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特表2024-540523麦汁を製造するための装置及び方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】麦汁を製造するための装置及び方法。
(51)【国際特許分類】
   C12C 1/16 20060101AFI20241024BHJP
   C12C 7/01 20060101ALI20241024BHJP
   C12C 7/00 20060101ALI20241024BHJP
   B02C 13/06 20060101ALI20241024BHJP
   B02C 13/13 20060101ALI20241024BHJP
   B02C 13/28 20060101ALI20241024BHJP
   B02C 18/16 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12C1/16
C12C7/01
C12C7/00 A
B02C13/06
B02C13/13
B02C13/28
B02C18/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529517
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022082531
(87)【国際公開番号】W WO2023089154
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】BE2021/5902
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524185249
【氏名又は名称】ミウラ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルーベ、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ハームニース、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ティロット、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】デ ブラケレイール、クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4B128
4D065
【Fターム(参考)】
4B128CP09
4B128CP22
4D065AA04
4D065BB04
4D065BB12
4D065CA06
4D065CB03
4D065CC01
4D065DD11
4D065EB07
4D065ED23
(57)【要約】
本発明は、特に緑麦芽を粉砕するための、水用インジェクタ(8,9)を備えた衝撃式粉砕機(1)に関する。衝撃要素は、ハンマー(6)及び/又はナイフ(7)とすることができる。本発明はまた、粉砕及びマッシングを同時に行う、緑麦芽又は任意の他の発芽穀物から麦汁を製造する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃式粉砕機(1)であって、
粉砕室を取り囲むケーシングと、
少なくとも1つのロータ(4)と、
前記ロータ(4)によって回転駆動される衝撃要素(6、7)と、を備え、
前記ケーシングは原材料のための入口(2)と、粉砕された材料のための出口(3)とを有し、
前記ケーシングは水用のインジェクタ(8、9)を備える、
粉砕機。
【請求項2】
前記粉砕室(1)が篩い(10)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
インジェクタ(8)が、前記粉砕室内に直接水を供給するように配置されることを特徴とする、請求項2に記載の粉砕機。
【請求項4】
インジェクタ(9)が、前記篩い(10)の裏側に水を供給するように配置されることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の粉砕機。
【請求項5】
前記衝撃要素がハンマー(6)及び/又はナイフ(7)であることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の粉砕機。
【請求項6】
前記衝撃要素が、前記ロータ(4)によって回転駆動される軸(23)に枢動可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の粉砕機。
【請求項7】
4~8軸、好ましくは4軸を有することを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の粉砕機。
【請求項8】
同じ軸(23)上にある前記衝撃要素が、交互に配置されたナイフ(7)及びハンマー(6)であることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の粉砕機。
【請求項9】
前記衝撃要素の大部分がナイフ(7)であることを特徴とする、請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の粉砕機。
【請求項10】
前記篩い(10)が、1.0mm~4.0mm、好ましくは2mm~3mmのサイズの孔を有することを特徴とする、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の粉砕機。
【請求項11】
緑麦芽を粉砕するための、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の粉砕機の使用。
【請求項12】
麦汁の製造方法であって、
緑麦芽又は15%より大きい水分含量を有する他の発芽穀物が、衝撃式粉砕機に供給され、粉砕及びマッシング処理を同時に受けることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の粉砕機を使用することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マッシング水がインジェクタ(8、9)によって導入されることを特徴とする、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
導入されるマッシング水の総量が、0.5~3.0リットル/kg、好ましくは1~2.0リットル/kgの比率(水/緑麦芽)を得るのに十分であることを特徴とする、請求項12から請求項14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マッシング水の一部が、粉砕室内に直接水を供給するように配置されたインジェクタ(8)によって導入され、前記マッシング水の他の一部が、篩い(10)の裏側に配置されたインジェクタ(9)によって導入されることを特徴とする、請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記粉砕/マッシング処理の持続時間が、最大45分、好ましくは10~30分であることを特徴とする、請求項12から請求項16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マッシング水が、20~95℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは45~60℃の温度で導入されることを特徴とする、請求項14から請求項17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記粉砕/マッシング処理が、80~120m/秒、好ましくは100m/秒のオーダの周速度で実施されることを特徴とする、請求項12から請求項18までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦汁の製造方法に関し、特に、緑麦芽又は任意の他の発芽穀物から麦汁を製造する方法に関する。本発明はまた、特に、緑麦芽又は任意の発芽穀物を粉砕するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麦汁の製造は、いくつかの産業、特に醸造、蒸留、又は穀物から製造される抽出物、飲料又は食品の製造に関連するその他の産業において必要な工程である。
【0003】
(イントロダクション)
麦汁の製造方法には、通常、以下の工程が含まれる。
デンプンを含有する原材料が予め粉砕され、及び/又は水と混合される。「マッシュ」と呼ばれる懸濁液が得られるのは、粉砕及びマッシング工程によるものである。次に、マッシュを様々な温度レベルにすることで、酵素がデンプンを糖に変換するのを可能にする。これが醸造工程である。醸造工程の最後に、マッシュが濾過され、麦汁から不溶性物質(使用済み穀粒)が分離される。これは、通常、ラウタータンやフィルタプレスを使用して行われる。本出願人によって製造されたメンブレン薄膜フィルタプレス又は同等の技術を使用するには、原材料を微粉砕する必要がある。この場合、粉砕工程は、125μm~1mmを中心とする粒径分布を得ることを目的とし、好ましくは、粒子の少なくとも60%がこの粒径範囲にある。次に、麦汁は、製造される最終製品に応じた処理を受ける。醸造工程では、濾過された麦汁は煮沸工程に供される。この段階で、麦汁にホップが添加され、次いで冷却前に清澄化されて発酵に移される。この方法は、バッチ式、連続式又は半連続式で実施され得る。
【0004】
麦汁の製造に使用される原材料は様々であり、穀物又は擬似穀物、未発芽又は発芽させたものを含む。ビールを製造する場合、レシピには通常「麦芽」が含まれる。「麦芽」は、浸漬、発芽、焙燥及び発芽止めの工程を経た穀物(通常は大麦)である。「麦芽」という用語は、本明細書では「発芽穀物」を表す広い意味で使用されている。したがって、「麦芽」という用語は、大麦に関するものであるが、小麦、ライ麦、オート麦、ソルガムなどの他の穀物も含む。浸漬は発芽のための準備段階であり、穀粒に水分を与えて水分含量を約45%まで増加させる。その後、発芽が始まる。この段階は3~5日間続き、その間に麦芽酵素が生成される。発芽が終了すると、この段階で「緑麦芽」と呼ばれる麦芽の酵素力は最大となる。緑麦芽は水分含量が高いため微生物学的に不安定であり、貯蔵及び輸送が不可能になる。焙燥は、水分含量が約40~50%の「緑麦芽」を水分含量が約4%の麦芽に変換する乾燥工程である。焙燥中、多くの酵素活性が停止されるため、麦芽の酵素力は低下する。
【0005】
「緑麦芽」又は他の発芽穀類から、焙燥を限定的に行うか又は焙燥をまったく行わずに麦汁を生産することに関心が集まっている。
【0006】
緑麦芽を使用する利点は、一方では、焙燥工程を完全に又は部分的に省くことによって製造プロセスのエネルギー消費量を削減し、他方では、原材料の酵素力を最大限に利用して、麦汁製造プロセスを最適化することである(醸造工程中にデンプンを糖に変換する時間を短縮する)。
【0007】
しかしながら、この原材料を使用するにはいくつかの問題がある。
- 緑麦芽は、微生物学的に安定ではなく、数日以上貯蔵することができない。このため、緑麦芽は、発芽後すぐに工程に投入する必要がある。
- 緑麦芽は、水分含量が高く、発芽時から根芽が存在するため、醸造の上流工程、特に粉砕工程が非常に複雑になる。実際に、水分含量が40~50%の穀物では根芽及び外皮は脆くなり、ある種の弾力さえ有するため、通常の技術によって粉砕することは難しい。
【0008】
緑麦芽の使用については、20世紀の初頭から既に記述がある。英国特許第190914266号には、麦芽エキスを調整するための方法が記載されている。緑麦芽の粉砕は、石臼を用いて行われている。
【0009】
仏国特許発明第356024号には、緑麦芽を粉砕するための基本的な粉砕機が記載されている。この粉砕機は、ロータに取り付けられ、多孔プレートに対して配置された回転式カッターを使用している。ナイフは、多孔プレートを掻き取る。これは衝撃式粉砕機ではない。
【0010】
しかしながら、これらの非常に古い技術では、これらの方法によってビールを工業的に製造することができなかった。
【0011】
国際公開第03/048294号文献には、醸造産業用の緑麦芽を安定化する方法が記載されており、焙燥のエネルギー消費を抑制しながら、緑麦芽の保存を可能にする。粉砕工程は、ディスクミルを用いて行われる。
【0012】
国際公開第2021/099867号文献には、醸造工程における緑麦芽の使用を最適化する方法及び装置が記載されている。この装置には、粉砕前に穀粒を切断する第1段階と、その後、断片化した緑麦芽を2つの石の間で粉砕する第2段階とが含まれる。2段階の連続プロセスは複雑であり、麦汁の製造コストを増加させる追加の装置を必要とする。
【0013】
仏国特許発明第3042721号文献には、家畜飼料用の穀物粉砕機が記載されている。この粉砕機は、軸上で回転可能に取り付けられた矩形形状の打撃要素Cxを備えている。この粉砕機は、緑麦芽の粉砕には適していない。この粉砕機は、乾式プロセスで動作する。
【0014】
本出願人名義の欧州特許第0845528号には、微粉砕物を得るための粉砕方法が記載されている。この方法は、水中でディスクミルを使用する。しかしながら、緑麦芽の場合、このタイプの粉砕は容量及び効率の問題を有する。緑麦芽の水分含量の高い外皮は「弾力がある」ため、麦芽又は他の発芽した材料よりも粉砕が困難であることが実証されている。この容量制限のため、産業用醸造所では使用できず、投資コスト及び運転コストが非常に高くなる。ディスクミルは摩擦の原理に基づいて動作するため、特に薄膜フィルタプレスの最適な運転のための前提条件を満たす場合、粒径を十分に小さくすることは困難である。
【発明の概要】
【0015】
本発明の1つの目的は、水分含量が15%より大きい、好ましくは20%より大きい、緑麦芽又は任意の発芽穀物から麦汁を製造することである。これにより、エネルギー消費量の多い焙燥工程を省略し、緑麦芽の高い酵素力を活用する。
【0016】
特に、本発明の目的は、緑麦芽を粉砕する際に遭遇する問題を改善することである。
【0017】
また、本発明の目的は、緑麦芽を粉砕するのに適した粉砕機を提供することである。
【0018】
また、本発明の目的は、緑麦芽から得られる麦汁の発酵から生成されるビールを製造することである。
【0019】
本出願人は、3~15%の水分含量を有する未発芽又は発芽した穀物から微粉砕物を製造するために、ハンマーミル型の衝撃式粉砕機を商品化している。
【0020】
このタイプの粉砕機は、材料の入口及び出口を備える粉砕室と、好ましくは水平軸を有する1つ以上のロータとからなり、ロータの上にはハンマーを支持するディスクが取り付けられている。ロータは、ハンマーに高い周速度を与える回転速度で動作し、周速度は好ましくは100m/秒のオーダである。粉砕室の下部には、ふるい(篩い)、すなわち、多孔プレートが設けられている。篩いの孔のサイズは、目標粒径と原材料の粉砕性に応じて選択される。麦芽の粉砕には、粉砕機の大きさに応じて、直径1.5mm~4mmの孔を有する篩いを使用することができる。
【0021】
粉砕室は、強制換気ユニットに接続されている。
【0022】
このタイプの粉砕機は、緑麦芽用として使用されたことがない。粉砕される穀粒の最大水分含量は15%である。この水分含量レベルを超えると、スクリーンの目詰まりの問題が発生する。
【0023】
したがって、本発明は、特に緑麦芽を粉砕するための衝撃式粉砕機であって、
- 粉砕室を取り囲むケーシングと、
- 少なくとも1つのロータと、
- 前記ロータによって回転駆動される衝撃要素と、を備え、
前記ケーシングは、原材料のための入口と、粉砕された材料のための出口とを有し、前記ケーシングは、水用のインジェクタを備えている。
【0024】
特に、粉砕室は、篩いを有している。
【0025】
ロータが水平位置にある場合、篩いは、有利には粉砕室の下部に配置され得る。
【0026】
特に、少なくとも1つのインジェクタは、水が(篩いを通過せずに)粉砕室に直接供給されるように配置される。水平軸型粉砕機の場合、このインジェクタは、粉砕室の上部に配置される。粉砕機が水平軸を有する場合、他のインジェクタは、篩いの裏側、すなわち粉砕室の下部に水を供給するように配置される。
【0027】
衝撃要素の一部はハンマーであってもよく、他の衝撃要素はナイフの形状に削られていてもよい。
【0028】
有利には、衝撃要素はロータによって回転される軸に枢動式に取り付けられている。粉砕機は、複数の軸、好ましくは4~8軸を保持することができ、さらに好ましくは4軸を保持することができる。
【0029】
同じ軸上に、ハンマー及びナイフを配置することができる。例えば、最初及び最後の衝撃要素はナイフであり、他の衝撃要素はハンマーである。任意の他の配置も可能である。例えば、ナイフとハンマーを交互に配置してもよく、大半をナイフにしてもよい。
【0030】
ナイフを担持する軸は、支持部品を使用してロータによって駆動され、この支持部品はディスクであってもよいが、任意の他の形状が考慮され得る。
【0031】
各衝撃要素の間にスペーサ要素を配置することもできる。
【0032】
有利には、篩いは1.0mm~4.0mm、好ましくは2mm~3mmの孔を有する。
【0033】
本発明はまた、特に、水分含量が15%より大きい、好ましくは20%より大きい、さらには40~50%である、緑麦芽又は任意の他の発芽穀物の粉砕のための上記粉砕機の使用に関する。
【0034】
本発明はまた、緑麦芽又は任意の他の発芽穀物が、衝撃式粉砕機に供給され、粉砕及びマッシング処理を同時に受けることを特徴とする、麦汁の製造方法に関する。
【0035】
有利には、本発明による方法は、上述の粉砕機を使用する。
【0036】
特に、マッシング水は、インジェクタを通して導入される。導入されるマッシング水の総量は、(水/緑麦芽)比率で、0.5~3.0リットル/kg、好ましくは1~2. 0リットル/kgとなる。
【0037】
好ましくはマッシング水の一部は、粉砕機の上部に配置されたインジェクタを通して導入され、マッシング水の他の一部は、粉砕機の下部に配置されたインジェクタを通して導入される。
【0038】
有利には、粉砕/マッシング工程の持続時間は、最大45分、好ましくは10~30分である。
【0039】
マッシング水は、20~95℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは45~60℃の温度で導入され得る。
【0040】
本発明の方法によって得られるマッシング後のマッシュのpHは、一般に5.2~5.6である。
【0041】
特に、粉砕/マッシング工程は、50~150m/秒、好ましくは80~120m/秒、より好ましくは約100m/秒の周速度で行われる。
【0042】
本発明による方法の粉砕/マッシング工程は、有利にはメンブレンフィルタプレスでの麦汁の濾過に適した微粉砕物の製造を可能にする。
【0043】
本発明はまた、上記の方法及び/又は上記の粉砕機を用いて得られる麦汁から製造されるビールに関する。
【0044】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、図面を参照して、本発明の特定の実施形態の詳細な説明において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、粉砕機及びその付属装置の全体図である。
図2図2は、粉砕機内部の断面図である。
図3図3は、粉砕機内部の断面図である。
図4図4は、粉砕機の一部の詳細斜視図である。
図5a図5aは、ナイフの2つの実施形態の詳細図である。
図5b図5bは、ナイフの2つの実施形態の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の特定の実施形態(装置)の詳細な説明
【0047】
図1は、本発明による粉砕機のすべての要素を示している。
供給ホッパー11は、粉砕機1で粉砕される材料を供給するために使用される。モータ12はロータ4を駆動する。粉砕された材料は、配管14を通ってバッファタンク13に流れ、次いで配管15を通って醸造容器に供給される。また、粉砕機が醸造タンクの上方に配置される構成も考えられる。この場合、粉砕された材料は、直接タンクに流れ込む。
【0048】
図2図4(実現例2)では、粉砕機1は、緑麦芽粒のための入口2と粉砕された材料のための出口3とを備える粉砕室と、水平軸を有するロータ4とからなり、ロータ4の上にはディスク5が取り付けられていることが分かる。ディスクの枚数は、粉砕機の容量、つまり粉砕室の大きさに依存する。ディスクの周縁部には、横軸23を通すための孔が開けられている。衝撃要素は、ディスク5を貫通する横軸23に振り子式に吊り下げられている。
【0049】
衝撃要素は、ハンマー6及び/又はナイフ7とすることができる。それらの形状及び材料は様々であり得る。図示される実施形態では、矩形状のハンマー6とステンレス鋼製の面取りされたナイフ7とが使用されている。
【0050】
分かり易くするために、衝撃要素は、それらが回転するように図示されている。
【0051】
実際には、回転しているときに、衝撃要素はこの位置に固定されたままではなく、軸上で回転することができる。
【0052】
図4では、4つの軸23、したがって4列の衝撃要素を有する実施形態を見ることができる。各列の最初と最後のアイテムはナイフ7である。各ディスク間には、矩形状のハンマー6が配置されている。
【0053】
図5に示すように、ナイフ7は矩形形状であり、周辺部の2つの角部が切断され、鋭利にされている。したがって、ナイフ7は6つの辺、すなわち、ロータ4側に向けられた矩形状の基部20と、2つの斜めの側面21を有する遠位端と、平坦な頂部22とを有している。
【0054】
斜めの側面21は、それらの厚さを低減するように鋭利にされている。側面21は、平滑であってもよく(図5a)、又は歯付き(図5b)であってもよい。
【0055】
ロータ4は、ハンマーに高い周速度、好ましくは80~120m/秒、より好ましくは100m/秒のオーダの周速度を与える、標準的な回転速度で動作する。ロータは、衝撃要素の側面に対称的な摩耗を生じさせるように、時計方向と反時計方向とで交互に動作する。粉砕室の下部は、篩い10、すなわち湾曲した多孔プレートを備えている。粉砕室の篩いの外側に面する側を裏側と呼び、ロータに面する側を表側と呼ぶ。発芽穀物に適用する場合、篩いの孔のサイズは、1mm~4mmとすることができる。
【0056】
粉砕室は、異なる位置に配置された水用インジェクタ8及び9を含む。実施例では、水用インジェクタは、平坦な又は円錐形のスプレーヘッドを有する。水用インジェクタの数は、粉砕室の大きさに依存する。少なくとも1つの水用インジェクタ8は、粉砕室の頂部で、原材料供給口(又は入口2)の側に配置される。このインジェクタ8は、粉砕室内に直接水を噴霧する。その役割は、原材料(緑麦芽)が流され得る水流を提供すること、及び粉砕された穀粒が多孔篩い10を通過し易くすることである。実施例では、粉砕室上部のインジェクタの個数は4つである。これらの水用インジェクタ8を「主」インジェクタと呼ぶことにする。注入される水の量は、所望の麦汁濃度を得るために必要な比率を考慮して、緑麦芽の流量に比例して計算される。20~24°P(度プラトー(Plato))の濃厚な麦汁を得るためには、緑麦芽の穀粒に含まれる多量の水分を考慮して、この流量は1~1. 5リットル/kgとなる。複数の水用インジェクタがある場合、水流はそれぞれのインジェクタの間で分割される。
【0057】
また、多孔篩い10を通過した後の粉砕された原料を集める粉砕室の下部には、「副」インジェクタと呼ばれる少なくとも1つの水用インジェクタ9が含まれる。この例は、粉砕室のこの領域に配置された4つのインジェクタを含む。これらのインジェクタ9は、篩い10の裏側に水を噴霧する。これらのインジェクタの役割は、粉砕工程の間及び粉砕工程の後に、篩い10の下側が確実に洗浄されるようにすることである。
【0058】
粉砕室内の異なる点に配置されたインジェクタ8及び9の組み合わせ動作により、原材料が篩い10を通過することを可能にすると共に、篩いの両側での堆積及び目詰まりを抑制することができる。
【0059】
粉砕工程中に使用される水の総量は、原料が通過した後、粉砕室及び篩10の下側を濯ぐための余力を残すように計算される。主インジェクタ及び副インジェクタに供給される水の総量は、緑麦芽のマッシング水とみなされる。したがって、この水は、醸造物をマッシングするための所望の温度の処理水であり、そのpHのレベルで補正することができ、通常、酵素又は塩などのマッシング水に配合される添加剤を含む。
【0060】
粉砕機から出てくる材料は、粉砕された緑麦芽の懸濁液とマッシング水とからなる。これを撹拌タンクに直接ポンプで送り込み、醸造を開始する。したがって、この工程は、粉砕とマッシングの2つの段階を1つにまとめたものである。このため、この工程は、最大45分、好ましくは10~40分、より好ましくは15~30分の持続時間にわたって実施されるべきである。粉砕機の容量は、この側面を考慮に入れて計算する必要がある。
【0061】
別の有利な実施形態によれば、装置はより大きな容量を有する。
【0062】
使用される粉砕機は、3000rpmで回転する18.5kWのモータを備えた衝撃式粉砕機である。このモータは、粉砕機の水平回転軸(又はロータ4)を直接駆動し、回転軸上に10枚のディスク5が等間隔で取り付けられている。これらディスク5の各々は、互いに90°の角度で配置された4つの円孔を有し、円孔内には、金属棒、すなわち軸23が、枢動可能に取り付けられた衝撃要素と共に挿入されている。モータは、100m/秒の周速度で回転する4列11個の衝撃要素を駆動する。
【0063】
取り付けられた篩い10は、直径2.5mmの孔を有する。
【0064】
もちろん、本発明の範囲を逸脱することなく、他の配置を想定することができる。粉砕機のロータは、垂直位置ではなく水平位置に配置することができる。この場合、縦型篩いは、粉砕室の周囲全体に配置することもできる。インジェクタの一部は、好ましくは粉砕室内に直接水を注入するように設計され、他のインジェクタは、篩いの裏側に水を注入するように設計されよう。
【実施例
【0065】
本発明による方法の実施例
【0066】
[実施例1]
実施例1では、以下に説明するように、湿式ハンマーミルを使用して緑麦芽から麦汁を製造する方法を詳述する。
【0067】
(緑麦芽)
この試験で使用される緑麦芽は、5日後に停止される発芽までの麦芽製造段階を経た「セバスチャン」品種の春大麦から作製される。このようにして得られた緑麦芽は、37~43%の水分含量を有する。
【0068】
(粉砕/マッシング)
使用される試作粉砕機は、2900rpmで動作する9.2kWのモータを備えたハンマーミルである。このモータは、粉砕機の水平回転軸(ロータ4)を駆動し、この回転軸には5枚のディスク5が等間隔で取り付けられている。これらディスクの各々は、互いに90°の角度で配置された4つの円孔を有し、円孔内には、枢動可能に取り付けられたハンマー7を備える金属棒23が挿入されている。モータは、100m/秒の周速度で回転する4列6個のハンマーを駆動する。
【0069】
取り付けられた篩いは、直径2.5mmの孔を有する。
【0070】
水と穀粒との混合物は、粉砕室内で製造される。
【0071】
水及び穀粒の流量は、粉砕工程が15分で完了するように設定されている。
【0072】
穀粒の供給速度は、穀粒ホッパー11の始端にあるウォーム手段によって3~5kg/分に設定され、水の流量は、0. 8~1. 3リットル/kg(緑麦芽1kg当たりの水のリットル数)の間の瞬間マッシング比率を達成するように適合される。マッシング水の温度は45~55℃である。
【0073】
粉砕工程の最後に一定量のすすぎ水が使用されて、粉砕室から残留粒子を排出し、篩い10を洗浄する。この水の体積は、1. 5リットル/kgの総マッシュ比を達成するように設定されている。
【0074】
この第1の実施例では、37.5kgの緑麦芽を、56.3リットルの水を用いた湿潤環境下で粉砕した。すべての緑麦芽は11.5分で粉砕され、7リットルの水を使用して粉砕室を濯いだ。
【0075】
次に、得られたマッシュは、バッファタンク13から配管15を介して醸造タンクにポンプで送られる。
【0076】
(麦汁の製造)
リン酸でpHを5.5に調整した後、加水下で粉砕して得られたマッシュを醸造ダイアグラムに供し、緑麦芽中の酵素によりデンプンを糖に分解させる。
- 45℃で10分間
- 63℃で20分間
- 72℃で20分間
- 78℃で5分間
【0077】
1℃/分の温度上昇に伴う加熱と、種々の段階での温度保持は、製品に低圧蒸気を直接注入することによって確実に行われる。
【0078】
次に、マッシュは、麦芽33kgの公称総容量を有する3室式フィルタ「Meura 2001 Hybrid Micro」を用いて濾過される。濾過サイクルは、12°Pで138リットルの麦汁を得るためにパラメータを最適化する一連の古典的なステップ(充填、濾過、予備圧縮、洗浄、最終圧縮、排出、使用済み穀粒の排出)に従う。
【0079】
イムホフコーン法により測定された麦汁の濁度は、4~5ミリリットル/リットルの値を示し、これは、大麦の麦芽から製造され、「Meura 2001 Hybrid」フィルタで濾過された麦汁に典型的な値である。
【0080】
[実施例2]
実施例2では、図4に示すような衝撃式粉砕機を用いて、実施例1で説明したものと同じ緑麦芽の麦汁を製造する方法を詳述する。
【0081】
各列の最初及び最後の衝撃要素は、この例では図5bに示すようにナイフ7の形状に鋭くされている。それらは、鋼鉄製であり、溝付き及び歯付きであり、同じ長さである。各ディスク5の間に配置された他の衝撃要素は、単純な矩形形状のハンマーである。
【0082】
したがって、実施例1とは対照的に、この粉砕機は、ハンマー7とナイフ6との組合せを備えている。
【0083】
同じ出力で、37.5kgの緑麦芽は10.2分で破砕され、実施例1と比較して11%の時間短縮となった。矩形形状のハンマー6の一部をナイフ7に置き換えることにより、緑麦芽を特徴付ける根芽及び「弾力のある」湿った外皮の粉砕効果を高めることができた。
【0084】
醸造及び濾過の後、13°Pで128リットルの麦汁が得られた。ナイフの使用により濾過段階での時間が12%短縮され、麦汁は、実施例1で測定されたものと同等の濁度、4~5ミリリットル/リットルを有していた。
【0085】
[実施例3]
実施例3は、以下に説明するように、水中で動作する新しいタイプの衝撃式粉砕機を使用して、緑麦芽をベースにした麦汁を製造する方法を詳述する。
【0086】
(緑麦芽)
使用した緑麦芽はプラネット品種であり、5日間続く発芽期まで麦芽製造段階を経たものである。水分含量は32%である。
【0087】
(粉砕/マッシング)
使用される粉砕機は、図1及び図2に示すように、水中で機能する衝撃式粉砕機である。
【0088】
粉砕機の水平軸4は、公称速度3000rpmで回転する周波数変換器を備えた18.5kWモータ12によって駆動される。
【0089】
軸4は、10枚のステンレス鋼製のディスク5を等間隔で支持している。これらディスクの各々は、互いに90°の角度で配置された4つの円孔を有し、これらの円孔内には、枢動可能に取り付けられた衝撃要素7を有する金属棒23が挿入されている。これにより、モータは、100m/秒の周速度で回転する4列11個の衝撃要素を駆動する。
【0090】
この例では、すべての衝撃要素は、図5aに示すように、滑らかな切断プロファイルを有するステンレス鋼製のナイフである。
【0091】
粉砕室の下部に設置された篩い10は、直径2.5mmの孔を有する。
【0092】
穀粒と水の混合物は、粉砕室内で製造される。穀粒は、穀粒ホッパー11から粉砕室の上部2から粉砕機に供給される。ホッパー11の下部に設置されたバッファにより、穀粒が粉砕機に搬送される。穀粒への加水(hydration)は、穀物1kg当たり1リットルに近い瞬間水分比率を達成するように開口が調節された9つのインジェクタ8を介して、粉砕室内の異なる点に水を注入することによって実施される。使用されるマッシング水は、粉砕工程中の温度が45~55℃であり、粉砕工程の最後に特定のすすぎ容量が加えられて、粉砕室から残留粒子を排出し、篩いを洗浄する。
【0093】
この実施例では、104kgの緑麦芽粒を、9.3kg/分の流量で、9リットル/分の瞬間水流量で粉砕し、その結果、1リットル/kgの瞬間比率を得た。粉砕工程は11分間続き、粉砕工程の最後に44リットルのすすぎ水を加えて、穀物1kg当たり水が1.38リットルの全体比率を達成した。
【0094】
次に、得られたマッシュは、バッファタンク13から配管15を介して醸造タンクにポンプで送られる。
【0095】
(麦汁の製造)
醸造に適用される設定は、実施例1で説明したものと同じである。次に、マッシュは、麦芽87.5kgの公称総容量を有する8室式フィルタ「Meura 2001 Hybrid Micro」を用いて濾過される。濾過サイクルは、13°Pで396リットルの麦汁を得るためにパラメータを最適化する一連の古典的なステップ(充填、濾過、予備圧縮、洗浄、最終圧縮、排出、使用済み穀粒の排出)に従う。
【0096】
イムホフコーン法により測定された麦汁の濁度は2~3ミリリットル/リットルの値を示し、これは、大麦の麦芽から製造され、「Meura 2001 Hybrid」フィルタで濾過された麦汁に典型的な値である。
【0097】
(利点)
本発明の主な利点は、多くの熱エネルギーを消費する焙燥工程を省略し、緑麦芽から麦汁を製造する方法を提案することである。麦汁の製造の出発材料として緑麦芽を使用することにより、製造コストが低減される。
【0098】
本発明は、この原料を特徴付ける根芽及び湿った外皮の粉砕に伴う問題を解決した。
【0099】
また、単一の工程で粉砕及びマッシングを組み合わせること、及び醸造中の酵素反応を促進する緑麦芽の高い酵素ポテンシャルは、麦汁製造工程に大幅な時間短縮をもたらし得る。
【0100】
また、本発明により、装置の簡素化と占有サイズの低減とを可能にした。
【0101】
本発明は、麦汁の連続生産に特に適している。
【0102】
実現例は、ナイフを配置することにより、キロワット時当たりの粉砕された材料の重量に関して粉砕機の容量を増加させることを示している。矩形状ハンマーの一部又は全部を置き換えるものとして、複数のナイフをロータのディスク上に配置することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
【国際調査報告】