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特表2024-540530混合生薬抽出物を含む癌の予防又は治療用薬学的組成物及び健康機能食品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】混合生薬抽出物を含む癌の予防又は治療用薬学的組成物及び健康機能食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/74 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 36/536 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241024BHJP
   A61K 31/435 20060101ALN20241024BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20241024BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20241024BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K36/74
A61P35/00
A61K36/536
A61K36/185
A61K36/9066
A61P35/04
A61P43/00 121
A23L33/105
A61K31/435
A61K133:00
A61K131:00
A61K125:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529548
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022018161
(87)【国際公開番号】W WO2023090881
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158287
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524185652
【氏名又は名称】エイチアンドオー バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】H&O BIOSIS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】19-10, Jeongnamsandan-ro, Jeongnam-myeon, Hwaseong-si, Gyeonggi-do 18514, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョン ミン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB38
4C088AB81
4C088AC01
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC13
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA07
4C088MA08
4C088NA14
4C088ZB26
(57)【要約】
本発明は、混合抽出物を含む抗癌用薬学組成物又は健康機能食品に関するものであって、具体的に白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ及び鬱金の混合抽出物を含むことを特徴とする。本発明による混合抽出物は、多様な癌腫において癌細胞増殖抑制及び転移抑制に効果的であるため、抗癌用薬学組成物又は抗癌用健康機能食品等に有用に活用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白花蛇舌草(Hedyotis diffusa)、ウツボグサ(Prunella vulgaris)、モクツウ(Akebia quinata)、ガジュツ(Curcuma zedoaria)及び鬱金(Curcumae Radix)の抽出物を含む、抗癌用薬学組成物。
【請求項2】
抽出物は、白花蛇舌草100重量部に対して、ウツボグサ40~150重量部、モクツウ30~120重量部、ガジュツ20~80重量部及び鬱金20~80重量部を抽出して製造されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抽出物は、白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ及び鬱金を水、C1~4のアルコール又はこれらの混合溶媒として抽出して製造されるものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
抽出物は、熱水抽出、超音波抽出、常温抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出又は蒸気抽出により製造されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抽出物は、癌細胞の死滅及び癌細胞転移抑制活性を有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
癌は、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、大腸癌、乳癌及び黒色腫からなる群より選ばれるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ及び鬱金の抽出物を含む、抗癌用健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白花蛇舌草(Hedyotis diffusa)、ウツボグサ(Prunella vulgaris)、モクツウ(Akebia quinata)、ガジュツ(Curcuma zedoaria)及び鬱金(Curcumae Radix)の混合抽出物を含む抗癌用薬学組成物又は健康機能食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全世界的に主要な保健問題の一つである癌を治療するために、放射線療法、化学療法、手術療法等の治療療法が開発されてきた。このうち、化学療法は、主に腫瘍細胞の増殖を抑制したり、破壊したりする薬物治療法であって、今まで抗癌分野では一定の成果を収めているにもかかわらず、依然として臨床的に不良予後、高い再発率、高い転移率、短い生存期間等といった深刻な問題点が残っている。特に、単一の化学療法剤に基づく化学療法は、癌患者における耐性の発生等、癌治療の効能を低下させる主な技術的問題に相当する。
【0003】
このような単一薬剤に基づく化学療法を改善することができる代案として、ハーブ研究に基づく東アジアの伝統医学であるTCM(Traditional Chinese medicine)が注目されている。抗癌療法に関する最近のTCMレビュー論文(文献[Fan、Yuqi、et al.「Anti-tumor activities and mechanisms of Traditional Chinese medicines formulas:A review.」Biomedicine & Pharmacotherapy 132(2020):110820.])によれば、TCMでは、単一薬剤処方はほとんど使用されておらず、TCM医学理論と個人の体質に応じて多数のハーブを特殊に組み合わせて処方する。このような処方は、癌を治療するための多数の標的を対象とし、複数のシグナル経路に複合的に作用することを意図しており、結果として単一薬剤に比べて効能が高く、副作用は低いことから、優れた代替抗癌療法として使用することができる。しかし、一般に単一薬剤を組み合わせる場合、各薬剤の効果が互いに相殺され得るため、2以上の薬剤を単純に混合するとしても、所望の治療効果が達成されるものではなく、今までTCM理論に基づいて発見されたハーブの組み合わせは制限的なレベルにとどまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、混合薬剤抽出物による癌の予防又は治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した技術的課題を解決するために、本発明者は、これまで試みられたり、採択されたりしたことのない特殊なハーブの組み合わせを発掘し、抗癌療法に有用に活用される得ることを確認した。具体的には、本発明は、白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ及び鬱金の混合抽出物からなる組成物が癌の予防又は治療に有用に活用され得ることを提案する。
【0006】
本明細書にて説明される用語は、特に断りがない限り、植物学分野及びTCM分野で一般に採用されているのと同じ脈略で使用される。本発明において、TCMは、中国、韓国、日本等の東アジア一帯で享受した伝統医学であり、特に言及されていない限り、中国医学(Chinese medicine)、韓医学(Korean medicine)、漢方医学(Kampo medicine)等を包括する脈略として使用される。
【0007】
本発明は、白花蛇舌草(Hedyotis diffusa)、ウツボグサ(Prunella vulgaris)、モクツウ(Akebia quinata)、ガジュツ(Curcuma zedoaria)及び鬱金(Curcumae Radix)の抽出物を含む抗癌用組成物を提供する。
【0008】
白花蛇舌草(Hedyotis diffusa)は、アカネ科(Rubiaceae)に属する植物であって、本発明の混合抽出物に用いられる白花蛇舌草は、白花蛇舌草の全草(whole plant)であることができる。白花蛇舌草は、茎は細く、つる性のように巻きつけられ、外面は灰緑色又は灰褐色である。質はもろくて折れやすい。折れた面は中央に白い髄がある。葉はほとんど折れ、皺がひどく、簡単に落ちる。花は小さくて白く、葉腋に1本又は2本が付いている。根は分枝しておらず、径2~4mmで、ひげ根がある。
【0009】
ウツボグサ(Prunella vulgaris)は、シソ科(Lamiaceae)に属する植物であって、本発明の混合抽出物に用いられるウツボグサは、ウツボグサの穂(spike)であることができる。ウツボグサの穂は、多くの苞葉及び萼が付いており、ほぼ円柱形であり、長さ3~6cm、径10~15mmである。外面は灰褐色又は赤褐色で質は軽い。上部には花冠が残存しており、下部には茎があり、萼中に四分果がある。苞葉は心形又は偏心形であり、萼と共に脈上には白の毛がある。この薬はにおいと味がほとんどない。
【0010】
モクツウ(Akebia quinata)は、モクツウ科(Lardizabalaceae)に属する植物であって、本発明の混合抽出物に用いられるモクツウは、モクツウの実であることができる。モクツウの実は楕円形で少し曲げられ、長さ3~5cm、径25~35mmである。外面は灰褐色又は濃い茶色で、実の皮はちぢんで、不規則な網状の隆起があり、先端には雌の頭の跡が、下部には実の皮が落ちた丸い跡がある。質は硬く、切面は淡い黄色で黒色の種子が多く入っている。
【0011】
ガジュツ(Curcuma zedoaria)は、ショウガ科(Zingiberaceae)に属する植物であって、本発明の混合抽出物に用いられるガジュツは、ガジュツの根茎(rhizome)であることができる。ガジュツの根茎は、卵形を呈し、径25~40mm、長さ4~6cmである。外面は灰黄褐色又は灰褐色を帯びており、節は環状に隆起し、節間は5~8mmであり、細かい縦皺と根を除いた跡及び分枝した根茎の小隆起がある。ルーペ視するとき、外面に粗毛がある。角質で切れにくく、その横切面は灰褐色で、厚さ2~5mmの被層と広い中心柱の境には淡灰褐色の線がみられる。
【0012】
鬱金(Curcumae Radix)は、ショウガ科(Zingiberaceae)に属する植物であって、本発明における鬱金は、ウコン属(Curcuma)植物の根(root)として定義される。本発明の混合抽出物に用いられる鬱金は、ウコン属植物の塊根(tuberous root)であることができる。
【0013】
具体的には、本発明の鬱金(Curcumae Radix)は、温鬱金(Curcuma wenyujin)、ウコン(Curcuma longa)、クルクマクワンシエンシス(Curcuma kwangsiensis)、蓬莪朮(Curcuma phaeocaulis)及び薑黄(Curcuma aromatica)からなる群より選ばれた1種以上の植物の塊根であってもよい。
【0014】
このうち、温鬱金(Curcuma wenyujin)の塊根は、長い円形又は卵円形で、長さ35~70mm、径12~25mmである。外面は灰褐色で不均一な縦皺があり、縦皺が突出した箇所は色が比較的薄い。質は硬く、切面は灰褐色で角質であり、内皮層の輪状がはっきりしている。独特のにおいがあり、味は少し苦い。
【0015】
また、ウコン(Curcuma longa)の塊根は、紡錘形で長さ25~45mm、径10~15mmで、片方が細長いものもある。外面は灰褐色又は灰黄色で、縦皺がある。横断面はオレンジ色で、外面は黄褐色又は赤褐色である。特々のにおいがあり、味はとても辛い。
【0016】
また、クルクマクワンシエンシス(Curcuma kwangsiensis)の塊根は、長い円錐形又は長い円形で、長さ20~65mm、径10~18mmである。外面には浅井縦皺又は粗網状の皺がある。特々のにおいがあり、味はやや辛くて苦い。
【0017】
また、蓬莪朮(Curcuma phaeocaulis)の塊根は、長楕円形で、長さ15~35mm、径10~12mmであって、比較的太くて大きい。特々のにおいがあり、味は淡い。
【0018】
本発明の混合抽出物は、白花蛇舌草100重量部に対して、ウツボグサ40~150重量部、モクツウ30~120重量部、ガジュツ20~80重量部、及び鬱金20~80重量部が混合されることが好ましい。より好ましい配合割合は、後述する製造例を参照することができる。
【0019】
本発明における抽出物(extract)は、ハーブを適切な浸出液で絞り、浸出液を蒸発させて濃縮した製剤を意味するものであり、抽出処理により得られる抽出液、抽出液の希釈液又は濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、これらの粗(crude)精製物又は精製物であってもよい。本発明の混合抽出物は、天然物の分野で公知された一般的な抽出方法、分離及び精製方法を用いて製造することができる。本発明の混合抽出物の抽出方法としては、熱湯抽出、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出又は超音波抽出等の方法を用いることができ、その他にも天然物又はTCM分野の公知の方法を用いることができる。
【0020】
本発明における混合抽出物は、抽出溶媒で抽出するか、抽出溶媒で抽出して製造した抽出物に分画溶媒を加えて分画することによって製造することができる。本発明の抽出溶媒は、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒等であってもよく、ここで有機溶媒は炭素数1~4のアルコールや、酢酸エチル又はアセトン等の極性溶媒、ヘキサン又はジクロロメタンの非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒であってもよい。好ましくは水、炭素数1~4のアルコール又はこれらの混合溶媒を抽出溶媒として用いられ得る。
【0021】
一実施態様において、本発明における混合抽出物は、次の段階を含む製造方法によって製造することができる。
(1)それぞれの生薬に混入した異物を除去して洗浄する段階;
(2)洗浄した生薬の混合物に抽出溶媒を加えて抽出物を抽出する段階;
(3)抽出物を濾過する段階;
(4)濾過した抽出物を減圧濃縮する段階;
(5)濃縮液を濾過する段階;及び
(6)濾過した濃縮液を凍結乾燥する段階。
【0022】
段階(1)の洗浄は、1~5回繰り返すことが好ましい。
【0023】
段階(2)の抽出は、振とう抽出、ソックスレー(Soxhlet)抽出又は還流抽出方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
抽出溶媒としては、水、炭素数1~4のアルコール又はこれらの混合物を用いることができ、熱水抽出することが最も好ましい。前記抽出溶媒としては、用意した生薬混合物の全重量の5~20倍の抽出溶媒を加えて抽出することが好ましい。
【0025】
熱水加圧抽出時の温度は60~100℃であることが好ましく、80~100℃であることがより好ましい。また、抽出時間は1~24時間であることが好ましく、抽出回数は1~5回であることが好ましい。
【0026】
段階(3)の抽出物の濾過は、濾過媒体(filtering medium)に通過させ、細孔より大きな粒子が膜上に堆積されるようにすることによって流体から固体粒子を分離することである。例えば、段階(2)にて製造された抽出物は、通常の濾過によって濾過され得る。
【0027】
段階(4)の減圧濃縮は、真空減圧濃縮器又は真空回転蒸発器を用いることが好ましい。段階(4)にて抽出液を固形分40%以上になるように濃縮することが好ましい。
【0028】
段階(5)の濃縮液濾過は、上述した段階(3)の抽出物の濾過と同様の方式で行うことができ、重力濾過器、真空濾過器、加圧濾過器、圧着濾過器、遠心濾過器等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
段階(6)の乾燥は、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明による白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金 の抽出物を含む組成物は、癌の予防又は治療効果に優れている。
【0031】
本発明者は、実験を通じて白花蛇舌草、モクツウ、ウツボグサ、ガジュツ、及び鬱金の混合抽出物において抗癌効能に優れていることを確認した。具体的には、本発明の実施例では、白花蛇舌草100重量部に対して、ウツボグサ40~150重量部、モクツウ30~120重量部、ガジュツ20~80重量部及び鬱金20~80重量部の割合で薬剤を混合した後、抽出して製造された混合抽出物において、肝臓癌、肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、メラノーマ、膵臓癌等の多様な癌腫の癌細胞増殖抑制乃至癌細胞の死滅効果(実施例1;図1a~図1c)、癌の発症機序であるアポトーシス抑制効果又は癌関連タンパク質発現抑制効果(実施例2;図2a~図2c)、抗癌剤であるソラフェニブと併用した時、相乗的抗癌効果(実施例3;図3)、抗癌剤耐性癌に対する抗癌効果(実施例4;図4a~図4c)及び転移癌に対する抑制効果(実施例5;図5)を確認した。さらに、癌細胞の細胞周期をSub-G1周期に誘導し(実施例6;図6a~図6f)、活性酸素の蓄積を増加させることを確認した(実施例7;図7a~図7d)。これのみならず、本発明の混合抽出物は、免疫細胞であるM1マクロファージの増殖を誘導し(実施例8;図8a~図8b)、癌細胞及び免疫細胞のサイトカイン産生を誘導することによって(実施例9;9a~図9f)、免疫系調節による抗癌効果を確認した。また、癌細胞増殖に必要な新生血管生成を効果的に抑制することを確認した(実施例10;図10)。
【0032】
したがって、白花蛇舌草、モクツウ、ウツボグサ、ガジュツ及び鬱金を含む混合抽出物は、抗癌用薬学組成物又は健康機能食品として有用に活用され得る。
【0033】
本発明における癌は、身体組織が自律的に過剰に成長することによって異常に成長した塊を意味し、良性腫瘍と悪性腫瘍に区分することができる。良性腫瘍が比較的成長速度が遅く、転移しないのに対し、悪性腫瘍は周囲組織に浸潤しながら急速に成長し、身体の各部位に拡散又は転移し、生命を脅かす。そのため、悪性腫瘍を癌と同じような意味として考えることができる。
【0034】
本発明の混合抽出物によって予防、改善又は治療し得る癌は、特定の癌に限定されず、好ましくは、乳癌、肺癌、胃癌、肝臓癌、血液癌、骨癌、膵臓癌、黒色腫、皮膚癌、頭頸部癌(head or neck cancer)、皮膚又は眼の黒色腫、子宮肉腫、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、大腸癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、小腸癌、内分泌癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、 軟組織腫瘍、尿道癌、前立腺癌、気管支癌又は骨髄癌であってもよい。より好ましくは、前記癌は、肝臓癌、肺癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、黒色腫であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明における癌は、転移癌であってもよい。本発明の実施例では、混合抽出物が癌細胞の転移を効果的に抑制することができることが確認された(実施例5;図5)。
【0036】
したがって、本発明による混合抽出物は、転移癌の予防又は治療に有用に活用され得る。
【0037】
本発明における癌は、抗癌剤に対する耐性を有する癌であってもよい。抗癌剤耐性とは、癌細胞を死滅することができる血中濃度に達することができる量の抗癌剤を投与したにもかかわらず、癌細胞が死滅しない場合を指し、既存の抗癌化学療法を用いた癌治療において障害となる要素のうちの一つとして指摘されてきた。本発明の実施例において、ソラフェニブ(sorafenib)又はレゴラフェニブ(regorafenib)に対する薬剤耐性を有する癌として知られたSNU475細胞株(図4a)において、本発明による混合抽出物処理時、癌細胞の死滅と癌転移抑制が効果的に誘導されることが確認された(実施例4;図4b及び図4c)。したがって、本発明による混合抽出物は、抗癌剤耐性癌、具体的にはソラフェニブ又はレゴラフェニブのようなチロシンキナーゼ(tyrosine kinase)阻害剤耐性癌の予防又は治療に有用に活用され得る。
【0038】
本発明による混合抽出物は、抗癌療法を改善させるために、1種以上の抗癌剤と併用して用いられることができる。併用される抗癌剤は、公知の1種以上の抗癌剤であってもよく、例えば、標的抗癌剤であってもよいが、これに限定されるものではない。本発明の実施例において、標準抗癌剤であるソラフェニブと本発明の混合抽出物を併用した場合、それぞれの単剤療法に比べて抗癌効果が上昇することを確認した(実施例3;図3)。したがって、本発明による混合抽出物は、単剤療法だけでなく従来の抗癌剤との併用療法として有用に活用され得る。
【0039】
本発明による白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金を含む混合抽出物は、本発明にて確認された抗癌効能を発揮しながら、TCM原理による生薬抽出物の効能の極大化、副作用の減少、バイオアベイラビリティの改善、服用便宜性の改善等のために、1種以上の生薬抽出物の一部をさらに含むことができる。しかし、本発明の生薬抽出物の抗癌効果は、白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の抽出物の混合による上昇効果によるものであって、上記挙げられた1種以上の生薬抽出物、又は公知の1種以上の他の生薬抽出物が含まれなくても、生薬抽出物の抗癌用途を提供するという発明の目的が達成されることは勿論である。
【0040】
これにより、本発明による混合抽出物を含む組成物は、癌細胞の転移抑制、細胞死滅の誘導又は細胞成長を抑制する活性等を通じて抗癌効果を示すことができる。
【0041】
本発明における予防は、混合抽出物を含む組成物の投与により疾患を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味する。また、本発明における治療は、混合抽出物を含む組成物の投与により、疾患の症状が好転又は完治するあらゆる行為を意味する。
【0042】
本発明はまた、前記混合抽出物を有効成分として含む抗癌用薬学組成物を提供する。
【0043】
本発明における薬学組成物は、本発明の混合抽出物をそのまま添加したり、1種以上の生薬抽出物及び/又は抗癌剤又は添加剤と共に使用したりすることができ、通常の方法に従って適切に使用することができる。また、本発明の薬学組成物は、多様な癌腫における癌細胞の増殖及び転移を阻害することによって、癌を予防又は治療することができる。
【0044】
本発明の薬学組成物は、実際の臨床投与時に経口及び非経口の様々な剤形で投与することができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤等の希釈剤又は賦形剤を用いて調製することができる。
【0045】
経口投与用のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤及びカプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース及びゼラチン等を混合して調製される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウム、ステアレート、タルク等の潤滑剤も使用することができる。
【0046】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤及びシロップ剤等を使用することができ、単純希釈剤である水、液状パラフィン及び多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤及び保存剤等を含むことができる。
【0047】
非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれる。非水性溶剤と懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等のような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステル等を用いることができる。
【0048】
坐剤の基剤としては、ウィテプソール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリンジ、グリセロール及びゼラチン等を使用することができる。本発明の薬学組成物は、非経口投与時に皮下注射、静脈注射又は筋肉内注射を介して投与されることができる。
【0049】
本発明の薬学組成物の投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なり、当業者によって適宜選択され得る。しかし、好ましい効果のために、本発明の抽出物は、1日0.001~3,000mpkで投与することが好ましいが、より詳細には1日0.01~1,000mpkで投与することがより好ましい。
【0050】
投与は1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。ただし、上記投与量は本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
本発明の薬学組成物は、抗癌治療のために従来の抗癌療法と併用して常用することができる。
【0052】
また他の側面では、本発明は、混合抽出物又はこれを含む組成物を必要とする個体に投与する段階を含む、癌の予防又は治療方法を提供する。
【0053】
本発明における個体とは、癌が既に発病していたり、発病したりしうるヒトを含むあらゆる動物を意味し、本発明の混合抽出物及びこれを含む組成物は、個体に投与することによって、前記疾患を効果的に予防及び治療することができる効果がある。
【0054】
本発明はまた、本発明の混合抽出物を有効成分として含む抗癌用健康機能食品を提供する。本発明における健康機能食品(health functional food)は、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造した食品を意味する。用語「健康機能食品」は、上記定義を満たす以上、本発明が出願された国で一般的に採択され使用される用語(例えば、又は機能性食品(functional food)等)と相互交差可能である。
【0055】
本発明における健康機能食品は、本発明の混合抽出物をそのまま添加したり、他の1種以上の食品成分及び/又は食品添加物と共に使用したりすることができ、通常の方法に従って適切に使用することができる。
【0056】
本発明における食品添加物の適否は、本発明が出願された国の規制当局で承認された公定書等に基づいて判定することができ、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、桂皮酸等の化学合成品、甘色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガム等の天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤等の混合製剤類等が挙げられる。
【0057】
本発明における健康機能食品において、混合抽出物の含有量は使用目的(予防、健康又は治療的処置)に応じて適切に決定されることができる。一般に、食品又は飲料を製造する際、本発明の混合抽出物を食品の総重量に対して0.01~15重量%で加えることができる。
【0058】
本発明における健康機能食品の種類には特に制限がない。本発明の混合抽出物を添加することができる健康機能食品の例としては、飲料、ガム、ビタミン複合剤、ドリンク剤等があり、通常の意味での健康機能食品を全て含む。前記健康機能食品としては、服用しやすい健康機能性飲料が最も好ましい。
【0059】
本発明における健康機能性飲料は、通常の飲料のように多様な香味剤又は天然炭水化物等を追加の成分として含有することができる。前記天然炭水化物の例としては、単糖類、例えば、グルコース、フルクトース等;二糖類、例えば、マルトース、スクロース等;及び多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリン等のような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコールがある。また、上述したこと以外の香味剤(サッカリン、アスパラタム等)を用いることもできる。
【0060】
本発明における健康機能食品は、多様な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤等の風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤等を含有することができる。
【0061】
本発明はまた、患者に白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の抽出物を投与する段階を含む、癌の予防又は治療方法を提供する。
【0062】
本発明はまた、ヒトに白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の抽出物を摂取する段階を含む、癌の予防又は改善方法を提供する。
【0063】
本発明はまた、抗癌用薬剤を製造するための、白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の抽出物の用途を提供する。
【0064】
本発明はまた、抗癌用健康機能食品を製造するための、白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の抽出物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0065】
本発明による白花蛇舌草、ウツボグサ、モクツウ、ガジュツ、及び鬱金の混合抽出物は、癌の予防又は治療に効果的に活用され得る。したがって、本発明の混合抽出物は、抗癌用薬学組成物又は健康機能食品として有用に活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1a】本発明の混合抽出物が癌細胞の死滅に及ぼす効果を示すものである。
図1b】本発明の混合抽出物が癌細胞の死滅に及ぼす効果を示すものである。
図1c】本発明の混合抽出物が癌細胞の死滅に及ぼす効果を示すものである。
図2a】本発明の混合抽出物が癌細胞に関与するタンパク質の発現に及ぼす影響を示すものである。
図2b】本発明の混合抽出物が癌細胞に関与するタンパク質の発現に及ぼす影響を示すものである。
図2c】本発明の混合抽出物が癌細胞に関与するタンパク質の発現に及ぼす影響を示すものである。
図3】本発明の混合抽出物と抗癌剤であるソラフェニブとの併用が癌細胞の死滅に及ぼす効果を示すものである。
図4a】本発明の混合抽出物が抗癌剤であるソラフェニブに耐性を有する癌細胞の死滅と転移に及ぼす効果を示すものである。
図4b】本発明の混合抽出物が抗癌剤であるソラフェニブに耐性を有する癌細胞の死滅と転移に及ぼす効果を示すものである。
図4c】本発明の混合抽出物が抗癌剤であるソラフェニブに耐性を有する癌細胞の死滅と転移に及ぼす効果を示すものである。
図5】本発明の混合抽出物が癌細胞の転移に及ぼす効果を示すものである。
図6a】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図6b】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図6c】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図6d】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図6e】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図6f】本発明の混合抽出物が癌細胞周期に及ぼす影響を示すものである。
図7a】本発明の混合抽出物が癌細胞の活性酸素の蓄積に及ぼす影響を示すものである。
図7b】本発明の混合抽出物が癌細胞の活性酸素の蓄積に及ぼす影響を示すものである。
図7c】本発明の混合抽出物が癌細胞の活性酸素の蓄積に及ぼす影響を示すものである。
図7d】本発明の混合抽出物が癌細胞の活性酸素の蓄積に及ぼす影響を示すものである。
図8a】本発明の混合抽出物が免疫細胞の増殖に及ぼす影響を示すものである。
図8b】本発明の混合抽出物が免疫細胞の増殖に及ぼす影響を示すものである。
図9a】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図9b】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図9c】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図9d】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図9e】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図9f】本発明の混合抽出物がサイトカイン産生に及ぼす影響を示すものである。
図10】本発明の混合抽出物が血管生成に及ぼす影響を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
<製造例>
本発明における混合抽出物を製造するために、大韓民国にて生産し流通する薬材植物が用いられた。具体的には、白花蛇舌草(全草)100重量部に対して、ウツボグサ(穂)40~150重量部、モクツウ(実)30~120重量部、ガジュツ(根茎)20~80重量部及び鬱金(蓬莪朮(Curcuma phaeocaulis))20~80重量部の割合で薬材を混合した後、薬材の約10倍に相当する蒸留水を加え、抽出器にて100℃の温度で2時間、熱水により抽出した。
【0068】
その後、抽出された混合抽出物を標準テストシーブ(ふるい)(150μm、Retsch、Han、ドイツ)を用いてフィルタリングし、凍結乾燥条件で-30℃の温度で6時間乾燥した後、30℃に温度が到達した時、4時間乾燥を行い、乾燥状態に応じて凍結乾燥機にて乾燥するまで濃縮した。前記凍結乾燥された混合抽出物の粉末(50mg)を1mlの蒸留水に溶かし、0.22μmのディスクフィルターを通してフィーリングした後、使用する前まで-20℃で保管した。
【0069】
抗癌効能を比較するために、白花蛇舌草(比較例1)、ウツボグサ(比較例2)、モクツウ(比較例3)、ガジュツ(比較例4)及び鬱金(比較例5)の単一抽出物を上記のような過程で製造した。その次に、製造例1(白花蛇舌草123g、ウツボグサ62g、モクツウ92g、ガジュツ62g及び鬱金62g)の混合抽出物に対して抗癌効果の実験を行った。また、製造例2~5の混合抽出物を製造例1と同様の方式で製造し、抗癌関連の実験を行った。その組成は、次の表1に記載のとおりである(単位:g)。
【0070】
【表1】
【0071】
<実施例1>癌細胞の死滅の効果
起源及び特徴を異にする癌細胞株Huh7(肝臓癌)、H460(肺癌)、A549(肺癌)、AGS(胃癌)、HT29(大腸癌)、MDA-MB231(乳癌)、A375(メラノーマ)、MiaPaCa-2(膵臓癌)、SNU213(膵臓癌)を用いて、混合抽出物の癌細胞増殖抑制及び細胞の死滅効果を測定した。
【0072】
実験に用いられた癌細胞として、H460(ATCC、#HTB-177)、A549(ATCC、#CRM-CCL-185)、AGS(ATCC、#CRL-1739)、HT29(ATCC、#HTB-38)、MDA-MB231(ATCC、#CRM-HTB-26)、MiaPaCa-2(ATCC、#CRM-CRL-1420)、SNU213(KCLB、#00213)、A375(ATCC、#CRL-1619)を用いた。
【0073】
全ての癌細胞株は、10%のFBS(GIBCO、#GIB-26140-079)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO #GIB-15140-12)が含まれた培地に培養した。具体的には、癌細胞株のうち、A549、AGS、H529、MDA-MB231、MiaPaCa-2、A375に対しては、DMEM-high glucose(Welgene #LM001-05)を用い、H460、SNU213に対しては、RPMI-1640(Welgene #LM011-03)を用いた。癌細胞株は、2~3日に1回ずつ継代培養し、37℃のインキュベーターで培養した。
【0074】
本発明の混合抽出物の細胞死滅能を測定するために、まず肝臓癌(Huh7)、肺癌(H460、A549)、胃癌(AGS)、大腸癌(HT29)、乳癌(MDA-MB231)、膵臓癌(MiaPaCa-2、SNU213)、 黒色腫(A375)癌細胞株を384-ウェルプレートに4,000細胞/40μl/ウェル又は2,000細胞/40μl/ウェルの密度で播種した。その次に、24時間一晩インキュベーションした後、10μl/ウェルの濃度で本発明の抽出物を処理した後、37℃にてインキュベーションした。48時間後、40μl/ウェルの培地を除去し、4%のパラホルムアルデヒドを30μl/ウェルに入れた後、10分間室温でインキュベーションした。その後、DPBSで洗浄した後、3μl/ml濃度のHoechst33342で核染色を室温で10分間実施した。最後に、DPBSで2回洗浄した後、Operettaで画像を獲得した。
【0075】
その結果、無処理対照群細胞と比較して、多様な癌細胞株に1~50mg/ml濃度の混合抽出物を処理した時、抗癌効果が著しく観察された。すなわち、本発明の混合抽出物は、多様な癌腫である肝臓癌、肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫において、癌細胞が効果的に死滅されることが確認された(図1a及び図1b)。
【0076】
本発明の製造例2~5の組成物に対しても同様の方式で癌腫に対する死滅効果を測定した結果、製造例1と同様に癌細胞が効果的に死滅することが確認された。また、本発明の混合抽出物の癌細胞の死滅効果は、混合抽出物を構成するそれぞれの単一薬材抽出物と比較しても優れた数値であることが確認された。
【0077】
具体的に、単一抽出物である比較例1~5の組成物を混合生薬抽出物と同様の過程を経て製造し、混合抽出物である製造例1の抗癌効能と比較した。細胞生存能の実験は、Huh7(肝臓癌)細胞株に対して、上述と同様の方式で行われた。その結果、混合抽出物である製造例1において、単一抽出物である比較例1~5に比して、癌細胞の死滅効果が顕著に改善されたことが確認された。特に、白花蛇舌草の単一抽出物(比較例1)に比べて、本発明の混合生薬抽出物の抗癌効果(IC50数値)は、17.02倍改善され、鬱金抽出物(比較例5)に比べても、抗癌効果(IC50数値)が9.66倍改善された(図2及び図1c)。
【0078】
【表2】
【0079】
<実施例2>癌関連タンパク質の発現に対する混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が癌関連機転に及ぼす影響を評価するために、癌関連タンパク質の発現に及ぼす影響を測定した。まず、癌関連遺伝子であるPARP/Cleaved PARP、Histone H3、UBE2C、PLK1の発現様式を観察するために、cleaved caspase-3(abcam、#ab2302)PARP & cleaved PARP(Cell signaling、#9532S)、p-Histone H3 Ser10(Cell signaling #53348S)、UBE2C(cell signaling #4234S)、PLK1(Cell signaling #4513S)、Apolipoprotein A1(abcam、#ab7613)、Apolipoprotein B(Novusbio #NBP2-37598)、Apolipoprotein E(abcam、#ab1906)、β-actin(Sigma-Aldrich、#A5441)をそれぞれの入手先から用意した。
【0080】
実験のために、Huh7、Hep3B、SNU475細胞を100mmディッシュに70%confluenceで播種した。次の日、本発明の抽出物を処理した後、48時間37℃のインキュベーターで培養した(15回濃度:5回希釈)。その次に、細胞を収穫した後、e-チューブでペレットをサンプリングし、プロトコルに従って、タンパク質の抽出を実施した。その次に、標的タンパク質の変化をウェスタン・ブロッティングにより確認した(図2a及び図2b)。
【0081】
それから、癌関連遺伝子であるSNAILの発現様式を観察するために、N-Cadherin(abcam、#ab76057)、snail(Cell signaling、#3879S)、a-SMA(abcam、#ab5694)、β-actin(Sigma-Aldrich、#A5441)をそれぞれの入手先から用意した。
【0082】
実験のために、Huh7肝臓癌細胞株を100-mmディッシュに600,000細胞/6ml/ウェルの密度で播種した。その次に、37℃のインキュベーターで16時間一晩インキュベーションした後、0、1、5、10mg/mlの濃度で本発明の抽出物を処理した。その後、37℃のインキュベーターにて48時間培養した後、細胞を収穫してからe-チューブでペレットをサンプリングした。それから、プロトコルに従って、タンパク質を抽出した後、標的タンパク質レベルの変化をウェスタン・ブロッティングにより確認した。
【0083】
その結果、本発明の混合抽出物は、癌細胞のアポトーシスに関与するタンパク質(cleaved Caspase-3及びPARP)の発現を増加させ(図2a)、癌細胞増殖関連タンパク質(p-Histone H3、UBE2C、PLK1)の発現を抑制すること(図2b)を確認した。また、本発明の混合抽出物は、癌の転移抑制に関与するタンパク質(N-cadherin、α-SMA、Snail)の発現を抑制するという点も追加で確認した(図2c)。
【0084】
<実施例3>抗癌剤と併用した混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が従来の抗癌剤と併用する場合、癌細胞増殖抑制に及ぼす影響を測定した。併用抗癌剤としては、肝臓癌細胞に対する標準抗癌治療剤として知られているソラフェニブ(sorafenib)を用いた。
【0085】
ソラフェニブ併用による細胞生存能の測定を、次のように実施した。まず、Huh7細胞株を384ウェルプレートに約2,000細胞/40μl/ウェルの密度で播種し、24時間一晩インキュベートした後、10μl/ウェルでソラフェニブ0、1、3μMと本発明の抽出物0、1、5mg/mlを組み合わせて処理した後、37℃のインキュベーターにてインキュベーションした。48時間後、40μl/ウェルの培地を除去し、4%のパラホルムアルデヒドを30μl/ウェルに入れた後、10分間室温でインキュベーションした。DPBSで洗浄した後、3μl/ml濃度のHoechst33342で核染色を室温にて10分間実施した。その次、DPBSで2回洗浄した後、Operettaで画像を獲得した。Operettaソフトウェアを用いて細胞数を計数し、細胞の生存能を確認した。
【0086】
その結果、本発明の混合抽出物は、ソラフェニブと併用した時、抗癌効果に優れていることが確認された(図3)。
【0087】
<実施例4>抗癌剤耐性癌に対する混合抽出物の効果
従来の抗癌剤に耐性を有する癌に対して、本発明の混合抽出物を処理した時、抗癌効果を示すか否かを確認するために、抗癌剤であるソラフェニブに耐性を示すことが知られているSNU475細胞株に対する増殖抑制効果を同様の癌腫細胞株であるHuh7、Hep3Bと共に比較した。図4aに示すように、癌細胞中、Huh7、Hep3B細胞株にソラフェニブを処理する場合、0、1、3μMの区間において抗癌効果が示されるのに対し、SNU475細胞株では、抗癌効果に耐性を示すことを確認することができた。また、SNU475細胞株は、ソラフェニブ以外にも抗癌剤であるレゴラフェニブ(regorafenib)に対しても強い耐性を示すことが知られている。
【0088】
癌細胞株に対する細胞生存能を測定するために、3つの肝臓癌細胞株(Huh-7、Hep3B、SNU475)を384-ウェルプレートに2,000細胞/40μl/ウェルの密度で播種した。16時間インキュベーション後、10μl/ウェルの濃度で本発明の抽出物を処理した後、48時間37℃のインキュベーターにてインキュベーションした。48時間後、40μl/ウェルの培地を除去し、4%のパラホルムアルデヒドを30μl/ウェルに入れ、10分間室温でインキュベーションした。DPBSで洗浄した後、3μl/ml濃度のHoechst33342で核染色を室温にて10分間実施した。その後、DPBSで2回洗浄した後、Operettaで画像を獲得し、Operettaソフトウェアを用いて細胞数を計数し、細胞生存能を確認した。
【0089】
その結果、本発明の混合抽出物は、ソラフェニブ又はレゴラフェニブのような抗癌剤耐性癌であるSNU475においても抗癌剤に耐性を有さないHuh-7及びHep3Bと同様に抗癌効果に優れていることが確認された(図4b)。
【0090】
また、本発明の混合抽出物が抗癌剤耐性癌において、転移抑制効果を有するか否かを調べるために、後述する実施例5と同様の方法により転移抑制効果を確認した。その結果、抗癌剤耐性癌であるSNU475において、癌細胞の死滅効果外にも転移抑制効果も同様に示されることが確認された(図4c)。
【0091】
<実施例5>混合抽出物の癌転移抑制効果
本発明の混合抽出物が癌細胞の転移を抑制することができるか否かを確認するために、癌転移を測定するための移行アッセイ(migration assay)を行った。
【0092】
移行アッセイを実験するために、Huh7細胞株を12-ウェルプレートに300,000細胞/2ml/ウェルの密度で播種した。その次に、16時間37℃のインキュベーターにて一晩インキュベートした後、200μlチップでウェル中央にスクラッチを作って、woundを生成した。DPBSで洗浄した後、本発明の抽出物を0、1、5、10mg/mlの濃度で処理した後、wound画像を撮影した。その後、37℃のインキュベーターにて24時間インキュベーション後、細胞の移行程度を確認し、wound画像を撮影した。
【0093】
その結果、本発明の混合抽出物による癌転移抑制効果が確認された(図5)。
【0094】
<実施例6>癌細胞周期に及ぼす混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が癌の細胞周期に及ぼす影響を評価するために、Sub-G1分析を次のように実施した。
【0095】
実験のために、Huh7、SNU475細胞株を100mmディッシュに約70~80%の密度で播種した。その次、37℃のインキュベーターで一晩インキュベーション後、本発明の抽出物を0、1、5mg/mlの濃度で処理した後、37℃のインキュベーターにてインキュベーションした。本発明の抽出物処理6、12、24、48時間後、培地と細胞を全部収穫し、PBCで洗浄した後、70%のエタノールで固定し、-20℃で保管した。各サンプルにPI/RNase staining solutionを入れ、FACS分析を実施した。FACSによるPI染色程度を分析し、細胞分裂のパターンを確認した。
【0096】
その結果、本発明の混合抽出物は、癌細胞のSub-G1細胞周期を増加させることによって、癌細胞増殖を抑制することが確認された(図6a~図6c)。さらに、本発明の混合抽出物は、抗癌剤(ソラフェニブ)耐性癌においてもSub-G1細胞周期を増加させることが確認された(図6d~図6f)。
【0097】
<実施例7>癌細胞の活性酸素蓄積に及ぼす混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が癌細胞にて活性酸素の生成を増加させることによって、癌細胞の死滅効果に寄与するか否かを確認するために、ROS測定実験を次のように実施した。
【0098】
実験のために、Huh7、Hep3B細胞株を384-ウェルプレートに5,000細胞/40μl/ウェルの密度で播種した。その次に、37℃のインキュベーターにて一晩インキュベーション後、本発明の抽出物を0、1、5、10mg/mlの濃度で処理した後、37℃のインキュベーターにてインキュベーションした。本発明の抽出物処理1、3、6時間後、培地を除去し、1,000xH2DCFDA(ROS detection reagent)を培養液に1x濃度で希釈した後、3μl/ml Hoechstと共に10分間37℃のインキュベーターにてインキュベーションした。その後、培地を再び除去し、DPBSで速く洗浄した後、Operettaで画像を獲得した。Operettaソフトウェアを用いて細胞数及びROS強さを分析し、ROS生成程度を確認した。
【0099】
その結果、本発明の混合抽出物は、癌細胞内の活性酸素の蓄積を増加させることによって、癌細胞増殖を抑制することが確認された(図7a~図7d)。
【0100】
<実施例8>免疫細胞に及ぼす混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が免疫細胞の増殖を通じて抗癌効果に寄与するか否かを確認するために、M1マクロファージを用いた次の実験を実施した。
【0101】
実験のために、C57BL/6Jマウスから獲得したBMDM(Bone-marrow-derived macrophage)細胞をペトリディッシュにてM-CSF 50ng/mlを処理し、7日間培養した後、5ng/ml M-CSF(24h)処理されたBMDMを384-ウェルプレートに2.5x10細胞/ウェルの密度で播種した。それから、BMDMが播種された384-ウェルプレートにPBS(M0 macrophage培養条件)、LPS 50ng/ml、IFN-γ 20ng/ml(M1 macrophage培養条件)、IL-4、IL-13 50ng/ml(M2 macrophage培養条件)、本発明の抽出物1、5、10mg/mlを処理した後、24時間インキュベーションした。その後、培地を削除し、DPBSで洗浄した後、WGA488(全細胞形態解析用)及びHoechst33342(核形態解析及び細胞毒性分析)染色を室温にて10分間実施した。DPBSで速く洗浄した後、Operettaで画像を獲得した。Operettaソフトウェアを用いて細胞数及び細胞形態解析によりMacrophage polarization程度を解析した。
【0102】
その結果、本発明の混合抽出物は、免疫細胞であるM1マクロファージを増加させる効果があることが確認された(図8a~図8b)。
【0103】
<実施例9>サイトカイン産生に及ぼす混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が癌細胞又は免疫細胞のサイトカイン分泌を増加させることによって、免疫活性化による抗癌効果に寄与するか否かを確認するために、次の実験を実施した。
【0104】
Huh7細胞に対するproteome profiler human cytokine array実験のために、Huh7細胞を100mmディッシュに700,000細胞/ディッシュの密度で播種した。その次、16時間37℃にて一晩インキュベーションした後、本発明の抽出物を0、1、5mg/mlの濃度で各細胞に処理し、37℃にてインキュベーションした。48時間後、収穫された細胞をRIPA-bufferでlysisし、タンパク質を定量した。200μgのタンパク質を得て、Human cytokine array detection antibody cocktailと混ぜた混合物をメンブレンと共にrocking platform shakerにて4℃で一晩インキュベーションした。16時間後、メンブレンを10分ずつ2回洗浄した後、Streptavidin-HRPが希釈されたarray bufferにメンブレンを入れ、30分間インキュベーションした。その後、メンブレンを10分ずつ2回洗浄した後、Chemi Reagent mixtureをメンブレンに処理し、Luminograph Gel imageを用いて画像を獲得した。
【0105】
その結果、本発明の混合抽出物は、癌細胞においてサイトカイン産生を促進する点が確認された(図9a~図9c)。
【0106】
THP-1に対するproteome profiler human cytokine array実験のために、まずTHP-1細胞株は、ATCC(カタログ番号TIB-202)から入手した。THP-1細胞を100 mmディッシュに1,000,000細胞/ディッシュの密度で播種した。16時間37℃で一晩インキュベーションした後、本発明の抽出物を0、1、5mg/mlの濃度で各細胞に処理し、37℃でインキュベーションした。48時間後、収穫された細胞をRIPA-bufferによりlysisし、タンパク質を定量した。200μgのタンパク質を得て、Human cytokine array detection antibody cocktailと混ぜた混合物をメンブレンと共にrocking platform shakerにて4℃で一晩インキュベーションした。16時間後、メンブレンを10分ずつ2回洗浄した後、Streptavidin-HRPが希釈されたarray bufferにメンブレンを入れ、30分間インキュベーションした。メンブレンを10分ずつ2回洗浄した後、Chemi Reagent mixtureをメンブレンに処理し、Luminograph Gel imageを用いて画像を獲得した。
【0107】
その結果、本発明の混合抽出物は、免疫細胞にてサイトカイン産生を促進する点が確認された(図9d~図9f)。
【0108】
<実施例10>血管生成に及ぼす混合抽出物の効果
本発明の混合抽出物が癌細胞又は免疫細胞のサイトカイン分泌を増加させることによって、免疫活性化による抗癌効果に寄与するか否かを確認するために、次の実験を実施した。
【0109】
実験に用いられたHUVEC細胞株は、Promocell(カタログ番号 C-12208)を用いた。まず、96-ウェルプレートにgrowth factor-reduced Matrigel 100μlを分注した後、常温で1時間インキュベーションした。その次、70~80%のconfluencyで培養したHUVEC細胞を3時間serum starvationさせた。HUVEC細胞をプレートから剥がした後、無血清DMEMで再懸濁した後、200,000個の細胞を4,000rpmにて3分間遠心分離した。上澄み液を捨てた後、本発明の抽出物0、1、5mg/mlで希釈された培養液500μl(FBS最終濃度が1%となるように)に溶かした後、Matrigelが塗布された96-ウェルプレートに40,000cells/ウェルを播種した。その後、37℃のインキュベーターにて4~6時間培養した後、光学顕微鏡を用いてチューブ形成程度を確認した。
【0110】
その結果、本発明の混合抽出物は、癌細胞増殖に必要な血管生成を効果的に遮断する点を確認した(図10)。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図10
【国際調査報告】