(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】疼痛の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20241024BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20241024BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20241024BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K38/48
A61P25/02
A61P25/06
A61P29/02
C07K14/33 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529771
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 GB2022052957
(87)【国際公開番号】W WO2023089343
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2022/052947
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォンフリア スビロス,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】クルップ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】メーネル,ジャクリーヌ キャロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ポンス,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC09
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA211
4C084ZA212
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、特に、疼痛治療を対象とする。例えば、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することによって疼痛を治療する際に使用されるキメラクロストリジウム神経毒が提供される。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。方法、使用、キット、及び単位剤形も提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛治療に使用するためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項2】
疼痛の治療方法であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項3】
疼痛治療用の薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することにより疼痛を治療し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合する。
【請求項5】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することによって、好ましくはメディエーター、より好ましくは疼痛メディエーターの中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することによって、疼痛を治療する。
【請求項6】
片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)の治療に使用するためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項7】
片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)を治療する方法であって、前記方法はキメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項8】
片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)治療用の薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項9】
請求項6至8の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することにより片頭痛を治療し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合する。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することによって、好ましくはメディエーター、より好ましくは疼痛メディエーターの中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することによって、片頭痛を治療する。
【請求項11】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、より長い期間にわたって、且つ/又は、より高い有効性で、対象の障害を治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項12】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、より長い期間にわたって、且つ/又は、より高い有効性で、対象の障害を治療する方法であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項13】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、より長い期間にわたって、且つ/又は、より高い有効性で、対象の障害を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項14】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための方法において使用するためのキメラクロストリジウム神経毒であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項15】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための方法であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項16】
BoNT/Aで治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項17】
対象の生体液内及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/Aで治療された対象の、同じ生体液内及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項18】
対象の生体液内及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/Aで治療された対象の、同じ生体液内及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための方法であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を前記対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項19】
対象の生体液内及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/Aで治療された対象の、同じ生体液内及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項20】
請求項11乃至19の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(好ましくは疼痛メディエーター)の、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの放出を阻害し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合する。
【請求項21】
請求項11乃至20の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害し、好ましくはメディエーター、より好ましくは疼痛メディエーターの中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害する。
【請求項22】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロン(例えば、逆行性)輸送により中枢神経系のニューロンへ移動し、前記神経のSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。
【請求項23】
Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することにより感覚障害を治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項24】
Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することにより感覚障害を治療する方法であって、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項25】
Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することにより感覚障害を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項26】
請求項1乃至5又は11乃至25の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記疼痛又は障害は、片頭痛疼痛若しくは群発性頭痛等の頭痛、又は膀胱痛である。
【請求項27】
請求項1乃至5又は11乃至26の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記疼痛又は障害は、片頭痛疼痛である。
【請求項28】
請求項1乃至3、5乃至8、10乃至19、21、22、26又は27の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンに結合する。
【請求項29】
請求項1乃至3、5乃至8、10乃至19、21、22、26又は27の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害する。
【請求項30】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)の、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの放出を阻害することにより(ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、前記Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合する)、及び、中枢神経系のニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害することにより、前記疼痛、片頭痛、又は障害を治療する。
【請求項31】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記メディエーター(好ましくは疼痛メディエーター)は、神経伝達物質(好ましくは疼痛神経伝達物質)である。
【請求項32】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記(疼痛)メディエーターは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスP、及びニューロキニンから選択される1つ又は複数である。
【請求項33】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記(疼痛)メディエーターはCGRPであり、前記疼痛はCGRP関連疼痛である、若しくは前記障害はCGRP関連疼痛である、又はここで、片頭痛治療の際に、CGRP関連片頭痛疼痛が治療される。
【請求項34】
請求項33に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記CGRP関連疼痛は、CGRP関連頭痛である。
【請求項35】
請求項33又は34に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記CGRP関連疼痛は、CGRP関連片頭痛疼痛である。
【請求項36】
請求項33乃至35の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記CGRP関連疼痛は、
(a)頭痛(例えば、外傷後頭痛、頭部損傷頭痛、若しくは外傷後脳損傷頭痛)、関節炎疼痛(例えば、変形性関節症疼痛及び/若しくは関節リウマチ疼痛)、運動痛、変性円板疾患疼痛、手根管圧迫痛、軟部組織損傷疼痛、顎関節痛、筋骨格痛、血管障害に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛(例えば、レイノー症候群、バージャー病、末梢静脈疾患、末梢動脈疾患、静脈瘤、静脈内の血栓、血液凝固障害、若しくはリンパ浮腫)、顔面痛、三叉神経・自律神経性頭痛に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛、三叉神経痛に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛、及びCGRP関連の癌誘発性疼痛(例えば、CGRP関連癌誘発性骨痛)から選択されるCGRP関連体性疼痛;
(b)子宮内膜症疼痛、膵炎疼痛、胃腸痛、及び血管障害に起因する若しくは伴うCGRP関連内臓痛から選択されるCGRP関連内臓痛;
(c)慢性疼痛、創傷治癒疼痛、そう痒疼痛、及び熱傷痛から選択されるCGRP関連炎症性疼痛;並びに/又は
(d)帯状疱疹後神経痛、糖尿病疼痛、慢性神経障害性疼痛、及びモートン神経腫疼痛から選択されるCGRP関連神経障害性疼痛である。
【請求項37】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記ニューロンは、三叉神経節ニューロンである。
【請求項38】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、顔、首、及び/又は頭蓋に投与される。
【請求項39】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、皮内投与される。
【請求項40】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、皮内注射により最大10箇所の注射部位に投与される。
【請求項41】
請求項1乃至39の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、皮内注射により10乃至40箇所の注射部位に投与される。
【請求項42】
請求項1乃至39若しくは41の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、皮内注射により25乃至35箇所の注射部位に投与される。
【請求項43】
請求項1乃至38の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、筋肉内投与される。
【請求項44】
請求項1乃至38若しくは43の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、筋肉内注射により最大10箇所の注射部位に投与される。
【請求項45】
請求項1乃至38若しくは43の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、筋肉内注射により10乃至40箇所の注射部位に投与される。
【請求項46】
請求項1乃至38、43若しくは45の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、筋肉内注射により25乃至35箇所の注射部位に投与される。
【請求項47】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒であって、前記キメラクロストリジウム神経毒を、以下の少なくとも1つに投与することを含む:前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋(例えば、後頭筋上部若しくは後頭筋下部)、側頭筋、僧帽筋(例えば、僧帽筋上部、僧帽筋中部、若しくは僧帽筋下部)、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頸板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、若しくは斜角筋。
【請求項48】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒であって、前記キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、又は僧帽筋の少なくとも1つに投与することを含む。
【請求項49】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒であって、前記キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与することを含む。
【請求項50】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含む:
(a)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(b)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(c)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(d)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(e)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(f)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);及び
(g)僧帽筋への2回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に2回の注射)。
【請求項51】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含む:
(a)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(b)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(c)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(d)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(e)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(f)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);並びに
(g)僧帽筋への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への2回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への2回分の注射)。
【請求項52】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、一回の注射毎の(例えば、注射部位毎の)単位用量で投与される。
【請求項53】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下の投与を含む:
(a)前頭筋に2単位用量(好ましくは、前頭筋毎に2単位用量);
(b)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(c)鼻筋に1単位用量(好ましくは、鼻筋毎に1単位用量);
(d)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(e)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(f)後頭筋に3単位用量(好ましくは、後頭筋毎に3単位用量);及び
(g)僧帽筋に2単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に2単位用量)。
【請求項54】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含む:
(a)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(b)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(c)鼻筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に1単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(d)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(e)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(f)後頭筋に6単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に3単位用量);並びに
(g)僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に2単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に2単位用量)。
【請求項55】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、5pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
【請求項56】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、500pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
【請求項57】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1,000pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
【請求項58】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大255,000pg、例えば、3,640乃至255,000pg、又は最大160,000pg(好ましくは最大155,000pg)の前記キメラクロストリジウム神経毒である。
【請求項59】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大120,000pg、好ましくは最大112,000pgである。
【請求項60】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大100,000pg、好ましくは最大70,000pgである。
【請求項61】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、3,640pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
【請求項62】
先行請求項の何れか一項の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、1,000乃至5,500pgの単位用量で投与される。
【請求項63】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、2,000乃至4,500pgの単位用量で投与される。
【請求項64】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、3,500乃至4,500pg又は2,000乃至3,000pg(例えば、2,500pg)の単位用量で投与される。
【請求項65】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、4,000pgの単位用量で投与される。
【請求項66】
請求項47乃至65の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記筋肉への投与(例えば、注射)は、前記筋肉の領域内における筋肉内注射又は皮内注射、好ましくは筋肉内注射を介して行われる。
【請求項67】
請求項1乃至38又は47乃至65の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、神経内投与、神経周囲投与、又は神経節周囲投与によって投与される。
【請求項68】
請求項1乃至38、47乃至65、若しくは67の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経、ガッサー神経節、中間神経、舌咽、迷走神経、及び/又は後頭神経を経て上部頸部根に投与される。
【請求項69】
請求項1乃至38、若しくは47乃至65の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、血管周囲投与によって投与される。
【請求項70】
先行請求項の何れか一項に記載の用途、方法、又は使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記治療は予防的治療、好ましくは片頭痛の予防的治療である。
【請求項71】
(例えば、疼痛治療のための)単位剤形であって、前記単位剤形は以下を含む:
a.5pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒;又は
b.0.2単位乃至最大707単位のキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD
50)に相当する前記キメラクロストリジウム神経毒の量である;並びに
c.任意選択で、薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩;
ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を含む。
【請求項72】
請求項71に記載の単位剤形、ここで、前記単位剤形は以下を含む:
a.1,000pg乃至5,500pgの前記キメラクロストリジウム神経毒;又は
b.42単位乃至最大229単位のキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD
50)に相当する前記キメラクロストリジウム神経毒の量である。
【請求項73】
請求項71又は72に記載の単位剤形、ここで、前記単位剤形は、2,000乃至4,500pgの前記キメラクロストリジウム神経毒を含む。
【請求項74】
請求項71乃至73の何れか一項に記載の単位剤形、ここで、前記単位剤形は、3,500乃至4,500pg、又は2,000乃至3,000pg(例えば、2,500pg)の前記キメラクロストリジウム神経毒を含む。
【請求項75】
請求項71乃至74の何れか一項に記載の単位剤形、ここで、前記単位剤形は、4,000pgの前記キメラクロストリジウム神経毒を含む。
【請求項76】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、7超の安全率(好ましくは、少なくとも10の安全率)を有し、ここで、前記安全率は、-10%の体重変化に必要な、pg/マウスとして測定された毒素の用量を、pg/マウスとして測定されたDAS ED
50(ここで、ED
50はDASスコア2を得るために必要な用量)で除算することによって計算される。
【請求項77】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記H
NドメインのC末端アミノ酸残基は、BoNT/A中のH
NドメインとH
Cドメインを分離する3
10ヘリックスの第1アミノ酸残基に対応し、ここで、前記H
CドメインのN末端アミノ酸残基は、BoNT/B中のH
NドメインとH
Cドメインを分離する3
10ヘリックスの第2アミノ酸残基に対応する。
【請求項78】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【請求項79】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含む単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、その活性化ループ内のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼと接触させ、それにより、前記単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、対応する二鎖キメラクロストリジウム神経毒に変換させることを含む方法によって得られる、ジスルフィド結合を介して軽鎖(L鎖)が重鎖(H鎖)に連結した、二鎖キメラクロストリジウム神経毒である。
【請求項80】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1からなる単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、その活性化ループ内のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼと接触させ、それにより、前記単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、対応する二鎖キメラクロストリジウム神経毒に変換させることを含む方法によって得られる、ジスルフィド結合を介してL鎖がH鎖に連結した、二鎖キメラクロストリジウム神経毒である。
【請求項81】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記BoNT/B H
Cドメインは、E1191M、S1199Y、V1118M、Y1183M、E1191I、E1191Q、E1191T、S1199F、S1199L、S1201V、及びこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の置換変異を含む。
【請求項82】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記BoNT/B H
Cドメインは、E1191M及びS1199Yでの置換変異を含む。
【請求項83】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒のポリペプチド配列の最初のメチオニンアミノ酸残基は、任意選択である。
【請求項84】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒のポリペプチド配列の最初のメチオニンアミノ酸残基は存在しない。
【請求項85】
先行請求項の何れか一項に記載の使用、方法、使用、又は単位剤形のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号17又は18(好ましくは配列番号17)を含む軽鎖、及び配列番号19を含む重鎖を含む(若しくはからなる)二鎖キメラクロストリジウム神経毒であって、ここで、前記軽鎖及び重鎖は、ジスルフィド結合によって互いに結合している。
【請求項86】
以下を含むキット:
(a)請求項71乃至85の何れか一項に記載の単位剤形;
(b)例えば疼痛治療における、前記キットの使用説明書;及び
(c)任意選択で、希釈剤。
【請求項87】
クロストリジウム神経毒が疼痛治療に適しているか否かを判定する方法であって、前記方法は、以下を含む:
(a)第1の試料に含まれるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のレベルを、第2の試料に含まれるCGRPのレベルと比較すること、ここで、前記第1の試料は、前記クロストリジウム神経毒を投与する前に対象から得られたものであり、ここで、前記第2の試料は、前記クロストリジウム神経毒を投与した後に、同じ対象から得られたものである;及び
(b)前記第2の試料中のCGRPのレベルが、前記第1の試料中のCGRPのレベルよりも低い場合、前記クロストリジウム神経毒が疼痛治療に適していると判定すること;又は
(c)前記第2の試料中のCGRPのレベルが、前記第1の試料中のCGRPのレベルよりも低くない(例えば、より高い若しくは同じ)場合、前記クロストリジウム神経毒が疼痛治療に不適であると判定すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛等の障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、実際の組織損傷若しくは組織損傷が起こり得る状態に付随する、或いはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験である。疼痛はまた、神経系の病理的変化によって特徴付けられる神経状態とも言われ、或いは、より正確には、内因性侵害受容系の機能不全と言われる(Raffaeli & Arnaudo (2017), J Pain Res, 10, 2003-2008)。
【0003】
侵害受容は、実際の組織損傷(又は、侵害刺激が継続して与えられる場合、そのような損傷の潜在性)に関する情報が、脳に中継されるプロセスである。侵害受容に関与する感覚ニューロンは、3つの主要なグループ、すなわち、グループA、グループB、及びグループCに分類される(Yam et al (2018), Int J Mol Sci, 19, 8, 2164)。
【0004】
グループAの神経線維は、有髄線維として分類され、更に、それぞれ異なる特性を有するAα、Aβ、Aγ及びAδに細分することができる。これらの線維は一般に、脊髄後角の第I層、III層、IV層及びV層で終止し、第II層の一部は内側に突出した構造となっている。筋紡錘終末及びゴルジ腱からのIa及びIb感覚線維は共に、Aα型である。Aβ線維は一般に低閾値で、皮膚に関与し、遅順応性又は速順応性の機械受容器であり、伸張受容器からのII型求心性線維を含む。Aβ線維は一般に、第III層及びIV層に属している。Aγ線維は、伸張受容器からのII型求心性線維を含む場合がある。Aδ線維は、III型求心性線維と共に、レクセドの第I及びV層で終止する熱侵害受容器及び機械的侵害受容器を含む場合がある。またAδ線維は一般に、最小の有髄神経であり、約30m/sの比較的速い伝導速度を有し得る。Aδ線維の直径は、一般に約2乃至5μmであり、また一般に、短時間の刺痛に対して反応する。
【0005】
グループBの神経線維は、中程度に有髄化しており、通常の伝導速度は3乃至14m/sである。自律神経系(ANS)の節前神経線維及び通常の内臓性求心性線維は、このグループに属する。
【0006】
グループCの神経線維は無髄であり、一般に直径が2μm未満で、一般に最大略2m/sの比較的緩徐な伝導速度を有する。脊髄後根の神経線維(IV型求心性線維)及びANSの節後線維は、このグループに分類することができる。これら全ての線維は、主に侵害受容の機能を持ち、感覚情報を運び、求心性侵害受容情報の約70%を集め、求心性侵害受容情報はその後脊髄に入る。C線維は、脊髄の灰白質の第I及びII層で終止する場合がある。侵害受容の点で、C線維侵害受容器は、熱、機械的、及び/又は化学的刺激によって活性化されるため、ポリモーダルである場合がある。例えば、C線維は局在化が不十分な刺激によっても、活性化され得る。神経化学の点では、C線維はペプチド作動性又は非ペプチド作動性の何れにも分類でき、これらの線維の約50%は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ニューロキニン、及びサブスタンスP(SP)を含む神経ペプチドを発現する。
【0007】
疼痛に関与する神経伝達物質は多様であり、主要なタイプの神経伝達物質が全て含まれる。例えば、炎症性メディエーター:プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタサイクリン(PGI2)、ロイコトリエンB4(LTB4)、神経成長因子(NGF)、プロトン、ブラジキニン(BK)、ATP、アデノシン、SP、ニューロキニンA(NKA)、ニューロキニンB(NKB)、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)、ヒスタミン、グルタミン酸、ノルエピネフリン(NE)、及び一酸化窒素(NO);並びに非炎症性メディエーター:CGRP、γーアミノ酪酸(GABA)、オピオイドペプチド、グリシン、及びカンナビノイド(Yam et al (2018), Int J Mol Sci, 19, 8, 2164)が挙げられる。
【0008】
治療において特に関心が持たれているのは、CGRPである。CGRPは、中枢神経系及び抹消神経系の両方で広く産生されているが、主に一次求心性神経に存在している。脊髄後根神経節(DRG)の直接の誘導体として、CGRPは脊髄の後角に見出すことができ、侵害刺激の伝導に関連している場合がある。CGRPはSPの興奮作用に関連しており、SPの興奮作用は、Ca2+の放出をもたらす。CGRPの受容体(カルシトニン受容体様受容体(CALCRL))は通常、側坐核にあり、CNSがCGRPを介した疼痛伝達を制御し得ることを示している。CGRPは、抹消神経系及び中枢神経系に広く分布しており、その受容体は疼痛経路で発現する。CGRP様免疫反応性(CGRP-LI)は通常、40乃至50%のDRGニューロンに見出される。更に、CGRPは通常、サブスタンスP及びニューロキニン等のDRGニューロン内の他の神経ペプチドと共存している。末梢CGRP-LI線維は脊髄の第I層、III層、及びV層で終止する場合があり、CGRPを含むDRGニューロンは、関節を神経支配する。従って、CGRP及びその受容体は、末梢及び中枢の疼痛経路に広く分布し得る(Schou et al (2017), The Journal of Headache and Pain, 18, 34, 1-17)。動物では、CGRPは、皮膚の侵害性疼痛及び/又は機械的刺激により、末梢及び中枢神経終末から放出される場合がある。ラットでは、循環CGRPの大部分が、血管周囲神経末端から放出される場合がある。急性及び慢性の侵害受容は、感覚神経終末及び中枢末端から脊髄後角へのCGRP放出の変化を引き起こす場合がある。CGRPは、最も強力な血管拡張剤の1つとして知られている。α-CGRP及びβ-CGRPの2つのアイソフォームの特性が明らかにされている(Russell et al (2014), Physiol Rev, 94, 4, 1099-1142)。アイソフォームαは主に一次感覚ニューロンで発現するが、アイソフォームβは、主に内在性腸管ニューロンで見出される。この神経ペプチドの成熟型は37アミノ酸で構成されており、その発現は、特にDRG及び三叉神経節の感覚ニューロンで認められている。成熟型は、中枢及び末梢神経終末の末端領域に局在する小胞に貯蔵され、そこから背側脊髄又は様々な末梢組織、特に、血管緊張を調節し得る周囲の血管に分泌され得る。更に、げっ歯類及びヒトの髄膜血管にはCGRP陽性の侵害受容器ネットワークの存在が観察されており、三叉神経節ニューロンの約40乃至50%が、CGRPに対して陽性であることが分かっている。更に、CGRPの発現は、視床下部、視床、中脳水道周囲灰白質、上丘及び下丘、扁桃体、三叉神経頸部複合体、並びに小脳等のCNS領域でも観察されている。CGRPが三叉神経頸部複合体においてシナプス及びニューロン活性を変化させ、視床及び皮質領に侵害受容シグナルを伝達する能力を考慮すると、これらの脳領域は片頭痛の病態生理と関連している可能性がある(Tardiolo et al (2019), Int J Mol Sci, 20(12), 2932)。
【0009】
従来の疼痛(例えば、CGRP関連疼痛)の治療としては、シナプス前ニューロンによって既に放出された疼痛メディエーター(例えば、CGRP)を標的とする、モノクローナル抗体及び小分子アンタゴニストが挙げられる。代替的な手法として、特定の従来の治療薬は、疼痛メディエーターの受容体を標的とする。これらの手法は、次のような多くの不利益を伴う:全身的なケミカルメディエーター(例えば、CGRP)への影響;悪心;嘔吐;胃腸障害;下痢;徐脈;低血圧;気管支痙攣;呼吸困難;疲労;不眠症;めまい;口渇;潮紅;熱感若しくは冷感;胸痛;便秘;そう痒;眠気;耳鳴;不穏状態;筋痙攣;注射部位疼痛;上気道感染症;疲労;上咽頭炎;注射部位紅斑;注射部位硬結;不安;うつ;注射部位そう痒;インフルエンザ;尿路感染症;傾眠;知覚異常;心拍数増加;脳卒中;及び/又は心臓発作(Woo (2020), Nature, 586, S4-S6及びTardiolo et al (2019), Int J Mol Sci, 20(12), 2932)。このため、副作用がより少なく、且つ/又は放出時点で疼痛メディエーターを遮断する、改善された疼痛治療薬が必要とされている。
【0010】
本発明は、上述の問題の1つ又は複数を解決する。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、BoNT/Aとは異なり、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含むキメラクロストリジウム神経毒が、疼痛メディエーターを分泌するAδ又はC神経線維を含むニューロンに結合し得ること、前記ニューロンからの前記メディエーターの放出の阻害に有効であり得ることを見出した。従って、このような阻害により、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、疼痛治療が可能な鎮痛薬として機能し得る。特に、本発明者らは、特許請求の範囲に記載されているキメラクロストリジウム神経毒が、前記ニューロンからのCGRP放出を阻害するのに有効であり得ることを示した。従って、前記CGRP放出の阻害により、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、CGRP関連疼痛の治療が可能な鎮痛薬として機能し得る。
【0012】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、分泌時点でケミカルメディエーターを遮断することによって、疼痛メディエーター(例えば、CGRP)が隣接及び遠位細胞に到達するのを阻止し得ると考えられる。これにより、有利には、疼痛に関連した異常なメディエーター放出の選択的な遮断により、メディエーター放出を他の場所で保存することができ;作用持続時間がより長い(非キメラクロストリジウム神経毒より副作用が少ない、及び/若しくは安全域が広い)治療薬が提供され;且つ/又は、従来の治療法と比較して副作用が少なくなる。特に、従来の治療薬による、一旦放出されたCGRP作用及び/又はCGRP受容体の遮断は、悪心、疲労、心拍数増加、脳卒中、及び/又は心臓発作を引き起こす可能性がある。前記副作用は、本発明により、最小限に抑える/回避することができる。
【0013】
本発明者らは更に、キメラクロストリジウム神経毒が、片頭痛病態生理学に関連する中枢神経系構造のSNAP25を切断し得ることを見出した。有利なことに、キメラクロストリジウム神経毒は、片頭痛(例えば、片頭痛疼痛)の治療において、特に有効であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一態様において、本発明は、疼痛治療に使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0015】
一態様において、本発明は、疼痛治療の方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0016】
一態様において、本発明は、疼痛治療用の薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0017】
一態様において、本発明は、片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)を治療する際に使用するためのキメラクロストリジウム神経毒を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0018】
一態様において、本発明は、片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)を治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0019】
一態様において、本発明は、片頭痛(好ましくは片頭痛疼痛)治療用の薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0020】
片頭痛は、反復性片頭痛、又は慢性片頭痛であってもよい(好ましくは、慢性片頭痛)。頭痛(例えば、片頭痛)を月に15日未満(例えば、月に少なくとも1日以上15日未満)経験する場合、好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛)を月に少なくとも4日以上15日未満経験する場合、対象は反復性片頭痛を患っている可能性がある。換言すると、反復性片頭痛は、月に15日未満(例えば、月に少なくとも1日以上15日未満)の頭痛(例えば、片頭痛)、好ましくは、月に少なくとも4日以上15日未満の頭痛(例えば、片頭痛)として定義され得る。頭痛(例えば、片頭痛)を少なくとも月に15日経験する場合、対象は慢性片頭痛を患っている可能性がある。頭痛(例えば、片頭痛)を月に少なくとも15日、少なくとも3ヶ月間にわたって経験し、片頭痛の特徴が月に少なくとも8日間見られる場合、対象は慢性片頭痛を患っている可能性がある。換言すると、慢性片頭痛は、月に少なくとも15日間ある頭痛(例えば、片頭痛)として定義され得る。換言すると、慢性片頭痛は、片頭痛の特徴が月に少なくとも8日見られ、また少なくとも3ヶ月間にわたって月に少なくとも15日間ある頭痛(例えば、片頭痛)として定義され得る。一実施形態では、慢性片頭痛は一日に4時間以上続く場合がある。頭痛に加えて、片頭痛は、光感受性の増加、悪心、及び/又は嘔吐を含む、1つ又は複数の付加的症状を伴う場合がある。
【0021】
好ましくは、片頭痛を治療する際、キメラクロストリジウム神経毒により片頭痛疼痛が治療される。
【0022】
一態様において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することによって疼痛を治療する際に使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0023】
関連する態様において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することによって疼痛を治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0024】
別の関連する態様において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することにより疼痛を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0025】
一実施形態において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのCGRPの放出を阻害することによってCGRP関連疼痛を治療する際に使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。対応する治療方法及び使用もまた、提供される。
【0026】
メディエーターは、(疼痛等の)障害において役割を有する、ニューロンから放出される何れの分子であってもよい。本発明のキメラクロストリジウム神経毒による前記メディエーターの放出の阻害は、前記障害を治療し得る(例えば、疼痛を治療し得る)。
【0027】
メディエーターは、神経伝達物質であってよい。
【0028】
ニューロンからのメディエーターの放出の阻害は、部分阻害であっても完全阻害であってもよく、好ましくは完全阻害である。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%のメディエーターがニューロンから放出されるのを阻害し得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、100%のメディエーターがニューロンから放出されるのを阻害する。
【0029】
疼痛メディエーターは、神経伝達物質であってよい。
【0030】
ニューロンからの疼痛メディエーターの放出の阻害は、部分阻害であっても完全阻害であってもよく、好ましくは完全阻害である。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の疼痛メディエーターがニューロンから放出されるのを阻害し得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、100%の疼痛メディエーターがニューロンから放出されるのを阻害する。
【0031】
阻害は、好ましくはSNARE関連(例えば、SNAP25関連)放出の阻害である。
【0032】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、BoNT/A(好ましくは、配列番号6[例えば、配列番号6のニ本鎖形態]として示される天然BoNT/A)が、ニューロンからメディエーターが放出されるのを阻害するよりも多く、ニューロンからのメディエーターの放出を阻害する。所定の用量(例えば、1nM)では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、同じ用量(例えば、1nM)のBoNT/Aよりも、ニューロンからのメディエーターを少なくとも10%又は20%(好ましくは、少なくとも30%)多く阻害し得る。所定の用量(例えば、1nM)では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、同じ用量(例えば、1nM)のBoNT/Aよりも、ニューロンからのメディエーターを10乃至90%又は20乃至90%(好ましくは、30乃至85%)多く阻害し得る。従って、BoNT/Aと比較して、ずっと少ない用量のキメラクロストリジウム神経毒で、同じ量のニューロンからのメディエーターの放出を阻害することができる。例えば、キメラクロストリジウム神経毒の用量を、同じ量のニューロンからのメディエーターの放出を阻害するために必要なBoNT/Aの用量よりも、少なくとも100倍、200倍若しくは500倍、好ましくは1000倍低減できる。例えば、キメラクロストリジウム神経毒の用量を、同じ量のニューロンからのメディエーターの放出を阻害するために必要なBoNT/Aの用量よりも、少なくとも500乃至2000倍又は750乃至1750倍、好ましくは1000乃至1500倍低減できる。
【0033】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、BoNT/A(好ましくは、配列番号6[例えば、配列番号6の二鎖形態]として示される天然BoNT/A)がニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害するよりも多く、ニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害する。所定の用量(例えば、1nM)では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、同じ用量(例えば、1nM)のBoNT/Aよりも、ニューロンからの疼痛メディエーターを少なくとも10%又は20%(好ましくは、少なくとも30%)多く阻害し得る。所定の用量(例えば、1nM)では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、同じ用量(例えば、1nM)のBoNT/Aよりも、ニューロンからの疼痛メディエーターを10乃至90%又は20乃至90%(好ましくは、30乃至85%)多く阻害し得る。従って、BoNT/Aと比較して、ずっと少ない用量のキメラクロストリジウム神経毒で、同じ量のニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することができる。例えば、キメラクロストリジウム神経毒の用量を、同じ量のニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害するために必要なBoNT/Aの用量よりも、少なくとも100倍、200倍又は500倍、好ましくは1000倍低減できる。キメラクロストリジウム神経毒の用量を、同じ量のニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害するために必要なBoNT/Aの用量よりも、少なくとも500乃至2000倍又は750乃至1750倍、好ましくは1000乃至1500倍低減できる。
【0034】
キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロンからの複数のメディエーターの放出を阻害し得る。
【0035】
キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロンからの複数の疼痛メディエーターの放出を阻害し得る。
【0036】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは鎮痛特性を有する。換言すると、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは鎮痛性キメラクロストリジウム神経毒である。
【0037】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、疼痛を治療するために、ニューロン成長もニューロン修復も促進しない。換言すると、キメラクロストリジウム神経毒は好ましくは、ニューロン成長の促進、ニューロン修復の促進、又はニューロン成長及びニューロン修復の促進の何れかによっても、疼痛を治療するのではない。
【0038】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、本明細書に記載の障害を治療するために、ニューロン成長を促進せず、ニューロン修復も促進しない。換言すると、好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロン成長の促進、ニューロン修復の促進、又はニューロン成長及びニューロン修復の促進の何れかによって、本明細書に記載の障害を治療するのではない。
【0039】
用語「ニューロン成長及び/又はニューロン修復を促進」は、ニューロン成長及び/又はニューロン修復の速度の増加を包含する。用語「ニューロン成長及び/又はニューロン修復」は、損傷したニューロン回路を再構築し、それによりニューロンのネットワーク若しくは集合における活性及び/又はニューロンコミュニケーションを回復させることを包含する。従って、用語「ニューロン修復」は、本明細書で使用される場合、特定のニューロンの修復と共に、ニューロン回路の修復も包含する。また、ニューロン可塑性も、この用語に包含される。用語「ニューロン可塑性」は、本明細書で使用される場合、軸索発芽、樹状突起発芽、神経発生(例えば、新しいニューロンの生成)、成熟、分化、及び/又はシナプス可塑性(例えば、シナプス強度、活性、解剖学的形態、及び/又は結合性の変化を含む)を包含する。用語「ニューロン成長及び/又はニューロン修復を促進」はまた、(例えば、損傷部位において、或いは損傷部位の近くで)機能性シナプスの確立を促進することも包含する。用語「ニューロン成長」は、本明細書で使用される場合、軸索及び/又は樹状突起の成長を含む、ニューロンの任意の部分の成長を包含する。前記用語は、神経突起の長さ、神経突起の数(例えば、1つの細胞あたりの神経突起の数)、並びに/又はニューロンの細胞体若しくは細胞膜からの突起の長さ及び/若しくは数の増加、例えば、対象のニューロンにおける、ニューロンの軸索成長、及び/若しくは軸索発芽等を包含する。前記軸索成長は、ニューロン間の結合及び/又は化学的コミュニケーションを促進し得る。
【0040】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、疼痛を治療するために、神経免疫反応を促進しない。好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、本明細書に記載の障害を治療するために、神経免疫反応を促進しない。この文脈における神経免疫反応は、ミクログリア反応を包含する。従って、一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、疼痛を治療するために、ミクログリア反応を促進しない。従って、一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、本明細書に記載の障害を治療するために、ミクログリア反応を促進しない。
【0041】
好ましい実施形態では、疼痛は、脳障害に伴う、又は起因する疼痛ではない。好ましい実施形態では、本明細書に記載の障害は、脳障害に伴う、又は起因する障害ではない。この文脈で使用される用語「脳障害」は、「脳疾患」と互換的である。「脳障害」は、この文脈で使用される場合、脳内又は脳の外部を起源とする障害を包含し、脳組織損傷を引き起こす身体傷害に伴う障害を含む。この文脈に包含される脳障害の例としては、外傷性脳損傷、癌(例えば、脳腫瘍)、感染症(例えば、脳炎、髄膜炎、脳膿瘍、及び脳炎)、脳卒中、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病関連障害、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、プリオン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、運動失調、ハラーホルデン・スパッツ病、及び前頭側頭葉変性症)、脳動脈瘤、多発性硬化症、無酸素性損傷、毒性損傷、及び代謝損傷の何れか1つ(又は複数)が挙げられる。脳障害は、外傷性脳損傷、癌、感染症(例えば、脳炎、髄膜炎、脳膿瘍、及び脳炎)、脳卒中、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病関連障害、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、プリオン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、運動失調、ハラーホルデン・スパッツ病、及び前頭側頭葉変性症)、脳動脈瘤、多発性硬化症、無酸素性損傷、毒性損傷、及び/又は代謝損傷に起因し得る。
【0042】
キメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、Aδ線維又はC線維を含むニューロンに結合する。前記結合は、キメラクロストリジウム神経毒のBoNT/B HCドメイン(例えば、そのHCC部分)を媒介とし得る。ニューロンへの結合後、キメラクロストリジウム神経毒は、エンドソームを経由して内部移行し、BoNT/A軽鎖は、BoNT/A転位置ドメインにより、エンドソームからニューロンのサイトゾル中に、転位置し得る。サイトゾル中で一度、軽鎖はSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断可能で、それにより前記ニューロンからの放出/分泌を阻害する(前記ニューロンからの疼痛メディエーターの放出/分泌を含む)。
【0043】
Aδ線維又はC線維を含むニューロンは、Pichon & Chesler (2014), Frontiers in Neuroanatomy (https://doi.org/10.3389/fnana.2014.00021)及びYam et al (2018), Int J Mol Sci, 19, 8, 2164に記載されている。用語「線維」(例えば、Aδ線維若しくはC線維の文脈において)は、好ましくは、ニューロンの軸索を指す。一般に、複数の線維(例えば、それぞれ複数のAδ線維又は複数のC線維)は共に、例えば、線維束として、対象におけるより大きな神経/ニューロン構造を定義し得る。例えば、Aδ線維束又はC線維束である。前記複数の線維は、幾つかの実施形態では、Aδ線維又はC線維以外の線維も含み得る。例えば、神経は、Aδ線維を含むニューロン及び/又はC線維を含むニューロンを含む、複数のニューロンを含み得る。
【0044】
キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ線維を含むニューロンに結合し得る。Aδ線維(又はAδ線維を含むニューロン)は、ペプチド作動性であり、速伝導性で、軽度に有髄化しており、鋭く/速い疼痛に関与し、侵害受容に関与し、且つ/又は、温度感覚に関与するものとして、特徴付けることができる。好ましくは、Aδ線維(又はAδ線維を含むニューロン)は、5乃至75m/s(例えば、5乃至35m/s)の伝導速度、及び/又は約1乃至5μm(例えば、2乃至5μm)の直径を有し得る。本発明のキメラクロストリジウム神経毒が結合するAδ線維を含むニューロンは、疼痛メディエーターを放出し得るニューロンである。特に、前記ニューロンは、CGRPを放出できるため、CGRP関連疼痛における役割を有し得る。Aδ線維を含むニューロンに結合することにより、キメラクロストリジウム神経毒は、そのSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断することにより前記ニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害し、それによって前記ニューロンからの疼痛メディエーターの放出/分泌を阻害する。
【0045】
キメラクロストリジウム神経毒は、C線維を含むニューロンに結合し得る。C線維(又はC線維を含むニューロン)は、ペプチド作動性であり、低(例えば、緩徐)伝導性で、無髄であり、鈍痛/緩徐痛に関与し、神経障害性疼痛に関与し、温度感覚に関与し、且つ/又は、そう痒感覚に関与するものとして、特徴付けることができる。C線維を含むニューロンは、ポリモーダルである場合がある。好ましくは、C線維(又はC線維を含むニューロン)は、0.5乃至2m/sの伝導速度、及び/又は約0.2乃至1.5μm(例えば、0.2乃至0.5μm)の直径を有し得る。本発明のキメラクロストリジウム神経毒が結合するC線維を含むニューロンは、疼痛メディエーターを放出し得るニューロンである。特に、前記ニューロンは、CGRPを放出することができるため、CGRP関連疼痛における役割を有し得る。C線維を含むニューロンに結合することにより、キメラクロストリジウム神経毒は、そのSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断して前記ニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することができ、それによって前記ニューロンからの疼痛メディエーターの放出/分泌を阻害する。
【0046】
好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒が結合するニューロンは、C線維を含むニューロンである。
【0047】
トロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)の発現は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンを(例えば、Aβ線維を含むニューロンから)識別するためのマーカーであってもよい。換言すると、本発明のAδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンは、TrkAを発現するニューロンであってもよい。
【0048】
使用において、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくともAδ線維を含むニューロン及びC線維を含むニューロンを含む、複数のニューロンに結合し得る。複数のニューロンは、対象におけるより大きな神経/ニューロン構造の一部(例えば、線維束を含む)であってもよい。
【0049】
Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンは、中枢神経系のニューロン(例えば、視床下部、視床、中脳水道周囲灰白質、上丘、下丘、扁桃体、三叉神経頸部複合体、及び/若しくは小脳)、又は抹消神経系のニューロンであってもよい。キメラクロストリジウム神経毒は、頭痛、好ましくは片頭痛疼痛等の特定の状態を治療する際に、中枢神経系のニューロンからのメディエーターの放出を阻害し得る。キメラクロストリジウム神経毒は、頭痛、好ましくは片頭痛疼痛等の特定の疼痛状態を治療する際に、中枢神経系のニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害し得る。
【0050】
本発明によるAδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンは、好ましくは、感覚ニューロンである。感覚ニューロンは、一次求心性ニューロン等の一次感覚ニューロンであってもよい。例えば、キメラクロストリジウム神経毒が結合するニューロンは、脊髄後根神経節及び/又は三叉神経節の感覚ニューロンであってもよい。付加的又は代替的に、ニューロンは、内在性腸管ニューロンであってもよい。
【0051】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、BoNT/A(好ましくは、配列番号6[例えば、配列番号6の二鎖形態]として示される天然BoNT/A)がニューロンに結合する時の親和性よりも大きな親和性で、Aδ線維又はC線維を含むニューロンに結合し得る。特に、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、BoNT/Aがニューロンに結合する時の親和性よりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍若しくは10,000倍大きな親和性で、Aδ線維又はC線維を含むニューロンに結合し得る。
【0052】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、キメラクロストリジウム神経毒が、Aδ線維又はC線維を含まないニューロン(好ましくは、感覚ニューロン)(例えば、Aβ線維を含むニューロン)に結合する時の親和性よりも大きな親和性で、Aδ線維又はC線維を含むニューロンに結合し得る。例えば、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、キメラクロストリジウム神経毒が、Aδ線維やC線維を含まないニューロン(好ましくは、感覚ニューロン)(例えば、Aβ線維を含む感覚ニューロン)に結合する時の親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、1,000倍若しくは10,000倍大きな親和性で、Aδ線維又はC線維を含むニューロンに結合し得る。
【0053】
Aβ線維(又はAβ線維を含むニューロン)は、有髄で、速伝導性であり、触覚に関与し、且つ/又は一般に他の非侵害性刺激に反応するものとして、特徴付けることができる。好ましくは、Aβ線維(又はAβ線維を含むニューロン)は、80乃至120m/sの伝導速度、及び/又は約6乃至20μmの直径を有し得る。神経フィラメント200(NF200)の発現は、Aβ神経線維を含むニューロンを(例えば、Aδ線維又はC線維を含むニューロンから)識別するためのマーカーであってもよい。換言すると、Aβ線維を含むニューロンは、NF200を発現するニューロンであってもよい。
【0054】
他の実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、投与(例えば、注射)部位から遠位の部位で、効果を発揮し得る。例えば、キメラクロストリジウム神経毒の投与後、SNAREタンパク質の切断(例えば、SNAP25切断)が、投与(例えば、注射)部位から遠位の部位で生じ得る。好ましくは、そのような効果は、投与部位から遠位の部位へのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン輸送を経て生じる。疼痛(好ましくは頭痛、最も好ましくは片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、キメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、投与(例えば、注射)部位から遠位の部位で、効果を発揮する。一実施形態では、この効果は、抹消作用に加えて得られるものであってよい。従って、好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛(好ましくは頭痛、最も好ましくは片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、ニューロン輸送を経て輸送されてもよい。
【0055】
ニューロン輸送は、逆行性輸送であっても、順行性輸送であってもよく、好ましくは逆行性輸送である。輸送は、軸索輸送であってもよい。
【0056】
「逆行性輸送」は、軸索輸送の形態(別名、軸索内輸送又は軸索流)であってもよい。軸索輸送は、通常、軸索原形質と呼ばれる軸索の細胞質を通じて、ミトコンドリア、脂質、シナプス小胞、タンパク質、及び他の細胞小器官の、ニューロン細胞体から又はニューロン細胞体への移動の役割を担う細胞プロセスである。軸索は数メートルの長さであり、ニューロンは、拡散により核及び細胞小器官の産物を軸索末端に運ぶことができないため、軸索輸送を利用する。軸索輸送はまた、リソソームにより細胞体で分解される予定の、軸索から細胞体へ戻る、分子の移動の役割を担う。
【0057】
「逆行性輸送」は、ニューロンの細胞体へ向かう移動を指す場合があり、「順行性輸送」は、ニューロンのシナプスへ向かう移動を指す場合がある。
【0058】
一実施形態では、中枢神経系のニューロンへのニューロン(例えば、逆行性)輸送は、ニューロン細胞体へ向かうキメラクロストリジウム神経毒の輸送(例えば、軸索輸送)を指す場合があり、ニューロン細胞体は、中枢神経系の近くに位置している。
【0059】
ここで、ニューロン(例えば、逆行性)輸送について、更に詳細に説明する。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、投与部位で第1のニューロン(一次感覚求心性神経等)に結合し得る。キメラクロストリジウム神経毒は、第1のニューロンによって内部移行し、第1のニューロン内で輸送され、その後第1のニューロンから放出され得る。好ましくは、クロストリジウム神経毒は、筋肉内投与部位又は皮内投与部位(例えば、筋肉内若しくは皮内注射)で、第1のニューロンに結合する。このようなニューロンは、抹消ニューロンであってよく、好ましくは、Aδ線維又はC線維を含むニューロンであってよい。一旦放出されると、キメラクロストリジウム神経毒は、第2のニューロンに結合し、内部移行し、前記第2のニューロン内でSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断し得る。或いは、キメラクロストリジウム神経毒は、第2のニューロンに結合し、第2のニューロンによって内部移行し、第2のニューロン内で輸送され、その後第2のニューロンから放出され得る。このプロセスは、キメラクロストリジウム神経毒がニューロン(例えば、第3のニューロン)に結合し、内部移行し、前記ニューロン内でSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断するまで、繰り返されてもよい。第2のニューロンは、第2の感覚求心性神経であってもよい。好ましくは、第2のニューロンは、脳、脳幹又は脊髄に存在するニューロン等の中枢神経系のニューロンである。第2のニューロンは、三叉神経節に存在するニューロンであってもよい(例えば、SNARE切断が、その軸索で生じ得る)。
【0060】
幾つかの実施形態では、筋肉内投与の際に、キメラクロストリジウム神経毒は、運動ニューロンを介してニューロン(例えば、逆行性に)輸送され、運動ニューロンから放出され、第2のニューロン、好ましくは中枢神経系のニューロンに入ってもよい。前記ニューロンは、感覚ニューロンであってもよい。
【0061】
一実施形態では、筋肉内投与の際、キメラクロストリジウム神経毒が骨膜又は皮膚に存在する感覚ニューロンに拡散及び結合し得る(例えば、骨膜若しくは皮膚で終止する)。
【0062】
理論に束縛されることを望むものではないが、前述したニューロン(例えば、逆行性)輸送機構により、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、中枢神経系の1つ又は複数のニューロンからの分泌を阻止し得ると考えられる。従って、キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロン(例えば、逆行性)輸送により中枢神経系のニューロンへ移動し、前記ニューロンのSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断し得る。
【0063】
好ましい実施形態では、中枢神経系の1つ若しくは複数のニューロンからの分泌を阻害する(例えば、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)の放出を阻害する)ことにより、キメラクロストリジウム神経毒は、本明細書に記載の疼痛又は障害を治療し得る。これは、疼痛又は片頭痛の治療において、好ましくは片頭痛疼痛の治療において、特に適切である。キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロン(例えば、逆行性)輸送により中枢神経系のニューロンへ移動し、前記ニューロンのSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断し得る。従って、キメラクロストリジウム神経毒は、中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することにより、好ましくはメディエーター、より好ましくは疼痛メディエーターの中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害することにより、疼痛(例えば、頭痛若しくは片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療し得る。
【0064】
中枢神経系のニューロンは、脳幹、脊髄、及び/又は脳のニューロンであってよい。例えば、中枢神経系のニューロンは、三叉神経核(例えば、三叉神経脊髄知覚核等の三叉神経脊髄路核)、脊髄(好ましくは、脊髄後角のニューロン)、視床下部、視床、中脳水道周囲灰白質、上丘、下丘、扁桃体、三叉神経頸部複合体、皮質、及び/又は小脳のニューロンであってよい。三叉神経核のニューロンは、三叉神経尾側核(例えば、尾側部)のニューロンであってよい。
【0065】
好ましい実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、脳幹のニューロン内、より好ましくは、三叉神経核のニューロン(更に好ましくは、三叉神経脊髄(知覚)核)内のSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。キメラクロストリジウム神経毒は、前記ニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害し得る。前記SNAREタンパク質の切断は、投与部位からのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送を経て生じ得る。このようなニューロンは、筋肉、骨膜、及び/又は感覚三叉神経ニューロンにより神経支配される皮膚(例えば、対象の筋肉、骨膜、並びに/又は顔の皮膚及び/若しくは頭皮)に、キメラクロストリジウム神経毒を投与することにより、標的とされ得る。或いは、ニューロンはAδ神経線維又はC神経線維を含んでもよく、キメラクロストリジウム神経毒はそれらに結合し、その後(例えば、ニューロンの細胞質を介した輸送/拡散の後)、そのSNAREタンパク質を切断し得る。前記切断は、三叉神経脊髄知覚核にあるニューロン末端でなされ得る。最も好ましくは、前記SNAREの切断及び分泌の阻害により、片頭痛又は片頭痛疼痛が治療される。
【0066】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経運動核のニューロン内のSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。キメラクロストリジウム神経毒は、前記ニューロンからの分泌を阻害し得る。前記SNAREタンパク質の切断は、投与部位からのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送を経て生じ得る。
【0067】
別の好ましい実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、頸髄等の脊髄のニューロン内のSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。より好ましくは、前記ニューロンは、脊髄の後角にある(例えば、感覚ニューロンに関連する)ニューロンである。キメラクロストリジウム神経毒は、前記ニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害し得る。前記SNAREタンパク質の切断は、投与部位からのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送を経て生じ得る。このようなニューロンは、筋肉、骨膜及び/又は脊髄感覚ニューロンにより神経支配される皮膚(例えば、対象の筋肉、骨膜、並びに/又は後頭部及び/若しくは首の皮膚)に、キメラクロストリジウム神経毒を投与することにより、標的とされ得る。或いは、ニューロンはAδ神経線維又はC神経線維を含んでもよく、キメラクロストリジウム神経毒はそれらに結合し、その後(例えば、ニューロンの細胞質を介した輸送/拡散の後)、そのSNAREタンパク質を切断し得る。前記切断は、脊髄にあるニューロン末端でなされてもよい。最も好ましくは、前記SNAREの切断及び分泌の阻害により、片頭痛又は片頭痛疼痛が治療される。
【0068】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、脊髄の(例えば、運動ニューロンに関連する)前角ニューロン内のSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。キメラクロストリジウム神経毒は、前記ニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害し得る。前記SNAREタンパク質の切断は、投与部位からのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送を経て生じ得る。
【0069】
別の好ましい実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経節ニューロン、例えばその軸索内にあるSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断する。キメラクロストリジウム神経毒は、前記ニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害し得る。前記SNAREタンパク質の切断は、投与部位からのキメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送を経て生じ得る。或いは、ニューロンはAδ神経線維又はC神経線維を含んでもよく、キメラクロストリジウム神経毒はそれらに結合し、その後(例えば、ニューロンの細胞質を介した輸送/拡散の後)、そのSNAREタンパク質を切断し得る。最も好ましくは、前記SNAREの切断及び分泌の阻害により、片頭痛又は片頭痛疼痛が治療される。
【0070】
クロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送は、記述されており(Bomba-Warczak et al (2016), Cell Rep., 16(7), 1974-1987を参照)、理論に束縛されることを望むものではないが、(例えば、本発明の事例においては、SYTI又はSYTII以外の受容体への結合を経て)クロストリジウム神経毒が非正準の受容体に結合すること、非酸性化細胞小器官への組み込み、(例えば、身体の末梢から中枢神経系に向けての)ニューロン(例えば、逆行性)輸送、及びニューロンから細胞外間隙への放出により起こると考えられている。このような場合、クロストリジウム神経毒は、未変化のまま(すなわち、ジスルフィド結合によって互いに結合したL鎖及びH鎖を含む二鎖が未変化のまま)で、正準の中毒経路を経て(例えば、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の文脈においては、SYTI又はSYTIIを経て)、第2のニューロンへの結合を可能にし得ると記載されている。
【0071】
対象に投与されたキメラクロストリジウム神経毒の一部が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンに結合し、前記ニューロンからのメディエーター(例えば、疼痛メディエーター)の放出を阻害し、キメラクロストリジウムの一部が、投与部位から遠位の部位で効果を発揮し得る。投与部位から遠位の部位で効果を発揮し得る部分は、中枢神経系のニューロンからの分泌を阻害し得る、好ましくはメディエーター(例えば、神経伝達物質)の分泌、より好ましくは、中枢神経系のニューロンからの疼痛メディエーターの分泌を阻害し得る。キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロン(例えば、逆行性)輸送により中枢神経系のニューロンへ移動し、前記ニューロンのSNAREタンパク質(例えば、SNAP25)を切断し得る。
【0072】
幾つかの実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒のニューロン(例えば、逆行性)輸送は、キメラクロストリジウム神経毒の1つのニューロンから別のニューロンへの経シナプス移動(例えば、経細胞輸送)を含み得る。
【0073】
ニューロンからの分泌の阻害は、部分阻害であっても完全阻害であってもよく、好ましくは完全阻害である。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロンからの分泌を、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%阻害し得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロンからの分泌を100%阻害する。この文脈における分泌は、好ましくはSNARE関連(例えば、SNAP25関連)分泌である。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)の、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの放出を阻害することにより(ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合する)、及び、中枢神経系のニューロンからの(例えばメディエーター、好ましくは疼痛メディエーターの)分泌を阻害することにより、片頭痛又は本明細書に記載の障害(好ましくは、疼痛)を治療し得る。
【0075】
クロストリジウム属の細菌は、非常に強力且つ特異的なタンパク質毒素を産生し、この毒素が送達されるニューロン及び他の細胞を害し得る。このようなクロストリジウム毒素の例としては、クロストリジウム・バラティ及びクロストリジウム・ブチリカムにより産生される神経毒と共に、クロストリジウム・テタニ(TeNT)及びクロストリジウム・ボツリヌム(BoNT)血清型A乃至G、及びX(WO 2018/009903 A2を参照)により産生される神経毒が挙げられる。テタヌス及びボツリヌス毒素は共に、冒されたニューロンの機能を阻害すること、特に神経伝達物質の放出を阻害することにより、作用する。ボツリヌス毒素は一般に、神経筋接合部で作用し、抹消神経系におけるコリン作動性伝達を阻害するが、テタヌス毒素は中枢神経系において作用する。
【0076】
自然界では、クロストリジウム神経毒は、タンパク質切断事象により翻訳後に修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに結合した2つのポリペプチド鎖が形成された単鎖ポリペプチドとして合成される。切断は、鎖間ジスルフィド結合をもたらすシステイン残基の間に位置する活性化部位(例えば、活性化ループ)としてしばしば称される、特定の切断部位において生じる。この二鎖形態が、毒素の活性型である。ニ本の鎖は、分子量略100kDaの重鎖(H鎖)、及び分子量略50kDaの軽鎖(L鎖)と呼ばれる。H鎖は、N末端転位置成分(HNドメイン)及びC末端ターゲティング成分(HCドメイン)を含む。切断部位は、L鎖と転位置ドメイン成分との間に位置する。HCドメインのその標的ニューロンへの結合、及びエンドソームを経由した細胞への結合毒素の内部移行の後に、HNドメインは、エンドソーム膜を横断してサイトゾル中へL鎖を転位置させ、L鎖はプロテアーゼ機能を提供する(無細胞毒性プロテアーゼとしても知られる)。
【0077】
無細胞毒性プロテアーゼは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP25、VAMP、又はシンタキシン、好ましくはSNAP25)として知られる細胞内輸送タンパク質をタンパク分解性に切断することにより作用する。頭字語SNAREは、Soluble(溶解性)NSF Attachment(付着)Receptor(受容体)に由来しており、NSFは、N-ethylmaleimide(エチルマレイミド)-Sensitive(感受性)Factor(因子)を意味する。SNAREタンパク質は、細胞内小胞融合に不可欠であり、そのため細胞からの小胞輸送を介した分子の分泌に不可欠である。プロテアーゼ機能は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性であり、SNAREタンパク質に対して高い基質特異性を示す。従って、所望の標的細胞に送達されると、無細胞毒性プロテアーゼは、標的細胞からの細胞分泌を阻害することができる。クロストリジウム神経毒のL鎖プロテアーゼは、SNAREタンパク質を切断する無細胞毒性プロテアーゼである。
【0078】
SNAREタンパク質の偏在性から、ボツリヌス毒素等のクロストリジウム神経毒は、幅広い治療法に成功裏に使用されてきた。
【0079】
クロストリジウム・ボツリヌム及びクロストリジウム・テタニにおける毒素産生の遺伝的根拠に基づいた更なる詳細については、Henderson et al (1997)によるThe Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressを参照のこと。
【0080】
クロストリジウム神経毒ドメインを、以下に更に詳細に説明する。
【0081】
L鎖の参照配列の例としては、以下が挙げられる。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基1乃至448
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基1乃至440
【0082】
上記に示した参照配列は、指針として考えられるべきであり、亜血清型により若干の差異が生じ得る。例として、US 2007/0166332(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)は、若干異なるクロストリジウム配列を挙げている。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基M1乃至K448
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基M1乃至K441
【0083】
転位置ドメインは、クロストリジウム神経毒のH鎖のフラグメントであり、H鎖のアミノ末端半分、又は無傷のH鎖内のそのフラグメントに相応するドメインに略等しい。
【0084】
参照転位置ドメインの例としては、以下が挙げられる。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基(449乃至871)
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基(441乃至858)
【0085】
上記に示した参照配列は、指針として考えられるべきであり、亜血清型により若干の差異が生じ得る。例として、US 2007/0166332(参照により、本明細書に組み込まれる)は、若干異なるクロストリジウム配列を挙げている。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基(A449乃至K871)
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基(A442乃至S858)
【0086】
本発明の文脈において、転位置ドメインを含む様々なBoNT/A HN領域が、本発明の態様において、有用であり得る。BoNT/A重鎖のHN領域は、略410乃至430アミノ酸の長さであり、転位置ドメインを含む。研究では、転位置ドメインの転位置活性のために、クロストリジウム神経毒重鎖のHN領域の全長は必要ではないことが示されている。従って、この実施形態の態様は、例えば、少なくとも350アミノ酸、少なくとも375アミノ酸、少なくとも400アミノ酸、又は少なくとも425アミノ酸の長さの転位置ドメインを含むBoNT/A HN領域を含み得る。この実施形態の他の態様は、例えば、最大350アミノ酸、最大375アミノ酸、最大400アミノ酸、又は最大425アミノ酸の長さの転位置ドメインを含むBoNT/A HN領域を含み得る。
【0087】
用語HNは、天然起源のBoNT/A HN部分、及び天然には存在しないアミノ酸配列及び/又は合成アミノ酸残基を有する改変BoNT/A HN部分を包含する。好ましくは、前記改変BoNT/A HN部分は、依然として前記転位置機能を示す。
【0088】
クロストリジウム神経毒受容体結合ドメイン(HC)参照配列の例としては、以下が挙げられる。
BoNT/A-N872乃至L1296
BoNT/B-E859乃至E1291
【0089】
クロストリジウム神経毒(BoNT等)の約50kDaのHCドメインは、各々が通常約25kDaであるHCCドメイン及びHCNドメインと呼ばれる2つの異なる構造的特徴を有する。受容体結合に関与するアミノ酸残基は、主にHCCドメインに位置すると考えられる。天然クロストリジウム神経毒のHCドメインは、略400乃至440アミノ酸残基を含み得る。この実態は、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる以下の出版物によって確認される。Umland TC (1997) Nat. Struct. Biol. 4: 788-792; Herreros J (2000) Biochem. J. 347: 199-204; Halpern J (1993) J. Biol. Chem. 268: 15, pp. 11188-11192; Rummel A (2007) PNAS 104: 359-364; Lacey DB (1998) Nat. Struct. Biol. 5: 898-902; Knapp (1998) Am. Cryst. Assoc. Abstract Papers 25: 90; Swaminathan and Eswaramoorthy (2000) Nat. Struct. Biol. 7: 1751-1759;及びRummel A (2004) Mol. Microbiol. 51(3), 631-643。
【0090】
(参照)HCNドメインの例としては、以下が挙げられる。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基(872乃至1110)
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基(859乃至1097)
【0091】
上記配列位置は、血清型/亜型に応じて多少変動し得る。(参照)HCNドメインの更なる例としては、以下が挙げられる。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基(874乃至1110)
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基(861乃至1097)
【0092】
(参照)HCCドメインとしては、以下が挙げられる。
ボツリヌスA型神経毒:アミノ酸残基(Y1111乃至L1296)
ボツリヌスB型神経毒:アミノ酸残基(Y1098乃至E1291)
【0093】
WO 2017/191315 A1(参照により、本明細書に組み込まれる)は、キメラクロストリジウム神経毒、並びにその調製方法及び製造方法を教示している。従って、本発明において使用される、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(BoNT/A HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含むキメラクロストリジウム神経毒は、WO 2017/191315 A1で教示されているものであってもよい。
【0094】
用語「キメラクロストリジウム神経毒」又は「キメラ神経毒」は、本明細書で使用される場合、第1のクロストリジウム神経毒血清型由来のクロストリジウム神経毒軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びに第2の異なるクロストリジウム神経毒血清型を起源とする受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む(好ましくは、からなる)神経毒を意味する。具体的には、本発明における使用のためのキメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。キメラクロストリジウム神経毒のBoNT/A LHNドメインは、BoNT/B HCドメインに共有結合している。本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、キメラボツリヌス神経毒とも呼ばれる場合がある。前記キメラクロストリジウム神経毒は、本明細書において、「BoNT/AB」、「mrBoNT/AB」又は「BoNT/ABキメラ」とも呼ばれる。
【0095】
L鎖及びHNドメイン(任意選択で、完全若しくは部分活性化ループを含む、例えば、キメラクロストリジウム神経毒が単鎖形態の場合は完全活性化ループであり、二鎖形態の場合は、切断/部分活性化ループ)をまとめてLHNドメインと呼ぶ場合がある。従って、LHNドメインは、更にHCドメインを含まない。
【0096】
キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)から本質的になっていてもよい。
【0097】
用語「から本質的になる」は、この文脈において使用される場合、キメラクロストリジウム神経毒が、例えば、対象に投与された際に、ポリペプチドに更なる機能性を与える1つ又は複数のアミノ酸残基を更に含まないことを意味する。換言すると、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)「から本質的になる」ポリペプチドは、更に、(ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)のものに加えて)1つ又は複数のアミノ酸残基を含んでもよいが、例えば、対象に投与された際に、前記1つ又は複数の更なるアミノ酸残基は、ポリペプチドに更なる機能性を与えない。更なる機能性は、酵素活性、結合活性、及び/又は任意のあらゆる生理学的活性も含み得る。
【0098】
キメラクロストリジウム神経毒は、それによってキメラクロストリジウム神経毒の(好ましくは、疼痛治療のための)治療効果を達成する能力が妨害されない限り、任意のクロストリジウム神経毒配列に加えて、非クロストリジウム神経毒配列を含み得る。非クロストリジウム神経毒配列は、酵素活性等の触媒活性を持たないものであることが好ましい。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、非クロストリジウム触媒活性ドメインを含まない。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、更なる触媒活性ドメインを含まない。一実施形態では、非クロストリジウム配列は、細胞受容体に結合する配列ではない。換言すると、一実施形態では、非クロストリジウム配列は、細胞受容体へのリガンドではない。細胞受容体は、膜内在性タンパク質等のタンパク性の細胞受容体であってもよい。細胞受容体の例は、https://www.guidetopharmacology.org/download.jsp#db_reportsで閲覧可能なIUPHAR Guide to Pharmacology Database, version 2019.4に掲載されている。非クロストリジウム神経毒配列は、ヒスチジンタグ等、精製を助けるタグを含み得る。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、ソルターゼ受容体若しくはドナー部位等、標識又は標識を追加するための部位を含まない。
【0099】
好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)からなっていてもよい。
【0100】
キメラクロストリジウム神経毒は、無細胞毒性プロテアーゼ活性を示し、標的ニューロンのサイトゾル中のSNAREタンパク質を切断できる軽鎖を含む。上記で説明したように、二鎖形態は、クロストリジウム神経毒の活性形態である。従って、本発明は、例えば、1つ又は複数の変異により触媒的に不活性化された軽鎖(「触媒的不活性軽鎖」)を含むキメラクロストリジウム神経毒の使用は除外する。このような触媒的不活性軽鎖(及びそれを含むクロストリジウム神経毒)は、当技術分野で公知である。触媒的不活性L鎖は、前記触媒活性を不活性化する1つ又は複数の変異を含み得る。例えば、触媒的不活性L鎖は、活性部位残基の変異を含み得る。変異は、置換又は欠失であってよく、特に化学的に類似したアミノ酸による置換であってもよい。グルタミン酸は、グルタミンで置換されていてもよく、ヒスチジンはチロシンで置換されていてもよく、アルギニンはグルタミンで置換されていてもよく、且つ/又はチロシンはフェニルアラニンで置換されていてもよい。或いは、任意の残基がアラニンで置換されていてもよい。触媒的不活性BoNT/A L鎖は、H223、E224、H227、E262、R363、及び/又はY366での変異を含んでもよく、例えば、少なくともE224及びH227の変異を含んでもよい。触媒的不活性BoNT/A L鎖は、E224でのグルタミンによる置換(E224Q)及びH227でのチロシンによる置換(H227Y)を含んでもよい。
【0101】
用語「触媒的不活性」は、本明細書においてクロストリジウム神経毒L鎖に関して使用される場合、前記L鎖が実質的に無細胞毒性プロテアーゼ活性を示さず、例えば無細胞毒性プロテアーゼ活性を示さないことを意味する。触媒的不活性クロストリジウム神経毒L鎖は、標的細胞内の細胞外融合装置のタンパク質を切断しないものであってよい。用語「実質的に無細胞毒性プロテアーゼ活性がない」は、クロストリジウム神経毒L鎖が、5%未満の触媒活性クロストリジウム神経毒L鎖(好ましくは、配列番号6として示される天然BoNT/AのL鎖)の無細胞毒性プロテアーゼ活性、例えば、2%未満、1%未満、又は0.1%未満の触媒活性クロストリジウム神経毒L鎖の無細胞毒性プロテアーゼ活性を有することを意味する。無細胞毒性プロテアーゼ活性は、インビトロで、試験用クロストリジウム神経毒L鎖をSNAREタンパク質とインキュベートし、試験用クロストリジウム神経毒L鎖により切断されたSNAREタンパク質の量と、同じ条件下で触媒活性クロストリジウム神経毒L鎖(好ましくは、配列番号6として示される、天然BoNT/AのL鎖)により切断されたSNAREタンパク質の量を比較することにより、測定することができる。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法及びウエスタンブロット法等の通例の技術を用いて、切断されたSNAREタンパク質の量を定量化できる。適切なインビトロアッセイは、参照により本明細書に組み込まれるWO 2019/145577 A1に記載されている。
【0102】
細胞アッセイ及びインビボアッセイを使用することによっても、L鎖、機能的細胞結合、及び転位置ドメインを含むクロストリジウム神経毒が、無細胞毒性プロテアーゼ活性を有するかどうかを測定できる。指外転スコア(DAS)アッセイ、脊髄後根神経節(DRG)アッセイ、脊髄ニューロン(SCN)アッセイ、及びマウス横隔神経片側横隔膜(PNHD)アッセイ等のアッセイが、当技術分野において通例的である。無細胞毒性プロテアーゼ活性を測定するための適切なアッセイは、参照により本明細書に組み込まれるAoki KR, Toxicon 39: 1815-1820; 2001又はDonald et al (2018), Pharmacol Res Perspect, e00446, 1-14に記載されているものでもよい。
【0103】
対象に投与する際、キメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、軽鎖及び重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合した活性ニ本鎖形態である。クロストリジウム神経毒(例えば、キメラクロストリジウム神経毒)が本明細書においてポリペプチド配列(配列番号)により定義される場合、配列(配列番号)のL鎖部分は、二鎖クロストリジウム神経毒(例えば、二鎖キメラクロストリジウム神経毒)の第1鎖を構成してもよく、HN及びHCドメインは共に、二鎖クロストリジウム神経毒(例えば、二鎖キメラクロストリジウム神経毒)の第2鎖を構成してもよく、ここで第1鎖と第2鎖は、ジスルフィド結合によって互いに結合している。当業者は、プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒(例えば、キメラクロストリジウム神経毒)の活性化ループ内の1つ又は複数の位置、好ましくは活性化ループ内の2つの位置で切断し得ることを認識するであろう。切断が、活性化ループ内の2つ以上の位置(好ましくは2つの位置)で生じる場合、配列のC末端L鎖部分の小断片は、二鎖クロストリジウム神経毒配列(例えば、二鎖キメラクロストリジウム神経毒)に非存在であってもよい。このことから、二鎖クロストリジウム神経毒(例えば、二鎖キメラクロストリジウム神経毒)の配列は、対応する単鎖クロストリジウム神経毒(例えば、単鎖キメラクロストリジウム神経毒)の配列と、若干異なっていてもよい。小断片は、1乃至15アミノ酸であってよい。特に、一実施形態では、Lys-Cを使用して単鎖キメラクロストリジウム神経毒を二鎖クロストリジウム神経毒に変換する場合、非存在である配列のC末端L鎖部分の小断片は、配列番号15又は16であってもよい。
【0104】
LHNドメインのC末端アミノ酸残基は、BoNT/AのLHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第1アミノ酸残基に対応してもよく、HCドメインのN末端アミノ酸残基は、BoNT/BのLHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第2アミノ酸残基に対応してもよい。
【0105】
BoNT/Aポリペプチド配列の例は、配列番号6に記載されている。
【0106】
BoNT/Bポリペプチド配列の例は、配列番号7(UniProt受託番号B1INP5)に記載されている。
【0107】
本明細書において「BoNT/AのLHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第1アミノ酸残基」と言及する場合、LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスのN末端残基を意味する。
【0108】
本明細書において「BoNT/BのLHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第2アミノ酸残基」と言及する場合、LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスのN末端残基に続くアミノ酸残基を意味する。
【0109】
「310ヘリックス」は、α-ヘリックス、β-シート、及び逆向ターンと共にタンパク質及びポリペプチドに見出される二次構造の一種である。310ヘリックス中のアミノ酸は、右巻きのヘリックス構造に配列されており、各々の全ターンは、3個の残基及びそれらの間の分子内水素結合を分離する10個の原子により完了する。各アミノ酸は、ヘリックス中の120°ターン(すなわち、ヘリックスは1ターンあたり3つの残基を有する)、及びヘリックス軸に沿った2.0Å(=0.2nm)の並進移動に相当し、水素結合の作成により形成された環の中に10個の原子を有する。最も重要なことには、アミノ酸のN-H基が、3残基前のアミノ酸のC=O基と水素結合を形成し、この反復されるi+3→i水素結合が310ヘリックスを定義する。310ヘリックスは、当業者が精通している、構造生物学における標準的な概念である。
【0110】
この310ヘリックスは、実際のヘリックスを形成する4個の残基、及びこれら4個の残基の各末端に1個ずつ存在する2つのキャップ(又は遷移)残基に対応する。用語「LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックス」は、本明細書で使用される場合、それらの6個の残基からなる。
【0111】
構造解析及び配列アラインメントを行うことにより、LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスが同定された。この310ヘリックスは、そのN末端(すなわち、LHNドメインのC末端部分)でα-ヘリックスにより、及びそのC末端(すなわち、HCドメインのN末端部分)でβ鎖により囲まれている。310ヘリックスの第1の(N末端)残基(キャップ又は遷移残基)はまた、このα-ヘリックスのC末端残基に対応する。
【0112】
LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスは、例えば、ボツリヌス神経毒の公的に入手可能な結晶構造、例えば、それぞれ、ボツリヌス神経毒A1及びB1の3BTA(http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=3BTA)及び1EPW(http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=1EPW)から決定できる。
【0113】
他の神経毒におけるLHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの位置を決定するために、公的に入手可能であるコンピュータによるモデリング及びアラインメントツール、例えば、相同性モデリングサーバーLOOPP(Learning, Observing and Outputting Protein Patterns、http://loopp.org)、PHYRE(Protein Homology/analogY Recognition Engine、http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/phyre2/)、及びRosetta(https://www.rosettacommons.org/)、タンパク質重ね合わせサーバーSuperPose(http://wishart.biology.ualberta.ca/superpose/)、アラインメントプログラムClustal Omega(http://www.clustal.org/omega/)、並びにInternet Resources for Molecular and Cell Biologists(http://molbiol-tools.ca/)で挙げられている、多くの他のツール/サービスも使用できる。特に、「HN/HCN」接合部周囲の領域は、構造的に高度に保存することができ、それによってそれを、異なる血清型を重ね合わせるのに理想的な領域にする。
【0114】
例えば、他の神経毒におけるこの310ヘリックスの配列を決定するために、以下の方法論を使用してもよい。
1. BoNT/A1結晶構造(3BTA.pdb)に基づいて、他のBoNT血清型の予測される構造を得るために、構造的相同性モデリングツールLOOP(http://loopp.org)を使用してもよい。
2. こうして得られた構造(pdb)ファイルを、HCNドメインのN末端部、及びその前の約80個の残基(HNドメインの一部)のみを含み、それによって、構造的に高度に保存された「HN/HCN」領域を保持するように編集することができる。
3. 3BTA.pdb構造に各血清型を重ね合わせるために、タンパク質重ね合わせサーバーSuperPose(http://wishart.biology.ualberta.ca/superpose/)を使用してもよい。
4. 重ね合わされたpdbファイルを検査して、BoNT/A1のHCドメインの開始部分に310ヘリックスを位置付け、その後、他の血清型における対応する残基を同定してもよい。
5. 対応する残基が正確かを調べるために、Clustal Omegaを用いて、他のBoNT血清型配列を整列させてもよい。
【0115】
この方法によって決定されたLH
N、H
C、及び3
10ヘリックスドメインの例を、以下の表に示す。
【表A】
【0116】
構造解析及び配列アラインメントを使用することにより、LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスに続くβ鎖は、全てのボツリヌス神経毒及びテタヌス神経毒において保存された構造であり、LHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第1の残基から開始した場合に第8の残基(例えば、BoNT/A1の残基879)において開始することが分かった。
【0117】
BoNT/ABキメラは、BoNT/BのHCドメインに共有結合したBoNT/AのLHNドメインを含んでいてもよく、ここで、LHNドメインのC末端アミノ酸残基は、BoNT/AのHCドメインの最初(N末端)に位置するβ鎖のN末端の第8のアミノ酸残基に対応し、ここで、HCドメインのN末端アミノ酸残基は、BoNT/BのHCドメインの最初(N末端)に位置するβ鎖のN末端の第7のアミノ酸残基に対応する。
【0118】
BoNT/ABキメラは、BoNT/BのHCドメインに共有結合したBoNT/AのLHNドメインを含んでいてもよく、ここで、LHNドメインのC末端アミノ酸残基は、BoNT/AのLHNドメインの終わり(C末端)に位置するαヘリックスのC末端アミノ酸残基に対応し、ここで、HCドメインのN末端アミノ酸残基は、BoNT/BのLHNドメインの終わり(C末端)に位置するαヘリックスのC末端アミノ酸残基のC末端に直近のアミノ酸残基に対応する。
【0119】
BoNT/ABキメラの設計プロセスの原理は、二次構造が確実に損なわれないようにし、それにより、三次構造及び各ドメインの機能のあらゆる変化を最小限にすることであった。理論に束縛されることを望むものではないが、BoNT/ABキメラ中の310ヘリックスの4個の中心アミノ酸残基を壊さないことにより、キメラ神経毒の最適な立体構造を確実にし、それによって、キメラ神経毒がその機能を最大限に発揮できるようになることが仮定される。実際、驚くべきことに、BoNT/Aの310ヘリックスの第1のアミノ酸残基、及びBoNT/Bの先の310ヘリックスの第2のアミノ酸残基のみを保持することにより、可溶且つ機能的BoNT/ABキメラの生成が可能になるだけでなく、更に、他のBoNT/ABキメラを上回る向上した特性、特に、増強された効力、向上した安全率及び/又はより長い作用持続時間(また天然BoNT/A[例えば、配列番号6]と比較して、向上した安全率及び/又はより長い作用持続時間)が得られる。
【0120】
神経毒の望ましくない効果(神経毒が、投与部位から離れて拡散することによって引き起こされる)は、関連動物モデル(例えば、投与から7日以内に体重減少が検出されるマウス)における体重減少の割合を測定することによって実験的に評価できる。逆に、神経毒の望ましい標的上の効果は、筋麻痺を測定する、指外転スコア(DAS)アッセイによって実験的に評価できる。DASアッセイは、ゼラチンリン酸バッファーで製剤化した20μLの神経毒をマウス腓腹筋/ヒラメ筋複合体へ注射し、その後、Aokiの方法(Aoki KR, Toxicon 39: 1815-1820; 2001)を用いて指外転スコアを評価することにより、実施され得る。DASアッセイでは、マウスが後肢を伸展させて後指を外転させる特徴的な驚愕反応を誘発するため、マウスを尾で短時間吊り下げる。神経毒の注射後、変化する指外転度を5段階評価でスコア化する(0=正常~4=指外転及び下肢伸展の最大減少)。
【0121】
次いで、神経毒の安全率を、マウスの体重の10%低下(マウスへの投薬後、最初の7日以内のピーク効果で測定)に必要な神経毒の量と、DASスコア2に必要な神経毒の量の比として表すことができる。従って、高い安全率スコアが望まれており、望ましくないオフターゲットの効果をほとんど伴わずに、標的筋肉を効果的に麻痺させることが可能な神経毒が必要とされる。
【0122】
高い安全率は、治療指数の増加を表すので、治療法において特に有利である。換言すると、これは、代替のクロストリジウム神経毒治療薬と比較して、投与量を低減できること、及び/又は、何らかの付加的な(例えば、有害な)作用を伴わずに、増加された投与量を使用できることを意味する。有害な作用は、全身毒性及び/又は隣接筋肉への望ましくない拡散を含み得る。付加的な作用を伴うことなく、より高用量の神経毒を使用する可能性は、通常、より高い用量により、神経毒のより長い作用持続時間が得られるので、特に有利である。
【0123】
キメラクロストリジウム神経毒の効力は、マウス腓腹筋/ヒラメ筋複合体に投与した場合に、所与のDASスコア、例えば、DASスコア2(ED50用量)又はDASスコア4が得られる神経毒の最小用量として表すことができる。キメラクロストリジウム神経毒の効力はまた、神経毒によるSNARE切断を測定する細胞アッセイにおけるEC50用量、例えば、キメラクロストリジウム神経毒によるSNAP25切断を測定する細胞アッセイにおけるEC50用量としても表すことができる。
【0124】
キメラクロストリジウム神経毒の作用持続時間は、所与の用量の神経毒、例えば、DASスコア4が得られる神経毒の最小用量を、マウス腓腹筋/ヒラメ筋複合体へ投与した後に、DASスコアを0に回復するために必要な時間として表すことができる。
【0125】
キメラクロストリジウム神経毒は、7超の安全率を有し得る。ここで、安全率は、pg/マウスとして測定される、-10%の体重変化に必要な毒素の用量を、pg/マウスとして測定されるDAS ED50で除算することにより、計算される。ここで、ED50は、DASスコア2を得るために必要な用量である。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくとも8、9、10、15、20、25、30、35、40、45又は50の安全率を有し得る。
【0126】
好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくとも10の安全率(例えば、10の安全率)、より好ましくは、少なくとも12又は13(例えば、14乃至15)の安全率を有する。キメラクロストリジウム神経毒は、7超、最大50、例えば、8乃至45、10乃至20、又は12乃至15の安全率を有し得る。
【0127】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)と比較した場合に、好ましくは、より長い作用持続時間(例えば、1つ又は複数の症状における、少なくとも5%、10%、25%、又は50%の改善)を有する。前記作用持続時間は、少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、又は2.25倍長くてもよい。前記キメラクロストリジウム神経毒の作用持続時間は、4.5乃至9か月の間、又は6乃至9か月の間であってよい。例えば、作用持続時間は、少なくとも(作用発現から)4.5か月、5.0か月、5.5か月、6か月、6.5か月、7.0か月、7.5か月、8.0か月、8.5か月、又は9.0か月であってよい。特定の実施形態では、作用持続時間は9.0か月超の場合がある。
【0128】
従って、一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって、治療し得る。前記期間は、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の作用持続時間と一致した、投与からの期間であってよい。従って、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)投与からの治療期間よりも、少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、又は2.25倍長い、投与からの期間にわたって、治療し得る。キメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害を、4.5乃至9か月の間、又は6乃至9か月の間、例えば、少なくとも4.5か月、5.0か月、5.5か月、6か月、6.5か月、7.0か月、7.5か月、8.0か月、8.5か月、又は9.0か月の投与からの期間にわたって、治療し得る。特定の実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害を、9.0か月超の投与からの期間にわたって、治療し得る。
【0129】
従って、一態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0130】
関連する一態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0131】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を治療する薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供する。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここでキメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0132】
従って、一態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0133】
関連する態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0134】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0135】
障害は、好ましくは片頭痛又は片頭痛疼痛である。
【0136】
用語「BoNT/Aで治療された対象と比較して、(例えば、投与から)より長い期間にわたって、対象の障害を治療する」は、BoNT/A投与の場合と比較して、対象の障害の1つ又は複数の症状が、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与後に、より長い期間にわたって軽減することを意味し得る。前記作用持続時間は、少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、又は2.25倍長くてもよい。キメラクロストリジウム神経毒の作用持続時間は、6乃至9か月の間であってよい。例えば、作用持続時間は少なくとも、(作用発現から)4.5か月、5.0か月、5.5か月、6か月、6.5か月、7.0か月、7.5か月、8.0か月、8.5か月、又は9.0か月であってよい。特定の実施形態では、作用持続時間は9.0か月超の場合がある。前記軽減は、BoNT/Aで治療されたのと同等の症状を呈する、同等の対照患者との比較により、測定され得る。対照患者の1つ又は複数の症状の重症度が、実質的にBoNT/A治療前と同じ(例えば、同じ)期間において、本発明によるキメラクロストリジウム神経毒で治療された対象は、キメラクロストリジウム神経毒による治療前の1つ又は複数の症状の重症度と比較した場合、少なくとも5%、10%、25%、又は50%の同等の1つ又は複数の症状における改善を示し得る。
【0137】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で、治療し得る。
【0138】
従って、一態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0139】
関連する態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0140】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)が、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0141】
従って、一態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0142】
関連する態様では、本発明は、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で治療する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0143】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より高い有効性で、対象の障害(例えば、疼痛又は感覚障害、好ましくは疼痛)を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0144】
障害は、好ましくは片頭痛又は片頭痛疼痛である。
【0145】
用語「BoNT/Aで治療された対象と比較して、より高い有効性で対象の障害を治療する」は、BoNT/A投与の場合と比較して、対象の障害の1つ又は複数の症状が、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与後に、より軽減することを意味し得る。前記軽減は、BoNT/Aで治療されたのと同等の症状を呈する、同等の対照患者との比較により、測定され得る。投与後の所与の期間において、本発明によるキメラクロストリジウム神経毒で治療された対象は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)投与後の同じ期間における、対照患者の同等の1つ又は複数の症状における重症度と比較した場合、少なくとも5%、10%、25%、又は50%の1つ又は複数の症状における重症度の軽減を示し得る。別の実施形態では、より高い有効性は、キメラクロストリジウム神経毒で治療された対象の1つ又は複数の症状における重症度の最大軽減が、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対照患者の同等の1つ又は複数の症状の重症度における最大軽減より大きいことを意味し得る。
【0146】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の疼痛(例えば、片頭痛疼痛)を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、より軽減し得る。
【0147】
従って、一態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0148】
関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0149】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供する。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0150】
従って、一態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0151】
関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0152】
別の関連する態様では、本発明は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0153】
疼痛は、好ましくは片頭痛疼痛である。
【0154】
用語「BoNT/Aで治療された対象と比較して、対象の疼痛をより軽減する」は、BoNT/A投与の場合と比較して、対象の疼痛が、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与後に、より軽減することを意味し得る。前記軽減は、BoNT/Aで治療されたのと同等の疼痛を呈する、同等の対照患者との比較により、測定され得る。投与後の所与の期間において、本発明によるキメラクロストリジウム神経毒で治療された対象は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)投与後の同じ期間における、対照患者の同等の疼痛の重症度と比較した場合、少なくとも5%、10%、25%、又は50%の疼痛の軽減を示し得る。別の実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒で治療された対象における疼痛の最大軽減は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対照患者の同等の疼痛における最大軽減より大きい。
【0155】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーター(例えば、片頭痛疼痛メディエーター)の量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減し得る。
【0156】
従って、一態様では、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0157】
関連する態様では、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減する方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含む。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0158】
別の関連する態様において、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供する。ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛メディエーターが、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出されるのを阻害し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0159】
従って、一態様では、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0160】
関連する態様では、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための方法において使用されるキメラクロストリジウム神経毒を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0161】
別の関連する態様において、本発明は、対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0162】
用語「対象の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量を、BoNT/Aで治療された対象の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較して、より低減する」は、対象の疼痛メディエーターの量が、BoNT/A投与の場合と比較して、本発明のキメラクロストリジウム神経毒を投与した後に、より低減することを意味し得る。前記低減は、BoNT/Aで治療された同等の対照患者中の同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量を比較することにより、測定できる。投与後の所与の期間において、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)投与後の同じ期間における、対照患者の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターの量と比較した場合、本発明によるキメラクロストリジウム神経毒で治療された対象は、少なくとも5%、10%、25%又は50%の生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーターの量の低減を示し得る。別の実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒で治療された対象における生体液及び/又は脳内の疼痛メディエーター量の最大低減は、BoNT/A(例えば、二鎖形態の配列番号6)で治療された対照患者の、同じ生体液及び/又は脳内の同じ疼痛メディエーターにおける最大低減より大きい。前記疼痛メディエーターは、片頭痛疼痛メディエーターであってもよい。前記疼痛メディエーターは、好ましくはCGRPである。好ましくは、生体液は血液(その分画を含む)である。
【0163】
CGRPは、痛み止め等の鎮痛薬の有効性を評価するための関連マーカーとして使用され得る。このためCGRPをバイオマーカーとして使用して、疼痛(例えば、片頭痛疼痛)治療に対するクロストリジウム神経毒の適合性を判定してもよい。従って、一態様では、本発明は、クロストリジウム神経毒が疼痛治療に適しているか否かを判定する方法を提供し、前記方法は、以下を含む:
(a)第1の試料に含まれるCGRPのレベルを、第2の試料に含まれるCGRPのレベルと比較すること、ここで、第1の試料は、クロストリジウム神経毒を投与する前に対象から得られたものであり、第2の試料は、クロストリジウム神経毒を投与した後に、同じ対象から得られたものである;及び
(b)第2の試料中のCGRPのレベルが、第1の試料中のCGRPのレベルよりも低い場合、クロストリジウム神経毒が疼痛治療に適していると判定すること;又は
(c)第2の試料中のCGRPのレベルが、第1の試料中のCGRPのレベルよりも低くない(例えば、より高い若しくは同じ)場合、クロストリジウム神経毒が疼痛治療に不適であると判定すること。この文脈で使用される用語「よりも低い」は、好ましくは、統計的に有意により低いことを意味し、「低くない」は、好ましくは、統計的に有意に異ならない(例えば、同じ)又は統計的に有意により高いことを意味する。
【0164】
クロストリジウム神経毒は、当技術分野で公知の任意の適切なクロストリジウム神経毒であってよく、例えば、本明細書に記載のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。前記クロストリジウム神経毒は、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/G、BoNT/X、又はテタヌス神経毒(TeNT)であってもよい。
【0165】
BoNT/Aは、配列番号6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Aは、配列番号6に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Aは配列番号6を含んでもよい(より好ましくは、配列番号6からなる)。
【0166】
BoNT/Bは、配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Bは、配列番号7に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Bは、配列番号7を含んでもよい(より好ましくは、配列番号7からなる)。
【0167】
BoNT/Cは、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Cは、配列番号8に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Cは、配列番号8を含んでもよい(より好ましくは、配列番号8からなる)。
【0168】
BoNT/Dは、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Dは、配列番号9に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Dは、配列番号9を含んでもよい(より好ましくは、配列番号9からなる)。
【0169】
BoNT/Eは、配列番号10に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Eは、配列番号10に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Eは、配列番号10を含んでもよい(より好ましくは、配列番号10からなる)。
【0170】
BoNT/Fは、配列番号11に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Fは、配列番号11に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Fは、配列番号11を含んでもよい(より好ましくは、配列番号11からなる)。
【0171】
BoNT/Gは、配列番号12に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Gは、配列番号12に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Gは、配列番号12を含んでもよい(より好ましくは、配列番号12からなる)。
【0172】
BoNT/Xは、配列番号13に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、BoNT/Xは、配列番号13に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、BoNT/Xは配列番号13を含んでもよい(より好ましくは、配列番号13からなる)。
【0173】
TeNTは、配列番号14に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、TeNTは、配列番号14に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、TeNTは、配列番号14を含んでもよい(より好ましくは、配列番号14からなる)。
【0174】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒が疼痛治療に適しているか否かを判定する方法において、クロストリジウム神経毒を使用する前に、クロストリジウム神経毒は、例えば、本明細書に記載のように、二鎖形態に変換される。
【0175】
第1及び第2の試料は、任意選択で1つ又は複数のプロセシング工程に供された血液試料であってよい。第1及び第2の試料は、好ましくは、同等の(例えば、同じタイプ、及び任意選択で同じプロセシング工程に供された)ものである。CGRPのレベルは、定量的ウエスタンブロット法及び/又は質量分析法を含む、任意の好適な技術を用いて測定することができる。
【0176】
BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/又はBoNT/B HCドメインは、以下に記載されたものを含むが、それらに限定されない改変BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/又はBoNT/B HCドメイン若しくはその誘導体であってよい。改変BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/又はBoNT/B HCドメイン若しくは誘導体は、天然(非改変)形態のBoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/若しくはBoNT/B HCドメインと比較して改変された1つ又は複数のアミノ酸を含んでもよく、或いは、天然(非改変)形態のBoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/若しくはBoNT/B HCドメインには存在しない、1つ又は複数の挿入されたアミノ酸を含んでもよい。例として、改変BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/又はBoNT/B HCドメインは、天然(非改変)BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/又はBoNT/B HCドメイン配列に対して、1つ若しくは複数のドメイン中に改変アミノ酸配列を含んでもよい。このような改変は、これらの機能的側面、例えば生物活性又は生物持続性を改変し得る。従って、一実施形態では、BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/若しくはBoNT/B HCドメインは、改変BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/若しくはBoNT/B HCドメイン、又は改変BoNT/A軽鎖、BoNT/A転位置ドメイン、及び/若しくはBoNT/B HCドメインの誘導体であってよい。
【0177】
改変BoNT/B HCドメインは、標的神経細胞への結合を改変する1つ又は複数の改変を有してもよく、例えば、天然(非改変)BoNT/B HCドメインと比較して、より高い又はより低い親和性結合を提供する。BoNT/B HCドメイン中のこのような改変は、標的神経細胞のガングリオシド受容体及び/若しくはタンパク質受容体との結合を変化させる、HCドメインのガングリオシド結合部位中の、又はタンパク質(例えば、シナプトタグミン)結合部位中の残基を改変することを含み得る。このような改変された神経毒の例は、参照によりその全体が共に本明細書に組み込まれるWO 2006/027207及びWO 2006/114308に記載されている。
【0178】
改変された軽鎖は、そのアミノ酸配列の中に、1つ又は複数の改変、例えば、改変された軽鎖のSNAREタンパク質特異性を変更若しくは改変し得る、基質結合又は触媒ドメインにおける改変を有し得るが、前記改変は、前記軽鎖を触媒的に不活性化しない。このような改変された神経毒の例は、参照によりその全体が共に本明細書に組み込まれるWO 2010/120766及びUS 2011/0318385に記載されている。
【0179】
BoNT/AのLHNドメインは、配列番号6のアミノ酸残基1乃至872、又はそれに対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列に対応し得る。BoNT/AのLHNドメインは、配列番号6のアミノ酸残基1乃至872、又はそれに対して少なくとも80%、90%又は95%の配列同一性を有するポリペプチド配列に対応し得る。好ましくは、BoNT/AのLHNドメインは、配列番号6のアミノ酸残基1乃至872に対応する。
【0180】
BoNT/BのHCドメインは、配列番号7のアミノ酸残基860乃至1291、又はそれに対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列に対応し得る。BoNT/BのHCドメインは、配列番号7のアミノ酸残基860乃至1291、又はそれに対して少なくとも80%、90%又は95%の配列同一性を有するポリペプチド配列に対応し得る。好ましくは、BoNT/BのHCドメインは、配列番号7のアミノ酸残基860乃至1291に対応する。
【0181】
好ましくは、BoNT/ABキメラは、BoNT/A1 LHNドメイン及びBoNT/B1 HCドメインを含む。より好ましくは、LHNドメインは、BoNT/Aアミノ酸残基1乃至8721(配列番号6)に対応し、HCドメインは、BoNT/B1のアミノ酸残基860乃至1291(配列番号7)に対応する。
【0182】
最も好ましくは、BoNT/B HCドメインは、天然BoNT/B配列と比較して、ヒトSyt IIに対するBoNT/B神経毒の結合親和性を増加させる効果を有する、HCCサブドメインにおける少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失を更に含む。BoNT/B HCCサブドメインにおける好適なアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失は、WO 2013/180799及びWO 2016/154534に開示されている(共に、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0183】
BoNT/B HCCサブドメインにおける好適なアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失は、以下からなる群から選択される置換変異を含み得る:V1118M、Y1183M、E1191M、E1191I、E1191Q、E1191T、S1199Y、S1199F、S1199L、S1201V、E1191C、E1191V、E1191L、E1191Y、S1199W、S1199E、S1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、及びこれらの組合せ。
【0184】
BoNT/B HCCサブドメインにおける好適なアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失は、以下からなる群から選択される、2つの置換変異の組合せを更に含み得る:E1191M及びS1199L、E1191M及びS1199Y、E1191M及びS1199F、E1191Q及びS1199L、E1191Q及びS1199Y、E1191Q及びS1199F、E1191M及びS1199W、E1191M及びW1178Q、E1191C及びS1199W、E1191C及びS1199Y、E1191C及びW1178Q、E1191Q及びS1199W、E1191V及びS1199W、E1191V及びS1199Y、又はE1191V及びW1178Q。
【0185】
BoNT/B HCCサブドメインにおける好適なアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失は、E1191M、S1199W、及びW1178Qの3つの置換変異の組合せも含み得る。
【0186】
好ましくは、BoNT/B HCCサブドメインにおける好適なアミノ酸残基の置換、挿入、インデル、又は欠失は、E1191M及びS1199Yの2つの置換変異の組合せを含み得る。このような改変は、キメラクロストリジウム神経毒の配列番号1及び配列番号4の中に存在する。E1191Mは、配列番号1の位置1204に、S1199Yは位置1212に対応し得る。従って、配列番号1は、1204M及び1212Yを含み得る。
【0187】
この改変は、配列番号7として示される非改変BoNT/Bと比較した場合の改変であってよく、ここで、アミノ酸残基のナンバリングは、配列番号7とのアラインメントによって決定される。メチオニン残基の配列番号7の位置1における存在は(本明細書に記載のキメラクロストリジウム神経毒ポリペプチドに対応する配列番号と同様に)任意選択であるので、当業者は、アミノ酸残基ナンバリングを決定するときに、メチオニン残基の存在/非存在を考慮することになる。例えば、配列番号7がメチオニンを含む場合、位置ナンバリングは、上で定義した通りとなる(例えば、E1191は、配列番号7のE1191となる)。或いは、メチオニンが配列番号7に非存在の場合、アミノ酸残基ナンバリングは、-1だけ修正されなければならない(例えば、E1191は、配列番号7のE1190となる)。従って、キメラクロストリジウム神経毒のポリペプチド配列の最初のメチオニンアミノ酸残基は任意選択、又は非存在であってよい。本明細書に記載の他のポリペプチド配列の位置1のメチオニンが存在/非存在である場合、同様の考察が適用され、当業者は、当技術分野で通例の技術を利用して、正確なアミノ酸残基ナンバリングを容易に決定するであろう。配列相同性及び/又は配列同一性パーセントを決定するために本明細書に記載されている任意の方法を使用して、アラインメントを実施してもよい。
【0188】
用語「欠失」は、本明細書で使用される場合、欠失部位で1つ又は複数のアミノ酸残基を置き換えることなく、ポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸残基を除去することを指す。従って、(例えば)x個のアミノ酸残基を有するポリペプチド配列から、1つのアミノ酸残基が欠失した場合、結果として得られるポリペプチドはx-1個のアミノ酸残基を有する。
【0189】
用語「インデル」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、及び欠失したアミノ酸残基の数と比較した場合に異なる数のアミノ酸残基(より多い又はより少ないアミノ酸残基)の、欠失部位における挿入を指す。従って、(例えば)x個のアミノ酸残基を有するポリペプチド配列から、2つのアミノ酸残基が欠失したインデルの場合、結果として得られるポリペプチドは、x-1個のアミノ酸残基、又はx+≧1個のアミノ酸残基を有する。挿入及び欠失は、任意の順序で、順次又は同時に実行することができる。
【0190】
用語「置換」は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数のアミノ酸残基を、同じ部位で同じ数のアミノ酸残基に置き換えることを指す。従って、(例えば)x個のアミノ酸残基を有するポリペプチド配列の置換の場合、結果として得られるポリペプチドも、x個のアミノ酸残基を有する。好ましくは、置換は1つのアミノ酸位置での置換である。
【0191】
用語「挿入」は、本明細書で使用される場合、挿入部位におけるポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失が無い状態での、ポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸残基の付加を指す。従って、(例えば)x個のアミノ酸残基を有するポリペプチド配列に1つのアミノ酸残基が挿入された場合、結果として得られるポリペプチドはx+1個のアミノ酸残基を有する。
【0192】
アミノ酸残基の置換、挿入、欠失により、又はインデルによってタンパク質を改変する方法は、当該技術分野で公知である。例として、アミノ酸の改変は、ポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、DNA配列)の改変によって導入され得る。これは、標準的な分子クローニング技術、例えば、所望のアミノ酸をコードするDNA(オリゴヌクレオチド)短鎖を使用し、ポリメラーゼ酵素を使用して本来のコード配列を置き換える部位特異的変異誘発、或いは様々な酵素(例えば、リガーゼ及び制限酵素)による遺伝子の一部の挿入/欠失によって、実現され得る。或いは、改変された遺伝子配列を、化学的に合成することもできる。典型的には、改変は、天然のクロストリジウム神経毒(又はその一部)をコードする核酸を改変することによって行われ、核酸によってコードされる改変クロストリジウム神経毒(又はその一部)は、改変(複数可)を含む。或いは、改変(複数可)を含む改変クロストリジウム神経毒(又はその一部)をコードする核酸を合成してもよい。
【0193】
本発明で使用するキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1乃至5から選択されるポリペプチド配列に対して、少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1乃至5から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明で使用するキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1乃至5から選択されるポリペプチド配列を含んでもよい(より好ましくは、それらからなる)。前記キメラクロストリジウム神経毒のうち、配列番号1が好ましい。
【0194】
従って、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むことが好ましい。より好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含んでもよい。最も好ましくは、本発明で使用するキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含んでもよい(より好ましくは、配列番号1からなる)。
【0195】
本発明の二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、二鎖キメラクロストリジウム神経毒の第1鎖を構成する配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列のL鎖部分を含んでもよく、また、二鎖キメラクロストリジウム神経毒の第2鎖を共に構成する配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列のHN及びHCドメインを含んでもよく、ここで、第1鎖と第2鎖は、ジスルフィド結合によって互いに結合している。
【0196】
配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むキメラクロストリジウム神経毒の活性化ループ内の2つ以上の位置(好ましくは、2つの位置)で切断が生じる場合、配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有する配列のC末端L鎖部分の小断片は、二鎖キメラクロストリジウム神経毒に非存在であってもよい。この観点から、二鎖キメラクロストリジウム神経毒(例えば、配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む)の配列は、配列番号1乃至5の何れか1つに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、対応する単鎖キメラクロストリジウム神経毒の配列と、若干異なっていてもよい。小断片は、1乃至15アミノ酸であってよい。特に、一実施形態では、Lys-Cを使用して単鎖キメラクロストリジウム神経毒を二鎖クロストリジウム神経毒に変換する場合、非存在である配列のC末端L鎖部分の小断片は、配列番号15又は16であってもよい。
【0197】
好ましくは、本発明の二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、二鎖キメラクロストリジウム神経毒の第1鎖を構成する配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列のL鎖部分を含んでもよく、また、二鎖キメラクロストリジウム神経毒の第2鎖を共に構成する配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列のHN及びHCドメインを含んでもよく、ここで、第1鎖と第2鎖は、ジスルフィド結合によって互いに結合している。
【0198】
配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むキメラクロストリジウム神経毒の活性化ループ内の2つ以上の位置(好ましくは2つの位置)で切断が生じる場合、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有する配列のC末端L鎖部分の小断片は、二鎖キメラクロストリジウム神経毒に非存在であってもよい。この観点から、二鎖キメラクロストリジウム神経毒(例えば、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む)の配列は、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、99.9%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、対応する単鎖キメラクロストリジウム神経毒の配列と、若干異なっていてもよい。小断片は、1乃至15アミノ酸であってよい。特に、一実施形態では、Lys-Cを使用して単鎖キメラクロストリジウム神経毒を二鎖クロストリジウム神経毒に変換する場合、非存在である配列のC末端L鎖部分の小断片は、配列番号15又は16であってもよい。
【0199】
特に好ましい実施形態では、二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号17又は18(好ましくは配列番号17)に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む軽鎖と、配列番号19に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む重鎖とを含み(若しくは、それらからなり)、ここで、軽鎖と重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合している。より好ましくは、二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号17又は18(好ましくは配列番号17)を含む軽鎖、及び配列番号19を含む重鎖を含み(若しくは、それらからなり)、ここで、軽鎖と重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合している。更に好ましくは、二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号17を有する軽鎖、及び配列番号19を有する重鎖を含み(又は、それらからなり)、ここで、軽鎖と重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合している。ジスルフィド結合は、好ましくは、配列番号17又は18のシステイン残基429と、配列番号19のシステイン残基6により形成され、且つ/又はそれらの間にある。
【0200】
好ましい実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、軽鎖及び重鎖に加えて、治療薬又は診断薬(例えば、核酸、タンパク質、ペプチド若しくは小分子治療薬、又は診断薬)を含まない。例えば、一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、共有結合若しくは非共有結合した治療薬又は診断薬を含まなくてもよい。従って、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、更なる治療薬又は診断薬の送達媒体として機能しない。
【0201】
本明細書に記載のキメラクロストリジウム神経毒が精製用のタグ(例えば、ヒスチジンタグ)及び/又はリンカーを有する実施形態では、前記タグ及び/又はリンカーは任意選択である。
【0202】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、天然起源のクロストリジウム神経毒複合体中に存在する、複合タンパク質を含まなくてもよい。
【0203】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、組換え核酸技術を使用して生成することができる。従って、一実施形態では、(本明細書に記載の)キメラクロストリジウム神経毒は、組換えキメラクロストリジウム神経毒である。
【0204】
一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒をコードする核酸配列を含む核酸(例えば、DNA)が提供される。一実施形態では、核酸配列は、プロモーター及びターミネーターを含むDNAベクターの一部として調製される。核酸配列は、本明細書に記載の核酸配列の何れかから選択され得る。
【0205】
好ましい実施形態では、ベクターは以下から選択されるプロモーターを有する。
プロモーター / 誘導剤 / 一般的な誘導条件
Tac(ハイブリッド) / IPTG / 0.2mM(0.05乃至2.0mM)
AraBAD / L-アラビノース / 0.2%(0.002乃至0.4%)
T7-lacオペレーター / IPTG / 0.2mM(0.05乃至2.0mM)
【0206】
別の好ましい実施形態では、ベクターは以下から選択されるプロモーターを有する。
プロモーター / 誘導剤 / 一般的な誘導条件
Tac(ハイブリッド) / IPTG / 0.2mM(0.05乃至2.0mM)
AraBAD / L-アラビノース / 0.2%(0.002乃至0.4%)
T7-lacオペレーター / IPTG / 0.2mM(0.05乃至2.0mM)
T5-lacオペレーター / IPTG / 0.2mM(0.05乃至2.0mM)
【0207】
核酸分子は、当技術分野で公知の任意の好適なプロセスを使用して、作製され得る。従って核酸分子は、化学合成技術を使用して作製され得る。或いは、本発明の核酸分子は、分子生物学技術を使用して作製してもよい。
【0208】
本発明のDNA構築物は、好ましくは、コンピュータで設計され、その後、従来のDNA合成技術によって合成される。
【0209】
上記の核酸配列情報は、使用される最終的な宿主細胞(例えば、大腸菌)発現システムに応じて、コドンバイアスのために任意選択で改変される。
【0210】
本明細書では、用語「ヌクレオチド配列」及び「核酸」は同義語として使用される。好ましくは、ヌクレオチド配列は、DNA配列である。
【0211】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、単鎖として存在してもよく、二鎖として存在してもよい。しかしながら、キメラクロストリジウム神経毒は、L鎖がジスルフィド結合を介してH鎖(又はその構成成分、例えば、HNドメイン)に連結した二鎖として存在することが好ましい。
【0212】
軽鎖及び重鎖を有する単鎖キメラクロストリジウム神経毒の生成は、発現宿主においてキメラクロストリジウム神経毒をコードする核酸を発現させ、宿主細胞を溶解して、単鎖キメラクロストリジウム神経毒を含有する宿主細胞ホモジネートを得て、単鎖キメラクロストリジウム神経毒を単離することを含む方法を使用して、達成され得る。本明細書に記載の単鎖キメラクロストリジウム神経毒は、単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、キメラクロストリジウム神経毒の活性化ループ内のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼ(例えば、Lys-C)と接触させることを含む方法を使用してタンパク分解処理することができ、それによって、単鎖キメラクロストリジウム神経毒が、対応する二鎖キメラクロストリジウム神経毒(例えば、軽鎖と重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合している)に変換される。二鎖キメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、このような方法によって得られる。
【0213】
従って、本発明で使用されるキメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは、単鎖BoNT/Aから生成された二鎖キメラクロストリジウム神経毒であり、ここで、単鎖BoNT/Aは、本明細書に記載されるポリペプチド配列を含むか、又はそれからなる。例えば、本発明で使用されるキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%)の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドから生成された二鎖キメラクロストリジウム神経毒であることが好ましい。最も好ましくは、本発明で使用されるキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含む(さらに好ましくは、配列番号1からなる)ポリペプチドから生成された二鎖キメラクロストリジウム神経毒である。従って、幾つかの実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含む単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、その活性化ループ内のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼと接触させ、それによって単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、対応する二鎖キメラクロストリジウム神経毒に変換することを含む方法によって得られる、ジスルフィド結合を介して軽鎖(L鎖)が重鎖(H鎖)に連結した、二鎖キメラクロストリジウム神経毒である。幾つかの実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1からなる単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、その活性化ループ内のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼと接触させ、それによって単鎖キメラクロストリジウム神経毒を、対応する二鎖キメラクロストリジウム神経毒に変換することを含む方法によって得られる、ジスルフィド結合を介してL鎖がH鎖に連結した二鎖キメラクロストリジウム神経毒である。
【0214】
用語「得られる」は、本明細書で使用される場合、「得られた」も包含する。一実施形態では、用語「得られる」は、得られたことを意味する。
【0215】
活性化ループを切断するために使用されるプロテアーゼは、好ましくはLys-Cである。活性化ループを切断して二鎖クロストリジウム神経毒を生成するための好適なプロテアーゼ及び方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO 2014/080206、WO 2014/079495及びEP 2677029 A2に教示されている。Lys-Cは、活性化ループのC末端を、その中に存在する1つ又は複数のリジン残基まで切断し得る。Lys-Cが活性化ループを2回以上切断する場合、当業者は、二鎖改変BoNT/Aの活性化ループの小ペプチドが、本明細書中に示される配列番号と比較した際に、非存在でもよいことを理解するであろう(好ましくは、配列番号15又は16が非存在であってよい)。
【0216】
用語「1つ又は複数の」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20を意味し得る。一実施形態では、「1つ又は複数の」が一覧の前に記載されている場合、「1つ又は複数の」は一覧の全ての要素を意味し得る。同様に、用語「少なくとも1つ」は、本明細書で使用される場合、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20を意味し得る。一実施形態では、「少なくとも1つの」が一覧の前に記載されている場合、「少なくとも1つ」は一覧の全ての要素を意味し得る。
【0217】
「対象」は、本明細書で使用される場合、ヒト又は他の哺乳動物等の哺乳動物であってよい。好ましくは、「対象」はヒト対象を意味する。
【0218】
本発明による治療の対象は、非キメラクロストリジウム神経毒による治療が不適な対象であってよい。前記対象は、非キメラクロストリジウム神経毒による治療に対して抵抗性を有する対象であってよい。抵抗性は、対象による、抗クロストリジウム神経毒抗体の産生を含む、クロストリジウム神経毒に対する免疫応答の発生により生じる場合がある。一実施形態においては、本発明による治療の対象は、BoNT/Aによる治療が不適な対象であってよい。前記対象は、BoNT/Aによる治療に抵抗性を有していてもよい。
【0219】
用語「障害」は、本明細書で使用される場合、「疾患」も包含する。一実施形態では、障害は、疾患である。
【0220】
用語「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用される場合、予防的治療(例えば、疼痛の発症を予防する)と共に、補正治療(例えば、すでに疼痛を患っている対象の治療)を包含する。好ましくは、「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用される場合、補正治療を意味する。
【0221】
一実施形態では、治療時に疼痛又は障害の症状を経験していない対象に、キメラクロストリジウム神経毒が投与される。このような投与は、本明細書に記載の疼痛又は障害の予防的治療を達成するのに適している場合がある。一実施形態では、片頭痛(例えば、片頭痛疼痛)の治療は予防的治療であってよい。一実施形態では、治療時に片頭痛疼痛又は片頭痛の症状を経験していない対象に、キメラクロストリジウム神経毒が投与される。
【0222】
用語「治療する」若しくは「治療」は、本明細書で使用される場合、障害(好ましくは、疼痛)及び/又はその症状に関する。
【0223】
従って、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、治療有効量又は予防有効量で対象に投与され得る。好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、治療有効量で対象に投与される。
【0224】
「治療有効量」とは、キメラクロストリジウム神経毒の任意の量であり、単独で、又は別の薬剤と組み合わせて(好ましくは単独で)、対象に前記障害(好ましくは、疼痛)(若しくはその症状)を治療するために投与された場合、前記障害(好ましくは、疼痛)又はその症状の治療をもたらすのに十分な量である。
【0225】
「予防有効量」とは、キメラクロストリジウム神経毒の任意の量であり、単独で、又は他の薬剤と組み合わせて(好ましくは単独で)対象に投与された場合、障害(好ましくは、疼痛)(若しくはその症状)の発症若しくは再発を抑制又は遅延させる量のことである。幾つかの実施形態では、予防有効量は、障害(好ましくは、疼痛)の発症又は再発を完全に予防する。発症を「抑制する」とは、発症(好ましくは、疼痛)(若しくはその症状)の可能性を低減すること、障害(好ましくは、疼痛)のピーク効果の振幅を防ぐこと、及び/又は発症を完全に防ぐことの何れかを意味する。
【0226】
キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛を引き起こす、根底にある障害を治療することなく、前記疼痛を治療し得る。
【0227】
キメラクロストリジウム神経毒は、疼痛治療に加えて、障害の1つ又は複数の付加的症状を治療し得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、本明細書に記載されているニューロンからの分泌、例えば、メディエーター(例えば、疼痛メディエーター)の放出に伴う、1つ又は複数の付加的症状を治療し得る。例えば、CGRPは、羞明等の片頭痛に伴う多くの症状に関与している場合がある。従って、本発明による片頭痛又は片頭痛疼痛の治療は、羞明等、片頭痛の1つ若しくは複数の付加的症状も治療し得る。
【0228】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、例えば医薬組成物の一部として対象に投与するために、任意の適切な様式で製剤化され得る。このような医薬組成物は、本発明のキメラクロストリジウム神経毒、薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバント、噴霧剤、及び/又は塩を含み得る。
【0229】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、経口、非経口、持続点滴、吸入、又は局所塗布用に製剤化され得る。注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、若しくは乳剤、又は使用前に適切な溶媒に溶解若しくは懸濁させる乾燥粉末の形態であってもよい。
【0230】
一態様では、本発明は、疼痛治療のためのキメラクロストリジウム神経毒の単位剤形を提供し、単位剤形は、以下を含む。
a.0.2単位乃至最大707単位のキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD50)に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量である;又は
b.5pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒;並びに
c.任意選択で、薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩。
【0231】
単位剤形のキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むことが好ましい。例えば、配列番号1に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列。最も好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含んでもよい(より好ましくは、配列番号1からなる)。
【0232】
疼痛治療用の単位剤形は、0.2単位乃至最大707単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。前記範囲の上限は、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、又は100単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、上限は666単位である。前記範囲の下限は、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、又は700単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、下限は42単位又は31単位である。前記範囲の下限は、125単位超であってもよい。好ましくは、単位剤形は、31単位乃至707単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。より好ましくは、単位剤形は、42単位乃至666単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、200単位乃至400単位のキメラクロストリジウム神経毒、又は41単位乃至229単位、例えば83単位乃至188単位、83単位乃至125単位(例えば、104単位)、若しくは145単位乃至188単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。好ましくは、単位剤形は、166単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。単位剤形は、47単位乃至707単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、187単位乃至282単位のキメラクロストリジウム神経毒、又は47単位乃至258単位、例えば94単位乃至211単位、94単位乃至141単位(例えば、117単位)、若しくは164単位乃至211単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位剤形は、188単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。
【0233】
疼痛治療用の単位剤形は、5pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。前記範囲の上限は、16,500、15,500、14,500、13,500、12,500、11,500、10,500、9,500、8,500、7,500、6,500、5,500、4,500、3,500、2,500、1,500、又は500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、上限は16,000pgである。前記範囲の下限は、750、850、950、1000、1500、2000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、又は5,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、下限は1000pg又は750pgである。前記範囲の下限は、3,000pg超であってもよい。好ましくは、単位剤形は、750pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。より好ましくは、単位剤形は、1000pg乃至16,000pgのキメラクロストリジウム神経毒、例えば4,000pg乃至6,000pgのキメラクロストリジウム神経毒、又は1,000乃至5,500pg、例えば、2,000pg乃至4,500pg、2,000pg乃至3,000pg(例えば、2,500pg)、若しくは3,500乃至4,500pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。好ましくは、単位剤形は、4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。
【0234】
幾つかの実施形態では、疼痛治療のための単位剤形は、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は偏頭痛を治療するためのものであってよく、以下を含み得る。
a.42乃至最大258単位(例えば、42乃至229単位)のキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD50)に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量である;又は
b.1,000pg乃至5,500pgのキメラクロストリジウム神経毒;並びに
c.任意選択で、薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩。
【0235】
本発明による使用のためのキメラクロストリジウム神経毒の効力は、標準的な技術によるマウスLD50アッセイによって測定することができる。前記アッセイにおいて、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD50)に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量として定義される。好ましくは、マウスで計算された腹腔内半致死量である。
【0236】
前記アッセイにおける1単位に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量は、20乃至24.04pgであってよく、例えば21.3pg又は24.04pgであってよい。好ましくは、前記アッセイにおける1単位に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量は24.04pgであってよい。
【0237】
ここで単位について言及すると、単位は、好ましくはLD50単位である。
【0238】
別の態様では、本発明は、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療するための、以下を含む単位剤形を提供する。
a.42乃至最大258単位(例えば、42乃至229単位)のキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1単位は、マウスで計算された半致死量(LD50)に相当するキメラクロストリジウム神経毒の量である;又は
b.1,000pg乃至5,500pgのキメラクロストリジウム神経毒;並びに
c.任意選択で、薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバント、及び/又は塩。
【0239】
単位剤形のキメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むことが好ましい。例えば、配列番号1に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列。最も好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1を含んでもよい(より好ましくは、配列番号1からなる)。
【0240】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療するための単位剤形は、42単位乃至229単位であってよい。単位剤形の上限は、225、220、215、210、205、200、190、180、170、160、150、125、100、又は83単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は212単位であり、より好ましくは208単位である。単位剤形の下限は、46、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、又は166単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は58単位であり、より好ましくは62単位である。前記範囲の下限は、125単位超であってもよい。単位剤形は、58単位乃至212単位(例えば、62単位乃至208単位)、83単位乃至212単位、125単位乃至212単位、又は125単位乃至166単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位剤形は、125単位超、最大で229単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。好ましくは、単位剤形は、83単位乃至188単位、83単位乃至125単位(例えば、104単位)、又は145単位乃至188単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。好ましくは、単位剤形は、166単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。単位剤形は、47単位乃至258単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、94単位乃至211単位、94単位乃至141単位(例えば、117単位)、又は164単位乃至211単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位剤形は、188単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。
【0241】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛治療のための単位剤形は、1,000pg乃至5,500pgであってよい。単位剤形の上限は、5,250、5,200、5,100、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、又は2,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は5,100pgであり、より好ましくは5,000pgである。単位剤形の下限は、1,100、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、又は4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は1,400pgであり、より好ましくは1,500pgである。前記範囲の下限は、3,000pg超であってもよい。単位剤形は、1,400pg乃至5,100pg、2,000pg乃至5,100pg、3,000乃至5,100pg、又は3,000乃至4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位剤形は、3,000pg超、最大で5,500pgのキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。好ましくは、単位剤形は、2,000pg乃至4,500pg、2,000pg乃至3,000pg(例えば、2,500pg)、又は3,500乃至4,500pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。好ましくは、単位剤形は、4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。
【0242】
局所的に送達されるキメラクロストリジウム神経毒の場合、キメラクロストリジウム神経毒は、クリーム(例えば、局所塗布用)として、又は皮下注射用に製剤化され得る。
【0243】
局所送達手段は、エアロゾル、又は他のスプレー(例えば、ネブライザー)を含み得る。この点に関して、キメラクロストリジウム神経毒のエアロゾル製剤は、肺、並びに/又は他の鼻腔及び/若しくは気管支若しくは気道への送達を可能にする。
【0244】
キメラクロストリジウム神経毒は、対象の顔、首、及び/又は頭蓋に投与され得る。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、その筋肉及び/又は皮膚の構成要素に投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、顔、首、頭蓋のうちの2箇所以上に投与してもよく、好ましくは顔、首、頭蓋に投与してもよい。特に、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の顔、首及び/又は頭蓋の領域に投与され得る。
【0245】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、罹患臓器の神経支配に関与する脊髄分節のレベルで、脊柱における髄腔内注射又は硬膜外注射によって対象に投与され得る。
【0246】
投与経路は、腹腔鏡及び/又は局所注射を介してもよい。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、治療部位又はその近くに、好ましくは治療部位に投与される。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、髄腔内投与又は脊髄内投与され得る。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与経路は、脊髄内及び/又は髄腔内であってよい。
【0247】
一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は末梢投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は皮下投与され得る。
【0248】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、注射を介して投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に少なくとも5、10、15、20、25、又は30箇所の注射部位に投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で50、45、40、35、30、25、又は20箇所の注射部位に注射投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で20又は15箇所の注射部位に注射投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で10箇所、例えば、最大で9、8、7、6、5、4、3、又は2箇所の注射部位に注射投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に1乃至40、5乃至40、8乃至38、30乃至40(例えば35)、又は15乃至25(例えば20)箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療毎に1乃至10、3乃至10、5乃至10、又は7乃至10箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至35(例えば31)箇所の注射部位に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至30(例えば28)箇所の注射部位に投与され得る。
【0249】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、例えば皮内注射によって、皮内投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に少なくとも5、10、15、20、25、又は30箇所の注射部位に、皮内注射によって投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で50、45、40、35、30、25、又は20箇所の注射部位に、皮内注射によって投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で20又は15箇所の注射部位に、皮内注射によって投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で10箇所、例えば、最大で9、8、7、6、5、4、3、又は2箇所の注射部位に、皮内注射によって投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に1乃至40、5乃至40、8乃至38、30乃至40(例えば35)、又は15乃至25(例えば20)箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療毎に1乃至10、3乃至10、5乃至10、又は7乃至10箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至35(例えば31)箇所の注射部位に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至30(例えば28)箇所の注射部位に投与され得る。皮内注射は、本明細書に記載の筋肉等の筋肉の領域内に行ってもよい。一実施形態では、皮内注射は、筋肉の表面を覆う皮膚に行ってもよい。
【0250】
最も好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、例えば筋肉内注射によって、筋肉内投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒を投与する特定の筋肉は、治療する障害(好ましくは疼痛)の性質及び部位によって異なる。
【0251】
キメラクロストリジウム神経毒は、以下から選択される1つ又は複数の対象の筋肉に投与され得る:前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、又は斜角筋。
【0252】
例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、以下から選択される1つ又は複数の対象の筋肉に投与され得る:前頭筋、皺筋、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、及び斜角筋。
【0253】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、本発明は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、及び斜角筋。障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、キメラクロストリジウム神経毒は、以下から選択される、対象の1つ又は複数の筋肉に投与され得る:前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、及び斜角筋。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、鼻根筋、皺眉筋、咬筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与される。同じ筋肉の2つのバージョン(例えば、2つの後頭筋)がある場合、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の必要に応じて、前記筋肉の一方又は両方に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、前記筋肉の両方に投与される。
【0254】
キメラクロストリジウム神経毒は、例えば筋肉内注射によって、筋肉内投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒が投与される具体的な筋肉は、治療する障害(好ましくは、疼痛)の性質及び部位によって異なる。障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、本発明は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、又は斜角筋。障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、キメラクロストリジウム神経毒は、以下から選択される、対象の1つ又は複数の筋肉に投与され得る:前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、及び斜角筋。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、鼻根筋、皺眉筋、咬筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与される。同じ筋肉の2つのバージョン(例えば、2つの後頭筋)がある場合、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の必要に応じて、前記筋肉の一方又は両方に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、前記筋肉の両方に投与される。
【0255】
本発明は、キメラクロストリジウム神経毒を、以下の少なくとも1つに投与することを含み得る:前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋(例えば、後頭筋上部若しくは後頭筋下部)、側頭筋、僧帽筋(例えば、僧帽筋上部、僧帽筋中部、若しくは僧帽筋下部)、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頸板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、若しくは斜角筋。好ましくは、本発明は、キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、又は僧帽筋の少なくとも1つに投与することを含み得る。より好ましくは、本発明は、キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与することを含み得る。同じ筋肉の2つのバージョン(例えば、2つの後頭筋)がある場合、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の必要に応じて、前記筋肉の一方又は両方に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、前記筋肉の両方に投与される。前記投与は、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療に特に関連するものであってよい。
【0256】
疼痛が関節炎疼痛である場合、キメラクロストリジウム神経毒は、例えば関節炎及び/又は関節炎疼痛の部位に応じて、対象の手、手首、膝、及び/又は足の1つ又は複数の筋肉に投与され得る。対象の手、手首、膝、又は足に投与される場合、片側(例えば、関節炎又は関節炎疼痛が片方の手、手首、膝、及び/若しくは足のみにある場合)に投与されてもよく、両側(例えば、関節炎又は関節炎疼痛が、両方の手、手首、膝、及び/若しくは足にある場合)に投与されてもよい。キメラクロストリジウム神経毒は、短母指屈筋、掌側骨間筋、短母指外転筋、短母指屈筋、母指外転筋、母指対立筋、背側骨間筋、小指外転筋、小指屈筋、及び小指対立筋(好ましくは、短母指屈筋、掌側骨間筋、短母指外転筋、短母指屈筋、及び母指外転筋から選択される1つ若しくは複数)から選択される、対象の1つ又は複数の手の筋肉に投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、短母指伸筋、長母指外転筋、小指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋、指伸筋、橈側手根伸筋、及び腕橈骨筋から選択される、対象の手首の1つ又は複数の筋肉に投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、以下から選択される、対象の膝の1つ又は複数の筋肉に投与され得る:縫工筋、内側広筋、外側広筋、腓腹筋、足底筋、半膜様筋、長腓骨筋、腓腹筋、前脛骨筋、大腿直筋、長腓骨筋、腸腰筋、恥骨筋、長内転筋、大内転筋、薄筋、大腿二頭筋、ヒラメ筋、ヒラメ筋、長指伸筋、長母趾伸筋、短腓骨筋、及び長趾屈筋(好ましくは、縫工筋、内側広筋、外側広筋、腓腹筋、足底筋、半膜様筋、長腓骨筋、腓腹筋、前脛骨筋、大腿直筋、及び長腓骨筋から選択される1つ又は複数)。キメラクロストリジウム神経毒は、短指伸筋及び短母趾伸筋から選択される、対象の足の1つ又は複数の筋肉に投与され得る。
【0257】
キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に少なくとも5、10、15、20、25又は30箇所の注射部位に、筋肉内注射によって投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で50、45、40、35、30、25、又は20箇所の注射部位に、筋肉内注射によって投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で20又は15箇所の注射部位に、筋肉内注射によって投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に最大で10箇所、例えば、最大で9、8、7、6、5、4、3、又は2箇所の注射部位に、筋肉内注射によって投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に1乃至40、5乃至40、8乃至38、30乃至40(例えば35)、又は15乃至25(例えば20)箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療毎に1乃至10、3乃至10、5乃至10、又は7乃至10箇所の注射部位に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至35(例えば31)箇所の注射部位に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に25乃至30(例えば28)箇所の注射部位に投与され得る。
【0258】
キメラクロストリジウム神経毒は、1回の注射毎(例えば、注射部位毎)の単位用量で投与され得る。
【0259】
キメラクロストリジウム神経毒は、神経内投与、神経周囲投与、又は神経節周囲投与によって、投与され得る。
【0260】
キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経、三叉神経節、翼口蓋神経節、ガッサー神経節、中間神経、舌咽、迷走神経、耳神経節、及び/又は後頭神経を経て上部頸部根に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経、三叉神経節及び/又は翼口蓋神経節に投与される。
【0261】
キメラクロストリジウム神経毒は、関節内投与され得る。キメラクロストリジウム神経毒は、関節付近に筋肉内投与及び/又は皮内投与され得る。
【0262】
キメラクロストリジウム神経毒は、血管周囲投与により投与され得る。
【0263】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒を投与する投与量範囲は、所望の治療効果及び/又は予防効果をもたらすものである。
【0264】
液体剤形は、通常、キメラクロストリジウム神経毒、及び発熱物質を含まない滅菌溶媒を使用して調製される。キメラクロストリジウム神経毒は、使用される溶媒及び濃度に応じて、溶媒に溶解してもよく、懸濁させてもよい。溶液を調製する際には、キメラクロストリジウム神経毒を溶媒に溶解し、必要に応じて、塩化ナトリウムを添加して溶液を等張にし、無菌技術を使用して滅菌フィルターで濾過して滅菌した後、適切な滅菌バイアル又はアンプルに充填して密封してもよい。或いは、溶液の安定性が十分であれば、密封容器内の溶液をオートクレーブで滅菌してもよい。有利には、緩衝剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤若しくは殺菌剤、懸濁剤若しくは乳化剤、及び又は局所麻酔剤等の添加剤を溶媒に溶解してもよい。
【0265】
無菌区域で無菌技術を使用して、事前に滅菌した成分を滅菌容器に充填することにより、使用前に適切な溶媒に溶解又は懸濁させる乾燥粉末を調製してもよい。或いは、無菌区域で無菌技術を使用して、成分を適切な容器内に溶解してもよい。その後、製品を凍結乾燥し、容器を無菌的に密封する。
【0266】
本明細書に記載の投与経路に適した非経口懸濁液は、滅菌成分を溶解するのではなく滅菌溶媒に懸濁し、濾過によっては滅菌ができないことを除いて、実質的に同じ方法で調製される。成分は滅菌状態で分離してもよく、或いは分離後に、例えば、ガンマ線照射により滅菌してもよい。
【0267】
有利には、組成物は、成分の均一な分布を促進するために、ポリビニルピロリドン等の懸濁剤を含む。
【0268】
本発明による投与では、微粒子カプセル化又は高圧エアロゾル衝突を含む様々な送達技術を利用し得る。
【0269】
従来のクロストリジウム神経毒(例えば、天然BoNT/A)と異なり、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、例えば、従来の神経毒と比較した場合の改善された安全比によって証明されるように、改善された安全性プロファイル及び/又は改善された活性を有する(更なる詳細については、WO 2017/191315 A1を参照)。この観点から、キメラクロストリジウム神経毒は、治療有効性を確保しつつ低用量で投与することができ、且つ、望ましくない毒性関連の副作用を引き起こすことなく、高用量で投与することができる。従って、本発明は、障害(好ましくは、疼痛)を治療するための広範囲の適切な投与量範囲を提供する。
【0270】
医師の便宜上、キメラクロストリジウム神経毒は、単位用量で投与してもよい。前記単位用量を、1つの部位に投与してもよく、或いは、単位用量未満を投与部位に投与してもよい(例えば、投与部位が2箇所以上あり、用量を前記部位の間で(均等又は不均等に)分割する場合)。一実施形態では、本発明を実施する際、治療する筋肉及び/又はニューロン毎に、単回単位用量が投与され得る。
【0271】
一実施形態では、本発明を実施する際、少なくとも1単位用量が、筋肉及び/又はニューロンに投与され得る。例えば、本発明を実施する際、筋肉及び/又はニューロンに1乃至20、1乃至10、1乃至7、又は1乃至5単位用量が投与され得る。
【0272】
一実施形態では、少なくとも0.25、0.5、1、又は2単位用量が、1回の注射毎(例えば、注射部位毎)に投与され得る。例えば、1回の注射毎(例えば、注射部位毎)に、0.25、0.5、1、又は2単位用量が投与され得る。好ましくは、1回の注射毎(例えば、注射部位毎)に、1単位用量を投与してもよい。
【0273】
単位用量(又は、その一部若しくは複数)を投与する場合、実質的に単位用量(又は、その一部若しくは倍数)の全てを投与することを意味し得る。例えば、キメラクロストリジウム神経毒が取り出された後のバイアル(例えば、キメラクロストリジウム神経毒が再構成されたバイアル)には、単位用量(又は、その一部若しくは複数)の残量(例えば、最大1%、0.1%又は0.01%)が残っていてもよい。しかし、好ましくは、単位用量(又は、その一部若しくは複数)の全てが(例えば、1つ又は複数の注射部位に)投与される。
【0274】
適切な単位用量は、5pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量範囲の上限は、16,500、15,500、14,500、13,500、12,500、11,500、10,500、9,500、8,500、7,500、6,500、5,500、4,500、3,500、2,500、1,500、又は500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、上限は16,000pgである。単位用量範囲の下限は、10、20、30、50、100、200、250、350、450、550、650、750、850、950、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、又は5,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、下限は1,000pg又は750pgである。前記範囲の下限は、3,000pg超であってもよい。好ましくは、単位用量は、750pg乃至17,000pgのキメラクロストリジウム神経毒である。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、3,640pg乃至17,000pgである。より好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、1,000pg乃至16,000pgのキメラクロストリジウム神経毒、例えば4,000pg乃至6,000pgのキメラクロストリジウム神経毒、又は1,000乃至5,500pg、例えば2,000pg乃至4,500pg、2,000pg乃至3,000pg(例えば、2,500pg)、若しくは3,500乃至4,500pgのキメラクロストリジウム神経毒である。好ましくは、単位用量は、4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。
【0275】
適切な単位用量は、0.2単位乃至最大707単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。前記範囲の上限は、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、又は100単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、上限は666単位である。前記範囲の下限は、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、又は700単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは、下限は42単位又は31単位である。前記範囲の下限は、125単位超であってもよい。好ましくは、単位用量は、31単位乃至707単位のキメラクロストリジウム神経毒である。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、166単位乃至707単位であってよい。より好ましくは、単位用量は、42単位乃至666単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、200単位乃至400単位のキメラクロストリジウム神経毒、又は41単位乃至229単位、例えば83単位乃至188単位、83単位乃至125単位(例えば、104単位)若しくは145単位乃至188単位のキメラクロストリジウム神経毒である。好ましくは、単位用量は、166単位のキメラクロストリジウム神経毒である。単位用量は、47単位乃至707単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、187単位乃至282単位のキメラクロストリジウム神経毒、又は47乃至258単位、例えば94単位乃至211単位、94単位乃至141単位(例えば、117単位)、若しくは164乃至211単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量は、188単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。
【0276】
適切な単位用量は、1,000pg乃至5,500pgであってよい。単位用量範囲の上限は、5,250、5,200、5,100、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、又は2,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は5,100pgであり、より好ましくは5,000pgである。単位用量範囲の下限は、1,100、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、又は4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は1,400pgであり、より好ましくは1,500pgである。前記範囲の下限は、3,000pg超であってもよい。単位用量は、1,400pg乃至5,100pg(例えば、1,500pg乃至5,000pg)、2,000pg乃至5,100pg、3,000乃至5,100pg、又は3,000乃至4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量は、3,000pg超、最大で5,500pgのキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、2,000pg乃至4,500pg、2,000pg乃至3,000pg(例えば、2,500pg)、又は3,500乃至4,500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。好ましくは、単位用量は、4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。
【0277】
適切な単位用量は、42単位乃至258単位(例えば、最大229単位)であってよい。単位用量範囲の上限は、225、220、215、210、205、200、190、180、170、160、150、125、100、又は83単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は212単位であり、より好ましくは208単位である。単位用量範囲の下限は、46、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、又は166単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は58単位であり、より好ましくは62単位である。前記範囲の下限は、125単位超であってよい。単位用量は、58単位乃至212単位(例えば、62単位乃至208単位)、83単位乃至212単位、125乃至212単位、又は125乃至166単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量は、125単位超、最大で229単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、83単位乃至188単位、83単位乃至125単位(例えば、104単位)、又は146単位乃至188単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。好ましくは、単位用量は、166単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。単位用量は、47単位乃至258単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、94単位乃至211単位、94単位乃至141単位(例えば、117単位)、又は164乃至211単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位用量は、188単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。
【0278】
1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大255,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。これは、単位用量の15倍に相当し得る。投与される合計用量は、最大255,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、単位用量の28倍、31倍、又は39倍に相当し得る。換言すると、所与の治療セッションで投与されるキメラクロストリジウム神経毒の合計量は、最大255,000pgであってよい。合計用量は、最大240,000、220,000、200,000、180,000、160,000、140,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、10,000、又は5,000pgであってよい。好ましくは、合計用量は、最大240,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。合計用量は、少なくとも900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、7,500、10,000、12,500、15,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、120,000、150,000、175,000、200,000、又は220,000pgであってよい。好ましくは、合計用量は少なくとも1,500pg、より好ましくは少なくとも2,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、より好ましくは、3,000pg超、例えば少なくとも12,000pgであってよい。合計用量は、3,640pg乃至255,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。合計用量は、2,000乃至240,000pg、好ましくは128,000乃至240,000pgであってよい。より好ましくは、投与される合計用量は、15,000乃至240,000pgである。合計用量は、75,000pg又は115,000pgであってよい。合計用量は、70,000pg又は112,000pgであってよい。
【0279】
1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大10,607単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。これは、単位用量の15倍に相当し得る。投与される合計用量は、最大10,607単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、単位用量の28倍、31倍、又は39倍に相当し得る。換言すると、所与の治療セッションで投与されるキメラクロストリジウム神経毒の合計量は、最大10,607単位であってよい。合計用量は、最大10,500、10,000、9,500、9,000、8,500、8,000、7,500、7,000、6,500、6,000、5,500、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、2,000、1,500、1,000、500、又は207単位であってよい。好ましくは、合計用量は、最大11,268又は9,983単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。合計用量は、少なくとも37、50、100、150、200、250、500、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、9,500、9,151、10,000、又は10,328単位であってよい。好ましくは、合計用量は、少なくとも62単位又は70単位、より好ましくは少なくとも83単位又は94単位のキメラクロストリジウム神経毒、更に好ましくは125又は141単位超、例えば、少なくとも499単位又は563単位であってよい。合計用量は、165単位乃至10,607単位、又は171単位乃至10,607単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。合計用量は、83乃至9,983単位又は94乃至10,607単位、好ましくは、5,324乃至9,983単位又は6,009乃至10,607単位であってよい。より好ましくは、投与される合計用量は、624乃至9,983単位又は704乃至10,607単位である。合計用量は、3,120又は4,784単位であってよい。合計用量は、2,911又は4,659単位であってよい。合計用量は、3,521又は5,399単位であってよい。合計用量は、3,286単位又は5,258単位であってよい。
【0280】
適切な単位用量は2,500pgであってよく、合計用量は、最大70,000pgであってよい。例えば、適切な単位用量は、2,500pgであってよく、合計用量は70,000pgであってよい。適切な単位用量は4,000pgであってよく、合計用量は、最大112,000pgであってよい。例えば、適切な単位用量は4,000pgであってよく、合計用量は112,000pgであってよい。適切な単位用量は5,000pgであってよく、合計用量は、最大155,000pgであってよい。例えば、適切な単位用量は5,000pgであってよく、合計用量は155,000pgであってよい。
【0281】
適切な単位用量は104単位であってよく、合計用量は、最大2,912単位であってよい。例えば、適切な単位用量は104単位であってよく、合計用量は2,912単位であってよい。適切な単位用量は166単位であってよく、合計用量は、最大4,659単位であってよい。例えば、適切な単位用量は166単位であってよく、合計用量は4,659単位であってよい。適切な単位用量は208単位であってよく、合計用量は、最大6,448単位であってよい。例えば、適切な単位用量は208単位であってよく、合計用量は6,448単位であってよい。
【0282】
適切な単位用量は117単位であってよく、合計用量は、最大3,286単位であってよい。例えば、適切な単位用量は117単位であってよく、合計用量は3,286単位であってよい。適切な単位用量は188単位であってよく、合計用量は、最大5,258単位であってよい。例えば、適切な単位用量は188単位であってよく、合計用量は5,258単位であってよい。適切な単位用量は235単位であってよく、合計用量は、最大7,277単位であってよい。例えば、適切な単位用量は235単位であってよく、合計用量は7,277単位であってよい。
【0283】
所与の治療において投与される単位用量の合計数は、最大で単位用量の15倍であってよい。例えば、投与される単位用量の合計数は、最大14倍、13倍、12倍、11倍、10倍、9倍、8倍、又は7倍である。投与される単位用量の合計数は、少なくとも、単位用量の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍であり、好ましくは少なくとも2倍である。投与される単位用量数の合計数は、2倍乃至15倍、7倍乃至15倍、又は10倍乃至14倍であってよい。好ましくは、投与される単位用量数は、15倍である。
【0284】
所与の治療において投与される単位用量の合計数は(治療中に投与される合計用量が、上限である255,000pg又は10,607単位を超えない限り)、最大で単位用量の39倍であってもよい。例えば、投与される単位用量の合計数は、最大で単位用量の35倍、31倍、30倍、29倍、28倍、27倍、26倍、25倍、又は20倍であってもよく、好ましくは、投与される単位用量の合計数は、最大で単位用量の28倍である。投与される単位用量の合計数は、少なくとも、単位用量の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍であってよく、好ましくは少なくとも2倍であってよい。投与される単位用量の合計数は、2倍乃至39倍、15倍乃至31倍、又は28倍乃至31倍であってよい。投与される単位用量の合計数は、28倍、31倍、又は39倍であってよい。
【0285】
従って、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大192,500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大180,000pg又は最大177,000pg(例えば、最大175,000pg)であってよい。
【0286】
従って、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大8,007単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大7,488単位又は最大7,363単位(例えば、最大7,280単位)であってよい。1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大9,037単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大8,451単位又は最大8,310単位(例えば、最大8,216単位)であってよい。
【0287】
1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大110,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大105,000pg、最大102,000pg(例えば、最大100,000pg)であってよい。
【0288】
1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大4,576単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大4,368単位、好ましくは最大4,243単位(より好ましくは、最大4,160単位)であってよい。1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大5,165単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大4,929単位、好ましくは最大4,789単位(より好ましくは、最大4,695単位)であってよい。
【0289】
用語「最大」は、値に関して使用される場合(例えば、最大255,000pg)、記載された値まで(その値を含む)を意味する。従って、例として、「最大255,000pg」のキメラクロストリジウム神経毒を投与するという言及は、255,000pg未満のキメラクロストリジウム神経毒の投与と共に、255,000pgのキメラクロストリジウム神経毒の投与を包含する。
【0290】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与され得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒の少なくとも単位用量が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与され得る。幾つかの実施形態では、複数の単位用量が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与される。一実施形態では、単回単位用量が皺筋、鼻筋、及び眼輪筋に投与され、複数の単位用量が、前頭筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与される。複数の単位用量は、2乃至10単位用量であってよく、例えば、2乃至8単位用量、好ましくは2乃至5単位用量、例えば、2乃至4単位用量であってよい。
【0291】
より好ましくは、方法は、キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、又は僧帽筋の少なくとも1つに投与することを含む。方法は、キメラクロストリジウム神経毒を、前頭筋、皺(例えば、皺眉)筋、鼻筋、眼輪筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与することを含み得る。
【0292】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、前頭筋毎に2単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、鼻筋毎に1単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(vi)後頭筋に3単位用量(好ましくは、後頭筋毎に3単位用量);及び/又は
(vii)僧帽筋に2単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に2単位用量)。
【0293】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、前頭筋毎に2単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、鼻筋毎に1単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(vi)後頭筋に3単位用量(好ましくは、後頭筋毎に3単位用量);及び
(vii)僧帽筋に2単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に2単位用量)。
【0294】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に1単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に1単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(vi)後頭筋に6単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に3単位用量);並びに/又は
(vii)僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に2単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に2単位用量)。
【0295】
好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含む:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に1単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に1単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(vi)後頭筋に6単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に3単位用量);並びに
(vii)僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に2単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に2単位用量)。
【0296】
上記実施形態に記載のように頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1回の注射(例えば、注射部位)毎に、1単位用量を投与するのが好ましい。従って、キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(vi)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);及び/又は
(vii)僧帽筋への2回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に2回の注射)。
【0297】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(vi)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);及び
(vii)僧帽筋への2回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に2回の注射)。
【0298】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射;
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(vi)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);及び/又は
(vii)僧帽筋への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への2回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への2回の注射)。
【0299】
好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含む:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射;
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(vi)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);並びに
(vii)僧帽筋への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への2回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への2回の注射)。
【0300】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、鼻根筋、皺筋、側頭筋、後頭筋、僧帽筋、及び頸部傍脊柱筋群のうちの1つ又は複数に、筋肉内投与又は皮内投与され得る。好ましくは、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、鼻根筋、皺筋、側頭筋、後頭筋、僧帽筋、及び頸部傍脊柱筋群に(例えば、頸部傍脊柱筋群の各々に少なくとも単位用量)、筋肉内投与又は皮内投与され得る。
【0301】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、鼻根筋、皺筋、側頭筋、後頭筋、僧帽筋、及び頸部傍脊柱筋群のうちの1つ又は複数に投与され得る。好ましくは、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、鼻根筋、皺筋、側頭筋、後頭筋、僧帽筋、及び頸部傍脊柱筋群に(例えば、頸部傍脊柱筋群の各々に少なくとも単位用量)、投与され得る。一実施形態では:
(i)鼻根筋及び皺筋の1つ又は複数に、単回単位用量が投与される(好ましくは、顔の第1側面(例えば、左側)の皺筋に単回単位用量が投与され、顔の第2側面(例えば、右側)の皺筋に第2の単位用量が投与される);並びに/又は(好ましくは、並びに)
(iii)複数の単位用量が、前頭筋、側頭筋、後頭筋、僧帽筋、及び頸部傍脊柱群のうちの1つ又は複数に投与される(例えば、単回若しくは二回の単位用量が、頸部傍脊柱群の各筋肉に投与される場合)。複数の単位用量は、2乃至8単位用量、例えば2乃至5単位用量であってよい。
【0302】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に筋肉内投与又は皮内投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び/又は第2の顔側面の前頭筋に2単位用量;
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の皺筋に1単位用量;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び/若しくは第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量、及び/若しくは第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量;
(vi)第1の首側面の僧帽筋に3単位用量、及び/若しくは第2の首側面の僧帽筋に3単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量、及び/若しくは第2の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1単位用量が投与される場合)、又は第1の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2単位用量が投与される場合)。
【0303】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量;
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量;
(vi)第1の首側面の僧帽筋に3単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に3単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1単位用量が投与される場合)、又は第1の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2単位用量が投与される場合)。
【0304】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量;
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋に3単位用量;
(vi)第1の首側面の僧帽筋に3単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に3単位用量;並びに
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1単位用量が投与される場合)、又は第1の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2単位用量が投与される場合)。
【0305】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量(好ましくは、鼻根筋毎に1単位用量);
(iii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iv)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(v)後頭筋に3単位用量(好ましくは、後頭筋毎に3単位用量);
(v)僧帽筋に3単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に3単位用量);及び/又は
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に4単位用量)、又は頚部傍脊柱群に2単位用量(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2単位用量)。
【0306】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量(好ましくは、鼻根筋毎に1単位用量);
(iii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iv)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(v)後頭筋に3単位用量(好ましくは、後頭筋毎に3単位用量);
(vi)僧帽筋に3単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に3単位用量);及び
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に4単位用量)、又は頚部傍脊柱群に2単位用量(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2単位用量)。
【0307】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iv)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(v)後頭筋に6単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に3単位用量);
(vi)僧帽筋に6単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に3単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に3単位用量)及び/又は
(vii)頸部傍脊柱群に8単位用量(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1単位用量が投与される場合)、又は頚部傍脊柱群に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2単位用量が投与される場合)。
【0308】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iv)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(v)後頭筋に6単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に3単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に3単位用量);
(vi)僧帽筋に6単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に3単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に3単位用量);及び
(vii)頸部傍脊柱群に8単位用量(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1単位用量が投与される場合)、又は頚部傍脊柱群に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群に2単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2単位用量が投与される場合)。
【0309】
上記実施形態に記載のように頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、注射部位毎に1単位用量を投与するのが好ましい。従って、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位;
(ii)鼻根筋における1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位、及び/若しくは第2の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位;
(vi)第1の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1箇所の注射部位がある場合)、若しくは第1の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2箇所の注射部位がある場合)。
【0310】
治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位;
(ii)鼻根筋における1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位、及び第2の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位、及び第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位;
(vi)第1の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位、及び第2の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1箇所の注射部位がある場合)、又は第1の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2箇所の注射部位がある場合)。
【0311】
治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の前頭筋における2箇所の注射部位;
(ii)鼻根筋における1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の皺筋における1箇所の注射部位;
(iv)第1の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位、及び第2の頭部側面の側頭筋における4箇所の注射部位;
(v)第1の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位、及び第2の首/頭部(好ましくは、頭部)側面の後頭筋における3箇所の注射部位;
(vi)第1の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位、及び第2の首側面の僧帽筋における3箇所の注射部位;並びに
(vii)第1の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群における4箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1箇所の注射部位がある場合)、又は第1の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群における2箇所の注射部位(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2箇所の注射部位がある場合)。
【0312】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射(好ましくは、鼻根筋毎に1回の注射);
(iii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iv)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(v)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);
(vi)僧帽筋への3回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に3回の注射);及び/又は
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2回の注射)。
【0313】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射(好ましくは、鼻根筋毎に1回の注射);
(iii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iv)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(v)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);
(vi)僧帽筋への3回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に3回の注射);及び
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2回の注射)。
【0314】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iv)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(v)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);
(vi)僧帽筋への6回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への3回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への3回の注射);並びに/又は
(vii)頚部傍脊柱群への8回の注射(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群への4回の注射、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1回の注射をする場合)、又は頚部傍脊柱群への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群への2回の注射、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群への2回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2回の注射をする場合)。
【0315】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iv)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(v)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);
(vi)僧帽筋への6回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への3回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への3回の注射);及び
(vii)頚部傍脊柱群への8回の注射(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群への4回の注射、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1箇所の注射部位がある場合)、又は頚部傍脊柱群への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の頚部傍脊柱群への2回の注射、及び第2の首側面の頚部傍脊柱群への2回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に2回の注射をする場合)。
【0316】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、前頭筋毎に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iv)側頭筋に5単位用量(好ましくは、側頭筋毎に5単位用量);
(v)後頭筋に4単位用量(好ましくは、後頭筋毎に4単位用量);
(vi)僧帽筋に5単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に5単位用量);及び/又は
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量部位(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に4単位用量)、又は頚部傍脊柱群に2単位用量部位(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2単位用量)。
【0317】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、前頭筋毎に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量(好ましくは、鼻根筋毎に1単位用量);
(iii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iv)側頭筋に5単位用量(好ましくは、側頭筋毎に5単位用量);
(v)後頭筋に4単位用量(好ましくは、後頭筋毎に4単位用量);
(vi)僧帽筋に5単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に5単位用量);及び
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に4単位用量)、又は頚部傍脊柱群に2単位用量部位(好ましくは、頚部傍脊柱群毎に2単位用量)。
【0318】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iv)側頭筋に10単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に5単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に5単位用量);
(v)後頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に4単位用量);
(vi)僧帽筋に10単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に4単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に4単位用量);及び/又は
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1若しくは2単位用量が投与される場合)。
【0319】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に4単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に2単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に2単位用量);
(ii)鼻根筋に1単位用量;
(iii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iv)側頭筋に10単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に5単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に5単位用量);
(v)後頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に4単位用量);
(vi)僧帽筋に10単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に5単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に5単位用量);及び
(vii)頚部傍脊柱群に4単位用量(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1若しくは2単位用量が投与される場合)。
【0320】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iv)側頭筋への5回の注射(好ましくは、側頭筋毎に5回の注射);
(v)後頭筋への4回の注射(好ましくは、後頭筋毎に4回の注射);
(vi)僧帽筋への5回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に5回の注射);及び/又は
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1回若しくは2回の注射が投与される場合)。
【0321】
投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、前頭筋毎に2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iv)側頭筋への5回の注射(好ましくは、側頭筋毎に5回の注射);
(v)後頭筋への4回の注射(好ましくは、後頭筋毎に4回の注射);
(vi)僧帽筋への5回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に5回の注射);及び
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1回若しくは2回の注射が投与される場合)。
【0322】
投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iv)側頭筋への10回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への5回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への5回の注射);
(v)後頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への4回の注射);
(vi)僧帽筋への10回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への4回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への4回の注射);並びに/又は
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1回若しくは2回の注射が投与される場合)。
【0323】
投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への4回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への2回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への2回の注射);
(ii)鼻根筋への1回の注射;
(iii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iv)側頭筋への10回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への5回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への5回の注射);
(v)後頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への4回の注射);
(vi)僧帽筋への10回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への4回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への4回の注射);
(vii)頚部傍脊柱群への4回の注射(例えば、頸部傍脊柱筋群毎に1回若しくは2回の注射が投与される場合)。
【0324】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、咬筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒の少なくとも単位用量が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、咬筋、側頭筋、後頭筋、及び僧帽筋に投与され得る。一実施形態では:
(i)前頭筋、皺筋(好ましくは、顔の第1側面(例えば、左側)の皺筋に単回単位用量が投与され、顔の第2側面(例えば、右側)の皺筋に第2の単位用量が投与される)、眼輪筋、咬筋、及び/又は(好ましくは、及び)上部僧帽筋のうちの1つ又は複数に単回単位用量が投与される;
(ii)単位用量の半量が鼻筋に投与される;並びに/又は(好ましくは、並びに)
(iii)複数の単位用量が、側頭筋、後頭筋、及び/若しくは(好ましくは、及び)下部僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与される。複数の単位用量は、2乃至6単位用量、例えば、2乃至5単位用量であってよい。
【0325】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に0.5単位用量(好ましくは、鼻筋毎に0.5単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)咬筋に1単位用量(好ましくは、咬筋毎に1単位用量);
(vi)側頭筋に6単位用量(好ましくは、側頭筋毎に6単位用量);
(vii)後頭筋に6単位用量(好ましくは、後頭筋毎に6単位用量);
(viii)上部僧帽筋に1単位用量(好ましくは、上部僧帽筋毎に1単位用量);及び/又は
(ix)下部僧帽筋に2単位用量(好ましくは、下部僧帽筋毎に2単位用量)。
【0326】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に0.5単位用量(好ましくは、鼻筋毎に0.5単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)咬筋に1単位用量(好ましくは、咬筋毎に1単位用量);
(vi)側頭筋に6単位用量(好ましくは、側頭筋毎に6単位用量);
(vii)後頭筋に6単位用量(好ましくは、後頭筋毎に6単位用量);
(viii)上部僧帽筋に1単位用量(好ましくは、上部僧帽筋毎に1単位用量);及び
(ix)下部僧帽筋に2単位用量(好ましくは、下部僧帽筋毎に2単位用量)。
【0327】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に1単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に1単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に0.5単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に0.5単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)咬筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の咬筋に1単位用量、及び第2の顔側面の咬筋に1単位用量);
(vi)側頭筋に12単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に6単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に6単位用量);
(vii)後頭筋に12単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に6単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に6単位用量);
(viii)上部僧帽筋に2単位用量(好ましくは、第1の首側面の上部僧帽筋に1単位用量、及び第2の首側面の上部僧帽筋に1単位用量);並びに/又は
(ix)下部僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の下部僧帽筋に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の下部僧帽筋に2単位用量)。
【0328】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に1単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に1単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に0.5単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に0.5単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)咬筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の咬筋に1単位用量、及び第2の顔側面の咬筋に1単位用量);
(vi)側頭筋に12単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に6単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に6単位用量);
(vii)後頭筋に12単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋に6単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋に6単位用量);
(viii)上部僧帽筋に2単位用量(好ましくは、第1の首側面の上部僧帽筋に1単位用量、及び第2の首側面の上部僧帽筋に1単位用量);並びに
(ix)下部僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の下部僧帽筋に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の下部僧帽筋に2単位用量)。
【0329】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への1回の注射(好ましくは、前頭筋毎に1回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)咬筋への1回の注射(好ましくは、咬筋毎に1回の注射);
(vi)側頭筋への3回の注射(好ましくは、側頭筋毎に3回の注射);
(vii)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);
(viii)上部僧帽筋への1回の注射(好ましくは、上部僧帽筋毎に1回の注射);及び/又は
(ix)下部僧帽筋への1回の注射(好ましくは、下部僧帽筋毎に1回の注射)。
【0330】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への1回の注射(好ましくは、前頭筋毎に1回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)咬筋への1回の注射(好ましくは、咬筋毎に1回の注射);
(vi)側頭筋への3回の注射(好ましくは、側頭筋毎に3回の注射);
(vii)後頭筋への3回の注射(好ましくは、後頭筋毎に3回の注射);
(viii)上部僧帽筋への1回の注射(好ましくは、上部僧帽筋毎に1回の注射);及び
(ix)下部僧帽筋への1回の注射(好ましくは、下部僧帽筋毎に1回の注射)。
【0331】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への1回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への1回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)咬筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の咬筋への1回の注射、及び第2の顔側面の咬筋への1回の注射);
(vi)側頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への3回の注射);
(vii)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);
(viii)上部僧帽筋への2回の注射(好ましくは、第1の首側面の上部僧帽筋への1回の注射、及び第2の首側面の上部僧帽筋への1回の注射);並びに/又は
(ix)下部僧帽筋への2回の注射(好ましくは、第1の首側面の下部僧帽筋への1回の注射、及び/若しくは第2の首側面の下部僧帽筋への1回の注射)。
【0332】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への1回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への1回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)咬筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の咬筋への1回の注射、及び第2の顔側面の咬筋への1回の注射);
(vi)側頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への3回の注射);
(vii)後頭筋への6回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋への3回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋への3回の注射);
(viii)上部僧帽筋への2回の注射(好ましくは、第1の首側面の上部僧帽筋への1回の注射、及び第2の首側面の上部僧帽筋への1回の注射);並びに
(ix)下部僧帽筋への2回の注射(好ましくは、第1の首側面の下部僧帽筋への1回の注射、及び/若しくは第2の首側面の下部僧帽筋への1回の注射)。
【0333】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、咬筋、側頭筋、後頭筋上部、後頭筋下部、並びに上部及び下部僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与され得る。少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、前頭筋、皺筋、鼻筋、眼輪筋、咬筋、側頭筋、後頭筋上部、後頭筋下部、並びに上部及び下部僧帽筋に投与され得る。一実施形態では:
(i)前頭筋、皺筋(好ましくは、顔の第1側面(例えば、左側)の皺筋に単回単位用量が投与され、顔の第2側面(例えば、右側)の皺筋に第2の単位用量が投与される)、鼻筋、眼輪筋、咬筋、及び後頭筋下部のうちの1つ又は複数に単回単位用量が投与され、且つ/又は(好ましくは、且つ)
(iii)複数の単位用量が、側頭筋、後頭筋上部、及び僧帽筋のうちの1つ又は複数に投与される。複数の単位用量は、2乃至8単位用量、例えば2乃至5単位用量であってよい。
【0334】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、鼻筋毎に1単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)咬筋に1単位用量(好ましくは、咬筋毎に1単位用量);
(vi)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(vii)後頭筋上部に2単位用量(好ましくは、後頭筋上部毎に2単位用量);
(viii)後頭筋下部に1単位用量(好ましくは、後頭筋下部毎に1単位用量);及び/又は
(viii)僧帽筋に2単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に2単位用量)。
【0335】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に1単位用量(好ましくは、前頭筋毎に1単位用量);
(ii)皺筋に1単位用量(好ましくは、皺筋毎に1単位用量);
(iii)鼻筋に1単位用量(好ましくは、鼻筋毎に1単位用量);
(iv)眼輪筋に1単位用量(好ましくは、眼輪筋毎に1単位用量);
(v)咬筋に1単位用量(好ましくは、咬筋毎に1単位用量);
(vi)側頭筋に4単位用量(好ましくは、側頭筋毎に4単位用量);
(vii)後頭筋上部に2単位用量(好ましくは、後頭筋上部毎に2単位用量);
(viii)後頭筋下部に1単位用量(好ましくは、後頭筋下部毎に1単位用量);及び
(viii)僧帽筋に2単位用量(好ましくは、僧帽筋毎に2単位用量)。
【0336】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に1単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に1単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に1単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に1単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)咬筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の咬筋に1単位用量、及び第2の顔側面の咬筋に1単位用量);
(vi)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(vii)後頭筋上部に4単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋上部に2単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋上部に2単位用量);
(viii)後頭筋下部に2単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋下部に1単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋下部に1単位用量);並びに/又は
(ix)僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に2単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に2単位用量)。
【0337】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)前頭筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋に1単位用量、及び第2の顔側面の前頭筋に1単位用量);
(ii)皺筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の皺筋に1単位用量、及び第2の顔側面の皺筋に1単位用量);
(iii)鼻筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋に1単位用量、及び第2の顔側面の鼻筋に1単位用量);
(iv)眼輪筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋に1単位用量、及び第2の顔側面の眼輪筋に1単位用量);
(v)咬筋に2単位用量(好ましくは、第1の顔側面の咬筋に1単位用量、及び第2の顔側面の咬筋に1単位用量);
(vi)側頭筋に8単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋に4単位用量、及び第2の頭部側面の側頭筋に4単位用量);
(vii)後頭筋上部に4単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋上部に2単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋上部に2単位用量);
(viii)後頭筋下部に2単位用量(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋下部に1単位用量、及び第2の頭部側面の後頭筋下部に1単位用量);並びに
(ix)僧帽筋に4単位用量(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋に2単位用量、及び第2の首側面の僧帽筋に2単位用量)。
【0338】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への1回の注射(好ましくは、前頭筋毎に1回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)咬筋への1回の注射(好ましくは、咬筋毎に1回の注射);
(vi)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(vii)後頭筋上部への2回の注射(好ましくは、後頭筋上部毎に2回の注射);
(viii)後頭筋下部への1回の注射(好ましくは、後頭筋下部毎に1回の注射);及び/又は
(viii)僧帽筋への2回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に2回の注射)。
【0339】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への1回の注射(好ましくは、前頭筋毎に1回の注射);
(ii)皺筋への1回の注射(好ましくは、皺筋毎に1回の注射);
(iii)鼻筋への1回の注射(好ましくは、鼻筋毎に1回の注射);
(iv)眼輪筋への1回の注射(好ましくは、眼輪筋毎に1回の注射);
(v)咬筋への1回の注射(好ましくは、咬筋毎に1回の注射);
(vi)側頭筋への4回の注射(好ましくは、側頭筋毎に4回の注射);
(vii)後頭筋上部への2回の注射(好ましくは、後頭筋上部毎に2回の注射);
(viii)後頭筋下部への1回の注射(好ましくは、後頭筋下部毎に1回の注射);及び
(viii)僧帽筋への2回の注射(好ましくは、僧帽筋毎に2回の注射)。
【0340】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への1回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への1回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)咬筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の咬筋への1回の注射、及び第2の顔側面の咬筋への1回の注射);
(vi)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(vii)後頭筋上部への4回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋上部への2回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋上部への2回の注射);
(viii)後頭筋下部への2回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋下部への1回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋下部への1回の注射);並びに/又は
(ix)僧帽筋への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への2回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への2回の注射)。
【0341】
キメラクロストリジウム神経毒の投与は、以下を含み得る:
(i)前頭筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の前頭筋への1回の注射、及び第2の顔側面の前頭筋への1回の注射);
(ii)皺筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の皺筋への1回の注射、及び第2の顔側面の皺筋への1回の注射);
(iii)鼻筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の鼻筋への1回の注射、及び第2の顔側面の鼻筋への1回の注射);
(iv)眼輪筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の眼輪筋への1回の注射、及び第2の顔側面の眼輪筋への1回の注射);
(v)咬筋への2回の注射(好ましくは、第1の顔側面の咬筋への1回の注射、及び第2の顔側面の咬筋への1回の注射);
(vi)側頭筋への8回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の側頭筋への4回の注射、及び第2の頭部側面の側頭筋への4回の注射);
(vii)後頭筋上部への4回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋上部への2回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋上部への2回の注射);
(viii)後頭筋下部への2回の注射(好ましくは、第1の頭部側面の後頭筋下部への1回の注射、及び第2の頭部側面の後頭筋下部への1回の注射);及び
(ix)僧帽筋への4回の注射(好ましくは、第1の首側面の僧帽筋への2回の注射、及び第2の首側面の僧帽筋への2回の注射)。
【0342】
本明細書に記載の何れの態様若しくは実施形態においても、キメラクロストリジウム神経毒の投与は、キメラクロストリジウム神経毒の筋肉への直接又は間接的な注射を含み得る。例えば、キメラクロストリジウム神経毒を、筋肉に対して間接的に注射する場合、キメラクロストリジウム神経毒は筋肉の領域に投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒を筋肉に直接注射する場合、キメラクロストリジウム神経毒はその筋肉に、筋肉内投与され得る。一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒の筋肉への注射が筋肉に対して間接的である場合、キメラクロストリジウム神経毒は皮内投与され得る。
【0343】
障害が、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛である場合、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、三叉神経眼領域、三叉神経上顎領域、三叉神経下顎領域、及び後頭部のうちの1つ又は複数に皮内投与され得る。好ましくは、少なくとも単位用量のキメラクロストリジウム神経毒が、三叉神経眼領域、三叉神経上顎領域、三叉神経下顎領域、及び後頭部に皮内投与され得る。
【0344】
前記領域の1つ又は複数における皮内投与は、標的三叉神経(例えば、標的神経末端)を、キメラクロストリジウム神経毒の標的とし得る。三叉神経眼領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、眼窩上神経、滑車上神経、及び滑車下神経(例えば、それらの神経末端)のうちの1つ又は複数であってもよい。三叉神経上顎領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、頬骨側頭神経及び頬骨顔面神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。三叉神経下顎領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、耳介側頭神経(例えば、その神経末端)であってもよい。後頭部の標的神経(例えば、標的神経末端)は、大後頭神経及び小後頭神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。
【0345】
前記領域の1つ又は複数における皮内投与は、標的三叉神経(例えば、標的神経末端)を、キメラクロストリジウム神経毒の標的とし得る。三叉神経眼領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、眼窩上神経及び滑車上神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。三叉神経上顎領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、頬骨側頭神経及び眼窩内神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。三叉神経下顎領域の標的神経(例えば、標的神経末端)は、耳介側頭神経及び下顎神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。後頭部の標的神経(例えば、標的神経末端)は、大後頭神経、小後頭神経、及び後頭下神経(例えば、それらの神経末端)の1つ又は複数であってもよい。
【0346】
一実施形態では、
(i)単回単位用量が、以下の1つ又は複数の領域に皮内投与される:眼窩上神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の眼窩上神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の眼窩上神経領域に投与される);滑車上神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の滑車上神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の滑車上神経領域に投与される);滑車下神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の滑車下神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の滑車下神経領域に投与される);頬骨側頭神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の頬骨側頭神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の頬骨側頭神経領域に投与される);頬骨顔面神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の頬骨顔面神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の頬骨顔面神経領域)に投与される);小後頭神経(好ましくは、単回単位用量が第1の首側面(例えば、左側)の小後頭神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の首側面(例えば、右側)の小後頭神経領域に投与される;並びに/又は(好ましくは、並びに)
(iii)複数の単位用量が、以下の1つ又は複数の領域に皮内投与される:眼窩上神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の眼窩上神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の眼窩上神経領域に投与される);滑車上神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の滑車上神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の滑車上神経領域に投与される);滑車下神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の滑車下神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の滑車下神経領域に投与される);頬骨側頭神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の頬骨側頭神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の頬骨側頭神経領域に投与される);頬骨顔面神経(好ましくは、単回単位用量が第1の顔側面(例えば、左側)の頬骨顔面神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の顔側面(例えば、右側)の頬骨顔面神経領域)に投与される);耳介側頭神経;大後頭神経;小後頭神経(好ましくは、単回単位用量が第1の頭部側面(例えば、左側)の小後頭神経領域に投与され、第2の単位用量が第2の頭部側面(例えば、右側)の小後頭神経領域に投与される)。複数の単位用量は、2乃至8単位用量、例えば2乃至5単位用量であってよい。
【0347】
好ましい注射部位及び注射回数を、
図6に示す。このような例では、キメラクロストリジウム神経毒の1単位用量が、注射部位毎に投与され得る。
【0348】
好ましくは、注射部位は、示された神経の末端領域内にある。
【0349】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に皮内投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域に2単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域に1単位用量。
【0350】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域に2単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に1単位用量、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域に1単位用量。
【0351】
好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に2単位用量、及び第2の首側面の大後頭神経領域に2単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に1単位用量、及び第2の首側面の小後頭神経領域に1単位用量。
【0352】
より好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域に1単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の滑車上神経領域に1単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の滑車下神経領域に1単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域に2単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に2単位用量、及び第2の首側面の大後頭神経領域に2単位用量;並びに
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に1単位用量、及び第2の首側面の小後頭神経領域に1単位用量。
【0353】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に皮内投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に4単位用量、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域に4単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域に2単位用量。
【0354】
頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、単位用量のキメラクロストリジウム神経毒を、両側性に投与することを含み得る。頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に4単位用量、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域に4単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に2単位用量、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域に2単位用量。
【0355】
好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に4単位用量、及び第2の首側面の大後頭神経領域に4単位用量;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に2単位用量、及び第2の首側面の小後頭神経領域に2単位用量。
【0356】
より好ましくは、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、以下の投与を含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域に2単位用量;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の滑車上神経領域に2単位用量;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の滑車下神経領域に2単位用量;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域に2単位用量;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域に2単位用量;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域に4単位用量;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域に4単位用量、及び第2の首側面の大後頭神経領域に4単位用量;並びに
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域に2単位用量、及び第2の首側面の小後頭神経領域に2単位用量。
【0357】
上記実施形態に記載のように頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、注射部位毎に1単位用量を投与するのが好ましい。従って、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0358】
好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0359】
より好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0360】
上記実施形態に記載のように頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、注射部位毎に1単位用量を投与するのが好ましい。従って、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の4箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位。
【0361】
好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内4箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位。
【0362】
より好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の2箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の2箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の2箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の2箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内4箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の4箇所の注射部位;並びに
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の2箇所の注射部位。
【0363】
上記実施形態に記載のように頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、注射部位毎に、2単位用量以上(好ましくは、2単位用量)を投与するのが好ましい。従って、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び/若しくは第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0364】
好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに/又は
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0365】
より好ましくは、治療は、キメラクロストリジウム神経毒を以下に投与することを含み得る:
(i)第1の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の眼窩上神経領域内の1箇所の注射部位;
(ii)第1の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車上神経領域内の1箇所の注射部位;
(iii)第1の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の滑車下神経領域内の1箇所の注射部位;
(iv)第1の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨側頭神経領域内の1箇所の注射部位;
(v)第1の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の顔側面の頬骨顔面神経領域内の1箇所の注射部位;
(vi)第1の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の顔側面の耳介側頭神経領域内の2箇所の注射部位;
(vii)第1の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位、及び第2の首側面の大後頭神経領域内の2箇所の注射部位;並びに
(vii)第1の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位、及び第2の首側面の小後頭神経領域内の1箇所の注射部位。
【0366】
従って、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1乃至50、5乃至45、又は10乃至38単位用量が投与され得る。好ましくは、最大35単位用量が投与される。好ましくは、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大192,500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大180,000pg、好ましくは、最大177,000pg(より好ましくは、最大175,000pg)であってよい。最も好ましくは、投与される合計用量は、最大115,000pg又は75,000pg、例えば、最大112,000pg若しくは70,000pgであってよい。
【0367】
従って、筋肉内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1乃至50、5乃至45、又は10乃至38単位用量が投与され得る。好ましくは、最大35単位用量が投与される。好ましくは、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大192,500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大180,000pg、好ましくは、最大177,000pg(より好ましくは、最大175,000pg)であってよい。最も好ましくは、投与される合計用量は、最大115,000pg又は75,000pg、例えば、最大112,000pg若しくは70,000pgであってよい。
【0368】
従って、皮内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1乃至35、5乃至25、又は10乃至20単位用量が投与され得る。好ましくは、最大20単位用量が投与される。好ましくは、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大110,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大105,000pg、好ましくは、最大102,000pg(より好ましくは、最大100,000pg)であってよい。皮内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、2乃至70、10乃至50、又は20乃至40単位用量が投与され得る。好ましくは、最大40単位用量が投与される。好ましくは、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大220,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大210,000pg、好ましくは最大204,000pg(より好ましくは、最大200,000pg)であってよい。
【0369】
幾つかの実施形態では、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛の治療は、筋肉内注射及び皮内注射を組み合わせて行ってもよい。例えば、対象の首に本発明のキメラクロストリジウム神経毒を皮内投与し、顔に本発明のキメラクロストリジウム神経毒を筋肉内投与してもよい。好ましくは、対象の顔に本発明のキメラクロストリジウム神経毒を皮内投与し、首に本発明のキメラクロストリジウム神経毒を筋肉内投与してもよい。キメラクロストリジウム神経毒を、例えば、対象の首及び/又は顔への投与に加えて、頭部に投与してもよい。
【0370】
皮内注射又は筋肉内注射を介して、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際の好ましい単位用量は、1,000pg乃至5,500pgであってよい。単位用量範囲の上限は、5,250、5,200、5,100、5,000、4,500、4,000、3,500、3,000、2,500、又は2,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は5,100pgであり、より好ましくは5,000pgである。単位用量範囲の下限は、1,100、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、又は4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は1,400pgであり、より好ましくは1,500pgである。前記範囲の下限は、3,000pg超であってもよい。単位用量は、1,400pg乃至5,100pg(例えば、1,500pg乃至5,000pg)、2,000pg乃至5,100pg、3,000乃至5,100pg、又は3,000乃至4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量は、3,000pg超、最大5,500pgのキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、2,000pg乃至4,500pg、2,000pg乃至3,000pg(例えば、2,500pg)、又は3,500乃至4,500pgのキメラクロストリジウム神経毒であってよい。好ましくは、単位用量は、4,000pgのキメラクロストリジウム神経毒を含む。
【0371】
皮内注射又は筋肉内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際の好ましい単位用量は、42単位乃至229単位であってよい。単位用量範囲の上限は、225、220、215、210、205、200、190、180、170、160、150、125、100、又は83単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは上限は212単位であり、より好ましくは208単位である。単位用量範囲の下限は、46、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、又は166単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよく、好ましくは下限は58単位であり、より好ましくは62単位である。前記範囲の下限は、125単位超であってもよい。単位用量は、58単位乃至212単位(例えば、62単位乃至208単位)、83単位乃至212単位、125乃至212単位、又は125乃至166単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。単位用量は、125単位超、最大229単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、83単位乃至188単位、83単位乃至125単位(例えば、104単位)、又は146単位乃至188単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。好ましくは、単位用量は、166単位のキメラクロストリジウム神経毒を含む。単位用量は、47単位乃至258単位のキメラクロストリジウム神経毒、例えば、94単位乃至211単位、94単位乃至141単位(例えば、117単位)、又は164乃至211単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。単位剤形は、188単位のキメラクロストリジウム神経毒を含み得る。
【0372】
筋肉内注射又は皮内注射(好ましくは、筋肉内注射)を介して、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、好ましい単位用量は2,500pgであってよく、合計用量は最大70,000pgであってよい。例えば、好ましい単位用量は2,500pgであってよく、合計用量は70,000pgであってよい。好ましい単位用量は4,000pgであってよく、合計用量は最大112,000pgであってよい。例えば、好ましい単位用量は4,000pgであってよく、合計用量は112,000pgであってよい。適切な単位用量は5,000pgであってよく、合計用量は最大155,000pgであってよい。例えば、適切な単位用量は5,000pgであってよく、合計用量は155,000pgであってよい。
【0373】
筋肉内注射又は皮内注射(好ましくは、筋肉内注射)を介して、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、好ましい単位用量は、104単位であってよく、合計用量は最大2,912単位であってよい。例えば、好ましい単位用量は104単位であってよく、合計用量は、2,912単位であってよい。好ましい単位用量は166単位であってよく、合計用量は、最大4,659単位であってよい。例えば、好ましい単位用量は166単位であってよく、合計用量は4,659単位であってよい。適切な単位用量は208単位であってよく、合計用量は最大6,448単位であってよい。例えば、適切な単位用量は208単位であってよく、合計用量は6,448単位であってよい。
【0374】
筋肉内注射又は皮内注射(好ましくは、筋肉内注射)を介して、頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、好ましい単位用量は、117単位であってよく、合計用量は最大3,286単位であってよい。例えば、好ましい単位用量は117単位であってよく、合計用量は3,286単位であってよい。好ましい単位用量は188単位であってよく、合計用量は最大5,258単位であってよい。例えば、好ましい単位用量は188単位であってよく、合計用量は5,258単位であってよい。適切な単位用量は235単位であってよく、合計用量は、最大7,277単位であってよい。例えば、適切な単位用量は235単位であってよく、合計用量は7,277単位であってよい。
【0375】
筋肉内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大8,007単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大7,488単位、又は最大7,363単位(例えば、最大7,280単位)であってよい。最も好ましくは、投与される合計用量は、最大4,784単位又は3,120単位、例えば、最大4,659単位若しくは2,912単位であってよい。1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大9,037単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大8,451単位、又は最大8,310単位(例えば、最大8,216単位)であってよい。最も好ましくは、投与される合計用量は、最大5,399単位又は3,521単位、例えば、最大5,258単位若しくは3,286単位であってよい。
【0376】
皮内注射を介して頭痛(例えば、片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大4,576単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大4,368単位、又は最大4,243単位(例えば、最大4,160単位)であってよい。1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大5,165単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大4,929単位、又は最大4,789単位(例えば、最大4,695単位)であってよい。1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大5,165単位のキメラクロストリジウム神経毒であってよい。例えば、投与される合計用量は、最大4,929単位、又は最大4,789単位(例えば、最大4,695単位)であってよい。
【0377】
好ましい実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒により疼痛(例えば、頭痛若しくは片頭痛疼痛)又は片頭痛を治療する際、その治療は筋麻痺を誘発しない。例えば、幾つかの実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、筋麻痺を誘発するために必要なキメラクロストリジウム神経毒の単位用量よりも低くてもよい。特に、幾つかの実施形態では、特定の部位(例えば、注射部位)において投与されるキメラクロストリジウム神経毒の単位用量は、(例えば、その部位及び/又は筋肉において)筋麻痺を誘発するために必要なキメラクロストリジウム神経毒の単位用量よりも低くてもよい。
【0378】
前記頭痛は、好ましくは片頭痛疼痛である。前記片頭痛疼痛は、反復性片頭痛疼痛又は慢性片頭痛疼痛であってよく、例えば、反復性片頭痛に起因する或いは伴う疼痛、又は慢性片頭痛に起因する或いは伴う疼痛であってもよい。
【0379】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、治療計画の一部として(好ましくは異なる日に、例えば連続治療の間、少なくとも1日おきに)、反復して(例えば最大5、10、15、又は20回)投与されることが好ましい。反復投与は、少なくとも2回、例えば少なくとも5回、10回、15回、又は20回の投与を意味する。従って、一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、対象の障害(好ましくは、疼痛)を治療するために、2回以上投与され得る。これは、一般に継続的な治療が必要となる慢性疼痛等の慢性状態の治療において、特に適切である。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、週に1回、月に2回、月に1回、2か月毎、6か月毎、又は年に1回、好ましくは少なくとも年に2回若しくは年に1回、投与され得る。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、10年、5年、2年、又は1年の期間内に、2回以上投与される。好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、1年の期間内に、2回以上投与される。治療は、少なくとも6か月、1年、2年、3年、5年、10年、15年、20年、25年、又は30年間、継続され得る。
【0380】
幾つかの実施形態では、本発明によるキメラクロストリジウム神経毒の初回投与(例えば、初回治療セッション)の後に、対象は、キメラクロストリジウム神経毒の2回目の投与(例えば、2回目の治療セッション)を受けてもよい。初回投与と2回目の投与の間の間隔は、少なくとも5、6、7、8、9、又は10か月であってよい。例えば、初回投与と2回目の投与の間の間隔は、5乃至10か月、5乃至9か月、5乃至8か月、6乃至10か月、6乃至9か月、又は6乃至8か月であってよい。
【0381】
キメラクロストリジウム神経毒は、軽鎖及び重鎖に加えて、更なる治療薬又は診断薬(例えば、核酸、タンパク質、ペプチド若しくは小分子治療薬、又は診断薬)と共に投与されないことが好ましい。例えば、一実施形態では、キメラクロストリジウム神経毒は更なる鎮痛薬と共に投与されない。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、共有結合した治療薬と共に投与されない。一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、非共有結合した治療薬と共に投与されない。
【0382】
キメラクロストリジウム神経毒は、好ましくは疼痛の治療に使用され、1つ又は複数のタイプの疼痛を患っている対象の治療に使用され得る。
【0383】
ここで使用される用語「疼痛」は、実際の組織損傷若しくは組織損傷が起こり得る状態に付随する、或いはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験を意味する。任意の付随する身体障害は、臨床医に明らかな場合もあり、そうでない場合もある。
【0384】
疼痛は、ニューロンからのメディエーター(例えば、神経伝達物質)の放出に関連している場合がある。ニューロンは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒が結合するニューロンであることが好ましい。例えば、メディエーターは疼痛伝達に関連する任意のメディエーターであってよい。メディエーターは、サブスタンスP、CGRP、又は血管作用性小腸ペプチド(VIP)等の神経ペプチドであってもよい。
【0385】
メディエーターは、炎症性メディエーターであっても、非炎症性メディエーターであってもよい。メディエーターは、以下のうちの1つ又は複数であってよい:CGRP、ニューロキニン(例えば、タキキニン、サブスタンスP、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ヘモキニン、及び/若しくはエンドキニン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、グルココルチコイド、バソプレシン、オキシトシン、カテコールアミン、オピオイド(例えば、オピオイドペプチド及び/若しくは脳オピオイド)、アンジオテンシンII、エンドルフィン、エンセファリン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、エイコサノイド(例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)等のプロスタグランジン、及び/若しくはロイコトリエン)、組織キニノーゲン(例えば、ブラジキニン)、ヒスタミン、セロトニン、カリウム、プロスタサイクリン(PGI2)、ロイコトリエンB4(LTB4)、神経成長因子(NGF)、プロトン、ATP、アデノシン、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)、ヒスタミン、グルタミン酸、ノルエピネフリン(NE)、一酸化窒素(NO)、γ-アミノ酪酸(GABA)、グリシン、アセチルコリン、カンナビノイド、組織壊死因子アルファ(TNF-α)、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)-6、IL-1、及び/若しくはIL-8)、血小板活性化因子(PAF)、神経栄養成長因子(NGF)、グルタミン酸、アスパラギン酸、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、並びにタンパク質分解酵素。
【0386】
メディエーターは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、アミリン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、オキシトシン、神経ペプチドY(NPY)、サブスタンスP、アンジオテンシン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、レプチン、アディポネクチン、オレキシン、及び/又はメラニン凝集ホルモン(MCH)であってもよい。
【0387】
メディエーターは、CGRP、サブスタンスP、及びグルタミン酸から選択される1つ又は複数であってよい。
【0388】
メディエーターは、神経ペプチド(例えば、サブスタンスP、CGRP、若しくはVIP)、一酸化窒素、グルタミン酸、アスパラギン酸のうちの1つ又は複数であってよい。
【0389】
疼痛が頭痛(好ましくは、片頭痛疼痛)である場合、メディエーターはCGRP、VIP、PACAP、及び炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、IL-8、及び/又はTNF-α)のうちの1つ又は複数であってよい。
【0390】
好ましくは、メディエーターはCGRP、サブスタンスP、及び/又は代替ニューロキニンであってよい。
【0391】
最も好ましくは、メディエーターはCGRPである。CGRPは、α-CGRP又はβ-CGRPであってよく、好ましくはα-CGRPである。
【0392】
疼痛は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーター(例えば、疼痛神経伝達物質)の放出に関連している場合がある。疼痛メディエーターは、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンから放出/分泌される任意の疼痛メディエーターであってよい。疼痛メディエーターは、サブスタンスP、CGRP、又は血管作用性小腸ペプチド(VIP)等の神経ペプチドであってもよい。
【0393】
疼痛メディエーターは、炎症性メディエーターであっても、非炎症性メディエーターであってもよい。疼痛メディエーターは、以下のうちの1つ又は複数であってよい:CGRP、ニューロキニン(例えば、タキキニン、サブスタンスP、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ヘモキニン、及び/若しくはエンドキニン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、グルココルチコイド、バソプレシン、オキシトシン、カテコールアミン、オピオイド(例えば、オピオイドペプチド及び/若しくは脳オピオイド)、アンジオテンシンII、エンドルフィン、エンセファリン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、エイコサノイド(例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)等のプロスタグランジン、及び/若しくはロイコトリエン)、組織キニノーゲン(例えば、ブラジキニン)、ヒスタミン、セロトニン、カリウム、プロスタサイクリン(PGI2)、ロイコトリエンB4(LTB4)、神経成長因子(NGF)、プロトン、ATP、アデノシン、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)、ヒスタミン、グルタミン酸、ノルエピネフリン(NE)、一酸化窒素(NO)、γ-アミノ酪酸(GABA)、グリシン、アセチルコリン、カンナビノイド、組織壊死因子アルファ(TNF-α)、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)-6、IL-1、及び/若しくはIL-8)、血小板活性化因子(PAF)、神経栄養成長因子(NGF)、グルタミン酸、アスパラギン酸、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、並びにタンパク質分解酵素。
【0394】
疼痛メディエーターは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、アミリン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、オキシトシン、神経ペプチドY(NPY)、サブスタンスP、アンジオテンシン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、レプチン、アディポネクチン、オレキシン、及び/又はメラニン凝集ホルモン(MCH)であってもよい。
【0395】
Aδ神経線維を含むニューロンから放出される疼痛メディエーターは、CGRP、サブスタンスP、及びグルタミン酸から選択される1つ又は複数であってよい。
【0396】
C神経線維を含むニューロンから放出される疼痛メディエーターは、神経ペプチド(例えば、サブスタンスP、CGRP、又はVIP)、一酸化窒素、グルタミン酸、及びアスパラギン酸のうちの1つ又は複数であってよい。
【0397】
グルタミン酸は、慢性疼痛及び/又は神経障害性疼痛の惹起に関連している場合がある。
【0398】
疼痛が頭痛(好ましくは、片頭痛疼痛)の場合、疼痛メディエーターはCGRP、VIP、PACAP、及び炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、IL-8、及び/又はTNF-α)のうちの1つ又は複数であってよい。
【0399】
好ましくは、ニューロンがAδ神経線維又はC神経線維を含む場合、疼痛メディエーターはCGRPであってよく、好ましくは、ニューロンがC線維を含む場合、疼痛メディエーターはCGRPである。ニューロンがC線維を含む場合、疼痛メディエーターは、サブスタンスP及び/又は代替ニューロキニンであってもよい。
【0400】
最も好ましくは、疼痛メディエーターはCGRPである。CGRPは、α-CGRP又はβ-CGRPであってよく、好ましくはα-CGRPである。
【0401】
従って、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含む感覚ニューロンからのCGRPの放出を阻害し得る。
【0402】
疼痛メディエーターがCGRPである場合、疼痛はCGRP関連疼痛の場合がある。
【0403】
ここで使用される用語「CGRP関連疼痛」は、ニューロンからのCGRP放出及びその何らかの作用に関連する疼痛を意味する。CGRP誘発性疼痛は、CGRP依存性疼痛の場合がある。一実施形態では、CGRP関連疼痛は、ニューロンからのCGRP放出及びその何らかの作用によって誘発されたCGRP誘発性疼痛である。
【0404】
CGRP関連疼痛の例としては、片頭痛及びそう痒が挙げられる。
【0405】
一実施形態では、本発明の治療用途又は方法は、CGRP以外の任意の疼痛メディエーターに関連する疼痛の治療を除外する。本発明の治療用途又は方法は、以下のうちの1つ又は複数に伴う疼痛の治療を除外し得る:ニューロキニン(例えば、タキキニン、サブスタンスP、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ヘモキニン、及び/若しくはエンドキニン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、グルココルチコイド、バソプレシン、オキシトシン、カテコールアミン、オピオイド(例えば、オピオイドペプチド及び/若しくは脳オピオイド)、アンジオテンシンII、エンドルフィン、エンセファリン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、エイコサノイド(例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)等のプロスタグランジン、及び/若しくはロイコトリエン)、組織キニノーゲン(例えば、ブラジキニン)、ヒスタミン、セロトニン、カリウム、プロスタサイクリン(PGI2)、ロイコトリエンB4(LTB4)、神経成長因子(NGF)、プロトン、ATP、アデノシン、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)、ヒスタミン、グルタミン酸、ノルエピネフリン(NE)、一酸化窒素(NO)、γ-アミノ酪酸(GABA)、グリシン、アセチルコリン、カンナビノイド、組織壊死因子アルファ(TNF-α)、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)-6、IL-1、及び/若しくはIL-8)、血小板活性化因子(PAF)、神経栄養成長因子(NGF)、グルタミン酸、アスパラギン酸、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、並びにタンパク質分解酵素。
【0406】
疼痛は、慢性であっても、急性であってもよい。「急性疼痛」は、突然発症する短時間の疼痛である。例えば、急性疼痛の一つのタイプとして、切り傷や熱傷等によって生じる皮膚や他の表面組織の外傷時に感じる皮膚疼痛がある。皮膚侵害受容器は、皮膚のすぐ下で終止し、神経終末が集中しているため、短時間の明確で局所的な疼痛を生じさせる。「慢性疼痛」は、急性疼痛以外の疼痛である。
【0407】
このように、疼痛は慢性であっても、急性であってもよい。疼痛は、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、混合性疼痛、及び原因不明の疼痛の4つのカテゴリの疼痛から選択される1つ又は複数であってよい。侵害受容性疼痛は、侵害受容器(疼痛受容体)に対する既知の侵害刺激によって引き起こされる場合があり、体性疼痛又は内臓痛の場合がある。神経障害性疼痛は、神経系の初期病変又は機能障害によって惹起される又は引き起こされる疼痛の場合がある。混合性疼痛は、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の組合せである場合がある。
【0408】
疼痛(例えば、慢性疼痛)は、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、頭痛、体性疼痛、内臓痛、関連痛、異痛症、混合性疼痛、及び術後疼痛から選択される1つ又は複数であってもよい。しかしながら、疼痛は術後疼痛ではないことが好ましい。
【0409】
一実施形態では、疼痛は内臓痛ではない。一実施形態では、障害は内臓痛障害ではない。
【0410】
体性疼痛は、以下から選択される1つ又は複数であってよい:頭痛(例えば、外傷後頭痛、頭部損傷頭痛、若しくは外傷後脳損傷頭痛)、関節炎疼痛(例えば、変形性関節症疼痛及び/若しくは関節リウマチ疼痛)、運動痛、変性円板疾患疼痛、手根管圧迫痛、軟部組織損傷疼痛、顎関節痛、筋骨格痛、血管障害に起因する若しくは伴う体性疼痛(例えば、レイノー症候群、バージャー病、末梢静脈疾患、末梢動脈疾患、静脈瘤、静脈内の血栓、血液凝固障害、若しくはリンパ浮腫)、顔面痛、三叉神経・自律神経性頭痛に起因する若しくは伴う体性疼痛;三叉神経痛に起因する若しくは伴う体性疼痛;及び骨痛(例えば、CGRP関連癌誘発性骨痛等の癌誘発性骨痛)。
【0411】
疼痛は、好ましくは頭痛である。より好ましくは、疼痛は、片頭痛疼痛である。
【0412】
内臓痛は、子宮内膜症疼痛、膵炎疼痛、胃腸痛、及び血管障害に起因する若しくは伴う内臓痛から選択される1つ又は複数であってよい。
【0413】
炎症性疼痛は、慢性疼痛、創傷治癒疼痛、そう痒疼痛、及び熱傷痛から選択される1つ又は複数であってよい。
【0414】
神経障害性疼痛は、帯状疱疹後神経痛、糖尿病疼痛、慢性神経障害性疼痛、及びモートン神経腫疼痛から選択される1つ又は複数であってよい。
【0415】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒により治療され得る疼痛及び状態を、以下において更に詳細に説明する。
【0416】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の何れかの神経障害性疼痛状態に起因する或いは伴う疼痛を治療するために、使用され得る。「神経障害性疼痛」は、末梢神経系、中枢神経系、又はその両方からの異常な感覚入力により、不快感が生じることを意味する。神経障害性疼痛の症状は、持続的な自然発症の疼痛の他、異痛症(通常は有痛性でない刺激に対する有痛反応)、痛覚過敏(通常は針で刺されたような軽度の不快感しか引き起こさない有痛刺激に対する反応増強)、又はヒペルパチー(短時間の不快感が、長期にわたる激しい疼痛になる場合)等を含み得る。神経障害性疼痛は、以下の何れかに起因し得る。
1. 例えば、神経圧迫損傷(例えば、神経挫滅、神経伸展、神経絞扼、又は不完全な神経切断)、脊髄損傷(例えば、脊髄の片側切除)、四肢切断、挫傷、炎症(例えば、脊髄の炎症)、又は外科手術手技等の外傷性傷害。
2. 例えば、脳卒中及び心臓発作を含む虚血性事象。
3. 感染病原体。
4. 例えば、薬物、アルコール、重金属(例えば、鉛、ヒ素、水銀)、工業物質(例えば、溶剤、接着剤の煙)、又は亜酸化窒素等の有毒物質への曝露。
5. 例えば、炎症性疾患、新生物性腫瘍、後天性免疫不全症候群(エイズ)、ライム病、ハンセン病、代謝性疾患、及び神経腫、単神経障害、多発神経障害等の末梢神経障害を含む疾患。
【0417】
神経障害性疼痛の種類としては、以下が挙げられる:
【0418】
1. 神経痛
【0419】
神経痛は、通常、神経構造に実証可能な病理学的変化がなく、1つ又は複数の特定の神経経路に沿って広がる疼痛である。神経痛の原因は様々である。化学的刺激、炎症、外傷(手術を含む)、近くの構造(例えば、腫瘍)による圧迫、及び感染症は全て、神経痛を引き起こし得る。しかし、多くの場合、原因は不明又は特定不能である。神経痛は高齢者に最もよく見られるが、何れの年齢でも発生し得る。神経痛としては、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、ヘルペス後神経痛、舌咽神経痛、坐骨神経痛、及び非定型顔面痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0420】
神経痛は、1つ又は複数の神経の分布における疼痛である。例としては、三叉神経痛、非定型顔面痛、及び(帯状疱疹又はヘルペスに起因する)ヘルペス後神経痛が挙げられる。罹患神経は、顎から前頭部までの顔面領域の触覚、温度、及び圧力を感知する役割を担っている。この障害は一般に、片側の顔側面のみに通常2分未満の短い激痛のエピソードを引き起こす。疼痛は、「刺すような」、「鋭い」、「稲妻のような」、「灼けつく」、更には「痒い」等、様々に表現され得る。非定型のTNでは、激しい又は単にうずくような疼痛も呈し、長期間続く場合もある。TNに伴う疼痛は、経験し得る疼痛の中で最も激しいものの1つとして認識される。
【0421】
食事、話すこと、洗顔、又は軽い接触や感覚等の何らかの単純な刺激(そよ風の感覚でさえも)が、発作を引き起こす可能性がある。発作は群発して起こる場合もあれば、単発の発作として起こる場合もある。
【0422】
症状として以下が挙げられる:各エピソードにおいて同じ部位で、通常は体の表面又はその近くで、どこにでも発症する、鋭く、刺すような疼痛、又は持続的な灼けつく疼痛;特定の神経経路に沿った疼痛;疼痛による身体患部の機能障害、又は併発した運動神経損傷による筋力低下;皮膚の敏感性の増大又は患部の皮膚領域のしびれ(ノボカイン注射等の局所麻酔薬に似た感覚);及びあらゆる接触や圧迫が疼痛として感じられる。動くことも痛みを生じ得る。
【0423】
三叉神経痛は、神経痛の中で最も一般的である。これは、顔の主な感覚神経である、三叉神経を冒す(「三叉神経」は文字通り「3つの起源」を意味し、神経の区画が3つに分かれていることを指す)。この状態は、顔の側面に、その側面における三叉神経が支配する領域に沿って、突然の短時間の激しい疼痛の発作を伴う。疼痛発作は顔をしかめるほど激しい場合があり、古典的に、有痛性チック(疼痛性チック)と呼ばれている。血管や小さな腫瘍による神経への圧迫が、三叉神経痛の原因となる場合もある。多発性硬化症(脳及び脊髄を冒す炎症性疾患)、特定の形態の関節炎、及び糖尿病(高血糖)等の障害も、三叉神経痛を引き起こす場合があるが、原因は必ずしも特定されていない。この状態では、噛む、話す、飲み込む、又は顔の一部を触る等の特定の動作が、激痛を伴うけいれんを引き起こす場合がある。
【0424】
関連があるものの、かなり珍しい神経痛として、咽頭に感覚を与える舌咽神経を冒すものがある。この神経痛の症状は、咽頭に起こる短時間のショック様の疼痛のエピソードである。
【0425】
神経痛は、ヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる帯状疱疹等の感染症の後に発生する場合がある。この神経痛は、帯状疱疹の発疹が治癒した後も、持続的な灼けつく疼痛を生じさせる。疼痛は、患部を動かす、又は患部に接触することで悪化する。帯状疱疹と診断された全員が、ヘルペス後神経痛を経験するわけではないが、ヘルペス後神経痛は、帯状疱疹より痛みが強い場合がある。疼痛と敏感性は数か月、又は数年にわたって続く場合もある。疼痛は通常、あらゆる接触、特に軽い接触に対して耐えられない程の敏感性という形で現れる。ヘルペス後神経痛は顔に限定されず、身体のどこにでも発生する可能性があるが、通常は帯状疱疹の発疹の部位に発生する。疼痛や病気の間の社会的孤立のため、うつ病になることは珍しくない。
【0426】
ヘルペス後神経痛は、最初のヘルペス感染症の兆候が消失してからも、長期間にわたって衰弱させる場合がある。神経痛を引き起こし得る他の感染性疾患としては、梅毒及びライム病がある。
【0427】
糖尿病は、神経痛のもう一つの一般的な原因である。この非常に一般的な医学的問題は、成人期のアメリカ人のほぼ20人に1人を冒す。糖尿病は神経に血行を供給する小さな動脈を損傷し、神経線維の機能不全や、時には神経喪失を引き起こす。糖尿病は、三叉神経痛、手根管症候群(手及び手首の疼痛及びしびれ)、並びに異常感覚性大腿痛(外側大腿皮神経の損傷による大腿のしびれ及び疼痛)等、ほぼ全ての神経痛を引き起こす可能性がある。血糖を厳密に管理することで、糖尿病性神経損傷を予防し、神経痛を発症した対象の回復を促進することができる。
【0428】
神経痛に付随し得る他の医学的状態には、慢性腎不全及びポルフィリン症がある。ポルフィリン症は、体内の血液が正常に分解された後に生成される特定の物質を身体から排除できない遺伝性疾患である。特定の薬物も、この問題を引き起こす場合がある。
【0429】
2. 求心路遮断
【0430】
求心路遮断は、身体の一部からの感覚入力の喪失を示し、末梢感覚線維又は中枢神経系からの神経の中断によって引き起こされる場合がある。求心路遮断性疼痛症候群としては、脳又は脊髄の損傷、脳卒中後疼痛、幻肢痛、対麻痺、腕神経叢剥離損傷、腰髄神経根障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0431】
3. 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
【0432】
CRPSは、交感神経によって維持される疼痛から生じる慢性疼痛症候群であり、2つの形態を呈する。CRPS1は現在、用語「反射性交感神経性ジストロフィー症候群」に置き換わっている。これは、軽度又は重度の傷害の後に、腕又は脚に発生することが最も多い、慢性神経障害である。CRPS1は、激しい疼痛;爪、骨、及び皮膚の変化;並びに患肢の触覚に対する敏感性の増大を伴う。CRPS2は、カウザルギーという用語に置き換わるもので、神経への特定された傷害によって生じる。CRPSには、CRPSタイプI(反射性交感神経性ジストロフィー)及びCRPSタイプII(カウザルギー)が含まれるが、これらに限定されない。
【0433】
4. 神経障害
【0434】
神経障害は、神経における機能的又は病理学的な変化であり、臨床的には感覚ニューロン又は運動ニューロンの異常によって特徴付けられる。
【0435】
中枢神経障害は、中枢神経系における機能的又は病理学的な変化である。
【0436】
末梢神経障害は、1つ又は複数の末梢神経における機能的又は病理学的な変化である。末梢神経は、中枢神経系(脳及び脊髄)からの情報を筋肉及び他の臓器に中継し、皮膚、関節、及び他の臓器からの情報を脳に戻す。末梢神経障害は、これらの神経が脳と脊髄との間で情報を運ぶことができない場合に発生し、疼痛、感覚喪失、又は筋肉の制御不能を引き起こす。幾つかの場合では、血管、腸、及び他の臓器を制御する神経の不全により、血圧の異常、消化問題、及び他の基本的な生体プロセスの喪失が生じる。神経障害の危険因子には、糖尿病、大量のアルコール摂取、並びに特定の化学物質及び薬物への曝露が挙げられる。神経障害の遺伝的素因を有する人もいる。神経への長時間の圧迫も、神経損傷を引き起こすもう一つのリスクである。圧力損傷は、長期間の不動状態(長時間の外科手術手技又は長期の病気等)、又はギプス、副木、装具、松葉杖、若しくは他の器具による神経の圧迫によって、引き起こされる場合がある。多発神経障害は、通常、身体の両側を同様に冒す広範なプロセスを意味する。症状は、どのタイプの神経が冒されているかによって異なる。3つの主要なタイプの神経は、感覚神経、運動神経、及び自律神経である。神経障害は、3つのタイプの神経の何れか一つ、又は全ての組合せを冒し得る。症状は、状態が全身に影響を及ぼすか、又は(傷害等により)1つの神経のみに影響を及ぼすかよっても異なる。慢性炎症性多発神経障害の原因は、異常な免疫応答である。特定の抗原、免疫プロセス、及び誘発因子は可変的であり、多くの場合は不明である。HIV、炎症性腸疾患、エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、及び血球異常等の他の状態に伴って生じる場合もある。
【0437】
末梢神経障害は、単一の神経若しくは神経群の機能的若しくは病理的変化(単神経障害)、又は複数の神経を冒す機能的又は病理的変化(多発神経障害)を含み得る。
【0438】
末梢神経障害は、以下を含み得る:
【0439】
・遺伝性疾患
シャルコー・マリー・トゥース病
フリードライヒ運動失調症
・全身性疾患又は代謝疾患
糖尿病(糖尿病性神経障害)
食事性欠乏症(特に、ビタミンB-12)
過剰なアルコール摂取(アルコール性神経障害)
尿毒症(腎不全による)
癌
・感染状態又は炎症状態
後天性免疫不全症候群
肝炎
コロラドダニ熱
ジフテリア
ギランバレー症候群
後天性免疫不全症候群を発症しないHIV感染症
ハンセン病
ライム病
結節性多発動脈炎
関節リウマチ
サルコイドーシス
シェーグレン症候群
梅毒
全身性エリテマトーデス
アミロイド
・有毒化合物への曝露
接着剤又は他の有毒化合物の吸引
亜酸化窒素
工業物質、特に溶剤
重金属(鉛、ヒ素、水銀等)
鎮痛薬腎症等の薬物に続発する神経障害
・種々の原因
虚血(酸素減少/血流減少)
低温への長時間曝露
【0440】
a.多発神経障害
【0441】
多発神経障害は、複数の末梢神経の損傷又は破壊によって引き起こされる、ある領域の運動又は感覚の喪失を伴う末梢神経障害である。多発神経障害性疼痛としては、ポリオ後症候群、乳房切除後症候群、糖尿病性神経障害、アルコール性神経障害、アミロイド、毒素、エイズ、甲状腺機能低下症、尿毒症、ビタミン欠乏症、化学療法剤誘発性疼痛、2',3'-ジデオキシシチジン(ddC)治療、ギランバレー症候群、又はファブリー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0442】
b.単神経障害
【0443】
単神経障害は、単一の末梢神経又は神経群の損傷又は破壊によって引き起こされる、ある領域の運動又は感覚の喪失を伴う末梢神経障害である。単神経障害は、最も多くの場合、傷害又は外傷による局所の損傷によって引き起こされるが、時には、全身性疾患によって孤立した神経損傷が引き起こされる場合もある(多発性単神経炎等)。一般的な原因は、直接的な外傷、神経への長期にわたる圧迫、及び腫脹又は近くの身体構造の傷害による神経の圧迫である。損傷には、神経の髄鞘(覆い)又は神経細胞の一部(軸索)の破壊が含まれる。この損傷により、神経を通る活動電位の伝導が遅くなったり、妨げられたりする。単神経障害は、身体の何れの部分にも影響を及ぼし得る。単神経障害性疼痛としては、限定されないが、坐骨神経機能障害、総腓骨神経機能障害、橈骨神経機能障害、尺骨神経機能障害、頭蓋単神経障害VI、頭蓋単神経障害VII、頭蓋単神経障害III(圧迫型)、頭蓋単神経障害III(糖尿病型)、腋窩神経機能障害、手根管症候群、大腿神経機能障害、脛骨神経機能障害、ベル麻痺、胸郭出口症候群、手根管症候群、及び第6(外転)神経麻痺が挙げられる。
【0444】
c.全身性末梢神経障害
【0445】
全身性末梢神経障害は対称性であり、通常は末梢神経系全体を冒す様々な系統的疾病及び疾患プロセスに起因する。これらは、更に幾つかの分類に細分される:
【0446】
i.遠位軸索障害は、ニューロンの何らかの代謝異常又は毒性異常の結果として起こる。これらは、糖尿病等の代謝性疾患、腎不全、栄養失調等の欠乏症候群、及びアルコール依存症、又は毒素や薬物の影響によって引き起こされる場合がある。遠位軸索障害(別名、後退性ニューロパチー)は、末梢神経系(PNS)ニューロンの何らかの代謝異常又は毒性異常によって生じる一種の末梢神経障害である。これは代謝障害又は毒性障害に対する神経の最も一般的な反応であり、糖尿病等の代謝性疾患、腎不全、栄養失調等の欠乏症候群、及びアルコール依存症、又は毒素や薬物の影響によって引き起こされる場合がある。遠位軸索障害の最も一般的な原因は糖尿病であり、最も一般的な遠位軸索障害は、糖尿病性神経障害である。
【0447】
ii.髄鞘形成障害は、ミエリンに対する一次的な攻撃が急性の活動電位の伝導障害を引き起こすことに起因する。最も一般的な原因は、急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP、別名ギランバレー症候群)だが、他の原因としては慢性炎症性脱髄症候群(CIDP)、遺伝性代謝障害(例えば、白質ジストロフィー)、又は毒素等がある。髄鞘形成障害は、ミエリン又はミエリン鞘を形成するシュワン細胞の一次破壊に起因し、軸索は無傷で残るが、急性の活動電位の伝導障害を引き起こす。この脱髄により、神経を通る電気活動電位の伝導が遅くなる、或いは完全に遮断される。最も一般的な原因は、急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP、ギランバレー症候群として、より知られている)だが、他の原因としては、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、遺伝性代謝障害(例えば、白質ジストロフィー若しくはシャルコー・マリー・トゥース病)、又は毒素等がある。
【0448】
iii.ニューロン障害は、末梢神経系(PNS)ニューロンの破壊の結果として起こる。これらは、運動ニューロン疾患、感覚ニューロン障害(例えば、帯状疱疹)、毒素、又は自律神経機能障害によって引き起こされる場合がある。化学療法剤ビンクリスチン等の神経毒は、ニューロン障害を引き起こす場合がある。ニューロン障害は、末梢神経系(PNS)のニューロンの損傷に起因する機能障害であり、末梢神経障害を引き起こす。ニューロン障害は、運動ニューロン疾患、感覚ニューロン障害(例えば、帯状疱疹)、毒性物質、又は自律神経機能障害によって引き起こされる場合がある。ニューロン障害の患者は、原因、神経細胞がどのように冒されるか、及び最も影響を受ける神経細胞のタイプに応じて、様々な症状を呈し得る。
【0449】
iv.局所的絞扼性神経障害(例えば、手根管症候群)
【0450】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の何れかの炎症状態に起因する或いは伴う疼痛の治療に、使用され得る。
【0451】
A.関節障害
【0452】
関節障害としては、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、痛風性関節炎、強皮症、変形性関節症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群(反応性関節炎)、成人スチル病、ウイルス感染症による関節炎、淋菌性関節炎及び非淋菌性細菌性関節炎(化膿性関節炎)等の細菌感染症による関節炎、第三次ライム病、結核性関節炎、及び真菌症による関節炎(例えば、ブラストミセス症等)等が挙げられる。
【0453】
B.自己免疫疾患
【0454】
自己免疫疾患としては、例えば、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、及びバセドウ病等が挙げられる。
【0455】
C.結合組織障害
【0456】
結合組織障害としては、例えば、脊椎関節炎、皮膚筋炎、及び線維筋痛症等が挙げられる。
【0457】
D.傷害
【0458】
例えば、組織又は関節の挫滅、穿刺、伸展等の傷害によって引き起こされる炎症は、慢性炎症性疼痛を引き起こす場合がある。
【0459】
E.感染症
【0460】
例えば、結核又は角膜実質炎等の感染症によって引き起こされる炎症は、慢性炎症性疼痛を引き起こす場合がある。
【0461】
F.神経炎
【0462】
神経炎は、神経又は神経群を冒す炎症プロセスである。症状は関与する神経によって異なるが、疼痛、錯感覚、不全麻痺、又は感覚鈍麻(しびれ)を包み得る。
例としては、以下が挙げられる:
a.腕神経炎
b.眼球のすぐ裏側に位置する視神経の一部を冒す炎症プロセスである、球後視神経障害。
c.罹患した眼に急激な視力低下を引き起こす、視神経を冒す炎症プロセスである、視神経障害。視神経炎の原因は、不明である。視神経(眼と脳を結合する神経)の突発性の炎症は、髄鞘の腫脹及び破壊を引き起こす。炎症は、時にはウイルス感染症の結果である場合があり、或いは多発性硬化症等の自己免疫疾患によって引き起こされる場合がある。危険因子は、潜在的な原因に関連している。
d.前庭神経を冒す炎症プロセスを引き起こすウイルス感染症である、前庭神経炎。
【0463】
G.関節炎
【0464】
滑液包炎又は腱炎によって引き起こされるような関節の炎症は、例えば、慢性炎症性疼痛を引き起こし得る。
【0465】
H.日焼け及び/又は紫外線誘発性損傷
【0466】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の何れかの頭痛状態に起因する或いは伴う疼痛の治療に、使用され得る。頭痛(headache)(医学的に頭痛(cephalgia)として知られる)は、頭部における軽度から重度の疼痛状態である。時には、首又は背中上部の疼痛も、頭痛として解釈され得る。頭痛は、根底にある局所若しくは全身性の疾患を示している場合もあり、又は障害そのものの場合もある。
【0467】
A.筋肉性/筋原性頭痛
【0468】
筋肉性/筋原性頭痛は、顔面筋及び頸筋の張り又は緊張が関わっていると見られ、額にまで広がっている場合もある。緊張性頭痛は、筋原性頭痛の最も一般的な形である。
【0469】
緊張性頭痛は、頭部、頭皮、又は首における疼痛又は不快感を伴う状態であり、通常は、これらの領域における筋肉のこわばりを伴う。緊張性頭痛は、頸筋及び頭皮筋の収縮の結果として起こる。この筋収縮の1つの原因は、ストレス、うつ、又は不安に対する反応である。頭部を、動かすことなく長時間に渡って1つの位置に固定するあらゆる活動は、頭痛を引き起こす場合がある。このような活動としては、コンピュータのタイピング又は使用、細かい手作業、及び顕微鏡の使用が挙げられる。寒い部屋における睡眠、又は首の位置が異常な状態での睡眠もまた、このタイプの頭痛の引き金となり得る。緊張型頭痛としては、突発性の緊張性頭痛、及び慢性の緊張性頭痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0470】
B.血管性頭痛
【0471】
血管性頭痛の最も一般的なタイプは、片頭痛である。他の種類の血管性頭痛としては、激痛の頻回エピソードを引き起こす群発頭痛、及び高血圧の結果として起こる頭痛が挙げられる。
【0472】
1. 片頭痛
【0473】
片頭痛は一般に、再発する頭痛を伴う不均一な障害である。片頭痛は例えば、悪心、嘔吐、又は光に対する過敏性等の他の症状と共に起こるので、他の頭痛とは異なる。大部分の人では、頭部の1つの側面のみに、拍動痛が感じられる。臨床的特徴、例えば、前兆症状のタイプ、前駆症状の存在、又はめまい等の随伴症状は、根底にある病態生理学的メカニズム及び遺伝的メカニズムが異なる対象のサブグループにおいて見られる場合がある。片頭痛としては、前兆のない片頭痛(普通型片頭痛)、前兆を伴う片頭痛(古典的片頭痛)、月経時片頭痛、片頭痛等価症(無頭痛性頭痛)、複雑型片頭痛、腹性片頭痛、及び混合型の緊張型片頭痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0474】
2. 群発頭痛
【0475】
群発頭痛は、頭部の片側の側面を冒すもので(一側性)、眼の流涙、及び鼻づまりを伴う場合がある。群発頭痛は、クラスターで起こり、数週間、毎日同じ時間に繰り返して起こり、その後、寛解する。
【0476】
D.高血圧性頭痛
【0477】
E.牽引性及び炎症性頭痛
【0478】
牽引性及び炎症性頭痛は、通常は、脳卒中から副鼻腔感染症にわたる他の障害の症状である。
【0479】
F.ホルモン性頭痛
【0480】
G.反跳性頭痛
【0481】
薬物乱用頭痛としても知られる反跳性頭痛は、頭痛を軽減するために、薬物を頻繁に服用しすぎた際に起こる。反跳性頭痛は、しばしば毎日起こり、非常に強い疼痛となる場合がある。
【0482】
H.慢性副鼻腔炎性頭痛
【0483】
副鼻腔炎は、副鼻腔の細菌性、真菌性、ウイルス性、アレルギー性、又は自己免疫性の何れかの炎症である。慢性副鼻腔炎は、感冒の最も一般的な合併症の1つである。症状としては、鼻づまり、顔面痛、頭痛、発熱、全身倦怠感、濃い緑色又は黄色の分泌物、身を屈めた際に悪化する顔面の「膨満」感が挙げられる。少数のケースでは、歯性感染症からの細菌の伝播によって、慢性上顎洞炎も引き起こされる場合がある。慢性の過形成好酸球性副鼻腔炎は、慢性副鼻腔炎の非感染性形態である。
【0484】
I.器質性頭痛
【0485】
J.発作性頭痛
【0486】
発作性頭痛は、てんかん発作活動に伴う頭痛である。
【0487】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の何れかの体性疼痛状態に起因する或いは伴う疼痛の治療に、使用され得る。体性疼痛は靭帯、腱、骨、血管、更には神経自体からも生じる。体性疼痛は、体性侵害受容器により検知される。これらの領域における疼痛受容体の欠乏は、皮膚疼痛よりも長期の、鈍く、あまり限局的ではない疼痛を生じさせる。例としては、捻挫及び骨折が挙げられる。更なる例として、以下が挙げられる:
【0488】
A.過剰な筋張力
【0489】
過剰な筋張力は、例えば、捻挫又は筋挫傷によって引き起こされる場合がある。
【0490】
B.反復運動障害
【0491】
反復運動障害は、手、手首、肘、肩、首、背中、殿部、膝、足、下肢、又は足首の過使用によって起こり得る。
【0492】
C.筋障害
【0493】
体性疼痛を引き起こす筋障害としては、例えば、多発性筋炎、皮膚筋炎、ループス、線維筋痛症、リウマチ性多発筋痛症、及び横紋筋融解症が挙げられる。
【0494】
D.筋肉痛
【0495】
筋肉痛は筋肉の疼痛であり、多くの疾患及び障害の症状である。筋肉痛の最も一般的な原因は、筋肉又は筋肉群の過使用又は過伸展の何れかである。外傷歴のない筋肉痛は、多くの場合、ウイルス感染症によるものである。より長期にわたる筋肉痛は、代謝性筋障害、何らかの栄養障害、又は慢性疲労症候群を意味している場合がある。
【0496】
E.感染症
【0497】
感染症は、体性疼痛を引き起こす場合がある。このような感染症の例としては、筋肉の膿瘍、旋毛虫症、インフルエンザ、ライム病、マラリア、ロッキー山紅斑熱、鳥インフルエンザ、感冒、市中感染性肺炎、髄膜炎、サル痘、重症急性呼吸器症候群、毒素性ショック症候群、旋毛虫症、腸チフス、及び上気道感染症等が挙げられる。
【0498】
F.薬物
【0499】
薬物は、体性疼痛を引き起こす場合がある。このような薬物としては、例えば、コカイン、コレステロールを低下させるスタチン(アトルバスタチン、シンバスタチン、及びロバスタチン等)、並びに血圧を下げるACE阻害薬(エナラプリル及びカプトプリル等)が挙げられる。
【0500】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の何れかの内臓痛状態に起因する或いは伴う疼痛を治療するために使用され得る。内臓痛は身体の内臓、すなわち臓器から生じる。内臓侵害受容器は、身体の臓器及び内部空洞内にある。これらの領域における侵害受容器の更なる欠乏は、通常は体性疼痛よりも強く、長期にわたる疼痛を生じさせる。内臓痛は疼痛の場所を特定するのが極めて難しく、内臓組織の損傷の幾つかは「関連」痛を呈し、その感覚は損傷部位とは全く関係のない領域に局在する。内臓痛の例としては、以下が挙げられる。
【0501】
A.機能性内臓痛
【0502】
機能性内臓痛としては、例えば、過敏性腸症候群、慢性機能性腹痛(CFAP)、機能性便秘、機能性胃腸障害、非心臓性胸痛(NCCP)、及び慢性腹痛が挙げられる。
【0503】
B.慢性胃腸炎
【0504】
慢性胃腸炎としては、例えば、胃炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的大腸炎等の炎症性腸疾患、憩室炎、及び胃腸炎、間質性膀胱炎、腸管虚血、胆嚢炎、虫垂炎、胃食道逆流、潰瘍、腎結石症、尿路感染症、膵炎、並びにヘルニアが挙げられる。
【0505】
C.自己免疫痛
【0506】
自己免疫痛としては、例えば、サルコイドーシス及び血管炎が挙げられる。
【0507】
D.器質性内臓痛
【0508】
器質性内臓痛としては、例えば、腸の外傷性、炎症性、若しくは退行性病変から生じる疼痛、又は感覚神経支配に影響する腫瘍によって生じる疼痛が挙げられる。
【0509】
E.治療誘発性内臓痛
【0510】
治療誘発性内臓痛としては、例えば、化学療法に伴う疼痛、又は放射線療法に伴う疼痛が挙げられる。
【0511】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、以下の関連痛状態の何れかに起因する或いは伴う疼痛を治療するために使用され得る。
【0512】
関連痛は、疼痛刺激部位から離れた領域に局在する痛みから生じる。多くの場合、関連痛は、神経がその起点又はその近くで圧迫される、又は損傷する際に生じる。この状況では、損傷が他の場所を起源としていたとしても、痛覚は通常、その神経が支配する領域で感じられる。一般的な例としては、脊髄から生じる神経根が、隣接する椎間板物質によって圧迫される椎間板ヘルニアが挙げられる。疼痛は損傷した椎間板自体から生じる場合もあるが、圧迫された神経が支配する領域(例えば、大腿、膝、又は足)においても疼痛が感じられる。永久的な神経損傷が生じていなければ、神経根への圧力を軽減させることで、関連痛が寛解する場合がある。心筋虚血(心筋組織の一部への血流の減少)は、おそらく関連痛の最もよく知られた例である。胸の上部に圧迫感が感じられ、又は疼痛が左肩、腕、更には手に生じる場合がある。
【0513】
本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、術後疼痛の治療に、使用され得る。しかしながら、本発明の疼痛は、術後疼痛ではないことが好ましい。
【0514】
術後(例えば、手術後)の疼痛は、外科手術手技により生じる不快な感覚である。術後疼痛は、切開による組織の損傷、手技それ自体、創傷の閉鎖、及び手技中に加えられた何らかの力によって引き起こされる場合がある。手術後の疼痛(例えば、術後疼痛)は、手術に伴う要因により生じる場合もある。例えば、対象は手術台の上での体位が原因で背部痛を患う、又は胸部の切開のために胸痛が生じる場合がある。呼吸チューブの挿入によって刺激が生じる場合があるため、全身麻酔後に咽頭痛が生じる場合もある。しかし、最も一般的なのは、外科切開術により皮膚及び筋肉が切断されることによって生じる術後疼痛である。術後疼痛は、術後の瘢痕に起因する、或いは伴う疼痛(例えば、術後瘢痕疼痛)も含み得る。
【0515】
例えば、外科手術手技(より具体的には、外科切開術)は、疼痛を生じる「侵害刺激」を呈する場合がある。侵害刺激、すなわち組織損傷を誘発する可能性のある刺激は、侵害受容求心性末端及び感覚末端からの疼痛メディエーターの放出(例えば、それらからのCGRPの放出)を活性化する場合がある。侵害情報はその後、末梢神経系から中枢神経系に伝達され、そこで個体は痛みを感じる。
【0516】
術後疼痛は、炎症性組織損傷及び神経組織損傷の組合せによって引き起こされる場合がある。例えば、組織損傷に反応して活性化肥満細胞が脱顆粒することにより、プロテアーゼ、サイトカイン、セロトニン、及び細胞外間隙を含む様々な物質が放出される場合がある。これらの物質は一次求心性ニューロンを感作(より低い閾値で活性化)させ、疼痛過敏症を引き起こす場合がある。組織は広範囲に神経支配されているため、身体のあらゆる部分が、手術による神経損傷の影響を受けやすい。
【0517】
手術とは、身体の一部を切開する(任意選択で、身体の損傷部分を除去又は修復する)ことを含む、対象の外傷又は疾患の治療を伴う医療手技を意味する。侵襲性のレベル(例えば、必要とされる外科切開術のレベル)は手術の種類によって異なり得るが、手術が完了してから対象に疼痛を引き起こすレベルの侵襲性を有する手術も包含される事が意図される。
【0518】
手術は、皮膚及び/又は筋膜及び/又は筋肉の切開を含む場合がある。好ましくは、手術は皮膚の切開を含む。
【0519】
手術は医師により実施され得るものに限定されず、例えば歯科手術も含まれる。手術の非限定的な例として、虫垂切除術、乳房生検、豊胸術又は乳房縮小手術、頬部除皺術、胆嚢摘出術、冠動脈バイパス術、デブリードマン(例えば、創傷、熱傷、若しくは感染症)、皮膚移植、臓器移植、及び扁桃摘出術が挙げられる。
【0520】
好ましくは、「術後」は、手術の後に(例えば、手術後)最大で1日目に始まる期間を指す場合がある。換言すると、用語「術後」は、手術後1日以内に始まる期間を指す場合がある。例えば、用語「術後」は、手術後1乃至20時間、任意選択で手術後2乃至15時間、任意選択で手術後5乃至10時間に始まる時点を指す場合がある。このような時間は、対象に投与された外科用麻酔薬の鎮痛効果が減少(例えば、漸減)し、対象が疼痛を知覚し始める時系列の境界で始まる期間を表す場合がある。
【0521】
更に、用語「術後(post-operative)」は、用語「手術後(post-surgical)」と互換的に使用され得る。これは、「術(operative)」が、本明細書では「手術(surgery)」の意味で使用されるためである。
【0522】
同様に、用語「術後疼痛」は、手術の後に(例えば、手術後)最大1日目に始まる期間に知覚される(又はより具体的には、知覚され始める)疼痛を指す場合がある。換言すると、用語「術後疼痛」は、手術後1日以内の期間に対象が知覚する疼痛を指す場合がある。例えば、用語「術後疼痛」は、手術後1乃至20時間、任意選択で手術後2乃至15時間、任意選択で手術後5乃至10時間に始まる期間に知覚される疼痛を指す場合がある。
【0523】
前記期間は、手術後1乃至50週間、例えば5乃至45週間、10乃至40週間、又は10乃至35週間であってもよい。
【0524】
これは、用語「周術期」とは対照的である。「周術期」は例えば、対象が手術を受けている、又はその前後の期間(例えば、対象が手術室にいる時間)を指す場合があり、適切には、手術の少なくとも1時間前に始まり、且つ/又は手術後1時間未満に終了する期間を指す。
【0525】
本発明は、例えば、慢性疼痛状態等の広範囲の疼痛状態に対処する。幾つかの実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、癌性疼痛及び/又は非癌性疼痛の治療に使用される。
【0526】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒は、膀胱痛症候群(例えば、膀胱痛)、幻肢痛、又は片頭痛疼痛の治療に使用される。膀胱痛症候群(例えば、膀胱痛)は、間質性膀胱炎に起因する、或いは伴う場合がある。
【0527】
特に好ましい実施形態では、疼痛は、例えば間質性膀胱炎に起因する、或いは伴う膀胱痛である。
【0528】
疼痛を治療することは、疼痛を軽減させることを意味する。換言すると、一実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与により、対象の疼痛が軽減する。
【0529】
より詳細には、(疼痛に関して)「軽減された」又は「軽減する」という言及は、好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒を投与した後(投与後)に、投与する前(投与前)に対象者が知覚していた疼痛のレベルと比較して、対象者が知覚する疼痛のレベルがより低くなることを意味する。例えば、知覚される疼痛のレベルは、投与前と比較して、投与後に少なくとも15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、又は95%軽減し得る。例えば、投与後に知覚される疼痛のレベルは少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%軽減し得る。
【0530】
痛覚を評価するための様々な手段が、当業者に公知である。例えば、Pogatzki-Zahnら(Pain Rep. 2017 Mar; 2(2): e588、参照により本明細書に組み込まれる)が説明するように、機械的異痛症(静的又は動的の何れか)の評価は、ヒトの疼痛研究では通例的に使用されている。
【0531】
対象の痛覚を評価するための適切な(ただし、これらに限定されない)方法としては、以下が挙げられる:数値評価スケール(NRS)スコア;ただし、当業者は、感覚閾値、痛覚閾値、静的機械的異痛症、動的機械的異痛症、時間的加重、圧痛閾値、条件刺激性疼痛調節、及び温度閾値等の、付加的又は代替的に使用可能な他の方法を認識する。
【0532】
痛覚尺度の他の非限定的な例としては、各予定時点でのSF-36スコアのベースラインからの変化、研究中に服用した臨時追加薬の量、及び臨時追加薬の最初の服用までの時間等がある。これらは、「探索的」エンドポイント又は痛覚判定尺度と考えられる。
【0533】
従って、好ましい実施形態では、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与後、痛覚は、(a)数値評価スケール(NRS)、(b)刺激誘発NRS、(c)有痛領域の温度、(d)有痛領域の大きさ、(e)鎮痛効果発現までの時間、(f)鎮痛効果のピーク、(g)鎮痛効果のピークまでの時間、(h)鎮痛効果の持続時間、及び(i)SF-36生活の質評価のうちの1つ又は複数によって評価され得る。
【0534】
当業者は、痛覚を評価するためのこのような方法を認識している。便宜上、数値評価スコア、及び生活の質に関する質問票ショートフォーム36の更なる説明を以下に記載する。
【0535】
数値評価スケール(NRS):一般に、本発明による痛覚には、数値評価スケール(NRS)が使用される。NRSは、対象の痛覚を評価するための11段階スケールである。対象に、自身の疼痛の強さに最も当てはまる0乃至10の数字を答えるように依頼する。0は「全く疼痛が無い」ことを表し、上限の10は「起こり得る最悪の疼痛」を表す。
【0536】
NRSは、自発性の平均的な疼痛、自発性の最悪の疼痛、自発性の現在の疼痛等、疼痛の多くの面を評価するために使用され得る。自発性の平均的な疼痛は、対象に、例えば少なくとも6時間、12時間、24時間、又は少なくとも48時間の一定期間にわたる対象の平均的な疼痛(例えば、知覚される疼痛)を最もよく表す数字を選択するよう依頼することによって、評価される。自発性の最悪の疼痛は、対象に、特定の期間(例えば、少なくとも過去6時間、12時間、24時間、又は過去48時間)における自身の最悪の疼痛を最もよく表す数字を選択するよう依頼することによって、評価される。自発性の現在の疼痛は、対象に、評価時に対象がどの程度の疼痛を感じているかを最もよく表す数字を選択するよう依頼することによって、評価される。
【0537】
NRSは、様々な異なる刺激に対する対象の痛覚を評価するためにも、使用され得る。刺激に対する痛覚を評価するために、対象は、有痛領域に様々な性質の刺激を受けることになる。対象は、投与前及び刺激後の、現在のNRSスコアが何であるかを尋ねられることになる。
【0538】
使用される刺激の例としては、(i)軽い接触(本明細書で説明するようにフォンフライフィラメントを適用した後、放射状のスポーク上の有痛領域の表面の疼痛を測定することによって評価できる)、(ii)圧力(圧痛閾値)、圧痛計を使用して加える圧力を増加させながら、対象にNRSスコアを答えるよう依頼することによって評価できる、及び(iii)温度(有痛領域にサーモードを適用して、対象に温刺激、冷刺激、及び熱刺激のNRSスコアを答えるよう依頼することによって評価できる)等がある。
【0539】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与により、投与前の対象のNRSスコアと比較して、投与後の対象のNRSスコアが(例えば、評価≧7から評価≦6に)減少する。
【0540】
生活の質に関する質問票ショートフォーム36(SF-36):生活の質に関する質問票SF-36は、対象の痛覚を評価するために使用することができる。SF-36は、対象の健康に関する36項目の対象報告調査である。SF-36は、8つのスケールスコア(活力、身体機能、体の痛み、全体的健康感、身体的役割機能、精神的役割機能、社会生活機能、及び心の健康)で構成されている。各質問の重みが等しいという前提で、各スケールは0乃至100スケールに直接変換される。SF-36で記録されたスコアが高い程、身体障害の程度はより低くなる。
【0541】
疼痛治療の臨床試験で一般的に検査される関連パラメータは当該技術分野で公知であり、当業者は容易に選択することができる。このようなパラメータの例としては、本明細書に記載のようにNRS、刺激誘発NRS、有痛領域の温度、有痛領域の大きさ、鎮痛効果発現までの時間、鎮痛効果のピーク、鎮痛効果のピークまでの時間、鎮痛効果の持続時間、及び/又はSF-36生活の質が挙げられるが、これらに限定されない。これらのパラメータを評価する方法もまた当該技術分野で公知であり、通例の方法及び手順を使用して、当業者によって実行され得る。
【0542】
好ましくは、本発明のキメラクロストリジウム神経毒の投与は、投与前の対象のSF-36スコアと比較して、投与後の対象のSF-36スコアを(例えば、スコア≦50からスコア≧50に)増加させる。
【0543】
本発明は更に(例えば、付加的又は代替的に)、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、そのニューロンからのメディエーターの放出を阻害するキメラクロストリジウム神経毒によって治療され得る任意の感覚障害の治療を対象とし得る。理論に縛られることを望まないが、本明細書に記載のように、前記障害は疼痛と同様に治療され得ると考えられる。従って、疼痛の治療に関して上で説明した全ての実施形態は、感覚障害の治療においても同様に有効であり得る。メディエーターは、感覚に関与する任意のメディエーター(例えば、感覚メディエーター)であってよく、場合によっては、前記メディエーターは、本明細書に記載の疼痛メディエーターであってよい。メディエーターは、神経伝達物質であってもよい。ニューロンからのメディエーターの放出の阻害は、部分阻害であっても完全阻害であってもよく、完全阻害が好ましい。例えば、キメラクロストリジウム神経毒は、少なくとも80%、90%、95%、又は99%のメディエーターがニューロンから放出されるのを阻害し得る。好ましくは、キメラクロストリジウム神経毒は、100%のメディエーターがニューロンから放出されるのを阻害する。キメラクロストリジウム神経毒は、ニューロンから複数のメディエーターが放出されるのを阻害し得る。感覚障害は、感覚調節障害(例えば、感覚過剰反応)及び/又は異常な感覚処理の障害(例えば、線維筋痛症)であってもよい。
【0544】
従って、一態様では、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することにより感覚障害を治療する際に使用するためのキメラクロストリジウム神経毒を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0545】
関連する態様において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することによって感覚障害を治療する方法を提供し、前記方法は、キメラクロストリジウム神経毒を対象に投与することを含み、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0546】
別の関連する態様において、本発明は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからのメディエーターの放出を阻害することにより感覚障害を治療するための薬物の製造におけるキメラクロストリジウム神経毒の使用を提供し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
【0547】
別の態様では、本発明は、(a)本発明による単位剤形、(b)疼痛治療におけるキットの使用説明書、及び(c)任意選択で希釈剤を含むキットを提供する。
【0548】
項目:
【0549】
1. Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンからの疼痛メディエーターの放出を阻害することによって疼痛を治療する際に使用されるキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、Aδ神経線維又はC神経線維を含むニューロンにそれぞれ結合し、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を含む。
2. 項目1に記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、疼痛メディエーターは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスP、及びニューロキニンから選択される1つ又は複数である。
3. 項目1又は2に記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、疼痛メディエーターはCGRPであり、疼痛はCGRP関連疼痛である。
4. 項目3に記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、CGRP関連疼痛は、CGRP関連頭痛である。
5. 項目3又は4に記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、CGRP関連疼痛は、CGRP関連片頭痛疼痛である。
6. 項目3乃至5の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、CGRP関連疼痛は:
(a)頭痛(例えば、外傷後頭痛、頭部損傷頭痛、若しくは外傷後脳損傷頭痛)、関節炎疼痛(例えば、変形性関節症疼痛及び/若しくは関節リウマチ疼痛)、運動痛、変性円板疾患疼痛、手根管圧迫痛、軟部組織損傷疼痛、顎関節痛、筋骨格痛、血管障害に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛(例えば、レイノー症候群、バージャー病、末梢静脈疾患、末梢動脈疾患、静脈瘤、静脈内の血栓、血液凝固障害、若しくはリンパ浮腫)、顔面痛、三叉神経・自律神経性頭痛に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛、三叉神経痛に起因する若しくは伴うCGRP関連体性疼痛、及びCGRP関連の癌誘発性疼痛(例えば、CGRP関連癌誘発性骨痛)から選択されるCGRP関連体性疼痛;
(b)子宮内膜症疼痛、膵炎疼痛、胃腸痛、及び血管障害に起因する若しくは伴うCGRP関連内臓痛から選択されるCGRP関連内臓痛;
(c)慢性疼痛、創傷治癒疼痛、そう痒疼痛、及び熱傷痛から選択されるCGRP関連炎症性疼痛;並びに/又は
(d)帯状疱疹後神経痛、糖尿病疼痛、慢性神経障害性疼痛、及びモートン神経腫疼痛から選択されるCGRP関連神経障害性疼痛である。
7. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、ニューロンは三叉神経節である。
8. 先行項目の何れか一つに記載の使用ためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、顔、首、及び/又は頭蓋に投与される。
9. 先行項目の何れか一つに記載の使用ためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、皮内投与される。
10. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、皮内注射により最大10箇所の注射部位に投与される。
11. 項目1乃至8の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、筋肉内投与される。
12. 項目1乃至8又は11の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の前頭筋、皺筋(例えば、皺眉筋)、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、頭板状筋、頸半棘筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、又は斜角筋から選択される1つ又は複数の筋肉に投与され;
好ましくは、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、対象の前頭筋、皺筋、鼻根筋(例えば、鼻根鼻筋)、後頭筋、側頭筋、僧帽筋、咬筋、鼻筋、眼輪筋、頸部傍脊柱筋、側頭筋膜、上耳介筋、前耳介筋、後耳介筋、胸鎖乳突筋、広頸筋、前鼻孔散大筋、後鼻孔散大筋、鼻中隔下制筋、オトガイ筋、口輪筋、頬骨筋、笑筋、頬筋、後頭前頭筋、上唇挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、頚板状筋、肩甲挙筋、顎二腹筋、及び斜角筋から選択される1つ又は複数の筋肉に投与される。
13. 項目1乃至8、11又は12の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、1回の治療セッション毎に、筋肉内注射により最大10箇所の注射部位に投与される。
14. 項目1乃至8の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、神経内投与、神経周囲投与、又は神経節周囲投与によって投与される。
15. 項目1乃至8、又は14の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、三叉神経、ガッサー神経節、中間神経、舌咽、迷走神経、及び/又は後頭神経を経て上部頸部根に投与される。
16. 項目1乃至8の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、血管周囲投与により投与される。
17. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、5pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
18. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、500pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
19. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、1,000pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
20. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、1回の治療セッション毎に投与される合計用量は、最大255,000pg、例えば、3,640乃至255,000pgのキメラクロストリジウム神経毒である。
21. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、3,640pg乃至17,000pgの単位用量で投与される。
22. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、7超の安全率(好ましくは、少なくとも10の安全率)を有し、ここで、安全率は、-10%の体重変化に必要な、pg/マウスとして測定された毒素の用量を、pg/マウスとして測定されたDAS ED50(ここで、ED50はDASスコア2を得るために必要な用量)で除算することによって計算される。
23. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、前記HNドメインのC末端アミノ酸残基は、BoNT/A中のHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第1アミノ酸残基に対応し、ここで、前記HCドメインのN末端アミノ酸残基は、BoNT/B中のHNドメインとHCドメインを分離する310ヘリックスの第2アミノ酸残基に対応する。
24. 先行項目の何れか一つに記載の使用のためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、キメラクロストリジウム神経毒は、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
25. 先行項目の何れか一つに記載の使用ためのキメラクロストリジウム神経毒、ここで、BoNT/B HCドメインは、E1191M、S1199Y、V1118M、Y1183M、E1191I、E1191Q、E1191T、S1199F、S1199L、S1201V、及びこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の置換変異を含み、好ましくは、ここで、BoNT/B HCドメインは、E1191M及びS1199Yでの置換変異を含む。
【0550】
本発明の様々な治療用途に関連する実施形態は、本発明の方法、組成物(例えば、単位剤形)、及びキットに同様に適用されることが意図されており、逆もまた同様である。
【0551】
配列相同性
【0552】
グローバル法、ローカル法、及びハイブリッド法、例えば、セグメントアプローチ法等を含むがこれらに限定されない、様々な配列アラインメント法の何れかを使用して、同一性パーセントを決定し得る。同一性パーセントを決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内である通例の手順である。グローバル法は、分子の最初から最後までの配列を整列させ、個々の残基対のスコアを合計し、ギャップペナルティを課すことによって最適なアラインメントを決定する。非限定的な方法として、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994))を参照);及び反復改良(例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. MoI. Biol. 823-838 (1996)を参照)が挙げられる。ローカル法は、全ての入力配列で共有される1つ又は複数の保存されたモチーフを同定することによって、配列を整列させる。非限定的な方法として、例えば、Match-box(例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)を参照);ギブスサンプリング(例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131) Science 208-214 (1993)を参照); アラインM(Align-M)(例えば、Ivo Van WaIIe et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)を参照)が挙げられる。
【0553】
従って、配列同一性パーセントは従来法によって決定される。例えば、Altschul et al, Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992を参照のこと。簡潔に説明すると、ギャップ開始ペナルティー10、ギャップ伸長ペナルティー1、及び下に記載されるようなHenikoff and Henikoff(同文献)の「blosum 62」スコアリングマトリックス(アミノ酸は標準一文字コードによって表示)を使用して、アライメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列を整列する。好ましくは、この方法を使用して、配列を本明細書の対象配列(例えば、配列番号7)と整列させて、本明細書に記載のようにアミノ酸位置ナンバリングを定義する。
【0554】
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列が共有する同一位置の数の関数である。従って、同一性%は、同一のヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数で除算し、それに100を乗じて計算することができる。配列同一性パーセントの計算はまた、2つ以上の配列のアライメントを最適化するために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さも考慮される場合がある。2つ以上の配列間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、熟練した技術者にはよく知られているBLAST等の特定の数学的アルゴリズムを使用して実行され得る。
【0555】
配列同一性を決定するためのアラインメントスコア
【数1】
【0556】
次に、同一性パーセントを以下のように計算する:
[同一の一致の総数×100] / [長い方の配列の長さ+2つの配列を整列させるために長い方の配列に導入されたギャップの数]
【0557】
実質的に相同のポリペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は、軽微な性質、すなわち保存的アミノ酸置換(下記参照)及びポリペプチドのフォールディング若しくは活性に大きな影響を及ぼさない他の置換;通常1乃至約30個のアミノ酸の小さな欠失;並びに、例えば、アミノ末端メチオニン残基、最大約20乃至25残基の小さなリンカーペプチド、又はアフィニティタグ等のアミノ末端若しくはカルボキシル末端の小さな延長が好ましい。
【0558】
保存的アミノ酸置換
塩基性:
アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性:
グルタミン酸
アスパラギン酸
極性:
グルタミン
アスパラギン
疎水性:
ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族:
フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小型:
グリシン
アラニン
セリン
トレオニン
メチオニン
【0559】
20種類の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン、及びα-メチルセリン等)が、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換されてもよい。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸が、ポリペプチドアミノ酸残基と置換され得る。本発明のポリペプチドは、非天然起源のアミノ酸残基も含み得る。
【0560】
非天然起源のアミノ酸としては、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチル-トレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニル-アラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。非天然起源のアミノ酸残基をタンパク質に組み込むための幾つかの方法が、当技術分野で公知である。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用してナンセンス変異を抑制したインビトロシステムを使用することができる。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化する方法は、当技術分野で公知である。ナンセンス変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌S30抽出物、市販の酵素、及び他の試薬を含む無細胞系で行われる。タンパク質はクロマトグラフィーによって精製される。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman et al., Methods Enzymol. 202:301, 1991; Chung et al., Science 259:806-9, 1993;及びChung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993を参照のこと。第2の方法では、変異mRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAをマイクロインジェクションすることによって、アフリカツメガエル卵母細胞で翻訳が行われる(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271:19991-8, 1996)。第3の方法では、置換されるべき天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下、及び所望の非天然起源のアミノ酸(複数可)(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、大腸菌細胞が培養される。非天然起源のアミノ酸は、その天然対応物の代わりに、ポリペプチド中に組み込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-6, 1994を参照のこと。天然起源のアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾によって非天然起源の種に変換され得る。化学修飾を、部位特異的変異誘発と組み合わせて、置換の範囲を更に広げることができる(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0561】
限定された数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、非天然起源のアミノ酸、及び非天然アミノ酸は、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換され得る。
【0562】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発等の当技術分野で公知の手順により同定することができる(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-5, 1989)。生物学的相互作用の部位も、推定上の接触部位アミノ酸の変異と組み合わせて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識等の技術によって決定されるような構造の物理学的分析によって決定され得る。例えば、de Vos et al., Science 255:306-12, 1992; Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992;及びWlodaver et al., FEBS Lett. 309:59-64, 1992を参照のこと。必須アミノ酸の同一性もまた、本発明のポリペプチドの関連成分(例えば、転位置又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推測され得る。
【0563】
Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7, 1988)又はBowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)によって開示されているような変異誘発及びスクリーニングの公知の方法を使用して、複数のアミノ酸置換を行い、検査することができる。簡潔に説明すると、これらの著者は、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次に、変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置での許容される置換のスペクトルを決定するための方法を開示している。使用可能な他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-7, 1991; Ladner et al., U.S. Patent No. 5,223,409; Huse, WIPO Publication WO 92/06204)、及び領域特異的変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)が挙げられる。
【0564】
別途定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 20 ED., John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、当業者に、本開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を提供する。
【0565】
本開示は、本明細書で開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書において記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本開示の実施形態の実施又は試験において使用可能である。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。特に断りのない限り、それぞれ、何れの核酸配列も5’から3’配向で左から右に書かれており、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ配向で左から右に書かれている。
【0566】
本明細書で提供される見出しは、本開示の様々な態様又は実施形態を限定するものではない。
【0567】
本明細書において、アミノ酸は、アミノ酸の名称、三文字略語、又は一文字略語を使用して表される。用語「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。用語「アミノ酸配列」は、本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義である。幾つかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。幾つかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義である。本明細書では、用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、互換的に使用される。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基の従来の一文字コード及び三文字コードを使用する場合がある。IUPACIUBの生化学命名法に関する合同委員会(JCBN)に準拠して定義されたアミノ酸の三文字コード。また、遺伝暗号の縮重により、ポリペプチドが2つ以上のヌクレオチド配列によってコードされる場合があることも理解される。
【0568】
用語の他の定義が、本明細書全体を通じて現れる場合がある。例示的な実施形態について更に詳しく説明する前に、本開示は、説明される特定の実施形態に限定されず、そのため変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるので、本明細書で使用される技術用語は特定の実施形態を説明するためのみであり、限定する意図はないことも理解されたい。
【0569】
値の範囲が提示されている場合、その範囲の上限値と下限値の間の各介在値も、文脈上明確な別段の定めがない限り、下限値の単位の10分の1まで、具体的に開示されているものと理解される。任意の記載された値又は記載された範囲内の介在値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値との間のより小さい範囲は各々、本開示内に包含される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、範囲内に独立して含まれるか、又は除外される場合があり、より小さな範囲に、どちらかの限界値が含まれる、どちらの限界値も含まれない、又は両方の限界値が含まれる場合の各範囲も、本開示内に包含され、記載された範囲内で具体的に限界値が除外される場合は、それに従う。記載された範囲にどちらか又は両方の限界値が含まれる場合、それらの含まれる限界値のどちらか又は両方を除外する範囲も、本開示内に含まれる。
【0570】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」「1つの(an)」及び「前記(the)」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「キメラクロストリジウム神経毒」という言及には、複数のそのような候補物質が含まれ、「前記キメラクロストリジウム神経毒」という言及には、1つ又は複数のキメラクロストリジウム神経毒、及び当業者に公知のその等価物等への言及が含まれる。
【0571】
本明細書で論じられた刊行物は、単に、本願の出願日以前のそれらの開示のために提供される。本明細書における如何なる記載も、このような刊行物が、本明細書に添付される特許請求の範囲の先行技術を構成することを承認していると解釈されるべきではない。
【0572】
本発明の実施形態を、単に例として、以下の図面及び実施例を参照しながら説明する。本明細書で提示された図面の多くは、カラーで見ることにより、より良く理解される。図面のカラーバージョンは、提出された出願の一部であり、後続の手続きで図面のカラー画像を提示する権利は、ここに留保される。
【図面の簡単な説明】
【0573】
【
図1】
図1は、切断SNAP25(緑)を認識可能な抗体及び核染色用のDAPIで染色した、無処置aDRGニューロンの代表的な一つの画像(n=3)を示している。下部の画像は2つのチャネルを合わせたものを表している。
【
図2】
図2は、1nM rBoNT/Aで24時間処置し、切断SNAP25(緑)を認識可能な抗体、aDRGマーカー用抗体NF200、CGRP、P2X3、TrkA(赤)、及び核染色用のDAPIで染色したaDRGニューロンの代表的な一つの画像(n=3)を示している。矢印は、共局在がより明白であるか、又は存在しない特定の領域を示す。下部の画像は2つのチャネルを合わせたものを表している。
【
図3】
図3は、1nM mrBoNT/ABで24時間処置し、切断SNAP25(緑)を認識可能な抗体、aDRGマーカー用抗体NF200、CGRP、P2X3、TrkA(赤)、及び核染色用のDAPIで染色した、aDRGニューロンの代表的な一つの画像(n=3)を示している。矢印は、共局在がより明白であるか、又は存在しない特定の領域を示す。下部の画像は2つのチャネルを合わせたものを表している。
【
図4】
図4は、KClによる刺激前にBoNTで24時間処置したaDRGニューロンによるCGRP放出率を示している。CGRP放出は、EIAにより定量した。CGRP基礎放出を刺激放出から差し引き、結果を、BoNTを含まない対照細胞に対して正規化した。非線形曲線を、個々の実験の用量反応(可変勾配-曲線の底部が20%に限定される4つのパラメータ)に適合させて、IC
50を測定した。mrBoNT/AB(n=3)又はrBoNT/A(n=3)で処置したKCl刺激aDRGに適合した代表的な(平均)曲線と、平均に対する±標準誤差が表示されている。それぞれの実験は、三連で実施した。
【
図5】
図5は、1nM BoNTで24時間処置したaDRGからの最大CGRP放出阻害率を示している。多重比較のための事後Tukey検定による一元配置分散分析:**-p≦0.01。mrBoNT/AB(n=3)及びrBoNT/A(n=3)。それぞれの実験は、三連で実施した(平均±標準誤差)。
【
図6】
図6は、好ましい皮内注射部位の位置を示している。表には、所定の標的神経末端に対する顔側面あたりの注射回数と、その標的神経末端に対する注射の合計回数が示されている。
【
図7】
図7は、(A)rBoNT/A、又は(B)mrBoNT/ABで処置した細胞のCGRP放出(pg/ml)に基づく濃度反応曲線を示している。各平均値(▲)は、3つの異なるプレートからの6個(rBoNT/Aについては5個)のサンプルのデータと、このデータに対する+/-標準偏差を表す。それぞれのデータポイントも全て含まれている(+)。
【
図8】
図8は、ラット一次TGニューロンにおいて、インビトロでmrBoNT/AB(□;12.14)又はrBoNT/A(o;9.67)で24時間処置した後のSNAP25切断のpEC
50値を示している。データはn=3実験の平均±標準誤差である。****p<0.0001(スチューデントの対応のないt検定)。
【
図9】
図9は、hiPSCs由来の感覚ニューロンにおいて、インビトロでmrBoNT/AB(pEC
50=12.85)又はrBoNT/A(pEC
50=10.73)で24時間処置した後の、SNAP25切断の濃度反応曲線値を示している。
【
図10】
図10は、筋肉内(IM)注射又は皮内(ID)注射を介して300pg/kgのmrBoNT/ABを投与されたラットの、脳幹の三叉神経脊髄知覚核(左)、又は三叉神経運動核(右)における、切断SNAP25に対して陽性染色された領域の割合(%)を示している。*p<0.05、マン・ホイットニー検定。
【
図11】
図11は、筋肉内(IM)注射又は皮内(ID)注射を介して300pg/kgのmrBoNT/ABを投与されたラットの頸髄後角(感覚)(左)又は前角(運動)(右)における切断SNAP25の量を示している。この量は、実施例12で説明するように、スコアリングシステム(「c-SNAP25IHCスコア」)によって表される。
【
図12】
図12は、筋肉内(IM)注射若しくは皮内(ID)注射を介して300pg/kgのmrBoNT/ABを投与された、又はIM注射を介してボトックスを投与されたラットの三叉神経節軸索における切断SNAP25の量を示している。「c-SNAP25IHCスコア」は、実施例12で説明するスコアリングシステムに基づいて割り当てられた。**p<0.01;Kruskal-Wallis検定に続いて、Dunnの多重比較検定を実施。
【0574】
配列表
【0575】
以下の何れかの配列番号において最初のMetアミノ酸残基が示されている場合、前記残基は任意選択である。
【0576】
配列番号1 - キメラクロストリジウム神経毒1(mrBoNT/AB)のポリペプチド配列
配列番号2 - キメラクロストリジウム神経毒2のポリペプチド配列
配列番号3 - キメラクロストリジウム神経毒3のポリペプチド配列
配列番号4 - キメラクロストリジウム神経毒4のポリペプチド配列
配列番号5 - キメラクロストリジウム神経毒5のポリペプチド配列
配列番号6 - 天然BoNT/A(rBoNT/A)のポリペプチド配列
配列番号7 - BoNT/Bのポリペプチド配列
配列番号8 - BoNT/Cのポリペプチド配列
配列番号9 - BoNT/Dのポリペプチド配列
配列番号10 - BoNT/Eのポリペプチド配列
配列番号11 - BoNT/Fのポリペプチド配列
配列番号12 - BoNT/Gのポリペプチド配列
配列番号13 - BoNT/Xのポリペプチド配列
配列番号14 - TeNTのポリペプチド配列
配列番号15 - C末端L鎖フラグメント
配列番号16 - C末端L鎖フラグメント2
配列番号17 - 二鎖L鎖1
配列番号18 - 二鎖L鎖2
配列番号19 - 二鎖H鎖
【0577】
配列番号1 - キメラクロストリジウム神経毒1(mrBoNT/AB)のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEMKLFLAPIYDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【0578】
配列番号2 - キメラクロストリジウム神経毒2のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLN
PPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGG
STIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGY
GSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPN
RVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKA
KSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKV
LNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFT
GLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEE
ITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNG
KKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEA
AMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSG
AVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAK
VNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKA
MININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDK
VNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKSEILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVE
VYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYI
HNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVT
ITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTEL
SQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSK
YNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYF
KKEEMKLFLAPIYDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYES
GIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTEHHHHHHHHHH
【0579】
配列番号3 - キメラクロストリジウム神経毒3のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLN
PPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGG
STIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGY
GSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPN
RVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKA
KSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKV
LNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFT
GLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEE
ITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNG
KKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEA
AMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSG
AVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAK
VNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKA
MININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDK
VNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIIELGGGGSELSEILNNIILNLRYKDNN
LIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRI
PKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIRED
ISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFI
WMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKK
DSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNL
NQEWRVYTYKYFKKEEMKLFLAPIYDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDE
IGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTEHHH
HHHHHHH
【0580】
配列番号4 - キメラクロストリジウム神経毒4のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLN
PPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGG
STIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGY
GSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPN
RVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKA
KSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKV
LNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFT
GLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEE
ITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNG
KKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEA
AMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSG
AVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAK
VNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKA
MININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDK
VNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEV
YDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIH
NEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTI
TNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELS
QSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKY
NQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFK
KEEMKLFLAPIYDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESG
IVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTEHHHHHHHHHH
【0581】
配列番号5 - キメラクロストリジウム神経毒5のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLN
PPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGG
STIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGY
GSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPN
RVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKA
KSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKV
LNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFT
GLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEE
ITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNG
KKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEA
AMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSG
AVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAK
VNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKA
MININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDK
VNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEV
YDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIH
NEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTI
TNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELS
QSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKY
NQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFK
KEEEKLFLAPISDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESG
IVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【0582】
配列番号6 - 天然BoNT/A(rBoNT/A)のポリペプチド配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0583】
配列番号7 - BoNT/Bのポリペプチド配列
MPVTINNFNYNDPIDNNNIIMMEPPFARGTGRYYKAFKITDRIWIIPERYTFGYKPEDFN
KSSGIFNRDVCEYYDPDYLNTNDKKNIFLQTMIKLFNRIKSKPLGEKLLEMIINGIPYLG
DRRVPLEEFNTNIASVTVNKLISNPGEVERKKGIFANLIIFGPGPVLNENETIDIGIQNH
FASREGFGGIMQMKFCPEYVSVFNNVQENKGASIFNRRGYFSDPALILMHELIHVLHGLY
GIKVDDLPIVPNEKKFFMQSTDAIQAEELYTFGGQDPSIITPSTDKSIYDKVLQNFRGIV
DRLNKVLVCISDPNININIYKNKFKDKYKFVEDSEGKYSIDVESFDKLYKSLMFGFTETN
IAENYKIKTRASYFSDSLPPVKIKNLLDNEIYTIEEGFNISDKDMEKEYRGQNKAINKQA
YEEISKEHLAVYKIQMCKSVKAPGICIDVDNEDLFFIADKNSFSDDLSKNERIEYNTQSN
YIENDFPINELILDTDLISKIELPSENTESLTDFNVDVPVYEKQPAIKKIFTDENTIFQY
LYSQTFPLDIRDISLTSSFDDALLFSNKVYSFFSMDYIKTANKVVEAGLFAGWVKQIVND
FVIEANKSNTMDKIADISLIVPYIGLALNVGNETAKGNFENAFEIAGASILLEFIPELLI
PVVGAFLLESYIDNKNKIIKTIDNALTKRNEKWSDMYGLIVAQWLSTVNTQFYTIKEGMY
KALNYQAQALEEIIKYRYNIYSEKEKSNINIDFNDINSKLNEGINQAIDNINNFINGCSV
SYLMKKMIPLAVEKLLDFDNTLKKNLLNYIDENKLYLIGSAEYEKSKVNKYLKTIMPFDL
SIYTNDTILIEMFNKYNSEILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFK
LTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNS
GWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYING
KLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSY
SEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLY
IGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEEKLFLAPISD
SDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCIS
KWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【0584】
配列番号8 - BoNT/Cのポリペプチド配列
MPITINNFNYSDPVDNKNILYLDTHLNTLANEPEKAFRITGNIWVIPDRFSRNSNPNLNKPPRVTSPKSGYYDPNYLSTDSDKDPFLKEIIKLFKRINSREIGEELIYRLSTDIPFPGNNNTPINTFDFDVDFNSVDVKTRQGNNWVKTGSINPSVIITGPRENIIDPETSTFKLTNNTFAAQEGFGALSIISISPRFMLTYSNATNDVGEGRFSKSEFCMDPILILMHELNHAMHNLYGIAIPNDQTISSVTSNIFYSQYNVKLEYAEIYAFGGPTIDLIPKSARKYFEEKALDYYRSIAKRLNSITTANPSSFNKYIGEYKQKLIRKYRFVVESSGEVTVNRNKFVELYNELTQIFTEFNYAKIYNVQNRKIYLSNVYTPVTANILDDNVYDIQNGFNIPKSNLNVLFMGQNLSRNPALRKVNPENMLYLFTKFCHKAIDGRSLYNKTLDCRELLVKNTDLPFIGDISDVKTDIFLRKDINEETEVIYYPDNVSVDQVILSKNTSEHGQLDLLYPSIDSESEILPGENQVFYDNRTQNVDYLNSYYYLESQKLSDNVEDFTFTRSIEEALDNSAKVYTYFPTLANKVNAGVQGGLFLMWANDVVEDFTTNILRKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNISNSVRRGNFTEAFAVTGVTILLEAFPEFTIPALGAFVIYSKVQERNEIIKTIDNCLEQRIKRWKDSYEWMMGTWLSRIITQFNNISYQMYDSLNYQAGAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNEFDRNTKAKLINLIDSHNIILVGEVDKLKAKVNNSFQNTIPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNNINDSKILSLQNRKNTLVDTSGYNAEVSEEGDVQLNPIFPFDFKLGSSGEDRGKVIVTQNENIVYNSMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNEDSEQSINFSYDISNNAPGYNKWFFVTVTNNMMGNMKIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFEINKIPDTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDGKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYNKEYYMVNIDYLNRYMYANSRQIVFNTRRNNNDFNEGYKIIIKRIRGNTNDTRVRGGDILYFDMTINNKAYNLFMKNETMYADNHSTEDIYAIGLREQTKDINDNIIFQIQPMNNTYYYASQIFKSNFNGENISGICSIGTYRFRLGGDWYRHNYLVPTVKQGNYASLLESTSTHWGFVPVSE
【0585】
配列番号9 - BoNT/Dのポリペプチド配列
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGLDVEIIPQIERSQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWISNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSRHYLPVFANILDDNIYTIRDGFNLTNKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTKNSRDDSTCIKVKNNRLPYVADKDSISQEIFENKIITDETNVQNYSDKFSLDESILDGQVPINPEIVDPLLPNVNMEPLNLPGEEIVFYDDITKYVDYLNSYYYLESQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSVIIPYIGPALNIGNSALRGNFNQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHINYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLRTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTMPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNSINDSKILSLQNKKNALVDTSGYNAEVRVGDNVQLNTIYTNDFKLSSSGDKIIVNLNNNILYSAIYENSSVSFWIKISKDLTNSHNEYTIINSIEQNSGWKLCIRNGNIEWILQDVNRKYKSLIFDYSESLSHTGYTNKWFFVTITNNIMGYMKLYINGELKQSQKIEDLDEVKLDKTIVFGIDENIDENQMLWIRDFNIFSKELSNEDINIVYEGQILRNVIKDYWGNPLKFDTEYYIINDNYIDRYIAPESNVLVLVQYPDRSKLYTGNPITIKSVSDKNPYSRILNGDNIILHMLYNSRKYMIIRDTDTIYATQGGECSQNCVYALKLQSNLGNYGIGIFSIKNIVSKNKYCSQIFSSFRENTMLLADIYKPWRFSFKNAYTPVAVTNYETKLLSTSSFWKFISRDPGWVE
【0586】
配列番号10 - BoNT/Eのポリペプチド配列
MPKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPERNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGILLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFETNSSNISLRNNYMPSNHRFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNCMNEFIQDPALTLMHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLLADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSFTEFDLRTKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLNPRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINTPKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSDIEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKPVQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDALELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVYSFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDIKQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKIINEVKINKLREYDENVKTYLLNYIIQHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMRYKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKNFSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTFEDNRGINQKLAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNILFKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYLLNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKNDQVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNCTMNFKNNNGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【0587】
配列番号11 - BoNT/Fのポリペプチド配列
MPVVINSFNYNDPVNDDTILYMQIPYEEKSKKYYKAFEIMRNVWIIPERNTIGTDPSDFDPPASLENGSSAYYDPNYLTTDAEKDRYLKTTIKLFKRINSNPAGEVLLQEISYAKPYLGNEHTPINEFHPVTRTTSVNIKSSTNVKSSIILNLLVLGAGPDIFENSSYPVRKLMDSGGVYDPSNDGFGSINIVTFSPEYEYTFNDISGGYNSSTESFIADPAISLAHELIHALHGLYGARGVTYKETIKVKQAPLMIAEKPIRLEEFLTFGGQDLNIITSAMKEKIYNNLLANYEKIATRLSRVNSAPPEYDINEYKDYFQWKYGLDKNADGSYTVNENKFNEIYKKLYSFTEIDLANKFKVKCRNTYFIKYGFLKVPNLLDDDIYTVSEGFNIGNLAVNNRGQNIKLNPKIIDSIPDKGLVEKIVKFCKSVIPRKGTKAPPRLCIRVNNRELFFVASESSYNENDINTPKEIDDTTNLNNNYRNNLDEVILDYNSETIPQISNQTLNTLVQDDSYVPRYDSNGTSEIEEHNVVDLNVFFYLHAQKVPEGETNISLTSSIDTALSEESQVYTFFSSEFINTINKPVHAALFISWINQVIRDFTTEATQKSTFDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKENFKEAFELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFIGSSENKNKIIKAINNSLMERETKWKEIYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDAIKTVIEYKYNNYTSDERNRLESEYNINNIREELNKKVSLAMENIERFITESSIFYLMKLINEAKVSKLREYDEGVKEYLLDYISEHRSILGNSVQELNDLVTSTLNNSIPFELSSYTNDKILILYFNKLYKKIKDNSILDMRYENNKFIDISGYGSNISINGDVYIYSTNRNQFGIYSSKPSEVNIAQNNDIIYNGRYQNFSISFWVRIPKYFNKVNLNNEYTIIDCIRNNNSGWKISLNYNKIIWTLQDTAGNNQKLVFNYTQMISISDYINKWIFVTITNNRLGNSRIYINGNLIDEKSISNLGDIHVSDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKVFDTELGKTEIETLYSDEPDPSILKDFWGNYLLYNKRYYLLNLLRTDKSITQNSNFLNINQQRGVYQKPNIFSNTRLYTGVEVIIRKNGSTDISNTDNFVRKNDLAYINVVDRDVEYRLYADISIAKPEKIIKLIRTSNSNNSLGQIIVMDSIGNNCTMNFQNNNGGNIGLLGFHSNNLVASSWYYNNIRKNTSSNGCFWSFISKEHGWQEN
【0588】
配列番号12 - BoNT/Gのポリペプチド配列
MPVNIKNFNYNDPINNDDIIMMEPFNDPGPGTYYKAFRIIDRIWIVPERFTYGFQPDQFNASTGVFSKDVYEYYDPTYLKTDAEKDKFLKTMIKLFNRINSKPSGQRLLDMIVDAIPYLGNASTPPDKFAANVANVSINKKIIQPGAEDQIKGLMTNLIIFGPGPVLSDNFTDSMIMNGHSPISEGFGARMMIRFCPSCLNVFNNVQENKDTSIFSRRAYFADPALTLMHELIHVLHGLYGIKISNLPITPNTKEFFMQHSDPVQAEELYTFGGHDPSVISPSTDMNIYNKALQNFQDIANRLNIVSSAQGSGIDISLYKQIYKNKYDFVEDPNGKYSVDKDKFDKLYKALMFGFTETNLAGEYGIKTRYSYFSEYLPPIKTEKLLDNTIYTQNEGFNIASKNLKTEFNGQNKAVNKEAYEEISLEHLVIYRIAMCKPVMYKNTGKSEQCIIVNNEDLFFIANKDSFSKDLAKAETIAYNTQNNTIENNFSIDQLILDNDLSSGIDLPNENTEPFTNFDDIDIPVYIKQSALKKIFVDGDSLFEYLHAQTFPSNIENLQLTNSLNDALRNNNKVYTFFSTNLVEKANTVVGASLFVNWVKGVIDDFTSESTQKSTIDKVSDVSIIIPYIGPALNVGNETAKENFKNAFEIGGAAILMEFIPELIVPIVGFFTLESYVGNKGHIIMTISNALKKRDQKWTDMYGLIVSQWLSTVNTQFYTIKERMYNALNNQSQAIEKIIEDQYNRYSEEDKMNINIDFNDIDFKLNQSINLAINNIDDFINQCSISYLMNRMIPLAVKKLKDFDDNLKRDLLEYIDTNELYLLDEVNILKSKVNRHLKDSIPFDLSLYTKDTILIQVFNNYISNISSNAILSLSYRGGRLIDSSGYGATMNVGSDVIFNDIGNGQFKLNNSENSNITAHQSKFVVYDSMFDNFSINFWVRTPKYNNNDIQTYLQNEYTIISCIKNDSGWKVSIKGNRIIWTLIDVNAKSKSIFFEYSIKDNISDYINKWFSITITNDRLGNANIYINGSLKKSEKILNLDRINSSNDIDFKLINCTDTTKFVWIKDFNIFGRELNATEVSSLYWIQSSTNTLKDFWGNPLRYDTQYYLFNQGMQNIYIKYFSKASMGETAPRTNFNNAAINYQNLYLGLRFIIKKASNSRNINNDNIVREGDYIYLNIDNISDESYRVYVLVNSKEIQTQLFLAPINDDPTFYDVLQIKKYYEKTTYNCQILCEKDTKTFGLFGIGKFVKDYGYVWDTYDNYFCISQWYLRRISENINKLRLGCNWQFIPVDEGWTE
【0589】
配列番号13 - BoNT/Xのポリペプチド配列
MKLEINKFNYNDPIDGINVITMRPPRHSDKINKGKGPFKAFQVIKNIWIVPERYNFTNNT
NDLNIPSEPIMEADAIYNPNYLNTPSEKDEFLQGVIKVLERIKSKPEGEKLLELISSSIP
LPLVSNGALTLSDNETIAYQENNNIVSNLQANLVIYGPGPDIANNATYGLYSTPISNGEG
TLSEVSFSPFYLKPFDESYGNYRSLVNIVNKFVKREFAPDPASTLMHELVHVTHNLYGIS
NRNFYYNFDTGKIETSRQQNSLIFEELLTFGGIDSKAISSLIIKKIIETAKNNYTTLISE
RLNTVTVENDLLKYIKNKIPVQGRLGNFKLDTAEFEKKLNTILFVLNESNLAQRFSILVR
KHYLKERPIDPIYVNILDDNSYSTLEGFNISSQGSNDFQGQLLESSYFEKIESNALRAFI
KICPRNGLLYNAIYRNSKNYLNNIDLEDKKTTSKTNVSYPCSLLNGCIEVENKDLFLISN
KDSLNDINLSEEKIKPETTVFFKDKLPPQDITLSNYDFTEANSIPSISQQNILERNEELY
EPIRNSLFEIKTIYVDKLTTFHFLEAQNIDESIDSSKIRVELTDSVDEALSNPNKVYSPF
KNMSNTINSIETGITSTYIFYQWLRSIVKDFSDETGKIDVIDKSSDTLAIVPYIGPLLNI
GNDIRHGDFVGAIELAGITALLEYVPEFTIPILVGLEVIGGELAREQVEAIVNNALDKRD
QKWAEVYNITKAQWWGTIHLQINTRLAHTYKALSRQANAIKMNMEFQLANYKGNIDDKAK
IKNAISETEILLNKSVEQAMKNTEKFMIKLSNSYLTKEMIPKVQDNLKNFDLETKKTLDK
FIKEKEDILGTNLSSSLRRKVSIRLNKNIAFDINDIPFSEFDDLINQYKNEIEDYEVLNL
GAEDGKIKDLSGTTSDINIGSDIELADGRENKAIKIKGSENSTIKIAMNKYLRFSATDNF
SISFWIKHPKPTNLLNNGIEYTLVENFNQRGWKISIQDSKLIWYLRDHNNSIKIVTPDYI
AFNGWNLITITNNRSKGSIVYVNGSKIEEKDISSIWNTEVDDPIIFRLKNNRDTQAFTLL
DQFSIYRKELNQNEVVKLYNYYFNSNYIRDIWGNPLQYNKKYYLQTQDKPGKGLIREYWS
SFGYDYVILSDSKTITFPNNIRYGALYNGSKVLIKNSKKLDGLVRNKDFIQLEIDGYNMG
ISADRFNEDTNYIGTTYGTTHDLTTDFEIIQRQEKYRNYCQLKTPYNIFHKSGLMSTETS
KPTFHDYRDWVYSSAWYFQNYENLNLRKHTKTNWYFIPKDEGWDED
【0590】
配列番号14 - TeNTのポリペプチド配列
MPITINNFRYSDPVNNDTIIMMEPPYCKGLDIYYKAFKITDRIWIVPERYEFGTKPEDFNPPSSLIEGASEYYDPNYLRTDSDKDRFLQTMVKLFNRIKNNVAGEALLDKIINAIPYLGNSYSLLDKFDTNSNSVSFNLLEQDPSGATTKSAMLTNLIIFGPGPVLNKNEVRGIVLRVDNKNYFPCRDGFGSIMQMAFCPEYVPTFDNVIENITSLTIGKSKYFQDPALLLMHELIHVLHGLYGMQVSSHEIIPSKQEIYMQHTYPISAEELFTFGGQDANLISIDIKNDLYEKTLNDYKAIANKLSQVTSCNDPNIDIDSYKQIYQQKYQFDKDSNGQYIVNEDKFQILYNSIMYGFTEIELGKKFNIKTRLSYFSMNHDPVKIPNLLDDTIYNDTEGFNIESKDLKSEYKGQNMRVNTNAFRNVDGSGLVSKLIGLCKKIIPPTNIRENLYNRTASLTDLGGELCIKIKNEDLTFIAEKNSFSEEPFQDEIVSYNTKNKPLNFNYSLDKIIVDYNLQSKITLPNDRTTPVTKGIPYAPEYKSNAASTIEIHNIDDNTIYQYLYAQKSPTTLQRITMTNSVDDALINSTKIYSYFPSVISKVNQGAQGILFLQWVRDIIDDFTNESSQKTTIDKISDVSTIVPYIGPALNIVKQGYEGNFIGALETTGVVLLLEYIPEITLPVIAALSIAESSTQKEKIIKTIDNFLEKRYEKWIEVYKLVKAKWLGTVNTQFQKRSYQMYRSLEYQVDAIKKIIDYEYKIYSGPDKEQIADEINNLKNKLEEKANKAMININIFMRESSRSFLVNQMINEAKKQLLEFDTQSKNILMQYIKANSKFIGITELKKLESKINKVFSTPIPFSYSKNLDCWVDNEEDIDVILKKSTILNLDINNDIISDISGFNSSVITYPDAQLVPGINGKAIHLVNNESSEVIVHKAMDIEYNDMFNNFTVSFWLRVPKVSASHLEQYGTNEYSIISSMKKHSLSIGSGWSVSLKGNNLIWTLKDSAGEVRQITFRDLPDKFNAYLANKWVFITITNDRLSSANLYINGVLMGSAEITGLGAIREDNNITLKLDRCNNNNQYVSIDKFRIFCKALNPKEIEKLYTSYLSITFLRDFWGNPLRYDTEYYLIPVASSSKDVQLKNITDYMYLTNAPSYTNGKLNIYYRRLYNGLKFIIKRYTPNNEIDSFVKSGDFIKLYVSYNNNEHIVGYPKDGNAFNNLDRILRVGYNAPGIPLYKKMEAVKLRDLKTYSVQLKLYDDKNASLGLVGTHNGQIGNDPNRDILIASNWYFNHLKDKILGCDWYFVPTDEGWTND
【0591】
配列番号15 - C末端L鎖フラグメント
TKSLDKGYNK
【0592】
配列番号16 - C末端L鎖フラグメント2
SLDKGYNK
【0593】
配列番号17 - 二鎖L鎖1
PFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSK
【0594】
配列番号18 - 二鎖L鎖2
PFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTK
【0595】
配列番号19 - 二鎖H鎖
ALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEMKLFLAPIYDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【実施例】
【0596】
実施例1
【0597】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABはBoNT/Aとは異なるタイプのニューロンを標的とする
【0598】
種々のクロストリジウム神経毒によって中毒を起こすニューロンのサブタイプを特定するための研究を計画した。成体ラット脊髄後根神経節(aDRG)インビトロモデルを使用した。このモデルのキャラクタリゼーション中に、異なるニューロンのサブタイプが見つかった。これらのサブタイプは、Usoskin, D.、A.Furlan、S.Islam、H.Abdo、P.Lonnerberg、D.Lou、J.Hjerling-Leffler、J.Haeggstrom、O.Kharchenko、P.V.Kharchenko、S.Linnarsson、及びP.Ernfors(2015)によって説明された特性を反映していた。「Unbiased classification of sensory neuron types by large-scale single-cell RNA sequencing」。Nat Neurosci 18(1): 145-153。
【0599】
材料及び方法
【0600】
aDRG培養
【0601】
aDRGニューロンを、カバーガラス上で作製した。簡潔に説明すると、成体ラットDRG組織を、2乃至3か月齢のCD(スプラーグドーリー)ラットから解剖した。解剖した組織をパパイン、続いてディスパーゼ/コラゲナーゼを使用して消化し、ポリ-D-リジン及びラミニンでコーティングしたカバーガラス上に播種した。培養物中のグリア細胞タイプの増殖を、有糸分裂阻害剤を使用することにより阻害した。ニューロンの培養物は、インビトロでの培養日数7日目以降、すぐにアッセイに使用できる状態であると判断された。
【0602】
免疫蛍光法
【0603】
aDRGニューロンを、1nMの天然組換えBoNT/A(「rBoNT/A」-配列番号:6[二鎖形態に変換])又はBoNT/ABキメラ(「mrBoNT/AB」-配列番号:1[二鎖形態に変換])により、インビトロでの培養日数7乃至8日目に、24時間処置した。対照サンプルは、無処置のままにした。処置後、ニューロンを培養培地中で2回洗浄し、4%PFAで30分間固定した。次に、ニューロンを0.1%TritonX-100の1XPBS溶液を使用して15分間透過処理し、その後10%ロバ血清で30分間ブロッキングした。一次抗体及び二次抗体染色を、以下の表に示す通りに実施した。
【表1】
【0604】
次に、核染色用のDAPI 1ug/mlを含有するProLong Diamond封入剤を使用し、カバーガラスをスライドガラス上に載置した。
【0605】
イメージング及び共局在分析
【0606】
LSM800Zeiss共焦点顕微鏡を40倍の倍率で使用し、画像を撮影した。特定のサンプル及び抗体の組合せ毎に最低3枚の画像を撮影し、3回の生物学的複製を実施した。SNAP25の切断アイソフォームを検出する2つの異なる抗体を使用して、中毒ニューロンを特定した。使用されたaDRGサブタイプマーカーは、aDRG培養物に対して十分に特性が明らかにされている。これらは、NFカテゴリに対してはNF200、PEPニューロンに対してはCGRP、NPニューロンに対してはP2X3、NPニューロン及びPEPニューロンの両方に対してはTrkAである。共局在化は、対象の2色(通常、切断SNAP25に対しては緑色(488)、特定のニューロンマーカーに対しては赤色(594))を合わせることによって実施された。
【0607】
結果
【0608】
図1乃至3に示されている画像は全て、切断SNAP25シグナル及び特定のマーカーの両方の単色画像と、青色の核染色を付加した2つのチャネルをカラーで合わせたものの1つの代表的な例(各生物学的実験で少なくとも3枚の画像が撮影された)を示している。矢印がある場合は、特定のマーカー/切断SNAP25が共局在している興味深い領域を示す。
図1の無処置対照は、切断SNAP25を検出するために使用した抗体によって生じた少量のバックグラウンドを示した。処置サンプルを分析する際には、このバックグラウンド染色が考慮された。
【0609】
天然組換えBoNT/AはAβ繊維を標的とする
【0610】
図2は、aDRGニューロンをrBoNT/A(配列番号6[二鎖形態に変換])と接触させた際に得られた結果を示す。特に、Aβ線維(NF200)と切断SNAP25の間には、明らかな共局在が認められた。分析した全ての画像において、切断SNAP25及びNF200の発現が高かった。Aδ線維及びC線維(NP、PEP)については、共局在は見られなかった。特定のマーカー(CGRP、P2X3、TrkA)を発現するニューロンは、切断SNAP25を高レベルで発現しなかった。画像では、切断SNAP25が発現している例が見られるが、シグナルの量は
図1に示されているバックグラウンドシグナルよりも高くなく、高レベルの切断SNAP25を発現しているニューロンにより与えられるシグナルよりも明らかに低い。結論として、aDRGニューロンにおけるrBoNT/A中毒はAβ線維(NF200)で生じることが分かった。
【0611】
キメラBoNT/ABはAδ線維及びC線維を標的とする
【0612】
図3は、aDRGニューロンをmrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])と接触させた際に得られた結果を示す。特に、Aβ線維(NF200)と切断SNAP25の間には共局在が認められなかった。矢印で強調表示されたニューロンの部分は、切断SNAP25が存在しない状態でのNF200の高発現を示している。Aδ線維及びC線維(NP、PEP)については、共局在が見られた。特に、CGRP及びTrkAを発現するニューロンでは強い共局在が見られた。結論として、aDRGニューロンにおけるmrBoNT/AB中毒はAδ線維(PEP)及びC線維(NP)で生じる。これはrBoNT/A(
図2)で見られたものとは、逆の結果である。
【0613】
結論
【0614】
aDRG一次ニューロンの免疫蛍光研究により、rBoNT/A及びmrBoNT/ABによって中毒となったニューロンのサブタイプを特定することができた。この研究により、rBoNT/Aと比較した場合、mrBoNT/ABによって中毒となったニューロンのサブタイプに明確な違いがあることが示された。rBoNT/AはAβ線維のSNAP25を切断するが、mrBoNT/ABはAδ線維及びC線維のSNAP25を切断する。これら最後の2つの亜集団は、侵害受容における役割を考えると、特に重要な疼痛ターゲットとなる。以下の表に、これらの違いをまとめる。
【表2】
【0615】
結論として、データは、BoNT/ABキメラが侵害受容に関与する細胞を標的とし、そのためrBoNT/Aと比較して鎮痛効果が向上する等、鎮痛効果を発揮しやすいことを示している。
【0616】
実施例2
【0617】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABは、Aδ線維及びC線維からのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出の阻害に効果的である
【0618】
実施例1で提示された知見に続いて、BoNT/ABキメラのAδ線維及びC線維へのターゲティングがカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出を阻害できるかどうかを測定することにより、BoNT/ABキメラの鎮痛薬としての役割を検証する実験を行った。CGRPは、脊髄後根及び三叉神経節から生じるC感覚線維及びAδ感覚線維のサブセットに主に見出される神経ペプチドである。最近の研究では、CGRPを末梢感作の発生、並びに疼痛、神経炎症及び神経障害性疼痛の増強と関係づけている。これを裏付けるように、CGRP機能の遮断は片頭痛を緩和することが示されている。
【0619】
材料及び方法
【0620】
aDRG培養
【0621】
aDRGニューロンを、実施例1で示した手順を僅かに変更した形に従って、96ウェルの半分の容量のプレートに播種した。
【0622】
CGRP放出アッセイ
【0623】
aDRGニューロンを、インビトロでの培養日数7乃至14日目に、10nM乃至1pMのクロストリジウム神経毒のLog10希釈物で24時間処置した。使用した毒素:rBoNT/A(配列番号6[二鎖形態に変換])及びmrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])。対照サンプルは、無処置のままにした。処置後、ニューロンをHBS(110mM塩化ナトリウム、3mM塩化カリウム、2mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、10mM HEPES、20mMグルコース、pH7.2)で2回洗浄し、37°Cのインキュベーターに戻して1時間置いた。次に、細胞のプレートを予熱したヒートブロックに移し、もう一度HBSで洗浄した。HBSを除去し、50μL HBS+0.03%BSAに置き換えた。5分後、HBS/BSA灌流液を除去し、別のプレートに保存した。灌流液を除去した直後に、刺激培養液(100nMカプサイシンHBS+0.03%BSA又は65nM塩化カリウム(KCl)HBS+0.03%BSA)50μLを、適切なウェルに加えた。5分後、灌流液を採取した。採取後、灌流液を直ちにCGRP EIAアッセイに使用するか、又は-20°Cで保存した。
【0624】
CGRP酵素免疫測定(EIA)アッセイ
【0625】
CGRP免疫測定試薬を、市販のキット(Bertin Pharma社、フランス、#A05482)の一部として購入し、製造者の指示に従って調製した。プレートを洗浄バッファーで5回洗浄した後、40μLの標準物質及びサンプルを加えた。次に、100μLのCGRPトレーサー(ストックバイアル(#A10482)を10mlのEIAバッファー(ストックEIAバッファー#A07000のバイアルを50mlの蒸留水で再構成)で希釈することにより調製)を各ウェルに加えた。次に、プレートを粘着ストリップで覆い、4°Cで16乃至20時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートの内容物を廃棄し、ウェルを洗浄バッファー(1ml洗浄バッファーストック(#A17000)を400mlの蒸留水で希釈し、200μl Tween-20(#A12000)を添加することにより調製)で3回洗浄した後、洗浄バッファー中で2分間振盪し、その後更に3回洗浄した。洗浄バッファーを除去した後、ウェル毎に200μLのエルマン試薬(ストックエルマン試薬バイアル#A09000を1mlのストック洗浄バッファー#A17000及び49mlの蒸留水で希釈することにより調製)を加えた。次にプレートをホイルで覆い、暗所で4時間、室温でインキュベートした。最後に、Clariostarプレートリーダーを使用して、プレートを410nmで読み取った。標準物質をPrism V8(グラフパッド)のX-Yグラフにプロットし、サンプル値を標準曲線から補間した。
【0626】
結果
【0627】
図4は、mrBoNT/ABがrBoNT/AよりもCGRP放出を阻害する効果が遥かに高かったことを示している。rBoNT/A及びmrBoNT/ABの平均pIC
50値は、それぞれ6.87±0.44(rBoNT/Aは7.34μM)と9.99±0.16(mrBoNT/ABは9.73nM)(平均±標準誤差)であった。
【0628】
図4に示された結果を確認する中で、最大阻害の比較から、1nM mrBoNT/ABによって誘発されるCGRP放出阻害を、1nM rBoNT/Aの場合と比較した際に、有意な差があることが示された。具体的には、mrBoNT/ABはrBoNT/Aよりも統計的に有意に、CGRP放出を阻害する能力に優れていた(
図5を参照)。これは、mrBoNT/ABがAδ型及びC型線維を特異的に標的としたという驚くべき発見と一致している(実施例1を参照)。
【0629】
結論
【0630】
ラットaDRG CGRP放出モデルの利用により、インビトロ疼痛モデルにおける異なるクロストリジウム神経毒の機能比較が可能になった。毒素の線維サブタイプ結合特異性と一致して、mrBoNT/ABは、rBoNT/AよりもaDRGからのCGRP放出を阻害する効果が明らかに強力であった。従って、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を有するキメラクロストリジウム神経毒は、改善された鎮痛薬である。
【0631】
実施例3
【0632】
慢性片頭痛疼痛を有する対象の治療
【0633】
43歳のジョーは、かかりつけ医により慢性片頭痛と診断され、配列番号1(二鎖形態に変換)を含む本発明のキメラクロストリジウム神経毒での治療を受けている。キメラクロストリジウム神経毒は、5,000pgの単位用量で投与され、単回単位用量が鼻根筋、両方の皺眉筋、両方の咬筋、両方の側頭筋、両方の後頭筋、及び両方の僧帽筋のそれぞれに筋肉内注射を介して投与される(すなわち、合計で単位用量の11倍が投与される)。ジョーの疼痛は大幅に軽減し、9か月後に次の治療を受ける時に、著しい疼痛はない。
【0634】
実施例4
【0635】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB(配列番号1)の前臨床試験
【0636】
BoNT/ABキメラ配列番号1(二鎖形態に変換)を、マウスLD50アッセイで試験したところ、得られた結果は1.202ng/kgであった。従って、配列番号1(二鎖形態に変換)の1単位は、このアッセイでは24.04pgに相当する。
【0637】
実施例5
【0638】
片頭痛治療のためのキメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB(配列番号1)の単位用量の計算
【0639】
前臨床薬理学データを考慮して、ヒトにおけるキメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABの投与に適切な単位用量範囲(UD)を計算した。
【0640】
配列番号1(二鎖形態に変換)のDAS ED50は13pg/kgと計算された。ED50は最小の薬理学的活性用量と考えられており、これは同じ動物種における4ng/kgの無毒性量(NOAEL)より約300倍低い。ラットにおける配列番号1(二鎖形態に変換)の13pg/kgのED50は、体重60kgのヒトの場合、0.8ngの用量に相当する。
【0641】
従って、単位用量の下限値として1,000pgを選択した。単位用量の上限として5,000pgを選択したが、これは、非臨床安全種(ラット及びサル)の両方から得られたNOAEL4ng/kgを体重60kgのヒト用量に換算したものよりも低い値である。
【0642】
安全性プロファイルの改善を考慮して、片頭痛治療のための最大合計用量は175,000pgに設定された。これは、非臨床安全性種(ラット及びサル)の両方から得られたNOAEL4ng/kgを体重60kgのヒト用量に換算して得られたものである。
【0643】
有利なことに、キメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])は、最大用量に達する前に、片頭痛治療においてより多くの筋肉に注射することができる。これは、片頭痛治療の改善につながる重要且つ有利な発見であり、臨床医に、より幅広い治療選択肢を提供する。
【0644】
実施例6
【0645】
ヒトにおけるキメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB(配列番号1)の安全性及び有効性
【0646】
配列番号1(二鎖形態に変換)を、単回単位用量でヒト対象に投与した。5つのコホートに、異なる(増加する)量のmrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])を投与した。コホート1にはmrBoNT/ABの単位用量1,000pgを2回投与し(すなわち、最大2,000pg)、コホート5にはmrBoNT/ABの単位用量16,000pgを2回投与した(すなわち、最大32,000pg)。
【0647】
結果は、試験したmrBoNT/ABの全ての単位用量(すなわち、最大16,000pg単位用量)が筋麻痺に有効であって、安全に許容され、筋肉毎の投与量が例外的に高かったにも関わらず、有害作用が見られなかったことを示した。これは、mrBoNT/ABが注射部位から拡散しないことを示し、mrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])の例外的な安全性プロファイルを強調している。
【0648】
実施例7
【0649】
ヒトにおけるキメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB(配列番号1)の安全性及び有効性
【0650】
配列番号1(二鎖形態に変換)を、単回単位用量でヒト対象に投与した。7つのコホートに、異なる(増加する)量のmrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])を、顔面筋に投与した。コホート1にはmrBoNT/ABの単位用量20pgを5回投与し(すなわち、最大100pg)、コホート7にはmrBoNT/ABの単位用量1,500pgを5回投与した(すなわち、最大7,500pg)。
【0651】
結果は、試験したmrBoNT/ABの全ての単位用量(すなわち、最大1,500pg単位用量)が筋麻痺に有効であって、安全に許容され、筋肉毎の投与量が高かったにも関わらず、有害作用が認められなかったことを示した。これは、mrBoNT/ABが注射部位から拡散しないことを示し、mrBoNT/AB(配列番号1[二鎖形態に変換])の例外的な安全性プロファイルを強調している。
【0652】
実施例8
【0653】
筋肉内注射を介した慢性片頭痛疼痛を有する対象の治療
【0654】
25歳のデレクは、かかりつけ医により慢性片頭痛と診断され、配列番号1(二鎖形態に変換)を含む本発明のキメラクロストリジウム神経毒での治療を受けている。配列番号1(二鎖形態に変換)を含むキメラクロストリジウム神経毒が、2,500pgの単位用量で、筋肉内注射を介して以下のように投与される:
・デレクの顔面左側の前頭筋に2単位用量、及びデレクの顔面右側の前頭筋に2単位用量;
・鼻根筋に1単位用量;
・デレクの顔面左側の皺筋に1単位用量、及びデレクの顔面右側の皺筋に1単位用量;
・デレクの頭部左側の側頭筋に4単位用量、及びデレクの頭部右側の側頭筋に4単位用量;
・デレクの首/頭部左側の後頭筋に3単位用量、及びデレクの首/頭部右側の後頭筋に3単位用量;
・デレクの首の左側の僧帽筋に3単位用量、及びデレクの首の右側の僧帽筋に3単位用量;及び
・デレクの首の左側の頸部傍脊柱筋群に4単位用量、及びデレクの首の右側の頸部傍脊柱筋群に4単位用量。
【0655】
合計で35単位用量(すなわち、87,500pg)の、配列番号1(二鎖形態に変換)を含むキメラクロストリジウム神経毒が投与される。デレクの疼痛は大幅に軽減し、9か月後に次の治療を受ける時に、著しい疼痛はない。治療は安全に許容され、有害事象は認められない。
【0656】
実施例9
【0657】
皮内注射を介した反復性片頭痛疼痛を有する対象の治療
【0658】
51歳のテッサは、かかりつけ医により反復性片頭痛と診断され、配列番号1(二鎖形態に変換)を含む本発明のキメラクロストリジウム神経毒での治療を受けている。配列番号1(二鎖形態に変換)を含むキメラクロストリジウム神経毒が、5,000pgの単位用量で、皮内注射を介して以下のように投与される:
・テッサの顔の第1側面の眼窩上神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の眼窩上神経領域に1単位用量;
・テッサの顔の第1側面の滑車上神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の滑車上神経領域に1単位用量;
・テッサの顔の第1側面の滑車下神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の滑車下神経領域に1単位用量;
・テッサの顔の第1側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の頬骨側頭神経領域に1単位用量;
・テッサの顔の第1側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の頬骨顔面神経領域に1単位用量;
・テッサの顔の第1側面の耳介側頭神経領域に2単位用量、及び/若しくはテッサの顔の第2側面の耳介側頭神経領域に2単位用量;
・テッサの首の第1側面の大後頭神経領域に2単位用量、及び/若しくはテッサの首の第2側面の大後頭神経領域に2単位用量;並びに/又は
・テッサの首の第1側面の小後頭神経領域に1単位用量、及び/若しくはテッサの首の第2側面の小後頭神経領域に1単位用量。
【0659】
合計で20単位用量(すなわち、100,000pg)の、配列番号1(二鎖形態に変換)を含むキメラクロストリジウム神経毒が投与される。テッサの疼痛は大幅に軽減し、9か月後に次の治療を受ける時に、著しい疼痛はない。治療は安全に許容され、有害事象は認められない。
【0660】
実施例10
【0661】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABは、BoNT/Aよりも効果的に、三叉神経節ニューロンからのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出を阻害する
【0662】
mrBoNT/ABの効果及び効力を、三叉神経節から調製したラット一次ニューロンで評価した。三叉神経の3つの感覚枝が三叉神経節から発出する構造となっている。三叉神経節は、片頭痛の病態生理学に機能的に関与するニューロン(TGN)が豊富に存在する、重要な領域である。簡潔に説明すると一次ラットTGN培養物を5乃至8週齢のラットから作製した(例えば、Sidders et al (2018), J Mol Biol., 14;430(18 Pt A):3005-3015を参照)。細胞を、1pM乃至100nMの毒素濃度(rBoNT/A[二鎖形態に変換した配列番号6]又はmrBoNT/AB[二鎖形態に変換した配列番号1]の何れか)で24時間インキュベートした後、培養物を65mMのKClで10分間刺激して、CGRPの放出を誘発した。CGRPは、片頭痛の惹起及び伝播の原因と考えられている主要な神経伝達物質である。ELISAによるCGRP放出の測定(実施例2で説明したように測定、n=3、4連)の後、TGNを溶解して、SNAP25のウエスタンブロット解析を行った。
【0663】
図7に示すように、mrBoNT/AB(
図7B)は、rBoNT/AよりもCGRP放出を減少させること(
図7A)、またSNAP25を切断すること(
図8)においても強力であった。
【0664】
これらのデータは、片頭痛の病態生理学に関連するニューロンからの疼痛メディエーター(例:CGRP)のターゲティング及び放出阻害における、(rBoNT/Aと比較した場合の)mrBoNT/ABの改善された有効性の更なる証拠である。従って、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(HNドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(HCドメイン)を有するキメラクロストリジウム神経毒の投与は、一般的に疼痛、特に片頭痛に対する治療の改善をもたらすことが想定される。
【0665】
実施例11
【0666】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABは、BoNT/Aと比較してヒト感覚ニューロンにおいて、より高い効力を示す
【0667】
疼痛関連ヒト設定、すなわちヒト人工多能性幹細胞(hiPSCs)由来の感覚ニューロンにおいて、mrBoNT/ABをrBoNT/Aと比較した(細胞培養に関連する方法論は、製造者の指示:https://www.anatomic.tech/に従った。例えばWalsh et al (2020), Stem Cells, 38, 11, 1400-1408も参照)。簡潔に説明すると、hiPSCs由来の感覚ニューロンを14日間培養し、その後3fM乃至1nMのrBoNT/A(二鎖形態に変換した配列番号6)又はmrBoNT/AB(二鎖形態に変換した配列番号1)と共に24時間インキュベートした後、ウエスタンブロットによるSNAP25切断評価のために溶解した(n=3、3連)。
図9は、このようなヒト細胞におけるSNAP25の切断において、rBoNT/Aと比較してmrBoNT/ABの方が、効力がより高いことを示している。繰り返しになるが、これは、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)軽鎖及び転位置ドメイン(H
Nドメイン)、並びにBoNT/B受容体結合ドメイン(H
Cドメイン)を有するキメラクロストリジウム神経毒の投与が、一般的にはヒトの疼痛、特にヒトの片頭痛に対して改善された治療をもたらすことを更に裏付けている。
【0668】
実施例12
【0669】
キメラクロストリジウム神経毒BoNT/ABは、インビボで疼痛伝達に関連するニューロンのSNAP25を切断する
【0670】
材料及び方法
【0671】
この研究のために、未処置の(naive)雌スプラーグドーリーラットを使用した(処置開始時180乃至220g、Janvier Labs社、フランス)。動物を、12時間の逆明暗サイクル(18:00乃至06:00に点灯)で飼育し、恒温(22±2°C)及び恒湿(55±5%)で、餌と水が自由に摂取できる豊かな環境を維持した。動物を、実験前の少なくとも7日間、順応させた。この研究は、ARRIVEガイドライン、欧州議会及び理事会指令2010/63/EU、及びフランス国家委員会政令第87/848号に完全に準拠して実施された。
【0672】
動物には、筋肉内(IM)又は皮内(ID)注射を介して、溶媒(生理食塩水、2匹/群)若しくはmrBoNT/AB(二鎖形態に変換した配列番号1)(300pg/kg、6匹/群)を投与するか、又はIM注射を使用してボトックス(6匹/群)を投与した(三叉神経節分析用)。IM投与は、合計用量を頭部並びに首の4箇所の筋肉(右側及び左側の側頭筋、右側及び左側の後頭筋、各注射量10μL)に分けて実施した。ID投与は、合計用量を前述の4箇所の筋肉の上にある皮膚の真皮に分割して実施した(各注入量10μL)。治療投与の10日後に動物を安楽死させ、三叉神経節、三叉神経脊髄路核を含む脳幹、及び頸髄の組織を採取した。その後、組織を10%等張緩衝ホルマリン溶液(VWR社、フランス)で48時間固定し、パラフィンブロックに包埋し、組織学的スライドを調製した。
【0673】
組織における両毒素の生物学的効果を評価するために、SNAP25の切断型(c-SNAP25)の免疫組織化学染色を実施した。熱誘導エピトープ回復ステップの後、内在性ペルオキシダーゼをTBSバッファーの3%過酸化水素溶液で10分間、ブロックした。切片を、BoNT/AによるSNAP25切断型のみに特異的な非商業的一次ウサギポリクローナル抗体(EF14007、Ipsen Innovation、フランス)と共にインキュベートした。次に、切片をビオチン化二次抗体(抗ウサギIgG、Vector Laboratories社、米国)と共に30分間インキュベートし、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Laboratories社、米国)と結合した増幅システム(アビジン-ビオチン)で30分間インキュベートした。最後に、切片を0.02%ジアミノベンジジン溶液(DAKO社、米国)で5分間インキュベートし、ヘマトキシリン(DAKO社、米国)を使用して対比染色を行い、スライドを光学顕微鏡で可視化した。三叉神経節サンプルとして、c-SNAP25の量を、以下の5段階評価システムを用いて定量化した:0(染色無し)、1(最小の染色強度及び密度)、2(中程度の染色強度及び密度)、3(高い染色強度及び密度)、及び4(非常に高い染色強度及び密度)。脊髄では、c-SNAP25陽性神経終末の強度及び密度を、以下のように段階分けした:0(染色無し)、1(最小)、2(軽度)、3(中程度)、最も強く染色された5つの脊髄切片において4(顕著)。その後、各動物の累積スコア(0乃至20)を計算した。脳幹サンプルについては、c-SNAP25が染色された神経線維の割合を測定する専用の画像解析法を使用して、SNAP25切断染色を定量化した。
【0674】
結果
【0675】
予想通り、何れの溶媒処置動物の組織からも、明確なc-SNAP25染色は観察されなかった。
図10は、IM又はID経路を介したmrBoNT/ABの投与の両方が、脳幹の三叉神経脊髄知覚核でSNAP25切断を引き起こしたが、ID経路を介して投与した場合、脳幹の三叉神経運動核での切断は、より少なかったことを示している。運動核におけるSNAP25切断の量がより少ないと、治療に伴う運動作用等のオフターゲット効果が減少する場合がある。
【0676】
図11は、IM又はID経路を介したmrBoNT/ABの投与により、頸髄、具体的には後角及び前角でSNAP25切断が起こったことを示している。
【0677】
図12は、IM又はID経路を介したmrBoNT/ABの投与により、三叉神経節の軸索でSNAP25切断が起こったことを示している。驚くべきことに、ボトックスは三叉神経節の軸索にあるSNAP25を切断しなかったため、片頭痛の治療等、疼痛の治療におけるmrBoNT/ABの効果向上の役割が裏付けられた。
【0678】
実施例13
【0679】
SNAP25及びキメラクロストリジウム神経毒BoNT/AB受容体は、疼痛伝達に関連する種々のヒト組織に存在する
【0680】
材料及び方法
【0681】
ヒト組織をProteoGenex社(米国)、Cureline社(米国)、及びClinisciences社(フランス)から購入し、SNAP25、SytII、及びSytIの存在について評価した。以下の組織を評価し、組織毎にn=3乃至5人のドナーを使用した:
・脳橋及び延髄(脳幹の一部を含み、三叉神経中枢の運動核及び知覚核を含む);及び
・頸髄(後角を含む)。
【0682】
タンパク質発現の定量化には、実施例12に記載したものと同じ免疫組織化学技術を使用した。組織を、SNAP25(抗体111 008を使用)、SytII(抗体105 123を使用)、及びSytI(抗体ab126253を使用)に対する抗体で染色した。対照として、組織を汎神経マーカーであるβ-3-チューブリンに対する抗体(抗体G7121を使用)でも染色した。
【0683】
染色は光学顕微鏡下で定量化し、染色の強度は0乃至4のスコアを使用して段階分けした:スコア0=染色無し;1=非常に弱い/非常に稀/低頻度の染色;2=中程度の染色;3=強い/高頻度の染色;及び4=非常に強い/著しい/極めて高頻度の染色。
【0684】
結果
【0685】
結果を表3に示す。β-3-チューブリン対照染色は、SNAP25染色と同様に、脳橋、延髄、及び頸髄で最大の(4)と類別された。一方、SytII及びSytIは、脳橋、延髄、後角の第1層、第3層、第4層で強く発現していることが分かった。SytIは後角の第2層で強く発現していたが、SytIIはこの構造では中程度の染色を示した。
【0686】
これらの結果を総合すると、SNAP25、SytII、及びSytIが、疼痛伝達に関連する幾つかのヒト組織で高度に発現していることが分かる。従って、mrBoNT/ABが結合し、内部移行し、これらの組織に存在するニューロン内のSNAP25を切断する適切なSytII及びSytI受容体が存在しており、例えば、投与の遠位部位からmrBoNT/ABがニューロン(例えば、逆行性)輸送された後、疼痛伝達が抑制される。
【表3】
【0687】
実施例14
【0688】
片頭痛患者の治療
【0689】
ティモシー(33歳)はかかりつけ医から、片頭痛と診断される。彼は以下のように、配列番号1(二鎖形態に変換)の単位用量(UD)2,500pgの投与による治療を受けている。
【表B】
【0690】
彼には、配列番号1(二鎖形態に変換)の合計用量70,000pgが投与される。治療は成功し、症状は緩和する。9か月を超える治療は不要である。
【0691】
実施例15
【0692】
片頭痛患者の治療
【0693】
ジョセフ(31歳)は、かかりつけ医から片頭痛と診断される。彼は以下のように、配列番号1(二鎖形態に変換)の単位用量(UD)4,000pgによる治療を受けている。
【表C】
【0694】
彼は、配列番号1(二鎖形態に変換)の合計用量112,000pgの投与を受ける。治療は成功し、症状は緩和する。9か月を超える治療は不要である。
【0695】
上記明細書に記載されている全ての出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱しない、本発明の記載された方法及びシステムの様々な修正及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の専門家にとって明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0696】
[
図4]
%CGRP release: CGRP放出率
Basal: 基礎
[
図5]
%CGRP release inhibition: CGRP放出阻害率
[
図6]
division: 区画
Ciliary ganglion: 毛様体神経節
Ophthalmic nerve: 眼神経
Maxillary nerve: 上顎神経
Trigeminal nerve ganglion: 三叉神経神経節
Mandibular nerve: 下顎神経
Otic ganglion: 耳神経節
Pterygopalatine ganglion: 翼口蓋神経節
Submandibular ganglion: 顎下神経節
Plus 3 injection sites at back of head targeting greater occipital (2 sites) and lesser occipital (1 site) nerves: +大後頭神経(2箇所)及び小後頭神経(1箇所)を標的とする後頭部の3箇所の注射部位
TOTAL = 10 per side, so 20 sites: 側面毎に10箇所、合計20箇所
Region: 領域
Trigeminal, ophthalmic: 三叉神経眼領域
Trigeminal, maxillary: 三叉神経上顎領域
Trigeminal, mandibula: 三叉神経下顎領域
Back of head: 後頭部
Target nerve terminals: 標的神経末端
Supraorbital: 眼窩上神経
Supratrochlear: 滑車上神経
Intratrochlear: 滑車下神経
Zygomaticotemporal: 頬骨側頭神経
Zygomaticofacial: 頬骨顔面神経
Auriculotemporal: 耳介側頭神経
Greater occipital: 大後頭神経
Lesser occipital: 小後頭神経
TOTAL: 合計
No. injections per side/total: 側面毎の注射回数/合計
[
図7]
CGRP release: CGRP放出
Estimated IC50: 予測されるIC50
Conc.: 濃度
[
図9]
%SNAP-25 cleavage: SNAP-25切断率
[
図10]
Brainstem: 脳幹
Spinal trigeminal Sensory nuclei: 三叉神経脊髄知覚核
Trigeminal Motor nuclei: 三叉神経運動核
Proportion of area stained for c-SNAP25(%): c-SNAP25が染色された領域の割合(%)
[
図11]
Cervical Spinal Cord: 頸髄
Dorsal Horn (Sensory): 後角(感覚)
Ventral Horn (Motor): 前角(運動)
c-SNAP25 IHC score: c-SNAP25 IHCスコア
[
図12]
Trigeminal Ganglia: 三叉神経節
Axons: 軸索
Botox: ボトックス
【配列表】
【国際調査報告】