(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ユニバーサルサルベコウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241024BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241024BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241024BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20241024BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241024BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P31/14
A61K39/395 N
A61P37/04
A61K47/64
A61P43/00 107
C07K16/28
C07K14/165
C12N15/13
C12N15/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529428
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022082134
(87)【国際公開番号】W WO2023088968
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】509004712
【氏名又は名称】ベイラー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】518322621
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・エ・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴ、レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ミレイユ、セントリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ、ラカバラツ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン、カルディノ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、サレノ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085AA16
4C085BA71
4C085BB11
4C085CC04
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
サルベコウイルス(ベータコロナウイルス属のB系統)は、過去20年間に、2003年のSARS-CoVと2019年からのSARS-CoV-2との二回の大流行を引き起こした。SARS-CoV-2ワクチンは、罹患率と死亡率を減少させるために不可欠である。したがって、このクラスのウイルスに対するユニバーサルワクチンは、現在の世界的流行を終わらせるだけでなく、自然界から継続的に見いだされるSARSのようなウイルスのさらなる変種の出現や将来の大流行を防止するためにも重要である。そこで、本発明者らは、重鎖がSAR-CoV-2のタンパク質Nポリペプチドにコンジュゲート又は融合し、軽鎖がRBDポリペプチドに融合した、抗原提示細胞(すなわち、樹状細胞)の表面抗原(すなわち、CD40)に対する抗体を産生した。特に、本発明者らは、前記抗体がサルベコウイルスに対する免疫応答を誘導できることを示している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体であって、
-重鎖は、配列番号1の276位の残基から411位の残基まで及ぶNpep2ポリペプチドとコンジュゲート又は融合し、
-軽鎖は、
・配列番号2の319位のアミノ酸残基から541位のアミノ酸残基まで及び、K417N、L452R、T478K、E484K、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド、又は
・配列番号2の319位のアミノ酸残基から541位のアミノ酸残基まで及び、K417N、L452R、T478K、E484Q、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド
とコンジュゲート又は融合する、
抗体。
【請求項2】
IgG抗体、好ましくはIgG1若しくはIgG4抗体、又はなお一層好ましくはIgG4抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体及びIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、並びにASPGRと特異的に結合する抗体から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
CD40に対して特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
-12E12抗体由来であり、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hがアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号3)を有し、前記CDR2Hがアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号4)を有し、前記CDR3Hがアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号5)を有する、重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lがアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有し、前記CDR2Lがアミノ酸配列YTSILHS(配列番号7)を有し、前記CDR3Lがアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号8)を有する、軽鎖と
を含むか、又は
-11B6抗体由来であり、
・前記相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hがアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号9)を有し、前記CDR2Hがアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号10)を有し、前記CDR3Hがアミノ酸配列EDYVY(配列番号11)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lがアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号12)を有し、前記CDR2Lがアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号13)を有し、前記CDR3Lがアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号14)を有する、軽鎖と
を含むか、又は
-12B4抗体由来であり、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hがアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号15)を有し、前記CDR2Hがアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号16)を有し、前記CDR3Hがアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号17)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lがアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号18)を有し、前記CDR2Lがアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号19)、及び前記CDR3Lがアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号20)を有する軽鎖と
を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗CD40抗体が、表Aに記載する選択されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5及びmAb6からなる群から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
ランゲリンに対して特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
-15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、前記15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含むか、又は
-2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、前記2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含むか、又は
-4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、前記4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
表Bに記載する選択されたmAb7、mAb8、及びmAb9からなる群から選択される、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記重鎖及び/又は前記軽鎖が、配列番号38(FlexV1)、配列番号39(f1)、配列番号40(f2)、配列番号41(f3)及び配列番号42(f4)からなる群から選択されるリンカーを介して前記RBDポリペプチド又はNpep2ポリペプチドと融合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
i)前記RBDポリペプチドと融合して、配列番号43に記載する融合タンパク質を形成する軽鎖と、ii)前記Npep2ポリペプチドと融合して、配列番号45に記載する融合タンパク質を形成する前記重鎖とを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項13】
i)前記RBDポリペプチドに融合して配列番号44に記載する融合タンパク質を形成する軽鎖と、ii)前記Npep2ポリペプチドと融合して、配列番号45に記載する融合タンパク質を形成する前記重鎖とを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコード化する核酸。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含むベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸及び/又は請求項15に記載のベクターによってトランスフェクト、感染、又は形質転換された宿主細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の抗体を含むワクチン組成物。
【請求項18】
治療上有効量の請求項1に記載の抗体を投与することを含む、サルベコウイルスに対してそれを必要とする対象にワクチン接種する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、特にウイルス学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
サルベコウイルス(ベータコロナウイルス属のB系統)は、過去20年間に、2003年のSARS-CoVと2019年からのSARS-CoV-2との二回の大流行を引き起こした。コロナウイルス誘発性疾患2019(COVID-19)は、実際には、人獣共通感染症ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされ、これは、2020年とその翌半年間に急速に広がり、世界中で1億人以上に感染し、200万人以上が死亡した。世界的流行を永続的に制御するには、集団ワクチン接種が必要であり、そのための最初のワクチン候補は2020年末に利用可能になった。これまでに認可されたヒト用のベクター系ワクチンの数は限られているが、組換えDNAベクター及び合成mRNAワクチンは、遺伝子工学の可能性が高く、急速に拡張可能であるために、COVID-19に対する闘いで最先端のものとなっている1、2、3、4。ヒトへの使用に関して、利点がリスクを上回るとして、mRNA由来ワクチン、ベクター系ワクチン、ウイルス不活化ワクチンをはじめとするいくつかのワクチンが、ヒトでの疾患の蔓延と闘うための緊急時使用として認可されている3,5,6,7,8,9,10,11。最近では、CD40を発現する抗原提示細胞に対するウイルス抗原を標的とする新世代サブユニットワクチンが報告された12。SARS-CoV-2スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)は、現在のワクチンの主な免疫原である。しかしながら、コロナウイルスのスパイクは、異なる種や変異体間で相当な遺伝的多様性を示す。さらに、回復期のCOVID-19患者はSARS-CoV-2に対して交差中和活性をほとんど示さず、現在の免疫原は、サルベコウイルスに対して広範な防御を引き起こさない可能性があることが示唆される。したがって、このクラスのウイルスに対するユニバーサルワクチンは、現在の世界的流行を終わらせるだけでなく、自然界から継続的に見いだされるSARSのようなウイルスのさらなる変種の出現や将来の大流行を防止するためにも重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は特許請求の範囲によって規定される。特に、本発明は、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体であって、重鎖がNpep2ポリペプチドとコンジュゲート若しくは融合し、軽鎖が
K417N、L452R、T478K、E484K、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド、又は
K417N、L452R、T478K、E484Q、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド
とコンジュゲート若しくは融合する抗体に関する。
【0004】
本発明はまた、ユニバーサルサルベコウイルスワクチンとしての前記抗体の使用にも関する。
【発明の詳細な説明】
【0005】
定義
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という語は本明細書では同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。この語には、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、又は標識化成分とのコンジュゲーションなど、修飾されたアミノ酸ポリマーも含まれる。ポリペプチドは、遺伝子療法に関連して議論する場合、各々のインタクトなポリペプチド、又はそれらの任意のフラグメント若しくは遺伝子操作された誘導体であって、インタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持するものを指す。
【0006】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はそれらの類似体を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドやヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよく、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリ前又はアセンブリ後に付与することができる。ポリヌクレオチドという語は、本明細書中で使用する場合、二本鎖及び一本鎖分子を同義的に指す。特に指定されているか又は必要とされる場合を除き、本明細書中で記載する本発明のポリヌクレオチドの任意の実施形態は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られているか又は予想される二つの相補性一本鎖形態の各々との両方を包含する。
【0007】
本明細書で使用する場合、「コード化する」という語は、例えば、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列が、所定のヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA、mRNA)又は所定のアミノ酸配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成用テンプレートとして機能する固有の特性及びそれから得られる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、又はRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞又は他の生物学的系においてタンパク質が産生される場合に、タンパク質をコード化する。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表に提示されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写用テンプレートとして使用される非コード鎖はどちらも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコード化するということができる。別段の定めがない限り、「アミノ酸配列をコード化するヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコード化する全てのヌクレオチド配列が含まれる。「タンパク質又はRNAをコード化するヌクレオチド配列」という語句には、タンパク質をコード化するヌクレオチド配列が何らかの形でイントロンを含む可能性がある限り、イントロンも含まれ得る。
【0008】
本明細書で使用する場合、「由来の」という表現は、それによって、第一成分(例えば、第一ポリペプチド)、又は当該第一成分からの情報が、異なる第二成分(例えば、第一ポリペプチドとは異なる第二ポリペプチド)を単離、誘導、又は作製するために使用されるプロセスを指す。
【0009】
本明細書で使用する場合、二つの配列間の「同一性パーセント」は、二つの配列の最適アラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較と二つの配列間の同一性パーセントの決定は、以下に記載するように、数学的アルゴリズムを用いて実行できる。二つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunschアルゴリズム(Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970).“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology.48(3):443-53)を使用して決定できる。二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、例えば、EMBOSS Needle(ペアワイズアラインメント;www.ebi.ac.ukで入手可能)などのアルゴリズムを用いて決定することもできる。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックス、「ギャップオープンペナルティ」10、「ギャップエクステンドペナルディ」0.5、偽「エンドギャップペナルティ」、「エンドギャップオープンペナルティ」10及び「エンドギャップエクステンドペナルディ」0.5で使用できる。一般に、「同一性パーセント」は、一致する位置の数を比較する位置の数で割り、100をかけた関数である。例えば、アラインメント後の二つの比較配列間で10個の配列位置のうちの6個が同一である場合、同一性は60%である。%同一性は、典型的には、分析が実施されるクエリー配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列又は核酸配列を有する二つの分子は、化学的及び/又は生物学的修飾に関係なく同一である。本発明によると、第一アミノ酸配列が第二アミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するということは、第一配列が第二アミノ酸配列と90;91;92;93;94;95;96;97;98;99又は100%の同一性を有することを意味する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「コロナウイルス」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、コロナウイルス科のメンバーのうちの任意のメンバーを指す。コロナウイルスは、そのゲノムがウイルスの種類に応じて約27kb~約33kbの長さのプラス鎖RNAであるウイルスである。ビリオンRNAは、5’末端にキャップを有し、3’末端にポリAテールを有する。RNAの長さにより、コロナウイルスはRNAウイルスゲノムのうちで最大となる。特に、コロナウイルスRNAは:(1)RNA依存性RNAポリメラーゼ;(2)N-タンパク質;(3)三つのエンベロープ糖タンパク質;及び(4)三つの非構造タンパク質をコード化する。これらのコロナウイルスは、様々な哺乳類や鳥類に感染する。呼吸器感染症(一般)、腸管感染症(主に、12カ月を超える乳児)、そして場合によっては神経学的症候群を引き起こす。コロナウイルスは、呼吸器分泌物のエアロゾルによって伝染する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「ベータコロナウイルス」という語は、β-CoV又はベータCoVとしても知られ、当該技術分野における一般的な意味を有し、コロナウイルスの四つの属(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)のうちの一つを指す。ベータコロナウイルス属は、A、B、C、Dの四つの系統を含む。
【0012】
本明細書で使用する場合、「サルベコウイルス」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、ベータコロナウイルスのB系統を指す。ヒトに関して臨床的に最も重要なサルベコウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV又はSARS-CoV-1)及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。亜属には、限定されるものではないが、コウモリSC2r-CoV RaTG13、コウモリSC2r-CoV RacCS203、センザンコウSC2r-CoV GX-P4L、センザンコウSC2r-CoV GX-P5L、コウモリSC2r-CoV ZC45、コウモリSC2r-CoV ZXC21、コウモリSC2r-CoV Rc-o319、コウモリSC1r-CoV WIV1、コウモリCoV WIV16、コウモリCoV Rs3367、コウモリCoV LYRa11、コウモリSC1r-CoV Cp/雲南2011、コウモリCoV Rs-YN2018B、コウモリCoV Rs7327、コウモリCoV RsSHC014、コウモリCoV Rs4231、コウモリCoV Rs4084、コウモリCoV Rs4081、コウモリCoV Rs672、コウモリCoV Rs4237、コウモリSC1r-CoV YNLF_31C、コウモリSC1r-CoV Rp3、BtRl-ベータCoV/SC2018、コウモリSC1r-CoV Rf1、コウモリSC1r-CoV HeB2013、コウモリSC1r-CoV Rp/陝西2011、コウモリSC1r-CoV Rm1、コウモリSC1r-CoV HuB2013、コウモリSC1r-CoV HKU3-1、コウモリSC1r-CoV 龍泉-140、コウモリSC1r-CoV BM48-31/BGR/2008、及びコウモリSC1r-CoV BtKY72も含まれる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」又は「SARS-Cov-2」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、軽度上気道疾患(普通感冒のような症状)に似た臨床病理、時として重篤な下気道疾患や肺外症状を示し、多臓器不全や死に至る呼吸器症候群であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルス株を指す。
【0014】
本明細書で使用する場合、「核タンパク質」又は「タンパク質N」という語は、プラス鎖ウイルスゲノムRNAをらせん状リボヌクレオカプシド(RNP)にパッケージングし、ウイルスゲノム及び膜タンパク質Mとの相互作用を通してビリオンアセンブリ中に基本的な役割を果たすSARS-CoV-2タンパク質を指す。典型的には、核タンパク質は配列番号1に記載するアミノ酸配列を有する。
【0015】
【0016】
本明細書で使用する場合、「Npep2ポリペプチド」という語は、SAR-CoV-2のタンパク質N由来であり、配列番号1の276位の残基から411位の残基まで及ぶアミノ酸配列からなるSARS-CoV-2ポリペプチドを指す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「スパイクタンパク質」又は「タンパク質S」という語は、その細胞受容体(すなわち、ACE2)と結合し、膜融合及びウイルス侵入を仲介するSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質を指す。三量体Sタンパク質の各モノマーは約180kDaであり、それぞれ付着及び膜融合を仲介する二つのサブユニットS1及びS2を含有する。特に、スパイクタンパク質S1は、「RBD」とも呼ばれる「受容体結合ドメイン」を介して宿主受容体(すなわち、ヒトACE2受容体)と相互作用することによって、ビリオンを細胞膜に付着させる。スパイクタンパク質S2は、クラスIウイルス融合タンパク質として作用することによって、ビリオンと細胞膜との融合を仲介する。現在のモデルでは、タンパク質には少なくとも三つのコンフォメーション状態、すなわち、融合前のネイティブ状態、ヘアピン前の中間状態、融合後のヘアピン状態がある。ウイルス及び標的細胞膜融合の間、コイルドコイル領域(7反復)は、ヘアピン三量体構造をとり、融合ペプチドを外部ドメインのC末端領域にごく接近して配置する。この構造の形成は、ウイルス及び標的細胞膜の接着とその後の融合を促進するようである。スパイクタンパク質S2’は、ウイルス融合ペプチドとして作用し、ウイルスエンドサイトーシスに際して起こるS2切断後にアンマスクされる。典型的には、スパイクタンパク質は、配列番号2に記載するようなアミノ酸配列を有する。
【0018】
【0019】
本明細書において使用する場合、「RBDポリペプチド」という語は、配列番号2における319位のアミノ酸残基から541位のアミノ酸残基まで及ぶアミノ酸配列からなるポリペプチドを指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「変異」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、置換、欠失又は挿入を指す。特に、「置換」という語は、特定の位置の特定のアミノ酸残基が除去され、同じ位置に別のアミノ酸残基が挿入されることを意味する。本明細書では、変異は標準的な変異命名法に従って言及される。特に、「変異」という語には、「自然発生変異」及び「非自然発生突然変異」が含まれる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「自然発生突然変異」という語は、SARS-CoV-2ポリペプチドの自然発生突然変異体において見出すことができる任意の変異を指し、典型的には、B.1.1.7系統(別名20I/501Y.V1懸念される変異株(VOC)202012/01又はアルファVOC)、B.1.351系統(別名20H/501Y.V2又はベータVOC)及びP.1系統(別名20J/501Y.V3又はガンマVOC)及びB.1.617.2系統(別名デルタVOC)が挙げられる。前記変異は当該技術分野では周知であり、参照により組み込まれる以下の文献に記載されているものが含まれる:
(1) Jie Hu et al. The D614G mutation of SARS-CoV-2 spike protein enhances viral infectivity and decreases neutralization sensitivity to individual convalescent sera. bioRxviv (2020).
-(2) Korber B. et al.Spike mutation pipeline reveals the emergence of a more transmissible form of SARS-CoV-2. bioRxviv (2020). doi.org/10.1101/2020.04.29.069054.
-(3) Lizhou Zhang et al. The D614G mutation in the SARS-CoV-2 spike protein reduces S1 shedding and increases infectivity. bioRxviv (2020). doi.org/10.1101/2020.06.12.148726.
-(4) Junxian Ou et al. Emergence of RBD mutations in circulating SARS-CoV-2 strains enhancing the structural stability and human ACE2 receptor affinity of the spike protein. bioRxiv (2020). doi:10.1101/2020.03.15.991844v4
-(5) Saha, P. et al.Mutations in Spike Protein of SARS-CoV-2 Modulate Receptor Binding, Membrane Fusion and Immunogenicity: An Insight into Viral Tropism and Pathogenesis of COVID-19. chemRxiv (2020). doi:10.26434/chemrxiv.12320567.v1
-(6) Jian Shang, Yushun Wan, Chuming Luo, Gang Ye, Qibin Geng, Ashley Auerbach, Fang Li. Cell entry mechanisms of SARS-CoV-2. Proceedings of the National Academy of Sciences May 2020, 117 (21) 11727-11734; DOI: 10.1073/pnas.2003138117
-(7) Allison J. Greaney, Andrea N. Loes, Katharine H.D. Crawford, Tyler N. Starr, Keara D. Malone, Helen Y. Chu, Jesse D. Bloom, bioRxiv 2020.12.31.425021; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.31.425021
-(8) Nicholas G. Davies, Rosanna C. Barnard, Christopher I. Jarvis, Adam J. Kucharski, James Munday, Carl A. B. Pearson, Timothy W. Russell, Damien C. Tully, Sam Abbott, Amy Gimma, William Waites, Kerry LM Wong, Kevin van Zandvoort, CMMID COVID-19 Working Group, Rosalind M. Eggo, Sebastian Funk, Mark Jit, Katherine E. Atkins, W. John Edmunds. Estimated transmissibility and severity of novel SARS-CoV-2 Variant of Concern 202012/01 in England. medRxiv 2020.12.24.20248822; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.24.20248822
-(9) Houriiyah Tegally, Eduan Wilkinson, Marta Giovanetti, et al. Emergence and rapid spread of a new severe acute respiratory syndrome-related coronavirus 2 (SARS-CoV-2) lineage with multiple spike mutations in South Africa. medRxiv 2020.12.21.20248640; doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.21.20248640
-(10) Kim JS, Jang JH, Kim JM, Chung YS, Yoo CK, Han MG. Genome-Wide Identification and Characterization of Point Mutations in the SARS-CoV-2 Genome. Osong Public Health Res Perspect. 2020;11(3):101-111. doi:10.24171/j.phrp.2020.11.3.05
-(11) Nilgiriwala K, Mandal A, Patel G, Mestry T, Vaswani S, Shaikh A, Sriraman K, Parikh S, Udupa S, Chatterjee N, Shastri J, Mistry N. Genome Sequences of Five SARS-CoV-2 Variants from Mumbai, India, Obtained by Nanopore Sequencing. Microbiol Resour Announc. 2021 Apr 15;10(15):e00231-21
【0022】
例えば、変異N501Yは、それぞれ、イングランド南東部、ブラジル/日本、及び南アフリカで最初に特定された三つのSARS-CoV-2系統B.1.1.7、P.1(別名20J/501Y.V3)及び501Y.V2が共有するS-タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内の非同義変異である。これはRBD内の重要な接触残基の一つであり、ヒト及びマウスACE2に対する結合親和性を増加させることが確認されている。それぞれ南アフリカ及びブラジルからの新しい系統501Y.S2及びB.1.1.28並びにインドからのB1.617.1(注目すべきカッパ変異株)に存在するSタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内のE484K及びE484Q変異は、多くの中和抗体の結合について重要であることが示されているRBD内の残基に影響を及ぼす。したがって、この変異は、抗体認識に影響を及ぼし、SARS-CoV-2免疫回避を可能にする。この変異を有するウイルスは、回復期の人の血清中の抗体による認識を回避することが示されており、したがって、ワクチンの有効性を変える可能性がある(例えば、Allison J.Greaney,Andrea N.Loes,Katharine H.D.Crawford,Tyler N.Starr,Keara D.Malone,Helen Y.Chu,Jesse D.Bloom,bioRxiv 2020.12.31.425021を参照)。K417N、L452R、T478K、及びE484K/E484Q変異をはじめとするいくつかの他の変異が見いだされている。したがって、本発明によると、主な自然発生突然変異としては、配列番号2の417位のアミノ酸残基(K)がアミノ酸残基(N)で置換されているK417N変異、配列番号2の452位のアミノ酸残基(L)がアミノ酸残基(R)で置換されているL452R変異、配列番号2の478位のアミノ酸残基(T)がアミノ酸残基(K)で置換されているT478K変異及び配列番号2の484位のアミノ酸残基(E)がアミノ酸残基(K)又は(Q)で置換されているE484K又はE484Q変異、及び配列番号2の501位のアミノ酸残基(N)がアミノ酸残基(Y)で置換されているN501Y変異が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「非自然発生突然変異」という語は、本発明のポリペプチドに遺伝的に挿入された任意の変異を指す。特に、前記変異はポリペプチドの産生を容易にするために挿入される。例えば、前記変異には、配列番号2の変異C538Sが含まれ、配列番号2の538位のアミノ酸残基(C)がアミノ酸残基(S)で置換されている。前記変異は、本発明のポリペプチド内でのジスルフィド結合の形成を回避するのに特に適している。
【0024】
本明細書で使用する場合、「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」という語は、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するように、DNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入できるビヒクルを意味する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「プロモーター/制御配列」という語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始し、それによってプロモーター/制御配列と機能的に連結された遺伝子産物の発現を可能にするのに必要な、細胞の合成装置、又は導入された合成装置によって認識される核酸配列(例えば、DNA配列)を指す。ある例では、この配列はコアプロモータ配列であってよく、他の例では、この配列は、エンハンサー配列や、遺伝子産物の発現に必要な他の調節エレメントも含んでもよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであってよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「機能的に連結された」又は「転写制御」という語は、制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結であって、後者の発現をもたらすものを指す。例えば、第一核酸配列が第二核酸配列と機能的関係にされる場合に、当該第一核酸配列は当該第二核酸配列と機能的に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、当該プロモーターは当該コード配列に機能的に連結される。機能的に連結されたDNA配列は、互いに近接させることができ、例えば、二つのタンパク質コード領域を結合させる必要がある場合には、同じリーディングフレーム内にある。
【0027】
本明細書で使用する場合、「形質転換」という語は、「外来」(すなわち、外因性又は細胞外)遺伝子、DNA又はRNA配列を宿主細胞に導入することで、宿主細胞が、導入された遺伝子又は配列を発現し、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生することを意味する。導入されたDNA又はRNAを受け取り、発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0028】
本明細書で使用する場合、「発現系」という語は、宿主細胞及び適合性ベクターであって、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現に適した条件下のものを意味する。
【0029】
本明細書で使用する場合、「コンジュゲート」または同義的に「コンジュゲートされたポリペプチド」という語は、一つ以上のポリペプチドの共有結合によって形成される複合又はキメラ分子を示すことが意図される。「共有結合」又は「コンジュゲーション」という語は、ポリペプチド及び非ペプチド部分が、互いに直接的に共有結合しているか、又はブリッジ、スペーサ、若しくは連結部分などの介在部分を介して互いに間接的に共有結合していることを意味する。特定のコンジュゲートは融合タンパク質である。
【0030】
本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」という語は、別のタンパク質に由来する二つ以上のポリペプチドの結合により創出されるタンパク質を指す。特に、融合タンパク質は、組換えDNA技術で創出することができ、典型的には、生物学的研究または治療法で使用される。融合タンパク質はまた、融合タンパク質のポリペプチド部分間のリンカーの有無にかかわらず、化学的共有コンジュゲーションを介して創出することもできる。融合タンパク質では、二つ以上のポリペプチドが直接的又はリンカーを介して融合している。
【0031】
本明細書で使用する場合、「直接的」という語は、第一ポリペプチドのN末端の第一アミノ酸が、第二ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸と融合していることを意味する。この直接融合は、(Vigneron et al.,Science 2004,PMID15001714)、(Warren et al.,Science 2006,PMID16960008)、(Berkers et al.,J.Immunol.2015a,PMID26401000)、(Berkers et al.,J.Immunol.2015b,PMID26401003)、(Delong et al.,Science 2016,PMID 26912858)(Liepe et al.,Science 2016,PMID27846572)、(Babon et al.,Nat.Med.2016,PMID27798614)で記載されるように、自然に起こり得る。
【0032】
本明細書で使用する場合、「リンカー」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、タンパク質が適切な二次及び三次構造を形成することを確実にするために充分な長さのアミノ酸配列を指す。いくつかの実施形態において、リンカーは、少なくとも一つであるが30個未満のアミノ酸を含むペプチド性リンカーであり、例えば、2~30個のアミノ酸、好ましくは10~30個のアミノ酸、より好ましくは15~30個のアミノ酸、なお一層好ましくは19~27個のアミノ酸、最も好ましくは20~26個のアミノ酸を含むペプチド性リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30個のアミノ酸残基を有する。典型的には、リンカーは、化合物が適切なコンフォメーション(すなわち、IL-15Rベータ/ガンマシグナル伝達経路を介した適切なシグナル伝達活性を可能にするコンフォメーション)をとることを可能にするものである。最も好適なリンカー配列は、(1)柔軟で拡張されたコンフォメーションをとり、(2)融合タンパク質の機能的ドメインと相互作用できる規則正しい二次構造を生じる傾向を示さず、(3)機能性タンパク質ドメインとの相互作用を促進できる疎水性又は荷電特性が最小限である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「抗体」という語は、イムノグロブリン分子及びイムノグロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。げっ歯類や霊長類の自然抗体では、二本の重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合し、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖と結合している。軽鎖には、ラムダ(1)とカッパ(k)の二種類がある。抗体分子の機能活性を決定する五つの主な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEがある。各鎖は異なる配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体では、軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)の二つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)と三つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、総称してCH)の四つのドメインを含む。軽(VL)鎖及び重(VH)鎖両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽(CL)鎖及び重(CH)鎖の定常領域ドメインは、抗体鎖結合、分泌、経胎盤性移動度、補体結合、Fc受容体(FcR)に対する結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは、イムノグロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、一本の軽鎖と一本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造相補性にある。抗体結合部位は、主に高頻度可変性又は相補性決定領域(CDR)由来の残基で構成される。場合によっては、非高頻度可変性若しくはフレームワーク領域(FR)由来の残基が抗体結合部位に関与する可能性があったり、又は全体的なドメイン構造、ひいては結合部位に影響を及ぼす可能性があったりする。相補性決定領域又はCDRは、一緒になって、天然のイムノグロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を規定するアミノ酸配列を指す。イムノグロブリンの軽鎖及び重鎖は、それぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と称する、三つのCDRを有する。したがって、抗原結合部位は、典型的には、重及び軽鎖V領域の各々から設定されたCDRを含む、六つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖及び重鎖の可変領域は、典型的には、以下の配列の四つのフレームワーク領域と三つのCDRとを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗体可変ドメイン中の残基は、Kabatらによって考案されたシステムにしたがって慣例的に採番される。このシステムは、Kabatら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(Kabat et al.、1992、以下、「Kabat et al.」)に記載されている。Kabat残基の表記は、SEQ ID配列内のアミノ酸残基の線形ナンバリング(linear numbering)と必ずしも直接的に対応するとは限らない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本的可変ドメイン構造のフレームワーク又は相補性決定領域(CDR)のいずれであっても、構造成分の短縮又は構造成分への挿入に対応する厳密なKabatナンバリングよりも少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。残基の正しいKabatナンバリングは、「標準的」Kabat採番配列と抗体の配列における相同性の残基のアラインメントにより所定の抗体について決定できる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムによると、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)及び残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムによると、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)及び残基89~97(L-CDR3)に位置する。以下で記載するアゴニスト抗体について、CDRは、www.bioinf.org.ukからのCDR検索アルゴリズムを用いて決定される。抗体のページの表題「配列を見てCDRを特定する方法」のセクションを参照。
【0034】
本明細書で使用する場合、「イムノグロブリンドメイン」という語は、抗体鎖(例えば、重鎖抗体鎖若しくは軽鎖)の球状領域、又はそのような球状領域から本質的になるポリペプチドを指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という語は、天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む、イムノグロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般的に、IgG抗体のC226位又はP230位からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むと定義される。Fc領域における残基のナンバリングは、KabatのEU指数のナンバリングである。Fc領域のC末端リジン(残基K447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に除去され得る。したがって、本発明の抗体組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という語は、非ヒト抗体のVHドメイン及びVLドメインと、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインとを含む抗体を指す。一実施形態において、「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるか若しくは改変されたクラス、エフェクター機能及び/又は種、或いはキメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、アゴニスト分子、例えば、CD40リガンド、ホルモン、成長因子、薬物などの定常領域に結合するように、定常領域(すなわち、重鎖及び/又は軽鎖)、又はその一部が変更、置換、又は交換されている;或いは(b)可変領域、又はその一部が、異なるか又は改変された抗原特異性を有する可変領域と変更、置換、又は交換されている、抗体分子である。キメラ抗体には、霊長類化(primatized)、特に、ヒト化抗体も含まれる。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体で見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するためになされる。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照)。
【0037】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という語には、マウス抗体の六つのCDRを有するが、ヒト化フレームワーク及び定常領域も有する抗体が含まれる。さらに具体的には、「ヒト化抗体」という語には、本明細書において使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体も含まれ得る。
【0038】
本明細書において使用する場合、「ヒトモノクローナル抗体」という語は、ヒトイムノグロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン配列によってコード化されていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発によるか、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、一実施形態では、「ヒトモノクローナル抗体」という語は、本明細書において使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0039】
本明細書で使用する場合、「免疫応答」という語は、宿主の体内での抗原に対する免疫系の反応を指し、抗原特異的抗体及び/又は細胞性細胞傷害応答の生成を含む。初回抗原曝露に対する免疫応答(一次免疫応答)は、典型的には、数日から二週間までの遅延期後に検出可能であり、同じ抗原によるその後の刺激に対する免疫応答(二次免疫応答)は、一次免疫応答の場合よりも急速である。導入遺伝子産物に対する免疫応答は、導入遺伝子によってコード化される免疫原性産物に対して誘発され得る液性免疫応答(例えば、抗体応答)及び細胞性免疫応答(例えば、細胞溶解性T細胞応答)の両方を含み得る。免疫応答のレベルは、当該技術分野で公知の方法によって(例えば、抗体価を測定することによって)測定することができる。
【0040】
本明細書において使用する場合、「APC」又は「抗原提示細胞」という語は、T細胞を活性化できる細胞を指し、特定のマクロファージ、B細胞及び樹状細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本明細書で使用する場合、「樹状細胞」又は「DC」という語は、リンパ様又は非リンパ様組織で見られる形態学的に類似した細胞型の多様な集団の任意のメンバーを指す。これらの細胞は、それらの特徴的な形態、高レベルの表面MHC-クラスII発現によって特徴づけられる(Steinman,et al.,Ann.Rev.Immunol.9:271(1991);このような細胞に関する記載は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0042】
本明細書で使用する場合、「CD40」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、ヒトCD40ポリペプチド受容体を指す。いくつかの実施形態において、CD40は、UniProtKB-P25942によって報告されたヒトカノニカル配列のアイソフォームである(ヒトTNR5とも称する)。
【0043】
本明細書で使用する場合、「CD40アゴニスト抗体」という語は、B細胞増殖アッセイなどの細胞ベースのアッセイにおいてCD40Lの非存在下で、CD40媒介性シグナル伝達活性を増加させる抗体を指すことが意図される。特に、CD40アゴニスト抗体は、(i)フローサイトメトリ分析によるか又はCFSE標識細胞の複製希釈(replicative dilution)の分析によってインビトロで測定されるように、B細胞の増殖を誘導する;及び/又は(ii)樹状細胞活性化アッセイで、インビトロで測定されるように、IL-6、IL-12、又はIL-15などのサイトカインの分泌を誘導する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ランゲリン(Langerin)」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、ヒトC型レクチンドメインファミリー4メンバーKポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、ランゲリンは、UniProtKB-Q9UJ71によって報告されたヒトカノニカル配列のアイソフォーム(ヒトCD207とも称する)である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「対象」又は「それを必要とする対象」という語は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物を意図する。典型的には、患者は、サルベコウイルスに冒されているか、又はサルベコウイルスに感染している可能性が高い。
【0046】
本明細書で使用する場合、「Covid-19」という語は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2及びその変異体によって誘導される呼吸器疾患を指す。
【0047】
本明細書で使用する場合、「無症状」という語は、コロナウイルス感染症の検出可能な症状を経験していない対象を指す。本明細書で使用する場合、「症候性」という語は、コロナウイルス感染症の検出可能な症状を経験している対象を指す。コロナウイルス感染症の症状としては、疲労、無嗅覚、頭痛、咳、熱、呼吸困難が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「治療」又は「治療する」という語は、疾患に罹患するリスクがあるか、又は疾患に罹患した疑いのある患者、並びに病気であるか、又は疾患若しくは身体疾患を患っていると診断された患者の治療を含む、予防的(prophylactic又はpreventive)治療並びに治癒的又は疾患改変治療の両方を指し、臨床的再発の抑制を含む。治療は、医学的障害を有するか、又は最終的に障害を獲得する可能性のある患者に対して、障害若しくは障害の再発の予防、治癒、発症の遅延、重症度の軽減、若しくは一つ以上の症状の改善のために、又はそのような治療を行わない場合に予想されるよりも患者の生存率を延長するために、施すことができる。「治療レジメン」とは、疾患の治療パターン、例えば、治療中に使用される投薬パターンを意味する。治療レジメンには、誘導レジメン及び維持レジメンが含まれ得る。「誘導レジメン」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの一般的な目標は、治療レジメンの初期期間中に高レベルの薬物を患者に提供することである。誘導レジメンは、(部分的又は全体的に)「負荷レジメン」(loading regimen)を採用することができ、これには、維持レジメン中に医師が採用するよりも多量の薬剤を投与すること、維持レジメン中に医師が薬物を投与するよりも頻繁に薬物を投与すること、またはその両方が含まれる。「維持レジメン」又は「維持期間」という語句は、病気の治療中に患者の維持のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)であって、例えば、患者を長期間(数カ月又は数年)寛解状態に保つために使用されるものを指す。維持レジメンは、持続療法(例えば、毎週、毎月、毎年など、一定間隔で薬物を投与する)又は間欠療法(例えば、断続的治療、間欠式治療、再発時治療、若しくは特定の所定の基準[例えば、痛み、疾患の症候など]を達成した際の治療)を採用することができる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という語は、本明細書中に記載する組成物、又はその医薬的に許容される塩と、担体及び/又は賦形剤などの他の薬剤を指す。本明細書で提供される医薬組成物は、典型的には、医薬的に許容される担体を含む。
【0050】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される担体」という語には、所望の特定の剤形に適した、あらゆる溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散若しくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤若しくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などが含まれる。Remington’s Pharmaceutical-Sciences, Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬組成物の処方で用いられる様々な担体と、その調製のための公知技術を開示している。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ワクチン接種」又は「ワクチン接種する」という語は、特定の抗原に対して対象内で免疫応答を惹起するプロセスを意味するが、これに限定されるものではない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ワクチン組成物」という語は、免疫系応答を誘導するためにヒト又は動物に対して投与できる組成物を意味することが意図され;この免疫系応答は、ある特定の細胞、特に、APC、Tリンパ球及びBリンパ球の活性化をもたらすことができる。
【0053】
本明細書において使用する場合、「抗原」という語は、MHC分子によって処理され提示された場合、抗体又はT細胞受容体(TCR)によって特異的に結合させることができる分子を指す。抗原はさらに、免疫系によって認識することができ、及び/又は液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導して、Bリンパ球及び/又はTリンパ球の活性化をもたらすことができる。抗原は、一つ以上のエピトープ又は抗原部位(Bエピトープ及びTエピトープ)を有し得る。
【0054】
本明細書で使用する場合、「アジュバント」という語は、対象又は動物に投与された場合に、抗原に対する免疫応答を誘導及び/又は増強できる化合物を指す。また、一般的には、特定の抗原に対する特異的免疫応答を加速、延長、または質を高めるように作用する物質を意味することが意図される。本発明の文脈では、「アジュバント」という語は、自然免疫応答の一過性反応影響を及ぼすことによって自然免疫応答を増強し、かつ抗原提示細胞(APC)、特に、樹状細胞(DC)の活性化及び成熟化によって適応免疫応答のより長続きする効果を増強する化合物を意味する。
【0055】
本明細書で使用する場合、「治療上有効量」という表現は、医学的処置に適用可能な妥当な損益比で免疫応答を誘導するのに十分な本発明の活性成分の量を意味する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、免疫阻害性チェックポイントタンパク質の機能を阻害する任意の化合物を指す。本明細書において使用する場合、「免疫チェックポイントタンパク質」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、シグナルの増強(刺激性チェックポイント分子)又はシグナルの低下(阻害性チェックポイント分子)のいずれかの点でT細胞によって発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、当該技術分野では、CTLA-4及びPD-1依存性経路に類似した免疫チェックポイント経路を構成すると認識されている(例えば、Pardoll,2012.Nature Rev Cancer 12:252-264;Mellman et al.,2011.Nature 480:480-489を参照)。阻害性チェックポイント分子の例としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3及びVISTAが挙げられる。
【0057】
本発明の抗体:
本発明の第一の目的は、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体に関し、
-重鎖は、Npep2ポリペプチドにコンジュゲート若しくは融合し、
-軽鎖は、
・K417N、L452R、T478K、E484K、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド、又は、
・K417N、L452R、T478K、E484Q、及びN501Y自然発生突然変異を含み、C538S非自然発生突然変異を含むRBDポリペプチド
とコンジュゲート若しくは融合している。
【0058】
いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号1の276位の残基から411位の残基まで及ぶアミノ酸配列からなるNpep2ポリペプチドとコンジュゲート又は融合している。
【0059】
いくつかの実施形態において、抗体は:
-配列番号1の276位の残基から411位の残基まで及ぶのアミノ酸配列からなるNpep2ポリペプチドとコンジュゲート又は融合した重鎖と、
-K417N、L452R、T478K、E484K、及びN501Y自然発生突然変異並びにC538S非自然発生突然変異を含む配列番号2の319位のアミノ酸残基から541位のアミノ酸残基まで及ぶアミノ酸からなるRBDポリペプチドとコンジュゲート又は融合した軽鎖と、
を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、抗体は、
-配列番号1の276位の残基から411位の残基まで及ぶのアミノ酸配列からなるNpep2ポリペプチドとコンジュゲート又は融合した重鎖と、
-K417N、L452R、T478K、E484Q、及びN501Y自然発生突然変異並びにC538S非自然発生突然変異を含む配列番号2の319位のアミノ酸残基から541位のアミノ酸残基まで及ぶのアミノ酸からなるRBDポリペプチドとコンジュゲート又は融合した軽鎖と、
を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗体は、IgG抗体であり、好ましくはIgG1若しくはIgG4抗体であり、又はさらに好ましくはIgG4抗体である。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗体は、キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体である。
【0063】
いくつかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。
【0064】
キメラ又はヒト化抗体は、前記のように調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製できる。重鎖及び軽鎖イムノグロブリンをコード化するDNAは、関心対象のマウスハイブリドーマから得ることができ、標準的分子生物学技術を使用して非マウス(例えば、ヒト)イムノグロブリン配列を含むように操作できる。例えば、キメラ抗体を作製するために、マウス可変領域は、当該技術分野で公知の方法を用いてヒト定常領域に連結できる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作製するために、当該技術分野で公知の方法を用いてマウスCDR領域をヒトフレームワークに挿入できる。例えば、Winterの米国特許第5,225,539号、並びにQueenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号及び同第6,180,370号を参照のこと。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。
【0066】
ヒト抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を有する遺伝子導入マウス又は染色体導入マウスを用いて特定できる。これらの遺伝子導入マウス及び染色体導入マウスには、本明細書でそれぞれHuMAbマウス及びKMマウスと称するマウスが含まれ、本明細書では「ヒトIgマウス」と総称する。HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内因性μ及びκ鎖座位を不活性化する標的化変異とともに、未再配列ヒト重鎖(μ及びγ)並びにκ軽鎖イムノグロブリン配列をコード化するヒトイムノグロブリン遺伝子ミニ座位を含む(例えば、Lonberg,et al.,1994 Nature 368(6474):856-859を参照)。別の実施形態において、ヒト抗PD-1抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入染色体を有するマウスなど、導入遺伝子及び導入染色体上にヒトイムノグロブリン配列を有するマウスを用いて作製できる。このようなマウスは、本明細書で「KMマウス」と称するが、IshidaらのPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0067】
いくつかの実施形態において、抗体はプロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに対して特異的である。抗体は、B細胞又はマクロファージなどの別のプロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに対して特異的であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗体は、DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体及びIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、及びASPGRと特異的に結合する抗体から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体はCD40に対して特異的である。
【0070】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は12E12抗体由来であり、
-相補性決定領域CDR1H、CDR2H及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hはアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号3)を有し、前記CDR2Hはアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号4)を有し、前記CDR3Hはアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号5)を有する、重鎖と、
-相補性決定領域CDR1L、CDR2L及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lはアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有し、前記CDR2Lはアミノ酸配列YTSILHS(配列番号7)を有し、前記CDR3Lはアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号8)を有する、軽鎖と
を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は11B6抗体由来であり、
-相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hはアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号9)を有し、前記CDR2Hはアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号10)を有し、前記CDR3Hはアミノ酸配列EDYVY(配列番号11)を有する、重鎖と、
-相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号12)を有し、前記CDR2Lはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号13)を有し、前記CDR3Lはアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号14)を有する、軽鎖と
を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は12B4抗体由来であり、
-相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖であって、前記CDR1Hはアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号15)を有し、前記CDR2Hはアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号16)を有し、前記CDR3Hはアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号17)を有する、重鎖と、
-相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖であって、前記CDR1Lはアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号18)を有し、前記CDR2Lはアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号19)を有し、前記CDR3Lはアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号20)を有する、軽鎖と、
を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、表Aに記載するmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5及びmAb6からなる群から選択される。
【0074】
【0075】
【0076】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、
-可変ドメインが配列番号21に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号22に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、
-可変ドメインが配列番号23に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号22に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、
-可変ドメインが配列番号24に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号25に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、
-可変ドメインが配列番号26に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号27に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、
-可変ドメインが配列番号28に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号29に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、及び
-可変ドメインが配列番号30に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号31に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体
からなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体はCD40アゴニスト抗体である。CD40アゴニスト抗体は、WO2010/009346、WO2010/104747及びWO2010/104749に記載されている。開発中の他の抗CD40アゴニスト抗体には、Pfizerにより開発された完全ヒトIgG2CD40アゴニスト抗体であるCP-870,893が含まれる。これは、3.48×10-10MのKDでCD40と結合するが、CD40L(例えば、米国特許第7,338,660号参照)及び免疫原としてヒト膀胱がん細胞株を使用して生成された、マウス抗体クローンS2C6からSeattle Geneticsによって開発されたヒト化IgG1抗体であるSGN-40の結合をブロックしない。これは、1.0×10-9MのKDでCD40と結合し、CD40とCD40Lとの間の相互作用を増強することによって作用して、部分アゴニスト効果を示す(Francisco J A,et al.,Cancer Res,60:3225-31,2000)。さらに詳細には、CD40アゴニスト抗体は、表Aに記載するような選択されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5及びmAb6からなる群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体はランゲリンに対して特異的である。いくつかの実施形態では、抗体は、ATCC受入番号PTA-9852の抗体15B10に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、ATCC受入番号PTA-9853の抗体2G3に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、WO2011032161に記載されているような抗体91E7、37C1、又は4C7に由来する。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hを含む重鎖と、4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖とを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、表Bに記載するような選択されたmAb7、mAb8、mAb9からなる群から選択される。
【0083】
【0084】
【0085】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、
-可変ドメインが配列番号32に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号33に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、
-可変ドメインが配列番号34に記載する配列を有する重鎖と、可変ドメインが配列番号35に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体、及び
-配列番号36に記載する配列を有する重鎖と、配列番号37に記載する配列を有する軽鎖とを含む抗体
からなる群から選択される。
【0086】
本発明の抗体は、限定されるものではないが、任意の化学的、生物学的、遺伝子的、又は酵素的技術など、当該技術分野でそれ自体公知の任意の技術の、単独又は組み合わせのいずれかによって、産生することができる。所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、当業者は、ポリペプチドを産生するための標準的技術によって、前記ポリペプチドを容易に産生できる。例えば、本発明の抗体は、当該技術分野で現在周知のように、組換えDNA技術によって合成できる。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコード化するDNA配列を発現ベクターに組込み、かかるベクターを所望のポリペプチドを発現する好適な真核又は原核宿主に導入した後に、DNA発現産物として得ることができ、そこから後に周知の技術を用いて単離できる。
【0087】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、そのC末端を介してRBDポリペプチドにコンジュゲート又は融合される。いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖は、RBDポリペプチドのN末端に融合される。
【0088】
いくつかの実施形態では、重鎖は、そのC末端を介してNpep2ポリペプチドにコンジュゲート又は融合される。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖は、Npep2ポリペプチドのN末端に融合される。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、化学的カップリングを使用することにより、RBDポリペプチドにコンジュゲートされる。抗体をそのコンジュゲート部分に付着又はコンジュゲートさせるための方法が当該技術分野ではいくつか知られている。部分を抗体にコンジュゲートさせるために使用されてきたリンカーの種類の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド及びペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリンリンカーが挙げられる。例えば、リソソーム区画内の低pHによる切断を受けやすいリンカー、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによる切断を受けやすいリンカーを選択できる。ポリペプチドをコンジュゲートするための技術は特に当該技術分野では周知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeld et al.eds.,Alan R.Liss,Inc.,1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery,”in Controlled Drug Delivery (Robinson et al.eds.,Marcel Deiker,Inc., 2nd ed.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications(Pinchera et al.eds.,1985);“Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwin et al.eds.,Academic Press,1985);及びThorpe et al.,1982,Immunol.Rev.62:119-58を参照;また、例えば、PCT公開WO89/12624も参照)。典型的には、ペプチドは、それぞれ、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はマレイミド官能基を介して、抗体上のリジン又はシステイン残基に共有結合している。改変システインを使用したコンジュゲーション又は非天然アミノ酸の組込みの方法は、コンジュゲートの均一性を改善することが報告されている(Axup,J.Y.,Bajjuri,K.M.,Ritland,M.,Hutchins,B.M.,Kim,C.H.,Kazane,S.A.,Halder,R.,Forsyth,J.S.,Santidrian,A.F.,Stafin,K.,et al.(2012).Synthesis of site-specific antibody-drug conjugates using unnatural amino acids.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109,16101-16106.;Junutula,J.R.,Flagella, K.M.,Graham,R.A.,Parsons,K.L.,Ha,E.,Raab,H.,Bhakta,S.,Nguyen,T.,Dugger,D.L.,Li,G.,et al.(2010).Engineered thio-trastuzumab-DM1 conjugate with an improved therapeutic index to target human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer.Clin.Cancer Res.16,4769-4778)。Junutulaら(Nat Biotechnol.2008;26:925-32)は、従来のコンジュゲーション法と比較して治療指数の改善を示すとされる「THIOMAB」(TDC)と呼ばれるシステインベースの部位特異的コンジュゲーションを開発した。抗体に組み込まれた非天然アミノ酸に対するコンジュゲーションもADCのために調査されているが、このアプローチの普遍性はまだ確立されていない(Axup et al.,2012)。特に当業者は、アシルドナーグルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグ若しくはQタグ)又はポリペプチド改変(例えば、ポリペプチド上のアミノ酸欠失、挿入、置換、又は変異を介する)によって反応性にされた内因性グルタミンで改変されたFc含有ポリペプチドも想定できる。次いで、トランスグルタミナーゼは、アシルドナーグルタミン含有タグ又はアクセス可能/露出/反応性内因性グルタミンを介してFc含有ポリペプチドに対して部位特異的にコンジュゲートされたアミンドナー剤(例えば、反応性アミンを含むか、又は反応性アミンに結合した小分子)と共有的に架橋して、改変Fc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定かつ均一な集団を形成できる(WO2012059882)。
【0090】
いくつかの実施形態において、コンジュゲーションは、US20160031988A1及びUS20120039916A1で記載されているようなコヒーシン融合タンパク質に対する非共有カップリングを可能にするドッカリンドメイン又は複数のドメインによって行われる。
【0091】
いくつかの実施形態において、融合は、直接又はリンカーを介して行われる。本明細書で使用する場合、「直接的」という語は、第一ポリペプチドのN末端の第一アミノ酸が、第二ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸と融合していることを意味する。この直接融合は、(Vigneron et al.,Science 2004,PMID 15001714)、(Warren et al.,Science 2006,PMID 16960008)、(Berkers et al.,J.Immunol.2015a,PMID 26401000)、(Berkers et al.,J.Immunol.2015b,PMID 26401003)、(Delong et al.,Science 2016,PMID 26912858)(Liepe et al.,Science 2016,PMID 27846572)、(Babon et al.,Nat.Med.2016,PMID 27798614)で記載されているように自然に起こり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、リンカーは、以下に記載するようにFlexV1、f1、f2、f3、又はf4からなる群から選択される。
【0093】
言い換えると、いくつかの実施形態において、リンカーは、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、及び配列番号42からなる群から選択される。
QTPTNTISVTPTNNSTPTNNSNPKPNP(flexV1、配列番号38)
SSVSPTTSVHPTPTSVPPTPTKSSP(f1、配列番号39)
PTSTPADSSTITPTATPTATPTIKG(f2、配列番号40)
TVTPTATATPSAIVTTITPTATTKP(f3、配列番号41)
TNGSITVAATAPTVTPTVNATPSAA(f4、配列番号42)
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド中に存在する制限クローニング部位に由来する一つ以上の配列をさらに含む。典型的には、前記配列は、二つのアミノ酸残基からなるものであってよく、典型的には、AP、AS、AR、PR、SA、TR、及びTS配列を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質はシグナルペプチドの配列を含む。本明細書で使用する場合、「シグナルペプチド」という語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、タンパク質の前駆体形態上のN末端ペプチドとして存在するプレペプチドを指す。シグナルペプチドの機能は、それが結合している発現されたポリペプチドの小胞体への移行を促進することである。シグナルペプチドは、通常、このプロセスの過程で切断される。シグナルペプチドは、ポリペプチドを産生するために使用される生物に対して異種性又は相同性であってよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して、配列番号43に記載する融合タンパク質を形成する軽鎖と、ii)Npep2ポリペプチドと融合して、配列番号45に記載する融合タンパク質を形成する重鎖とを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して、配列番号44に記載する融合タンパク質を形成する軽鎖と、Npep2ポリペプチドと融合して、配列番号45に記載する融合タンパク質を形成する重鎖とを含む。
【0098】
【0099】
本発明の核酸、ベクター、及び宿主細胞:
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸に関する。
【0100】
典型的には、前記核酸は、DNA又はRNA分子であって、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ又はウイルスベクターなどの任意の好適なベクターに含めることができるものである。
【0101】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0102】
かかるベクターは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの調節エレメントを含んでもよく、対象への投与に際して前記抗体の発現を引き起こすか又は指示する。動物細胞用の発現ベクターで使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー、モロニ―マウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー、イムノグロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサーなどが挙げられる。ヒト抗体C領域をコード化する遺伝子を挿入でき、発現させることができる限り、動物細胞用のいかなる発現ベクターも使用できる。好適なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1βd2-4などが挙げられる。プラスミドの他の例としては、複製開始点を含む複製プラスミド、又は組み込みプラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、及びAAVベクターが挙げられる。そのような組換えウイルスは、パッケージング細胞のトランスフェクション又はヘルパープラスミド若しくはウイルスでの一過性トランスフェクションによるなど、当該技術分野で公知の技術によって産生することができる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。そのような複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルは、例えば、WO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056、及びWO94/19478で見出すことができる。
【0103】
本発明のさらなる目的は、本発明にかかる核酸及び/又はベクターによってトランスフェクト、感染、又は形質転換された宿主細胞に関する。
【0104】
本発明の核酸は、好適な発現系において本発明の抗体を産生するために使用できる。一般的な発現系としては、大腸菌宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、並びに哺乳動物宿主細胞及びベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、限定されることなく、原核細胞(例えば、細菌)及び真核細胞(例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。具体例としては、大腸菌、クルイベロマイセス、又はサッカロマイセス酵母が挙げられる。哺乳動物宿主細胞には、DHFR選択可能マーカーとともに使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin,1980に記載)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞、例えば、GS Xceed(商標)遺伝子発現系(Lonza)とあわせたGS CHO細胞株、又はHEK細胞が含まれる。
【0105】
本発明はまた、本発明にかかるポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を産生する方法に関し、前記方法は:(i)前記組換え核酸又はベクターをインビトロ又はインビボでコンピテント宿主細胞に導入するステップ、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロ又はエクスビボで培養するステップ、及び(iii),任意選択的に、前記抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択するステップを含む。そのような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の産生のために使用できる。
【0106】
したがって、本明細書中で開示する宿主細胞は、本発明の抗体を産生するために特に適している。実際、組換え発現を哺乳動物宿主細胞に導入すると、宿主細胞において抗体を発現させ、必要に応じて、宿主細胞を成長させる培養培地へ抗体を分泌させるのに充分な期間、宿主細胞を培養することによって、ポリペプチドが産生される。抗体は、例えば、それらの分泌後の培養培地から、標準的タンパク質精製方法を使用して、回収・精製することができる。
【0107】
医薬組成物及びワクチン組成物:
本明細書で記載する抗体は、一つ以上の医薬組成物の一部として投与することができる。任意の従来の担体媒体が、望ましくない生物学的効果を生じさせるか、さもなければ医薬組成物の他の成分(複数可)と有害な方法で相互作用するなど、本発明の抗体と不適合である場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。薬剤的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、限定されるものではないが、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖類;コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロースの誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油;ベニバナ油、ゴマ油;オリーブ油;コーン油及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロゲンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液、並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合性潤滑剤が挙げられ、また着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び香料、防腐剤及び酸化防止剤も、調剤者の判断にしたがって組成物中に存在させることができる。
【0108】
本明細書で記載する抗体は、ワクチン組成物を調製するのに特に適している。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の抗体を含むワクチン組成物に関する。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物はアジュバントを含む。いくつかの実施形態において、アジュバントはミョウバンである。
いくつかの実施形態において、アジュバントは、不完全フロイントアジュバント(IFA)又は他の油性アジュバントであり、重量比(w/w)で30~70%、好ましくは40~60%、さらに好ましくは45~55%の割合で存在する。いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、及びTLR8アゴニストからなる群から選択される少なくとも一つのToll様受容体(TLR)アゴニストを含む。
【0110】
治療方法:
本明細書で記載する抗体並びに医薬組成物又はワクチン組成物は、サルベコウイルスに対する免疫応答、特にSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導するのに特に適し、したがって、ワクチン目的に使用できる。本発明の抗体は、ユニバーサルサルベコウイルスワクチンとして使用できる。
【0111】
したがって、本発明のさらなる目的は、必要とする対象にサルベコウイルスに対するワクチン接種をする方法であって、治療上有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法に関する。
【0112】
本発明のさらなる目的は、必要とする対象にSARS-CoV-2に対するワクチン接種をする方法であって、治療上有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法に関する。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載するような抗体並びに医薬組成物又はワクチン組成物は、Covid-19の治療に特に適している。
【0114】
いくつかの実施形態において、対象は、コロナウイルス感染症にかかりやすいヒト又は任意の他の動物(例えば、鳥類及び哺乳類)(例えば、ネコ、イヌなどの飼育動物;ウマ、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家畜(家畜及び農場動物))であり得る。典型的には、前記対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、マウス)と霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ヒト)を含む哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、対象は家畜又はペットである。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象はヒト乳児である。いくつかの実施形態において、対象はヒト小児である。いくつかの実施形態において、対象は成人である。いくつかの実施形態において、対象は高齢者である。いくつかの実施形態において、対象はヒト未熟児である。
【0115】
いくつかの実施形態において、対象は症候性又は無症状であり得る。
【0116】
典型的には、本発明の活性成分(すなわち、本明細書で記載するような抗体及び医薬組成物又はワクチン組成物)は治療上有効量で対象に投与される。本発明の化合物及び組成物の一日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されると理解される。任意の特定の対象についての特定の治療上有効な用量レベルは、治療する障害および当該障害の重症度;採用した特定の化合物の活性;採用した特定の組成物、対象の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;採用した特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療期間;採用した特定のポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用する薬物;並びに医療分野で周知の同様の要因をはじめとする様々な要因に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、当業者の技術範囲内である。しかしながら、製品の一日の投与量は、成人一日当たり0.01~1,000mgと広範囲にわたって変動し得る。特に、組成物は、治療される対象に対する投与量の症状調節のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの活性成分を含む。薬物は、典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分を含み、特に、1mg~約100mgの活性成分を含む。薬物の有効量は、通常、一日につき体重1kgあたり0.0002mg~約20mg、特に、一日につき体重1kgあたり約0.001mg~7mgの投与レベルで供給される。
【0117】
本明細書で記載するような抗体及び医薬組成物又はワクチン組成物は、任意の投与経路、特に、経口、経鼻、直腸、局所、頬側(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、又は静脈内)及び経皮投与によって対象に投与することができるが、任意の所与の場合で最も好適な経路は、治療される状態の性質及び重症度並びに使用される特定の活性剤の性質に依存するであろう。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載するような抗体並びに医薬組成物又はワクチン組成物は、例えば、SARS-CoV-2コロナウイルスに対するワクチン接種のための任意の公知治療剤又は方法と組み合わせて対象に投与できる。そのような公知治療薬の非限定例としては、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン、クロロキノンなどの抗ウイルス剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、本明細書で記載する抗体並びに医薬組成物又はワクチン組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニストCTLA-4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、及びBTLAアンタゴニストが挙げられる。いくつかの実施形態において、PD-1(Programmed Death-1)軸アンタゴニストには、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)、PD-L1(Programmed Death Ligand-1)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)及びPD-L2(Programmed Death Ligand-2)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2抗体)が含まれる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びOpdivo(登録商標)としても知られる)、Merck3475(ペムブロリズマブ、MK-3475、Lambrolizumab、Keytruda(登録商標)、及びSCH-900475としても知られる)、及びCT-011(ピディリズマブ、hBAT、及びhBAT-1としても知られる)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224(B7-DCIgとしても知られる)である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634A1に記載されている抗PD-L1である。MEDI4736は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載されている抗PD-L1抗体である。MDX-1106は、MDX-1106-04、ONO-4538又はBMS-936558としても知られ、米国特許第8,008,449号及びWO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。Merck3745は、MK-3475又はSCH-900475としても知られ、米国特許第8,345,509号及びWO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011(Pidizilumab)は、hBAT又はhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827及びWO2011/066342で記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。アテゾリズマブ(Atezolimumab)は、米国特許第8,217,149号で記載されている抗PD-L1抗体である。アベルマブは、US20140341917で記載されている抗PD-L1抗体である。CA-170は、WO2015033301及びWO2015033299で記載されているPD-1アンタゴニストである。他の抗PD-1抗体は、米国特許第8,609,089号、US2010028330、及び/又はUS20120114649に開示されている。いくつかの実施形態において、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ又はピディリズマブから選択される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1アンタゴニストは、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STIA1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003及びアテゾリズマブ(Atezolimumab)からなる群から選択され、好ましいのは、アベルマブ、デュルバルマブ、又はアテゾリズマブ(Atezolimumab)である。
【0119】
本発明を、以下の図面及び実施例によってさらに説明する。ただし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】
図1:汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の設計。
【
図2A】
図2:SARS-CoV-2に感染した回復期のドナーPBMC培養物におけるサルベコウイルスT細胞のインビトロ増殖を介して試験した汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン。
図2A)SARS-CoV-2+回復期ドナー患者のPBMC(n=6)をD0でCD40.N2.RBDvSADワクチン(1nM)にて刺激し、IL-2と共に9日間培養し、最後の24hに以下の配列にわたる異なる重複ペプチド(OLP)プール(1μg/ml)で刺激した:i)SARS-CoV-2(武漢)、VOCベータ/ガンマ、VOCデルタ、SARS-CoV-1のワクチンRBD(vRBD)、ii)SARS-CoV-2及びSARS-CoV-1領域のNpep2(vN)をワクチン接種し、次いで細胞内サイトカイン染色(ICS)によりD9で分析した。
【
図2B】
図2:SARS-CoV-2に感染した回復期のドナーPBMC培養物におけるサルベコウイルスT細胞のインビトロ増殖を介して試験した汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン。
図2B)グラフは、必要に応じて、細胞内インターフェロンγ(IFNγ+)、細胞内腫瘍壊死因子α(TNFα+)、又はインターロイキン2(IL-2+)について染色したCD4+T及びCD8+T細胞%についてのスタック値を示す。
【
図3】
図3:ベータコロナウイルス間のワクチンRDB及びNpep2(N2)領域の相同性の分析により、サルベコウイルス内でこれらのワクチン領域の相同性のパーセンテージが高いことが明らかになった。コバルト(https://www-ncbi-nlm-nih-gov.proxy.insermbiblio.inist.fr/tools/cobalt/re_cobalt.cgi)を使用して、SARS-CoV-2、四つのSARS-CoV-2VOC(α、β、γ、δ)、SARS-CoV-1、及びコウモリ起源の30ウイルスとセンザンコウ起源の2ウイルス(全てサルベコウイルス亜属由来)の32の最近記載されたSARS-CoV関連コロナウイルスからの配列のアラインメントを実施した。
【
図4A】
図4:汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)は、SARS-CoV-2に感染した回復期ドナーのPBMCからのB細胞のインビトロでの活性化及び形質細胞分化を誘導した。
図4A)COVID-19回復期個体からのPBMCをCD40.CoV2、CD40.Pan.CoV(すなわち、CD40.N2.RBDvSAD-Q)、IgG4.CoV2、CD40.NivG(ニパ制御ワクチン)又は非融合CD40mAb(1nM)にてインビトロで刺激した。10%ヒト血清AB(SAB)を追加した300μLのRPMI中でPBMC(5E05)をインキュベートした。48時間後、上清を捨て、10%ヒト血清AB(SAB)を追加した新鮮なRPMI1mLで置換する。培地を2日おきに半分ずつ補充する。7日後、PBMCをRPMI 10%FCS中で洗浄し、500μlのRPMI 10%FCS中で培養する。
【
図4B】
図4:汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)は、SARS-CoV-2に感染した回復期ドナーのPBMCからのB細胞のインビトロでの活性化及び形質細胞分化を誘導した。
図4B)9日後、細胞を、CD19Alexa700(BD製;ref:561031)、CD21 PECF594(BD製;ref:563474)、CD27 APC(BD製;ref337169)、CD38 PercPCy5.5(Biolegend製;ref303522)、CD 138PE(BD製;ref:552026)、及びIgD FITC(Invitrogen製;ref:H15501)に加えて生存性マーカーで染色して、B細胞系統を決定し、LSR II-3レーザーフローサイトメータ(405、488、及び640nm)(Becton Dickinson)を用いて分析した。
【
図4C】
図4:汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)は、SARS-CoV-2に感染した回復期ドナーのPBMCからのB細胞のインビトロでの活性化及び形質細胞分化を誘導した。
図4C)LUMINEXテクノロジーを使用して、細胞培養上清中のSARS-CoV-2RBDに対するIgG抗体の測定を実施した。
【
図5】
図5:汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)は、K18hACE2tg×hCD40tgマウスをSARS-CoV2感染から保護した。K18hACE2tg×hCD40tgマウスを0日目及び21日目の二回、CD40.Pan.CoVワクチン(10μg/マウス)+アジュバントとしてpoly-ICLC(Hiltonol(登録商標))(50μg/マウス)(n=6)で腹腔内免疫化した。モックマウスにD0及びD21にPBS又はpoly-ICLC(n=9/群)を投与した。次に、マウスをプライミング後D28に鼻腔内注入によりSARS-CoV2ウイルス(武漢株10^4PFU)で感染させた。
図5A)マウスを12日間生存についてモニタリングした。
図5B)一群あたり三匹のマウスをランダムに選択し、感染後5日目に処分し、肺のウイルス量とウイルス感染力を評価した。
【
図6】
図6:デルタSARS-CoV-2株に曝露した回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の抗ウイルス効果。アジュバントを含まないワクチン200μgを五匹の回復期カニクイザルに皮下注射した。回復期のカニクイザルはすべて以前にSARS-CoV-2(1x10^6PFU;株:ベータCoV/フランス/IDF/0372/2020;2020年3月~4月及び2020年10月)に曝露され、RT-qPCR及び血清学により感染が確認された。免疫化の四週間後、五匹のCD40.Pan.CoV免疫化回復期NHP及び六匹のSARS-CoV-2ナイーブ動物(対照群)を、前投薬としてのアトロピン(0.04mg/kg)と、麻酔としてのケタミン(5mg/kg)とメデトミジン(0.05mg/kg)とを使用して、合計用量10e5TCID
50のSARS-CoV-2B.1.617.2変異ウイルス(デルタ株;SARS-CoV-2、hCoV-19/USA/PHC658/2021;BEI Resources Repository(米国国立保健研究所)を鼻腔内経路及び気管内経路の組み合わせ25(各鼻孔内に0.25mL、気管内に4.5mL、すなわち、合計5mL;0日目)に曝露した。血液、鼻咽頭及び気管スワブ、並びに気管支肺胞洗浄液を定期的に採取した。A)ナイーブ及びCD40.Pan.CoVワクチン接種を受けた回復期のカニクイザルの気管、鼻咽頭スワブ及びBALにおけるゲノムウイルスRNA(gRNA)定量化。水平の点線は検出限界を表す。B)ナイーブ及びCD40.Pan.CoVワクチン接種を受けた回復期のカニクイザルの気管、鼻咽頭スワブ及びBALにおけるサブゲノムウイルスRNA(gRNA)定量化。水平の点線は検出限界を表す。
【
図7A】
図7:回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の免疫原性。
図7A)抗スパイク(S)。
【
図7B】
図7:回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の免疫原性。
図7B)抗ヌクレオカプシド(N)。
【
図7C】
図7:回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の免疫原性。
図7C)抗RBDデルタ。
【
図7D】
図7:回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の免疫原性。
図7D)抗RBD武漢。
【
図7E】
図7:回復期NHPにおける汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV)の免疫原性。
図7E)抗RBDベータIgGを、すでに記載されているように、Mesoscale Discovery(メリーランド州ロックビルのMSD)によって開発された市販のマルチプレックスイムノアッセイを使用して滴定した(Anderson,E.J.et al.Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccine in older adults.N.Engl.J.Med.383,2427-2438(2020))。スパイクタンパク質のACE2受容体に対する結合を中和するA)抗スパイク及びC)抗RBDデルタ、D)抗RBD武漢、及びE)抗RBDベータ抗体をMSD疑似中和アッセイで滴定した。
【実施例】
【0121】
発現ベクター及びタンパク質精製産生の方法並びにCD40結合特異性を含む品質保証の方法は記載するとおりであった[1;2;3,4,5]。タンパク質発現は、TransIT(登録商標)-CHOトランスフェクションキット(Mirus)を使用した一過性CHO-S(チャイニーズハムスター卵巣細胞)トランスフェクションによるものであった。クローニングでは、CHO最適化コドンを使用して)、典型的には、様々な組み合わせのベクターへのライゲーションに便利な制限部位によって区切られた、様々なSARS-CoV-2抗原領域をコード化する合成DNAカセットを使用した。
[1] Flamar AL., S. Zurawski, F. Scholz, I. Gayet, L. Ni, XH. Li, E. Klechevsky, J. Quinn, S. Oh, D. H. Kaplan, J. Banchereau and G. Zurawski. 2012. Noncovalent assembly of anti-Dendritic Cell antibodies and antigens for evoking immune responses in vitro and in vivo. J. Immunl. 189: 2645-55.
[2] Flamar AL., Y. Xue, S. M. Zurawski, M. Montes, B. King, L. Sloan, S. Oh, J. Banchereau, Y. Levy and G. Zurawski. 2013. Targeting concatenated HIV antigens to human CD40 expands a broad repertoire of multifunctional CD4+ and CD8+ T Cells. AIDS. 27: 2041-51.
[3] Zurawski G., X. Shen, S. Zurawaski, G. D. Tomaras, D. C. Montafiori, M. Roederer, G. Ferrari, C. Lacabaratz, P. Klucar, Z. Wang, K. E. Foulds, SF. Kao, X. Yu, A. Sato, N. L. Yates, C. LaBranche, S. Stanfield-Oakley, K. Kibler, B. Jacobs, A. Salazar, S. Self, E. Fulp, R. Gottardo, L. Galmin, D. Weiss, A. Cristillo, G. Pantaleo and Y. Levy. 2017. Superiority in rhesus macaques of targeting HIV-1 Env gp140 to CD40 versus LOX-1 in combination with replication-competent NYVAC-KC for induction of Env-specific antibody and T Cell responses. J. Virol. 91: 1-20.
[4] Marlin R., Godot V., Cardinaud S., Galhaut M., Coleon S., Zurawski S., Dereuddre-Bosquet N., Cavarelli M., Gallouet A.S., Maisonnasse P., Dupaty L., Fenwick C., Naninck T., Lemaitre J., Gomez- Pacheco M., Kahlaoui N., Contreras V., Relouzat F., Fang R.H.T., Wang Z., Ellis J. 3rd, Chapon C., Centlivre M., Wiedemann A., Lacabaratz C., Surenaud M., Szurgot I., Liljestrom P., Planas D., Bruel T., Schwartz O., Werf S.V., Pantaleo G., Prague M., Thiebaut R., Zurawski G., Levy Y., Le Grand R. Targeting SARS-CoV-2 receptor-binding domain to cells expressing CD40 improves protection to infection in convalescent macaques. Nature communications. 2021;12(1):5215.
[5] Coleon S., Wiedemann A., Surenaud M., Lacabaratz C., Hue S., Prague M., Cervantes-Gonzalez M., Wang Z., Ellis J., Sansoni A., Pierini C., Bardin Q., Fabregue M., Sharkaoui S., Hoest P., Dupaty L., Picard F., Centlivre M., Ghosn J., French COVID Cohort Study Group, Thiebaut R., Cardinaud S., Malissen B., Zurawski G., Zarubica A., Zurawski S.M., Godot V., Levy Y. Design, immunogenicity, and efficacy of a pan-sarbecovirus dendritic-cell targeting vaccine. EBioMedicine. 2022;80:104062.
【0122】
特に、
図1に示すような二つのコンストラクトを作製した。当該コンストラクトはヒトCD40に結合することを確認した(
データ示さず)。次に、異なるサルベコウイルスのRBD領域及びNpep2領域に特異的な異なる重複ペプチド(OLP)プールを用いて、SARS-CoV-2で感染した回復期ドナーのPBMC培養物におけるT細胞のインビトロ増殖により、コンストラクトを試験した(
図2)。RBD領域とNpep2領域との相同性は非常に高いので(
図3)、本明細書で開示するコンストラクトはユニバーサルサルベコウイルスワクチンとして使用できる。特に、Npep2についてこれら38のサルベコウイルス間の相同性の平均[最小-最大]%は93.5[89.7~100]%であった(
図3)。サルベコウイルス間の配列相同性を超えて、ワクチンT細胞エピトープがSARS-CoV-2及びSARS-CoV-1と32のサルベコウイルス間で高度に保存され、75~100%相同性に達することが観察された。さらに綿密な分析により、全てのCD8+T細胞エピトープのうち、62%(n=57)は、SARS-CoV-2及びCoV-1間で少なくとも一つの変異が異なるが、これらの変異はNetMHC4により予想されるように、それらの大部分(81%)のHLA-クラスI結合に影響を及ぼさないことが示された。さらに、Npep2に含まれる二つのCD4+T細胞エピトープ(N301-315、及びN306-320)及びNpep2からの六つのCD8+T細胞エピトープ(N305-314;N306-315;N307-315;308-317;310-319;311-319)は全てのサルベコウイルス間で100%相同性であった。さらに、長期にわたる免疫にとって非常に重要なNpep2に対する非常に強力なCD8+T細胞応答を観察した(Coleon,Severin,et al.“Design,immunogenicity,and efficacy of a pan-sarbecpvoris dendritic-cell targeting vaccine.”EBioMedicine 80(2022):104062の
図6cを参照)。世界的に、これらの結果から、Npep2配列が広範な交差反応性T細胞応答を誘発することを目的とする汎サルベコウイルスワクチンの設計に適していることが確認されている。SARS-CoV-2に感染した回復期ドナーのPBMC培養物の汎サルベコウイルスDC標的化ワクチン(CD40.Pan.CoV、すなわち、CD40.N2.RBDvSAD-Qワクチン)刺激後(
図4A)、インビトロでB細胞活性化及び形質細胞分化を誘導し(
図4B)、抗RBD IgGを産生することができた
図4C)。poly-ICLCをアジュバントとしたCD40.Pan.CoVワクチンで二回免疫化したK18hACE2tg×hCD40tgマウスは、対照動物(PBS又はpoly-ICLC)と比較して、致死性SARS-CoV-2武漢曝露から保護されることを実証した(
図5A)。したがって、ワクチン接種を受けたマウスの肺中のSARS-CoV-2ウイルス複製(ゲノム当量/μgRNA)及び脳中のウイルス感染粒子(PFU/mg組織)は、対照よりも低い乃至検出不可能であった(
図5B)。次に、アジュバントを含まないCD40.Pan.CoVワクチン200μgを五匹の回復期カニクイザルに皮下注射した。免疫化の四週間後、五匹のCD40.Pan.CoVで免疫化された回復期NHP及び六匹のSARS-CoV-2ナイーブ動物(対照群)を、総用量10e5TCID
50のSARS-CoV-2B.1.617.2変異ウイルス(デルタ株)に曝露した。気管及び鼻咽頭スワブ及び気管支肺胞洗浄(BAL)でウイルスゲノムRNA(gRNA、
図6A)及びサブゲノムRNA(sgRNA、
図6B)が検出されたことから示されるように全てのナイーブ動物が感染した。デルタ株への曝露後にCD40.Pan.CoVで免疫化された回復期カニクイザルはすべて、対象動物よりも有意に低いウイルスゲノムRNAレベル(
図6A)及びウイルスサブゲノムRNAレベル(
図6B)を示すことを実証した。CD40.Pan.CoVでの免疫化により、スパイクに対する結合及び中和Ab応答(
図7A)、及びヌクレオカプシドに対する結合Ab応答(
図7B)、並びに武漢、デルタ、及びベータRBDに対する交差反応性結合及び中和Ab応答(
図7C~E)を誘導できることも実証した。
【0123】
参考文献:
本願全体を通して、様々な文献で本発明が関係する分野の技術状態について記載されている。これらの文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
1. Voysey, M. et al. Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK. Lancet (London, England) 397, 99-111, (2020).
2. Corbett, K. S. et al. Evaluation of the mRNA-1273 vaccine against SARS-CoV-2 in nonhuman primates. N. Engl. J. Med 383, 1544-1555 (2020).
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【配列表】
【国際調査報告】