(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】加圧ガス貯蔵容器及び車両
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F17C5/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529620
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022079012
(87)【国際公開番号】W WO2023088626
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021130204.8
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523152374
【氏名又は名称】ラインメタル インヴェント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100133330
【氏名又は名称】沢田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】キオシス カイ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェネチアーノ キャメロ
(72)【発明者】
【氏名】ハッセル カール=ハインツ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC04
3E172BD03
3E172DA36
3E172EA35
(57)【要約】
ガス(H2)、具体的には水素を加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器(7,7A,7B,7C,7D,7E,7F)であって、前記ガス(H2)を受け入れるための受入領域(10)を包囲する壁(9)と、前記受入領域(10)を前記ガス(H2)で充填する間に、前記ガス(H2)の少なくとも一部を前記壁(9)の内面に沿って案内するガス案内装置(22)と、を備え、前記壁(9)は、前記受入領域(10)を前記ガス(H2)で充填する間に前記ガス(H2)から熱(Q)を取り出し、前記熱(Q)を前記加圧ガス貯蔵容器(7,7A,7B,7C,7D,7E,7F)の周囲(4)に放出するための熱交換器として機能する、加圧ガス貯蔵容器が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス(H2)、具体的には水素を加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器(7,7A,7B,7C,7D,7E,7F)であって、
前記ガス(H2)を受け入れるための受入領域(10)を包囲する壁(9)と、
前記受入領域(10)を前記ガス(H2)で充填する間に、前記ガス(H2)の少なくとも一部を前記壁(9)の内面に沿って案内するガス案内装置(22)と、を備え、
前記壁(9)は、前記受入領域(10)を前記ガス(H2)で充填する間に前記ガス(H2)から熱(Q)を取り出し、前記熱(Q)を前記加圧ガス貯蔵容器(7,7A,7B,7C,7D,7E,7F)の周囲(4)に放出するための熱交換器として機能する、加圧ガス貯蔵容器。
【請求項2】
前記壁(9)は、中心軸(11)に関連付けられており、前記ガス案内装置(22)は、前記受入領域(10)の充填中に、前記ガス(H2)を、前記中心軸(11)に沿って前記壁(9)の第1の壁端部(13)から、前記第1の壁端部(13)の反対側にある前記壁(9)の第2の壁端部(14)に向かって案内することを特徴とする、請求項1に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項3】
前記ガス案内装置(22)は、前記受入領域(10)の内側に配置された第1のガス案内要素(23)を含み、前記第1のガス案内要素(23)は、前記ガス(H2)を前記受入領域(10)の中に供給するための入口ノズル(21)に嵌合又は装着されており、前記入口ノズル(21)は、前記第1の壁端部(13)に開口していることを特徴とする、請求項2に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項4】
前記第1のガス案内要素(23)は、少なくとも部分的に円錐状であり、前記第1のガス案内要素(23)の断面は、前記入口ノズル(21)から前記第2の壁端部(14)の方向に拡大していることを特徴とする、請求項3に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項5】
前記第1のガス案内要素(23)は、少なくとも部分的に前記入口ノズル(21)を覆っていることを特徴とする、請求項4に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項6】
前記第1のガス案内要素(23)は、前記入口ノズル(21)の中又は上に、中心を揃えて又は偏心して取り付けられることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項7】
前記ガス案内装置(22)は、前記第1のガス案内要素(23)とは異なる第2のガス案内要素(30)を備え、前記第2のガス案内要素(30)は、前記第2の壁端部(14)に取り付けられていることを特徴とする、請求項3~6のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項8】
前記第2のガス案内要素(30)は、前記壁(9)の内面に沿って案内された前記ガス(H2)の一部を、前記中心軸(11)に沿って前記第1のガス案内要素(23)の方向に戻すように案内するように構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項9】
前記第2のガス案内要素(30)は、少なくとも部分的に円錐状であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項10】
前記ガス案内装置(22)は、前記受入領域(10)内に配置されると共に前記中心軸(11)に沿って延びる、少なくとも1つのガス案内リブ(43~46)を備えることを特徴とする、請求項2~9のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項11】
前記ガス案内装置(22)は、前記受入領域(10)内に配置されると共に前記壁(9)と同軸に配置されたガス案内管(38)を含み、前記ガス案内管(38)と前記壁(9)との間には、少なくとも1つのガス案内流路(39~42)が備えられることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項12】
前記ガス案内装置(22)自体が、前記受入領域(10)と前記周囲(4)との間のサーマルブリッジを形成し、前記ガス(H2)から熱(Q)を取り出し、前記熱(Q)を前記周囲(4)に放出することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項13】
前記ガス案内装置(22)は、前記壁(9)の中又は上に備えられた冷却流路(48)を含み、前記受入領域(10)が前記ガス(H2)で充填される間に、前記ガス(H2)の少なくとも一部が、前記冷却流路(48)を通って流れることが可能であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項14】
前記冷却流路(48)は、前記冷却流路(48)を通って前記受入領域(10)に流入する前記ガス(H2)の一部を膨張させるように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項15】
車両(1)、具体的には動力車であって、請求項1~14の少なくとも1項に記載の加圧ガス貯蔵容器(7,7A,7B,7C,7D,7E,7F)を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器、及び、このような加圧ガス貯蔵容器を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を貯蔵及び輸送するためには、水素を加圧ガス貯蔵容器で数100バールの超過気圧下の気体の状態で貯蔵するか、又は、極低温の液体の状態で貯蔵することが可能である。車両の中又は上、具体的には乗用車の中又は上で使用する場合、スペースの理由から、水素を気体の状態で上記のような加圧ガス貯蔵容器に貯蔵するのが有利である。
【0003】
このような加圧ガス貯蔵容器を充填する間、水素は高圧下で加圧ガス貯蔵容器内に膨張する。これによって、水素は加熱されて膨張する。このため、さらなる充填が難しくなるので、結果的に、加圧ガス貯蔵容器内の不均一な温度分布を補い、加圧ガス貯蔵容器の周囲に熱を放散させるために、加圧ガス貯蔵容器への充填時間を十分に長く選択しなければならなくなる。
【発明の概要】
【0004】
この背景に対して、本発明の一課題は、改善された加圧ガス貯蔵容器を提供することにある。
【0005】
したがって、ガス、特に水素を加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器が提案される。加圧ガス貯蔵容器は、ガスを受け入れるための受入領域を取り囲む壁と、受入領域をガスで充填する間に、ガスの少なくとも一部を壁の内面に沿って案内するガス案内装置と、を備え、壁は、受入領域をガスで充填する間にガスから熱を取り出し、熱を加圧ガス貯蔵容器の周囲に放出するための熱交換器として機能する。
【0006】
ガス案内装置が設けられ、壁が熱交換器として機能するので、有利にも、受入領域を充填する間に熱を周囲に放散させることができる。これによって、受入領域に貯蔵されるガスの中に入る熱を低減する。こうして、受入領域を充填するために必要な時間を短縮することができる。
【0007】
加圧ガス貯蔵容器は、加圧ガスタンク、水素タンク、又は、水素貯蔵容器等とも呼ばれ得る。具体的には、加圧ガス貯蔵容器は、水素を貯蔵又は輸送することに適している。しかしながら、他の任意のガスを加圧ガス貯蔵容器に貯蔵してもよい。以下では、ガスは水素であるとする。したがって、「ガス」及び「水素」という用語は、互換的に使用可能である。受入領域を充填するガス全体を、壁の内側に沿って案内することも可能である。
【0008】
この場合、「加圧ガス貯蔵容器」という用語は、ガスを加圧して気体集合状態で加圧ガス貯蔵容器内に貯蔵可能であることを意味している。例えば、ガスは、800~1,000バールの圧力で加圧可能である。ここでは、ガスの液化は生じない。ガスは、受入領域の中に気体状で導入又は注入される。
【0009】
加圧ガス貯蔵容器は、好ましくは車両の一部である。車両は、このような加圧ガス貯蔵容器を幾つか備えていてもよい。加圧ガス貯蔵容器は、ガスを車両の消費負荷、具体的には燃料電池に好適な供給圧力及び好適な供給温度で供給するのに好適であり得る。加圧ガス貯蔵容器は、消費負荷のガス供給システム又は水素供給システムの一部であり得る。しかしながら、加圧ガス貯蔵容器は、例えばビルサービスといった、不動の用途にも使用可能である。具体的には、加圧ガス貯蔵容器は、建物の暖房の分野において、又は、熱電併給プラントのために使用可能である。
【0010】
壁は、耐荷重ジャケットを含むことが好ましく、当該耐荷重ジャケットの少なくとも一部は繊維複合プラスチックから成る。ジャケットは、ライナーを包囲している。ライナーは、ジャケットの内側に配置されている。したがって、ジャケットは、ライナーを完全に封入している。ライナーは気密であることが好ましい。ライナーのことを、裏打ち材と呼ぶことも可能である。ライナーは、プラスチック材料、金属材料、及び/又は、繊維複合プラスチックを含んでいてもよい。
【0011】
加圧ガス貯蔵容器、したがって壁も、円錐状であることが好ましい。加圧ガス貯蔵容器又は壁は、対称又は中心軸に割り当てられており、当該対称又は中心軸に対して、加圧ガス貯蔵容器又は壁は回転対称である。壁は、好ましくは、中空の円筒又は管状の基本部を含み、当該基本部の両側は、蓋状又はドーム状の壁端部によって閉鎖されている。ジャケット及びライナーは、基本部の領域及び壁端部の領域の両方に配置されている。
【0012】
壁が受入領域を「包囲する」又は「制限する」ということは、具体的には、壁が受入領域の形状又は境界を規定することを意味している。したがってガスは、受入領域の壁の内部に収容される。具体的には、受入領域は壁に囲まれた空洞である。受入領域は、円筒形状を有する。受入領域は、周囲から壁によって気密的に遮断される。
【0013】
ガス案内装置は、ガス方向転換器と呼ばれることもある。ガス案内装置は、任意の数の内部装置、構成要素、孔、チャネル、冷却流路、方向転換要素、フィン、プレート、放熱要素等を備えていてもよい。具体的には、ガス案内装置自体は、受入領域で受け取ったガスから熱を取り出し、周囲に放散するのに好適であり得る。したがって、ガス案内装置は、ガスガイド及び冷却装置とも呼ばれ得る。
【0014】
ガス案内装置は、ガスを能動的又は受動的に冷却可能である。「受動的」とは、具体的には、熱を放散するために、追加で、冷却剤又は冷媒等の作動媒体及び/又は外部エネルギーが使用されないことを意味し得る。具体的には、受動的な冷却では、熱は、好ましくは熱伝導及び熱放射によって放散される。この場合、「冷却」とは、一般に、熱が放散されることを意味するものと理解される。
【0015】
これとは反対に、「能動的な」冷却プロセスでは、熱は、例えば冷却剤又は冷媒の形の追加的な作動媒体により放散される。この目的のために、ポンプを備えた冷却剤回路又は冷媒回路が設けられていることが可能である。しかしながら、「能動的な」冷却プロセスとは、受入領域に収容されたガス自体が、加圧ガス貯蔵容器の任意の冷却流路を流れるために使用されることを意味するものと理解してもよい。
【0016】
この場合、「内側」とは、受入領域に面していることを意味している。これは、受入領域をガスで充填する間に、ガス案内装置が、受入領域に充填されたガスの一部を除去し、好ましくは、これを壁に沿って、壁に当接するガス流の形で、第1の壁端部から第2の壁端部に向かって案内することを意味している。
【0017】
具体的には、壁は周囲に直接隣接している。壁が熱交換器として機能可能であるためには、壁は、例えば、熱伝導性の良い材料、具体的には金属材料を含むことが可能である。ガス案内装置及び壁は、機能的に相互作用しており、ガス案内装置はガスを壁に沿って可能な限り密接に、かつ、壁に沿って可能な限り長く案内するが、壁自体は、ガスを直接壁に沿って供給することによって、ガスから熱を吸収するようになっている。この熱は、好ましくは熱伝導によって壁から周囲に伝達される。
【0018】
一実施形態によれば、壁は、中心軸に関連付けられており、ガス案内装置は、受入領の充填中に、ガスを、中心に沿って壁の第1の壁端部から、第1の壁端部の反対側にある壁の第2の壁端部に向かって案内する。
【0019】
上述のように、壁又は加圧ガス貯蔵容器は、中心軸に対して回転対称である。壁は、断面が環状又は中空の円筒形状を有していることが好ましい。しかしながらこのことは、壁が少なくとも部分的に楕円形の断面であるという可能性を排除するものではない。好ましくは、ガス案内装置は、ガスを中心軸に沿って、又は、加圧ガス貯蔵容器の長手方向に沿って、第1の壁端部から第2の壁端部の方向に離れるように案内する。
【0020】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置は、受入領域の内側に配置された第1のガス案内要素を含み、第1のガス案内要素は、ガスを受入領域の中に供給するための入口ノズルに嵌合又は装着されており、入口ノズルは、第1の壁端部に開口している。
【0021】
第1のガス案内要素は、一般に、ガス案内要素又はガス方向転換要素とも呼ぶことが可能である。入口ノズルは噴射ノズルとも呼ばれる。具体的には、入口ノズルは加圧ガス貯蔵容器の一部である。入口ノズルにより、受入領域をガスで充填することが可能である。ガス案内装置は、任意の数の異なるガス案内要素を含むことが可能である。入口ノズルは、加圧ガス貯蔵容器の中心軸に対して回転対称であるように配置されることが好ましい。具体的には、これは、入口ノズルが好ましくは第1の壁端部の中心に配置されることを意味している。入口ノズルは、周囲から受入領域へ、ジャケットとライナーの両方を通して案内されることが可能である。第1のガス案内要素は、少なくとも部分的に入口ノズルの中に突出可能である。これは、第1のガス案内要素、具体的には第1のガス案内要素の先端が、少なくとも部分的に入口ノズルの中に配置されることを意味している。あるいは、第1のガス案内要素は、長手方向に沿って見たときに、入口ノズルから離間された位置に配置されていてもよい。この長手方向は、第1の壁端部から第2の壁端部の方向に向けられている。
【0022】
特に好ましいさらなる実施形態によれば、ガス、具体的には水素を加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器が提案される。この加圧ガス貯蔵容器は、ガスを受け入れるための受入領域を包囲する壁と、ガスを受入領域の中に供給するために受入領域に開口した入口ノズルと、受入領域をガスで充填する間にガスの少なくとも一部を壁の内側に沿って案内するガス案内装置と、を備え、ガス案内装置は、入口ノズルの中又は上に取り付けられたガス案内要素を備え、ガス案内要素は、内面に沿って案内されるガスの一部を、入口ノズルから壁に向かって半径方向外側に案内するように構成されており、壁が、受入領域をガスで充填する間にガスから熱を取り出し、熱を加圧ガス貯蔵容器の周囲に放出するための熱交換器として機能する。半径方向は、上述の壁の中心軸に対して垂直に向けられていることが好ましい。この半径方向とは、中心軸から受入領域に面した壁の内面に向かって離反する方向である。
【0023】
他の一実施形態によれば、第1のガス案内要素は、少なくとも部分的に円錐状であり、第1のガス案内要素の断面は、入口ノズルから第2の壁端部の方向に拡大している。
【0024】
具体的には、第1のガス案内要素の断面が、第1の壁端部から第2の壁端部の方向に拡張している。この場合、「拡大している」とは、具体的には、第1のガス案内要素の断面又は断面積が、入口ノズルから第2の壁端部の方向に連続的に大きくなることを意味している。ガス案内要素は、対称軸又は中心軸に対して回転対称であることが好ましい。この第1のガス案内要素の中心軸は、好ましくは、加圧ガス貯蔵容器の中心軸と同軸に配置される。第1のガス案内要素は、円錐状又は円錐形状であり得る。しかしながら、原則的には、第1のガス案内要素は、他の形状を有していてもよい。ガス案内要素が円錐状又は円錐形である場合、入口ノズルに面するテーパ状の先端と、入口ノズルの反対側にある端面とを有していることが可能である。ガスが受入領域に受け入れられると、ガスは円錐状又は円錐形のジャケット面に衝突し、それによってガスは、半径方向に沿って外側に、加圧ガス貯蔵容器の対称軸から壁に向かって方向転換され、壁に沿って第1の壁端部から第2の壁端部に向かって案内される。ジャケット面は、先端から第1のガス案内要素の端面まで延びている。具体的には、ガスは第1のガス案内要素の先端の中心に通気される。
【0025】
他の一実施形態によれば、第1のガス案内要素は、少なくとも部分的に入口ノズルを覆っている。
【0026】
具体的には、第1のガス案内要素は、第1のガス案内要素の端面から見た時に、入口ノズルを覆っている。第1のガス案内要素は、部分的にのみ、又は、少なくとも部分的に入口ノズルを覆っていてもよい。この場合、第1のガス案内要素は、部分的にのみ、入口ノズルによって生成されるガス流の中に突出する。
【0027】
他の一実施形態によれば、第1のガス案内要素は、入口ノズルの中又は上に、中心を揃えて又は偏心して取り付けられる。
【0028】
この場合の「中心を揃えて」とは、第1のガス案内要素の中心軸と加圧ガス貯蔵容器又は壁の中心軸とが互いに同軸に配置されていることを意味している。この場合の「偏心して」とは、第1のガス案内要素の中心軸と加圧ガス貯蔵容器又は壁の中心軸とが互いに同軸に配置されていないことを意味している。具体的には、上述の中心軸が互いに離隔しているか、又は、オフセットしていることを意味している。
【0029】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置は、第1のガス案内要素とは異なる第2のガス案内要素を備え、第2のガス案内要素は、第2の壁端部に取り付けられている。
【0030】
第2のガス案内要素が第1のガス案内要素と「異なる」とは、具体的には、第1のガス案内要素及び第2のガス案内要素が2つの別個の構成要素又は部品であり、互いに同一ではないことを意味している。第1のガス案内要素は、第1の壁端部に設けられていることが好ましい。したがって、第2のガス案内要素は、第2の壁端部に設けられていることが好ましい。つまり、第1のガス案内要素及び第2のガス案内要素は、長手方向に沿って見て互いに対して最大距離に配置される。第1のガス案内要素と同様に、第2のガス案内要素も受入領域内に配置されることが好ましい。
【0031】
他の一実施形態によれば、第2のガス案内要素は、壁の内面を沿って案内されたガスの一部を、中心軸にそって第1のガス案内要素の方向に戻すように案内するように構成されている。
【0032】
受入領域を充填する際に、入口ノズルから最も遠い壁の領域が最も加熱されることが好ましい。ここでは、これは第2の壁端部である。第2のガス案内要素により、第2のガス案内要素により偏向されたガスを使って、第2の壁端部から熱を放散させることが可能である。このようにして、第1のガス案内要素は、第1の壁端部から第2の壁端部の方向に壁に沿って流れるジャケット状のガス流を生成し、第2のガス案内要素は、ガス流を方向転換させ、これを対向ガス流として、第1の壁端部の方向に戻すように供給する。このようにして、第2のガス案内要素は、第1のガス案内要素によって生成されたガス流とは反対の方向に流れる対向ガス流を生成する。対向ガス流は、第1のガス案内要素によって生成されたガス流の中を流れることが好ましい。従って、第1のガス流はジャケットの形状をしており、対向ガス流の周囲を循環する。ただし、これは任意である。
【0033】
他の一実施形態によれば、第2のガス案内要素は、少なくとも部分的に円錐状である。
【0034】
具体的には、第2のガス案内要素は、対称軸又は中心軸に対して回転対称である。この第2のガス案内要素の中心軸は、加圧ガス貯蔵容器又は壁の中心軸と同軸に配置されることが好ましい。例えば、第2のガス案内要素は、壁の第2の壁端部に接合されていることが可能である。
【0035】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置は、受入領域内に配置されると共に中心軸に沿って延びる、少なくとも1つのガス案内リブを備える。
【0036】
上述のガス案内管が設けられる場合、ガス案内管は、1つ又は複数のガス案内リブによって支持され、受入領域の中心で保持され得る。例えば、4つのガス案内リブが設けられ、これらのガス案内リブが、ガス案内管と壁との間に設けられたガス案内流路を4つのガス案内流路に分割している。ガス案内リブは、第1の壁端部から第2の壁端部の方向に延びている。
【0037】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置は、受入領域内に配置されると共に壁と同軸に配置されたガス案内管を含み、ガス案内管と壁との間には、少なくとも1つのガス案内流路が備えられる。
【0038】
ガス案内流路は、中空円筒状で、完全にガス案内管の外周にわたって延びている。好ましくは、ガスは、このガス案内管と壁との間に設けられたガス案内流路内を、第1の壁側端部から第2の壁側端部の方向に流れる。第2の壁端部から、ガスは、例えば上述の第2のガス案内要素によって、ガス案内管内の第1の壁端部に戻るように案内され得る。従って、ガス案内管内のガスの流れ方向は、ガス案内流路内のガスの流れ方向と反対の方向に向けられている。
【0039】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置自体が、受入領域と周囲との間のサーマルブリッジを形成し、ガスから熱を取り出し、熱を周囲に放出する。
【0040】
ガス案内装置は、この目的のために放熱要素を備えていることが可能である。放熱要素は、受入領域内に突出するランス等であり得る。また、放熱要素は、少なくとも部分的に、加圧ガス貯蔵容器から周囲に突出していることが可能である。これにより、放熱要素は熱を周囲に放出可能である。放熱要素は、この目的のために壁を貫通している。放熱要素は、いわゆるヒートパイプであってもよい。この場合、「ヒートパイプ」とは、作動媒体の蒸発エンタルピーを利用することにより高い熱流量密度を可能にする熱交換器である。この目的のために、放熱要素は、受入領域内に突出した加熱ゾーンを備えている。加熱ゾーンでは、放熱要素に含まれる作動媒体が蒸発し、放熱要素の内部において周囲に伝導される。作動媒体は、周囲に突出した放熱要素の冷却ゾーンで再び凝縮し、これによって熱が周囲環境に放出される。この場合、「サーマルブリッジ」機能とは、ガス案内装置が受入領域から熱を除去し、これを周囲に放出するために適していることを意味している。
【0041】
他の一実施形態によれば、ガス案内装置は、壁の中又は上に備えられた冷却流路を含み、受入領域がガスで充填される間に、ガスの少なくとも一部が、冷却流路を通って流れることが可能である。
【0042】
これにより、有利にも、加圧ガス貯蔵容器を冷却するためのさらなる媒体が不要になる。冷却流路は、壁の周りを螺旋状に延びていることが可能であり、好ましくは第1の壁端部から第2の壁端部まで延びている。例えば、冷却流路は壁の周りを螺旋状に延びている。任意の数の冷却流路を設けることができる。冷却流路は壁に直接組み込むことが可能である。あるいは、冷却流路を壁の内側又は外側に取り付けることも可能である。この場合、「内側」とは、冷却流路が受入領域の中に突出していることを意味している。「外側」とは、冷却流路が周囲に突出していることを意味している。冷却流路は、壁のジャケット及び/又は壁のライナーに設けられていてもよい。受入領域に収容されるガスを冷却流路に流す代わりに、他の任意の冷却剤又は冷媒を使用することも可能である。この場合、ガス案内装置は、具体的には、壁の中又は上に設けられた冷却流路を備え、受入領域を充填する間に、冷却剤又は冷媒が、この冷却流路を通って流れることが好ましい。例えば、冷却流路は冷媒回路の一部であり、具体的にはサーモモジュールと、冷却流路と、供給及び/又は排出ラインとを含む。供給及び/又は排出ラインは、好ましくは冷却流路と流体連通している。サーモモジュールは、車両の空調システム又は自動空調システムであってもよく、又は、空調システム若しくは自動空調システムと呼ばれ得る。例えば、R1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)又はR744(二酸化炭素)を、冷却流路を通して供給される冷媒として使用可能である。あるいは、R290(プロパン)を使用することも可能である。サーモモジュールは、車室内の空調を行うように構成されていることが好ましい。さらに、サーモモジュールは、加圧ガス貯蔵容器から熱を放散させることも可能である。したがって、サーモモジュールは、二重機能を有している。サーモモジュール又は冷媒回路は、冷媒を圧縮するためのコンプレッサを備えていることが可能である。冷媒は、冷却流路を通って流れる際に、受入領域から熱を取り出す。冷媒は、その過程で少なくとも部分的に蒸発可能である。したがって、冷却流路自体又は加圧ガス貯蔵容器の壁は、冷媒回路用の蒸発器として機能し得る。サーモモジュール又は冷媒回路は、冷媒を凝縮するための凝縮器を備えていることが可能である。凝縮器は、熱を放出することに適している。例えば、凝縮器は、熱を周囲又は車室に放出することが可能である。サーモモジュールは、ヒートポンプを含むことが可能である。例えば、水、具体的には冷却水、グリコール、又は、様々な塩水を冷却剤として使用することが可能である。この場合、冷却流路は冷却回路の一部であり得る。冷却回路は、冷却流路に加えて、ポンプ、具体的には水ポンプを備えていてもよい。例えば、冷却水は、冷却流路を通って流れ、熱を冷却又は放散することが可能である。例えば、冷却水は、冷却流路を通ってポンプで送り込まれることが可能である。
【0043】
他の一実施形態によれば、冷却流路は、冷却流路を通って受入領域に流入するガスの一部を膨張させるように構成されている。
【0044】
この目的のために、ノズル、弁、又は同様のものが設けられていることが可能である。例えば、冷却流路は、受入領域の中に直接開口している。
【0045】
さらに、少なくとも1つのこのような加圧ガス貯蔵容器を備える、車両、具体的には動力車が提供される。
【0046】
車両は、この種の加圧ガス貯蔵容器を幾つか備えていることが可能である。加圧ガス貯蔵容器は、例えば、車両の底部の領域に配置され得る。車両は、加圧ガス貯蔵容器を使用してガスが供給される消費負荷、具体的には燃料電池を含むことが可能である。具体的には、車両は電気自動車又はハイブリッド車であり得る。しかしながら、車両は、内燃機関を搭載することも可能である。また、車両は、商用車、例えばトラックであってもよい。さらに、車両は、航空機、水上バイク、又は、鉄道車両であってもよい。車両は、特に好ましくは、乗用車である。車両は、上述したようなサーモモジュール又は冷媒回路を備えていることが可能である。サーモモジュールは、車両の空調システム、具体的には自動空調システムの一部であり得る。さらに、サーモモジュール自体も、車両の空調システム又は自動空調システムであってもよい。サーモモジュールは、特に、車室の空調を行うことに適している。
【0047】
提案する加圧ガス貯蔵容器について説明した実施形態及び特徴は、提案する車両に準用され、その逆もまた同様である。
【0048】
この場合、「1つ」は必ずしも正確に1つの要素に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、2つ、3つ、又は、それ以上といった複数の要素を提供することも可能である。また、ここで使用される他の計数単語も、特定の要素数に正確に制限されることを意味するものではないと理解されたい。むしろ、特に明記しない限り、数値的に上方又は下方に逸脱することも可能である。
【0049】
加圧ガス貯蔵容器及び/又は車両の他の可能な実装例には、明確に言及されていない実施形態の例に関して、上述又は後述する特徴又は実施形態の組み合わせも含まれる。この文脈において、当業者であれば、個々の態様を、加圧ガス貯蔵容器及び/又は車両のそれぞれの基本形態に対する改良又は追加として追加することもできるであろう。
【0050】
加圧ガス貯蔵容器及び/又は車両のさらに有利な実施形態及び態様は、従属請求項の主題であり、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器及び/又は車両の実施形態の主題である。さらに、加圧ガス貯蔵容器及び/又は車両を、添付の図を参照して、好ましい実施形態によりさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】車両の一実施形態を示す概略的な側面図である。
【
図2】
図1の車両用の加圧ガス貯蔵容器の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図2の切断線III-IIIに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的な他の断面図である。
【
図5】
図2に係る加圧ガス貯蔵容器用のガス案内装置の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図6】
図5に係るガス案内装置の概略的な他の断面図である。
【
図7】
図1に係る車両用の加圧ガス貯蔵容器の他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図8】
図7の切断線IIX-IIXに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的な他の断面図である。
【
図9】
図1に係る車両用の加圧ガス貯蔵容器の他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図10】
図9の切断線X-Xに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的な他の断面図である。
【
図11】
図1に係る車両用の加圧ガス貯蔵容器の他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図12】
図11の切断線XII-XIIに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的なさらなる断面図である。
【
図13】
図1に係る車両用の加圧ガス貯蔵容器の他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図14】
図13の切断線XIV-XIVに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的なさらなる断面図である。
【
図15】
図1に係る車両用の加圧ガス貯蔵容器の他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図16】
図15の切断線XVI-XVIに沿った加圧ガス貯蔵容器の概略的な他の断面図である。
【0052】
図面では、特に記載が無い限り、同一又は機能的に同じ要素には同一の参照符号を付した。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、車両1の一実施形態を示す概略的な側面図である。車両1は、動力車、具体的には電気自動車又はハイブリッド車である。しかしながら、車両1は、内燃機関を動力源とすることもできる。車両1は、商用車、例えばトラック、収穫機械、又は、建設機械であってもよい。さらに、車両1は軍用車両であってもよい。車両1はまた、航空機、水上機、又は、鉄道車両であってもよい。しかしながら以下では、車両1は、自動車、具体的には乗用車であると仮定する。
【0054】
車両1は、車両1の客室または車室3を包囲する車体2を含む。車室3には、運転手及び乗客が乗車できる。車体2は、車両1の周囲4と車室3とを仕切っている。車室3は、ドアによって周囲4からアクセス可能である。
【0055】
車両1は、幾つかの車輪5、6を備えるシャーシを備える。車輪5、6の数は基本的に任意である。好ましくは、車両1は4つの車輪5、6を備える。しかしながら、車両1は、例えば6つの車輪5、6を備えていてもよい。車輪5、6は、車両1のシャーシの一部である。2つの車輪5、6だけが駆動可能である。しかしながら、全ての車輪5、6が駆動可能であってもよい。この場合、車両1は四輪駆動車である。
【0056】
車両1は、ガス、具体的には水素を加圧貯蔵するための加圧ガス貯蔵容器7を備える。加圧ガス貯蔵容器7は、好ましくは、車両1の底部の領域又は床部構造の上又は中に配置される。加圧ガス貯蔵容器7は、車体2の外側に配置されていてもよい。車両1は、複数の加圧ガス貯蔵容器7を備えていてもよい。
【0057】
原則的に、加圧ガス貯蔵容器7は、車両1での使用に適しているだけでなく、例えば、他の用途にも使用可能である。例えば、加圧ガス貯蔵容器7は、不動の用途、具体的には建築技術や非常用電源にも使用可能である。さらに、加圧ガス貯蔵容器7は、建物の暖房分野や熱電併給プラントにも使用可能である。しかしながら以下では、加圧ガス貯蔵容器7は、可動の用途、すなわち車両1の中又は上で使用されるものとする。
【0058】
加圧ガス貯蔵容器7は、加圧ガス貯蔵容器7に貯蔵されたガスを、適切な供給圧力及び適切な供給温度において車両1の消費負荷8に供給するために使用可能である。消費負荷8は、好ましくは燃料電池である。この場合、「燃料電池」とは、連続的に供給される燃料(この場合は水素)と酸化剤(この場合は酸素)との化学反応エネルギーを電気エネルギーに変換するガルバーニ電池であると理解される。得られた電気エネルギーを使用して、例えば、図示しない電気モーターを駆動し、車輪5、6又は車輪5、6のうちの少なくとも2つを駆動することが可能である。
【0059】
図2は、上述の加圧ガス貯蔵容器7Aの一実施形態を示す概略的な断面図である。
図3は、
図2の切断線III-IIIに沿った加圧ガス貯蔵容器7Aの概略的なさらなる断面図である。
図4は、
図2の詳細
図IVである。以下において、
図2~
図4を同時に参照する。
【0060】
加圧ガス貯蔵容器7Aは、ガス、ここでは水素H2を、高圧下において気体の状態で貯蔵し、必要に応じてこれを再び放出することに適している。例えば、加圧ガス貯蔵容器7Aは、数100バール、例えば800バールから1,000バールの圧力下で作動される。加圧ガス貯蔵容器7Aは、加圧ガス貯蔵タンク、水素加圧ガス貯蔵容器、水素加圧ガス貯蔵タンク、又は、水素貯蔵容器と呼ばれることもある。
【0061】
原則的に、加圧ガス貯蔵容器7Aは、任意のガスを保持又は貯蔵することに適している。しかしながら以下では、ガスは水素H2であるとする。したがって、「ガス」及び「水素」という用語は、互換的に使用可能である。上述したように、水素H2は、気体集合状態で加圧ガス貯蔵容器7Aに貯蔵される。したがって、水素H2は単相である。したがって好ましくは、加圧ガス貯蔵容器7A内には液相は存在せず、つまり相境界も存在しない。
【0062】
加圧ガス貯蔵容器7Aは、水素H2を受け入れるための受入領域10を包囲する、容器壁または壁9を含む。気体状の水素H2が受入領域10に収容される。受入領域10は円筒形である。受入領域10の形状又は空間的広がりは、壁9によって規定又は制限される。受入領域10は、壁9によって完全に包囲された空洞である。以下に説明するように、壁9は多層構造又はラミネート構造になっている。これは、異なる材料が層構造の壁9を形成していることを意味している。
【0063】
加圧ガス貯蔵容器7Aに、長さ方向又はx方向x、高さ方向又はy方向y、及び、深さ方向又はz方向zの座標系が割り当てられている。方向x、y、zは互いに垂直である。加圧ガス貯蔵容器7Aの長手方向Lは、x方向xに沿って延びている。つまり、長手方向L及びx方向xは同一であることを意味している。重力方向gは、y方向yの反対方向に向けられ、y方向yに対して平行である。
【0064】
加圧ガス貯蔵容器7A又は壁9に、対称軸又は中心軸11が割り当てられており、それに対して、加圧ガス貯蔵容器7A又は壁9はほぼ回転対称である。「ほぼ」回転対称とは、少なくともわずかに楕円形の断面を含む。中心軸11は、x方向xに平行に延びている。したがって、中心軸11は、長手方向Lにも沿って延びている。加圧ガス貯蔵容器7A又は壁9の半径方向Rは、中心軸11に対して垂直、かつ、中心軸11から壁9の方向に離れるように向けられている。
【0065】
壁9は、容器壁、シェル、エンベロープ、バリアと呼ぶことも可能である。壁9は、中心軸11に対して回転対称である。従って、断面において、壁9は好ましくは円形である。しかしながら、壁9は、断面において、楕円形又はわずかに楕円形であってもよい。壁9は、中心軸11に対して回転対称である管状又は中空円筒状の基本部12を含む。
【0066】
第1のカバー部又は第1の壁端部13、及び、第2のカバー部又は第2の壁端部14が、基本部12の各端面に、すなわち
図2に示される向きでいうと左右に、設けられている。壁端部13、14は、ドームの形状に湾曲しているか又はドーム状であり、それぞれ中心軸11に対して回転対称に設けられている。壁端部13、14は、カバー部とも呼ぶことが可能である。壁端部13、14は、受入領域10に対して外側に湾曲している。基本部12と壁端部13、14とは、強固に、具体的には取り外し不能に、互いに連結されている。壁9は円筒形状を有する。
【0067】
壁9は、繊維強化プラスチック材料又は繊維複合プラスチックから成る耐荷重ジャケット15を含む。ジャケット15は外側にあり、したがって周囲4に面している。つまり、ジャケット15は周囲4に隣接している。ジャケット15が「耐荷重性」であるということは、具体的に言えば、ジャケット15が壁9又は加圧ガス貯蔵容器7Aに作用する荷重の全て又は少なくとも大部分を吸収することを意味している。荷重は、加圧された水素H2自体に起因するもの、及び/又は、例えば交通事故の際の外部荷重に起因するものであり得る。
【0068】
ジャケット15は、壁9のシース、コーティング、支持層、外側コーティング、又は、外側層と呼ぶことも可能である。ジャケット15は、好ましくは、層状又はシート状の繊維複合プラスチックで構成される。しかしながらこれは、ジャケット15が金属成分を含み得る可能性を排除するものではない。ジャケット15は、周囲4に面した外面16と、受入領域10に面した内面17とを含む(
図4)。
【0069】
上述のような繊維複合プラスチックは、プラスチック材料、具体的にはプラスチックマトリックスを含み、その中に繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が埋め込まれている。プラスチック材料は、エポキシ樹脂又はビニルエステル系樹脂といった熱硬化性樹脂であってもよい。しかしながら、プラスチック材料は、熱可塑性であってもよい。繊維は長繊維であってもよい。
【0070】
ジャケット15は、好ましくは、集積型の構成要素、具体的には一体型材料の構成要素である。ここで、「集積型」又は「一体型」とは、ジャケット15が1つの構成要素を形成しており、再び互いに分離可能な異なる部品または構成要素から構成されていないことを意味している。ここで、「一体型材料」とは、ジャケット15が全体的に同じ材料、すなわち繊維複合プラスチックから作られていることを意味する。ジャケット15は、基本部12と両壁端部13、14との両方に設けられている。
【0071】
ジャケット15に加えて、壁9は、ジャケット15を裏打ちするライナー18を含む。ライナー18は、壁9の内側コーティング又は内層とも呼ぶことが可能である。ジャケット15は、ライナー18に巻き付けるか、又は、図示しない金型やマンドレルに巻き付けて製造することが可能である。ライナー18は気密である。ジャケット15は、必ずしも気密でなくてもよい。ライナー18は、繊維複合プラスチック、種々のプラスチック材料、及び/又は、金属材料を含むことが可能である。ライナー18は、いわゆる裏打ち材であり、又は、加圧ガス貯蔵容器7Aの裏打ち材と呼ばれることもある。
【0072】
ライナー18は管状又は中空円筒形状を有する。ライナー18は、中心軸11に対して回転対称である。ライナー18は、基本部12と両壁端部13、14との両方に設けられている。ライナー18は、層状又は層に似た構造を有していることが可能である。ジャケット15は、ライナー18を完全に包囲又は封入している。
【0073】
ライナー18は、ジャケット15の内面17に面した外面19(
図4)と、受入領域10に面した内面20とを含む。内面20は、受入領域10内に保持された水素H2と接触する。内面20は、壁9の内面又は加圧ガス貯蔵容器7Aの内面とも呼ぶことが可能である。内面20は、円筒形の受入領域10を完全に包囲しており、したがってその空間的広がりを規定している。
【0074】
ジャケット15及びライナー18は、ジャケット15の内面17とライナー18の外面19とにおいて、互いに物質的に接合、具体的には接着、されている。物質的に接合された接続の場合、接続対象同志が原子または分子の力によって一緒に保持される。物質的に結合された接続とは、接続手段及び/又は接続対象同志を破壊することによってのみ再び分離可能な、取り外し不可能な接続である。
【0075】
加圧ガス貯蔵容器7Aは、水素H2を受入領域10に注入する又は流入させるための噴射ノズル又は入口ノズル21をさらに備える。入口ノズル21は、好ましくは、壁9の第1の壁端部13に設けられる。あるいは、入口ノズル21は、第2の壁端部14に配置されてもよい。好ましくは、入口ノズル21は、ジャケット15及びライナー18の両方を貫通している。入口ノズル21は金属材料から構成されていてもよい。
【0076】
入口ノズル21は、中心軸11に対して回転対称となるように設計されていることが好ましい。具体的には、入口ノズル21は、中心軸11に対して中心を揃えて、又は、中心軸11の中心に配置される。これとは異なり、入口ノズル21は、中心から外れて、すなわち中心軸11に対してオフセットして配置されてもよい。入口ノズル21は、好ましくは管状又は中空円筒状であり、具体的には、環状の断面を有する。しかしながら、これとは異なり、入口ノズル21は他の断面を有していてもよい。
【0077】
入口ノズル21は、加圧ガス貯蔵容器7Aに気体状の水素H2を補給又は充填することを可能にする複数の管路、穴、ノズル、弁、スイッチ、及び/又は、センサ技術装置を備えていることが可能である。入口ノズル21は、第1の壁端部13の領域においてライナー18の内面20を越えて、したがって受入領域10の中に突出していることが可能である。入口ノズル21は、水素H2を、中心軸11に平行に、又は、長手方向Lに沿って若しくはx方向xに沿って、受入領域10の中に入れる、又は、注入するように構成される。
【0078】
加圧ガス貯蔵容器7Aは、ガス案内装置22をさらに備え、このガス案内装置22は、受入領域10を水素H2で充填する間に、水素H2の少なくとも一部を壁9の内面に沿って供給するように構成されている。これは、ガス案内装置22が、水素H2を、少なくとも部分的に、中心軸11から壁9の内面20の方へ、半径方向Rにおいて半径方向外側に案内することを意味している。
【0079】
この場合、ガス案内装置22は、受入領域10を充填する間に、水素H2を中心軸11に沿って、第1の壁端部13から第2の壁端部14に向かって案内する。ガス案内装置22は、ガス方向付け装置又はガスガイド及びガス冷却装置と呼ばれることもある。
【0080】
ガス案内装置22は、受入領域10に充填される水素H2を、充填中に壁9の内面に沿って案内するために、水素H2の少なくとも一部を方向転換又は迂回させる。この場合の「内面」とは、受入領域10に面していることを意味する。具体的には、水素H2は、ライナー18の内面20に沿って案内される。
【0081】
水素H2が壁9に沿って流れる時、水素H2は壁9に熱Qを放出するか、又は、壁9が水素H2から熱Qを抽出することが可能である。その後、壁9は熱Qを周囲4に放出する。この目的のために、壁9は、熱Qを水素H2から周囲4に伝達するための熱伝達器又は熱交換器として機能する。壁9内では、熱Qは好ましくは熱伝導によって伝達される。
【0082】
以下に説明するように、ガス案内装置22は、複数の内部部品及び/又は構成要素から構成されてもよく、これらの内部部品及び/又は構成要素は、受入領域10の内部に少なくとも部分的に、及び/又は、受入領域10の外部に少なくとも部分的に配置されてもよい。内部部品及び/又は構成部品は、例えば、案内リブ、案内プレート、フィン、かくはん器及び/又はルーバーを備えたフィン、渦巻き、支柱、かくはん器、整流器、ナブ、又は、熱伝達及び/又は熱伝達面を増大させるための同等の装置を配置したフィンを備えていることが可能である。しかしながら、内部部品には、管、パイプ、ダクト、様々なガス案内要素、ガイド管、ヒートパイプ、管路、冷却流路、冷却ライン等が含まれ得る。
【0083】
ガス案内装置22は、第1のガス案内要素23を備えていてもよい。第1のガス案内要素23は、ガス案内コーン又はガス案内テーパとも呼ばれることがある。さらに、第1のガス案内要素23は、第1のガス方向転換要素と呼ばれることもある。第1のガス案内要素23は、完全に受入領域10の内部に配置される。これにより、第1のガス案内要素23は、第1の壁端部13に開口する入口ノズル21の中又は上に設けられる。「中又は上」とは、具体的には、第1のガス案内要素23が、入口ノズル21の完全に外側に配置されることも、少なくとも部分的に入口ノズル21の内側に配置されることも可能であることを意味している。
【0084】
第1のガス案内要素23は、
図5の概略的な断面図に示されている。第1のガス案内要素23は、対称軸又は中心軸24に関して回転対称であることが好ましい。
図5が示すように、中心軸11、24は、同軸に配置されていることが可能である。これは、中心軸11と中心軸24とが同じものであることを意味する。第1のガス案内要素23は、金属材料、例えばアルミニウムやステンレス鋼から構成可能である。しかしながら、第1のガス案内要素23は、繊維複合材料を含んでいてもよい。
【0085】
第1のガス案内要素23は、少なくとも部分的に円錐状または円錐形である。しかしながら、第1のガス案内要素23は、任意の形状又は曲率を有し得る。第1のガス案内要素23はまた、任意の凹面及び/若しくは凸面、又は、水素H2を受入領域10に流入させる間又は注入する際に案内又は誘導する表面を含んでいてもよい。
【0086】
例えば、第1のガス案内要素23は、入口ノズル21の出口25に面した先端26と、出口25の反対側を向いた端面27とを備える。出口25は、出口開口部と呼ぶことも可能である。先端26は、必ずしも尖っている必要はない。先端26は丸みを帯びていてもよいし、平らであってもよい。さらに、先端26の代わりに、平坦な端面が設けられていてもよい。第1のガス案内要素23は、少なくとも部分的に円錐状又は円錐形のジャケット面28を備え、ジャケット面28の上では、
図5の向きにおいて左側に先端26が設けられ、右側に端面27が設けられている。
【0087】
第1のガス案内要素23の断面又は断面積は、先端26から端面27の方向に拡大している。これはまた、第1のガス案内要素23の断面が、入口ノズル21又は第1の壁端部13から第2の壁端部14の方向に拡大していることを意味している。第1のガス案内要素23が「拡大している」とは、ここでは、第1のガス案内要素23の断面が、先端26から端面27の方向に大きくなっていることを意味するものであると理解されたい。
【0088】
好ましくは、第1のガス案内要素23は、
図5には示されていない保持構造により、中心軸11、24が互いに同軸となるように配置される。しかしながら、ずらして配置することも可能である。この場合、出口25、具体的には出口25の端面29と先端26との間に距離aを設けることができる。距離aは、数ミリメートルから数センチメートルであり得る。
【0089】
あるいは、先端26は、少なくとも部分的に出口25内に配置することも可能である。この場合、第1のガス案内要素23は、少なくとも部分的に、つまり、具体的にはその先端26で、出口25内に収容される。この場合、先端26と出口25との間に距離aは設けられない。むしろ、先端26は出口25の端面29の後方に突出している。具体的には、これは、x方向xに沿って又は長手方向Lに沿って見たときに、先端26が出口25の中に突出していることを意味している。
【0090】
上述したように、第1のガス案内要素23は、具体的には、中心軸11、24が互いに同軸に配置されるように配置されている。この場合、第1のガス案内要素23は、入口ノズル21の前方で中心を揃えて配置される。しかしながら、第1のガス案内要素23は、入口ノズル21に対して中心からずれた位置に配置されてもよい。例えば、第1のガス案内要素23は、中心軸11に対して、y方向yに沿って及び/又はz方向zに沿って変位されていてもよい。
【0091】
したがって、後者の場合、第1のガス案内要素23は中心から外れた位置に配置される。これは、受入領域10が充填される際に、水素H2が中心から外れた第1のガス案内要素23上に通気されることを意味している。第1のガス案内要素23を長手方向Lと反対の方向又はx方向xと反対の方向に見ると、第1のガス案内要素23は、少なくとも部分的に入口ノズル21、具体的には入口ノズル21の出口25を覆っている。第1のガス案内要素23は、
図5に示されるように、出口25を完全に覆ったり隠したりすることも可能である。
【0092】
任意選択により、ガス案内装置22は、第1のガス案内要素23に加えて、第2のガス案内要素30を備えていることが可能である。第2のガス案内要素30は、
図6において概略的な断面図で示されている。第1のガス案内要素23とは異なり、第2のガス案内要素30は、第1の壁端部13には取り付けられず、第2の壁端部14に取り付けられる。第2のガス案内要素30は、第2のガスバイパス要素と呼ばれることもある。
【0093】
第1のガス案内要素23及び第2のガス案内要素30は、ガス案内装置22又は加圧ガス貯蔵容器7Aの2つの別個の部品又は構成要素である。したがって、第1のガス案内要素23及び第2のガス案内要素30は、同一ではない。第2のガス案内要素30は、ライナー18の一体型部品であることが可能である。これは、具体的には、ライナー18と第2のガス案内要素30とが一体型の構成要素、具体的には一体型材料の構成要素を形成可能であることを意味している。
【0094】
第2のガス案内要素30は、例えば、金属材料、具体的にはアルミニウム又はステンレス鋼から、及び/又は、繊維複合プラスチックから構成可能である。第2のガス案内要素30は、対称軸又は中心軸31に関して回転対称である。具体的には、第2のガス案内要素30は、完全に受入領域10の内部に配置される。この場合、第2のガス案内要素30の中心軸31と壁9の中心軸11とは、互いに同軸に配置されている。具体的には、中心軸11、24も、互いに同軸に配置されていることが可能である。
【0095】
第2のガス案内要素30は、第2の壁端部14の領域においてライナー18の内面20に接続される後面32を含む。後面32は、ドームの形に湾曲している、又は、ドーム状である。具体的には、後面32は、球状のドーム形状であり得る。ここで、「球状のドーム」とは、球の一部として理解される。例えば、内面20と後面32とは接着されている。
【0096】
受入領域10又は水素H2に面して、第2のガス案内要素30は、後面32の反対側に、湾曲又は屈折した前面33を備える。前面33は、第1の壁端部13に面している。具体的には、前面33は、入口ノズル21、具体的には入口ノズル21の端面29に面している。前面33は、少なくとも幾つかの部分において又は部分的に、円錐状又は円錐形である。具体的には、前面33は、中心軸31に配置された先端34に向かってテーパ状になっていてもよいし、又は、先端34に収束していてもよい。前面33は、凸型及び/又は凹型の領域又は表面を有していてもよい。
【0097】
加圧ガス貯蔵容器7Aの機能を以下にまとめる。加圧ガス貯蔵容器7Aは、気体状の水素H2を、図示しない燃料補給システムを使用して充填又は補給することが可能である。燃料補給システムは、固定ガスタンク又は水素タンク、燃料補給ホース、及び/又は、燃料補給ホースを車両1のタンクノズルに連結するための連結装置を備える。
【0098】
消費負荷8の要件に応じて、加圧ガス貯蔵容器7Aは、水素H2を消費負荷8に放出する。このために、加圧ガス貯蔵容器7Aと消費負荷8との間に、図示しない車両1の水素供給システムを設けることが可能である。例えば、この供給システムを使用して、水素H2を消費負荷8に、消費負荷8に適した供給圧力及び供給温度で供給することが可能である。
【0099】
受入領域10が水素H2で充填される際に、水素H2は、入口ノズル21を介して受入領域10内で膨張する。これにより、受入領域10の温度が上昇する。温度は、入口ノズル21から最も離れた位置にある第2の壁端部14で最も高くなる。
【0100】
この温度上昇により、受入領域10内の圧力が上昇するので、結果的に、受入領域10への水素H2の完全な充填は、燃料補給プロセスを中断し、受入領域10内の温度、ひいては受入領域10内の圧力が許容可能なレベルまで再び低下するまで待機した場合にのみ可能となる。したがって、加圧ガス貯蔵容器7Aの燃料補給プロセス又は充填プロセスには時間がかかり、これを改善する必要がある。
【0101】
ガス案内装置22により、受入領域10に注入された水素H2を、少なくとも部分的に壁9の内面に沿って供給することが可能になる。そうすることで、壁9は、受入領域10を水素H2で充填する際に水素H2から熱Qを取り出し、これを周囲4に放出するための熱交換器として機能する。このように、ガス案内装置22は、壁9と相乗的に作用して、受入領域10又は水素H2から熱Qを取り出し周囲4に放散または伝導する。
【0102】
この場合、水素H2は、入口ノズル21により、第1のガス案内要素23の中心に通気される。結果として、水素H2は、第1のガス案内要素23の円錐形のジャケット面28により、ライナー18の内面20に対して半径方向Rにおいて半径方向外側に向けられる。これによって、
図2に示すように、入口ノズル21又は第1のガス案内要素23から壁9に沿って第2の壁端部14の方向に案内されるガス流35が生じる。
【0103】
ガス流35は、少なくとも時々、層流及び/又は乱流となり得る。ここで、「層流」とは、流れの方向に対して垂直に広がる2つの異なる流速の間の過渡領域において、目に見えない乱流が発生する流体の動きであると理解される。流体、ここでは水素H2は、互いに混じり合わない複数の層の形で流れる。
【0104】
これとは異なり、「乱流」とは、広範囲の寸法にわたって乱流が発生する流体の動きであると理解される。この種の流れは、時間的および空間的にランダムに変化するように見える成分を有する三次元の流れの場によって特徴付けられる。ガス流35は、壁9、具体的には壁9の内面20に沿って流れるので、これは、発達した流れ若しくは隣接した流れ、又は、発達したガス流若しくは隣接したガス流35とも呼ぶことが可能である。
【0105】
ガス流35は、入口ノズル21から内面20に沿って第2の壁端部14まで供給される。ガス流35は、ガスの流れ、水素流、又は、水素の流れと呼ぶことも可能である。この場合、ガス流35は、壁9の内面20に接触している。これは、内面20が常に新鮮な水素H2で洗浄されることを意味している。ガス流35は、長手方向Lに沿って供給される。ガス流35は乱流であってもよく、乱流又は渦36を含んでいてもよい。
【0106】
ガス流35は、第1の壁端部13から第2の壁端部14まで延びる管状又は中空円筒形状を有している。したがって、ガス流35はジャケット状である。ガス流35は、シース流と呼ぶこともできる。ガス流35は、ガス流35が長手方向Lに沿って移動する間、内面20と接触している。
【0107】
第2の壁端部14において、ガス流35は、第2のガス案内要素30により、入口ノズル21の方向又は第1のガス案内要素23の方向に迂回される。ここで、ガス流35は、第2のガス案内要素30の円錐形の前面33に衝突し、その結果、ガス流35は、対向ガス流37として中心軸11に沿って第1の壁端部13の方向に戻るように案内される。その結果、第2のガス案内要素30によって偏向された水素H2により、第2の壁端部14から熱Qが放散される。
【0108】
対向ガス流37は、長手方向Lの反対の方向、したがってガス流35とも反対の方向に向けられている。ガス流35は、長手方向Lに沿うように向けられている。ガス流35と対向ガス流37とは、反対の流れ方向を有する。対向ガス流37は、具体的にはジャケット形のガス流35内で、第1のガス案内要素23に対して逆流する。したがってガス流35は、対向ガス流37を円周方向に取り囲むか、又は、包囲する。「周方向に」とは、ガス流35の円周に沿って見られることを意味している。対向ガス流37は、対向するガスの流れ、対向水素流、又は、対向する水素の流れと呼ばれることもある。
【0109】
したがって、壁9の内側に連続的なガス流35を生成することができ、このガス流は渦36を含むことが可能である。渦36により、水素H2から壁9へのより良好な熱伝達が可能となる。壁9に沿って伝導された水素H2は、受入領域10に注入される間に加熱されており、受入領域10から取り出された熱Qを周囲4に放散することによって、再び冷却することが可能である。ガス流35及び対向ガス流37は、受入領域10内の均一な温度分布も確保する。具体的には、水素H2は均一に混合される。
【0110】
こうして、ガス案内装置22によって、ガス流35は、壁9の内面又は内面20に対して引き寄せられる又は当接することを余儀なくされる。これにより、水素H2と壁9との接触が強まるので、熱Qの伝達が改善される。具体的には、いわゆるコアンダ効果も利用される。「コアンダ効果」とは、流体の流れが、凸面から離脱して元の流れ方向に動き続けるのではなく、凸面に「沿って流れる」傾向を示唆する物理現象を指す。例えば、第1のガス案内要素23及び/又は第2のガス案内要素30は、そのような凸面を有していてよい。
【0111】
壁9自体は、受入領域10と周囲4との間の熱伝達器又は熱交換器として機能する。具体的には、これは、壁9が熱Qを受入領域10又は水素H2から周囲4に伝達するように、又は、周囲4に放出するように構成されていることを意味している。壁9が熱伝導性であることを確保するために、壁9は、金属材料等の熱伝導性構成要素を含むことが可能である。
【0112】
さらに、熱伝導によって受入領域10から周囲4へ熱Qを伝達する、複数又は少なくとも1つの放熱要素を設けることも可能である。複数又は少なくとも1つの放熱要素は、壁9の一部であり得る。例えば、周囲4から受入領域10に突出したランスや、ヒートパイプの形で、放熱要素を設けることが可能である。
【0113】
「ヒートパイプ」とは、作動媒体の蒸発エンタルピーを利用することで高い熱流量密度を可能にする、熱交換器の形をした管状又はロッド状の装置を指す。このようにして、大量の熱を小さな断面積で輸送することが可能である。作動媒体は、例えば、水、アンモニア、又は、水とアンモニアとの混合物であり得る。
【0114】
その後、上述の作動媒体は、ヒートパイプが突入している受入領域10内で蒸発し、そこで熱Qを吸収し、同じくヒートパイプが突出している周囲4において凝縮する。これによって、吸収された熱Qが再び放出される。作動媒体はヒートパイプから離脱しない。しかしながら、ヒートパイプには、例えば、壁9から突出したヒートパイプから熱Qを周囲4に放散させる能動的な冷却システムを設けることができる。
【0115】
上述の動作モードは、基本的に、加圧ガス貯蔵容器7Aの受動的な冷却又は受動的な温度制御を伴う。具体的には、受入領域10から周囲4に対して、受動的な熱伝達が行われる。ここで「受動的」とは、具体的には、熱Qが本質的に壁9による熱伝導によってのみ受入領域10から周囲4に伝達されることを意味している。この場合、循環冷却剤による冷却剤回路、又は、冷媒による冷媒回路が設けられていないことが好ましい。具体的には、受動冷却用の、ポンプのような可動部品は設けられていない。
【0116】
「冷却剤」という用語は、熱Qを排出するために使用される、気体状、液状、若しくは、固体状の物質、又は、物質の混合物を指す。「冷媒」との違いは、冷媒回路の冷媒は、温度勾配に逆らって熱Qを輸送することができるため、熱Qが輸送されることになる領域の温度を、熱Qが放散されることになる領域の温度よりも高くすることができるものであるが、冷却剤は単に、エンタルピーを、冷却剤回路のより高温の領域からより低温の領域までの温度勾配に沿って輸送することが可能な点である。
【0117】
これとは反対に、「能動的な」熱伝達は、熱Qを輸送するために冷却剤又は冷媒を使用する。従ってここで「能動的」とは、具体的には、受入領域10から熱Qを除去するために、例えばポンプにより、又は、水素H2を供給する冷却流路により、及び、具体的には外部エネルギーの供給により、冷却剤又は冷媒を強制的に循環させることを意味している。この定義の背景から、上記のようなヒートパイプは、作動媒体が純粋にヒートパイプ内の毛管効果又は温度差によって搬送されるため、受動的なものとみなされる。
【0118】
図7は、車両1用の、他の一実施形態である加圧ガス貯蔵容器7Bを示す、概略的な断面図である。
図8は、
図7の切断線IIX-IIXに沿った加圧ガス貯蔵容器7Bの概略的なさらなる断面図である。以下において、
図7及び
図8を同時に参照する。
【0119】
加圧ガス貯蔵容器7Bの構造は、基本的に加圧ガス貯蔵容器7Aの構造に対応している。したがって、2つの実施形態加である加圧ガス貯蔵容器7A、7B間の相違点のみを以下に説明する。上述の加圧ガス貯蔵容器7Aの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Bにも適用可能である。逆に、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器7Bの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Aに適用可能である。
【0120】
加圧ガス貯蔵容器7Aとは異なり、加圧ガス貯蔵容器7Bは、ガス案内装置22に関連付けられたガス案内管38を備えている。ガス案内管38は、完全に受入領域10内に配置されている。ガス案内管38は円筒形状を有している。具体的には、ガス案内管38は、中心軸11に対して回転対称である。ガス案内管38は、受入領域10の中心に配置される。ガス案内管38は、例えば、アルミニウム合金又はステンレス鋼等の金属材料から構成可能である。
【0121】
ガス案内管38と壁9との間に、円筒状のガス案内流路39が形成されている。具体的には、幾つかのガス案内流路39?42が設けられ、これらは、ガス案内装置22の一部でもあるガス案内リブ43?46によって互いに分離されている。ガス案内リブ43?46の数は任意である。例えば、4つのガス案内リブ43?46が設けられており、これらは、ガス案内管38にしっかりと接続可能である。
【0122】
例えば、ガス案内リブ43?46は、ガス案内管38を受入領域10の中心で保持可能である。ガス案内流路39?42は、長手方向Lに沿って第1の壁端部13から第2の壁端部14まで延びている。受入領域10は、ガス案内リブ43?46により、円周方向に4つのガス案内流路39?42に分割されている。ガス案内流路39?42は、互いに流体連通していてもよいし、又は、互いに流体的に分離されていてもよい。前者の場合、ガス案内流路39~42の間で水素H2の交換が可能であり、後者の場合、それは不可能である。
【0123】
ガス案内管38に、円錐状又は円錐形のガス案内部47が関連付けられている。ガス案内部47は、ガス案内管38にしっかりと接続されている。ガス案内部47の中心には、入口ノズル21によって、水素H2が作用する。ガス案内部47は、水素H2を、半径方向Rから見て外側に向かって、ガス案内流路39?42の中に偏向させる。これにより、上述のようなガス流35が形成され、このガス流35は、ガス案内管38の内側において、第2のガス案内要素30により対向ガス流37として入口ノズル21の方に戻される。
【0124】
任意選択で、加圧ガス貯蔵容器7Bのガス案内装置22は、1つ又は複数の冷却流路48を備えていてもよい。例えば、中心軸11の周りを螺旋状に延び、第1の壁端部13から第2の壁端部14まで延びる1つの冷却流路48が設けられていてもよい。特に多量の熱Qを放散させる必要がある領域では、冷却流路48の巻き数を増やしたり、大きくしたりすることができる。
【0125】
冷却流路48は、ライナー18に使用される材料内に配置可能である。あるいは、冷却流路48は、ジャケット15に使用される材料内に配置されることも可能である。さらに、冷却流路48は、受入領域10の内面又は壁9の外面に設けることも可能である。
【0126】
冷却流路48は、壁9の一体型部品であり得る。すなわち、冷却流路48は、壁9の空洞として設けられている。したがって、冷却流路48は、壁9から分離した構成要素又は部品として形成されていない。しかしながら代替的に、冷却流路48は、壁9から分離可能な構成要素として設計されていてもよいし、又は、後で壁9に取り付けられる構成要素として設計されていてもよい。
【0127】
冷却流路48は、熱Qの能動的な放散を確保する。気体状の水素H2は、冷却流路48を通って流れることが可能である。具体的には、受入領域10に導入された水素H2の少なくとも一部は、受入領域10の充填中に冷却流路48を通って流れる。さらに、水素H2のある一部は、受入領域10に直接流入することができ、水素H2の別のある一部は、壁9の内面に沿って案内されることが可能である。導入された水素H2の全体を壁9の内面に沿って案内することも可能である。
【0128】
冷却流路48は、冷却流路48を通って受入領域10に流入した水素H2の一部を冷却流路48が膨張させる装置又は弁を含んでいてもよい。有利にも、水素H2を使用する場合、追加の冷却剤又は冷媒を省くことができる。しかしながら、ポンプによって循環される冷却剤又は冷媒を提供してもよい。
【0129】
冷却流路48を通る水素H2の流れの代わりに、他の任意の冷却剤又は冷媒を使用することも可能である。例えば、冷却流路48は、冷媒回路49の一部であり、サーモモジュール50、冷却流路48、並びに、供給及び/又は排出ライン51、52を備える。供給及び/又は排出ライン51、52は、冷却流路48(図示せず)と流体連通している。サーモモジュール50は、車両1の空調システム又は自動空調システムであってもよいし、又は、空調システム若しくは自動空調システムとも呼ばれ得る。
【0130】
例えば、R1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)又はR744(二酸化炭素)を、冷却流路48を通して供給される冷媒として使用可能である。あるいは、R290(プロパン)を使用することも可能である。サーモモジュール50は、車室3の空調を行うように構成されている。サーモモジュール50は、冷媒を圧縮するためのコンプレッサを備えていることが可能である。冷媒は、冷却流路48を通って流れる際に、受入領域10から熱Qを取り出す。冷媒は、その過程で少なくとも部分的に蒸発可能である。したがって、冷却流路48又は壁9は、冷媒回路49の蒸発器として機能することが可能である。サーモモジュール50は、冷媒を凝縮させるための凝縮器を備えていることが可能である。
【0131】
例えば、水、具体的には冷却水、グリコール、又は、様々な塩水を冷却剤として使用することが可能である。冷却水は、その後、冷却流路48を通ってポンプで送り込まれるか、又は、導かれることが可能である。この場合、冷却流路48は冷却剤回路の一部であり得る。冷却剤回路は、冷却流路48に加えて、ポンプ、具体的には水ポンプを備えていてもよい。ここで「塩水」とは、具体的には塩水溶液として理解される。例えば、冷却のため又は熱Qを除去するための冷却流路48に、熱Qを吸収及び除去する冷却水を通して流すことが可能である。冷却水は、例えばポンプで、冷却流路48を通って送られることが可能である。
【0132】
図9は、車両1用の、他の一実施形態である加圧ガス貯蔵容器7Cを示す、概略的な断面図である。
図10は、
図9の切断線X-Xに沿った加圧ガス貯蔵容器7Cの概略的な他の断面図である。以下において、
図9及び
図10を同時に参照する。
【0133】
加圧ガス貯蔵容器7Cの設計は、基本的に加圧ガス貯蔵容器7Aの設計に対応している。したがって、加圧ガス貯蔵容器7A、7C間の相違点のみを以下に説明する。上述の加圧ガス貯蔵容器7A、7Bの実施形態の全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Cにも適用可能である。逆に、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器7Cの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7A、7Bに適用可能である。
【0134】
加圧ガス貯蔵容器7Cは、上述のような、第1のガス案内要素23を備えるガス案内装置22を備える。加圧ガス貯蔵容器7Aとは異なり、加圧ガス貯蔵容器7Cは、第2のガス案内要素30を含んでいないが、加圧ガス貯蔵容器7Bを参照して説明したような冷却流路48を含む。しかしながら任意選択により、加圧ガス貯蔵容器7Cは、上述したような第2のガス案内要素30、上述したようなガス案内リブ43?46を有するガス案内管38、及び/又は、ガス案内部47を備えていてもよい。
【0135】
図11は、他の一実施形態である加圧ガス貯蔵容器7Dを示す概略的な断面図である。
図12は、
図11の切断線XII-XIIに沿った加圧ガス貯蔵容器7Dの概略的なさらなる断面図である。以下において、
図11及び
図12を同時に参照する。
【0136】
加圧ガス貯蔵容器7Dの設計については、基本的に加圧ガス貯蔵容器7Aの設計に対応している。したがって、加圧ガス貯蔵容器7A、7D間の相違点のみを以下に説明する。上述の加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7Cの実施形態の全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Dにも適用可能である。逆に、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器7Dの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7Cに適用可能である。
【0137】
加圧ガス貯蔵容器7Aとは異なり、加圧ガス貯蔵容器7Dは、上述の冷却流路48を備えている。冷却流路48は、入口53及び出口54を有し、この入口53及び出口54を介して、水素H2を冷却流路48に供給したり、冷却流路48から排出したりすることが可能である。あるいは、冷却流路48を通る別の冷却剤又は冷媒を使用することも可能である。
【0138】
入口53及び出口54は、周囲4に突出しており、したがって周囲4からアクセス可能である。入口53は第1の壁端部13に設けられている。出口54は、第2の壁端部14に設けられている。
【0139】
具体的には、冷却流路48を流れる水素H2を、受入領域10に直接膨張させることができる。この場合、水素H2は、具体的には出口54があるため、排出されない。このため、冷却流路48に、対応する入口またはノズルを設けることができる。冷却流路48を通って供給された水素H2は、具体的には加圧ガス貯蔵容器7Dが充填される時に、冷却流路48の中に排出される。この目的のために、適切な弁等を設けてもよい。このようにして、純粋に冷却を目的とする水素H2を追加的に供給することを省くことができる。従って、加圧ガス貯蔵容器7Dを充填するための水素H2は、加圧ガス貯蔵容器7Dの冷却にも同時に使用可能である。
【0140】
あるいは、水素H2の代わりに、別の冷却剤又は冷媒を使用してもよい。このために、上述のサーモモジュール50を、供給及び/又は排出ライン51、52によって入口53及び出口54に流体的に接続し、上述の冷媒回路49を形成することが可能である。第1の供給及び/又は排出ライン51は、入口53に接続され得る。したがって、第2の供給及び/又は排出ライン52は、出口54に接続され得る。
【0141】
図13は、車両1用の、他の一実施形態である加圧ガス貯蔵容器7Eを示す、概略的な断面図である。
図14は、
図13の切断線XIV-XIVに沿った加圧ガス貯蔵容器7Eの概略的なさらなる断面図である。以下において、
図13及び
図14を同時に参照する。
【0142】
加圧ガス貯蔵容器7Eの設計については、基本的に加圧ガス貯蔵容器7Aの設計に対応している。したがって、加圧ガス貯蔵容器7A、7E間の相違点のみを以下に説明する。上述の加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7C、7Dの実施形態の全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Eにも適用可能である。逆に、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器7Eの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7C、7Dに適用可能である。
【0143】
加圧ガス貯蔵容器7Eが加圧ガス貯蔵容器7Aと本質的に異なるのは、ガス案内装置22が、ガス案内要素23、30に加えて、加圧ガス貯蔵容器7Bを参照して説明したガス案内リブ43?46を備えている点だけである。任意選択により、加圧ガス貯蔵容器7Eは、上述のガス案内部47を備えたガス案内管38を備えていてもよい。しかしながら、これは絶対に必須であるというわけではない。
【0144】
図14に示されるように、ガス案内リブ43~46は、受入領域10を、上述のガス案内流路39~42に分割する。加圧ガス貯蔵容器7Bとは異なり、ここでは、ガス案内流路39~42は、中心軸11の方向においてガス案内管38で閉鎖されておらず、開放されている。加えて、加圧ガス貯蔵容器7Eのガス案内装置22は、上述の冷却流路48を備えている。冷却流路48は、任意である。
【0145】
図15は、加圧ガス貯蔵容器7Fの他の一実施形態を示す概略的な断面図である。
図16は、
図15の切断線XVI-XVIに沿った加圧ガス貯蔵容器7Fの概略的なさらなる断面図である。以下において、
図15及び
図16を同時に参照する。
【0146】
加圧ガス貯蔵容器7Fの設計については、基本的に加圧ガス貯蔵容器7Aの設計に対応している。したがって、加圧ガス貯蔵容器7A、7F間の相違点のみを以下に説明する。上述の加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7C、7D、7Eの実施形態の全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7Fにも適用可能である。逆に、以下に説明する加圧ガス貯蔵容器7Fの全ての態様及び特徴は、加圧ガス貯蔵容器7A、7B、7C、7D、7Eに適用可能である。
【0147】
加圧ガス貯蔵容器7Aとは異なり、加圧ガス貯蔵容器7Fは、第2のガス案内要素30を備えていない。しかしながら代替的に、加圧ガス貯蔵容器7Fは、上述のような第2のガス案内要素30を備えていてもよい。加圧ガス貯蔵容器7Fのガス案内装置22は、上述のようなガス案内リブ43~46を備え、これらは、ここでは中心軸まで延びている。
【0148】
ガス案内装置22は、受入領域10の中心に配置された、ランス状又はロッド状の放熱要素55をさらに備える。これは、放熱要素55が好ましくは中心軸11に対して回転対称であることを意味している。放熱要素55は、完全に受入領域10内に配置される基本部56を含む。
【0149】
基本部56は、長手方向Lに沿って第1の壁端部13から第2の壁端部14まで延びている。ガス案内リブ43?46は、熱伝導式に基本部56に接続されている。例えば、ガス案内リブ43?46は、放熱要素55の基本部56に接着、はんだ付け、及び/又は、溶接されている。ガス案内リブ43?46は、放熱要素55を受入領域10の中心で保持している。
【0150】
熱伝達部57が、壁9の第2の壁端部14を越えて周囲4の中に突出している。したがって、ガス案内リブ43?46により導入された水素H2から熱Qが取り出され、放熱要素55を介して周囲4に放出され得る。熱伝達部57は、能動的に冷却されて熱Qを放散させることが可能である。この目的のために、図示しない冷却システムが設けられていてもよい。
【0151】
放熱要素55は、集積型の構成要素、具体的には一体型材料の構成要素であり得る。例えば、放熱要素55は、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼から構成可能である。しかしながら、他の任意の材料を使用してもよい。上述のように、放熱要素55は、ランス状であってもよいし、又は、ロッド状であってもよい。したがって、放熱要素55は、放熱ランス又は放熱ロッドと呼ばれることもある。
【0152】
放熱要素55は、上述のようなヒートパイプであってもよい。これにより、放熱性がさらに向上する。放熱要素55がヒートパイプである場合、基本部56はヒートパイプの加熱ゾーンであり、熱伝達部57はヒートパイプの冷却ゾーンである。したがって、「基本部」及び「加熱ゾーン」という用語は、互換的に使用可能である。「熱伝達部」及び「冷却ゾーン」という用語についても同様である。したがって、「放熱要素」及び「ヒートパイプ」という用語も互換的に使用可能である。
【0153】
本発明を実施形態の例を参照して説明したが、多くの変更が可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 車両
2 車体
3 車室
4 周囲
5 車輪
6 車輪
7 加圧ガス貯蔵容器
7A 加圧ガス貯蔵容器
7B 加圧ガス貯蔵容器
7C 加圧ガス貯蔵容器
7D 加圧ガス貯蔵容器
7E 加圧ガス貯蔵容器
7F 加圧ガス貯蔵容器
8 消費負荷
9 壁
10 受入領域
11 中心軸
12 基本部
13 壁端部
14 壁端部
15 ジャケット
16 外面
17 内面
18 ライナー
19 外面
20 内面
21 入口ノズル
22 ガス案内装置
23 ガス案内要素
24 中心軸
25 出口
26 先端
27 端面
28 ジャケット面
29 端面
30 ガス案内要素
31 中心軸
32 後面
33 前面
34 先端
35 ガス流
36 渦
37 対向ガス流
38 ガス案内管
39 ガス案内流路
40 ガス案内流路
41 ガス案内流路
42 ガス案内流路
43 ガス案内リブ
44 ガス案内リブ
45 ガス案内リブ
46 ガス案内リブ
47 ガス案内部
48 冷却流路
49 冷媒回路
50 サーモモジュール
51 供給及び/又は排出線
52 供給及び/又は排出線
53 入口
54 出口
55 放熱要素
56 基本部
57 熱伝達部
a 距離
g 重力の方向
H2 ガス/水素
L 長手方向
Q 熱
R 半径方向
x x方向/長さ方向
y y方向/高さ方向
z z方向/深さ方向
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガ
ス、具体的には水素を加圧して貯蔵するための加圧ガス貯蔵容
器であって、
前記ガ
スを受け入れるための受入領
域を包囲する
壁と、
前記受入領
域を前記ガ
スで充填する間に、前記ガ
スの少なくとも一部を前記
壁の内面に沿って案内するガス案内装
置と、を備え、
前記
壁は、前記受入領
域を前記ガ
スで充填する間に前記ガ
スから
熱を取り出し、前記
熱を前記加圧ガス貯蔵容
器の周
囲に放出するための熱交換器として機能する、加圧ガス貯蔵容器。
【請求項2】
前記
壁は、中心
軸に関連付けられており、前記ガス案内装
置は、前記受入領
域の充填中に、前記ガ
スを、前記中心
軸に沿って前記
壁の第1の壁端
部から、前記第1の壁端
部の反対側にある前記
壁の第2の壁端
部に向かって案内することを特徴とする、請求項1に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項3】
前記ガス案内装
置は、前記受入領
域の内側に配置された第1のガス案内要
素を含み、前記第1のガス案内要
素は、前記ガ
スを前記受入領
域の中に供給するための入口ノズ
ルに嵌合又は装着されており、前記入口ノズ
ルは、前記第1の壁端
部に開口していることを特徴とする、請求項2に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項4】
前記第1のガス案内要
素は、少なくとも部分的に円錐状であり、前記第1のガス案内要
素の断面は、前記入口ノズ
ルから前記第2の壁端
部の方向に拡大していることを特徴とする、請求項3に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項5】
前記第1のガス案内要
素は、少なくとも部分的に前記入口ノズ
ルを覆っていることを特徴とする、請求項4に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項6】
前記第1のガス案内要
素は、前記入口ノズ
ルの中又は上に、中心を揃えて又は偏心して取り付けられることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項7】
前記ガス案内装
置は、前記第1のガス案内要
素とは異なる第2のガス案内要
素を備え、前記第2のガス案内要
素は、前記第2の壁端
部に取り付けられていることを特徴とする、請求項3~6のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項8】
前記第2のガス案内要
素は、前記
壁の内面に沿って案内された前記ガ
スの一部を、前記中心
軸に沿って前記第1のガス案内要
素の方向に戻すように案内するように構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項9】
前記第2のガス案内要
素は、少なくとも部分的に円錐状であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項10】
前記ガス案内装
置は、前記受入領
域内に配置されると共に前記中心
軸に沿って延びる、少なくとも1つのガス案内リ
ブを備えることを特徴とする、請求項2~9のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項11】
前記ガス案内装
置は、前記受入領
域内に配置されると共に前記
壁と同軸に配置されたガス案内
管を含み、前記ガス案内
管と前記
壁との間には、少なくとも1つのガス案内流
路が備えられることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項12】
前記ガス案内装
置自体が、前記受入領
域と前記周
囲との間のサーマルブリッジを形成し、前記ガ
スから
熱を取り出し、前記
熱を前記周
囲に放出することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項13】
前記ガス案内装
置は、前記
壁の中又は上に備えられた冷却流
路を含み、前記受入領
域が前記ガ
スで充填される間に、前記ガ
スの少なくとも一部が、前記冷却流
路を通って流れることが可能であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項14】
前記冷却流
路は、前記冷却流
路を通って前記受入領
域に流入する前記ガ
スの一部を膨張させるように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の加圧ガス貯蔵容器。
【請求項15】
車
両、具体的には動力車であって、請求項1~14の少なくとも1項に記載の加圧ガス貯蔵容
器を備える、車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
水素を貯蔵及び輸送するためには、水素を加圧ガス貯蔵容器で数100バールの超過気圧下の気体の状態で貯蔵するか、又は、極低温の液体の状態で貯蔵することが可能である。車両の中又は上、具体的には乗用車の中又は上で使用する場合、スペースの理由から、水素を気体の状態で上記のような加圧ガス貯蔵容器に貯蔵するのが有利である。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1)米国特許出願公開第2021/0041065号明細書
(特許文献2)国際公開第2019/096582号
(特許文献3)国際公開第2016/004033号
(特許文献4)特開2007-298051号公報
(特許文献5)特許第4474868号公報
【国際調査報告】