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  • 特表-カーボネートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/08 20060101AFI20241024BHJP
   C07C 68/06 20200101ALI20241024BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07C68/08
C07C68/06
C07C69/96 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529803
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2022018579
(87)【国際公開番号】W WO2023101296
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0167926
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ミ ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ワン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウ ネ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006BD81
4H006BD82
4H006BD84
4H006KA57
(57)【要約】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。本発明のカーボネートの製造方法は、高いDMC転化率で、高純度のEMCとDECを効果的に製造することができる。本発明の方法は、熱交換器の負荷を減らしてエネルギーコストおよびメンテナンスコストを節減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を固定層反応器システムに投入し、前記原料のエステル交換反応を誘導して、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む生成物を製造する、第1段階と、
前記生成物および前記原料の未反応分を含む反応器流出物を第1分離システムから分離し、エタノール、メタノール、およびジメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔頂ストリーム、およびジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔底ストリームを得る、第2段階と、
前記第1分離システムの塔底ストリームを第2分離システムから分離し、エチルメチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔頂ストリーム、およびジエチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔底ストリームを得る。第3段階と、
前記第2分離システムの塔底ストリームを第3分離システムから分離し、ジエチルカーボネートを主成分として含む第3分離システムの塔頂ストリームを得る、第4段階と、を含み、
前記第2段階ないし第4段階のいずれかの段階は、前記第1分離システムないし前記第3分離システムのいずれかのシステムの還流比を0.5~5の範囲内に設定するものである、
カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記固定層反応器システムは、塩基性イオン交換樹脂触媒を充填した固定層反応器を含み、
前記塩基性イオン交換樹脂は、多孔性であり、
前記塩基性イオン交換樹脂の交換容量は、1(eq/L-wet resin)~1.5(eq/L-wet resin)の範囲内である、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記固定層反応器システムは、直列に連結された複数の固定層反応器を含むものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記第1分離システムないし前記第3分離システムは、トレイカラムまたはパッキングカラムである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記第2段階は、前記第1分離システムとして理論段数が15段~80段の範囲内である分離システムを適用し、前記第1分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定し、前記第1分離システムの再沸器の温度を90℃~100℃の範囲内に設定するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記第3段階は、前記第2分離システムとして理論が15段~80段の範囲内である分離システムを適用し、前記第2分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定し、前記第2分離システムの再沸器の温度を110℃~120℃の範囲内に設定するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記第4段階は、前記第3分離システムとして理論が15段~80段の範囲内である分離システムを適用し、前記第3分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定し、前記第3分離システムの再沸器の温度を130℃~140℃の範囲内に設定するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。具体的には、本発明は、カーボネートの製造生成反応における生成物にて目的生成物を高純度に精製することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ電解液の有機溶媒としては、主にエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)が用いられる。EMCとDMCDECは、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)のエステル交換反応により製造される。該反応は、可逆反応でもある。また、該反応を触媒の存在下で行うことができる。以下の反応式1は、当該反応を示すものである(ここで、MeOHは、メタノールの略語である):
【化1】
【0003】
前記反応に適用する触媒としては、活性に優れた塩基触媒(NaOH、KOHなど)などがある。しかし、塩基触媒は有機溶媒、特にカーボネートに対する溶解度が低いため、DMC、EMC、およびDECに溶解されない。したがって、塩基触媒は、反応蒸留工程或いは精製工程における工程不良の原因であるカラムの目詰まり(column plugging)を引き起こす。すなわち、通常は、前記反応に適用した触媒を除去した後、後工程(例:分離および精製など)を進めて、カーボネートを生産する。前記したような問題は、主に流動層反応器にて発生する。
【0004】
特許文献1は、DMCとアルコール、ナトリウムメトキシド触媒を用いるカーボネートの製造方法を紹介する。特許文献1は、反応蒸留によりEMCとDECを製造する。ここで、特許文献1は、反応蒸留を進める蒸留塔後段に固体(触媒)を分離するストレーナを設けて、触媒を効率的に除去しようとするものである。しかし、反応蒸留塔にてアルコールを蒸留すると、その過程で触媒が析出される。したがって、蒸留塔の内部に析出された触媒が堆積するため、カラムに目詰まりが発生する。また、特許文献1は、生成物であるEMCとDECを回収する過程で反応蒸留に用いる蒸留塔(第1反応蒸留塔)を除いて、2つの追加反応蒸留塔(第2および第3反応蒸留塔)を使用する。ここで、第2反応蒸留塔の塔底にてDECを獲得し、第3蒸留塔の塔底にてEMCを獲得する。蒸留塔の塔底にて生成物を得ると、工程において発生する金属と不純物が一緒に含まれるため、高純度のカーボネートを得ることが困難である。このようなカーボネートをリチウムイオンバッテリに適用すると電池抵抗が上昇するようになる。また、EMC(沸点:107℃)に対してより高い沸点を有するDEC(沸点:125.8℃)を最初に得るためには、反応後の熱交換器により高い熱(伝達)負荷および熱伝達率が必要である。そのため、特許文献1の方式によると、エネルギーコストが増加する。
【0005】
特許文献2では、ゲル(gel)型強塩基性陰イオン交換樹脂触媒をエステル交換触媒として用いて、抽出蒸留によりカーボネートを製造する方法が紹介されている。抽出蒸留では、抽出剤により生成物を分離する分離工程が必要なため、設備およびエネルギーコストが増加する。また、イオン交換樹脂触媒は、通常低い強度を有するため、交換基の損失と微細粉が形成され、その不活性化が速やかに進められる。その結果、反応器内部の圧力も上昇するため、周期的に触媒を交換しなければならない。また、カーボネートに微量の抽出剤が存在し得るため、純度を高めるための追加の工程も必要である。
【0006】
したがって、高いDMCの転化率で、高純度のEMCとDECを効果的に製造することができる方法に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN103804124B
【特許文献2】KR10-2011-0105379A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、高いDMC転換率で、高純度のEMCとDECを効果的に製造しようとするものである。
【0009】
本発明では、熱交換器の負荷を減らし、エネルギーコストおよびメンテナンスコストを節減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を固定層反応器システムに投入し、前記原料のエステル交換反応を誘導して、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む生成物を製造する、第1段階と、前記生成物および前記原料の未反応分を含む反応器流出物を第1分離システムから分離し、エタノール、メタノール、およびジメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔頂ストリーム、およびジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔底ストリームを得る、第2段階と、前記第1分離システムの塔底ストリームを第2分離システムから分離し、エチルメチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔頂ストリーム、およびジエチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔底ストリームを得る、第3段階と、前記第2分離システムの塔底ストリームを第3分離システムから分離し、ジエチルカーボネートを主成分として含む第3分離システムの塔頂ストリームを得る、第4段階と、を含み、前記第2段階ないし第4段階のいずれかの段階は、前記第1分離システムないし前記第3分離システムのいずれかのシステムの還流比を0.5~5の範囲内に設定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、高いDMC転化率で、高純度のEMCとDECを効果的に製造することができる。
【0012】
本発明の方法は、熱交換器の負荷を減らし、エネルギーコストおよびメンテナンスコストを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明におけるカーボネートの製造方法の工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本出願の内容についてより詳しく説明する。
【0015】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。具体的には、本発明は液状カーボネート、またはカーボネート系溶媒の製造方法に関する。本発明では、カーボネートを高純度で得ようとする。また、本発明では、カーボネートを得る過程を高いエネルギー効率と低コストで容易に進めようとする。
【0016】
本発明では、DMCとエタノールのエステル交換反応により得られるカーボネートを製造しようとする。これのために、本発明では大きくDMCとエタノールのエステル交換反応を行い、その反応生成物を精製する過程を進める。
【0017】
これのために、本発明の方法は、少なくとも4段階にて進められる。
【0018】
本発明の方法は、第1段階において、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を固定層反応器システムに投入し、前記原料のエステル交換反応を誘導して、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む生成物を製造する。
【0019】
ジメチルカーボネートとエタノールのエステル交換を介してエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む生成物を製造することができる。
【0020】
触媒を用いる反応器は、大きく2種類に分けられる。第一に、流動層反応器であり、第二は、固定層反応器である。
【0021】
流動層反応器では、言葉通り触媒が反応器内で流動する。このため、生成物に触媒が含まれ得るため、生成物を分離するまたは精製する工程に投入する前に触媒を除去する必要がある。触媒を除去しなければ、分離および/または精製工程の不良の原因であるカラムの目詰まり現象が発生するからである。
【0022】
固定層反応器では、触媒が反応器内に固定された状態で存在する。したがって、反応が完了しても触媒は反応器内にあるため、生成物には触媒が含まれていない。そのため、固定層反応器を用いた場合、別途触媒を除去する工程が不要である。本発明では、固定層反応器を適用する。その結果、本発明の方法は、反応に適用した触媒を除去する工程が必要でもなく、触媒によって発生する前述した問題点が発生するおそれもない。
【0023】
本発明では、前記にて製造した原料を反応器システムに投入する。本明細書では、用語「反応器システム」を、反応器単独ではない、反応器に付随するその他の設備、または他の追加の反応器を総括する概念として使用する。すなわち、反応器システムは、単一反応器とそれに付随されたその他の設備、複数の反応器、または複数の反応器とそれに付随するその他の設備を含む。
【0024】
本発明の方法は、前記原料のジメチルカーボネートおよびエタノールのエステル交換反応を前記反応器システムで進められる。その結果、前記エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびメタノール(MeOH)を含む生成物が製造される。この生成物は、原料の未反応物と共に前記反応器システムにおいて反応器流出物として排出される。前述したように、本発明の方法は固定層反応器を用いるため、反応器流出物には触媒が含まれなくてもよい。
【0025】
本発明の方法は、第2段階において、前記生成物および前記原料の未反応分を含む反応器流出物を分離する。具体的には、本発明の方法は、前記生成物および前記原料の未反応分を含む反応器流出物を第1分離システムから分離し、エタノール、メタノール、およびジメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔頂ストリームおよびジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを主成分として含む第1分離システムの塔底ストリームを得る。より具体的には、本発明の方法は、前記第2段階において、前記反応器流出物を第1分離システムに供給し、前記第1分離システムは、前記反応器流出物の低沸点成分は第1分離システムの塔頂から排出され、前記反応器流出物の高沸点成分は、第1分離システムの塔底から排出される。
【0026】
本明細書では、分離システムの塔頂から排出されるストリームを分離システムの塔頂ストリームと称する。
【0027】
本明細書では、分離システムの塔底から排出されるストリームを分離システムの塔底ストリームと称する。
【0028】
前記反応器流出物に含まれる成分における低沸点成分は、エタノール、メタノール、およびジメチルカーボネートを主成分として含む。また、前記反応器流出物に含まれる成分における高沸点成分は、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを主成分として含む。
【0029】
本明細書において、特定成分を主成分として含むということは、当該成分を全体基準60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、または99重量%以上の割合で含み、100重量%未満、または略100重量%の割合で含むことを意味することができる。
【0030】
また、本明細書における分離システムは、分離工程を進める塔形態の構造物である分離カラムだけでなく、その塔底ストリームの中から前記分離カラムに還流される一部のストリームを再加熱する再沸器、その塔頂ストリームの中から前記分離カラムに還流される一部のストリームを冷却させる冷却器(またはそのストリームを凝縮させる凝縮器)を包括する概念として使用される。
【0031】
本発明の方法は、第3段階において、前記第1分離システムの塔底ストリームを分離する。具体的には、本発明の方法は、前記第3段階において、前記第1分離システムの塔底ストリームを第2分離システムから分離し、エチルメチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔頂ストリーム、およびジエチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔底ストリームを得る。より具体的には、本発明の方法は、第2段階において、前記第1分離システムの塔底ストリームを第2分離システムに供給し、前記第2分離システムから第1分離システムの塔底ストリームを分離し、エチルメチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔頂ストリームおよびジエチルカーボネートを主成分として含む第2分離システムの塔底ストリームを得る。
【0032】
本発明の方法は、第4段階において、前記第2分離システムの塔底ストリームを分離する。具体的には、本発明の方法は、第4段階において、前記第2分離システムの塔底ストリームを第3分離システムから分離し、ジエチルカーボネートを主成分として含む第3分離システムの塔頂ストリームを得る。より具体的には、本発明の方法は、第4段階において、前記第2分離システムの塔底ストリームを第3分離システムから分離し、低沸点成分であるジエチルカーボネートを主成分として含む第3分離システムの塔頂ストリームおよび高沸点成分である残部重質物(heavies)を主成分として含む第3分離システムの塔底ストリームを得る。すなわち、本発明は、前記第4段階において、前記第2分離システムの塔底ストリームを第3分離システムに供給し、前記第3分離システムから前記第2分離システムの塔底ストリームを分離し、ジエチルカーボネートを主成分として含む第3分離システムの塔頂ストリームを得る。
【0033】
前記第2段階ないし第4段階は、高沸点成分を先に分離して排出する従来の方法と異なる。前記の段階では、低沸点成分を先に分離して排出する。これを通じて本発明の方法は、分離に必要な熱交換器の負荷を低減させることができるため、エネルギーコストおよび維持コストを節減することができる。
【0034】
また、本発明では、前記分離システムの運転条件を適度に調節して初めて99.9%以上の高純度のカーボネートを得ることができる。具体的には、本発明の方法において、前記第2段階ないし第4段階のいずれかの段階は、前記第1分離システムないし前記第3分離システムのいずれかのシステムの還流比を0.5~5の範囲内に設定するものである。すなわち、本発明にて適用する分離システムのうち少なくとも1つの分離システムの還流比を前記のように調節しなければならない。他の具現例では、前記第2段階ないし第4段階のうちの2つ以上の段階は、前記第1分離システムないし前記第3分離システムのうちの2つ以上のシステムの還流比を0.5~5の範囲内に設定することができる。
【0035】
本発明のような方式を適用しても、分離システム全部の還流比が前記の範囲を外れると様々な問題が生じる。具体的には、分離システム全部の還流比が0.5未満であれば、塔頂における流出液量に対する還流液量の比が少ないため、製品の流出量は増加するが、高純度のカーボネートを獲得することが難い。また、分離システム全部の還流比が5を超過すると、塔頂における流出液量に対する還流液量の比が増加し、高純度のカーボネートを獲得することができるが、流出液量が少ないため、製品獲得の時間が増え、運転費が上昇する。
【0036】
本明細書において、還流比(Reflux ratio、R)は、流出液量に対する還流液量の比を意味する。すなわち、特定のカラムまたは反応器から流出された液状の量を基準に、前記カラムまたは反応器に戻る液状の量を還流比と称することができる。
【0037】
図1は、本発明の方法の進行過程を簡略に示すものである。図1の内容を以下のように要約することができる。Drum(A)は、イオン交換樹脂を再使用するための溶液を保管する容器(硫酸/NaOHなど)である。Drum(A)は、イオン交換樹脂の効率が低下する際、溶液を循環させてイオン交換樹脂を再生させることができる。反応器(B)は、反応器システムである。反応器(B)は、複数固定層反応器が直列連結されて稼動する。反応器から排出された下段の物質は、第1分離システム(C)に送り出される。第1分離システム(C)の上段からDMC/MeOH/EtOHを、下段からEMC/DECを獲得する。第2分離システム(D)の上段からEMCを回収する。下段流出物は、第3分離システム(E)に送り出される。第3分離システム(E)の上段からDECを回収し、第3分離システムの下段における重質物(Heavier)は、廃棄する。
【0038】
一具現例では、前記原料内の反応物(DMCおよびEtOH)の混合割合もまた適切に調節され得る。例えば、前記原料におけるジメチルカーボネートの重量(DMC)とエタノールの重量(EtOH)との割合(EtOH/DMC)は、0.1~10の範囲内であってもよい。他の具現例では、前記割合(EtOH/DMC)は、0.15以上または0.2以上であってもよく、9以下、8以下、7以下、6以下または5以下であってもよい。前記範囲内で、反応物が触媒と適切に接触して反応を行うことができ、追って精製工程におけるエネルギー浪費を低減させることができる。これ以外にも、目的生成物が何であるかによってこれら間の割合を調節することもできる。例えば、DECに対する需要が高いため、これを目的生成物としてその選択性を高める方向に組成を設定することが一般的であるが、将来はEMCに対する需要が高いことが予想されるからである。
【0039】
前記反応器システムも適宜設計可能である。
【0040】
一具現例では、前記固定層反応器は、イオン交換樹脂触媒を充填した固定層反応器であってもよい。適切なイオン交換樹脂触媒を適用することによって、反応物との接触を極大化させることができる。その結果、速い反応速度および高い反応効率で目的生成物であるカーボネートを製造することができる。一具現例では、前記イオン交換樹脂触媒は、塩基性イオン交換樹脂触媒または酸性イオン交換樹脂触媒であってもよい。具体的には、前記イオン交換樹脂触媒は、塩基性イオン交換樹脂触媒であってもよい。
【0041】
酸性イオン交換樹脂は、強酸性イオン交換樹脂と弱酸性イオン交換樹脂に分けられる。通常、強酸性イオン交換樹脂触媒を用いることができ、このとき、前記樹脂触媒は、交換基としては、スルホネートイオン、イオン型としては、水素イオンを有することを適用することができる。
【0042】
塩基性イオン交換樹脂触媒は、弱塩基性イオン交換樹脂触媒と強塩基性イオン交換樹脂触媒に分けられる。強塩基性イオン交換樹脂触媒は、イオン型として、アニオン(Br)、チオシアン酸塩(thiocyanate、SCN-)アニオン、塩素アニオン(Cl)、アセテートアニオン(acetate、CHCOO)、ヒドロキシ基アニオン(OH)、フッ素アニオン(F)などを有していてもよい。弱塩基性イオン交換樹脂触媒は、イオン型として、クエン酸塩アニオン(citrate、CO(COO) 3-)、スルホネート(sulfate、SO 2-)などを有することができる。
【0043】
一具現例では、イオン交換樹脂触媒は、多孔性型イオン交換樹脂触媒またはゲル型イオン交換樹脂触媒であってもよい。具体的には、前記イオン交換樹脂触媒は、多孔性型イオン交換樹脂触媒であってもよい。多孔性型イオン交換樹脂は、表面に多くの(約10~1,000個)マクロ細孔(macropore)を有しているため、ゲル型樹脂に比べて化学的に安定的である。また、多孔性型イオン交換樹脂は、広い表面積を有しているため、反応物との接触面積を極大化することができる。
【0044】
多孔性型イオン交換樹脂は、脱色性に優れ、反応初期にイオン交換樹脂の洗浄時間および洗浄溶媒の使用量を相対的に減少させることができる。また、多孔性型イオン交換樹脂は強度が高く、再使用する場合、交換基の損失と微細粉の形成が少ないため、再使用の周期が長い。
【0045】
一具現例では、イオン交換樹脂触媒は、交換容量が1(eq/l-wet resin)以上、1.5(eq/l-wet resin)以下であってもよい。一般に、イオン交換樹脂の架橋度が高いほど母体に交換基が多く付着しているため、交換容量が大きくなる傾向にある。しかし、イオン交換樹脂の架橋度が高ければ、母体と交換基の強い結合により反応に参与する交換基が減少するため、反応効率が低下する。したがって、前記範囲の交換容量の範囲内で適切な反応速度と急激な体積変化にも強度を維持することができる。
【0046】
したがって、前記特性を全て満たすイオン交換樹脂触媒を適用することが最も有利であり得る。一具現例では、前記固定層反応器システムは、塩基性イオン交換樹脂触媒を充填した固定層反応器を含み、前記塩基性イオン交換樹脂は多孔性であり、前記塩基性イオン交換樹脂の交換容量は1(eq/l-wet resin)~1.5(eq/l-wet resin)の範囲内であってもよい。
【0047】
また、本発明は、前記反応器システムにおける反応器の設備を適切に設計することができる。本発明における前記固定層反応器システムは、前記固定層反応器を複数個有するシステムであってもよい。すなわち、前記固定層反応器システムは、前記固定層反応器を2個以上含むことができる。また、本発明では、前記固定層反応器システムは、前記複数の固定層反応器を直列に連結することができる。ここで、直列に複数の反応器を連結するということは、いずれかの反応器の流出口が他方の反応器の流入口に連結されることを意味する。一具現例では、前記固定層反応器システムは、直列に連結された複数の固定層反応器を含むことができる。
【0048】
前記反応器システムにおいて、固定層反応器の数も適切に調節することができる。固定層反応器システムは、2個以上~10個以下の前記固定層反応器を直列に連結したシステムであってもよい。
【0049】
本発明は、既存の方法とは異なり、反応蒸留(reactive distillation)または抽出蒸留を進めなくてもよい。すなわち、本発明の方法は、前記分離システムによりトレイカラムまたはパッキングカラムを適用することができる。トレイカラムとパッキングカラムの意味は公知されているため、詳細な説明は省略する。トレイカラムとパッキングカラムは、その設計に関連した理論および経験資料が非常に豊富であるため、これを用いると、体系的な分離精製システムの設計が可能である。すなわち、一具現例では、前記第1分離システムないし第3分離システムは、いずれもトレイカラムまたはパッキングカラムであってもよい。
【0050】
前の過程が本発明の方法における反応工程に該当していれば、後述する工程は分離(または精製)工程であってもよい。前記分離システムを用いた分離または精製の過程にて適用される分離システムの運転条件もまた適宜調節されることができる。
【0051】
前記第2段階における分離精製の条件もまた適宜調節され得る。
【0052】
一例において、前記第4段階は、前記第1分離システムとして理論段数が15段~80段の範囲内である分離システムを適用することができる。前記範囲内で適切な段効率を示し、且つ経済的にシステムを製造することができる。また、前記範囲内で、メンテナンスが容易で、分離システムの熱樹脂も容易に調整することができる。
【0053】
一例では、前記第2段階は、前記第1分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定することができる。このように設定することによる効果は前述した通りである。
【0054】
また、前記第1段階と第2段階の組み合わせは、従来の反応蒸留と同様の機序を有する。ただし、第3段階および第4段階において、塔頂を介して目的生成物を沸点順に排出されるが、これは塔底を介して目的生成物を逆の順序で排出する従来の方式と確実な差別点となる。特に本発明は、これのために、前記第2段階ないし第4段階のそれぞれにおける運転条件を調節する必要がある。
【0055】
一例では、前記第2段階は、前記第1分離システムの再沸器の温度を90℃~100℃の範囲内に設定することができる。このとき、第1分離システムの塔頂ストリームは、エタノール、メタノール、およびDMCを主成分として含むことができ、第1分離システムの塔底ストリームは、DECおよびEMCを主成分として含むことができる。
【0056】
前記第3段階における分離精製条件もまた適宜調節することができる。
【0057】
一例では、前記第3段階は、前記第2分離システムとして理論段数が15~80段の範囲内である分離システムを分離システムに適用することができる。前記範囲内で適切な段効率を示し、且つ経済的に分離システムを製造することができる。また、前記範囲内で、メンテナンスが容易で、分離システムの熱樹脂も容易に調整することができる。
【0058】
一例では、前記第3段階は、前記第2分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定することができる。このように設定することによる効果は、前述した通りである。
【0059】
一例では、前記第3段階は、前記第2分離システムの再沸器の温度を110℃~120℃の範囲内に設定することができる。このとき、第2分離システムの塔頂ストリームは、EMCを主成分として含むことができ、第2分離システムの塔底ストリームは、DECを主成分として含むことができる。
【0060】
前記第4段階における分離精製条件もまた適宜に調節され得る。
【0061】
一例では、前記第4段階は、前記第3分離システムとして理論段数が15~80段の範囲内である分離システムを適用することができる。前記範囲内で適切な段効率を示し、且つ経済的に分離システムを製造することができる。また、前記範囲内で、メンテナンスが容易で、分離システムの熱樹脂も容易に調整することができる。
【0062】
一例では、前記第4段階は、前記第3分離システムの還流比を0.5~5の範囲内に設定することができる。このように設定することによる効果は、前述した通りである。
【0063】
一例では、前記第4段階は、前記第3分離システムの再沸器の温度を130℃~140℃の範囲内に設定することができる。このとき、第3分離システムの塔頂ストリームは、DECを主成分として含むことができ、第3分離システムの塔底ストリームは、残部重質物を主成分として含むことができる。
【0064】
一方、本発明のカーボネートの製造方法は、前述した段階以外にも、前記各段階の前または後に当業界で公知の通常の段階をさらに含むことができる。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の内容を限定するものではない。
【0066】
[ガスクロマトグラフィー]
生成物の純度、生成物中の不純物および重質分(heavies)の含有量分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)で行った。具体的には、分析対象物質1gを取り、0.1gのm-キシレンと混合した試料に対してGCを行った。GC装置としては、Young In chromass社のYL6500GC製品を用いており、ここで、GCカラムは、Agilent社のDB-1 30m*0.32mmであり、GC検出器はFIDであった。
【0067】
[ICP-AES]
生成物中の金属含有量分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定した。Perkinelmer社のOptima 8300モデルを使用した。流出物の試料10gと70%の硝酸10mlおよび水10mlを混合し、250℃で2時間加熱後、分析を行った。
【0068】
[カラー]
生成物のカラーは、APHAにより評価した。APHAは、HazenまたはPt/Co色とも呼ばれたりし、これは液状試料の黄色度を意味する。APHA測定のために、Tintometer社の自動比色計であるPFX995モデルを使用した。試料をCell高さの3/4程満たした後、右位置に密着させ、温度を常温に設定し、READキーを押して分析を行った。3回測定後、平均値を結果値とした。
【0069】
[実施例]
固定層反応器(Fixed bed reactor)4個を直列連結した反応システムを用意した。各反応器当たりイオン交換樹脂であって、交換器としてトリメチルアンモニウム(TMA)イオンを有し、イオン型として塩素イオンを有し、交換容量が1.3eq/Lの多孔性型強塩基性アニオン交換樹脂(Samyang社、Trilte AMP-18)80cc(58g)を充填した。原料は、エタノール(EtOH)とDMCを0.8の質量比(EtOH/DMC)で含んだ。原料を2cc/minで反応器システムに連続供給しながら、システムの温度を70℃に維持し、システム運転を行った。
【0070】
前記反応生成物を第1分離システムに供給した。前記第1分離システムの段数は60であった。3の還流比、常圧、93~100℃の再沸器の温度で分離を行った。塔頂におけるDMC、EtOH、およびMeOHを主成分として含む流出物を得て、塔底におけるEMCとDECを主成分として含む流出物を得た。
【0071】
前記第1分離システムの塔底ストリーム出物を第2分離システムに供給した。前記第2分離システムの段数は60であった。3の還流比、常圧、110~120℃の再沸器の温度で分離を行った。第2分離システムの塔頂にて純度99.9%以上であり、1ppm以下の総金属含有量のEMCを得た。第2分離システムの塔底におけるDECを主成分として含む流出物を得た。
【0072】
第2分離システムの塔底ストリーム出物を第3分離システムに供給した。前記第3分離システムの段数は60であった。3の還流比、常圧、130~140℃の再沸器の温度で分離を行った。第3分離システムの塔頂にて純度99.9%以上であり、1ppm以下の総金属含有量のDECを得た。第3分離システムの塔底から得られた重質物は廃棄した。
【0073】
[比較例1]
第1分離システムないし第3分離システムにおける還流比を全部0.3に設定したことを除いて、実施例1と同様の過程にて行った。
【0074】
[比較例2]
第3分離システムを適用せずに、DECを主成分として含む第2分離システムの塔底ストリームを得る運転を行ったことを除いて、実施例1と同様の過程にて行った。実施例および比較例1~2の結果を比較し、下記表1および表2に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1によれば、本発明による分離システムの還流比を満たす必要があることを確認することができる。還流比が0.5未満であれば、塔頂における流出液量に対する還流液量の比が少なくないため、製品の流出量は増加する。しかし、99.9%以上の高純度のカーボネートを獲得することは困難である。
【0078】
表2によれば、分離システムの数を十分に使用せずに、塔底におけるDECを得る場合、高純度のカーボネートを得ることが難しい。この場合、不純物が多く、APHA値が高くなりすぎてリチウムイオン電池用有機溶媒として活用することが難しい。したがって、高純度およびメタル含有量、APHA値を考慮すると、本発明の方法のようにカーボネートを製造する必要があることが分かる。
図1
【国際調査報告】