(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電気化学素子用セパレーター、その製造方法、及び前記セパレーターを備えた電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20241024BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/42
H01M50/489
H01M50/437
H01M50/414
H01M50/403 D
H01M50/403 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529392
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2023000642
(87)【国際公開番号】W WO2023153657
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0019171
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ホ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・ベ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウク・スン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB15
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE21
5H021EE28
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度の確保が可能でありながらも、耐熱性に優れた電気化学素子用セパレーター、その製造方法及び前記セパレーターを備えた電気化学素子に関するものであって、本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターは、多孔性高分子基材;及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及び粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層;を含み、前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材;及び
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及び粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層;を含み、
前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有することを特徴とする電気化学素子用セパレーター。
【請求項2】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を含むアクリル系単量体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項3】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸単量体、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート単量体、アクリロニトリル単量体、ビニルピロリドン単量体、ビニルアセテート単量体、またはこれらのうちの2以上をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項4】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子が、下記の化学式1の構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター:
【化1】
前記化学式1において、
m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【請求項5】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子の50℃での貯蔵弾性率が20,000Pa~300,000Paであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項6】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度が-70℃~70℃であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項7】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子のゲル分率が10%~90%であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項8】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子の平均粒径が0.001μm~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項9】
前記無機物粒子は、BaTiO
3、Pb(Zr、Ti)O
3(PZT)、Pb
1-
xLa
xZr
1-
yTi
yO
3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1である)、Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3-PbTiO
3(PMN-PT)、ハフニア(HfO
2)、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、Mg(OH)
2、NiO、CaO、ZnO、Al(OH)
3、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、AlOOH、SiC、TiO
2、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)
xO
y系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li
xN
y、0<x<4、0<y<2)、SiS
2系ガラス(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P
2S
5系ガラス(Li
xP
yS
z、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらのうちの2以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項10】
前記無機物粒子の平均粒径が0.1nm~2.0μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項11】
前記有機無機複合多孔性層が非粒子型バインダー高分子をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項12】
前記非粒子型バインダー高分子は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、またはこれらのうちの2以上を含むことを特徴とする、請求項11に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項13】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が99.9:0.1~70:30であり、前記バインダー高分子は粒子型アクリル系バインダー高分子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項14】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子及び非粒子型バインダー高分子の重量比が5:95~95:5であることを特徴とする、請求項11に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項15】
前記有機無機複合多孔性層の厚さは0.1μm~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項16】
前記電気化学素子用セパレーターを135℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD、Machine Direction)に10%以下であり、直角方向(TD、Transverse Direction)に10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項17】
前記電気化学素子用セパレーターは、前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔性層との間の剥離強度(peel strength)が5g
f/15mm~1000g
f/15mmであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項18】
無機物粒子、及びベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層形成用スラリーを製造するステップ;
前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーを多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥するステップ;及び
紫外線を照射するステップを含むことを特徴とする電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項19】
前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、第1アクリル系単量体及び第2アクリル系単量体を含み、
前記第1アクリル系単量体がベンゾフェノンメタクリレート、6-(4-ベンゾイルフェノキシ)ヘキシルメタアクリレート、ベンゾフェノンアクリレート、またはこれらのうちの2以上を含むことを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項20】
前記第2アクリル系単量体が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸、炭素数1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルアセテート、またはこれらのうちの2以上を含むことを特徴とする、請求項19に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項21】
前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子が、下記の化学式2の共重合体を含むことを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法:
【化2】
前記化学式2において、
m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【請求項22】
前記第1アクリル系単量体の含有量が、前記第2アクリル系単量体の重量に対して500~20,000ppmであることを特徴とする、請求項19に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項23】
前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前の50℃での貯蔵弾性率が10,000Pa~80,000Paであることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項24】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前後の50℃での貯蔵弾性率の変化率が20%~300%であることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項25】
前記紫外線の照射量は0.1J~10Jであることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項26】
前記紫外線の波長は200nm~400nmであることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項27】
前記紫外線の波長は230nm~350nmであることを特徴とする、請求項26に記載の電気化学素子用セパレーターの製造方法。
【請求項28】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在したセパレーターを含み、
前記セパレーターが、請求項1~17のいずれか一項に記載の電気化学素子用セパレーターを含むことを特徴とする電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2022年2月14日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0019171号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本発明に含まれる。本発明は、電気化学素子用セパレーター、その製造方法、及び前記セパレーターを備えた電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー貯蔵技術への関心がますます高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡大されるにつれ、このような電子機器の電源として使用される電気化学素子の高エネルギー密度化に対するニーズが高まっている。リチウム二次電池は、そのようなニーズを最もよく満たしてくれる電気化学素子であって、現在それに対する研究が活発に行われている。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、セパレーターで構成されており、その中でセパレーターは、正極と負極を分離して電気的に絶縁させるための絶縁性と高い気孔度を基に、リチウムイオンの透過性を高めるために高いイオン伝導度が要求される。
【0004】
このようなセパレーターとして、ポリオレフィン系多孔性基材に微粒子の無機物粒子と架橋アクリル系バインダー高分子との混合物をコーティングしたセパレーターが使用されているが、架橋アクリル系バインダー高分子は、架橋密度が低い場合、貯蔵弾性率(storage modulus)が低いため耐熱特性において不利であり、架橋密度が高い場合、高温での貯蔵弾性率は増加するものの、接着力が減少するため、ポリオレフィン系多孔性基材とコーティング層との間の剥離強度において不利であるという問題がある。
【0005】
したがって、耐熱特性と、ポリオレフィン系多孔性基材とコーティング層との間の剥離強度をいずれも確保できる架橋アクリル系バインダー高分子を使用したセパレーターに対する必要性が依然高いのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度と、耐熱特性とをいずれも確保できる架橋アクリル系バインダー高分子を含む電気化学素子用セパレーター、及びそれを備えた電気化学素子を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度と、耐熱特性とをいずれも確保できる架橋アクリル系バインダー高分子を含む電気化学素子用セパレーターの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、下記の具現例の電気化学素子用セパレーターが提供される。
【0009】
第1具現例は、多孔性高分子基材;及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及び粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層;を含み、前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有することを特徴とする電気化学素子用セパレーターに関するものである。
【0010】
第2具現例は、第1具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を含むアクリル系単量体を含むことができる。
【0011】
第3具現例は、第2具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸単量体、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート単量体、アクリロニトリル単量体、ビニルピロリドン単量体、ビニルアセテート単量体、またはこれらのうちの2以上をさらに含むことができる。
【0012】
第4具現例は、第1具現例~第3具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が下記の化学式1の構造を有することができる:
【化1】
【0013】
前記化学式1において、m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【0014】
第5具現例は、第1具現例~第4具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子の50℃での貯蔵弾性率が20,000Pa~300,000Paであり得る。
【0015】
第6具現例は、第1具現例~第5具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度が-70℃~70℃であり得る。
【0016】
第7具現例は、第1具現例~第6具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子のゲル分率が10%~90%であり得る。
【0017】
第8具現例は、第1具現例~第7具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子の平均粒径が0.001μm~10μmであり得る。
【0018】
第9具現例は、第1具現例~第8具現例のいずれか1つの具現例において、前記無機物粒子は、BaTiO、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1である)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、Al(OH)3、ZrO2、Y2O3、Al2O3、γ-AlOOH、SiC、TiO2、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0019】
第10具現例は、第1具現例~第9具現例のいずれか1つの具現例において、前記無機物粒子の平均粒径が0.1nm~2.0μmであり得る。
【0020】
第11具現例は、第1具現例~第10具現例のいずれか1つの具現例において、前記有機無機複合多孔性層が非粒子型バインダー高分子をさらに含むことができる。
【0021】
第12具現例は、第11具現例において、前記非粒子型バインダー高分子は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0022】
第13具現例は、第1具現例~第12具現例のいずれか1つの具現例において、前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が99.9:0.1~70:30であり得、前記バインダー高分子は粒子型アクリル系バインダー高分子を含むことができる。
【0023】
第14具現例は、第11具現例~第13具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子及び非粒子型バインダー高分子の重量比が5:95~95:5であり得る。
【0024】
第15具現例は、第1具現例~第14具現例のいずれか1つの具現例において、前記有機無機複合多孔性層の厚さは0.1μm~10μmであり得る。
【0025】
第16具現例は、第1具現例~第15具現例のいずれか1つの具現例において、前記電気化学素子用セパレーターを135℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD、Machine Direction)に10%以下であり、直角方向(TD、Transverse Direction)に10%以下であり得る。
【0026】
第17具現例は、第1具現例~第16具現例のいずれか1つの具現例において、前記電気化学素子用セパレーターは、前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔性層との間の剥離強度(peel strength)が5~1000gf/15mmであり得る。
【0027】
前記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、下記の具現例の電気化学素子用セパレーターの製造方法が提供される。
【0028】
第18具現例は、無機物粒子、及びベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層形成用スラリーを製造するステップ;前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーを多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥するステップ;及び紫外線を照射するステップを含むことを特徴とする、電気化学素子用セパレーターの製造方法に関するものである。
【0029】
第19具現例は、第18具現例において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、第1アクリル系単量体及び第2アクリル系単量体を含むことができ、前記第1アクリル系単量体がベンゾフェノンメタクリレート、6-(4-ベンゾイルフェノキシ)ヘキシルメタアクリレート、ベンゾフェノンアクリレート、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0030】
第20具現例は、第19具現例において、前記第2アクリル系単量体が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸、炭素数1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルアセテート、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0031】
第21具現例は、第18具現例~第20具現例のいずれか1つの具現例において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子が、下記の化学式2の共重合体を含むことができる:
【化2】
【0032】
前記化学式2において、m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【0033】
第22具現例は、第19具現例~第21具現例のいずれか1つの具現例において、前記第1アクリル系単量体の含有量が、前記第2アクリル系単量体の重量に対して500ppm~20,000ppmであり得る。
【0034】
第23具現例は、第18具現例~第22具現例のいずれか1つの具現例において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前の50℃での貯蔵弾性率が10,000Pa~80,000Paであり得る。
【0035】
第24具現例は、第18具現例~第23具現例のいずれか1つの具現例において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前後の50℃での貯蔵弾性率の変化率が20%~300%であり得る。
【0036】
第25具現例は、第18具現例~第24具現例のいずれか1つの具現例において、前記紫外線の照射量は0.1J~10Jであり得る。
【0037】
第26具現例は、第18具現例~第25具現例のいずれか1つの具現例において、前記紫外線の波長は200nm~400nmであり得る。
【0038】
第27具現例は、第26具現例において、前記紫外線の波長は230nm~350nmであり得る。
【0039】
前記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、下記の具現例の電気化学素子が提供される。
【0040】
第28具現例は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在したセパレーターを含み、前記セパレーターが第1具現例~第17具現例のいずれか1つの具現例に係る電気化学素子用セパレーターを含むことを特徴とする電気化学素子に関するものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターは、ベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子を含んで、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度と耐熱性に共に優れる。
【0042】
本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターの製造方法は、有機無機複合多孔性層形成用スラリーのコーティング工程中は、粒子型アクリル系バインダー高分子が架橋されないため、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度を確保することができ、コーティング工程後は、紫外線を照射してベンゾフェノン官能基を媒介として粒子型アクリル系バインダー高分子が架橋されることで耐熱性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。それに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常の意味や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、その自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
【0044】
したがって、本明細書の実施例に記載された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願の時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得るということを理解しなければならない。
【0045】
本発明の一側面に係る電気化学素子用セパレーターの製造方法は、無機物粒子、及びベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層形成用スラリーを製造するステップ;前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーを多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥するステップ;及び紫外線を照射するステップを含むことを特徴とする。
【0046】
以下では、本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターの製造方法について主要な部分を中心に説明する。
【0047】
まず、無機物粒子、及びベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層形成用スラリーを製造する。
【0048】
前記無機物粒子は電気化学的に安定さえしていれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準にして0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度増加に寄与して、電解液のイオン伝導度を向上させることが容易であり得る。
【0049】
本発明の一実施態様において、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、好ましくは10以上の高誘電率無機物粒子を含むことができる。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、SiO2、Y2O3、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、SiC、TiO2、またはこれらの混合物などがある。
【0050】
また、本発明の他の実施態様において、前記無機物粒子としては、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、すなわち、リチウム元素を含有するものの、リチウムを貯蔵せずにリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を使用することができる。リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記無機物粒子の平均粒径が0.1nm~2.0μm、または0.1μm~1μm、または0.2μm~0.8μmであり得る。前記無機物粒子の平均粒径が前述した範囲を満たす場合、無機物粒子の分散性が維持されて、セパレーターの物性を調節することが容易であり、有機無機複合多孔性層の厚さが増加する現象を防止することが容易であるため、機械的物性を改善することができる。また、有機無機複合多孔性層の過度に大きい気孔サイズによって、電池の充放電の際に内部短絡が起こる確率を減少させることが容易であり得る。
【0052】
本明細書全体において、平均粒径はD50粒径を意味し、「D50粒径」は、粒径に応じた粒子数の累積分布における50%地点での粒径のことを意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象の粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラック(Microtrac)S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過する時、粒子サイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた粒子数の累積分布における50%となる地点での粒子の直径を算出することにより、D50粒径を測定することができる。
【0053】
前記ベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、アクリル系共重合体が粒子形状を呈しながら、ベンゾフェノン官能基を含む構造である。また、架橋される前の状態であり、架橋された構造を含まない。
【0054】
前記ベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、紫外線を照射する前は、低い貯蔵弾性率を有しており、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の優れた剥離強度を確保することができる。
【0055】
前記ベンゾフェノン官能基は、紫外線が照射される際に、アクリル系共重合体を互いに架橋させる役割を果たす。具体的には、紫外線が照射される際に、水素引き抜き(hydrogen abstraction)によってベンゾフェノン官能基内の水素原子が除去されてラジカルとなり、アクリル系共重合体にラジカルを形成してアクリル系共重合体が互いに架橋されるようにする。
【0056】
紫外線照射後、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子内のアクリル系共重合体が互いに架橋されることにより、粒子型アクリル系バインダー高分子が高い貯蔵弾性率を有して、耐熱性を確保することができる。
【0057】
本発明の一実施態様において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、第1アクリル系単量体及び第2アクリル系単量体を含むことができる。
【0058】
このとき、前記第1アクリル系単量体が、ベンゾフェノンメタクリレート、6-(4-ベンゾイルフェノキシ)ヘキシルメタアクリレート、ベンゾフェノンアクリレート、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0059】
本発明の一実施態様において、前記第2アクリル系単量体が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸、炭素数1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルアセテート、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0060】
前記炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸、炭素数1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレートは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、脂環族(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどを含むことができる。
【0061】
前記第2アクリル系単量体が前述した種類のものを含む場合、水系分散媒で粒子形状を維持することがより容易であり得る。
【0062】
本発明の一実施態様において、前記第1アクリル系単量体の含有量が、前記第2アクリル系単量体の重量に対して500ppm~20,000ppm、または1,000ppm~10,000ppm、または5,000ppm~10,000ppmであり得る。前記第1アクリル系単量体の含有量が、前述した範囲を満たす場合、目的とするレベルで架橋が起こり得、第1アクリル系単量体によって生成されたラジカルによって高分子鎖が切れる問題を防ぐことがより容易であり得る。
【0063】
本発明の一実施態様において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子が、下記の化学式2の共重合体を含むことができる:
【化3】
【0064】
前記化学式2において、m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【0065】
前記ベンゾフェノン官能基を含む非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子は、紫外線を照射する前は、高温で低い貯蔵弾性率を有して、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の優れた剥離強度を確保することができる。例えば、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前の50℃での貯蔵弾性率が10,000Pa~80,000Paであり得る。前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の50℃での貯蔵弾性率が前述した範囲を満たす場合、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度を確保することがより容易であり得る。
【0066】
本明細書において、貯蔵弾性率は動的機械的分析(DMA)によって測定され得る。例えば、サンプルを1Hzの一定周波数、0.01Nの予荷重力、20μmの振幅、及び120%の力トラック(force track)で、-100℃から150℃まで1℃/分の引張力で試験して測定することができる。
【0067】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーは、水系分散媒を含むことができる。前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーが水系分散媒を含む場合、環境に優しく乾燥に過度な熱量を必要としないという点で利点がある。また、追加の防爆施設を必要としないという利点がある。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記水系分散媒は、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロールアルコール、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0069】
前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーは、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を分散媒に分散させた後、前記無機物粒子を添加し、これを分散させて製造することができるが、前記スラリーの製造方法がこれに限定されない。
【0070】
本発明の一実施態様において、前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が、99:1~70:30、または97:3~90:10であり得る。このとき、前記バインダー高分子は、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を含むことができる。前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が前述した範囲を満たす場合、有機無機複合多孔性層が安定的に維持され得る。
【0071】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーは、非粒子型バインダー高分子をさらに含むことができる。この場合、無機物粒子間の接着力を増加させて、耐熱性の確保に有利であり得る。また、前述した無機物粒子とバインダー高分子との重量比において、前記バインダー高分子が、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子及び非粒子型バインダー高分子を含むものであり得る。
【0072】
本発明の一実施態様において、前記非粒子型バインダー高分子は水系バインダー高分子であり得る。すなわち、水系条件で水系溶媒に溶解されたり、水系分散媒によって分散されるバインダー高分子であり得る。
【0073】
本発明の一実施態様において、前記非粒子型バインダー高分子は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0074】
本発明の一実施態様において、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子及び非粒子型バインダー高分子の重量比が5:95~95:5であり得る。前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子、及び非粒子型バインダー高分子の重量比が前述した範囲を満たす場合、コーティング時の工程性を確保することがより容易であり、耐熱性の確保もより容易であり得る。
【0075】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーが分散剤をさらに含むことができる。
【0076】
本発明の一実施態様において、前記分散剤は、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、またはこれらのうちの2以上を含むことができる。
【0077】
その次に、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーを多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥する。
【0078】
前記多孔性高分子基材としては、通常、電気化学素子用セパレーターの素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用することが可能である。このような多孔性高分子基材は高分子材料が含まれる薄膜であって、前記高分子材料の非制限的な例としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンなどといった高分子樹脂などがある。また、前記多孔性高分子基材は、前述したような前記高分子材料から形成された不織布、または多孔性高分子フィルム、またはその中での2つ以上の積層物などを使用することができる。具体的には、前記多孔性高分子基材は、下記のa)~e)のいずれか1つであり得る。
【0079】
a)高分子樹脂を溶融及び押出して成膜した多孔性フィルム、b)前記a)の多孔性フィルムが2層以上積層された多層膜、c)高分子樹脂を溶融/紡糸して得たフィラメントを集積して製造された不織布ウェブ、d)前記c)の不織布ウェブが2層以上積層された多層膜、e)前記a)~d)のうちの2つ以上を含む多層構造の多孔性膜。
【0080】
前記多孔性高分子基材は、前述した物質から優れた通気性及び空隙率を確保するために、当業界で公知されている通常の方法、例えば、溶媒、希釈剤、または気孔形成剤を使用する湿式法、または延伸方式を使用する乾式法を通じて気孔を形成することにより、製造され得る。
【0081】
本発明の一実施態様において、前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、1μm~100μm、または1μm~30μmであり得る。多孔性高分子基材の厚さが前述した範囲である場合、電池使用中にセパレーターが損傷しやすくなるという問題を防ぐことができながらも、エネルギー密度を確保することが容易であり得る。
【0082】
前記多孔性高分子基材の気孔サイズ及び気孔度は、電気化学素子の用途に適していれば特に制限がなく、気孔サイズは0.01μm~50μm、または0.1μm~20μmであり得、気孔度は5%~95%であり得る。前記気孔サイズ及び気孔度が前述した範囲である場合、多孔性高分子基材が抵抗として作用することを防止することが容易であり得、多孔性高分子基材の機械的物性を維持することが容易であり得る。
【0083】
前記多孔性高分子基材の気孔度及び気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)画像、水銀ポロシメーター(Mercury porosimeter)、毛細管流動気孔分布測定器(capillary flow porometer)、または気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着流通法によってBET6点法で測定することができる。
【0084】
前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーを多孔性高分子基材の一面にコーティングする方法の非制限的な例としては、ディップ(Dip)コーティング法、ダイ(Die)コーティング法、ロール(roll)コーティング法、コンマ(comma)コーティング法、マイクログラビア(Microgravure)コーティング法、ドクターブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、ダイレクトロールコーティング法などがある。
【0085】
前記乾燥は当業界で公知されている方法で実施され得、使用された水系分散媒の蒸気圧を考慮した温度範囲で、オーブンまたは加熱式チャンバーを使用してバッチ式または連続式で行われ得る。
【0086】
本発明の一実施態様において、前記乾燥は40℃~100℃で行われ得る。前述した範囲で乾燥が起こる場合、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーが未乾燥となる部分が発生することを防止することがより容易であり得、高い温度によって多孔性高分子基材が変形されることを防止することがより容易であり得る。
【0087】
その次に、紫外線を照射する。紫外線が照射されることで、ベンゾフェノン官能基によって、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子内のアクリル系共重合体が互いに架橋される。
【0088】
紫外線照射後、前記非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子内のアクリル系共重合体が互いに架橋されることで、粒子型アクリル系バインダー高分子が高温で高い貯蔵弾性率を有して、耐熱性を確保することができる。例えば、前記粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前後の50℃での貯蔵弾性率の変化率が20%~300%であり得る。前記粒子型アクリル系バインダー高分子の紫外線照射前後の50℃での貯蔵弾性率の変化率が、前述した範囲を満たす場合、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の接着力を確保することを可能としながら、セパレーターが耐熱特性を確保することがより容易であり得る。
【0089】
前記50℃での貯蔵弾性率の変化率は、下記のように測定することができる:
50℃での貯蔵弾性率の変化率=(紫外線照射後の50℃での貯蔵弾性率-紫外線照射前の50℃での貯蔵弾性率)/(紫外線照射前の50℃での貯蔵弾性率)
【0090】
紫外線照射は紫外線架橋装置を用い、前記ベンゾフェノン官能基の含有量比といった条件を考慮して、紫外線照射時間及び照射光量を適切に調節して行われ得る。例えば、前記紫外線照射時間及び照射光量は、粒子型アクリル系バインダー高分子内の高分子鎖が十分に架橋されて、目的とする耐熱性を確保することを可能にしながら、紫外線ランプで発生する熱によってセパレーターが損傷しないようにする条件で設定され得る。また、前記紫外線架橋装置に使用される紫外線ランプは、高圧水銀ランプ、メタルランプ、ガリウムランプ、LEDランプなどから適切に選択して使用することができ、紫外線ランプの発光波長及び容量は工程に合わせて適切に選択することができる。
【0091】
本発明の一実施態様において、前記紫外線の照射量は0.1J~10J、または0.3J~6Jであり得る。
【0092】
前記紫外線の照射量は、ミルテック(Miltec)社のHタイプ(type)UVバルブ(bulb)及びUVパワーパック(power puck)と呼ばれる携帯用光量測定器を使用して測定され得る。ミルテック(Miltec)社のHタイプ(type)UVバルブ(bulb)を用いて光量を測定する場合、波長別にUVA、UVB、UVCの3種類の波長値が出るが、本発明の紫外線はUVAに該当する。UVパワーパック(power puck)をサンプルと同一の条件で、光源下にコンベア上で通過させ、このときUVパワーパック(power puck)に表示される紫外線光量数値を「紫外線の照射量」と称する。
【0093】
本発明の一実施態様において、前記紫外線の波長は200nm~400nm、または230nm~350nmであり得る。特に、前記紫外線の波長が230nm~350nmである場合、ベンゾフェノン官能基の紫外線吸収が最も活発に起こり得る。
【0094】
従来のアクリル系バインダーは、架橋度が低い場合には耐熱特性が劣っており、架橋度が高い場合には接着力が減少するという問題があった。
【0095】
本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターの製造方法は、有機無機複合多孔性層形成用スラリーに紫外線を照射する前は、粒子型アクリル系バインダー高分子が架橋されていないため、接着特性に優れて、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の接着力を確保することができる。また、有機無機複合多孔性層形成用スラリーに紫外線を照射した後は、粒子型アクリル系バインダー高分子が架橋されて耐熱性を確保することができる。これにより、最終的に製造された電気化学素子用セパレーターが、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の十分な接着力を確保しながら、耐熱特性にも優れ得る。
【0096】
前述したように、本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターの製造方法に従って電気化学素子用セパレーターが製造され得る。
【0097】
本発明の一側面に係る電気化学素子用セパレーターは、多孔性高分子基材;及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及び粒子型アクリル系バインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層;を含み、前記粒子型アクリル系バインダー高分子がベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有することを特徴とする。
【0098】
前記多孔性高分子基材及び無機物粒子については、前述した内容を参照する。
【0099】
前記有機無機複合多孔性層は、前記多孔性高分子基材の一面または両面に形成され得る。前記有機無機複合多孔性層は、無機物粒子によって多孔性高分子基材が高温で激しい熱収縮挙動を示すことを防止して、セパレーターの安全性を向上させることができる。
【0100】
前記有機無機複合多孔性層において粒子型アクリル系バインダー高分子は、前記無機物粒子が互いに結着された状態を維持できるように、これらを互いに付着(すなわち、粒子型アクリル系バインダー高分子が無機物粒子間を連結及び固定)させ、前記無機物粒子と多孔性高分子基材が結着された状態を維持できるようにする。
【0101】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子は架橋構造を有する。具体的には、ベンゾフェノン官能基を媒介としてアクリル系共重合体が互いに架橋された構造を有する。
【0102】
本発明の一実施態様において、前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子が、ベンゾフェノン官能基を含むアクリル系単量体を含むことができ、前記ベンゾフェノン官能基を含むアクリル系単量体が、ベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有することができる。例えば、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が、ベンゾフェノン官能基を含むアクリル系単量体として、4-ベンゾイルフェニルメタクリレート(4-benzoylphenyl methacrylate)単量体を含むことができる。
【0103】
本発明の一実施態様において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸単量体、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート単量体、アクリロニトリル単量体、ビニルピロリドン単量体、ビニルアセテート単量体、またはこれらのうちの2以上をさらに含むことができる。前記炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリル酸単量体、炭素数が1~20の分枝型または非分枝型の(メタ)アクリレート単量体は、アルキル(メタ)アクリレート、脂環族(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルアセテートなどを含むことができる。
【0104】
本発明の一実施態様において、前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子が、下記の化学式1の構造を有することができる:
【化4】
【0105】
前記化学式1において、m、n、o、及びpはそれぞれ1以上の整数である。
【0106】
本発明の一実施態様において、前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子の50℃での貯蔵弾性率が20,000Pa~300,000Paであり得る。前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子の50℃での貯蔵弾性率が前述した範囲を満たす場合、前記粒子型アクリル系バインダー高分子を含むセパレーターが優れた耐熱性を有することができる。例えば、前記セパレーターが、135℃で30分間放置された後の熱収縮率が、機械方向(MD、Machine Direction)に10%以下、直角方向(TD、Transverse Direction)に10%以下であり得る。
【0107】
本発明の一実施態様において、前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度が、-70℃~70℃であり得る。前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子が前述したガラス転移温度を満たす場合、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の接着力の実現がより容易であり得る。
【0108】
前記粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度は、示差走査熱量計(differential scanning calorimetry;DSC)を用いて測定することができる。具体的には、示差走査熱量計を用いて10℃/minの昇温速度(-50℃~250℃)でガラス転移温度を測定することができる。例えば、DSC 250(TA社)を用いてガラス転移温度を測定することができる。
【0109】
本発明の一実施態様において、前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子のゲル分率が10%~90%であり得る。前記粒子型アクリル系バインダー高分子のゲル分率が前述した範囲を有する場合、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が優れた耐熱性を有することができる程度の高温貯蔵弾性率を有することがより容易であり得る。例えば、前記粒子型アクリル系バインダー高分子が50℃で20,000Pa~300,000Paの貯蔵弾性率を有することが容易であり得る。
【0110】
前記架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子のゲル分率は、架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子をASTM D 2765に従って135℃のキシレン(xylene)溶液に浸し、12時間煮沸した後、残りの重さを測定して、最初の重さに対する残りの重さの百分率で計算する。
【0111】
本発明の一実施態様において、前記粒子型アクリル系バインダー高分子の平均粒径が0.001μm~10μmであり得る。前記粒子型アクリル系バインダー高分子の平均粒径が前述した範囲を満たす場合、コーティング時に加工性を確保することができ、有機無機複合多孔性層の安定性を実現することがより容易であり得る。
【0112】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層は、前記無機物粒子が充填されて互いに接触された状態で、前記粒子型アクリル系バインダー高分子によって互いに結着され、これにより、無機物粒子間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volumes)が形成され、前記無機物粒子間のインタースティシャル・ボリュームは、空き空間となって気孔を形成する構造を備えることができる。
【0113】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層の厚さは0.1μm~10μmであり得る。前記有機無機複合多孔性層の厚さが前述した範囲を満たす場合、適切な接着力と耐熱性を実現することができる。
【0114】
本発明の一実施態様において、前記有機無機複合多孔性層の平均気孔サイズは、0.001μm~30μm、または0.01μm~10μmの範囲であり得る。また、前記有機無機複合多孔性層の気孔度(porosity)は、5~95%の範囲、10~95%の範囲、20~90%の範囲、または30~80%の範囲であり得る。前記気孔度は、前記有機無機複合多孔性層の厚さ、横、及び縦から計算した体積から、前記有機無機複合多孔性層の各構成成分の重さと密度に換算した体積を差し引いた(subtraction)値に該当する。
【0115】
一方、本発明において、前記有機無機複合多孔性層の気孔度及び平均気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)画像、水銀ポロシメーター(Mercury porosimeter)、毛細管流動気孔分布測定器(capillary flow porometer)、または気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着流通法によってBET6点法で測定することができる。
【0116】
本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターは、ベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有する粒子型アクリル系バインダー高分子を含むことにより、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の接着力及び耐熱性に優れる。
【0117】
本発明の一実施態様において、前記電気化学素子用セパレーターを135℃で30分間放置した後の熱収縮率が、機械方向(MD、Machine Direction)に10%以下、または0~10%、または0~6%であり得、直角方向(TD、Transverse Direction)に10%以下、または0~10%、または0~6%であり得る。
【0118】
本発明の一実施態様において、前記電気化学素子用セパレーターは、前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔性層との間の剥離強度(peel strength)が5gf/15mm~1000gf/15mm、または10gf/15mm~300gf/15mm、または30gf/15mm以上であり得る。
【0119】
前記多孔性高分子基材と前記有機無機複合多孔性層との間の剥離強度は、両面テープを用いてガラス板の上にセパレーターを固定した後、露出された有機無機複合多孔性層にテープをしっかりと貼り付けた後、引張強度測定装置を用いてテープをはがすのに必要な力を測定して測定することができる。例えば、前記引張強度測定装置は11oyd LS-1であり得る。
【0120】
前記の電気化学素子用セパレーターを正極と負極との間に介在して電気化学素子を製造することができる。
【0121】
前記電気化学素子は、円筒型、角型、またはパウチ型などの様々な形状であり得る。
【0122】
前記電気化学素子はリチウム二次電池であり得る。前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むことができる。
【0123】
本発明の一実施態様に係る電気化学素子用セパレーターと共に適用される電極は特に制限されず、当業界で知られている通常の方法に従って電極活物質、導電材及びバインダーを含む電極活物質層が電流集電体に結着された形態で製造することができる。
【0124】
前記電極活物質の中で正極活物質の非制限的な例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、x=0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O5、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1)、またはLi2Mn3MO5(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式Liの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0125】
負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用され得る通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭素(activated carbon)、グラファイト(graphite)、またはその他の炭素類などといったリチウム吸着物質などが使用され得る。
【0126】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがある。
【0127】
本発明の一実施態様において、負極及び正極で使用される導電材は、通常、それぞれの活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ-;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0128】
本発明の一実施態様において、負極及び正極で使用されるバインダーは、活物質と導電材などとの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常、それぞれの活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。
【0129】
本発明の一実施態様において、前記電気化学素子は電解液を含み、前記電解液は有機溶媒とリチウム塩とを含むものであり得る。また、前記電解液として有機固体電解質、無機固体電解質などを使用することができる。
【0130】
前記有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0131】
前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0132】
また、前記電解液に、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含むこともできる。
【0133】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0134】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0135】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程中の適切な段階で行われ得る。すなわち、電池組み立ての前または電池組み立ての最終段階などで適用され得る。
【0136】
本発明の一実施態様において、前記電気化学素子用セパレーターを電池に適用する工程としては、一般的な工程である巻取り(winding)の他にも、セパレーターと電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0137】
本発明の一実施態様において、前記電気化学素子用セパレーターは、電気化学素子の正極と負極との間に介在し得、複数のセルまたは電極を集合させて電極組立体を構成する際に隣接するセルまたは電極の間に介在し得る。前記電極組立体は、単純スタック型、ゼリー-ロール型、スタック-フォールディング型、ラミネーション-スタック型などの様々な構造を有することができる。
【0138】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の異なる形態に変形され得、本発明の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0139】
実施例1
〔非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の製造〕
2-エチルヘキシルアクリレート単量体(LG化学)、ブチルアクリレート単量体、2-ヒドロキシエチルアクリレート単量体を75:10:15の重量比で重合した後、前記重合体と、前記重合体に対して、4-ベンゾイルフェニルメタクリレート(4-benzoylphenyl methacrylate)(LG化学)単量体10,000ppmとを60℃条件で重合して、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子(平均粒径(D50):1μm)を製造した。
【0140】
〔電気化学素子用セパレーターの製造〕
前記製造した非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子4.5重量%、無機物粒子としてAl2O3(住友(sumitomo)社、平均粒径(D50):500nm)93.5重量%、カルボキシメチルセルロース(重量平均分子量:173,000、GL Chem社)1.5重量%、及び分散剤としてポリアクリル酸塩(サンノプコ)0.5重量%を分散媒である水に投入した後、ビーズミルを用いて25℃で120分間ミリングし分散させて、有機無機複合多孔性層形成用スラリーを製造した。
【0141】
これを9μm厚のポリエチレン多孔性基材(東レ(Toray)社)の断面に2μmの厚さでコーティングした後、60℃で10分間乾燥した。
【0142】
その次に、ここに紫外線の照射量が3Jとなるように紫外線を照射して電気化学素子用セパレーターを製造した。このとき、紫外線照射強度(intensity)は、紫外線光源の80%とした。
【0143】
実施例2
〔非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の製造〕
2-エチルヘキシルアクリレート単量体(LG化学)、ブチルアクリレート単量体、2-ヒドロキシエチルアクリレート単量体を75:10:15の重量比で重合した後、前記重合体と、前記重合体に対して、4-ベンゾイルフェニルメタクリレート(4-benzoylphenyl methacrylate)(LG化学)5,000ppmとを60℃条件で重合して、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子(平均粒径(d50):1μm)を製造した。
【0144】
〔電気化学素子用セパレーターの製造〕
前記製造した非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を使用したことを除いては、実施例1と同一にして電気化学素子用セパレーターを製造した。
【0145】
比較例1
〔非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子の製造〕
2-エチルヘキシルアクリレート単量体(LG化学)、ブチルアクリレート単量体、2-ヒドロキシエチルアクリレート単量体を75:10:15の重量比で60℃条件で重合して、非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子(平均粒径(d50):500nm)を製造した。
【0146】
〔電気化学素子用セパレーターの製造〕
前記製造した非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子を使用したことを除いては、実施例1と同一にして電気化学素子用セパレーターを製造した。
【0147】
比較例2
紫外線を照射しなかったことを除いては、実施例1と同一にして電気化学素子用セパレーターを製造した。
【0148】
評価例1:粒子型アクリル系バインダー高分子の架橋前後による物性評価
実施例1~2及び比較例1で製造した粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度(Tg)、架橋前後によるゲル分率、架橋前後による貯蔵弾性率(storage modulus)を測定して下記表1に示した。
【0149】
〔紫外線照射後のガラス転移温度の測定〕
紫外線照射後の粒子型アクリル系バインダー高分子のガラス転移温度は、DSC 250(TA社)を用いて10℃/minの昇温速度(-50℃~250℃)で測定した。
【0150】
〔架橋前後によるゲル分率の測定〕
紫外線照射前の非架橋粒子型アクリル系バインダー高分子をASTM D 2765に従って135℃のキシレン(xylene)溶液に浸し、12時間煮沸した後、残りの重さを測定した後、最初の重さに対する残りの重さの百分率でゲル分率を測定した。
【0151】
紫外線照射後の架橋された粒子型アクリル系バインダー高分子をASTM D 2765に従って135℃のキシレン(xylene)溶液に浸し、12時間煮沸した後、残りの重さを測定した後、最初の重さに対する残りの重さの百分率でゲル分率を測定した。
【0152】
〔架橋前後による貯蔵弾性率の測定〕
紫外線照射前の粒子型アクリル系バインダー高分子を1Hzの一定周波数、0.01Nの予荷重力、20μmの振幅、及び120%の力トラック(force track)で、-100℃から150℃まで1℃/分の引張力で試験して貯蔵弾性率を測定した。
【0153】
紫外線照射後の粒子型アクリル系バインダー高分子を1Hzの一定周波数、0.01Nの予荷重力、20μmの振幅、及び120%の力トラック(force track)で、-100℃から150℃まで1℃/分の引張力で試験して貯蔵弾性率を測定した。
【0154】
【0155】
前記表1で確認できるように、実施例1~2で製造した粒子型アクリル系バインダー高分子は、ベンゾフェノン官能基を含むことにより、架橋前と比較して架橋後に貯蔵弾性率及びゲル分率が上昇することを確認することができた。
【0156】
一方、比較例1で製造した粒子型アクリル系バインダー高分子は、ベンゾフェノン官能基を含まないので紫外線を照射しても架橋が行われないため、紫外線照射後も紫外線照射前と比較して貯蔵弾性率及びゲル分率の上昇が微々たるものであることを確認することができた。
【0157】
評価例2:セパレーターの物性評価
実施例1~2及び比較例1~2で製造したセパレーターの厚さ、通気度、坪量、パッキング密度、多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度(peel strength)、熱収縮率、及び電気抵抗(ER)を測定して下記表2に示した。
【0158】
〔通気度測定〕
通気度(ガーレー)は、ASTM D726-94法に従って測定した。ここで使用されたガーレーは、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレー式デンソメーター(densometer)によって測定された。ここで説明された通気度値は、100ccの空気が12.2inH2Oの圧力下で、セパレーター1in2の断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間で表す。
【0159】
〔坪量測定〕
坪量(g/m2)は、セパレーターの横及び縦それぞれが1mになるようにしたサンプルを用意して、その重さを測定して評価した。
【0160】
〔パッキング密度の測定〕
下記式1に従ってパッキング密度を計算した:
パッキング密度=ローディング量/有機無機複合多孔性層の厚さ
【0161】
〔多孔性高分子基材と有機無機複合多孔性層との間の剥離強度の測定〕
両面テープを用いてセパレーターをガラス板の上に固定した後、露出された有機無機複合多孔性層にテープ(3M透明テープ)をしっかりと貼り付けた後、11oyd LS-1を用いてテープをはがすのに必要な力を測定した。
【0162】
〔熱収縮率測定〕
セパレーターを50mm(長さ)×50mm(幅)の大きさに切断して試験片を用意し、これを135℃に加熱したオーブン中に30分間維持し、その後試験片を回収し、機械方向及び直角方向に対して変化した長さを測定して計算した:
135℃での熱収縮率(%)={(収縮前の寸法-収縮後の寸法)/収縮前の寸法}×100
【0163】
〔電気抵抗測定〕
実施例1~2及び比較例1~2で製造したセパレーターを使用してコインセルを作製し、前記コインセルを常温で1日間放置した後、前記セパレーターの抵抗をインピーダンス測定法で測定した。コインセルは下記のように作製した。
【0164】
負極活物質として人造黒鉛、導電材としてデンカブラック(carbon black)、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)をそれぞれ75:5:20の重量比で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を添加して負極スラリーを製造した。
【0165】
前記負極スラリーを3.8mAh/cm2のローディング量で銅集電体にコーティング及び乾燥して負極を用意した。
【0166】
正極活物質としてLiCoO2、導電材としてデンカブラック、及びバインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)を85:5:10の重量比で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に添加して、正極活物質スラリーを用意した。前記正極活物質スラリーをシート状のアルミニウム集電体の上にコーティングし乾燥させて、最終の正極ローディング量が3.3mAh/cm2になるように、正極活物質層を形成した。
【0167】
前記のように作製された負極と正極との間に、前記実施例及び比較例それぞれのセパレーターを介在させ、非水電解液(1M LIPF6、エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC))(体積比:3:3:4)を注入してコインセルを作製した。
【0168】
【0169】
前記表2で確認できるように、実施例1~2で製造したセパレーターは、ベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有する粒子型アクリル系バインダー高分子を含むことにより、剥離強度を確保することを可能としながら、耐熱性に優れることを確認することができた。
【0170】
具体的には、実施例1~2で製造したセパレーターは、ベンゾフェノン官能基を媒介として架橋された構造を有しない粒子型アクリル系バインダー高分子を含む比較例1~2で製造したセパレーターに比べて耐熱性に優れることを確認することができた。
【国際調査報告】