領域内の1つ以上のアミノ酸残基が修飾される。いくつかの実施形態において、抗体のFc領域は、抗体のADCC活性及び/またはCDC活性を増強または低減するように修飾される。Shields et al.,J.Biol.Chem.276:6591-6604(2001);Presta et al.,Biochem.Soc.Trans.30:487-490(2002)を参照。
【0096】
本開示は、本明細書に記載の任意の四価抗体及び/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは軽鎖及び重鎖可変領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは単離されたポリヌクレオチド(例えば、宿主細胞から、または1つ以上の異なるポリヌクレオチドから単離されたもの)である。
【0097】
当業者は、遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書でに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が多数存在することを理解している。一部のこのようなポリヌクレオチドは、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対し最小限の相同性を有する。したがって、コドン使用頻度の相違によって変動するポリヌクレオチドが本開示により明確に企図されている。さらに、本明細書で提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本開示の範囲内である。アレルとは、1つ以上の変異(例えば、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/または置換)の結果として改変されている内在性遺伝子のことである。得られたmRNA及びタンパク質は、改変された構造または機能を有し得るが、有しなくてもよい。アレルは、標準的な技法(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅、及び/またはデータベースの配列比較)を用いて特定することができる。
【0098】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用いて得ることができる。ポリヌクレオチドを化学合成する方法は当技術分野で周知されており、本明細書で詳細に説明する必要はない。当業者は、本明細書で提供する配列及び市販のDNA合成装置を使用して所望のDNA配列を生成することができる。
【0099】
組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するには、本明細書でさらに論じるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入することができ、次に複製及び増幅のためにそのベクターを好適な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で知られている任意の手段により宿主細胞に挿入することができる。細胞は外来性ポリヌクレオチドを直接取込み、エンドサイトーシス、形質移入、F-接合、またはエレクトロポレーションにより導入することによって形質転換される。ひとたび導入されると、外来性ポリヌクレオチドは非統合ベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持されることもあれば、宿主細胞ゲノムに組み込まれることもある。このように増幅されたポリヌクレオチドは、当技術分野で周知されている方法により宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrook et al.(1989)を参照。
【0100】
代替的に、PCRはDNA配列の再生を可能にする。PCR技術は当技術分野で周知されており、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号、及び同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al.eds.,Birkauswer Press,Boston(1994)で説明されている。
【0101】
また本開示は、本明細書に記載の任意のポリペプチド(抗体を含む)をコードする核酸配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)も提供する。好適なクローニングベクターは、標準的な技法に従って構築することができ、または当技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択することができる。選択されるクローニングベクターは、使用が意図された宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは概して自己複製能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有することがあり、及び/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーに対する遺伝子を有することがある。好適な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター(例えば、pSA3及びpAT28)が挙げられる。これら及び多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業ベンダーから入手可能である。
【0102】
概して発現ベクターは、本開示に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの一体部分として、宿主細胞内で複製可能であり得る。好適な発現ベクターとしては、限定されるものではないが、プラスミド、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含む)、コスミド、及びPCT公開第WO87/04462号で開示されている発現ベクター(複数可)が挙げられる。ベクター構成要素は、限定されるものではないが、概して以下のうちの1つ以上を含み得る:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、及び好適な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、またはターミネーター)。発現(すなわち、翻訳)については、通常は1つ以上の翻訳制御エレメント(例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、または終止コドン)も要する。
【0103】
抗体及び抗体に由来するポリペプチドを作成する方法は当技術分野で知られており、本明細書で開示している。十分に確立された方法を使用して抗PSGL抗体(例えば、ヒトPSGL-1に特異的に結合する抗体)を特定することができ、それから可変ドメイン(例えば、VH及び/またはVLドメイン)を本開示の抗体で使用することができる。例示的な抗ヒトPSGL-1抗体、ならびにこのような抗体をスクリーニング、生成、及び精製するための方法が国際出願公開第WO2012/174001号に記載されている。
【0104】
真核細胞用の多種多様な組換え宿主-ベクター発現系が知られており、本開示に使用することができる。例えば、Saccharomyces cerevisiae(すなわち一般的なパン酵母)は、真核微生物の中でも最も一般的に使用されているが、複数の他の株(例えば、Pichia pastoris)も利用可能である。多細胞生物に由来する細胞株、例えば、Sp2/0またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)(ATCCから入手可能)も宿主として使用することができる。真核細胞の形質転換に適した典型的なベクタープラスミドとしては、例えば、pSV2neo及びpSV2gpt(ATCC)、pSVL及びpSVK3(Pharmacia)、ならびにpBPV-1/pML2d(International Biotechnology,Inc)がある。
【0105】
本開示で有用な真核宿主細胞は、例えば、ハイブリドーマ、骨髄腫、形質細胞腫、またはリンパ腫細胞である。ただし、哺乳類宿主細胞がタンパク質発現のための転写及び翻訳DNA配列を認識し、リーダー配列の切断及びタンパク質の分泌によりリーダーペプチドをプロセシングし、タンパク質の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)をもたらすことが可能であれば、他の真核宿主細胞も好適に利用することができる。
【0106】
したがって、本開示は、本明細書で開示するDNA構築物を含む組換え発現ベクターにより形質転換され、かつ本開示の四価抗体またはポリペプチドを発現することが可能な宿主細胞(例えば、真核宿主細胞)を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の形質転換宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチド、または本開示の単量体、二量体、もしくは四価抗体を発現するポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのDNA構築物、ならびに抗体またはポリペプチドの発現を指示するためにコードDNA配列に対し配置される転写及び翻訳調節配列を含む。
【0107】
異種DNAを過剰発現可能な任意の宿主細胞を、目的の抗体、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的で使用することができる。哺乳類宿主細胞の非限定的な例としては、限定されるものではないが、COS、HeLa、及びCHO細胞が挙げられる。PCT公開第WO 87/04462号も参照。好適な非哺乳類宿主細胞としては、原核生物(例えば、E.coliまたはB.subtillis)及び酵母(例えば、S.cerevisae、S.pombe、またはK.lactis)が挙げられる。
【0108】
本開示で使用する宿主細胞は、当技術分野で周知されている標準的な形質移入手順により、様々な方法で形質転換することができる。使用され得る標準的な形質移入手順に含まれるものとして、エレクトロポレーション技法、プロトプラスト融合及びリン酸カルシウム沈殿技法がある。このような技法については、概してF.Toneguzzo et al.(1986),Mol.Cell.Biol.,6:703-706;G.Chu et al.,Nucleic Acid Res.(1987),15:1311-1325;D.Rice et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979),79:7862-7865;及びV.Oi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983),80:825-829により説明されている。目的ポリヌクレオチドを含むベクターは、複数の適切な手段のいずれか(エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いた形質移入、微粒子銃、リポフェクション、及び感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)を含む)により、宿主細胞に導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択は、しばしば宿主細胞の特徴に依存する。
【0109】
本開示のある特定の態様は、(例えば、本明細書に記載の四価抗体の構成成分として使用することができる)抗体可変ドメイン及び/または抗体フラグメントに関する。抗体フラグメントは、抗体の活性結合領域(例えば、Fab、F(ab’)、scFv、Fvフラグメントなど)を含むことができる。当技術分野で知られている様々な方法を使用して抗体フラグメントを生成及び/または単離し、本開示の四価抗体に組み込むことができ、これは例えば、本明細書に記載の概念に基づく当技術分野で知られている標準的な組換え技法により行うことができる。
【0110】
単鎖Fvフラグメントは、例えば、Iliades et al.,1997,FEBS Letters,409:437-441に記載のように生成することができる。様々なリンカーを用いたこのような単鎖フラグメントの結合については、Kortt et al.,1997,Protein Engineering,10:423-433で説明されている。抗体の組換え生産及び操作のための様々な技法が当技術分野で周知されている。このようなフラグメントは、当技術分野で十分に確立された技法(Rousseaux et al.(1986),in Methods Enzymol.,121:663-69 Academic Press)を用いて、本明細書に記載のモノクローナル抗体から生成することができる。
【0111】
抗体フラグメントを調製する方法は当技術分野で周知されている。例えば、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的切断により生成してF(ab’)と表される100Kdフラグメントを得ることができる。このフラグメントは、チオール還元剤及び任意選択でジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に対するブロッキング基を用いてさらに切断して、50KdのFab’一価フラグメントを生成することができる。代替的に、パパインを用いた酵素切断により、2つの一価のFabフラグメント及びFcフラグメントを直接生成する。これらの方法は、例えば、米国特許第4,036,945号及び同第4,331,647号及びそれらに含まれる文献に記載されており、これらの特許は参照により本明細書に援用される。また、Nisonoff et al.(1960),Arch Biochem.Biophys.89:230;Porter(1959),Biochem.J.73:119;Smyth(1967),Methods in Enzymology 11:421-426も参照。代替的に、抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、そのベクターを原核生物または真核生物に導入してFabを発現させることにより、Fabを生成してもよい。
【0112】
また修飾には、グリコシル化ポリペプチド及び非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾(例えば、異なる糖によるグリコシル化、アセチル化、及びリン酸化)を伴うペプチドも含まれる。抗体は、定常領域内の保存された位置でグリコシル化されている(Jefferis and Lund,1997,Chem.Immunol.65:111-128;Wright and Morrison,1997,TibTECH 15:26-32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boyd et al.,1996,Mol.Immunol.32:1311-1318;Wittwe and Howard,1990,Biochem.29:4175-4180)、及び糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(糖タンパク質の立体構造及び提示された三次元表面に影響を及ぼし得る)(Hefferis and Lund(前掲);Wyss and Wagner,1996,Current Opin.Biotech.7:409-416)に影響を及ぼす。またオリゴ糖は、特定の認識構造に基づき、所与の糖タンパク質にある特定の分子を標的とさせるように機能することもある。また抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に影響を及ぼすことも報告されている。詳細には、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)(二等分GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼ)の発現がテトラサイクリンにより調節されたCHO細胞は、ADCC活性の改善が報告されている(Umana et al.,1999,Mature Biotech.17:176-180)。
【0113】
抗体のグリコシル化は、典型的にはN結合またはO結合のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分とアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン、アスパラギン-X-スレオニン、及びアスパラギン-X-システイン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖に対する酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のうちのいずれかが存在することにより、潜在的グリコシル化部位が作出される。O結合型グリコシル化とは、糖類のN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つと、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る)との結合を指す。
【0114】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、好都合には、(N結合型グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列を含むようにアミノ酸配列を変更することにより達成される。改変は、(O結合型グリコシル化部位のための)元の抗体の配列に1つ以上のセリンまたはスレオニン残基を付加するか、またはそれにより置換することによって行うこともできる。
【0115】
抗体のグリコシル化パターンは、基礎的なヌクレオチド配列を改変せずに改変させることもできる。グリコシル化は、抗体の発現に使用される宿主細胞に大きく依存する。有望な治療薬としての組換え糖タンパク質(例えば、抗体の発現)に使用される細胞タイプがネイティブ細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンにおけるばらつきが予想され得る(例えば、Hse et al.,1997,J.Biol.Chem.272:9062-9070を参照)。
【0116】
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え生成中にグリコシル化に影響を及ぼす因子としては、成長様式、培地配合、培養密度、酸素化、pH、精製スキームなどが挙げられる。ある特定の宿主生物において達成されるグリコシル化パターンを改変ための様々な方法(オリゴ糖生成に関与するある特定の酵素の導入または過剰発現を含む)が提案されている(米国特許第5,047,335号、同第5,510,261号、及び同第5,278,299号)。グリコシル化、またはある特定のタイプのグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N-グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、またはエンドグリコシダーゼF3を用いて、糖タンパク質から酵素的に除去することができる。さらに、組換え宿主細胞は、ある特定のタイプの多糖の処理が不完全になるように遺伝子操作することができる。これら及び類似の技法は当技術分野で周知されている。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、当技術分野で知られているカップリング技法(限定されるものではないが、酵素的手段、酸化的置換、及びキレート化を含む)を用いて修飾される。修飾は、例えばイムノアッセイ用の標識の結合に使用することができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は薬剤(例えば、治療薬剤または標識)と結合体化(例えば、結合)させることができる。治療薬剤の例としては放射性部分、細胞毒素、及び化学療法分子がある。
【0119】
III.JAK阻害剤
本開示のある特定の態様はJAK阻害剤に関する。本開示の任意のJAK阻害剤は、例えば、本開示の抗PSGL-1抗体と組み合わせて投与することにより、本明細書で開示する方法で使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1及び/またはJAK2を阻害する。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1及び/またはJAK3を阻害する。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1/JAK2阻害剤、JAK2/FLT3阻害剤、JAK2V617F阻害剤、JAK2阻害剤、JAK1阻害剤、またはJAK2/Src阻害剤(これらの医薬的に許容される塩を含む)である。JAK阻害剤についての例示的で非限定的な説明は、WO2007070514、WO2008157208、及びWO2019171326に見出すことができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はルキソリチニブまたはその医薬的に許容される塩である。当技術分野で知られているように、ルキソリチニブは、JAK1/JAK2阻害剤の(R)-3-(4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-3-シクロペンチルプロパンニトリルであり、また3(R)-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリルとも称され、以下の式を有する。
【化4】
【0122】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブはルキソリチニブリン酸塩を指す。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブは単位投与形態(例えば、錠剤)である。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブは経口投与される。
【0123】
いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はトファシチニブまたはその医薬的に許容される塩である。
【0124】
IV.方法及び使用
本開示のある特定の態様は、例えば、T細胞媒介性疾患(例えば、T細胞媒介性炎症性疾患)またはがん(例えば、T細胞白血病またはリンパ腫)を治療または防止するために、本開示のJAK阻害剤と組み合わせて対象に投与することによる、本明細書に記載の抗体の方法及び使用に関する。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0125】
本明細書に記載のように、PSGL-1は、炎症及びT細胞生物学に関与することが知られている。ヒトPSGL-1に特異的に結合する本開示の抗体は、とりわけ、T細胞機能に関連する疾患(例えば、T細胞媒介性炎症性疾患)を有する個体、または炎症状態(例えば、免疫学的反応)をもたらす可能性のある医療手順を必要とする個体、またはこのような状態が事前に管理される個体(例えば、移植または輸血)の治療において、例えば、本開示のJAK阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は移植片対宿主病(GVHD)(例えば、急性または慢性GVHD)である。いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は、ステロイド抵抗性急性GVHD(SR-aGVHD)または治療抵抗性急性GVHD(TR-aGVHD)である。例えば、Przepiorka et al.,(2019)The Oncologist,24:1-7及びMothy et al.,(2020)Blood,136(17):1903-1906を参照。
【0127】
いくつかの実施形態において、T細胞媒介性炎症性疾患は、皮膚障害、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節炎、I型糖尿病、ループス、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、及び自己免疫性甲状腺疾患からなる群より選択される。
【0128】
本開示の他の態様は、例えば、T細胞白血病またはT細胞リンパ腫(例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、または皮膚T細胞リンパ腫(CTCL))を治療または防止するために、本開示のJAK阻害剤と組み合わせて対象に投与することによる、本明細書に記載の抗体の方法及び使用に関する。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0129】
いくつかの実施形態において、JAK阻害剤は、抗体の投与の前、後、またはそれと同時に対象に投与される。
【0130】
いくつかの実施形態において、対象は、抗体及び/またはJAK阻害剤の投与前に、本開示のT細胞媒介性炎症性疾患(例えば、GVHD)に対し、1つ以上の全身治療を受けたことがある。いくつかの実施形態において、対象は、抗体及び/またはJAK阻害剤の投与前に、コルチコステロイドで治療されたことがある。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法により治療される障害または疾患はT細胞媒介性疾患であり得る。本明細書に記載の抗体及びJAK阻害剤を用いて治療することができる、またはその症状のうちの1つ以上を改善もしくは防止することができる障害及び疾患の非限定的な例としては、乾癬、クローン病、強直性脊椎炎、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、及び乾癬性関節炎を含む)、糖尿病、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、I型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病逆転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ぶどう膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球性貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス-ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、移植片対宿主病(GVHD)(例えば、急性または慢性GVHD)、移植拒絶反応、白斑、円形脱毛症、サイトカイン放出症候群、化膿性汗腺炎、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ぶどう膜炎、間質性肺線維症、アトピー性アレルギーなどのアレルギー、AIDS、ならびに白血病またはリンパ腫などのT細胞新生物が挙げられる。
【0132】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は尋常性乾癬である。尋常性乾癬(plaque psoriasis)または尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)は最も一般的な形態の乾癬であり、銀白色の鱗屑に覆われ、境界が明確で隆起した紅斑性の皮膚斑点を特徴とする。病変は、四肢の伸筋表面、腰仙領域、及び頭皮に影響を及ぼす傾向がある。対応する病理組織学的所見としては、真皮及び表皮の顕著な炎症性細胞浸潤、拡張した血管の増加、ならびにケラチノサイトの無秩序な分化及び過角化症を伴う大幅な表皮の肥厚が挙げられる。尋常性乾癬患者のおよそ3分の1は中等度または重度の疾患を有するものとして分類され、その結果、単なる局所治療を超える療法の候補となる。
【0133】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患は慢性尋常性乾癬である。尋常性乾癬の症状としては、限定されるものではないが、身体の任意の部位(限定されるものではないが、膝、肘、腰仙領域、頭皮、及び爪を含む)に生じるコイン~それ以上のサイズに及ぶ単一のまたは複数の隆起した皮膚の発赤斑点が挙げられる。
【0134】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される障害は滴状乾癬である。滴状乾癬の症状としては、限定されるものではないが、感染(例えば、連鎖球菌の咽喉感染)に続いて皮膚に生じる水滴形状の鱗屑斑点のフレアが挙げられる。
【0135】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は反対型乾癬である。反対型乾癬の症状としては、限定されるものではないが、以下の身体部位:腋窩、鼠径部、乳房の下、ならびに生殖器及び臀部周囲の他の皮膚のひだ、のうちの1つ以上に生じる、滑らかで通常は湿った(尋常性乾癬に付随する鱗屑とは異なり)赤色で炎症性の皮膚領域が挙げられる。
【0136】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は膿疱性乾癬である。膿疱性乾癬の症状としては、限定されるものではないが、サイズ及び位置が様々である(ただし、ほとんどの場合手足に生じる)膿で満たされた水疱が挙げられる。
【0137】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は乾癬性紅皮症である。乾癬性紅皮症の症状としては、限定されるものではないが、周期的で広範囲の皮膚の激しい発赤、及び小さな薄片ではなくシート状での鱗屑の脱落が挙げられる。皮膚の発赤及び脱落は、しばしば激しいかゆみ及び痛み、心拍数増加、ならびに体温の変動を伴う。
【0138】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は関節リウマチである。関節リウマチの症状としては、限定されるものではないが、疲労、食欲不振、微熱、腺腫脹、脱力、手首、肘、肩、腰、膝、足首、足指、顎、手、足、指、及び/または首の関節痛、朝のこわばり感、呼吸時の胸痛(胸膜炎)、目の灼熱感、かゆみ、及び眼脂、皮膚の小結節、手足のしびれ感、ピリピリ感、または灼熱感が挙げられる。
【0139】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害はクローン病である。クローン病の症状としては、限定されるものではないが、痙攣性の腹部(腹領域)痛、発熱、疲労、食欲不振、排便時痛(しぶり腹)、持続的な水様下痢、意図的でない体重減少、便秘、目の炎症、瘻孔(通常は直腸周辺で、膿、粘液、または便の排出を引き起こし得る)、関節痛、肝臓の炎症、口腔潰瘍、直腸出血及び血便、皮膚のしこりまたはびらん(潰瘍)、ならびに歯肉腫脹がある。
【0140】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は強直性脊椎炎である。強直性脊椎炎の症状としては、限定されるものではないが、腰部及び臀部、背骨、及び/または首の頻繁な痛み及びこわばり感、ならびに肋骨、肩甲骨、尻、大腿、及び踵に広がる痛み及び圧痛、目の炎症(虹彩毛様体炎及びぶどう膜炎)(発赤、眼痛、視力喪失、飛蚊症、及び羞明を引き起こす)、疲労感、ならびに嘔気が挙げられる。
【0141】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法に従って治療される疾患または障害は糖尿病である。糖尿病の症状としては、限定されるものではないが、体重減少、多尿(頻尿)、多飲(口渇の増加)、多食(空腹感の増加)、心血管疾患、糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパチー、高浸透圧非ケトーシス状態、及び糖尿病性ケトアシドーシスが挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体または組成物は、移植の前、それと同時、及び/またはその後に、JAK阻害剤と組み合わせて個体に投与することができる。
【0143】
本明細書で使用する場合、移植を必要とする個体の治療とは、治療的治療及び予防的または防止的治療(例えば、好ましい治療転帰(例えば、移植片の生存、移植片の機能)の可能性を増加させること、または好ましくない転帰(例えば、治療に対する好ましくない応答、もしくは好ましい治療(例えば、移植)が行われる可能性を低減する状態)の可能性を減少させること)のうちの1つ以上を指し得る。治療としては、限定されるものではないが、障害もしくは状態に関連する状態及び症状、及び/または個体が障害もしくは状態の治療選択肢にアクセスするのを妨害もしくは制限する問題もしくは状態(例えば、感作、過感作、高いパネル反応性抗体(PRA)レベル、及び/または移植を待機する個体への移植片の利用可能性を制限する既存のアロ抗体の存在)の軽減または防止を挙げることができる。治療を必要とする人々には、既に障害または状態を有する人々に加えて、障害または状態を防止すべき人々が含まれる。障害または状態の治療は、障害もしくは状態に関連する免疫媒介性事象を抑制し、障害もしくは状態の症状を改善し、障害もしくは状態の重症度を低減し、障害もしくは状態の進行の経過を改変し、及び/または基本的な障害もしくは状態を改善または治癒することができる。
【0144】
例えば、移植を待機する個体の治療の成功には、限定されるものではないが、アロ抗体のレベルの低減、パネル反応性抗体(PRA)の低減、個体がより多くのクロスマッチ適合ドナーを得ることの実現、個体が移植片を受ける可能性または確率の増加、移植片に対する個体の予想待機期間の短縮、個体の脱感作、移植関連の症状もしくは状態(例えば、下記に記載の免疫媒介性事象)のリスクの低下、またはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0145】
例えば、移植を受ける個体の治療の成功には、限定されるものではないが、移植臓器または組織の長期間にわたる保護及び維持が含まれ、これは、臓器移植に関連する1つ以上の症状または望ましくない状態(例えば、免疫媒介性事象(限定されるものではないが、症状または状態の機能的または組織学的徴候により測定されるドナー特異的アロ抗体(DSA)の生成、GVHD、抗体媒介性拒絶反応(AMR)、超急性移植拒絶反応、慢性移植拒絶反応、移植不全、及び移植喪失を含む))の制御、逆行、軽減、遅延、または防止を含む。障害または状態(例えば、移植拒絶反応)を制御可能な治療は、障害または状態(例えば、移植拒絶反応)の機能的または組織学的徴候が観察された後に開始する場合、疾患プロセスの進行を遅らせる治療を含むことができる。さらに、疾患または状態(例えば、移植拒絶反応)を元に戻すことが可能な治療は、疾患または状態(例えば、移植拒絶反応)の機能的または組織学的徴候が出現した後に開始する場合、疾患プロセスを逆行させ、機能的及び組織学的所見をより正常に近い状態に戻す治療を含むことができる。疾患または状態(例えば、移植拒絶反応)の「進行の遅延」が可能な治療は、疾患または状態(例えば、移植拒絶反応)の発症の延期、妨害、緩徐化、安定化、及び/または延期を含むことができる。この遅延の時間の長さは、疾患の履歴、及び/または治療される患者に応じて異なり得る。当業者には明らかであるように、十分なまたは顕著な遅延は、個体(例えば、障害または状態を発症するリスクがある個体)が障害または状態を発症しないという点において、実際上防止を包含し得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、本開示の移植は、限定されるものではないが、骨髄、腎臓、心臓、肝臓、ニューロン組織、肺、膵臓、皮膚、及び腸(例えば、小腸及び/または大腸、ならびにこれらの任意の部分組織)を含む1つ以上の組織または臓器の移植であり得る。
【0147】
加えて、抗体とJAK阻害剤との組合せは、健康な個体またはある特定の障害もしくは疾患を有しない個体に認められる活性化T細胞の増殖及び/または数と比較しての活性化T細胞の増殖及び/または数の増加に関連するまたはそれにより(全体的または部分的に)引き起こされるある特定の障害及び疾患を防止及び/または治療する上で有用である。本明細書に記載の抗体をJAK阻害剤と組み合わせて用いて防止及び/または治療することができる障害及び疾患の非限定的な例としては、移植片対宿主病、及び移植拒絶反応(同種異系または異種組織を用いた移植拒絶反応を含む)の症例(例えば、骨髄移植、肝移植、腎移植、または任意の臓器もしくは組織の移植)が挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体または組成物は、輸血の前、それと同時、及び/またはその後に、JAK阻害剤と組み合わせて個体に投与することができる。例えば、下記でより詳細に説明するように、本開示の四価抗体または組成物を投与して、好ましい治療転帰の可能性を増加させ、好ましくない転帰の可能性を減少させ、及び/または輸血が完了する前、それと同時、またはその後に生じる症状を軽減または防止することができる。
【0149】
本明細書で使用する場合、輸血を必要とする個体の治療とは、治療的治療及び予防的または防止的治療(例えば、好ましい治療転帰(例えば、血液構成要素/細胞の交換もしくは補充)の可能性を増加させること、または好ましくない転帰(例えば、治療に対する好ましくない応答、治療の無効果、もしくは免疫学的反応、もしくは好ましい治療(例えば、輸血)が行われる可能性を低減する状態)の可能性を減少させること)のうちの1つ以上を指し得る。治療は、限定されるものではないが、障害もしくは状態に関連する状態及び症状、及び/または個体が障害もしくは状態の治療選択肢にアクセスするのを妨害もしくは制限する問題もしくは状態を、軽減または防止することを含むことができる。治療を必要とする人々には、既に障害または状態を有する人々に加えて、障害または状態を防止すべき人々が含まれる。障害または状態の治療は、障害もしくは状態に関連する免疫媒介性事象を抑制し、障害もしくは状態の症状を改善し、障害もしくは状態の重症度を低減し、障害もしくは状態の進行の経過を改変し、及び/または基本的な障害もしくは状態を改善または治癒することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、輸血は、白血球、赤血球、及び血小板のうちの1つ以上を含む輸血である。いくつかの実施形態において、輸血は、全血または1つ以上の血液製剤(限定されるものではないが、白血球、赤血球、血小板、新鮮凍結血漿、凍結沈殿物、もしくは血液凝固因子、抗体、及び/または血液代用物を含む)を含む。輸血(例えば、血液または血液製剤の輸血)で治療することができる例示的な状態としては、限定されるものではないが、出血または失血、ヘマトクリットまたはヘモグロビンの低減(例えば、貧血)、鎌状赤血球症、サラセミア、外科的手順の間または後の血液補充、心疾患、外傷性損傷、1つ以上の血液因子の欠乏(例えば、血友病、von Willebrand病、低フィブリノーゲン血症、または第II因子、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、もしくは第XI因子の欠乏)、フィブリノーゲンの補充を要する状態(例えば、肝疾患、輸血など)、骨髄不全、血小板機能障害、血小板減少症、免疫不全(例えば、治療または疾患による)などが挙げられる。輸血に関する実践、投与、応答、適応、及び準備に関する説明は、例えば、American Red Cross Compendium of Transfusion Practice Guidelinesに見出すことができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、本開示のJAK阻害剤と組み合わせて本開示の抗体を対象に投与すると、結果として対象における本開示のT細胞媒介性炎症性疾患の1つ以上の症状が低減される。
【0152】
本明細書に記載の抗体及び/またはJAK阻害剤、あるいはその医薬組成物の投与量及び投与頻度は、副作用を最小限に抑えながら、防止及び/または治療のための方法に従って投与される。JAK阻害剤と組み合わせて特定の対象に投与される本明細書に記載の抗体またはその医薬組成物の正確な投与量は、実施者が、治療を要する対象に関する因子を踏まえて決定することができる。考慮され得る因子としては、疾患状態の重症度、対象の全般的健康状態、対象の年齢及び体重、食事、投与の時間及び頻度、他の治療薬剤または薬物との組合せ(複数可)、反応感受性、ならびに治療に対する忍容性/応答が挙げられる。JAK阻害剤と組み合わせた本明細書に記載の抗体またはその医薬組成物の投与量及び投与頻度は、抗体もしくはJAK阻害剤の十分なレベルを提供するように、または所望の効果を維持するように経時的に調整され得る。
【0153】
また、製剤に用いられるべき正確な用量は、投与経路及び炎症性障害または疾患の重篤度にも依存し、実施者の判断及び各患者の状況に従って決定すべきである。
【0154】
有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導出される用量応答曲線から推定することができる。
【0155】
1つの実施形態において、本明細書に記載の任意の抗体及び/またはJAK阻害剤は、腹腔内、静脈内、皮下、もしくは筋肉内注射による投与、または他の投与形態(例えば、経口、経粘膜、吸入、舌下など)による投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、抗体は静脈内注入により投与され、及び/またはJAK阻害剤は経口投与される。
【0156】
非経口投与は、1つの実施形態では注射により特徴付けられ、また皮下、筋肉内、または静脈内のいずれかであることも本明細書で企図されている。注射液は、溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態、またはエマルションとして従来の形態で調製することができる。注射液、溶液、及びエマルションは1つ以上の賦形剤も含む。好適な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールがある。さらに、所望される場合、投与される医薬組成物は、少量の無毒性の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解性増強剤、及び他のこのような薬剤)も含んでもよい。他の投与経路としては、腸内投与、脳内投与、鼻腔内投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、髄腔内投与、静脈内注入、皮下移植または注射、筋肉内投与、直腸内投与、膣内投与、胃内投与、気管内投与、肺内投与、及び腹腔内投与を挙げることができる。非経口投与用の調製物としては、注射に使用できる無菌溶液、使用直前に溶媒と合わせられる無菌乾燥可溶性製品(例えば、凍結乾燥粉末)、使用直前にビヒクルと合わせられる無菌乾燥不溶性製剤、及び無菌エマルションが挙げられる。溶液は水性であっても非水性であってもよい。静脈内投与する場合、好適な担体としては、生理的食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、水、ならびに濃化剤及び可溶化剤(例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール)を含む溶液、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0157】
別の実施形態において、本開示は、他の分子(例えば、検出可能な標識、または治療薬剤もしくは細胞傷害性薬剤)と結合体化した本開示の抗体を含む組成物の投与も企図している。薬剤としては、限定されるものではないが、放射性同位体、毒素、トキソイド、炎症剤、酵素、アンチセンス分子、ペプチド、サイトカイン、及び化学療法剤を挙げることができる。抗体をこのような分子と結合化する方法は、当業者に広く知られている。例えば、PCT公開第WO92/08495号、同第WO91/14438号、同第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、及びEP396,387を参照。
【0158】
1つの実施形態において、組成物は、細胞傷害性薬剤と結合体化した抗体またはポリペプチドを含む。細胞傷害性薬剤は、細胞に有害な任意の薬剤を含み得る。抗体またはフラグメントと結合体化することができる例示的な細胞傷害性薬剤のクラスとしては、限定されるものではないが、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、及びこれらのアナログまたはホモログを挙げることができる。
【0159】
V.医薬組成物
本開示は、本明細書に記載の抗体またはJAK阻害剤と、医薬的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。医薬組成物は、例えば、本開示の方法、使用、及び/またはキットに使用することができる。
【0160】
医薬的に許容される担体または賦形剤は当技術分野で知られており、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形状または粘性を付与したり、希釈剤として作用したりすることができる。好適な賦形剤としては、限定されるものではないが、安定化剤、湿潤及び乳化剤、オスモル濃度を変化させるための塩、カプセル化剤、バッファー、及び皮膚浸透促進剤が挙げられる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の四価抗体は液体の医薬組成物中にある。液体の医薬的に投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載の抗体を担体(例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなど)中で溶解、分散、または他の方法で混合して溶液または懸濁液を形成することにより、調製することができる。所望される場合、投与される医薬組成物は、少量の無毒性の補助物質(例えば、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、及びpH緩衝剤など)も含むことができる。非経口及び非経口でない薬物を送達するための賦形剤及び製剤については、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に記載されている。
【0161】
医薬組成物は、好適な量の本明細書に記載の四価抗体を含む単位投与形態(例えば、無菌非経口用溶液または懸濁液)でヒト及び動物に投与するために提供される。四価抗体は、1つの実施形態では、単位投与形態または複数回投与形態で製剤化され投与される。本明細書で使用する場合、単位用量形態とは、ヒト及び動物の対象に適した物理的にばらばらの単位を指し、当技術分野で知られているように個別にパッケージングされる。各単位用量は、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定の量の抗体または抗体由来の抗原結合フラグメントを、必要とされる医薬担体、ビヒクル、または希釈剤とともに含む。単位投与形態の例としては、アンプル及びシリンジが挙げられる。単位投与形態は、分割して、またはそれを何倍かして投与することができる。複数回投与形態とは、分離された単位投与形態で投与するための、単一の容器内でパッケージングされた複数の同一の単位投与形態のことである。複数回投与形態の例としては、バイアル、またはパイントもしくはガロンの瓶が挙げられる。よって、複数回投与形態は、パッケージングにおいて分離されていない複数の単位用量である。
【0162】
医薬組成物中の抗体の濃度は、例えば、抗体の物理化学的特性、投与スケジュール、及び投与量、ならびに当業者に知られている他の因子に依存する。
【0163】
いくつかの実施形態において、本開示は、医薬としての使用及び/または医薬の製造のための使用の文脈であるかにかかわらず、本開示のJAK阻害剤とともに投与されるまたは投与用に製剤化される、本明細書に記載の任意の方法における使用のための抗体及び組成物(例えば、本明細書に記載の医薬組成物)を提供する。
【0164】
VI.キット
本開示のある特定の態様は、本開示の抗PSGL-1抗体及び/または本開示のJAK阻害剤を含むキットまたは製造品に関連する。任意選択で、本明細書に記載のキットは、1つ以上の医薬的に許容される担体(例えば、本明細書に記載の例示的な担体)を含むことができる。いくつかの実施形態において、本開示のキットは本開示の医薬組成物を含む。本明細書に記載のキットは、例えば、本開示の方法または使用で使用することができる。
【0165】
キットは任意選択で、さらなる構成要素(例えば、バッファー及び説明的情報)を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書(複数可)とを含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、またはサブ単位用量であり得る。本開示のキットで供給される指示は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上の書面指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光記憶ディスクに搭載された指示)も許容される。
【0166】
いくつかの実施形態において、キットは、T細胞媒介性疾患(例えば、T細胞媒介性炎症性疾患)またはがんを治療するためにJAK阻害剤と組み合わせて抗体を投与することに関する指示を含む添付文書をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、JAK阻害剤またはその医薬的に許容される製剤をさらに含む。
【0167】
本開示のキットは好適にパッケージングされている。好適なパッケージングとしては、限定されるものではないが、バイアル、瓶、ジャー、フレキシブルパッケージング(例えば、密封マイラーまたはプラスチック袋)などが挙げられる。また、特定のデバイス(例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入デバイス)と組み合わせて使用するためのパッケージも企図されているキットは無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静注用溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。また、容器が無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静注用溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書に記載の四価抗体またはポリペプチドである。容器は、第2の医薬的に活性な薬剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、治療(例えば、輸血または移植)に有用な他の任意の材料またはデバイスをさらに含むことができ、限定されるものではないが、これには1つ以上の容器、管、滅菌剤または設備、カニューレ、注射器などが含まれる。
【実施例
【0168】
本発明は、以下の実施例を参照することでより十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態は例示の目的にとどまるものであり、それらに照らした様々な修正及び変更は、当業者に示唆され、また本出願の趣旨及び権限ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることを理解されたい。
【0169】
実施例1:抗PSGL-1抗体及びJAK阻害剤を用いた組合せ処置による細胞アポトーシスアッセイ。
下記に示す実施例は、Janusキナーゼ(JAK)阻害剤のルキソリチニブを抗PSGL-1抗体15A7Hと組み合わせて使用して活性化T細胞のアポトーシスを誘導する前臨床試験について説明するものである。
【0170】
方法
ヒトT細胞の調製
下記で説明するアポトーシスアッセイの前に、フィトヘマグルチニン-L(PHA)処置によりT細胞刺激を達成した。簡潔に説明すると、この試験で使用したヒト血液試料は、健康なヒトドナーから入手した。末梢血単核球(PBMC)は、Ficoll-Hypaque勾配遠心分離(Ficoll-Paque PLUS、GE Healthcare;カタログ番号17-1440-03)により、室温、2400回転毎分(rpm)で15分間、全血から新たに単離した。単核球を含むバフィーコート層を収集し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄して血小板汚染を最小限に抑えた。採取したPBMCを、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI-1640培地中でPHA(3μg/mL、SIGMA;カタログ番号L2769-10mg)とともに2日間インキュベートし、次いで組換えヒトインターロイキン-2(5ng/mL、R&D Systems;カタログ番号202-IL-050)を含む培地中でさらに約4日~約6日間維持することにより、活性化T細胞の生成に使用した。
【0171】
細胞アポトーシスアッセイ
アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)染色法を用いた蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析を使用して、薬物及び対照処置細胞におけるアポトーシス率を定量した。簡潔に説明すると、1~1.5×10個の活性化T細胞(通常はPHA刺激後の5日目~7日目)を播種し、抗体15A7H及び/またはJAK阻害剤の添加のありまたはなしで培養した。指示濃度の抗体15A7Hまたはルキソリチニブのアリコート、抗体15A7Hに使用する最高濃度のみのヒトIgG4アイソタイプ対照、及び抗体15A7Hの半分の濃度の架橋剤(CL、マウス抗ヒトIgG抗体;Jackson Immuno Research;カタログ番号209-005-098)を完全RPMI-1640培地(10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2ng/mLインターロイキン-2)中で新たに調製し、最終体積100μLで試験ウェルに加えた。プレートを37℃で48時間インキュベートした。
【0172】
次いで細胞を氷冷アネキシン結合バッファーで洗浄し、300xgで5分間遠心分離した。細胞ペレットを氷冷アネキシン結合バッファーに再懸濁し、アネキシン-V-FITC及びPI(Strong Biotech;AVK250)を加えた。アネキシン-V FITCアポトーシス検出キット(Strong Biotech;AVK250)をメーカーの指示に従って用いて染色手順を行った。
【0173】
試料をフローサイトメーター(BD LSR scanner;BD Biosciences,San Diego)上で実行し、アネキシン-V-FITC/PIヒストグラムの四分円を用いて細胞生存率及びアポトーシスを算出した。生細胞は両方の蛍光色素で陰性に染色されたもの、初期アポトーシス細胞はアネキシン-V-FITC陽性のもののみ、壊死細胞はPI陽性のもののみ、後期アポトーシス細胞は両方の蛍光色素で陽性に染色されたものとして特定された。アネキシン-V陽性細胞、PI陽性細胞、ならびにアネキシン-V-及びPI陽性細胞をアポトーシス細胞としてカウントした。
【0174】
固定比の組合せの細胞傷害性アッセイ
活性化T細胞を96ウェルプレートに1~1.5×10細胞/mLで播種し、ルキソリチニブ及び抗体15A7Hを単独で、または固定濃度比で組み合わせて処置した。ルキソリチニブと抗体15A7Hとの組合せについては、固定比3.3:1及び1.1:1を4例のドナー由来のT細胞で試験した。さらに、ルキソリチニブ及び抗体15A7Hの固定比0.37:1を2例のドナー由来のT細胞で試験した。
【0175】
アネキシン-V FITCアポトーシス検出キット(Strong Biotech;AVK250)をメーカーの指示に従って用いて細胞アポトーシスを測定した。Chou-Talalay法(例えば、Chou TC,(2010)Cancer Res.,70:440-446及びBijnsdorp IV.et al.,(2011)Methods Mol Biol.,731:421-434参照)に基づき、Calcusynソフトウェア(バージョン2.0、Biosoft)を用いて組合せインデックス(CI)を算出することにより、コンビナトリアル薬物効果を評価した(CI<1は相乗作用を示し、CI=1は相加作用を示し、CI>1は拮抗作用を示す)。
【0176】
試薬
JAK阻害剤のルキソリチニブ(「RUXO」)をLC Laboratories(カタログ番号R-6688)から入手し、メーカーの指示に従ってジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ルキソリチニブは、複数のJAKを阻害することが見出された第一世代JAK阻害剤の一部であり、ルキソリチニブはJAK1及びJAK2を阻害する。
【0177】
結果
抗体15A7Hを0.03μg/mL、0.3μg/mL、及び3μg/mLの濃度で、ルキソリチニブを10μM、3.3μM、1.1μM、0.367μM、及び0.122μMの濃度で、単独または組み合わせて、3例のドナーのPBMCに由来する活性化T細胞で最初に試験して、予備的な組合せ効果を定量した。
【0178】
図1A~1Cに示されているように、抗体15A7H単独では、3μg/mLの濃度及び抗体架橋剤の存在下で、処置から48時間後に活性化T細胞で最適なアポトーシス誘導が誘発された。0.03μg/mL及び0.3μg/mLの最適以下の抗体15A7H濃度では、ドナーに依存するものの、概して処置細胞でのアポトーシス誘導は最小~中程度であった。ルキソリチニブ単独では、0.122~10μMの範囲の濃度で48時間処置したところ、バックグラウンドレベルに対するアポトーシスの増加は最小限であるか、または全く認められなかった。ただし、ルキソリチニブと抗体15A7Hとの組合せ、特に0.03μg/mL及び0.3μg/mLという最適以下の抗体濃度における組合せでは、同じ濃度の抗体15A7H単独で処置した細胞と比較して、またはルキソリチニブ及びアイソタイプ対照抗体で処置した細胞と比較して細胞アポトーシスのレベルが上昇する結果が得られた。
【0179】
活性化T細胞におけるアポトーシス誘導に対する抗体15A7H及びルキソリチニブのコンビナトリアル効果をさらに検証するため、抗体15A7H及びルキソリチニブの固定比を用いたChou-Talalay半数効果解析を使用してコンビナトリアル効果を評価した(Chou TC.Cancer Res.2010;70:440-446)。細胞を各薬物単独及び組合せにより処置し、アネキシン-V FITCアポトーシス検出キット(Strong Biotech;AVK250)を用いて細胞アポトーシスを測定した。結果は、無処置対照の試料と比較した処置試料の測定蛍光カウントに基づき、アポトーシス分画(影響を受けた分画)として表した。固定された薬物比の場合の様々な用量効果曲線を表す7つの対角線を使用して、Calcusynソフトウェア(Biosoft)により各々の組合せにおける組合せ胃デックス(CI)を測定した。コンビナトリアル効果は、CIが<1、1、及び>1の場合にそれぞれ「相乗的」、「相加的」、及び「拮抗的」と定義した。
【0180】
図2に示されているように、固定比の組合せのアポトーシスアッセイでは、影響を受けたドナーT細胞の25%~75%分画について算出したCI値のほとんどが0.9未満のままであったため、抗体15A7Hがルキソリチニブと3.3:1、1.1:1、及び0.37:1の比で相乗使用を示すことが確認された。
【0181】
薬物組合せ評価については、0.1~0.3の範囲のCI値は強力な相乗作用を示し、0.3~0.7は相乗作用を示し、0.7~0.85は中程度の相乗作用を示すものとみなす。表1は、試験した全ての薬物の比及びドナーのEC50レベルにおけるCIインデックスを示している。抗体15A7Hとルキソリチニブとの組合せにおけるCIインデックスは、0.3~0.6の範囲内であり、これは抗体15A7Hとルキソリチニブとの組合せの相乗作用を示すものである(例えば、Karagianni F.et al.,(2021)PLoS ONE,16(3):e0248298を参照)。
【表1】
【0182】
実施例2:抗PSGL-1抗体及びmTOR阻害剤による組合せ処置を用いた細胞アポトーシスアッセイ。
以下に示す実施例では、mTOR阻害剤であるラパマイシンを単独で、または抗PSGL-1抗体15A7Hと組み合わせて用いたin vitro細胞傷害性試験について説明する。強力な免疫抑制薬のラパマイシンは、T細胞の活性化及び成長に要するシグナル伝達経路を妨害する。ラパマイシンは、臓器拒絶反応の予防及びいくつかのがんの適応で臨床的に承認されている。
【0183】
方法
試薬
ラパマイシンをAdooQ Bioscience(カタログ番号A10782-5)から入手し、メーカーの指示に従ってジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。
【0184】
ヒトT細胞の調製
PBMCを健康なドナーの末梢血から得た。Ficoll(GE Healthcare;カタログ番号17-1440-03)で血液を密度遠心分離することにより単離を実施した。採取したPBMCを、RPMI-1640培地(10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノール)中のPHA(3μg/mL、SIGMA;カタログ番号L2769-10mg)とともに2日間インキュベートし、次に組換えヒトインターロイキン-2を含む培地(5ng/mL、R&D Systems;カタログ番号202-IL-050)中でさらに約4~6日間維持することにより、活性化T細胞の生成に使用した。
【0185】
細胞アポトーシスアッセイ
ラパマイシンは、強力な免疫抑制活性を示すマクロライドである。薬物の組合せ効果を評価するため、1~1.5×10個の活性化T細胞を96ウェルにプレーティングし、15A7H(架橋剤を含む、マウス抗ヒトIgG抗体(Jackson;カタログ番号209-005-098))及びラパマイシンを単独でまたは組み合わせて、指示濃度で48時間処置した。細胞傷害性をアネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)染色法により評価して、薬物処置細胞のアポトーシス率を定量した。
【0186】
結果
0.122~10μMの範囲のラパマイシン単独で細胞を処置した結果、48時間後にいかなる有意なレベルの細胞アポトーシスも得られなかった(図3A~3C)。ラパマイシン及び15A7Hの組合せ処置では、同じ用量レベルの15A7H単独で処置した細胞と比較してアポトーシス細胞のレベルが増加しなかった。これらのデータからは、15A7H及びラパマイシンの処置が、活性化T細胞に対しいかなる相加効果も有しないことが示唆された。
【0187】
実施例3:ルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体を用いた固定比の組合せの細胞傷害性アッセイ。
以下に示す実施例では、15A7Hに加えて、細胞傷害性機能を有する他の抗PSGL-1抗体もルキソリチニブと相乗作用を示して活性化T細胞アポトーシスを誘導できることを説明している。
【0188】
方法
試薬
JAK阻害剤のルキソリチニブ(「RUXO」)をLC Laboratories(カタログ番号R-6688)から入手し、メーカーの指示に従ってジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。
【0189】
ヒトT細胞の調製
PBMCを健康なドナーの末梢血から得た。Ficoll(GE Healthcare;カタログ番号17-1440-03)で血液を密度遠心分離することにより単離を実施した。採取したPBMCを、RPMI-1640培地(10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノール)中のPHA(3μg/mL、SIGMA;カタログ番号L2769-10mg)とともに2日間インキュベートし、次に組換えヒトインターロイキン-2を含む培地(5ng/mL、R&D Systems;カタログ番号202-IL-050)中でさらに約4~6日間維持することにより、活性化T細胞の生成に使用した。
【0190】
固定比の組合せの細胞傷害性アッセイ
15A7Hに加えて、抗PSGL-1抗体LH10、c43B6、及びh9F9について、活性化T細胞における細胞死を誘導する能力を試験した。この試験の目的は、アポトーシスを誘導する抗PSGL-1抗体及びルキソリチニブが、活性化T細胞に対しより優れた細胞傷害性効果をもたらすかどうかを判定することであった。細胞傷害性アッセイにおける固定比の抗体及びルキソリチニブを用いたChou-Talalay半数効果解析を用いて、コンビナトリアル効果を評価した。活性化T細胞を1~1.5×10細胞/mLで96ウェルプレートに播種し、ルキソリチニブ及び抗PSGL1抗体単独、または3.3:1、1.1:1、0.37:1の固定濃度比の組合せで48時間処置した。抗PSGL-1抗体LH10、c43B6、及びh9F9を0.004μg/mLから3μg/mLまで3倍滴定で試験し(架橋剤、マウス抗ヒトIgG抗体(Jackson;カタログ番号209-005-098)を抗PSGL-1抗体の半分の濃度で含む)、ルキソリチニブを0.0015μMから10μMまで3倍滴定で単独でまたは組み合わせて、これらのアッセイで試験した。
【0191】
結果
細胞アポトーシスを実施例1に記載のように判定し、コンビナトリアル薬物効果の組合せインデックス(CI)は、相乗作用または拮抗作用の自動シミュレーションを可能にするCalcuSyn(Biosoft(Ferguson,MO,USA))を用いて解析した(CI<1は相乗作用を示し、CI=1は相加作用を示し、CI>1は拮抗作用を示す)。図4A(LH10)、4B(c43B6)、及び(h9F9)に示されているように、活性化T細胞において細胞傷害性能力を有する抗PSGL-1抗体、LH10、c43B6、及びh9F9の組合せは、影響を受けたドナーT細胞の35%~85%の分画について算出したCI値のほとんどが0.9未満のままであったことから、ルキソリチニブと3.3:1、1.1:1、0.37:1の比においてルキソリチニブと相乗作用を示した。
【0192】
実施例4:トファシチニブ及び抗PSGL-1抗体を用いた固定比の組合せの細胞傷害性アッセイ。
下記に示す実施例は、Janusキナーゼ(JAK)1/3阻害剤のトファシチニブを抗PSGL-1抗体15A7H及びLH10と組み合わせて使用して活性化T細胞のアポトーシスを誘導する試験について説明するものである。
【0193】
方法
試薬
JAK阻害剤のトファシチニブ(「TOFA」)をAdooQ Bioscience(A10241-10)から入手し、メーカーの指示に従ってジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。
【0194】
ヒトT細胞の調製
PBMCを健康なドナーの末梢血から得た。Ficoll(GE Healthcare;カタログ番号17-1440-03)で血液を密度遠心分離することにより単離を実施した。採取したPBMCを、RPMI-1640培地(10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2-メルカプトエタノール)中のPHA(3μg/mL、SIGMA;カタログ番号L2769-10mg)とともに2日間インキュベートし、次に組換えヒトインターロイキン-2を含む培地(5ng/mL、R&D Systems;カタログ番号202-IL-050)中でさらに約4~6日間維持することにより、活性化T細胞の生成に使用した。
【0195】
固定比の組合せの細胞傷害性アッセイ
JAK3、JAK1、及びより低い程度でJAK2を阻害する第一世代jakinibのトファシチニブは、炎症性疾患(関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、及び活動性潰瘍性大腸炎を含む)の治療用に開発された最初のJAK阻害剤である。この実験では、固定比1:1の組合せのトファシチニブ(0.01~3μMの濃度)及び抗PSGL-1抗体15A7HまたはLH10(0.01~3μg/mLの濃度)で処置した活性化T細胞において細胞傷害性アッセイを実施して、組合せ効果を評価した。簡潔に説明すると、1~1.5×10個の活性化T細胞を播種し、抗体15A7HまたはLH10及びトファシチニブで処置した。指示濃度の抗体またはトファシチニブのアリコート、及び抗PSGL-1抗体の半分の濃度の架橋剤(マウス抗ヒトIgG抗体;Jackson;カタログ番号209-005-098)を完全RPMI-1640培地(10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2ng/mLインターロイキン-2)中で新たに調製し、最終体積100μLで試験ウェルに加えた。プレートを37℃で48時間インキュベートした。実施例1に記載のように、Calcusynソフトウェアを用いてコンビナトリアル効果を評価して、単剤処置及び組合せ処置のアポトーシスアッセイ結果に基づいて組合せインデックス(CI)を算出した。アネキシン-V FITCアポトーシス検出キット(Strong Biotech;AVK250)をメーカーの指示に従って用いて細胞アポトーシスを測定した。
【0196】
結果
図5に示されているように、実験結果からは、トファシチニブと15A7HまたはLH10との組合せは、影響を受けたドナーT細胞の25%~75%の分画について算出したCI値のほとんどが0.5未満のままであったことから、著しい相乗効果を生じたことが示される。
【0197】
実施例5:異種移植片対宿主病(GvHD)モデルマウスにおけるルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体の組合せ処置
以下に示す実施例では、ヒトPBMCを移植し異種GvHDを生じたマウスの生存率を改善するためにルキソリチニブと抗PSGL-1抗体15A7Hとの組合せを使用した試験について説明する。
【0198】
方法
試薬
JAK阻害剤のルキソリチニブ(「RUXO」)をLC Laboratories(カタログ番号R-6688)から入手し、メーカーの指示に従ってジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、強制経口投与用に0.5%メチルセルロースビヒクルで製剤化した。
【0199】
ヒトPBMCの調製
PBMCを健康なドナーの末梢血から得た。Ficoll(GE Healthcare;カタログ番号17-1440-03)で血液を密度遠心分離することにより単離を実施した。採取したPBMCを洗浄し、PBS中で分割した。
【0200】
マウス実験
8~9週齢の雌の重症免疫不全(ASID)マウス(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/YckNarl;NLAC NARLabs Taiwan)に2.0Gyの全身照射線量を投与し、照射から24時間後に尾静脈注射により3×10個のヒトPBMCを移植した。マウスを病原体フリー条件下で保持し、22±1℃の設定温度、12時間の昼光/暗周期、ならびに飼料及び水への自由なアクセスという標準化された方法下で飼育した。実験動物を環境への馴化に最低3日間供した後、ランダムに処置群に分けた。
【0201】
3×10ヒトPBMCを投与したASIDマウスにおいて異種GvHD(xGvHD)を誘導した(群当たりn=5~7)。72時間のヒトPBMC生着後、45mg/kgのルキソリチニブまたはビヒクルを1日2回15日間経口投与し、さらに10mg/kgの抗PSGL-1 15A7H抗体またはビヒクルを3~4日おきに合計5回用量で静脈内投与した。マウスの生存率を毎日評価した。治療を開始した時間を1日目として指定した。
【0202】
結果
図6に示されているように、ルキソリチニブ及び抗PSGL-1抗体15A7Hの単独または組合せの処置は、ヒトリンパ球により誘導された異種GVHDを改善した。さらに、ビヒクル処置群(破線、白四角)では16日目以降に生存した動物がいなかったのに対し、ルキソリチニブ(実線、白丸)または抗体15A7H(実線、白三角)の単独処置を受けたマウスでは死亡率の遅延が示されたが、18日目以降に生存した動物はいなかった。組合せ処置群が最良の生存率を示し、43%(7頭中3頭)のマウスが実験終了(21日目)まで生存した。
【0203】
実施例6:ステロイド抵抗性急性移植片対宿主病(SR-aGVHD)または治療抵抗性急性移植片対宿主病(TR-aGVHD)の患者における抗PSGL-1抗体の臨床試験。
以下に示す実施例は、ステロイド抵抗性急性移植片対宿主病(SR-aGVHD)または治療抵抗性急性移植片対宿主病(TR-aGVHD)の患者における抗PSGL-1抗体15A7Hの第1相非盲検試験について説明するものである。
【0204】
試験設計
抗PSGL-1抗体15A7Hの試験を、SR-aGVHDまたはTR-aGVHDの患者において複数用量の抗体を用いて行った。試験参加者は、抗体15A7Hを最初の6mg/kgの用量で投与を受け、次に抗体15A7Hを週1回4mg/kgの用量で3週間投与を受けた(6-4-4-4レジメン)。
【0205】
この試験には、コルチコステロイド以外のいかなる全身治療歴も有しないSR-aGVHD患者と、コルチコステロイドに加えてJAK阻害剤を含むaGVHDに対する1回の全身治療歴を有するTR-aGVHD患者とを含めた。抗体15A7Hと追加の全身治療との組合せで治療する参加者も本試験に含めた。
【0206】
結果
本試験に24例を登録した後、有効性の解析を行い、事前に確立された無益性基準に達する可能性を判定した。24例の参加者のうち、12例がステロイド抵抗性(SR)として分類され、12例が治療抵抗性(TR)として分類された。
【0207】
TRの参加者(8/12=67%の全体的応答)ではSRの参加者(4/12例=33%)と比較して臨床的応答の改善が観察された。この知見は予想外であった。というのも、過去に全身治療を受けたことがある患者は、より重篤または進行性の疾患を有すると考えられるためである。さらなる解析により、抗体15A7Hに加えてJAK阻害療法の併用を受けた参加者において臨床的応答が改善されたことが示された。
【0208】
T細胞媒介性疾患患者において、抗体15A7HとJAK阻害との組合せで治療した患者の転帰の改善が観察されたことは、例えば本明細書の実施例1に記載のように、抗体15A7HをルキソリチニブなどのJAK阻害剤と組み合わせた場合の相乗効果を示す前臨床実験によって裏付けられている。
【0209】
以上の実施形態について、理解を明瞭にする目的のため、図示及び例によりある程度詳細に説明したが、説明及び例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】