(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】2つのタイプの電解システムを備える水素製造プラント
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20241024BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20241024BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241024BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20241024BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B15/023
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529657
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081059
(87)【国際公開番号】W WO2023088723
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビスコピン、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】グタームート、ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】レンダース、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】プリマス、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ケーニッヒ、カイ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB04
4K021DB53
(57)【要約】
本発明は、水素製造プラントの分野に関し、具体的には、2つのタイプの電解システムを使用することによって水素製造プラントにおいて水素を製造するための方法に関する。第1の電解システム(ES1)は、能動DCモジュール(Ma)と、能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)とを備え、第2の電解システム(ES2)は、受動DCモジュール(Mp)と、受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)とを備える。本方法は、ランプアップ段階において、第1の電解システム(ES1)の第1の水素出力(HO1)を増加させることと、第1の電解システム(ES1)の第1の水素出力(HO1)が第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)を越えたときに、第2の電解システム(ES2)をスイッチオンすることと、第1の電解システム(ES1)の第1の水素出力(HO1)を、第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)から第2の水素出力(HO2)を引いたところまで減少させることと、を行うステップを備え、これにより、水素製造プラント(HPP)の全体的な水素出力(HO
total)が、第1の水素出力(HO1)と第2の水素出力(HO2)との合計になる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造プラント(HPP)において水素を製造するための方法であって、前記水素製造プラント(HPP)は、
能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、
を備え、
前記方法は、
ランプアップ段階において、前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を増加させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオンすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたところまで減少させることと、
を行うステップを備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の全体的な水素出力(HO
total)が、前記第1の水素出力(HO1)と前記第2の水素出力(HO2)との合計になる、方法。
【請求項2】
ランプダウン段階において、前記第1のタイプの電解槽(E1)の前記第1の水素出力(HO1)を減少させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオフすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)に前記第2の水素出力(HO2)を足したところまで増加させることと、
を行うステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)は、前記第2の水素出力(HO2)以上であり、及び/又は、
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたものは、第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)以上である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N2個)の第2の電解システム(ES2)を備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の前記全体的な水素出力(HO
total)が、前記第1の水素出力(HO1)に前記N2個の第2の最大水素出力(HO2
max)の合計を足した合計になる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N1個)の第1の電解システム(ES1)を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)は、前記第2の水素出力(HO2)よりも高く、例えば10%高く、20%高く、30%高く、50%高く、70%高く、100%高く、150%高く、200%高く、並びに/又は、
第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)は、ゼロよりも高く、及び/若しくは前記第2の水素出力(HO2)よりも低い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のタイプの電解槽(E1)は、高分子電解質膜(PEM)電解システムとして設計され、及び/又は、
前記第2のタイプの電解槽(E2)は、アルカリ水電解システムとして設計される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力若しくは最大電力(Pp
max)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力、前記最大電力(Pp
max)、若しくは低電力(Pp
low)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、特にタップ切換器によって、3つ以上の電力レベルで動作されることができ、
前記第2の水素出力(HO2)は、ゼロを除く上記電力レベルのうちのいずれか1つにおける前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力を使用することによって生成されることができる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)からの前記第1の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)の温度及び/若しくは圧力の関数であり、並びに/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)の温度及び/若しくは圧力の関数である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)の劣化の関数であり、及び/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)の劣化の関数である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、ここにおいて、前記第2の水素出力の最大値(HO2
max)が、前記第1の水素出力の最大値(HO1
max)以下であり、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法にしたがって前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御するように構成された制御モジュールと、
を備える、水素製造プラント(HPP)。
【請求項12】
前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記水素製造プラント(HPP)の要求された全体的な水素出力(HO
total,req)に依存し、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記能動DCモジュール(Ma)のための前記第1の電力と前記受動DCモジュール(Mp)のための前記第2の電力との合計を送達する電源からの利用可能な電力に依存する、
請求項11に記載の水素製造プラント(HPP)。
【請求項13】
前記受動DCモジュール(Mp)は、非制御整流器を備え、及び/又は前記能動DCモジュール(Ma)は、制御整流器を備える、請求項11又は12に記載の水素製造プラント(HPP)。
【請求項14】
水素製造プラント(HPP)の制御モジュール及び/又は別の処理ユニット上で走るプログラム要素であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラム要素。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造プラントの分野に関し、具体的には、2つの異なるタイプの電解システムを使用することによって水素製造プラントにおいて水素を製造するための方法に関する。本発明は更に、水素製造プラント、プログラム要素、及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素製造プラントは、水素を製造するように構成されている。少なくともいくつかの場合には、水素製造プラント(HPP)は、例えば、Nel Hydrogenによる、いわゆる「スタック」を複数備える。製造中、「スタック」と、したがって「スタック」に電力を送達する整流器モジュールとは、例えば、製造要件及び/又はプラントの現在利用可能なエネルギーに依存して、ランプアップ及び/又はランプダウンされる必要がある。よって、この用途のために完全に制御可能な整流器モジュール(「能動」整流器)を使用することは理にかなっているが、能動整流器モジュールは非常に高価である場合がある。他方では、「受動」整流器モジュールを使用すると、コスト効率はよくなるが、それらの電力出力は非制御であり、製造プラントの望ましくない挙動につながる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、水素製造プラントにおいて水素を製造するための方法を提供することである。本目的は、独立請求項の主題によって達成される。更なる実施形態が、従属請求項及び以下の説明から明らかである。
【0004】
1つの態様は、水素製造プラントにおいて水素を製造するための方法に関する。プラントは、能動DCモジュール、及び能動DCモジュールからの第1の電力を使用することによって第1の水素出力を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽を備える第1の電解システムと、受動DCモジュール、及び受動DCモジュールからの第2の電力を使用することによって第2の水素出力を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽を備える第2の電解システムと、を備える。本方法は、
ランプアップ段階において、第1の電解システムの第1の水素出力を増加させることと、
第1の電解システムの第1の水素出力が第1の既定の水素出力閾値を越えたときに、
第2の電解システムをスイッチオンすることと、
第1の電解システムの第1の水素出力を、第1の既定の水素出力閾値から第2の水素出力を引いたところまで減少させることと、を行うステップを備え、
これにより、水素製造プラントの全体的な水素出力が、第1の水素出力と第2の水素出力との合計になる。
【0005】
以下で詳述するように、第1の電解システム及び第2の電解システムは、いくつかの態様及び/又は特徴において異なる。第1の電解システム及び第2の電解システムは、同じタイプの電解槽を使用してよいが、少なくともいくつかの実施形態では、第1のタイプの電解槽は、第2のタイプの電解槽とは異なるタイプのものであってもよい。電解システムの各々は、1つ又は複数の電解槽を備え得る。第1のタイプの電解槽は、その電力をいわゆる能動DCモジュールから得ることができ、第2のタイプの電解槽は、その電力をいわゆる受動DCモジュールから得ることができる。受動DCモジュールが、ダイオード、例えば、高性能ダイオードを使用し得る一方で、能動DCモジュールは、制御可能な整流器を使用し得る。水素製造プラントの1つの実施形態が、1つのみの第1の電解システムといくつかの第2の電解システムを有し得るが、代替の実施形態は、異なる数の第1及び第2の電解システムを有してよく、例えば、1つのみの第1の電解システムと1つのみの第2の電解システム、又はいくつかの第1の電解システムといくつかの第2の電解システムなどである。
【0006】
いわゆる受動DCモジュールは、AC入力を整流するためにダイオード、例えば高性能ダイオードを使用する整流器を備え得る。能動DCモジュールは、AC入力を整流するためにSCR(シリコン制御整流器、又はサイリスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、及び/又は他のタイプの制御可能な整流器を使用し得る。したがって、能動DCモジュールのコストは、例えば、より高価な(例えば、整流器用の)構成要素、及びSCRを制御するための追加の労力が原因となって、より高くなり得る。そのため、2つのタイプの電解システムが使用される上記及び/又は下記に記載の方法は、水素製造プラントの全体的な水素出力を十分に制御可能にするが、その構成要素のコストを著しく削減することができる。
【0007】
プラントの電力送達システムは、1つ又は複数の電解槽スタック(例えば、
図3のE1
1a及びE1
1b)に各々が接続されたいくつかのDCモジュールを備える。少なくとも1つの能動DCモジュール(Ma)及び少なくとも1つの受動DCモジュール(Mp)が使用されて電力送達システムを形成する。プラントの全体的な水素製造量及び/又は全体的な電力消費量は、DCモジュールに接続された電解槽の個々の水素出力の合計及び/又はすべてのDCモジュールによって消費されるすべての電力の合計のいずれかである。能動DCモジュールは、その制御可能な整流器を介して制御され、したがってスイッチオン/オフもされることができるが、保護のためのスイッチギア(
図3のSg
1)が能動DCモジュールの前で使用される。受動DCモジュールのスイッチオン/オフは、スイッチギア(
図3のSg
2及びSg
3)をオン/オフにすることによってのみ可能である。しかし、受動整流器のグリッド入力電圧を修正し、したがって受動DCモジュールの電気入力電力の制御の制限を可能にするするために、追加のタップ切換器が使用される場合があり得る。
【0008】
電解システムは、その電力を、その指定された電力出力に依存して、例えば、典型的には約1kV~約50kVの電圧を有するいわゆる「中電圧グリッド」(MVグリッド)から得ることができる。代替として、例えば、非常に大型の水素製造プラントのために、「高電圧グリッド」(HVグリッド)が使用されてもよい。上記及び/又は下記に記載の方法が、1kV未満の電圧でも機能することに留意されたい。したがって、上記及び/又は下記に記載の方法の少なくともいくつかは、例えば、一相、三相、又は任意の他のAC源を有する、広範囲のAC源に適用され得る。
【0009】
水素製造プラントを稼働するとき、例えば、全体的な水素出力に対するより高い需要が原因となって、及び/又はプラントのより多くの現在利用可能なエネルギーが原因となって、水素製造をランプアップする必要がある場合がある。これは、特に、例えばソーラーパネル及び/又は風力発電機からエネルギーを得ることができる、いわゆる「グリーン水素製造プラント」の場合に当てはまり得る。そのため、「スタック」と、したがって「スタック」に電力を送達する整流器モジュールとをランプアップする必要がある。水素製造をランプダウンすること、及び/又は水素製造プラントをランプアップ及びランプダウンモードで稼働する必要がある場合もある。したがって、製造中、水素製造プラントは、一定段階、ランプアップ段階、又はランプダウン段階にあり得る。一定段階では、制御介入は必要なくてよい。一定段階中も、制御システムは、例えば、受動DCモジュールによって供給される電力に影響を及ぼし得るグリッド電圧変動に対して、及び/又は、例えば、スタック内の温度又は他の変動値によって生じる水素出力変化に対して、依然として反応することができる。
【0010】
ランプアップ段階では、全体的な水素出力を増加させる必要がある。このために、第1の電解システムの第1の水素出力が、第1の既定の水素出力閾値まで増加される。第1の水素出力が第1の既定の水素出力閾値を越えると、第2の電解システムがスイッチオンされ得る。この移行段階において、全体的な水素出力を同じレベルに保つために、第1の電解システムの第1の水素出力は、第1の既定の水素出力閾値から第2の水素出力を引いたところまで減少される。これは、「第1の既定の水素出力閾値」及び「第2の水素出力」の定義に依存して、(少なくともこのレベルでは)第1の電解システムのゼロ水素出力を含み得る。少なくともいくつかの場合には、第2の電解システムは、例えば、ダイオードが制御可能ではないので、2つのレベルのみ、すなわち、ゼロ電力又は最大電力で動作され得る。少なくともいくつかの場合には、第2の電解システムは、第2のタイプの電解槽のための電力入力である受動DCモジュールの第2の電力を変更し、したがって第2の水素出力を変更するように構成されたデバイス、例えば、タップ切換器を備え得る。
【0011】
(第1及び第2の)既定の水素出力閾値が、必ずしも固定閾値でなくてもよく、プラントの入力電力の電力レベル、モジュールの劣化、及び/又は更なる要因などのいくつかの影響要因に依存して変えられてもよいことに留意されたい。
【0012】
現実世界の電解システムでは、第2の電解システムのスイッチオン、及び/又は第1の電解システムの第1の水素出力の減少は、例えば、電解システムの内部時定数(又は「慣性」)によって生じ、しばらく、例えば、1分以上、5分以上、10分以上かかる場合がある。水素製造プラントの制御モジュールにおいてこれらの時定数を考慮することは理にかなっていてよい。
【0013】
上記及び/又は下記に記載の方法は、能動DCモジュール及び受動DCモジュールの利点を組み合わせることができることが有利であり得る。一般に、受動整流器構成、すなわち、説明される整流器のダイオードベースの構成を有することの利点は、ダイオード整流器が、DC側及びAC側の両方で作り出す高調波がかなり少なく、したがって、特定の電圧及び/又は電流品質を達成するために必要な高調波フィルタ及び/又は制御労力がより少なく済むことである。更に、受動整流器は、入力電圧を単に整流するだけであり、したがって半導体のためのドライバを必要としないので、制御ユニットを必要とせず、これは、平均故障間隔(MTBF)が高くなるとともに、構成要素の故障が少なくなり得る。更に、いくつかの構成要素、すなわち、制御システム、高調波フィルタ、半導体ドライバなどはあまり高価でないか、又は単に受動DCモジュールには必要ないので、更なるコスト節約を達成することができる。更に、ほとんどの場合、受動構成要素のほうが安価である。他方では、能動DCモジュールは、完全に制御可能であるが、更なる構成要素が必要になる場合があり、非常に高価である場合がある。したがって、上記及び/又は下記に記載の方法は、それらの利点の少なくともいくつかを組み合わせることができ、十分に制御可能かつコスト効率のよい水素製造プラントをもたらす。
【0014】
様々な実施形態では、本方法は、
ランプダウン段階において、第1の電解システムの第1の水素出力を減少させることと、
第1のタイプの電解槽の第1の水素出力が第2の既定の水素出力閾値を越えたときに、第2の電解システムをスイッチオフすることと、第1の電解システムの第1の水素出力を、第2の既定の水素出力閾値に第2の水素出力を足したところまで増加させることと、を行うステップを更に備える。
【0015】
ランプダウン段階は、ランプアップ段階と全く同様の方法で制御されてよく、したがって、水素製造の一貫した全体制御をもたらし、制御可能性及び/又はメンテナンスに対してプラスの効果がある。更に、ランプダウン段階を制御する同様の方法は、例えば、ヒステリシスを備える制御機構といった更なる可能性を広げることができる。
【0016】
様々な実施形態では、第1及び/又は第2の既定の水素出力閾値は、第2の水素出力以上である。これは、全体的なシステムのより良好な制御可能性に寄与し得る。
【0017】
様々な実施形態では、第1の既定の水素出力閾値は、第2の水素出力よりも高く、例えば、10%高く、20%高く、30%高く、50%高く、70%高く、100%高く、150%高く、200%高く、及び/又は第2の既定の水素出力閾値は、ゼロよりも高く、及び/又は第2の水素出力よりも低い。
【0018】
様々な実施形態では、第1の既定の水素出力閾値から第2の電解槽出力を引いたものは、第2の既定の水素出力閾値以上である。この特徴により、ヒステリシスを備える制御が可能になる。これは、有利なことに、ある特定の点の周り、例えば、第1及び/又は第2の既定の水素出力閾値の周りで第2の電解システムを高速でスイッチオン及びオフすること(「振動」)の影響を低減又は更には防止することにつながり得る。第2の電解システムのスイッチオン及びオフは、少なくともいくつかの場合において、電解システムのいくつかの構成要素に対するストレスにつながり得るので、オン及びオフのスイッチングの回数を低減させることにより、システムの信頼性がより高くなり、及び/又はメンテナンス間隔がより長くなり得る。
【0019】
様々な実施形態では、水素製造プラントは、複数のN2個の第2の電解システムを備え、それにより、水素製造プラントの全体的な水素出力は、第1の水素出力にN2個の第2の最大水素出力の合計を足した合計となる。このようなシステムは更には、第1の電解システムがはるかに少なくて済む(例えば、1つのみ)のに対して、あまり高価でない第2の電解システムを複数使用できるので、非常にコスト効果が高くてよい。
【0020】
第2の電解システムは、異なる性能、動作範囲、効率、コスト、寿命、及び/又は異なる製造業者を有し得る。しかしながら、少なくともいくつかの実施形態では、N2個の第2の電解システム及び/又は第2のタイプの電解槽の各々は、本質的に同じ最大の第2の水素出力を有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、水素製造プラントは、複数(N1個)の第1の電解システムを備える。これは、例えば、第1の電解システムの電力がより高くなることに寄与し得る。追加的に又は代替として、これは、第1の電解システムの冗長化概念、例えば、ウォーム冗長化概念を実施するために使用され得る。
【0022】
様々な実施形態では、第1のタイプの電解槽は、高分子電解質膜(PEM)電解システムとして設計され、及び/又は第2のタイプの電解槽は、アルカリ水電解システムとして設計される。この選択は、第1又は第2の電解システムそれぞれの特性をサポートし得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、受動DCモジュールは、ゼロ電力又は最大電力で動作されることができる。これは、整流用のダイオードのみを使用し、受動DCモジュールの入力電力を制御するための更なる構成要素を必要としないので、非常にコスト効果の高いDCモジュールであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、受動DCモジュールは、ゼロ電力、最大電力、若しくは低電力で動作されることができ、及び/又は受動DCモジュールは、特にタップ切換器によって、3つ以上の電力レベルで動作されることができる。
【0025】
これは、整流用のダイオードを依然として使用することができる受動DCモジュールにより高い程度の柔軟性を提供する。これらの実施形態のすべてにおいて、2つ、3つ、又は更にはそれ以上の電力レベルを有してもよく、第2の水素出力は、ゼロを除く上記電力レベルのうちのいずれか1つにおける受動DCモジュールからの第2の電力を使用することによって生成され得る。
【0026】
様々な実施形態では、第1の水素出力は、能動DCモジュールからの第1の電力の関数、並びに少なくとも1つの第1のタイプの電解槽の温度及び圧力の関数であり、及び/又は第2の水素出力は、受動DCモジュールからの第2の電力の関数、並びに少なくとも1つの第2のタイプの電解槽の温度及び圧力の関数である。これらの依存性を考慮することにより、プラント、特に電解槽の制御が改善され得る。追加的に又は代替として、制御は、熱サイクル及び/又は冷却設定点のような影響因子を考慮することができ、これにより、電解槽及び/又は電解システムの劣化がより少なくなり得る。
【0027】
様々な実施形態では、第1の水素出力は、第1の電解システムの劣化の関数であり、及び/又は第2の水素出力は、第2の電解システムの劣化の関数である。これらの依存性を考慮することにより、プラント、特に電解槽の制御が改善され得る。
【0028】
一態様は、水素製造プラントに関し、
能動DCモジュール、及び能動DCモジュールからの第1の電力を使用することによって第1の水素出力を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽を備える第1の電解システムと、
受動DCモジュール、及び受動DCモジュールからの第2の電力を使用することによって第2の水素出力を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽を備える第2の電解システムと、ここにおいて、第2の水素出力の最大値が、第1の水素出力の最大値以下であり、
上記及び/又は下記に記載の方法にしたがって受動DCモジュール及び能動DCモジュールを制御するように構成された制御モジュールと、を備える。
【0029】
様々な実施形態では、受動DCモジュール及び能動DCモジュールを制御することは、水素製造プラントの要求された全体的な水素出力に依存し、及び/又は受動DCモジュール及び能動DCモジュールを制御することは、能動DCモジュールのための第1の電力と受動DCモジュールのための第2の電力との合計を送達する電源からの利用可能な電力に依存する。簡潔にいえば、制御は、出力要求によって、及び/又は入力要因によって駆動され得る。入力要因は、例えば、入力が、例えばエネルギー源(太陽光又は風力)によって引き起こされる長期又は中期範囲で、及び/又は短期範囲の主電源、例えば電力変動で変動し得ることを考慮に入れ得る。
【0030】
様々な実施形態では、受動DCモジュールは、非制御整流器を備え、及び/又は能動DCモジュールは、制御整流器を備える。非制御整流器は、AC入力を整流するために整流ダイオード、例えば、高性能ダイオードを使用し得る。能動DCモジュールは、AC入力を整流するためにSCR(シリコン制御整流器、又はサイリスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、及び/又は他のタイプの制御可能な整流器を使用し得る。
【0031】
一態様は、命令を備えるコンピュータプログラム製品に関し、該命令は、プログラムが水素製造プラントの制御モジュールによって及び/又は別の処理ユニット上で実行されると、制御モジュール及び/又は処理ユニットに、上記及び/又は下記に記載の方法を実施させる。
【0032】
一態様は、上記に記載のコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0033】
更に説明するために、本発明について図に示す実施形態を用いて説明する。これらの実施形態は、限定するものではなく単に例としてみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一実施形態に係る水素製造プラントの一例を概略的に示す。
【
図2】一実施形態に係る水素製造プラントの別の例を概略的に示す。
【
図3】一実施形態に係る水素製造プラントの別の例を概略的に示す。
【
図4】一実施形態に係る1つの第1の電解システムと1つの第2の電解システムとの組合せを概略的に示す。
【
図5】一実施形態に係る電解槽の挙動を概略的に示す。
【
図6】一実施形態に係る受動DCモジュールの一部を概略的に示す。
【
図7】一実施形態に係る能動DCモジュールの一部を概略的に示す。
【
図8】一実施形態に係る水素製造プラントにおける、水素出力を制御する第1の電解システムと第2の電解システムの組合せを概略的に示す。
【
図9】一実施形態に係るモジュールの全体的な水素出力を概略的に示す。
【
図10】一実施形態に係る例示的な電解槽セルの温度依存性を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、一実施形態に係る水素製造プラントHPPの一例を概略的に示す。HPPは、制御モジュール又は自動化システム「自動化」によって制御される。制御モジュールの出力は、第1の水素出力HO1
1(例えば、
図2参照)を生成するように構成された1つの第1のタイプの電解槽E1
1と、第2の水素出力HO2
2及びHO2
3をそれぞれ生成するように各々が構成された2つの第2のタイプの電解槽E2
2及びE2
3とを含む。制御モジュールの出力は更に、例えば第2のタイプの電解槽E2
2及びE2
3の入力電力を変更するための、タップ切換器のための設定点を含む。制御モジュールの入力は、水素需要、「中電圧グリッド」(MVグリッド)、電解槽の状態、及びタップ切換器の状態を備える。
【0036】
図2は、一実施形態に係る水素製造プラントHPPの別の例を概略的に示す。制御モジュール又は自動化システム「自動化」は、1つの第1の電解システムES1
1と、2つの第2の電解システムES2
2及びES2
3とを制御する。第1の電解システムES1
1は、能動DCモジュールMa
1と、能動DCモジュールMa
1からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力HO1
1を生成するように構成された1つの第1のタイプの電解槽E1
1とを備える。第2の電解システムES2
2及びES2
3の各々は、受動DCモジュールMp
2及びMp
3と、受動DCモジュールMp
2及びMp
3からの第2の電力をそれぞれ使用することによって第2の水素出力HO2、ここではHO2
2及びHO2
3を生成するように構成された、それぞれ1つの第2のタイプの電解槽E2
2及びE2
3とを備える。
【0037】
図3は、一実施形態に係る水素製造プラントHPPの別の例を概略的に示す。MVグリッドは、MVスイッチギアを介して、HPPを稼働するための電力を送達する。MVグリッドは、変圧器Tr
1~Tr
3(タップ切換器の有無にかかわらない)及びスイッチギアSg
1~Sg
3に接続されている。スイッチギアSg
1~Sg
3の各々は、電解システムES1
1~ES2
3に接続されている。第1の電解システムES1
1は、能動DCモジュールMa
1と、2つの第1のタイプの電解槽E1
1a及びE1
1bとを備え、これら電解槽は、能動DCモジュールMa
1からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力HO1
1を(それらの水素出力の合計として)生成するように構成されている。第2の電解システムES2
2は、受動DCモジュールMp
2と、2つの第2のタイプの電解槽E2
2a及びE2
2bとを備え、これら電解槽は、受動DCモジュールMp
2からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力HO2
2を(それらの水素出力の合計として)生成するように構成される。更なる第2の電解システムES2
3は、第2の電解システムES2
2と同様の構造を有する。プラント及びその構成要素は、全体的なプラント自動化又は制御システム「自動化」によって制御される。
【0038】
図4は、一実施形態に係る1つの第1の電解システムES1と1つの第2の電解システムES2との組合せを概略的に示す。第1の電解システムES1(例えば、
図2又は
図3のES1
1に相当し得る)は、第1の水素出力HO1を生成し、第2の電解システムES2(例えば、
図2又は
図3のES2
2又はES2
3に相当し得る)は、第2の水素出力HO2を生成する。これにより、水素製造プラントHPPの全体的な水素出力HO
totalが得られ、これは、第1の水素出力HO1と第2の水素出力HO2との合計である。
【0039】
HO
totalのランプアップ段階は、t
0からt
1まで続く。t
1において、第1の既定の水素出力閾値HO
thres1に達するか又は越えると、第2の電解システムES2がスイッチオンされる。また、t
1において、第1の電解システムES1の第1の水素出力HO1は、第1の既定の水素出力閾値HO
thres1から第2の水素出力HO2を引いたところまで減少する。その結果、t
1における全体的な水素出力が、(本質的に)同じレベルに保たれる。
図4では、単純にするために、スイッチオン及び減少は、短い瞬間として示されている。しかしながら、現実世界の電解システムでは、第2の電解システムのスイッチオン、及び/又は第1の電解システムの第1の水素出力の減少は、例えば、電解システムの内部時定数(又は「慣性」)によって生じ、しばらく、例えば、数分かかる場合がある。
図4の第2の電解システムES2は、2つの電力レベル、すなわちゼロ電力及びHO2
maxのみで動作するので、
図4のHO2はHO2
maxに等しい。
【0040】
t1からt2まで、全体的な水素出力HOtotalは変化のないまま保たれる。HOtotalのランプダウン段階は、t2からt4まで続く。t3において、第1のタイプの電解槽E1の第1の水素出力HO1が第2の既定の水素出力閾値HOthres2を越えると、第2の電解システムES2はスイッチオフされる。また、t3において、第1の電解システムES1の第1の水素出力HO1は、第2の既定の水素出力閾値HOthres2に第2の水素出力HO2を足したところまで増加する。ここではHOthres2がゼロよりも大きいので、第1の水素出力HO1は、t3においてゼロに低減されない。
【0041】
水素出力送達システムの制御が、特にランプアップ及びランプダウンが閾値HO
thres1及びHO
thres2の一方の周りで行われるときに、受動DCモジュールをスイッチオン及びオフする振動を引き起こすリスクを抱えることに留意されたい。このリスクは、ヒステリシス戦略によって低減され得る。
図4では、HO
thres1はHO
thres2よりも高い。したがって、全体的な水素出力HO
totalが閾値HO
thres1及びHO
thres2の一方の周りで振動するとき、スイッチオン及びオフは直ちに行われず、いくらかのヒステリシスを伴って行われる。
【0042】
図5は、一実施形態に係る水素製造プラントの挙動、すなわちヒステリシススイッチオーバーを概略的に示す。
図5のx軸によって表される能動DCモジュールの電力は、4つのゾーンを有する。接続された第1のタイプの電解槽にしたがって能動DCモジュールが動作するべきでない「不感帯」ゾーンと、能動DCモジュールが「ヒステリシスゾーン」に入る前に電位バッファとして作用するΔP
1ゾーンと、最後に、すべての受動DCモジュールがアクティブ化されたときに作用し、能動DCモジュールMa
1の電力制限に達する(電力制限アクティブ)まで続く最終バッファゾーンΔP
2とがある。「ヒステリシスゾーン」の内側では、スイッチ点P
thres1が、受動DCモジュールのうちの一方、ここではMp
2(
図3参照)をオンにすることを定義しており、Mp
2の受動DCモジュールの総電力和Pが得られる。受動DCモジュールMp
2をオンにしている又はスイッチオンしている間、能動DCモジュールMa
1の電力は、矢印「Mp
2をオンにする」によって示される通りにP
thres1から低減され、受動DCモジュールMp
2及び能動DCモジュールMa
1から来る電力の合計が、既定の全体的な設定点に従うようになる。この移行は、例えば、10~1000ms以内に起こり得る。全体的な電力が更に増加した場合、能動DCモジュールは再びP
thres1を越え、Mp
2をオンにしたのと同様にMp
3(
図3参照)がオンにされることになる。
【0043】
反対方向では、Mp
2がオンにされた後、Mp
2がオフにされて能動DCモジュール電力が矢印「Mp
2をオフにする」に沿って上昇する前に、能動DCモジュールの電力は、P
thres2まで低下しなければならない。受動DCモジュールのオン及びオフ間の高速振動を防止するために、ΔP
H差が設計されている。これは、幅P
thres1-P
thres2がMp
2の電力よりも広く、ΔP
Hが、P
thres1-P
thres2-Mp
2の電力、に等しくなることを含意する。入力電力についてではなく同じ原理に従う水素出力についての、時間に関連する全体的なランプアップ及びランプダウンが
図4に示されている。
図4の一番上の図における第1の電解システムES1
1(Ma
1によって電力供給される)が、第2の電解システムES2
2(Mp
2によって電力供給される)をオンにするため及びオフにするための2つの異なる決定点を有することが明確に分かる。
【0044】
図6は、一実施形態に係る受動DCモジュールMpの一部を概略的に示す。モジュールMpは、一例として、3相MVグリッド(「中電圧グリッド」)に接続されている。モジュールMpは、受動整流器、すなわちダイオードD1~D6からなるダイオード配列を備える。グリッド接続と、点で示す整流段との間に、追加の構成要素、例えば、受動整流のためのフィルタ装置、変圧器、及び/又はタップ切換器が配置され得る。右側の出力には、取り付けられた負荷、例えば電解槽スタックの必要事項に依存して、フィルタ要素があってもよい。
【0045】
図7は、一実施形態に係る能動DCモジュールMaの一部を概略的に示す。モジュールMaは、一例として、3相MVグリッド(「中電圧グリッド」)に接続されている。モジュールMaは、能動整流器、すなわちSCR(シリコン制御整流器又はサイリスタ)S1~S6及び/又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の配列を備える。SCR S1~S6の各々は、制御ユニットに接続されたドライバによって駆動される。グリッド接続と整流段との間に、受動整流のためのフィルタ装置が配置され得る(図示せず)。右側の出力には、例えば、取り付けられた負荷、例えば電解槽スタックの要件に依存して、フィルタ要素があり得る。
【0046】
図8は、一実施形態に係る水素製造プラントにおける、水素出力を制御する受動DCモジュールと能動DCモジュールの組合せを概略的に示す。水素製造プラントは、4つの第2の電解システムES2
2~ES2
5と、1つの第1の電解システムES1
1とを備える。第1の電解システムES1
1(例えば、
図3参照)は、その水素出力HO1
1を、ゼロと、点線で示され「HO1
max」とマークされている最大出力HO1
maxとの間で変化させ得る。第2の電解システムES2
2~ES2
5の水素出力HO2
2~HO2
5が、ゼロの値又はHO2
maxの値のいずれかを有することが明確に分かる。HO2
maxは、破線で示されており、「HO2
max」とマークされている。個々の「HO2
max」値は、各々のモジュールで異なってもよい。追加的に又は代替として、第2の電解システムは、3つ以上の水素出力レベルを有する電解システムとして実装されてもよい。
【0047】
図9は、一実施形態に係る5つのモジュールの全体的な水素出力を概略的に示す。
図9の水素製造プラント(図示しないが、
図1~
図3のHPPと同様の構造を有する)は、第1の水素出力HO1
1を生成するように構成された1つの第1の電解システム(ES1
1)と、第2の水素出力HO2
2~HO2
5を生成するように構成された4つの第2の電解システム(ES2
2~ES2
5)とを含んでいる。よって、この水素製造プラントHPPの全体的な水素出力HO
totalは、第1の水素出力HO1
1と第2の水素出力HO2
2~HO2
5との合計である。
【0048】
包絡線HOtotalは、t0からt5の間のランプアップ段階と、t5からt6の間の一定段階と、t6からt9の間のランプダウン段階とを示している。第1の電解システム(ES11)の最大水素出力HO1maxは、点線で示されている。水素出力HO22~HO25の各々は、ゼロ又はHO2maxのいずれかであり、図示の例では、第2の水素出力HO22~HO25の各々は同じである。いくつかの他の実施形態では、単一のベース負荷電力の値が、第2の水素出力及び/又は第2のタイプの電解槽の各々で異なってもよい。
【0049】
水素製造プラントのランプアップ段階中、第1の水素出力HO11は、その実際の動作点をゼロからゆっくりとその最大水素出力HO1maxに常に変化させる。第1の電解システム(ES11)は、第2の電解システム(ES22~ES25)のうちの1つの少なくとも水素出力HO2maxを送達することができなければならず、すなわち、HO1maxは、HO2max以上である必要がある。包絡線HOtotalが、t1において、HO2max出力値、すなわち第1の既定の水素出力閾値HOthres1に達するとすぐに、第2の電解システム(ES22)は、スイッチオンされ、よって、t1においてHO2maxに等しい水素出力HO22を生成する。また、t1において、第1の電解システム(ES11)の第1の水素出力HO11は、既定の水素出力閾値から第2の水素出力を引いたところ、すなわちHOthres1-HO22という出力値まで減少する。図示の場合では、HOthres1=HO22であるので、水素出力HO22は、t1においてゼロに低減される。現実世界の電解システムでは、第2の電解システムのスイッチオン、及び/又は第1の電解システムの第1の水素出力の減少は、例えば、電解システムの内部時定数によって生じ、しばらく、例えば数分かかる場合があることに留意されたい。電子機器側では、例えば、パワーエレクトロニクスに基づく能動整流器の高速制御速度に起因して、はるかに速い反応速度が存在し得る。
【0050】
この手順は、t2、t3、及びt4において繰り返され、よって、全体的な水素出力HOtotalの線形の水素出力増加につながる。HOtotalのランプアップは、t5まで継続し、t4からt5の間では、HO11の出力増加によってのみ引き起こされる。HOtotalの一定段階中、すなわちt5からt6の間では、能動及び受動DCモジュールの制御ユニットによる変更が行われる必要はない。場合によっては、グリッドに由来する変動を補償し、受動電力供給(ここでは図示せず)に影響を及ぼすことを除く。
【0051】
t6から始まる水素製造プラントのランプダウン段階中、第1の電解システム(ES11)は、(この実施形態では)その水素出力HO11を、t7まで、この実施形態ではゼロであるHOthres2に減少させる。t7において、第2の既定の水素出力閾値HOthres2に達する。t7において、第2の電解システム(ES22)はスイッチオフされる。また、t7において、第1の電解システム(ES11)の第1の水素出力HO11は、第2の既定の水素出力閾値に第2の水素出力を足したところ、すなわちHOthres2+HO22という出力値まで増加する。次いで、全体的な水素出力HOtotalのランプダウンはt9まで継続する。t8及びt9において、HO23及びHO24は、オフにされ、したがってそれらの水素出力をゼロに低減する。t9から、全体的な電力Ptotalは一定に保たれ、全体的な水素出力HOtotalはモジュールES11及びES22によって送達される。
【0052】
図10は、一実施形態に係る例示的な電解槽セルの温度依存性を概略的に示す。x軸は電解槽セルの電流Iを示し、y軸はセルの電圧Uを示す。それらの依存性が、2つの温度
T1及び
T2について示されている。いわゆる「スタック」では、複数のこれらのセルを考慮する必要があり、セルは直列に接続され得る。能動整流器若しくは能動DCモジュール、又は全体的な制御若しくは自動化方式は、受動DCモジュールがスイッチオンされたときにどの電力レベルで開始するかを、ランプアップ時に滑らかな移行を確立することができるようにそれ自体の設定点を調整するために知る必要がある。設定点は例えば、温度、圧力、質量流量、及び/又は他のものについてのいくつかのパラメータに依存し得る。
図10には、一例として、セルに対する温度の影響が示されており、第2の電解システムが、例えばセル当たり1.7Vの固定外部電圧下で、経時的にどのように挙動し得るかが示されている。第2の電解システムは、電流I1、温度T1でスイッチオンされてよく、外部電圧は一定であり、電解槽スタックの温度は、例えば損失に起因して経時的に上昇してよく、より高い温度T2、すなわち最終及び/又は公称動作点に達し得る。スタックの温度は、外部制御システムによって制御されてよく、追加的に又は代替として、全体的なプラント自動化又は制御システムによって制御されてもよい。より高い温度T2によって引き起こされて、スタックに流れ込む電流は、電流I2に増加し、したがって電力を増加させ得る。この挙動を補償することは有利であり得る。これは、能動DCモジュール及び受動DCモジュールの電力の合計としての全体的な電力P
totalが一定に保たれるように能動DCモジュールを制御することによって、及び/又は更なる要因、例えば個々のスタックの熱サイクル、オン/オフ、冷却設定点の変更等を考慮に入れ得るオーバーレイ制御システムを制御することによって、達成することができる。これは、有利なことに、劣化の回避に寄与することができる。
【0053】
更に、スタック温度の定義された制御は、(例えば、受動整流器を使用した)第2の電解システムにおける水素の製造を制御するため、ひいてはグリッド電力消費も制御するために使用され得る。
【0054】
図11は、一実施形態に係るフロー
図100を示す。フロー
図100は、水素製造プラントHPPにおいて水素を製造するための方法を説明する。プラントは、能動DCモジュールMa、及び能動DCモジュールMaからの第1の電力を使用することによって第1の水素出力HO1を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽E1を備える第1の電解システムES1と、受動DCモジュールMp、及び受動DCモジュールMpからの第2の電力を使用することによって第2の水素出力HO2を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽E2を備える第2の電解システムES2と、を備える。本方法は、ステップ102において開始する。ステップ104において、ランプアップ段階を実施すべきか、ランプダウン段階を実施すべきかの選択が行われる。その他の場合、例えば一定段階の場合、更なる動作は行われなくてよい。
【0055】
ランプアップ段階は、ステップ106において開始し、能動DCモジュールMaの第1の水素出力が増加する。ステップ108は、能動DCモジュールMaの電力出力ランプアップが第1の既定の水素出力閾値HOthres1を越えるか(又はちょうど越えたところか)をチェックする。yesの場合、第2の電解システムES2がスイッチオンされ(ステップ110)、第1の電解システムES1の第1の水素出力HO1は、第1の既定の水素出力閾値HOthres1から第2の水素出力HO2を引いたところまで減少する(ステップ112)。複数の第2の電解システムES2が水素製造プラント内にある場合(任意選択)には、ランプアップを継続させることができ、すなわち、これはステップ114においてチェックされ、再びステップ106に分岐する。そうでない場合、ランプアップ段階はステップ116において終了する。
【0056】
ランプダウン段階は、ステップ118において開始し、第1の電解システムES1の第1の電力出力が減少する。ステップ120は、(ステップ118における)ランプダウンが継続するか、又は既定の第2の水素閾値HOthres2を越えるか(又はちょうど越えたところか)をチェックする。yesの場合、第2の電解システムES2はスイッチオフされ(ステップ122)、第1の電解システムES1の第1の水素出力HO1は、第2の既定の水素出力閾値HOthres2に第2の水素出力HO2を足したところまで増加する。複数の第2の電解システムES2が水素製造プラント内にある場合(任意選択)には、ランプダウンを継続させることができ、すなわち、これはステップ126においてチェックされ、再びステップ118に分岐する。そうでない場合、ランプダウン段階はステップ128において終了する。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造プラント(HPP)において水素を製造するための方法であって、前記水素製造プラント(HPP)は、
能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、
を備え、
前記方法は、
ランプアップ段階において、前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を増加させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオンすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたところまで減少させることと、
を行うステップを備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の全体的な水素出力(HO
total)が、前記第1の水素出力(HO1)と前記第2の水素出力(HO2)との合計になる、方法。
【請求項2】
ランプダウン段階において、前記第1のタイプの電解槽(E1)の前記第1の水素出力(HO1)を減少させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオフすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)に前記第2の水素出力(HO2)を足したところまで増加させることと、
を行うステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)は、前記第2の水素出力(HO2)以上であり、及び/又は、
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたものは、第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)以上である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N2個)の第2の電解システム(ES2)を備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の前記全体的な水素出力(HO
total)が、前記第1の水素出力(HO1)に前記N2個の第2の最大水素出力(HO2
max)の合計を足した合計になる、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N1個)の第1の電解システム(ES1)を備える、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1)は、前記第2の水素出力(HO2)よりも高く、例えば10%高く、20%高く、30%高く、50%高く、70%高く、100%高く、150%高く、200%高く、並びに/又は、
第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2)は、ゼロよりも高く、及び/若しくは前記第2の水素出力(HO2)よりも低い、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のタイプの電解槽(E1)は、高分子電解質膜(PEM)電解システムとして設計され、及び/又は、
前記第2のタイプの電解槽(E2)は、アルカリ水電解システムとして設計される、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力若しくは最大電力(Pp
max)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力、前記最大電力(Pp
max)、若しくは低電力(Pp
low)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、特にタップ切換器によって、3つ以上の電力レベルで動作されることができ、
前記第2の水素出力(HO2)は、ゼロを除く上記電力レベルのうちのいずれか1つにおける前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力を使用することによって生成されることができる、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)からの前記第1の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)の温度及び/若しくは圧力の関数であり、並びに/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)の温度及び/若しくは圧力の関数である、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)の劣化の関数であり、及び/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)の劣化の関数である、
請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項11】
能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、ここにおいて、前記第2の水素出力の最大値(HO2
max)が、前記第1の水素出力の最大値(HO1
max)以下であり、
請求項
1に記載の方法にしたがって前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御するように構成された制御モジュールと、
を備える、水素製造プラント(HPP)。
【請求項12】
前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記水素製造プラント(HPP)の要求された全体的な水素出力(HO
total,req)に依存し、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記能動DCモジュール(Ma)のための前記第1の電力と前記受動DCモジュール(Mp)のための前記第2の電力との合計を送達する電源からの利用可能な電力に依存する、
請求項11に記載の水素製造プラント(HPP)。
【請求項13】
前記受動DCモジュール(Mp)は、非制御整流器を備え、及び/又は前記能動DCモジュール(Ma)は、制御整流器を備える、請求項11又は12に記載の水素製造プラント(HPP)。
【請求項14】
水素製造プラント(HPP)の制御モジュール及び/又は別の処理ユニット上で走るプログラム要素であって、請求項1
又は2に記載の方法を実行するためのプログラム要素。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
ランプダウン段階は、ステップ118において開始し、第1の電解システムES1の第1の電力出力が減少する。ステップ120は、(ステップ118における)ランプダウンが継続するか、又は既定の第2の水素閾値HOthres2を越えるか(又はちょうど越えたところか)をチェックする。yesの場合、第2の電解システムES2はスイッチオフされ(ステップ122)、第1の電解システムES1の第1の水素出力HO1は、第2の既定の水素出力閾値HOthres2に第2の水素出力HO2を足したところまで増加する。複数の第2の電解システムES2が水素製造プラント内にある場合(任意選択)には、ランプダウンを継続させることができ、すなわち、これはステップ126においてチェックされ、再びステップ118に分岐する。そうでない場合、ランプダウン段階はステップ128において終了する。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 水素製造プラント(HPP)において水素を製造するための方法であって、前記水素製造プラント(HPP)は、
能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、
を備え、
前記方法は、
ランプアップ段階において、前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を増加させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1
)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオンすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1
)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたところまで減少させることと、
を行うステップを備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の全体的な水素出力(HO
total
)が、前記第1の水素出力(HO1)と前記第2の水素出力(HO2)との合計になる、方法。
[2] ランプダウン段階において、前記第1のタイプの電解槽(E1)の前記第1の水素出力(HO1)を減少させることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)が第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2
)を越えたときに、
前記第2の電解システム(ES2)をスイッチオフすることと、
前記第1の電解システム(ES1)の前記第1の水素出力(HO1)を、前記第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2
)に前記第2の水素出力(HO2)を足したところまで増加させることと、
を行うステップを更に備える、[1]に記載の方法。
[3] 前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1
)は、前記第2の水素出力(HO2)以上であり、及び/又は、
前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1
)から前記第2の水素出力(HO2)を引いたものは、第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2
)以上である、
[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N2個)の第2の電解システム(ES2)を備え、
これにより、前記水素製造プラント(HPP)の前記全体的な水素出力(HO
total
)が、前記第1の水素出力(HO1)に前記N2個の第2の最大水素出力(HO2
max
)の合計を足した合計になる、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記水素製造プラント(HPP)は、複数(N1個)の第1の電解システム(ES1)を備える、
[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記第1の既定の水素出力閾値(HO
thres1
)は、前記第2の水素出力(HO2)よりも高く、例えば10%高く、20%高く、30%高く、50%高く、70%高く、100%高く、150%高く、200%高く、並びに/又は、
第2の既定の水素出力閾値(HO
thres2
)は、ゼロよりも高く、及び/若しくは前記第2の水素出力(HO2)よりも低い、
[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記第1のタイプの電解槽(E1)は、高分子電解質膜(PEM)電解システムとして設計され、及び/又は、
前記第2のタイプの電解槽(E2)は、アルカリ水電解システムとして設計される、
[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力若しくは最大電力(Pp
max
)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、ゼロ電力、前記最大電力(Pp
max
)、若しくは低電力(Pp
low
)で動作されることができ、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)は、特にタップ切換器によって、3つ以上の電力レベルで動作されることができ、
前記第2の水素出力(HO2)は、ゼロを除く上記電力レベルのうちのいずれか1つにおける前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力を使用することによって生成されることができる、
[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)からの前記第1の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)の温度及び/若しくは圧力の関数であり、並びに/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)からの前記第2の電力の関数、及び前記少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)の温度及び/若しくは圧力の関数である、
[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記第1の水素出力(HO1)は、前記能動DCモジュール(Ma)の劣化の関数であり、及び/又は、
前記第2の水素出力(HO2)は、前記受動DCモジュール(Mp)の劣化の関数である、
[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11] 能動DCモジュール(Ma)、及び前記能動DCモジュール(Ma)からの第1の電力を使用することによって第1の水素出力(HO1)を生成するように構成された少なくとも1つの第1のタイプの電解槽(E1)を備える第1の電解システム(ES1)と、
受動DCモジュール(Mp)、及び前記受動DCモジュール(Mp)からの第2の電力を使用することによって第2の水素出力(HO2)を生成するように構成された少なくとも1つの第2のタイプの電解槽(E2)を備える第2の電解システム(ES2)と、ここにおいて、前記第2の水素出力の最大値(HO2
max
)が、前記第1の水素出力の最大値(HO1
max
)以下であり、
[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法にしたがって前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御するように構成された制御モジュールと、
を備える、水素製造プラント(HPP)。
[12] 前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記水素製造プラント(HPP)の要求された全体的な水素出力(HO
total,req
)に依存し、及び/又は、
前記受動DCモジュール(Mp)及び前記能動DCモジュール(Ma)を制御することは、前記能動DCモジュール(Ma)のための前記第1の電力と前記受動DCモジュール(Mp)のための前記第2の電力との合計を送達する電源からの利用可能な電力に依存する、
[11]に記載の水素製造プラント(HPP)。
[13] 前記受動DCモジュール(Mp)は、非制御整流器を備え、及び/又は前記能動DCモジュール(Ma)は、制御整流器を備える、[11]又は[12]に記載の水素製造プラント(HPP)。
[14] 水素製造プラント(HPP)の制御モジュール及び/又は別の処理ユニット上で走るプログラム要素であって、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラム要素。
[15] [14]に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】