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特表2024-540500強力な適応免疫反応を誘導し且つ母体移行抗体の干渉を克服する組換え口蹄疫O型ウイルス、及びそれを含む口蹄疫ワクチン組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】強力な適応免疫反応を誘導し且つ母体移行抗体の干渉を克服する組換え口蹄疫O型ウイルス、及びそれを含む口蹄疫ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/41 20060101AFI20241024BHJP
   A61K 39/135 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 14/09 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N15/41 ZNA
A61K39/135
A61K39/395 S
A61K49/00
A61P31/14
A61P37/04
C12N7/01
C12N7/02
C07K14/09
C07K1/14
C12N15/63 Z
G01N33/569 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529411
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2022017801
(87)【国際公開番号】W WO2023090771
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158591
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158592
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520130373
【氏名又は名称】リパブリック オブ コリア(アニマル アンド プラント クオレンティン エージェンシー)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA(ANIMAL AND PLANT QUARANTINE AGENCY)
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】イ ミンジャ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンミ
(72)【発明者】
【氏名】シン セヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム スミ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンヒョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA03
4C085AA19
4C085BA54
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085KA01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA00
(57)【要約】
本発明は、組換え口蹄疫ウイルス、前記ウイルスから分離・精製された抗原を含む口蹄疫ワクチン組成物に関するものであり、ワクチン接種初期、強力な細胞性免疫反応の誘導を介して体液性免疫反応を同時に誘導する一方、母体移行抗体(MDA、maternally-derived antibody)の存在時にB細胞受容体の刺激を介して母体移行抗体の干渉克服及び能動免疫を可能にしたワクチン組成物と、該組成物を用いた口蹄疫予防又は治療方法を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8の配列を有する組換えプラスミド。
【請求項2】
請求項1に記載の組換えプラスミドから製造された免疫増強組換え口蹄疫O型ウイルス。
【請求項3】
請求項2に記載の免疫増強組換え口蹄疫ウイルスを精製、分離して得た、免疫増強組換え口蹄疫O型ウイルス抗原。
【請求項4】
請求項2に記載の免疫増強組換え口蹄疫ウイルス又は請求項3に記載の免疫増強組換え口蹄疫ウイルス抗原を含む口蹄疫ワクチン組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の免疫増強組換え口蹄疫ウイルス又は請求項3に記載の免疫増強組換え口蹄疫ウイルス抗原を含む口蹄疫診断キット。
【請求項6】
請求項5に記載の口蹄疫診断キットを用いた口蹄疫診断方法。
【請求項7】
請求項4に記載の口蹄疫ワクチン組成物を用いた口蹄疫予防又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強力な適応(細胞性・体液性)免疫反応の誘導によって母体移行抗体の干渉を克服するために、口蹄疫O型ワクチン株O1 Manisa-O PanAsia2(O1 M-O PA2)に「C3d遺伝子(B細胞エピトープ)」を挿入した免疫増強組換え口蹄疫ウイルス、免疫原性が増加した口蹄疫ウイルス不活化抗原の分離・精製方法、及び母体移行抗体(maternally-derived antibody、MDA)干渉克服用口蹄疫ワクチン組成物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
口蹄疫(foot-and-mouth disease、FMD)ワクチンは、ウシとブタの両方で定期的、反復的なワクチン接種が要求され、このようなワクチン接種によって、母体から誘導された抗体が胎盤又は初乳摂取を介して母体移行抗体の形で子ウシ又は子ブタに伝達されて受動免疫(passive immunity)を形成する。母体移行抗体は、子ウシ及び子ブタで初期口蹄疫ウイルス感染の際に、宿主(host)防御効果を示す一方、持続力が短く、若い週齢の動物への口蹄疫ワクチンの早期接種時に、受動免疫による干渉(形質細胞(plasma cell)、記憶B細胞から抗原特異的抗体の生産を阻害することにより免疫学的寛容メカニズムを招き)を引き起こすことにより、ワクチンの効能阻害及び能動免疫(active immunity)形成を阻害する悪影響を及ぼす。現在、口蹄疫ワクチン予防接種プログラムは、子ウシや子ブタの場合、母体移行抗体のレベルが低下する時点である2ヶ月齢以後に接種することを勧告している。
【0003】
個体によって母体移行抗体のレベル、力価及び半減期などが異なるため、現場で適切な口蹄疫ワクチン接種時期を決定することに困難が伴う。また、商業的に用いられている現在の口蹄疫ワクチンは、一般に、母体移行抗体による干渉の克服が難しいため、ワクチン接種による能動免疫形成が阻害されるという限界点がある。
【0004】
一方、口蹄疫ウイルス(FMD virus、FMDV)は、アフトウイルス(Aphthovirus)属(ピコルナウイルス(Picornaviridae)科に属し、O、A、C、Asia1、SAT1、SAT2及びSAT3の7つの血清型に分類される。VP1タンパク質に該当するFMDVゲノム領域で少なくとも85%のヌクレオチド同一性を共有するウイルスは、単一の血清型を形成する。これらは、一般に地理的に制限されており、トポタイプに区分される。FMDVは、高い遺伝的、抗原的変異を示すため、一つの血清型により誘導された抗体が他の血清型を中和することができず、ワクチン接種の際に交叉防御が発揮されない。それにも拘らず、ワクチン接種は、口蹄疫発生国で病気を予防及び統制するために広く用いられている。
【0005】
B細胞の活性化経路は、次のように大きく3つに分けられる:1)T細胞依存性経路、2)T細胞非依存性タイプI経路、3)T細胞非依存性タイプII経路。これらの中でも、T細胞依存性経路は、TCR/MHC、CD40L/CD40などを介してB細胞が活性化される典型的な経路であり、T細胞非依存性経路タイプIは、PAMP(pathogen-associated molecular pattern)がパターン認識受容体(Pattern-recognition receptors、PRRs)を刺激してB細胞を直接活性化させる場合であって、宿主内で稀に起こる経路として知られている。最後に、T細胞非依存性タイプII経路は、B細胞受容体(receptor)であるCD21、CD19、及びCD81などを抗原又はC3dなどのB細胞エピトープが刺
激することによりB細胞を活性化させる経路である。宿主内に母体移行抗体が存在する場合、免疫耐性及び寛容(immune tolerance)メカニズムによって、T細胞への抗原提示、細胞性免疫反応の誘導及びT細胞依存性経路によるB細胞の活性化が困難であるため、T細胞非依存性経路を介してB細胞を直接活性化させるか、或いは強力な細胞性免疫反応の誘導を介してT細胞を持続的に刺激しなければならない。
【0006】
したがって、本発明では、現在市販されている口蹄疫ワクチンの主な限界点として指摘されている母体移行抗体の干渉現象を克服するために、B細胞エピトープであるC3dを介してB細胞表面の受容体を刺激することにより母体移行抗体の干渉を克服しようと候補物質としてC3dの活性部位を選定したとともに、O PA2 P1バックボーン(VP1部位)にこれを挿入してFMDV O型の母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン株、それから分離・精製した免疫増強抗原、及びそれを含む母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン組成物を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2234754号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lee, S. Y. et al. Rapid engineering of foot-and-mouth disease vaccine and challenge viruses. J. Virol. 91, e00155-00117 (2017)
【非特許文献2】Lee, M. J. et al. Advanced foot-and-mouth disease vaccine platform for stimulation of simultaneous cellular and humoral immune responses. Vaccines (Basel) 8, 254 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した背景の下で、本発明は、現在市販されている口蹄疫ワクチンの限界点である母体移行抗体の干渉現象を克服するために、B細胞エピトープであるC3dを介してB細胞表面の受容体を直接刺激することにより母体移行抗体の干渉を克服しようとした。
【0010】
そこで、本発明の目的は、現在商用されている口蹄疫ワクチンの限界点として指摘されている母体移行抗体の干渉現象による口蹄疫ワクチン媒介免疫反応誘導の困難を克服するために、口蹄疫O型ワクチン株O1 Manisa-O PA2-R(O1 M-O PA2、以下「O PA2」という。)に「C3d遺伝子(B細胞エピトープ)」を挿入した免疫増強組換え口蹄疫ウイルス、前記ウイルスから分離・精製された抗原を含む口蹄疫ワクチン組成物、及び前記組換え口蹄疫ウイルスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、組換え口蹄疫ウイルス、前記組換え口蹄疫ウイルスから分離・精製された抗原を含む口蹄疫ワクチン組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記組換え口蹄疫ウイルスの製造方法、及び前記組換え口蹄疫ウイルスから抗原を分離・精製する方法を提供する。
【0013】
本発明による組換え口蹄疫ウイルスは、口蹄疫ウイルスの遺伝子が挿入された組換えプラスミドを介して製造でき、前記組換え口蹄疫ウイルスは、限定されないが、口蹄疫ウイルスO型又はA型であり得る。
【0014】
口蹄疫O型組換えウイルスは、配列番号8の組換えプラスミドを介して製造でき、口蹄
疫A型組換えウイルスは、配列番号11の組換えプラスミドを介して製造できる。
【0015】
前記組換え口蹄疫ウイルスを製造するために、バックボーン(backbone)に挿入する候補物質としてC3dの活性部位(active site)(13アミノ酸)を選定し、前記C3dの活性部位は、配列番号4(これをコードする塩基配列は、配列番号5)を有する。
【0016】
これをO PA2又はA22 P1バックボーン(VP1部位)に挿入して、FMDV
O型であるO PA2-C3d、FMDV A型であるA22-C3dなどの母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン用組成物を提供する。
【0017】
また、これから分離・精製した免疫増強抗原、及びそれを含む母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン組成物を提供する。
【0018】
また、前記組換え口蹄疫ウイルス、又は前記組換え口蹄疫ウイルスから分離・精製された抗原を含むワクチン組成物を用いて口蹄疫を予防又は治療する方法を提供する。
【0019】
また、前記組換え口蹄疫ウイルス、又は前記組換え口蹄疫ウイルス抗原を含む口蹄疫診断キット又は口蹄疫診断キット組成物を提供する。
【0020】
また、前記口蹄疫診断キット又は口蹄疫診断キット組成物を用いた口蹄疫診断方法を提供する。
【0021】
本発明の組換え口蹄疫ウイルスは、O型又はA型を基礎とする。
【0022】
O型は、限定されないが、本発明の一実施形態ではO1-Manisaであり得る。
【0023】
A型は、限定されないが、本発明の一実施形態では亜型のA22、好ましくはA22/Iraq/24/64であり得る。
【0024】
本発明において、用語「プラスミド(plasmid)」は、適切な宿主内でDNAを発現させることができる適切な調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA調製物を意味する。適切な宿主に形質転換されると、プラスミドは、宿主ゲノムとは無関係に複製及び機能することができるか、或いは一部の場合にゲノム自体に統合されることができる。プラスミドが現在ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本発明の明細書において、「プラスミド」及び「ベクター(vector)」は、ときによっては相互交換的に使用される。
【0025】
本発明の目的上、プラスミドベクターを利用することが好ましい。このような目的に使用できる典型的なプラスミドベクターは、(a)宿主細胞当たり数百個のプラスミドベクターを含むように複製が効率的に行われるようにする複製開始点、(b)プラスミドベクターで形質転換された宿主細胞が選抜され得るようにする選別標識、及び(c)外来DNA断片が挿入できる制限酵素切断部位を含む構造を持っている。適切な制限酵素切断部位が存在しなくても、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)又はリンカー(linker)などを使用すると、ベクターと外来DNAを容易にライゲーション(ligation)することができる。
【0026】
本発明の組換えベクター及び組換え口蹄疫ウイルスは、通常の遺伝子操作法、形質転換法によって製造でき、少ない量で形成されたウイルスを細胞培養を介した連続継代で適切な
量のウイルスを得ることができる。
【0027】
前記細胞は、イヌ科動物、ネコ科動物、イノシシ科動物、ウシ科動物、シカ科動物、キリン科動物、ペッカリー科動物、ラクダ科動物、カバ科動物、ウマ科動物、バク科動物、サイ科動物、イタチ科、ウサギ科、げっ歯類及び霊長類の細胞よりなる群から選択された1種以上の細胞に由来するものであってよく、好ましくは、ヤギ舌細胞(ZZ-R)及びハムスター腎細胞(BHK-21)、黒ヤギ腎細胞(BGK)、ブタ腎細胞(IBRS-2)及びウシ腎細胞(LFBK)よりなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0028】
本発明の口蹄疫ワクチン組成物は、本発明の組換え口蹄疫ウイルス又は前記組換えウイルスから分離・精製された抗原を有効成分として含む。
【0029】
本発明における口蹄疫ワクチン組成物、口蹄疫診断キット、口蹄疫診断キット組成物に含まれる組換え口蹄疫ウイルスは、組換え口蹄疫ウイルスO型、A型それぞれ、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0030】
また、本発明における口蹄疫ワクチン組成物、口蹄疫診断キット、口蹄疫診断キット組成物に含まれる組換え口蹄疫ウイルスから分離・精製された抗原は、組換え口蹄疫ウイルスO型、A型にそれぞれ由来したもの、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
前記ワクチン組成物を含むワクチンは、生ワクチン、弱毒化ワクチン、又は不活性化ワクチンであり得る。
【0032】
前記組換え口蹄疫ウイルス又は前記組換えウイルスから分離・精製された抗原を含むワクチン組成物は、1/640~1/10doseの用量で投与でき、好ましくは、1/40~1/10doseの用量で投与できる。
【0033】
前記ワクチン組成物は、ヒトを除いたブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ及び野生の反芻類などの偶蹄類に投与できる。
【0034】
また、前記ワクチン組成物は、当技術分野で通常許容される担体、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤などをさらに含むことができる。
【0035】
また、前記ワクチン組成物は、様々な形態で個体に投与(又は注入)できる。投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮下内注射、腹膜内注射、鼻腔投与、口腔投与、経皮投与又は経口投与よりなる群から選択されたいずれかの方法で行われることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、組換え口蹄疫ウイルス、前記ウイルスから分離・精製された抗原を含む口蹄疫ワクチン組成物に関するものであり、ワクチン接種初期、強力な細胞性免疫反応の誘導によって体液性免疫反応を同時に誘導する一方、MDA存在の際にB細胞受容体の刺激によってMDAの干渉の克服及び能動免疫を可能にしたワクチン組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型ウイルスの遺伝子模式図。
図1b】本発明による組換え免疫増強口蹄疫A型ウイルスの遺伝子模式図。
図2a】O PA2、A22から分離及び精製された抗原の免疫原性評価戦略及び結果を示す図。
図2b】O PA2、A22から分離及び精製された抗原の免疫原性評価戦略及び結果を示す図。
図3】O PA2及びA22から分離及び精製された抗原の併用投与時の免疫原性評価戦略及び結果を示す図。
図4a】本発明による組換え口蹄疫O型ウイルスの実験戦略(A)、生存率(B)及び体重変化(C)を示す図。
図4b】本発明による組換え口蹄疫A型ウイルスの実験戦略(D)、生存率(E)及び体重変化(F)を示す図。
図5】マウスに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種及び免疫反応誘導評価結果を示す図。
図6a】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチン接種戦略を示す図。
図6b】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種による初期、中期、長期免疫(SP O、A ELISAによる抗体が誘導)評価結果を示す図。
図7】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種による初期、中期、長期免疫(中和抗体が誘導)評価結果を示す図。
図8a】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種による細胞性免疫反応遺伝子(サイトカイン、共刺激分子など)発現評価結果を示す図。
図8b】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種による細胞性免疫反応遺伝子(サイトカイン、共刺激分子など)発現評価結果を示す図。
図8c】ブタに対する、本発明による組換え免疫増強口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種による細胞性免疫反応遺伝子(サイトカイン、共刺激分子など)発現評価結果を示す図。
図8d】ブタにおける、本発明による組換え免疫増強組換え口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原を含むワクチンの接種によって媒介される体液性免疫反応(IgG、IgM及びIgAなどの免疫グロブリン亜型)誘導評価結果を示す図。
図8e】本発明による免疫増強組換え口蹄疫O型及びA型ウイルスから分離・精製した抗原処理によって誘導されたマウス(murine)腹腔滲出液細胞(peritoneal exudate cells、PECs)及びブタ(porcine)末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMCs)に対する細胞免疫反応結果を示す図。
図9】本発明による組換え口蹄疫ウイルスから分離・精製された抗原を含む簡易キットにおける抗原量の測定及び野外株との鑑別結果を示す図。
図10】本発明による組換え口蹄疫ウイルスを用いて精製された抗原(146s粒子)の電子顕微鏡(TEM)観察結果を示す図。
図11】本発明のO PA2-C3d及びA22-C3dのVP1配列を示す図であり、1番目(Sus.1)及び4番目(Sus.4)の懸濁細胞(BHK)継代の際に、O PA2-C3d及びA22-C3dのVP1配列をSnapGeneを用いて整列した;(a)O PA-C3dヌクレオチド配列、(b)A22-C3dヌクレオチド配列、(c)O PA2-C3dアミノ酸配列、(d)A22-C3dアミノ酸配列。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳細に説明する。
【0039】
但し、下記実施例及び実験例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は下記実
施例及び実験例に限定されるものではない。
【0040】
<材料及び方法>
1.組換えプラスミドの製造
組換えプラスミドは、Lee et al.(Lee, S. Y. et al. Rapid engineering of foot-and-mouth disease vaccine and challenge viruses. J. Virol. 91, e00155-00117 (2017).)によって記述されているように製造された。全FMD-O1-Manisaウイルスゲノム(GenBank Accession No.AY593823.1)をPCRで増幅した。
【0041】
(1)組換え口蹄疫O型ウイルスを製造するための組換えプラスミドの作製
増幅されたO1-Manisaゲノム(配列番号1)をプラスミド(pBluescript SK II)に挿入してpO1-Manisa(pO1 M)プラスミドを製造した。製造されたpO1 MにおけるP1構造タンパク質をコードする遺伝子は、O-血清型FMDV O PA2(配列番号2)(GenBank Accession No.GU384682.1)の構造タンパク質をコードする遺伝子に置換してpO1 M-O
PA2 P1(配列番号3)プラスミドを製造した。
【0042】
上記のように製造されたプラスミド(pO1 M-O PA2 P1)を用いてアミノ酸残基配列(GKQLYNVEATSYA、配列番号5)に該当するB細胞エピトープ配列(C3d配列(GGTAAGCAGCTCTACAACGTGGAGGCCACATCCTATGCC、配列番号4)をVP1配列の[PA2-C3d:456及び457塩基対位置(152及び153アミノ酸位置、すなわちpO1 M-O PA2 P1配列の2025及び2026番目の塩基)の間に挿入した。その後、PCRテンプレートとして、pO1 M-A22 P1 300ng/μL、10pmole/μLのプライマーC3d F(5’-GGAGGCCACATCCTATGCCCGCGAGAGGCCCTAGGTCGC-3’、配列番号6)1μL、10pmole/μLのプライマーC3d
R(5’)1μL-ACGTTGTAGAGCTGCTTACCGCGAGGGTCGCCGCTCAGCT-3’、配列番号7)は、以前の研究で使用したのと同一のセルフライゲーション(self-ligating)方法で標的プラスミドを製造するのに使用された。最終的に製造された組換えプラスミドは、配列番号8の通りである。
【0043】
(2)組換え口蹄疫A型ウイルスを製造するための組換えプラスミドの作製
増幅されたO1-Manisaゲノム(配列番号1)をプラスミド(pBluescript SK II)に挿入してpO-Manisa(pO1 M)プラスミドを製造した。製造されたpO1 Mにおける構造タンパク質をコードする遺伝子は、A血清型FMDV A22/Iraq/24/64(GenBank Accession No.AY593764.1)(配列番号9)の構造タンパク質をコードする遺伝子に置換してO1
M-A22 P1プラスミド(配列番号10)を製造した。
【0044】
上記のように製造されたプラスミド(O1 M-A22 P1)を用いてアミノ酸残基配列(GKQLYNVEATSYA、配列番号5)に該当するB細胞エピトープ配列(C3d配列(GGTAAGCAGCTCTACAACGTGGAGGCCACATCCTATGCC、配列番号4)をVP1配列の[PA2-C3d:453及び454塩基対位置(151及び152アミノ酸位置、すなわちpO1 M-O PA2 P1配列の2025及び2026番目の塩基)の間に挿入した。その後、PCRテンプレートとして、O1
M-A22 P1 300ng/μL、10pmole/μLのプライマーCd3 F(5’-GGAGGCCACATCCTATGCCCGCGAGAGGCCCTAGGTCGC-3’、配列番号6)1μL、10pmole/μLのプライマーC3d R(5’)1μL-ACGTTGTAGAGCTGCTTACCGCGAGGGTCGCCGC
TCAGCT-3’、配列番号7)は、以前の研究で使用したのと同一のセルフライゲーション(self-ligating)方法で標的プラスミドを製造するのに使用された。最終的に製造された組換えプラスミドは、配列番号11の通りである。
【0045】
図1a及び図1bは、それぞれO PA2-C3d及びA22-C3dに対する最終プラスミドの概略図を示す。
【0046】
PCR条件は、次の通りである:10μLの5×Phusion HF緩衝液(Thermo Scientific、Waltham、MA、USA)、1μLの10mM dNTP(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、1μLの2U/μL Phusion DNAポリメラーゼ(Thermo Scientific)及び35μLの滅菌蒸留水を98℃で30秒、98℃で10秒、65℃で20秒、72℃で2分及び30秒間25サイクル増幅し、最終サイクルは72℃で10分間行った。次に、1μLのDpnI(Enzynomics、Daejeon、Korea)を25μLのPCR産物に添加し、37℃のインキュベーターで1時間反応させた。その後、35μLの滅菌蒸留水、5μLのLigation High(東洋紡、大阪、日本)及び1μLの5U/μL T4ポリヌクレオチドキナーゼ(東洋紡、大阪、日本)を4μLのDpnI処理製品に添加した。混合物を16℃の水浴で1時間ライゲーションさせた。
【0047】
ライゲーションの後、プラスミドは、製造業者のプロトコルに従って100μLのDH5α細胞(Yeast Biotech、Taipei、Taiwan)に形質転換された。形質転換された細胞をアンピシリン含有寒天プレートに塗抹し、37℃で一晩培養した。
【0048】
ピペットチップ付きプレートからコロニーを選択し、18μLの滅菌蒸留水、1μLの10pmolフォワードユニバーサルプライマーVP1(5’-AGNGCNGGNAARTTTGA-3’)(配列番号12)及び1μLの10pmol/μLリバースユニバ―サルプライマーと混合した。プライマーVP1(5’-CATGTCNTCCATCTGGTT-3’)(配列番号13)をコロニーPCRチューブに入れ、94℃で5分、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分、最後のサイクルは72℃で5分間行って合計25サイクルのPCR増幅を行った。前記ユニバーサル(universal)プライマーにおいて、Nは任意のヌクレオチドを示すことができる。5μLのPCRサンプルを1μLの6×ローディングバッファー(DYNE BIO、京畿道、韓国)と混合した後、アガロースゲルにロードした。その後、5μLの100bpマーカー(DYNE BIO)もゲルにロードした。100Vで30分間電気泳動した後、バンドをGel Docで評価した。バンド評価の後、5μLのPCR産物を2μLのExoSAP(Thermo Scientific)と混合し、37℃で15分間及び85℃で15分間PCRによって増幅した。VP1へのエピトープの挿入は、全DNA配列決定によって確認された。塩基配列を確認した後、コロニーをアンピシリン含有LB培地200mLに入れ、37℃で一晩振盪しがら培養した。Midi prep(MACHEREYNAGEL、Duren、Germany)を用いてプラスミドを製造した。
【0049】
2.免疫増強組換え口蹄疫ウイルスの準備
組換え口蹄疫ウイルスは、Lipofectamine 3000 Reagent(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いて上記で製造した組換えプラスミドでBHKT7-9(T7 RNAポリメラーゼを発現する細胞株)をトランスフェクトさせた後、2~3日間培養して回収した。その後、準備されたウイルスは、ウイルス増殖のために胎児ヤギ舌(ZZ-R)細胞又はベビーハムスター腎臓-21(BHK-21)細胞に継代された。
【0050】
3.表面にC3d-エピトープを提示する組換え口蹄疫O型及びA型ウイルスからの抗原(不活化ウイルス)の精製
精製された抗原は、改変されたLee et al.(非特許文献2)によって記述された方法に従って、逆遺伝学によってP1の迅速な表現型(参照された配列)に対して構成された組換え免疫刺激FMDV O PA2-C3d及びA22-C3dで感染したBHK-21細胞から製造された。
【0051】
ウイルス感染のために、培養培地を無血清Dulbecco’s Modified Eagle’s培地(DMEM;HyClone、Logan、UT、USA)で取り替え、細胞を5%CO、37℃で1時間培養してウイルスを接種した。その後、細胞外ウイルスを除去した。感染24時間後、振盪インキュベーターで24時間0.003Nバイナリー(binary)エチレンイミンを2回処理してウイルスを不活性化させた後、ポリエチレングリコール(PEG)6000(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)で濃縮させた。ウイルス濃縮液は、15%~45%スクロース密度勾配に積層され、遠心分離された。超遠心分離の後、遠心分離管の底部に穴を開けて1mLの画分を収集した。各画分のサンプルにおけるFMDV粒子の存在は、側方流動装置(BioSign FMDV Ag;Princeton BioMeditech、Princeton、NJ、USA)を用いて光学密度によって確認した。現場実験に使用する前に、予めPEG処理された上澄み液をZZ-R及びBHK-21細胞に2回以上通過させ、細胞変性効果(CPE)が発生していないかを確認することにより、上澄み液に生きているウイルスがないことを確認した。
【0052】
4.精製された抗原を用いた構造及び非構造タンパク質の確認及びTEMを用いた146S粒子の検査
免疫増強組換えFMDV O PA2-C3d及びA22-C3dに感染した細胞の精製された抗原発現の構造タンパク質(SP)は、SPに対するバンド形成を示すRapid抗原キット(PBMキット、PBM Co Ltd.、Princeton、NJ、USA)で確認された。FMDVの非構造タンパク質(NSP)に対するバンド形成がなかった。ウイルス粒子(146S)は、透過電子顕微鏡(TEM)イメージングによって特徴を確認した。また、組換えウイルスを継代する際に、配列が変化する現象が頻繁であるため、1番目、4番目の継代の際に、配列が変化しなかったことを証明するために、「C3d」の特定エピトープが挿入されたFMDVが細胞に継代された後にもウイルスの遺伝的安定性を維持するかを確認し、最終的に4番目の継代まで配列変化がないことを確認した(図11)。
【0053】
5.母体移行抗体干渉克服用免疫増強口蹄疫ワクチン株、O PA2-C3d及びA22-C3dの実験動物(マウス)における免疫原性の評価
(1)マウス(Mice)
マウス実験は、Lee et al.(非特許文献2)に記述された方法に従って行われた。年齢及び性別が一致する野生型C57BL/6マウス(6~7週齢の雌)は、KOSA BIO Inc.(京畿、韓国)から購入した。全てのマウスは、農林畜産検疫本部の特定の無病原体(SPF)生物安全性レベル3(ABSL3)動物施設で飲食と水に自由に接近することができるマイクロアイソレータケージに収容された。全ての動物は、実験に使用する前に少なくとも1週間適応するようにした。飼育室は、12時間の明暗周期、約22℃の温度、約50%の相対湿度に設定された。試験は、機関のガイドラインと農林畜産検疫本部動物実験倫理委員会の承認(認証番号IACUC-2021-584)に従って行われた。
【0054】
(2)マウスへのワクチン接種及びFMDV投与
免疫原性の強いFMDV O PA2-C3dとA22-C3dから分離・精製した抗
原の免疫原性と短期免疫誘導効果を検証し、口蹄疫ワクチン開発のためのマスターシードウイルス(master seed virus、MSV)としての可能性を確認するために、次のように動物実験を行った。
【0055】
実験に使用されたワクチンの組成は、次の通りである:O PA2-C3d及びA22-C3d(15μg/dose/mL、ブタの場合は1/10~1/640用量)、ISA 206(Seppic、Paris、フランス、50%、w/w)、10%Al(OH)及び15μg/マウスQuil-A(InvivoGen、San Diego、CA、USA)。マウスを太ももの筋肉に筋肉内(IM)注射し(ワクチン接種後0日(dpv))、FMDV(O/VET/2013の100 LD50 ME-SAトポタイプ又は100 LD50 A/Malay/97、SEAトポタイプ)を7dpvに腹腔内(IP)注射して投与した。陰性対照群のマウスには、同じ経路を介して同体積のリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.0)が投与された。短期免疫原性を評価するために、投与後(dpc)最大7日間の生存率及び体重変化をモニタリングした。
【0056】
目的動物(ブタ)における実験のための予備実験として、O PA2-C3d抗原+A22-C3d抗原を含む2価試験ワクチンの免疫原性確認のためにPD50テストを行ったとともに、免疫増強ワクチン株のバックボーン(backbone)として使用したO
PA2抗原+A22抗原を含む試験ワクチン投与群を一緒に比較した。実験に使用されたワクチンの組成は、次の通りである;O PA2-C3d抗原+A22-C3d抗原(15μg+15μg/dose/ml、1/10~1/640dose)又はO PA2抗原+A22抗原(15μg+15μg/dose/ml、1/10~1/640dose)、ISA 206(50%、w/w)、10%Al(OH)、15μg Quil-A/mouse。陰性対照群の場合、同体積のPBSを同じ経路で投与された。
【0057】
マウスは、0dpvにI.M.でワクチン接種した後、7日目(days post vaccination、dpv)、FMDV(100 LD50、O/VET/2013、ME-SAトポタイプ又は100 LD50 A/Malay/97、SEAトポタイプ)をマウス腹腔内に投与し、7日後(days post challenge、dpc)まで生存率及び体重変化をモニタリングした。
【0058】
6.母体移行抗体干渉克服用免疫増強口蹄疫ワクチン株、O PA2-C3d及びA22-C3dの目的動物(ブタ)における免疫原性の評価
(1)ブタ
ブタ(8~9週齢、合計n=32)は、SP O ELISA、SP A ELISAを介して抗体価(PI値:50%基準)及びVN titers(1.6 Log10基準)を介してスクリーニングし、MDA(+)群、MDA(-)群(各群当たりn=16)に区分した。
【0059】
MDA(+)群、MDA(-)群に該当する各群別ブタは、3群(n=4又は6/群):NC(陰性対照群)、O PA2+A22(陽性対照群、PC)処理、及びO PA2-C3d+A22-C3d処理群にランダムに分けた。
【0060】
動物は、実験期間中に閉鎖された隔離室(ABSL3)で隔離された。ABSLに到着した後、全ての動物は、飲食と水に自由に接近(ad libitum)することができるケージに保管され、少なくとも1週間の適応後に実験に使用された。飼育室は、12時間の明暗周期、約22℃の温度、約50%の相対湿度に設定された。本発明は、農林畜産検疫本部動物実験倫理委員会(認証番号IACUC-2021-584)の承認を受けた機関のガイドラインに従って行われた。
【0061】
(2)ワクチン接種による免疫反応の誘導及びサンプリング
目的動物であるブタにおいて、母体移行抗体干渉克服のために作製した免疫増強口蹄疫ワクチン株であるO PA2-C3dとA22-C3dから分離・精製した抗原の免疫原性を評価し、適応性免疫反応誘導効果及び母体移行抗体干渉回避克服効果を観察するために、母体移行抗体陽性(MDA(+)、FMD-seropositive)、陰性(MDA(-)、FMD-seronegative)-野外ブタを用いて実験を行った。ワクチンの組成は、次の通りである。総1ml体積のワクチンを1doseとして、15μgのO PA2抗原+15μgのA22抗原(陽性対照群(positive control group)、PC群)又は15μgのO PA2-C3d抗原+15μgのA22-C3d抗原(実験群(experimental group)、実験群)、ISA 206(50%、w/w)、10%Al(OH)、150μgのQuil-Aが含まれるように製造した。陰性対照群(negative control group、NC群)の場合、同体積のPBSを同じ経路で投与された。
【0062】
8~9週齢のブタ、母体移行抗体陽性、陰性動物をスクリーニングしてMDA(+)群(n=16)とMDA(-)群(n=16)の2つの分類に区分した。MDA(+)群、MDA(-)群の個体をそれぞれ3つの群に分け、NC群(PBS投与群、n=4/group)、PC群(O PA2+A22投与群、n=6/group)、実験群(O PA2-C3d+A22-C3d投与群、n=6/group)に区分し、28日間隔で2回(0dpv、28dpv)、1mLのワクチンをI.M.経路で投与した。ワクチン接種ブタ血液サンプルを0、7、14、28、42、56、70、84dpvに収集してSP O、A ELISA、及びVN titerの確認などの血清学的分析に使用した。SP O、A ELISAの場合、抗原の特性による抗体陽性率を考慮して、FMDV O型、A型それぞれPrioCHECKTMキット、VDPro(登録商標)キットを用いて比較した。また、全てのサンプリングスケジュールに採取した血液サンプルからPBMCs(peripheral blood mononuclear cells)を分離して、試験ワクチン媒介-細胞性・体液性免疫反応関連遺伝子発現の変化を分析した。
【0063】
(3)血清学的分析
血清内のSP抗体を検出するために、PrioCHECKTMFMDVタイプO又はFMDVタイプA(Prionics AG、Switzerland)とVDPro(登録商標)FMDVタイプO又はFMDVタイプA(Median Diagnostics、韓国江原道)を使用した。ELISAプレートの吸光度を抑制率(PI)値に変換した。PI値がPrioCHECKTMFMDVキットの場合に50%、又はVDPro(登録商標)FMDVキットの場合に40%以上であれば、動物は抗体陽性と見なされた。
【0064】
ウイルス中和試験(VNT)は、世界動物保健機関(OIE)のマニュアルに従って行われた。血清を水浴中で30分間56℃で熱不活性化させた。細胞密度を調整して70%単層を形成し、血清サンプルの2倍連続希釈液(1:8~1:1024)を準備した。その後、希釈された血清サンプルを、100-組織培養感染用量(TCID)50/0.5mLの相同ウイルスと共に37℃で1時間培養した。1時間後、LF-BK(ウシ腎臓)細胞懸濁液をすべてのウェルに添加した。2~3日の後、CPEは、力価を決定するために評価された。これは、ウイルスの100 TCID50を中和するのに必要な逆抗体希釈のLog10値として計算された。FMDV O/PA2及びFMDV A22/IRAQは、VNTに使用された。
【0065】
(4)PECs分離及び細胞培養
Naiveマウスは、COを用いて麻酔され、犠牲にされた。Ca2+/Mg2+/phenol-redのない冷却されたHankの均衡塩溶液(HBSS、Gibco、
Waltham、MA、USA)緩衝液5mLで腹腔を洗浄した。腹膜洗浄液を4℃で10分間300×gで遠心分離した。ペレット化されたPECsを再懸濁し、Bio-Rad TC20自動細胞カウンター(Bio-Rad)を用いて計数した。全ての細胞は、使用前に新たに分離された。如何なる実験においても、凍結保存された細胞を使用しなかった。その後、精製されたPECsを、10%子ウシ胎児血清(HyClone)、3mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、10mM HEPES(Sigma-Aldrich)、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)、及び0.05mMの2-β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)が補充されたRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640(Gibco、Carlsbad、CA、USA)から構成された完全培地で培養した。培養は、37℃及び5%COで行われた。
【0066】
(5)PBMCs分離及び細胞培養
ブタPBMCsは、Lee et al.(非特許文献2)によって誘導された方法に従って、上述した特定の時点(n=4又は6/群)にワクチン接種されたブタの全血から分離された。全血(20mL/個体)は、BD Vaccutainerヘパリンチューブ(BD、Becton、Dickinson and Company、Franklin Lakes、NJ、USA)から独立して収集された。PBMCsは、Ficoll-PaqueTM PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences Corp.,Piscataway、NJ、USA)勾配遠心分離を用いてPBMCsを分離した。残留赤血球は、塩化アンモニウム-カリウム(ACK)溶解緩衝液(Gibco、Carlsbad、CA、USA)で処理して溶解した。PBMCをCa2+及びMg2+のないDulbeccoのPBS(Gibco)に懸濁させ、2%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)を補充し、体積フローサイトメーター(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を用いて計数した。全ての細胞は、使用前に新たに分離された。如何なる実験においても、凍結保存された細胞を使用しなかった。その後、精製されたPBMCを10%FBS(HyClone、Logan、UT、USA)、3mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)及び100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)が補充されたRPMI1640(Gibco)培地に再懸濁した。
【0067】
PBMCsをCa2+/Mg2+のないDPBS(Gibco)に懸濁し、Bio-Rad TC20自動細胞カウンター(Bio-Rad)を用いて計数した。すべての細胞は、使用前に新たに分離され、如何なる実験においても、凍結保存された細胞を使用しなかった。その後、精製されたPBMCsを、10% FBS(Gibco)、3mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、10mM HEPES(Sigma-Aldrich)及び100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)が補充されたRPMI-1640(Gibco)培地に再懸濁した。培養(incubation)は、37℃及び5%COで行われた。
【0068】
(6)in vitro PEC及びPBMCに対する抗原誘導IFNγ ELISpotの分析
O PA2-C3d及びA22-C3d抗原媒介IFNγ分泌は、製造業者のガイドラインに従って商業用ELISpot分析キット(マウス及びブタ用カタログ番号EL485及びEL985、R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を用いて分析された。分離されたマウス(murine)PECs又はブタPBMCs(5×10cells/well)を、マウス又はブタIFNγに対して特異的なモノクローナル捕捉抗体を含有する96ウェルPVDF支持マイクロプレートで培養し、不活性化FMDV(O PA2、O PA2-C3d、A22、A22-C3d)抗原を4μg
/mL(最終濃度)の各濃度で37℃、5%COの加湿インキュベーター中で18時間刺激した。陰性対照群と陽性対照群として、それぞれPBSと5μg/mLのホルボールミリステートアセテート(PMA、Sigma-Aldrich)を使用した。プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、ビオチン化(biotinylated)抗マウスIFNγ抗体(1:119)又は抗ブタ抗体(1:119)と共に4℃で一晩培養した後、RTでAP接合された(conjugated)ストレプトアビジン(1:119)で2時間培養した。プレートを洗浄し、5-ブロモ-4-クロロ-3’インドリホスフェートp-トルイジン塩(BCIP)/塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)で現像し、ImmunoSpot ELISpotリーダー(AID iSpotリーダーシステム;Autoimmune Diagnostika GmbH、Strassberg、Germany)を用いて計数した。結果は、スポット形成単位(SFU)で表示された。
【0069】
(7)RNA分離、cDNA合成、及び定量的リアルタイムPCR
精製されたブタPBMCで全RNAをTRIzol試薬(Invitrogen)及びRNeasy Mini Kits(QIAGEN、Valencia、CA、USA)を用いて抽出した。cDNAは、製造業者のガイドラインに従ってGoScript逆転写システム(Promega、Madison、WI、USA)を用いて逆転写することにより準備した。合成されたcDNAは、iQ SYBR Green Supermix(BioRad、Hercules、CA、USA)を用いてBio-Rad iCyclerで定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)によって増幅された。
【0070】
遺伝子発現レベルをhprtレベルに正規化し、対照群と比較した相対的比率で提示した。本発明に使用されたプライマーのリストは、表1に記載した。
【0071】
qRT-PCR用プライマー配列表
【表1】
【0072】
7.統計
すべての定量的データは、特に明示されない限り、平均±標準誤差(SEM)で表現された。群間の統計的有意性は、双方向ANOVAに続いてTukey事後検定、又は一元ANOVAに続いてTukey事後検定を用いて評価された。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;及び****p<0.0001。異なる群を比較するために、パラメータテストが使用された。Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成し、ログランク和検定を用いて差異を分析した。全ての統計分析には、GraphPad Prism9.1.2(GraphPad、San Diego、CA、USA)ソフトウェア及びIBM SPSSソフトウェア(IBM Corp.、Armonk、NY、USA)が使用された。
【0073】
<実施例>母体移行抗体干渉克服のための免疫増強口蹄疫ワクチン株の作製、O PA2-C3d及びA22-C3dを用いた不活化抗原の生産及び精製
母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン株の開発のために、逆遺伝学(reverse
genetics)を用いて既に開発されたO1 Manisa-O PA2(O1 M-O PA2)及びO1 Manisa-A22/Iraq/24/64(O1 M-A22)株のP1バックボーンを用いた。O型の場合、周辺の発生状況に対するワクチンマッチング率及びウイルスの浮遊細胞における増殖性、特に、実験動物(マウス)及び目的動物(ブタ)における抗原媒介-免疫原性を確認した先行研究結果に基づいて、O PA2が最も強力な候補ワクチン株として判断された一方、A型の場合にも、世界的発生状況を見ると、マッチング率は概ね低い傾向を示してはいるが、その中でもA22が適切なワクチン株として分類された。
【0074】
本発明においてB細胞エピトープであるC3dの活性部位をO PA2及びA22 P1バックボーンに挿入して、FMDV O型及びFMDV A型の母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチン株の作製戦略は、図1a、図1bに示す通りであり、詳細な方法は、材料及び方法に記述した。
【0075】
<実験例1>母体移行抗体干渉克服用免疫増強口蹄疫ワクチン株、O PA2-C3d及びA22-C3d抗原を含むFMDワクチンのマウスにおける免疫原性の評価
B細胞の活性化のために、B細胞エピトープであるC3dが挿入されたO PA2-C3d及びA22-C3d、O PA2及びA22から分離・精製した抗原のマウスにおける免疫原性の確認、口蹄疫ワクチンマスターシードウイルス(maser seed virus、MSV)としての可能性、及びFMDV感染に対する防御効果を評価するために、O PA2-C3d及びA22-C3dは、それぞれ図4aの(A)及び図4bの(D)のような戦略で実験を行った。O PA2及びA22は、図2aの(A)、図2bの(D)のような戦略で実験を行った。実験に使用されたワクチンの組成は、次の通りである;O PA2-C3d又はA22-C3d抗原、O PA2又はA22抗原(15μg/dose/mL、1/10~1/640dose)、ISA206(50%、w/w)、10% Al(OH)、15μg Quil-A/mouse。
【0076】
マウスは、0dpv(days post vaccination)にI.M.(intramuscular、筋肉内接種)でワクチン接種した後、7日目(dpv)、FMDV O型(100 LD50、O/VET/2013、ME-SAtopotype)又はFMDV A型(100LD50、A/Malay/97、SEAトポタイプ)をマウス腹腔内に投与して7日後(dpc)まで生存率(図4aの(B)、(C))と体重変化(図4bの(E)、(F))をモニタリングした。
【0077】
実験の結果、O PA2-C3d抗原を含む試験ワクチンは、マウスに接種すると、97.01 PD50(Log)であって、1/10、1/40、1/160doseでは100%、1/640doseでは80%の生存率を示し、体重減少も1/10、1/
40、1/160doseで殆ど観察されなかった(図4aの(B)、(C))。また、A22-C3dから分離・精製した抗原を用いた試験ワクチンは、マウスに接種すると、73.52 PD50(Log)であって、1/10、1/40、1/160doseで100%の生存率を示し、1/640doseでは60%の生存率を示した。体重減少においても、1/10、1/40、1/160doseでは、体重変化が殆ど観察されなかった(図4bの(E)、(F))。
【0078】
しかし、O PA2抗原を含むワクチンは、55.72 PD50(log)を示した(図2aの(B))。O PA2の体重変化は、O PA2-C3dに比べて低いレベルに減少した(図2aの(C))。
【0079】
A22-C3d抗原を含有するワクチンは、1/10、1/40及び1/160用量に対して100%の生存率を示し、73.52 PD50(Log)であって、1/640用量に対して60%の生存率を示した。1/10、1/40及び1/160用量に対する体重変化はなかった。
【0080】
しかし、A22抗原を含むワクチンは、6.06 PD50(Log)を示した(図2bの(E))。A22の体重変化は、A22-C3dに比べて低いレベルに減少した(図2bの(F))。
【0081】
PD50試験は、ブタで2価研究ワクチン(O PA2-C3d+A22-C3d抗原含有、O PA2-C3dとA22-C3dの併用投与)の免疫原性を確認するために行われた。結果は、免疫増強ワクチン菌株のバックボーンとして使用された研究ワクチン(O PA2+A22抗原を含む、O PA2とA22の併用投与)を投与された群の結果と比較した(図5及び図3)。
【0082】
図5の(A)及び図3の(A)に示す実験戦略で、マウスにおけるワクチン接種は0dpvにI.M.で投与され、FMDV(O/VET/2013の100 LD50、ME-SAトポタイプ又はA/Malay/97の100 LD50、SEAトポタイプ)は、7dpvにI.P.でチャレンジされた。生存率と体重変化は、0dpc(0 days post challenge)から7dpcまでモニタリングした。
【0083】
O PA2+A22抗原を含む2価ワクチンは、マウスでO/VET/2013及びA/Malay/97にてそれぞれ攻撃したとき、PD50(Log)値が5.66及び4であった(図3の(B)、図3の(D))。
【0084】
O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む2価ワクチンは、それぞれO/VET/2013及びA/Malay/97でそれぞれ接種したとき、PD50(Log)値が90.5及び>128 PD50(Log)であって、高い免疫原性を示した(図5の(B)、図5の(D))。
【0085】
<実験例2>母体移行抗体干渉克服用免疫増強口蹄疫ワクチン株、O PA2-C3d及びA22-C3d抗原を含むFMDワクチンの目的動物(ブタ)における免疫効果(初期、中期、長期)の評価
目的動物であるブタで母体移行抗体干渉克服のために作製した免疫増強口蹄疫ワクチン株であるO PA2-C3dとA22-C3dから分離・精製した抗原の免疫原性を評価し、適応性免疫反応誘導効果及び母体移行抗体干渉回避克服効果を観察するために、母体移行抗体陽性(MDA(+)、FMD-seropositive)、陰性(MDA(-)、FMD-seronegative)-野外ブタを用いて実験を行った(図6a)。
【0086】
その結果、母体移行抗体干渉克服効果を確認するために、MDA(+)群のブタにO PA2-C3d+A22-C3d抗原を用いた試験ワクチンを投与するとき、14dpvからSP O ELISAによる抗体価がO PA2+A22抗原を含む試験ワクチンを接種したPC群に比べて有意に増加し(p<0.001、PrioCheckTMキット、VDPro(登録商標)キット)、28dpvにもp<0.05(PrioCheckTMkit)、p<0.01(VDPro(登録商標)キット)の有意性を示した(図6bの(A)、(B))。特に、28dpvに2次試験ワクチンを接種(boosting)した後、実験群で抗体価が非常に高かったが、これに対し、NC群の場合は、母体移行抗体が持続的に減少する傾向を示した。56、70、84dpvにおける2群間の抗体価は、p<0.0001又はp<0.001レベルの差を示した。また、MDA(+)群でSP A ELISAの場合、42dpvにおける実験群の抗体価がPC群に比べて高いことが分かり(p<0.001、PrioCheckTMキット)、56、70、84dpvにおける実験群とNC群間の有意性差は、それぞれp<0.5、p<0.0001、p<0.001(PrioCheck(登録商標)キット)、p<0.0001(VDPro(登録商標)キット)のレベルで観察された(図6bの(C)、(D))。
【0087】
一方、O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンの目的動物(ブタ)における免疫原性、及び初期、中期、長期免疫誘導を確認するために、MDA(-)群へのワクチン投与の際に、SP O ELISAによる抗体価が7dpv(PrioCheckTMキット)、14dpv(VDPro(登録商標)キット)にp<0.05のレベルでNC群に比べて有意に増加し、28dpvから84dpvまでNC群と比較して有意性を示した(p<0.0001)(図6bの(E)、(F))。MDA(-)群における各群別SP A ELISAによる抗体価も、SP O ELISAにおける結果と同様に、実験群とNC群の間で7dpv(PrioCheckTMキット)、14dpv(VDPro(登録商標)キット)で有意な差を示し(p<0.01、p<0.05)、28~84dpvにそれぞれ実験群がNC群に比べて抗体価がさらに高いことが分かった(p<0.0001、p<0.001、p<0.01、p<0.05)。また、実験群における抗体価は、PC群における抗体価に比べて持続的にさらに高かった。2群間の有意性は、14、84dpvにp<0.01、p<0.05(VDPro(登録商標)キット)のレベルで観察された(図6bの(G)、(H))。
【0088】
ワクチンの接種前(0dpv)、MDA(+)/MDA(-)群におけるO1 Campos、A2001 Argentina、A24 Cruzeiroに対する中和抗体価は、図7のAの通りである。MDA(+)群では全て>1.6 Log10のレベルを示し、MDA(-)群では<1.2 Log10のレベルを示した。PC群で抗原として使用したバックボーンウイルスであるO PA2、A22に対する相同性ウイルス(homologous virus)を用いて中和抗体価を確認した(図7の(B)、(C))。MDA(+)群の場合、0dpvに、SP O、A ELISAによる抗体価は高い数値を示したが、O PA2、A22に対する中和抗体価は防御レベル以下に低く示された(図7の(B))。これは、母体移行抗体が高い(MDA(+))子ブタの母ブタがB社のワクチンを接種したため、O PA2及びA22などの異種ウイルス(heterologous virus)に対して低い抗体価を示したと判断される。
【0089】
MDA(-)群の場合、O PA2に対する中和抗体価(図7の(C))は、7dpvからO PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンを投与した実験群でNC群とPC群に比べて有意に高く示されており(p<0.05)、14、28dpvまで持続的に増加し(p<0.01、p<0.05)、28dpvにブースト(boosting)の後、42~84dpvにNC群に比べて高く増加した(p<0.0001、p<0.001、p<0.01、p<0.05)。また、ブーストの後にも、実験群でPC群に比べて中和抗体価が高く示されたが、2群間の有意性は、42、84dpvに観察され
た(p<0.001、p<0.01)。
【0090】
MDA(+)群とMDA(-)群におけるA22に対する中和抗体価(図7の(D)、(E))は、28dpvに実験群でNC群とPC群に比べて高く示されており(p<0.01)、ブースト後、42~84dpvにNC群に比べて高いレベルに増加した(p<0.0001、p<0.001)。実験群とPC群との差は、42~84dpvに有意性が観察された(p<0.0001、p<0.001)。
【0091】
<実験例3>母体移行抗体干渉克服用免疫増強口蹄疫ワクチン株、O PA2-C3d及びA22-C3d抗原を含むFMDワクチンのブタにおける細胞性免疫反応誘導の評価
3-1.図6aに示すように、目的動物であるブタにO PA2-C3d及びA22-C3d抗原を含む試験ワクチンを接種した後、各サンプリング時間別、全血からPBMCsを分離して、qRT-PCRを介して細胞性免疫反応の誘導に関連したサイトカイン(IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-1β、IL-17A、IL-23p19、IL-23R、IL-2、IL-10、TGFβ、IL-4、IL-6)及び共刺激分子(CD40、CD80、CD86、MHCクラスI、MHCクラスII、CD21、CD28、CTLA4、ICOS、AHNAK)などの遺伝子の発現変化を観察した(図8a~図8c)。
【0092】
その結果、炎症性サイトカイン(Proinflammatory cytokine)遺伝子の発現が全体的に非常に高く観察された。特に、タイプI IFNであるIFNα及びIFNβの発現は、7dpvにMDA(+)/MDA(-)条件の個体で実験群がNC群に比べてp<0.0001、p<0.001レベルの非常に高い増加を示した。一方、PC群vsNC群間の差異は、IFNαの場合にはMDA(+)/MDA(-)条件の両方でPC群がNC群に比べて高く示されたが(p<0.01)、IFNβの場合にはMDA(+)条件でのみNC群に比べて有意な増加を示した(p<0.01)。IFNγの発現レベルは、IFNαとIFNβの発現に比べて多少低かったが、MDA(+)/MDA(-)条件の両方において実験群がNC群に比べて有意に高かった(p<0.05)。
【0093】
IL-1βは、MDA(+)/MDA(-)条件で実験群がNC群に比べて著しく高い発現を示し(p<0.0001、p<0.001)、特に、PC群と比較して実験群でp<0.0001レベルの有意な差を示した。IL-17Aは、MDA(+)/MDA(-)条件で実験群がNC群に比べて非常に高い発現量を示し(p<0.0001、p<0.01)、MDA(+)状態でPC群とNC群間の有意性が観察された(p<0.01)。IL-23p19の発現も、MDA(+)/MDA(-)条件で実験群がNC群に比べて著しく高く示され(p<0.01、p<0.001)、特に、MDA(-)条件で実験群とPC群間の有意な差を示した(p<0.05)。IL-23Rの発現も、他のサイトカイン発現と同様に非常に高く示され、MDA(+)/MDA(-)条件の両方で実験群vsNC群間の有意な差を示した(p<0.05)。IL-4、IL-6の場合、MDA(+)条件ではMDA(-)条件に比べて発現量が高く、MDA(+)条件で実験群vsNC群間の有意性はp<0.01、IL-4、IL-6に対するPC群vsNC群間の有意性はそれぞれp<0.01、p<0.01であった。MDA(-)条件では、IL-4における実験群vsNC群の有意差がp<0.05と観察された。一方、抗炎症性サイトカインであるIL-10の場合、MDA(+)/MDA(-)条件で実験群がNC群に比べて高い発現を示した(p<0.05)。IL-2、TGFβの場合、実験群>PC群>NC群の順に発現量が高く示されたが、各群間の有意性は観察されなかった。
【0094】
共刺激分子の発現量は、全般的にサイトカインの発現量に比べては多少低かったが、実験群でPC群又はNC群に比べて有意に発現量が増加することを確認した。CD80、C
D21、CD28、CTLA4、ICOSの発現は、MDA(+)条件に比べてMDA(-)条件でワクチン投与時に増加する傾向を示し、MDA(+)/MDA(-)条件で実験群vsNC群間の比較において有意性を示し(p<0.0001、p<0.001、p<0.01、p<0.05)、PC群vsNC群間の有意性は、ICOSを除いた残りの遺伝子の発現に対してp<0.01、p<0.01のレベルと観察された。これらのうち、CD80、CD21及びCD28は、試験ワクチン投与によって非常に高い遺伝子発現変化を示した。ICOSの場合、実験群vsPC群間の有意性がMDA(+)条件でp<0.01、MDA(-)条件でp<0.0001であって、C3dが挿入された菌株でバックボーン(backbone)株に比べて高い遺伝子発現を示した。
【0095】
CD86、AHNAKの場合、MDA(-)条件で実験群とNC群間の有意性が観察され(p<0.0001、p<0.001)、特に、CD86は、実験群vsPC群(p<0.0001)間の顕著な有意性が観察された。一方、MHCクラスIは、MDA(+)条件に比べてMDA(-)条件で遺伝子の発現が減少し、CD40、MHCクラスIIは、各群間の有意性は観察されなかった。
【0096】
3-2.ブタでIgG、IgM及びIgAなどの免疫グロブリン亜型で測定した本発明による免疫増強口蹄疫ウイルスO型及びA型(O PA2-C3d及びA22-C3d)によって媒介される体液性免疫反応は、以下のとおりである。
【0097】
FMD抗体-陽性(MDA(+)、n=16)又はFMD抗体-陰性(MDA(-)、n=16)であるブタ(8~9週齢)動物をそれぞれ3つの群に分けた。陰性対照群(NC、n=4/群)、陽性対照群(PC、n=6/群)及び実験群(Exp.、n=6/群)。
【0098】
実験群には、O PA2-C3d+A22-C3d抗原とISA 206(オイルベースのエマルジョン、50%、w/w)、10%Al(OH)及び150μg Quil-Aが含まれた15μg(ウシ及びブタ用1回用量)含有テストワクチンが投与された。陽性対照群(PC)は、O PA2+A22抗原とISA 206(オイルベースのエマルジョン、50%、w/w)、10%Al(OH)、及び150μg Quil-Aが含まれた15μg(ウシ及びブタ用の1回用量)を投与された。陰性対照群(NC)には、同体積のPBSを注入した。ワクチン接種は、28日間隔で2回行われた。動物の首に深い筋肉内経路を介して1mLのワクチン(1回用量)を注入した。血清学的検定のために、ブタへのワクチン接種後0、7、14、28、42、56、70及び84日に血液サンプルを収集した。実験結果は、図8dに示した。
【0099】
図8dにおいて、(a)IgG濃度、(b)IgM濃度、(c)IgA濃度を示す。データは、三重測定の平均±SEMを示す(n=4又は6/群)。統計的分析は、双方向ANOVAに続いてTukeyのテストを用いて行われた。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;及び****p<0.0001。
【0100】
実験の結果、O PA2-C3dとA22-C3dは、MDA(+)/MDA(-)動物でSP特異的抗体価(SP ELISAを介して)だけでなく、IgG(中和抗体の指標)、IgM(病原体感染又はワクチン接種中に誘導された最初の天然抗体)及びIgA(粘膜免疫を誘導する核心要素)レベルを含むSP非特異的抗体においても効果的に誘導された。母体IgG及びIgAは、初期幼児期(infancy)に粘膜補助細胞反応を弱化させることができ、母体IgG調節T細胞エピトープは、免疫原性よりは免疫寛容を誘導する。上記の結果に基づいて、免疫増強組換え口蹄疫ワクチン菌株であるO PA2-C3d及びA22-C3dは、MDA(+)動物においてMDA干渉媒介免疫耐性を克服することにより、宿主における活性免疫を効果的に誘導することができるとともに、M
DA(-)動物又は2~3ヶ月齢(現在のワクチンプログラムに従ってMDA力価がさらに低い期間)の動物においてワクチンを接種するとき、強力な細胞及び体液性免疫反応を誘導することができる。このような結果は、抗原に対するC3dスパイク(抗原の表面へのC3dの挿入)がB細胞表面受容体を持続的に刺激してB細胞を直接活性化させ、免疫原性の高いO PA2-C3d及びA22-C3d抗原が強力なT細胞媒介免疫反応を提供して、より効率的な高力価抗体及び中和抗体を生成することを示唆する(図8d)。
【0101】
以上の結果から、O PA2-C3dとA22-C3dは、免疫増強口蹄疫ワクチン株であって抗原自体の免疫原性に優れ、短期免疫誘導と宿主初期防御において重要な役割を果たすと判断された。また、O PA2-C3d抗原+A22-C3d抗原を含む2価試験ワクチンは、目的動物へのワクチン接種の際に、初期に強力な細胞性免疫反応及び体液性免疫反応の同時誘導によって母体移行抗体干渉の克服にさらに効果的であると期待される。
【0102】
<実験例4>ブタにおける母体移行抗体干渉の克服及び細胞性免疫反応と体液性免疫反応の同時誘導効果の評価
ブタにおける母体移動抗体干渉の克服、及び細胞性免疫反応と体液性免疫反応の同時誘導効果を評価するために、MDA(+)-又はMDA(-)-ブタを用いて実験を行った(図6a)。MDA(+)-個体において、O PA2-C3d+A22-C3dは、特にSP O ELISAによる抗体価において、強力な母体移動抗体克服効果を示し、SP A ELISAによる抗体価の場合、抗体価自体はワクチン接種の初期にやや減少し、ブースト後には増加する傾向を示した。これは、FMDV A型抗原の特性上、SP部位がSP A ELISAプレートにコートされた抗原とは異なるため、検出自体が低く示されてPI(percent inhibition)値に影響を及ぼすと判断され、より正確な評価のためにVN力価を介して母体移行抗体干渉の克服が可能であるかに対する検討が必要であると考えられた。
【0103】
これに対し、MDA(-)-個体において、O PA2-C3d+A22-C3dは、SP O ELISA、SP A ELISAによる強力な抗体価の増加を誘導したとともに、バックボーンとして用いたO PA2+A22に比べて抗体価誘導能が有意に高かった(図8b)。
【0104】
また、実際のウイルス中和効果を確認するために、O PA2、A22に対するVN力価を確認した。該当個体は、B社(会社の権益保護及び紛争抑制のために使用したワクチンの出所は記載しない)ワクチンを接種したので、母体移行抗体の有無を確認するために、ワクチン接種前、0dpvに血清を用いてO1 Campos、A2001 Argentina、A24 Cruzeiroに対するVN titerを確認した。その結果、MDA(+)群及びMDA(-)群に対するVN力価は、それぞれ陽性(positive)及び陰性(negative)に正確に区分されており、これらの動物を用いてそれぞれの群に対するワクチン接種を行った。
【0105】
0~84dpvのそれぞれの採血時間別血清を用いてO PA2、A22に対するVN
titersを確認した結果、母ブタが接種したワクチン内のワクチン株抗原と、本発明で接種したワクチン内の抗原とが互いに異なるため、MDA(+)/MDA(-)群を問わず、O PA2、A22に対するVN titersは、初期(0dpv)に防御レベル以下である<1.2 Log10を示し、O PA2-C3d+A22-C3dの2価試験ワクチンの投与によって母体移動抗体陽性/陰性群においていずれもO PA2+A22 2価試験ワクチンの投与時にさらに有意に高いVN力価を示した(図7)。
【0106】
以上の結果から、母体移行抗体干渉克服のために開発された免疫増強口蹄疫ワクチン株
であるO PA2-C3dとA22-C3dは、母体移行抗体の存在時にも免疫寛容などの干渉現象を克服して宿主内で効果的に能動免疫を誘導することができると判断される。また、現在用いられているワクチンプログラムに従って母体移行抗体が減少する時期である8~12週齢の目的動物(ブタ)への接種時にも、強力な体液性免疫反応の誘導が可能であると判断される。これは、抗原にスパイク(spiking)されているC3dがB細胞表面受容体を持続的に刺激してB細胞を直接活性化させる一方、免疫原性の高いO PA2-C3d抗原とA22-C3d抗原が強力なT細胞媒介細胞性免疫反応を誘導することにより、より効率的な高力価抗体及び中和抗体価の生産が可能であるためと判断される。
【0107】
これを証明するために、MDA(+)/MDA(-)ブタにおけるO PA2-C3d+A22-C3d抗原を含有する2価試験ワクチン媒介細胞性免疫反応を確認した。陽性対照群(PC)の場合には、バックボーン株(backbone strain)であるO PA2+A22抗原を含有する2価試験ワクチンを投与され、陰性対照群(NC)の場合には、PBSを投与された。O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンは、MDA(+)/MDA(-)条件の両方でワクチン接種初期(7dpv)に抗ウイルス効果を有するタイプI IFNの発現を非常に高いレベルに増加させることが確認され、FMDV感染に対してワクチン接種の初期に宿主を効果的に防御することができると期待された。Tヘルパー(Th)1細胞関連サイトカインであるIFNγの場合、IFNα、IFNβに比べては発現量が低いが、>2 fold-change以上の有意な発現を示すため(p<0.05)、T細胞媒介細胞性免疫反応を効果的に誘導すると判断された。インフラマソーム(Inflammasome)の活性に関与するIL-1βとTh17細胞、非伝統的な(unconventional)T細胞(γδT細胞)由来IL-17Aの発現も、C3dが挿入されたワクチン株から分離、精製した抗原を投与した実験群で非常に高かった。先行研究を通じて、IL-23p19とIL-23Rの発現が宿主の初期防御において非常に重要であることが明らかになったが、本発明においても、これらの発現は、初期に「サイトカインストーム」レベルを示し、その後に正常化されることが分かった。
【0108】
樹状細胞(Dendritic cells、DCs)、マクロファージ(MΦs)などの先天性免疫細胞において病原体認識受容体(PRRs)の刺激を介して、IL-23Aが分泌されると先天性様(innate-like)免疫細胞である非伝統的なT細胞表面のIL-23Rに結合して細胞を刺激し、IL-17Aを生産する。生産されたIL-17Aは、病原体の感染部位に好中球を募集してNET(neutrophil extracellular trap)を形成して病原体をNETosisさせることにより、宿主の初期防御に決定的な役割を果たす。
【0109】
また、IL-23/IL-17A axisは、先天性免疫と適応性免疫とを連結(link)することが知られており、O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンがこのような炎症性サイトカインの分泌を介して先天性免疫反応と適応性免疫反応を同時に誘導すると考えられる。
【0110】
CD4ThサブセットとCD4T制御性細胞(Tregs)の分化及び生存において中心的な役割を果たし、記憶細胞の生成に必須的なT細胞成長因子であるIL-2とTregsの発達とDCsにおいて免疫学的耐性(immunological tolerance)の誘導に関与することが知られているTGFβの場合、実験群でやや高かったが、各群間の有意性は観察されなかった。抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現も、実験群で有意に増加したが(p<0.05)、これは、炎症性サイトカインの「サイトカインストーム」を調節するための宿主の恒常性によるものと推測される。Th2細胞由来のサイトカインであるIL-4、IL-6の発現は、MDA(+)群がMDA(-
)群に比べて高いため、母体移行抗体による受動免疫の存在の際にこれらのサイトカイン発現レベルが増加すると判断された。
【0111】
T細胞受容体(TCR)シグナルと協力してT細胞の活性化を促進するCD80及びCD86共刺激シグナル伝達は、O PA2-C3d+A22-C3d投与群で増加し、これらの免疫増強口蹄疫ワクチン株が抗原を効果的にT細胞に提示してT細胞を効果的に刺激することができると判断される。
【0112】
MHCクラスIの場合、MDA(+)群ではMDA(-)群に比べて遺伝子発現が高く、ワクチン接種群ではむしろNC群に比べてさらに低かったが、受動免疫の存在時に遺伝子の発現が低いため、ワクチン接種初期にcytotoxic CD8T細胞による抗原の認識が阻害される。これに対し、MHCクラスIIは、MDA(+)群に比べてMDA(-)群で高い発現を示し、群間の有意性はなかったが、実験群で増加する傾向を示した。これから、C3d挿入免疫増強ワクチン株の抗原がAPC(DCs、MΦs、B細胞など)によるMHCクラスIIの提示を介してエフェクター(effector)細胞の協同と調節を誘導するCD4T細胞を活性化させることが確認され、MHC複合体との相互作用によって持続的な細胞-細胞接触形成及びT細胞の活性化を誘導することができると判断される。
【0113】
一方、直接的なC3dの受容体であるCD21の発現は、C3dが融合した口蹄疫ワクチン株抗原を含む試験ワクチンの接種によって、MDA(+)/(MDA(-)条件ですべて有意に増加して(p<0.01、p<0.0001)、FMDV表面のC3dの刺激及びCD21の結合によってB細胞の活性化が可能であると見られる。
【0114】
T細胞活性の際に共刺激され、記憶T細胞の誘導に重要な役割を果たす共刺激シグナルであるCD28及びICOSの発現は、O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンの投与時に、MDA(+)/MDA(-)条件で著しく高く増加した(CD28:p<0.0001;p<0.05;ICOS:p<0.01;p<0.00001)。特に、ICOSの発現は、実験群とPC群との有意的な差を誘導したが(MDA(+):p<0.05;MDA(-):p<0.0001)、C3d融合口蹄疫ワクチン株抗原がT細胞、リンパ球の共刺激を増加させてIFNγの有意な発現を誘導した。また、ICOSは、免疫グロブリンドメインであって、IgA生成のための腸間免疫(intestinal immune)関係にも影響を及ぼすことが知られており、今後、全身免疫・粘膜免疫同時誘導のための口蹄疫ワクチン株への使用が可能であると期待される。CTLA4の発現も、ICOSの発現と類似した傾向を示すため、ICOSの発現によってCTLA pathwayが誘導されたと考えられ、誘導されたCTLA4は、細胞質ドメインにおける母体移行抗体干渉克服用口蹄疫ワクチンの接種時に、「サイトカインストーム」レベルの炎症性サイトカインの発現による自己免疫を抑制するための調節(regulatory)T細胞の転換を引き起こすと推測される。
【0115】
一方、本発明において、AHNAKの発現は、MDA(-)条件でO PA2-C3d+A22-C3d投与群で有意に増加し(p<0.001)、MDA(+)条件においても実験群が多少高かったが、各群間の有意性は観察されなかった。AHNAKは、以前に構造的スキャフォルド(scaffold)タンパク質として確認された700kDaの大きなタンパク質であって、細胞構造、細胞内輸送(trafficking)、細胞膜再生、調節された細胞外排出作用、T細胞分化及びT細胞活性化過程中のカルシウムシグナル経路などの様々な細胞過程に関与してきた。
【0116】
Cytolytic CD8T細胞(CTL)は、カルシウム依存的方式でウイルスに感染した細胞を死滅させる。AHNAKは、成熟したCTLでは発現されるが、nai
ve CD8T細胞では発現されず、免疫反応誘導のための適切な機能に必要なカルシウムの導入は非常に重要であると報告された。実際のANHAK欠損(Ahnak1-/-)CTLは、TCR刺激後のGranzyme B生産、細胞質活性(cytolytic activity)、IFNγ分泌の著しい減少を示したことがある。
【0117】
したがって、O PA2-C3d+A22-C3d抗原を含む試験ワクチンは、AHNAKの発現を介してT細胞の活性及びCTL反応を誘導することができると考えられる。
【0118】
また、本発明による免疫増強口蹄疫ウイルス抗原は、細胞性免疫反応の指標であるIFNγ分泌を誘導し、C3dが挿入されたFMDV抗原によって誘導された特定の細胞免疫反応を立証するために、「C3d」挿入FMDV(O PA2-C3d、A22-C3d)Ag媒介IFNγ分泌を、マウス腹膜洗浄液から分離した腹膜滲出細胞(PEC)とブタの全血から分離された末梢血単核細胞(PBMC)を用いたin vitro ELISpot分析によって確認した。
【0119】
その結果、O PA2-C3d及びA22-C3dから派生した不活性化FMDV抗原は、マウスPECs及びブタPBMCsに対する対照群よりも遥かに高いレベルのIFNγ分泌を誘導した(図8e)。まとめると、このような結果は、O PA2-C3d及びA22-C3dがTh1型免疫反応を誘導することができることを立証した。
【0120】
<実験例5>簡易キットにおける抗原量の測定及び野外株との鑑別可否の評価
本発明によって製造された組換え口蹄疫ウイルス2種、O PA2-C3d及びA22-C3dと陽性対照群(Positive control、PC)であるバックボーンウイルス2種、O PA2及びA22を用いて、不活化抗原を生産及び精製した。これらを用いて、簡易キットにおける抗原量の測定及び野外株との鑑別試験を行った結果、2.34ng(1/640dose)の少量でもSP陽性バンドを確認したとともに、NSPバンドが形成されていないことから野外株との鑑別が可能であることが分かった(図9)。スクロース密度勾配(Sucrose gradient)を介して精製された抗原(146s粒子)の電子顕微鏡(TEM)観察結果、146s粒子の形成に問題がないことを確認して、これを口蹄疫試験ワクチン抗原として利用しようとした(図10)。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9
図10
図11
【配列表】
2024540500000001.xml
【国際調査報告】