(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】メタノールを生成するプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
C07C 29/10 20060101AFI20241024BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07C29/10
C07C31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529635
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 FI2022050753
(87)【国際公開番号】W WO2023089237
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイス、オットー
(72)【発明者】
【氏名】チェンナ、ナヴィーン
(72)【発明者】
【氏名】ペソラ、アイノ
(72)【発明者】
【氏名】テルボラ、ペッカ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AD11
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC16
4H006BD33
4H006BD51
4H006BD84
4H006BE30
4H006BE31
4H006FE11
(57)【要約】
反応器内でリグニン含有供給原料に酸化剤を供給することによって、濾液中に存在するリグニンをメタノールに酸化するプロセス、およびプロセスを実行するように構成されたシステムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールを生成するプロセスであって、
反応器内で、水性媒体中にリグニンを含む供給原料を提供すること;
少なくとも1つの酸化剤を前記供給原料に供給して、前記リグニンのメトキシル基がメタノールへと酸化されている反応混合物を生成すること;
前記反応混合物のpHを5~14の範囲から選択される値に調整すること;および前記反応器を50~100℃の範囲の温度で作動させること
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記反応器が、繊維ライン濾液パイプラインに流体接続している、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸化剤が、酸素、オゾン、空気、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸化剤が、ノズルまたは入口ポートを介して前記供給原料に供給される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応混合物のpHが、7~13の範囲、好ましくは10~12の範囲から選択される値に、または約11のpHに調整される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応器が、80~95℃の範囲、好ましくは85~95℃の範囲、最も好ましくは約90℃の温度で作動される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応器が、0.5~10バール(g)の範囲、好ましくは1~7バール(g)の範囲、最も好ましくは2~5バール(g)の範囲から選択される圧力で運転されるか、または前記圧力が約4バール(g)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記供給原料がパルプ工場の繊維ラインからの濾液である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記供給原料が、褐色ストック洗浄濾液、酸素脱リグニン濾液、浄化酸素脱リグニン濾液、またはそれらの任意の組み合わせから選択される濾液を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
酸化された供給原料がパルプ工場の繊維ラインに戻される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記酸化された供給原料がストリッピングカラムに移送され、前記ストリッピングカラム内で生成されたストリッピングガスが凝縮ユニットに導かれ、そこでメタノールが回収され、場合によりその後メタノール精製が行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応器が、メタノールが少なくとも部分的に蒸気形態であり、前記反応器が液化ユニット、またはストリッパオフガスラインに直接流体接続している条件で作動される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスを実行するための手段を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、メタノールの生成に関する。本開示は、特に、排他的ではないが、リグニンを含有する繊維ライン濾液からメタノールを生成するためのプロセスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、最新技術を代表する本明細書に記載のいかなる技術も承認することなく、有用な背景情報を説明する。
【0003】
パルプ工場の繊維ライン濾液は、様々な量のリグニンを含有する。以前は、パルプ工場においてリグニンを使用して、熱および蒸気を生成していた。しかしながら、リグニンを使用して、より高い価値を有する製品を製造するプロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
添付の特許請求の範囲は、保護の範囲を規定する。特許請求の範囲によって網羅されない説明および/または図面における装置、システム、製品および/またはプロセスのあらゆる例および/または技術的説明は、本発明の実施形態としてではなく、本発明を理解するために有用な背景技術または例として本明細書に提示される。
【0005】
本開示の目的は、工業プロセスから、例えば繊維ライン濾液流から生じる廃棄物流および/またはサイドストリーム中に存在するリグニンからメタノールを生成するプロセスを提供することである。別の目的は、メタノール生成および/またはリグニン処理における既存の技術に対する代替の解決策を提供することである。
【0006】
第1の態様によれば、メタノールを生成するプロセスであって、
反応器内で、水性媒体中にリグニンを含む供給原料を提供すること;および
少なくとも1つの酸化剤を供給原料に供給して、リグニンのメトキシル基がメタノールへと酸化されている反応混合物を生成することを含む、プロセスを提供する。
【0007】
酸化剤が供給原料に供給されると、少なくとも1つの酸化剤がリグニン中に存在するメトキシル基を酸化反応においてメタノールに変換する、反応混合物が形成される。一実施形態では、フェノール性リグニンと非フェノール性リグニンの両方が本プロセスによって酸化される。
【0008】
一実施形態では、反応器は、パルプ工場の繊維ライン濾液パイプラインに流体接続している。したがって、反応器、ならびに本明細書に開示されるシステムの他の部分は、パルプ工場の一体化されたユニットになるように設置することができ、繊維ライン濾液を反応器に導くことができる。
【0009】
一実施形態では、酸化剤は、酸素、オゾン、空気、またはそれらの任意の組み合わせを含むか、またはそれらから選択される。
【0010】
一実施形態では、酸化剤は、ノズルまたは入口ポートを介して反応器および/または供給原料に供給される。
【0011】
一実施形態において、反応混合物のpHは、5~14の範囲、好ましくは7~13の範囲、より好ましくは10~12の範囲から選択される値に、または約11のpHに調整される。
【0012】
一実施形態において、反応器は、50~100℃の範囲、好ましくは80~95℃の範囲、より好ましくは85~95℃の範囲、最も好ましくは約90℃の温度で作動される。
【0013】
一実施形態では、反応器は、0.5~10バール(g)の範囲、好ましくは1~7バール(g)の範囲、最も好ましくは2~5バール(g)の範囲から選択される圧力で運転されるか、または圧力は約4バール(g)である。
【0014】
一実施形態では、供給原料は、パルプ工場の繊維ラインからの濾液であるか、またはそれを含む。
【0015】
一実施形態では、供給原料は、リグニンを含む任意の濾液を含む。別の実施形態では、供給原料は、褐色ストック洗浄濾液、酸素脱リグニン濾液、浄化酸素脱リグニン濾液、Epステージ濾液、D0ステージ濾液、Zステージ濾液、またはそれらの任意の組み合わせから選択される濾液を含む。
【0016】
一実施形態では、反応器内で生成される酸化供給原料は、酸化処理が終了した後にパルプ工場の繊維ラインに戻される。次いで、酸化濾液は、濾液がパルプ工場で処理されるのと同じ方法で処理することができる。
【0017】
一実施形態では、酸化供給原料はストリッピングカラムに移送され、ストリッピングカラムで生成されたストリッピングガスは凝縮ユニットに導かれ、そこでメタノールが回収される。回収されたメタノールは、任意で精製することができる。
【0018】
一実施形態では、反応器は、メタノールが少なくとも部分的に蒸気形態であり、反応器が液化ユニット、またはストリッパオフガス(SOG)ラインに直接流体接続している条件で作動される。一実施形態では、SOGラインは、ストリッパからの蒸気を任意のストリッピングシステムのシェル側から収集する。SOGは、主にメタノールおよびTRS成分である。次いで、SOGを凝縮させて液体メタノールを生成することができる。SOGは、異なるストリッパユニットから誘導される。したがって、これらのメタノール収集ユニットを使用して、本プロセスによって生成されたメタノール、ならびに反応器に導かれる供給原料中に存在し得るメタノールを少なくとも部分的に回収することができる。
【0019】
第2の態様によれば、第1の態様またはその実施形態のいずれかのプロセスを実行するための手段を備えるシステムが提供される。
【0020】
いくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本プロセスを実行するように構成されたシステムの特定の部分を、例示的な実施形態として概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、同様の参照符号は、同様の要素または工程を示す。
【0023】
本開示において、Adtは風乾トンを指す。
【0024】
本開示において、CODは、mg/lとして表される化学的酸素要求量を指す。CODは、ISO 6060:1989水質-化学的酸素要求量の決定に従って決定することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、および「包含する(comprehending)」のより広い意味、ならびに「からなる(consisting of)」および「のみからなる(consisting only of)」というより狭い表現を含む。
【0026】
一実施形態では、プロセス工程は、任意の態様、実施形態、または請求項で特定された順序で実行される。別の実施形態では、前のプロセス工程で得られた生成物または中間体に対して実施されるように指定された任意のプロセス工程は、前記生成物または中間体に対して直接、すなわち、前記2つの連続する工程の間で生成物または中間体を化学的かつ/または物理的に変化させることができる追加の、任意の、または補助的な処理工程なしに実施される。
【0027】
一実施形態では、本プロセスは工業プロセスである。別の実施形態では、工業プロセスは、小規模な方法、例えば工業で使用される量にスケールアップされない実験室規模の方法を除外してもよい。
【0028】
一実施形態において、本プロセスは、反応器に触媒を添加することなく実施される。
【0029】
一実施形態では、水性媒体中に存在するリグニンは、水性媒体中に少なくとも部分的に溶解または可溶化されている。
【0030】
リグニンは、本プロセスによってメタノールに変換され得るメトキシル基を含有する。
【0031】
リグニンは非フェノール性またはフェノール性のいずれかであり、リグニンの約40%はフェノール性であり、60%は非フェノール性である。フェノール性リグニンは、穏やかな酸化条件に対して反応性であるが、非フェノール性リグニンは、メタノールを生成するためにより多くの酸化条件およびより強い環境を必要とする。本明細書に開示される動作条件および酸化剤を用いて、リグニン構造中で利用可能なフェノール性および非フェノール性リグニンのメトキシル基をメタノールに変換することができる。
【0032】
本プロセスでは、少なくとも1つの酸化反応器で酸化反応を実行して、リグニンのフェノール性または非フェノール性メトキシル基をメタノールに変換することができる。別の実施形態では、複数、例えば2つ、3つまたは4つの一連の反応器が使用される。
【0033】
別の実施形態では、反応器内の圧力および温度は、メタノールが液相のままであるように選択される。メタノールは、供給原料に溶解され得る。
【0034】
一実施形態において、反応混合物のpHは、5~14の範囲、好ましくは7~13の範囲、より好ましくは10~12の範囲から選択される値、または約11に調整される。調整は、任意のアルカリまたは酸を用いて行うことができる。一実施形態では、pH調整は、水酸化ナトリウム、白液および酸化白液から選択されるアルカリを用いて行われる。pH調整を最初に酸化処理の開始時に、および/または酸化反応中に行って、pHを選択されたpH値またはその付近に維持することができる。
【0035】
一実施形態において、反応器は、50~100℃の範囲、好ましくは80~95℃の範囲、より好ましくは85~95℃の範囲、最も好ましくは約90℃の温度で作動される。
【0036】
一実施形態では、反応器は、酸化反応が最大500分間、例えば10~500分間、50~500分間、100~500分間、200~500分間行われるように作動される。一実施形態では、複数の反応器が使用される場合、時間は、酸化反応条件が維持される合計時間を指す。
【0037】
別の実施形態では、反応器は、酸化反応が最大250分間、例えば50~200分間、110~210分間、100~200分間または90~190分間行われるように作動される。別の実施形態では、反応は約80分、100分、120分、180分または200分間行われる。一実施形態では、複数の反応器が使用される場合、時間は酸化反応条件が維持される合計時間を指す。
【0038】
一実施形態では、非凝縮性ガスは、非凝縮性ガスハンドリングシステムによって取り出される。
【0039】
例示的な実施形態では、濾液は広葉樹パルプ工場からの濾液を含む。一実施形態では、濾液は、分析結果の表1に示される量で、または表1に示される任意の量の15%の誤差範囲内で存在する少なくとも1つの成分を有する。
【0040】
【0041】
一実施形態では、反応器は、90℃の温度、8~14の範囲のpH、および8バールの圧力を含む条件で、酸化剤として酸素を最大200分間使用することによって作動される。好ましい実施形態では、pHは約11である。
【0042】
一実施形態では、反応器は、90℃の温度、8~14の範囲のpHを含む条件で、酸化剤として空気を最大200分間使用することによって作動される。好ましい実施形態では、pHは約11である。
【0043】
一実施形態では、反応器は、90℃の温度、8~14の範囲のpHを含む条件で、酸化剤としてオゾンを最大30分間使用することによって作動される。好ましい実施形態では、pHは約11である。
【0044】
本プロセスは、酸素脱リグニン濾液が供給原料として使用される場合、Adtあたり約2.5~5kgのメタノールを生成することができる。褐色ストック洗浄濾液の場合、濾液中のリグニンの濃度が高いため、メタノール生成は最大8kg/Adtであり得る。酸化剤としてオゾンを使用すると、メタノール収率がさらに増加し、5kg/Adtとすることができる。褐色ストック濾液を使用する好ましい実施形態では、さらに最大8kg/Adtのメタノールを生成することができる。オゾンは、空気または酸素よりも反応性が高いため、反応時間の使用の短縮も可能にする。
【0045】
一実施形態では、酸化剤は気体である。
【0046】
ある量において、酸化反応に使用される酸化剤の量は、乾燥固体の12重量%以下である。別の実施形態では、酸化剤は、乾燥固体の1~12、1~10、3~12、3~10、5~12、5~10、7~12、または7~10重量%使用される。
【0047】
一実施形態では、酸化剤は、ノズルまたは入口ポートを介して反応器および/または供給原料に供給される。ノズルまたは入口ポートは、反応器の内部、または反応器の壁、底板、および/もしくは天板に配置することができる。
【0048】
一実施形態において、反応器は撹拌槽反応器である。別の実施形態では、反応器は、連続撹拌槽反応器、プラグフロー反応器、またはバッチ反応器である。
【0049】
一実施形態では、反応器の圧力は、0.5~10バール(g)の範囲、好ましくは1~7バール(g)の範囲、最も好ましくは2~5バールの範囲から選択されるか、または圧力は約4バールである。
【0050】
一実施形態では、酸化供給原料、例えば酸化濾液は、本プロセスによる酸化処理後にパルプ工場の繊維ラインに戻される。繊維ラインは、ストリッピングカラムを備えた蒸発プラントに続いてもよい。ストリッピングされたガスは、液化ユニット、および液化化合物のさらなる精製に運ばれ得る。繊維ラインに供給される酸化された供給原料は、増加した量のメタノールを含有するので、本プロセスは、パルプ工場から得られるリグニン含有流からのメタノールの生成を増強する。
【0051】
一実施形態では、酸化された供給原料はストリッピングカラムに移送され、ストリッピングカラムで生成されたストリッピングガスは凝縮ユニットに導かれ、そこでメタノールが回収のために凝縮され、場合によりその後メタノール精製が行われる。メタノール精製は、例えば蒸留によって行うことができる。
【0052】
本プロセスの別の利点は、パルプ工場で使用される既存のメタノール回収手段、例えばメタノール蒸発、凝縮および精製ユニットを利用して、本プロセスで生成されたメタノールを回収できることである。
【0053】
代替的または追加的に、本プロセスで生成されたメタノールは、酸化反応器の近くで回収される。この実施形態では、反応器は、メタノールの少なくとも一部が蒸気形態であり、したがって、反応器と直接流体接続している液化ユニットにメタノールが回収され得るように作動される。一実施形態において、酸化反応およびメタノールの取り出しは同時に起こる。液化ユニットが反応器と直接流体接続している場合、酸化された供給原料中に存在する、および形成されたメタノールの少なくとも一部は、酸化された供給原料が繊維ラインに戻される前に回収される。
【0054】
さらなる代替または追加の実施形態では、メタノールは、反応器と流体接続しているストリッパオフガスから回収される。一実施形態では、オフガスストリッパは、反応器と直接流体接続している。
【0055】
代替的または追加的に、反応器からのガスは、パルプ工場で生成されるガスの少なくとも1つのさらなる供給源に流体接続されたストリッパオフガスに向けられる。この構成では、反応器内で生成されたメタノール含有ガスは、パルプ工場に存在する設備で処理することができる。
【0056】
本プロセスでリグニンを酸化すると、リグニンが部分的に分解され、CODが低下する。低下したCODは、供給原料中に存在するリグニンから生成されたメタノールの指標として使用することができる。
【0057】
酸化された濾液は、繊維ライン濾液と混合するために、およびパルプ工場の洗浄プロセスで使用するために、繊維ラインに戻すことができる。酸化された濾液は、さらに処理または精製することなく繊維ラインに戻すことができる。
【0058】
繊維ライン濾液の硫黄含有量が低いため、本酸化プロセスは、最小数の一連の反応器、例えば1つまたは2つの一連の反応器で実行することができる。繊維ライン濾液中の硫黄化合物の量が少ないため、酸化剤は硫黄化合物の酸化によってあまり消費されない。硫黄酸化から生じるいかなる反応生成物も、酸化された濾液中に残る。
【0059】
メタノールは低温で沸騰するので、メタノールの大部分は、液体酸化濾液から揮発性成分/蒸気を分離するための単純なストリッピングおよび/または蒸留を使用することによって抽出することができる。
【0060】
一実施形態では、本プロセスは、連続撹拌槽反応器またはプラグフロー反応器で行われるプロセスなどの連続プロセスである。
【0061】
一実施形態では、本プロセスはバッチプロセスである。
【0062】
本プロセスを実行するように構成されたシステムの特定の部分を開示する例示的な実施形態が
図1に示されており、ここで反応器200は、反応器入口ライン110を介してパルプ工場の繊維ライン100に接続され、繊維ライン濾液を反応器200に供給するように構成することができる。反応器出口ライン290は、反応器入口ライン110が繊維ライン100に接続する位置の下流の位置で繊維ライン100に接続される。反応器200には、酸化剤を矢印210で示す方向で反応器に供給するように構成することができる酸化剤供給物入口ライン211が接続されている。アルカリは、アルカリ供給入口ライン221を介して、矢印220によって示される方向に反応器に供給することができる。酸または他の化学物質を反応器に供給してpHを調整する場合、前記薬剤は、入口221または
図1に示されていない他の反応器入口を通して反応器に供給することができる。
【0063】
酸化プロセスで生成されたメタノールは、メタノールが著しく蒸発しない条件で反応器を作動すると、反応器内の酸化された濾液に溶解される。そのような場合、メタノールは酸化された供給原料から回収することができ、パルプ工場内に存在し、繊維ライン濾液または他のメタノール含有供給原料からメタノールを取り出すために使用される設備を使用することによって繊維ライン100に供給される。
【0064】
代替または追加の実施形態では、
図1は、反応器200の内部に形成されたガスからメタノールを直接取り出すために使用することができる、液化ユニット235およびSOGライン245を示す。この構成では、蒸気はストリッパオフガスラインに接続され、そこで他の蒸気もパルプ工場に収集され、次いでオフガスが液化されて液体メタノールを生成し、これを次いでさらに処理することができる。
【0065】
図1に示す実施形態では、これらのユニットは反応器200に直接接続されている。反応器ガス出口230は、液化ユニット235に流体接続され、メタノール蒸気を含むガスおよび蒸気を反応器内から液化ユニット235に導く。蒸気から凝縮されたメタノールは、液化ユニット235から液化ユニット出口239を通ってメタノール貯槽310に導かれる。メタノール貯槽310または液化ユニット235は、パルプ工場の他のメタノール回収ユニット、例えば繊維ライン濾液100からメタノールを回収するユニットからメタノールを受け取るように構成することもできる。
【0066】
別の代替または追加の実施形態では、
図1はSOGライン(ストリッパオフガスライン)245を示し、それに反応器ガス出口240が流体接続して、メタノール蒸気を含むガスおよび蒸気を反応器200内からSOGライン245に導く。蒸気から凝縮されたメタノールは、SOGライン245から出口249を通ってメタノール貯槽410に導かれる。メタノール貯槽410は、パルプ工場の他のメタノール回収ユニット、例えば繊維ライン濾液100からメタノールを回収するユニットからメタノールを受け取るように構成することができる。
【0067】
SOGラインは、好ましくはすべてのストリッパオフガスを一緒に収集し、本プロセスによって生成されたメタノールは、入口ライン241によって示されるように、既存のライン/収集に組み合わせることができる。
【0068】
材料を移送するように構成され、
図1に示されている入口ラインおよび出口ラインは、プロセスのより良好な制御を可能にし、システムの異なる部分における気相および液相の効率的な移送を確実にするために、1つ以上のバルブおよび1つ以上のポンプを装備することができる。プロセスにおける材料およびプロセスパラメータの分析を可能にするために、システムの管または容器にサンプリング点を配置することができる。
【0069】
加熱および/または冷却手段を反応器内に配置して、反応器の動作温度を制御することができる。
【0070】
例
広葉樹褐色ストック洗浄濾液を2リットル反応器で処理した(1リットルの濾液を使用した)。濾液を2バールおよび90℃で3時間、酸素で酸化した。反応をバッチプロセスとして実行し、それ以上の酸素を反応器に供給しなかった。濾液と酸素を3時間反応させ、30分ごとに試料を採取した。最初にpHが高く、著しく低下しなかったため、触媒は使用しなかった。
【0071】
メタノール濃度は500mg/lから800mg/lに増加し、これは3、8kg/Adtの追加のメタノール生成を意味する。pHは13.1から12.9に低下した。
【0072】
結果は、本プロセスが穏やかなプロセス条件で、リグニンを含有する供給原料からメタノールを生成するのに成功したことを示している。
【0073】
上記の説明は、特定の実施態様および実施形態の非限定的な例として、本発明を実施するために本発明者らによって現在企図されている最良の態様の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、本発明が上記で提示された実施形態の詳細に限定されず、本発明の特徴から逸脱することなく、同等の手段を使用して他の実施形態で、または実施形態の異なる組み合わせで実施することができることは、当業者には明らかである。
【0074】
さらに、上記で開示された例示的な実施形態の特徴のいくつかは、対応する他の特徴の使用なしに有利に使用することができる。したがって、前述の説明は、本発明の原理の単なる例示であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】