(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】グルタミン酸塩を感知するための分析物センサおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20241024BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529510
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022079837
(87)【国際公開番号】W WO2023091897
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】オゼル、リファト エムラフ
(72)【発明者】
【氏名】オージャ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK07
4C038KL01
4C038KL09
4C038KY06
(57)【要約】
本開示は、グルタミン酸塩を検出する際に使用するための分析物センサを提供する。特定の実施形態では、本開示の分析物センサのグルタミン酸塩応答性活性部位は、作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸オキシダーゼおよびレドックスメディエータを含む。本開示は、開示される分析物センサを使用してグルタミン酸塩を検出するための方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、
(ii)前記第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と、
(iii)前記グルタミン酸塩応答性活性領域の少なくとも一部を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜と
を含む分析物センサ。
【請求項2】
前記グルタミン酸塩応答性活性領域がポリマーをさらに含み、前記グルタミン酸オキシダーゼおよび/または前記電子移動剤が前記ポリマーと架橋している、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
前記グルタミン酸塩応答性活性が安定剤をさらに含む、請求項1または2に記載の分析物センサ。
【請求項4】
前記安定剤がアルブミンを含む、請求項3に記載の分析物センサ。
【請求項5】
前記物質移動制限膜が、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分析物センサ。
【請求項6】
前記物質移動制限膜が、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項7】
(iv)第2の作用電極と
(v)前記第2の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域であって、前記第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む、第2の活性領域と
をさらに含み、
前記物質移動制限膜の第2の部分は、前記第2の活性領域を上から覆う、請求項1~6のいずれか1項に記載の分析物センサ。
【請求項8】
グルタミン酸塩を検出するための方法であって
(i)(a)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と
(b)前記第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と
(c)前記グルタミン酸塩応答性活性領域の少なくとも一部を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜と、
を含む分析物センサを提供するステップと、
(ii)前記第1の作用電極に電位を印加するステップと、
(iii)前記グルタミン酸塩応答性活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルを得るステップであって、前記第1のシグナルが、前記グルタミン酸塩応答性活性領域に接触している流体中のグルタミン酸塩の濃度に比例する、ステップと、
(iv)前記第1のシグナルを前記流体中のグルタミン酸塩の前記濃度に相関させるステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記グルタミン酸塩応答性活性領域がポリマーをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記グルタミン酸オキシダーゼおよび/または前記電子移動剤が、前記グルタミン酸塩応答性活性領域において前記ポリマーに共有結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グルタミン酸塩応答性活性が安定剤をさらに含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記安定剤がアルブミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物質移動制限膜が、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記物質移動制限膜は、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分析物センサが、
(d)第2の作用電極と、
(e)前記第2の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域であって、前記第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む、第2の活性領域と
をさらに含み、
前記物質移動制限膜の第2の部分は、前記第2の活性領域を上から覆う、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記流体が間質液である、請求項8~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物センサが、神経学的症状を有するリスクがあるかまたは有する対象に埋め込まれる、請求項8~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記神経学的症状が脳損傷である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脳損傷が外傷性脳損傷である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記外傷性脳損傷が脳卒中および/または脳内出血である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記分析物センサは、約15日間、対象に埋め込まれる、請求項8~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記分析物センサが、その使用中に少なくとも約90%の感度を保持する、請求項8~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
神経学的症状を有するリスクがあるかまたは有する対象のモニタリングに使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の分析物センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される主題は、グルタミン酸塩を感知するための分析物センサおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な分析物レベルからの逸脱は生理学的状態を示し得るので、個人における様々な分析物の検出は、時には、その健康状態をモニタリングするために極めて重要であり得る。例えば、グルコースレベルをモニタリングすることは、糖尿病に罹患している人が、低血糖症、高血糖症、またはケトアシドーシスからの有意な生理学的害を回避するために、適切な是正措置を講じることを可能にすることができる。グルタミン酸塩などの他の分析物は、他の生理学的状態を監視するのに望ましい場合がある。
【0003】
グルタミン酸塩(Glutamate)またはグルタミン酸(glutamic acid)は、中枢神経系(CNS)における興奮性シグナル伝達分子の1つであり、脳における神経伝達に寄与する。生理学的条件下では、グルタミン酸塩の血液/血漿レベルは比較的安定したままである。しかしながら、脳卒中および脳内出血などの外傷性脳損傷(TBI)の後、血漿グルタミン酸塩レベルは、有意に増加し、長期間にわたって上昇したままであり、より悪い神経学的転帰および急性肺損傷(ALI)などの他の合併症をもたらし得る。したがって、より良好な予後および神経学的転帰を達成するために、外傷性脳損傷後のグルタミン酸塩レベルをモニタリングすることが重要である。
【0004】
個人における分析物モニタリングは、ある期間にわたって定期的または連続的に行うことができる。定期的な分析物モニタリングは、血液または尿などの体液の試料を設定された時間間隔で採取し、エクスビボで分析することによって行うことができる。定期的なエクスビボ分析物モニタリングは、多くの個人の生理学的状態を決定するのに十分であり得る。しかしながら、エクスビボ分析物モニタリングは、場合によっては不便であるか、または痛みを伴うことがあり得る。さらに、分析物測定値が適切な時間に得られない場合、失われたデータを回復する方法がない。連続的な分析物モニタリングは、分析がインビボで行われ得るように、個人の組織内(例えば、経皮で、皮下または静脈内)に少なくとも部分的に埋め込まれたままである1つ以上のセンサを使用して行われ得る。埋め込まれたセンサは、個人の特定のヘルスニードおよび/または以前に測定された分析物レベルに応じて、オンデマンドで、設定されたスケジュールで、または連続的に分析物データを収集することができる。インビボに埋め込まれたセンサを用いた分析物モニタリングは、重度の分析物調節異常および/または急速に変動する分析物レベルを有する個人にとってより望ましいアプローチであり得るが、他の個人にとっても同様に有益であり得る。
【0005】
グルコースをインビボで連続的にアッセイするように構成された酵素系の電流測定センサが、糖尿病の個人の健康のモニタリングを補助するために近年開発され、改良されてきた。しかしながら、インビボでグルコース以外の分析物を検出するように構成された分析物センサが知られているが、現在のところそれほど改良されていない。したがって、グルタミン酸塩のような分析物をインビボで検出するためのセンサが当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
開示される主題の目的および利点は、以下の説明に記載され、以下の説明から明らかになるとともに、開示される主題の実施によって習得されるであろう。開示される主題の追加の利点は、本明細書の記載および特許請求の範囲において、ならびに添付の図面から特に指摘されるデバイスによって実現され、達成されるであろう。
【0007】
これらおよび他の利点を達成するために、開示される主題の目的に従って、具体化され、広く記載されるように、開示される主題は、グルタミン酸塩を検出するための分析物センサを提供する。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域と、グルタミン酸塩応答性活性領域の少なくとも一部を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜とを含む。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む。
【0008】
本開示は、グルタミン酸塩を検出するための方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本方法は、(a)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、(b)第1の作用電極の表面上に配置されるグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と、(c)少なくともグルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜とを含む、分析物センサを提供するステップを含み得る。特定の実施形態では、本方法は、第1の作用電極に電位を印加するステップと、グルタミン酸塩応答性活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルを得るステップであって、第1のシグナルが、グルタミン酸塩応答性活性領域に接触している流体中のグルタミン酸塩の濃度に比例する、ステップと、第1のシグナルを流体中のグルタミン酸塩の濃度に相関させるステップとをさらに含む。特定の実施形態では、流体は間質液である。
【0009】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性領域は、ポリマーをさらに含む。例えば、限定するものではないが、電子移動剤および/またはグルタミン酸オキシダーゼは、グルタミン酸塩応答性活性領域においてポリマーに架橋される。特定の実施形態では、電子移動剤および/またはグルタミン酸オキシダーゼは、グルタミン酸塩応答性活性領域においてポリマーに共有結合している。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、安定剤、例えばアルブミンをさらに含む。
【0010】
特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、イオン交換ポリマー、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、またはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む。
【0011】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、第2の作用電極と、第2の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域とをさらに含む。特定の実施形態では、第2の活性領域は、第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む。特定の実施形態では、物質移動制限膜の第2の部分が第2の活性領域を上から覆うか、または第2の物質移動制限膜が第2の活性領域を上から覆う。
【0012】
特定の実施形態では、分析物は、神経学的症状を有するリスクがあるか、または神経学的症状を有する対象に埋め込まれる。特定の実施形態では、神経学的症状は脳損傷である。特定の実施形態では、脳損傷は外傷性脳損傷である。特定の実施形態では、外傷性脳損傷は、脳卒中および/または脳内出血である。
【0013】
特定の実施形態では、分析物センサは、約15日間、対象に埋め込まれる。特定の実施形態では、分析物センサは、その使用中に少なくとも約90%の感度を保持する。
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれており、排他的な実施形態と見なされるべきではない。開示される主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態および機能において、かなりの修正、変更、組み合わせ、および均等物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な感知システムの図。
【
図2】
図2A~2Cは、単一の活性領域を含む分析物センサの断面図。
【
図3】
図3A~3Cは、2つの活性領域を含む分析物センサの断面図。
【
図4】2つの活性領域を含む分析物センサの断面図。
【
図5】
図5A~
図5Cは、別個の作用電極上に2つの活性領域を含む分析物センサの斜視図。
【
図6】本開示に従ってグルタミン酸塩を検出するために使用され得る特定の酵素系の図。
【
図7】本開示の例示的なグルタミン酸塩センサのセンサ電流(nA)対時間(時間)プロット。
【
図8】1日目および5日目における
図7のグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流応答(nA)対グルタミン酸塩濃度(μM)の例示的なプロットを示す図。
【
図9】代替の膜組成物を含むグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流応答(nA)対時間(時間)の例示的なプロットを示す図。
【
図10】代替の膜組成物を含むグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流(nA)対グルタミン酸塩濃度(μM)の例示的なプロットを示す図。
【
図11】センサ電流(nA)対グルタミン酸塩濃度(mM)によって測定される、1日目、6日目および12日目のグルタミン酸塩センサの安定性を示す図。
【
図12】HydroMed(商標)D1膜またはHydroMed(商標)D7膜でコーティングされたグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流(nA)対グルタミン酸塩濃度(mM)の例示的なプロットを示す図。
【
図13】HydroMed(商標)D1およびポリビニルピリジンまたはHydroMed(商標)D1および10Q5から構成される膜でコーティングされたグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流(nA)対時間(時間)の例示的なプロットを示す図。
【
図14】HydroMed(商標)D1およびポリビニルピリジンまたはHydroMed(商標)D1および10Q5から構成される膜でコーティングされたグルタミン酸塩センサについてのセンサ電流(nA)対グルタミン酸塩濃度(μM)の例示的なプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、グルタミン酸塩の検出のための1つ以上の酵素を用いる分析物センサに関する。特定の実施形態では、本開示は、2つの異なる分析物を検出するための複数の酵素を用いる分析物センサをさらに提供し、例えば、グルタミン酸塩および第2の分析物の検出のための複数の酵素を用いる。センサ構成に応じて、本開示の分析物センサは、1つの分析物、例えば、グルタミン酸塩、または複数の分析物を同時にもしくはほぼ同時に検出するように構成することができる。本開示は、開示される分析物センサを使用して、1つ以上の分析物、例えば、グルタミン酸塩を検出する方法をさらに提供する。
【0016】
本開示は、グルタミン酸塩濃度の範囲にわたって良好な応答安定性および感度でグルタミン酸塩を検出するのに好適なセンサ化学および物質移動制限膜を提供する。特定の実施形態では、本開示のグルタミン酸塩センサは、最初の使用後、例えば埋め込み後、最大約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、または約20日間安定である。特定の実施形態では、本開示のグルタミン酸塩センサは、センサの使用中に、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、または約5%未満の感度損失を示す。特定の実施形態では、本開示の連続グルタミン酸塩センサは、センサの使用中(例えば、約12日間の装着期間にわたって)約10%未満の感度損失を示す。特定の実施形態では、本開示の連続グルタミン酸塩センサは、センサの使用中(例えば、約15日の装着期間にわたって)約15%未満(例えば、13%)の感度の損失を示す。
【0017】
限定するものではないが、明確にするために、本開示の主題の詳細な説明は、以下のサブセクションに分割される。
I.定義;
II.分析物センサ;
1.分析物センサの一般的構造
2.酵素;
3.レドックスメディエータ;
4.ポリマー骨格;
5.物質移動制限膜;および
6.製造;
III.使用方法。
【0018】
I.定義
本明細書で使用される用語は、概して、本開示の文脈内で、かつ各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。特定の用語は、本開示の組成物および方法、ならびにそれらをどのように作製および使用するかを記載する際に実施者に追加の手引きを提供するために、以下で、または本明細書の他の箇所で議論される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。
【0020】
用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「することができる(can)」、「含有する(contain(s))」、およびそれらの変形は、本明細書で使用されるとき、追加の行為または構造を排除しないオープンエンドの移行句、用語、または単語であることが意図される。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、および「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図する。
【0021】
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定されるような特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野における慣例に従って、3以内または3より大きい標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらにより好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、例えば、5倍以内または2倍以内を意味し得る。
【0022】
用語「生体液」は、本明細書中で使用される場合、分析物が測定され得る任意の体液または体液誘導体をいう。生体液の非限定的な例としては、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage)、羊水、汗、涙などが挙げられる。特定の実施形態では、生体液は、真皮液または間質液である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「レドックスメディエータ」とは、分析物または分析物が還元された酵素もしくは分析物が酸化された酵素と、電極との間で、直接的にか、または1つ以上の追加の電子移動剤を介してか、のいずれかで、電子を運ぶための電子移動剤を指す。特定の実施形態では、ポリマー骨格を含むレドックスメディエータは、「レドックスポリマー」とも呼ばれ得る。
【0024】
「電気分解」という用語は、本明細書で使用される場合、電極において直接的に、または1つ以上の電子移動剤(例えば、レドックスメディエータまたは酵素)を介してのいずれかでの化合物の電気酸化または電気還元を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合「参照電極」という用語は、参照電極、または参照電極および対電極の両方として機能する電極のいずれかを指すことができる。同様に、本明細書で使用される場合、「対電極」という用語は、対電極と、参照電極としても機能する対電極との両方を指すことができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「均質膜」という用語は、単一のタイプの膜ポリマーを含む膜を指す。
本明細書で使用される場合、「多成分膜」という用語は、2つ以上のタイプの膜ポリマーを含む膜を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「単一成分膜」という用語は、1つのタイプの膜ポリマーを含む膜を指す。
本明細書で使用される場合、「イオン交換ポリマー」という用語は、イオン(カチオンまたはアニオン)を溶液中のイオン性成分と交換することができるポリマーを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリビニルピリジン系ポリマー」という用語は、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(2-ビニルピリジン)またはポリ(4-ビニルピリジン))またはその誘導体を含むポリマーまたはコポリマーを指す。
【0029】
II.分析物センサ
1.分析物センサの一般的構造
本開示の分析物センサおよびそれらの構成要素をさらに詳細に説明する前に、本開示の実施形態をよりよく理解することができるように、好適なインビボ分析物センサ構成および分析物センサを用いるセンサシステムの簡単な概要を提供する。
図1は、本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な感知システムの図を示す。示されるように、感知システム100は、有線または無線、一方向または双方向、および暗号化または非暗号化であり得る、ローカル通信経路またはリンク140を経由して、相互に通信するように構成される、センサ制御デバイス102およびリーダデバイス120を含む。リーダデバイス120は、特定の実施形態によれば、センサ104またはそれに関連付けられたプロセッサによって決定された分析物濃度およびアラートまたは通知を閲覧し、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にするための出力媒体を構成することができる。リーダデバイス120は、多目的スマートフォンまたは専用電子リーダ機器とすることができる。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、場合によっては、複数のリーダデバイス120が存在してもよい。リーダデバイス120はまた、それぞれ、通信経路/リンク141および/または142を介して、遠隔端末170および/または信頼されるコンピュータシステム180と通信することができ、これもまた、有線または無線、一方向または双方向、および暗号化または非暗号化であり得る。リーダデバイス120はまた、または代替的に、通信経路/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、またはクラウドサーバ)と通信することができる。ネットワーク150は、通信経路/リンク152を介して遠隔端末170に、および/または、通信経路/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180にさらに通信可能に結合することができる。あるいは、センサ104は、介在するリーダデバイス120が存在することなく、遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、限定するものではないが、センサ104は、参照により全体が本明細書に援用される米国特許出願公開第2011/0213225号に記載されているように、特定の実施形態に従って、ネットワーク150への直接通信リンクを介して遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。近距離無線通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)またはBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFiなどの任意の好適な電子通信プロトコルが、通信経路またはリンクの各々に使用されることができる。遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180は、特定の実施形態によれば、ユーザの分析物レベルに関心を有する主要ユーザ以外の個人によってアクセス可能であり得る。リーダデバイス120は、ディスプレイ122および任意選択の入力構成要素121を含むことができる。ディスプレイ122は、特定の実施形態によれば、タッチスクリーンインターフェースを含むことができる。
【0030】
センサ制御デバイス102は、センサ104を動作させるための回路および電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意選択的に、電源および/または能動回路を省略することができる。プロセッサ(図示せず)は、センサ104に通信可能に結合されることができ、プロセッサは、センサハウジング103またはリーダデバイス120内に物理的に位置する。センサ104は、特定の実施形態によれば、センサハウジング103の下側から突出し、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するために適合される、接着層105を通って延在する。
【0031】
センサ104は、皮膚の真皮層または皮下層内など、関心組織内に少なくとも部分的に挿入されるように適合される。センサ104は、所与の組織内の所望の深さまで挿入するのに十分な長さのセンサ尾部を含むことができる。センサ尾部は、少なくとも1つの作用電極を含むことができる。特定の構成では、センサ尾部は、分析物を検出するための活性領域を含むことができる。対電極は、少なくとも1つの作用電極と組み合わせて存在することができる。センサ尾部上の特定の電極構成は、以下により詳細に説明される。
【0032】
活性領域は、特定の分析物を検出するように構成することができる。例えば、限定するものではないが、開示される分析物センサは、グルタミン酸塩を検出するように構成された少なくとも1つの活性領域を含む。特定の実施形態では、本開示のセンサは、2つの活性領域を含み、各活性領域は、異なる分析物を検出するように構成される。あるいは、2つの活性領域は、同じ分析物を検出するように構成することができる。特定の実施形態では、第1の活性領域は、グルタミン酸塩を検出するように構成することができ、第2の活性領域は、グルタミン酸塩またはグルタミン酸塩とは異なる第2の分析物を検出するように構成することができる。
【0033】
本開示の特定の実施形態では、1つ以上の分析物は、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄、羊水などの任意の関心生体液中でモニターされ得る。ある特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、インビボで1つ以上の分析物の濃度を決定するために真皮液または間質液をアッセイするように適合させることができる。特定の実施形態では、生体液は間質液である。
【0034】
さらに
図1を参照すると、センサ104は、データをリーダデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、限定するものではないが、分析物濃度データ(すなわち、グルタミン酸塩濃度)は、データが得られるとき、または特定の期間が経過した後などの特定の頻度で、自動的かつ定期的に通信することができ、データは、送信までメモリに格納される(例えば、毎分、5分毎、または他の所定の期間)。特定の他の実施形態では、センサ104は、設定されたスケジュールに従ってではなく、非自動的にリーダデバイス120と通信することができる。例えば、限定するものではないが、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に持ち込まれたときに、RFID技術を使用してセンサ104からデータを通信することができる。リーダデバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリ内に格納されたままであり得る。したがって、ユーザは、常にリーダデバイス120への近接を維持する必要はなく、代わりに、都合のよいときにデータをアップロードすることができる。特定の他の実施形態では、自動データ転送および非自動データ転送の組合せを実施することができる。例えば、限定としてではなく、データ転送は、リーダデバイス120がもはやセンサ104の通信範囲内になくなるまで、自動的に継続することができる。
【0035】
組織内へのセンサ104の導入を促進するために、導入器が一時的に存在し得る。特定の例示的な実施形態では、導入器は、針または同様の鋭利物を含むことができる。当業者によって容易に認識されるであろうように、代替実施形態では、シースまたはブレードなどの他のタイプの導入器が存在することができる。より具体的には、針または他の導入器は、組織挿入の前に、一時的にセンサ104に近接して存在し、次いで、その後、抜去されることができる。存在する間、針または他の導入器は、センサ104が辿るためのアクセス経路を開くことによって、センサ104の組織の中への挿入を容易にすることができる。例えば、限定としてではなく、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を容易にして、センサ104の埋め込みが行われることを可能にすることができる。アクセス経路を開いた後、針または他の導入器は抜去され、鋭利物の危険をもたらさないようにすることができる。特定の実施形態では、好適な針は、断面が中実または中空、面取りまたは非面取り、および/または円形または非円形であり得る。より特定の実施形態では、好適な針は、断面直径および/または先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼治療針と同等であり得る。しかしながら、好適な針は、ある特定の用途のために必要とされる場合、より大きいまたはより小さい断面直径を有することができる。
【0036】
特定の実施形態では、針の先端(存在する間)は、針が最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の末端にわたって角度を付けることができる。特定の実施形態では、センサ104は、針の管腔または溝内に存在することができ、針は、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、センサの挿入を容易にした後に、針は、続いて抜去される。
【0037】
対応する単一分析物の検出のために構成される単一活性領域を特徴とするセンサ構成は、
図2A-2Cを参照して本明細書にさらに説明されるように、2電極または3電極検出モチーフを用いることができる。別個の作用電極上または同じ作用電極上のいずれかで、別個の分析物を検出するための2つの異なる活性領域を特徴とするセンサ構成は、
図3A-5Cを参照して以下に別個に記載される。複数の作用電極を有するセンサ構成は、各活性領域からのシグナル寄与をより容易に決定することができるため、同じセンサ尾部内に2つの異なる活性領域を組み込むのに特に有利であり得る。
【0038】
単一の作用電極が分析物センサ内に存在するとき、3電極センサ構成は、作用電極、対電極、および参照電極を含むことができる。関連する2電極センサ構成は、作用電極および第2の電極を含むことができ、第2の電極は、対電極および参照電極の両方(すなわち、対/参照電極)として機能することができる。様々な電極は、互いの上に少なくとも部分的に積み重ねる(層状にする)ことができ、および/またはセンサ尾部上で互いから横方向に離間させることができる。好適なセンサ構成は、実質的に平坦な形状、実質的に円筒形の形状、または任意の他の好適な形状であることができる。本明細書に開示されるセンサ構成のいずれにおいても、様々な電極は、誘電材料または同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁することができる。
【0039】
複数の作用電極を特徴とする分析物センサは、同様に、少なくとも1つの追加の電極を含むことができる。1つの追加の電極が存在する場合、その1つの追加の電極は、複数の作用電極の各々に対する対/参照電極として機能することができる。2つの追加の電極が存在する場合、追加の電極の一方は、複数の作用電極の各々の対電極として機能することができ、追加の電極の他方は、複数の作用電極の各々の参照電極として機能することができる。
【0040】
図2Aは、本明細書の開示における使用に適合する、例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。示されるように、分析物センサ200は、作用電極214と対/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214および対/参照電極216は、その間に誘電材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に位置し得る(構成は示さず)。活性領域218は、作用電極214の少なくとも一部の上に少なくとも1つの層として配置される。活性領域218は、本明細書でさらに論じるように、分析物の検出のために構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含むことができる。
【0041】
さらに
図2Aを参照すると、膜220は、少なくとも活性領域218を上から覆う。特定の実施形態では、膜220はまた、作用電極214および/または対/参照電極216の一部もしくは全部、または分析物センサ200の全体を上から覆うことができる。分析物センサ200の片面または両面は、膜220で上から覆うことができる。膜220は、活性領域218への分析物流動を制限する能力を有する1つ以上のポリマー膜材料を含み得る(すなわち、膜220は、関心分析物に対していくらかの透過性を有する物質移動制限膜である)。本明細書中の開示に従って、そして以下にさらに記載されるように、膜220は、ある特定のセンサ構成において分枝架橋剤で架橋され得る。例えば、限定するものではないが、膜220は、本明細書に記載されるように架橋剤で架橋される。膜220の組成および厚さは、活性領域218への所望の分析物流動を促進するように変化し得、それによって所望のシグナル強度および安定性を提供する。分析物センサ200は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、または電位差測定電気化学的検出技術のいずれかによって分析物をアッセイするために動作可能であり得る。
【0042】
図2Bおよび
図2Cは、本明細書の開示における使用にも適合する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。3電極分析物センサ構成は、分析物センサ201および202(
図2Bおよび2C)内に追加の電極217を含むことを除いて、
図2Aの分析物センサ200について示されるものと同様であり得る。追加の電極217により、対/参照電極216は、対電極または参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は、特に規定がない限り、他の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を果たし続ける。追加の電極217は、その間に誘電材料の分離層がある状態で、作用電極214または電極216のいずれかの上に配置することができる。例えば、限定としてではなく、
図2Bに示すように、誘電体層219a、219b、および219cは、電極214、216、および217を互いに分離し、電気的絶縁を提供する。あるいは、
図2Cに示されるように、電極214、216および217のうちの少なくとも1つは、基板212の両面上に位置し得る。したがって、特定の実施形態では、電極214(作用電極)および電極216(対電極)は、基板212の両面上に位置することができ、電極217(参照電極)は、電極214または216のうちの1つの上に位置し、誘電材料を用いてそこから離間される。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)は、電極217上に存在することができ、参照材料層230の場所は、
図2Bおよび2Cに示されるものに限定されない。
図2Aに示されるセンサ200と同様に、分析物センサ201および202の活性領域218は、複数のスポットまたは単一のスポットを含むことができる。さらに、分析物センサ201および202は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、または電位差測定電気化学的検出技術のいずれかによって分析物をアッセイするために動作可能であり得る。
【0043】
分析物センサ200と同様に、膜220はまた、分析物センサ201および202内の活性領域218ならびに他のセンサ構成要素を上から覆い、それによって、物質移動制限膜として機能することができる。特定の実施形態では、追加の電極217を膜220で上から覆うことができる。
図2Bおよび2Cは、電極214、216および217が膜220で上から覆われているように示しているが、特定の実施形態では、作用電極214のみが上から覆われていることが認識されるべきである。また、電極214、216および217の各々における膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。2電極分析物センサ構成(
図2A)におけるように、分析物センサ201および202の一方または両方の面は、
図2Bおよび2Cのセンサ構成において膜220で上から覆われ得るか、または分析物センサ201および202の全体が上から覆われ得る。したがって、
図2Bおよび2Cに示される3電極センサ構成は、本明細書に開示される実施形態の非限定的なものとして理解されるべきであり、代替の電極および/または層構成は、本開示の範囲内に留まる。
【0044】
図3Aは、2つの異なる活性領域がその上に配置された単一の作用電極を有するセンサ203の例示的な構成を示す。
図3Aは、作用電極214上に2つの活性領域、すなわち、第1の活性領域218aおよび第2の活性領域218bが存在することを除いて、
図2Aと同様であり、これらの活性領域は、異なる分析物に応答し、作用電極214の表面上で互いに横方向に離間している。活性領域218aおよび218bは、各分析物の検出のために構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含むことができる。膜220の組成は、活性領域218aおよび218bにおいて変化し得るか、または組成的に同じであり得る。第1の活性領域218aおよび第2の活性領域218bは、以下でさらに論じるように、互いに異なる作用電極電位でそれらの対応する分析物を検出するように構成することができる。
【0045】
図3Bおよび
図3Cは、それぞれ、センサ204および205の例示的な3電極センサ構成の断面図を示し、各々は、その上に配置された第1の活性領域218aおよび第2の活性領域218bを有する単一の作用電極を特徴とする。
図3Bおよび
図3Cは、その他の点では
図2Bおよび
図2Cと同様であり、これらを参照することによってより良く理解することができる。
図3Aと同様に、膜220の組成は、活性領域218aおよび218bにおいて変化し得るか、または組成的に同じであり得る。
【0046】
複数の作用電極、具体的には、2つの作用電極を有する例示的なセンサ構成が、
図4-5Cを参照してさらに詳細に説明される。以下の説明は、主に、2つの作用電極を有するセンサ構成に関するが、2つより多い作用電極が、本明細書の開示の拡張を通して組み込まれることができることを理解されたい。追加の作用電極は、第1の分析物および第2の分析物のみを超える、例えば、第3および/または第4の分析物の検出のために、追加の感知能力を分析物センサに付与するために使用することができる。
【0047】
図4は、本明細書の開示における使用に適合する、2つの作用電極、参照電極、および対電極を有する例示的な分析物センサ構成の断面図を示す。示されるように、分析物センサ300は、基板302の両面上に配置された作用電極304および306を含む。第1の活性領域310aは、作用電極304の表面上に配置され、第2の活性領域310bは、作用電極306の表面上に配置される。対電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁され、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁される。外側誘電体層330および332は、それぞれ、参照電極321および対電極320上に配置される。膜340は、様々な実施形態によれば、少なくとも活性領域310aおよび310bを上から覆うことができ、分析物センサ300の他の構成要素または分析物センサ300の全体が、任意選択で、膜340で上から覆われる。膜340は、連続的であり得るが、活性領域310a上および/または活性領域310b上で組成的に変化して、各位置で分析物流動を異なって調節するための異なる透過性値を与え得る。例えば、異なる膜配合が、分析物センサ300の対向面上に噴霧および/または印刷され得る。特に、活性領域310aおよび310bのうちの1つの上に二層膜の少なくとも一部を堆積させるために、浸漬コーティング技法も適切であり得る。特定の実施形態では、膜340は、活性領域310aおよび310bにおいて同じであり得るか、または組成的に変化し得る。例えば、限定するものではないが、膜340は、活性領域310aを上から覆う二層を含み、活性領域310bを上から覆う均質膜であってもよく、または、膜340は、活性領域310bを上から覆う二層を含み、活性領域310aを上から覆う均質膜であってもよい。特定の実施形態では、分析物センサは、1つより多い膜340、例えば、2つ以上の膜を含み得る。例えば、限定するものではないが、分析物センサは、
図4に示されるように、1つ以上の活性領域、例えば、310aおよび310bを上から覆う膜と、センサ全体を上から覆う追加の膜とを含むことができる。
【0048】
分析物センサ200、201および202と同様に、分析物センサ300は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、または電位差測定電気化学的検出技術のいずれかによってグルタミン酸塩をアッセイするために動作可能であり得る。
【0049】
複数の作用電極を有し、
図4に示される構成とは異なる代替的なセンサ構成は、別個の対電極および参照電極320、321の代わりに対/参照電極を特徴とすることができ、および/または明示的に示されるものとは異なる層および/または膜の配置を特徴とすることができる。例えば、限定としてではなく、対電極320および参照電極321の配置は、
図4に示されるものとは逆にすることができる。加えて、作用電極304および306は、必ずしも、
図4に示される様式で基板302の対向面上に存在する必要はない。
【0050】
好適なセンサ構成は、性質が実質的に平面である電極を特徴とすることができるが、非平面電極を特徴とするセンサ構成が、本明細書の開示における使用に有利であり、特に好適であり得ることを理解されたい。特に、互いに対して同心円状に配置される実質的に円筒形の電極は、以下に記載されるように、物質移動制限膜の堆積を容易にすることができる。
図5A-5Cは、互いに対して同心円状に配置された2つの作用電極を特徴とする分析物センサの斜視図を示す。同心電極配置を有するが、第2の作用電極を欠くセンサ構成もまた、本開示において可能であることを理解されたい。
【0051】
図5Aは、複数の電極が、実質的に円筒形であり、中心基板の周囲に互いに対して同心円状に配置される、例示的なセンサ構成の斜視図を示す。示されるように、分析物センサ400は、中心基板402を含み、その周囲に、全ての電極および誘電体層が、互いに対して同心円状に配置される。特に、作用電極410は、中心基板402の表面上に配置され、誘電体層412は、センサ先端404の遠位の作用電極410の一部上に配置される。作用電極420は、誘電体層412上に配置され、誘電体層422は、センサ先端404に対して遠位の作用電極420の一部上に配置される。対電極430は、誘電体層422上に配置され、誘電体層432は、センサ先端404に対して遠位の対電極430の一部上に配置される。参照電極440は、誘電体層432上に配置され、誘電体層442は、センサ先端404に対して遠位の参照電極440の一部上に配置される。したがって、作用電極410、作用電極420、対電極430、および参照電極440の露出面は、分析物センサ400の長手方向軸Bに沿って互いに離間している。
【0052】
さらに
図5Aを参照すると、異なる分析物または同じ分析物に応答する第1の活性領域414aおよび第2の活性領域414bは、それぞれ、作用電極410および420の露出面上に配置され、それによって、流体との接触を可能にして感知を行う。活性領域414aおよび414bは、
図5Aにおいて3つの別個のスポットとして示されているが、代替のセンサ構成において活性領域の連続層を含む3つより少ないまたは多いスポットが存在し得ることが理解されたい。
【0053】
図5Aにおいて、センサ400は、作用電極410および420ならびにその上に配置された活性領域414aおよび414b上の膜450で部分的に被覆されている。
図5Bは、センサ401の実質的に全体が膜450で上から覆われた代替センサ構成を示す。膜450は、活性領域414aおよび414bにおいて同じであるか、または組成的に変化し得る。例えば、膜450は、活性領域414aを上から覆う二層を含み得、活性領域414bを上から覆う均質な膜であり得る。
【0054】
図5Aおよび
図5Bにおける様々な電極の配置は、明示的に示されたものとは異なり得ることをさらに理解されたい。例えば、対電極430および参照電極440の位置は、
図5Aおよび
図5Bに示される構成とは逆にすることができる。同様に、作用電極410および420の位置は、
図5Aおよび5Bに明示的に示されるものに限定されない。
図5Cは、
図5Bに示されるものに対する代替センサ構成を示し、センサ405は、センサ先端404のより近位に位置する対電極430および参照電極440と、センサ先端404のより遠位に位置する作用電極410および420とを含有する。作用電極410および420がセンサ先端404に対してより遠位に位置するセンサ構成は、活性領域414aおよび414b(
図5Cに例示的に示される5つの別個の感知スポット)の堆積のためのより大きい表面積を提供することによって有利であり得、それによって、場合によっては、増加したシグナル強度を促進する。同様に、中心基板402は、本明細書に開示される任意の同心センサ構成において省略されることができ、最内電極は、代わりに、続いて堆積される層を支持することができる。
【0055】
センサのいくつかの部分を以下にさらに説明する。
2.酵素
本開示の分析物センサの活性領域は、1つ以上の分析物、例えば、グルタミン酸塩を検出するように構成され得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、1つより多い活性領域を含むことができ、各活性領域は、同じ分析物または異なる分析物を検出するように構成される。本開示の分析物センサは、グルタミン酸塩を検出するように構成された1つ以上の活性領域を含む。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、グルタミン酸塩以外の第2の分析物を検出するように構成された1つ以上の活性領域をさらに含み得る。
【0056】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、1つ以上のグルタミン酸塩応答性領域を含み得る。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性領域は、グルタミン酸塩を検出するための1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩応答性領域は、
図6に示されるようなグルタミン酸オキシダーゼを含み得る。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、L-グルタミン酸塩をα-ケトグルタル酸塩(α-ketoglutarate)(「α-ケトグルタル酸(α-ketoglutaric acid)」とも呼ばれる)に変換し、グルタミン酸オキシダーゼを還元するグルタミン酸オキシダーゼ(
図6の「GlutOx」)を含有する。次いで、グルタミン酸オキシダーゼの還元型は、電子(複数可)をレドックスメディエータに移動させることができ、次いで、アノード、すなわち作用電極で酸化され得る。この反応中に移動した電子は、作用電極でのグルタミン酸塩検出の基礎を提供する。次いで、得られた電気化学的シグナルを、試料中に最初に存在したグルタミン酸塩の量と相関させることができる。
【0057】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、少なくとも1つの作用電極を含むセンサ尾部と、作用電極の表面上に配置された1つ以上のグルタミン酸塩応答性活性領域とを含むことができ、グルタミン酸塩応答性活性領域は、グルタミン酸オキシダーゼを含む。特定の実施形態では、グルタミン酸オキシダーゼは、例えば、グルタミン酸塩応答性活性領域内に存在するポリマーへの共有結合によって、グルタミン酸塩応答性活性領域に固定される。
【0058】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、作用電極の一部上に配置される。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩応答性活性領域は、作用電極の一部上にスポットパターンで、例えば、作用電極上に2つ以上のスポットで配置される。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、スロットパターン(slotted pattern)で作用電極の一部上に配置される。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、作用電極の全長上に、または作用電極上に連続したパターンで配置される。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、約0.01mm2~約2.0mm2、例えば、約0.1mm2~約1.0mm2または約0.2mm2~約0.5mm2の面積を有する。
【0059】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、例えば、酵素を安定化させるための安定剤をさらに含み得る。例えば、限定するものではないが、安定剤は、アルブミン、例えば、血清アルブミンであり得る。血清アルブミンの非限定的な例としては、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンが挙げられる。特定の実施形態では、安定剤はヒト血清アルブミンである。特定の実施形態では、安定剤はウシ血清アルブミンである。
【0060】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、約40:1~約1:40、例えば、約35:1~約1:35、約30:1~約1:30、約25:1~約1:25、約20:1~約1:20、約15:1~約1:15、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2または約1:1の安定剤対グルタミン酸オキシダーゼの比を含み得る。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、約1:1~約1:10、例えば、約1:1~約1:9、約1:1~約1:8、約1:1~約1:7、約1:1~約1:6、約1:1~約1:5、約1:2~約1:9、約1:3~約1:8、約1:3~約1:7または約1:4~約1:6の安定剤対グルタミン酸オキシダーゼの比を含み得る。
【0061】
特定の実施形態では、分析物センサは、2つの作用電極、例えば、第1の作用電極上に配置された第1の活性領域と、第2の作用電極上に配置された第2の活性領域とを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される分析物センサは、グルタミン酸塩応答性活性領域と、グルタミン酸塩とは異なる分析物を検出するための第2の活性領域とを特徴とすることができる。例えば、限定するものではないが、そのような分析物センサは、少なくとも第1の作用電極および第2の作用電極を有するセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置された異なる分析物を検出するように構成された第2の活性領域、例えば、第2の酵素応答性活性領域とを含み得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサによって検出される追加の分析物、例えば、第2の分析物は、グルコース、乳酸塩、ケトン、クレアチニン、および/またはアルコールであり得る。特定の実施形態では、センサが2つ以上の分析物を検出するように構成されるとき、各分析物の検出は、別個のシグナルが各分析物から得られるように、各作用電極に別個に電位を印加することを含み得る。次いで、各分析物から得られたシグナルは、較正曲線または関数の使用を通して、またはルックアップテーブルを用いることによって、分析物濃度に相関されることができる。ある特定の実施形態では、分析物濃度に対する分析物シグナルの相関は、プロセッサの使用を通して行われることができる。
【0062】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサの、例えば、第2の作用電極上に存在する第2の酵素応答性活性領域は、グルコースを検出するために使用され得る1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、例えば、第2の作用電極上に配置された、グルコースを検出するための1つ以上の酵素を含む活性領域を含み得る。特定の実施形態では、分析物センサは、グルコースを検出するためのグルコースオキシダーゼおよび/またはグルコースデヒドロゲナーゼを含む活性部位を含み得る。
【0063】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサの、例えば第2の作用電極上に存在する、第2の酵素応答性活性領域は、ケトンを検出するために使用され得る1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、例えば、第2の作用電極上に配置された、ケトンを検出するための1つ以上の酵素、例えば、酵素系を含む活性領域を含み得る。特定の実施形態では、分析物センサは、ケトンを検出するためのβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼおよび/またはジアホラーゼを含む活性部位を含み得る。
【0064】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサの、例えば、第2の作用電極上に存在する、第2の酵素応答性活性領域は、乳酸塩を検出するために使用することができる1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、例えば、第2の作用電極上に配置された、乳酸塩を検出するための1つ以上の酵素、例えば、酵素系を含む活性領域を含み得る。特定の実施形態では、分析物センサは、乳酸デヒドロゲナーゼおよび/または乳酸オキシダーゼを含む活性部位を含み得る。
【0065】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサの、例えば、第2の作用電極上に存在する、第2の酵素応答性活性領域は、アルコールを検出するために使用され得る1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、例えば、第2の作用電極上に配置される、アルコールを検出するための1つ以上の酵素、例えば、酵素系を含む、活性領域を含み得る。特定の実施形態では、分析物センサは、アルコールデヒドロゲナーゼを含む活性部位を含み得る。
【0066】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサの、例えば、第2の作用電極上に存在する、第2の酵素応答性活性領域は、クレアチニンを検出するために使用することができる1つ以上の酵素を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、例えば、第2の作用電極上に配置された、クレアチニンを検出するための1つ以上の酵素、例えば、酵素系を含む活性領域を含み得る。特定の実施形態では、分析物センサは、アミド加水分解酵素、クレアチンアミジノヒドロラーゼおよび/またはサルコシンオキシダーゼを含む活性部位を含み得る。
【0067】
特定の他の分析物センサ構成では、第1の活性領域および第2の活性領域は、単一の作用電極上に配置することができる。第1のシグナルは、例えば低電位で、第1の活性領域から得ることができ、両方の活性領域からのシグナル寄与を含む第2のシグナルは、より高い電位で得ることができる。次いで、第2のシグナルから第1のシグナルを減算することにより、第2の分析物から生じるシグナル寄与を決定することができる。各分析物からのシグナル寄与は、次いで、複数の作用電極を有するセンサ構成について説明されるものと同様の様式で、分析物濃度に相関されることができる。特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域および異なる分析物を検出するように構成された第2の活性領域(例えば、第2の分析物応答性活性領域)が、このようにして単一の作用電極上に配置されるとき、活性領域のうちの1つは、各分析物の検出を容易にするために別個に調べることができるように構成することができる。例えば、グルタミン酸塩応答性活性領域または第2の分析物に応答する第2の活性領域のいずれかが、他方の活性領域とは独立してシグナルを生成することができる。
【0068】
各分析物に対する分析物センサの感度(出力電流)は、活性領域の被覆率(面積またはサイズ)、活性領域の互いに対する面積比、活性領域を上から覆う物質移動制限膜の同一性、厚さ、および/または組成を変化させることによって変動させ得ることも理解されたい。これらのパラメータの変更は、本明細書の開示の恩恵を受けた当業者によって容易に行うことができる。
【0069】
3.レドックスメディエータ
特定の実施形態では、本明細書に開示される分析物センサは、電子移動剤、例えば、レドックスメディエータを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される分析物センサの1つ以上の活性領域は、電子移動剤、例えば、レドックスメディエータを含み得る。
【0070】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、1つ以上の電子移動剤を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を有するセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域とを含むことができ、グルタミン酸塩応答性活性領域は、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む。
【0071】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、2つ以上の活性領域を含むことができ、各活性領域は、電子移動剤を含む。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、少なくとも第1の作用電極および第2の作用電極を有するセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸オキシダーゼおよび第1の電子移動剤を含むグルタミン酸塩応答性活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置された第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素および第2の電子移動剤を含む第2の分析物応答性活性領域とを含み得る。あるいは、本開示の分析物センサは、2つ以上の活性領域を含むことができ、1つの活性領域のみが電子移動剤を含む。例えば、限定するものではないが、本開示の分析物センサは、少なくとも第1の作用電極および第2の作用電極を有するセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含むグルタミン酸塩応答性活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置された第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む第2の分析物応答性活性領域とを含むことができ、第2の分析物応答性活性領域は電子移動剤を含まない。
【0072】
本開示の分析物センサで使用するのに好適な電子移動剤は、分析物が対応する活性領域内で酵素的酸化還元反応を受けた後に、隣接する作用電極への電子の伝達を容易にし、それによって、その特定の分析物の存在を示す電流を生成することができる。生成した電流の量は、存在する分析物の量に比例する。
【0073】
特定の実施形態では、好適な電子移動剤としては、標準カロメル電極(SCE)の酸化還元電位よりも数百ミリボルト高いまたは低い酸化還元電位を有する電解還元可能および電解酸化可能なイオン、錯体または分子(例えば、キノン)を挙げることができる。特定の実施形態では、電子移動剤としては、オスミウム錯体および他の遷移金属錯体(例えば、米国特許第6,134,461号および同第6,605,200号(これらは参照によりその全体が本明細書中に援用される)に記載されるもの)が挙げられ得る。好適なレドックスメディエータのさらなる例としては、米国特許第6,736,957号、同第7,501,053号および同第7,754,093号(これらの各々の開示もまた、その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されるものが挙げられる。好適な電子移動剤の他の例としては、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセンまたはヘキサシアノ鉄酸塩)、またはコバルトの金属化合物または錯体が挙げられ、例えば、これらのメタロセン化合物が挙げられる。金属錯体に好適な配位子としては、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、またはピリジル(イミダゾール)などの二座配位子またはより高い配位座数の配位子も挙げることができる。他の好適な二座配位子としては、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、またはo-ジアミノアレーンを挙げることができる。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座またはより高い配位座数の配位子の任意の組合せが金属錯体中に存在することができる。特定の実施形態では、電子移動剤はオスミウム錯体である。特定の実施形態では、電子移動剤は、二座配位子と錯体を形成したオスミウムである。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書中に開示される電子移動剤は、以下にさらに議論されるように、活性領域内のポリマー(本明細書中でポリマー骨格とも呼ばれる)への共有結合を促進するために好適な官能基を含み得る。例えば、限定するものではないが、本開示において使用するための電子移動剤は、ポリマー結合電子移動剤、例えば、レドックスポリマーを含み得る。ポリマー結合電子移動剤の好適な非限定的な例としては、米国特許第8,444,834号、同第8,268,143号および同第6,605,201号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参照により援用される)に記載されるものが挙げられる。特定の実施形態では、電子移動剤は、本明細書に記載されるポリマー(例えば、以下のセクション4に記載されるポリマー骨格)に結合した二座オスミウム錯体である。特定の実施形態では、米国特許第8,444,834号の
図3に示されるポリマー結合電子移動剤(「X7」と称される)が、本開示のセンサにおいて使用されることができる。
【0075】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、約10:1~約1:10、例えば、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2、約1.5:1~約1:1.5、または約1:1のグルタミン酸オキシダーゼ対レドックスメディエータの比を含み得る。
【0076】
4.ポリマー骨格
特定の実施形態では、分析物検出を促進するための1つ以上の活性部位は、酵素および/またはレドックスメディエータが共有結合されるポリマーを含み得る。酵素および/またはレドックスメディエータの活性領域への共有結合を介して分析物の検出を容易にするために、任意の好適なポリマー骨格が活性領域に存在し得る。活性領域内の好適なポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルピリジン、例えば、ポリ(4-ビニルピリジン)、およびポリビニルイミダゾール、例えば、ポリ(N-ビニルイミダゾール)およびポリ(1-ビニルイミダゾール)、またはそれらのコポリマーが挙げられ、例えば、四級化ピリジン基は、レドックスメディエータまたは酵素の結合点として機能する。特定の実施形態では、ポリマーは、ポリ(4-ビニルピリジン)ポリマーまたはその誘導体である。本開示で使用するための非限定的なポリマーは、米国特許第8,444,834号に開示されている。
【0077】
活性領域に含めるのに好適であり得る例示的なコポリマーとしては、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはアクリロニトリルなどのモノマー単位を含有するものが挙げられる。特定の実施形態では、ポリマーは、ビニルピリジンとスチレンとのコポリマーである。活性領域に存在し得るポリマーのさらなる非限定的な例としては、米国特許第6,605,200号(その全体が本明細書中に参照により援用される)に記載されるもの(例えば、ポリ(アクリル酸)、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(GANTREZ(商標)ポリマー)、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(アリルアミン)、ポリリジン、カルボキシペンチル基で四級化されたポリ(4-ビニルピリジン)、およびポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム))が挙げられる。分析物センサが2つの活性部位を含む特定の実施形態では、各活性領域内のポリマーは同じであっても異なっていてもよい。
【0078】
特定の実施形態では、所与の活性領域の酵素を固定することができる。特定の実施形態では、活性領域の酵素は、ポリマーに共有結合される。あるいは、またはさらに、活性領域の酵素は、非共有結合した酵素がポリマー内に物理的に保持されるように、ポリマーと非共有結合的に会合され得る。特定の実施形態では、存在するグルタミン酸オキシダーゼは、開示される分析物センサのグルタミン酸塩応答性活性領域内のポリマーに共有結合され得る。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸オキシダーゼは、開示される分析物センサのグルタミン酸塩応答性活性領域内で、レドックスメディエータのポリマー、すなわち、レドックスポリマーに共有結合することができる。特定の実施形態では、グルタミン酸オキシダーゼは、ポリマーと非共有結合的に会合され得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、所与の活性領域におけるポリマーへの1つ以上の酵素および/またはレドックスメディエータの共有結合は、好適な架橋剤を用いて導入された架橋を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中の遊離側鎖アミンとの)反応に好適な架橋剤としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)もしくは他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、またはそれらの誘導体化変異体などの架橋剤を挙げることができる。特定の実施形態では、架橋剤は、例えば、約200~1,000、例えば、約400の数平均分子量(Mn)を有するPEGDGEである。特定の実施形態では、架橋剤はPEGDGE400である。特定の実施形態では、架橋剤はグルタルアルデヒドであり得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に好適な架橋剤としては、例えば、カルボジイミドを挙げることができる。特定の実施形態では、ポリマーへの酵素の架橋は、一般的に分子間である。特定の実施形態では、ポリマーへの酵素の架橋は、一般的に分子内である。
【0080】
5.物質移動制限膜
特定の実施形態では、本明細書に開示される分析物センサは、分析物センサの少なくとも1つの活性領域、例えば、第1の活性領域および/または第2の活性領域を上から覆う膜をさらに含む。特定の実施形態では、膜は、活性領域において検出される分析物(例えば、グルタミン酸塩)に対して透過性である。特定の実施形態では、膜は、分析物センサの活性領域の各々を上から覆う。あるいは、第1の膜が複数の活性領域のうちの1つを上から覆い、第2の膜が第2の活性領域を上から覆う。あるいは、第1の膜が複数の活性領域の1つを上から覆い、続いて第2の膜が第1および第2の活性領域の両方を上から覆う。
【0081】
特定の実施形態では、分析物応答性活性領域を上から覆う膜は、物質移動制限膜として、および/または生体適合性を改善するために機能することができる。物質移動制限膜は、分析物の物質移動の速度を低下させるための拡散制限バリアとして作用することができる。例えば、限定するものではないが、物質移動制限膜を用いて分析物、例えばグルタミン酸塩の分析物応答性活性領域へのアクセスを制限することは、センサの過負荷(飽和)を回避するのに役立ち、それによって検出性能および精度を改善することができる。
【0082】
特定の実施形態では、物質移動制限膜は、均質であり得、単一成分であり得る(例えば、単一の膜ポリマーまたは2つ以上のポリマーのコポリマーを含有する)。あるいは、物質移動制限膜は、多成分であり得る(例えば、2つ以上の異なる膜ポリマーを、例えば複合体として含有する)。特定の実施形態では、多成分膜は、多層膜、例えば、二層膜または三層膜として存在することができる。特定の実施形態では、多成分膜は、2つ以上の膜ポリマーの均質な混合物として存在することができる。特定の実施形態では、溶液中で2つ以上の膜ポリマーを組み合わせ、次いで、例えば、浸漬コーティングによって、溶液を作用電極上に堆積させることによって、均質混合物を堆積させることができる。特定の実施形態では、多層膜は、例えば浸漬コーティングによって第1の層を堆積させ、例えば浸漬コーティングによって第1の層上に第2の層を堆積させて二層膜を生成することによって、分析物応答性活性領域上に堆積させることができる。特定の実施形態では、第3の層を、例えば、浸漬コーティングによって第2の層上に堆積させて、三層膜を生成することができる。
【0083】
特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、中性電荷を有することができる。特定の実施形態では、中性電荷を有する物質移動制限膜は、グルタミン酸塩が間質液から、作用電極上に存在するグルタミン酸塩応答性活性領域に容易に拡散することを可能にして、濃度依存性電流シグナルを生成する。
【0084】
特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、親水性ポリマーを含み得る。例えば、限定するものではないが、物質移動制限膜は、親水性ポリマーを含む単一成分膜または多成分膜であり得る。
【0085】
特定の実施形態では、ポリマーは、本明細書に記載されるように、ポリビニルピリジン-コ-ポリスチレンスルホネートまたはポリビニルイミダゾール-コ-ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)であり得る。
【0086】
特定の実施形態では、ポリマーはポリウレタンである。例えば、限定するものではないが、物質移動制限膜は、ポリウレタンを含む単一成分膜または多成分膜とすることができる。特定の実施形態では、本開示における使用のためのポリマー(例えば、ポリウレタン)は、その重量の約30%~約95%(例えば、約30%~約70%)の水を吸収することができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、その重量の少なくとも約30%の水を吸収することができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、その重量の少なくとも約40%の水を吸収することができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、その重量の少なくとも約50%の水を吸収することができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、その重量の少なくとも約60%の水を吸収することができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、その重量の少なくとも約70%の水を吸収することができる。特定の実施形態では、本開示における使用のためのポリウレタンは、低熱硬化性である。例えば、限定するものではないが、本開示における使用のためのポリマー、例えば、ポリウレタンは、約20℃~約90℃、例えば、約25℃~約85℃、約30℃~約80℃、約35℃~約75℃、約40℃~約70℃、約45℃~約65℃、約20℃~約70℃、約20℃~約60℃、約20℃~約50℃、約30℃~約90℃、約40℃~約90℃、約50℃~約90℃、約60℃~約90℃、または約70℃~約90℃の温度で硬化可能である。特定の実施形態では、本開示における使用のためのポリマー(例えば、ポリウレタン)は、約50~約500kDaの分子量を有する。
【0087】
特定の実施形態では、ポリウレタンは、市販の親水性ポリウレタンであり得る。特定の実施形態では、親水性ポリウレタンは、AdvanSource biomaterials(Wilmington,MA)からのHydroMed(商標)シリーズのポリウレタンを含み得る。例えば、限定するものではないが、市販の親水性ポリウレタンとしては、HydroMed(商標)D1、HydroMed(商標)D2、HydroMed(商標)D3、HydroMed(商標)D4、HydroMed(商標)D6、HydroMed(商標)D640、HydroMed(商標)D7、HydroMed(商標)Hydroslip C、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態では、ポリウレタンは、HydroMed(商標)D7を含むことができる。ある実施形態において、ポリウレタンは、HydroMed(商標)D1を含むことができる。
【0088】
特定の実施形態では、膜、例えば、単一成分膜または多成分膜は、ポリウレタンのコポリマーを含み得る。特定の実施形態では、膜(例えば、単一成分膜)は、ポリウレタンと1つ以上の追加のポリマー(例えば、第2のポリマー)とのコポリマーを含み得る。特定の実施形態では、第2のポリマーは親水性ポリマーである。特定の実施形態では、ポリウレタンは、親水性ポリマー(例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアルケン、ポリアミンおよびポリアルキレンオキシドであるが、これらに限定されない)と共重合され得る。特定の実施形態では、ポリウレタンは、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはポリテトラメチレンオキシドと共重合される。
【0089】
特定の実施形態では、物質移動制限膜は、多成分膜であり得る。例えば、限定するものではないが、物質移動制限膜は、2つ以上のポリマー、例えば、3つ以上、4つ以上、または5つ以上のポリマーの複合体であり得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、少なくとも2つのポリマーの複合体であり得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリウレタンポリマーまたはそのコポリマーと第2のポリマーとの複合体である。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリウレタンポリマーまたはそのコポリマーと第2のポリマーとの均質な混合物であり得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、各層が異なるポリマーを含む多層構成を有し得る。例えば、限定するものではないが、物質移動制限膜は、各層が異なるポリマーを含む少なくとも2つの層から構成され得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、3つの層から構成され得、3つの層のうちの少なくとも2つは、異なるポリマーを含む。
【0090】
特定の実施形態では、第2のポリマーはフルオロポリマーである。特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜において使用するための第2のポリマーは、イオン交換ポリマーである。特定の実施形態では、イオン交換ポリマーは、短側鎖イオン交換ポリマーである。特定の実施形態では、イオン交換ポリマーは、長側鎖イオン交換ポリマーである。特定の実施形態では、イオン交換ポリマーは、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーまたはペルフルオロカルボン酸(PFCA)ポリマーである。特定の実施形態では、イオン交換ポリマーはPFSAポリマーである。特定の実施形態では、イオン交換ポリマーは、約75℃超、約80℃超、約85℃超、約90℃超または約95℃超の軟化点を有する。
【0091】
特定の実施形態では、イオン交換ポリマーは、市販のポリマーであり得る。例えば、限定するものではないが、イオン交換ポリマーは、SolvayからのAQUIVION(登録商標)製品ラインのポリマーおよび/またはSigma AldrichからのNAFION(登録商標)製品ラインのポリマーであり得る。特定の実施形態では、短側鎖イオン交換ポリマーは、AQUIVION(登録商標)製品である。特定の実施形態では、長側鎖イオン交換ポリマーは、NAFION(登録商標)製品である。
【0092】
特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルピリジン系ポリマーである。特定の実施形態では、ポリビニルピリジンは、ポリ(2-ビニルピリジン)またはポリ(4-ビニルピリジン)であり得る。特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルピリジン系ポリマーまたはその誘導体のコポリマーであり得る。例えば、限定するものではないが、第2のポリマーは、ポリビニルピリジン系ポリマーまたはその誘導体とスチレンとのコポリマーであり得る。特定の実施形態では、スチレンは、誘導体化(例えば、スルホン化)され得る。特定の実施形態では、第2のポリマーは、誘導体化されたポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーであり得る。特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルピリジン-コ-ポリスチレンスルホネートである。特定の実施形態では、ポリビニルピリジン-コ-ポリスチレンスルホネートポリマーは、モル含有量当たり約15%~約50%のポリスチレンスルホネートを含む。ポリビニルピリジン系ポリマーの非限定的な例は、米国特許出願公開第2003/0042137号(例えば、式2b)に開示されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。特定の実施形態では、第2のポリマーは、米国特許第8,761,857号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている10Q5ポリマーであり得る。特定の実施形態では、ポリビニルピリジン系ポリマーは、約50~約300kDaの分子量を有する。
【0093】
特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルイミダゾール系ポリマーである。特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルイミダゾール系ポリマーまたはその誘導体のコポリマーであり得る。例えば、限定するものではないが、第2のポリマーは、ポリビニルイミダゾール系ポリマーまたはその誘導体とイソプロピルアクリルアミドとのコポリマーであり得る。特定の実施形態では、ポリビニルイミダゾール系ポリマーは、モル含有量当たり約30%~約70%のポリビニルイミダゾールを含む。特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリビニルイミダゾール-コ-ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)である。特定の実施形態では、ポリビニルイミダゾール系ポリマーは、約50~約300kDaの分子量を有する。
【0094】
特定の実施形態では、膜は、少なくとも約10%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。例えば、限定するものではないが、膜は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約100%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含み、例えば、約1%~約95%、約1%~約90%、約1%~約85%、約1%~約80%、約1%~約75%、約1%~約70%、約1%~約65%、約1%~約60%、約1%~約55%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約5%~約100%、約10%~約100%、約15%~約100%、約20%~約100%、約25%~約100%、約30%~約100%、約35%~約100%、約40%~約100%、約45%~約100%、約50%~約100%、約55%~約100%、約60%~約100%、約65%~約100%、約70%~約100%、約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約20%~約80%、約30%~約70%、または約40%~約60%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約30%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。
【0095】
特定の実施形態では、膜、例えば、多成分膜は、少なくとも約10%の追加のポリマーを含む。例えば、限定するものではないが、膜は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の追加のポリマー、例えば、第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約95%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含み、例えば、約1%~約90%、約1%~約85%、約1%~約80%、約1%~約75%、約1%~約70%、約1%~約65%、約1%~約60%、約1%~約55%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約5%~約95%、約10%~約95%、約15%~約95%、約20%~約95%、約25%~約95%、約30%~約95%、約35%~約95%、約40%~約95%、約45%~約95%、約50%~約95%、約55%~約95%、約60%~約95%、約65%~約95%、約70%~約95%、約75%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約95%~約95%、約20%~約80%、約30%~約70%、または約40%~約60%のポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約30%の追加のポリマー、例えば、第2のポリマーを含む。例えば、限定するものではないが、膜は、約1%~約30%、例えば、約1%~約25%または約1%~約20%のイオン交換ポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約20%の追加のポリマー、例えば、第2のポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約10%の追加のポリマー、例えば、第2のポリマーを含む。特定の実施形態では、膜は、約1%~約10%、例えば、約2%~約9%、約3%~約8%、約4%~約8%または約5%~約8%のポリビニルピリジン系ポリマーもしくはそのコポリマーまたはポリビニルピリジン系コポリマーの誘導体を含む。特定の実施形態では、第2のポリマーは、ポリウレタンを含む層とは別個の層に存在する。
【0096】
特定の他の実施形態において、1つ以上の活性領域を上から覆う膜ポリマーは、分枝架橋剤で架橋され得、これは、物質移動制限膜から得られ得る抽出可能物の量を減少させ得る。分岐状架橋剤の非限定的な例としては、分岐状グリシジルエーテル架橋剤、例えば、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルなどの3つ以上の架橋性基を含む分岐状グリシジルエーテル架橋剤が挙げられる。
【0097】
特定の実施形態では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を、本明細書に開示される物質移動制限膜のいずれかに組み込むことができる。例えば、限定するものではないが、PDMSは、本明細書に開示される多成分物質移動制限膜に組み込むことができる。特定の実施形態では、PDMSは、ポリビニルピリジン系ポリマーもしくはそのコポリマーまたはポリビニルピリジンコポリマーの誘導体、例えば、ポリビニルピリジン、10Q5および/またはポリビニルピリジン-コ-ポリスチレンスルホネートを含む多成分物質移動制限膜に組み込むことができる。
【0098】
特定の実施形態では、2つの活性領域を有する分析物センサ上に配置された物質移動制限膜の組成は、物質移動制限膜が各活性領域を上から覆う場合、同じであっても異なっていてもよい。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、多成分であってもよく、および/または第2の分析物応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、単一成分であってもよい。あるいは、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、単一成分であってもよく、および/または第2の分析物応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、多成分であってもよい。
【0099】
本開示の特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域は、ポリウレタン(またはそのコポリマー)を含む単一成分膜で上から覆うことができ、第2の分析物に応答性の第2の活性領域は、ポリビニルピリジンおよび/またはポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーを含む多成分膜で上から覆うことができる。あるいは、グルタミン酸塩応答性活性領域は、ポリウレタン(またはそのコポリマー)および第2のポリマー(例えば、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系のポリマー)を含む多成分膜で、二層膜もしくは三層膜または均質な混合物のいずれかとして上から覆われ得、そして第2の分析物に応答性の活性領域は、ポリビニルピリジンまたはポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーを含む単一成分膜で上から覆われ得る。
【0100】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分および第2の分析物応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、両方とも単一成分であり得るが、異なるポリマーを含み得る。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩応答性活性領域は、ポリウレタン(またはそのコポリマー)を含む単一成分膜で上から覆うことができ、第2の分析物に応答性の第2の活性領域は、ポリビニルピリジンまたはポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーを含む単一成分膜で上から覆うことができる。
【0101】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分および第2の分析物応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜の部分は、両方とも多成分であり得るが、異なるポリマーを含み得る。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩応答性活性領域は、ポリウレタン(またはそのコポリマー)および第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーを含む多成分膜で上から覆うことができ、第2の分析物に応答性の第2の活性領域は、ポリビニルピリジンおよび/またはポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーを含む多成分膜で上から覆うことができる。
【0102】
特定の実施形態では、異なる分析物を分析するように構成された第1の活性領域および第2の活性領域が別個の作用電極上に配置されるとき、物質移動制限膜は、第1の分析物および第2の分析物に対して異なる透過性値を有することができる。例えば、限定するものではないが、複数の活性領域の少なくとも1つを上から覆う物質移動制限膜は、第1の膜ポリマーおよび第2の膜ポリマーの混合物、第1の膜ポリマー(例えば、第1の膜)および第2の膜ポリマー(例えば、第2の膜)の二層、または第1の膜ポリマー(例えば、第1の膜)、第2の膜ポリマー(例えば、第2の膜)および第3の膜ポリマー(例えば、第3の膜)の三層を含み得る。特定の実施形態では、第3の膜ポリマーは、第1または第2の膜ポリマーと同じである。均質膜は、混合物または二層で上から覆われていない活性領域を上から覆うことができ、均質膜は、第1の膜ポリマーまたは第2の膜ポリマーのうちの1つのみを含む。有利なことに、本明細書に開示される分析物センサの構造は、均質膜部分を有する連続膜が分析物センサの第1の活性領域上に配置されること、および、多成分膜部分が分析物センサの第2の活性領域上に配置されることを容易に可能にし、それによって、各分析物の透過率値を同時に均等化して、改善された感度および検出精度を提供する。連続的な膜堆積は、特定の実施形態では、逐次的な浸漬コーティング操作によって行うことができる。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載される分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域と、少なくとも第1の活性領域を上から覆う第1の分析物に対して透過性の物質移動制限膜とを含むことができる。特定の実施形態では、第1の活性領域は、第1の分析物に応答する少なくとも1つの酵素、例えば、グルタミン酸オキシダーゼを含む、第1の分析物、例えば、グルタミン酸塩に応答する酵素系を含む。例えば、限定するものではないが、本明細書に記載される分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸オキシダーゼを含む酵素系を含むグルタミン酸塩応答性活性領域と、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆うグルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜とを含むことができる。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む。
【0104】
特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、第1の活性領域と同じ分析物または異なる分析物を検出するように構成された第2の活性領域を含み得る。特定の実施形態では、第1の活性領域を上から覆う物質移動制限膜の少なくとも一部は、第2の活性領域を上から覆うことができる。あるいは、またはさらに、第2の物質移動制限膜を使用して、第2の活性領域を上から覆うことができる。特定の実施形態では、第2の活性領域を上から覆う第2の物質移動制限膜の少なくとも一部は、第1の活性領域を上から覆うことができる。特定の実施形態では、第1の活性領域を上から覆う物質移動制限膜は、第2の物質移動制限膜とは異なる組成のものである。
【0105】
特定の実施形態では、物質移動制限膜は、約5μm~約100μm、例えば、約10μm~約90μm、約10μm~約80μm、約10μm~約70μm、約10μm~約60μm、約10μm~約50μm、約10μm~約40μm、約10μm~約30μm、約10μm~約20μm、約10μm~約15μm、約10μm~約100μm、約20μm~約100μm、約30μm~約100μm、約40μm~約100μm、約50μm~約100μm、約60μm~約100μm、約70μm~約100μm、約80μm~約100μm、約90μm~約100μm、約20μm~約60μm、または約30μm~約50μmの厚さ、例えば、全厚さ、例えば、乾燥厚さを有する。
【0106】
物質移動制限膜が単一のポリマー、例えばポリウレタン、例えば1つのポリマーの単一層を含む特定の実施形態では、物質移動制限膜は、約10μm~約30μmの厚さ、例えば全厚さ、例えば乾燥厚さを有することができる。物質移動制限膜が2つ以上のポリマー、例えば、ポリウレタンおよび第2のポリマー(例えば、2つのポリマーを含む単一層または2つのポリマーを含む多層膜)を含む特定の実施形態では、物質移動制限膜は、約30μm~約50μmの厚さ、例えば、全厚さ、例えば、乾燥厚さを有することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される物質移動制限膜のポリウレタン層は、約10μm~約30μmの厚さ、例えば乾燥厚さを有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーおよび/またはポリビニルピリジン系ポリマーを含む層は、約10μm~約40μm、例えば、約15μm~約35μmの厚さ、例えば、乾燥厚さを有することができる。
【0107】
特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、ポリウレタンポリマーの単一層を含むことができる。特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、ポリウレタンポリマーの2つ以上の層、例えば、ポリウレタンポリマーの2つ、3つ、または4つの層を含むことができる。特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、本明細書に記載される第2のポリマー、例えばイオン交換ポリマーの単一層を含むことができる。特定の実施形態では、本開示の物質移動制限膜は、第2のポリマーの2つ以上の層、例えば、第2のポリマー(例えば、イオン交換ポリマー)の2つ、3つ、または4つの層を含むことができる。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリウレタンポリマーの層と第2のポリマーの層とを交互に有することができる。
【0108】
6.製造
本開示は、1つ以上の活性部位を含む本開示の分析物センサを製造するための方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本方法は、例えば、炭素印刷によって、作用電極、例えば、炭素電極を生成することを含む。
【0109】
特定の実施形態では、本方法は、1つ以上の酵素を含む組成物を作用電極の表面上に追加し、例えば、本明細書に説明されるようなパターンで、作用電極上に活性部位を生成することをさらに含むことができる。例えば、限定するものではないが、組成物はグルタミン酸オキシダーゼを含み得る。特定の実施形態では、組成物は、架橋剤、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、緩衝液、例えば、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸)、および/または安定剤、例えば、血清アルブミンをさらに含み得る。特定の実施形態では、組成物は、レドックスメディエータ、例えばレドックスポリマーをさらに含み得る。特定の実施形態では、本方法は、酵素組成物を硬化すること、例えば、熱硬化することをさらに含み得る。
【0110】
特定の実施形態では、本方法は、硬化酵素組成物の上に、例えば、浸漬コーティングによって、1つ以上の膜組成物を追加することをさらに含むことができる。特定の実施形態では、膜組成物は、単一のポリマー、例えば、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含み得る。特定の実施形態では、膜組成物は、2つ以上のポリマーを含み得る。例えば、限定するものではないが、膜組成物は、第1のポリマー、例えばポリウレタンまたはそのコポリマーと、第2のポリマー、例えばイオン交換ポリマーとを、例えば混合物または多層膜として含み得る。
【0111】
特定の実施形態では、本方法は、硬化酵素組成物の上に例えば、浸漬コーティングによって、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む第1の層を追加することを含むことができる。特定の実施形態では、本方法は、ポリウレタンまたはそのコポリマーを含む第1の層の上に、例えば、浸漬コーティングによって、第2のポリマーを含む層を追加することを含むことができる。特定の実施形態では、本方法は、第2のポリマー層の上に、例えば、浸漬コーティングによってポリウレタンまたはそのコポリマーを含む第2の層を追加して、三層膜組成物を生成することを含むことができる。
【0112】
特定の実施形態では、本方法は、膜組成物を硬化させることを含むことができる。
III.使用方法
本開示は、本明細書に開示される分析物センサを使用する方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象におけるグルタミン酸塩を検出するための方法を提供する。特定の実施形態では、グルタミン酸塩モニタリングを必要とする対象は、グルタミン酸塩調節異常に関連する1つ以上の障害および/または症状を発症するリスクがあるか、または発症した対象であり得る。例えば、限定するものではないが、グルタミン酸塩モニタリングを必要とする対象は、本明細書に記載のグルタミン酸塩レベルの上昇に関連する1つ以上の障害および/または症状を発症するリスクがあるかまたは発症した対象であり得る。特定の実施形態では、グルタミン酸塩モニタリングを必要とする対象は、本明細書に記載のグルタミン酸塩欠乏に関連する1つ以上の障害および/または症状を発症するリスクがあるか、または発症した対象であり得る。
【0113】
特定の実施形態では、本開示のグルタミン酸塩センサは、神経学的障害または傷害、例えば、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症またはルー・ゲーリック病(ALS)および外傷性脳損傷を有するリスクがあるかまたは有する対象におけるグルタミン酸塩レベルを連続的にモニターするために使用することができる。グルタミン酸塩調節異常に関連する疾患および障害のさらなる例は、Liら、Frontiers in Psychiatry 9:767(2019);Guerrieroら、Curr.Neurol.Neurosci.Rep.、15巻:27頁(2015年);およびMiladinovicら、Biomolecules、5巻(4号):3112~3141頁(2015年)に開示され、それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0114】
特定の実施形態では、グルタミン酸塩を検出するための方法は(例えば、それを必要とする対象において)、(i)(a)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、(b)第1の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩に応答するグルタミン酸塩応答活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼと、任意選択で、第1のポリマーおよび/または電子移動剤、例えば、レドックスポリマーとを含むグルタミン酸塩応答活性領域と、(c)グルタミン酸塩応答活性領域を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜と、を含む分析物センサを提供するステップと、(ii)第1の作用電極に電位を印加するステップと、(iii)グルタミン酸塩応答活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルを得るステップであって、第1のシグナルが、グルタミン酸塩応答活性領域に接触する流体中のグルタミン酸塩の濃度に比例する、ステップと、(iv)第1のシグナルを流体中のグルタミン酸塩の濃度に相関させるステップとを含む。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリマー、例えば、ポリウレタン、またはそのコポリマーを含むことができる。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリマー、例えば、ポリウレタン、またはそのコポリマーと、第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーとを含むことができる。
【0115】
特定の実施形態では、本開示の方法は、(i)分析物センサを流体(例えば、グルタミン酸塩を含む体液)に曝露するステップであって、分析物センサが、(a)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、(b)第1の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩に応答するグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼと、任意選択で、第1のポリマーおよび/または電子移動剤、例えばレドックスポリマーとを含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と、(c)グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜とを含むステップと、(ii)第1の作用電極に電位を印加するステップと、(iii)グルタミン酸塩応答性活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルを得るステップであって、第1のシグナルが流体中のグルタミン酸塩の濃度に比例する、ステップと、(iv)第1のシグナルを流体中のグルタミン酸塩の濃度に相関させるステップと、を含み得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリマー、例えば、ポリウレタン、またはそのコポリマーを含み得る。特定の実施形態では、物質移動制限膜は、ポリマー、例えば、ポリウレタン、またはそのコポリマーと、第2のポリマー、例えば、イオン交換ポリマーとを含むことができる。
【0116】
特定の実施形態では、本開示は、グルタミン酸塩および第2の分析物を検出するための方法をさらに提供する。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、第2の活性領域を含む分析物センサを提供すること、および/または第2の活性領域を含む分析物センサを流体(例えば、グルタミン酸塩および第2の分析物を含む体液)に曝露することによって、第2の分析物を検出することをさらに含み得る。特定の実施形態では、グルタミン酸塩および第2の分析物を検出するための方法で使用される分析物センサは、第2の作用電極と、第2の作用電極の表面上に配置され、第1の分析物とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域であって、第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素と、任意選択で、第2のポリマーおよび/または電子移動剤とを含む第2の活性領域とをさらに含むことができ、物質移動制限膜の一部、例えば、第2の部分は、第2の活性領域を上から覆う。あるいは、第2の活性部位は、グルタミン酸塩応答性活性領域を上から覆う物質移動制限膜とは別個のおよび/または異なる第2の物質移動制限膜によって被覆され得る。
【0117】
特定の実施形態では、本開示のグルタミン酸塩センサは、最大約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間または約20日間使用することができる。特定の実施形態では、本開示のグルタミン酸塩センサは、最大約15日間使用することができる。
【0118】
本開示は、以下の実施形態によってさらに例示される。
[1](i)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、(ii)第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と、(iii)グルタミン酸塩応答性活性領域の少なくとも一部を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜とを含む、分析物センサ。
【0119】
[2]グルタミン酸塩応答性活性領域がポリマーをさらに含み、グルタミン酸オキシダーゼおよび/または電子移動剤がポリマーと架橋されている、[1]の分析物センサ。
[3]グルタミン酸塩応答性活性が、安定剤をさらに含む、[1]または[2]の分析物センサ。
【0120】
[4]安定剤がアルブミンを含む、[3]の分析物センサ。
[5]物質移動制限膜がポリウレタンまたはそのコポリマーを含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の分析物センサ。
【0121】
[6]物質移動制限膜が、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む、[5]の分析物センサ。
[7](iv)第2の作用電極と、(v)第2の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域であって、第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む、第2の活性領域と、を含む[1]~[6]のいずれか1つの分析物センサであって、物質移動制限膜の第2の部分が、第2の活性領域を上から覆う、分析物センサ。
【0122】
[8]グルタミン酸塩を検出するための方法であって、(i)(a)少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、(b)第1の作用電極の表面上に配置されたグルタミン酸塩応答性活性領域であって、グルタミン酸オキシダーゼおよび電子移動剤を含む、グルタミン酸塩応答性活性領域と、(c)グルタミン酸塩応答性活性領域の少なくとも一部を上から覆う、グルタミン酸塩に対して透過性の物質移動制限膜と、を含む分析物センサを提供するステップと、(ii)第1の作用電極に電位を印加するステップと、(iii)グルタミン酸塩応答性活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルを得るステップであって、第1のシグナルが、グルタミン酸塩応答性活性領域に接触する流体中のグルタミン酸塩の濃度に比例する、ステップと、(iv)第1のシグナルを流体中のグルタミン酸塩の濃度に相関させるステップと、を含む方法。
【0123】
[9]グルタミン酸塩応答性活性領域がポリマーをさらに含む、[8]に記載の方法。
[10]グルタミン酸オキシダーゼおよび/または電子移動剤が、グルタミン酸塩応答性活性領域においてポリマーに共有結合している、[9]に記載の方法。
【0124】
[11]グルタミン酸塩応答性活性物質が安定剤をさらに含む、[8]~[10]のいずれか1つの方法。
[12]安定剤がアルブミンである、[11]に記載の方法。
【0125】
[13]物質移動制限膜がポリウレタンまたはそのコポリマーを含む、[8]~[12]のいずれか1つの方法。
[14]物質移動制限膜が、イオン交換ポリマーまたはポリビニルピリジン系ポリマーをさらに含む、[13]に記載の方法。
【0126】
[15][8]~[14]のいずれか1つの方法であって、分析物センサが、(d)第2の作用電極と、(e)第2の作用電極の表面上に配置され、グルタミン酸塩とは異なる第2の分析物に応答する第2の活性領域であって、第2の分析物に応答する少なくとも1つの酵素を含む、第2の活性領域と、をさらに含み、物質移動制限膜の第2の部分が、第2の活性領域を上から覆う、方法。
【0127】
[16]流体が間質液である、[8]~[15]のいずれか1つの方法。
[17]分析物センサが、神経学的症状を有するリスクがあるか、または神経学的症状を有する対象に埋め込まれる、[8]~[16]のいずれか1つの方法。
【0128】
[18]神経学的症状が脳損傷である、[17]に記載の方法。
[19]脳損傷が外傷性脳損傷である、[18]記載の方法。
[20]外傷性脳損傷が脳卒中および/または脳内出血である、[19]に記載の方法。
【0129】
[21]分析物センサが、対象に約15日間埋め込まれる、[8]~[20]のいずれか1つの方法。
[22]分析物センサが、その使用中に少なくとも約90%の感度を保持する、[8]~[21]のいずれか1つの方法。
【0130】
[23]神経学的症状を有するリスクがあるかまたは有する対象をモニタリングする際に使用するための、[1]~[7]のいずれか1項に記載の分析物センサ。
実施例
本開示の主題は、限定としてではなく、本開示の主題の例示として提供される以下の実施例を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【0131】
実施例1:グルタミン酸塩センサ
本実施例は、グルタミン酸塩を検出するためのセンサを提供する。
図6に示されるように、センサは、試料中のL-グルタミン酸塩を検出するために、グルタミン酸オキシダーゼおよびレドックスメディエータを含む。センサのグルタミン酸塩応答性活性領域のための化学組成物は、グルタミン酸オキシダーゼ、安定剤および架橋剤を含む。
【0132】
グルタミン酸塩センサは、表1に提供される成分を含む組成物を作用電極上に堆積させ、熱硬化させることによって生成した。続いて、生理学的pH(7.4)および33℃で、100mMリン酸緩衝食塩水(PBS)の存在下で様々なグルタミン酸塩濃度を連続的に追加することによって、グルタミン酸塩センサを試験した。グルタミン酸塩センサのクロノアンペロメトリー応答を提供する
図7は、ある濃度のグルタミン酸塩が、グルタミン酸塩センサを被覆する支持電解質溶液に導入されたとき、酵素プロセスの結果として生成された電子が、安定した電流が達成されるまで数分間にわたって電流増加をもたらしたことを示す。グルタミン酸塩センサに対して記録された電流は、グルタミン酸塩濃度に依存し、グルタミン酸オキシダーゼおよびレドックスメディエータを含むグルタミン酸塩応答性領域が、試料中のグルタミン酸塩レベルを検出するのによく適していることを示した。
【0133】
【0134】
センサの安定性を評価するために、同じ試験条件下で異なる時点でグルタミン酸塩センサを再較正した。
図8は、2つの異なる時点で得られた電流応答対グルタミン酸塩濃度プロットを示す。
図8に示されるように、グルタミン酸塩センサは、物質移動制限膜の存在なしで5日間の安定性を示し、試験された期間にわたって10%未満の感度低下が観察された。
【0135】
実施例2:物質移動制限膜
物質移動制限膜の追加は、グルタミン酸塩感受性層への分析物拡散速度を制御することによって、標的分子に対するセンサの線形濃度範囲を改善することができる。この物質移動膜はまた、機械的および化学的ストレッサーに対するグルタミン酸塩応答性領域のための保護剤として機能し得る。物質移動制限膜の組成は、異なる分析物感度標的に合わせて調整することができる。
【0136】
この実施例では、物質移動制限膜としてポリウレタン系膜を試験した。ポリウレタン系膜は、他の膜ポリマーに対してグルタミン酸塩センサにいくつかの利点を提供することができる。例えば、ポリウレタン膜は、ポリビニルピリジンおよび10Q5のような正または負に荷電した官能基を有さない。この電荷的中性は、グルタミン酸塩(1つの正に荷電した基および2つの負に荷電した基を有する分子)がグルタミン酸塩感受性層に容易に拡散して、濃度依存性電流シグナルを生成することを可能にする。さらに、ポリウレタン膜は、ヒドロゲルを形成するために架橋剤を必要とせず、ヒドロゲルの密度は、PU溶液およびその溶媒系の濃度によって主に規定される。これらの特性により、ポリウレタン膜は、ポリビニルピリジン系膜と比較して、グルタミン酸塩検出のためのより広い作動範囲を提供することができる。
【0137】
ポリウレタン(PU)ポリマー(例えば、HydroMed(商標)D1またはD7ポリマー)を含む膜、またはPUおよびイオン交換ポリマーを含む複合膜を、実施例1に記載のグルタミン酸塩感知層を浸漬コーティングによってポリマーでコーティングすることによって試験した。それぞれAQUIVION(登録商標)(Solvay)およびNAFION(登録商標)(Sigma Aldrich)などの短側鎖および長側鎖イオン交換ポリマーを複合膜に使用した。ポリマー濃度は、HydroMed(商標)D1が7.5%(w/v%)、NAFION(登録商標)が20%(w/v%)、AQUIVION(登録商標)が25%(w/v%)であった。単一層HydroMed(商標)D1膜は、約11μmの乾燥厚さを有していた。3層構成を有するHydroMed(商標)D1/AQUIVION(登録商標)複合膜は、浸漬コーティングによって生成され、第1のHydroMed(商標)D1層は、約11μmの乾燥厚さを有し、AQUIVION(登録商標)層は、約22.5μmの乾燥厚さを有し、第2のHydroMed(商標)D1層は、約11μmの乾燥厚さを有した。3層構成を有するHydroMed(商標)D1/NAFION(登録商標)複合膜は浸漬コーティングによって生成され、第1のHydroMed(商標)D1層は約11μmの乾燥厚さを有し、NAFION(登録商標)層は約18μmの乾燥厚さを有し、第2のHydroMed(商標)D1層は約11μmの乾燥厚さを有していた。
【0138】
図9および
図10は、グルタミン酸塩感知層上にコーティングされた異なる膜複合体の電流応答曲線を示す。コーティングされたグルタミン酸塩センサを、100mM PBS中の同じグルタミン酸塩濃度範囲で、33℃で試験した。
図9および10に示されるように、最も高い分析物感度は、PU膜(HydroMed(商標)、AdvanSource Biomaterials社)で得られた。加えて、センサの感度は、ポリウレタンおよびAQUIVION(登録商標)またはNAFION(登録商標)を含む複合膜を作製することによって調整された(
図9および10)。
図11に示されるように、約11μmの乾燥厚さを有するHydroMed(商標)D1膜でコーティングされたセンサは、膜を有さないセンサと比較してより良好な安定性を示した。
図11は、同じグルタミン酸塩濃度範囲内で1日目、6日目および12日目に得られた較正プロットを示す。センサは、12日間にわたってその感度をほぼ保持し、感度の損失は<10%であった。
【0139】
異なるPUポリマーの比較も行った。
図12に示すように、PUポリマーHydroMed(商標)D7をPUポリマーHydroMed(商標)D1と比較した。
図12に示されるように、HydroMed(商標)D7でコーティングされたセンサは、HydroMed(商標)D1でコーティングされたセンサと比較して、グルタミン酸塩感受性の低下を示した。HydroMed(商標)D7は、HydroMed(商標)D1と比較して低い水吸収能力を示し(それぞれ30%対70%の水吸収能力)、特定の理論に限定するものではないが、吸収能力のこの変化は、HydroMed(商標)D1でコーティングされたセンサと比較してグルタミン酸塩感度が低下する理由であり得る。しかしながら、10日間の安定性データは、HydroMed(商標)D7膜を有するセンサが、HydroMed(商標)D1でコーティングされたもの(25%の減少)よりも安定である(<6%の減少)ことを示唆した。
【0140】
追加のPU複合膜を試験した。上述のように、10Q5およびPVPポリマーは、得られるセンサが生理学的に関連するグルタミン酸塩濃度を検出するのに十分な感度を有さないため、単一成分の物質移動制限膜として使用することができない。しかしながら、PUおよびポリビニルピリジン系ポリマー、例えば、ポリビニルピリジン(PVP)または10Q5を含む複合膜が、グルタミン酸塩センサをコーティングするために使用され得るかどうかを試験した。そのようなグルタミン酸塩センサは、基板上に実施例1のグルタミン酸塩感知化学物質(sensing chemistry)を堆積させることによって生成された。次いで、センサを75mg/mlのHydroMed(商標)D1溶液、続いて65mg/mlのPVPまたは80mg/mlの10Q5溶液でコーティングした。PVPおよび10Q5膜溶液の両方は、10%のPEGDGE架橋剤を5%v/vで含有した。
図13および14に示されるように、10Q5およびPVPの両方を使用して、HydroMed(商標)D1内膜の存在下で機能的センサを得ることができる。PU-10Q5およびPU-PVP複合膜はグルタミン酸塩感受性を低下させたが(
図13および14)、それらは14日間の連続運転にわたってセンサ安定性を改善した。センサの14日間の感度の変化は、HydroMed(商標)D1、HydroMed(商標)D1-PVPおよびHydroMed(商標)D1-10Q5膜組成物について、それぞれ<20%、<4%および<2%であった。
【0141】
この実施例のデータは、PU系の膜がグルタミン酸塩センサの感度および安定性を改善し得ることを示す。
本開示の主題およびその利点を詳細に説明してきたが、開示された主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換および改変を行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、および物質の組成、方法およびプロセスの特定の実施形態に限定されることを意図していない。
【0142】
当業者が本開示の主題の開示された主題から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、既存のまたは後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、方法、またはステップは、本開示の主題に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、方法、またはステップをそれらの範囲内に含むことが意図される。
【0143】
様々な特許、特許出願、刊行物、製品説明、プロトコル、および配列アクセッション番号が本出願全体にわたって引用されており、それらの発明は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】