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特表2024-540570IL-15突然変異体融合タンパク質医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】IL-15突然変異体融合タンパク質医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20241024BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20241024BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241024BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K38/20
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
A61K47/68
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/14
A61K9/08
A61K9/19
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529692
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022132510
(87)【国際公開番号】W WO2023088354
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202111375146.0
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111384988.2
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523079059
【氏名又は名称】山▲東▼先声生物制▲薬▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Simcere Biopharmaceutical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.1,Heilongjiang Road,Yantai Economic and Technological Development Zone,Yantai,Shandong 264006,China
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 シンシン
(72)【発明者】
【氏名】胡 建中
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲暁▼峰
(72)【発明者】
【氏名】曹 卓▲暁▼
(72)【発明者】
【氏名】唐 任宏
(72)【発明者】
【氏名】任 晋生
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC27
4C076DD09E
4C076DD23Q
4C076DD26Z
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD46E
4C076DD51Q
4C076DD51Z
4C076DD67Q
4C076EE23E
4C076EE59
4C076FF15
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C076GG07
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA12
4C084MA65
4C084NA03
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
IL-15突然変異体融合タンパク質製剤である。具体的には、IL-15突然変異体融合タンパク質、緩衝液、タンパク質安定剤及び界面活性剤を含む、IL-15突然変異体融合タンパク質医薬組成物を提供する。上記医薬組成物は、製品の長期貯蔵及び輸送中にIL-15突然変異体融合タンパク質の安定性を維持し、ひいては医薬品の安定性、安全性及び有効性を保証することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-15突然変異体融合タンパク質、緩衝液、タンパク質安定剤及び界面活性剤を含む、ことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質は、以下のドメイン:
(1)IL-15突然変異体、
(2)IL-15突然変異体と融合される免疫グロブリン分子又はその一部、
(3)IL-15Rα、を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記IL-15突然変異体は、野生型IL-15のAsp8、Ile6、Val3及びHis105に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基における突然変異を含む、ことを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記突然変異は、Asp8Ser(D8S)、Asp8Gly(D8G)、Asp8Glu(D8E)、Val3Leu(V3L)、Ile6Asp(I6D)、及び/又はHis105Lys(H105K)のアミノ酸置換からなる群から選択される、ことを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記IL-15突然変異体は、(1)Asp8Ser、(2)Asp8Gly、(3)His105Lys、(4)Asp8Glu及びVal3Leu、(5)Val3Leu及びIle6Asp、又は、(6)Asp8Ser及びHis105Lysの突然変異又は突然変異の組み合わせを含み、好ましくはAsp8Ser及びHis105Lysである、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記IL-15突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7に示され、
好ましくは、前記野生型IL-15のアミノ酸配列は、配列番号1に示される、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質における各ドメインの連結順序は、N末端からC末端へ:
(1)免疫グロブリン分子又はその一部、IL-15Rα、IL-15突然変異体、
(2)免疫グロブリン分子又はその一部、IL-15突然変異体、IL-15Rα、
(3)IL-15突然変異体、IL-15Rα、免疫グロブリン分子又はその一部、
(4)IL-15Rα、IL-15突然変異体、免疫グロブリン分子又はその一部であり、
好ましくは、IL-15Rα又はIL-15突然変異体は、免疫グロブリン分子と融合される場合、免疫グロブリン分子の重鎖可変領域のN末端又は免疫グロブリンFc領域のC末端に融合され、IL-15Rα又はIL-15突然変異体は、免疫グロブリンFc領域と融合される場合、免疫グロブリンFc領域のN末端又はC末端に融合される、
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずに、免疫グロブリン分子又はその一部と融合され、或いは前記IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずにIL-15Rαと融合され、好ましくは、リンカーペプチドを使用し、好ましくは、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号16に示されるリンカーペプチドを使用し、
好ましくは、前記IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずにIL-15Rαと融合され、さらに免疫グロブリン分子又はその一部と融合され、好ましくは、リンカーペプチドを使用し、好ましくは、配列番号13、配列番号15又は配列番号16に示されるリンカーペプチドを使用する、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫グロブリン分子は、抗PD-L1抗体又は抗原結合断片であり、
好ましくは、前記抗PD-L1抗体又は抗原結合断片は、Tecentriq、KN-035又は794-h1-71から選択され、より好ましくは、前記抗PD-L1抗体の重鎖は、配列番号19又は配列番号20に示される配列を有し、前記抗PD-L1抗体の軽鎖は、配列番号21に示される配列を有する、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリン分子の一部は、免疫グロブリンFc領域であり、
好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE又はIgDのいずれか1つのFc領域から選択され、好ましくは、ヒト又はマウス抗体IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常領域の配列を含み、
より好ましくは、前記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸配列は、配列番号12に示される、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質は、
(1)前記抗PD-L1抗体の重鎖を含み、それぞれ配列番号22、23、24、25又は26に示される配列を有する単量体1、配列番号21に示される配列を有する抗PD-L1抗体の軽鎖、
(2)前記(1)に示される配列と少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列、を含む、
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質の濃度は、1mg/mL~100mg/mLであり、好ましくは25mg/mL~95mg/mLであり、より好ましくは50mg/mL又は25mg/mLである、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝液から選択され、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液である、ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記緩衝液の濃度は、10mM~100mMであり、好ましくは15mM~30mMであり、より好ましくは20mMである、ことを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記タンパク質安定剤は、塩化ナトリウム、グリシン、塩酸アルギニン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールから選択され、好ましくはスクロース、トレハロースである、ことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記タンパク質安定剤の濃度は、1%~10%(w/v)であり、好ましくは2%(w/v)、4.5%(w/v)又は8%(w/v)であり、より好ましくは8%(w/v)である、ことを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、グリセリン脂肪酸エステルから選択され、好ましくはポロキサマー188である、ことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤の濃度は、0.01%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.02%(w/v)、0.04%(w/v)、0.06%(w/v)又は0.08%(w/v)である、ことを特徴とする、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物のpHは、約4.5~7.5であり、好ましくは4.5~6.5であり、より好ましくは6である、ことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
a)濃度が1mg/mL~100mg/mLであるIL-15突然変異体融合タンパク質、
b)濃度が10mM~100mMで、pHが4.5~7.5であるヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、
c)濃度が1%~10%(w/v)であるトレハロース、及び
d)濃度が0.01%~0.1%(w/v)であるポロキサマー、を含み、
好ましくは、前記医薬組成物は、
a)濃度が25mg/mL~95mg/mLであるIL-15突然変異体融合タンパク質、
b)濃度が15mM~30mMで、pHが5.5~6.5であるヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、
c)濃度が2%~8%(w/v)であるトレハロース、及び
d)濃度が0.04%(w/v)であるポロキサマー188、を含み
好ましくは、前記医薬組成物は、液体形態又は凍結乾燥粉末製剤である、
請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
IL-15突然変異体融合タンパク質溶液を緩衝液により置換するステップを含み、前記緩衝液は、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液であり、前記緩衝液の濃度は、好ましくは20mMであり、前記緩衝液のpHは、好ましくは6であり、
好ましくは、製造方法は、凍結乾燥のステップをさらに含み、
より好ましくは、凍結乾燥ステップは、以下を含む:(1)真空凍結乾燥機の乾燥箱を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、(2)乾燥箱の温度を-5℃に昇温して3時間~5時間保持し、(3)乾燥箱の温度を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、ステップ(1)~(3)の予備凍結の過程において、昇温降温速度を0.5℃~1℃/minに保持し、(4)一次乾燥真空度を0.1mBarとし、温度を-30℃~-20℃に保持し、このステップの合計時間が30時間を超える必要があり、(5)一次乾燥後、0.1℃~0.3℃/minの昇温速度で25℃に昇温して解析乾燥を開始し、真空度を0.1mBarに1時間~2時間保持し、その後、到達真空になり、温度を不変に保持し、保持時間が15時間を超える、
方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって製造される、ことを特徴とする、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することによって得られる、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む凍結乾燥製剤。
【請求項24】
請求項23に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することによって製造される、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む再溶解溶液。
【請求項25】
個体における疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項21に記載の方法によって製造される製品、請求項22に記載の医薬組成物、請求項23に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項24に記載の再溶解溶液の用途であって、前記疾患は、好ましくは腫瘍又は炎症性疾患であり、
好ましくは、前記腫瘍は、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌と食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頸部癌から選択される、
用途。
【請求項26】
個体における疾患を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項21に記載の方法によって製造される製品、請求項22に記載の医薬組成物、請求項23に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項24に記載の再溶解溶液を投与することを含み、前記疾患は、好ましくは腫瘍又は炎症性疾患であり、
好ましくは、前記腫瘍は、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌と食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頸部癌から選択される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、以下の2件の中国発明特許出願の利益及び優先権を主張し、それらの全ての内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる:2021年11月18日に中国国家知識産権局に提出された第202111375146.0号特許出願、及び2021年11月22日に中国国家知識産権局に提出された第202111384988.2号特許出願。
【0002】
本発明は、薬物製剤の分野に関し、具体的には、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
高分子タンパク質薬物(例えば、抗体など)の製剤は、通常、非経口投与に適した注射剤であり、その投与方法は、通常、皮下、静脈、筋肉内などを含む。タンパク質は溶液中で比較的不安定であり、粒子の形成や凝集などが非常に起こりやすいため、安定性が高分子タンパク質薬物の開発の一難題になっている。したがって、高分子タンパク質薬物(例えば、抗体など)の製剤の開発には、まずタンパク質の安定性の問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、IL-15突然変異体融合タンパク質の液体製剤及び凍結乾燥製剤を提供し、本発明に記載の製剤は、製品の長期貯蔵及び輸送中にIL-15突然変異体融合タンパク質の安定性を維持し、ひいては医薬品の安定性、安全性及び有効性を保証することができる。
【0005】
第1の態様において、本開示は、IL-15突然変異体融合タンパク質、緩衝液、タンパク質安定剤及び界面活性剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0006】
一実施形態において、IL-15突然変異体融合タンパク質は、IL-15突然変異体、IL-15突然変異体と融合される免疫グロブリン分子若しくはその一部、及び/又はIL-15Rαを含む。
【0007】
一実施形態において、IL-15突然変異体は、野生型IL-15のAsp8、Ile6、Val3及びHis105に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基における突然変異を含む。
【0008】
一実施形態において、上記突然変異は、置換、挿入又は欠失である。
【0009】
1つの具体的な実施形態において、上記突然変異は、Asp8Ser(D8S)、Asp8Gly(D8G)、Asp8Glu(D8E)、Val3Leu(V3L)、Ile6Asp(I6D)、及び/又はHis105Lys(H105K)のアミノ酸置換からなる群から選択される。
【0010】
1つの具体的な実施形態において、上記IL-15突然変異体は、(1)Asp8Ser、(2)Asp8Gly、(3)His105Lys、(4)Asp8Glu及びVal3Leu、(5)Val3Leu及びIle6Asp、又は、(6)Asp8Ser及びHis105Lysの突然変異又は突然変異の組み合わせを含む。
【0011】
1つの具体的な実施形態において、上記IL-15突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7に示され、上記野生型IL-15のアミノ酸配列は、配列番号1に示される。
別の実施形態において、上記IL-15突然変異体融合タンパク質における各ドメインの連結順序は、N末端からC末端へ:
(1)免疫グロブリン分子又はその一部、IL-15Rα、IL-15突然変異体、(2)免疫グロブリン分子又はその一部、IL-15突然変異体、IL-15Rα、(3)IL-15突然変異体、IL-15Rα、免疫グロブリン分子又はその一部、(4)IL-15Rα、IL-15突然変異体、免疫グロブリン分子又はその一部、(5)IL-15突然変異体、免疫グロブリン分子又はその一部、(6)免疫グロブリン分子又はその一部、IL-15Rα、(7)IL-15Rα、免疫グロブリン分子又はその一部、(8)IL-15突然変異体、IL-15Rα、又は、(9)IL-15Rα、IL-15突然変異体であり、
好ましくは、IL-15Rα又はIL-15突然変異体は、免疫グロブリン分子と融合される場合、免疫グロブリン分子の重鎖可変領域のN末端又は免疫グロブリンFc領域のC末端に融合され、IL-15Rα又はIL-15突然変異体は、免疫グロブリンFc領域と融合される場合、免疫グロブリンFc領域のN末端又はC末端に融合される。
【0012】
別の実施形態において、上記IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずに、免疫グロブリン分子又はその一部と融合され、或いはIL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずにIL-15Rαと融合され、好ましくは、リンカーペプチドを使用し、好ましくは、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号16に示されるリンカーペプチドを使用し、
好ましくは、IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介して又は介さずにIL-15Rαと融合され、さらに免疫グロブリン分子又はその一部と融合され、好ましくは、リンカーペプチドを使用し、好ましくは、配列番号13、配列番号15又は配列番号16に示されるリンカーペプチドを使用する。
【0013】
1つの具体的な実施形態において、上記免疫グロブリン分子は、抗PD-L1抗体又は抗原結合断片であり、上記免疫グロブリン分子の一部は、免疫グロブリンFc領域であり、
好ましくは、上記抗PD-L1抗体又は抗原結合断片は、Tecentriq、KN-035又は794-h1-71から選択され、
好ましくは、上記抗PD-L1抗体の重鎖は、配列番号19又は配列番号20に示される配列を有し、上記軽鎖は、配列番号21に示される配列を有し、
好ましくは、上記免疫グロブリンFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE又はIgDのいずれか1つのFc領域から選択され、好ましくは、ヒト又はマウス抗体IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常領域の配列を含み、好ましくは、上記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸配列は、配列番号12に示される。
【0014】
1つの具体的な実施形態において、上記IL-15突然変異体融合タンパク質は、
(1)上記抗PD-L1抗体の重鎖を含み、それぞれ配列番号22、23、24、25又は26に示される配列を有する単量体1、配列番号21に示される配列を有する抗PD-L1抗体の軽鎖、
(2)上記(1)に示される配列と少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列、を含む。
【0015】
別の実施形態において、上記IL-15突然変異体融合タンパク質の濃度は、1mg/mL~100mg/mLであり、好ましくは25mg/mL~95mg/mLであり、より好ましくは50mg/mL又は25mg/mLである。
【0016】
別の実施形態において、上記緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝液から選択され、好ましくは、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液又はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液である。
【0017】
1つの具体的な実施形態において、上記緩衝液の濃度は、10mM~100mMであり、好ましくは15mM~30mMであり、より好ましくは20mMである。
【0018】
別の実施形態において、上記タンパク質安定剤は、塩化ナトリウム、グリシン、塩酸アルギニン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールから選択され、好ましくはスクロース及びトレハロースである。
【0019】
1つの具体的な実施形態において、上記タンパク質安定剤の濃度は、1%~10%(w/v)であり、好ましくは2%(w/v)、4.5%(w/v)又は8%(w/v)であり、より好ましくは8%(w/v)である。
【0020】
別の実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、グリセリン脂肪酸エステルから選択され、好ましくはポリソルベート80又はポロキサマー188である。
【0021】
1つの具体的な実施形態において、上記界面活性剤の濃度は、0.01%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.02%(w/v)、0.04%(w/v)、0.06%(w/v)又は0.08%(w/v)である。
【0022】
別の実施形態において、上記医薬組成物のpHは、約4.5~7.5であり、好ましくは4.5~6.5であり、より好ましくは4.5、5、6である。
【0023】
第2の態様において、本開示は、
a)濃度が1mg/mL~100mg/mLであるIL-15突然変異体融合タンパク質、b)濃度が10mM~100mMで、pHが4.5~7.5であるヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、c)濃度が1%~10%(w/v)であるトレハロース、及びd)濃度が0.01%~0.1%(w/v)であるポロキサマー、を含む医薬組成物であって、
好ましくは、上記医薬組成物は、a)濃度が25mg/mL~95mg/mLであるIL-15突然変異体融合タンパク質、b)濃度が15mM~30mMで、pHが5.5~6.5であるヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、c)濃度が2%~8%(w/v)であるトレハロース、及びd)濃度が0.04%(w/v)であるポロキサマー188、を含み、
好ましくは、上記医薬組成物は、液体形態又は凍結乾燥粉末製剤である、医薬組成物を提供する。
【0024】
第3の態様において、本開示は、医薬組成物を製造する方法であって、IL-15突然変異体融合タンパク質溶液を緩衝液により置換するステップを含む、方法を提供し、上記緩衝液は、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液であり、上記緩衝液の濃度は、好ましくは20mMであり、上記緩衝液のpHは、好ましくは6であり、
好ましくは、製造方法は、凍結乾燥のステップをさらに含み、
より好ましくは、凍結乾燥ステップは、以下を含む:(1)真空凍結乾燥機の乾燥箱を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、(2)乾燥箱の温度を-5℃に昇温して3時間~5時間保持し、(3)乾燥箱の温度を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、ステップ(1)~(3)の予備凍結の過程において、昇温降温速度を0.5℃~1℃/minに保持し、(4)一次乾燥真空度を0.1mBarとし、温度を-30℃~-20℃に保持し、このステップの合計時間が30時間を超える必要があり、(5)一次乾燥後、0.1℃~0.3℃/minの昇温速度で25℃に昇温して解析乾燥を開始し、真空度を0.1mBarに1時間~2時間保持し、その後、到達真空になり、温度を不変に保持し、保持時間が15時間を超える。
【0025】
第4の態様において、本開示は、第3の態様に記載の方法によって製造される、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
第5の態様において、本開示は、第1~第2の態様に記載の医薬組成物を凍結乾燥することによって得られる、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0027】
第6の態様において、本開示は、第5の態様に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することによって製造される、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む再溶解溶液を提供する。
【0028】
第7の態様において、本開示は、個体における疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における、上記第1~第2の態様に記載の医薬組成物、第3の態様に記載の方法によって製造される製品、第4の態様に記載の医薬組成物、第5の態様に記載の凍結乾燥製剤、又は第6の態様に記載の再溶解溶液の用途を提供し、上記疾患は、好ましくは腫瘍又は炎症性疾患であり、好ましくは、上記腫瘍は、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌と食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頸部癌から選択される。
【0029】
第8の態様において、本開示は、個体における疾患を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする患者に、上記第1~第2の態様に記載の医薬組成物、第3の態様に記載の方法によって製造される製品、第4の態様に記載の医薬組成物、第5の態様に記載の凍結乾燥製剤、又は第6の態様に記載の再溶解溶液を投与することを含む方法を提供し、上記疾患は、好ましくは腫瘍又は炎症性疾患であり、好ましくは、上記腫瘍は、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌と食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頸部癌から選択される。
【0030】
用語の定義及び説明
特に明記しない限り、本明細書に使用される用語は、当業者に通常理解されている意味を有する。本明細書で明確に定義された用語について、その用語の意味は、記載されている定義に準拠するものとする。
【0031】
本明細書に使用されるように、「抗体」(Ab)という用語は、抗体のポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作及び他の修飾形態(キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体及び四重特異性抗体、二重抗体、三重抗体及び四重抗体)、抗体複合体を含むが、これらに限定されない)、並びに抗体の抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG及びscFv断片を含む)を含む、標的抗原に特異的に結合するか又は免疫反応性を有する免疫グロブリン分子を指す。また、特に明記しない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、標的タンパク質に特異的に結合することができる完全な抗体分子、及び不完全な抗体断片(例えば、FabやF(ab’)2断片で、完全抗体のFc断片を欠き(動物サイクルからより迅速に除去される)、従って、Fc媒介性エフェクター機能(effector function)を欠く(Wahl et al、J.Nucl.Med.24:316、1983を参照、その内容は参照により本明細書に組み込まれる))を含むことを意味する。
【0032】
本明細書に使用されるように、「IL-15」又は「IL15」、インターロイキン15(interleukin-15、IL-15)という用語は、T細胞、B細胞及びNK細胞を活性化すると共に、これらの細胞の増殖及び生存を媒介できる機能を有する、多機能性サイトカインである。さらに、IL-15は、CD8+記憶T細胞を活性化、維持、及び増幅させることができる。本発明に記載の「IL-15」又は「IL-15ペプチドセグメント」又は「IL-15ポリペプチド」は、任意のIL-15(インターロイキン15)又はその突然変異体、例えばヒトIL-15又は非ヒト哺乳動物IL-15又は非哺乳動物IL-15であってもよい。例示的な非ヒト哺乳動物は、例えばブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウスなどであり、非哺乳動物は、例えばニワトリなどである。ヒトのインターロイキン15成熟分子が好ましく、データベースUniProtKB、アクセッション番号P40933、49-162aaを参照されたい。
【0033】
本明細書に使用されるように、「IL-15野生型」又は「野生型IL-15」という用語は、天然由来のヒトIL-15又は非ヒト哺乳動物IL-15又は非哺乳動物IL-15を指し、当該技術分野において既に一般に使用されているIL-15ポリペプチドを指すこともでき、野生型は、WT又はwtと表すこともでき、好ましくは、「IL-15野生型」又は「野生型IL-15」のアミノ酸配列は(配列番号1)NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSである。
【0034】
本明細書に使用されるように、「IL-15突然変異体」という用語は、1つ又は複数のアミノ酸の置換、増加又は欠失突然変異によって得られる、IL-15とその受容体との間の親和性を向上又は減少させるか、或いは特定の細胞株、T細胞又はNK細胞の増殖活性、サイトカイン放出の活性の増加又は減少を刺激する突然変異体分子を指し、
【0035】
本開示において、好ましい実施例の1つにおいて、「IL-15突然変異体」は、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を有する:
IL-15突然変異体#1(D8S)アミノ酸配列(配列番号2):
NWVNVISSLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
IL-15突然変異体#2(H105K)アミノ酸配列(配列番号3):
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVKIVQMFINTS、
IL-15突然変異体#3(D8G)アミノ酸配列(配列番号4):
NWVNVISGLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
IL-15突然変異体#6(D8S/H105K)アミノ酸配列(配列番号5):
NWVNVISSLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVKIVQMFINTS、
IL-15突然変異体#7(D8E/V3L)アミノ酸配列(配列番号6):
NWLNVISELKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
IL-15突然変異体#8(V3L/I6D)アミノ酸配列(配列番号7):
NWLNVDSDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS。
【0036】
本明細書に使用されるように、「IL-15Rα」という用語は、任意の種のIL-15Rα又はその機能的断片、例えばヒトIL-15Rα又は非ヒト哺乳動物IL-15Rα又は非哺乳動物IL-15Rαであってもよい。例示的な非ヒト哺乳動物は、例えばブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウスなどであり、非哺乳動物は、例えばニワトリなどである。ヒトのIL-15Rαが好ましく、IL-15Rα ECDと略称されるヒトのインターロイキン15受容体α細胞外ドメイン断片が好ましい。
【0037】
本発明において、「IL-15Rα変異体」という用語は、IL-15Rα上に1つ又は複数のアミノ酸の欠失、挿入又は置換突然変異によって形成される、そのリガンド分子、例えばIL15に結合する能力を有する機能的突然変異体を指し、好ましくはヒトのIL15Rα分子、より好ましくはヒトのIL-15Rα細胞外ドメイン断片の短縮形態、即ち、細胞外ドメイン断片のC末端から1つ又は複数のアミノ酸の欠失突然変異によって得られるヒトインターロイキン15受容体α活性を有する分子、好ましくは65~120個のアミノ酸を保持する欠失突然変異形態、より好ましくは65~102個のアミノ酸を保持する欠失突然変異短縮形態、例えばIL-15Rα-sushi、好ましくはIL-15Rα-sushiであり、そのアミノ酸配列はそれぞれ以下の通りである。
IL-15Rα-sushi-1(配列番号8):
CPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPP。
IL-15Rα-sushi-2(配列番号9):
CPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR。
IL-15Rα-sushi-3(配列番号10):
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPP。
IL-15Rα-sushi-4(配列番号11):
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR。
【0038】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」という用語は、免疫グロブリンの鎖の定常領域、特に抗原結合活性を有さず、抗体分子がエフェクター分子及び細胞と相互作用する部位である免疫グロブリンの重鎖定常領域のカルボキシ末端又はその一部を指す。本発明に記載の「免疫グロブリンFc領域」は、ヒト又は非ヒト哺乳動物由来の任意のFc又はその変異体であってもよい。例えば、免疫グロブリンFc領域は、重鎖CH1、CH2、CH3、CH4の2つ又はそれ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域との組み合わせを含んでもよい。Fcは、異なる種、好ましくはヒトの免疫グロブリンに由来することができる。重鎖定常領域のアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なる種類に分けることができ、主にIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという5種類の免疫グロブリンがある。そのうちのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-4、IgA-1及びIgA-2に分けることができる。「Fc領域」は、好ましくは、少なくとも1つの免疫グロブリンヒンジ領域、並びにIgGのCH2及びCH3ドメインを含む。より好ましくは、IgG1の1つのCH2ドメイン、1つのCH3ドメイン及び1つの免疫グロブリンヒンジ領域を含み、ヒンジ領域の開始アミノ酸位置が変動できる。
【0039】
本開示において、好ましい実施例の1つにおいて、「免疫グロブリンFc領域」は、以下に示されるアミノ酸配列を有する:
配列番号12:
EPKSSDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。
【0040】
本明細書に使用されるように、「ペプチドリンカー/リンカーペプチド(Linker)」という用語は、本発明において、IL-15を別のタンパク質分子又はタンパク質断片と連結して、タンパク質の正確なフォールディング及び安定性を保証するために使用されるペプチドを指す。上記別の分子は、IL-15Rα、Fc、Fc変異体、抗体などを含むが、これらに限定されない。本発明の「リンカーペプチド」は、好ましくは(GGGGS)nであり、ここで、nは0、1、2、3、4、5又はそれ以上であってもよく、好ましくはnは2~4であり、又は好ましくはSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQである。リンカーペプチド配列が短すぎる場合、両タンパク質の高次構造のフォールディングに影響を与え、それによって相互に干渉する可能性があり、リンカーペプチド配列が長すぎる場合、リンカーペプチド配列自体が新しい抗原であるため、免疫原性の問題も伴い、
【0041】
本開示において、好ましい実施例の1つにおいて、「ペプチドリンカー/リンカーペプチド(Linker)」は、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を有する:
配列番号13:SGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ、
配列番号14:GGGGSGGGGSGGGGS、
配列番号15:EF、
配列番号16:SGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ。
【0042】
本開示において、好ましい実施例において、好ましい抗体重鎖及び抗体軽鎖は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体に由来し、より好ましくは、ヒト化の抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体に由来し、本明細書に使用されるように、「PD-L1」という用語は、プログラム死リガンド-1を指し、CD279(分化クラスター279)とも呼ばれ、重要な免疫抑制分子であり、上記PD-L1は、好ましくはヒトPD-L1であり、
本開示において、好ましい実施例の1つにおいて、「抗PD-L1抗体」は、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を有する:
PD-L1-1重鎖 配列番号17:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK、
PD-L1-1軽鎖 配列番号18:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC、
PD-L1-2-1重鎖 配列番号19:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK、
PD-L1-2-2重鎖 配列番号20:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK、
PD-L1-2-1又はPD-L1-2-2の軽鎖 配列番号21:
EIVMTQSPPTLSLSPGERVTLSCKSSQSLLYSSNQKNSLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAVYYCQQYYGYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0043】
本明細書に使用されるように、「融合タンパク質」(fusion protein)という用語は、遺伝子組換え方法、化学的方法又は他の適切な方法によって2つ又は複数の遺伝子のコード領域を連結し、同じ調節配列の制御下で遺伝子組換えを発現させることによって得られるタンパク質産物を指す。本発明の融合タンパク質において、2つ又は複数の遺伝子のコード領域同士は、ペプチドリンカー又はリンカーペプチドをコードする配列によって、1つ又は複数の位置で融合され得る。ペプチドリンカー又はリンカーペプチドも、本発明の融合タンパク質を構築するために使用することができる。本発明の「融合タンパク質」という用語は、抗体/Fc融合タンパク質構築物/複合体、又は非共有結合的手段によって形成された抗体/Fc融合タンパク質構築物/複合体の組成物をさらに含み、例えば、本発明に記載の融合タンパク質は、以下の構造と示すことができる:
(1)2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、例えば、抗体重鎖FcをIL-15Rα sushiに融合し、且つIL-15がIL-15Rα sushiと非共有結合を形成するように、抗体軽鎖及びIL-15-WT(野生型)又はIL-15突然変異体と共発現させる、IL-15融合タンパク質、
(2)2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、例えば、linkerを介して抗体重鎖FcをIL-15Rα sushi及びIL-15-WT又はIL-15突然変異体の3つの部分と直列に融合して発現させ、且つ抗体軽鎖と共発現させる、IL-15融合タンパク質、
(3)2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、Fc、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、例えば、IL-15-WT又はIL-15突然変異体は、linkerを介してIL15-Rα sushiに連結され、IL15-Rα sushiは、さらにlinkerを介してFcに連結される、IL-15融合タンパク質、又は、
(4)2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、Fc、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、例えば、IL15-Rα sushiは、linkerを介してIL-15-WT又はIL-15突然変異体に連結され、IL-15は、さらにlinkerを介してFcに連結される、IL-15融合タンパク質。
【0044】
本開示において、「単量体1」という用語は、遺伝子組換え方法、化学的方法又は他の適切な方法によって、以下に示される複数の遺伝子のコード領域を連結し、同じ調節配列の制御下で遺伝子組換えを発現させることによって得られるタンパク質産物を指す:(1)PD-L1抗体重鎖、(2)重鎖FcとIL-15Rα sushiとを連結するLinker、(3)IL-15Rα sushi、(4)IL-15Rα sushiとIL-15(WT又は突然変異体)とを連結するLinker、(4)IL-15(WT又は突然変異体)。
【0045】
本開示において、好ましい実施例の1つにおいて、「IL-15融合タンパク質」は、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を有する:
#6-1-1、単量体1:配列番号22:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGSCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQNWVNVISSLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVKIVQMFINTS、
#6-1-1、軽鎖:配列番号21、
#6-1-2、単量体1、配列番号23:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGSCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQNWVNVISSLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVKIVQMFINTS、
#6-1-2、軽鎖:配列番号21、
#7-1、単量体1、配列番号24:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGSCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQNWLNVISELKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
#7-1、軽鎖:配列番号21、
#8-1、単量体1、配列番号25:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGSCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQNWLNVDSDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
#8-1、軽鎖:配列番号21、
#9-1、単量体1、配列番号26:
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAVSGDSITSGYWNWIRKFPSRGLEYMGYISYSGSTYYNPFLKSRISINRDTSKNQYYLQLNSVTPEDTAVYYCAKMGDWLAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGSCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS、
#9-1、軽鎖:配列番号21。
【0046】
本明細書に使用されるように、「パーセント(%)配列同一性」という用語は、最大パーセント配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、(必要に応じて)ギャップを導入した(例えば、最適なアラインメントのために、候補配列と参照配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、且つ比較の目的のために、非相同配列を無視することができる)後、候補配列のアミノ酸(又はヌクレオチド)残基が、参照配列のアミノ酸(又はヌクレオチド)残基と同一であるパーセントを指す。パーセント配列同一性を決定するという目的のために、当業者に周知の種々の方法でアラインメントを実現させることができ、例えば、BLAST、ALIGN又はMegalign(DNASTAIi)ソフトウェアなどの公衆に取得可能なコンピュータソフトウェアを使用する。当業者は、比較される配列の全長範囲内に最大アラインメントを実現する必要がある任意のアルゴリズムを含み、測定アラインメントに用いられる適当なパラメータを決定することができる。例えば、候補配列との比較のためにアラインメントされた参照配列は、候補配列が候補配列の全長又は候補配列の連続的なアミノ酸(又はヌクレオチド)残基の選択された部分で50%~100%の配列同一性を呈することを示すことができる。比較の目的でアラインメントされた候補配列の長さは、例えば、参照配列の長さの少なくとも30%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%)であってもよい。候補配列中の位置が、参照配列中の対応する位置と同じアミノ酸(又はヌクレオチド)残基によって占められている場合、これらの分子は、その位置において同一である。
【0047】
本明細書に使用されるように、「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載の化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ及び他の化学成分を含む混合物を意味し、上記他の成分は例えば、生理学的/薬学的に許容される担体及び賦形剤である。医薬組成物は、抗体の活性成分の安定性を保持し、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮することを目的とする。本明細書において、「医薬組成物」と「製剤」は、相互に排他的ではない。
【0048】
本明細書に使用されるように、「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液の形態の医薬組成物、又は液体若しくは溶液製剤に対して真空凍結乾燥ステップを行った後に得られる製剤又は医薬組成物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】IL-15融合タンパク質の構造の模式図である。
図2】安定性試験においてサンプルを40℃に置いて考察されるSE-HPLC結果のまとめの傾向図である。
図3】安定性試験においてサンプルを40℃に置いて考察されるCE-SDS(NR)結果のまとめの傾向図である。
図4】安定性試験においてサンプルを40℃に置いて考察されるCE-SDS(R)結果のまとめの傾向図である。
図5】安定性試験においてサンプルを40℃に置いて考察されるiCIEF結果のまとめの傾向図である。
図6】混合リンパ球反応(MLR)による、T細胞増殖及びIFN-γ分泌に対する試験薬物の影響の検出である。
図7】Aはヒト骨髄由来抑制細胞(MDSC)増殖のFACS図であり、BはFACSによるヒト骨髄系由来抑制細胞増殖に対する試験薬物の影響の検出であり、CはMDSC細胞の絶対細胞計数結果を示す図である。
図8】AはNPGマウスの腫瘍増殖曲線であり、BはTecentriq群と#6-1群との1匹のマウスの増殖曲線の比較であり、CはaHel-IL15群と#6-1群との1匹のマウスの増殖曲線の比較である。
図9】NPGマウスの体重成長曲線である。
図10】ElisaによりNPGマウス腫瘍の内部血中薬物濃度を検出する結果である。
図11】FACSにより腫瘍組織の細胞に対する試験薬物の結合を検出する結果である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、本発明の利点及び特徴は説明と共により明らかになるであろう。実施例において具体的な条件が明記されていないものは、一般的な条件又はメーカーが推奨する条件に従う。使用される試薬又は機器において生産メーカーが明記されていないものは、何れも市場で入手できる一般的な製品である。
【0051】
本発明の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の技術案の詳細と形態を修正又は置換することができるが、これらの修正及び置換はすべて本発明の保護範囲内にあることを当業者は理解すべきである。
【0052】
以下の実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の請求範囲はこれらに限定されない。
【実施例
【0053】
実施例1 IL-15融合タンパク質の設計及び発現・精製
1.1 IL-15融合タンパク質(抗体融合構築物)の構造設計(format)には、4つのフォーマットがある:
format1:図1のAに示される構造のように、2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、抗体重鎖Fc末端をIL-15Rα sushiに融合し、且つIL-15がIL-15Rα sushiと非共有結合を形成するように、モノクローナル抗体軽鎖及びIL-15-WT(野生型)又はIL-15突然変異体と共発現させる、IL-15融合タンパク質、
format2:図1のBに示される構造のように、2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、linkerを介して抗体重鎖Fc末端をIL-15Rα sushi及びIL-15-WT又はIL-15突然変異体の3つの部分と順次に直列に融合して発現させ、且つ抗体軽鎖と共発現させる、IL-15融合タンパク質、
format3:図1のCに示される構造のように、2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、Fc、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、IL-15-WT又はIL-15突然変異体は、linkerを介してIL15-Rα sushiに連結され、IL15-Rα sushiは、さらにlinkerを介してFcに連結される、IL-15融合タンパク質、又は、
format4:図1のDに示される構造のように、2個の単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質であって、上記単量体が、Fc、IL-15及びIL-15Rα sushiを含み、IL15-Rα sushiは、linkerを介してIL-15-WT又はIL-15突然変異体に連結され、IL-15は、さらにlinkerを介してFcに連結される、IL-15融合タンパク質。
【0054】
様々なIL-15融合タンパク質設計は表1及び表2に詳しく示される。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
1.2 融合タンパク質の発現
上記4つの構築フォーマットに従って、融合タンパク質をコードする核酸配列を、それぞれpTT5プラスミドに構築した。ExpiCHO発現系を使用してタンパク質の一過性発現を行った。ExpiCHOTM Expression Medium(Cat no.A2910001)で継代された宿主細胞ExpiCHO-S(Cat no.A29127)を適切な密度に希釈し、シェーカー(100rpm、37℃、8%のCO)に置いてトランスフェクションを待つことになった。融合タンパク質をコードする核酸配列を有するベクターを、OptiPROTM SFM(Cat no.12309019)培地に、ベクターの最終濃度が0.5μg/mL~1.0μg/mLとなるように加えた。DNAを含むOptiPROTM SFM培地に、適量のExpiFectamineTM CHO Reagent(Cat no.A29129)を加えてDNA-ExpiFectamineTM CHO Reagent複合体を形成し、室温で1min~5min静置した後、複合体をトランスフェクション対象の細胞懸濁液にゆっくりと滴下した。トランスフェクション後の1日目に、一定量のExpiFectamineTM CHO Enhancer(Cat no.A29129)及びExpiCHOTM Feed(Cat no.A29129)を追加した後、32℃に降温して培養した。トランスフェクション後の4日目~6日目に、一定量のExpiCHOTM Feed(Cat no.A29129)を追加した。トランスフェクション後の10日目~12日目に、5000gで30min遠心分離して上清を得た。
【0058】
1.3 タンパク質の精製
磁気ビーズ法により突然変異体融合タンパク質を精製し、発酵上清に適量の磁気ビーズ懸濁液(GenScript、Cat.NO.L00695)を加え、IL-15融合タンパク質の磁気ビーズへの結合を保証するように回転ミキサー中で2hインキュベートし、上清を捨てた後に磁気ビーズをPBSで3回洗浄し、最後にpH3.0のクエン酸塩を加えて溶出してIL-15融合タンパク質を得、サンプルを1MのTris-Hclで中和した後、タンパク質濃度をNanoDrop Oneにより測定した。タンパク質純度50mg/mLのIL-15融合タンパク質を、その後の製剤スクリーニング試験のために選択した。
【0059】
実施例2 緩衝系のスクリーニング
2.1 緩衝系のスクリーニング計画
スクリーニング実験は、4つの緩衝塩(酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン塩及びリン酸塩)、12つの製剤緩衝系(pH値4.5~7.5)をカバーし、各処方において、タンパク質濃度が50mg/mLであるIL-15融合タンパク質#6-1-2(以下の実施例3~7は同じ)を使用し、タンパク質原液に対して限外濾過、濃縮、液交換処理を行い、原液を対応する12つの緩衝系内に置換した。最適な緩衝系をスクリーニングするように、40℃高温加速試験により、外観、pH値、濃度、純度(サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)、非還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動CE-SDS(NR)、還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動CE-SDS(R))、電荷異性(全カラムイメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF))、動的光散乱(DLS)を指標として、12つの緩衝系におけるこのタンパク質の安定性を総合的に考察して比較した。具体的な処方組成及び考察計画は下記の表3に示される。
【0060】
【表3】
【0061】
2.2 緩衝系のスクリーニングの結果
緩衝系のスクリーニングの主な結果を、下記の表4~表5にまとめる。
【0062】
【表4-1】
【0063】
【表4-2】
【0064】
【表5-1】
【0065】
【表5-2】
【0066】
2.3 緩衝系のスクリーニングの結論
この緩衝系のスクリーニング実験は、4つの緩衝塩(酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン塩及びリン酸塩)、12つの製剤緩衝系(pH値4.5~7.5)をカバーした。40℃高温加速試験を行い、12つの緩衝系におけるこのタンパク質の安定性を総合的に考察して比較した。
【0067】
本研究は、純度(SE-HPLC、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLSを指標として、SE-HPLC:40℃で4週間考察し、SE-HPLCのメインピーク純度及び高重合体の優劣順位:F2、F3、F7、F8>F1、F9>F5、F6>F10>F4、F11、F12、
CE-SDS(NR):40℃で4週間考察し、CE(NR)のメインピーク純度F1、F2、F3>F4、F5、F7>F6、F8>F9>F10、F11、F12、分解ピークの優劣:F2、F3>F1、F4>F5、F6、F7、F8、F9>F10、F11、F12、
CE-SDS(R):40℃で4週間考察し、軽鎖及び重鎖含有量の優劣順位:F3、F8>F2、F5、F6、F7、F9>F1、F4>F10、F11、F12、
DLS:40℃で4週間考察し、粒径の優劣順位:F1、F2、F3>F7、F8>F9>F4、F5、F6>F10、F11、F12、
【0068】
以上をまとめると、緩衝系のスクリーニングを経て、各処方の優劣順位は以下の通りである:F2、F3>F1、F8>F7>F5、F6、F9>F4、F10、F11、F12。F1、F2、F3、F8処方は、今回の40℃加速試験考察における純度、分解、凝集、電荷異性体などにおいて、総合的に他の処方よりも優れており、良好な安定性を示している(そのうち、F2、F3はF1、F8よりもやや優れている)。しかし、40℃で4週間考察する時、各処方のCE-SDS(NR)純度は何れも激しく低下し(>10%)、他の検出項目も異なる程度の変化があるので、その後、凍結乾燥製剤の開発を行う。酢酸緩衝系(F1~F3)では酢酸が揮発しやすく、凍結乾燥を行うことができないため、F8(20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、pH6.0)を選択して次の開発を行った。
【0069】
実施例3 添加物のスクリーニング
3.1 添加物のスクリーニング計画
緩衝系のスクリーニングの結果と凍結乾燥製剤の開発目標とを合わせて、最適な緩衝系に対応する添加物を加え、グリシン、スクロース、トレハロース、マンニトールを含めて合計4つの処方があり、タンパク質濃度が50mg/mLであった。真空凍結乾燥機を用いてサンプルを凍結乾燥し、凍結乾燥ステップは以下の通りである:(1)予備凍結:真空凍結乾燥機の乾燥箱を極限冷却の方式で-45℃に降温し、3時間~5時間保持し、(2)一次乾燥:一次乾燥真空度を0.1mBarとし、温度を-30℃~0℃に保持し、このステップの合計時間が30時間を超える必要があり、(3)解析乾燥:一次乾燥後、0.1℃/min~0.3℃/minの昇温速度で25℃に昇温して解析乾燥を開始し、真空度を0.1mBarに12時間~14時間保持し、その後、到達真空になり、温度を不変に保持し、保持時間が1時間を超える。
【0070】
凍結乾燥サンプルに対して40℃高温加速試験を行い、純度(SE-HPLC、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R))、電荷異性(iCIEF)、DLSを指標として各処方の安定性を考察し、1つの最適な製剤処方をスクリーニングして次のラウンドの界面活性剤のスクリーニングを行った。具体的な処方組成及び考察計画は下記の表6に示される。
【0071】
【表6】
【0072】
3.2 添加物のスクリーニングの結果
添加物のスクリーニングの主な結果を、下記の表7~表8にまとめる。
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
3.3 添加物のスクリーニングの結論
サンプル濃度が50mg/mLであり、凍結乾燥粉末の形態として40℃で4週間の添加物のスクリーニングを行った。40℃で4週間考察すると、純度(SE-HPLC)、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLSを指標として、不溶性微粒子においてF8-2処方が他の処方よりも明らかに高く、SE-HPLC純度において、F8-1、F8-2のメインピークの低下が明らかで、低分子量ピークの増加が明らかであり、DLS検出においてF8-1、F8-2直径の増加が明らかであり、CE-SDS(NR)検出においてメインピークF8-3、F8-4>F8-1、F8-2であり、総合的に比較すると、F8-3、F8-4処方は今回の40℃加速試験考察における純度、分解、凝集、電荷異性体などにおいて、総合的に他の処方よりも優れており、良好な安定性を示している。したがって、F8-3、F8-4処方(それぞれ8%のスクロース(W/V)及び8%のトレハロース(W/V)を含む)を予備的に選定し、次の界面活性剤のスクリーニング研究を行った。
【0076】
実施例4 第1ラウンドの界面活性剤のスクリーニング
4.1 界面活性剤のスクリーニング計画
スクリーニングされた緩衝系、添加物に異なる濃度の界面活性剤を加え、0.02%、0.04%、0.06%、0.08%のポリソルベート80を含めて合計8つの処方があり、タンパク質濃度が50mg/mLであり、40℃加速試験により、純度(SE-HPLC)、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLS、不溶性微粒子を指標として各処方の安定性を考察し、最適な製剤処方をスクリーニングして処方安定性決定実験を行い、最終的な処方を決定した。具体的な処方組成及び考察計画は下記の表9に示される。
【0077】
【表9】
【0078】
4.2 界面活性剤のスクリーニングの結果
界面活性剤のスクリーニングの主な結果を、下記の表10~表11にまとめる。
【0079】
【表10】
【0080】
【表11-1】
【0081】
【表11-2】
【0082】
4.3 界面活性剤のスクリーニングの結論
40℃で4週間考察すると、純度(SE-HPLC)、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLS、不溶性微粒子を指標として、SE-HPLC検出では、メインピーク含有量F8-3-1、F8-4-5処方は他の処方よりも優れ、CE-SDS(NR)検出では、F8-3-1処方は他の処方よりも優れ、CE-SDS(R)検出では、F8-4-5処方は他の処方よりも優れ、他の検出項目は何れも有意差がなく、総合的に比較すると、F8-3-1、F8-4-5処方は今回の40℃加速試験考察において他の処方よりも優れており、良好な安定性を示している。このラウンドのスクリーニングでは、SE-HPLCの高分子量ピークは、ポリソルベート80の濃度の増加と共に増加した。従って、第2ラウンドの界面活性剤のスクリーニングは、別のタイプの界面活性剤ポロキサマー188を使用して行われた。
【0083】
実施例5 第2ラウンドの界面活性剤のスクリーニング
臨床的な需要の状況に応じて、同時に高濃度でのタンパク質分子の凝集などの状況による不安定を回避し、以下の実施例は、上記製剤処方のスクリーニングに基づいて、タンパク質濃度が高い場合にスクリーニングされた処方結果に対して、タンパク質濃度を低下させて行い、具体的な処方は以下の通りである。
【0084】
25mg/mLのタンパク質、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、8%のスクロース(W/V)、0.04%のポロキサマー188(W/V)、pH6.0及び25mg/mLのタンパク質、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、8%のトレハロース(W/V)、0.04%のポロキサマー188(W/V)、pH6.0の2つの処方の凍結乾燥粉末のガラス転移温度は、それぞれ74.06℃及び115.44℃であることを検出して、トレハロース含有処方の凍結乾燥粉末のガラス転移温度は、スクロース含有処方よりもはるかに高いことから、第2ラウンドの界面活性剤のスクリーニングはトレハロースを使用して考察した。
【0085】
5.1 界面活性剤のスクリーニング計画
スクリーニングにより決定された緩衝系、添加物に異なる濃度の界面活性剤を加え、0.01%、0.02%、0.04%、0.06%、0.08%のポロキサマー188(W/V)を含めて合計5つの処方があり、40℃加速試験により、純度(SE-HPLC)、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLS、不溶性微粒子を指標として各処方の安定性を考察し、最適な製剤処方をスクリーニングして処方安定性決定実験を行い、最終的な処方を決定した。具体的な処方組成及び考察計画は下記の表12に示される。
【0086】
【表12】
【0087】
5.2 界面活性剤のスクリーニングの結果
界面活性剤のスクリーニングの主な結果を、下記の表13~表14にまとめる。
【0088】
【表13】
【0089】
【表14-1】
【0090】
【表14-2】
【0091】
5.3 界面活性剤のスクリーニングの結論
40℃で4週間考察すると、純度(SE-HPLC)、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性(iCIEF)、DLS、不溶性微粒子を指標として、CE-SDS(R)検出では、F8-4-S5処方は他の処方よりフラグメントピークがやや高く、軽鎖+重鎖の割合がやや低く、他の検出項目は何れも有意差がなく、総合的に比較すると、F8-4-S1、F8-4-S2、F8-4-S3、F8-4-S4処方は今回の40℃加速試験考察において他の処方よりも優れており、良好な安定性を示し、生産の操作可能なスペースを考慮して、F8-4-S3処方を最終的な処方(20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、8%のトレハロース(W/V)、0.04%のポロキサマー188(W/V)、pH6.0)として選択した。
【0092】
実施例6 最終配合法のIL-15突然変異体融合タンパク質の凍結乾燥製剤の製造方法
最終配合法25mg/mLのタンパク質濃度のIL-15突然変異体融合タンパク質溶液を、無菌的にバイアル瓶に分注し、半分栓をした後、凍結乾燥し、IL-15突然変異体融合タンパク質凍結乾燥製剤を得た。本実施例は、真空凍結乾燥機を用いてIL-15突然変異体融合タンパク質溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥ステップは、以下を含む:(1)真空凍結乾燥機の乾燥箱を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、(2)乾燥箱の温度を-5℃に昇温して3時間~5時間保持し、(3)乾燥箱の温度を-45℃に降温して3時間~5時間保持する。予備凍結の過程において、昇温降温速度を0.5℃~1℃/minに保持し、(4)一次乾燥真空度を0.1mBarとし、温度を-30℃~-20℃に保持し、このステップの合計時間が30時間を超える必要があり、(5)一次乾燥後、0.1℃~0.3℃/minの昇温速度で25℃に昇温して解析乾燥を開始し、真空度を0.1mBarに1時間~2時間保持し、その後、到達真空になり、温度を不変に保持し、保持時間が15時間を超える。ここで、(1)~(3)ステップは予備凍結であり、(4)は一次乾燥であり、(5)は解析乾燥である。
【0093】
実施例7 安定性試験
実施例6の製造方法によりIL-15突然変異体融合タンパク質の凍結乾燥製剤を製造し、且つ40℃加速安定性考察を行った。主に水分、再溶解後の純度、電荷異性、不溶性微粒子、活性などの指標を含む。緩衝系、添加物及び界面活性剤のスクリーニングの結果に基づき、1つの処方を決定した:25mg/mLのIL-15突然変異体融合タンパク質、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、8%のトレハロース(W/V)、0.04%のポロキサマー188(W/V)、pH6.0、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥し、ゴム栓とアルミニウム製プラスチック蓋を使用して密閉した包装システムを形成し、14日間の40℃安定性試験を行った。
結果は下記の表15~表16及び図2図5に示される。
【0094】
【表15】
【0095】
【表16】
【0096】
40℃加速安定性を14日間考察したところ、再溶解後の純度(SE-HPLC)はわずかに低下し、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、電荷異性、不溶性微粒子、活性は明らかに変化しなかった。本処方におけるタンパク質が比較的良好な安定性を有し、本発明の目的を達成したことが示された。
【0097】
実施例8 混合リンパ球反応(MLR)による、T細胞増殖及びIFN-γ分泌に対する試験薬物の影響の検出
実施例8~11において、「#6-1」は「用語の定義及び説明」及び「表1」中の#6-1-2に対応し、「aPDL1」はPD-L1-2-2に対応し、「aHeL-IL15」は、#6-1と同じ構造のアイソタイプ対照融合タンパク質であり、抗体可変領域部分のみが抗鶏卵白リゾチーム抗体の可変領域で置換され、残りの部分は配列が同じである。
【0098】
融合タンパク質がT細胞活性を増強する能力は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)によって測定される。健康なヒトドナー1の末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMC)からCD14単核細胞を単離し、組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、Peprotech、Cat.300-03)及び組換えヒトインターロイキン4(rhIL-4、Peprotech、Cat.200-04)を用いて、インビトロで樹状細胞(dendritic cell、DC)への分化を誘導し、培養の6日目にLPS(Sigma、Cat:L4516)を加えてDCを刺激して成熟させた。7日目に、ドナー1のDC細胞を、健康なドナー2のPBMCから濃縮された蛍光標識(Celltrace Violet Cell Proliferation Kit、Invitrogen、Cat.C34557)のCD4T細胞と混合して共培養し、DC:CD4T細胞数の割合が1:10であり、最終濃度2.8nMの試験薬物を加えて4日間共培養した。4日後に細胞を収集し、フローサイトメーターによりCD4T細胞の増殖の割合を検出すると同時に、細胞培養上清を収集し、ELISA法により上清中のIFN-γの含有量を検出した。図6に示されるように(one-way ANOVA、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005、****p<0.0005)、各対照群と比較して、#6-1融合タンパク質群は、より高いCD4T細胞の増殖及びIFN-γの分泌を有する。ここで、#6-1は、アイソタイプ対照分子aHel-IL15と比較して、MLR実験におけるCD4T細胞の増殖を顕著に増強し、且つIFN-γの分泌を顕著に増強することができる。この結果から、#6-1融合タンパク質は、混合リンパ球反応においてT細胞の機能を増強できることが示された。
【0099】
実施例9 ヒト骨髄系由来抑制細胞の増殖に対する試験薬物の影響
凍結保存された市販ヒトPBMC(軒鋒、商品番号XFB-HP050B)を蘇生させて遠心分離した後、RPMI 1640完全培地(配合法:89%のRPMI 1640培地(Gibco、商品番号72400047)+10%のウシ胎児血清FBS(Gibco、商品番号10099-141C)+1%のマイシリン二重抗体(Gibco、商品番号15070063))を用いて再懸濁させて細胞懸濁液を得、且つ計数して、細胞密度を6×10/mLに調整し、1ウェル当たり100μLで96ウェルU底プレートに敷いた。次いで、100μLの2×濃度段階希釈された試験薬物#6-1、#9-1(構造配列は表1参照)、aPDL1をウェルごとに加え、系内の融合タンパク質の最終濃度は、それぞれ、500000pM、100000pM、20000pM、4000pM、800pM、160pM、32pM、6.4pM、1.28pM、0.32pMであった。同時に、陰性対照ウェルNo treatmentを設け、即ち100μLの完全培地を補充した。系の総体積は200μL/ウェルであり、重複ウェルを設けた。マルチチャンネルピペットで、細胞と試験融合タンパク質を軽くピペッティングして十分に均一に混合し、均一に混合した後、ウェルプレートを5%CO2インキュベーターに置いて37℃で3日間培養した。培養終了後、ウェルプレートを取り出し、細胞をマルチチャンネルピペットでピペッティングした後に新しい96ウェルV底プレートに移し、DPBS溶液でウェルプレートを1回洗浄し、且つプレートを洗浄する溶液も対応する96ウェルに移し、その後、100μL/ウェルのAccutase溶液(Sigma、商品番号A6964)を加えて37℃のインキュベーターに置いて接着細胞を10分間消化し、消化された接着細胞をマルチチャンネルピペットでピペッティングした後に上記96ウェルV底プレートに移し、350×gで4分間遠心分離し、上清を捨てた。ウェルごとに、100μLの希釈したLIVE/DEAD Aqua色素(Invitrogen、商品番号L34966、DPBSで1:500希釈)加え、4℃で20分間染色した。染色緩衝液(2%のFBSを含むDPBS溶液)で2回洗浄した。350gで4min遠心分離し、上清を捨てた。50μL/ウェルの希釈したHuman TruStain FcX(Biolegend、商品番号422302、2μL/test)を加え、室温で10分間染色した。次いで、50μL/ウェルの調製済みの表面抗体混合物を直接に加え、表面抗体はAlexa Fluor(登録商標) 700 anti-human CD3 Antibody(Biolegend、商品番号300424、1μL/test)、PerCP-CyTM5.5 Mouse Anti-Human HLA-DR(BD、商品番号560652、1μL/test)、PE-Cyanine7 anti-human CD33(eBioscience、商品番号25-0338-42、2μL/test)、BV421 Mouse Anti-Human CD11b(BD、商品番号562632、1μL/test)、FITC anti-human CD14 Antibody(Biolegend、商品番号301804、1μL/test)を含む。4℃で30分間染色した。染色緩衝液で2回洗浄した。350gで4min遠心分離し、上清を捨てた。ウェルごとに、100μLの希釈したFoxp3/転写因子染色緩衝液キット(eBioscience、商品番号00-5523-00)中の固定液を加え、4℃で60分間固定し、キット中の1*Permeabilization溶液で2回洗浄した。遠心分離速度を400gに上げ、4min後に上清を捨てた。次いで、100μL/ウェルの調製済みの細胞内抗体APC anti-human Ki-67 Antibody(Biolegend、商品番号350514、1μL/test)をゆっくりと加え、4℃で40分間反応させ、且つ同じ質量濃度のAPC-Mouse IgG1、kappaアイソタイプ対照抗体(eBioscience、商品番号17-4714-82)を準備した。細胞を1*Permeabilization溶液で2回洗浄した。ウェルごとに150μLの染色緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、フローサイトメーターでシグナルを検出した(Thermo Attune NxT)。
【0100】
図7のA図は、ヒト骨髄由来抑制細胞(MDSC)の増殖を分析するためのゲーティング戦略、ヒトMDSC(HLADRlowCD33CD11b)細胞におけるKi-67の割合を分析するものを示す。図に示されるのは、最高濃度#9-1で処理したサンプルであり、MDSC細胞に比較的明らかなKi-67陽性細胞集団があることが認められる。B図及びC図は、MDSC細胞増殖に対する3つの試験薬物の影響曲線であり、B図はKi-67パーセントを示し、C図はMDSC細胞の絶対細胞計数であり、結果により、#9-1がヒトCD33MDSCs細胞の増殖を促進できるが、#6-1はほとんど効果がなく、#6-1分子は免疫抑制細胞を活性化しないことが示された。
【0101】
実施例10 マウス体内での試験薬物の薬効の優位性の評価
NPGマウス(北京維通達生物技術有限公司から購入)の右後背部皮下に、ヒト黒色腫細胞A375細胞(北納生物から購入、商品番号:BNCC100266)を5×10個/100μLで接種し、A375を接種した後翌日、凍結保存されたPBMC(上海儒百生物科技有限公司から購入、商品番号:PBMNC100C)を蘇生させ、5×10cells/200μLの量でNPGマウスに尾静脈注射した。PBMC接種の6日後に40μL採血してhCD45細胞の割合を検出し、腫瘍が約63mmに成長した後、体重、hCD45細胞の割合、腫瘍体積が大きすぎる及び小さすぎるものを除去し、腫瘍体積に応じて、PBS群、Tecentriq群(10mg/kg)、Tecentriq+aHel-IL15群(3.4mg/kg+4.5mg/kg)、aHel-IL15群(3mg/kg)及び#6-1群(3mg/kg)の合計5つの群にランダムにマウスを分け、各群8匹で、合計40匹であった。投与方式は腹腔内投与であり、Tecentriq+aHel-IL15群(3.4mg/kg+4.5mg/kg)、aHel-IL15群(3mg/kg)及び#6-1群(3mg/kg)の群分けに従って群分けの当日に投与を行い、合計1回投与し、PBS群及びTecentriq群(10mg/kg)は週に2回、合計4回投与した。腫瘍体積を週に3回測定し、データを記録した。腫瘍体積(長径×短径/2)と増殖抑制率(TGITV(%)=[1-(投与i日目の治療群の腫瘍体積平均値-投与0日目の治療群の腫瘍体積平均値)/(投与i日目の溶媒対照群の腫瘍体積平均値-投与0日目の溶媒対照群の腫瘍体積平均値)]×100%)を算出し、群分け投与の15日目に、投与群は何れも腫瘍体積において顕著な抑制効果があり、統計学的差異があった(P<0.05)。
【0102】
【表17】
【0103】
体重モニタリング及び観察の結果は、aHel-IL15(3mg/kg)群及び#6-1(3mg/kg)群の実験動物が、投与期間に活動状態及び摂食状態が良好であり、体重が減少する傾向があることを示し、Tecentriq+aHel-IL15(3.4mg/kg+4.5mg/kg)群では投与の15日目に動物の死亡が発生し、マウスの死亡はIL15により引き起こされるリンフォカインストームに相関する可能性がある(図9、表18を参照)ことを示した。
【0104】
【表18】
【0105】
腫瘍モニタリングの結果は、抗PD-L1-IL15融合タンパク質#6-1がA375腫瘍皮下移植腫瘍増殖に対する顕著な抑制効果を有することを示し(表17、図8)、#6-1(3mg/kg)群はTecentriq(10mg/kg)群及びaHel-IL15(3mg/kg)群と比較して腫瘍抑制効果が顕著により強く、融合タンパク質薬効の優位性を示し、#6-1(3mg/kg)群はTecentriq+aHel-IL15(3.4mg/kg+4.5mg/kg)併用群と比較して腫瘍体積において抑制効果が同等であるが、安全性がより良好であった(表18、図9)。
【0106】
実施例11 酵素結合免疫吸着反応(ELISA)による、腫瘍組織における試験薬物の含有量の検出
NPGマウス(北京維通達生物技術有限公司から購入)の右前部の腋下付近皮下に、ヒト結腸癌細胞RKO細胞(ATCC、CRL-2577)を7×10個/100μLで接種し、RKOを接種した後、腫瘍が300mm~500mmに成長した後、体重、腫瘍が大きすぎる及び小さすぎる個体を除去し、腫瘍体積に応じてマウスを4つの群にランダムに分け、各群20匹で、合計80匹であり、詳細な群分け、投与、サンプリング実験計画は下記の表19に示される。表19の計画に従って群分け投与を完了した後、計画された時間でマウスを採血し、且つ安楽死させ、完全な腫瘍を取って、PBSで洗浄した後に十字切開し、腫瘍組織の一部を取り、溶解液(T-PERTMTissue Protein Extraction Reagent:thermo、78510+プロテアーゼ阻害剤混合物:碧云天、P1046+ヌクレアーゼ:millipore、E1014)を加えてホモジナイズして溶解し、ELISA定量分析のための組織溶解液を得た。さらに別の組織を取って、外科用ハサミで細かく切り、組織消化酵素(Miltenyi、130-095-929)を加えて30min振とうして培養し、消化終了後、停止液(98%のPBS(Hyclone、SH30256)及び2%のFBS(Gibco、10099-141C))を加え、セルストレーナー(thermo、70um、352350、Falcon)を通して単細胞懸濁液を収集し、0.5×10個の単細胞を取ってフローサイトメトリーに使用した。
【0107】
ELISA分析方法と結果:酵素結合免疫吸着反応(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)により、異なる時点での腫瘍溶解液中の薬物濃度を検出して、試験分子の異なる用量での腫瘍組織内部の濃縮程度及び傾向を比較する。試験分子のFc領域を抗ヒトFc抗体(Jackson Immuno、#109-006-098)で捕捉し、標準品及び腫瘍溶解液試験物を加えた後、酵素標識抗ヒト抗ヒトF(ab)抗体(Jackson Immuno、#109-035-097)を試験分子のFab領域に結合することにより腫瘍溶解液中のヒト化抗体の濃度を測定し、且つ下記式により、各個体の動物の腫瘍組織における試験薬物の含有量を算出する:個体の腫瘍における試験薬物の含有量(ng)=腫瘍溶解液中の試験薬物の濃度(ng/mL)×溶解液の体積(mL)/溶解部分の腫瘍重量(mg)×個体の総腫瘍重量(mg)。
【0108】
図10のA及びBの結果に示されるように、aHel-IL15アイソタイプ対照と比較して、#6-1融合タンパク質は腫瘍組織内部のPD-L1腫瘍細胞に特異的に標的化され得、且つaPD-L1末端標的化作用によって腫瘍組織内部に薬物濃度の優位性をもたらし、用量の増加と共に濃度が上昇し、且つ6時間~72時間にわたって持続的に濃縮される傾向を示す。(T検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005、****P<0.0005)
【0109】
フローサイトメトリー検出方法と結果:単細胞懸濁液を遠心分離した後、PBSで再懸濁させてからライヴ/デッド色素(biolegend、423114)を加えて20分間染色し、終了後に染色緩衝液で2回洗浄し、ブロッキング抗体(BD、55314)を加えて15分間後に、染色抗体CD47(biolegend、323124)とPE anti-human IgG Fc(biolegend、410708)を加える(注記:CD47はRKO細胞を標識するために用いられ、抗ヒトFc蛍光抗体は薬物のFcに特異的に結合できる)。染色終了後、フローサイトメトリー検出に用いられ、結果はRKO細胞(CD47細胞集団)中のPE anti-human IgG Fcの陽性率と示した。
【0110】
図11に示されるように、フローサイトメトリー検出の結果は、aHel-IL15と比較して、#6-1融合タンパク質が腫瘍細胞に特異的に結合することができ、高用量でも低用量でも何れも良好な用量関係を示し、且つ6時間~72時間にわたってステップで濃縮される傾向を示すことを示した。融合タンパク質の設計目標を達成した。
【0111】
融合タンパク質#6-1-1を用いて実施例6-11の実験を行い、得られた結果が#6-1-2(即ち、実施例8-11に記載される#6-1)と全く同じ傾向を示すことを確認し、類似のグラフは繰り返し示さないとする。
【0112】
【表19】
【0113】
以上をまとめると
タンパク質のPKa、グリコシル化の状況、(配列及び高次構造により決定される)親疎水性の性質、等電点などの様々な基本物理化学的パラメータは、異なる製剤処方の安定性の状況に影響を与える。
本願はスクリーニングを経て、突然変異後のIL-15融合タンパク質に対して、安定な製剤処方をスクリーニングし、考察期間内の様々な条件の加速実験下で、iCIEF、SE-HPLC、CE-SDS(NR)、CE-SDS(R)、DLS、不溶性微粒子などのパラメータの考察結果は明らかに変化しなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024540570000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、前記医薬組成物はIL-15突然変異体融合タンパク質、緩衝液、タンパク質安定剤及び界面活性剤を含み、
前記IL-15突然変異体融合タンパク質は、以下のドメイン:
(1)IL-15突然変異体、
(2)IL-15突然変異体と融合される免疫グロブリン分子、
(3)IL-15Rα、を含み、
前記IL-15突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号5、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6又は配列番号7に示され、前記野生型IL-15のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、
前記IL-15突然変異体融合タンパク質における各ドメインの連結順序は、N末端からC末端へ:免疫グロブリン分子、IL-15Rα、IL-15突然変異体であり、
IL-15Rα又はIL-15突然変異体は、免疫グロブリン分子と融合される場合、免疫グロブリン分子のFc領域のC末端に融合され、
前記免疫グロブリン分子は、抗PD-L1抗体又は抗原結合断片であり、前記抗PD-L1抗体の重鎖は、配列番号19又は配列番号20に示される配列を有し、前記抗PD-L1抗体の軽鎖は、配列番号21に示される配列を有する、
ことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記IL-15突然変異体は、リンカーペプチドを介してIL-15Rαと融合され、さらに免疫グロブリン分子又はその一部と融合される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記リンカーペプチドの配列は、配列番号13、配列番号15又は配列番号16に示される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質は、
前記抗PD-L1抗体の重鎖を含み、それぞれ配列番号22、23に示される配列を有する単量体1、配列番号21に示される配列を有する抗PD-L1抗体の軽鎖、を含む、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記IL-15突然変異体融合タンパク質の濃度は、1mg/mL~100mg/mLであり、好ましくは25mg/mL~95mg/mLであり、より好ましくは50mg/mL又は25mg/mLである、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝液から選択され、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液であり、前記緩衝液の濃度は、10mM~100mMであり、好ましくは15mM~30mMであり、より好ましくは20mMである、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記タンパク質安定剤は、塩化ナトリウム、グリシン、塩酸アルギニン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールから選択され、好ましくはスクロース、トレハロースであり、前記タンパク質安定剤の濃度は、1%~10%(w/v)であり、好ましくは2%(w/v)、4.5%(w/v)又は8%(w/v)であり、より好ましくは8%(w/v)である、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、グリセリン脂肪酸エステルから選択され、好ましくはポロキサマー188であり、前記界面活性剤の濃度は、0.01%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.02%(w/v)、0.04%(w/v)、0.06%(w/v)又は0.08%(w/v)である、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物のpHは、約4.5~7.5であり、好ましくは4.5~6.5であり、より好ましくは6である、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
a)濃度が25mg/mL~95mg/mLであるIL-15突然変異体融合タンパク質、
b)濃度が15mM~30mMで、pHが5.5~6.5であるヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液、
c)濃度が2%~8%(w/v)であるトレハロース、及び
d)濃度が0.04%(w/v)であるポロキサマー188、を含み
好ましくは、前記医薬組成物は、液体形態又は凍結乾燥粉末製剤である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
IL-15突然変異体融合タンパク質溶液を緩衝液により置換するステップを含み、前記緩衝液は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液であり、前記緩衝液の濃度は、20mMであり、前記緩衝液のpHは、好ましくは6であり、
好ましくは、製造方法は、凍結乾燥のステップをさらに含み、
前記凍結乾燥ステップは、以下を含む:(1)真空凍結乾燥機の乾燥箱を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、(2)乾燥箱の温度を-5℃に昇温して3時間~5時間保持し、(3)乾燥箱の温度を-45℃に降温して3時間~5時間保持し、ステップ(1)~(3)の予備凍結の過程において、昇温降温速度を0.5℃~1℃/minに保持し、(4)一次乾燥真空度を0.1mBarとし、温度を-30℃~-20℃に保持し、このステップの合計時間が30時間を超える必要があり、(5)一次乾燥後、0.1℃~0.3℃/minの昇温速度で25℃に昇温して解析乾燥を開始し、真空度を0.1mBarに1時間~2時間保持し、その後、到達真空になり、温度を不変に保持し、保持時間が15時間を超える、
方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することによって得られる、IL-15突然変異体融合タンパク質を含む凍結乾燥製剤。
【請求項13】
個体における疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項11に記載の方法によって製造される製品、又は請求項12に記載の凍結乾燥製剤の用途であって、前記疾患は、好ましくは腫瘍又は炎症性疾患であり、
好ましくは、前記腫瘍は、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、B細胞腫瘍、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、胃癌と食道癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮頭頸部癌から選択される、
用途。
【国際調査報告】