(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】再生炭素繊維を含むポリアミド組成物、及び当該ポリアミド組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20241024BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20241024BHJP
C08K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L77/00 ZAB
C08K7/06
C08K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529352
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 FR2022000110
(87)【国際公開番号】W WO2023089250
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン, ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002DA016
4J002FA046
4J002FB276
4J002FD016
4J002FD077
4J002FD177
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、成形組成物に関し、当該成形組成物は重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを50%~99%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を1~50%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形組成物であって、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを50%~99%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を1~50%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である、成形組成物。
【請求項2】
半結晶性脂肪族ポリアミド(a)が、
少なくとも1つのC
6~C
18、好ましくはC
9~C
18、より好ましくはC
10~C
18、特にC
10~C
12のアミノカルボン酸、又は
少なくとも1つのC
6~C
18、好ましくはC
9~C
18、より好ましくはC
10~C
18、特にC
10~C
12のラクタム、又は
少なくとも1つのC
4~C
36、好ましくはC
6~C
18、好ましくはC
6~C
12、より好ましくはC
10~C
12のジアミンCaと、
少なくとも1つのC
4~C
36、好ましくはC
6~C
18、好ましくはC
6~C
12、より好ましくはC
10~C
12のジカルボン酸Cbと
の重縮合によって得られることを特徴とする、請求項1に記載の成形組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド(a)は、窒素原子1つあたりの平均炭素数が8以上、特に9以上、とりわけ10以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド(a)が、PA610、PA612、PA1010、PA1012、PA1212、PA11及びPA12から、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12から、とりわけPA11及びPA12から、殊にPA11から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の成形組成物。
【請求項5】
前記組成物のレジリエンスが、23℃でノッチ無しバーへの1eUのシャルピー衝撃で測定した場合に、ポリアミドによりサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーによりサイジングされたもの)で得られるレジリエンスよりも10%超大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項6】
23℃でノッチ無しバーへの1eUのシャルピー衝撃で測定した場合の、前記組成物のレジリエンス、及び破断点伸びが、ポリアミドによりサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーによりサイジングされたもの)で得られるレジリエンス及び破断点伸びよりも10%超大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物の、射出成型により得られる物品を製造するための使用であって、前記物品が、スポーツ用品、特にスポーツシューズ、とりわけスキー靴若しくはスキー靴の一部、又はスパイク付き硬質ブーツ、例えばサッカー、ラグビー、又はアメリカンフットボールのブーツ、ホッケーブーツ若しくはホッケーブーツの一部、又はランニングシューズ、ゴルフボール若しくはゴルフボールの一部、又はラクロススティック、ホッケー用品、例えばヘルメット、並びに頭、肩、肘、手、膝、背中又は脛を保護するためのスポーツ用品、例えばヘルメット、グローブ、ショルダーパッド、エルボーパッド、ニーパッド、又は脛当てから選択されるものである、使用。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形組成物の、電子産業用、自動車産業用、通信用途用、又はデータ交換用の物品、例えば自律走行車のため、若しくは相互に接続された用途の物品を製造するための、使用。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を射出成型することにより得られる、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生炭素繊維を含むポリアミド組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ関連の用途では、炭素繊維で強化されたポリアミド、特にポリアミド11(PA11)が、その剛性、軽さ、及び高い機械的性能品質でよく知られている。
【0003】
炭素繊維は、長年にわたり使用されている。この種の繊維が不可欠になっている理由は、シンプルである:製造された材料は、極めて強く、耐久性があり、非常に軽く、こうした特性は、軽さ、剛性及び長寿命を求めるスポーツ用品製造業者により、高く評価されている。
【0004】
今日、製品の耐久性は、消費者にとって不可欠であり、主要なスポーツブランドにとって重要な要件になっている。
【0005】
炭素繊維で強化された組成物は、CO2排出に対して大きな影響を与えることになる。これは特に、炭素繊維の製造はエネルギー集約的だからであり、また炭素繊維はほぼ100%炭素(C)からなるためである。
【0006】
よって、弾性、応力、伸び、及び衝撃強度の観点で高い機械的特性を保ちながら、炭素繊維で強化されているものの、CO2排出に対して影響がずっと小さい組成物を利用可能にすることが必要である。
【0007】
1つの解決策は、再生炭素繊維を使用することである。
【0008】
そこで、国際公開第2015/074945号(WO 2015/074945)には、以下の組成を有する成形材料が記載されており、当該成形材料は、
(a)母材を形成する少なくとも1つのプラスチック基材(A)を49%~97%、
(b)少なくとも1つのプラスチック基材(B)で覆われた少なくとも1つの炭素繊維を3%~40%、
(c)少なくとも1つの他の添加剤(C)を0%~48%
を含有し、成分(a)~(c)の合計は100重量%となり、
プラスチック成型材料の表面抵抗が、1×107~1×1022Ωであり、体積抵抗率が1×105~1×1020Ω・mであることを特徴とする(いずれも、IEC 60093に従って決定)。
【0009】
炭素繊維は、再生されたもの、又はセルロース系であってよく、プラスチック(B)は、ポリアミド、特にコポリアミド、ポリエステル、特にコポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシエーテル、アクリルコポリマー、及びこれらのプラスチックの2つ以上のブレンド又は重ね合わせ層からなる群から選択され、成分(a)のプラスチック(A)は、アセタール樹脂、液晶ポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、オレフィン系及びシクロオレフィン系ポリマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、特にポリエステルアミド、ポリエーテルアミド及びポリエーテルエステルアミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテル、ポリアリールエーテル(ポリフェニルエーテル含む)、ポリヒドロキシエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリスチレン、スチレンのコポリマー、ポリスルホン、ビニルポリマー、例えばポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニル、並びに言及された熱可塑性プラスチックのうち2つ以上のブレンドから構成される群から選択される熱可塑性プラスチックであるか、又はメラミン樹脂、フェノプラスト、ポリエステル樹脂、アミノプラスト、エポキシ樹脂、ポリウレタン、架橋ポリアクリレート、及び言及された熱硬化性樹脂の2つのブレンドから構成される群から選択される熱硬化性樹脂である。
【0010】
とはいえ、これらの組成物には、破断点伸びが3%未満であり、脆いという欠点がある。
【0011】
再生材料のうちいくつかは、その歴史及び経験により不利な影響を受けている可能性があり、よってその性能品質、特に機械的品質は、バージン材料と比較して低いことがあり、高性能品質のポリマー(例えばPA11)に基づく組成物の要件を満たさない。
【0012】
よって、再生炭素繊維で強化された組成物であって、CO2排出に対する影響、及び機械的性質の損失という点で、上記欠点を有さないものを利用可能にする必要がある。
【0013】
よって本発明は、以下の成形組成物に関する:重量で、
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを50%~99%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を1~50%、これは、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティングされたものである、
c)添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計が100%である、成形組成物。
【0014】
よって本発明者らは、驚くべきことに、適切な固有粘度を示すポリアミド、またポリアミドでサイジングされた再生炭素繊維を選択することにより、バージン炭素繊維で強化されたポリアミド調製物と比較して、ポリアミド調製物の機械的特性、またCO2排出を改善可能なことを見出した。
【0015】
成形組成物は、原則的に、様々な成分を押し出し機、特に2軸押出機で溶融ブレンドすることにより、製造される。コンパウンド化された材料は、ロッドの形状で押出機から出て、その後に冷却され、顆粒に切断される。
【0016】
よって「コンパウンド化前」という用語は、再生炭素繊維(加工時に押出機に導入されるもの)が、平均で6mm以下の長さを示すことを意味する。
【0017】
半結晶性脂肪族ポリアミド(a)について
ポリアミドを規定するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011"Plastics - Polyamide (PA) molding and extrusion materials - Part 1: Designation"、特にその3頁(表1及び2)に記載されており、当業者によく知られている。本発明の意味合いにおいて半結晶性ポリアミドとは、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)(これらはそれぞれ、ISO規格11357-2及び3:2013に従って決定される)を示すとともに、DSCで20K/分の速度で冷却する段階の間に、ISO規格11357-3(2013)で測定して、30J/g超、好ましくは35J/g超の結晶エンタルピーを示すポリアミドをいう。
【0018】
ポリアミドは、ホモポリアミド、又はコポリアミド、又はこれらのブレンドであり得る。
【0019】
ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下の固有粘度を示す半結晶性脂肪族ポリアミドは、それぞれ組成物の成分の合計を基準として、組成物中に50%~99%、好ましくは60.0%~90.0%、より好ましくは60.0%~80.0%、さらにより好ましくは65.0%~80.0%、存在する。
【0020】
窒素原子に対する炭素原子の平均数は、6以上である。
【0021】
有利には、半結晶性脂肪族ポリアミドが、PA6及びPA66以外のものである。
【0022】
有利には、窒素原子に対する炭素原子の平均数が、8以上、特に9以上、とりわけ10以上である。
【0023】
有利には、窒素原子に対する炭素原子の平均数が8以上であり、半結晶性脂肪族ポリアミドが、PA612以外のものである。
【0024】
PA-X.Yタイプのホモポリアミドの場合、窒素原子1つあたりの炭素原子の数は、単位Xと単位Yとの平均である。
【0025】
コポリアミドの場合、窒素原子1つあたりの炭素原子の数は、同じ原理にしたがって計算される。この計算は、様々なアミド単位からモル比例ベース(a molar pro rata basis)で行われる。
【0026】
第1の実施態様:
この第1の実施態様の第1の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、6~18個の炭素原子、好ましくは9~18個の炭素原子、より好ましくは10~18個の炭素原子、さらにより好ましくは10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアミノカルボン酸の重縮合から得られる。よって当該アミノカルボン酸は、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸、14-アミノテトラデカン酸、15-アミノペンタデカン酸、16-アミノヘキサデカン酸、17-アミノヘプタデカン酸、18-アミノオクタデカン酸から選択され得る。
【0027】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドが、1つのアミノカルボン酸の重縮合から得られる。
【0028】
この第1の実施態様の第2の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、6~18個の炭素原子、好ましくは9~18個の炭素原子、より好ましくは10~18個の炭素原子、より好ましくは、10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つのラクタムの重縮合から得られる。
【0029】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドが、1つのラクタムの重縮合から得られる。
【0030】
この第1の実施態様の第3の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、4~36個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子、有利には6~12個の炭素原子、有利には10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つの脂肪族ジアミンと、4~36個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子、有利には6~12個の炭素原子、有利には10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸との重縮合から得られる。
【0031】
この繰り返し単位X.Yを得るために使用される脂肪族ジアミンは、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状主鎖を示す脂肪族ジアミンである。
【0032】
この直鎖状主鎖は、適切であれば、1又は複数のメチル及び/又はエチル置換基を有し、後者の構成の場合には、「分枝鎖状脂肪族ジアミン」という用語が使用される。主鎖が何ら置換基を有さない場合、脂肪族ジアミンは、「直鎖状脂肪族ジアミン」と呼ばれる。
【0033】
主鎖にメチル及び/又はエチル置換基を有するか否かにかかわらず、この繰り返し単位X.Yを得るために使用される脂肪族ジアミンは、4~36個の炭素原子、有利には4~18個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子、有利には6~14個の炭素原子を有する。
【0034】
このジアミンが直鎖状脂肪族ジアミンである場合、これは式H2N-(CH2)x-NH2に相当し、例えば、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、オクタデカンジアミン、及びオクタデセンジアミンから選択され得る。いま言及した直鎖状脂肪族ジアミンはすべて、ASTM規格D6866の意味合いで、生体由来(biobased)であり得る。
【0035】
このジアミンが分枝鎖状脂肪族ジアミンである場合、これは特に、2-メチルペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、又は(2,2,4-若しくは2,4,4-)トリメチルヘキサンジアミンであり得る。
【0036】
ジカルボン酸は、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族ジカルボン酸から選択され得る。ジカルボン酸が、脂肪族で直鎖状である場合、これは、コハク酸(4)、ペンタン二酸(5)、アジピン酸(6)、ヘプタン二酸(7)、オクタン二酸(8)、アゼライン酸(9)、セバシン酸(10)、ウンデカン二酸(11)、ドデカン二酸(12)、ブラシル酸(13)、テトラデカン二酸(14)、ヘキサデカン二酸(16)、オクタデカン二酸(18)、オクタデセン二酸(18)、エイコサン二酸(20)、ドコサン二酸(22)及び炭素数36の脂肪酸二量体から選択され得る。
【0037】
上記脂肪酸二量体は、特に欧州特許出願公開第0471566号(EP 0 471 566)に記載されているように、長い炭化水素鎖を有する不飽和一塩基脂肪酸(例えばリノール酸及びオレイン酸)のオリゴマー化又は重合によって得られる二量体化された脂肪酸である。
【0038】
この第1の実施態様の第4の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、これら3つの代替的な形態の混合物から得られる。
【0039】
第二の実施態様:
この第2の実施態様の第1の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、6~18個の炭素原子、好ましくは8~12個の炭素原子、より好ましくは10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアミノカルボン酸の重縮合から得られる。
【0040】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドが、1つのアミノカルボン酸の重縮合から得られる。
【0041】
この第2の実施態様の第2の代替的な形態では、半結晶性脂肪族ポリアミドが、6~18個の炭素原子、好ましくは8~12個の炭素原子、より好ましくは、10~12個の炭素原子を有する、少なくとも1つのラクタムの重縮合から得られる。
【0042】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドが、1つのラクタムの重縮合から得られる。
【0043】
第3の実施態様では、当該半結晶性ポリアミドが、PA610、PA612、PA1010、PA1012、PA1212、PA11及びPA12から、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12から選択される。
【0044】
有利には、当該半結晶性ポリアミドが、PA11及びPA12から選択され、特にPA11である。
【0045】
1つの実施態様では、当該組成物の当該半結晶性ポリアミドが、少なくとも30重量%、特に少なくとも50重量%の再生半結晶性ポリアミドから成る。
【0046】
炭素繊維について
本発明による半結晶性脂肪族ポリアミド成形組成物における再生炭素繊維は好ましくは、それぞれ組成物の成分の合計を基準として、重量で1.0%~50.0%、好ましくは重量で10.0%~40.0%、より好ましくは重量で20.0%~40.0%、より好ましくは重量で25.0%~40.0%、存在する。
【0047】
半結晶性脂肪族ポリアミド成形組成物で使用される再生炭素繊維は、切り刻んだ(若しくは短い)繊維の形態で、又は切り刻んだ(若しくは短い)繊維の束の形態で、又は粉砕した炭素繊維の形態で、提供することができる。
【0048】
コンパウンド化する前に、炭素繊維は好ましくは、切り刻まれた(若しくは短い)繊維であり、平均長さが0.1~6mm、特に2~6mmである。
【0049】
コンパウンド化する前に、粉砕された炭素繊維は、平均長さが50μm~400μmである。
【0050】
コンパウンド化した後、成形すべき組成物において、粉砕された炭素繊維は、平均長さが400μm未満である。
【0051】
コンパウンド化した後、成形すべき組成物において、炭素繊維は平均長さが100~600μm、特に150~500μmである。
【0052】
使用される再生炭素繊維は、表面コーティング(サイジング)されている。コーティング(サイジング)は、良好なコーティング、良好な接着性、及び可能な限り最良な強化作用を保証するため、プラスチック母材と相溶性でなければならない。
【0053】
再生炭素繊維のポリアミドサイズ剤は、半芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミド、又はこれらのブレンドであり得る。
【0054】
有利には、当該ポリアミドが、脂肪族ポリアミドである。
【0055】
有利には、当該脂肪族ポリアミドが、半結晶性ポリアミドであり、これは特に、窒素原子1つあたりの炭素原子の平均数(C/N)が10以下、特に9以下、とりわけ8以下、殊に6以下のものである。
【0056】
1つの実施態様では、当該半結晶性脂肪族ポリアミドが、PA6、PA66、及びこれらのブレンドから選択される。
【0057】
脂肪族ポリアミド、特に半結晶性脂肪族ポリアミドの例は、先に挙げたとおりである。
【0058】
有利には、再生炭素繊維が、前記ポリアミド、特に前記脂肪族ポリアミドにより、炭素繊維とサイズ剤の合計に対して、重量で0.5%~6%、特に1%~5%、とりわけ1.5%~4%の範囲で、サイジングされる。
【0059】
1つの実施態様では、再生炭素繊維の二酸化炭素排出量(carbon footprint)が、特に国際規格ISO 14040:2006、ISO 14044:2006及び/又はISO 14067:2018に従って環境への影響を決定するための、LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)法に従って決定した場合、バージン炭素繊維の二酸化炭素排出量に対して、少なくとも半分になる。
【0060】
添加剤(c)について
添加剤は任意選択的であり、重量で0%~5.0%、特に0.1%~5.0%である。
【0061】
添加剤は、充填剤、ガラスビーズ、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス、及びこれらの混合物から選択される。
【0062】
充填剤から、再生又は非再生の炭素繊維が除外されることは、極めて明白である。
【0063】
有利には、添加剤が、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、天然ワックス、及びこれらの混合物から選択される。
【0064】
有利には、添加剤が、染料、安定剤、核形成剤、顔料、光沢剤、酸化防止剤、天然ワックス、及びこれらの混合物から選択される。
【0065】
例えば、安定化剤は、紫外線安定剤、有機安定剤、又はより一般的には有機安定剤の組み合わせ、例えばフェノール系の酸化防止剤(例えば、Ciba-BASF社のIrganox 245又は1098又は1010のタイプのもの)、ホスファイト系酸化防止剤(例えば、Ciba-BASF社のIrgafos(登録商標)126)、及びさらに任意選択的に、その他の安定剤、例えばHALS(ヒンダードアミン系光安定剤(例えばCiba-BASF社のTinuvin 770))、紫外線吸収剤(例えばCiba社のTinuvin 312)、リン系安定剤であり得る。アミン系酸化防止剤、例えばCrompton社のNaugard 445、又は多官能性安定剤、例えばClariant社のNylostab S-EEDも使用することができる。
【0066】
この安定剤はまた、無機安定剤、例えば銅系安定剤であり得る。このような無機安定剤の例としては、ハロゲン化銅及び酢酸銅を挙げることができる。なお、その他の金属、例えば銀も、任意選択的に考慮することができるが、これらは比較的効果が薄いことが知られている。これらの銅系化合物は通常、アルカリ金属、特にカリウムのハロゲン化物と組み合わされる。
【0067】
例えば、可塑剤は、ベンゼンスルホンアミド誘導体、例えばn-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA);エチルトルエンスルホンアミド、又はN-シクロヘキシルトルエンスルホンアミド;ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えば2-エチルヘキシルパラヒドロキシ安息香酸及び2-デシルヘキシルパラヒドロキシ安息香酸;テトラヒドロフルフリルアルコールのエステル又はエーテル、例えばオリゴエチレンオキシテトラヒドロフルフリルアルコール;及びクエン酸又はヒドロキシマロン酸のエステル、例えばオリゴエチレンオキシマロネートから選択される。
【0068】
可塑剤の混合物を使用することは、本発明の範囲から逸脱しないだろう。
【0069】
例えば、充填剤は、シリカ、グラファイト、膨張グラファイト、カーボンブラック、カオリン、マグネシア、スラグ、タルク、ウォラストナイト、ナノフィラー(カーボンナノチューブ)、顔料、金属酸化物(酸化チタン)、金属、有利にはウォラストナイト及びタルク、好ましくはタルクから選択され得る。
【0070】
組成物について
本成形組成物は、先に規定されたとおりであり、第1の実施態様では、重量で、
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを50%~99%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を1~50%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0071】
有利には、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを50%~98.9%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を1~50%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0.1%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0072】
第1の代替的な形態によれば、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~90%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を10~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0073】
有利には、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~89.9%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を10~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0.1%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0074】
第2の代替的な形態によれば、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~80%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を20~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0075】
有利には、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~79.9%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を20~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0.1%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0076】
第3の代替的な形態によれば、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~75%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を25~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0077】
有利には、本成形組成物は、重量で:
a)ISO規格 307:2007(ただし、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用、温度20℃、濃度0.5重量%)に従い決定して、固有粘度が1.10以下、特に1.00以下、特に0.95以下、とりわけ0.9以下である半結晶性脂肪族ポリアミドを60%~74.9%、
b)コンパウンド化前の平均長さが6mm以下の再生炭素繊維を25~40%、当該再生炭素繊維は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドにより表面がコーティング(サイジング)されたものである、
c)少なくとも1つの添加剤0.1%~5%、
を含み、成分a)、b)及びc)の合計は、100%である。
【0078】
第2の実施態様では、本発明による組成物が、様々な要素a、b及びcからなり、これらの合計は100重量%であり、これらについては、第1の実施態様、及び3つの代替的な形態で規定されており、その具体的な実施態様については、先に規定したとおりである。
【0079】
上記組成物のうちいずれの実施態様であれ、当該組成物は、その機械的特性が、同じ組成物(ただし、コンパウンド段階前に、再生炭素繊維の代わりに平均長さが6mm以下のバージン炭素繊維を含み、当該バージン炭素繊維が、同じポリアミド又はポリアミド以外のポリマーにより表面コーティング(サイジング)されたもの)と少なくとも同等であることを特徴とする。
【0080】
特に、23℃でノッチ無しバーへの1eUのシャルピー衝撃で測定した場合、本発明による組成物のレジリエンスは、ポリアミドでサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーでサイジングされたもの)で得られるレジリエンスよりも10%超、大きい。
【0081】
有利には、本発明による組成物の破断点伸びは、ポリアミドでサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーでサイジングされたもの)で得られる破断点伸びよりも10%超、大きい。
【0082】
1つの実施態様では、23℃でノッチ無しバーへの1eUのシャルピー衝撃で測定した場合、本発明による組成物のレジリエンスが、ポリアミドでサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーでサイジングされたもの)で得られる破断点伸びよりも10%超、大きい。
【0083】
別の実施態様では、23℃でノッチ無しバーへの1eUのシャルピー衝撃で測定した場合、本発明による組成物のレジリエンス及び破断点伸びが、ポリアミドでサイジングされたバージン炭素繊維で、又は再生炭素繊維(ただし、ポリアミド以外のポリマーでサイジングされたもの)で得られる破断点伸びよりも10%超、大きい。
【0084】
別の態様によれば、本発明は、先に規定した組成物の、射出成型により得られる物品を製造するための使用に関し、当該物品は、スポーツ用品、特にスポーツシューズ、特にスキー靴若しくはスキー靴の一部、又はスパイク付き硬質ブーツ、例えばサッカー、ラグビー、又はアメリカンフットボールのブーツ、ホッケーブーツ若しくはホッケーブーツの一部、又はランニングシューズ、ゴルフボール若しくはゴルフボールの一部、又はラクロススティック、ホッケー用品、例えばヘルメット、並びに頭、肩、肘、手、膝、背中又は脛を保護するためのスポーツ用品、例えばヘルメット、グローブ、ショルダーパッド、エルボーパッド、ニーパッド、又は脛当てから選択される。
【0085】
さらに別の態様によれば、本発明は、先に規定した組成物の、電子産業用、自動車産業用、通信用途用、又はデータ交換用の物品、例えば自律走行車のため、若しくは相互に接続された用途の物品を製造するための、使用に関する。
【0086】
別の態様によれば、本発明は、先に規定した組成物の射出成型により得られる物品に関する。
【実施例】
【0087】
以下で本発明を下記実施例により説明するが、これにより本発明が限定されることはない。
【0088】
本発明による組成物の製造、及び機械的特性:
表Iの組成物は、ポリマー顆粒を炭素繊維及び添加剤と溶融ブレンドすることにより製造した。このブレンドは、直径26mmの共回転2軸押出機により、240℃の平坦な温度プロファイル(T°)でコンパウンド化することにより行った。スクリュー速度は200rpmであり、処理量は16kg/hである。
【0089】
炭素繊維は、サイドフィーディングにより導入される。
【0090】
1又は複数のポリアミド及び添加剤は、コンパウンド化プロセスの間に、メインホッパーを介して添加される。
【0091】
続いてこれらの組成物を、射出成型機にて材料温度260℃及び成形温度50℃でダンベル又はバーの形に成形し、以下の基準に従って機械的特性を調査した。
CE:比較例
E:本発明の実施例
ここで割合は、重量割合(%)として示されている。
【0092】
ポリウレタンサイズ剤又はポリアミドサイズ剤でサイジングされたPAN系バージン炭素繊維及びPAN系再生炭素繊維は例えば、Mitsubishi、SGL、ACECA、Teijin、Zoltek、又はHexcelから販売されている。
【0093】
PA11:出願人の会社で合成したもの。
【0094】
引張弾性率、破断点伸び、及び破壊応力は、ISO規格527-1: 2012に従い23℃で、乾燥試料にて測定した。
【0095】
使用した機械は、Instron 5966型のものである。クロスヘッドの速度は、弾性率の測定については1mm/分、破壊応力及び破断点伸びについては5mm/分である。試験条件は、乾燥試料にて23℃±2℃である。
【0096】
衝撃強度は、ISO 179-1: 2010(シャルピー衝撃)に従い、寸法が80mm×10mm×4mmのノッチ付き及びノッチ無しのバーにより、23℃±2℃の温度にて相対湿度50%±10%で、又は-30℃±2℃の温度にて相対湿度50%±10%で、乾燥試料で決定した。
【0097】
上記実施例及び比較例により、ポリアミドでサイジングされた再生炭素繊維に基づく組成物の機械的特性は、ポリアミドでサイジングされたバージン炭素繊維に基づく、又は他のポリマーでサイジングされたバージン炭素繊維に基づく、組成物の機械的特性よりも良好なことが分かる。
【国際調査報告】