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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】注射製剤及び吸入製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/30
A61K9/08
A61K9/72
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529536
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022082486
(87)【国際公開番号】W WO2023089132
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/082227
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】110143066
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】2119021.0
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】17/574,424
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2022/055324
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527989
【氏名又は名称】サイビン ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランズ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラウトレッジ,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】レイゼル,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,エレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル,ゼラ
(72)【発明者】
【氏名】ベンウェイ,ティファニー
(72)【発明者】
【氏名】グッド,メーガン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB15
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076DD35D
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD67D
4C076FF14
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF61
4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA44
4C086MA57
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、水性医薬製剤、その製造方法及びその使用に関する。水性医薬製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩及び水を含み、pHは5~6.5、好ましくは約5~約6であり、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度は、遊離塩基当量として約10mg/ml以上である。これらの製剤は、サイケデリック支援療法に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を、5ml以下の容積内で含むことができる。このような製剤は、驚くべきことに、筋肉内注射及びネブライザーによる吸入の両方に適しており、安定で臨床的に許容され、精神障害又は神経障害の治療に使用できるポテンシャルを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入に適した医薬製剤であって、
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、及び任意で前記塩とは別の緩衝剤を含み、
約5~約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有し;及び、
5ml以下の容積内の、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量を含む、
医薬製剤。
【請求項2】
約5~約6のpHを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
筋肉内注射に適している、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用される任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
容積が3ml以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
容積が2.5ml以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
約275~約325mOsm/Kgの浸透圧を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸及び式IBの化合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製剤:
【化1】
(式中、
R1bは、独立して、-R4b、-OH、-OR4b、-O(CO)R4b、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2bは、C(xbH)3である;
R3bは、C(xbH)3である;
各R4bは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xbH、ybH、及びzHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
【請求項9】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、nは0;又はnは1であり、R1bは4位又は5位である)を含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、各R1bは、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から独立して選択される)を含む、請求項8又は9に記載の製剤。
【請求項11】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、R2bはCD3であり、R3bはCD3である)を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、各ybHはDである)を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
nが0である、請求項8、9、11又は12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
nが1であり、R1bが4-アセトキシである、請求項8~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
nが1であり、R1bが5-メトキシ又はトリデューテロ-5-メトキシである、請求項8~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物が、N,N-ジメチルトリプタミンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物が、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物と、フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、及びグルコン酸からなる群より選択される酸との塩である、請求項1~17のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
前記酸がフマル酸である、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を、HPLCで測定した場合に99%以上の純度で含有する製剤原料を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
任意に置換されたジメチルトリプタミンの濃度が、約10mg/mL~約150mg/mL(遊離塩基当量として)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
任意に置換されたジメチルトリプタミンの濃度が、約15mg/mL~約70mg/mL(遊離塩基当量として)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度が、約20mg/mL~約40mg/mL(遊離塩基当量として)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度が、約25mg/mL(遊離塩基当量として)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項25】
前記塩とは別の緩衝剤を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項26】
緩衝剤が、酢酸塩及び酢酸;又はクエン酸塩及びクエン酸;又はリン酸塩及びリン酸を含む;又は
緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩を含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
塩基剤が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項1~26のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項28】
等張化剤及び/又はpH調節剤をさらに含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項29】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、塩基剤、及び任意で、pH調節剤、等張化剤、緩衝剤、共溶媒、保存剤、及び酸化防止剤から選択される1種以上の剤から本質的になる、請求項1~28のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項30】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、塩基剤、及び任意で、緩衝剤及び/又は等張化剤及び/又はpH調節剤から本質的になる、請求項1~29のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項31】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、塩基剤、及び任意で、緩衝剤及び/又は等張化剤及び/又はpH調節剤からなる、請求項1~30のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項32】
等張化剤が塩化ナトリウム又はデキストロースである、請求項28~31のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項33】
5ppm未満、好ましくは2ppm未満の酸素含有量を有する、請求項1~32のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項34】
5ml以下の容積を有する容器に保存される、請求項1~33のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項35】
2ml以下の容積を有する容器に保存される、請求項1~33のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項36】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、前記塩とは別の緩衝剤、及び、等張化剤又はpH調節剤を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項37】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選択される塩基剤;水;クエン酸塩である緩衝剤;及び、酸である等張化剤又はpH調節剤を含む、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤を調製するのに適したキットであって、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;任意で等張化剤及び/又はpH調節剤;塩基剤、及び、任意で前記塩とは別の緩衝剤を含む、キット。
【請求項39】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、塩基剤、及び、任意で前記塩とは別の緩衝剤、及び任意で等張化剤及び/又はpH調節剤を接触させることを含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の医薬製剤を調製する方法。
【請求項40】
緩衝剤の水溶液を、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩と接触させる、請求項39に記載の方法であって、ここで、前記水溶液が請求項1に定義されるpHを有する、方法。
【請求項41】
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物を、水、及び任意で、緩衝剤及び/又は等張化剤及び/又はpH調節剤と接触させることを含む、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
製剤のpHを調整することをさらに含む、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
pHが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである塩基剤で調整される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
不活性ガスで製剤をスパージングすることをさらに含む、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
医薬品として使用するための、又は心理療法と組み合わせて使用するための、請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤又は請求項38に記載のキット。
【請求項46】
患者の精神障害又は神経障害を治療する方法において使用するための、請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤又は請求項38に記載のキット。
【請求項47】
精神障害又は神経障害が、(i)強迫性障害、(ii)うつ病性障害、(iii)不安障害、(iv)物質乱用及びギャンブル障害、ならびに(v)意欲消失障害からなる群より選択される、請求項46に記載の使用のための製剤、又は使用のためのキット。
【請求項48】
請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、精神障害又は神経障害を治療する方法。
【請求項49】
精神障害又は神経障害が請求項47に記載される通りである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項48に記載の方法であって、請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤を、心理療法と組み合わせて投与する方法。
【請求項51】
凍結乾燥された請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤を含む、凍結乾燥粉末製剤。
【請求項52】
請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤を、凍結乾燥によって乾燥することを含む、凍結乾燥粉末製剤の調製方法。
【請求項53】
請求項51に記載の凍結乾燥粉末製剤、又は請求項52に記載の方法によって調製された凍結乾燥粉末製剤を、水に混合することを含む水性製剤の調製方法であって、
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、及び任意で、前記塩とは別の緩衝剤を含む製剤を提供し、約5~約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する製剤を提供する、水性製剤の調製方法。
【請求項54】
約5~約6のpHを有する製剤を提供する、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、水性医薬製剤、その製造方法及びその使用に関する。水性医薬製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩及び水を含み、pHが5から6.5であり、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度が遊離塩基当量として約10mg/ml以上である。製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。これらの製剤は、サイケデリック支援療法(psychedelic assisted therapy)に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を5ml以下の容積で含んでいる。このような製剤は、驚くべきことに、筋肉内(IM)注射及びネブライザーによる吸入の両方に適しており、安定で臨床的に許容され、精神障害又は神経障害の治療に使用される可能性がある。
【発明の背景】
【0002】
古典的な幻覚剤(サイケデリック)は、精神障害の治療において前臨床及び臨床的に有望であることを示してきた(Carhart-Harris and Goodwin, Neuropsychopharmacology 42, 2105-2113 (2017))。特に、シロシビン(サイロシビンとも呼ばれる:psilocybin)は、無作為化二重盲検試験において、さまざまなうつ病と不安の評価尺度で有意な改善を示している(Griffiths et al. Journal of Psychopharmacology, 30(12), 1181-1197 (2016))。
【0003】
N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)もまた、短時間作用型の幻覚剤として治療的価値があると理解されている。脳と末梢組織におけるDMTの生合成と代謝、体液と脳におけるDMT検出の方法と結果に関する研究の総説は、S. A. Barkerが「Front. Neurosci., 12, 536, 1-17 (2018)」に記載している。Barkerらは、『DMTの細胞分布、受容体、一般的な生化学のさらなる特性評価は、より効果的な医薬物質や介入のための新たな標的につながるかもしれない』と示唆している。
【0004】
ヒトボランティアへのDMTフマル酸塩の生理食塩水の注入については、C. Timmermannらにより「Sci. Rep., 9, 16324 (2019)」に記載されている。ヒトの脳活動のパワースペクトルとシグナル多様性に対するDMTフマル酸塩の影響を、多変量EEGを介して記録し、プラセボ(生理食塩水)の注入で得られた結果と比較した。その結果、プラセボで得られた結果と比較して、DMTフマル酸塩はアルファパワーを抑制し、デルタパワーとシータパワーを正常化/増加させることがわかった。アルファパワーは、高度な心理的機能、トップダウン予測処理(top-down predictive processing)、関連するフィードバック接続(feedback connectivity)と関連しており、一方、シータ及びデルタパワーは、古典的にはレム夢見睡眠及び関連する「幻視(visionary)」状態と関連している。これらの結果は、DMTフマル酸塩の注射が、まったく別の世界に深く没入しているような感覚を体験させることに関係していると説明されている。
【0005】
Silvieraら(Molecules, 2020, 25, 2072)は、アヤフアスカ(ayahuasca)の安定性プロファイルについて論じている。Piriesら(Phytochem. Anal. 2009, 20, 149-153)は、アヤフアスカティーのサンプルに含まれる主な活性成分の同時測定法について論じている。
【0006】
HMDB(Human Metabolome Database)によれば、N,N-ジメチルトリプタミンは溶液中で比較的速やかに分解する(具体的には、http://www.hmdb.ca/metabolites/HMDB0005973)。従って、当技術分野では、より長期間にわたって安定であり、臨床的に許容され、ジメチルトリプタミンベースの医薬の投与に伴う不快感及びコストを最小限に抑える方法で製剤化された、DMTの注射用溶液に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を約10mg/ml以上(遊離塩基当量として)と水とを含む、筋肉内注射及びネブライザー吸入の両方に適した水性医薬製剤に関し、ここで、製剤は、約5から約6.5のpH値、及び、約250から約350mOsm/Kgの典型的な浸透圧を有する。製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。これらの製剤は、サイケデリック支援療法(薬理学的支援心理療法)に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を5ml以下の容積内で送達することが可能であり、筋肉内注射及びネブライザー吸入の両方に特に適している。好ましくは、製剤は、4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で、サイケデリック支援療法に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を送達することができる。
【0008】
本発明は、標準又はストレス条件下で保存した場合に、既知の製剤と比較して分解生成物が実質的に減少している、筋肉内注射又はネブライザー吸入に適した医薬製剤を提供するという問題に取り組む。これは、そのような既知の医薬製剤よりも貯蔵寿命が改善されることを示している。さらに、式IA又はIBの重水素化化合物のような重水素化された任意置換ジメチルトリプタミン化合物は、それらの非-重水素化アナログと比較して、筋肉内注射による曝露及びCmaxの有意な改善を示す(図1A及び1Bを参照のこと)。したがって、本発明は、5ml以下、好ましくは4ml以下、又は3ml以下、又は2.5ml以下、又は2ml以下、又は1ml以下、又は0.5ml以下の容積の、筋肉内注射又はネブライザー吸入による任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量(少なくとも平均体重のヒトに対して)を有する水性医薬製剤を初めて提供する。
【0009】
従って、第一の側面から見ると、本発明は、筋肉内注射及びネブライザー吸入の両方に適した医薬製剤であって、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤(base agent)、水;及び任意で前記塩とは別の緩衝剤を含み;ここで、製剤が、約5から約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250から約350mOsm/Kgの浸透圧を有する、医薬製剤を提供する。製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。
【0010】
本発明の第一の側面のいくつかの実施形態において、製剤は、約10mg/ml~約150mg/ml、約10mg/ml~約100mg/ml、約10mg/ml~約80mg/ml、約15mg/ml~約70mg/ml、約15mg/ml~約50mg/ml、又は約20mg/ml~約40mg/ml(遊離塩基当量として)の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を含む。典型的には、製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を約25mg/ml(遊離塩基当量として)含有する。
【0011】
本発明の第一の側面の好ましい実施形態において、医薬製剤は、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む。
【0012】
第二の側面から見ると、本発明は、第一の側面の製剤を調製するのに適したキットを提供し、前記キットは、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;塩基剤、任意で前記塩とは別の緩衝剤、及び任意で等張化剤(tonicity agent)及び/又はpH調節剤を含む。本発明の第二の側面の好ましい実施形態において、キットは、サイケデリック支援療法(サイケデリック補助療法)に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で含む。
【0013】
第三の側面から見ると、本発明は、第一の側面の医薬製剤を調製する方法であって、塩、水、塩基剤、任意に前記塩とは別の緩衝剤、及び任意に等張化剤及び/又はpH調節剤を接触させることを含む方法を提供する。本発明の第三の側面の好ましい実施形態において、製剤は、5ml以下の容積、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、等張化剤を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、pH調節剤を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、緩衝剤及び等張化剤を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、緩衝剤及びpH調節剤を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二の側面の製剤又はキットは、緩衝剤、等張化剤及びpH調節剤を含む。
【0015】
溶液中のN,N-ジメチルトリプタミン遊離塩基の不安定性が知られているため、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物を含む溶液は、一般に、使用直前又は使用時近くに調製される(すなわち、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の溶液の保管は避けられる)。あるいは、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の溶液は凍結される。本発明者らは、塩とは別の緩衝剤が使用される場合、得られる製剤は、塩とは別の緩衝剤なしで調製される製剤よりも安定であることを見出した。さらに、紫外線の透過を防止する容器が使用される場合、得られる製剤は、紫外線の透過を許容する容器に保存された製剤よりも安定である。
【0016】
第四の側面から見ると、本発明は、医薬品として、又は心理療法(精神療法)と組み合わせて使用するための、第一の側面の製剤又は第二の側面のキットを提供する。
【0017】
第五の側面から見ると、本発明は、患者の精神障害又は神経障害(精神疾患又は神経疾患)を治療する方法に使用するための、第一の側面の製剤又は第二の側面のキットを提供する。
【0018】
第六の側面から見ると、本発明は、それを必要とする患者に第一の側面の製剤を投与することを含む、精神障害又は神経障害を治療する方法を提供する。
【0019】
第七の側面から見ると、本発明は、心理療法と組み合わせて第一の側面の製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、精神障害を治療する方法を提供する。
【0020】
第八の側面から見ると、本発明は、約3~約5のpKa(25℃にて)を有するブレンステッド酸を含む塩、式IAの化合物、及び、水を含み、pHが約5~約6.5であり、式IAの化合物の濃度が遊離塩基当量塩として約10mg/ml以上である水性医薬製剤を提供する:
【化1】
(式中、
R1aは、独立して、-R4a、-OH、-OR4a、-O(CO)R4a、リン酸一水素(monohydrogen phosphate)、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2aは、C(xaH)3である;
R3aは、C(xaH)3である;
各R4aは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xaH 及び yaHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
【0021】
好ましくは、製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。本発明の第八の側面の好ましい実施形態において、医薬製剤は、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用するための式IAの化合物の有効量を含む。
【0022】
第九の側面から見ると、本発明は、約3~約5のpKa(25℃にて)を有するブレンステッド酸を含む塩、式IBの化合物、及び水を含み、pHが約5~約6.5であり、式IBの化合物の濃度が遊離塩基当量塩として約10mg/ml以上である、水性医薬製剤を提供する:
【化2】
(式中、
R1bは、独立して、-R4b、-OH、-OR4b、-O(CO)R4b、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2bは、C(xbH)3である;
R3bは、C(xbH)3である;
各R4bは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xbH、ybH 及び zHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
【0023】
好ましくは、製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。本発明の第九の側面の好ましい実施形態において、医薬製剤は、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用するための式IBの化合物の有効量を含む。疑義を避けるために、本発明の第八の側面の実施形態は、本発明の第九の側面に準用される。
【0024】
第十の側面から見ると、本発明は、凍結乾燥された本発明の第一の側面で定義される製剤を含む凍結乾燥粉末製剤を提供する。
【0025】
第十一の側面から見ると、本発明は、凍結乾燥により本発明の第一の側面で定義される製剤を乾燥することを含む、凍結乾燥粉末製剤を調製する方法を提供する。
【0026】
第十二の側面から見ると、本発明は、第十の側面で定義される凍結乾燥粉末製剤又は第十一の側面の方法で調製される凍結乾燥粉末製剤を水に混合することを含む、水性製剤を調製する方法であって、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、及び、任意で前記塩とは別の緩衝剤を含む製剤を提供し、約5から約6のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び、約250から約350mOsm/Kgの浸透圧を有する製剤を提供する方法を提供する。好ましくは、製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。
【0027】
疑義を避けるために、本発明の第一の側面の実施形態は、本発明の第十、第十一及び第十二の側面に準用される。
【0028】
疑義を避けるため、本発明の各側面に関連する実施形態は、本発明の他の側面に準用される。
【0029】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、以下に続く説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1A及び図1Bは、3.5mg/kg(フマル酸塩として)をIM投与した後の経時的な、N,N-ジメチルトリプタミン(SPL026)、d2-N,N-ジメチルトリプタミン(SPL028i)及びd8-N,N-ジメチルトリプタミン(SPL028viii)の平均血漿濃度のプロットを示す(in vivo、カセットとして添加)。図1A-線形プロット、図1B-片対数プロット。3つの薬物すべてが50ng/mlを超えるCmaxを達成し、治療上適切な用量であることが示された。SPL028iとSPL028viiiはそれぞれ、非-重水素化DMTと比較して30分後の血漿中濃度が有意に高いことを示す。
【0031】
図2図2A及び2Bは、in vivoで、3.5mg/kg及び10mg/kg(フマル酸塩として)をIM投与した後の経時的な平均血漿d2-DMT(SPL028i)濃度のプロットを示す。図2A-線形プロット、図2B-片対数プロット、SEMエラーバー。
【0032】
図3図3は、pH4からpH10までのN,N-ジメチルトリプタミンのpH-溶解度曲線を示す。
【発明の詳細な説明】
【0033】
本明細書を通じて、本発明の1つ又は複数の側面は、本明細書に記載される1つ又は複数の特徴と組み合わされて、本発明の別個の実施形態を定義することができる。
【0034】
特に断りのない限り、測定は室温・室内圧力、すなわちそれぞれ20℃(293.15 K、68°F) 及び 1気圧(14.696 psi、101.325 kPa)で行われる。特に断りのない限り、周囲条件は室温と室内圧力を指す。
【0035】
以下の説明において、多くの用語が参照されるが、これらの用語は、文脈が明確に反対の意味を示さない限り、以下に示す意味を有するものと理解される。本発明の製剤で使用する幻覚剤(psychedelic agent)について本明細書で使用される命名法は、当該分野で一般的に使用されているものである。本明細書に記載される化合物はまた、国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)の化学化合物に関する規則、具体的には「IUPAC Compendium of Chemical Terminology (Gold Book)」(A. D. Jenkinsら、Pure & Appl. Chem., 1996, 68, 2287-2311を参照のこと)に従った命名法によって言及され得る。疑義を避けるため、IUPAC組織の規則が本明細書で規定する定義に反する場合、本明細書での定義が優先される。
【0036】
本明細書において、名詞の単数形への言及は、文脈上そうでない場合を除き、名詞の複数形を包含する(逆も同様)。
【0037】
本明細書全体を通して、「含む」という語、又は「含み」もしくは「含んでいる」などのその変化形は、記載された単数の要素、整数もしくはステップ、又は複数の要素、整数もしくはステップを含むことを意味するが、他の単数の要素、整数もしくはステップ、又は、他の複数の要素、整数もしくはステップを除外することは意味しないと理解される。「含む」という用語は、「からなる」又は「本質的に~からなる(~から本質的になる)」という用語をその範囲に含む。
【0038】
用語「からなる」又はその変形は、記載された単数の要素、整数もしくはステップ、又は複数の要素、整数又はステップを含み、他の単数の要素、整数もしくはステップ、又は他の複数の要素、整数もしくはステップは除外することを意味すると理解される。
【0039】
「本質的に~からなる(~から本質的になる)」という用語又はその変形は、記載された単数の要素、整数もしくはステップ、又は複数の要素、整数もしくはステップを含むことを意味し、さらなる成分が存在してもよいが、製剤、組成物、又は化合物の本質的な特性に重大な影響を与えないもののみであることを意味すると理解される。
【0040】
本明細書で使用される「約」という用語は、数値又は値を修飾する場合、指定された値の±5%以内にある値を指すために使用される。例えば、浸透圧範囲が約250~約350mOsm/Kgと規定されている場合、238~367の値が含まれ、pH範囲が約5~約6と規定されている場合、4.75~6.3の値が含まれる。疑義を避けるために、本明細書において「約」という用語なしで数値又は値が指定される場合、その数値又は値は、小数点以下の桁数に応じた標準的な数値の四捨五入の慣例に従って理解されるべきである。例えば、6のような整数は、5.5以上6.5未満の値を包含すると理解される。同様に、5.3のように小数第一位まで指定された数値は、5.25以上5.35未満の値を包含すると理解される。
【0041】
本明細書で使用する「水性」という用語は、水を含み、さらなる溶媒を含んでもよい製剤を指す。
【0042】
本発明の製剤は治療に有用であり、それを必要とする患者に投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「患者」は好ましくは哺乳動物を指す。典型的には、哺乳動物はヒトであるが、家畜哺乳動物を指すこともある。この用語は実験用の哺乳動物は包含しない。
【0043】
本明細書において、「有効量」という用語は、平均して臨床的反応、すなわち症状の改善をもたらす用量を指す。
【0044】
本明細書において、「心理療法(精神療法)との併用」という用語は、本発明の製剤の投与によって増強される、心理学的手段による精神障害の治療を指す。「サイケデリック支援療法」及び「薬理学的支援(補助)療法」という用語は、本明細書では、心理療法との併用による治療を指すために使用される。
【0045】
「治療」という用語は、障害(疾患)の進行速度を低減もしくは停止させるため、又は障害を改善もしくは治癒させるための、患者への治療的処置を定義する。治療の結果としての障害の予防も含まれる。予防への言及は、本明細書において、障害の完全な予防を必要としないことを意図している:代わりに、その発症は、本発明による治療によって妨げられる(遅れる)可能性がある。典型的には、治療は予防的ではなく、製剤は、障害と診断された又は障害が疑われる患者に投与される。
【0046】
当技術分野で理解されているように、精神障害又は神経障害は、1つ以上の認知障害を伴う可能性のある障害である。本明細書で使用する場合、「精神障害(精神疾患)」という用語は、個体で発生し、現在の苦悩(例えば、痛みを伴う症状)もしくは能力障害(すなわち、1つ以上の重要な機能領域における障害)と関連する、又は死亡、苦痛、能力障害、もしくは重要な自由の喪失を被るリスクが有意に増加することに関連する、臨床的に有意な行動的あるいは心理的症候群あるいはパターンである。
【0047】
ここで言及される精神障害又は神経障害の診断基準は、「精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第五版」(DSM-5)に記載されている。
【0048】
本明細書で使用される「サイケデリック支援療法」という用語は、サイケデリック治療製剤(例えば、本発明で定義される任意の製剤を含む)とともに提供される任意の心理学的治療行為として定義される。
【0049】
本明細書で使用される、強迫性障害(OCD:obsessive-compulsive disorder)という用語は、強迫観念又は強迫行為のいずれかが存在することによって定義されるが、一般に両方が存在する。その症状は重大な機能障害や苦悩を引き起こし得る。強迫観念とは、繰り返し心に浮かぶ不要な侵入的思考、イメージ、衝動と定義される。強迫行為とは、繰り返し行われる行動や精神的な行為のことであり、人がそうしなければならないと感じるものである。典型的には、OCDは、強迫行為をすることに駆られる1つ以上の強迫観念として現れる。例えば、細菌に対する強迫観念が掃除の強迫行為を引き起こすことがあり、食べ物に対する強迫観念が、過食、少食、食後に吐いてしまうという強迫行為を引き起こし得る(すなわち、食物に対する強迫観念が摂食障害として現れ得る)。強迫行為は、ドアがロックされていることをチェックするなどの、明らかで他人から見て観察可能なものか、又は、あるフレーズを頭の中で繰り返すなど、観察することができない隠れた精神的行為のいずれかであり得る。
【0050】
本明細書において、「摂食障害」という用語は、摂食行動における重度かつ持続的な障害、及び関連する苦悩を伴う思考及び感情によって定義される。「摂食障害」という用語には、神経性食欲不振症、神経性過食症、むちゃ食い障害(binge eating disorder)、回避・制限性食物摂食障害(avoidant restrictive food intake disorder)、他の特定の食行動障害及び摂食障害、異食症(pica)、反芻障害(rumination disorder)が含まれる。
【0051】
摂食障害はしばしば不安障害(不安症)や強迫性障害と併発する。NezirogluとSandlerは、OCDと摂食障害を区別している:摂食障害の患者は、主に身体的な外見を気にし、その結果、体重を減らすために摂食パターンを変える。OCD患者は、身体イメージの懸念とはまったく異なる理由で摂食を制限している可能性がある(https://iocdf.org/expert-opinions/expert-opinion-eating-disorders-and-ocd/)。
【0052】
本発明は、摂食障害を治療する方法に使用するための、本発明の第一及び第二の側面による製剤又はキットを提供する。「摂食障害」という用語は、神経性食欲不振症、過食症、及び、むちゃ食い障害(BED)を含む。神経性食欲不振症の症状には、体重をできるだけ低く保つために、食べる量を減らしすぎたり、及び/又は、運動しすぎたりすることが含まれる。過食症の症状には、ごく短時間にたくさんの食べ物を食べ(すなわち、ドカ食い)、その後、体重増加を防ぐためにわざと体調を崩したり、下剤を使ったり、食べる量を減らしすぎたり、及び/又は、運動しすぎたりすることが含まれる。BEDの症状には、不快なほど満腹になるまで定期的に大量の食物を食べ、その結果、動揺や罪悪感を感じることが含まれる。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「うつ病性障害」という用語は、大うつ病性障害、持続性うつ病性障害、双極性障害、双極性うつ病、及び末期患者におけるうつ病を含む。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「大うつ病性障害(MDD:major depressive disorder);大うつ病又は臨床的うつ病とも呼ばれる」という用語は、二週間以上の期間にわたる、ほとんど一日中、ほとんど毎日の、5個以上の次の症状の存在として定義される(本明細書では、「大うつ病エピソード」とも呼ばれる):
・抑うつ気分、例えば、悲しい、空虚又は涙もろいと感じる(子供及びティーンエイジャーでは、抑うつ気分は、持続的な易怒性として現れることがある);
・すべてあるいはほとんどの活動において、関心が著しく低下するか、又は喜びを感じない;
・食事療法をしていないのに体重が有意に減少する、体重が増加する、又は食欲が減退あるいは亢進する(子供では、期待される体重増加が見られない);
・不眠又は睡眠願望の増加;
・他者に観察可能な不穏状態(落ち着きのなさ)又は動作遅延(行動が鈍い);
・疲労又は活力の減退;
・無価値観、又は過剰なあるいは不適切な罪悪感;
・決断が困難、又は思考あるいは集中が困難;
・死あるいは自死を繰り返し考える、又は自殺企図(自殺未遂)
症状の少なくとも1つは、抑うつ気分又は関心あるいは喜びの喪失のいずれかでなければならない。
【0055】
気分変調症としても知られている持続性うつ病性障害は、次の2つの特徴を示す患者として定義される。
A.少なくとも2年間、ほとんど毎日、抑うつ気分を有する。子供及び青年期の若者は、怒りっぽい気分になることがあり、期間は少なくとも1年である。
B.抑うつの間、次の症状の少なくとも2つを経験する:
・過食又は食欲不振のいずれか
・過眠又は睡眠障害を有する
・疲労、活力の減退
・自尊心の低下
・集中又は決断が困難
【0056】
本明細書で使用される場合、「治療抵抗性大うつ病性障害」という用語は、標準的ケア療法による適切な治療に対して十分な治療効果が得られないMDDを表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、躁うつ病としても知られる「双極性障害」は、気分、活力、活動レベル、及び日常業務を遂行する能力が異常に変化する障害である。
双極性障害の2つの定義されたサブカテゴリがあり、それらの全ては、気分、活力、及び活動レベルの明らかな変化を伴う。これらの気分は、極度の「アップ」、高揚感、及びエネルギッシュな挙動(躁病エピソードとして知られており、さらに以下に定義されている)の期間から、非常に悲しい「ダウン」又は無希望な期間(うつ病(抑うつ)エピソードとして知られる)にわたる。それほどひどくない躁期は、軽躁エピソードとして知られている。
【0058】
双極I型障害は、少なくとも7日間続く躁病エピソードによって、又は直ちに病院での治療が必要なほど深刻な躁症状によって定義される。通常は、うつ病エピソードも発生し、典型的には少なくとも2週間続く。混合された特徴を有するうつ病のエピソード(うつ症状及び躁症状を同時に有する)も起こり得る。
【0059】
双極II型障害は、うつ病エピソード及び軽躁エピソードのパターンによって定義されるが、上述した末期の躁病エピソードはない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「双極性うつ病」は、うつ症状を、以前の又は共存する躁症状のエピソードとともに経験しているが、双極性障害のための臨床的基準には適合しない個人として定義される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「不安障害(不安症)」という用語は、全般性不安障害、恐怖症、パニック障害、社交不安障害、及び外傷後ストレス障害を含む。
【0062】
本明細書中で使用される「全般性不安障害(GAD:generalized anxiety disorder)」は、1つの対象又は状況に特化しない長期間続く不安を特徴とする慢性障害を意味する。GADに罹患している者は、非特定の持続的な恐怖及び不安を経験し、日常のありきたりな事を過度に気にするようになる。GADは、次の症状の3つ以上を伴う慢性的な過度の不安によって特徴付けられる:不穏状態(落ち着きのなさ)、疲労、集中力の不足、易怒性、筋肉の緊張、及び睡眠障害。
【0063】
「恐怖症」は、対象や状況に対する持続的な恐れとして定義され、罹患した人は、それを避けるために(典型的には、生じている実際の危険と不釣り合いに)多大な労力を払う。恐れている対象や状況を完全に避けることができない場合、罹患した人は、著しい苦痛及び社会的又は職業的活動における重大な支障を伴いながら、それに耐えることになる。
【0064】
「パニック障害」に罹患している患者は、激しい恐怖及び不安による一度以上の短い発作(パニック発作とも呼ばれる)を経験する人として定義されており、しばしば、振戦、身震い、混乱、めまい、悪心、及び/又は呼吸困難を特徴とする。パニック発作は、突然生じて、10分以内にピークに達する恐怖や不快感と定義される。
【0065】
「社交不安障害」は、ネガティブな世間の詮索、人前での困惑、恥をかく状況、又は社会的交流に対する強い恐怖と回避と定義される。社交不安は、しばしば、赤面、発汗、及び会話困難を含む特定の身体症状を示す。
【0066】
「外傷後ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)」は、トラウマ的経験に起因する不安障害である。外傷後ストレスは、戦闘、自然災害、レイプ、人質事件、児童虐待、いじめ、又は重大事故のような極限状況から生じる可能性がある。一般的な症状には、過覚醒(hypervigilance)、フラッシュバック、回避行動、不安、怒り、及びうつ状態が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「産後うつ病」(PPD:post-partum depression、産後抑うつとしても知られる)という用語は、新生児の両親のいずれかが経験するうつ状態の一形態である。症状は通常、出産後4週間以内に発現し、しばしば極度の悲しみ、疲労、不安、趣味や活動に対する興味や喜びの喪失、易怒性、睡眠又は食事パターンの変化などを含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「物質乱用(薬物乱用)」という用語は、使用者がその物質を、自分自身又は他人に有害な量で又は方法で摂取する、薬物のパターン化された使用を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「ギャンブル障害」という用語は、臨床的に重大な障害又は苦悩をもたらす、持続的かつ反復的な問題のあるギャンブル行動を意味する。この障害は物質乱用と類似している。
【0070】
本明細書で使用される場合、「意欲消失障害(avolition disorder)」という用語は、自主的に意図的な活動を開始し実行するモチベーションの低下を症状として含む障害を指す。
【0071】
本発明は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;塩基剤;水;及び任意で前記塩とは別の緩衝剤を含む、筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入のいずれかに適した水性医薬製剤を提供し、ここで、前記製剤は、約5~約6.5のpH、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する。前記製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、医薬製剤は、5ml以下の容積内の、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法に使用するための、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む。
【0073】
本発明者らは、前記製剤が、より高いpHで調製された製剤(具体的には、ヒトの血液血清と一致するpH、すなわち約7.4のpHで調製された製剤)よりも驚くべきことに安定であることを見出した。本発明の製剤のより高い安定性(等張製剤と比べて)については、実施例のセクションでより詳細に説明する。
【0074】
浸透圧は、正式には、水の理論的活性の負の自然対数と水のモル質量の商として定義され、以下の式で表される:
【数1】
式中、pは溶液中の水の蒸気分圧、p*は純水の蒸気分圧である。より簡単に言えば、浸透圧は、溶液1kg中の浸透圧的に活性な粒子の数(溶質粒子の数)である。したがって、浸透圧は、粒子の数のみの関数であり、粒子の分子量、大きさ、形状、電荷には関係しない(血清浸透圧の測定の総説については、D. K. Faria et al., M. E. Mendes and N. M. Sumita, J. Bras. Patol. Med. Lab., 53, 1, 38-45 (2017)参照)。例えば、1kgの水に溶解した1モルの非解離性物質(例えば遊離塩基としてのDMT)の浸透圧は、1Osm/kg(1000mOsm/kg)であり、一方、溶液中で2つの別個の種に解離する物質(例えば、フマル酸DMT)1モルを1kgの水に溶かした場合の浸透圧は、2Osm/kg(2000mOsm/kg)である。
【0075】
本明細書において、第一の溶液が第二の溶液と等張であると定義される場合、これらの溶液は同じ浸透圧を有する。例えば、製剤がヒト血液血清と等張であると定義される場合、製剤はヒト血液血清と同じ浸透圧を有する。ヒト血液血清は通常、約275~約300mOsm/Kgの浸透圧を有する(L. Hooper et al., BMJ Open, 2015; 5(10): e008846)。
【0076】
本発明の製剤はネブライザー吸入に適している。典型的には、ネブライザー吸入用の製剤中に存在する粒子は、約0.1~約10μm、好ましくは約0.3~約8μm、より好ましくは約0.3~約7μm、さらに好ましくは約0.5~約5μm又は約3~約7μmの質量平均空気力学的直径(MMAD:mass mean aerodynamic diameter)を有する。MMADは、ジェットネブライザー、メッシュネブライザー又は超音波ネブライザーなど、ネブライザーのタイプに応じて選択される。好適には、多段カスケードインパクター(multistage cascade impactor: 多段CI)装置を使用して、空気力学的粒度分布(APSD:aerodynamic particle size distribution)の観点からエアロゾルをサイズ分画することができる。MMADは、APSDから計算され、エアロゾルの粒子の50質量%がそれより大きく、50質量%がそれより小さい直径として定義される。
【0077】
前記製剤(すなわち本発明の製剤)は、筋肉内注射に適しており、このことは、無菌性、汚染物質及び発熱性物質に関する薬局方要求事項に適合していることを意味する(例えば、「The United States Pharmacopeial Convention, General Requirements/(1) Injections, page 33」を参照のこと)。時には、製剤は微生物の増殖阻害剤(例えば抗菌性保存剤)及び/又は抗酸化剤を含む。
【0078】
非経口投与に適した製剤は、一般に、約3~約9のpH 及び 約250~約600mOsm/Kgの浸透圧を有する。9を超えるpH値は、I. Usachらによって、「Adv. Ther., 36, 2986-2996 (2019)」に、組織壊死(組織内の細胞の死)に関係することが報告されており、一方、3より低い値は、疼痛及び静脈炎(静脈の炎症)を引き起こすことが報告されている。しかし、Usachらは「痛み、刺激、組織損傷を最小限に抑えるためには、生理的なものに近いpHが推奨される」と報告している。600mOsm/Kgを超える浸透圧も痛みを引き起こすと報告されている。Usachらはまた、非経口製剤は等張液(浸透圧が約300mOsm/Kg)として処方することを推奨しており、痛みを最小限に抑えるために上限を600mOsm/Kgと提唱している。
【0079】
前記製剤(すなわち、本発明の製剤)は吸入、特にネブライザーによる吸入にも適している。
【0080】
製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を含む。本発明による製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の1つ又は2つ以上の塩を含んでもよい。疑義を避けるために、製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物のイオン及び任意に置換されたジメチルトリプタミンイオンの電荷と反対のイオン(対イオン)を含む場合、製剤は任意に置換されたジメチルトリプタミン塩を含む。従って、製剤内の任意置換ジメチルトリプタミン塩は、例えば、遊離塩基としての任意置換ジメチルトリプタミンと、任意置換ジメチルトリプタミンのモル量に対して過剰の緩衝剤を含む水溶液とを接触させることにより形成され得る。
【0081】
ジメチルトリプタミン化合物は、重水素で任意に置換されており、ここで重水素原子は、中性子が付加された水素原子である。
【0082】
いくつかの実施形態において、ジメチルトリプタミン化合物は、4位もしくは5位がアセトキシもしくはメトキシで置換されているか、又は4位がリン酸一水素で置換されている。用語「アセトキシ」(しばしばOAcと略される)は、OH部分から水素原子を除去することによって酢酸から誘導される一価の基を定義する。「メトキシ」(しばしばOMeと略される)という用語は、OH部分から水素原子を除去することによってメタノールから誘導される一価の基を定義する。リン酸一水素という用語は、3つのOH部分のうちの2つからプロトンを除去することによってリン酸から誘導される、式HPO4の二価の基を定義し、したがって式-OP(O)(OH)O-の置換基を示す。
【0083】
ジメチルトリプタミン化合物が、4位にてリン酸一水素で置換されている場合、これは、水中のシロシビン([3-(2-ジメチルアミノエチル)-1H-インドール-4-イル]リン酸二水素としても知られる)が、一般に4位にリン酸一水素を有することを反映しており、これは、2つの末端リン酸酸素原子のpKa値が1.3及び6.5と推定されることから、一般に優勢な形態であると理解される。さらに、シロシビンのリン酸一水素含有形態は、ジメチルアミノ部分の窒素原子がプロトン化された双性イオン(すなわち内塩)として存在することが理解される。したがって、この形態は、リン酸一水素で4位が置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩であり、シロシビンとみなされる。
【0084】
疑義を避けるために、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩の4位と5位は、以下の構造でラベルされた位置を指す(置換基は図示せず)。
【化3】
【0085】
製剤は、前記塩とは別の緩衝剤を任意に含有する(すなわち、緩衝剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミンに対する単なる対イオンではない)。例えば、塩がN,N-ジメチルトリプタミンフマレート(すなわち、N,N-ジメチルトリプタミンのフマル酸塩)である場合、フマル酸塩によって提供される緩衝効果に加えてある量の緩衝剤が必要とされることがある。「緩衝剤(バッファー)」という用語は、当該技術分野において周知であり、製剤中に含有されることにより、製剤への酸又は塩基の添加によるpHの変動に抵抗する化学物質を指す。本明細書において、「緩衝剤(buffer)」という用語は、緩衝系(buffer system)又は緩衝化剤(buffer agent)を指す。本発明の製剤に使用するのに適した緩衝系は、弱酸及びその共役塩基を含む。好適な緩衝系は、製剤の所望のpHの±1以内にあるpKa値を有する酸を含む。例えば、製剤の所望のpHが約5.0である場合、好適な緩衝系は、約4.0~約6.0のpKa値を有する弱酸を含む。緩衝系の酸が複数のpKa値を有する場合(すなわち、酸の各分子が複数のプロトンを供与できる場合)、緩衝剤が適切であるためには、pKa値の少なくとも1つが所望のpH範囲内にある必要がある。
【0086】
緩衝系の弱酸と共役塩基は互いに平衡状態にある。ルシャトリエの原理(平衡状態にある系に制約(反応物の濃度変化など)を加えると、その制約の影響を相殺するように平衡が移動する)に従い、製剤に酸又は塩基を加えると、平衡の位置がそれぞれ共役塩基又は弱酸に有利に移動する。その結果、製剤中の遊離プロトン濃度(すなわちpH)は比較的変化しない。
【0087】
上述のように、本発明の製剤は、約5~約6.5、好ましくは約5~約6、より好ましくは約5.0~約6.0のpHを有する。好ましくは、pHは5~6、好ましくは5.0~6.0である。好ましくは、pHは約5.2~約5.8、又は約5.5~約6.0である。好ましくは、pHは約5.7~約6.5、又は約5.7~約6である。より好ましくは、pHは約5.5又は約6である。
【0088】
いくつかの実施形態において、製剤は緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、塩とは別個である。
【0089】
適切な緩衝系は、酢酸塩と酢酸(pKa=4.75);クエン酸塩とクエン酸(pKa=3.13、4.76、6.40);及びリン酸(pKa=2.14、7.20、12.37);又はそれらの混合物を含む。本明細書で引用するpKa値は、水中25℃で報告された値である。典型的には、緩衝系は上記のペアのうちの1つのみ、すなわち1つの酸とその共役塩基を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、緩衝系は、酢酸塩と酢酸;クエン酸塩とクエン酸;又はリン酸塩とリン酸を含む。
【0091】
緩衝系は、酢酸塩と酢酸;又は、クエン酸塩とクエン酸を含むこともある。
いくつかの実施形態では、緩衝系は酢酸塩と酢酸、多くの場合、酢酸ナトリウムと酢酸、又は酢酸カリウムと酢酸を含む。
【0092】
本明細書において、「緩衝化剤(buffer agent)」という用語は、弱酸又は弱塩基を指す。リン酸、クエン酸、酢酸、リン酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩を含む、任意の薬学的に許容される緩衝化剤が、本発明の製剤において使用され得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウムを含む。
【0093】
好ましくは、医薬製剤は、医薬品として使用するため、又はサイケデリック支援療法に使用するための、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む。これは、製剤が、平均体重のヒト患者にサイケデリック体験を誘発する用量範囲のジメチルトリプタミン化合物の塩を含有することを意味する。典型的には、用量範囲は、約5~約250mg、又は約10~約150mg、好適には約10~約100mg、好適には約20~約100mg(遊離塩基当量として)である。いくつかの実施形態では、用量範囲は、約20~約70mg、又は約20~約50mgである。例えば、好適な用量は、約9mg、又は約12mg、又は約17mg、又は約21.5mg、又は約24mg、又は約30.5mg、又は約34mg、又は約33mg、又は約36mg、又は約38.5mg、又は約43mg、又は約51mg、又は約52mg、又は約55mg、又は約60mg、又は約64.5mgである。この段落に記載された用量範囲及び適切な用量は、遊離塩基等価用量を意味する。
【0094】
製剤内の緩衝剤の濃度は、典型的には、製剤を2週間保存する際に製剤の有意なpH変化に抵抗するのに十分であり(すなわち、pHの変動は典型的には約0.1pH単位未満である)、同時に、製剤の浸透圧が約250~約350mOsm/Kgの所望の範囲内にあることを保証する。当業者は、適切な緩衝剤濃度を評価し、これを実現することができる。多くの場合、緩衝剤の濃度は約15mM~約75mM、例えば約20mM~約30mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は約25mMである。
【0095】
上記のように、製剤は、遊離塩基当量として約10mg/ml以上の濃度の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を含む。
【0096】
塩は、酸と任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物を含むか、あるいは、塩は、好ましくはインドール環系の4位にてリン酸一水素で置換されたジメチルトリプタミン化合物を含む。酸とジメチルトリプタミン化合物を含む塩の例は、N,N-ジメチルトリプタミンフマレートであり、これはN,N-ジメチルトリプタミンのフマル酸塩である。P. H. StahlとC. G. Wermuthは、「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA, 2002」において、医薬用塩とその中に含まれる酸の概要を述べている。この概要に記載されている酸は、前記製剤の塩に含めるのに適した酸である。
【0097】
塩は、以下の物質からなる群より選択される酸を含んでもよい:フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(camphoric acid)、カンファー-10-スルホン酸、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、炭酸、桂皮酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸(gentisic acid)、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸。
【0098】
いくつかの実施形態において、塩が、酸とジメチルトリプタミン化合物を含む場合、酸は、水中25℃におけるpKaが約3~約5であるブレンステッド酸である。これらの実施形態において、ブレンステッド酸は、ジメチルトリプタミン化合物に対する対イオンとして、及び緩衝剤として作用し得る。したがって、塩がこのような酸を含む場合、製剤は、より大きく安定化され得る、すなわち、ジメチルトリプタミン化合物の分解は、さらに改善され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、塩は、25℃にて約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸、及び式IAの化合物を含む:
【化4】
(式中、
R1aは、独立して、-R4a、-OH、-OR4a、-O(CO)R4a、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2aは、C(xaH)3である;
R3aは、C(xaH)3である;
各R4aは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xaH 及び yaHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
【0100】
いくつかの実施形態において、塩は、25℃にて約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸と、式IBの化合物とを含む。
【化5】
(式中、
R1bは、独立して、-R4b、-OH、-OR4b、-O(CO)R4b、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2bは、C(xbH)3である;
R3bは、C(xbH)3である;
各R4bは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xbH、ybH 及び zHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
【0101】
いくつかの実施形態において、化合物は、
(i) 式IAであり、ここで、各R1aは、独立して、-OR4a、-O(CO)R4a、リン酸一水素、及び、-OHから選択されるか、又は
(ii) 式IBであり、ここで、各R1bは、独立して、-OR4b、-O(CO)R4b、リン酸一水素、及び、-OHから選択される。
【0102】
式IAは、IBの下位の式であり、式中の各zHが水素であることが認識される。
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)式IAであり、ここでR4aはメチルである、又は、(ii)式IBであり、ここでR4bはメチルである。
【0103】
いくつかの実施形態において、化合物は、任意の先行する実施形態による式IA又は式IBであり、nは、1、2、3、又は4である。
いくつかの実施形態において、化合物は、任意の先行する実施形態による式IA又は式IBであり、nは1である。
【0104】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここでnは0であり;又はnは1であり、そしてR1aは4位又は5位である;又は、化合物は、(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここでnは0であり;又はnは1であり、そしてR1bは4位又は5位である。
【0105】
いくつかの実施形態において、化合物は、任意の先行する実施形態による(i)式IAであり、ここで、各R1aは、独立して、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から選択される;又は、化合物は、(ii)式IBであり、ここで、各R1bは、独立して、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から選択される。
【0106】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここで、nは0であり;又はnは1であり、そしてR1aは、5-メトキシ、5-ブロモ、4-アセトキシ、4-リン酸一水素、4-ヒドロキシ、及び5-ヒドロキシから選択される;又は、化合物は、(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここで、nが0であり;又はnが1であり、そしてR1bは、5-メトキシ、5-ブロモ、4-アセトキシ、4-リン酸一水素、4-ヒドロキシ、及び5-ヒドロキシから選択される。
【0107】
いくつかの実施形態において、化合物は式IA又はIBであり、ここで、nは0である。
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IA(ここで、yaHは両方とも重水素である)、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IB(ここで、ybHは両方とも重水素である)である。
【0108】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IA(ここで、yaHは、両方ともプロチウムである)、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IB(ここで、ybHは、両方ともプロチウムである)である。
【0109】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここで、1つのyaHはプロチウムであり、1つのyaHは重水素である、又は、(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここで、1つのybHはプロチウムであり、1つのybHは重水素である。
【0110】
いくつかの実施形態において、化合物は式IBのものであり、ここで両方のzHは重水素である。いくつかの実施形態において、化合物は式IBのものであり、ここで両方のzHはプロチウムである。いくつかの実施形態において、化合物は式IBのものであり、ここで1つのzHはプロチウムであり、1つのzHは重水素である。
【0111】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IA(ここで、各xaHはDである)、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IB(ここで、各xbHはDである)である。いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここで、R2a及びR3aは、両方ともC(xaH)3であるか、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここで、R2b及びR3bは、両方ともC(xbH)3である。
【0112】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここで両方のC(xaH)3は同じである、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここで両方のC(xbH)3は同じである。
【0113】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここでR2a及びR3aの両方はCD3である、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここでR2b及びR3bの両方はCD3である。
【0114】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここでR2a及びR3aの両方はCH3である、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここでR2b及びR3bの両方はCH3である。
【0115】
いくつかの実施形態において、化合物は、(i)任意の先行する実施形態による式IAであり、ここで、R2aはCD3であり、R3aはCH3である、又は(ii)任意の先行する実施形態による式IBであり、ここで、R2bはCD3であり、R3bはCH3である。
【0116】
いくつかの実施形態において、C1-C4アルキルは、重水素化C1-C4アルキル、例えばCD3であってもよい。
【0117】
誤解を避けるために、本発明に含まれる特定の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物には、当該技術分野で2つ以上の名称で知られている化合物が含まれる:
化合物 N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)は、N,N-ジメチル-1H-インドール-3-エタンアミン(CAS番号61-50-7)としても知られている。
化合物 5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)は、5-メトキシ-N,N-ジメチル-1H-インドール-3-エタンアミン(CAS番号 1019-45-0)としても知られている。
化合物 4-アセトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(4-AcO-DMT)は、4-アセトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、O-アセチルシロシン(O-アセチルサイロシン)、シラセチン(psilacetin)、又は[3-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-1H-インドール-4-イル]アセテート(CAS番号 92292-84-7)としても知られている。
化合物 4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン-d6は、シロシン(サイロシン)-d6又は3-(2-(ビス(メチル-d3)アミノ)エチル)-1H-インドール-4-オールとしても知られている。
化合物 N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンは、N,N-ヘキサデューテリオ(hexadeuterio)-ジメチルトリプタミン又はD6-DMTとしても知られている。
化合物 5-ヒドロキシ-N-モノ(トリデューテロメチル)トリプタミンは、N-メチル-セロトニン-D3(CAS番号 1794811-18-9)としても知られている。
化合物 N-モノ(トリデューテロメチル)トリプタミンは、N-メチル-トリプタミン-D3(CAS番号 1794745-39-0)としても知られている。
化合物 α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミンは、D2-DMT、又は2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1-d2としても知られている。
化合物 α,α,β,β-テトラデューテロ(tetradeutero)-N,N-ジメチルトリプタミンは、D4-DMT、又は2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン-1,1,2,2-d4としても知られている。
化合物 α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンは、D10-DMT、又は2-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ビス(メチル-d3)エタン-1-アミン-1,1,2,2-d4としても知られている。
【0118】
いくつかの実施形態において、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物は、N,N-ジメチルトリプタミンである。いくつかの実施形態において、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物は、重水素化ジメチルトリプタミン化合物であり、これには、α,α-ジデューテロ(dideutero)-N,N-ジメチルトリプタミン、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、及びα,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンが含まれる。
【0119】
上記で定義した重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物の塩は、WO 2020/245133 A1、WO 2021/116503、及びWO 2021/089873 A1(いずれもSmall Pharma Ltd)に開示された合成スキームに従って合成することができ、本発明の製剤にとって特に有利な製剤原料であることが見出されている。上記の重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物は、生物学的系において半減期を延長するために使用できる動力学的同位体効果を示すことが見出されている。本発明者らは、重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物及び重水素化置換N,N-ジメチルトリプタミン化合物を含む本発明の製剤が、それらの非-重水素化アナログと比較して有意に高いCmax及び曝露を有することをインビボで見出した(図1A及び1B参照)。
【0120】
所望により、ある量のN,N-ジメチルトリプタミン及び重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物を含む本発明の製剤に使用するための組成物を調製することができ、ここで、重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物(上記で定義)に対するN,N-ジメチルトリプタミンの相対的な割合は、例えば、WO 2021/116503(Small Pharma Ltd)に記載されているように、還元剤中の水素化リチウムアルミニウムと重水素化リチウムアルミニウムとの比率を変化させることによって制御することができる。
【0121】
ある量のN,N-ジメチルトリプタミン及び/又は重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物を含む組成物は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を提供するために使用され得る(製剤が、本明細書に記載される塩の形態の1つ又は複数の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物をそれぞれ含むように)。
【0122】
製剤中に含まれる組成物は、組成物の重量に対して90%以上、95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の量の、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミンを含んでもよい。
【0123】
製剤に含まれる組成物は、組成物の重量に対して5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下の量の、N,N-ジメチルトリプタミンを含むことができる。
【0124】
製剤中に含まれる組成物は、組成物の重量に対して5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下の量の、α-プロチオ-α-デューテロ(deutero)-N,N-ジメチルトリプタミンを含んでもよい。
【0125】
いくつかの実施形態において、製剤に含まれる組成物は、組成物の重量に対して、a) 90%以上のα,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、b) 10%以下のα-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、及び、c) 2%以下のN,N-ジメチルトリプタミンを含んでもよく、ここで、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、及びN,N-ジメチルトリプタミンの重量は、合計で100%である。
【0126】
いくつかの実施形態において、製剤に含まれる組成物は、組成物の重量に対して、a) 95%以上のα,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、b) 5%以下のα-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、及び、c) 1%以下のN,N-ジメチルトリプタミンを含んでもよく、ここで、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、及びN,N-ジメチルトリプタミン化合物の重量は、合計で100%である。
【0127】
疑義を避けるために、N,N-ジメチルトリプタミンは、組成物中に存在しないか、又は組成物中に微量で存在してもよく、又は組成物の重量に対して2%以下の量で組成物中に存在してもよく、又は組成物の重量に対して1%以下の量で存在してもよい。4、5、6又は7-置換ジメチルトリプタミン化合物の場合、上記で言及した2%以下、又は1%以下のN,N-ジメチルトリプタミンは、例えば5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミンなどの非-重水素化4、5、6又は7-置換N,N-ジメチルトリプタミンを包含すると理解すべきである。例示として、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミンを含む組成物において、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミンは、組成物中に存在しないか、又は組成物中に微量で存在するか、又は組成物の重量に対して2%以下、又は1%以下の量で組成物中に存在し得る。
【0128】
本明細書で使用される「α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物」という用語は、化合物α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d2-DMT)だけでなく、他の位置で重水素化されているα,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、例えば、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d4-DMT)、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)、及び置換α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、例えば、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンなどを含む。
【0129】
本明細書で使用される用語「α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物」は、化合物α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d1-DMT)だけでなく、他の位置で重水素化されているα-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、例えば、α-プロチオ-α,β,β-トリデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d3-DMT)、α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d7-DMT)、α-プロチオ-α,β,β-トリデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d9-DMT)、及び置換α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン化合物、例えば5-メトキシ-α-プロチオ-α-デューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンなどを含む。いくつかの実施形態において、製剤中に含まれる組成物は、a) 90%以上、好ましくは95%以上の任意に置換されたN,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン化合物を含んでもよい。任意に置換されたN,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン化合物は、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d6-DMT)、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)、5-メトキシ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及び、5-メトキシ-α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンであってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、塩は、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物と、フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、及びグルコン酸からなる群より選択される酸(典型的にはフマル酸)との塩である。
【0131】
従って、塩は、以下のものを含むことができる:
N,N-ジメチルトリプタミン、α-モノデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、α,β-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、α,α,β-トリデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、α,β,β-トリデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d6-DMT)、及び、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)から選ばれるいずれか1つ又はその組み合わせ;又は
4-アセトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-アセトキシ-α-モノデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-アセトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-アセトキシ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、4-アセトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及び、4-アセトキシ-α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンから選ばれるいずれか1つ又はその組み合わせ;又は
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、5-メトキシ-α-モノデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、5-メトキシ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及び、5-メトキシ-α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンから選ばれるいずれか1つ又はその組み合わせ;又は
4-リン酸一水素-N,N-ジメチルトリプタミン、4-リン酸一水素-α-モノデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-リン酸一水素-α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン、4-リン酸一水素-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、4-リン酸一水素-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及び、4-リン酸一水素-α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミンから選ばれるいずれか1つ又はその組み合わせ;及び
フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、及び、グルコン酸からなる群より選択される酸(典型的にはフマル酸)。
【0132】
いくつかの実施形態において、塩はジメチルトリプタミンフマル酸塩であり、すなわち、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物としてのジメチルトリプタミン及びフマル酸を含む。
【0133】
ジメチルトリプタミン化合物(本明細書では、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物と互換的に使用する)は、約80~100%の純度を有することができる。時には、純度は約90~100%、例えば約95~100%である。典型的には、ジメチルトリプタミン化合物は、約99~100%の純度、すなわち99%以上の純度を有する。本明細書における純度のパーセンテージは、HPLCによって決定されるとおりである。
【0134】
本発明の製剤は、99%を超える純度の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物又はその塩を含む製剤原料(原薬)を用いて調製することが特に有利である。製剤原料(drug substance)とは、当該技術分野において理解されるように、疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防において薬理学的活性もしくは他の直接的効果をもたらすこと、又は当該患者の構造もしくは任意の機能に影響を及ぼすことを意図した活性成分を意味するが、そのような成分の合成に使用される中間体は含まない。製剤原料は、このような活性成分を1つ以上含んでいてもよいことが理解される。
【0135】
本発明の任意の側面の好ましい実施形態は、HPLCで測定した場合に99%以上の純度を有する任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物又はその塩を含む製剤原料を含む。特に好ましい実施形態は、HPLCで測定した場合に99.5%以上、さらに好ましくは99.7%以上、さらに好ましくは99.9%以上の純度を有する任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物又はその塩を含む製剤原料を含む。
【0136】
製剤内の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩の濃度は、製剤の浸透圧が約250~約350mOsm/Kgであることを条件として、遊離塩基当量で10mg/ml以上を達成するための任意の所望の濃度であってよい。ジメチルトリプタミン化合物は、20mg/mLを超える濃度であってもよい。ジメチルトリプタミン28mg/mLの濃度は、約148mOsm/kg(対イオンを考慮すると、約296mOsm/kg)を提供する。これにより、任意の緩衝剤などの製剤の他の成分によって、さらに54mOsm/kgを供給することができる。ジメチルトリプタミン化合物の塩は、20mg/mLを超える濃度、25mg/mLを超える濃度、30mg/mLを超える濃度、40mg/mLを超える濃度、50mg/mLを超える濃度、60mg/mLを超える濃度、又は70mg/mLを超える濃度(遊離塩基当量として)であってもよい。さらに、又は代替的に、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物は、約10mg/ml~約150mg/ml、約10mg/ml~約100mg/ml、約10mg/ml~約80mg/ml、約15mg/ml~約70mg/ml、約15mg/ml~約50mg/ml、又は約20mg/ml~約40mg/ml(遊離塩基当量として)の濃度であってもよい。典型的には、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物は、約25mg/ml(遊離塩基当量として)の濃度であってもよい。
【0137】
本発明の第四から第六の側面のいずれかに用いる任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩の総投与量は、好適には10mg~約150mg、好ましくは約10mg~約120mg、好ましくは約10mg~約100mg、好ましくは約10mg~約80mgである。
【0138】
上述のように、本発明の製剤は、約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する。本発明のいくつかの実施形態では、製剤の浸透圧は約250~約400mOsm/Kgである。いくつかの実施形態において、本発明の製剤の浸透圧は、約275~約325mOsm/Kg、例えば約280~約310mOsm/Kgである。典型的には、製剤の浸透圧は約295~約305mOsm/Kgである。
【0139】
時には、製剤中の任意に置換されたジメチルトリプタミン塩及び任意に緩衝剤の濃度が、所望の浸透圧を生じさせる。あるいは、所望の浸透圧は、製剤中に1つ又は複数の等張化剤を含めることによって達成され得る。したがって、いくつかの実施形態において、製剤は、等張化剤をさらに含む。本明細書において、等張化剤は、製剤内に含有されることにより、製剤の浸透圧を増加させる化学物質として定義される。上述したように、浸透圧は、溶液1kg中の浸透圧的に活性な粒子の数(溶質粒子の数)である。したがって、製剤に配合されたときに溶質として作用する化学物質は、等張化剤の定義に含まれる。
【0140】
製剤がさらに等張化剤を含む場合、等張化剤の濃度は、任意に置換されたジメチルトリプタミン及び緩衝剤などの製剤内の他の成分の濃度に依存する。例えば、等張化剤を含まない製剤が約60mOsm/kgの浸透圧を有する場合、少なくとも約190mOsm/kgが等張化剤(例えば95mMの塩化ナトリウム)によって提供されるであろう。M. F. Powell、T. Nguyen及びL. Baloianは、非経口投与(口又は消化管以外からの投与)に適した添加剤の総説を「PDA J. Pharm. Sci. Technol., 52, 238-311 (1998)」に記載している。この総説に記載されている静脈内投与が可能な可溶性添加剤はすべて、製剤に添加すると浸透圧に寄与するため、等張化剤とみなすことができる。
【0141】
本発明の製剤に使用するための適切な添加剤は、エタノール、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロロブタノール、エデト酸二ナトリウム、グリセリン、塩酸、メチルパラベン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピルパラベン、サッカリンナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、硫酸水素ナトリウム(重硫酸ナトリウム)、亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウム)、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸、クエン酸三ナトリウム、トロメタミン、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0142】
添加剤の中には、共溶媒として作用するものもある。本発明の製剤に使用するのに適した溶媒又は共溶媒は、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物から選択され得る。いくつかの実施形態において、製剤は、共溶媒を含む。いくつかの実施形態において、製剤は共溶媒を含まない。特に、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩がフマル酸塩、例えばN,N-ジメチルトリプタミンフマル酸塩又はα,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミンフマル酸塩である場合、製剤は共溶媒を含まない。
【0143】
本発明の製剤に使用するのに適した緩衝剤は、リン酸、クエン酸、酢酸、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0144】
添加剤の中には複数の機能を持つものがあることが理解される。例えば、クエン酸は緩衝剤成分、香料、又は酸化防止剤として利用され得る。pH調節剤、例えば塩酸は、等張化剤としても機能し得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、等張化剤は、以下のものからなる群より選択されるいずれか1つまたは組み合わせである:デキストロース(ブドウ糖)、塩化ナトリウム;リン酸;リン酸塩、例えば、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム;酢酸;エタノール;クエン酸;クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムなどのクエン酸塩;アルギニン;エデト酸;エデト酸ナトリウムまたはエデト酸カルシウムなどのエデト酸塩;プロピレングリコール;炭酸水素ナトリウム;水酸化ナトリウム;および塩酸。
【0146】
上記の等張化剤のいくつかは、製剤を緩衝するために使用することができる(例えば、酢酸塩、酢酸、クエン酸塩、クエン酸、リン酸塩、リン酸)。誤解を避けるために、上記に列挙した等張化剤の1つが緩衝剤として使用される場合、それは定義された等張化剤でもあることはない、すなわち、製剤が等張化剤をさらに含む場合、等張化剤は緩衝剤とは異なる。通常、等張化剤は塩化ナトリウム又はデキストロースである。
【0147】
いくつかの実施形態では、製剤は、約120mM~約140mM、例えば約125mM~約135mMの濃度の塩化ナトリウムなどの等張化剤を含む。時には、製剤内の等張化剤(塩化ナトリウムなど)の濃度は約130mMである。
【0148】
いくつかの実施形態において、製剤は、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩、水、塩基剤、任意で緩衝剤、及び任意で等張化剤及び/又はpH調節剤から本質的になる。このことは、例えば、製剤内に追加の成分が存在することが許容されるが、そのような追加の成分の量が、製剤の本質的な特性に有害な態様で実質的な影響を与えないことを意味する。任意に置換されたジメチルトリプタミン塩、水、塩基剤、任意で緩衝剤、及び任意で等張化剤及び/又はpH調節剤を製剤に含める意図は、筋肉内注射及びネブライザー吸入の両方に適し、保存時に少なくとも数週間安定である任意に置換されたジメチルトリプタミンの医薬製剤を製造することであることを考慮すると、有害な態様で製剤の安定性又は注射適性(例えば、その浸透圧又はpH)に実質的な影響を及ぼす成分の含有は、製剤から除外されることが理解される。一方、製剤の安定性又は注射適性に有害な態様で実質的な影響を及ぼさない成分の存在は、含まれることが理解される。このような成分には、抗酸化剤及び抗菌防腐剤が含まれる。抗酸化及び抗菌特性を有するものを含む医薬品添加剤及びその特性の概要については、「P. J. Sheskey, W G Cook and C G Cable, Handbook of Pharmaceutical Excipients, Eighth Edition, Pharmaceutical Press, London 2017」が参照される。
【0149】
塩基剤は、製剤のpHを必要なpH範囲、例えばpH5からpH6に調整する。任意に置換されたジメチルトリプタミン塩、水、及び緩衝剤を含む製剤のpHは、しばしば低く、例えばpH5未満であるため、塩基剤によるpH調整が必要となる場合がある。当業者は、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩の分解のリスクなしに溶液のpHを調整するために適切な塩基剤を評価することができる。塩基剤は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであってもよい。
【0150】
いくつかの実施形態において、製剤は酸化防止剤をさらに含む。本発明の製剤に一般的に使用される好適な酸化防止剤としては、クエン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、製剤は抗菌防腐剤(抗菌性保存剤)をさらに含む。本発明の製剤に使用するのに適した抗菌防腐剤としては、プロピルパラベン(n-propyl parahydroxybenzoate)、塩化ベンザルコニウム及びそれらの混合物が挙げられる。
【0152】
好ましくは、製剤は5ppm未満、好ましくは2ppm未満、例えば0.1ppm~2ppmの酸素含有量を有する。当業者は、溶存酸素計(例えば、Keison Products社から入手可能なJenway 970 Enterprise Dissolved Oxygen Meter: http://www.keison.co.uk/products/jenway/970.pdf)を使用するなど、当該技術分野において適切であることが知られている任意の技術を用いて、製剤の酸素含有量を決定することができる。
【0153】
製剤は、任意の適切な容器に保存することができる。いくつかの実施形態において、容器は、10ml以下、5ml以下、4ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積を有することができる。いくつかの実施形態において、製剤の分解をさらに改善するために、製剤は、紫外線の透過を防止するのに適合した容器(琥珀色のガラスバイアルなど)に保存される。他の実施態様では、製剤が貯蔵される容器はそのように適合されておらず(例えば、透明ガラス製であってもよい)、所望により、二次包装(例えば、製剤を含む容器がその中に配置され得る包装)によって紫外線に対する保護が提供される。多くの場合、容器は気密であり、製剤は不活性雰囲気下、例えば窒素又はアルゴン下、典型的には窒素下で保存される。製剤は室温、例えば約20~約30℃で、又はより低い温度、例えば約2~約8℃で保存することができる。あるいは、製剤の分解をさらに改善するために、冷凍庫で保存してもよい。
【0154】
好ましくは、製剤の酸素含有量を減らすために、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで製剤をスパージする。
【0155】
第二の側面から見ると、本発明は、第一の側面の製剤を調製するのに適したキットを提供し、前記キットは、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;塩基剤、任意で緩衝剤(前記塩とは別個の);及び、任意で等張化剤及び/又はpH調節剤を含む。本発明の第二の側面の好ましい実施形態において、キットは、薬理学的支援心理療法(サイケデリック支援療法)に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量(5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内)を含む。
【0156】
また、第一の側面の製剤を生成するためのキットも提供され、このキットは以下のものを含む:
・任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を含む第一の組成物;及び
・塩基剤と、任意で緩衝剤(前記塩とは別の)、及び/又は等張化剤、及び/又はpH調節剤を含む第二の組成物、
ここで、第一及び第二の組成物は水と混合され、得られた混合物は第一の側面の製剤を生成する。
【0157】
疑義を避けるために、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩及び緩衝剤に関連する実施形態、ならびに本明細書で定義される本発明の第一の側面の他の特徴及び実施形態は、第二の側面に準用される。例えば、キットの任意に置換されたジメチルトリプタミン塩は、25℃において約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸と、式IA又は式IBの化合物を含んでもよく、及び/又は、緩衝剤は、酢酸塩及び酢酸を含んでもよい。
【0158】
キット内の任意に置換されたジメチルトリプタミン塩は、固体、例えば粉末又は結晶の形態であってもよい。固体形態の任意に置換されたジメチルトリプタミン塩の分解を改善するために、キットに組み込む前に塩を凍結乾燥(フリーズドライ)してもよい。塩の凍結乾燥は、溶媒(典型的には水)の存在下で塩を凍結させ、昇華により溶媒を塩から分離することを含む。
【0159】
キットが等張化剤をさらに含む場合、本明細書で定義される本発明の第一の側面の任意の等張化剤に関する実施形態は、第二の側面に準用される。例えば、等張化剤は、上記の群から選択される任意の1つ又は組み合わせであってもよい。
【0160】
第三の側面から見ると、本発明は、第一の側面の医薬製剤を調製する方法を提供する。この方法は、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩、塩基剤、任意で緩衝剤、及び任意で等張化剤及び/又はpH調節剤を、水と接触させることを含む。本発明の第三の側面の好ましい実施形態において、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩は、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で、薬理学的支援心理療法(サイケデリック支援療法)に使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を含む。疑義を避けるために、本発明の第一の側面の実施形態は、第三の側面にも準用される。例えば、塩はジメチルトリプタミンのフマル酸塩であってもよく;緩衝剤は酢酸及び酢酸塩又はリン酸及びリン酸塩を含んでもよく;そして等張化剤は塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0161】
本方法の接触は、様々な方法で達成できることが理解される。多くの場合、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩を水に溶解して第一の溶液を形成し、これに塩基剤及び任意に緩衝剤を添加して溶解し、第二の溶液を形成する。等張化剤又はpH調節剤が使用される場合、それはしばしば第二の溶液に添加され、溶解される。追加の溶媒又は共溶媒を第一の溶液又は第二の溶液に添加してもよい。
【0162】
いくつかの実施形態において、緩衝剤の水溶液が塩と接触され、ここで、緩衝剤の水溶液は、約5から約6.5のpH、例えば、約5から約6のpH、又は約5.3から約6のpH、又は約5.5から約6のpHを有する。いくつかの実施形態において、緩衝剤の水溶液は、5から6のpHを有してもよい。いくつかの実施形態において、緩衝剤の水溶液は、約5.5又は約6のpHを有する。
【0163】
製剤内の任意に置換されたジメチルトリプタミン塩は、遊離塩基としての任意に置換されたジメチルトリプタミンと、pHを安定化し、プロトン化されたときに任意に置換されたジメチルトリプタミンに対して対イオンとして作用するのに適した量の緩衝剤を含む水溶液とを接触させることによって形成することができる。従って、本発明の方法は、遊離塩基の形態の任意に置換されたジメチルトリプタミンと、緩衝剤、水、及び任意に等張化剤とを接触させることを含み得る。
【0164】
本方法はさらに、前記接触から得られる溶液のpHを調整するために塩基剤を使用することを含む。接触工程から得られる溶液のpHは通常低いので、その後のpH調整工程が必要である。pH調整は多くの場合、適切な塩基剤、例えば強塩基剤と溶液とを接触させることを含む。当業者は、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩の分解のリスクなしに、前記接触から生じる溶液のpHを調整するのにどの塩基が適しているかを評価することができる。前記接触から生じる溶液のpHは、塩基剤(適切なアルカリ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであってもよい)で調整される。
【0165】
いくつかの実施形態において、pHは、所望のpHを達成するために、pH調節剤でさらに調整される。pH調節剤は、適切な酸、例えば、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リン酸、マレイン酸、及び硫酸から選択される酸、又はそれらの混合物であってよい。好ましくは、pH調節剤は、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、及び硫酸、又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、本発明の製剤は、塩酸であるpH調節剤を含む。
【0166】
上述したように、製剤の分解をさらに改善するために、製剤が貯蔵される容器内の全酸素含有量を最小化することが望ましく、容器内の酸素は製剤と容器内のヘッドスペース(もしあれば)との間で平衡化される。従って、製剤を不活性雰囲気下で保存することが望ましく、例えば、ヘッドスペースをパージして、その酸素含有量を空気中に通常見出される約20%から、例えば、1%未満又は0.5%未満に減少させることができる。さらに、又は代替的に、いくつかの実施形態において、本方法は、前記接触から得られた溶液を、窒素又はアルゴンなどの不活性ガス、典型的には窒素でスパージングすることをさらに含む。
【0167】
上述のように、ジメチルトリプタミンは、うつ病、強迫性障害、及び物質乱用(薬物乱用)障害の治療において治療的役割を果たす可能性がある(S. A. Barker, 2018, 上掲)。したがって、第四の側面から見ると、本発明は、医薬品として使用するための、又は心理療法と組み合わせて使用するための、第一の側面の製剤又は第二の側面のキットを提供する。本発明の第四の側面の好ましい実施形態において、製剤は、薬理学的支援心理療法、又はサイケデリック支援療法において使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で含む。
【0168】
第五の側面から見ると、本発明は、患者の精神又は神経障害(精神又は神経疾患)を治療する方法に使用するための、第一の側面の製剤又は第二の側面のキットを提供する。本発明の第五の側面の好ましい実施形態において、製剤は、薬理学的支援心理療法又はサイケデリック支援療法において使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で含む。
【0169】
多くの場合、精神障害又は神経障害は、(i)強迫性障害、(ii)うつ病性障害、(iii)不安障害、(iv)物質乱用及びギャンブル障害、及び(v)意欲消失障害(回避性障害)からなる群より選択される。多くの場合、障害は、大うつ病性障害、治療抵抗性大うつ病性障害、産後うつ病、強迫性障害及び摂食障害(強迫性摂食障害など)からなる群より選択される。
【0170】
第六の側面から見ると、本発明は、それを必要とする患者に第一の側面の製剤を投与することを含む、精神障害又は神経障害を治療する方法を提供する。本発明の第六の側面の好ましい実施形態において、製剤は、薬理学的支援心理療法又はサイケデリック支援療法において使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効量を、5ml以下の容積内、好ましくは4ml以下、3ml以下、2.5ml以下、2ml以下、1ml以下、又は0.5ml以下の容積内で含む。精神障害又は神経障害は、第五の側面に関連して記載されるもののいずれかであってもよい。例えば、障害は、大うつ病性障害、治療抵抗性大うつ病性障害、産後うつ病、強迫性障害、及び摂食障害(強迫性摂食障害など)からなる群より選択され得る。
【0171】
本発明の第六の側面において、第一の側面の製剤は、心理療法と組み合わせて投与することができる(すなわち、薬理学的支援心理療法で)。
【0172】
障害(疾患)を治療するために、製剤は、ジメチルトリプタミン化合物を有効量で、すなわち、障害の進行速度を減少もしくは停止させるのに十分な量、又は障害を改善もしくは治癒させるのに十分な量で含み、その結果、所望の治療効果又は抑制効果をもたらす。
【0173】
製剤は筋肉内注射に適しているため、患者への投与は通常、製剤の注射を含む。
この製剤は、ボーラス注射に適している場合があり、この場合、任意に置換されたジメチルトリプタミン塩の個別量を、体内において任意に置換されたジメチルトリプタミン濃度が速やかに上昇するように、一回の注射で投与する。
【0174】
通常、IM注射では、5ml以下の投与量を、19-27針ゲージ(needlegauge)、より典型的には20-25針ゲージを用いて投与する。本発明の濃縮製剤は、より高い針ゲージ、好適には22-27を使用して、より少ない容積の投与を可能にし、注射に伴う痛みを軽減し得る。注射容積は、約0.5~約4ml、約0.5~約3ml、又は約0.5~約2.5mlとすることができる。
【0175】
製剤はネブライザーによる吸入にも適しているため、患者への投与はネブライザーを用いた製剤の吸入を含みうる。
【0176】
本発明の製剤が、重水素化N,N-ジメチルトリプタミン化合物、例えば、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d2-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d4-DMT)、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d6-DMT)、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、及びα,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)を含む場合、より低い用量が有効である可能性があり、本発明の製剤を低用量(容積)に特に適したものとする。このことは、IM製剤をより広範囲の注射部位に投与できるという利点を有する。本製剤の高濃度及び低用量はまた、広範囲のネブライザー装置の使用を可能にし、より短い吸入時間を可能にし得る。
【0177】
第十の側面において、本発明は、凍結乾燥(すなわちフリーズドライ)された本発明の第一の側面で定義されるような製剤を含む、凍結乾燥粉末製剤を提供する。
【0178】
凍結乾燥(フリーズドライ又はクライオデシケーション[cryodesiccation]としても知られる)は、低温で行われる乾燥プロセスである。凍結乾燥は一般に、温度及び圧力を、物質の三重点未満に低下させ、昇華によって凍結溶媒(例えば水氷)を除去することを含む。本明細書に開示されるような水性組成物の場合、凍結乾燥は、約-50℃~-80℃、好ましくは約-70℃の温度、及び約1000Pa(0.01bar)~約100Pa(0.001bar)、好ましくは約800Pa(0.008bar)の圧力で実施され得る。
【0179】
第十一の側面において、本発明は、第十の側面で定義される凍結乾燥粉末製剤を調製する方法であって、本発明の第一の側面で定義される製剤を凍結乾燥により乾燥することを含む方法を提供する。
【0180】
第十二の側面では、本発明は、水性製剤の調製方法を提供し、これには、第十の側面で定義される凍結乾燥粉末製剤又は第十一の側面の方法で調製される凍結乾燥粉末製剤を水に混合して、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、前記塩とは別個の緩衝剤、塩基剤及び水を含む製剤を提供し、約5~約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する製剤を提供することが含まれる。製剤は、約5から約6のpH、又は5から6のpHを有することができる。誤解を避けるために、本発明の第一の側面の実施形態は、本発明の第十、第十一及び第十二の側面に準用される。
【0181】
疑義を避けるために、本発明の各側面に関連する実施形態は、本発明の他の側面に準用される。本明細書で言及される各参考文献は、各参考文献の全内容が本明細書にすべて記載されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
PCT/EP2021/073189、英国特許出願番号2119021.0、及び、米国特許出願番号17/574,424の全内容、ならびに有効に主張された優先権書類は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
本発明の製剤に使用するための化合物の合成は、WO 2020/245133 A1、WO 2021/116503、及び、WO 2021/089873 A1(すべてSmall Pharma Ltd)に記載されているスキーム及び実施例に従って実施することができる。重水素化化合物については、WO 2020/245133 A1、WO 2021/116503、及びWO 2021/089873 A1に記載の方法に従って重水素化の程度を決定した。
【0184】
[実施例]
実施例1:N,N-ジメチルトリプタミン
N,N-DMT 220.9g(遊離塩基として)を、WO 2021/089873のスキーム2及び実施例のセクションに開示された化学を使用して、N,N-DMTフマル酸塩として調製した。さらに4~6gの六種の部分重水素化混合物も、条件を変更して製造した。
【0185】
実施例2:重水素化N,N-ジメチルトリプタミン
DMT化合物の重水素化混合物の合成
固体LiAlH4/LiAlD4混合物を用いる修正合成法が採用され、この方法では、1.8当量のLiAlH4/LiAlD4が使用された(0.9当量のLiAlH4に対して。WO 2021/089873に開示されているように、N,N-ジメチルトリプタミンのために上述したプロセスを使用する)。重水素化ジメチルトリプタミン化合物には、α-プロチオ,α-デューテロ-ジメチルトリプタミン及びα,α-ジデューテロ-ジメチルトリプタミンが含まれる。
【0186】
6つの重水素化反応のデータを下表に示す:
【0187】
5-及び4-置換ジメチルトリプタミン及び重水素化ジメチルトリプタミン化合物は、適切な出発物質を用いて、類似のプロセスで調製することができる。5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン又は4-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミンを合成するために、3-インドール酢酸を、それぞれ5-メトキシインドール-3-酢酸(後述のα,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンの合成を参照)又は4-メトキシインドール-3-酢酸に置き換えることができる。これらはいずれも市販されている(5-メトキシインドール-3-酢酸については、例えばSigma-Aldrichから(コードM14935-1G)、4-メトキシインドール-3-酢酸については、例えばAaron chemicals(コードAR00VTP1)を参照のこと)。
【0188】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(Sigma-Aldrich コードM-168-1ML参照)、4-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(Cayman Chemical コード9000895参照)、4-アセトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(Cayman Chemical コード14056参照)、3-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-1H-インドール-4-イル ホスフェート(シロシビン、Sigma-Aldrich CAS番号520-52-5参照)も市販されている。
【0189】
実施例3:α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミン
α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンの合成
ステージ1:
N2下で、100mLの三つ口フラスコに、5-メトキシインドール-3-酢酸(3.978g、19.385mmol)、HOBt(~20%wet)(3.927g、23.261mmol)及びDCM(40mL)を投入した。次に、EDC.HCl(4.459g, 23.261mmol)を<30℃で15分かけて分割投入した。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した後、2Mジメチルアミン(14.54mL, 29.078mmol)を<25℃で15分かけて滴下した。1時間撹拌した後、HPLCはSMが残っていないことを示した。反応混合物に10%K2CO3(20mL)を加え、5分間撹拌した後、分離させた。下層の水層を除去し、DCM(10mL×2)で逆抽出した。有機抽出物を合わせ、飽和食塩水(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過した。濾液を減圧下45℃で濃縮し、HPLCで純度95.7%の活性生成物3.898g(収率=87%)を得た。
【0190】
ステージ2:
N2下で100mLの三つ口フラスコに、ステージ1のメトキシ誘導体(3.85g、16.586mmol)及びTHF(19.25ml)を投入した。次に、THF中の2.4M LiAlD4(6.22mL, 14.927mmol)を<40℃で30分かけて滴下した。反応混合物を60℃に1時間加熱し、HPLCで0.1%のSMが残存していることを確認した。次いで、反応混合物を周囲温度まで冷却し、25%ロッシェル塩(38.5mL)を<30℃で30分かけて滴下してクエンチした。得られた懸濁液を1時間撹拌した後、分離させた。下層の水層を除去し、上層の有機層を飽和食塩水(9.6mL)で洗浄した。その後、有機物をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した後、EtOH(10mL×2)から共沸させた。これにより、HPLCで91.5%の純度で3.196gの活性生成物(収率=88%)が得られた。
【0191】
ステージ3:
N2下で50mLの三つ口フラスコに、フマル酸(1.675g, 14.430mmol)とステージ2のメトキシ誘導体(3.15g, 14.299mmol)のEtOH(37.8mL)溶液を投入した。その後、混合物を75℃に1時間加熱したが、予想通り溶液は得られず、混合物をさらに過熱し還流(78℃)したが、やはり溶液は得られなかった。そこで、懸濁液を0~5℃に冷却し、濾過し、EtOH(8mL×2)で洗浄した後、50℃で一晩乾燥した。これにより、HPLCで純度99.9%の物質3.165g(収率=65%)が得られた。
【0192】
本発明の製剤に使用するためのさらなる化合物は、WO 2021/116503に記載のプロセスに従って調製することができる。
【0193】
実施例4:d 6 -ジメチルトリプタミン
d6-DMTの合成
ステージ1
【化4】
【0194】
EDC.HCl(15.7g, 81.90mmol)を、室温でDCM(108mL)中の3-インドール酢酸(12.0g, 68.50mmol)とHOBt.H2O(1.16g, 75.75mmol)に加えた。反応物を1時間撹拌した後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(35.6mL, 205.75mmol)及びd6-ジメチルアミン.HCl(9.0g, 102.76mmol)を加えた(温度は30℃以下に維持)。反応物を室温で1時間撹拌した後、HPLCで分析したところ、生成物は65.6%であり、3-インドール酢酸は28.9%残存していた。DIPEA(11.9mL, 68.78mmol)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。HPLCの結果、変換率に変化はなかった。炭酸カリウム水溶液(6.0g、水54mL中)を加え、相を分離した。水相をDCM(2×30mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(2×30mL)、次いでクエン酸水溶液(20w/w%、50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過した。濾液を除去し、得られた固体をTBME(120mL)でスラリー化し、濾過により単離した。フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、8.34gの目的生成物を得た(収率58%)。1H NMRにより生成物の同一性が確認された。
【0195】
ステージ2
【化5】
【0196】
LiAlH4(THF中1M、17.3mL、17.28mmol)を、THF(10mL)中のステージ1(4.0g、19.20mmol)の懸濁液に<30℃で加えた。得られた反応物を60~65℃に加熱し、2時間撹拌した。HPLC分析は、97.3%の生成物が形成され、ステージ1が完全に消費されたことを示した。反応物を室温まで冷却し、<30℃にて水性ロッシェル塩(10g、30mLの水中)でクエンチした。1時間撹拌後、相を分離した。水相をTHF(20mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、除去して(エタノールと共沸、20mL)、所望の生成物を琥珀色のオイル(3.97g)として得た。1H NMRにより生成物の同一性が確認され、8.5%のエタノールが存在することが示され(THFは含まず)、3.63gの活性収量(97%)が得られた。
【0197】
ステージ3
【化6】
【0198】
d6-DMT遊離塩基(3.6g活性、18.53mmol)を、エタノール(43mL)に室温で溶解した。フマル酸(2.15g, 18.53mmol)を加え、溶液を75℃に加熱した(加熱中に固体が結晶化し、再溶解しなかった)。得られた懸濁液を0~5℃に冷却し、1時間撹拌した。固体を濾過により単離し、エタノール(2×7mL)で洗浄し、乾燥させた。50℃の真空オーブンでさらに乾燥させると、目的のd6-DMTフマル酸塩(4.98g, 87%)が得られた。
【0199】
実施例5:d 8 -ジメチルトリプタミン
d8-DMTの合成
ステージ1(3-インドール酢酸とd6-ジメチルアミンのカップリング)は、上記の実施例4のステージ1について記載したプロセスに従って実施した。
【0200】
ステージ2
【化7】
【0201】
LiAlD4(THF中1M、17.3mL、17.28mmol)を、THF(10mL)中のステージ1の生成物(4.0g、19.20mmol)の懸濁液に<30℃で加えた。得られた反応物を60~65℃に加熱し、2時間撹拌した。HPLC分析は、97.3%の生成物が形成され、ステージ1が完全に消費されたことを示した。反応物を室温まで冷却し、<30℃にて水性ロッシェル塩(10g、30mLの水中)でクエンチした。1時間撹拌後、相を分離した。水相をTHF(20mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、除去して(エタノールと共沸、20mL)、所望の生成物を琥珀色のオイルとして得た(4.01g)。1H NMRにより生成物の同一性が確認され、8.6%のエタノールが存在することが示され(THFは含まず)、3.66gの活性収量(97%)が得られた。
【0202】
ステージ3
【化8】
【0203】
d8-DMT遊離塩基(3.6g活性、18.53mmol)を、エタノール(43mL)に室温で溶解した。フマル酸(2.15g, 18.53mmol)を加え、溶液を75℃に加熱した(加熱中に固体が結晶化し、再溶解しなかった)。得られた懸濁液を0~5℃に冷却し、1時間撹拌した。固体を濾過により単離し、エタノール(2×7mL)で洗浄し、乾燥させた。50℃の真空オーブンでさらに乾燥させると、目的のd8-DMTフマル酸塩(4.62g, 81%)が得られた。
【0204】
実施例6:d 6 -5-メトキシジメチルトリプタミン
d6-5-MeO-DMTの合成
ステージ1
5-メトキシ-3-インドール酢酸とd6-ジメチルアミンのカップリングは、上述の実施例4のステージ1について記載したプロセスと類似のプロセスにより、20gスケールで実施した。フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製により、淡褐色固体(87%)が得られ、HPLCによる純度は97.8%であった。分子量:238.32
【0205】
ステージ2
実施例6のステージ1の生成物を、実施例4のステージ2について記載したプロセスに従って、THF中でLiAlH4と反応させた。反応は9gスケールで行い、d6-5-MeO-DMTを琥珀色のオイルとして生成し、収率は8.22g(活性7.40g、87.3%)、HPLCによる純度は98.4%であった。分子量:224.34
【0206】
ステージ3
d6-5-MeO-DMTのフマル酸塩を、実施例4のステージ3について記載したプロセスに従って製造した。6.04g(65%)のオフホワイトの固体が得られ、HPLCによる純度は99.61%であった。NMR及びXRPDデータは、ヘミ塩が単離されたことを示した。分子量:564.74(ヘミ塩として)
【0207】
実施例7:d 8 -5-メトキシジメチルトリプタミン
d8-5-MeO-DMTの合成
ステージ1
5-メトキシ-3-インドール酢酸とd6-ジメチルアミンのカップリングは、上述の実施例4のステージ1について記載したプロセスと類似のプロセスにより、20gスケールで実施した。フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製により、淡褐色固体(87%)が得られ、HPLCによる純度は97.8%であった。分子量:238.32
【0208】
ステージ2
実施例7のステージ1の生成物を、実施例5のステージ2について記載したプロセスに従って、THF中9gスケールでLiAlD4と反応させた。精製により、8.12g(7.58g活性、88.7%)の生成物d8-5-MeO-DMTが琥珀色のオイルとして得られ、HPLCによる純度は97.9%であった。分子量:226.35
【0209】
ステージ3
d8-5-MeO-DMTのフマル酸塩を、実施例4のステージ3について記載したプロセスに従って製造した。生成物d8-5-MeO-DMTフマル酸9.6gが、HPLCによる純度99.71%で得られた。分子量:342.42
【0210】
【0211】
D6-5-ヒドロキシジメチルトリプタミン 及び d8-5-ヒドロキシジメチルトリプタミンは、出発物質として5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸を用いて、それぞれ実施例6及び7について記載したものと類似のプロセスにより調製することができる。あるいは、d6-5-ヒドロキシジメチルトリプタミン 及び d8-5-ヒドロキシジメチルトリプタミンは、それぞれd6-5-メトキシジメチルトリプタミン 及び d8-5-メトキシジメチルトリプタミンから、標準的な手順、例えばBBr3脱メチル化などを用いて5-メトキシ基を脱メチル化することにより調製することができる。
【0212】
実施例8:in vivoでの薬物動態(PK)プロファイルの検討
N,N-ジメチルトリプタミン(DMT、SPL026)、α,α-ビス-重水素-N,N-ジメチルトリプタミン(d2-DMT、SPL028i)、及び、α,α-ビス-デューテリオ(deuterio)-N,N-ヘキサデューテリオ-ジメチルトリプタミン(d8-DMT、SPL028viii)の筋肉内投与後の薬物動態(PK)プロファイルを、ラットでin vivo調査した。
【0213】
【0214】
方法
12匹の雄(7-8週齢)のSprague Dawleyラット(体重250~300g)に、以下のように投与した:
【0215】
【0216】
【0217】
SPL026とSPL028viiiを動物間で直接比較し、動物間変動による交絡の影響を回避するため、3.5mg/kg SPL026フマル酸塩、及び、3.5mg/kg SPL028viiiフマル酸塩のカセット用量を4匹の異なる雄性動物に単回IM投与した。3.5mg/kg及び10mg/kgのSPL028iフマル酸塩を4匹の異なる雄性動物に単回IM投与した。
【0218】
投与手順
投与当日の朝、動物の体重を測定し、体重と特定の投与容積に基づく用量を投与した。
・IM投与装置は、適切なサイズのインスリンシリンジからなる。注射部位は投与当日の朝に剃毛した。投与中、投与量は大腿筋に直接注入された。
【0219】
PKサンプリング
投与後、連続全血サンプル(約200μL)を、留置カニューレを介して側尾静脈から個別のK2EDTA処理容器に採取する。サンプルは投与後以下の時間に採取された:
IM:投与前、5分、10分、25分、30分、45分、60分、90分、120分、180分
血液サンプルは冷却ブロックに置かれた後、10,000g、2分間、約4℃で遠心分離され、得られた血漿が抜き取られる。すべてのサンプルは約-80℃で保存される。
【0220】
バイオアナリシス
ラットK2EDTA血漿中のDMT、d8-DMT及びd2-DMTのバイオアナリシスは、LC-MS/MSを用いて行われた。以下の表は、適格であった2つの方法の詳細である:
【0221】
DMT及びd8-DMTの濃度は、ラット血漿20.0μLを用いて、DMT、d8-DMT、及びd2-DMTの目標定量下限値(LLOQ:target Lower limit of Quantification)約0.310ng/mLで定量し、以下の方法で定性した:
・アッセイの直線性
8つ以上の濃度レベル及び対照ブランク及びゼロ(ISのみ)を含む検量線を二部作成する。
許容基準:較正標準試料(ゼロ以外の試料)の75%以上が、調製した公称濃度の±20%以下の相対誤差(RE)(定量下限では±25%RE以下)でなければならない。
・感度
LLOQ濃度における最小シグナル対ノイズが、5:1であること。
・精度(Precision)と正確さ(Accuracy)
低濃度、中濃度、高濃度のQCを含む単一の分析バッチを複製(n=6)。
許容基準:バッチ内精度(CV)及び正確さ(RE)≦20%
・選択性
少なくとも1つのソースからの対照ブランクマトリックスのクロマトグラムを定性的に評価し、潜在的な干渉ピークの存在を確認すること。
許容基準:共溶出干渉の反応は、LLOQ較正標準ピーク面積の25%以下でなければならない。共溶出干渉の反応は、内部標準物質のゼロサンプルピーク面積の5%未満でなければならない。
・安定性
複製(最小n=3)のQC Medのマトリックス中の安定性は、DMTのみについてサンプル処理温度で少なくとも2時間評価する。
許容基準:精度(CV)及び正確さ(RE)≦20%。
・キャリーオーバー
定量上限(ULOQ:upper limit of quantification)較正標準の直後に分析された少なくとも1つの対照ブランクマトリックス試料(キャリーオーバーブランク)において評価される。
許容基準:分析物のキャリーオーバーは、LLOQ標準物質の分析物ピーク面積の25%以下であること。内部標準物質のキャリーオーバーは、LLOQ標準試料中の内部標準物質ピーク面積の5%以下であること。
【0222】
PKパラメータ
DMT(SPL026)、d8-DMT(SPL028viii)、及びd2-DMT(SPL028i)の血漿中薬物動態パラメータは、各動物の血漿濃度-時間プロファイルを用いた非コンパートメント解析により導出した。
【0223】
結果
結果を図1に示す。これらのデータは、3.5mg/kgのIM投与後、DMT(SPL026)と比較して、d8-DMT(SPL028viii)及びd2-DMT(SPL028i)の方が全体的な曝露量が多いことを示している。
図1A及び1Bは、in vivoにおける3.5mg/kgフマル酸塩のIM投与(カセットとして添加)後の平均DMT(SPL026)、d8-DMT(SPL028viii)、及びd2-DMT(SPL028i)濃度の経時的変化を示す線形プロット及び片対数プロットである。
図1A-線形プロット、図1B-片対数プロット、SEM エラーバー
【0224】
図2A及び2Bは、in vivoにおける3.5mg/kg及び10mg/kgのフマル酸塩のIM投与後の平均d2-DMT(SPL028i)濃度の経時的変化を示す線形プロット及び片対数プロットである。
図2A-線形プロット、図2B-片対数プロット、SEM エラーバー
【0225】
PKパラメータに対する投与群の影響を解析するため、ペアワイズ比較のANOVAを実施した。SPL026群とSPL028viii群との間、及びSPL026群とSPL028i群との間で、両群への等価IM用量投与後の時間0から推定される無限大までの平均曲線下面積(AUC0-inf)に、統計学的に有意な差が認められたことから、SPL028viii及びSPL028iは、SPL026と比較して、単回IM投与後の全身曝露量が有意に多いことが示された。
【0226】
【0227】
DMT(SPL026)と比較して、d8-DMT(SPL028viii)及びd2-DMT(SPL028i)では、IM投与後のCmaxが有意に高かった(p=0.005**)。
d2-DMT(SPL028i)の10mg/kg投与時のCmaxは、3.5mg/kg投与時と比較して144%増加し、AUC0-infは237%増加した。Cmax及びAUC0-infにおける用量反応関係レベル差は互いに有意に異なり(それぞれ、p<0.05*及びp<0.001***)、有意な用量反応関係が示唆された。
【0228】
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される。
【0229】
製剤開発
以下に記載される濃度はすべて、遊離塩基(すなわちフマル酸塩の対イオンが存在しない)で表されている。そうするために、供給された製剤原料の特定のバッチに1.59の補正係数を適用している。
【0230】
実験の詳細
N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)フマル酸塩製剤の安定性を、濃度20mg/mLにて、pH 4、5、6、7、8、9で評価した。pHを変化させるために、Britton-Robinson(B-R)緩衝系(ユニバーサル緩衝剤としても知られる)を使用した。B-R緩衝系は通常、0.04Mのホウ酸、0.04Mのリン酸、0.04Mの酢酸の混合物からなり、0.2M水酸化ナトリウムで目的のpHに滴定される。このシステムでは、浸透圧を一定に保ちながらpHを変化させることができる。
【0231】
DMTフマル酸塩を公称濃度20mg/mLにてそれぞれ含む七種類の溶液をBritton-Robinson(B-R)緩衝液で調製した。各試験製剤にDMTフマル酸塩を溶解させ(DMTフマル酸塩は非常に溶解性が高く、各試験製剤で旋回と振盪を必要とするだけであった)、水酸化ナトリウム溶液を用いて各試験製剤のpHを、pH4、5、6、7、8及び9に調整した。
【0232】
DMTフマル酸塩20mg/mL濃度の溶解性は、pH4、5、6、7で確認され、これらの溶液は無色透明であった。pH8のサンプルは濁っており、pH9とpH10のサンプルは沈殿物を含んでいた。周囲条件下で一晩保存した後、各溶液のpHを測定したが、最初のpH値から変化を示さなかった。その後、各サンプルをろ過し、含有量を分析した。各溶液(沈殿物が存在する高pH溶液を含む)には、ほぼ同じ含有量のDMTフマル酸塩が含まれていた。
【0233】
pH安定性
公称濃度2.5mg/mLのDMTフマル酸塩のpH安定性を、40mM Britton-Robinson緩衝液中で、緩衝液のpH範囲4~9(公称)で評価した。各製剤のpHは、調製時、40℃で7日間保存後、さらに40℃で3日間・50℃で7日間(すなわち、さらなる保存期間は合計で10日間)保存した後に測定した。これらの製剤の分析は、調製時、続いて7日間保存後、及び17日間保存後に、含有量(アッセイ)と関連物質について行った。
【0234】
さらなる試験のために、pH7(公称)の溶液を2アリコート余分に採取し、1つは窒素でスパージし、もう1つには強いUV光を4時間照射した。これは、1 ICH単位に相当する(200ワット時 UVA、60万luxhour)。
【0235】
各製剤を調製する際、0.14単位(pH4製剤)から1.29単位(pH9製剤)の範囲でpHの低下がみられたが、これは製剤原料が酸性であるためであった。一旦調製された各製剤のpHは、その後の2つの安定性時点で安定したままであった(表1)。
【0236】
DMTフマル酸塩の濃度を、調製時及びその後の二回の安定性時にHPLCで測定した(表2)。すべての結果から、7日目も17日目も有意な濃度変化はなく、正確な調製が確認された。実験期間中の唯一の有意な変化は、公称pH7の製剤のアリコートに光ストレスを与えた後の濃度低下であった。これは、観察される分解物の有意な増加を伴っていた。
【0237】
関連物質に関しては、全ピーク面積の0.05%より大きなピークのみが報告されている。関連物質データの要約を表3に、個々の値を表4(40℃で7日間保管)及び表5(40℃で10日間保管し、さらに50℃で7日間保管)に示す。
【0238】
調製時、関連物質のピークは存在しなかった。7日目には、pH9の製剤のみが相対保持時間1.11にピークを示した。7日間の高温保存後に観察されたさらなるピークはごくわずかであったが、製剤にさらに負荷をかけ(保存温度を経時的に上昇させた)、17日間保存後の分析では、いくつかの製剤にさらなるピークが存在し、ピークの数及びピーク面積がpHの上昇とともに増加するという明確な傾向が認められた(ピーク無し(pH4)から、0.61%の総ピーク面積を有する3つのピーク(pH9))。窒素をスパージした製剤(pH7)は、スパージしていない同等の製剤よりも有意に堅牢であり、酸化が分解経路であることが確認された。光ストレスを与えた製剤は、最も分解された試料で、総関連物質値は1.68%であった。
【0239】
【表1】
表1は、pH安定性がpHの上昇とともに低下することを示している(特にpH≧7の製剤について)。
【0240】
【表2】
表2からわかるように、公称pH≧7の溶液中のDMTフマル酸塩濃度は、17日にわたり減少した。
【0241】
【表3】
表3は、関連物質の量がpHの上昇とともに増加し、安定性が低下していることを明確に示している。
【0242】
【表4】
【0243】
【表5】
加速条件下では、17日後の関連物質の総量は、pH7以上の製剤で増加することがわかった。
【0244】
上記の表1~5に示したデータは、試験した製剤の安定性が、pHの上昇とともに低下することを明確に示している。特に、pHが7未満の製剤では安定性が改善されることがわかった。
【0245】
上述のように、注射用製剤を開発する際には、製剤のpHを患者の血清pHに合わせるのが一般的である。ヒトの血清pHは約7.4である。従って、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩の自明な製剤は、pHが約7.4である製剤である。7.0未満のpH値で調製されたこのような塩の製剤の安定性がより高いことは予想外であった。
【0246】
製剤の調製
個々の製剤例の詳細を以下の表に示す。各製剤は、以下の実施例に類似したプロセスによって調製することができる。
各製剤のアリコートは、アッセイ/関連物質及び浸透圧チェックのために採取することができる。各製剤の残りをろ過し(フィルターサイズ0.2μm)、透明ガラス製マルチドーズバイアルに入れ、窒素でスパージし、キャップをする。
【0247】
製剤例(25mg/mL、pH5.5)の調製
1)必要量の製剤原料を適切な容器(ガラス製計量ボート)に秤量する。採取した製剤原料の質量に塩と純度の補正が含まれていることを確認する。
2)秤量した製剤原料を慎重にビーカーに移す。秤量容器を注射用水(WFI:water for injection)ですすぎ、固形物が残らないようにする。製剤原料にさらにWFIを必要総量の3/4まで加え、磁気撹拌して溶解させる。
3)適切な容器中でボリュームアップし、最後にpHがpH5.5(±0.1)であることを確認し、必要であれば調整する。
4)製剤溶液は透明で、ごくわずかにベージュ色を呈する(N,N-ジメチルトリプタミンフマル酸塩を使用)。この色は濾過(ステップ6)で除去され、無色の溶液濾過が残る。
5)測定された溶存酸素量が5ppm未満、好ましくは2ppm未満になるまで、製剤に窒素をバブリングする。
6)シリンジで溶液を適切なガラス製マルチドーズバイアルにろ過する、好適には0.22μm又は0.2μmのいずれかをガラス製マルチドーズバイアルにろ過する。
【0248】
共溶媒、界面活性剤、緩衝剤、pH調節剤もしくは等張化剤、又はその他の添加剤を含む製剤例。
本発明の製剤は、上掲の添加剤の一種又は二種以上を含むことができる。
「DS」は、本発明の製剤に使用される任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物を指す。
【0249】
実施例9:N,N-ジメチルトリプタミン pH溶解性
pH溶解性のサンプルは、0.5M Britton Robinson(BR)緩衝剤で調製した。N,N-ジメチルトリプタミンを添加する前に、要求されるpHを確保するために必要な量のNaOHをBR緩衝剤に添加した。BR緩衝剤と必要量のNaOHの合計量は、試験した各pH(pH4、5、6、7、8、9、10)に対して5mlであった。150mgのN,N-ジメチルトリプタミンが添加され、周囲温度で一晩振盪する前にpHがチェックされた。
【0250】
N,N-ジメチルトリプタミンの溶解度は、以下の表と図3に示すように、25℃でpHを変化させて測定した:
pH約4~約6にて90mg/mL以上の溶解度が観察され、pH5付近で最も高い溶解度が観察された。
【0251】
長期保存時及び/又は推奨保存温度未満の温度での一時保存時の沈殿リスクを低減するために、約2~3倍の溶解度ヘッドスペースが理想的に許容される。これらのデータは、pHが約5から約6.5で、100mg/2.5mL(40mg/ml)の用量をサポートし、同時に25℃で望ましい2~3倍の溶解度ヘッドスペースを達成している。
【0252】
実施例:製剤例
本発明の製剤例は、以下の表に示す通りである。
【0253】
実施例11:安定性
DMTフマル酸塩(実施例2)、及び実施例10に従って調製した重水素化DMTフマル酸塩(実施例2)の製剤を、2~8℃、25℃/60%RH、及び40℃/75%RHで三ヶ月間保存した後の安定性について評価した。
【0254】
DMTフマル酸塩を含む製剤では、T=0、又は2~8℃及び25℃/60%RHで三ヶ月間保存した後、定量限界(≧0.05%w/w)を超える関連物質は観察されなかった。40℃/75%RHで三ヶ月間保存した後、合計0.35%w/wの関連物質が観察された。
【0255】
重水素化DMTフマル酸塩を含む製剤では、T=0、又は、2~8℃及び25℃/60%RHで三ヶ月間保存した後、定量限界(≧0.05%w/w)を超える関連物質は観察されなかった。40℃/75%RHで三ヶ月保存した場合、合計0.33%w/wの関連物質が観察された。
【0256】
これらのデータは、本発明の製剤の安定性が良好であることを示しており、40℃/75%RHのストレス条件下でのみ、低量の関連物質が観察された。
【0257】
本発明は、以下の非限定的な条項を参照することにより、さらに理解される:
(1)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;及び水を含む、筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入に適した医薬製剤であって、
該製剤が、約5~約6のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する、医薬製剤。
(2)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;及び水を含む、筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入に適した医薬製剤であって、
該製剤が、約5~約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有する、医薬製剤。
(3)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;塩基剤、水、及び任意に該塩とは別の緩衝剤を含む、筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入に適した医薬製剤であって;
該製剤が、約5~約6のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有し;
該製剤が、5ml以下の注射用又は吸入用の容積内の、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量を含む、医薬製剤。
(4)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;塩基剤、水、及び任意に該塩とは別の緩衝剤を含み、筋肉内注射及び/又はネブライザー吸入に適した医薬製剤であって、
該製剤が、約5~約6.5のpH、遊離塩基として約10mg/ml以上の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有し;
該製剤が、5ml以下の注射用又は吸入用の容積内の、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量を含む、医薬製剤。
(5)
製剤が、5ml以下の容積内の、サイケデリック支援療法において使用するための任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の有効用量を含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(6)
容積が3ml以下である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(7)
容積が2.5ml以下である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(8)
製剤が約275~約325mOsm/Kgの浸透圧を有する、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(9)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸及び式Iの化合物を含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤:
【化9】
式中、
R1は、独立して、-R4、-OH、-OR4、-O(CO)R4、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2は、C(xH)3である;
R3は、C(xH)3である;
各R4は、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xH及びyHは、それぞれ独立して、プロチウム又は重水素から選択される。
(10)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、約3~約5のpKaを有するブレンステッド酸と、式IA又は式IBの化合物とを含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤:
【化10】
(式中、
R1aは、独立して、-R4a、-OH、-OR4a、-O(CO)R4a、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2aは、C(xaH)3である;
R3aは、C(xaH)3である;
各R4aは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xaH及びyaHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)
【化11】
(式中、
R1bは、独立して、-R4b、-OH、-OR4b、-O(CO)R4b、リン酸一水素、-F、-Cl、-Br、及び-Iから選択される;
nは、0、1、2、3又は4から選択される;
R2bは、C(xbH)3である;
R3bは、C(xbH)3である;
各R4bは、独立して、C1-C4アルキルから選択される;及び
xbH、ybH、及びzHは、独立して、プロチウム又は重水素から選択される)。
(11)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、nは0であり;又はnは1であり、そしてR1は4位又は5位である)、又は
(ii) 式IAの化合物(式中、nは0であり;又はnは1であり、そしてR1aは4位又は5位である)、又は
(iii) 式IBの化合物(式中、nは0であり;又はnは1であり、そしてR1bは4位又は5位である)
を含む、条項9又は条項10に記載の製剤。
(12)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、各R1は、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から独立して選択される);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、各R1aは、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から独立して選択される);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、各R1bは、-OH、-OMe、-OCD3、-OAc、-O(CO)Me、及びリン酸一水素から独立して選択される)
を含む、条項9~11のいずれか1項に記載の製剤。
(13)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、R2はCD3であり、R3はCD3である)、又は
(ii) 式IAの化合物(式中、R2aはCD3であり、R3aはCD3である)、又は
(iii) 式IBの化合物(式中、R2bがCD3であり、R3bがCD3である)
を含む、条項9~12のいずれか1項に記載の製剤。
(14)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、R2はCH3であり、R3はCH3である);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、R2aはCH3であり、R3aはCH3である);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、R2bはCH3であり、R3bはCH3である)
を含む、条項9~12のいずれか1項に記載の製剤
(15)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、R2はCH3であり、R3はCD3である);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、R2aはCH3であり、R3aはCD3である);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、R2bはCH3であり、R3bはCD3である)
を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の製剤。
(16)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、各xHはDである);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、各xaHはDである);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、各xbHはDである)
を含む、条項9~12のいずれか1項に記載の製剤。
(17)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、両方のyHはDである);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、両方のyaHはDである);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、両方のybHはDである)
を含む、条項9~16のいずれか1項に記載の製剤。
(18)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、1つのyHがHであり、1つのyHがDである);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、1つのyaHがHであり、1つのyaHがDである);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、1つのybHがHであり、1つのybHがDである)
を含む、条項9~16のいずれか1項に記載の製剤
(19)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
(i) 式Iの化合物(式中、yHは両方ともHである);又は
(ii) 式IAの化合物(式中、yaHは両方ともHである);又は
(iii) 式IBの化合物(式中、ybHは両方ともHである)、
を含む、条項9~16のいずれか1項に記載の製剤。
(20)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、zHは両方ともDである)を含む、条項10~条項19項のいずれか1項に記載の製剤。
(21)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、zHは両方ともHである)を含む、条項10~19項のいずれか1項に記載の製剤。
(22)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、式IBの化合物(式中、1つのzHはHであり、1つのzHはDである)を含む、条項10~19のいずれか1項に記載の製剤。
(23)
nが0である、条項9~11及び13~22のいずれか1項に記載の製剤。
(24)
nが1であり、R1又はR1a又はR1bが、4-アセトキシである、条項9~22のいずれか1項に記載の製剤。
(25)
nが1であり、R1又はR1a又はR1bが、5-メトキシ又はトリデューテロ-5-メトキシである、条項9~22のいずれか1項に記載の製剤。
(26)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物が、N,N-ジメチルトリプタミンである、条項1~9のいずれか1項に記載の製剤。
(27)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物が、α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d2-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d4-DMT)、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d6-DMT)、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)、5-メトキシ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及びそれらの任意の混合物から選択される、条項1~25のいずれか1項に記載の製剤。
(28)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩が、
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物と、
フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、及びグルコン酸からなる群より選択される酸との塩である、
先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(29)
酸がフマル酸である、条項28に記載の製剤。
(30)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩を、HPLCで測定した場合に99%以上の純度で含有する製剤原料を含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(31)
任意に置換されたジメチルトリプタミンの濃度が、約10mg/mL~約150mg/mL(遊離塩基当量として)である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(32)
任意に置換されたジメチルトリプタミンの濃度が、約15mg/mL~約70mg/mL(遊離塩基当量として)である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(33)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度が、約20mg/mL~約40mg/mL(遊離塩基当量として)である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(34)
任意に置換されたジメチルトリプタミンの濃度が、約20mg/mL以上(遊離塩基当量として)である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(35)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の濃度が、約25mg/mL以上(遊離塩基当量として)である、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(36)
製剤が、前記塩とは別個の緩衝剤をさらに含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(37)
緩衝剤が、酢酸塩及び酢酸;又はクエン酸塩及びクエン酸;又はリン酸塩及びリン酸を含む;又は
緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩を含む、条項36に記載の製剤。
(38)
塩基剤が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(39)
製剤がさらに等張化剤を含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(40)
製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、及び塩基剤、及び任意で、等張化剤、緩衝剤、共溶媒、保存剤(防腐剤)、及び酸化防止剤から選択される1つ又は複数の剤から本質的になる、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(41)
製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、任意で緩衝剤、及び任意で等張化剤から本質的になる、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(42)
製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、任意で緩衝剤、及び任意で等張化剤から本質的になる、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(43)
製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、及び任意で等張化剤からなる、条項1~35及び39~42のいずれか1項に記載の製剤。
(44)
製剤が、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、及び任意で等張化剤からなる、条項3~35及び38~42のいずれか1項に記載の製剤。
(45)
等張化剤が塩化ナトリウム又はデキストロースである、条項39~44のいずれか1項に記載の製剤。
(46)
5ppm未満の酸素含有量を有する、条項1~45のいずれか1項に記載の製剤。
(47)
2ppm未満の酸素含有量を有する、条項1~45のいずれか1項に記載の製剤。
(48)
製剤が不活性ガスでスパージされたものである、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(49)
5ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(50)
4ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(51)
3ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(52)
2ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(53)
1ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(54)
0.5ml以下の容積を有する容器に保存される、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(55)
製剤がpH調節剤をさらに含む、先行する条項のいずれか1項に記載の製剤。
(56)
pH調節剤が塩酸を含む、条項55に記載の製剤。
(57)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、塩基剤、水、及びpH調節剤を含む、条項56に記載の製剤。
(58)
先行する条項のいずれか1項に記載の製剤を調製するのに適したキットであって、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;任意で等張化剤;及び任意で前記塩とは別の緩衝剤を含む、キット。
(59)
条項3~57のいずれか1項に記載の製剤を調製するのに適したキットであって、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩;任意で等張化剤;塩基剤、及び任意で前記塩とは別の緩衝剤を含む、キット。
(60)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、任意で緩衝剤、任意で等張化剤を接触させることを含む、条項1~57のいずれか1項に記載の医薬製剤を調製する方法。
(61)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩、水、塩基剤、任意で前記塩とは別の緩衝剤、及び任意で等張化剤を接触させることを含む、条項3~57のいずれか1項に記載の医薬製剤を調製する方法。
(62)
緩衝剤の水溶液を、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の塩と接触させる、条項60又は61に記載の方法であって、ここで、水溶液が条項1又は2に定義されるpHを有する、方法。
(63)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物を、緩衝剤、水、及び任意で等張化剤と接触させることを含む、条項60~62のいずれか1項に記載の方法。
(64)
製剤のpHを調整することをさらに含む、条項60~63のいずれか1項に記載の方法。
(65)
pHが、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである塩基剤で調整される、条項64に記載の方法。
(66)
好ましくは塩酸であるpH調節剤で、pHを調整することをさらに含む、条項64又は65に記載の方法。
(67)
製剤を不活性ガスでスパージングすることをさらに含む、条項60~66のいずれか1項に記載の方法。
(68)
医薬品として、又は心理療法と組み合わせて(すなわち、薬理学的支援心理療法において)使用するための、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、又は条項58もしくは条項59に記載のキット。
(69)
患者の精神障害又は神経障害を治療する方法に使用するための、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、又は条項58もしくは59に記載のキット。
(70)
精神障害又は神経障害が、(i)強迫性障害、(ii)うつ病性障害、(iii)不安障害、(iv)物質乱用及びギャンブル障害、ならびに(v)意欲消失障害からなる群より選択される、条項69に記載の使用のための製剤。
(71)
精神障害又は神経障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤を投与することを含む、方法。
(72)
条項71に記載の方法であって、精神障害又は神経障害が条項70に定義されたものである、方法。
(73)
条項1~57のいずれか1項に記載の製剤が、心理療法と組み合わせて投与される、条項71に記載の方法。
(74)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量が、約5~約250mgの範囲である、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法。
(75)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量が、約10~約150mgの範囲である、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法。
(76)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量が、約10~約100mgの範囲である、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法。
(77)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量が、約20~約70mgの範囲である、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法。
(78)
任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量が、約20~約50mgの範囲である、条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法。
(79)
条項1~57のいずれか1項に記載の製剤、条項68~70のいずれか1項に記載の使用のための製剤、又は条項71~73のいずれか1項に記載の方法であって、製剤が以下を含み:
a)α,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d2-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(d4-DMT)、N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d6-DMT)、α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d8-DMT)、α,α,β,β-テトラデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン(d10-DMT)、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、5-メトキシ-α,α-ジデューテロ-N,N-ジ(トリデューテロメチル)トリプタミン、及び、それらの混合物から選択される、任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物と、
フマル酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、及びグルコン酸からなる群より選択される酸との塩;
b)水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される塩基剤;
c)水;
d)任意で、前記塩とは別の緩衝剤であって、
酢酸塩と酢酸;又はクエン酸塩とクエン酸;又はリン酸塩とリン酸を含む;又は、
酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩を含む、緩衝剤;
e)任意で、塩酸であるpH調節剤
ここで、前記製剤は、約5~約6.5のpH、又は約5~約6のpH、約15mg/mL~約70mg/mL(遊離塩基当量として)の濃度、及び約250~約350mOsm/Kgの浸透圧を有し;及び、前記製剤は、5ml以下の容積内の、約10mg~約100mgの範囲の任意に置換されたジメチルトリプタミン化合物の用量を含む。
図1
図2
図3
【国際調査報告】