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特表2024-540561電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241024BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241024BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M50/403 C
H01M4/62 Z
H01M4/1391
H01M4/1397
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
H01M50/403 E
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529670
(86)(22)【出願日】2023-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2023006164
(87)【国際公開番号】W WO2023214844
(87)【国際公開日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055965
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】イルハ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デリュン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】サラ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ムン・キュ・ジュ
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB00
5H021BB02
5H021BB15
5H021HH03
5H021HH10
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM09
5H029AM11
5H029AM16
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029CJ01
5H029CJ03
5H029CJ07
5H029CJ15
5H029CJ21
5H029DJ04
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ03
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA08
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA19
5H050EA01
5H050EA23
5H050FA02
5H050FA04
5H050FA17
5H050GA01
5H050GA03
5H050GA09
5H050GA16
5H050GA21
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、電極組立体の製造方法に関する。前記方法では、基材層、表面保護層、およびリチウム金属層が順次積層された転写積層体を、リチウム金属層がセパレータと接するように転写した後、その上に前記リチウム金属層が転写された前記セパレータを電極層の表面と接触させ、前記表面保護層を電極に対向させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、表面保護層、およびリチウム金属層が順次積層された転写積層体を用意する段階;
前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階;および
負極と正極との間に前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階;
を含み、
前記表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階で転写された前記リチウム金属層の厚さは、1μm以上10μm以下である、電極組立体の製造方法。
【請求項2】
前記表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階で転写された前記リチウム金属層の厚さは、2μm以上10μm以下である、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項3】
前記表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階で転写された前記リチウム金属層の表面粗さは、0.02μm以上0.2μm以下である、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項4】
前記負極と正極との間に前記負極または正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階は、積層、加圧積層および巻取する方法のいずれか一つの方法によって電極組立体を形成する、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、ドライオンドライ(dry on dry)工程を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項6】
前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、前記転写積層体のリチウム金属層を前記セパレータの一面にラミネーションする段階;および
前記基材層を除去する段階;
を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項7】
前記負極は、負極集電体層、および前記負極集電体層の一面または両面に負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は、負極活物質層組成物を含み、
前記負極活物質層組成物は、負極活物質、負極導電材、および負極バインダーからなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項8】
前記正極は、正極集電体層、および前記正極集電体層の一面または両面に正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、正極活物質層組成物を含み、
前記正極活物質層組成物は、LiNiCoMn(x+y+z=1);LiNiCoMnAl(a+b+c+d=1);LiMn;LiNi0.5Mn1.5;およびLiMFePO(M:遷移金属、x+y=1)からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項9】
前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、前記セパレータを前処理する段階;および
前記前処理されたセパレータ上に表面保護層およびリチウム金属層を転写する段階;
を含み、
前記前処理は、コロナ処理またはプラズマ処理を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項10】
前記負極と正極との間に、前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階は、前記表面保護層を前処理する段階を含み、
前記前処理は、コロナ処理またはプラズマ処理を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項11】
前記負極活物質は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、SiO(x=0)、SiO(0<x<2)、Si/C、およびSi合金からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項7に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項12】
前記表面保護層は、高分子、導電材、および無機物粒子からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の電極組立体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項による製造方法によって製造された電極組立体。
【請求項14】
電池外装材;
前記電池外装材の内部に備えられた請求項13による電極組立体;および
電解質;
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は2022年5月6日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0055965号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急激な増加により代替エネルギーやクリーンエネルギーの使用への要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学反応を用いた発電、蓄電の分野である。
【0004】
現在、このような電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例として二次電池を挙げることができ、その使用領域がますます拡大している趨勢である。
【0005】
モバイル機器に関する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。かかる二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が常用化されて、広く使用されている。また、かかる高容量のリチウム二次電池用電極として、単位体積当たりのエネルギー密度がより高い高密度の電極を製造するための方法に関する研究が活発に行われている。
【0006】
一般に、二次電池は、正極、負極、電解質、およびセパレータからなる。負極は正極から出たリチウムイオンを挿入して脱離させる負極活物質を含み、前記負極活物質には放電容量の大きいシリコン系粒子が用いられてもよい。
【0007】
一般に、リチウム二次電池の負極には、黒鉛などの炭素材料が用いられるが、炭素の理論容量密度は372mAh/g(833mAh/cm)である。したがって、負極のエネルギー密度を向上させるために、リチウムと合金化するケイ素(Si)、錫(Sn)やそれらの酸化物及び合金などが負極材料として検討される。その中でも、シリコン系材料は、低価格及び高容量(4200mAh/g)に起因して注目されてきた。
【0008】
しかしながら、前記シリコンは、リチウムイオンの挿入/脱離過程で体積変化(収縮または膨脹)が発生して、機械的安定性が低下し、その結果、サイクル特性が阻害されるという問題点がある。したがって、構造的な安定性を有することにより、電気化学素子の活物質として用いる時、安定性に優れ、サイクル特性を確保することができる材料の開発が必要である。
【0009】
また、シリコン系負極活物質を用いる場合、初期不可逆容量が大きいという問題が発生する。リチウム二次電池の充放電反応において、充電時には正極から放出されたリチウムが負極に挿入され、放電時には負極から脱離されて再び正極へと戻るが、シリコン系負極活物質の場合は、体積変化と表面副反応が著しく、初期充電時に負極に挿入されたリチウムの量の多くは再び正極へと戻ることができない。したがって、初期不可逆容量が大きくなるという問題が発生する。初期不可逆容量が大きくなると、電池容量とサイクルが急激に減少するという問題が発生する。
【0010】
前記のような問題を解決するために、シリコン系負極活物質を含むシリコン負極を前リチウム化する方法が知られている。前リチウム化方法としては、電解鍍金、リチウム金属転写、リチウム金属蒸着などの物理/化学的方法によってリチウム化させた後、電極を製造する方法、および負極を電気化学的に前リチウム化させる方法などが知られている。
【0011】
従来の物理化学的方法は、高温で実施しなければならない環境的要因により、火災および爆発などの危険性を内包しており、従来の電気化学的方法は、均一に初期不可逆容量を制御することができず、生産費用が増加するという問題があった。
【0012】
特に、リチウム金属転写工程において、リチウム金属を安全に、かつ容易に転写しにくく、転写されても反応性の良いリチウム金属が負極活物質と直接反応を始めて負極活物質層の表面での粒子クラック現象などの問題が発生している。
【0013】
これを解決するために、リチウム金属層を転写する前に負極活物質層を前処理するか、負極活物質層の上部に拡散速度制御層などを含んで、リチウム金属層の前リチウム化速度を調節する研究が行われているが、このような工程を行う場合、電池製造費用が増加し、セルの抵抗が増加するという問題点が発生している。
【0014】
したがって、負極の前リチウム化において、より安全で、かつ効率的であり、リチウムを負極活物質層内に均一に前リチウム化することができる工程および材料に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009-080971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本出願は、電極組立体の製造方法、電極組立体、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書の一実施態様は、基材層、表面保護層、およびリチウム金属層が順次積層された転写積層体を用意する段階;
前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階;および
負極と正極との間に、前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階;
を含み、
前記表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階で転写された前記リチウム金属層の厚さは、1μm以上10μm以下である、電極組立体の製造方法を提供する。
【0018】
また他の一実施態様において、本出願に係る製造方法によって製造された電極組立体を提供する。
【0019】
最後に、本出願は、電池外装材、前記電池外装材の内部に備えられた本出願に係る電極組立体、および電解質を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施態様による電極組立体の製造方法は、リチウム金属層を負極または正極活物質層の上部に転写して前リチウム化する工程において、負極または正極活物質層上にバッファ層などの追加積層構造を備えなくても、リチウム転写を均一にすることができることを主な目的とする。
【0021】
すなわち、本出願に係る電極組立体の製造方法は、リチウム金属層を従来のように、負極または正極活物質層の上部に直接転写するのではなく、セパレータの一面にリチウム金属層を転写し、その後、電池組立体の製造時に、負極または正極とラミネート加工する過程でセパレータと接し、前リチウム化が行われるようにするか、セル組立体を製造し、電解質を注液した後に、負極または正極の前リチウム化が行われるようにすることを特徴とする。
【0022】
特に、表面保護層とリチウム金属層を同時にセパレータに転写することによって、リチウム金属層が空気中に露出されることを防止することができ、また、表面保護層とともにセパレータに転写されて、後に前リチウム化を行う時、負極または正極活物質層と表面保護層が接する構造に形成されて、負極または正極活物質層の上部に前リチウム化速度を調節するための別途の層の設置工程が不必要であることを特徴とする。
【0023】
これによって、従来のように、負極または正極活物質層での前リチウム化速度を容易に調節することができ、バッファ層のような別途の層の設置が不必要になって経済的であり、また、別途の層を備える場合、電極の抵抗が増加するという問題が発生したが、本出願に係る方法は、このような問題を解決することができるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本出願の一実施態様による電極組立体の製造方法を示した図である。
図2】セパレータ(5cm×5cm)に転写されたリチウムメタルを示した図である。
図3】NCMA/Liセルの初期充放電曲線(本発明の実施例1および比較例1)を示した図である。
図4】Si/Liセルの初期充放電曲線(本発明の実施例2および比較例2)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を説明する前に、まずいくつかの用語を定義する。
【0026】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0027】
本明細書において、「p~q」は「p以上、q以下」の範囲を意味する。
【0028】
本明細書において、「比表面積」は、BET法により測定したものであり、具体的には、BEL Japan社製のBELSORP-miniIIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出されたのである。すなわち、本出願において、BET比表面積は、前記測定方法で測定された比表面積を意味することができる。
【0029】
本明細書において、「Dn」は、平均粒径を意味し、粒径による粒子個数累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は、粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、D90は、粒径による粒子個数累積分布の90%地点での粒径であり、D10は、粒径による粒子個数累積分布の10%地点での粒径である。一方、平均粒径は、レーザ回折法(laser diffraction method)を利用して測定してもよい。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラック(Microtrac)S3500)に導入して、粒子がレーザビームを通過するとき、粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。
【0030】
本明細書において、重合体がある単量体を単量体単位で含むという意味は、その単量体が重合反応に参加して重合体内で繰り返し単位として含まれることを意味する。本明細書において、重合体が単量体を含むという場合、これは重合体が単量体を単量体単位で含むということと同一に解釈される。
【0031】
本明細書において、『重合体』とは、『単独重合体』と明示されない限り、共重合体を含む広義の意味で使用されることが理解される。
【0032】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、分子量測定用に市販されている多様な重合度の単分散ポリスチレン重合体(標準試料)を標準物質にして、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によって測定したポリスチレン換算分子量である。本明細書において、分子量とは、特別な記載がない限り、重量平均分子量を意味する。
【0033】
以下、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように、図面を参照して詳しく説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で具現可能であり、以下の説明に限定されるものではない。
【0034】
本明細書の一実施態様は、基材層、表面保護層、およびリチウム金属層が順次積層された転写積層体を用意する段階;前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階;および負極と正極との間に前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階;を含み、
前記表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階で転写された前記リチウム金属層の厚さは、1μm以上10μm以下である、電極組立体の製造方法を提供する。
【0035】
本出願に係る電極組立体の製造方法は、リチウム金属層を、従来のように、負極または正極活物質層の上部に直接転写するのではなく、セパレータの一面にリチウム金属層を転写し、その後、電極組立体の製造時に、負極または正極とラミネーションする過程でセパレータと接し、前リチウム化が進行されるようにするか、セル組立体を製造し、電解質を注液した後に、負極または正極の前リチウム化が行われるようにすることを特徴とする。
【0036】
特に、表面保護層とリチウム金属層を同時にセパレータに転写することによって、リチウム金属層が空気中に露出されることを防止することができ、また表面保護層とともにセパレータに転写されて、後に前リチウム化を行う時、負極または正極活物質層と表面保護層が接する構造に形成されて、負極活物質層の上部に前リチウム化速度を調節するための別途の層の設置工程が不要であることを特徴とする。
【0037】
以下、本出願の電極組立体の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本出願の一実施態様による電極組立体の製造方法は、基材層、表面保護層、およびリチウム金属層が順次積層された転写積層体を用意する段階を含む。
【0039】
前記段階は、リチウム金属層をセパレータ上に転写するための転写積層体を用意する段階に対応する。
【0040】
本出願の一実施態様において、前記基材層は、リチウム金属層を蒸着させる段階での高い温度のような工程条件を耐えることができ、蒸着されたリチウム金属層を転写するための巻取工程においてリチウム金属層が基材層上に転写される逆剥離問題を防止することができる特徴を有するものであれば、制限なく使用可能である。
【0041】
具体的には、本出願の一実施態様において、前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリメチルメタクリル酸(poly(methylmethacrylate)、PMMA)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレン(Polyethylene)、およびポリカーボネート(Polycarbonate)からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0042】
本出願の一実施態様において、前記基材層の厚さは、1μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上200μm以下、10μm以上30μm以下の範囲を満たしてもよい。
【0043】
本出願の一実施態様において、前記セパレータに転写されたリチウム金属層の厚さは、1μm以上10μm以下であってもよく、好ましくは、2μm以上10μm以下を満たしてもよい。
【0044】
前記基材層およびリチウム金属層の厚さが前記範囲を満たすことによって、リチウム金属層の負極または正極活物質層側への転写が効率的に行われることができ、逆転写を防止することができるという特徴を有する。
【0045】
また、セパレータに転写されたリチウム金属層の厚さが2μm未満の場合、負極の初期不可逆容量補償が不十分で、電池の初期効率向上が制限されたり、サイクル充放電時のリチウム損失補償が不十分で、電池のサイクル寿命性能向上が制限されるという問題点があり、10μmを超える場合、必要以上に電池にリチウムを超過供給するようになって、電池の製造費用が上昇し、電極の前リチウム化品質の不均一度が高くなったり、電池を製造した後の初期充電時に過充電が発生するというおそれがある。
【0046】
一方、本出願の一実施態様において、前記リチウム金属層の10回平均表面粗さは、0.02μm以上0.2μm以下であってもよく、好ましくは、0.02μm以上0.1μm以下を満たしてもよい。
【0047】
前記リチウム金属層の表面粗さが前記範囲を満たすことによって、リチウム金属層のセパレータ側への転写が効率的に行われることができ、逆転写を防止することができるという特徴を有する。特に、前記リチウム金属層の表面粗さが0.2μmを超える場合、リチウム金属層のセパレータへの転写が不均一に行われて、電極の前リチウム化品質の不均一度が高くなるおそれがある。
【0048】
本出願において、前記表面粗さは、Sa(面の算術平均高さ)で表現され、Ra(線の算術平均高さ)を面に拡張した概念で、以下の式で計算される。算術平均した面で山(算術平均表面よりも高い部分)の高さ或いは谷(算術平均表面よりも低い部分)の深さを絶対値で求めた後、表面粗さを求めるxy面積に対して積分して、これをxy面積Aで割った値である。
【0049】
【数1】
【0050】
SLMP粉末を用いたリチウム金属層をセパレータに転写する場合、SLMP粉末を圧延した後にシート化して、セパレータに転写させなければならないが、一般的なSLMP粉末は、平均粒径が約30μmと大きく、本出願に係るリチウム金属層の厚さ範囲に厚さを調節しにくく、シート化しても、SLMP粒子の大きさが一定せず、粒子形態で残るSLMP粉末があるため、本出願に係るリチウム金属層よりも表面粗さが粗く形成される。結局、前リチウム化の程度を精密に調節しにくく、電極の前リチウム化品質の不均一度が高くなるという問題点がある。
【0051】
本出願の一実施態様において、リチウム金属層の剥離性を向上させ、セパレータへの転写性を確保するために、前記転写積層体の基材層およびリチウム金属層が接する面に表面保護層をさらに含む。
【0052】
すなわち、前記基材層は、少なくとも一面に表面保護層が形成されたものであってもよく、両面に表面保護層が形成されたものであってもよい。前記表面保護層によって、蒸着されたリチウム金属層をセパレータに転写するための工程においてリチウム金属層が基材層上に転写される逆剥離問題を防止することができ、また、リチウム金属層をセパレータ上に転写させた後、基材層を容易に分離させることができる。
【0053】
本出願の一実施態様において、前記表面保護層は、高分子、導電材、および無機物粒子からなる群より選択される1つ以上を含む、電極組立体の製造方法を提供する。
【0054】
本出願の一実施態様において、前記高分子は、アクリル系高分子、フッ素系高分子、およびシリコン系高分子からなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0055】
本出願の一実施態様において、前記導電材は、後述する負極導電材と同じものを用いてもよい。
【0056】
本出願の一実施態様において、前記無機物粒子は、アルミナまたはシリカ粒子などの無機物粒子であれば、制限なく使用可能である。
【0057】
特に、前記表面保護層は、リチウム金属層のセパレータへの転写の時、リチウム金属層とともにセパレータに転写される。これによって、反応性が非常に大きいリチウム金属層が空気中に露出されないように保護膜の役割を果たすとともに、後述する前リチウム化工程でも負極または正極活物質層の上部に一緒に転写される。これによって、負極または正極活物質層とリチウム金属層の直接接触を防いで前リチウム化速度を調節して、均一な前リチウム化を行うことができるようにし、リチウムの損失を防ぐことができるという特徴を有する。
【0058】
本出願の一実施態様において、前記表面保護層はコーティング法によって形成されてもよく、例えば、前記コーティング法は、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、スピンコーティング(spin coating)、ダイコーティング(die coating)、及びグラビアコーディング(Gravure coating)、マイクロ-グラビアコーディング(Micro-Gravure coating)、コンマコーティング(Comma coating)、およびロールコーティング(roll coating)からなる群より選択される方法であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業界でコーティング層を形成するために使用可能なコーティング法を多様に使用することができる。
【0059】
本出願の一実施態様において、前記表面保護層の厚さは、100nm以上1μm以下の範囲を満たしてもよい。
【0060】
また他の一実施態様において、前記表面保護層の厚さは、100nm以上1μm以下、好ましくは、200nm以上1μm以下の範囲を満たしてもよい。
【0061】
前記表面保護層は、後述する前リチウム化工程以後に、電解質に全部溶解されてもよく、または溶解されず、リチウム二次電池用負極または正極の上部に残っていてもよい。この時、前記表面保護層の厚さが前記範囲を満たして、電極抵抗に問題とならないという特徴を有する。
【0062】
本出願の一実施態様において、電極組立体の製造方法は、前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階を含んでもよい。
【0063】
前記段階は、負極または正極活物質層にリチウム金属層を直接転写する代わりに、転写対象となるセパレータの上部にリチウム金属層を転写する段階を意味してもよい。
【0064】
本出願の一実施態様において、前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、前記転写積層体のリチウム金属層を前記セパレータの一面にラミネーションする段階;および前記基材層を除去する段階;を含む、電極組立体の製造方法を提供する。
【0065】
この時、本出願の一実施態様において、前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、前記セパレータを前処理する段階;および前記前処理されたセパレータ上に表面保護層およびリチウム金属層を転写する段階;を含み、前記前処理は、コロナ処理、またはプラズマ処理を含む、電極組立体の製造方法を提供する。
【0066】
本出願の一実施態様において、前記プラズマ処理は、前記セパレータをプラズマ発生部に15kVの電圧を印加し、N(800slm)、CDA(5slm)をフロー(Flow)させて、プラズマを発生させ、セパレータを5lpmの速度で通過させて、セパレータの表面を処理する工程を意味してもよい。
【0067】
具体的には、本出願の一実施態様において、前記前処理する段階は、間接プラズマ方式であってもよい。
【0068】
前記のように、セパレータにリチウム金属層を転写する前に、セパレータの表面を前処理して、後にリチウム金属層との界面密着性を向上させることができ、これによって基材層を容易に剥離することができるという特徴を有することができる。
【0069】
また、本出願の一実施態様において、前記リチウム金属層がセパレータと接するように、表面保護層およびリチウム金属層をセパレータに転写する段階は、ドライオンドライ(dry on dry)工程を含む、電極組立体の製造方法を提供する。
【0070】
すなわち、本出願に係る転写工程は、ドライオンドライ(dry on dry)工程を含むことを特徴とする。このように行う場合、溶媒を用いることなくリチウム金属層をセパレータに転写することができて、溶媒洗浄または乾燥工程が不要という長所がある。
【0071】
また、前記のように、ドライオンドライ工程で、リチウム金属層をセパレータに転写することによって、リチウム金属層の蒸着厚さを所望の範囲で正確に調節することができて、後の負極または正極の前リチウム化量(pre-lithiation dosage)を非常に正確に調節することができるという長所を有する。
【0072】
一方、リチウム金属層をドライオンドライ(dry on dry)工程ではないウェットオンドライ(wet on dry)工程で適用する場合は、具体的には、安定化リチウム金属パウダー(SLMP)を溶媒に含んでセパレータにコーティングする場合を挙げることができる。
【0073】
前記のように、ウェットオンドライ(wet on dry)工程で、セパレータにリチウム金属層を形成する場合、通常溶媒が含まれることから、溶媒の洗浄或いは乾燥工程が含まれて、工程の経済性が低くなるという問題を有する。また、ウェットオンドライ工程で行う場合、コーティングの時、単位面積当たりコーティング重量を調節しなければならないので、このような場合、前リチウム化量(pre-lithiation dosage)を低減するのに限界があり、これを高めると、加圧条件が必要となるため、これを含むセパレータの変形が生ずる可能性があるという問題点がある。
【0074】
また、前記のように、ウェットオンドライ工程で行う場合、不均一なセパレータの細孔(pore)により、コーティング組成物が浸透して、細孔詰まりなどの問題が発生する可能性があり、また、前リチウム化の完了時にも、電極の表面に未反応のリチウムが相当量残留するという問題が発生する。
【0075】
しかしながら、本出願に係る転写工程は、ドライオンドライ(dry on dry)工程を含んで、前記のような問題点を解決することができ、特に、リチウム金属層の蒸着厚さを所望の範囲で正確に調節することができて、後の負極または正極の前リチウム化量(pre-lithiation dosage)を非常に正確に調節して、負極または正極の上部にリチウム金属層がほとんど残らないように調節することができるという特徴を有する。
【0076】
本出願の一実施態様において、前記電極組立体の製造方法は、負極と正極との間に前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階を含む。
【0077】
すなわち、前記のような段階によって、負極上の負極活物質層または正極上の正極活物質層とリチウム金属層が対向して組み立てられる。
【0078】
本出願の一実施態様において、前記負極と正極との間に前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、電極組立体を形成する段階は、負極集電体層または正極集電体層および前記負極集電体層または正極集電体層の一面または両面に備えられた負極活物質層または正極活物質層を形成する段階;および前記負極活物質層または正極活物質層の一面と前記電極組立体の前記表面保護層の一面を積層、加圧積層または巻取する方法のいずれか一つの方法によって、電極組立体を形成する段階;を含んでもよい。
【0079】
本出願の一実施態様において、前記積層方法は、電極とセパレータを加圧しないでそのまま積み重ねながら電極組立体を製造する方法を意味し、前記加圧積層方法は、加圧条件下でセパレータと電極をラミネーションして積層したり、セパレータと電極を積層した後に電極組立体を加圧したりする方法などを意味する。前記巻取する方法とは、ロール状に巻く方法を意味し、特定の方法に限定されない。
【0080】
また、本出願の一実施態様において、前記負極と正極との間に前記負極および正極から選択された1つの電極と前記表面保護層が対向するようにセパレータを位置させて、組立体を形成する段階から電極の前リチウム化が行われてもよく、或いは電池組立段階で、電解質を注液した後に前リチウム化が行われてもよい。すなわち、本出願の一実施態様において、前記負極または正極のいずれでも前リチウム化が行われてもよく、乾式前リチウム化(dry prelithiation)或いは電解質注液後の湿式前リチウム化(wet prelithiation)が行われてもよい。
【0081】
本出願の一実施態様による負極の前リチウム化の進行時に負極に導入されたリチウムによって負極の初期充電容量が低くなりながら、負極の初期不可逆容量が減少し、本出願の一実施態様による正極の前リチウム化の進行時に、正極に含まれたリチウムの量が多くなるにつれて、正極の初期充電容量が高くなりながら負極の不可逆容量を補償するので、前リチウム化の程度によって電池のエネルギー密度或いは寿命性能が向上される。これは、前リチウム化が行われていない負極または正極を用いた電池に比べて、電池の性能が優れるということを意味する。
【0082】
本出願の一実施態様において、負極集電体層、および前記負極集電体層の一面または両面上の負極活物質層を含む負極を形成する段階が含まれてもよい。
【0083】
前記段階は、リチウム二次電池用負極を積層する工程で、負極集電体層、および前記負極集電体層の一面または両面に負極活物質層を形成する段階は、負極活物質層組成物を含む負極スラリーを前記負極集電体層の一面または両面にコーティングする段階を含み、前記負極活物質層組成物は、負極活物質、負極導電材、および負極バインダーからなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0084】
本出願の一実施態様において、前記負極集電体層は、一般的に、1μm~100μmの厚さを有する。このような負極集電体層は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0085】
本出願の一実施態様において、前記負極集電体層の厚さは、1μm以上100μm以下であり、前記負極活物質層の厚さは、20μm以上500μm以下であってもよい。
【0086】
ただし、厚さは用いられる負極の種類および用途によって多様に変形してもよく、これに限定されない。
【0087】
本出願の一実施態様において、前記負極スラリーは、負極活物質層組成物、およびスラリー溶媒を含んでもよい。
【0088】
本出願の一実施態様において、前記負極スラリーの固形分の含量は、5%以上40%以下を満たしてもよい。
【0089】
また他の一実施態様において、前記負極スラリーの固形分の含量は、5%以上40%以下、好ましくは、7%以上35%以下、より好ましくは、10%以上30%以下の範囲を満たしてもよい。
【0090】
前記負極スラリーの固形分の含量とは、前記負極スラリー内に含まれる負極活物質層組成物の含量を意味してもよく、負極スラリー100重量部を基準として、前記負極活物質層組成物の含量を意味してもよい。
【0091】
前記負極スラリーの固形分の含量が前記の範囲を満たす場合、負極活物質層の形成時に、粘度が適切で、負極活物質層組成物の粒子のケーキング(caking)現象を最小化して、負極活物質層を効率的に形成することができるという特徴を有する。
【0092】
本出願の一実施態様において、前記スラリー溶媒は、負極活物質層組成物を溶解することができれば、これに限定されないが、具体的には、蒸留水を用いてもよい。
【0093】
本出願の一実施態様による負極は、負極集電体層上に前記負極スラリーをコーティングおよび乾燥して形成してもよい。
【0094】
前記乾燥段階によって、前記負極スラリー内のスラリー溶媒を乾燥させることができる。
【0095】
本出願の一実施態様において、前記負極活物質層組成物は、負極活物質、負極導電材、および負極バインダーからなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0096】
本出願の一実施態様において、前記負極活物質は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si粒子(SiO(x=0))、SiO(0<x<2)、Si/C、およびSi合金からなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0097】
リチウム二次電池の充放電反応において、充電時には、正極から放出されたリチウムが負極に挿入され、放電時には、負極から脱離されて再び正極へと戻るが、シリコン系負極活物質の場合は、体積変化および表面副反応が深刻で、初期充電時に、負極に挿入されたリチウムの量の多くは再び正極へと戻ることができない。したがって、初期不可逆容量が大きくなるという問題が発生する。初期不可逆容量が大きくなると、電池容量とサイクルが急激に減少するという問題が発生する。
【0098】
本発明の場合、前記のような問題点を解決するために、リチウム二次電池の負極を前リチウム化して初期不可逆容量問題を解決し、具体的には、前リチウム化工程において、リチウム転写工程を行う時、転写対象がセパレータに形成されて、負極に容易に転写され、また、負極活物質層内のリチウムが均一に前リチウム化されることができるという特徴を有する。
【0099】
また、本発明の場合、容量性能の向上のために、シリコン系活物質を負極活物質として用いながらも、体積膨脹による導電性経路維持および導電材、バインダー、活物質の結合維持の問題点を解消するために、特定条件のバインダーおよびバインダーに結合された導電材複合体を用いて従来の問題点を解決した。
【0100】
一方、本発明の前記シリコン系活物質の平均粒径(D50)は、5μm~10μmであってもよく、具体的には、5.5μm~8μmであってもよく、より具体的には、6μm~7μmであってもよい。前記平均粒径が前記範囲に含まれる場合、粒子の比表面積が適切な範囲で含まれ、負極スラリーの粘度が適正範囲に形成される。これによって、負極スラリーを構成する粒子の分散が円滑になる。また、シリコン系活物質の大きさが前記範囲の下限値以上の値を有することで、負極スラリー内で導電材とバインダーからなる複合体によって、シリコン粒子、導電材の接触面積が優れて、導電ネットワークが持続される可能性が高くなって、容量維持率が増加される。一方、前記平均粒径が前記範囲を満たす場合、大きすぎるシリコン粒子が排除されて、負極の表面が円滑に形成され、これによって、充放電時に、電流密度の不均一現象を防止することができる。
【0101】
本出願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、通常特徴的なBET表面積を有する。シリコン系活物質のBET表面積は、好ましくは、0.01m/g~150.0m/g、より好ましくは、0.1m/g~100.0m/g、特に好ましくは、0.2m/g~80.0m/g、最も好ましくは、0.2m/g~18.0m/gである。BET表面積は(窒素を用いて)DIN 66131に従って測定される。
【0102】
本出願の一実施態様において、シリコン系活物質は、例えば結晶または非晶質形態で存在してもよく、好ましくは、多孔性ではない。シリコン粒子は、好ましくは、球状または破片状の粒子である。代替として、シリコン粒子は繊維構造を有してもよく、またはシリコン含有の薄膜もしくは被膜の形態で存在してもよいが、それほど好ましくない。
【0103】
本出願に係る負極組成物は、容量が顕著に高いシリコン系活物質を前記範囲で用いても充放電過程で体積膨張率を制御することができる特定の導電材およびバインダーを用いて、前記範囲を含んでも負極の性能を低下させず、充電および放電での出力特性に優れるという特徴を有する。
【0104】
本出願の一実施態様において、前記シリコン系活物質は、非球形形状を有してもよく、その球形化度は、例えば、0.9以下、例えば、0.7~0.9、例えば、0.8~0.9、例えば、0.85~0.9である。
【0105】
本出願において、前記球形度(circularity)は、下記式1で決定され、Aは面積であり、Pは境界線である。
【0106】
[式1]
4πA/P
【0107】
従来には、負極活物質として黒鉛系化合物のみを用いることが一般的であったが、最近では高容量電池に対する需要が高くなるにつれて、容量を高めるために、シリコン系活物質を混合して使用しようとする試みが増えている。ただし、シリコン系活物質の場合、充/放電過程で体積が急激に膨脹して、負極活物質層内に形成された導電性経路を毀損させて、電池の性能を却って低下させるという限界が存在し、シリコン系活物質と一緒に用いられる負極導電材の種類が重要である。
【0108】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材は、点状導電材、面状導電材、および線状導電材からなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0109】
本出願の一実施態様において、前記点状導電材は、負極に導電性を向上させるために用いられることができ、化学的変化を誘発せずに、導電性を有するものが好ましい。具体的には、前記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、導電性纎維、フルオロカーボン、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化チタン、およびポリフェニレン誘導体からなる群より選択された少なくとも1種であってもよく、好ましくは、高い導電性を具現し、分散性に優れるという側面でカーボンブラックを含んでもよい。
【0110】
本出願の一実施態様において、前記点状導電材は、BET比表面積が40m/g以上70m/g以下であってもよく、好ましくは、45m/g以上65m/g以下、より好ましくは、50m/g以上60m/g以下であってもよい。
【0111】
本出願の一実施態様において、前記点状導電材の粒径は10nm~100nmであってもよく、好ましくは、20nm~90nm、より好ましくは、40nm~60nmであってもよい。
【0112】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材は、面状導電材を含んでもよい。
【0113】
前記面状導電材は、負極内でシリコン粒子の間の面接触を増加させて導電性を改善し、同時に体積膨脹による導電性経路の断絶を抑制する役割を果たすことができ、バルク(bulk)型導電材または板状導電材を含む概念で用いられる。
【0114】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材は、板状黒鉛、グラフェン、グラフェンオキサイド、および黒鉛フレークからなる群より選択される少なくともいずれか一つを含んでもよく、好ましくは、板状黒鉛であってもよい。
【0115】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材の平均粒径(D50)は、2μm~7μmであってもよく、具体的には、3μm~6μmであってもよく、より具体的には、4μm~5μmであってもよい。前記の範囲を満たす場合、粒径が十分であるため、負極スラリーの粘度が上昇し過ぎないようにしながらも、分散が容易になる。したがって、同じ設備と時間を用いて分散させる時に分散効果に優れる。
【0116】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材は、D10が0.5μm以上1.5μm以下であり、D50が2.5μm以上3.5μm以下であり、D90が7.0μm以上15.0μm以下である、負極組成物を提供する。
【0117】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積の高い高比表面積の面状導電材;または低比表面積の面状導電材を用いてもよい。
【0118】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材として、高比表面の面状導電材;または低比表面積の面状導電材を制限なく用いてもよいが、特に、本出願に係る面状導電材は、分散の影響を電極性能である程度受ける場合があって、分散に問題が発生しない低比表面積の面状導電材を用いることが特に好ましい。
【0119】
本出願の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積が1m/g以上であってもよい。
【0120】
また他の一実施態様において、前記面状導電材は、BET比表面積が1m/g以上500m/g以下であってもよく、好ましくは、5m/g以上300m/g以下、より好ましくは、5m/g以上250m/g以下であってもよい。
【0121】
また他の一実施態様において、前記面状導電材は、高比表面の面状導電材であり、BET比表面積が50m/g以上500m/g以下、好ましくは、80m/g以上300m/g以下、より好ましくは、100m/g以上300m/g以下の範囲を満たしてもよい。
【0122】
また他の一実施態様において、前記面状導電材は、低比表面積の面状導電材であり、BET比表面積が1m/g以上40m/g以下、好ましくは、5m/g以上30m/g以下、より好ましくは、5m/g以上25m/g以下の範囲を満たしてもよい。
【0123】
その他に、導電材としては、カーボンナノチューブなどの線状導電材があり得る。カーボンナノチューブは、バンドル型カーボンナノチューブであってもよい。前記バンドル型カーボンナノチューブは、複数のカーボンナノチューブ単位体を含んでもよい。具体的には、ここで、『バンドル型(bundle type)』とは、他に言及されない限り、複数個のカーボンナノチューブ単位体がカーボンナノチューブ単位体の長手方向の軸が実質的に同じ配向で平行に配列され、もしくは捻られた束(bundle)或いはロープ(rope)状の2次形状を指す。前記カーボンナノチューブ単位体は、黒鉛シート(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダ状を有し、sp2結合構造を有する。この際、前記黒鉛シートが巻かれる角度および構造に応じて導体または半導体の特性を示すことができる。前記バンドル型カーボンナノチューブは、エンタングル型(entangled type)カーボンナノチューブに比べて、負極の製造時に均一に分散されることができ、負極内の導電性ネットワークを円滑に形成して、負極の導電性が改善されることができる。
【0124】
本出願の一実施態様において、前記線状導電材は、SWCNTであってもよい。
【0125】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材は、面状導電材、および線状導電材を含む、リチウム二次電池用負極を提供する。
【0126】
前記のような点状導電材を用いない場合、負極導電材として線状および面状導電材を含ませて、本願発明の二次電池において出力特性を向上させることができる。
【0127】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材は、前記負極活物質層組成物100重量部を基準として、10重量部以上40重量部以下であってもよい。
【0128】
また他の一実施態様において、前記負極導電材は、前記負極活物質層組成物100重量部を基準として、10重量部以上40重量部以下、好ましくは、10重量部以上30重量部以下、より好ましくは、15重量部以上25重量部以下含まれてもよい。
【0129】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材100重量部を基準として、前記面状導電材は90重量部以上99.9重量部以下、および前記線状導電材は0.1重量部以上10重量部以下であってもよい。
【0130】
また他の一実施態様において、前記負極導電材100重量部を基準として、前記面状導電材は90重量部~99.9重量部、好ましくは、93重量部~99.9重量部、より好ましくは、95重量部~99.9重量部含まれてもよい。
【0131】
また他の一実施態様において、前記負極導電材100重量部を基準として、前記線状導電材は0.1重量部~10重量部、好ましくは、0.1重量部~7重量部、より好ましくは、0.1重量部~5重量部含まれてもよい。
【0132】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材は、線状導電材、および面状導電材を含み、前記線状導電材:面状導電材の比率は、0.01:1~0.1:1を満たしてもよい。
【0133】
本出願の一実施態様において、前記線状導電材:面状導電材の比率は、0.1:1を満たしてもよい。
【0134】
本出願の一実施態様において、前記負極導電材が線状導電材および面状導電材を含み、それぞれ前記組成および比率を満たすことによって、従来のリチウム二次電池の寿命特性には大きな影響を与えず、充電および放電が可能なポイントが多くなって、高いCレート(C-rate)で出力特性が優れるという特徴を有する。
【0135】
本出願に係る負極導電材の場合、正極に適用される正極導電材とは全く別途の構成を有する。すなわち、本出願に係る負極導電材の場合、充電および放電によって、電極の体積膨脹が非常に大きいシリコン系活物質の間の接点を制御する役割を果たすもので、正極導電材は、圧延される時に、緩衝作用のバッファの役割を果たしながら、一部導電性を付与する役割をし、本願発明の負極導電材とはその構成および役割が全く異なる。
【0136】
また、本出願に係る負極導電材は、シリコン系活物質に適用されるもので、黒鉛系活物質に適用される導電材とは全く異なる構成を有する。すなわち、黒鉛系活物質を有する電極に用いられる導電材は、単純に活物質に比べて小さい粒子を有するため、出力特性の向上と一部の導電性を付与する特性を有するもので、本願発明のように、シリコン系活物質とともに適用される負極導電材とは構成および役割が全く異なる。
【0137】
本出願の一実施態様において、前記負極バインダーは、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン―プロピレンージエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、およびこれらの水素をLi、NaまたはCaなどで置換した物質からなる群より選択される少なくともいずれか一つを含んでもよく、またこれらの多様な共重合体を含んでもよい。
【0138】
本出願の一実施態様による負極バインダーは、シリコン系活物質の体積膨脹および緩和において、負極構造の捻れ、構造の変形を防止するために、負極活物質および負極導電材を制御する役割をするもので、前記の役割を満たす場合、通常のバインダーを全て適用することができ、具体的には、水系バインダーを用いてもよく、さらに具体的には、PAM系バインダーを用いてもよい。
【0139】
本出願の一実施態様において、前記負極活物質層組成物100重量部を基準として、前記負極バインダーを30重量部以下、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは、20重量部以下含んでもよく、5重量部以上10重量部以上含んでもよい。
【0140】
本出願の一実施態様において、前記負極活物質層を前処理する段階をさらに含んでもよい。
【0141】
この時、前記負極活物質層を前処理する段階は、前記のセパレータの前処理段階と同じ方法が適用されてもよい。
【0142】
本出願の一実施態様において、正極集電体層および前記正極集電体の一面または両面上の正極活物質層を含む正極を形成する段階を含んでもよい。
【0143】
前記段階は、リチウム二次電池用正極を積層する工程で、正極集電体層、および前記正極集電体層の一面または両面に正極活物質層を形成する段階は、正極活物質層組成物を含む正極スラリーを前記正極集電体層の一面または両面にコーティングする段階を含んでもよい。
【0144】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有してもよく、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0145】
前記正極活物層組成物は、通常用いられる正極活物質であってもよい。具体的には、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2-c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-c2c2(ここで、Mは、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、およびGaからなる群より選択された少なくともいずれか一つで、0.01≦c2≦0.3を満たす)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-c3c3(ここで、Mは、Co、Ni、Fe、Cr、Zn、およびTaからなる群より選択された少なくともいずれか一つで、0.01≦c3≦0.1を満たす)、化学式LiM1-c4M’c4PO(ここで、M:遷移金属(Transition metal)、M’は、Co、Ni、Fe、Cr、Zn、およびTaからなる群より選択された少なくともいずれか一つで、0.01≦c4≦0.1を満たす)またはLiMnMO(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnからなる群より選択された少なくともいずれか一つである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどを挙げることができるが、これらに限定されるのではない。前記正極は、Li金属(Li-metal)であってもよい。
【0146】
本出願の一実施態様において、前記正極活物質層組成物は、LiNiCoMn(x+y+z=1);LiNiCoMnAl(a+b+c+d=1);LiMn;LiNi0.5Mn1.5;およびLiMFePO(M:遷移金属(Transition metal)、x+y=1)からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0147】
前記正極活物質層は、上述した正極活物質層組成物とともに、正極導電材および正極バインダーを含んでもよい。
【0148】
このとき、前記正極導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学的変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0149】
また、前記正極バインダーは、正極活物質粒子の間の付着、および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。
【0150】
本出願の一実施態様において、セパレータでは負極と正極とを分離してリチウムイオンの移動通路を提供し、通常、二次電池でセパレータに用いられるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解質含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリルレート共重合体などのようなポリオレフイン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス纎維、ポリエチレンテレフタレート纎維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に、単層または多層構造で用いられてもよい。
【0151】
本出願の一実施態様において、前記電極組立体の製造方法は、前記組立体を加圧して、前記負極または正極を前リチウム化する段階を含んでもよい。
【0152】
前記段階は、負極または正極を前リチウム化する工程を意味してもよい。本出願の一実施態様において、前記負極または正極を前リチウム化する段階は、60℃~80℃の温度条件で、20kgf/cm~60kgf/cmの圧力で加圧する、電極組立体の製造方法を提供する。
【0153】
本出願の一実施態様において、本出願に係る製造方法によって製造された電極組立体を提供する。
【0154】
また、本出願は、電池外装材、前記電池外装材の内部に備えられた本出願に係る電極組立体、および電解質を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0155】
前記電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
具体的に、前記電解質は、非水系有機溶媒と金属塩を含んでもよい。
【0157】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が用いられてよい。
【0158】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち、環状カーボネートであるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高くて、リチウム塩をよく解離させるので、好適に用いられることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適切な比率で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解質を製造することができるので、より好適に用いられることができる。
【0159】
前記金属塩は、リチウム塩を用いてもよく、前記リチウム塩は、前記非水電解液に溶解されやすい物質であって、例えば、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群より選択される1種以上を用いてもよい。
【0160】
前記電解質には、前記電解質の構成成分以外にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0161】
本発明の一実施態様は、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、およびこれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュールおよび電池パックは、高容量、高いレート特性およびサイクル特性を有する前記二次電池を含むため、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源に用いられてよい。
【実施例
【0162】
以下、本発明の理解を助けるために、好ましい実施例を提示するが、該実施例は本記載を例示するだけのものであり、本記載の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者において明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然である。
【0163】
製造例
転写積層体の製造
ポリエチレンテレフタレート基材層上に表面保護層としてアクリル系樹脂が1μm水準でコーティングされた積層体を用意した。前記積層体の表面保護層上に熱蒸着(thermal evaporation)方式でリチウム金属層を蒸着させて、6μm厚さのリチウム金属層を形成して、転写積層体を製造した。
【0164】
セパレータにリチウム転写
セラミックス層で両面コーティングされたPEセパレータ(19μm、PEセパレータ生地:9μm、単面セラミックスコーティング層厚さ:5μm)と、6.2μm厚さに蒸着されたLi/PETフィルムを積層し、400kgfの荷重でロールラミネーション(Roll Lamination)して、PET基材の上のリチウムをセラミックスコーティングセパレータに転写した。この時、ロールラミネーションは常温で実施した。ラミネーション直後にPET基材を除去して、Liが転写されたセパレータを得た(図参照)。
【0165】
正極または負極電極の製造
正極の正極材(NCMA):導電材(MWCNT):バインダー(PVDF-HFP)固形分の比率を96wt%:2wt%:2wt%になるようにし、NMPを溶媒として用いて、正極電極スラリーを製造した。この時、スラリー内固形分の含量は65wt%に調節した。単面コーティング基準面積当たり容量が4.2mAh/cmになるように、アルミニウム集電体(厚さ:15μm)の両面に前記電極スラリーをコーティングし、130℃の真空オーブンで12時間乾燥し、圧延(roll press)して、電極活物質層が両面にコーティングされた電極を製造した。
【0166】
負極の負極材(マイクロンシリコン、D50:3.5μm):導電材(denka black):バインダー(ポリアクリル酸系バインダー)固形分の比率を80wt%:10wt%:10wt%になるようにし、蒸溜水を溶媒として用いて、負極電極スラリーを製造した。この時、スラリー内固形分の含量は25wt%に調節した。単面コーティング基準面積当たり容量が11.9mAh/cmになるように、銅集電体(厚さ:8μm)の両面に前記電極スラリーをコーティングし、130℃の真空オーブンで12時間乾燥し、圧延(roll press)して、電極活物質層が両面にコーティングされた負極電極を製造した。
【0167】
実施例1
前記製造した正極電極と表面保護層/リチウム金属層/セパレータで構成されたリチウム金属層が転写されたセパレータのうち、前記表面保護層と前記正極活物質層が接するように正極を配置し、セパレータの反対面に150μm厚さのリチウムホイルを対極としてコインハーフセルを製作した。
【0168】
電解液としては、1MのLiPFが溶解しているエチレンカーボネート(FEC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)を用いた。初期充放電容量の測定時に、Cレート(C-rate)は0.1Cにし、充電は、上限電圧4.25V、CCCV条件、およびカットオフ(cut-off)電流0.005Cにし、放電は下限電圧3.0V、CC条件で行った。
【0169】
実施例2
前記製造した負極電極と表面保護層/リチウム金属層/セパレータで構成されたリチウム金属層が転写されたセパレータのうち、前記表面保護層と前記負極活物質層が接するように負極を配置し、セパレータの反対面に150μm厚さのリチウムホイルを対極としてコインハーフセルを製作した。電解液としては、前記実施例1と同様に、1MのLiPFが溶解しているエチレンカーボネート(FEC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)を用いた。初期充放電容量の測定時に、Cレート(C-rate)は0.1Cにし、充電は下限電圧0.005V、CCCV条件、およびカットオフ(cut-off)電流0.005Cにし、放電は上限電圧1.5V、CC条件で行った。
【0170】
比較例1
前記実施例1において、セパレータに転写積層体を転写するのではなく、セラミックスコーティングセパレータを用いてコインハーフセルを製作した。この他、正極、リチウム対極、電解質は、実施例1と同じ材料を用い、コインハーフセル評価条件も実施例1と同一である。
【0171】
比較例2
前記実施例2において、セパレータに転写積層体を転写するのではなく、セラミックスコーティングセパレータを用いてコインハーフセルを製作した。この他、負極、リチウム対極、電解質は、実施例2と同じ材料を用い、コインハーフセル評価条件も実施例2と同一である。
【0172】
前記実施例1および比較例1によるコインハーフセルを用いて、初期充放電容量を評価し、その結果を下記表1および図3に示し、前記実施例2および比較例2によるコインハーフセルを用いて初期充放電容量を評価し、その結果を下記表2および図4に示した。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
前記表1および表2で確認できるように、本出願に係る製造方法によって製造された実施例1によるコインハーフセルは、前リチウム化をしない比較例1のコインハーフセルに比べて、初期充電容量が高いことを確認することができ、実施例2によるコインハーフセルは、前リチウム化をしない比較例2のコインハーフセルに比べて、初期充電容量が低いことを確認することができた。
【0176】
これは、表面保護層とリチウム金属層を同時にセパレータに転写することによって、反応性が非常に大きいリチウム金属層が空気中に露出されることを防止し、負極または正極活物質層とリチウム金属層の直接接触を防いで、前リチウム化速度を調節することにより、初期充電容量がよく発現されることを確認することができる。
【0177】
本出願に係る電極組立体の製造方法は、実施例1および実施例2で確認できるように、リチウム金属層を従来のように、負極または正極活物質層の上部に直接転写するのではなく、セパレータの一面にリチウム金属層を転写し、その後、電池組立体の製造時に、負極または正極とラミネートする過程でセパレータと接し、セルの製造時に、電解質を注液した後に前リチウム化が行われる。
【0178】
特に、表面保護層とリチウム金属層を同時にセパレータに転写することによって、リチウム金属層が空気中に露出されることを防止することができ、また、表面保護層とともにセパレータに転写されて、後に前リチウム化を行う時に、負極または正極活物質層と表面保護層が接する構造に形成されて、負極または正極活物質層の上部に前リチウム化速度調節のための別途の層の設置工程が不必要になった。これによって、従来のように、負極または活物質層での前リチウム化速度を容易に調節することができ、バッファ層のような別途の層の設置が不要になって経済的で、前リチウム化を電解質を注液した後に行ってもよいので、発火危険性を低下させることができるという長所がある。
【符号の説明】
【0179】
10 ・・・セパレータ
20 ・・・リチウム金属層
30 ・・・表面保護層
40 ・・・基材層
50 ・・・負極活物質層
60 ・・・負極集電体層
200 ・・・転写積層体
300 ・・・リチウム二次電池用負極
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】