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特表2024-540490高強度ナノ断熱ボード及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高強度ナノ断熱ボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20241024BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C04B38/00 301Z
C04B38/00 302Z
F16L59/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529358
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2022119193
(87)【国際公開番号】W WO2023103510
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111487458.0
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226115
【氏名又は名称】南京鋼鉄股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲チァオ▼ 明亮
(72)【発明者】
【氏名】李 権輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 桂麗
(72)【発明者】
【氏名】陶 ▲ビアオ▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 文剛
【テーマコード(参考)】
3H036
4G019
【Fターム(参考)】
3H036AB11
3H036AB23
3H036AC01
4G019DA04
(57)【要約】
本発明は、断熱フィラー43~75重量%と、遮光剤7~15重量%と、バインダ10~20重量%と、強化繊維2~6重量%と、可塑剤0.5~2重量%と、性能添加剤1~5%と、水3~10重量%とを含む高強度ナノ断熱ボードを開示する。本発明で製造されたナノボードは、コストが低く、常温耐圧強度が高く、熱伝導率が低いという特徴を持つ。選択された断熱フィラーはすべて、熱伝導率が低く、軽量な材料であり、本発明はまた、アルカリ又はアルカリ金属塩を導入し、融点が低く、揮発しやすく、アルミニウム-シリコン材料と反応するというこれらの特性を利用して、断熱ボードが使用状態下でその場で新しい構造強化相を形成するとともに、大幅な体積膨張を起こすようにし、長期使用中の従来の断熱ボード材料の焼結や粉化の現象を回避する。前記高強度ナノ断熱ボードは、優れた断熱性能を有するだけでなく、常温でも高温でも効果の喪失を避けるのに十分な強度を維持できることから、本発明は優れた革新性と経済的価値を有することがわかる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱フィラー43~75重量%と、遮光剤7~15重量%と、バインダ10~20重量%と、強化繊維2~6重量%と、可塑剤0.5~2重量%と、性能添加剤1~5重量%と、水3~10重量%と、を含み、
前記断熱フィラーは、褐色電融アルミナアッシュ、ホワイトカーボンブラック、及びセノスフェアのうちの1種又は複数種であり、その粒子径が0.2mm以下であり、前記性能添加剤は、アルカリ又はアルカリ金属塩であり、化学式がROH、RCO(Rは、Li、Na又はKである)であり、その粒度が0.044mm未満である、ことを特徴とする高強度ナノ断熱ボード。
【請求項2】
前記遮光剤は、ナノ炭化ケイ素、及びナノジルコンのうちの1種又は2種であり、粒度が200nm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度ナノ断熱ボード。
【請求項3】
前記バインダは、ケイ酸マグネシウムアルミニウムであり、粒度が0.044mm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度ナノ断熱ボード。
【請求項4】
前記強化繊維は、アルミナ繊維、ジルコニア繊維又はケイ酸アルミニウム繊維のうちの1種又は2種であり、繊維長が5mm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度ナノ断熱ボード。
【請求項5】
前記可塑剤は、ステアリン酸マグネシウムであり、粒度が0.044mm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度ナノ断熱ボード。
【請求項6】
配合比で原料を用意し、まず、強化繊維と可塑剤を混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させるステップ(1)と、
上記混合物を断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、及び性能添加剤とともにミキサーにてブレンドし、水を加えて混練し、スラリーを得るステップ(2)と、
スラリーをプレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状にし、乾燥した後、フィルム又はスズ箔で真空包装するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度ナノ断熱ボードの製造方法。
【請求項7】
前記ブレンドの時間は1~3hである、ことを特徴とする請求項6に記載の高強度ナノ断熱ボードの製造方法。
【請求項8】
前記混練の時間は20~60minである、ことを特徴とする請求項6に記載の高強度ナノ断熱ボードの製造方法。
【請求項9】
前記乾燥の温度は100~150℃である、ことを特徴とする請求項6に記載の高強度ナノ断熱ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の分野に属し、特に高強度ナノ断熱ボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の鉄鋼産業のエネルギー消費量は一般的に高く、エネルギーの節約と消費量の削減はすべての企業の重要な目標となっている。取鍋などの冶金用容器内の溶鋼の温度低下を合理的かつ効果的に低減することは、冶金プロセスの重要なプロセスである。溶鋼の温度低下を決定する重要な要素は、取鍋などの冶金用容器のライニング材の断熱性である。現在、冶金用容器のライニング断熱材は、主に軽量キャスタブル、繊維断熱ボード、ナノ断熱ボードなどを断熱に使用しているが、その中で、ナノ断熱ボードが最も優れた断熱効果を持っている。
【0003】
ナノ断熱ボードは、極細SiO微粉を主成分として、混合、プレス成形をした板状の断熱製品である。授権公告番号CN 105541313Bの中国特許は、ナノ断熱材料及びナノボードの製造方法を開示しており、このナノボードは、常温耐圧強度が1.2~1.4MPa、熱伝導率が0.02~0.029W/m・K(600℃)である。授権公告番号CN 102853211Aの中国特許は、熱処理装置用の高性能ナノ断熱ボード及びその製造方法を開示しており、その製品は、常温耐圧強度が3Mpa、常温での熱伝導率が0.021W/m・Kである。
【0004】
現在、取鍋などの冶金用容器の構造設計では、取鍋の断熱作用が十分に考慮されているので、熱伝導率の低いナノ断熱ボード材料が使用される。しかし、使用中、特に取鍋の寿命の終わりには、取鍋のライニングが高温の溶鋼によって加熱され、取鍋の作業用ライニングレンガと永久ライニングレンガが膨張し、溶鋼の静圧とジャケットの熱変形と相まって、ナノ断熱ボードは、押されてしまい、また、その自体により多くの有機物を含むので、高温になると破損しやすくなり、材料も焼結や粉化が進み、良好な断熱効果が失われてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、固形廃棄物を使用して高強度かつ低熱伝導率のナノ断熱ボードを製造し、取鍋などの冶金用容器のその使用における信頼性を向上させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的解決手段は以下の通りである。
本発明の高強度ナノ断熱ボードは、
断熱フィラー43~75重量%と、
遮光剤7~15重量%と、
バインダ10~20重量%と、
強化繊維2~6重量%と、
可塑剤0.5~2重量%と、
性能添加剤1~5重量%と、
水3~10重量%と、を含み、
前記断熱フィラーは、褐色電融アルミナアッシュ、ホワイトカーボンブラック、及びセノスフェアのうちの1種又は複数種であり、その粒子径が0.2mm以下であり、前記性能添加剤は、アルカリ又はアルカリ金属塩であり、化学式がROH、RCO(Rは、Li、Na又はKである)であり、その粒度が0.044mm未満である。
【0007】
さらに、前記遮光剤は、ナノ炭化ケイ素、及びナノジルコンのうちの1種又は2種であり、粒度が200nm未満である。
【0008】
さらに、前記バインダは、ケイ酸マグネシウムアルミニウムであり、粒度が0.044mm未満である。
【0009】
さらに、前記強化繊維は、アルミナ繊維、ジルコニア繊維又はケイ酸アルミニウム繊維のうちの1種又は2種であり、繊維長が5mm未満である。
【0010】
さらに、前記可塑剤は、ステアリン酸マグネシウムであり、粒度が0.044mm未満である。
【0011】
本発明の高強度ナノ断熱ボードの製造方法は、
配合比で原料を用意し、まず、強化繊維と可塑剤を混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させるステップ(1)と、
上記混合物を断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、及び性能添加剤とともに撹拌機にてブレンドし、水を加えて混練し、スラリーを得るステップ(2)と、
スラリーをプレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状にし、乾燥した後、フィルム又はスズ箔で真空包装する(3)と、を含む。
【0012】
さらに、前記ブレンドの時間は1~3hである。
【0013】
さらに、前記混練の時間は20~60minである。
【0014】
さらに、前記乾燥の温度は100~150℃である。
【発明の効果】
【0015】
有益な効果は、以下の通りである。従来技術と比較して、本発明は、下記顕著な利点を有する。
【0016】
(3)本発明により製造されたナノボードは、コストが低く、常温耐圧強度が高く、熱伝導率が低いという特徴を持つ。選択された断熱フィラーはすべて、熱伝導率が低く、軽量な材料である。また、遮光剤としてナノ炭化ケイ素とナノジルコンを使用すると、遮光剤は、使用中の断熱ボードの輻射熱伝達を大幅に抑制できる。可塑剤としてステアリン酸マグネシウムが使用されており、ステアリン酸マグネシウムは、優れた潤滑効果と可塑化効果があるだけでなく、密度が低いため、繊維が分散しやすくなる。混練して得られたスラリーは、流動性と圧縮性に優れ、200℃で揮発し、空隙率が増加し、断熱に有利である。バインダとしてのケイ酸マグネシウムアルミニウムは、特に粉体の粘着に適しており、他の有機バインダとは異なり、乾燥プロセス中に断熱ボードの表面に移動しない。この非移動性は、製品の構造的な均一性を確保するために必要である。本発明はまた、アルカリ又はアルカリ金属塩を導入し、融点が低く、揮発しやすく、アルミニウム-シリコン材料と反応するというこれらの特性:R(OH)+SiO/Al→RSiO/RAlO+HO;RCO+SiO/Al→RSiO/RAlO+COを利用する。上記反応は、断熱ボードが使用状態下でその場で新しい構造強化相を形成するとともに、大幅な体積膨張を起こすようにし、長期使用中の従来の断熱ボード材料の焼結や粉化の現象を回避する。以上のことから、前記高強度ナノ断熱ボードは、優れた断熱性能を有するだけでなく、常温でも高温でも効果の喪失を避けるのに十分な強度を維持できることから、本発明は優れた革新性と経済的価値を有することがわかる。
かさ密度/g・cm-3 <0.3
常温耐圧強度/MPa >4.0
800℃熱伝導率/W/m・K <0.055
800℃*4h熱処理後の線変化率/% <0.50
800℃*4h熱処理後の耐圧強度/MPa >2.0。
【0017】
(2)本発明の調製方法は、簡単で効率的であり、環境に優しく、大規模生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の技術的解決手段についてさらに説明する。
【0019】
実施例1
重量分率で、断熱フィラーとして褐色電融アルミナアッシュ20%、ホワイトカーボンブラック20%、セノスフェア35%を使用し、これらの粒子径は0.2mm以下である。遮光剤として粒度が200nm未満のナノ炭化ケイ素3%、ナノジルコン4%、バインダとして粒度が0.044mm未満のケイ酸マグネシウムアルミニウム10%、強化繊維として繊維長が5mm未満のアルミナ繊維1%、ケイ酸アルミニウム繊維1%、可塑剤として粒度が0.044mm未満のステアリン酸マグネシウム2%、性能添加剤として粒度が0.044mm未満のLiOH1%、水3%を用いた。
【0020】
上記原料を配合率で用意し、まず、強化繊維とステアリン酸マグネシウムを混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させ、さらに断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、性能添加剤とともに撹拌機で1hブレンドした後、適量の水を加えて20min混練し、スラリーを得、プレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状に製造し、100℃で乾燥し、フィルムで真空包装した。
【0021】
実施例2
重量分率で、断熱フィラーとして褐色電融アルミナアッシュ20%であり、ホワイトカーボンブラック23%を使用し、使用される断熱フィラーの粒子径は0.2mm以下である。遮光剤として粒度が200nm未満のナノジルコン15%、前記バインダとして粒度が0.044mm未満のケイ酸マグネシウムアルミニウム20%、強化繊維として繊維長が5mm未満のジルコニア繊維6%、可塑剤として粒度が0.044mm未満のステアリン酸マグネシウム1%、性能添加剤として粒度が0.044mm未満NaCO 35%、水10%を用いた。
【0022】
上記原料を配合率で用意し、まず、強化繊維とステアリン酸マグネシウムを混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させ、さらに断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、性能添加剤とともに撹拌機で3hブレンドした後、適量の水を加えて60min混練し、スラリーを得、プレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状に製造し、150℃で乾燥し、フィルム又はスズ箔で真空包装した。
【0023】
実施例3
重量分率で、断熱フィラーとしてホワイトカーボンブラック20%、セノスフェア36%を使用し、これらの断熱フィラーの粒子径は0.1mm未満である。遮光剤として粒度が150nm未満のナノ炭化ケイ素12%、前記バインダとして粒度が0.030mm未満のケイ酸マグネシウムアルミニウム15%、強化繊維として繊維長が5mm未満のアルミナ繊維2%、ジルコニア繊維3%、可塑剤として粒度が0.044mm未満ステアリン酸マグネシウム0.5%、性能添加剤として粒度が0.044mm未満のLiCO 34%、水7.5%を用いた。
【0024】
上記原料を配合率で用意し、まず、強化繊維とステアリン酸マグネシウムを混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させ、さらに断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、性能添加剤とともに撹拌機で2hブレンドした後、適量の水を加えて40min混練し、スラリーを得、プレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状に製造し、120℃で乾燥し、スズ箔で真空包装した。
【0025】
実施例4
重量分率で、断熱フィラーとしてセノスフェア63%を使用し、この断熱フィラーの粒子径は0.2mm以下である。遮光剤として粒度が150nm未満のナノ炭化ケイ素6%、ナノジルコン6%、前記バインダとして粒度が0.030mm未満のケイ酸マグネシウムアルミニウム12%、強化繊維として繊維長が5mm未満のケイ酸アルミニウム繊維3%、可塑剤として粒度が0.044mm未満のステアリン酸マグネシウム1.5%、性能添加剤として粒度が0.044mm未満のKOH 2%、水6.5%を用いた。
【0026】
上記原料を配合率で用意し、まず、強化繊維とステアリン酸マグネシウムを混合し、機械的撹拌又は超音波分散機により分散させ、さらに断熱フィラー、遮光剤、バインダ、可塑剤、性能添加剤とともに撹拌機で1.5hブレンドした後、適量の水を加えて30min混練し、スラリーを得、プレス成形プロセスにより様々なサイズの板の形状に製造し、110℃で乾燥し、フィルムで真空包装した。
【表1】
【国際調査報告】