(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】鉄道車両の速度を推定する方法および関連する慣性測定ユニット
(51)【国際特許分類】
G01P 3/42 20060101AFI20241024BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20241024BHJP
【FI】
G01P3/42 Z
G01P15/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529502
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022079783
(87)【国際公開番号】W WO2023083604
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184769
【氏名又は名称】メギット(センサーレックス)
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイヤール ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】バロー アラン
(57)【要約】
本発明は、鉄道車両(100)の速度を推定する方法に関し、鉄道車両(100)は慣性測定ユニット(1)を備えており、慣性測定ユニット(1)は、衛星航法システムに関連するGNSS信号を受信するように構成されており、この方法は、・GNSS信号の信頼性を決定するために、受信したこれらのGNSS信号を分析するステップ(1031)、・慣性測定ユニットによって得られた測定値を含む測定値ベクトルを定義するステップ、・車両の速度に関連する成分、車両の姿勢に関連する成分ならびに角速度の測定値における偏り誤差および加速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を含む状態ベクトルを定義するステップ、・測定値ベクトルを使用して状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用するステップ(1035)、・GNSS信号に基づいて、かつこれらのGNSS信号の決定された信頼性に応じて、状態ベクトルの推定を修正するステップ、・修正された状態ベクトルから、鉄道車両の速度と鉄道車両(100)の速度に関連する誤差とを抽出するステップを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道に沿った鉄道車両(100)の移動中に前記鉄道車両(100)の速度を推定する方法であって、
前記鉄道車両(100)は慣性測定ユニット(1)を備えており、前記慣性測定ユニット(1)は、
・3つの直交軸に沿った加速度の測定値、
・3つの直交軸を中心とする角速度の測定値、
を供給し、かつ
衛星航法システムに関連するGNSS信号を受信するように構成されており、前記方法は、
・前記GNSS信号の信頼性を決定するために、受信した前記GNSS信号を分析するステップ(1031)、
・前記慣性測定ユニットによって提供された前記測定値を含む測定値ベクトルを定義するステップ、
・前記車両の前記速度に関連する成分、前記車両の姿勢に関連する成分ならびに前記加速度の測定値における偏り誤差および前記角速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を含む状態ベクトルを定義するステップ、
・前記測定値ベクトルを使用して前記状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用するステップ(1035)、
・前記GNSS信号に基づいて、かつ前記GNSS信号の決定された前記信頼性に応じて、前記状態ベクトルの推定を修正するステップ、
・修正された前記状態ベクトルから、前記鉄道車両の前記速度と前記鉄道車両の前記速度に関連する誤差とを抽出するステップ
を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記GNSS信号の前記信頼性を決定することは、信号を供給する衛星の数および前記衛星の位置を考慮することを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記慣性測定ユニット(1)に関連する基準座標系(X’Y’Z’)と前記鉄道車両(100)に関連する基準座標系(XYZ)との間の整合を修正するステップ(1038)を含んでいる、請求項1または2記載の、推定する方法。
【請求項4】
前記状態ベクトルは、前記慣性測定ユニットに関連する前記基準座標系(X’Y’Z’)と前記鉄道車両(100)に関連する前記基準座標系(XYZ)との間の不整合に関連する成分も含んでおり、これによって、前記不整合が前記状態推定器によって再帰的に推定される、請求項3記載の、推定する方法。
【請求項5】
前記慣性測定ユニット(1)に関連する前記基準座標系(X’Y’Z’)と前記鉄道車両(100)に関連する前記基準座標系(XYZ)との間の前記不整合に関連する誤差を、前記推定器のリセット中に使用することができるように、前記慣性測定ユニット(1)のメモリに格納するステップ(1038)も含んでいる、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記状態ベクトルは、15個の成分を含んでおり、すなわち、前記鉄道車両の前記速度に関連する3個の成分、前記鉄道車両の前記姿勢に関連する3個の成分、角度の測定値における前記偏り誤差に関連する3個の成分、前記加速度の測定値における前記偏り誤差に関連する3個の成分ならびに前記慣性測定ユニットに関連する基準座標系と前記鉄道車両に関連する基準座標系との間の不整合に関連する3個の成分を含んでいる、請求項1から5までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項7】
前記状態推定器はカルマンフィルタである、請求項1から6までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項8】
前記カルマンフィルタは、拡張カルマンフィルタである、請求項7記載の、推定する方法。
【請求項9】
前記鉄道車両(100)の前記速度に関連する前記誤差を、前記カルマンフィルタによって供給された共分散から決定する、請求項7または8記載の、推定する方法。
【請求項10】
前記鉄道車両(100)の移動方向を決定する機構の、前記鉄道車両(100)が静的位置から移動位置へと推移する間の初期化を可能にする、前記鉄道車両(100)の始動中の静的な初期化ステップ(101)を含んでいる、請求項1から9までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項11】
前記状態推定器を適用するステップ(103)は、横軸に沿ったゼロ速度に関連する制約を前記鉄道車両(100)の回転中心において適用することを含んでいる、請求項1から10までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項12】
異常な推定速度または不適合な推定速度を除外することを可能にする妥当性確認ステップ(1037)を含んでいる、請求項1から11までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項13】
前記GNSS信号が信頼できないことが検出された場合には、前記GNSS信号が信頼できないとみなされた時間の長さを測定し、所定の時間の間、メモリに格納し、前記時間の長さを、前記鉄道車両(100)の前記速度の測定に関連する前記誤差の決定に使用する、請求項1から12までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項14】
前記推定が実行される頻度は、前記GNSS信号の受信の頻度よりも高い、請求項1から13までのいずれか1項記載の、推定する方法。
【請求項15】
鉄道車両(100)用の慣性測定ユニット(1)であって、
前記慣性測定ユニットは、
・3つの直交軸に沿って加速度の測定値を提供するように構成されている加速度計(3)、
・3つの直交軸を中心として角度の測定値を提供するように構成されているジャイロメータ(5)、
・衛星航法システムに関連するGNSS信号を受信するためのモジュール(7)、
・処理ユニット(9)を備え、前記処理ユニット(9)は、
・受信した前記GNSS信号を分析し、前記GNSS信号の信頼性を決定し、
・前記加速度計(3)および前記ジャイロメータ(5)によって提供された前記測定値を取得し、
・取得した前記測定値に基づいて、前記鉄道車両(100)の速度に関連する成分、前記鉄道車両(100)の姿勢に関連する成分ならびに前記角度の測定値における偏り誤差および前記加速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を含む状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用し、
・前記GNSS信号に基づいて、かつ前記GNSS信号の決定された前記信頼性に応じて、前記状態ベクトルの推定を修正し、
・修正された前記状態ベクトルから、前記鉄道車両(100)の前記速度と前記鉄道車両(100)の前記速度に関連する誤差とを抽出する
ように構成されている、慣性測定ユニット(1)。
【請求項16】
前記状態ベクトルの前記推定を修正するステップの後に、前記状態推定器の状態における誤差の共分散と、決定ステップの前の所定の期間にわたる前記GNSS信号の前記信頼性の値とに基づいて、速度誤差を決定するステップをさらに含んでいる、請求項15記載の慣性測定ユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性測定ユニットおよび慣性測定値と衛星航法システムからの信号とを組み合わせて鉄道車両の速度を推定する方法に関する。
【0002】
鉄道車両管理会社にとって、列車の位置および速度を可能な限り正確かつ確実に知ることは重要である。具体的には、列車の正確な位置および速度を知ることによって、運行をより良好に体系化すること、ひいては鉄道軌道の管理を改善することが可能になる。
【0003】
鉄道車両の速度を決定するために従来技術において様々な技術が使用されており、たとえば、回転速度計、ドップラー・レーダー、加速度計、GNSS測定器(特にGPS信号)またはビーコンが鉄道軌道上に規則的に配置されている。GNSSはGlobal Navigation Satellite System(全世界衛星航法システム)の頭文字であり、GPSはGlobal Positioning System(全地球測位システム)の頭文字である。しかし、これらの様々な解決手段はすべて、測定値の信頼性を制限する欠点(回転速度計の場合にはレールでの車輪の滑り、ドップラー・レーダーの場合には霧が存在する場合の信頼性の低さ、加速度計の場合には経時的なドリフト、GNSSデバイスの場合にはトンネルおよび急な斜面に囲まれた領域におけるGNSS受信の欠如、ビーコンの場合には設置の困難性および劣化の可能性)を有している。しかし、列車の乗客の安全はこの速度決定に依存しているため、測定値の信頼性は決定的な要因である。
【0004】
したがって、気象条件および鉄道線路のトポロジに左右されることなく、鉄道車両の速度の信頼できる推定を得ることを可能にする解決手段を提供する必要がある。
【0005】
このために、本発明は、鉄道軌道に沿った上述の鉄道車両の移動中に鉄道車両の速度を推定する方法であって、上述の鉄道車両は慣性測定ユニットを備えており、この慣性測定ユニットは、
・3つの直交軸に沿った加速度の測定値、
・3つの直交軸を中心とする角速度の測定値、
を供給し、かつ
衛星航法システムに関連するGNSS信号を受信するように構成されており、上述の方法は、
・上述のGNSS信号の信頼性を決定するために、受信したGNSS信号を分析するステップ、
・慣性測定ユニットによって提供された測定値を含む測定値ベクトルを定義するステップ、
・車両の速度に関連する成分、車両の姿勢および向き(ロール、ピッチおよびヨー)に関連する成分ならびに加速度の測定値における偏り誤差および角速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を含む状態ベクトルを定義するステップ、
・測定値ベクトルを使用して状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用するステップ、
・GNSS信号に基づいて、かつ上述のGNSS信号の決定された信頼性に応じて、状態ベクトルの推定を修正するステップ、
・修正された状態ベクトルから、鉄道車両の速度と鉄道車両の上述の速度に関連する誤差とを抽出するステップ
を含んでいる、方法に関する。
【0006】
GNSS信号が信頼できるとみなされる場合に、慣性信号とGNSS信号との融合を使用することによって、車両の速度と、この速度に関連する誤差とを決定することが可能になる。
【0007】
本発明の別の態様によれば、GNSS信号の信頼性を決定することは、信号を供給する衛星の数および上述の衛星の位置を考慮することを含んでいる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、この方法は、慣性測定ユニットに関連する基準座標系と鉄道車両に関連する基準座標系との間の整合を修正するステップを含んでいる。
【0009】
本発明の別の態様によれば、状態ベクトルは、慣性測定ユニットに関連する基準座標系と鉄道車両に関連する基準座標系との間の不整合に関連する成分も含んでおり、これによって、不整合が状態推定器によって再帰的に推定される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、この方法は、慣性測定ユニットに関連する基準座標系と鉄道車両に関連する基準座標系との間の不整合に関連する誤差を、特に、慣性測定ユニットがオフにされた後にオンにされたときに、推定器のリセット中に使用することができるように、慣性測定ユニットのメモリに格納するステップも含んでいる。
【0011】
本発明の別の態様によれば、状態ベクトルは、15個の成分を含んでおり、すなわち、鉄道車両の速度に関連する3個の成分、鉄道車両の姿勢に関連する3個の成分、角度の測定値における偏り誤差に関連する3個の成分、加速度の測定値における偏り誤差に関連する3個の成分ならびに慣性測定ユニットに関連する基準座標系と鉄道車両に関連する基準座標系との間の不整合に関連する3個の成分を含んでいる。
【0012】
本発明の別の態様によれば、状態推定器はカルマンフィルタである。
【0013】
本発明の別の態様によれば、カルマンフィルタは、拡張カルマンフィルタである。
【0014】
本発明の別の態様によれば、鉄道車両の速度に関連する誤差を、カルマンフィルタによって供給された、状態誤差の共分散に基づいて決定する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、この方法は、鉄道車両の移動方向を決定する機構の、鉄道車両が静的位置から移動位置へと推移する間の初期化を可能にする、鉄道車両の始動中の静的な初期化ステップを含んでいる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、状態推定器を適用するステップは、横軸に沿ったゼロ速度に関連する制約を鉄道車両の回転中心において適用することを含んでいる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、この方法は、異常な推定速度または不適合な推定速度を除外することを可能にする妥当性確認ステップを含んでいる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、GNSS信号が信頼できないことが検出された場合には、GNSS信号が信頼できないとみなされた時間の長さを測定し、所定の時間の間、メモリに格納し、この時間の長さを、鉄道車両の速度の測定に関連する誤差の決定に使用する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、推定が実行される頻度は、GNSS信号の受信の頻度よりも高い。
【0020】
本発明はまた、鉄道車両用の慣性測定ユニットであって、この慣性測定ユニットは、
・3つの直交軸に沿って加速度の測定値を提供するように構成されている加速度計、
・3つの直交軸を中心として角度の測定値を提供するように構成されているジャイロメータ、
・衛星航法システムに関連するGNSS信号を受信するためのモジュール、
・処理ユニットを備え、処理ユニットは、
・受信したGNSS信号を分析し、上述のGNSS信号の信頼性を決定し、
・加速度計およびジャイロメータによって提供された測定値を取得し、
・取得した測定値に基づいて、鉄道車両の速度に関連する成分、鉄道車両の姿勢に関連する成分ならびに角度の測定値における偏り誤差および加速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を含む状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用し、
・GNSS信号に基づいて、かつ上述のGNSS信号の決定された信頼性に応じて、状態ベクトルの推定を修正し、
・修正された状態ベクトルから、鉄道車両の速度と鉄道車両の上述の速度に関連する誤差とを抽出する
ように構成されている、慣性測定ユニットに関する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、慣性測定ユニットは、状態ベクトルの推定を修正するステップの後に、状態推定器の状態における誤差の共分散と、決定ステップの前の所定の期間にわたるGNSS信号の信頼性の値とに基づいて、速度誤差を決定するステップも含んでいる。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、例示的かつ非限定的な例として挙げられている以降の説明を読むことによって、また添付の図面によってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】慣性測定ユニットを備える鉄道車両を上方から見た図である。
【
図2】本発明による慣性測定ユニットの概略図である。
【
図3a】慣性測定ユニットおよびGNSSアンテナを備える鉄道車両の側面図である。
【
図3b】慣性測定ユニットおよびGNSSアンテナを備える鉄道車両の正面図である。
【
図4】鉄道車両および使用される種々の基準座標系の概略的な斜視図である。
【
図5】鉄道車両の速度を推定する方法のステップのフローチャートである。
【
図6】
図5の方法の状態推定器の適用の種々のサブステップのフローチャートである。
【0024】
これらの図では、同じ要素には同じ参照符号が付されている。
【0025】
以降の実施形態は、例である。説明は1つまたは複数の実施形態に言及しているが、これは、各言及が同じ実施形態に関連していること、またはこれらの特徴が1つの実施形態に適用されていることを必ずしも意味しない。他の実施形態を提供するために、様々な実施形態の個々の特徴を組み合わせてもよい、または交換してもよい。
【0026】
本明細書では、特定の要素またはパラメータに、たとえば第1の要素もしくは第2の要素、または第1のパラメータおよび第2のパラメータ、または第1の基準および第2の基準等として、添字が付されている場合がある。この場合、添字を付けるだけで、類似しているが同一ではない要素またはパラメータまたは基準を区別し、示すことができる。この添字付けは、ある要素、あるパラメータまたはある基準の、他の要素、他のパラメータまたは他の基準に対する優先順位を暗示するものではなく、このような呼称は、本明細書の範囲から逸脱することなく容易に交換され得る。また、この添字付けは、たとえば、これらのような基準またはこのような基準を評価するために時間的な順序を暗示するものでもない。
【0027】
本発明は、鉄道車両用の慣性測定ユニットに関する。鉄道車両とは、本明細書では、1つまたは複数のガイドレールの上を移動する任意の車両を意味する。
図1は、鉄道車両100の一例を示しており、たとえば、機関車と複数台の車(
図1の例では2台の車)とを備えており、レールの上を移動し、本発明による慣性測定ユニット1を備えている列車を示している。しかし、本発明は、鉄道車両100のこの構成に限定されず、特に、異なる台数の車が使用されてよい。しかし、本発明の文脈においては、これらの車の位置が機関車の位置に直接的に依存するため、鉄道車両100は慣性測定ユニット1を備える機関車に関する。鉄道車両100に紐付けられた軸X,Y,Zの系も
図1に示されている。X軸は鉄道車両100の前進の軸に相当し、Z軸は鉄道車両100が水平レール上にある場合の鉛直方向に相当し、Y軸は軸の系を完成させ、鉄道車両100のロール軸、ヨー軸およびピッチ軸に関連していてよい。
【0028】
図2は、本発明の実施形態の一例による慣性測定ユニット1の概略図を示している。慣性測定ユニット1に紐付けられた軸X’,Y’,Z’の系が
図2に示されている。
【0029】
慣性測定ユニット1は加速度計3を備えており、加速度計3は慣性測定ユニット1に紐付けられた軸の系の3つの軸X’,Y’およびZ’に相当する3つの直交軸に沿って加速度の測定値を提供するように構成されている。測定値は、たとえば、3x,3yおよび3zと示されている3つの加速度計によって提供され、これらの加速度計は、それぞれ3つの軸X’,Y’およびZ’に沿って配向されている。
【0030】
慣性測定ユニット1はジャイロメータ5を備えており、ジャイロメータ5は慣性測定ユニットに紐付けられた軸の系の3つの軸X’,Y’およびZ’に相当する3つの直交軸を中心として角速度の測定値を提供するように構成されている。これらの測定値は、たとえば、それぞれ3つの軸X’,Y’およびZ’に沿って配向されている、5x,5yおよび5zと示されている3つのジャイロメータによって提供される。
【0031】
慣性測定ユニット1は、衛星航法システムに関連する衛星システムからジオロケーション信号およびナビゲーション信号を受信するためのGNSSモジュール7も備えている。実際には、GNSSモジュール7は、少なくとも部分的に慣性測定ユニット1の外部に配置されていてよく、特に、GNSSアンテナ70は、
図3aおよび
図3bに示されているように、GNSS信号の良好な受信を促進するために、鉄道車両100の上部に配置されていてよい。この場合、GNSSアンテナ70は、有線接続または無線接続を介して、慣性測定ユニット1のGNSSモジュールに接続されている。
【0032】
したがって、GNSSモジュール7は、衛星からの信号を受信するように構成されており、GNSSアンテナ70の位置および移動速度を決定することを可能にする。GNSSアンテナ70は、たとえば、所定の周波数範囲の電磁波を送り、受け取るように構成されている。位置情報および速度情報は、たとえば、4つの衛星によって交換される信号に基づく三角測量によって得られる。衛星からのGNSS信号は、第1の所定の周波数、たとえば5Hzで受信される。
【0033】
慣性測定ユニット1は、処理ユニット9も備えている。処理ユニット9は、たとえば、ROMもしくはRAMを伴うマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備えている。
【0034】
処理ユニット9は、GNSSモジュール7によって受信されたGNSS信号を分析し、上述のGNSS信号の信頼性を決定するように構成されている。GNSS信号は、たとえば、信号の送信元である衛星の数、(精度またはDOPの減少の決定に使用されている)これらの衛星の位置およびマルチパス信号が存在するかどうかを含んでおり、これらは処理ユニット9によって分析される。この分析の結果と、受信したGNSS信号の推定された信頼性とに応じて、慣性測定ユニット1によって行われる速度推定において、GNSS信号が考慮されたり、考慮されなかったりする。さらに、受信したGNSS信号の分析後、GNSS信号が信頼できないとみなされた場合には、タイマをトリガして、GNSS信号が信頼できないとみなされた時間の長さを測定する。この時間の長さは、所定の時間の間、メモリに格納される。推定前の所定の時間の間にGNSS信号が信頼できないとみなされた時間は、その後、残りの説明においてより良く説明される、鉄道車両の速度の測定に関連する誤差の推定において考慮される。
【0035】
処理ユニット9はまた、加速度計3およびジャイロメータ5によって提供された加速度の測定値および角速度の測定値を取得するように構成されている。
【0036】
加速度計3によって供給された測定値およびジャイロメータ5によって供給された測定値に基づいて、処理ユニット9は、取得した測定値に基づいて、鉄道車両100の速度に関連する成分、鉄道車両100の姿勢(すなわち、ロール角、ピッチ角およびヨー角によって与えられる鉄道車両の向き)に関連する成分ならびに角度の測定値における偏り誤差および加速度の測定値における偏り誤差に関連する成分を包含する状態ベクトルを推定するために状態推定器を適用するように構成されている。処理ユニット9はまた、供給されたGNSS信号が十分に信頼できるとみなされる場合、GNSS信号に基づいて、状態ベクトルの推定を修正するように構成されており、これによって、修正された状態ベクトルから鉄道車両100の速度および鉄道車両100の上述の速度に関連する誤差を抽出することができる。状態ベクトルは、たとえばカルマンフィルタ、特に拡張カルマンフィルタを使用して推定される。このフィルタリングによって、加速度計3によって出力された測定値と、ジャイロメータ5によって出力された測定値と、場合によって、信頼性が十分であるならばGNSSモジュール7によって出力された測定値とを融合することが可能になる。このフィルタリングによって、鉄道車両100の推定速度に関連する誤差を、カルマンフィルタによって供給された状態における誤差の共分散から決定することも可能になる。
【0037】
状態推定器は、第1の所定の周波数より大きくてよい、たとえば第1の所定の周波数の2倍より大きくてよい第2の所定の周波数で、たとえば50Hz(すなわち第1の所定の周波数の10倍)で、再帰的に適用される。
【0038】
処理ユニット9はまた、状態推定器における鉄道車両100の移動に関連する制約、たとえば、鉄道車両100の横軸におけるゼロ速度に関連する制約を鉄道車両100の回転中心(慣性測定ユニット1および遠隔GNSSモジュール7を備える鉄道車両100の側面図および正面図を示す
図3aおよび
図3bではCRと示されている)において考慮するように構成されている。したがって、これらの制約を考慮することによって、センサの数を増やすことなく、換言すればデバイスのコストを増やすことなく、測定値の数を増やすことによって、システムの観測可能性を向上させることができる。
【0039】
処理ユニット9は、状態推定器によって得られた異常な値、たとえば、鉄道車両100の最大速度よりも速い速度、または2つの連続する推定値の間の過度の速度差(最大差は、最大加速度および制動力に応じて非対称であってよい)、または一般に遭遇する軌道トポロジと一致しない過度のロールまたはピッチを拒否する自己診断機能も備えている。
【0040】
処理ユニット9はまた、慣性測定ユニット1に関連する基準座標系X’Y’Z’と鉄道車両100に関連する基準座標系XYZとの間の不整合を検出し、修正するように構成されており、これによって、一定の自己整合が保証される。この自己整合は、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と、鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の不整合を、状態推定器によって、時間にわたって再帰的に推定することによって得られる。この自己整合によって、慣性測定ユニット1を鉄道車両100上の任意の位置に配置することが可能になり、必ずしも鉄道車両100の回転中心CRに配置しなくてよくなる。
【0041】
さらに、処理ユニット9は、慣性測定ユニット1に関連する基準座標系X’Y’Z’と、鉄道車両100に関連する基準座標系XYZとの間の不整合の推定値を、内部メモリまたは慣性測定ユニット1のメモリに格納するように構成されていてよい。この格納された推定値は、状態推定器がリセットされた場合、特に、慣性測定ユニット1がオフにされた後にオンにされたときに、初期値として使用されてよい。
【0042】
したがって、加速度計3によって供給された3軸加速度測定値と、ジャイロメータ5によって供給された3軸角速度測定値と、GNSSモジュール7によって供給されたGNSSデータとを融合して、GNSSデータの信頼性およびセンサの向きと鉄道車両100の向きとの間の不整合を推定するように構成されている慣性測定ユニット1を使用することによって、鉄道車両100の速度の信頼できる推定およびこの速度に関連する誤差の推定を提供することが可能になる。
【0043】
本発明はまた、鉄道軌道に沿った鉄道車両100の移動中に鉄道車両100の速度を推定する方法に関する。鉄道車両100は、特に、上述のような慣性測定ユニット1を備えている。
【0044】
この方法の種々のステップを、
図5のフローチャートのステップを参照しながら説明する。提示されたステップの一部は任意選択的であってよく、ステップの順序は、提示された順序とは異なっていてよい。
【0045】
第1のステップ101は、鉄道車両100の始動時に静止した状態で実行される事前初期化ステップである。このステップ101は、たとえば15秒という制限された持続時間を有しており、特に、鉄道車両100の移動の(前進または後退)方向を続いて決定できるようにするために、センサを初期化することを可能にする。
【0046】
第2のステップ102は、時間の経過の監視を可能にする種々のタイマを更新する第2の事前ステップである。
【0047】
第3のステップ103は、鉄道車両100の速度およびこの速度に関連する不確実性または誤差の決定を可能にする状態推定器の適用に関する。この第3のステップ103は、本明細書の残りの部分において詳細に説明される多くのサブステップを含んでいる。
【0048】
第4のステップ104は、ステップ103において推定された、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系と、鉄道車両100に紐付けられた基準座標系との間の不整合の値の取得と、この値の、メモリ、たとえばフラッシュメモリへの格納とに関する。この格納された値は、慣性測定ユニット1がオンにされたときに読み出され、これによって、慣性測定ユニット1がオフにされる前に行われた最後の推定から再開することができる。このような格納によって、初期値が存在しない場合には収束するのに数時間を要し得る不整合値の迅速な収束が得られ、かつ慣性測定ユニット1がオンにされるとすぐに、正確な速度推定が得られるようになる。
【0049】
第5のステップ105は、出力データの供給、特に、鉄道車両100の速度、およびステップ103において推定された、関連する不確実性の供給に関する。顧客のニーズに応じて、ステップ103において推定された他のデータも抽出し、供給することができる。供給はたとえば、鉄道車両100の操縦室へのデータ信号の送信に相当する。
【0050】
次に、ステップ103の詳細を、
図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0051】
第1のサブステップ1031は、GNSSモジュール7によって受信されたGNSS信号の分析に関し、これによって、GNSS信号の信頼性が、鉄道車両100の速度の決定において考慮されるのに十分であるかどうかが決定される。この分析では、信号の送信元である衛星の数、(精度またはDOPの減少の決定に使用されている)信号の送信元である衛星の位置、または受信した信号が、特に、鉄道車両100の周囲の地形から反射されたものである(マルチパス)という事実が考慮される。これらのすべてのパラメータは、供給されたGNSS信号の信頼性を決定するために考慮される。この決定された信頼性は、所定の閾値と比較されてよい。決定された信頼性が所定の閾値より低い場合、GNSS信号は、鉄道車両100の速度の推定において考慮されず、この場合には、加速度計の測定値およびジャイロメータの測定値のみが使用される。決定された信頼性が所定の閾値より高い場合、GNSS信号が考慮され、すなわち、鉄道車両100の速度の推定において、GNSS信号が、加速度計3の測定値およびジャイロメータ5の測定値と融合される。GNSS信号は、鉄道車両100の速度およびこの速度における誤差を推定することを可能にする。
【0052】
第2のサブステップ1032は、加速度計3およびジャイロメータ5を用いた、鉄道車両100の移動および振動の分析に関し、これによって、鉄道車両100が静止しているか、または動いているかが決定され、さらに鉄道車両100の移動の(前進または後退)方向が決定される。これによって、特に、鉄道車両100が静止しており、GNSS信号が受信されていないとき、たとえば地下の駅に停止している場合に、推定を停止させることが可能になる。このような場合における推定の停止によって、誤った推定を生じさせ得る、状態推定器の不安定性を回避することが可能になる。
【0053】
第3のサブステップ1033は、GNSS信号が信頼できない時間の長さの測定に関する。GNSS信号が所定の時間区間にわたって信頼できないと考えられる時間の長さがメモリに格納され、鉄道車両100の速度に関連する不確実性を計算するために使用される。この所定の時間区間は、たとえば、数分または数十分に相当する。具体的には、GNSS信号が考慮されない場合には、速度推定は、慣性測定値、すなわち加速度計3の測定値およびジャイロメータ5の測定値のみに基づいて実行されるので、GNSS信号が再び信頼できるようになるまで、鉄道車両100の速度の推定に関連する不確実性は時間の経過とともに増大する。GNSS信号が交互に、信頼できると考えられたり、信頼できないと考えられたりする場合には、前の瞬間またはさらに前の数分にわたるGNSS信号の信頼性の履歴を知る必要があり、これによって鉄道車両100の速度における不確実性の計算において、これらのGNSS信号不安定性を考慮することができる。
【0054】
第4のサブステップ1034は、たとえば、処理ユニット9の飽和または誤動作に相当する、状態推定器の計算中の異常の検出に関する。異常が検出された場合、推定器は、次回サブステップ1032において鉄道車両100が停止したことが検出されたときにリセットされる。
【0055】
第5のサブステップ1035は、最後の測定値と、場合によっては、信頼性が十分である場合のGNSS信号とに基づいた、状態推定器の更新に関する。
【0056】
これを行うために、15個の成分を伴う状態ベクトルEが定義される。
【0057】
【数1】
ここで、
【数2】
はX軸に沿った速度であり、
【数3】
はY軸に沿った速度であり、
【数4】
はZ軸に沿った速度であり、φは鉄道車両100に紐付けられた基準座標系とナビゲーション基準座標系との間のロール角であり、θは鉄道車両100に紐付けられた基準座標系とナビゲーション基準座標系との間のピッチ角であり、ψは鉄道車両100に紐付けられた基準座標系とナビゲーション基準座標系との間のヨー角であり、b
gxはジャイロメータ5のX’軸偏りであり、b
gyはジャイロメータ5のY’軸偏りであり、b
gzはジャイロメータ5のZ’軸偏りであり、αは慣性測定ユニットに紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の不整合の軸の緯度擬似座標であり(擬似四元数形式主義を使用)、βは慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の不整合の軸の経度擬似座標であり(擬似四元数形式主義を使用)、θは慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の不整合の角度である。
【0058】
5個の成分を伴う観測ベクトルOも定義される。
【0059】
【数5】
ここで、
【数6】
はGNSSモジュール7によって、ナビゲーション基準座標系(原点は、GNSSモジュール7のアンテナ70の位置に相当する)のXn軸に沿って供給された速度測定値であり、
【数7】
はナビゲーション基準座標系(原点は、GNSSモジュール7のアンテナ70の位置に相当する)のYn軸に沿って供給された速度測定値であり、
【数8】
はナビゲーション基準座標系(原点は、GNSSモジュール7のアンテナ70の位置に相当する)のZn軸に沿ってGNSSモジュール7によって供給された速度測定値であり、
【数9】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系のY軸に沿った速度測定値であり、
【数10】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系(原点は、鉄道車両100の回転中心CRにある)のZ軸に沿った速度測定値である。
【0060】
時点k+1での予測は、
O(k+1)=f(O(k))
によって定義され、
ここで、fは
【数11】
によって定義される非線形予測モデルであり、
【数12】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、鉄道車両100の速度変化ベクトルであり、dtはサンプリング時間であり、
【数13】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとナビゲーション基準座標系XnYnZnとの間の回転行列であり、
【数14】
は
【数15】
の関数である、鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとナビゲーション基準座標系XnYnZnとの間の回転行列の予測であり、
【数16】
によって定義され、
ここで、I
3は3*3サイズの単位行列であり、S[x]は、ベクトルxの反対称形式であり、
【数17】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’に対するナビゲーション基準座標系XnYnZnの角速度のベクトルであり、すなわち、鉄道車両100の移動に関連する角速度である。
【0061】
次いで、関係
【数18】
が定義され、
ここで、
【数19】
は慣性測定ユニット100に紐付けられたX’Y’Z’に対する慣性基準座標系XiYiZi(以降に記載)の角速度のベクトルであり、
【数20】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、地球基準座標系XtYtZt(以降に記載)に対する慣性基準座標系XiYiZiの角速度のベクトルであり、
【数21】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、ナビゲーション基準座標系XnYnZnに対する地球基準座標系の角速度のベクトルであり、すなわち、地球の曲率に関連する回転の速度である。
【0062】
慣性基準座標系XiYiZiは、原点が地球の中心であり、地球の回転に追従しない絶対基準座標系に相当する。その軸は、地球の中心に対して固定されているように見えるほど遠くにある星を指している。軸Xiは春分点を指し、軸Ziは地球の回転の軸に平行であり、軸YiはXiおよびZiに直交しており、軸XiYiZiの系を完成させる。慣性基準座標系を使用する必要がある。なぜなら、(慣性基準座標系に対する)地球の回転はジャイロメータ5によって測定され、したがって、鉄道車両100の速度を推定するために考慮される必要があるからである。
【0063】
地球基準座標系XtYtZtは、原点を地球の中心に有しており、軸Ztは地球の回転の軸に平行であり、軸Xtはグリニッジ子午線(経度=0)を指し、軸YtはXtおよびZtに直交しており、軸XtYtZtの系を完成させる。
【0064】
ジャイロメータ5の測定値は、
【数22】
によって定義されてよく、
ここで、
【数23】
は慣性測定ユニットに紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と、鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の回転行列であり、Meas
gyroは慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’におけるジャイロメータ5の測定値のベクトルである。
【0065】
次いで、
【数24】
が、関係
【数25】
によって定義され、
ここで、f
tは鉄道車両に紐付けられた基準座標系XYZで表される、加速度計3によって測定された特定の力のベクトルであり、
【数26】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、コリオリ力のベクトルであり、
【数27】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、重力のベクトルである。
【0066】
加速度計3の測定値は、
【数28】
によって定義されてよく、
ここで、Meas
accは鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZにおける加速度計3の測定値のベクトルである。
【0067】
推定された状態パラメータと、GNSSモジュール7によって提供された観測測定値と、鉄道車両100の回転中心CRに関連する速度との間の関係を確立するために、カルマンフィルタにおいて使用される修正モデルhが定義され、このモデルによって、後続の時間の間、カルマンフィルタによって推定された速度が変換され(すなわち、基準座標系の変更)、転置され(すなわち、原点の変更)され、この後続の時間において測定された速度と比較される。
【0068】
Y(k)=h(X(k))
修正モデルhは、
【数29】
によって定義される非線形モデルであり、
ここで、
【数30】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとナビゲーション基準座標系XnYnZnとの間の回転行列であり、S[x]は、ベクトルxの反対称形式であり、
【数31】
は鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZで表される、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’に対するナビゲーション基準座標系XnYnZnの角速度のベクトルであり、すなわち鉄道車両100の移動に関連する角速度である。
【0069】
したがって、状態推定器の更新は、慣性測定値、すなわち加速度計3の測定値およびジャイロメータ5の測定値に基づいて、システムの状態(特に、鉄道車両100の速度)および関連する不確実性が予測される予測フェーズを含み、次いで、修正モデルを使用して、鉄道用途に関連する方程式およびGNSSモジュール7によって供給されたデータに基づいて、システムの状態の推定が修正される修正フェーズを含んでいる。
【0070】
第6のサブステップ1036は、サブステップ1035において実行された速度推定の信頼区間の評価に関する。
【0071】
この評価の目的は、その信頼区間に関連する推定速度が、鉄道規格によって設定された性能および安全基準を満たすこと、たとえば、実際の速度と推定速度との間の誤差が、99.99%の確率で、信頼区間内に収まること、または信頼区間が、99.9%の確率で、鉄道規格によって設定された値より狭いことを保証することである。
【0072】
この信頼区間は、カルマンフィルタによって推定された不確実性に基づいて定義されてよい。択一的に、この信頼区間が、種々の構成において提供された多数の測定値に基づいて、経験的に決定されてよい。曲線、たとえば多項式が、すべての測定値に適用された多項式回帰によって得られてよい。さらに、どちらの場合にも、特定の基準に応じて、たとえば推定時に不整合の収束が得られたか否かに応じて、重み付け係数が適用されてよい。
【0073】
特定の一実施形態によれば、この決定方法は、特定の条件下で、たとえばGNSSモジュール7によって供給された信号が信頼できる場合に、カルマンフィルタによって推定された値を使用し、GNSSモジュール7によって供給された信号が信頼できない場合には経験的に得られた値を使用する。この実施形態において、重み付け係数が適用されてもよい。
【0074】
第7のサブステップ1037は、推定(状態(速度を含む)、不確実性、速度の信頼区間)の妥当性確認に関する。このために、様々な試験が実行される。推定されたダイナミクスが、たとえば、鉄道車両100の理論的なダイナミクスと比較される。センサ(加速度計3およびジャイロメータ5)の誤差の推定が、既知のセンサ不確実性と比較されてもよい。
【0075】
第8のサブステップ1038は、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系X’Y’Z’と鉄道車両100に紐付けられた基準座標系XYZとの間の推定された不整合の更新およびその不確実性の計算に関する。
【0076】
したがって、GNSSモジュールに結び付けられた加速度および角速度の3次元測定値を供給する慣性測定ユニット1を使用し、かつGNSS信号が十分に信頼できる場合に慣性センサによって供給された測定値およびGNSSモジュール7によって供給された測定値が融合されることを可能にする推定器を使用することによって、鉄道車両100の速度の推定およびこの推定速度に関連する誤差の推定を得ることができる。さらに、速度推定に関連する信頼区間を決定することによって、実行された測定が鉄道規格を満たすことが保証される。最後に、慣性測定ユニット1に紐付けられた基準座標系と、鉄道車両100に紐付けられた基準座標系との間の不整合を決定することによって、慣性測定ユニット1を鉄道車両100上の任意の位置に配置することが可能になる。
【国際調査報告】