(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】CRISPR/CASシステムの腫瘍内送達方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20241024BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241024BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20241024BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20241024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241024BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20241024BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/09 110
C12N15/113 110Z
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/88 Z
A61P35/00
A61K38/46
A61K35/76
A61K35/761
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529494
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022050465
(87)【国際公開番号】W WO2023091706
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523157302
【氏名又は名称】クリスティアナ ケア ジーン エディティング インスティテュート,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クミーク,エリック,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ビョン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】バナス,ケリー,エイチ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA60
4C084AA02
4C084AA13
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4C084ZB261
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、固形腫瘍の癌細胞の癌遺伝子の1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の核酸配列、及びCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むCRISPR/Casシステムを腫瘍内又は腫瘍周囲に投与することによる固形腫瘍を処置する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を処置する方法であって、(a)標的細胞内の1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上の核酸配列、及び(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むCRISPR/Casシステムの治療有効量を、それを必要とする対象に腫瘍内又は腫瘍周囲に投与することを含む、方法。
【請求項2】
1つ以上のgRNAがトランス活性化小分子RNA(tracrRNA)及びCRISPR RNA(crRNA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のgRNAが1つ以上の単一ガイドRNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
標的細胞が固形腫瘍の癌細胞である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の標的配列が癌遺伝子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
癌遺伝子がNRF2、EGFR、EIF1AX、GNA11、SF3B1、BAP1、PBRM1、ATM、SETD2、KDM6A、CUL3、MET、SMARCA4、U2AF1、RBM10、STK11、NF1、NF2、IDH1、IDH2、PTPN11、MAX、TCF12、HIST1H1E、LZTR1、KIT、RAC1、ARID2、BRD4、BRD7、BARF1、NRAS、RNF43、SMAD4、ARID1A、ARID1B、KRAS、APC、SMAD2、SMAD3、ACVR2A、GNAS、HRAS、STAG2、FGFR3、FGFR4、RHOA、CDKN1A、ERBB3、KANSL1、RB1、TP53、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、KEAP1、CASP8、TGFBR2、HLA-B、MAPK1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、HLA-A、RASA1、EPHA2、EPHA3、EPHA5、EPHA7、NSD1、ZNF217、ZNF750、KLF5、EP300、FAT1、PTEN、FBXW7、PIK3CA、PIK3CB、PIK3C2B、PIK3CG、RUNX1、RUNX1T1、DNMT3A、SMC1A、ERBB2、AKT1、AKT2、AKT3、MAP3K1、FOXA1、BRCA1、BRCA2、CDH1、PIK3R1、PPP2R1A、BCOR、BCORL1、ARHGAP35、FGFR2、CHD4、CTCF、CTNNA1、CTNNB1、SPOP、TMSB4X、PIM1、CD70、CD79A、CD79B、B2M、CARD11、MYD88、BTG1、BTG2、TNFAIP3、MEN1、PRKAR1A、PDGFRA、PDGFRB、SPTA1、GABRA6、KEL、SMARCB1、ZBTB7B、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2L11、RFC1、MAP3K4、CSDE1、EPAS1、RET、LATS2、EEF2、CYLD、HUWE1、MYH9、AJUBA、FLNA、ERBB4、CNBD1、DMD、MUC6、FAM46C、FAM46D、PLCG1、PLCG2、NIPBL、FUBP1、CIC、ZBTB2、ZBTB20、ZCCHC12、TGIF1、SOX2、SOX9、SOX10、PCBP1、ZFP36L2、TCF7L2、AMER1、KDM5A、KDM5C、MTOR、VHL、KIF1A、TCEB1、TXNIP、CUL1、TSC1、ELF3、RHOB、PSIP1、SF1、FOXQ1、GNA13、DIAPH2、ZFP36L1、ERCC2、SPTAN1、RXRA、ASXL2、CREBBP、CREB3L3、ALB、DHX9、XPO1、RPS6KA3、IL6ST、TSC2、EEF1A1、WHSC1、APOB、NUP133、AXIN1、PHF6、TET2、WT1、FLT3、FLT4、SMC3、CEBPA、RAD21、RAD50、RAD51、PTPDC1、ASXL1、EZH2、NPM1、SRSF2、GNAQ、PLCB4、CYSLTR2、CDKN1B、CBFB、NCOR1、PTPRD、TBX3、GPS2、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、MAP2K4、PTCH1、PTMA、LATS1、POLRMT、CDK4、COL5A1、PPP6C、MECOM、DACH1、MAP2K1、MAP2K2、RQCD1、DDX3X、NUP93、PPM1D、CHD2、CHD3、CCND1、CCND2、CCND3、ACVR1、KMT2A、KMT2B、KMT2C、KMT2D、SIN3A、SCAF4、DICER1、FOXA2、CTNND1、MYC、MYCL、MYCN、SOX17、ARID5B、ATR、INPPL1、INPP4B、ATF7IP、ZMYM2、ZFHX3、PDS5B、SOS1、TAF1、PIK3R2、RPL22、RRAS2、MSH2、MSH6、CKD12、ZNF133、ZNF703、MED12、ZMYM3、GTF2I、RIT1、MGA、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、JAK2、MITF、PDCD1LG2、STAT4、ABL2、CHEK2、FANCD2、JAK3、MLH1、FANCE、JUN、MPL、RICTOR、SUFU、FANCF、GID4、KAT6A、MRE11A、PDK1、SYK、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、CRLF2、FANCL、RPTOR、ALK、BTK、CSF1R、FAS、TERC、C11orf30、KDR、MUTYH、SDHA、AR、FGF10、GPR124、SDHB、ARAF、CBL、FGF14、GRIN2A、SDHC、ARFRP1、FGF19、GRM3、KLHL6、PMS2、SDHD、TNFRSF14、DAXX、FGF23、GSK3B、POLD1、TOP1、DDR2、FGF3、H3F3A、POLE、TOP2A、CCNE1、FGF4、HGF、SLIT2、CD274、FGF6、HNF1A、NFKBIA、PRDM1、DOT1L、FGFR1、LMO1、NKX2-1、PREX2、HSD3B1、LRP1B、TSHR、ATRX、CDC73、HSP90AA1、PRKCI、AURKA、PRKDC、VEGFA、AURKB、CDK12、FH、MAGI2、PRSS8、SMO、FLCN、IGF1R、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、SOCS1、CDK8、IKBKE、NTRK1、BARD1、IKZF1、NTRK2、QKI、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、SPEN、ERRFI1、FRS2、MDM4、PAK3、BCL6、ESR1、IRF2、PALB2、RAF1、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、IRS2、PAX5、RARA、BLM、FANCA、JAK1、FCRL4、LIG4、MAR、PWWP3A、MUC16、MUC17、FCGBP、FAT17、MMSET、IRTA2、TTN、DST、又はSTAT3である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
癌遺伝子がNRF2又はEGFRである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼがクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9又はCas12aである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
CRISPR/Casシステムが、リボヌクレオタンパク質(RNP)又は脂質ナノ粒子(LNP)複合体中に含まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CRISPRシステムの1つ以上の要素の発現を駆動する1つ以上のベクターが対象に投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のベクターがウイルスベクター、リポソーム、又は脂質含有複合体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルスリポソーム(HVJ)複合体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
固形腫瘍が、腺様嚢胞癌腫瘍、胆道癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、骨癌腫瘍、乳癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、胆管癌腫瘍、結腸癌腫瘍、子宮内膜癌腫瘍、食道癌腫瘍、胆嚢癌腫瘍、胃癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、肝細胞癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、口唇癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、黒色腫腫瘍、中皮腫腫瘍、非小細胞肺癌腫瘍、非黒色腫皮膚癌腫瘍、口腔癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、直腸癌腫瘍、腎癌腫瘍、肉腫腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、脾臓癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍、尿路上皮癌腫瘍、又は子宮癌腫瘍である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
固形腫瘍の癌細胞における癌遺伝子の発現を低減する方法であって、(a)癌遺伝子の1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上の核酸配列、及び(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を、癌細胞に腫瘍内又は腫瘍周囲に導入することを含み、これにより、1つ以上のgRNAが癌遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが癌遺伝子を切断する方法。
【請求項16】
1つ以上のgRNAがトランス活性化小分子RNA(tracrRNA)及びCRISPR RNA(crRNA)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上のgRNAが1つ以上の単一ガイドRNAである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼがクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9又はCas12aである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌遺伝子の活性が癌細胞において低減される、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
癌遺伝子の発現又は活性が癌細胞において完全には除去されない、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
癌遺伝子の発現又は活性が癌細胞において完全に除去される、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(a)の1つ以上の核酸配列及び(b)の核酸配列がRNP又はLNP複合体中に含まれる、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
CRISPRシステムの1つ以上の要素の発現を駆動する1つ以上のベクターが対象に投与される、請求項15から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上のベクターがウイルスベクター、リポソーム、又は脂質含有複合体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、AAV、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルス(HVJ)複合体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
固形腫瘍が、腺様嚢胞癌腫瘍、胆道癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、骨癌腫瘍、乳癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、胆管癌腫瘍、結腸癌腫瘍、子宮内膜癌腫瘍、食道癌腫瘍、胆嚢癌腫瘍、胃癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、肝細胞癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、口唇癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、黒色腫腫瘍、中皮腫腫瘍、非小細胞肺癌腫瘍、非黒色腫皮膚癌腫瘍、口腔癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、直腸癌腫瘍、腎癌腫瘍、肉腫腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、脾臓癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍、尿路上皮癌腫瘍、又は子宮癌腫瘍である、請求項15から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
癌遺伝子がNRF2、EGFR、EIF1AX、GNA11、SF3B1、BAP1、PBRM1、ATM、SETD2、KDM6A、CUL3、MET、SMARCA4、U2AF1、RBM10、STK11、NF1、NF2、IDH1、IDH2、PTPN11、MAX、TCF12、HIST1H1E、LZTR1、KIT、RAC1、ARID2、BRD4、BRD7、BARF1、NRAS、RNF43、SMAD4、ARID1A、ARID1B、KRAS、APC、SMAD2、SMAD3、ACVR2A、GNAS、HRAS、STAG2、FGFR3、FGFR4、RHOA、CDKN1A、ERBB3、KANSL1、RB1、TP53、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、KEAP1、CASP8、TGFBR2、HLA-B、MAPK1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、HLA-A、RASA1、EPHA2、EPHA3、EPHA5、EPHA7、NSD1、ZNF217、ZNF750、KLF5、EP300、FAT1、PTEN、FBXW7、PIK3CA、PIK3CB、PIK3C2B、PIK3CG、RUNX1、RUNX1T1、DNMT3A、SMC1A、ERBB2、AKT1、AKT2、AKT3、MAP3K1、FOXA1、BRCA1、BRCA2、CDH1、PIK3R1、PPP2R1A、BCOR、BCORL1、ARHGAP35、FGFR2、CHD4、CTCF、CTNNA1、CTNNB1、SPOP、TMSB4X、PIM1、CD70、CD79A、CD79B、B2M、CARD11、MYD88、BTG1、BTG2、TNFAIP3、MEN1、PRKAR1A、PDGFRA、PDGFRB、SPTA1、GABRA6、KEL、SMARCB1、ZBTB7B、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2L11、RFC1、MAP3K4、CSDE1、EPAS1、RET、LATS2、EEF2、CYLD、HUWE1、MYH9、AJUBA、FLNA、ERBB4、CNBD1、DMD、MUC6、FAM46C、FAM46D、PLCG1、PLCG2、NIPBL、FUBP1、CIC、ZBTB2、ZBTB20、ZCCHC12、TGIF1、SOX2、SOX9、SOX10、PCBP1、ZFP36L2、TCF7L2、AMER1、KDM5A、KDM5C、MTOR、VHL、KIF1A、TCEB1、TXNIP、CUL1、TSC1、ELF3、RHOB、PSIP1、SF1、FOXQ1、GNA13、DIAPH2、ZFP36L1、ERCC2、SPTAN1、RXRA、ASXL2、CREBBP、CREB3L3、ALB、DHX9、XPO1、RPS6KA3、IL6ST、TSC2、EEF1A1、WHSC1、APOB、NUP133、AXIN1、PHF6、TET2、WT1、FLT3、FLT4、SMC3、CEBPA、RAD21、RAD50、RAD51、PTPDC1、ASXL1、EZH2、NPM1、SRSF2、GNAQ、PLCB4、CYSLTR2、CDKN1B、CBFB、NCOR1、PTPRD、TBX3、GPS2、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、MAP2K4、PTCH1、PTMA、LATS1、POLRMT、CDK4、COL5A1、PPP6C、MECOM、DACH1、MAP2K1、MAP2K2、RQCD1、DDX3X、NUP93、PPM1D、CHD2、CHD3、CCND1、CCND2、CCND3、ACVR1、KMT2A、KMT2B、KMT2C、KMT2D、SIN3A、SCAF4、DICER1、FOXA2、CTNND1、MYC、MYCL、MYCN、SOX17、ARID5B、ATR、INPPL1、INPP4B、ATF7IP、ZMYM2、ZFHX3、PDS5B、SOS1、TAF1、PIK3R2、RPL22、RRAS2、MSH2、MSH6、CKD12、ZNF133、ZNF703、MED12、ZMYM3、GTF2I、RIT1、MGA、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、JAK2、MITF、PDCD1LG2、STAT4、ABL2、CHEK2、FANCD2、JAK3、MLH1、FANCE、JUN、MPL、RICTOR、SUFU、FANCF、GID4、KAT6A、MRE11A、PDK1、SYK、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、CRLF2、FANCL、RPTOR、ALK、BTK、CSF1R、FAS、TERC、C11orf30、KDR、MUTYH、SDHA、AR、FGF10、GPR124、SDHB、ARAF、CBL、FGF14、GRIN2A、SDHC、ARFRP1、FGF19、GRM3、KLHL6、PMS2、SDHD、TNFRSF14、DAXX、FGF23、GSK3B、POLD1、TOP1、DDR2、FGF3、H3F3A、POLE、TOP2A、CCNE1、FGF4、HGF、SLIT2、CD274、FGF6、HNF1A、NFKBIA、PRDM1、DOT1L、FGFR1、LMO1、NKX2-1、PREX2、HSD3B1、LRP1B、TSHR、ATRX、CDC73、HSP90AA1、PRKCI、AURKA、PRKDC、VEGFA、AURKB、CDK12、FH、MAGI2、PRSS8、SMO、FLCN、IGF1R、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、SOCS1、CDK8、IKBKE、NTRK1、BARD1、IKZF1、NTRK2、QKI、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、SPEN、ERRFI1、FRS2、MDM4、PAK3、BCL6、ESR1、IRF2、PALB2、RAF1、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、IRS2、PAX5、RARA、BLM、FANCA、JAK1、FCRL4、LIG4、MAR、PWWP3A、MUC16、MUC17、FCGBP、FAT17、MMSET、IRTA2、TTN、DST、又はSTAT3である、請求項15から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
癌遺伝子がNRF2又はEGFRである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達が、未処置の腫瘍と比較して腫瘍サイズの少なくとも約20%の減少をもたらす、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達が、未処置の腫瘍と比較して腫瘍成長の少なくとも約20%の阻害をもたらす、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
対象に1つ以上の化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達が、CRISPR/Casシステムを投与されない対象と比較して、対象に投与される1つ以上の化学療法剤の量を低減する、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮特許出願第63/281,361号に対する35 U.S.C. §119(e)に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願に関連する配列表は電子形式で提出され、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、13094901120sequencelistingである。テキストファイルのサイズは39kbであり、テキストファイルは2022年11月17日に作成された。
【0003】
この分野は、CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達による癌の処置に関する。
【背景技術】
【0004】
従来の全身性癌化学療法及び免疫療法は、毒性の問題から、その安全性と有効性が著しく制限されてきた。さらに、このような治療により患者の生活の質は著しく損なわれる可能性がある。腫瘍内療法は全身性化学療法又は免疫療法に代わる治療法として検討されてきたが、過去30年間、腫瘍内療法は推奨されてこなかった。このように腫瘍内療法が推奨されない背景には、少なくとも3つの主な理由がある。腫瘍は切除できるので直接の処置は不要であること、直接注射すると転移を刺激するであろうこと、局所な標的化は転移への対処に効果がないことである(Goldbergら、J. Pharm. Pharmacol. 54:159~80 (2002))。
【0005】
CRISPR/Casシステムは、活性及び安定性を高め、毒性を低減するために化学的に改変された塩基を含むことができる合成分子として、CRISPR関連タンパク質及びガイドRNAをコードするプラスミドDNA、並びにCRISPR関連タンパク質及びガイドRNAをコードするmRNAを含むいくつかのフォーマットで細胞に送達されうる。CRISPR関連タンパク質及びガイドRNAは、あらかじめ組み立てられたリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体として送達されうる。プラスミド又はmRNAに比べ、あらかじめ組み立てられたRNPの送達の利点は、編集を誘発するためにRNAを転写したりタンパク質を翻訳したりする必要がなく、効率を最大化できること、及びRNPの崩壊によるヌクレアーゼ活性の持続期間が短く、安全性が高く、したがってオフターゲット効果が少ないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効果的な癌治療の大きな課題の1つは、CRISPR/Casシステムを固形腫瘍に送達する能力である。したがって、固形腫瘍へのCRISPR/Casシステムの送達を改善する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、固形腫瘍を処置する方法であって、(a)標的細胞内の1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上の核酸配列、及び(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むCRISPR/Casシステムの治療有効量を、それを必要とする対象に腫瘍内又は腫瘍周囲に投与することを含む、方法である。
【0008】
一部の実施形態では、1つ以上のgRNAはトランス活性化小分子RNA(tracrRNA)及びCRISPR RNA(crRNA)を含む。
【0009】
一部の実施形態では、1つ以上のgRNAは1つ以上の単一ガイドRNAである。
【0010】
一部の実施形態では、標的細胞は固形腫瘍の癌細胞であり、一部の実施形態では、1つ以上の標的配列は癌遺伝子であり、一部の実施形態では、癌遺伝子はNRF2、EGFR、EIF1AX、GNA11、SF3B1、BAP1、PBRM1、ATM、SETD2、KDM6A、CUL3、MET、SMARCA4、U2AF1、RBM10、STK11、NF1、NF2、IDH1、IDH2、PTPN11、MAX、TCF12、HIST1H1E、LZTR1、KIT、RAC1、ARID2、BRD4、BRD7、BARF1、NRAS、RNF43、SMAD4、ARID1A、ARID1B、KRAS、APC、SMAD2、SMAD3、ACVR2A、GNAS、HRAS、STAG2、FGFR3、FGFR4、RHOA、CDKN1A、ERBB3、KANSL1、RB1、TP53、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、KEAP1、CASP8、TGFBR2、HLA-B、MAPK1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、HLA-A、RASA1、EPHA2、EPHA3、EPHA5、EPHA7、NSD1、ZNF217、ZNF750、KLF5、EP300、FAT1、PTEN、FBXW7、PIK3CA、PIK3CB、PIK3C2B、PIK3CG、RUNX1、RUNX1T1、DNMT3A、SMC1A、ERBB2、AKT1、AKT2、AKT3、MAP3K1、FOXA1、BRCA1、BRCA2、CDH1、PIK3R1、PPP2R1A、BCOR、BCORL1、ARHGAP35、FGFR2、CHD4、CTCF、CTNNA1、CTNNB1、SPOP、TMSB4X、PIM1、CD70、CD79A、CD79B、B2M、CARD11、MYD88、BTG1、BTG2、TNFAIP3、MEN1、PRKAR1A、PDGFRA、PDGFRB、SPTA1、GABRA6、KEL、SMARCB1、ZBTB7B、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2L11、RFC1、MAP3K4、CSDE1、EPAS1、RET、LATS2、EEF2、CYLD、HUWE1、MYH9、AJUBA、FLNA、ERBB4、CNBD1、DMD、MUC6、FAM46C、FAM46D、PLCG1、PLCG2、NIPBL、FUBP1、CIC、ZBTB2、ZBTB20、ZCCHC12、TGIF1、SOX2、SOX9、SOX10、PCBP1、ZFP36L2、TCF7L2、AMER1、KDM5A、KDM5C、MTOR、VHL、KIF1A、TCEB1、TXNIP、CUL1、TSC1、ELF3、RHOB、PSIP1、SF1、FOXQ1、GNA13、DIAPH2、ZFP36L1、ERCC2、SPTAN1、RXRA、ASXL2、CREBBP、CREB3L3、ALB、DHX9、XPO1、RPS6KA3、IL6ST、TSC2、EEF1A1、WHSC1、APOB、NUP133、AXIN1、PHF6、TET2、WT1、FLT3、FLT4、SMC3、CEBPA、RAD21、RAD50、RAD51、PTPDC1、ASXL1、EZH2、NPM1、SRSF2、GNAQ、PLCB4、CYSLTR2、CDKN1B、CBFB、NCOR1、PTPRD、TBX3、GPS2、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、MAP2K4、PTCH1、PTMA、LATS1、POLRMT、CDK4、COL5A1、PPP6C、MECOM、DACH1、MAP2K1、MAP2K2、RQCD1、DDX3X、NUP93、PPM1D、CHD2、CHD3、CCND1、CCND2、CCND3、ACVR1、KMT2A、KMT2B、KMT2C、KMT2D、SIN3A、SCAF4、DICER1、FOXA2、CTNND1、MYC、MYCL、MYCN、SOX17、ARID5B、ATR、INPPL1、INPP4B、ATF7IP、ZMYM2、ZFHX3、PDS5B、SOS1、TAF1、PIK3R2、RPL22、RRAS2、MSH2、MSH6、CKD12、ZNF133、ZNF703、MED12、ZMYM3、GTF2I、RIT1、MGA、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、JAK2、MITF、PDCD1LG2、STAT4、ABL2、CHEK2、FANCD2、JAK3、MLH1、FANCE、JUN、MPL、RICTOR、SUFU、FANCF、GID4、KAT6A、MRE11A、PDK1、SYK、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、CRLF2、FANCL、RPTOR、ALK、BTK、CSF1R、FAS、TERC、C11orf30、KDR、MUTYH、SDHA、AR、FGF10、GPR124、SDHB、ARAF、CBL、FGF14、GRIN2A、SDHC、ARFRP1、FGF19、GRM3、KLHL6、PMS2、SDHD、TNFRSF14、DAXX、FGF23、GSK3B、POLD1、TOP1、DDR2、FGF3、H3F3A、POLE、TOP2A、CCNE1、FGF4、HGF、SLIT2、CD274、FGF6、HNF1A、NFKBIA、PRDM1、DOT1L、FGFR1、LMO1、NKX2-1、PREX2、HSD3B1、LRP1B、TSHR、ATRX、CDC73、HSP90AA1、PRKCI、AURKA、PRKDC、VEGFA、AURKB、CDK12、FH、MAGI2、PRSS8、SMO、FLCN、IGF1R、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、SOCS1、CDK8、IKBKE、NTRK1、BARD1、IKZF1、NTRK2、QKI、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、SPEN、ERRFI1、FRS2、MDM4、PAK3、BCL6、ESR1、IRF2、PALB2、RAF1、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、IRS2、PAX5、RARA、BLM、FANCA、JAK1、FCRL4、LIG4、MAR、PWWP3A、MUC16、MUC17、FCGBP、FAT17、MMSET、IRTA2、TTN、DST、又はSTAT3であり、一部の実施形態では、癌遺伝子はNRF2又はEGFRである。
【0011】
一部の実施形態では、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり、一部の実施形態では、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9又はCas12aである。
【0012】
一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムは、リボヌクレオタンパク質(RNP)又は脂質ナノ粒子(LNP)複合体中に含まれる。
【0013】
一部の実施形態では、CRISPRシステムの1つ以上の要素の発現を駆動する1つ以上のベクターは対象に投与され、一部の実施形態では、1つ以上のベクターはウイルスベクター、リポソーム、又は脂質含有複合体であり、一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルスリポソーム(HVJ)複合体である。
【0014】
一部の実施形態では、固形腫瘍は、腺様嚢胞癌腫瘍、胆道癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、骨癌腫瘍、乳癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、胆管癌腫瘍、結腸癌腫瘍、子宮内膜癌腫瘍、食道癌腫瘍、胆嚢癌腫瘍、胃癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、肝細胞癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、口唇癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、黒色腫腫瘍、中皮腫腫瘍、非小細胞肺癌腫瘍、非黒色腫皮膚癌腫瘍、口腔癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、直腸癌腫瘍、腎癌腫瘍、肉腫腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、脾臓癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍、尿路上皮癌腫瘍、又は子宮癌腫瘍である。
【0015】
別の態様は、固形腫瘍の癌細胞における癌遺伝子の発現を低減する方法であって、(a)癌遺伝子の1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上の核酸配列、及び(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を、癌細胞に腫瘍内又は腫瘍周囲に導入することを含み、これにより、1つ以上のgRNAは癌遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは癌遺伝子を切断する方法である。
【0016】
一部の実施形態では、1つ以上のgRNAはトランス活性化小分子RNA(tracrRNA)及びCRISPR RNA(crRNA)を含む。
【0017】
一部の実施形態では、1つ以上のgRNAは1つ以上の単一ガイドRNAである。
【0018】
一部の実施形態では、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり、及び一部の実施形態では、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9又はCas12aである。
【0019】
一部の実施形態では、癌遺伝子の活性は癌細胞において低減され、一部の実施形態では、癌遺伝子の発現又は活性は癌細胞において完全には除去されず、一部の実施形態では、癌遺伝子の発現又は活性は癌細胞において完全に除去される。
【0020】
一部の実施形態では、(a)の1つ以上の核酸配列及び(b)の核酸配列はRNP又はLNP複合体中に含まれる。
【0021】
一部の実施形態では、CRISPRシステムの1つ以上の要素の発現を駆動する1つ以上のベクターは対象に投与され、一部の実施形態では、1つ以上のベクターはウイルスベクター、リポソーム、又は脂質含有複合体であり、一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルス、AAV、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルスリポソーム(HVJ)複合体である。
【0022】
一部の実施形態では、固形腫瘍は、腺様嚢胞癌腫瘍、胆道癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、骨癌腫瘍、乳癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、胆管癌腫瘍、結腸癌腫瘍、子宮内膜癌腫瘍、食道癌腫瘍、胆嚢癌腫瘍、胃癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、肝細胞癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、口唇癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、黒色腫腫瘍、中皮腫腫瘍、非小細胞肺癌腫瘍、非黒色腫皮膚癌腫瘍、口腔癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、直腸癌腫瘍、腎癌腫瘍、肉腫腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、脾臓癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍、尿路上皮癌腫瘍、又は子宮癌腫瘍である。
【0023】
一部の実施形態では、癌遺伝子はNRF2、EGFR、EIF1AX、GNA11、SF3B1、BAP1、PBRM1、ATM、SETD2、KDM6A、CUL3、MET、SMARCA4、U2AF1、RBM10、STK11、NF1、NF2、IDH1、IDH2、PTPN11、MAX、TCF12、HIST1H1E、LZTR1、KIT、RAC1、ARID2、BRD4、BRD7、BARF1、NRAS、RNF43、SMAD4、ARID1A、ARID1B、KRAS、APC、SMAD2、SMAD3、ACVR2A、GNAS、HRAS、STAG2、FGFR3、FGFR4、RHOA、CDKN1A、ERBB3、KANSL1、RB1、TP53、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、KEAP1、CASP8、TGFBR2、HLA-B、MAPK1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、HLA-A、RASA1、EPHA2、EPHA3、EPHA5、EPHA7、NSD1、ZNF217、ZNF750、KLF5、EP300、FAT1、PTEN、FBXW7、PIK3CA、PIK3CB、PIK3C2B、PIK3CG、RUNX1、RUNX1T1、DNMT3A、SMC1A、ERBB2、AKT1、AKT2、AKT3、MAP3K1、FOXA1、BRCA1、BRCA2、CDH1、PIK3R1、PPP2R1A、BCOR、BCORL1、ARHGAP35、FGFR2、CHD4、CTCF、CTNNA1、CTNNB1、SPOP、TMSB4X、PIM1、CD70、CD79A、CD79B、B2M、CARD11、MYD88、BTG1、BTG2、TNFAIP3、MEN1、PRKAR1A、PDGFRA、PDGFRB、SPTA1、GABRA6、KEL、SMARCB1、ZBTB7B、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2L11、RFC1、MAP3K4、CSDE1、EPAS1、RET、LATS2、EEF2、CYLD、HUWE1、MYH9、AJUBA、FLNA、ERBB4、CNBD1、DMD、MUC6、FAM46C、FAM46D、PLCG1、PLCG2、NIPBL、FUBP1、CIC、ZBTB2、ZBTB20、ZCCHC12、TGIF1、SOX2、SOX9、SOX10、PCBP1、ZFP36L2、TCF7L2、AMER1、KDM5A、KDM5C、MTOR、VHL、KIF1A、TCEB1、TXNIP、CUL1、TSC1、ELF3、RHOB、PSIP1、SF1、FOXQ1、GNA13、DIAPH2、ZFP36L1、ERCC2、SPTAN1、RXRA、ASXL2、CREBBP、CREB3L3、ALB、DHX9、XPO1、RPS6KA3、IL6ST、TSC2、EEF1A1、WHSC1、APOB、NUP133、AXIN1、PHF6、TET2、WT1、FLT3、FLT4、SMC3、CEBPA、RAD21、RAD50、RAD51、PTPDC1、ASXL1、EZH2、NPM1、SRSF2、GNAQ、PLCB4、CYSLTR2、CDKN1B、CBFB、NCOR1、PTPRD、TBX3、GPS2、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、MAP2K4、PTCH1、PTMA、LATS1、POLRMT、CDK4、COL5A1、PPP6C、MECOM、DACH1、MAP2K1、MAP2K2、RQCD1、DDX3X、NUP93、PPM1D、CHD2、CHD3、CCND1、CCND2、CCND3、ACVR1、KMT2A、KMT2B、KMT2C、KMT2D、SIN3A、SCAF4、DICER1、FOXA2、CTNND1、MYC、MYCL、MYCN、SOX17、ARID5B、ATR、INPPL1、INPP4B、ATF7IP、ZMYM2、ZFHX3、PDS5B、SOS1、TAF1、PIK3R2、RPL22、RRAS2、MSH2、MSH6、CKD12、ZNF133、ZNF703、MED12、ZMYM3、GTF2I、RIT1、MGA、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、JAK2、MITF、PDCD1LG2、STAT4、ABL2、CHEK2、FANCD2、JAK3、MLH1、FANCE、JUN、MPL、RICTOR、SUFU、FANCF、GID4、KAT6A、MRE11A、PDK1、SYK、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、CRLF2、FANCL、RPTOR、ALK、BTK、CSF1R、FAS、TERC、C11orf30、KDR、MUTYH、SDHA、AR、FGF10、GPR124、SDHB、ARAF、CBL、FGF14、GRIN2A、SDHC、ARFRP1、FGF19、GRM3、KLHL6、PMS2、SDHD、TNFRSF14、DAXX、FGF23、GSK3B、POLD1、TOP1、DDR2、FGF3、H3F3A、POLE、TOP2A、CCNE1、FGF4、HGF、SLIT2、CD274、FGF6、HNF1A、NFKBIA、PRDM1、DOT1L、FGFR1、LMO1、NKX2-1、PREX2、HSD3B1、LRP1B、TSHR、ATRX、CDC73、HSP90AA1、PRKCI、AURKA、PRKDC、VEGFA、AURKB、CDK12、FH、MAGI2、PRSS8、SMO、FLCN、IGF1R、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、SOCS1、CDK8、IKBKE、NTRK1、BARD1、IKZF1、NTRK2、QKI、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、SPEN、ERRFI1、FRS2、MDM4、PAK3、BCL6、ESR1、IRF2、PALB2、RAF1、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、IRS2、PAX5、RARA、BLM、FANCA、JAK1、FCRL4、LIG4、MAR、PWWP3A、MUC16、MUC17、FCGBP、FAT17、MMSET、IRTA2、TTN、DST、又はSTAT3であり、一部の実施形態では、癌遺伝子はNRF2又はEGFRである。
【0024】
一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達は、未処置の腫瘍と比較して腫瘍サイズの少なくとも約20%の減少をもたらす。
【0025】
一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達は、未処置の腫瘍と比較して腫瘍成長の少なくとも約20%の阻害をもたらす。
【0026】
一部の実施形態では、本方法は、対象に1つ以上の化学療法剤を投与することをさらに含み、一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は腫瘍周囲送達は、CRISPR/Casシステムを投与されない対象と比較して、対象に投与される1つ以上の化学療法剤の量を低減する。
【0027】
その他の目的及び利点は、以下に続く詳細な説明を参照すれば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】異なるsgRNAコピー数及び二重ベクターシステムを評価するための、例示的なNRF2 R34G sgRNAアデノウイルスベクター構築物を示す図である。
【
図2】NRF2 R34G sgRNAを用いて処置した肺癌細胞株C26-8及びC44-25における、アデノウイルスベクターを介した遺伝子編集後のインデル形成率を示す図である。
【
図3】肺癌細胞におけるAAV及びアデノウイルスの形質導入効果をGFP発現によって比較した図である。スケールバーの右上の数字はGFP陽性細胞の割合を表し、各画像の左隅の数字はGFPの平均蛍光強度(MFI)を示した。
【
図4】NRF2 R34G gRNAの編集効果によって示された、肺癌細胞におけるCas9の発現に関するAAV6とアデノウイルスの比較を示す図である。
【
図5】LNPの腫瘍内注射は、腫瘍試料においてはルシフェラーゼが高発現し、生体内分布は最小となった図である。LNPを注射したNCGマウスの組織におけるルシフェラーゼ発現をGapdhで正規化したqPCR解析(LNPあたりn=5)。エラーバーは±標準偏差を示す。
【
図6A】胸腺欠損ヌードマウスの生物発光イメージングは、4時間後及び24時間後の腫瘍内注射の領域におけるルシフェラーゼの発現を示す図である。A. LNPを注射した胸腺欠損ヌードマウスの4時間及び24時間のインビボイメージング。
【
図6B】B. 4時間及び24時間におけるインビボイメージングの定量化。
【
図7】H1703 44-25皮下異種移植モデルにおけるアデノウイルスベクター(fLuc)の腫瘍内送達の図である。マウスにAd-CMV-fLucを腫瘍内注射し、注射後1~16日に画像化した。各腫瘍からの生物発光シグナルはROIを設定することにより定量化し、記載されている各値は総光束フォトンである。スケールバーはバーの左側の各画像の代表値である。
【
図8】NRF2を標的としたCRISPR/Cas9アデノウイルスベクターの模式図である。図は、R34G標的sgRNA発現を駆動するU6プロモーターと、それに続く強化されたSpCas9発現を駆動するニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを描いている。
【
図9】H1703 44-25由来腫瘍のCas9免疫染色の代表画像の図である。左側の2つのパネルは、アデノウイルスで処置した腫瘍の同一の腫瘍切片を5倍及び20倍の2つの倍率に拡大したものである。スケールバーはそれぞれ200μm及び50μmを表す。右側の2つのパネルは、未処置腫瘍の同一の腫瘍切片を2.5倍及び20倍の2つの倍率に拡大したものである。スケールバーはそれぞれ500μm及び50μmを表す。
【
図10】PDX由来腫瘍のCas9免疫染色の代表画像の図である。左側の2つのパネルは、アデノウイルスで処置した腫瘍の同一の腫瘍切片を5倍及び20倍の2つの倍率に拡大したものである。スケールバーはそれぞれ200μm及び50μmを表す。右側の2つのパネルは、未処置腫瘍の同一の腫瘍切片を2.5倍及び20倍の2つの倍率に拡大したものである。スケールバーはそれぞれ500μm及び50μmを表す。
【
図11】NRF2を標的とするCRISPR/Cas9アデノウイルスベクターの模式図である。A)図はR34G標的sgRNA(配列番号25)発現を駆動するU6、H1及び7SKプロモーターと、それに続く強化されたSpCas9発現を駆動するニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを描いている。B)図はスクランブル標的sgRNA(配列番号26)発現を駆動するU6、H1及び7SKプロモーターと、それに続く強化されたSpCas9発現を駆動するニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを描いている。
【
図12】化学療法と組み合わせたCRISPR/Cas9アデノウイルスの送達は、異種移植モデルにおいて腫瘍成長を阻害する図である。グラフはNRF2標的マウス又はスクランブル標的マウスにおける22日間にわたる腫瘍成長を示している。x軸に^で示したように、マウスは0、2、7日目に3.6e
9pfuのAd-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9又はU6H17SK-スクランブル-CAG-eSpCas9を腫瘍内に注射された。x軸に*で示したように、3日目及び10日目に、すべてのマウスに12.5mg/kgのカルボプラチン及び5mg/kgのパクリタキセルを静脈内投与した。
【
図13】異種移植マウスモデルのNRF2標的腫瘍組織のゲノム解析の図である。A) 3.6e
9pfuのAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9の単回注射を患者由来の異種移植モデルに腫瘍内送達した。B) 3.6e
9pfuのAd-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9の2回注射を、H1703 44-25異種移植モデルに腫瘍内送達した。C) 3.6e
9pfuのAd-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9の3回注射を、H1703 44-25異種移植モデルに腫瘍内送達した。それぞれのマウスモデルから腫瘍組織を摘出し、PCR及びサンガーシークエンシングにより解析した。
【
図14】H1703 44-25皮下異種移植モデルにおけるルシフェラーゼ含有脂質ナノ粒子の腫瘍内送達の図である。マウスに脂質ナノ粒子を腫瘍内注射し、注射後4時間及び24時間に画像化した。各腫瘍からの生物発光シグナルはROIを設定することにより定量化し、記載されている各値は総光束フォトンである。スケールは全画像の代表値である。
【
図15】患者由来異種移植モデルにおけるルシフェラーゼ含有脂質ナノ粒子の腫瘍内送達の図である。マウスに脂質ナノ粒子を腫瘍内注射し、注射後4時間及び24時間に画像化した。各腫瘍からの生物発光シグナルはROIを設定することにより定量化し、記載されている各値は総光束フォトンである。スケールは全画像の代表値である。
【
図16】患者由来異種移植モデルにおけるルシフェラーゼ含有脂質ナノ粒子の腫瘍内送達の図である。マウスに脂質ナノ粒子を腫瘍内注射し、注射後4時間及び24時間に画像化した。各腫瘍からの生物発光シグナルはROIを設定することにより定量化し、記載されている各値は総光束フォトンである。スケールは全画像の代表値である。
【
図17】H1703扁平上皮非小細胞肺癌細胞を移植したマウスにおける、ルシフェラーゼ遺伝子含有AAV5及びAAV6のインビボAAVトロピズム評価を示す図である。代表的な中央値動物は、少なくとも50%の動物が群に残っている最後の時点で、すべての生存動物の中央値に最も近い光束値を持つ動物として選択された。
【
図18】H1703扁平上皮非小細胞肺癌細胞を移植し、ルシフェラーゼ遺伝子含有AAV6を用いて腫瘍内処置した代表的なマウスの腫瘍体積(mm
3)及びインビボ生物発光(光束、フォトン/秒)を経時的に示す図である。
【
図19】H1703扁平上皮非小細胞肺癌細胞を移植したマウスの腫瘍に注射したルシフェラーゼ遺伝子含有AAV6(AAV6-fLuc)の生体内分布を示す図である。21日目に生体外生物発光を測定した。動物は5×106個のH1703細胞を皮下に移植された。腫瘍体積が60mm3以上に達した後、AAV6-fLucを腫瘍に直接注射し、単離した組織の生体外イメージングによりルシフェラーゼ発現を観察した。データはスケールなしで示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
出願人はこの開示で引用された全ての参考文献の内容全体を具体的に組み込む。さらに、量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが範囲又は上限値と下限値の列挙のいずれかとして示される場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく、いずれかの上の範囲限定又は値といずれかの下の範囲限定又は値とのいずれかの対から形成される全ての範囲を具体的に開示するとして理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、別段の指定がない限り、その範囲は、その端点、並びに範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。範囲を定義する場合、本開示の範囲が、列挙された具体的な値に限定されることは意図されない。
【0030】
定義
本開示では、多くの用語や略語が使用されている。以下の定義を提供する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、所定の値又は範囲の20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%又はそれ未満以内を意味する。
【0032】
用語「含む(comprising)」は、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」に包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語に包含される実施形態を含むことが意図される。
【0033】
不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、明細書及び特許請求の範囲において、そうではないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものとして理解されるべきである。
【0034】
語句「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、明細書及び特許請求の範囲において、それによって連結された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、一部のケースでは接続的に存在する要素、及び他のケースでは離接的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。他の要素は、任意選択で、そうではないことが明確に示されない限り、具体的に関連付けられたこれらの要素に関連するか又は関連しないかに関わらず、「及び/又は」節で具体的に関連付けられた要素以外のものが存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と共に使用される場合、一実施形態において、Aを含むがBを含まないこと(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態において、Bを含むがAを含まないこと(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AとBの両方であること(任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、明細書及び特許請求の範囲において、「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、列挙中の項目を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であるとして解釈されるものとし、すなわち、要素の数又は列挙のうち少なくとも1つだけでなく、それらの1つより多く、及び任意選択で追加の列挙されていない項目も含むと解釈されるものとする。そうではないことが明らかに示された用語のみ、例えば「のうち1つのみ」又は「のうち正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用される場合は「からなる」は、要素の数又は列挙のうちの正確に1つの要素の包含を指すことになる。一般的に、用語「又は」は、本明細書で使用される場合、排他性を有する用語、「~のいずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうち1つのみ」、「~のうち正確に1つ」の後に続く場合のみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方、ただし両方ではない」)を示すものとして解釈されることとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるようにその通常の意味を有するものとする。
【0036】
「エンドヌクレアーゼ」とは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する酵素である。いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置で二本鎖切断を生成し、いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置で、DNAリン酸糖骨格の一本鎖上の一本鎖切断又は「ニック」若しくは切断を、一部の実施形態では、望ましくない標的外DNA鎖切断を生成することなく、生成する。エンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼであってもよいし、人工的に生成されたものであってもよい。
【0037】
「クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメイン」又は「Cas結合ドメイン」は、有効量で、1つ以上のCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(又はその機能的な断片)と結合するか又はそれに対する親和性を有する、核酸配列又はポリヌクレオチド配列内の核酸エレメント又はドメインを指す。一部の実施形態において、1つ以上のタンパク質(又はその機能的な断片)及び標的配列の存在下で、1つ以上のタンパク質及び核酸エレメントは、生物学的に活性なCRISPR複合体を形成するか、及び/又は標的配列において酵素的に活性であり得る。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス1又はクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり、一部の実施形態において、Cas9又はCas12aエンドヌクレアーゼである。Cas9エンドヌクレアーゼは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、他の種由来の配列であってもよく、例えば他の連鎖球菌属種、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus);緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、又は他のシーケンシングされた細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核性の微生物由来の配列であってもよい。このような種としては、アシドボラックス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)、放線菌属種、アリシクリフィルス・デニトリフィカンス(Alicycliphilus denitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミチイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス属種、ブラストピレルラ・マリーナ(Blastopirellula marina)、ブラジリゾビウム属種、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンジダトス・プニセイスピリルム(Candidatus puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム・マツルショッティ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユーバクテリウム・ドリクム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトルム(Haemophilus sputorum)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロパス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア科細菌(Listeriaceae bacterium)、メチロシスティス属種、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラベッセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ナイセリア属種、ナイセリア・ワズワージイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス属種、パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラークトバクテリウム・スクシナテュテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、
ラルストニア・シジジイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム属種、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス属種、スポロラクトバチルス・ビネア(Sporolactobacillus vineae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、連鎖球菌属種、サブドリグラヌラム属(Subdoligranulum)種、チストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ属種、及びベルミネフロバクター・エイセニエ(Verminephrobacter eiseniae)(又は前述のCas9エンドヌクレアーゼのいずれかと、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する、前述の配列のいずれかの機能的な断片又はバリアント)が挙げられる。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼであってもよい。Cas12aヌクレアーゼは、野生型プレボテラ属(Prevotella)、フランキセラ属(Francisella)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、プロテオカテラ属(Proteocatella)、サルプリモナス属(Sulfurimonas)、エリザベスキア属(Elizabethkingia)、メチロコッカス属(Methylococcales)、モラクセラ属(Moraxella)、ヘルココッカス属(Helcococcus)、ラクノスピラ属(Lachnospira)、リミハグロブス属(Limihaloglobus)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、メタノメチロフィラス属(Methanomethylophilus)、コプロコッカス属(Coprococcus)、シナジステス属(Synergistes)、ユウバクテリウム属(Eubacterium)、ローズベリア属(Roseburia)、バクテロイデス属(Bacteroidales)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ユウバクテリウム科(Eubacteriaceae)、レプトスピラ属(Leptospira)、パラバクテリオデス属(Parabacteriodes)、グラシリバクテリウム属(Gracilibacteria)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジウム属(Clostridium)、ブルミミクロビウム属(Brumimicrobium)、フィブロバクター属(Fibrobacter)、カテノブルム属(Catenovulum)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、サクシニクラスチクム属(Succiniclasticum)、シュードブチリビブリオ属(Pseudobutyrivibrio)、バルネシエラ属(Barnesiella)、スネアチア属(Sneathia)、サクシニブリオナ科(Succinivibrionaceae)、トレポネーマ属(Treponema)、セディメントスファエラ属(Sedimentisphaera)、チオミクロスピラ属(Thiomicrospira)、ユーコモニムファ属(Eucomonympha)、アルコバクター属(Arcobacter)、オリバクテリウム属(Oribacterium)、メタノプラズマ属(Methanoplasma)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、サクシノビブリオ属(Succinovibrio)、又はアネロビブリオ属(Anaerovibrio)の配列と同一なヌクレオチド配列(又は前述のCas12aエンドヌクレアーゼのいずれかと、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する、前述の配列のいずれかの機能的な断片若しくはバリアント)を有していてもよい。
【0038】
一部の実施形態において、用語「(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメイン」又は「Cas結合ドメイン」は、有効量で、1つ以上のCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼに、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%相同な、その機能的な断片若しくはバリアント)に結合するか又はそれへの親和性を有する核酸配列内の核酸エレメント又はドメイン(例えば及びRNAエレメント若しくはドメイン)を指す。一部の実施形態において、Cas結合ドメインは、少なくとも、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、若しくは250ヌクレオチド、又はそれら以下のヌクレオチドからなり、CRISPRシステム形成に好適な濃度、微環境内で、生物学的に活性なCRISPR関連エンドヌクレアーゼに部分的に会合又は結合するヘアピン又は二重鎖を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0039】
「クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムガイドRNA」又は「CRISPR-CasシステムガイドRNA」は、転写ターミネータードメインを含んでいてもよい。用語「転写ターミネータードメイン」は、1つ以上のタンパク質(又はその機能的な断片)の存在下で、1つ以上のCasタンパク質及び核酸エレメントが、生物学的に活性なCRISPR複合体を形成するか、及び/又はこのような標的配列及びDNA結合ドメインの存在下で、標的配列において酵素的に活性であり得るように、CRISPR複合体が細菌種中にあるとき、及び/又は1つ以上のCasタンパク質(又はその機能的な断片)への核酸配列の会合を安定化させる二次構造を作り出すとき、有効量で、細菌での転写を防止する核酸配列(又はポリヌクレオチド配列)内の核酸エレメント又はドメインを指す。一部の実施形態において、転写ターミネータードメインは、少なくとも、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、若しくは250ヌクレオチド、又はそれら以下のヌクレオチドからなり、CRISPR複合体形成に好適な濃度及び微環境で、生物学的に活性なCRISPR複合体への核酸配列(sgRNA、tracrRNAを有するcrRNA、又は他の核酸配列)の会合を部分的に促進するヘアピン又は二重鎖を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0040】
用語「DNA結合ドメイン」は、標的配列に相補的な核酸配列(例えばガイドRNA)内の核酸エレメント又はドメインを指す。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、生物学的に活性なCRISPR複合体の存在下で、1つ以上のCasタンパク質が、標的配列において酵素的に活性であり得るように、標的配列と結合するか又はそれへの親和性を有する。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、CRISPRシステム形成に好適な濃度及び微環境で、生物学的に活性なCRISPRシステムの一部として標的配列とワトソンクリック塩基対を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0041】
「CRISPRシステム」又は「CRISPR/Ca」は、集合的に、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか又はその活性を方向付ける、転写物又は合成的に生産された転写物及び他のエレメントを指し、Cas遺伝子、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNA又は活性な部分的なtracrRNA)、tracr-mate配列(「ダイレクトリピート」及び内因性CRISPRシステムの文脈ではtracrRNAプロセシングされた部分的なダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムの文脈では「スペーサー」とも称される)、又はCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物をコードする配列を含む。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントは、タイプI、タイプII、又はタイプIII CRISPRシステムから誘導される。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントは、内因性CRISPRシステムを含む特定の生物から誘導される。一般的に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でCRISPR複合体の形成を促進するエレメント(内因性CRISPRシステムの文脈ではプロトスペーサーとも称される)を特徴とする。CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的配列」は、ガイド配列がそれと相補性を有するように設計される核酸配列を指し、この場合、標的配列とガイド配列とのハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。
【0042】
標的配列は、あらゆるポリヌクレオチド、例えばDNA又はRNAポリヌクレオチドを含んでいてもよい。一部の実施形態において、標的配列は、DNAポリヌクレオチドであり、DNA標的配列と称される。一部の実施形態において、標的配列は、Casタンパク質が、このようなシステムの会合に好適な濃度及び微環境内で、CRISPR複合体、又は少なくとも1つのsgRNA若しくは1つのtracrRNA/crRNA二重鎖を含むシステムに会合するときCas-タンパク質によって認識される少なくとも3つの核酸配列を含む。一部の実施形態において、標的DNAは、少なくとも1つの、又はそれより多くのプロトスペーサー隣接モチーフを含み、その配列は、当業界において公知であり、この研究で採用されたsgRNA又はcrRNA/tracrRNAと共に使用されているCasタンパク質システムに依存する。一部の実施形態において、標的DNAは、NNGを含み、式中、Gはグアニンであり、Nはあらゆる天然に存在する核酸である。一部の実施形態において、標的DNAは、NNG、NNA、GAA、NGGNG、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、TTTV、YG、TTTN、YTN、NGCG、NGAG、NGAN、NGNG、NG、NNGRRT、TYCV、TATV、又はNAAAACのいずれか1つ又は組合せを含む。一部の実施形態において、標的配列は、細胞の核又は細胞質中に位置する。
【0043】
典型的には、内因性CRISPRシステムの文脈では、CRISPR複合体の形成(標的配列にハイブリダイズし、1つ以上のCasタンパク質と複合体化したガイド配列を含む)は、標的配列中で、又はその近くで(例えば、標的配列から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、又はそれより多くの塩基対内で)一方又は両方の鎖の切断をもたらす。理論に制限されることは望まないが、tracr配列は、野生型tracr配列の全部又は一部(例えば、野生型tracr配列の約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はそれより多くのヌクレオチド、又はそれより多く)を含んでいてもよく、又はそれからなっていてもよく、例えば、少なくともtracr配列の部分に沿って、ガイド配列に作動可能に連結されたtracr mate配列の全部又は一部へのハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の一部を形成していてもよい。一部の実施形態において、tracr配列は、ハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に参加するのに十分なtracr mate配列への相補性を有する。標的配列の場合も同様に、機能的であるのに(Casタンパク質又はその機能的な断片と結合するのに)十分であれば、完全な相補性は必要ないと考えられる。一部の実施形態において、tracr配列は、最適にアライメントされる場合、tracr mate配列の長さに沿って、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相補性を有する。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントの発現を促進する1つ以上のベクターは、CRISPRシステムのエレメントの存在及び/又は発現が、1つ以上の標的部位でCRISPR複合体の形成を指示するように宿主細胞に導入される。例えば、Cas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、及びtracr配列は、それぞれ別々のベクター上の別々の調節エレメントに作動可能に連結していてもよい。代替として、同一又は異なる調節エレメントから発現されるエレメントの2つ又はそれより多くは、単一のベクターに組み合わされていてもよく、1つ以上の追加のベクターが、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムのいずれかの要素を提供する。一部の実施形態において、この開示によって予期される改変の少なくとも一部を用いて、CRISPR複合体を形成するガイド配列又はRNA若しくはDNA配列は、少なくとも部分的に合成である。単一のベクターに組み合わされたCRISPRシステムエレメントは、あらゆる好適な方向で整列されていてもよく、例えば1つのエレメントが、第2のエレメントに対して5'(第2のエレメントの「上流」)に、又は第2のエレメントに対して3'(第2のエレメントの「下流」)に配置される。一部の実施形態において、本開示は、化学的に合成されたガイド配列を含む組成物に関する。一部の実施形態において、化学的に合成されたガイド配列は、CRISPR酵素、例えばクラス2 Cas9又はCas12aタンパク質をコードするコード配列を含むベクターと共に使用される。一部の実施形態において、化学的に合成されたガイド配列は、1つ以上のベクターと共に使用され、各ベクターは、CRISPR酵素、例えばクラス2 Cas9又はCas12aタンパク質をコードするコード配列を含む。1つのエレメントのコード配列は、第2のエレメントのコード配列の同じ鎖又は逆の鎖に配置されていてもよく、同じ方向又は逆の方向に向けられていてもよい。一部の実施形態において、単一のプロモーターは、CRISPR酵素、並びに1つ以上の追加の(第2、第3、第4などの)ガイド配列、tracr mate配列(任意選択でガイド配列に作動可能に連結した)、及び1つ以上のイントロン配列内に埋め込まれたtracr配列(例えばそれぞれが異なるイントロン中に、少なくとも1つのイントロン中に2つ又はそれより多く、又は全て単一のイントロン中に)をコードする転写物の発現を促進する。一部の実施形態において、CRISPR酵素、1つ以上の追加のガイド配列、tracr mate配列、及びtracr配列は、それぞれ異なる核酸配列の要素である。例えば、tracr及びtracr mate配列のケースにおいて、一部の実施形態において、本開示は、少なくとも第1及び第2の核酸配列を含む組成物であって、第1の核酸配列はtracr配列を含み、第2の核酸配列はtracr mate配列を含み、二重鎖の第1及び第2の核酸が、さらに、第1の核酸と第2の核酸がそれぞれ個々に、又は集合的に、DNA標的化ドメイン、Casタンパク質結合ドメイン、及び転写ターミネータードメインを含むように、第1の核酸配列が少なくとも部分的に第2の核酸配列に相補的である、組成物に関する。一部の実施形態において、CRISPR酵素、1つ以上の追加のガイド配列、tracr mate配列、及びtracr配列は、同じプロモーターに作動可能に連結され、それから発現される。一部の実施形態において、本開示は、1つのガイド配列又は2つの別々のtracrRNA/crRNA配列上に、開示された改変を含む、又は含まない開示されたドメインのいずれか1つ又は組合せを含む組成物に関する。本明細書で開示されるあらゆる方法はまた、組成物が、本明細書で開示される改変されたドメインのいずれか1つ又は組合せと共に単一の合成ガイド配列及び/又は合成tracrRNA/crRNAを含み得るように、ガイド配列の使用と交換可能なtracrRNA/crRNA配列の使用にも関する。
【0044】
一部の実施形態において、ガイドRNAは、短い合成のキメラtracrRNA/crRNA(「単一ガイドRNA」又は「sgRNA」)であってもよい。ガイドRNAはまた、2つの短い合成のtracrRNA/crRNA(「デュアルガイドRNA」又は「dgRNA」)を含んでいてもよい。
【0045】
本明細書において使用される、「相同」又は「相同遺伝子」又は「オルソログ」という用語は、共通の祖先又はファミリーメンバーを共有する関連配列を指し、配列同一性の程度に基づいて決定される。用語「相同性」、「相同」、「実質的に類似」、及び「実質的に対応する」は、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が、遺伝子発現を媒介する又は特定の表現型を産生する核酸断片の能力に影響を及ぼさない核酸断片を指す。これらの用語はまた、1つ以上のヌクレオチドの欠失又は挿入のような、得られる核酸断片の機能的特性を最初の未改変の断片と比較して実質的に変化させない、本開示の核酸断片の改変を指す。いくつかの実施形態において、これらの用語は、ある種、亜種、品種、栽培品種、又は系統(株)において見出される遺伝子と、別の種、亜種、品種、栽培品種、又は系統(株)における対応する遺伝子又は同等の遺伝子との間の関係を記載する。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, Section 7.718, Table 7.71で議論されているような、当技術分野で容易に入手可能なソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。いくつかのアラインメントプログラムは、MacVector (Oxford Molecular Ltd, Oxford, U.K.)、ALIGN Plus (Scientific and Educational Software, Pennsylvania)、AlignX (Vector NTI, Invitrogen, Carlsbad, Calif.)、及びSequencher (Gene Codes, Ann Arbor, Mich.)である。
【0046】
「ハイブリダイズ可能」、「相補的」、又は「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、RNA、DNA)が、非共有結合、すなわち、温度及び溶液イオン強度の適切なin vitro及び/又はin vivo条件下で、配列特異的な、逆平行な様式で、別の核酸に非共有結合、すなわち、ワトソン-クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成し(すなわち、核酸は相補的な核酸に特異的に結合する)、「アニール」又は「ハイブリダイズ」することを可能にするヌクレオチド配列を含んでいることを意味する。標準的なワトソン-クリック塩基対形成には、アデニン(A)とチミジン(T)の対形成、アデニン(A)とウラシル(U)の対形成、及びグアニン(G)とシトシン(C)の対形成が含まれる。さらに、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーション、及びDNA分子とRNA分子のハイブリダイゼーション(例えば、ssRNA標的核酸がDNA PAMmerと塩基対を形成する場合、DNA標的核酸がRNAガイド核酸と塩基対を形成する場合など)の場合、グアニン(G)はウラシル(U)と塩基対を形成することもできる。例えば、G/U塩基対形成は、mRNA中のコドンとtRNAアンチコドン塩基対形成の文脈における遺伝暗号の縮重(すなわち、冗長性)に部分的に関与している。したがって、グアニン(G)(例えば、対象のガイド核酸分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)、ガイド核酸と塩基対を形成する標的核酸、及び/又はPAMmerなどのグアニン)は、ウラシル(U)とアデニン(A)の両方に相補的であると考えられる。例えば、対象のガイド核酸分子のタンパク質結合セグメント(例えば、dsRNA二重鎖)の所定のヌクレオチド位置にG/U塩基対ができる場合、その位置は非相補的とはみなされず、代わりに相補的であるとみなされる。
【0047】
ハイブリダイゼーションと洗浄条件は周知であり、Sambrook J., Fritsch. E. F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor (1989)、特にその中の第11章と表11.1;及びSambrook. J. and Russell, W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (2001)に例示されている。温度とイオン強度の条件はハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0048】
ハイブリダイゼーションには、2つの核酸が相補的な配列を含むことが必要であるが、塩基間のミスマッチは可能である。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適切な条件は、核酸の長さと相補性の程度に依存し、これらは当技術分野でよく知られている変数である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値は大きくなる。相補性の短いストレッチ(例えば、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18又はそれ以下のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションでは、ミスマッチの位置が重要になり得る(Sambrookら、前掲、11.7-11.8を参照のこと)。典型的には、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは8ヌクレオチド以上(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド又はそれ以上)である。温度や洗浄液の塩濃度は、相補性領域の長さや相補性の程度などに応じて適宜調整することができる。
【0049】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、以下が挙げられる:約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃のインキュベーション温度;約6×SSC、7×SSC、8×SSC、9×SSC、又は10×SSCのハイブリダイゼーションバッファー濃度;約0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、又は25%のホルムアミド濃度;及び約4×SSC、5×SSC、6×SSC、7×SSC、8×SSCの洗浄液。中程度ハイブリダイゼーション条件の例としては、以下が挙げられる:約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、又は50℃のインキュベーション温度;約9×SSC、8×SSC、7×SSC、6×SSC、5×SSC、4×SSC、3×SSC、又は2×SSCのバッファー濃度;約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、又は50%のホルムアミド濃度;及び約5×SSC、4×SSC、3×SSC、又は2×SSCの洗浄液。高ストリンジェンシー条件の例としては、以下が挙げられる:インキュベーション温度約55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、又は68%;約1×SSC、0. 95×SSC、0.9×SSC、0.85×SSC、0.8×SSC、0.75×SSC、0.7×SSC、0.65×SSC、0.6×SSC、0.55×SSC、0.5×SSC、0.45×SSC、0.4×SSC、0.35×SSC、0.3×SSC、0.25×SSC、0.2×SSC、0.15×SSC、又は0.1×SSCのバッファー濃度;約55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、又は75%のホルムアミド濃度;及び約1×SSC、0.95×SSC、0. 9×SSC、0.85×SSC、0.8×SSC、0.75×SSC、0.7×SSC、0.65×SSC、0.6×SSC、0.55×SSC、0.5×SSC、0.45×SSC、0.4×SSC、0.35×SSC、0.3×SSC、0.25×SSC、0.2×SSC、0.15×SSC、又は0.1×SSC、又は脱イオン水の洗浄液。一般的に、ハイブリダイゼーションのインキュベーション時間は5分から24時間で、1、2、又はそれ以上の洗浄工程があり、洗浄インキュベーション時間は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15分又はそれ以上である。他のバッファー系を用いたSSCと同等のものを採用できることは理解される。
【0050】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能又はハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが理解される。さらに、ポリヌクレオチドは、介在又は隣接セグメントがハイブリダイゼーションイベントに関与しないように(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)、1つ以上のセグメントにおいてハイブリダイズすることができる。ポリヌクレオチドは、ハイブリダイズする標的核酸配列内の標的領域に対して、約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99. 1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%(すなわち、完全相補性)の配列相補性を含み得る。例えば、アンチセンス化合物の20個のヌクレオチドのうち18個が標的領域と相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、90%の相補性を示すであろう。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドとクラスター化又は点在していてもよく、互いに又は相補的ヌクレオチドと連続している必要はない。核酸内の核酸配列の特定のストレッチの間のパーセント相補性は、任意の便利な方法を用いて決定することができる。例示的な方法としては、BLASTプログラム(基本的なローカルアライメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschulら、J. Mol. Biol.215:403-10(1990);Zhangら、Genome Res.、7:649-56(1997))、又はSmithらのアルゴリズムを使用する(Adv. Appl. Math. 2:482-89 (1981))デフォルト設定を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison Wis.)を使用することによる。
【0051】
「腫瘍内」という用語は、本明細書で使用される場合、腫瘍内へのCRISPR/Casシステムの送達又は輸送を指す。本明細書に記載されるようなCRISPR/Casシステムの腫瘍内送達又は輸送の一例は、当該技術分野において一般的に知られている投与経路である腫瘍内投与によるものである。腫瘍内投与の代替経路として、CRISPR/Casシステムは、腫瘍に遺伝子配列を送達するために広く開発されている腫瘍溶解性ウイルス又は遺伝子治療ベクターなどの腫瘍特異的キャリアを介して腫瘍に送達され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍への送達又は輸送は、そのCRISPR/Casシステムの量が、全てが固形腫瘍に直接送達又は輸送されるには大きすぎる場合、又は腫瘍の処置が、腫瘍の周辺部へのCRISPR/Casシステムの送達又は輸送によってより効果的に達成され得る場合、又は腫瘍の辺縁を取り囲む厚さ約2.5cmのゾーン内であれば、一般的にどこでも(例えば、臓器内、例えば、脳、肺、肝臓、膀胱、腎臓、胃、腸、乳房、膵臓、前立腺、卵巣、食道、脾臓、甲状腺)など、固形腫瘍の周辺部(「腫瘍周囲」)でのCRISPR/Casシステムの送達又は輸送を含み得る。腫瘍又は癌の別々の領域への複数回の注射も含まれる。さらに、腫瘍内投与は、1つ以上の転移巣への組成物の送達を含む。
【0052】
本明細書において使用される「固形腫瘍」とは、通常嚢胞や液状部を含まない異常な組織の塊である。固形腫瘍は良性又は悪性の場合がある。さまざまな種類の固形腫瘍は、それを形成する細胞の種類にちなんで命名される。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は、腺様嚢胞癌腫瘍、胆道癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、骨癌腫瘍、乳癌腫瘍、子宮頸癌腫瘍、胆管癌腫瘍、大腸癌腫瘍、子宮内膜癌腫瘍、食道癌腫瘍、胆嚢癌腫瘍、胃癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、肝細胞癌腫瘍、腎臓癌腫瘍、口唇癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、黒色腫腫瘍、中皮腫腫瘍、非小細胞肺癌腫瘍、非黒色腫皮膚癌腫瘍、口腔癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵臓癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、直腸癌腫瘍、腎癌腫瘍、肉腫腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、脾臓癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍、尿路上皮癌腫瘍、又は子宮癌腫である。一部の実施形態では、固形腫瘍は良性腫瘍であり、対象は身体の他の場所に癌を有する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は悪性固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、悪性固形腫瘍は、対象の体内の唯一の癌である。他の実施形態では、対象は、身体の他の領域に悪性固形腫瘍及び癌を有する。
【0053】
「バリアント」、「突然変異体」、又は「変異」ポリヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、対応する野生型又は親ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列と比較した場合の、少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の変更を含有する。
【0054】
「化学療法剤」は、癌の処置のために使用される薬物を指す。化学療法剤としては、これらに限定されないが、小分子、ホルモン及びホルモンアナログ、並びに生物製剤(例えば、抗体、ペプチド薬物、核酸薬物)が挙げられる。特定の実施形態において、化学療法は、ホルモン及びホルモンアナログを含まない。
【0055】
CRISPR/エンドヌクレアーゼ
CRISPR/エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)システムは、当業界において公知であり、例えば、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,925,248号に記載されている。CRISPR指向遺伝子編集は、驚くほど高い効率及び精度で、染色体内の特異的な部位におけるDNA切断を同定し、実行することができる。CRISPR/Cas9の天然活性は、細菌細胞に感染するウイルスゲノムを無力化することである。それに続くヒト細胞におけるCRISPR/Cas機能の遺伝学的再構築は、著しい頻度でヒト遺伝子を無力化する可能性をもたらす。
【0056】
細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、可動性遺伝学的エレメント(ウイルス、転移エレメント及び接合性プラスミド)に対するRNAガイド適応免疫システムをコードする。3つのタイプ(I~III)のCRISPRシステムが同定されている。CRISPRクラスターは、スペーサー、先行する可動性エレメントに相補的な配列を含有する。CRISPRクラスターは転写され、標的遺伝子に相補的なDNA結合領域(スペーサー)を含有する成熟CRISPR(クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復)RNA(crRNA)にプロセシングされる。
【0057】
本明細書に記載される組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば、クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼ又はクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであってもよい。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、タイプI、タイプIII、及びタイプIV CRISPR-Casシステムを含み、これらは、複数のサブユニットを含むエフェクター分子を有する。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼの場合、エフェクター分子は、一部の実施形態において、Cas7及びCas5、それと共に、一部の実施形態において、SS(Cas11)及びCas8a1;Cas8b1;Cas8c;Cas8u2及びCas6;Cas3"及びCas10d;CasSS(Cas11)、Cas8e、及びCas6;Cas8f及びCas6f;Cas6f;Cas8様(Csf1);SS(Cas11)及びCas8様(Csf1);又はSS(Cas11)及びCas10を含んでいてもよい。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼはまた、一部の実施形態において、標的切断分子とも会合していてもよく、このような標的切断分子は、Cas3(タイプI)又はCas10(タイプIII)であってもよく、さらに、スペーサー獲得分子、例えば、Cas1、Cas2、及び/又はCas4などにも会合していてもよい。例えば、Kooninら、Curr. Opin. Microbiol. 37:67~78 (2017); Strichら、J. Clin. Microbiol. 57:1307~18 (2019)を参照されたい。
【0058】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、タイプI、タイプV、及びタイプVI CRISPR-Casシステムを含み、これらは、単一のエフェクター分子を有する。クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼの場合、エフェクター分子は、一部の実施形態において、Cas9、Cas12a(cpf1)、Cas12b1(c2c1)、Cas12b2、Cas12c(c2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f1(Cas14a)、Cas12f2(Cas14b)、Cas12f3(Cas14c)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(c2c5)、Cas12j (Casφ)、Cas13a(c2c2)、Cas13b1(c2c6)、Cas13b2(c2c6)、Cas13c(c2c7)、Cas13d、c2c4、c2c8、c2c9、及び/又はc2c10を含んでいてもよい。例えば、Kooninら、Curr. Opin. Microbiol. 37:67~78 (2017);Strichら, J. Clin. Microbiol. 57:1307~18 (2019);Makarovaら、Nat. Rev. Microbiol. 18:67~83 (2020); Pausch et al., Science 369:333-37 (2020)を参照されたい。
【0059】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼであってもよい。Cas9ヌクレアーゼは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば他の連鎖球菌属種、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス;緑膿菌、大腸菌、又は他のシーケンシングされた細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核性の微生物他の種由来の配列であってもよい。このような種としては、アシドボラックス・アベナエ、アクチノバチルス・プルロニューモニア、アクチノバチルス・サクシノゲネス、アクチノバチルス・スイス、放線菌属種、アリシクリフィルス・デニトリフィカンス、アミノモナス・パウシボランス、バチルス・セレウス、バチルス・スミチイ、バチルス・チューリンゲンシス、バクテロイデス属種、ブラストピレルラ・マリーナ、ブラジリゾビウム属種、ブレビバチルス・ラテロスポラス、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・ラリ、カンジダトス・プニセイスピリルム、クロストリジウム・セルロリティカム、ウェルシュ菌、コリネバクテリウム・アクコレンス、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・マツルショッティ、ディノロセオバクター・シバエ、ユーバクテリウム・ドリクム、ガンマプロテオバクテリア綱、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・スプトルム、ヘリコバクター・カナデンシス、ヘリコバクター・シネディ、ヘリコバクター・ムステラエ、イリオバクター・ポリトロパス、キンゲラ・キンゲ、ラクトバチルス・クリスパタス、リステリア・イバノビイ、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア科細菌、メチロシスティス属種、メチロサイナス・トリコスポリウム、モビルンカス・ムリエリス、ナイセリア・バシリフォルミス、ナイセリア・シネレア、ナイセリア・フラベッセンス、ナイセリア・ラクタミカ、髄膜炎菌、ナイセリア属種、ナイセリア・ワズワージイ、ニトロソモナス属種、パルビバクラム・ラバメンティボランス、パスツレラ・ムルトシダ、ファスコラークトバクテリウム・スクシナテュテンス、ラルストニア・シジジイ、ロドシュードモナス・パルストリス、ロドブラム属種、シモンシエラ・ムエレリ、スフィンゴモナス属種、スポロラクトバチルス・ビネア、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス、連鎖球菌属種、サブドリグラヌラム属種、チストレラ・モビリス、トレポネーマ属種、及びベルミネフロバクター・エイセニエが挙げられる。
【0060】
代替として、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9配列は、改変されていてもよい。核酸配列は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞における効率的な発現のためにコドン最適化されていてもよい。ヒト細胞配列における発現のためにコドン最適化されたCas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbankアクセッション番号KM099231.1GI:669193757;KM099232.1GI:669193761;又はKM099233.1GI:669193765で列挙される発現ベクターのいずれかによってコードされたCas9ヌクレアーゼ配列であってもよい。代替として、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、商業的に入手可能なベクター、例えばAddgene(Cambridge、Mass.)からのpX458、pX330又はpX260内に含有される配列であってもよい。一部の実施形態において、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbankアクセッション番号KM099231.1GI:669193757;KM099232.1GI:669193761;若しくはKM099233.1GI:669193765のCas9エンドヌクレアーゼ配列のいずれかのバリアント若しくは断片であるアミノ酸配列、又はpX458、pX330若しくはpX260のCas9アミノ酸配列(Addgene、Cambridge、Mass.)を有していてもよい。Cas9ヌクレオチド配列は、Cas9の生物学的に活性なバリアントをコードするように改変されていてもよく、これらのバリアントは、1つ以上の、例えば、挿入、欠失、若しくは変異又はそれらの組合せを含有することにより、野生型Cas9とは異なるアミノ酸配列を有していてもよいし、又は例えばそれを含んでいてもよい。変異の1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であってもよい。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cas9ポリペプチドと、少なくとも、又は約50%の配列同一性(例えば、少なくとも、又は約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
【0061】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼであってもよい。Cas12aヌクレアーゼは、野生型プレボテラ属又はフランキセラ属の配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。代替として、野生型プレボテラ属又はフランキセラ属のCas12a配列は、改変されていてもよい。いくつかの実施形態において、アシダミノコッカス属、プロテオカテラ属、スルフリモナス属、エリザベスキンギア属、メチロコッカス属、モラクセラ属、ヘルココッカス属、ラクノスピラ属、リミハログロブス属、ブチリブリオ属、メタノメチロフィルス属、コプロコッカス属、シナジステス属、ユウバクテリウム属、ロゼブリア属、バクテロイデス属、ルミノコッカス属、ユウバクテリウム科、レプトスピラ属、パラバクテリオデス属、グラシリバクテリウム属、ラクノスピラ科、クロストリジウム属、ブルミミクロビウム属、フィブロバクター属、カテノビュラム属、アシネトバクター属、フラボバクテリウム属、サクシニクラスチクム属、シュードブチリブリオ属、バルネシエラ属、スネアチア属、サクシニブリオナ科、トレポネーマ属、セディメントスパエラ属、チオミクロスピラ属、ユーコモニムファ属、アルコバクター属、オリバクテリウム属、メタノプラズマ属、ポルフィロモナス属、サクシノビブリオ属、又はアネロビブリオ属のCas12aの配列を改変することができる。核酸配列は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞における効率的な発現のためにコドン最適化されていてもよい。ヒト細胞配列における発現のためにコドン最適化されたCas12aヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbankアクセッション番号MF193599.1GI:1214941796、KY985374.1GI:1242863785、KY985375.1GI:1242863787、又はKY985376.1GI:1242863789で列挙される発現ベクターのいずれかによってコードされたCas9ヌクレアーゼ配列であってもよい。代替として、Cas12aヌクレアーゼ配列は、例えば、商業的に入手可能なベクター、例えばAddgene(Cambridge、Mass.)からのpAs-Cpf1又はpLb-Cpf1内に含有される配列であってもよい。一部の実施形態において、Cas12aエンドヌクレアーゼは、Genbankアクセッション番号MF193599.1GI:1214941796、KY985374.1GI:1242863785、KY985375.1GI:1242863787、若しくはKY985376.1GI:1242863789のCas12aエンドヌクレアーゼ配列のいずれかのバリアント若しくは断片であるアミノ酸配列、又はpAs-Cpf1若しくはpLb-Cpf1のCas12aアミノ酸配列(Addgene、Cambridge、Mass.)を有していてもよい。Cas12aヌクレオチド配列は、Cas12aの生物学的に活性なバリアントをコードするように改変されていてもよく、これらのバリアントは、1つ以上の、例えば、挿入、欠失、若しくは変異又はそれらの組合せを含有することにより、野生型Cas12aとは異なるアミノ酸配列を有していてもよいし、又は例えばそれを含んでいてもよい。変異の1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であってもよい。例えば、Cas12aポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cas12aポリペプチドと、少なくとも、又は約50%の配列同一性(例えば、少なくとも、又は約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
【0062】
本明細書に記載される組成物はまた、標的配列における標的ドメインに相補的なDNA結合ドメインを含むガイドRNA(gRNA)、及びCRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインをコードする配列を含んでいてもよい。ガイドRNA配列は、センス又はアンチセンス配列であってもよい。ガイドRNA配列は、PAMを含んでいてもよい。PAMの配列は、使用されるCRISPRエンドヌクレアーゼの特異性の要件に応じて様々であってもよい。S.ピオゲネス由来のCRISPR-Casシステムにおいて、標的DNAは、典型的には、5'-NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前にある。したがって、S.ピオゲネスのCas9の場合、PAM配列は、NGGであり得る。他のCasエンドヌクレアーゼは、異なるPAM特異性(例えば、NNG、NNA、GAA、NGGNG、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、TTTV、YG、TTTN、YTN、NGCG、NGAG、NGAN、NGNG、NG、NNGRRT、TYCV、TATV、又はNAAAAC)を有していてもよい。ガイドRNAの具体的な配列は変化する場合があるが、配列に関係なく、有用なガイドRNA配列は、オフターゲット作用を最小化しながら高い効率を達成するものである。
【0063】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、約20~約55ヌクレオチドの様々な長さであり、例えば、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、又は約55ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態において、Casタンパク質結合ドメインは、約30~約55ヌクレオチドの様々な長さであり、例えば、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、又は約55ヌクレオチドの長さである。
【0064】
一部の実施形態において、組成物は、ガイドRNA及びCRISPRエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上の核酸(すなわちDNA)配列を含む。組成物は核酸として投与されるか、又は発現ベクター内に含有される場合、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列と同じ核酸又はベクターによってコードされていてもよい。一部の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列とは物理的に別々の核酸、又は別々のベクター中にコードされていてもよい。ガイドRNAをコードする核酸配列は、DNA結合ドメイン、Casタンパク質結合ドメイン、及び転写ターミネータードメインを含んでいてもよい。
【0065】
ガイドRNA及び/又はCRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、単離された核酸であってもよい。「単離された」核酸は、例えば、通常は天然に存在するゲノム中のそのDNA分子のすぐ近くに隣接する核酸配列の少なくとも1つが除去されているか又は存在しないという条件での、天然に存在するDNA分子又はその断片であってもよい。単離された核酸分子は、標準的な技術によって生産することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列などの本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含有する単離された核酸を得ることができる。PCRを使用して、DNAから、加えてRNAからも、例えば総ゲノムDNA又は総細胞RNAからの配列などから、特異的な配列を増幅することができる。様々なPCR方法は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach及びDveksler編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995に記載されている。一般的に、目的の領域の末端又はそれを超える部分からの配列情報は、増幅させようとする鋳型の逆の鎖において配列が同一な、又は類似のオリゴヌクレオチドプライマーを設計するのに採用される。また、部位特異的なヌクレオチド配列改変を鋳型核酸に導入できる様々なPCR戦略も利用可能である。
【0066】
単離された核酸はまた、単一の核酸分子(例えば、ホスホアミダイト技術を使用する3'から5'方向への自動DNA合成を使用して)又は一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして化学的に合成することもできる。例えば、オリゴヌクレオチド対がアニールすると二重鎖が形成されるように、各対が相補性を有する短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する望ましい配列を含有する長いオリゴヌクレオチド(例えば、>50~100ヌクレオチド)の1つ以上の対を合成することができる。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長させ、結果として、オリゴヌクレオチド対ごとに一本鎖、二本鎖核酸分子を得て、これを次いでベクターにライゲートさせてもよい。また単離された核酸は、例えば、Cas9をコードするDNAの天然に存在する部分の変異誘発(例えば、上記の式に従って)によっても得ることができる。
【0067】
また組換え構築物も本明細書で提供され、これを使用して、CRISPRエンドヌクレアーゼ及び/又は標的配列に相補的なガイドRNAを発現させるために、細胞を形質転換することができる。組換え核酸構築物は、細胞中でCRISPRエンドヌクレアーゼ及び/又は標的配列に相補的なガイドRNAを発現させるのに好適なプロモーターに作動可能に連結した、CRISPRエンドヌクレアーゼ、及び/又は標的配列に相補的なガイドRNAをコードする核酸を含んでいてもよい。一部の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、ガイドRNAをコードする核酸と同じプロモーターに作動可能に連結されている。他の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸及びガイドRNAをコードする核酸は、異なるプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、1つ以上のpol IIIプロモーター、1つ以上のpol IIプロモーター、1つ以上のpol Iプロモーター、又はそれらの組み合わせであり得る。pol IIIプロモーターの例としては、U6及びH1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。pol IIプロモーターの例としては、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)、LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーを伴う;例えば、Boshart et al., Cell 41:521-30 (1985)を参照のこと)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEFlaプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。pol Iプロモーターの例としては、47S pre-rRNAプロモーターが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
腫瘍内送達
本明細書で開示される医薬組成物のいずれかは、医薬調製における使用のために製剤化することができ、特定の使用が、以下の処置、例えば癌を有する対象の処置の文脈において示される。医薬品として採用される場合、核酸及びベクターのいずれかは、医薬組成物の形態で投与することができる。対象が以下の1つ以上を示す場合、対象は本方法に従って「処置」に成功したことになる:腫瘍原性の減少、癌幹細胞の数又は頻度の減少、免疫応答の増加、抗腫瘍応答の増加、免疫細胞の細胞溶解活性の増加、腫瘍細胞の殺傷の増加、免疫細胞による腫瘍細胞の殺傷の増加、癌細胞の数の減少又は癌細胞の完全な消失、腫瘍サイズの減少;軟組織及び骨への癌細胞の拡散を含む末梢臓器への癌細胞の浸潤の抑制又は消失;腫瘍又は癌細胞の転移の抑制又は消失;癌成長の抑制又は消失;特定の癌に関連する1つ又は複数の症状の緩和;罹患率及び死亡率の低下;生活の質の改善;又はこれらの効果の組み合わせ。
【0069】
一部の実施形態において、医薬組成物は、活性成分として本明細書に記載される核酸及びベクターを、1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。用語「薬学的に許容される」は、動物又はヒトに必要に応じて投与されるとき、有害な、アレルギー性の、又は他の好ましくない反応を起こさない分子実体及び組成物を指す。用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される物質のための媒体として使用することができる、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤などを含む。本明細書で開示される医薬組成物の作製において、活性成分は、典型的には賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、又はこのような担体内に、例えばカプセル、錠剤、小容器、ペーパー、又は他の容器の形態で封入される。賦形剤が希釈剤として役立つ場合、それは、活性成分のためのビヒクル、担体又は媒体として作用する固体、半固体、又は液体材料(例えば、生理食塩水)であってもよい。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、小容器、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体として、又は液状媒体中)、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ソフト及びハードゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射用溶液、及び滅菌されたパッケージ化された散剤の形態であってもよい。当業界において公知のように、希釈剤のタイプは、意図される投与経路に応じて様々であってもよい。得られた組成物は、追加の薬剤、例えば保存剤を含んでいてもよい。一部の実施形態において、担体は、脂質ベース又はポリマーベースのコロイドであってもよいし、又はそれを含んでいてもよい。一部の実施形態において、担体材料は、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロパーティクル、ナノ粒子、又はブロックコポリマーミセルとして製剤化されたコロイドであってもよい。述べたように、担体材料は、カプセル剤を形成することができ、その材料は、ポリマーベースのコロイドであってもよい。
【0070】
薬剤を腫瘍内に送達する方法は当技術分野で知られている(Brincker, Crit. Rev. Oncol. Hematol. 15:91-98 (1993); Celikogluら, Cancer Ther. 6:545-52 (2008))。例えば、CRISPR/Casシステムは、腫瘍又は癌組織への慣用的な針注射、針を使用しないジェット注射、又はエレクトロポレーション、又はそれらの組み合わせによって投与することができる。CRISPR/Casシステムは、コンピュータ断層撮影法、超音波法、ガンマカメラ画像法、陽電子放射断層撮影法、又は磁気共鳴腫瘍画像法を用いて、腫瘍又は癌(組織)に高精度で直接投与することができる。いくつかの実施形態において、CRISPR/Casシステムの腫瘍内投与は、内視鏡検査、気管支鏡検査、膀胱鏡検査、大腸鏡検査、腹腔鏡検査、又はカテーテル検査による直接的な腫瘍内投与によるものである。腫瘍が閉鎖系において体液と接触しているいくつかの実施形態において、CRISPR/Casシステムは、腫瘍内投与のために体液に投与され得る。
【0071】
腫瘍内投与は、以下の1つ以上を達成するために使用され得る:腫瘍サイズの減少;腫瘍成長の低減;転移の発生及び/又は広がりの低減又は制限;腫瘍の除去;少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はそれ以上の月間の腫瘍の再発の阻害、予防、又は低減;及び/又は腫瘍に対する免疫応答の促進。その効果は、CRISPR/Casシステムが投与された腫瘍、及び/又は1つ以上の転移巣若しくは他の腫瘍に認められる可能性がある。
【0072】
一部の実施形態において、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のガイドRNAは、組み合わせて、リボヌクレオタンパク質粒子(RNP)の形態で提供されてもよい。RNP複合体は、例えば、注射、エレクトロポレーション、ナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子を含む)、小胞の手段によって、及び/又は細胞透過性ペプチドの助けで、対象に導入することができる。例えば、Lin et al., ELife 3:e04766 (2014); Sansbury et al., CRISPR J. 2(2):121-32 (2019); US2019/0359973を参照されたい。
【0073】
一部の実施形態において、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAは、脂質ナノ粒子(LNP)によって送達され得る。LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、又は25nm未満の直径を有する粒子を指す。あるいは、ナノ粒子の大きさは、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、又は25~60nmの範囲であり得る。LNPは、カチオン性、アニオン性、又は中性脂質から作製し得る。融合原性(fusogenic)リン脂質DOPEや膜成分コレステロールなどの中性脂質は、トランスフェクション活性及びナノ粒子の安定性を高める「ヘルパー脂質」としてLNPに含まれることがある。LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、あるいは疎水性脂質と親水性脂質の両方から構成され得る。
【0074】
特定の実施形態では、カチオン性脂質N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を使用することができる。DOTMAは、単独で、又は中性脂質、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)若しくは他のカチオン性又は非カチオン性脂質と組み合わせて、リポソーム転移ビヒクル又は脂質ナノ粒子に製剤化することができ、このようなリポソームは、標的細胞への核酸の送達を増強するために使用することができる。他の適切なカチオン性脂質としては、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウム、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンなどが挙げられるが、これらに限定されない。企図されるカチオン性脂質にはまた、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン、2-[5'-(コレスト-5-エン-3-β-オキシ)-3'-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9',12'-オクタデカジエノキシ)プロパン、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン、1,2-N,N'-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン、2,3-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン、1,2-N,N'-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン、1,2-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン、及び2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質を使用することができる。本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という語句は、任意の中性、双性イオン性、又は陰イオン性脂質を指す。本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」という語句は、生理的pHなどの選択されたpHにおいて正味の負電荷を担う多数の脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、DOPE、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。このような非カチオン性脂質は単独で使用してもよいし、又はカチオン性脂質などの他の賦形剤と組み合わせて使用してもよい。
【0076】
核酸を含有するDNAベクター、例えば本明細書に記載されるものも提供される。「DNAベクター」は、別のDNAセグメントを挿入して、挿入されたセグメントの複製が実行できるようになっているレプリコン、例えばプラスミド、ファージ、又はコスミドである。一般的に、DNAベクターは、適した制御エレメントと関連付けられている場合、複製が可能である。好適なベクターバックボーンとしては、例えば、当業界において慣例的に使用されるもの、例えばプラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YAC、又はPACが挙げられる。用語「DNAベクター」は、クローニング及び発現ベクター、加えて、ウイルスベクター及び組み込み型ベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。様々な宿主/発現ベクターの組合せが、本明細書に記載される核酸配列を発現させるために使用することができる。好適な発現ベクターとしては、これらに限定されないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、及びレトロウイルス由来のプラスミド及びウイルスベクターが挙げられる。多数のベクター及び発現システムが、Novagen(Madison、Wis.)、Clontech(Palo Alto、Calif.)、Stratagene(La Jolla、Calif.)、及びInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad、Calif.)のような会社から商業的に入手可能である。
【0077】
本明細書で提供されるDNAベクターはまた、例えば、複製起点、足場付着領域(SAR)、及び/又はマーカーを含んでいてもよい。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、殺生剤耐性、例えば抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、又はハイグロマイシン)に対する耐性を付与することができる。上述したように、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作又は検出(例えば、精製又は局在化)を容易にするために設計されたタグ配列を含んでいてもよい。タグ配列、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、又はFlag(商標)タグ(Kodak、New Haven、Conn.)配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。このようなタグは、ポリペプチド内のどこに挿入してもよく、例えば、カルボキシル末端又はアミノ末端のいずれかに挿入してもよい。
【0078】
DNAベクターは、調節領域を含んでいてもよい。用語「調節領域」は、転写又は翻訳の開始及び速度、並びに転写又は翻訳生成物の安定性及び/又は移動度に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、これらに限定されないが、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5'及び3'非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、及びイントロンが挙げられる。
【0079】
用語「作動可能に連結した」は、本明細書で使用される場合、核酸中における調節領域(例えばプロモーター)及び転写しようとする配列が、このような配列の転写又は翻訳に影響を与えるように配置されていることを指す。例えば、コード配列をプロモーターの制御下に置くことにより、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的にはプロモーターから1~約50ヌクレオチド下流に配置される。しかしながら、プロモーターは、翻訳開始部位から約5,000ヌクレオチドも上流に、又は転写開始部位から約2,000ヌクレオチド上流に配置されていてもよい。プロモーターは、典型的には、少なくともコア(基本)プロモーターを含む。プロモーターとしてはまた、少なくとも1つの制御エレメント、例えばエンハンサー配列、上流エレメント又は上流活性化領域(UAR)も挙げることができる。含めようとするプロモーターの選択は、これらに限定されないが、効率、選択可能性、誘導能、望ましい発現レベル、及び細胞又は組織優先的な発現などの数々の要因に依存する。プロモーター及び他の調節領域を適切に選択し、コード配列に対してそれらを配置することによって、コード配列の発現をモジュレートすることは、当業者にとって慣例的なことである。
【0080】
ベクターとしては、例えば、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)及びレトロウイルス)、リポソーム及び他の脂質を含有する複合体、並びに宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することが可能な他の高分子複合体が挙げられる。肺腫瘍へのアデノウイルスベクターの直接注射は、肺癌の遺伝子療法を評価する臨床治験における慣例的な手順であり続けている。Dongら、J. Int. Med. Res. 36、1273~87 (2008);Liら、Cancer Gene Ther. 20、251~59 (2013);Zhouら、Cancer Gene Ther. 23、1~6 (2016)。ベクターはまた、遺伝子送達及び/又は遺伝子発現をさらにモジュレートする、又はそれ以外の方法で標的化された細胞に有益な特性を提供する他の要素又は機能性を含んでいてもよい。以下でより詳細に記載され例示されるように、このような他の要素としては、例えば、細胞への結合又は標的化に影響を与える要素(細胞型又は組織特異的な結合を媒介する要素など);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える要素;取り込み後の細胞内へのポリヌクレオチドの局在化に影響を与える要素(例えば核局在化を媒介する薬剤);及びポリヌクレオチドの発現に影響を与える要素が挙げられる。このような要素としてはまた、マーカー、例えば、ベクターによって送達された核酸を取り込んで、それを発現している細胞を検出又は選択するのに使用できる検出可能及び/又は選択可能マーカーも挙げることができる。このような要素は、ベクターの天然の機構として提供することができ(例えば結合や取り込みを媒介する要素又は機能性を有する特定のウイルスベクターの使用)、又はベクターは、このような機能性を提供するように改変してもよい。他のベクターとしては、Chenら;BioTechniques、34: 167~71 (2003)によって記載されたものが挙げられる。多種多様のこのようなベクターが当業界において公知であり、一般的に利用可能である。
【0081】
好適な核酸送達システムとしては、組換えウイルスベクター、典型的には、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、又はセンダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan)-リポソーム(HVJ)複合体のうちの少なくとも1つからの配列が挙げられる。このようなケースにおいて、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結した強い真核生物プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。組換えウイルスベクターは、その中にポリヌクレオチドの1つ以上を含んでいてもよく、一部の実施形態において、約1つのポリヌクレオチドを含んでいてもよい。ポリヌクレオチドが非ウイルスベクターと共に投与される実施形態において、約0.1ng~約4000μgの使用が、有用であることが多く、例えば、約0.1ng~約3900μg、約0.1ng~約3800μg、約0.1ng~約3700μg、約0.1ng~約3600μg、約0.1ng~約3500μg、約0.1ng~約3400μg、約0.1ng~約3300μg、約0.1ng~約3200μg、約0.1ng~約3100μg、約0.1ng~約3000μg、約0.1ng~約2900μg、約0.1ng~約2800μg、約0.1ng~約2700μg、約0.1ng~約2600μg、約0.1ng~約2500μg、約0.1ng~約2400μg、約0.1ng~約2300μg、約0.1ng~約2200μg、約0.1ng~約2100μg、約0.1ng~約2000μg、約0.1ng~約1900μg、約0.1ng~約1800μg、約0.1ng~約1700μg、約0.1ng~約1600μg、約0.1ng~約1500μg、約0.1ng~約1400μg、約0.1ng~約1300μg、約0.1ng~約1200μg、約0.1ng~約1100μg、約0.1ng~約1000μg、約0.1ng~約900μg、約0.1ng~約800μg、約0.1ng~約700μg、約0.1ng~約600μg、約0.1ng~約500μg、約0.1ng~約400μg、約0.1ng~約300μg、約0.1ng~約200μg、約0.1ng~約100μg、約0.1ng~約90μg、約0.1ng~約80μg、約0.1ng~約70μg、約0.1ng~約60μg、約0.1ng~約50μg、約0.1ng~約40μg、約0.1ng~約30μg、約0.1ng~約20μg、約0.1ng~約10μg、約0.1ng~約1μg、約0.1ng~約900ng、約0.1ng~約800ng、約0.1ng~約700ng、約0.1ng~約600ng、約0.1ng~約500ng、約0.1ng~約400ng、約0.1ng~約300ng、約0.1ng~約200ng、約0.1ng~約100ng、約0.1ng~約90ng、約0.1ng~約80ng、約0.1ng~約70ng、約0.1ng~約60ng、約0.1ng~約50ng、約0.1ng~約40ng、約0.1ng~約30ng、約0.1ng~約20ng、約0.1ng~約10ng、約0.1ng~約1ng、約1ng~約4000μg、約1ng~約3900μg、約1ng~約3800μg、約1ng~約3700μg、約1ng~約3600μg、約1ng~約3500μg、約1ng~約3400μg、約1ng~約3300μg、約1ng~約3200μg、約1ng~約3100μg、約1ng~約3000μg、約1ng~約2900μg、約1ng~約2800μg、約1ng~約2700μg、約1ng~約2600μg、約1ng~約2500μg、約1ng~約2400μg、約1ng~約2300μg、約1ng~約2200μg、約1ng~約2100μg、約1ng~約2000μg、約1ng~約1900μg、約1ng~約1800μg、約1ng~約1700μg、約1ng~約1600μg、約1ng~約1500μg、約1ng~約1400μg、約1ng~約1300μg、約1ng~約1200μg、約1ng~約1100μg、約1ng~約1000μg、約1ng~約900μg、約1ng~約800μg、約1ng~約700μg、約1ng~約600μg、約1ng~約500μg、約1ng~約400μg、約1ng~約300μg、約1ng~約200μg、約1ng~約100μg、約1ng~約90μg、約1ng~約80μg、約1ng~約70μg、約1ng~約60μg、約1ng~約50μg、約1ng~約40μg、約1ng~約30μg、約1ng~約20μg、約1ng~約10μg、約1ng~約1μg、約1ng~約900ng、約1ng~約800ng、約1ng~約700ng、約1ng~約600ng、約1ng~約500ng、約1ng~約400ng、約1ng~約300ng、約1ng~約200ng、約1ng~約100ng、約1ng~約90ng、約1ng~約80ng、約1ng~約70ng、約1ng~約60ng、約1ng~約50ng、約1ng~約40ng、約1ng~約30ng、約1ng~約20ng、約1ng~約10ng、約10ng~約4000μg、約20ng~約4000μg、約30ng~約4000μg、約40ng~約4000μg、約50ng~約4000μg、約60ng~約4000μg、約70ng~約4000μg、約80ng~約4000μg、約90ng~約4000μg、約100ng~約4000μg、約200ng~約4000μg、約300ng~約4000μg、約400ng~約4000μg、約500ng~約4000μg、約600ng~約4000μg、約700ng~約4000μg、約800ng~約4000μg、約900ng~約4000μg、約1μg~約4000μg、10μg~約4000μg、20μg~約4000μg、30μg~約4000μg、40μg~約4000μg、50μg~約4000μg、60μg~約4000μg、70μg~約4000μg、80μg~約4000μg、90μg~約4000μg、100μg~約4000μg、200μg~約4000μg、300μg~約4000μg、400μg~約4000μg、500μg~約4000μg、600μg~約4000μg、700μg~約4000μg、800μg~約4000μg、900μg~約4000μg、1000μg~約4000μg、1100μg~約4000μg、1200μg~約4000μg、1300μg~約4000μg、1400μg~約4000μg、1500μg~約4000μg、1600μg~約4000μg、1700μg~約4000μg、1800μg~約4000μg、1900μg~約4000μg、2000μg~約4000μg、2100μg~約4000μg、2200μg~約4000μg、2300μg~約4000μg、2400μg~約4000μg、2500μg~約4000μg、2600μg~約4000μg、2700μg~約4000μg、2800μg~約4000μg、2900μg~約4000μg、3000μg~約4000μg、3100μg~約4000μg、3200μg~約4000μg、3300μg~約4000μg、3400μg~約4000μg、3500μg~約4000μg、3600μg~約4000μg、3700μg~約4000μg、3800μg~約4000μg、又は3900μg~約4000μgが有用である。
【0082】
追加のベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質及び化学的コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス及びHIVベースのウイルスが挙げられる。1つのHIVベースのウイルスベクターは、少なくとも2つのベクターを含み、gag及びpol遺伝子はHIVゲノム由来であり、env遺伝子は別のウイルス由来である。DNAウイルスベクターとしては、ポックスベクター、例えばオルソポックス(orthopox)又はアビポックス(avipox)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター[例えば、Gellerら、J. Neurochem、64: 487-96 (1995);Limら、DNA Cloning: Mammalian Systems、D. Glover編(Oxford Univ. Press、Oxford England) (1995);Gellerら、Proc Natl. Acad. Sci. USA.:90:7603-07 (1993);Gellerら、Proc Natl. Acad. Sci. USA 87:1149-53 (1990)を参照のこと]、アデノウイルスベクター[例えば、Le Gal LaSalleら、Science、259:988-90 (1993);Davidsonら、Nat. Genet. 3: 219-23 (1993);Yangら、J. Virol. 69: 2004-15 (1995)を参照のこと]及びアデノ随伴ウイルスベクター[例えば、Kaplittら、Nat. Genet. 8:148-54 (1994)を参照のこと]が挙げられる。
【0083】
必要に応じて、本明細書に記載されるポリヌクレオチドはまた、マイクロデリバリー媒体(microdelivery vehicle)、例えばカチオン性リポソーム、アデノウイルスベクター、及びエキソソームと共に使用することもできる。リポソーム調製、標的化及び内容物の送達の手順の総論に関して、Manninoら、BioTechniques、6:682-90 (1988)を参照されたい。またFeignerら、Bethesda Res. Lab. Focus、11(2):21 (1989)及びMaurer、Bethesda Res. Lab. Focus、11(2):25 (1989)も参照されたい。一部の実施形態において、エキソソームは、標的細胞、例えば癌細胞へのCRISPRエンドヌクレアーゼ及び/又はガイドRNAをコードする核酸の送達のために使用することができる。エキソソームは、様々な細胞によって分泌されたナノサイズ化された小胞であり、細胞膜で構成される。エキソソームは、様々な表面接着タンパク質及びベクターリガンド(テトラスパニン、インテグリン、CD11b及びCD18受容体)によって標的細胞に付着して、そのペイロードを標的細胞に送達することができる。数々の研究が、エキソソームは、その特徴及び起源に従って特異的な細胞親和性を有し、それを使用して、それらを罹患組織及び/又は臓器に標的化できることを示している。Batrakovaら、J Control Release 219: 396~405 (2015)を参照されたい。例えば、癌由来のエキソソームは、癌細胞にCRISPR/Cas9プラスミドを効率的に送達できる天然担体として機能する。Kimら、J Control Release 266: 8~16 (2017)を参照されたい。
【0084】
複製欠損組換えアデノウイルスベクターは、公知の技術に従って生産することができる。Quantin,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:2581~84 (1992);Stratford-Perricadetら、J. Clin. Invest.、90:626~30 (1992); Rosenfeldら、Cell、68:143~55 (1992)を参照されたい。
【0085】
別の送達方法は、細胞内で発現された生成物を生産できる一本鎖DNA生産ベクターを使用することである。例えば、Chenら、BioTechniques、34: 167~71 (2003)を参照されたい。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法、組成物、及び組み合わせは、腫瘍の処置に使用することができる。他の実施形態では、腫瘍の処置には、腫瘍の成長を阻害すること、腫瘍の縮小を促進すること、又は腫瘍の成長を阻害し、腫瘍の縮小を促進することの両方が含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ここで記載されるCRISPR/Casシステムの腫瘍内又は腫瘍周囲送達は、未処置の腫瘍と比較して、腫瘍サイズが、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上減少し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、ここで記載されるCRISPR/Casシステムの腫瘍内又は腫瘍周囲送達は、未処置の腫瘍と比較して、腫瘍の成長が、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上阻害され得る。
【0089】
特定の実施形態において、腫瘍は、追加の薬剤、例えば化学療法剤で処置される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、治療上有効な量のCRISPR/Casシステムによる処置と同時に開始される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、治療上有効な量のCRISPR/Casシステムによる処置が開始された後に開始される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、治療上有効な量のCRISPR/Casシステムによる処置の前に開始される。
【0090】
特定の実施形態において、本開示の治療上有効な量のCRISPR/Casシステムは、腫瘍の処置のために利用することができ、対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している。例えば、一部の実施形態において、腫瘍は、1種以上の化学療法剤に対して耐性である。したがって、本開示は、対象における腫瘍を処置する方法であって、対象は、癌のための少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗しており、方法は、本明細書に記載される治療上有効な量のCRISPR/Casシステムを腫瘍を処置するのに十分な量で対象に投与することを含む、方法を提供する。本明細書に記載される治療上有効な量のCRISPR/Casシステムはまた、対象における腫瘍細胞成長を阻害することにも利用することができ、対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している。したがって、本開示はさらに、対象における腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、例えば対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗しており、方法は、腫瘍細胞成長が阻害されるように本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0091】
小分子化学療法剤は、一般的に、例えば、1.トポイソメラーゼII阻害剤(細胞傷害性の抗生物質)、例えばアントラサイクリン/アントラセンジオン、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びネモルビシン、アントラキノン、例えば、ミトキサントロン及びロソキサントロン、並びにポドフィロトキシン(podophillotoxines)、例えば、エトポシド及びテニポシド;2.微小管形成に影響を与える薬剤(有糸分裂阻害剤)、例えば植物性アルカロイド(例えば、生物学的に活性であり細胞傷害性である植物由来のアルカリ性の窒素を含有する分子のファミリーに属する化合物)、例えば、タキサン、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル、並びにビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン、並びにポドフィロトキシンの誘導体;3.アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物、スルホン酸アルキル及びアルキル化作用を有する他の化合物、例えばニトロソウレア、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド及びメルファラン;4.代謝拮抗物質(ヌクレオシド阻害剤)、例えば、フォレート、例えば、葉酸、フルオロピリミジン(fiuropyrimidine)、プリン又はピリミジンアナログ、例えば5-フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メトトレキセート、及びエダトレキセート;5.トポイソメラーゼI阻害剤、例えばトポテカン、イリノテカン、及び9-ニトロカンプトテシン、カンプトテシン誘導体、及びレチノイン酸;並びに6.白金化合物/複合体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンを含む様々なクラスに属する。本明細書で開示される方法における使用のための例示的な化学療法剤としては、これらに限定されないが、アミフォスチン(エチオール(ethyol))、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(doxorubicin lipo)(doxil)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(daunorubicin lipo)(daunoxome)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-Il、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、カペシタビン、フトラフル、5'デオキシフルオロウリジン(deoxyflurouridine)、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5-アザシトシン、5-アザデオキシシトシン、アロプリノール、2-クロロアデノシン、トリメトレキセート、アミノプテリン、メチレン-10-デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン(oxaplatin)、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金-DACH、オルマプラチン、CI-973(及びそのアナログ)、JM-216(及びそのアナログ)、エピルビシン、9-アミノカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9-ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L-フェニルアラニンマスタード、イホスファミド、メフォスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド、トロホスファミド、カルムスチン(trophosphamide carmustine)、セムスチン、エポチロンA~E、トミュデックス、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アムサクリン、リン酸エトポシド、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ペントスタチン、フロクシウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ピポブロマン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、mTor、上皮増殖因子受容体(EGFR)、及び線維芽細胞増殖因子(FGF)並びにそれらの組合せが挙げられ、これらは、特定の腫瘍又は癌にとって適切な標準的治療に基づき当業者には容易に明らかになる。特定の実施形態において、化学療法剤は、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、及びそれらの組合せ(例えば、シスプラチン及びビノレルビン;シスプラチン及びカルボプラチン;ビノレルビン及びカルボプラチン;シスプラチン、ビノレルビン、及びカルボプラチン)からなる群から選択される。
【0092】
一部の実施形態において、ここで記載されるCRISPR/Casシステムの腫瘍内又は腫瘍周囲送達は、対象の処置において使用される化学療法剤の量を、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上低減させることができる。
【0093】
癌遺伝子
いくつかの実施形態では、癌遺伝子は、癌ドライバー遺伝子、疾患原因遺伝子、発癌遺伝子(oncogene)、又は変異腫瘍サプレッサー遺伝子、例えば、NRF2、EGFR、EIF1AX、GNA11、SF3B1、BAP1、PBRM1、ATM、SETD2、KDM6A、CUL3、MET、SMARCA4、U2AF1、RBM10、STK11、NF1、NF2、IDH1、IDH2、PTPN11、MAX、TCF12、HIST1H1E、LZTR1、KIT、RAC1、ARID2、BRD4、BRD7、BARF1、NRAS、RNF43、SMAD4、ARID1A、ARID1B、KRAS、APC、SMAD2、SMAD3、ACVR2A、GNAS、HRAS、STAG2、FGFR3、FGFR4、RHOA、CDKN1A、ERBB3、KANSL1、RB1、TP53、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、KEAP1、CASP8、TGFBR2、HLA-B、MAPK1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、HLA-A、RASA1、EPHA2、EPHA3、EPHA5、EPHA7、NSD1、ZNF217、ZNF750、KLF5、EP300、FAT1、PTEN、FBXW7、PIK3CA、PIK3CB、PIK3C2B、PIK3CG、RUNX1、RUNX1T1、DNMT3A、SMC1A、ERBB2、AKT1、AKT2、AKT3、MAP3K1、FOXA1、BRCA1、BRCA2、CDH1、PIK3R1、PPP2R1A、BCOR、BCORL1、ARHGAP35、FGFR2、CHD4、CTCF、CTNNA1、CTNNB1、SPOP、TMSB4X、PIM1、CD70、CD79A、CD79B、B2M、CARD11、MYD88、BTG1、BTG2、TNFAIP3、MEN1、PRKAR1A、PDGFRA、PDGFRB、SPTA1、GABRA6、KEL、SMARCB1、ZBTB7B、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、BCL2L11、RFC1、MAP3K4、CSDE1、EPAS1、RET、LATS2、EEF2、CYLD、HUWE1、MYH9、AJUBA、FLNA、ERBB4、CNBD1、DMD、MUC6、FAM46C、FAM46D、PLCG1、PLCG2、NIPBL、FUBP1、CIC、ZBTB2、ZBTB20、ZCCHC12、TGIF1、SOX2、SOX9、SOX10、PCBP1、ZFP36L2、TCF7L2、AMER1、KDM5A、KDM5C、MTOR、VHL、KIF1A、TCEB1、TXNIP、CUL1、TSC1、ELF3、RHOB、PSIP1、SF1、FOXQ1、GNA13、DIAPH2、ZFP36L1、ERCC2、SPTAN1、RXRA、ASXL2、CREBBP、CREB3L3、ALB、DHX9、XPO1、RPS6KA3、IL6ST、TSC2、EEF1A1、WHSC1、APOB、NUP133、AXIN1、PHF6、TET2、WT1、FLT3、FLT4、SMC3、CEBPA、RAD21、RAD50、RAD51、PTPDC1、ASXL1、EZH2、NPM1、SRSF2、GNAQ、PLCB4、CYSLTR2、CDKN1B、CBFB、NCOR1、PTPRD、TBX3、GPS2、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、MAP2K4、PTCH1、PTMA、LATS1、POLRMT、CDK4、COL5A1、PPP6C、MECOM、DACH1、MAP2K1、MAP2K2、RQCD1、DDX3X、NUP93、PPM1D、CHD2、CHD3、CCND1、CCND2、CCND3、ACVR1、KMT2A、KMT2B、KMT2C、KMT2D、SIN3A、SCAF4、DICER1、FOXA2、CTNND1、MYC、MYCL、MYCN、SOX17、ARID5B、ATR、INPPL1、INPP4B、ATF7IP、ZMYM2、ZFHX3、PDS5B、SOS1、TAF1、PIK3R2、RPL22、RRAS2、MSH2、MSH6、CKD12、ZNF133、ZNF703、MED12、ZMYM3、GTF2I、RIT1、MGA、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、JAK2、MITF、PDCD1LG2、STAT4、ABL2、CHEK2、FANCD2、JAK3、MLH1、FANCE、JUN、MPL、RICTOR、SUFU、FANCF、GID4、KAT6A、MRE11A、PDK1、SYK、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、CRLF2、FANCL、RPTOR、ALK、BTK、CSF1R、FAS、TERC、C11orf30、KDR、MUTYH、SDHA、AR、FGF10、GPR124、SDHB、ARAF、CBL、FGF14、GRIN2A、SDHC、ARFRP1、FGF19、GRM3、KLHL6、PMS2、SDHD、TNFRSF14、DAXX、FGF23、GSK3B、POLD1、TOP1、DDR2、FGF3、H3F3A、POLE、TOP2A、CCNE1、FGF4、HGF、SLIT2、CD274、FGF6、HNF1A、NFKBIA、PRDM1、DOT1L、FGFR1、LMO1、NKX2-1、PREX2、HSD3B1、LRP1B、TSHR、ATRX、CDC73、HSP90AA1、PRKCI、AURKA、PRKDC、VEGFA、AURKB、CDK12、FH、MAGI2、PRSS8、SMO、FLCN、IGF1R、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、SOCS1、CDK8、IKBKE、NTRK1、BARD1、IKZF1、NTRK2、QKI、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、SPEN、ERRFI1、FRS2、MDM4、PAK3、BCL6、ESR1、IRF2、PALB2、RAF1、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、IRS2、PAX5、RARA、BLM、FANCA、JAK1、FCRL4、LIG4、MAR、PWWP3A、MUC16、MUC17、FCGBP、FAT17、MMSET、IRTA2、TTN、DST、又はSTAT3などである。
【0094】
一部の実施形態において、癌遺伝子は、核内因子赤血球2関連因子(NRF2、NFE2L2)である。NRF2は、酸化性/求電子性ストレスに対する細胞の応答に関与する100~200種の標的遺伝子のマスターレギュレーターとみなされる。標的としては、グルタチオン(GSH)メディエーター、抗酸化剤及び排出ポンプを制御する遺伝子が挙げられる(Haydenら、Urol. Oncol. Semin. Orig. Investig. 32:806814 (2014))。NRF2はまた、タンパク質の分解及び解毒に関与する遺伝子の発現を調節することも公知であり、Cul3依存性E3ユビキチンリガーゼ複合体の基質アダプターであるケルチ(Kelch)様ECH関連タンパク質1(KEAP1)によって負に調節される。標準状態下で、Keap1は絶えずユビキチン依存性の分解のためにNRF2を標的化し、下流の標的遺伝子でNRF2の低い発現を維持する。しかしながら、化学療法は、NRF2標的遺伝子の転写活性を活性化し、しばしば細胞保護応答を促進することが示され、環境ストレス又は有害な成長条件に応答してNRF2の発現の強化が起こる。NRF2上方調節をもたらす他のメカニズムとしては、KEAP1における変異又はプロモーター領域のエピジェネティックな変化が挙げられる。NRF2の発現の上方調節は、癌細胞の化学療法薬に対する耐性の強化をもたらし、これは、まさしくその作用によって細胞増殖にとって好ましくない環境を誘発する。実際に、Haydenら(同書中)は、NRF2の発現の増加は、癌細胞のシスプラチンなどの化学療法薬に対する耐性をもたらすことを明らかに実証した。Singhら(2010、Antioxidants & Redox Signaling 13)はまた、NRF2の構成的発現は、放射線抵抗性をもたらし、NRF2の阻害は、内因性活性酸素種(ROS)レベルの増加に加えて生存の減少を引き起こすことも示した。近年、Torrenteら(Oncogene (2017). doi:10.1038/onc.2017.221)は、NRF2とホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼである2つのHIPK2とのクロストークを同定し、HIPK2がNRF2を介して細胞保護作用を示すことを実証した。
【0095】
CRISPR/Cas9を使用することによって、野生型NRF2タンパク質の機能を損なわずに、化学療法耐性を引き起こす変異NRF2タンパク質を標的化しノックアウトすることが可能である(PCT/US2020/034369、参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。したがって、一部の実施形態は、癌細胞でのみ見出され、非癌性細胞では見出されないバリアントNRF2の発現を低減させること、又は一部の実施形態においてそれを除去することに向けられる。これらのバリアントは、一般的に、NRF2のNeh2ドメイン内に見出され、これはKEAP1結合ドメインとして公知である。一部の実施形態において、NRF2突然変異は、以下の表1に見出されるものであってもよい。
【0096】
【0097】
NRF2 配列番号15:
1 gattaccgag tgccggggag cccggaggag ccgccgacgc agccgccacc gccgccgccg
61 ccgccaccag agccgccctg tccgcgccgc gcctcggcag ccggaacagg gccgccgtcg
121 gggagcccca acacacggtc cacagctcat catgatggac ttggagctgc cgccgccggg
181 actcccgtcc cagcaggaca tggatttgat tgacatactt tggaggcaag atatagatct
241 tggagtaagt cgagaagtat ttgacttcag tcagcgacgg aaagagtatg agctggaaaa
301 acagaaaaaa cttgaaaagg aaagacaaga acaactccaa aaggagcaag agaaagcctt
361 tttcgctcag ttacaactag atgaagagac aggtgaattt ctcccaattc agccagccca
421 gcacatccag tcagaaacca gtggatctgc caactactcc caggttgccc acattcccaa
481 atcagatgct ttgtactttg atgactgcat gcagcttttg gcgcagacat tcccgtttgt
541 agatgacaat gaggtttctt cggctacgtt tcagtcactt gttcctgata ttcccggtca
601 catcgagagc ccagtcttca ttgctactaa tcaggctcag tcacctgaaa cttctgttgc
661 tcaggtagcc cctgttgatt tagacggtat gcaacaggac attgagcaag tttgggagga
721 gctattatcc attcctgagt tacagtgtct taatattgaa aatgacaagc tggttgagac
781 taccatggtt ccaagtccag aagccaaact gacagaagtt gacaattatc atttttactc
841 atctataccc tcaatggaaa aagaagtagg taactgtagt ccacattttc ttaatgcttt
901 tgaggattcc ttcagcagca tcctctccac agaagacccc aaccagttga cagtgaactc
961 attaaattca gatgccacag tcaacacaga ttttggtgat gaattttatt ctgctttcat
1021 agctgagccc agtatcagca acagcatgcc ctcacctgct actttaagcc attcactctc
1081 tgaacttcta aatgggccca ttgatgtttc tgatctatca ctttgcaaag ctttcaacca
1141 aaaccaccct gaaagcacag cagaattcaa tgattctgac tccggcattt cactaaacac
1201 aagtcccagt gtggcatcac cagaacactc agtggaatct tccagctatg gagacacact
1261 acttggcctc agtgattctg aagtggaaga gctagatagt gcccctggaa gtgtcaaaca
1321 gaatggtcct aaaacaccag tacattcttc tggggatatg gtacaaccct tgtcaccatc
1381 tcaggggcag agcactcacg tgcatgatgc ccaatgtgag aacacaccag agaaagaatt
1441 gcctgtaagt cctggtcatc ggaaaacccc attcacaaaa gacaaacatt caagccgctt
1501 ggaggctcat ctcacaagag atgaacttag ggcaaaagct ctccatatcc cattccctgt
1561 agaaaaaatc attaacctcc ctgttgttga cttcaacgaa atgatgtcca aagagcagtt
1621 caatgaagct caacttgcat taattcggga tatacgtagg aggggtaaga ataaagtggc
1681 tgctcagaat tgcagaaaaa gaaaactgga aaatatagta gaactagagc aagatttaga
1741 tcatttgaaa gatgaaaaag aaaaattgct caaagaaaaa ggagaaaatg acaaaagcct
1801 tcacctactg aaaaaacaac tcagcacctt atatctcgaa gttttcagca tgctacgtga
1861 tgaagatgga aaaccttatt ctcctagtga atactccctg cagcaaacaa gagatggcaa
1921 tgttttcctt gttcccaaaa gtaagaagcc agatgttaag aaaaactaga tttaggagga
1981 tttgaccttt tctgagctag tttttttgta ctattatact aaaagctcct actgtgatgt
2041 gaaatgctca tactttataa gtaattctat gcaaaatcat agccaaaact agtatagaaa
2101 ataatacgaa actttaaaaa gcattggagt gtcagtatgt tgaatcagta gtttcacttt
2161 aactgtaaac aatttcttag gacaccattt gggctagttt ctgtgtaagt gtaaatacta
2221 caaaaactta tttatactgt tcttatgtca tttgttatat tcatagattt atatgatgat
2281 atgacatctg gctaaaaaga aattattgca aaactaacca ctatgtactt ttttataaat
2341 actgtatgga caaaaaatgg cattttttat attaaattgt ttagctctgg caaaaaaaaa
2401 aaattttaag agctggtact aataaaggat tattatgact gttaaa
【0098】
いくつかの実施形態では、癌遺伝子は上皮成長因子受容体(EGFR)である。EGFRは、プロテインキナーゼスーパーファミリーのメンバーである膜貫通糖タンパク質である。このタンパク質は、上皮成長因子ファミリーのメンバーの受容体である。EGFRは、上皮成長因子に結合する細胞表面タンパク質であり、それによって受容体の二量体化及びチロシンの自己リン酸化を誘導し、細胞増殖につながる。この遺伝子の変異は肺癌に関連している。EGFRは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の感染に起因する重症型のCOVID-19に寄与するサイトカインストームの構成要素である。いくつかの実施形態では、L858R変異(以下の配列番号16及び17で強調表示)によって、EGFRにde novo PAM(CTG→CGG)が生成される。
【0099】
【0100】
【0101】
R34G NRF2 sgRNA (配列番号18):
cuuacuccaa gaucuauauc gcaccgacuc ggugccacuu uuucaaguug auaacggacu 60
agccuuauuu uaacuugcua uuucuagcuc uaaaac 96
【0102】
[実施例]
本開示は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本開示の例示的な実施形態を示しながら、例示のためにのみ与えられることを理解すべきである。
【0103】
[実施例1]
H1703非小細胞肺癌(NSCLC)ヒト異種移植モデルマウスにおける皮下又は腫瘍内注射後のアデノウイルスの生体内分布
野生型H1703扁平上皮非小細胞肺癌細胞を移植したマウスにおいて、腫瘍内注射後のアデノウイルスの生体内分布を測定した。H1703細胞は、以下に記載するように、マウスの皮下に、又は同所性(すなわち肺組織内)に移植される。
【0104】
H1703細胞の皮下注射
6週齢の雌の胸腺欠損ヌードマウスの5匹と雌のNCGマウス5匹にH1703細胞の皮下注射を行う。この皮下注射は、腫瘍細胞を腹の脂肪部分の左脇腹に移植する。これらの細胞を注射すると、マウスモデルにおいて固形腫瘍塊に成長する。H1703ヒト腫瘍由来細胞株は、滅菌PBS総容量200μL中に4×106の濃度で注射される。この注射は、研究者の利き手でない方の手でマウスを拘束しながら行う。注射後マウスはホームケージに戻され、通常通り餌と水に自由にアクセスできる。細胞が増殖するにつれて、腫瘍体積がいずれの寸法でも少なくとも1.5cmに達するまで、3日間隔でノギスを用いて腫瘍を測定する。腫瘍がいずれの寸法でも1.5cmを超えて成長した場合、CO2吸入を用いてマウスを人道的に安楽死させる。この実験の目的は、マウスの各系統(胸腺欠損ヌード又はNCG)間の腫瘍成長の適合性を決定することである。胸腺欠損ヌードマウス又はNCGマウスは、各系統の腫瘍成長の成否によって残りの実験に選択される。
【0105】
マウスの体重は動物の健康状態をモニターするために3日ごとに測定する。本実験中又は次の実験中、マウスの体重が20%以上減少した場合は、このプロトコールのガイドラインに従い、マウスを適切に安楽死させる。
【0106】
【0107】
H1703細胞の同所注射
H1703細胞は、先に決定した系統のいずれかの6週齢の雌マウス5匹に、背側の肺にアクセスする手術を用いて同所投与する。H1703腫瘍由来細胞は、滅菌PBS総容量40μL中に1×106の濃度で投与される。これはイソフルラン麻酔下で行われる。手術当日とその後3日ごとに動物の体重を測定する。注射後、マウスはホームケージに戻され、通常通り餌と水に自由にアクセスできる。腫瘍は、腫瘍体積がいずれの寸法でも1.5cm以上に達するまで、3日間隔でIVIS生物発光法又はMRIイメージングを用いて測定する。腫瘍がいずれの寸法でも1.5cmを超えて成長した場合、CO2吸入を用いてマウスを人道的に安楽死させる。この実験の目的は、前の実験において確立されたマウスの最適化された系統(胸腺欠損ヌード又はNCG)のいずれかを用いて、同所モデルにおける腫瘍成長の適合性を決定することである。
【0108】
【0109】
腫瘍はアデノウイルスを注射する前に、約100mm3のサイズまで成長させる。CMVプロモーターの転写制御下でルシフェラーゼを発現するように操作したアデノウイルスを、腫瘍の4つの異なる象限(quadrant)に単回注射で投与する。処置群を下表に記載する。
【0110】
【0111】
IVIS発光カメラを用いて、ルシフェラーゼ活性を有するマウスをライブイメージ(腹側及び側方)する。イメージングの5分前にルシフェリンナトリウム(1.58mg/ml、10μg/g体重)を100μl腹腔内注射する。IVISを用いたルシフェラーゼ発現のインビボイメージングをウイルス注射後1日、2日、3日、6日、10日、15日、及び18日に行い、体重を記録する。
【0112】
5匹のAd-CMV-Lucマウス(又は4匹のPBSマウス)のコホートを安楽死させ、腫瘍及び末梢組織(肺、肝臓、血液、脾臓、胸腺、膵臓、胃、腸、腎臓、心臓、卵巣、脳)を、ウイルス注射後1日、3日、6日、18日の時点で採取する。腫瘍細胞の同一性は配列で確認される。
【0113】
インビボ生物発光イメージング(IVIS)は、試験した各ウイルスPFUのフォトン光束又はRLU(ln)として計算される。
【0114】
ウイルスゲノムの定量には、Dneasy blood and tissueキット(Qiagen 69504)を用いて腫瘍及び末梢組織からDNAを単離する。組織及び腫瘍検体中のウイルスゲノムの定量は、Adeno- X qPCR Titrationキット(型番632252)を用いたリアルタイムPCRによって行う。
【0115】
組織におけるルシフェラーゼ導入遺伝子の発現は、腫瘍及び末梢組織の細胞をPromega溶解バッファーを用いて溶解することにより決定される。ルシフェラーゼ遺伝子発現は、Bright-Glo Luciferase Assayシステム(Promega、E2620)を用いて測定する。
【0116】
肝細胞毒性は、肝細胞に対するウイルス誘導性損傷を考慮し、血清ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)をELISAを用いて測定することにより決定される。
【0117】
[実施例2]
皮下又は肺腫瘍の処置についての投与及びインビボでの有効性
処置ウインドウは、上記の実施例1において皮下注射について確立した腫瘍成長曲線に基づいている。腫瘍細胞皮下注射後4~6週間の間と推定される。実施例2において行ったように、同一の皮下注射で、サイズが80~100mm3に達した時点で、100μL中2×108MOIのアデノウイルス又は100μL中1×1011MOIのAAVを腫瘍塊に直接送達する。この用量では化学療法応答における変化を誘発するのに十分でない場合は、用量を調整する。同所注射ウインドウ、治療ウインドウは以前の実験で確立された腫瘍成長曲線に基づいて決定される。2回目の小手術を使用して、アデノウイルス又はAAVのいずれかを肺腫瘍に直接注射する。各タイプの注射に使用される動物群を以下の表5に示す。
【0118】
【0119】
CRISPRにより導かれる介入の有効性は、化学療法処置との併用でも試験される。シスプラチンを3mg/kgの用量で10日間、3日ごとに尾静脈注射し、合計4サイクル送達する。腫瘍のサイズをノギスを用いて評価する。標的遺伝子編集ツールの様々な製剤と追加用量範囲を試験して、処置効果を最適化する。
【0120】
[実施例3]
肺癌細胞におけるR34G NRF2を標的とした1つ又は3つのsgRNAをコードするアデノウイルス血清型5ベクターの評価、並びにCas9及びR34G NRF2 sgRNAをコードする単一のアデノウイルス5ベクターと、肺癌細胞におけるCas9又は3つのR34G NRF2 sgRNAをコードする別々のアデノウイルスベクターを含む二重ベクターシステムの比較
本研究で評価したアデノウイルス血清型5ベクターの概略図を
図1に示す。処置群1は、U6プロモーターによって駆動されるR34G NRF2 sgRNA(配列番号18)の1コピーをコードする単一ベクターであり、処置群2は、U6、H1又は7SKプロモーターによって駆動されるR34G NRF2 sgRNAの3コピーをコードする単一ベクターであった。これらのベクターはいずれも、CMVプロモーターによって駆動される野生型化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9(spCas9)もコードしており、spCas9のC末端内には1コピーのNLSが融合していた。spCas9カセットはSignaGen Laboratoriesから入手した。処置群3及び4は、R34G NRF2 gRNAのDNA結合ドメインをコードする20塩基対をネガティブコントロールとしてスクランブルDNA配列に置換した以外は、基本的に1及び2と同じであった。処置群5は二重ベクターシステムで、一方のベクターはR34G NRF2 gRNAを3コピーコードしているがspCas9カセットを欠いており、もう一方のベクターはCMVプロモーターを含むspCas9カセットを含有するがgRNAカセットを欠いていた。
【0121】
図2は異なるアデノウイルスベクターを異なるMOI PFU/ml、例えばMOI100、500、2500、5000で肺癌細胞に感染させた後のインデルの割合を示す。感染72時間後にgDNAを収集し、サンガーシークエンシングにかけた。インデルの割合はDECODRを用いて解析した。
図43では、左が肺癌C26-8細胞、右が肺癌C44-25細胞についてインデルの割合を示している。これらの扁平上皮非小細胞肺癌細胞株はどちらも、NRF2遺伝子にホモ接合性のR34G突然変異を含有するように操作することによって親株H1703細胞株から誘導された。各図の下から上へ、第1群にはUTと表示し、細胞を処置していないことを示す(ネガティブコントロール)。下から2番目の群は、細胞をpAD-U6H17SK-R34Gのみで形質導入した(ネガティブコントロール)ので、インデルの形成は観察されなかった。pAD-CMV-Cas9と表示された3番目の群は、Cas9のみが導入された(ネガティブコントロール)ので、インデル形成は見られなかったか、バックグラウンドレベルであった。下から4番目の群はpAD-U6H17SK-R34G-CMV-Cas9(3コピーのsgRNA+Cas9)であり、ネガティブコントロールと比較してインデル形成の増加が観察された。下から5番目の群はpAD-U6-R34G-CMV-Cas9(sgRNA1コピー+Cas9)感染細胞である。sgRNAを1コピー含むこの第5群では、sgRNAを3コピー含む第4群と同レベルのインデル形成が観察された。第6群の細胞は二重ベクターで感染させ、1つのベクターでR34G NRF2 sgRNAを3コピー提供し、spCas9は別のpAD-CMV-Cas9ベクターで導入した。この6番目の群でも、4番目と5番目の群と同レベルのインデル形成が見られた。
【0122】
要約すると、R34G gRNAを1コピー又は3コピー導入したベクターは、形質導入した2つの肺癌細胞株で同様の遺伝子編集効果を示した。さらに、一体型ベクターは、遺伝子編集という点では二重ベクターと同等かそれ以上の性能を示した。
【0123】
[実施例4]
肺癌細胞におけるAAV6及びアデノウイルスの形質導入効果の比較
AAV6とアデノウイルスとの間の肺癌細胞における形質導入効果を比較するため、それぞれGFPを発現する両ベクターを肺癌細胞に形質導入し、形質導入後48時間のGFP発現の程度をフローサイトメトリーによって評価した。
図3に示すように、アデノウイルスの感染多重度(MOI)は10と低く、効率的に細胞を形質導入し(下段)、これは試験したAAV6の最高MOIである400万を上回った(上段)。スケールバーの右上の数字はGFP陽性細胞の割合を表し、各画像の左隅の数字はGFPの平均蛍光強度(MFI)を示した。このデータから、アデノウイルスベクターはAAV6ベクターに比べて肺癌細胞への形質導入効率が高いことが示された。
【0124】
GFPのサイズはCas9タンパク質のサイズのほんの一部であるため、AAV6及びアデノウイルスを用いて肺癌細胞でCas9を直接発現させる可能性も比較した。実験は段階に分けた。第1段階では、細胞をCas9をコードする核酸で4日間処置した。Cas9をコードする核酸はAAV6又はアデノウイルスベクターによって送達された。第2段階では、R34G sgRNAを含有する十分なLNPをAAV6又はアデノウイルスで感染させた4日後に送達した。Thermo Fisher Scientificから購入した試薬RNAiMaxを用いて、細胞をR34G gRNAでトランスフェクトした。5日目にこれらの細胞からgDNAを回収し、R34G突然変異に隣接するPCRアンプリコンにサンガーシークエンシングを行った。
図4(上から下へ)に示した順番の処置群を以下に記載する。
【0125】
R34G gRNAコントロール:R34G gRNAで処置し、Cas9構築物では処置しなかった細胞(ネガティブコントロール)。
【0126】
Ad-CMV-Cas9 50:CMVプロモーターの転写制御下でCas9をコードするアデノウイルスを50のMOIで処置したが、gRNA構築物では処置しなかった細胞(ネガティブコントロール)。
【0127】
Ad-CMV-Cas9 100:1)CMVプロモーターの転写制御下でCas9をコードするアデノウイルスを100のMOIで処置、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞。
【0128】
Ad-CMV-Cas9 50:1)CMVプロモーターの転写制御下でCas9をコードするアデノウイルスを50のMOIで処置、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞。
【0129】
Ad-CMV-Cas9 10:1)CMVプロモーターの転写制御下でCas9をコードするアデノウイルスを10のMOIで処置、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞。
【0130】
AAV6-EF1as-Cas9-4e6:1)コアEF1αショート(as)プロモーターの転写制御下でCas9をコードするAAV6を4×106のMOIで処置、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞。
【0131】
AAV6-EF1as-Cas9-1e6:1)コアEF1αショート(as)プロモーターの転写制御下でCas9をコードするAAV6を1×106のMOIで処置、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞。
【0132】
Cas9/R34G CrisprMax(商標):1)Cas9タンパク質を含むLNP(CrisprMax(商標))、及び2)4日目にLNPを介したR34G sgRNAで処置した細胞(ポジティブコントロール)。
【0133】
モック:Cas9構築物又はsgRNA構築物で処置していない細胞(ネガティブコントロール)。
【0134】
図4に示すように、アデノウイルスベクターは、Cas9発現がコアEF1αショートプロモーターによって駆動されるAAV6ベクターと比較して、Cas9発現の再構成において優れており、さらに全体的な遺伝子編集の有効性によって証明された。Cas9を発現させるAAVベクターにEF1αショートプロモーターが選択された理由は、AAVベクターは完全なCMVプロモーターを含有するサイズ容量を持たないからである。400万という高い感染多重度(MOI)のAAV6を使用した場合、70~80%の細胞が編集されないままであったのに対し、10という低いMOIのアデノウイルスベクターを使用した場合、わずか10%の細胞が編集されないままであった、すなわち、アデノウイルスベクターでは90%以上の細胞が遺伝子編集された、というデータが示された。この実験では、NRF2タンパク質をコードするヒトNEF2L2遺伝子のR34G突然変異に基づいてR34G sgRNAを設計した。これらの結果は、肺癌細胞においてCas9を発現させるために、アデノウイルスベクターがAAVベクターよりもはるかに有効であることを示している。
【0135】
[実施例5]
胸腺欠損ヌードマウスバックグラウンド:
胸腺欠損ヌードマウスは免疫不全マウスであるため、癌研究によく用いられる。これらのマウスは、胸腺の機能低下や欠損を引き起こすFoxn1遺伝子のホモ接合体突然変異を持つ。Tリンパ球は胸腺で成熟し、宿主の移植反応に関与する。したがって、このマウスモデルでは胸腺がないため、ヒト癌細胞を皮下注射した場合、腫瘍の成長と発生が可能である。このモデルのもう一つの利点は、マウスに毛が生えないので腫瘍を容易に観察できることである。相対的ルシフェラーゼ発現を、コントロール/未注射マウスに対する倍数変化でグラフ化した(
図5)。肺、脾臓、脳、卵巣、又は肝臓への生体内分布は見られなかったが、LNP3、4、及び5を注射した腫瘍試料では25,000倍から45,000倍の発現が見られた。
【0136】
NCGマウスバックグラウンドにおいて皮下成長させたH1703(44-25)へのLNP/fLucの腫瘍内送達の生体内分布(qRTPCR)
材料及び方法:
ルシフェラーゼ発現LNPの生体内分布を分析するために、定量的PCRを行った。略述すると、製造業者(Invitrogen)によって記載されたTRIzol RNA抽出プロトコールを用いて組織試料からRNAを抽出した。次に、Applied Biosystems High-Capacity RNA-to-cDNAキットを用いて、1反応あたり250ngの相補的DNA(cDNA)を合成し、Fast SYBR Green Master Mixを用いてqPCRを3回行った。表6に使用したプライマー配列を示す。試料はBio-Rad CFX384リアルタイムPCR検出システムで、製造業者の条件に従って実行した。95℃で20秒間の後、95℃で30秒間、及び60℃で30秒間のサイクルを40回繰り返した。各転写産物の相対定量は、2(-Ct)/2(CtGapdh)の式に従い、Gapdh転写産物量に対して正規化することによって求めた。
【0137】
【0138】
[実施例6]
ヌードマウスにおいて皮下成長させたH1703(44-25)へのLNP/fLucの腫瘍内送達(4時間、24時間IVISデータ)
この実験の目的は、腫瘍内注射後のルシフェラーゼmRNAの発現を可視化することである。ルシフェラーゼmRNA含有脂質ナノ粒子を、胸腺欠損ヌードマウスの皮下腫瘍に注射した。注射4時間後及び24時間後に画像を撮影した。
図6は、腫瘍に直接送達されたLNP/fLucのすべてが、腫瘍領域でfLuc遺伝子の発現につながったことを示している。
【0139】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢の胸腺欠損ヌード雌マウス(Charles River)に、BDマトリゲル(体積比1:1)中に5×106細胞(ヒト肺扁平上皮細胞由来H1703クローン44-25)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。腫瘍内注射は、Precision Nanosystemsから購入した総容量25μL中に2μgのLNPで行われた。
【0140】
生物発光イメージング
生物発光イメージングはIVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いて行った。マウスにd-ルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内投与した。d-ルシフェリン投与5分後、マウスを3%イソフルランを入れたチャンバー内で麻酔し、ノーズコーンを介して3%イソフルランを維持したままイメージングプラットフォーム上に置いた。マウスは、d-ルシフェリン投与後15分に、1秒以上の露光時間を用いて撮像した。生物発光値は、Caliper(Hopkinton、MA)によって提供されたLiving IMAGE Softwareを用いて、生物発光シグナルが発せられた目的の領域のフォトン光束(フォトン/秒)を測定することにより定量化した。
【0141】
[実施例7]
H1703(44-25)皮下異種移植モデルにおけるアデノウイルスベクター(fLuc)の送達
ホタルルシフェラーゼ導入遺伝子含有アデノウイルスを用いて、異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。CRISPRで操作したヒト肺扁平上皮癌細胞株H1703 44-25を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに1.5e
9pfuのAd5-CMV-fLuc(SignaGen Laboratories)を腫瘍内3カ所に腫瘍内注射した。注射後1日、2日、4日、10日、16日目にマウスに生物発光イメージングを行った。
図7は、腫瘍内注射後の生物発光シグナルの時間経過を示す。各腫瘍からのシグナルは、腫瘍の目的の領域(ROI)を設定することにより定量化した。ROIの値は各腫瘍の総光束フォトンとして記載されている。サイズの異なる腫瘍を持つ両マウスにおいて、腫瘍内注射1日後には、匹敵できるROIで強いシグナルが生じた。シグナルは16日の時間経過にわたって増加し、プラトーになった。
【0142】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)に、BDマトリゲル(体積比1:1)中に5×106細胞(ヒト肺扁平上皮細胞由来H1703クローン44-25)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。アデノウイルスの注射は、SignaGen Laboratoriesから購入したAd5-CMV-fLucを総容量30μL中1.5e9pfuで行われた。
【0143】
生物発光イメージング
生物発光イメージングはIVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いて行った。マウスにd-ルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内投与した。d-ルシフェリン投与5分後、マウスを3%イソフルランを入れたチャンバー内で麻酔し、ノーズコーンを介して3%イソフルランを維持したままイメージングプラットフォーム上に置いた。マウスは、d-ルシフェリン投与後15分に、1秒以上の露光時間を用いて撮像した。生物発光値は、Caliper(Hopkinton、MA)によって提供されたLiving IMAGE Softwareを用いて、生物発光シグナルが発せられた目的の領域のフォトン光束(フォトン/秒)を測定することにより定量化した。
【0144】
[実施例8]
H1703(44-25)皮下異種移植モデルにおけるNrf2を標的としたアデノウイルスベクターの送達
NRF2を標的としたCRISPR/Cas9含有アデノウイルスを用いて、異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。CRISPRで操作したヒト肺扁平上皮癌細胞株H1703 44-25を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに3.6e
9pfuのAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9を腫瘍内に注射するか、又は何も処置しなかった。
図8は、R34G標的sgRNA(配列番号25)発現を駆動するU6プロモーターと共に使用されたAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9の模式図を示す。腫瘍内注射から48時間後、免疫組織化学染色及び分析のために腫瘍を採取した。免疫染色された腫瘍組織を撮像し、Cas9の局在及び発現について分析した。
図9に示すように、画像の上段パネルは、処置した腫瘍と未処置の腫瘍を5倍及び2.5倍に拡大したもの、画像の下段パネルは20倍に拡大したものを示す。腫瘍切片内のシグナルの局在を可視化するためにDAB染色を用いた。Ad-U6-R34G-CAG-eSpCas9を処置した腫瘍組織で見られるように、未処置の腫瘍切片から得られた鮮明で均一な画像とは対照的に、腫瘍切片全体にシグナル(暗褐色の反応)が認められる。
【0145】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)に、BDマトリゲル(体積比1:1)中に5×106細胞(ヒト肺扁平上皮細胞由来H1703クローン44-25)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。アデノウイルスの注射は、Vector Biolabsから購入したAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9を総容量30μL中3.6e9pfuで行われた。
【0146】
免疫組織化学
腫瘍組織は1×PBS中4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で一晩固定した。Cas9標識は、固定した腫瘍組織に対して免疫組織化学を用いて行った。腫瘍は凍結し、10μmに切断し、スライドに直接マウントした。5%正常ヤギ血清(Vector)を用いてブロッキングした後、ウサギ抗Cas9一次抗体(Abcam)をインキュベーションバッファー(PBS中1%BSA)中、1:100希釈比で各切片に直接塗布した。乾燥を防ぐため、一次抗体は湿度チャンバー内で4℃において一晩インキュベートした。ヤギ抗ウサギビオチン化二次抗体(Vector)をインキュベーションバッファー中、1:200の希釈比で各切片に直接塗布した。二次抗体は室温で1時間インキュベートした。検出にはABC Elite HRPキット(Vector)を用い、方法はキットのプロトコールに従った。DABを用いて染色を行い、スライドをヘモトキシリンで対比染色した。次いで、スライドをエタノール/キシレンで脱水し、Acrytolを用いて恒久的にマウントした。スライドをLEICA DMIL LED顕微鏡で撮像した。
【0147】
[実施例9]
NCI PDMR PDXにおけるNrf2を標的としたアデノウイルスベクターの送達
NRF2を標的としたCRISPR/Cas9含有アデノウイルスを用いて、患者由来の異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。ヒト肺扁平上皮癌腫瘍断片(NCI PMDR)を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに3.6e
9pfuのAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9(
図8に模式図を示す)を腫瘍内に注射するか、又は何も処置しなかった。腫瘍内注射から48時間後、免疫組織化学染色及び分析のために腫瘍を採取した。免疫染色された腫瘍組織を撮像し、Cas9の局在及び発現について分析した。
図10に示すように、画像の上段パネルは、処置した腫瘍と未処置の腫瘍を2.5倍に拡大したもの、画像の下段パネルは20倍に拡大したものを示す。腫瘍切片内のシグナルの局在を可視化するためにDAB染色を用いた。Ad-U6-R34G-CAG-eSpCas9を処置した腫瘍組織で見られるように、未処置の腫瘍切片から得られた鮮明で均一な画像とは対照的に、腫瘍切片全体にシグナル(暗褐色の反応)が認められる。
【0148】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)にヒト肺扁平上皮癌腫瘍由来のPDX断片(NCI PDMRより入手、検体ID 073-R)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。アデノウイルスの注射は、Vector Biolabsから購入したAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9を総容量30μL中3.6e9pfuで行われた。
【0149】
免疫組織化学
腫瘍組織は1×PBS中4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で一晩固定した。Cas9標識は、固定した腫瘍組織に対して免疫組織化学を用いて行った。腫瘍は凍結し、10μmに切断し、スライドに直接マウントした。5%正常ヤギ血清(Vector)を用いてブロッキングした後、ウサギ抗Cas9一次抗体(Abcam)をインキュベーションバッファー(PBS中1%BSA)中、1:100希釈比で各切片に直接塗布した。乾燥を防ぐため、一次抗体は湿度チャンバー内で4℃において一晩インキュベートした。ヤギ抗ウサギビオチン化二次抗体(Vector)をインキュベーションバッファー中、1:200の希釈比で各切片に直接塗布した。二次抗体は室温で1時間インキュベートした。検出にはABC Elite HRPキット(Vector)を用い、方法はキットのプロトコールに従った。DABを用いて染色を行い、スライドをヘモトキシリンで対比染色した。次いで、スライドをエタノール/キシレンで脱水し、Acrytolを用いて恒久的にマウントした。スライドをLEICA DMIL LED顕微鏡で撮像した。
【0150】
[実施例10]
H1703(44-25)におけるNrf2を標的としたアデノウイルスベクターの送達
NRF2を標的としたCRISPR/Cas9含有アデノウイルスを用いて、異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び効果を評価した。CRISPRで操作したヒト肺扁平上皮癌細胞株H1703 44-25を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに3.6.5e
9pfuのA)Ad-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9(Vector Biolabs)又はB)Ad-U6H17SK-スクランブル-CAG-eSpCas9(Vector Biolabs)(
図11に模式図に示す)を、
図12のx軸に^で示すように、0、2、7日目に、合計1.08e
10pfuとなるように腫瘍内に注射した。
図11Aは、R34G標的sgRNA(GATATAGATCTTGGAGTAAG、配列番号25)発現を駆動するU6、H1及び7SKプロモーターと、それに続く強化されたSpCas9発現を駆動するニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを有するAd-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9の模式図を示す。
図11Bは、スクランブル標的sgRNA(GCACTACCAGAGCTAACTCA、配列番号26)発現を駆動するU6、H1及び7SKプロモーターと、それに続く強化されたSpCas9発現を駆動するニワトリβアクチン(CAG)プロモーターを有するAd-U6H17SK-スクランブル-CAG-eSpCas9の模式図を示す。マウスは12.5mg/kgのカルボプラチン及び5mg/kgのパクリタキセルで、x軸に*で示したように3日目及び10日目に処置された(静脈内注射)。動物は注射後22日間モニターされた。その結果、NRF2標的アデノウイルスと併用療法を行ったマウスは、屠殺時の腫瘍サイズがより縮小したことが示された。スクランブルアデノウイルスと併用療法を行ったマウスは、14日目までにエンドポイントの腫瘍サイズに達した。すべての腫瘍を更なる分析のために屠殺時に回収した。
【0151】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)に、BDマトリゲル(体積比1:1)中に5×106細胞(ヒト肺扁平上皮細胞由来H1703クローン44-25)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。アデノウイルスの注射は、Vector Biolabsから購入したAd-U6H17SK-R34G-CAG-eSpCas9又はAd-U6H17SK-スクランブル-CAG-eSpCas9を30μL中3.6e9pfuの3回投与で行われ、1日おきに投与した。12.5mg/kgのカルボプラチン及び5mg/kgのパクリタキセルを2回の投与で異種移植マウスに静脈内投与した。一部の実験では、腫瘍が1500mm3のサイズに達した時点でマウスを安楽死させ、腫瘍を外科的に摘出し、病理組織学又はゲノムDNAのために処理した。
【0152】
[実施例11]
アデノウイルスベクターを用いたCas9の腫瘍内送達の標的効率
NRF2標的アデノウイルスの活性及び効率を評価するために、実験マウスから腫瘍を摘出し、ゲノムDNAを単離した。ゲノムDNAが単離された時点で、目的の領域NRF2がPCR増幅され、PCRアンプリコンをサンガーシークエンシングに使用した。各試料のサンガーシークエンシングは、配列クロマトグラムの畳み込みを解くDECODRソフトウェアを用いて、CRISPR標的部位のインデル効率を評価した。
図13は、実験ごとの各試料のDECODR解析出力を示す。
図13Aは、3.6e
9pfuのAd-U6-R34G-CAG-eSpCas9の単回注射からなる実施例9からのシークエンシング結果を示す。この結果は、CRISPR効率が2.6%及び5.4%の2つの試料を示す。
図13Bは、記載されていないが、実施例10と同様に実行された実験からのデータを示す。結果は、0%、5.5%及び50.8%のCRISPR効率を有する5つの試料を示す。
図13Cは、実施例10からのシークエンシング結果を示す。結果は、0%及び3.3%のCRISPR効率を有する4つの試料を示す。
【0153】
材料及び方法
遺伝子編集解析
細胞ゲノムDNAは、DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen)を用いて各クローン細胞株から単離した。CRISPR標的部位を囲む領域を、Q5 High-Fidelity 2×Master Mix(New England BioLabs)を用いてPCR増幅した(FWDプライマー - CACCATCAACAGTGGCATAATGTGAA(配列番号27);REVプライマー - AACTCAGGTTAGGTACTGAACTCATCA(配列番号28))。PCR反応をQIAquick PCR Purificationキット(Qiagen)を用いて精製し、Big Dye Terminator v3.1(Thermofisher)を用いてBig Dye Terminator PCRを行った。PCR産物をBig Dye Xterminatorキット(Thermofisher)を用いてもう一度精製し、次いでSeqStudio Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングを行った。配列解析は、Decodrのウェブサイトで入手可能なソフトウェアプログラム、DECODRを用いて行った。
【0154】
[実施例12]
NCGマウスにおいて皮下成長させたH1703(44-25)へのLNP/fLucの腫瘍内送達
ホタルルシフェラーゼmRNAをパッケージングした脂質ナノ粒子(LNP)を用いて、異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。CRISPRで操作したヒト肺扁平上皮癌細胞株H1703 44-25を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに2μgのLNP混合腫瘍を腫瘍内に注射した。注射後4時間及び24時間にマウスで生物発光イメージングを行った。
図14は、腫瘍内注射後の生物発光シグナルの時間経過を示す。各腫瘍からのシグナルは、腫瘍の目的の領域(ROI)を設定することにより定量化した。ROIの値は各腫瘍の総光束フォトンとして記載されている。試験した6種類のLNPすべてにおいて、マウスにおける腫瘍内注射4時間後には、匹敵できるROIで強いシグナルが生じた。シグナルは注射後24時間で増加した。
【0155】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)に、BDマトリゲル(体積比1:1)中に5×106細胞(ヒト肺扁平上皮細胞由来H1703クローン44-25)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。腫瘍内注射は、Precision Nanosystemsから購入した総容量25μL中に2μgのLNPで行われた。
【0156】
生物発光イメージング
生物発光イメージングはIVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いて行った。マウスにd-ルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内投与した。d-ルシフェリン投与5分後、マウスを3%イソフルランを入れたチャンバー内で麻酔し、ノーズコーンを介して3%イソフルランを維持したままイメージングプラットフォーム上に置いた。マウスは、d-ルシフェリン投与後15分に、1秒以上の露光時間を用いて撮像した。生物発光値は、Caliper(Hopkinton、MA)によって提供されたLiving IMAGE Softwareを用いて、生物発光シグナルが発せられた目的の領域のフォトン光束(フォトン/秒)を測定することにより定量化した。
【0157】
[実施例13]
ホタルルシフェラーゼmRNAをパッケージングした脂質ナノ粒子(LNP)を用いて、患者由来の異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。ヒト肺扁平上皮癌腫瘍断片を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに2μgのLNP混合腫瘍を腫瘍内に注射した。注射後4時間及び24時間にマウスで生物発光イメージングを行った。
図15は、腫瘍内注射後の生物発光シグナルの時間経過を示す。各腫瘍からのシグナルは、腫瘍の目的の領域(ROI)を設定することにより定量化した。ROIの値は各腫瘍の総光束フォトンとして記載されている。試験した4種類のLNPすべてにおいて、マウスにおける腫瘍内注射4時間後には、匹敵できるROIで強いシグナルが生じた。シグナルは注射後24時間で増加した。
【0158】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)にヒト肺扁平上皮癌腫瘍由来のPDX断片(Jackson Laboratoriesより入手、モデルTM00244)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。腫瘍内注射は、Precision Nanosystemsから購入した総容量25μL中に2μgのLNPで行われた。
【0159】
生物発光イメージング
生物発光イメージングはIVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いて行った。マウスにd-ルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内投与した。d-ルシフェリン投与5分後、マウスを3%イソフルランを入れたチャンバー内で麻酔し、ノーズコーンを介して3%イソフルランを維持したままイメージングプラットフォーム上に置いた。マウスは、d-ルシフェリン投与後15分に、1秒以上の露光時間を用いて撮像した。生物発光値は、Caliper(Hopkinton、MA)によって提供されたLiving IMAGE Softwareを用いて、生物発光シグナルが発せられた目的の領域のフォトン光束(フォトン/秒)を測定することにより定量化した。
【0160】
[実施例14]
NCGマウスバックグラウンドにおいて皮下成長させたNCI PDXへのLNP/fLucの腫瘍内送達
ホタルルシフェラーゼmRNAをパッケージングした脂質ナノ粒子(LNP)を用いて、患者由来の異種移植マウスモデル内における腫瘍内送達及び発現を評価した。ヒト肺扁平上皮癌腫瘍断片を皮下に移植した。腫瘍が60~150mm
3のサイズに達した時点で、マウスに2μgのLNP混合腫瘍を腫瘍内に注射した。注射後4時間及び24時間にマウスで生物発光イメージングを行った。
図16は、腫瘍内注射後の生物発光シグナルの時間経過を示す。各腫瘍からのシグナルは、腫瘍の目的の領域(ROI)を設定することにより定量化した。ROIの値は各腫瘍の総光束フォトンとして記載されている。マウスの腫瘍内注射から24時間後、試験したLNP混合物は、実施例12及び13の以前のROIと同程度の強いシグナルを生じた。
【0161】
材料及び方法
動物実験
マウスを用いたすべての実験は、動物福祉ガイドラインに準拠し、University of DelawareのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って行われた。腫瘍は、6~8週齢のNCG雌マウス(Charles River)にヒト肺扁平上皮癌腫瘍由来のPDX断片(NCI PDMRより入手、検体ID 073-R)を皮下移植することにより作製した。腫瘍の成長はノギスを用いて測定及び推定し、体積(mm3)=(長さ[mm]×(幅[mm])2×0.5として計算した。腫瘍が約60~150mm3に達した時点で、マウスを実験群に分けた。腫瘍内注射は、Precision Nanosystemsから購入した総容量25μL中に2μgのLNPで行われた。
【0162】
生物発光イメージング
生物発光イメージングはIVIS Spectrumイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いて行った。マウスにd-ルシフェリン(Promega)を150mg/kgの用量で腹腔内投与した。d-ルシフェリン投与5分後、マウスを3%イソフルランを入れたチャンバー内で麻酔し、ノーズコーンを介して3%イソフルランを維持したままイメージングプラットフォーム上に置いた。マウスは、d-ルシフェリン投与後15分に、1秒以上の露光時間を用いて撮像した。生物発光値は、Caliper(Hopkinton、MA)によって提供されたLiving IMAGE Softwareを用いて、生物発光シグナルが発せられた目的の領域のフォトン光束(フォトン/秒)を測定することにより定量化した。
【0163】
[実施例15]
H1703非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト異種移植マウスモデルにおけるAAV5及びAAV6のAAVトロピズム評価
目的:ホタルルシフェラーゼを発現する2種類のAAV血清型、AAV5及びAAV6のインビボでの形質導入率を、雌NCGマウスにおけるH1703 NSCLCヒト異種移植モデルを用いて決定し、バイオイメージングで評価する。
【0164】
【0165】
手順
CR雌NCGマウスに、50%マトリゲル中に5×106 H1703腫瘍細胞を脇腹皮下に注射した。細胞注射量は0.1mL/マウスで、開始時のマウスの年齢は8~12週齢であった。腫瘍の平均のサイズが60~100mm3に達した時点でペアマッチを行い、処置を開始した。約80mm3の平均腫瘍サイズを標的とした。1日目をAAV投与日と定義した。マウスの体重は毎日測定し、腫瘍のサイズは実験終了まで隔週でノギスで測定した。体重減少が1回で30%以上、又は3回連続で25%以上であった個体は安楽死させた。実験のエンドポイントは、コントロール群の平均腫瘍重量が2000mm3に達した時点とした。エンドポイントに達した時点ですべての動物を安楽死させた。
【0166】
ニワトリアクチンプロモーター(CAG)の転写制御下でホタルルシフェラーゼ遺伝子含有AAV5-fLUC及びAAV6-fLUCを、1日目にPBS中に0.05mL/マウスの容量で腫瘍内投与した。
【0167】
全身インビボ生物発光イメージングを、以下に記載するように、合計7回の時点において実施した。
【0168】
全群:全動物 - 2日目(AAV注射後1日)
【0169】
全群:全動物 - 3日目(AAV注射後2日)
【0170】
全群:動物2、3、5、6、7 - 4日目(AAV注射後3日)
【0171】
全群:動物2、3、5、6、7 - 6日目(AAV注射後4日)
【0172】
全群:動物2、3、5、6、7 - 8日目(AAV注射後7日)
【0173】
全群:動物2、3、5、6、7 - 9日目(AAV注射後8日)
【0174】
全群:動物2、3、5、6、7 - 10日目(AAV注射後9日)
【0175】
全群:動物2、3、5、6、7 - 13日目(AAV注射後12日)
【0176】
全群:動物2、3、5、6、7 - 15日目(AAV注射後14日)
【0177】
全群:動物2、3、5、6、7 - 17日目(AAV注射後16日)
【0178】
全群:動物2、3、5、6、7 - 20日目(AAV注射後19日)
【0179】
ルシフェラーゼ基質(D-ルシフェリン)を150mg/kgで、最近の体重に基づいて10mL/kg(2回に分けて注射)腹腔内投与した。基質注射10分後に背外側画像を撮影した。イメージングは麻酔下で行った。
【0180】
生体外生物発光イメージングのために、試料採取の前にルシフェラーゼ基質(D-ルシフェリン)を150mg/kgで、最近の体重に基づいて10mL/kg(2回に分けて注射)腹腔内投与した。試料採取した組織の生体外生物発光イメージングを、以下に記載するように、合計2回の時点において実施した。
【0181】
全群:動物1、4、8 - 4日目(AAV注射後3日)
【0182】
全群:動物2、5、7 - 21日目(AAV注射後20日)
【0183】
1匹あたりすべての臓器を撮影するため、1匹あたり2枚の画像を想定し、合計24枚の画像を撮影した(各2群よりn=3動物、2時点、1匹あたり2枚)。
【0184】
結果
図17に示すように、AAV6-fLUCウイルスを投与したマウスは、AAV5-fLUCを投与したマウスと比較して、3日目からより大きな生物発光を示した。これらの結果は、AAV6がAAV5と比較してインビボで肺癌細胞株H1703に対してより高い形質導入効率を示したことを示している。
【0185】
図18に示すように、H1703扁平上皮非小細胞肺癌細胞を移植し、AAV6-fLUCを用いて腫瘍内処置した代表的なマウスでは、腫瘍体積と生物発光の両方が経時的に増加した。これらの結果は、生物発光シグナルと腫瘍体積が実験期間中、すなわち注射後21日間にわたって安定的に増加し、プラトーに達しなかったことを示しており、ルシフェラーゼ遺伝子の発現が注射後21日を超えても継続することを示唆している。
【0186】
図19に示すように、AAV6-fLUCを用いて腫瘍内処置したマウスでは、21日目に他の組織と比較して腫瘍組織における生物発光がはるかに大きかった。これらの結果は、レポーター遺伝子の発現の大部分が、AAVが送達された腫瘍内に留まっていることを示している。定性的には、これらの結果はAAVが他の組織に分布する可能性が少ないことを示唆している。
【配列表】
【国際調査報告】