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特表2024-540489分散型光ファイバセンシングを利用した埋設ケーブルの保護のためのインパルス信号検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングを利用した埋設ケーブルの保護のためのインパルス信号検出
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529355
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022050185
(87)【国際公開番号】W WO2023091536
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,709
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/988,643
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB21
2G064BC12
2G064BC33
(57)【要約】
光ファイバセンシング技術によるインパルス信号検出を採用し、そのような保護を自動でかつリアルタイムに提供する埋設ケーブルの保護システム及び方法が開示される。DFOSセンサファイバケーブルを進むインパルス波の到着時間差(TDoA)を理論的にモデル化する。波の伝播速度と脅威の範囲に関する不明瞭な知識を説明する伝播関係のセットを採用したモデルに、振動源に関する具体的な知識を持たない、数値シミュレーションに基づくパラメータが適合される。振動の振幅情報と比べると、到着時間(ToA)情報はより着実であり、曖昧さや不正確さの影響を受け難い。さらに、センサの時間分解能が変化または変動した場合に、モデルパラメータを適応的に調整できる。その結果、本発明のシステム及び方法は、光ファイバケーブルに対する異なる距離における振動インパルスの地上イベントを生成する機械またはその他の作業からのインパルス信号を効果的に検出し、列車や車両交通等の輸送モードに起因するものを含むバックグラウンドノイズと区別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバーセンシング(DFOS)を利用した埋設ケーブル保護のためのインパルス信号検出方法であって、
光ファイバケーブルの一部としてフィールドに配備される光センサファイバと、
光パルスを生成し、生成されたパルスを前記光センサファイバに入力し、前記光センサファイバから後方散乱信号を受信するように構成された、前記光センサファイバと光通信するDFOSインタロゲータと、
DFOS/DVSインテロゲータによって受信されたDFOS/DVSデータを分析し、前記後方散乱信号から前記光センサファイバに沿った場所で発生する振動アクティビティを特定するように構成されたインテリジェントアナライザと、
を含むDFOSシステムを備え、
異なる速度及び異なる振動源から前記光ファイバケーブルまでのパラメータに基づいて、到着時間差(TDoA)曲線のグループを生成し、
生成されたTDoA曲線のグループにおける曖昧さ及び離散化エラーを解消し、R二乗値>0.998の最小二乗線形回帰法を用いてモデルパラメータを特定し、
カスタマイズされたインパルス信号イベント検出器を構築し、確率的ハフ変換(PPHT)を用いてインパルスイベントを検出し、検出された前記インパルスイベントの情報を出力する、方法。
【請求項2】
各センシング位置における前記インパルスイベントの合計強度として計算された、センシングファイバに沿った各センシングポイントの検出スコアを出力することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
位置、タイムスタンプ及び前記検出スコアを含む、検出されたイベントのイベントログを出力することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インパルス信号イベント検出器は、入力としてDFOSウォーターフォールデータ及びカスタマイズパラメータを受信し、センサファイバに沿った個々の振動ポイントを検出するように構成された、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インパルス信号イベント検出器は、所定の閾値を超える持続時間を有する信号をフィルタ処理するように構成された、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インパルス信号イベント検出器は、前記PPHTを実行し、複数の(左/右)方向の波伝播に関して、その出力をマスクするように構成された、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インパルス信号イベント検出器は、複数の(左/右)方向を組み合わせた全インパルスイベントを検出するように構成された、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記インパルス信号イベント検出器は、脅威となるインパルスイベントを検出するようにさらに構成された、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には分散型光ファイバセンシング(DFOS:distributed fiber optic sensing)システム、方法及び構造に関する。より具体的には、分散型光ファイバセンシングを利用した埋設ケーブルの保護のためのインパルス信号検出を開示する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、建設作業、特に掘る及び/または掘削作業は、光ファイバ通信設備を含む地下に埋設された設備に重大な損害を与える脅威となることが多い。慎重な監視とタイムリーな介入がなければ、このような作業によって何千もの顧客で予期せぬネットワーク/通信停止が発生する。多くの場合、地下の公共設備を脅かす作業は、検出可能なインパルスイベントを生成する可能性がある。
【0003】
分散型光ファイバセンシング、並びにその変形例である分散型振動センシング及び分散型音響センシングは、インフラ監視、セキュリティ(侵入検知、交通監視、歪及び温度測定)を含む、いくつかの現代のアプリケーションにおいて広く応用されている。土壌媒体内で伝播する物理的な波(振動)を生成するインパルスイベントは、DFOS技術によって感知できる。しかしながら、DFOSシステムは多くの種類の振動に敏感であり、設備に脅威を与える振動イベントと、そうでない振動イベントとを区別することが非常に困難である。
【発明の概要】
【0004】
光ファイバセンシング技術によるインパルス信号検出を採用し、埋設ケーブルの保護を自動でかつリアルタイムに提供する埋設ケーブルの保護システム及び方法を対象とする本開示の態様により、本技術の進歩がもたらされる。
【0005】
ある態様から見ると、本発明の方法は、DFOSセンサファイバケーブルを進行するインパルス波の到着時間差(TDoA:time difference of arrival)を理論的にモデル化する。波の伝播速度と脅威の範囲に関する不明瞭な知識を説明する伝播関係のセットを採用したモデルに、振動源に関する具体的な知識を持たない、数値シミュレーションに基づくパラメータが適合される。振動の振幅情報と比べると、到着時間(ToA:time of arrival)の情報はより確実であり、曖昧さや不正確さの影響を受け難い。さらに、センサの時間分解能が変化または変動した場合に、モデルパラメータを適応的に調整できる。その結果、本発明のシステム及び方法は、光ファイバケーブルに対する異なる距離における振動インパルスの地表イベントを生成する機械またはその他の作業からのインパルス信号を効果的に検出し、列車や車両交通等の輸送モードに起因するものを含むバックグラウンドノイズと区別する。
【0006】
別の態様から見ると、本発明のシステム及び方法は、光ファイバケーブルの経路全体に沿ってリアルタイムで監視するために、DFOSと人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術とを統合して使用する。インパルス源に関する情報が無いため、本発明のシステム及び方法は、伝播媒体(土壌の種類、温度等)及び波の伝わり方(伝播速度の範囲)に関する入手しやすい知識を利用して、センサ構成パラメータ(空間解像度及び時間解像度)で離散化した後、格子上のシミュレーションからリアルに変換することで特定される重要なコンセンサスパラメータを含む、特別に設計されたアルゴリズムを採用する。
【0007】
確率的ハフ変換(PPHT:progressive probabilistic Hough transform)の修正された変形例は、センシング信号の特性を有する特別なタイプのウォーターフォール画像データ用にカスタマイズされる。フィールド試験で実証したように、本開示のシステム及び方法は、わずか数秒の遅延で、数十キロメートルに及ぶ光ファイバケーブルの経路の振動を検知し、その結果として保護する。
【0008】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照することで実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の態様による、例示的なDFOSシステムを示す概略図である。
【0010】
図2図2は、本開示の態様による、インテリジェントなファイバセンシングベースのケーブル保護を示す概略フローチャートである。
【0011】
図3図3は、本開示の態様による、例示的な波伝播モデルを示す概略図である。
【0012】
図4図4は、本開示の態様による、既存の設置済み光ファイバのセンシング層の例示的なシステムレイアウトを示す概略図である。
【0013】
図5図5は、本開示の態様による、5つの異なる伝播速度と4つの異なる発生源からケーブルまでの距離でシミュレートされたTDoA曲線の例示的なグループを示すプロットであり、各グループ内では、曲線は決定係数が1に近い最小二乗線形回帰曲線によって近似される。
【0014】
図6図6は、本開示の態様による、適合されたパラメータが、発生源及び媒体の曖昧さとDFOSセンサの離散化誤差の両方を説明する、インパルスイベント検出後に用いられるパラメータを推測するための例示的な手順を示す概略図である。
【0015】
図7図7は、本発明の態様による、インパルスイベント検出器の例示的なパイプラインを示す概略図である。
【0016】
図8図8は、本開示の態様による、方法の例示的な構成要素を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者であれば、本明細書で明示的に説明または図示されていなくても、本開示の主旨及び範囲に含まれる、本開示の原理を具体化する様々な構成を考え出すことができることを理解されたい。
【0018】
さらに、本明細書で挙げる全ての実施例及び条件付き用語は、本開示の原理及び本技術を促進するために本発明者らが提供する概念の理解を助ける教育目的のためだけであることを意味し、具体的に挙げられた実施例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0019】
さらに、本開示の原理、態様及び実施形態、並びにその特定の実施例で挙げる本明細書の全ての記載は、その構成及び機能の均等物の両方を含むことを意味する。さらに、そのような均等物には、現在知られている均等物と、将来開発される均等物、すなわち構成に関係なく同じ機能を実現する、開発された要素の両方を含むことを意味する。
【0020】
したがって、例えば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する回路の実例を示す概念図であることが当業者には理解されるであろう。
【0021】
本明細書では、特に明記しない限り、図を含む図面は、正確な縮尺率で描かれていない。
【0022】
追加の背景として、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、光ファイバケーブルに沿った任意の場所の環境状態(温度、振動、音響励起振動、伸張レベル等)を検出するための、重要かつ広く使用されている技術であり、光ファイバケーブルはインタロゲータに接続されていることを最初に指摘しておく。周知のように、現代のインタロゲータは、ファイバに対する入力信号を生成し、反射/散乱されてその後受信する信号を検出/分析するシステムである。該信号は分析され、ファイバに沿って発生する環境条件を示す出力が生成される。受信する信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、ブリルアン後方散乱等のファイバ内の反射によって生じる可能性がある。DFOSでは、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号も使用できる。一般性を失うことなく、以下の説明では反射信号を想定しているが、同じアプローチはフォーワード信号にも適用できる。
【0023】
図1は、一般化された従来のDFOSシステムの概略図である。理解されているように、現代のDFOSシステムには、定期的に光パルス(または任意のコード化された信号)を生成し、それを光ファイバに入力するインタロゲータが含まれている。入力された光パルス信号は光ファイバに沿って伝送される。
【0024】
ファイバに沿った位置において、信号のごく一部が反射され、インタロゲータに返送される。反射信号は、例えば機械的な振動を示す電力レベルの変化等、インタロゲータが検出のために使用する情報を伝達する。理解及び認識されているように、インタロゲータには、当該技術で知られているコヒーレント受信機の構成を採用できる、コード化されたDFOSシステムを含むことができる。
【0025】
反射信号は電気ドメインに変換され、インタロゲータで処理される。パルスの入力時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータはファイバのどの位置から信号が来ているかを判断し、ファイバの各位置のアクティビティを感知できる。
【0026】
当業者であれば、インタロゲーション信号に信号コーディングを実施することで、より多くの光パワーをファイバに送信できるようになり、レイリー散乱ベースのシステム(例えば、分散型音響センシング、すなわちDAS(distributed acoustic sensing))及びブリルアン散乱ベースのシステム(例えば、ブリルアン光時間領域反射測定法、すなわちBOTDR)の信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)を有利に改善できることを理解及び認識するであろう。
【0027】
現在多くの現代的な実施態様で実装されているように、光ファイバケーブルにおけるDFOSシステムには専用ファイバが割り当てられ、異なるファイバで伝送される既存の光通信信号とは物理的に分離されている。しかしながら、帯域幅の需要が爆発的に増加していることを考えると、DFOSの運用のためだけに光ファイバを経済的に運用及びメンテナンスすることはますます困難になってきている。その結果、より大きなマルチファイバケーブルの一部である共通ファイバに通信システムとセンシングシステムとを統合することへの関心が高まっている。
【0028】
運用上、DFOSシステムは、コーディングの実装を備えたレイリー散乱ベースのシステム(例、分散型音響センシングまたはDAS)とブリルアン散乱ベースのシステム(例、ブリルアン光時間領域反射測定法またはBOTDR)とを想定している。このようなコーディング設計により、これらのシステムは、低電力で動作するため、ファイバ通信システムと統合される可能性が高く、光増幅器の応答時間の影響も大きくなる。
【0029】
有利なことに、DFOSの運用は、同じファイバにおけるWDMを介して通信チャネルと統合することもできる。センシングファイバ内では、インタロゲーションシーケンスと返送されたセンシング信号とが、離散型(EDFA/SOA)または分散型(ラマン)方式のいずれかによって光学的に増幅される。返送されたセンシング信号は、増幅及び光バンドパスフィルタ処理された後、コヒーレント受信機に送られる。コヒーレント受信機は、信号の両方の偏波において光場を検出し、アナログ/デジタル変換(ADC)サンプリングとデジタル信号プロセッサ(DSP)処理のために4つのベースバンドレーンにダウンコンバートする。当業者であれば容易に理解し認識するように、デコード動作はDSPで実行され、ファイバのレイリー応答またはブリルアン応答が生成され、応答の変化が識別され、センサの読み取り値として解釈される。
【0030】
このような構成では、コード化されたインタロゲーションシーケンスがデジタル処理で生成されるため、帯域外信号もデジタル処理で生成され、その後、DACによって波形が作成される前に、コードシーケンスと結合される。デジタル処理で一緒に生成された場合、帯域外信号はコードシーケンスの期間外でのみ生成されるため、一緒に追加されると、結合された波形は一定の振幅になる。
【0031】
当業者であれば理解し認識するように、DFOS/DAS/DVSシステムは、可聴周波数帯域の音響振動を検出し、記録し、聴くことができることが示されている。
【0032】
図2は、本開示の態様による、インテリジェントなファイバセンシングベースのケーブル保護を示す概略フローチャートである。
【0033】
図3は、本開示の態様による、光ファイバセンサケーブルを振動/励起するインパルス源で生成される振動インパルスに関する、例示的な波伝播モデルを示す概略図である。この図で示されているように、Sはインパルス信号源の位置、Cはインパルス源に最も近い光ファイバケーブルのポイント、Dは光ファイバケーブルに最も近いインパルス源Sからの距離、Eは影響範囲内にある光ファイバケーブルのポイント(Cとは異なる)、BはケーブルポイントCとケーブルポイントE間の光ファイバケーブルの距離、Aはインパルス源からケーブルポイントEまでの距離、vは波の伝播速度、t(C)は波がケーブルポイントCに到達する時間、t(E)は波がケーブルポイントEに到達する時間である。
【0034】
信号源から異なるケーブルポイントまでの距離が異なるため、異なる方向に伝播する波の到着時間(ToA)に差が生じる。図2で示す簡略化された波伝播モデルから、2つのケーブルポイントEとC間のTDoAは次の式に従うことが分かる。
【数1】
ここで、BはDFOSシステムからの既知のパラメータ、Dは範囲と見なせる発生源からケーブルまでの距離(例:ケーブルの深さに応じて4~10メートル)、vは土壌の種類と温度の影響を受けるが、ほとんどの場合、漠然としか分かっていない(例:140m/s~220m/s)。複数のセンシングポイントを評価することで、TDoAの理論曲線を得ることができる。
【0035】
ウォーターフォール画像から正確な到着時間を手作業で特定するのは非常に難しいことに留意されたい。したがって、本発明のシステム及び方法は、正確にまたは不正確に知られている追加の知識から推測されるパラメータを備えたTDoAを用いて、ウォーターフォール画像からインパルスイベントを自動的に検出するように設計されている。
【0036】
ステップ0:異なる速度と発生源からケーブルまでの距離パラメータに基づいてTDoA曲線をシミュレートする。
【0037】
図4は、本開示の態様による、既存の設置済み光ファイバに配備された分散型光ファイバセンシングの例示的なシステムレイアウトを示す概略図である。分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)は、分散型音響センシング(DAS)や分散型振動センシング(DVS:distributed vibration sensing)としても機能し、主に制御オフィス/中央オフィスに設置され、光ファイバケーブル経路全体を遠隔監視する。DFOSシステムは、センシング機能を提供するために光センシングファイバに接続されている。該ファイバは、電気通信トラフィックを同時に伝送するダークファイバまたはサービスプロバイダの運用ファイバがなり得る。
【0038】
ステップ1:異なる速度と発生源からケーブルまでの距離パラメータに基づいてTDoA曲線をシミュレートする。
【0039】
伝播媒体は局所的に均質であり、速度vは未知の一定値であると仮定する。事前の知識に応じて、ユーザは可能性がある波の伝播速度の範囲を指定することができる。一方、脅威の発生源からケーブルまでの距離も範囲変数となる可能性がある。図5では、いくつかの異なる設定下における理想的なTDoA曲線がシミュレートされている。図5は、本開示の態様による、5つの異なる伝播速度と4つの異なる発生源からケーブルまでの距離でシミュレートされたTDoA曲線の例示的なグループを示すプロットであり、各グループ内では、曲線は、決定係数が1に近い最小二乗線形回帰曲線によって近似されている。
【0040】
ステップ2:各センサ設定における最小二乗線形TDoA曲線を用いて曖昧さと離散化誤差を解決する
【0041】
DFOSシステムの空間解像度及び時間解像度パラメータが与えられると、TDoA曲線は格子上で離散化できる。伝播速度が140m/sから220m/sの間、発生源からケーブルまでの距離が4メートルから10メートルの範囲であると仮定すると、モデルパラメータは、R二乗値>0.998の最小二乗線形回帰法によって特定される。図6は、本開示の態様による、適合パラメータが発生源及び媒体の曖昧さとDFOSセンサの離散化誤差の両方を考慮した、インパルスイベント検出に後で使用されるパラメータを推測するための例示的な手順を示す概略図である。
【0042】
ステップ3:カスタマイズされたインパルスイベント検出器を構築する
【0043】
特定されたモデルパラメータは、伝播媒体の特性(速度、ケーブル深度、監視範囲)及びDFOSシステムの構成(時間、空間解像度)を反映している。一方、線形モデルは、シミュレートされた曲線と実際のフィールドデータの両方に対する良好な近似値として確認される。したがって、線分検出用の確率的ハフ変換(PPHT)アルゴリズムは、図6のカスタマイズモジュールで特定されたパラメータを用いて、前記のイベントを検出するためにカスタマイズできる。図7は、本発明の態様による、インパルスイベント検出器の例示的なパイプラインを示す概略図である。この図を参照すると、以下の要素に留意する。
【0044】
入力:DFOSウォーターフォールデータ、カスタマイズパラメータ
【0045】
出力:
【0046】
検出スコア:経路の各センシングポイント、各時点において、各検知位置におけるインパルスイベントの合計強度として計算される
【0047】
イベントログ:検出されたイベントに関して、場所、タイムスタンプ、検出スコア等の情報が記録される。
【0048】
モジュール:
【0049】
サリエンシー検出:個々の強く振動するポイントを検出する
【0050】
トランジェントフィルタ:数秒以上の持続時間を有する信号をフィルタ処理する
【0051】
左/右検出器:特定されたカスタマイズパラメータを用いるPPHTベースの検出器
【0052】
左/右マスク:各方向の波伝播に関するバイナリマスク
【0053】
インパルスマスク:全インパルスイベントを検出するための左マスクと右マスクとを組み合わせたバイナリマスク
【0054】
イベント検出器:少数回繰り返し発生した脅威となるインパルスイベントのみがイベントログに記録される。
【0055】
当業者には理解されるように、本発明のシステム及び方法は、ケーブルの安全保護のために、配備された埋設光ファイバケーブルに沿って光ファイバケーブルの脅威となるインパルス信号を検出する。架空ケーブルの設定とは異なり、地下環境は複雑なため、埋設ケーブルを使用してインパルスイベントを検出することはより困難である。分散型光ファイバセンシング技術と特別に設計された信号検出器を用いることで、サードパーティのセンサを導入することなく、危険な機械掘削作業の経路全体を自動監視できるようになる。検出されると、ケーブルの損傷を防ぐためにタイムリーな措置を講じることができる。地面に衝撃を与える機械の掘削作業により、インパルスイベントが発生する。機械の種類や衝撃力の強さはほとんど分からないため、これらの要因の影響を受け難いTDoAパターンに基づく検出器について説明する。但し、発生源からケーブルまでの距離(埋設ケーブルの深さを含む)と波の伝播速度という複合的な要因の影響を受ける。さらに、時間の経過やセンシングポイント間の間隔によっても、結果のパターンが異なって見える場合がある。この情報を廃棄する代わりに、シミュレーションベースのアプローチを採用して、センシング媒体に関する知識の不正確さとセンサの不正確さに対抗する。各設定に最適なパラメータを推定し、インパルスイベント検出器に転送できる。
【0056】
図8は、本開示の態様による、方法の例示的な構成要素を示す概略図である。
【0057】
ここでは、いくつかの具体的な例を用いて本開示を示したが、当業者であれば本教示がそれらに限定されないことを認識するであろう。したがって、本開示は本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】