(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】負極用磁性整列装置およびそれを用いた負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1393 20100101AFI20241024BHJP
【FI】
H01M4/1393
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529394
(86)(22)【出願日】2023-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2023013688
(87)【国際公開番号】W WO2024058534
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0116154
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・ユン
(72)【発明者】
【氏名】テク・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ホ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】シン・ウク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ゴン・キム
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA03
5H050GA00
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA03
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、負極の製造に用いられる磁性整列装置およびそれを用いた負極の製造方法に関するものである。上記磁性整列装置は、負極集電体上に塗布された負極スラリーのローディング量をリアルタイムで測定し、このように測定された負極スラリーのローディング量に応じて磁石部の離隔距離を調節して磁場の強度を容易に制御し得るので、製造された負極活性層に含有された炭素系負極活物質の結晶面の整列度が均一に高いという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系負極活物質を含む負極スラリーが負極集電体上に塗布された負極シートに磁力を印加し、前記炭素系負極活物質を配向させる負極の磁性整列装置であって、
走行中の電極シートの上部および下部にそれぞれ配置される第1磁石部および第2磁石部と、
前記電極シートの走行方向を基準として前記第1磁石部および前記第2磁石部の上流に配置され、前記電極シートに配置された負極スラリーのローディング量を測定するローディング量測定部と、
前記ローディング量測定部で測定された前記負極スラリーのローディング量に応じて、前記第1磁石部と前記第2磁石部との離隔距離を調節する制御部と、を含む、負極の磁性整列装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負極スラリーのローディング量に応じた前記第1磁石部と前記第2磁石部の間隔基準値が保存されたデータベースを備え、前記ローディング量測定部で測定された前記負極スラリーのローディング量に対応する間隔基準値を算出して前記第1磁石部と前記第2磁石部との離隔距離を調節する、請求項1に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項3】
前記第1磁石部および前記第2磁石部は、それぞれ走行中の負極スラリーの幅方向に配置される単一永久磁石と、前記単一永久磁石が固定される支持部と、前記支持部に連結され、走行中の電極シートに対して垂直方向に前記支持部の昇降運動を誘導する距離調節手段と、を含む、請求項1に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項4】
前記第1磁石部と前記第2磁石部との離隔距離は10mm~50mmである、請求項1に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項5】
前記第1磁石部および前記第2磁石部は、互いに反対の極を有する磁石を含む、請求項1に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項6】
前記ローディング量測定部は、ウェブゲージおよび超音波センサーのうち1種以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項7】
前記超音波センサーは、
負極スラリー表面を超音波で走査する超音波発生部と、
前記超音波発生部で発生した超音波がローディングされた電極スラリーをスキャンして戻された超音波を受信する超音波受信部と、
前記スキャンにより得られたデータから前記負極スラリーのローディング量を算出して前記制御部に伝送するデータ伝送部と、を含む、請求項6に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項8】
前記磁性整列装置は、前記第1磁石部および前記第2磁石部によって前記炭素系負極活物質が整列された負極スラリーを乾燥させる乾燥部をさらに含む、請求項1に記載の負極の磁性整列装置。
【請求項9】
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布する段階と、
請求項1に記載の負極の磁性整列装置を用いて、前記負極スラリーに含有された炭素系負極活物質を整列する段階と、
前記炭素系負極活物質が整列された負極スラリーを乾燥して負極活性層を形成する段階と、を含み、
前記炭素系負極活物質を整列する段階は、前記負極スラリーのローディング量に応じて前記負極スラリーと前記磁性整列装置の磁石部との間隔を調節することにより制御される、負極の製造方法。
【請求項10】
前記負極スラリーは、100mg/25cm
2~500mg/25cm
2のローディング量で塗布される、請求項9に記載の負極の製造方法。
【請求項11】
前記負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)が0.1~5.0であり、
[式1]
O.I=I
004/I
110
式1において、
I
004は、負極活性層に対するX線回折分光測定時の(004)結晶面を示すピークの面積を示し、
I
110は、負極活性層に対するX線回折分光測定時の(110)結晶面を示すピークの面積を示す、請求項9に記載の負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月15日付の韓国特許出願第10-2022-0116154号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、負極製造時に負極活性層に均一に負極活物質を整列させ得る磁性整列装置およびそれを用いた負極の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯型電子機器などの小型装置のみならず、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリーパックまたは電力貯蔵装置などの中大型装置にも二次電池が広く適用されている。
【0004】
このような二次電池は、正極/分離膜/負極の積層構造からなる充放電が可能な発電素子を言う。一般的に、正極はリチウム金属酸化物を正極活物質として含み、負極は黒鉛などの炭素系負極活物質を含み、充電時に正極から放出されたリチウムイオンが負極の炭素系負極活物質内部に吸蔵され、放電時に炭素系負極活物質内部に含有されたリチウムイオンが正極のリチウム金属酸化物に吸蔵され、充放電が繰り返される構成を有する。
【0005】
このとき、負極に用いられる負極活物質としては、天然黒鉛などの黒鉛材料が挙げられる。このような黒鉛は、層状構造を有し、炭素原子が網目構造を形成し、平面状に広がった層が多数積層されて形成されている。充電時には、このような黒鉛層のエッジ面(層が重なっている面)からリチウムイオンが侵入して層間に拡散する。また、放電時にはリチウムイオンが脱離して層のエッジ面から放出され得る。また、黒鉛は層の面方向の電気抵抗率が層の積層方向より低いため、層の面方向に沿って迂回した電子の伝導経路が形成される。
【0006】
これに関して、従来黒鉛を用いたリチウム二次電池において、負極の充電性能を改善するために負極に含有された黒鉛を磁場配向させる技術が提案されている。具体的には、負極形成時に磁場中で黒鉛の(002)結晶面が負極集電体に対してほぼ垂直になるように配向させ、それを固定する構成を有する。この場合、黒鉛層のエッジ面が正極活性層に向かうので、リチウムイオンの挿入脱離が円滑に行われると同時に、電子の伝導経路が短縮されて負極の電子伝導性が向上し得、これにより電池の充電性能を改善し得る。
【0007】
しかしながら、乾燥されない負極スラリーに磁場を印加して黒鉛の配向を誘導し得るが、印加される磁場の条件は、黒鉛を含有する負極スラリーのローディング量、厚さなどの多様な変数によって変わり得、実際の負極製造時にこのような変数をリアルタイムで反映することは難しいという限界があるので、黒鉛の均一な配向を具現することが難しいという問題がある。
【0008】
また、一つの負極製造装置には、規格が異なる多様なモデルの負極が製造されることになるが、製造される負極の規格に応じて製造装置に備えられた磁場印加手段、すなわち永久磁石などを制御することは容易ではない。
【0009】
したがって、負極活性層のローディング量、厚さなど製造される負極の規格および/または負極スラリーのローディング量などの負極製造条件に応じた磁場印加手段の制御が容易であり、黒鉛などの炭素系負極活物質の結晶面が均一に整列された負極活性層を製造し得る技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-0048131号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2022-0060017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、炭素系負極活物質を含む負極スラリーのローディング量に応じて磁場の強度を調節することにより、負極活性層内に含有された炭素系負極活物質の結晶面を均一に整列させ得る整列装置およびそれを用いた負極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題を解決するために、本発明は一実施形態において、
炭素系負極活物質を含む負極スラリーが負極集電体上に塗布された負極シートに磁力を印加し、炭素系負極活物質を配向させる負極の磁性整列装置であって、
走行中の電極シートの上部および下部にそれぞれ配置される第1磁石部および第2磁石部と、
電極シートの走行方向を基準として第1磁石部および第2磁石部の上流に配置され、電極シートに配置された負極スラリーのローディング量を測定するローディング量測定部と、
ローディング量測定部で測定された負極スラリーのローディング量に応じて、第1磁石部と第2磁石部との離隔距離を調節する制御部と、を含む負極の磁性整列装置を提供する。
【0013】
このとき、上記制御部は、負極スラリーのローディング量に応じた第1磁石部および第2磁石部の間隔基準値が保存されたデータベースを備え、ローディング量測定部で測定された負極スラリーのローディング量に対応する間隔基準値を算出して第1磁石部と第2磁石部との離隔距離を調節し得る。
【0014】
ここで、上記第1磁石部と第2磁石部との離隔距離は10mm~50mmに調節され得る。
【0015】
また、上記第1磁石部および第2磁石部は、それぞれ走行中の負極スラリーの幅方向に配置される単一永久磁石と、上記磁石が固定される支持部と、上記支持部に連結され、走行中の電極シートに対して垂直方向に支持部の昇降運動を誘導する距離調節手段と、を含み得る。
【0016】
また、上記第1磁石部および第2磁石部は、互いに反対の極を有する磁石を含み得る。
【0017】
また、上記ローディング量測定部は、ウェブゲージおよび超音波センサーのうち1種以上を含み得、このうち超音波センサーは、負極スラリー表面に超音波を走査する超音波発生部と、上記超音波発生部で発生した超音波がローディングされた電極スラリーをスキャンして戻された超音波を受信する超音波受信部と、上記スキャンにより得られたデータから負極スラリーのローディング量を算出して制御部に伝送するデータ伝送部と、を含み得る。
【0018】
さらに、上記磁性整列装置は、第1磁石部および第2磁石部によって炭素系負極活物質が整列された負極スラリーを乾燥させる乾燥部をさらに含み得る。
【0019】
また、本発明は一実施形態において、
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布する段階と、
本発明に係る磁性整列装置を用いて、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質を整列する段階と、
炭素系負極活物質が整列された負極スラリーを乾燥して負極活性層を形成する段階と、を含み、
炭素系負極活物質を整列する段階は、負極スラリーのローディング量に応じて負極スラリーと磁性整列装置の磁石部との間隔を調節することにより制御される負極の製造方法を提供する。
【0020】
このとき、上記負極スラリーは、100mg/25cm2~500mg/25cm2のローディング量で塗布され得る。
【0021】
また、負極集電体上に形成された負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)が0.1~5.0であり得る。
【0022】
[式1]
O.I=I004/I110
【0023】
式1において、
I004は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(004)結晶面を示すピークの面積を示し、
I110は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(110)結晶面を示すピークの面積を示す。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る磁性整列装置は、負極集電体上に塗布された負極スラリーのローディング量をリアルタイムで測定し得、このように測定された負極スラリーのローディング量に応じて磁石部の離隔距離を調節して磁場の強度を容易に制御し得る。これにより製造された負極活性層は、炭素系負極活物質の結晶面の整列度が均一に高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る磁性整列装置の概略的な構成を示す構造図である。
【
図2】負極活性層形成時の負極スラリーに対する磁場印加の有無による黒鉛のa-b軸結晶面の整列を示すイメージであって、(a)は磁場が印加されず、黒鉛の結晶面が整列されない場合であり、(b)は磁場が印加されて黒鉛の結晶面が整列された場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を詳細な説明に詳細に説明する。
【0027】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解される。
【0028】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解される。
【0029】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0030】
また、本発明において、「主成分として含む」とは、全体重量(または全体体積)に対して定義された成分を50重量%以上(または50体積%以上)、60重量%以上(または60体積%以上)、70重量%以上(または70体積%以上)、80重量%以上(または80体積%以上)、90重量%以上(または90体積%以上)、または95重量%以上(または95体積%以上)含むことを意味し得る。例えば、「負極活物質として黒鉛を主成分として含む」とは、負極活物質全体の重量に対して、黒鉛を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上含むことを意味し得、場合によっては、負極活物質全体が黒鉛からなり、黒鉛が100重量%で含まれることも意味し得る。
【0031】
また、本明細書において、「炭素系負極活物質が配向される」または「炭素系負極活物質が整列される」とは、
図2の(b)のように、負極活物質粒子を構成する炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のa-b軸結晶面)が負極集電体表面を基準として所定の傾きを有するように配列されることを意味し得る。これは、
図2の(a)のように、炭素系負極活物質の粒子自体が負極活性層内部でのみ所定の方向に整列されるが、負極集電体に対しては方向性を有しないものとは異なり得る。
【0032】
また、「炭素系負極活物質の配向性が高い」とは、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のa-b軸結晶面)が負極集電体表面を基準として所定の傾きを有する頻度が高いことを意味し得る。また、場合によっては、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の上記結晶面が負極集電体表面を基準として高い角度(例えば、垂直に近い角度、45°超、具体的には60°以上)に配列されたことを意味し得る。
【0033】
また、「炭素系負極活物質の整列度が高い」とは、本明細書で言及された「整列度(O.I)」が大きい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のa-b軸結晶面)が負極集電体表面を基準として低い角度(例えば、45°未満)に配列されたことを意味し得る。逆に、「炭素系負極活物質の整列度が低い」とは、「整列度(O.I)」が小さい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の上記結晶面が負極集電体表面を基準として高い角度(例えば、垂直に近い角度、45°以上、具体的には60°以上)に配列されたことを意味し得る。
【0034】
さらに、本明細書において「平均粒径(D50)」とは、粒子の粒径分布において積算値が50%となる粒径を意味し、それをメジアン直径(median diameter)とも言う。
【0035】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
<負極の磁性整列装置>
本発明は一実施形態において、
炭素系負極活物質を含む負極スラリーが負極集電体上に塗布された負極シートに磁力を印加し、炭素系負極活物質を配向させる負極の磁性整列装置であって、
走行中の電極シートの上部および下部にそれぞれ配置される第1磁石部および第2磁石部と、
電極シートの走行方向を基準として第1磁石部および第2磁石部の上流に配置され、電極シートに配置された負極スラリーのローディング量を測定するローディング量測定部と、
ローディング量測定部で測定された負極スラリーのローディング量に応じて、第1磁石部と第2磁石部との離隔距離を調節する制御部と、を含む負極の磁性整列装置を提供する。
【0037】
本発明に係る負極の磁性整列装置とは、二次電池に用いられる負極の製造時に適用される装置を言う。上記磁性整列装置は、炭素系負極活物質を含む負極スラリーが塗布された負極集電体の表面、すなわち負極スラリー表面に磁場を印加することにより、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質を負極集電体に対して垂直方向に整列させ得る。ここで、上記磁性整列装置は、磁場印加時に負極集電体に塗布された負極スラリーの条件、具体的には、負極スラリーのローディング量をリアルタイムで測定して走行中の負極、すなわち電極シートの上部と下部に配置された磁石部の磁場を制御し得る。これにより、上記磁性整列装置は、負極スラリー内に含有された炭素系負極活物質の均一な整列を具現し得、このように製造された負極は、電池の充放電時のリチウムイオンの移動度が増加し、抵抗が減少して充放電性能が向上する効果を示すことができる。
【0038】
このとき、負極集電体に対して垂直方向に整列されることは、炭素系負極活物質の結晶面が整列されることを意味する。具体的には、「炭素系負極活物質が負極集電体に対して垂直に整列される」とは、球形粒子を構成する炭素系負極活物質の結晶面、具体的には、黒鉛の結晶面のうち二次元構造を有する黒鉛の平面方向を示す結晶面が負極集電体表面に対して垂直に整列されて配置されたことを意味し得る。このとき、黒鉛の平面方向は、負極集電体に対して60~120°の平均傾きを有し得、好ましくは70~110°、または80~100°の平均傾きを有し得る。
【0039】
このために、本発明に係る磁性整列装置10は、
図1に示したように走行中の電極シート、すなわち負極スラリーSが塗布された負極集電体Cの上部および下部にそれぞれ配置される第1磁石部120aおよび第2磁石部120bと、電極シートの走行方向を基準として上記第1磁石部120aおよび/または第2磁石部120bの上流に配置され、電極シートの負極スラリーSのローディング量を測定するローディング量測定部110と、ローディング量測定部で測定された負極スラリーのローディング量に応じて、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を調節する制御部130とを含む構成を有する。
【0040】
上記ローディング量測定部110は、電極シートの走行方向を基準として第1磁石部120aおよび/または第2磁石部120bの上流に位置し、磁石部が印加する磁場が負極スラリーに影響を与える前に負極スラリーSのローディング量を測定する役割を果たす。
【0041】
このとき、上記ローディング量測定部110は、当業界で負極スラリーSのローディング量を測定するために通常的に使用される手段/方式であれば特に制限されずに適用され得る。好ましくは、上記ローディング量測定部110は、負極スラリーの損失および/または状態変化を防止し得る非接触式測定器を含み得る。一つの例として、上記ローディング量測定部110は、ウェブゲージおよび超音波センサーのうち1種以上を含み得る。ここで、上記超音波センサーは、発生した超音波がローディングされた負極スラリーをスキャンして戻された超音波を受信する超音波受信部と、上記スキャンによって得られたデータから負極スラリーのローディング量を算出して制御部に伝送するデータ伝送部とを含み得る。
【0042】
また、上記ローディング量測定部110は、負極スラリーSのローディング量をより精密に測定するために、走行中の負極スラリーSの幅方向に2つ以上の非接触式測定器を配置し、リアルタイムで負極スラリーのローディング量を測定し得る。このように測定されたローディング量値は制御部に伝達され、その平均値が負極スラリーのローディング量として反映され得る。この場合、ダイコーターなどを用いて塗布された負極スラリーのローディング量をより精密に測定し得るという利点がある。
【0043】
また、上記ローディング量測定部110は、電極シートの走行方向に沿って2つ以上の非接触式測定器を含み得る。具体的には、上記ローディング量測定部110は、電極シートの走行方向に沿って第1測定器111および第2測定器112が連続的に配置され得る。この場合、リアルタイムで測定される負極スラリーのローディング量に対する誤差率を下げることができる。
【0044】
上記制御部130は、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を制御する役割を果たし得る。このために、上記磁性整列装置10は、ローディング量測定部110で測定された負極スラリーSのローディング量が伝達され、間隔基準値と比較して測定された負極スラリーのローディング量に対応する間隔基準値を認識し、認識された間隔基準値を第1磁石部120aと第2磁石部120bにそれぞれ伝送して、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を調節し得る。
【0045】
このとき、上記間隔基準値は、負極スラリーのローディング量に応じた第1磁石部120aと第2磁石部120bとの間隔、すなわち離隔距離を示す値であって、この値は制御部130内に備えられたデータベース(図示せず)に保存され得る。上記間隔基準値は、既存に設置されている先行測定装置を用いて負極スラリーSのローディング量に応じた第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離に関するデータを確保し、確保されたデータのうち、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質の整列が最も有効に具現されるデータのみを選択し取り合わせてデータベースに保存された値であり得る。
【0046】
また、負極スラリーSは、同じローディング量であっても負極スラリーに含まれた炭素系負極活物質の密度(または濃度)によって炭素系負極活物質の含有量が異なり得る。また、炭素系負極活物質の含有量は負極集電体Cに対する結晶面の整列に影響を及ぼすので、整列時のその含有量に応じて磁場の強度が調節され得る。したがって、上記データベースは、負極スラリーSのローディング量に応じた第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離に関する情報と共に、負極スラリーSのローディング量を補正するための負極スラリーSのローディング量別に、負極スラリー内の炭素系負極活物質に関する密度(または濃度)情報をさらに含み得る。
【0047】
また、上記データベースに保存された間隔基準値は、上述されたように、負極スラリーSのローディング量に対する補正のために炭素系負極活物質の密度(または濃度)が磁場強度に影響を及ぼし得るので、データベースに保存された負極スラリー内の炭素系負極活物質の密度(または濃度)に関するデータが反映された値であり得る。
【0048】
さらに、上記磁性整列装置10において、第1磁石部120aと第2磁石部120bは、走行中の電極シートの上部と下部にそれぞれ配置され、負極スラリーSの表面に磁場を印加する役割を果たす。
【0049】
上記第1磁石部120aと第2磁石部120bは、それぞれ負極スラリーS表面に磁場を印加するために磁石122aおよび122bを含み、負極スラリーの上部と下部でそれぞれ昇降運動を行ってこれらの間の間隔、すなわち離隔距離を調節する手段121aおよび121bを含み得る。具体的には、上記第1磁石部120aと第2磁石部120bは、それぞれ走行中の負極スラリーの幅方向に配置される単一永久磁石122aおよび122bと、上記磁石が固定される支持部(図示せず)と、上記支持部に連結され、走行中の電極シートに対して垂直方向に支持部の昇降運動(または単一磁石の昇降運動)を誘導する距離調節手段121aおよび121bとを含み得る。
【0050】
このとき、上記距離調節手段121aおよび121bは、制御部130から間隔基準値が伝達され、伝達された間隔基準値に合わせて第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を調節するために作動し得る。
【0051】
上記第1磁石部120aと第2磁石部120bは、このような構成を有することにより、これらの離隔距離調節を通じて負極スラリーSに加えられる磁場の強度を容易に制御し得る。すなわち、第1磁石部120aと第2磁石部120bは、離隔距離が狭くなるほど負極スラリーSに加えられる磁場の強度が増加し、離隔距離が広くなるほど負極スラリーSに加えられる磁場の強度が減少し得る。
【0052】
また、上記第1磁石部120aと第2磁石部120bは、互いに対向するように負極スラリーSの幅方向に位置し、互いに反対の極を有するように配置され得る。例えば、第1磁石部120aの第1磁石122aが有するN極と、第2磁石部120bの第2磁石122bが有するS極が対向しているか、または第1磁石部120aの第1磁石122aが有するS極と、第2磁石部120bの第2磁石122bが有するN極が対向するように配置され得る。このようにN極とS極が対向している空間の間を電極シートが通る場合に、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの間で負極集電体Cに対する炭素系負極活物質の垂直整列がより効果的に行われ得る。
【0053】
また、上記第1磁石部120aは、走行する電極シートの上部に配置され、かつ負極スラリーSの炭素系負極活物質に高い磁場を印加するために、第1単一永久磁石122aにハルバッハ配列が適用され得る。ここで、ハルバッハ配列は永久磁石配列であって、磁石の磁化方向を段階的に変化させて磁場の強度が高い磁石を提供し得る。第1磁石部120aの磁石122aとしてハルバッハ配列を有する磁石を適用する場合に、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を大きく変化させなくても負極スラリーSに加えられる磁場の強度を調節し得るという利点がある。
【0054】
一方、上記第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離は10mm~50mmであり得、具体的には10mm~40mm、20mm~50mm、または15mm~45mmであり得、上記第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離は、第1単一永久磁石122aと第2単一永久磁石122bとの離隔距離と同じであり得る。本発明は、第1磁石部120aと第2磁石部120bとの離隔距離を上記範囲に調節することにより、負極スラリーSに含有された炭素系負極活物質の整列をより効率的に行い得る。
【0055】
また、上記磁性整列装置10は、第1磁石部120aと第2磁石部120bによって炭素系負極活物質が整列された負極スラリーSを乾燥させる乾燥部140をさらに含み得る。
【0056】
上記乾燥部140は、スラリーSが塗布された電極シートを引入して搬出する入出口を除く周辺を遮断する壁体(図示せず)と、電極スラリーが塗布された電極シートが引出される側の壁体に電極シートを乾燥させるための乾燥機(図示せず)とを含んで形成される。
【0057】
電極スラリーが塗布された電極シートが乾燥部140の引入口を介して入ると、反対側の壁体から供給される光、波長、熱などのエネルギーが伝達される。したがって、上記壁体は、外部に内部のエネルギーが伝達されて熱損失が発生することを防ぎ得るように断熱材からなることが好ましい。
【0058】
また、上記乾燥機はその方式が制限されるものではないが、負極活性層内に含有された炭素系負極活物質の整列を維持するために2段階の乾燥過程を行う構成を有し得る。具体的には、上記乾燥機は、光を用いて負極スラリーを乾燥させる第1乾燥機と、熱を用いて負極スラリーを乾燥させる第2乾燥機とを含み得、上記第1乾燥機と第2乾燥機は連続的に作動して負極スラリーを乾燥させ得る。
【0059】
上記第1乾燥機は、負極スラリーを仮乾燥する装置であって、上述されたように負極スラリー表面に光または波長を照射し得る。一般的に、負極スラリーを乾燥する場合は、高温の熱風を加えることによって行われ得る。しかしながら、この場合、負極スラリーの乾燥時間が長時間かかるので、負極スラリー内の炭素系負極活物質の整列が乱れ得る。また、このような問題を解決するために熱風の温度を高める場合には、スラリー表面で乾燥される傾向が大きくなるので、バインダーが揮発する溶媒によってスラリー表面に集中する現象(マイグレーション、migration)が発生し、活物質層と負極集電体との付着強度が低下するという問題がある。本発明は、このような問題なしに炭素系負極活物質の高い整列度を維持しながら負極スラリーを乾燥させ得るように、第1乾燥機を用いてエネルギーを光または波長の形態で照射することにより電極スラリーを仮乾燥させる構成を有し得る。このような第1乾燥機としては、例えば紫外線乾燥機、近赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機などを含み得、具体的には電極スラリーの均一な乾燥速度を具現するために1μm以上、より具体的には5μm以上、10μm以上、または20μm以上の波長のエネルギーを放出する遠赤外線乾燥機を含み得る。上記遠赤外線乾燥機は、通常的に当業界で適用される近赤外線乾燥機や赤外線とは異なり、光または波長が長く、エネルギー効率が高い。さらに、上記遠赤外線乾燥機は、負極スラリーの表面のみならず内部まで均一にエネルギーを加え得るので、短時間で負極スラリーと負極集電体との間の接着力を高めることができるという利点がある。
【0060】
このとき、上記第1乾燥機は、50kW/m2~1,000kW/m2の出力密度でエネルギーを放出し得、具体的には50kW/m2~500kW/m2、50kW/m2~250kW/m2、または50kW/m2、および200kW/m2の出力密度でエネルギーを放出し得る。本発明は、第1乾燥機の出力密度を上記範囲に制御することにより、過度な出力密度によって活物質層の不均一乾燥が誘導されることを防止し得る。
【0061】
また、第2乾燥機は、光または波長によって仮乾燥された負極スラリーを均一に完全に乾燥させるために熱を加え得る。このような第2乾燥機としては、当業界で通常的に適用されるものであれば特に制限されずに含み得るが、具体的には、熱風乾燥機、真空オーブン機などを単独でまたは併用するように含み得る。
【0062】
本発明に係る磁性整列装置は、上述された構成を有することにより、負極スラリーの状態をリアルタイムで反映して内部の炭素系負極活物質の整列を均一に誘導し得るので、製造される負極は、電池の充放電時のリチウムイオンの移動度が増加し、抵抗が減少して充放電性能が向上する効果を示すことができる。
【0063】
<負極の製造方法>
また、本発明は一実施形態において、
負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布する段階と、
上述の本発明に係る磁性整列装置を用いて、負極スラリーに含有された炭素系負極活物質を整列する段階と、
炭素系負極活物質が整列された負極スラリーを乾燥して負極活性層を形成する段階と、を含み、
炭素系負極活物質を整列する段階は、負極スラリーのローディング量に応じて負極スラリーと磁性整列装置の磁石部との間隔を調節することにより制御される負極の製造方法を提供する。
【0064】
本発明に係る負極の製造方法は、負極集電体上に炭素系負極活物質を含む負極スラリーを塗布し、塗布された負極スラリーの表面に上述された本発明の磁性整列装置を用いて磁場を印加することにより、負極スラリー内の炭素系負極活物質を負極集電体の表面に対して(または電極シートの走行方向に対して)垂直になるように整列させ得る。また、上記製造方法は、その後、連続的に負極スラリーの乾燥を行うことにより、炭素系負極活物質の垂直整列が維持された負極活性層を形成し得る。
【0065】
上記負極の製造方法は、上述された磁性整列装置を用いることにより負極スラリーの状態、具体的にはローディング量をリアルタイムで反映し、内部の炭素系負極活物質の整列を均一に誘導し得るので、製造される負極は、電池の充放電時のリチウムイオンの移動度が増加し、抵抗が減少して充放電性能が向上する効果を示すことができる。
【0066】
ここで、上記負極スラリーを負極集電体に塗布する段階と負極スラリーを乾燥させる段階は、当業界で通常的に適用される方式で行われ得る。
【0067】
また、上記負極スラリーを塗布する段階で塗布された負極スラリーは、負極スラリーに含まれた炭素系負極活物質の整列効率と負極スラリーの乾燥効率を考慮して一定範囲のローディング量を有するように塗布され得る。
【0068】
一つの例として、上記負極スラリーは、100mg/25cm2~500mg/25cm2のローディング量で塗布され得、具体的には150mg/25cm2~450mg/25cm2、150mg/25cm2~200mg/25cm2、200mg/25cm2~400mg/25cm2、200mg/25cm2~300mg/25cm2、250mg/25cm2~400mg/25cm2、または180mg/25cm2~420mg/25cm2のローディング量で塗布され得る。
【0069】
また、磁性整列装置を用いて負極スラリーに含有された炭素系負極活物質を整列する段階は、炭素系負極活物質の整列効率を高めるために磁場の印加条件が調節され得る。具体的には、上記炭素系負極活物質の整列度合いは、磁場の強度、印加時間などにより調節され得る。
【0070】
例えば、上記磁場は0.5~2.0Tの磁場強度で印加され得、より具体的には0.9~1.5T、1.0~1.4T、または1.0~1.2Tの磁場強度で印加され得る。
【0071】
また、上記磁場は0.1~20秒の間印加され得、より具体的には0.5~15秒、0.5~12秒、1~10秒、または2~8秒の間印加され得る。
【0072】
<リチウム二次電池用負極>
本発明は一実施形態において、
上述された本発明に係る磁性整列装置を用いて製造される負極を提供する。
【0073】
本発明により製造された負極は、炭素系負極活物質を含み、負極集電体の少なくとも一面に負極活性層を含み、かつ上記負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)が0.1~5.0であり得る。
【0074】
[式1]
O.I=I004/I110
【0075】
式1において、
I004は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(004)結晶面を示すピークの面積を示し、
I110は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(110)結晶面を示すピークの面積を示す。
【0076】
本発明に係るリチウム二次電池用負極は、負極集電体の両面に炭素系負極活物質を含む負極活性層を含む。上記負極活性層は負極の電気的活性を具現する層であって、電池の充放電時に電気化学的酸化還元反応を具現する負極活物質を含む電極スラリーを電極集電体の両面に塗布した後に、それを乾燥および圧延することにより製造される。上記負極活性層は、電池の充放電時に可逆的酸化還元反応を通じて電気的活性を具現するために、負極活物質として炭素系負極活物質を含む。具体的には、上記炭素系負極活物質とは、炭素原子を主成分とする素材を意味し、このような炭素系負極活物質としては黒鉛を含み得る。上記黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛のうちいずれか1つ以上を含み得るが、好ましくは天然黒鉛を含むか、または天然黒鉛と人造黒鉛の混合物を含み得る。例えば、上記炭素系負極活物質は、天然黒鉛または人造黒鉛を単独で含み得、場合によっては、天然黒鉛と人造黒鉛を混合した形態で含み得る。この場合、天然黒鉛と人造黒鉛の混合割合は、重量を基準として5~40:60~95、または10~30:70~90であり得る。炭素系負極活物質は、天然黒鉛と人造黒鉛を上記のような混合割合で含むことにより、負極集電体と負極活性層との接着を強固にしながら負極集電体表面に対する炭素系負極活物質の配向性を高く具現し得る。
【0077】
上記炭素系負極活物質は、複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された球形の黒鉛造粒物であることが好ましい。鱗片状黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛以外、タール・ピッチを原料としたメソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)、コークス類(生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)などを黒鉛化したものなどが挙げられる。特に、結晶性が高い天然黒鉛を複数用いて組み立てられたものが好ましい。また、1つの黒鉛造粒物は、鱗片状の黒鉛が2~100個、好ましくは3~20個が集合して形成され得る。
【0078】
このような炭素系負極活物質、具体的には、黒鉛は球形の粒子形態を有し得、このとき、黒鉛粒子の球形度は0.75以上であり得、例えば0.75~1.0、0.75~0.95、0.8~0.95、または0.90~0.99であり得る。ここで、「球形化度」とは、粒子の中心を通る任意の直径のうち、最も長さが短い直径(短径)と最も長さが長い直径(長径)の割合を意味し得、球形化度が1である場合に、粒子の形態は球形であることを意味する。上記球形化度は、粒子形状分析器を介して測定され得る。本発明は、炭素系負極活物質の形状を球形に近く具現することにより負極活性層の電気伝導度を高く具現し得るので、電池の容量を改善し得、負極活物質の比表面積を増加させ得るので、負極活性層と集電体との間の接着力を向上させ得るという利点がある。
【0079】
また、上記炭素系負極活物質は、0.5μm~10μmの平均粒径(D50)を示すことができ、具体的には2μm~7μm、0.5μm~5μm、または1μm~3μmの平均粒径(D50)を示すことができる。
【0080】
球形天然黒鉛の平均粒径は、リチウムイオンの充電による粒子の膨張を防ぎ得るように粒子それぞれに対する膨張方向の無秩序度を最大化するために粒径を小さく作るほど有利であり得る。しかしながら、天然黒鉛の粒径が0.5μm未満である場合に、単位体積当たりの粒子数の増加により多量のバインダーが必要となり、球形化度および球形化収率が低くなることがある。一方、最大粒径が10μmを超えると膨張が激しくなり充放電が繰り返されることによって粒子間結着性と粒子と集電体との結着性が低下することになり、サイクル特性が大きく減少することがある。
【0081】
このような炭素系負極活物質を含む負極活性層は、炭素系負極活物質の整列度合いが一定に制御され得る。本発明は、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の結晶面を一定方向に整列させることによって電極抵抗をより低くし得、これにより負極活性層の充電性能をより向上させ得る。
【0082】
ここで、上記炭素系負極活物質(例えば、黒鉛)の整列度合い(すなわち、配向性)は、黒鉛に対する結晶面分析により判断され得る。
【0083】
一つの例として、上記負極活性層は、炭素系負極活物質が負極集電体に対して垂直に整列され、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時に下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)が0.1~5.0を満たし得る。
【0084】
[式1]
O.I=I004/I110
【0085】
式1において、
I004は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(004)結晶面を示すピークの面積を示し、
I110は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(110)結晶面を示すピークの面積を示す。
【0086】
上記炭素系負極活物質の結晶面配向は、X線回折分光分析などの炭素系負極活物質に対する結晶面分析によって判断され得る。上記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)は、X線回折測定時の炭素系負極活物質の結晶構造が整列された方向、具体的には、炭素系負極活物質の二次元平面構造を示すa-b軸結晶面が負極集電体表面に対して整列された程度を示す指標となり得る。例えば、負極活性層が炭素系負極活物質として黒鉛を含む場合に、負極活性層に対するX線回折分光分析時の黒鉛に対するピークである2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°、および77.5±0.2°を示す。これは、負極活性層に含有された黒鉛の結晶面のうち、(002)面、(100)面、(101)R面、(101)H面、(004)面、(110)面を示す。一般的に黒鉛の場合に、a軸およびb軸面にグラフェン層が置かれ、このようなグラフェン層がc軸に沿って積層され、ヘキサゴナル(hexagonal)またはロンボヘドラル(rhombohedral)の結晶構造を有することになる。ここで、上記結晶面ピークは、このような結晶構造の面特性を示すピークである。また、2θ=43.4±0.2°に現れるピークは、炭素系物質の(101)R面と電流集電体、例えばCuの(111)面に該当するピークが重複(overlap)して現れたとも考えられる。
【0087】
本発明は、(110)面を示す2θ=77.5±0.2°でのピークと、(004)面を示す2θ=54.7±0.2°でのピークの面積割合、具体的には、上記ピークの強度を積分して得られる面積の割合で黒鉛の整列度(O.I)を測定し得る。また、X線回折はターゲット線としてCuKα線を用いて測定したものであり、ピーク強度解像度(Peak intensity resolution)の向上のために、モノクロメーター(monochromator)装置でターゲット線を抽出して測定した。このとき、測定条件は2θ=10°~90°およびスキャンスピード(°/s)が0.044~0.089、ステップサイズ(step size)は0.026°/ステップの条件で測定した。また、2θ=54.7±0.2°に現れる(004)面は、黒鉛層の二次元平面構造が積層された層状構造の厚さ方向特性(c軸方向特性)を示し、2θ=77.5±0.2°に現れる(110)面は、積層された黒鉛層の平面特性(a-b軸方向特性)を示す。したがって、黒鉛層平面の厚さ方向特性を示す(004)面ピークが小さいほど、また、黒鉛層の平面特性を示す(110)面ピークが大きいほど、黒鉛の平面が負極集電体表面に対して高い角度で整列されることを示す。すなわち、上記整列度(O.I)は、その値が0に近いほど、負極集電体表面に対する黒鉛層表面の角度または傾きが90°に近く、その値が大きくなるほど、負極集電体表面に対する傾きが0°または180°に近いことを意味し得る。このような側面で、本発明に係る負極活性層は、炭素系負極活物質が負極集電体に対して垂直に整列されるので、磁場が印加されない場合と比較して黒鉛の整列度(O.I)が低いことがあり得る。具体的には、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度は0.1~5.0であり得、より具体的には0.1~4.5、0.1~4.0、0.1~3.5、0.1~3.0、0.1~2.5、0.1~2.0、0.1~1.0、0.5~2.9、1.0~4.5、1.1~4.1、1.5~4.0、1.1~3.5、1.5~3.0、0.9~2.9、0.1~2.4、0.1~2.1、0.1~1.9、2.0~5.0、2.0~4.0、2.1~3.9、2.5~3.9、3.1~4.5、0.1~0.6、0.15~0.6、0.15~0.5、0.2~0.5、0.2~0.4、0.25~0.45、または0.3~0.5であり得る。
【0088】
他の一つの例として、上記負極活性層は、近端X線蛍光分光計(NEXAFS)測定時に、下記式2による整列度(S60/0)が1.0以下で小さいことがあり得る。
【0089】
[式2]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0090】
上記式2において、S60/0は近端X線蛍光分光計(NEXAFS)測定時の入射角0°のときのピーク強度割合(I0B/A)に対する入射角60°のときのピーク強度割合(I60B/A)の値を示す。
【0091】
近端X線吸収スペクトルは近端NEXAFS(Near Edge X-ray Absorbance Fine Structure、NEXAFS)スペクトルとも呼ばれるが、近端X線吸収スペクトルは占有状態である炭素原子の内殻準位(1s軌道)に存在する電子(K殻内殻電子)が照射されたX線のエネルギーを吸収し、非占有状態である多様な空準位に励起されることにより観測される吸収スペクトルである。
【0092】
ここで、内殻準位にある電子が励起される空準位としては、天然黒鉛における結晶性(基底面や配向性など)を反映するsp2結合の反結合性軌道に帰属されるπ*準位、結晶性の乱れ(エッジ面や無配向性など)を反映するsp3結合の反結合性軌道に帰属されるσ*準位、またはC-H結合やC-O結合などの反結合性軌道に帰属される空準位などがある。sp2結合による六角網構造が積層された結晶構造を有する黒鉛において、六角網面の平面(後述のAB面)となっているのが基底面であり、六角網の端部が現れている面がエッジ面である。エッジ面では、炭素は末端に-C=Oなどが存在している可能性があるので、sp3結合割合が高いことがあり得る。
【0093】
また、近端NEXAFSスペクトルは、化合物を構成する原子間の結合エネルギーを測定するX線光電子分光(XPS)とは異なり、励起された内殻電子を含む炭素原子付近の局所構造を反映すると共に、測定された黒鉛粒子の表面構造のみを反映し得る。したがって、本発明は近端NEXAFSスペクトルを用いることにより、球形粒子をなす炭素系負極活物質、すなわち黒鉛の結晶状態(配向性)を測定し得る。
【0094】
一方、近端NEXAFSスペクトルの測定は、試料に対して入射角が固定された放射光を試料に照射し得、照射する放射光のエネルギーを280eV~320eVまで走査しながら、試料から放出された光電子を補完するために試料に流れ込む試料電流を計測する全体電子数量法により行われ得る。具体的には、本発明は、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度をより定量的に測定するために、式2で表される整列度(S60/0)を測定し得る。
【0095】
一般的に放射光は直線偏光性が高いため、放射光の入射方向が表面黒鉛結晶のsp2結合(-C=C-)の結合軸方向に平行である場合に、C1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度が大きくなり、逆に直交する場合に吸光ピーク強度が小さくなる。そのため、高配向性黒鉛(例えば、HOPG、単結晶黒鉛)は表面近傍においてsp2結合を形成する黒鉛結晶が高度に整列されているので、試料に対する放射光の入射角を変えるとスペクトル形状が大きく変化する。これに対し、低配向性黒鉛(例えば、非黒鉛質の炭素蒸着膜)は、表面近傍においてsp2結合を形成する炭素材料の配向性が低いため、試料に対する放射光の入射角を変えてもスペクトル形状はほとんど変化しない。
【0096】
また、上記負極活性層は、負極活性層表面に対して異なる入射角で近端NEXAFSスペクトル(すなわち、近端X線蛍光分光計(NEXAFS))測定時に、任意の第1吸収ピーク強度(IA)に対する任意の第2吸収ピーク強度(IB)の割合(IB/A)が入射角に応じて変わり得るが、これは、測定された負極活性層に含有された炭素系負極活物質が規則的に並べられて配置(すなわち、高配向性)されたことを意味し得る。一方、上記割合Iが入射角に応じて変化しない場合に、測定された負極活性層に含有された炭素系負極活物質は、不規則に並べられて配置(すなわち、低配向性)されることを意味し得る。
【0097】
そこで、本発明は、負極活性層に含有される炭素系負極活物質の整列度合いを測定するために、近端NEXAFSスペクトル(すなわち、近端X線蛍光分光計(NEXAFS))を測定し、かつ負極活性層に対する異なる入射角(0°および60°)で放射光を入射させ、各入射角別にC1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度に対するC1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度の割合(IB/A)を求めた後に、入射角(60°および0°)間の強度割合の割合(S60/0=I60B/A/I0B/A)を算出することにより、炭素系負極活物質の整列度合いを定量的に測定し得る。
【0098】
すなわち、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度合いは、i)式3で表されるように、入射角60°で測定されたC1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度(I60A)に対するC1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度(I60B)の割合(I60B/A)を算出し、ii)式4で表されるように、入射角0°で測定されたC1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度(I0A)に対するC1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度(I0B)の割合(I0B/A)を算出した後に、iii)式2で表されるように、これらの割合(S60/0=I60B/A/I0B/A)を求めることによって評価され得る。
【0099】
[式3]
I60B/A=I60B/I60A
【0100】
[式4]
I0B/A=I0B/I0A
【0101】
式3と式4において、
I60Aは、入射角60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を示し、
I60Bは、入射角60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を示し、
I0Aは、入射角0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を示し、
I0Bは、入射角0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を示す。
【0102】
ここで、上記S60/0は、1に近いほど黒鉛結晶の整列性が低く、0に近いほど黒鉛結晶の整列性が高いことを意味し得る。本発明に係る負極活性層は、式2による値(S60/0)が1.0以下を満たし得、より具体的には0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.1~0.7、または0.3~0.7を満たし得る。
【0103】
さらに、上記負極活性層は、負極集電体に対する炭素系負極活物質の垂直整列が均一に誘導され、単位面積で任意的に測定された複数の炭素系負極活物質の整列度偏差が低いことがあり得る。
【0104】
一つの例として、上記負極活性層は、負極活性層の単位面積(10cm×10cm)に存在する任意の3地点に対するX線回折分光(XRD)測定時に式1で表される炭素系負極活物質の整列度偏差は平均値を基準として5%未満であり得、具体的には4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であり得る。
【0105】
他の一つの例として、上記負極活性層は、負極活性層の単位面積(10cm×10cm)に存在する任意の3地点に対する近端X線蛍光分光計(NEXAFS)測定時に式2で表される炭素系負極活物質の整列度偏差は平均値を基準として5%未満であり得、具体的には4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であり得る。
【0106】
一方、本発明に係る負極活性層は、負極活物質と共に、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0107】
上記導電材は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを1種以上含み得るが、これに制限されるものではない。
【0108】
一つの例として、上記負極活性層は、導電材としてカーボンナノチューブや炭素繊維を単独で含有するかまたは併用し得る。
【0109】
このとき、上記導電材の含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1~10重量部であり得、具体的には0.1~8重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、または2~6重量部であり得る。本発明は、導電材の含有量を上記のような範囲に制御することにより、低い含有量の導電材により負極の抵抗が増加して充電容量が低下することを防止し得る。また、本発明は、導電材の含有量を上記範囲に制御することにより、過量の導電材により負極活物質の含有量が低下して充電容量が低下するか、または負極活性層のローディング量増加により急速充電特性が低下するという問題を予防し得る。
【0110】
また、上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、電極の電気的物性を低下させない範囲で好適に適用され得るが、具体的には、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレンブタジエンゴムおよびフッ素ゴムのうちいずれか1つ以上を含み得る。
【0111】
上記バインダーの含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1~10重量部であり得、具体的には0.1~8重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、または2~6重量部であり得る。本発明は、負極活性層に含有されたバインダーの含有量を上記範囲に制御することにより、低い含有量のバインダーにより活性層の接着力が低下するか、または過量のバインダーにより電極の電気的物性が低下することを防止し得る。
【0112】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して1~500μmで好適に適用され得る。
【0113】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0114】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0115】
<実施例1および2.リチウム二次電池用負極の製造>
図1に示したような構造を有する本発明の磁性整列装置を用いて負極を製造し、かつローディング測定部に備えられる非接触式測定器が導入された個数を表1のように調節してリチウム二次電池用負極を製造した。
【0116】
具体的には、まず天然黒鉛を負極活物質として準備し、負極活物質97重量部とスチレンブタジエンゴム(SBR)3重量部を水と混合して負極スラリーを形成した後に、ロールツーロール移送(移送速度:3m/min)されている銅薄板上にダイコーターを用いて負極スラリーをキャスティングした。
【0117】
このとき、上記塗布された負極スラリーの平均ローディング量が200mg/25cm2となるように20秒間負極スラリーを銅薄板にキャスティングし、連続的に塗布された負極スラリーの平均ローディング量が400mg/25cm2となるように20秒間負極スラリーを銅薄板にキャスティングした。
【0118】
その後、塗布された負極スラリーがローディング量測定部を通って第1磁石部と第2磁石部との間を通過するように銅薄板を移動させることによって負極スラリーに磁場を印加した。
【0119】
このとき、上記ローディング量測定部は非接触式測定器としてウェブゲージを含み、上記共焦点測定器は銅薄板の走行方向に沿って下記表1に示した個数分含まれた。また、ローディング量測定部で測定された負極スラリーのローディング量は制御部に伝達され、上記制御部は、データベースに保存された間隔基準値と比較して測定された負極スラリーローディング量に対応する間隔基準値を認識し、認識された間隔基準値を第1磁石部と第2磁石部にそれぞれ伝送した。
【0120】
また、上記第1磁石部と第2磁石部は、距離調節手段を調節して支持部に固定された第1単位永久磁石と第2単位永久磁石との離隔距離を制御部から伝送された間隔基準値に合わせて調整した。ここで、第1単位永久磁石と第2単位永久磁石との離隔距離は、制御部から伝送された間隔基準値に応じて20~40mmに調節され、印加される磁場の強度は1.0Tであった。
【0121】
【0122】
負極スラリーに磁場が印加された銅薄板を乾燥部に移動させて負極スラリーを乾燥させることにより、リチウム二次電池用負極を製造した。
【0123】
<比較例1.リチウム二次電池用負極の製造>
ローディング量測定部と制御部とを含まない磁性整列装置を使用したことを除いて、実施例1と同一の方法を行ってリチウム二次電池用負極を製造した。このとき、第1磁石部の第1単位永久磁石と第2磁石部の第2単位永久磁石との離隔距離は30mmに調節された。
【0124】
<実験例.炭素系負極活物質の整列均一度の評価>
本発明に係る磁性整列装置の性能として、炭素系負極活物質の整列均一度を評価するために下記の実験を行った。
【0125】
具体的には、実施例および比較例で製造された各負極において、(1)負極スラリーの平均ローディング量が200mg/25cm2でキャスティング領域内に存在する第1単位領域(10cm×10cm)と、(2)負極スラリーの平均ローディング量が400mg/25cm2でキャスティング領域内に存在する第2単位領域(10cm×10cm)を任意的に設定した。
【0126】
その後、設定された第1単位領域と第2単位領域に対して、それぞれ任意の3地点に対するX線回折分光(XRD)と近端X線蛍光分光計(NEXAFS)を行ってスペクトルを測定した。
【0127】
このとき、上記近端X線蛍光分光計(NEXAFS)およびX線回折(XRD)の測定条件は下記の通りである。
【0128】
(1)近端X線蛍光分光計(NEXAFS)
- 加速電圧:1.0GeV~1.5GeV
- 蓄積電流:80~350mA
- 入射角:60°または0°
【0129】
(2)X線回折(XRD)
- ターゲット:Cu(Kα-線)黒鉛単色化装置
- スリット(slit):発散スリット=1度、受信スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
【0130】
上記条件で測定されたスペクトルから、式1および式2による各炭素系負極活物質のi)平均整列度(すなわち、各地点が有する整列度(O.I)の平均値)とii)各地点と平均整列度の誤差率をそれぞれ算出した。その結果を表2に示した。
【0131】
[式1]
O.I=I004/I110
【0132】
式1において、
I004は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(004)結晶面を示すピークの面積を示し、
I110は、負極活性層に対するX線回折分光(XRD)測定時の(110)結晶面を示すピークの面積を示す。
【0133】
[式2]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0134】
式2において、
S60/0は、近端X線蛍光分光計(NEXAFS)測定時の入射角0°のときのピーク強度割合(I0B/A)に対する入射角60°のときのピーク強度割合(I60B/A)の値を示す。
【0135】
【0136】
上記表2に示したように、本発明に係る磁性整列装置を用いて製造された負極は、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度合いが高いことがわかった。また、製造された負極の負極活性層は、任意の3地点の整列度とそれらの平均値の誤差率が3%以下と低いことが確認された。これは、本発明に係る磁性整列装置が炭素系負極活物質を高い整列度で均一に負極集電体上に整列させることを意味する。
【0137】
これらの結果から、本発明に係る磁性整列装置は、負極スラリーのローディング量をリアルタイムで測定し、第1磁石部と第2磁石部の間隔に反映することにより、負極集電体に対して高い整列度で均一に炭素系負極活物質を整列させ得ることがわかる。
【0138】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者または当該技術分野に通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させ得ることを理解し得る。
【0139】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の発明の概要に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0140】
10:磁性整列装置
20:移送部
30:コーティング部(ダイコーター)
110:ローディング量測定部
111:第1ウェブゲージ
112:第2ウェブゲージ
120a:第1磁石部
121a:第1距離調節手段
122a:第1単一永久磁石
120b:第2磁石部
121b:第2距離調節手段
122b:第2単一永久磁石
130:制御部
140:乾燥部
C:負極集電体
S:負極スラリー
【国際調査報告】