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特表2024-540566残留粒子の少ない圧縮ポリビニルアセタールの製造
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  • 特表-残留粒子の少ない圧縮ポリビニルアセタールの製造 図1
  • 特表-残留粒子の少ない圧縮ポリビニルアセタールの製造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】残留粒子の少ない圧縮ポリビニルアセタールの製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEX
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529679
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082311
(87)【国際公開番号】W WO2023089050
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21208989.0
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン マミー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヤンセン
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA26
4F070DA52
4F070DB09
4F070DC07
4F070DC11
(57)【要約】
本発明は、残留粒子特性が改善されたポリビニルアセタールの圧縮粉末の製造方法、およびセラミックグリーンシート用バインダーとしてのその使用を対象とする。ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、該方法は、a.ポリビニルアセタールを含む原料粉末を圧縮する工程と、b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、c.工程b.の粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、ii.最終圧縮体の所望の粒子径範囲の上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、iii.0μmから最終圧縮体の所望の粒子径範囲の下限までの粒子径範囲を有する微粉画分とを得る工程とを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、前記方法は、
a.前記ポリビニルアセタールを含む原料粉末を圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の前記粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含み、
工程c.で得られた前記微粉画分を、工程a.で使用される前記原料粉末に再利用しない、方法。
【請求項2】
前記原料粉末の200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定した場合に25体積%未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記所望の粒子径範囲の前記下限が、0.5mm以上であり、前記所望の粒子径範囲の前記上限が、4.0mm以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程a.が、ロールミルでのロール圧縮工程を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記微粉画分の200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%超である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、前記方法は、
a.200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である原料粉末を含むポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の前記粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含む、方法。
【請求項7】
前記所望の粒子径範囲の前記下限が、0.5mm以上であり、前記所望の粒子径範囲の前記上限が、4.0mm以下である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、前記方法は、
a.200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である原料粉末を含むポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の前記粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の前記所望の粒子径範囲の前記下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含み、
前記最終圧縮体中の、本明細書に記載の方法で測定した場合の、トルエンとエタノールとの1:1混合物中の2質量%溶液中の粒子径2~500μmの粒子の残留粒子カウント数が、前記原料粉末中の対応する残留粒子カウント数と等しいか、または10%未満だけ高い、方法。
【請求項9】
本明細書に記載の方法で測定した場合の、トルエンとエタノールとの1:1混合物中の2質量%溶液中の粒子径2~500μmの粒子の残留粒子カウント数が300カウント/ml以下である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造されたポリビニルアセタール圧縮体。
【請求項10】
前記残留粒子カウント数が、250カウント/ml以下である、請求項9記載のポリビニルアセタール圧縮体。
【請求項11】
前記200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である、請求項9または10記載のポリビニルアセタール圧縮体。
【請求項12】
前記20~200μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に80体積%超である、請求項9から11までのいずれか1項記載のポリビニルアセタール圧縮体。
【請求項13】
0.5mm以上4.0mm以下の粒子径を有する、請求項9から12までのいずれか1項記載のポリビニルアセタール圧縮体。
【請求項14】
セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体製造用のバインダーとしての、請求項9から12までのいずれか1項記載のポリビニルアセタール圧縮体の使用。
【請求項15】
前記ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラールであるか、またはn-ブチルアルデヒドおよびアセトアルデヒドとの縮合に由来する混合ポリビニルアセタールである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法、請求項9から13までのいずれか1項記載のポリビニルアセタール圧縮体、または請求項14記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留粒子特性が改善されたポリビニルアセタールの圧縮粉末の製造方法、およびセラミックグリーンシート用バインダーとしてのその使用を対象とする。
【0002】
エレクトロニクス産業用のセラミックコンデンサのような材料は、一般に、いわゆるグリーンシート、すなわちセラミック材料を含むフィルム状の薄い成形体を焼結することによって製造される。こうしたグリーンシートの製造のために、有機溶媒中の金属酸化物、可塑剤、分散剤およびバインダーの懸濁液が製造される。この懸濁液はその後、適切な工程(すなわち、ドクターブレード工程)によりキャリアフィルム上に所望の厚さで施与され、溶媒が除去される。このようにして得られるグリーンシートは、クラックがなく、平滑な表面を示し、かつなおもその後の製造工程に必要とされるある程度の弾性を有していなければならない。
【0003】
セラミックグリーンシートの製造には、ポリビニルブチラール(PVB)などのポリビニルアセタールがバインダーとして頻繁に使用されている。このため、独国特許出願公開第4003198号明細書には、残留ポリ酢酸ビニル含量が0~2質量%のPVBをバインダーとして使用したセラミックグリーンフィルム用キャスティングスリップの製造が記載されている。
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、エレクトロニクス産業においてますます重要性を増している。MLCCは、複数の個々のコンデンサを並列に積層し、端子面を介して接触させたものである。電子部品の小型化が進んでいるため、粉末粒子のサイズはナノメートル範囲になることがある。そのため、そこで使用されるセラミックシートの精度向上が製造上求められている。
【0005】
懸濁液の製造に使用されるPVB樹脂は、総じて微粉末の形態で供給される。しかし、このような粉末は、健康上および/または安全上の懸念ゆえに、すべての産業環境で使用できるわけではない。粉末の粒子径によっては、材料を扱う従業員の肺に粒子が容易に吸い込まれる可能性がある。さらに、粉末状の材料は通常、火炎着火後に爆発の危険性を示す。これらの問題を解決するために、顆粒状のPVBが導入されている。例えば、米国特許出願公開第20080203593号明細書には、セラミックグリーンシート用バインダーとして使用されるPVB顆粒の製造が記載されている。しかし、このような顆粒を溶融押出法で製造すると、押出機で使用される高温および高いせん断力により、PVBが部分的に分解する可能性がある。さらに、このような顆粒の溶解速度は、対応する粉末材料に比べて一般的に高く、すなわち、顆粒は溶解が遅い。その理由は、高い表面積を持つ粉末に比べて表面が小さいためである。
【0006】
PVB粉末の圧縮は、高温での工程を伴わないため、粉末状のPVBを使用する際の問題を回避するための非常により穏やかな方法である。加えて、圧縮しても粉末材料の表面の細孔は完全には閉じない。
【0007】
しかし、ポリビニルアセタールの圧縮工程は、しばしば残留粒子の大幅な増加を招くことが判明しており、すなわち、圧縮材料を原料のポリビニルアセタール粉末と比較した場合に、グリーンシート製造に使用される懸濁液の製造に使用される溶媒(混合物)に圧縮体を溶解させた後の残留粒子の大幅な増加を招くことが判明している。MLCCの製造には極めて高純度のバインダーが求められていることから、このような残留粒子は、エレクトロニクス産業においてますます問題となってきている。
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、残留粒子に関する特性が改善されたセラミックグリーンシート用バインダーとしてのポリビニルアセタール圧縮体を提供することであった。さらなる目的は、溶解率の改善、接着性の改善、取扱性の改善、破断伸度の改善、分散効果の改善、環境、健康および安全性への影響の改善、ならびに/またはセラミックグリーンシートの製造および使用におけるより優れた経済的プロファイルをもたらすそのようなバインダーを提供することであった。
【0009】
圧縮は、粉末を緻密化し、圧縮体を形成するために用いられる。このような圧縮体の製造方法の1つに、ローラーコンパクターの使用が挙げられる。この圧縮工程により、いわゆる「フレーク」が生じ、このフレークを、第2の工程で粉砕機で例えばハンマーミルにより砕くことで、様々な粒子径の圧縮材料が得られる。電子産業では一般に、一定の粒子径範囲の圧縮材料が要求されるため、通常は、第3の工程としてふるい分け工程が加えられる。このように、所望の粒子径の圧縮体(以下、「最終圧縮体」と呼ぶ)を得るために、粉砕された材料は分級ふるい分けに供される。
【0010】
最終圧縮体に加え、ふるい分け工程により、約0μmから所望の粒子径範囲の下端までの粒子径を有する圧縮ポリビニルアセタールの画分が得られ、これを、本明細書では以下「微粉画分」と呼ぶ。この画分の量は、形成される圧縮材料の15~25%を占めることがある。したがって、先行技術の圧縮工程では、これらの微粉が原料に再利用されている。
【0011】
程度は低いが、ふるい分け工程では、最終圧縮体の所望の粒子径範囲の上限よりも大きな粒子径を有する粗粉画分も得られる。
【0012】
原料の浪費を避ける理由、ならびに環境および安全上の理由から、ポリビニルアセタールおよびその他の材料に使用されるコンパクター/粉砕機/ふるい分けユニットは、塵埃密閉ハウジングで構成されているため、生成物や原料の塵埃がハウジングから漏れることはない。塵埃密閉ハウジング内で発生した塵埃は、吸引によって回収され、工程全体の収率を向上させるために原料に再利用される。この画分を、本明細書では以下で「粉塵」と呼ぶこととする。
【0013】
本発明者らは、粉塵や粗粉画分を原料に再利用しても、最終圧縮体の品質が劣化することはないが、ふるい分けで生じた微粉を再利用すると、最終圧縮体中の残留粒子の数が大幅に増加することを見出した。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、該方法は、
a.ポリビニルアセタールを含む原料粉末を圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の所望の粒子径範囲の上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の所望の粒子径範囲の下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含み、
工程c.で得られた微粉画分を、工程a.で使用される原料粉末に再利用しない、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】原料粉末、ふるい分け工程で生じた微粉画分、粉塵、ならびに微粉画分を再利用した場合および再利用しない場合の最終圧縮体の残留粒子の測定結果を示す(すべて溶液中)。
図2】原料粉末、粉塵、および微粉画分の粒子径分布の測定結果を示す。
【0016】
図1および図2からわかるように、残留粒子カウント数は、粒子径分布と連動しているように見える。驚くべきことに、ふるい分け工程で生じた微粉画分では、粒子径200~2000μmの粒子が急増し、この範囲の粒子数は、約600μmで最大となる。この増加が、溶解特性/溶解性の悪化、ひいては残留粒子カウント数の大幅な増加の原因となっているようである。
【0017】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、原料粉末の200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージは、後述の方法で測定した場合に25体積%未満である。より好ましくは、そのパーセンテージは、20体積%未満であり、さらにより好ましくは15体積%未満であり、最も好ましくは15体積%未満であり、特に10体積%未満である。
【0018】
好ましくは、所望の粒子径範囲の下限は、0.5mm以上であり、所望の粒子径範囲の上限は、4.0mm以下である。また好ましくは、所望の粒子径範囲は、0.75~3.5mmである。
【0019】
また好ましくは、微粉画分の200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージは、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%超である。より好ましくは、そのパーセンテージは、30%超、さらにより好ましくは35%超である。
【0020】
好ましくは、圧縮体のポリビニルアセタールは、DIN ISO 16014 1:2019-05に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合に20,000g/mol以上の分子量を有する。
【0021】
分子量は、DIN ISO 16014 1:2019-05に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーで測定される。好ましくは、分子量は、40,000g/mol以上であり、より好ましくは50,000g/mol以上である。また好ましくは、分子量は、200,000g/mol以下であり、より好ましくは175,000g/mol以下であり、最も好ましくは150,000g/mol以下であり、特に100,000g/mol以下である。
【0022】
本明細書で使用される「圧縮体」という用語は、溶媒を使用したり粉末を溶融させたりすることなく、乾燥粉末をプレス加工する圧縮工程を経たポリビニルアセタールの圧縮粉末を示すものとする。このような圧縮工程は、溶液やスラリーを使用する湿式造粒や、ポリビニルアセタール材料の溶融物を使用する押出工程とは対照的に、乾式造粒とも呼ばれる。
【0023】
好ましくは、アセタール基は、個々に1~7個の炭素原子を有し、すなわち、アセタール基は、1~7個の炭素原子を有するアルデヒドとの縮合反応に由来する。より好ましくは、アセタール基は、メタナール(ホルムアルデヒド)、アセトアルデヒド、n-プロパナール(プロピオンアルデヒド)、n-ブタナール(ブチルアルデヒド)、イソブタナール(2-メチル-1-プロパナール、イソブチルアルデヒド)、n-ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソペンタナール(3-メチル-1-ブタナール)、sec-ペンタナール(2-メチル-1-ブタナール)、tert-ペンタナール(2,2,ジメチル-1-プロパナール)、n-ヘキサナール(カプロンアルデヒド)、イソヘキサナール(2-メチル-1-ペンタナール、3-メチル-1-ペンタナール、4-メチル-1-ペンタナール)、2,2-ジメチル-1-ブタナール、2,3-ジメチル-1-ブタナール、3,3-ジメチル-1-ブタナール、2-エチル-1-ブタナール、n-ヘプタナール、2-メチル-1-ヘキサナール、3-メチル-1-ヘキサナール、4-メチル-1-ヘキサナール、5-メチル-1-ヘキサナール、2,2-ジメチル-1-ペンタナール、3,3-ジメチル-1-ペンタナール、4,4-ジメチル-1-ペンタナール、2,3-ジメチル-1-ペンタナール、2,4-ジメチル-1-ペンタナール、3,4-ジメチル-1-ペンタナール、2-エチル-1-ペンタナール、2-エチル-2-メチル-1-ブタナール、2-エチル-3-メチル-1-ブタナール、3-エチル-2-メチル-1-ブタナール、シクロヘキシルアルデヒドおよびベンズアルデヒドからなるリストに由来する。
【0024】
より好ましくは、アセタール基は、イソブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよび/またはn-ブチルアルデヒドとの縮合反応に由来する。最も好ましくは、ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールであるか、またはn-ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとの縮合に由来する混合ポリビニルアセタールである。
【0025】
本発明の本実施形態で使用されるポリビニルアセタールの製造方法は特に限定されないが、酸性条件下でポリビニルアルコール溶液にアルデヒドを添加することによりアセタール化反応に供するという方法により製造することができる。
【0026】
好ましくは、本発明で使用されるポリビニルアセタールのアセタール化度は、50mol%以上90mol%未満であり、より好ましくはアセタール化度の下限は、60mol%超、さらにより好ましくは70mol%超、最も好ましくは80mol%超である。さらに、アセタール化度の上限は、より好ましくは90mol%以下であり、最も好ましくは85mol%以下である。
【0027】
好ましくは、本発明のポリビニルアセタール中のビニルアルコール単位のパーセンテージは、樹脂を構成する全モノマー単位に対して10~25mol%、より好ましくは15~20mol%である。
【0028】
ポリビニルアセタールのビニルアルコール含量および酢酸ビニル含量は、DIN ISO 3681(アセテート含量)およびDIN ISO 53240(PVA含量)に準拠して求めた。
【0029】
好ましくは、圧縮体は、0.5~5mm、より好ましくは1~3mmのメジアン粒子径を有する。粒子径は、規定量の粒子を用い、光学検査によって、粒子が球形の場合には直径を、粒子が非球形の場合には最長横軸を測定して求められる。
【0030】
第2の態様において、本発明は、ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、該方法は、
a.200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である原料粉末を含むポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の所望の粒子径範囲の上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の所望の粒子径範囲の下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含む、方法に関する。
【0031】
第3の態様において、本発明は、ポリビニルアセタールを含む最終圧縮体の製造方法であって、該方法は、
a.200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージが、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である原料粉末を含むポリビニルアセタールを圧縮する工程と、
b.工程a.の圧縮ポリビニルアセタールを粉砕して、粉砕された圧縮ポリビニルアセタールを製造する工程と、
c.工程b.の粉砕された圧縮ポリビニルアセタールをふるい分けして、
i.所望の粒子径範囲の下限および上限を有する最終圧縮体の画分と、
ii.最終圧縮体の所望の粒子径範囲の上限と同等の下限を有する粒子径範囲を有する粗粉画分と、
iii.0μmから最終圧縮体の所望の粒子径範囲の下限までの粒子径範囲を有する微粉画分と
を得る工程と
を含み、
最終圧縮体中の、本明細書に記載の方法で測定した場合の、トルエンとエタノールとの1:1混合物中の2質量%溶液中の粒子径2~500μmの粒子の残留粒子カウント数が、原料粉末中の対応する残留粒子カウント数と等しいか、または10%未満だけ高い、方法に関する。
【0032】
第4の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法で測定した場合の、トルエンとエタノールとの1:1混合物中の2質量%溶液中の粒子径2~500μmの粒子の残留粒子カウント数が300カウント/ml以下であるポリビニルアセタール圧縮体に関する。好ましくは、残留粒子カウント数は、250カウント/ml以下、より好ましくは200カウント/ml以下である。
【0033】
また好ましくは、第4の態様において、200~2000μmの範囲にある粒子のパーセンテージは、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に25体積%未満である。
【0034】
また好ましくは、ポリビニルアセタール圧縮体は、本明細書に記載の方法で測定された体積密度のパーセンテージで表した場合に80体積%超、より好ましくは90体積%以上、最も好ましくは95体積%以上の、20~200μmの範囲にある粒子のパーセンテージを有する。
【0035】
また好ましくは、ポリビニルアセタール圧縮体は、0.5mm以上4.0mm以下、より好ましくは1.0~3.0mmの粒子径を有する。
【0036】
圧縮体は、従来技術で知られている工程、すなわち、液体溶液を使用せずに圧縮体を形成する工程によって製造することができる。このような工程は、圧縮される成分が水分や熱に敏感な場合に優れている。圧縮は、粉末を緻密化し、圧縮体を形成するために用いられる。この工程は総じて、スラッギングツールまたはローラーコンパクターマシンを用いて行われる。スラッギング法では、通常は「フレーク」が得られ、これは典型的には直径25mm、厚さ10~15mmである。フレークを砕くのに理想的であるのは、ハンマーミルである。圧縮材料を分級ふるい分けによってさらに処理して、所望の粒子径を有する圧縮体を得ることができる。
【0037】
好ましくは、圧縮体の製造工程ではローラーコンパクターが使用される。この装置では、粉末を2つの逆転ローラーに通して加圧し、圧縮シートを形成する。このシートは脆く、容易に砕けてフレークとなる。このフレークを砕いて圧縮体にするには慎重な処理が必要であり、その後、この圧縮体を希望のサイズに粉砕することができる。ローラー圧縮装置は、適切な緻密化を達成するために、幅広い圧力およびロールタイプを提供する。
【0038】
本発明の別の態様は、セラミックグリーンシートまたはセラミック成形体製造用のバインダーとしての本発明のポリビニルアセタール圧縮体の使用に関する。
【0039】
こうしたグリーンシートの製造のために、有機溶媒中の金属酸化物、可塑剤、分散剤およびバインダーの懸濁液が製造される。
【0040】
無機顔料は、常誘電体原料または強誘電体原料の細かく粉砕された粒状物から選択することができ、二酸化チタン(ルチル)であって、好ましくは亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、タンタル、コバルトおよび/またはストロンチウムの添加物によって修飾されたもの、ならびにMgNb、ZnNb、MgTa、ZnTa、(ZnMg)TiO、(ZrSn)TiO、BaTiOおよびBaTi20から選択される化合物が挙げられる。無機顔料の平均粒径は、好ましくは約0.01~1μmである。
【0041】
有機溶媒は、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール化合物、さらに好ましくはそれらの混合物から選択することができる。最も好ましくは、有機溶媒は、エタノールとトルエンの混合物である。
【0042】
適切な分散剤としては、魚油、リン酸エステル、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する官能性ポリマー、例えばNOF America Cooperationから市販されているMALIALIM(商標)シリーズが挙げられる。
【0043】
本発明によるバインダーに加えて、懸濁液は、特に、セルロース樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂のような他のバインダー;ポリエチレングリコールまたはフタル酸エステルのような可塑剤および/または消泡剤から選択される他の成分を含むことができる。
【0044】
懸濁液組成物の製造方法は特に限定されない。種々の分散方法を用いることができ、例えば、ビーズミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型ミルを用いる方法、粉末状セラミック、分散媒、分散剤、バインダー、可塑剤などを混練する方法;および3本ロールミルを用いる方法を用いることができる。3本ロールミルを用いる方法としては、粉末状無機顔料を分散剤、バインダー、可塑剤などとともに有機溶媒(混合物)に分散させる方法が挙げられる。この混合物を、互いに独立して転動し、その間に小さな間隙を伴って互いに隣接する第1のロールと第2のロールとの間の小さな間隙に通して圧縮および混練し、その後、この混合物を、第2のロールと、転動し、第1のロールと第2のロールとの間の間隙よりも小さな間隙を伴って第2のロールに隣接する第3のロールとの間に通して、さらに圧縮および混練する。
【0045】
好ましくは、粉末状セラミック、分散剤および溶媒(混合物)は、分散剤が粉末状セラミックに吸着されるように予め混合され、分散される。第2の工程では、このようにして形成された混合物にバインダーを添加し、その後、再び混合および分散を行う。
【0046】
これらの工程で製造されるコーティング膜の乾燥膜厚は、0.25~25μmであってもよく、典型的には1~15μmである。
【実施例
【0047】
[ポリビニルアセタールの合成]
ポリビニルブチラール(PVB 1)
粘度19mPas(20℃でDIN 53015に準拠して測定、水溶液中8w/w%)および加水分解度98mol%のポリビニルアルコール100質量部を、90℃に加熱しながら水1000質量部に溶解させた。40℃の温度で、65質量部のn-ブチルアルデヒドを加え、撹拌しながら5℃の温度で、250質量部の20%塩酸を加えた。この混合物を40℃まで加熱した。ポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した後、この混合物をこの温度で48時間撹拌した。室温まで冷却した後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量12.7質量%(19.1mol%)、ポリ酢酸ビニル含量2.3質量%(1.8mol%)のPVBが得られた。
【0048】
混合ポリビニルアセタール(PVB 2)
粘度50mPas(20℃でDIN 53015に準拠して測定、水溶液中8w/w%)および加水分解度99mol%のポリビニルアルコール100質量部を、90℃に加熱しながら水1000質量部に溶解させた。40℃の温度で、200質量部の20%塩酸を加え、12℃の温度で、撹拌しながら、最初に22質量部のアセトアルデヒドを加え、次に30質量部のn-ブチルアルデヒドを加えた。この混合物を40℃まで加熱した。ポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した後、この混合物をこの温度で48時間撹拌した。室温まで冷却した後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量12.5質量%(18.8mol%)、ポリ酢酸ビニル含量1.7質量%(1.3mol%)のPVBが得られた。
【0049】
ポリビニルブチラール(PVB 3)
粘度26mPas(20℃でDIN 53015に準拠して測定、水溶液中4w/w%)および加水分解度99mol%のポリビニルアルコール100質量部を、90℃に加熱しながら水1075質量部に溶解させた。40℃の温度で、57質量部のn-ブチルアルデヒドを加え、10℃の温度で、撹拌しながら75質量部の20%塩酸を加えた。ポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した後、この混合物を70℃まで加熱し、この温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量20.0質量%(28.8mol%)、ポリ酢酸ビニル含量1.4質量%(1mol%)のPVBが得られた。
【0050】
[PVB圧縮体1]
ポリビニルブチラールPVB 3を、温度45℃で線圧15kN/cmのローラーコンパクターを用いて、2つの逆転水冷ローラーの間に引き込んだ。その後、得られた0.5~1.0cm厚のシートを砕き、次いで造粒機を用いてさらにサイズを小さくし、分級ふるい分け後のメジアン粒子径が1~3mmである圧縮体を得た。
【0051】
[粒子カウント数]
2gのPVB圧縮体を、傾斜/回転ミキサーを用いて98gの溶媒混合物(エタノールとトルエンとの1:1混合物)に溶解させた。24時間後、50mLのサンプルを採取し、Soliton GmbHのAccusizer(商標)780を用いたレーザーフォーカスによる単一粒子測定により分析した。2~500μmの範囲のサイズの粒子のみをカウントした。
【0052】
図1は、粒子カウント数分析の結果を示す。原料粉末および粉塵が約300カウント/mlの値を示すのに対し、微粉画分は約600カウント/mlと、大幅により高い値を示している。このように、微粉を再利用していない最終圧縮体の残留粒子カウント数は、微粉を再利用した最終圧縮体と比較して、粒子カウント数において大幅に改善された挙動を示す。
【0053】
[粒子径分布]
すべての粉末サンプルの粒子径を、Mastersizer 3000(Malvern Panalytical社製)を用いてレーザー回折法により0.015~144度の角度範囲(0.01~3500μmの粒子径範囲に相当する)で測定した。
【0054】
図2は、粒子径分布を示す。原料粉末および粉塵は、それぞれ200~2000μmの範囲では粒子カウント数がないかまたは少ないが、微粉画分は、600μm付近に大きなピークを示す。この粒子径の第2の様式が、溶解特性の低下の原因であると考えられる。
【0055】
【表1】
図1
図2
【国際調査報告】