IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア・ペトロケミカル・インダストリー シーオー.,エルティーディーの特許一覧

特表2024-540587超高分子量ポリプロピレンの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】超高分子量ポリプロピレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08F4/654
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529815
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2022018009
(87)【国際公開番号】W WO2023090823
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159382
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524188686
【氏名又は名称】コリア・ペトロケミカル・インダストリー シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンファン
(72)【発明者】
【氏名】カン カプク
(72)【発明者】
【氏名】ユ ミョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】ホン ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】ハ ユンソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ユンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ホジン
(72)【発明者】
【氏名】ハ ヒュン ス
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC04
4J128AC05
4J128AC14
4J128AC15
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC19B
4J128BC36B
4J128BC39B
4J128CA16A
4J128CB27A
4J128CB30A
4J128CB43A
4J128CB44A
4J128CB45A
4J128CB91A
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA01
4J128FA02
4J128FA04
4J128GA03
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、粘度平均分子量が100万g/mol以上であり、且つ30ppm以下の低い無機物含量を有する超高分子量ポリプロピレンの製造方法に関する。本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、一般的な重合条件での分子量の調節剤として使用される水素を添加せずとも、主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合によって超高分子量ポリプロピレンの製造のための分子量の調節が可能な効果を奏する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の調節剤である水素を添加せず、1~20の炭素原子を含む炭化水素溶媒の存在下で、チタン化合物である主触媒、アルキルアルミニウム化合物である共触媒、及びシリコン化合物である助触媒を混合して投入するステップ;及び
前記混合溶液にプロピレン単量体を添加し重合反応を行うステップを含み、
粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを製造することを特徴とする、超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項2】
前記チタン化合物である主触媒のTi1モルに対して、前記アルキルアルミニウム化合物である共触媒のAlが10~500モル含まれることを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項3】
前記チタン化合物である主触媒のTi1モルに対して、前記シリコン化合物である助触媒のSiが1~40モル含まれることを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項4】
前記重合反応の温度は、30~90℃であることを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項5】
前記重合反応の圧力は、1~40barであることを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項6】
製造された超高分子量ポリプロピレン内の触媒残渣を除去するために、前記製造された超高分子量ポリプロピレンに極性有機溶媒(x)を混合し、蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いて分離、精製及び乾燥するステップをさらに含む、請求項1に記載の超高分
子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項7】
前記極性有機溶媒(x)は、下記化学式(4)の化合物及び下記化学式(5)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であることを特徴とする、請求項6に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
R-OH・・・・・・化学式(4)
HO-R1-R2-OH・・・・・・化学般式(5)
(上記化学式(4)において、Rは、1~12の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基であり、上記化学式(5)において、R1及びR2は、1~6の炭素原子を有する線状のアルキル基である。)
【請求項8】
前記化学式(4)は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、分岐状アルキル基であるイソプロパノール、イソブタノール及びイソペンタノールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項9】
前記化学式(5)は、メタンジオール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール及びドデカンジオールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項10】
前記製造された超高分子量ポリプロピレン100重量部に対して、10~1000重量部の前記極性有機溶媒(x)を混合することを特徴とする、請求項6に記載の超高分子量ポリプロピレンの製造方法。
【請求項11】
前記極性有機溶媒(x)100重量部に対して、100~3000重量部の前記蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いることを特徴とする、請求項6に記載の超高分子量ポ
リプロピレンの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のうち、いずれか一項に記載の製造方法により製造され、
粘度平均分子量が100万g/mol以上であり、
無機物含量が1~30ppmであり、
粒径が10~400μmであることを特徴とする、超高分子量ポリプロピレン。
【請求項13】
前記粘度平均分子量が100万~400万g/molであることを特徴とする、請求項12に記載の超高分子量ポリプロピレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高分子量ポリプロピレンの製造方法に関し、より詳細には、超高分子量ポリプロピレンの製造において、四塩化チタンとアルキルアルミニウム、そして外部電子供与体の投入割合に応じた分子量の調節による超高分子量ポリプロピレンの製造方法と、それによる触媒残渣の除去工程によって極微量の無機物を含有する、超高分子量ポリプロピレンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリプロピレン重合は、塩化マグネシウムを担体とし、フタレート、ジエーテル、サクシネート化合物を内部電子供与体として含む塩化チタンを主触媒とし、アルキルアルミニウムを共触媒とし、アルコキシ基を含有するシリコン化合物を外部電子供与体である助触媒として重合が行われるようになり、スラリー重合、バルク重合、気相重合などの反応器内で重合が行われるようになる。この時、重合されるポリプロピレンの分子量を調節するために水素を分子量の調節剤として使用するようになり、現在、生産・供給されるすべてのポリプロピレンの場合、ASTM D1238で提示する方法で2.16kg荷重下で0.1~1,500g/10minのMIを有するようになる。
【0003】
このように製造されたポリプロピレンは、フィルム、繊維、自動車の内・外装材及びパイプなど多様な用途に適用され、用途に合わせてMIを調節するか、コモノマーを注入して融点及び密度を調節することができる。
【0004】
このような多様な用途の適用が可能であるにもかかわらず、加工技術の発展と新たな用途の発掘に適した素材の要求により、より向上した機械的物性及び新規用途の適用のために超高分子量ポリプロピレンの開発が要求されているが、水素の注入量によって調節する方式だけでは、より高い水準の分子量を有するポリプロピレン樹脂の製造方法上、限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州登録特許EP3157966B1
【特許文献2】米国登録特許US8008417B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような問題点を解決するために、本発明による超高分子量ポリプロピレンの製造方法は、主触媒の選定、及び主触媒、共触媒、助触媒などの割合を調節し、重合温度及び圧力の変化によって粘度平均分子量基準100万g/mol以上の高い分子量及び高い触媒活性を有する超高分子量ポリプロピレンを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明による超高分子量ポリプロピレンの製造方法は、キャパシタフィルム及び二次電池の分離膜の性能向上のために、より低い水準の無機物含有量と400μm以下の平均粒径を有する超高分子量ポリプロピレンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は、分子量の調節剤である水素を添加せず、チタン化合物である主触媒(a)、アルキルアルミニウム化合物である共触媒(b)及びシリコン化合物である助触媒(c)の割合、重合温度及び重合圧力を調節することによって粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを製造することを特徴とする、超高分子量ポリプロピレンの製造方法を含む。
【0009】
ここで、前記チタン化合物である主触媒のTi1モルに対して、前記アルキルアルミニウム化合物である共触媒のAlが10~500モル含まれることができる。
【0010】
ここで、前記チタン化合物である主触媒のTi1モルに対して、前記シリコン化合物である助触媒のSiが1~40モル含まれることができる。
【0011】
ここで、前記重合温度は、30~90℃であることが好ましい。
【0012】
ここで、前記重合圧力は、1~40barであることが好ましい。
【0013】
ここで、製造された超高分子量ポリプロピレン内の触媒残渣を除去するために、前記製造された超高分子量ポリプロピレンに極性有機溶媒(x)を混合し、蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いて分離、精製及び乾燥するステップをさらに含み得る。
【0014】
ここで、前記極性有機溶媒(x)は、下記化学式(4)の化合物及び下記化学式(5)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であってもよい。
【0015】
R-OH・・・・・・化学式(4)
HO-R1-R2-OH・・・・・・化学式(5)
(前記化学式(4)において、Rは、1~12の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基であり、前記化学式(4)は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、分岐状アルキル基であるイソプロパノール、イソブタノール及びイソペンタノールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であってもよい。
【0016】
前記化学式(5)において、R1及びR2は、0~6の炭素原子を有する線状のアルキル基であり、前記化学式(5)は、メタンジオール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール及びドデカンジオールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物であってもよい。
【0017】
ここで、前記製造された超高分子量ポリプロピレン100重量部に対して10~1000重量部の前記極性有機溶媒(x)を混合することができる。
【0018】
ここで、前記極性有機溶媒(x)100重量部に対して100~3000重量部の前記蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いることができる。
【0019】
また、前記のような目的を達成するために、本発明は、本発明による超高分子量ポリプロピレンの製造方法によって製造された粘度平均分子量が100万g/mol以上である、超高分子量ポリプロピレンをさらに開示する。
【0020】
ここで、前記超高分子量ポリプロピレンは、粘度平均分子量が100万~400万g/molであってもよい。
【0021】
ここで、前記超高分子量ポリプロピレンは、30ppm以下の無機物含量を有するものであってもよい。
【0022】
ここで、前記超高分子量ポリプロピレンは、400μm以下の粒径を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
上述した本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、一般的な重合条件での分子量の調節剤として使用される水素を添加せずとも、主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合によって超高分子量ポリプロピレンの製造のための分子量の調節が可能な効果を奏する。
【0024】
また、本発明によって製造される超高分子量ポリプロピレンは、触媒残渣の除去工程によって、一般的に製造されるポリプロピレン樹脂に比べて低い水準の無機物を含有することでもって、二次電池の分離膜及び絶縁性が要求される用途に適した物性を有することができる。
【0025】
また、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、粒度調節によって二次電池の分離膜に使用される超高分子量ポリエチレンとの混練性及び溶融速度を改善させることによって、優れた性能の超高分子量ポリプロピレン分離膜及び超高分子量ポリエチレンと超高分子量ポリプロピレンとの異種分離膜を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願において使用する用語は、単に特定の例示を説明するために使用されるものである。そのため、例えば、単数の表現は文脈上明らかに単数でなければならないものではない限り、複数の表現を含む。なお、本出願において使用される「含む」又は「具備する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、ステップ、機能、構成要素、又はこれらを組み合わせたものが存在することを明確に指称するために使用されるものであり、他の特徴やステップ、機能、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在を予備的に排除するものではないことに留意すべきである。
【0027】
一方、異なって定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味をもつものとみなければならない。従って、本明細書で明確に定義しない限り、特定の用語が過度に理想的であるとか形式的な意味に解釈されるべきではない。
【0028】
本発明者らは、下記のように本発明によって粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを製造できることを確認して本発明を完成した。一方、本明細書で使用する用語である「超高分子量」とは、粘度平均分子量が100万g/mol以上を意味する。
【0029】
<超高分子量ポリプロピレンの製造方法>
本発明者らは、上述した課題を解決するために研究した結果、下記のような発明を案出するに至った。本明細書は、分子量の調節剤である水素を添加せず、チタン化合物である主触媒(a)、アルキルアルミニウム化合物である共触媒(b)及びシリコン化合物である助触媒(c)の割合、重合温度及び重合圧力を調節することによって、100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを製造することを特徴とする、超高分子量ポリプロピレンの製造方法を開示する。
【0030】
また、本発明は、上記で言及した目的を達成するために、高い立体規則性を有する主触媒を利用し、触媒開始が可能であり、分子主鎖の離脱を最小化できる共触媒の含量と最適の外部電子供与体の含量を投入して重合反応が行われるステップを含む超高分子量ポリプロピレンの製造方法を提供する。
【0031】
より具体的に、本発明は、前記主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合に応じた超高分子量ポリプロピレンの分子量の調節方法を提供する。
【0032】
本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法における各ステップ別の工程は、下記のとおり、
【0033】
(x)反応器内に1~20の炭素原子を含む炭化水素溶媒の存在下で共触媒(b)、主触媒(a)及び助触媒(c)を混合して投入するステップ;
【0034】
(y)温度30℃の雰囲気下で、ステップ(x)で得られた混合溶液にプロピレン(d)を添加し、30~90℃の温度を保ちながら重合反応を行うステップ;及び
【0035】
(z)前記ステップ(x)及び(y)を行った後、得られたスラリー反応溶液からポリプロピレン樹脂粉末を濾過し、得られたポリプロピレン樹脂粉末を乾燥するステップ:を含み得る。
【0036】
ここで、前記ステップ(x)は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。すなわち、前記ステップ(x)は、不活性気体の存在下で行われることが好ましい。
【0037】
本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法において、ステップ(x)の1~20の炭素原子を含む炭化水素溶媒は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンまたはテトラデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びジクロロプロパン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素またはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒からなる群より選択されるいずれか一つ以上の溶媒を含むことができ、また、炭化水素なしに高圧のプロピレン下で気相重合またはバルク重合で行われることもできる。
【0038】
本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法において、ステップ(x)の共触媒(b)の代表的な例としては、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジエチルアルミニウムフルオライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、メタルアルミニウムジクロライド及びエチルアルミニウムセスキクロライドからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を含み得る。
【0039】
ステップ(x)において、前記共触媒(b)は、前記主触媒(a)1モル当たり5~500モルで添加されることが好ましく、10~500モルで添加されることがさらに好ましく、100~500モルで添加されることが最も好ましいが、これに限定されるものではない。より具体的には、チタン化合物である主触媒(a)のTi1モルに対して、アルキルアルミニウム化合物である共触媒(b)のAlが5~500モル含まれることが好ましい。例えば、チタン化合物である主触媒(a)のTi1モルに対して、アルキルアルミニウム化合物である共触媒(b)のAlが5モル未満である場合、重合反応が十分に起こらない問題が発生し得、逆に、チタン化合物である主触媒(a)のTi1モルに対して、アルキルアルミニウム化合物である共触媒(b)のAlが500モル超過の場合、重合反応が起こっても粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを十分に得られない問題が発生し得る。
【0040】
また、ステップ(x)において、前記主触媒(a)は、フタレート、ジエーテル、サクシネートが含まれたシリコン化合物を内部電子供与体として含み、塩化マグネシウムを担体とするチーグラー・ナッタ系の塩化チタン触媒として三塩化チタンまたは四塩化チタンが好適であり、内部電子供与体の形態によって高い立体規則性を提供する触媒がさらに好ましく、一般的に商用化された触媒を使用することができる。
【0041】
また、ステップ(x)において、前記助触媒(c)は、下記化学式(1)の化合物、下記化学式(2)の化合物及び下記化学式(3)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を使用することができる。
【化1】
【化2】
【化3】
前記化学式(1)~(3)において、
a、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、1~12の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリル基、又はビニル基であり、Rbは、1~6の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、Rは、1~12の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリル基、又は-ORcであり、このとき、Rcは、1~6の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、nは、0~6の整数である。
【0042】
具体的に、前記化学式(1)の化合物の代表的な例として、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMCD)、シクロヘキシル-n-プロピルジメトキシシラン(CPDM)、シクロヘキシル-i-プロピルジメトキシシラン(CIPDM)、シクロヘキシル-n-ブチルジメトキシシラン(CBDM)、シクロヘキシル-i-ブチルジメトキシシラン(CIBDM)、シクロヘキシル-n-ヘキシルジメトキシシラン(CHDM)、シクロヘキシル-n-オクチルジメトキシシラン(CODM)、シクロヘキシル-n-デシルジメトキシシラン(CDeDM)、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン及びメチルトリアリールオキシシランからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物が挙げられる。好ましくは、上記化学式(1)の化合物の代表的な例として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン及びメチルトリアリールオキシシランからなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を含んでもよい。
【0043】
前記化学式(2)の化合物の代表的な例として、1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ジメチル-1,3-ジシランプロパン(TMDMDP)、1,1,3,3-テトラメトキシ-1-メチル-3-ヘキシル-1,3-ジシランプロパン(TMMHDP)、1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ジ-n-ヘキシル-1,3-ジシランプロパン(TMDHDP)、1,1,3,3-テトラメトキシ-1-メチル-3-シクロヘキシル-1,3-ジシランプロパン(TMMCDP)、1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ジシクロヘキシル-1,3-ジシランプロパン(TMDCDP)、1,1,8,8-テトラメトキシ-1,8-ジシクロヘキシル-1,8-ジシランオクタン(TMDCDO)及び1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ジメチルジシロキサン(TMDMDS)からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を挙げることができる。
【0044】
前記化学式(3)の化合物の代表的な例として、メチル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(MTDM)、n-プロピル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(PTDM)、i-プロピル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(IPTDM)、n-ブチル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(BTDM)、i-ブチル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(IBTDM)、n-ペンチル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(PnTDM)、nヘキシル-(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(HTDM)、シクロペンチル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(CpTDM)及びシクロヘキシル(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン(CTDM)からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物が挙げられる。
【0045】
ステップ(x)において、前記助触媒(c)は、前記主触媒(a)1モル当たり1~40モルで添加されることが好ましいが、これに限定されるものではない。より具体的には、チタン化合物である主触媒のTi1モルに対して、シリコン化合物である助触媒のSiが1~40モル含まれることが好ましい。例えば、チタン化合物である主触媒(a)のTi1モルに対してシリコン化合物である助触媒のSiが1モル未満である場合、重合反応が十分に起こらない問題が発生し得、逆に、チタン化合物である主触媒(a)のTi1モルに対してシリコン化合物である助触媒のSiが40モル超過の場合、重合反応が起こっても粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを十分に得られない問題が発生し得る。
【0046】
一方、ステップ(y)において、混合溶液にプロピレン(d)を添加し、重合反応を行う重合温度は30~90℃の範囲以内であることが好ましいが、これに限定されるものではない。仮に、重合反応を行う重合温度が30℃未満の場合、重合反応が十分に起こらない問題が生じ得、逆に、重合反応を行う重合温度が90℃を超える場合、重合反応が起こっても粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを十分に得られない問題が発生し得る。
【0047】
また、ステップ(y)において、混合溶液にプロピレン(d)を添加し、重合反応を行う重合圧力は1~40barの範囲以内であることが好ましいが、これに限定されるものではない。仮に、重合反応を行う重合圧力が1bar未満である場合、重合反応が十分に起こらない問題が発生し得、逆に、重合反応を行う重合圧力が40barを超過する場合、重合反応が起こっても粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレンを十分に得られない問題が発生し得る。
【0048】
一方、ステップ(y)において、重合反応を行うステップは、液状、スラリー状、塊状(bulk phase)または気相重合で行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0049】
<触媒残渣の除去工程>
また、前記で言及した目的を達成するために、本発明では、超高分子量ポリプロピレンの製造と共に触媒残渣の除去工程を含んで提供しており、重合工程で触媒として使用されたマグネシウム、チタン、アルミニウム、シリコンなどの無機物を除去する方法を提供する。
【0050】
本発明の超高分子量ポリプロピレン内の触媒残渣の除去方法は、次のようなステップを含む。本発明の製造された超高分子量ポリプロピレン内の触媒残渣を除去するために、前記製造された超高分子量ポリプロピレンに極性有機溶媒(x)を混合し、蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いて分離、精製及び乾燥するステップをさらに含み得る。
【0051】
より具体的に、本発明で製造された超高分子量ポリプロピレンを極性有機溶媒と混合するステップ;水との接触によって前記製造された超高分子量ポリプロピレンと極性有機溶媒とを分離するステップ;及び分離された超高分子量ポリプロピレンを乾燥するステップ;とを含み得る。
【0052】
この時、前記製造された超高分子量ポリプロピレンと極性有機溶媒の混合割合は、製造された超高分子量ポリプロピレンの重量対比0.1~10倍の極性有機溶媒を投入及び混合することができ、好ましくは製造された超高分子量ポリプロピレンの重量対比0.5~3倍の極性有機溶媒を混合することができる。
【0053】
すなわち、製造された超高分子量ポリプロピレン100重量部に対して10~1000重量部の極性有機溶媒(x)を混合することが好ましく、製造された超高分子量ポリプロピレン100重量部に対して30~300重量部の極性有機溶媒(x)を混合することがさらに好ましい。
【0054】
本発明で製造された超高分子量ポリプロピレン内の触媒残渣の除去のために使用する前記極性有機溶媒は、下記化学式(4)の化合物を使用することができる。
R-OH・・・・・・化学式(4)
HO-R1-R2-OH・・・・・・化学式(5)
前記化学式(4)において、Rは、1~12の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基であり、具体的には、前記化学式(4)に該当する化合物の代表的な例として、線形構造のアルカリであるメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、分岐状アルキル基であるイソプロパノール、イソブタノール及びイソペンタノールからなる群より選択される一つ以上の化合物を含み得る。
【0055】
前記化学式(5)において、R1及びR2は、0~6の炭素原子を有する線状のアルキル基であり、具体的には、前記化学式(5)に該当する化合物の代表的な例としては、メタンジオール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール及びドデカンジオールからなる群より選択される一つ以上の化合物を含み得る。
【0056】
製造された超高分子量ポリプロピレンから触媒残渣を溶解した極性有機溶媒を分離するために使用される水は、蒸留水または濾過水を使用することができ、使用された極性有機溶媒の重量対比1~30倍を使用し、好ましくは使用された極性有機溶媒の重量対比5~20倍を使用することができる。
【0057】
すなわち、極性有機溶媒(x)100重量部に対して100~3000重量部の蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いることが好ましく、極性有機溶媒(x)100重量部
に対して500~2000重量部の蒸留水(y)または濾過水(y’)を用いることがさ
らに好ましい。製造された超高分子量ポリプロピレンと極性有機溶媒の混合物質は水との接触後、層分離がなされるが、ここで分子の極性有機溶媒は水層で混合され、製造された超高分子量ポリプロピレンは水の上層部に浮遊し、これをろ紙やフィルターを用いて分離した後、90~105℃の乾燥機で乾燥して重合工程で触媒として使用されたマグネシウム、チタン、アルミニウム、シリコンなどの無機物が除去された超高分子量ポリプロピレンを得ることができる。
【0058】
<超高分子量ポリプロピレンの粒径の調節>
前記目的を達成するために、本発明では、触媒の粒径及び重合度を調節して超高分子量ポリプロピレンの粒径を調節することができる。超高分子量ポリプロピレンの重合時に使用される主触媒の粒径や粒度によって超高分子量ポリプロピレンの粒径と粒形が決定され、特に粒径は重合度によって決定されるので、超高分子量ポリプロピレンの加工方法によって要求される粒径を確保するために重合度を調節し、重合度に影響を与える重合圧力、重合温度、重合時間などの重合条件と、使用される主触媒の粒径とを選定する方法を提供する。
【0059】
上述した重合度は、重合圧力、重合時間に反比例し、したがって重合圧力を下げ、重合時間を減らすと、低い重合度により小さな粒径の超高分子量ポリプロピレン樹脂を確保することができ、主触媒の粒径が小さいほど同一の重合度でより小さい粒径を有する樹脂を確保することができるので、所望の樹脂の粒径及び粒度を確保するのに適切な粒径及び粒度分布を有する触媒を選定することができる。
【0060】
<本発明によって製造された超高分子量ポリプロピレン>
一方、本明細書は、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によって製造される、超高分子量ポリプロピレンをさらに開示する。
【0061】
本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によって製造された本発明の超高分子量ポリプロピレンは、水素を添加しないか、極微量を添加する条件下で、好ましくは水素を添加しない条件下で、粘度平均分子量が100万~400万g/molであることが好ましく、100万~250万g/molであることがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明の超高分子量ポリプロピレンは、前述したように、触媒残渣の除去工程を経ることによって無機物含量が30ppm以下の水準を維持することができる。より具体的に、本発明による超高分子量ポリプロピレンの無機物含量は、1~30ppmであることが好ましく、5~20ppmであることがさらに好ましい。
【0063】
また、本発明の超高分子量ポリプロピレンは、上述したように、触媒の粒径及び重合度を調節することによって粒径が400μm以下の水準を維持することができる。より具体的に、本発明による超高分子量ポリプロピレンの粒径は、10~400μmであることが好ましく、30~300μmであることがさらに好ましい。
【0064】
また、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法において、触媒残渣の除去技術によって、低い無機物含有量が要求される二次電池の分離膜、絶縁材としての活用が可能な30ppm以下の無機物を有する超高分子量ポリプロピレンの製造が可能であり、ゲルフィルム、ゲル紡糸などに適した粒径である400μm以下の粒径を有する超高分子量ポリプロピレン樹脂粒子を製造することができる。
【実施例
【0065】
以下、添付した図面及び実施例を参照して本明細書が請求するところについてさらに詳しく説明する。但し、本明細書で提示している図面乃至実施例などは、通常の技術者によって多様な方式で変形されて様々な形態を有することができるところ、本明細書の記載事項は、本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての均等物乃至代替物を含んでいるものとみなければならない。なお、添付図面は、本発明を通常の技術者にとってより正確に理解できるように助けるために提示されるものであって、実際よりも誇張または縮小されて示されることがある。
【0066】
{実施例及び評価}
<実験例1>超高分子量ポリプロピレン樹脂の重合及び物性測定
実施例1
攪拌機が設けられた2Lステンレス反応器を常温で真空にし、有機溶媒としてヘキサンを900mL注入した後、攪拌を行う。室温でトリエチルアルミニウム900mgとジシクロペンチルジメトキシシラン30mgを入れ、主触媒としてチーグラー・ナッタ(Ziegler-NATTA)系列のチタン触媒30mgを投入した。その後、70℃に維持されている恒温槽に反応器を入れて60℃まで昇温した時点でプロピレンを10barまで投入して2時間重合した。反応終了後、未反応のプロピレンはベントし、反応器を開放して有機溶媒と重合された樹脂を分離した後、乾燥機で樹脂を乾燥してポリプロピレン樹脂を得た。
この時、使用された触媒の含量、触媒活性及び樹脂の物性を測定して下記表1に示した。
【0067】
実施例2
実施例1のトリエチルアルミニウムの投入量を900mgから300mgに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0068】
実施例3
実施例2のジシクロペンチルジメトキシシランの投入量を30mgから90mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0069】
実施例4
実施例1のトリエチルアルミニウム900mgの代わりにトリイソブチルアルミニウム1240mgを投入した以外、同様の方法で行った。
【0070】
実施例5
実施例4のトリイソブチルアルミニウムの投入量を1240mgから410mgに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0071】
実施例6
実施例5のジシクロペンチルジメトキシシランの投入量を30mgから90mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0072】
実施例7
実施例1のトリエチルアルミニウム900mgの代わりにトリオクチルアルミニウム2290mgを投入した以外、同様の方法で行った。
【0073】
実施例8
実施例7のトリオクチルアルミニウムの投入量を2290mgから760mgに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0074】
実施例9
実施例8のジシクロペンチルジメトキシシランの投入量を30mgから90mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0075】
実施例10
実施例1でプロピレンの投入量を10barから3barに調節した以外、同様の方法で行った。
【0076】
実施例11
実施例3において、プロピレンの投入温度を40℃とし、恒温槽の温度を50℃で固定した以外、同様の方法で行った。
【0077】
実施例12
実施例3において、プロピレンの投入温度を25℃とし、恒温槽の温度を30℃で固定した以外、同様の方法で行った。
【0078】
実施例13
実施例3において、有機溶媒であるヘキサンを投入せず、プロピレンを投入して70℃、32barのプロピレン飽和蒸気圧下で重合を行う以外、同様の方法で行った。
【0079】
比較例1
実施例1と同様の方法に水素気体を20mL注入した以外、同様の方法で行った。
【0080】
比較例2
比較例1と同様の方法に水素気体を80mL注入した以外、同様の方法で行った。
【0081】
比較例3
実施例1のトリエチルアルミニウムの投入量を900mgから10mgに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0082】
比較例4
実施例1のトリエチルアルミニウムの投入量を900mgから1,270mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0083】
比較例5
実施例1のトリエチルアルミニウムの投入量を900mgから1,730mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0084】
比較例6
実施例2のジシクロペンチルジメトキシシランの投入量を30mgから3mgに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0085】
比較例7
実施例2のジシクロペンチルジメトキシシランの投入量を30mgから150mgに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0086】
ポリプロピレン樹脂の物性測定の方法
(1)溶融指数(MI):溶融指数の測定は、ASTM D1238によって条件230℃キログラム(kg)で測定した。
【0087】
(2)粘度平均分子量(Mv):粘度平均分子量の測定は、ASTM D5020、ISO 1628-3によって定義された固有粘度(Intrinsic Viscosity)測定方法で固有粘度を確保し、これをMargolies Equationにより換算した値を表記した。
Mv=5.37×104×[η]1.49
η:固有粘度
【0088】
(3)触媒活性:触媒活性は、重合完了後に得られたポリプロピレン樹脂の量を投入した主触媒の量で除した値で示した。
【0089】
(4)粒径:マルバーン(Malvern)社のマスターサイザー2000(Mastersizer 2000)で測定し、測定された値のうち平均粒径(D[0.5])を表記した。
【0090】
(5)無機物含量(Ash):得られたポリプロピレン樹脂のうち50gを完全燃焼させた後、残った残量の重さを計算して表記した。
【0091】
ポリプロピレン樹脂の物性測定の結果
実施例1~13と比較例1~7の主触媒/共触媒/助触媒の割合別及び触媒残渣の除去工程を含めて製造されたポリプロピレンの物性測定の結果と重合反応(重合工程)の条件を下記表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
前記表1を参照すると、本発明の一実施例に係る主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合による超高分子量ポリプロピレンのMI及び粘度平均分子量を確認することができ、共触媒の割合を減らし、助触媒の割合が増加するほど高い分子量のポリプロピレンが得られることを確認することができる。同様に、本発明の一実施例による触媒残渣の除去工程時の樹脂、極性有機溶媒及び水の使用量によって触媒残渣を除去することができることを確認することができ、また重合度を調節することによって製造されるポリプロピレン樹脂の粒径を調節することができることを確認することができる。
【0094】
より具体的に、実施例1及び2と比較例3~5から、チタン化合物である主触媒のTi1モルに対してアルキルアルミニウム化合物である共触媒のAlが10~500モル含まれる時、樹脂の粒径が調節された粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレン樹脂の製造が可能であることを確認することができ、同様に、実施例2及び3と比較例6及び7から、主触媒のTi1モルに対してシリコン化合物である助触媒のSiが1~40モル含まれる時、樹脂の粒径が調節された粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレン樹脂の製造が可能であることを確認することができる。
【0095】
本発明の一実施例による超高分子量ポリプロピレンを製造した結果を比較すると、同一の重合工程の条件下で実施例1、4及び7や実施例2、5及び8のように互いに異なる共触媒を導入した結果、共触媒の分子構造(分子量)によって分子量を調節できることを確認することができ、比較例1及び2で開示されたように、水素によって分子量が調節される以外にも共触媒の投入量、助触媒の投入量などによって100万g/mol以上から400万g/molまでの超高分子量ポリプロピレンの粘度平均分子量が調節されることを確認することができる。
【0096】
また、実施例1、12及び13から、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造時、重合圧力は1~40barである時、樹脂の粒径が調節された粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレン樹脂の製造が可能であることを確認することができる。
【0097】
また、実施例3、11及び12から、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造時、重合温度が30~90℃である時、樹脂の粒径が調節された粘度平均分子量が100万g/mol以上の超高分子量ポリプロピレン樹脂の製造が可能であることを確認することができる。
【0098】
上述した本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、一般的な重合条件での分子量の調節剤として使用される水素を添加せずとも、主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合によって超高分子量ポリプロピレンの製造のための分子量の調節が可能な効果を奏する。
【0099】
<実験例2>超高分子量ポリプロピレン樹脂の触媒残渣の除去工程
実施例14
前記[表1]の実施例2で製造された樹脂を利用する。攪拌機が設けられた2Lステンレス反応器を開放した後、超高分子量ポリプロピレン樹脂50gを投入する。反応器を常温で真空で有機溶媒としてヘキサンを200mL注入した後、攪拌を行う。これに極性有機溶媒としてメタノールを5g投入した後、10分間攪拌する。以後、蒸留水を900mL投入した後、さらに10分間撹拌する。撹拌が完了した後、ろ紙を通して粉末形態の超高分子量ポリプロピレン樹脂とヘキサン、極性有機溶媒、水が混合された液体成分を分離する。分離された樹脂は、100℃の乾燥機で十分に乾燥させた後、Ash成分を分析する。
【0100】
実施例15
実施例14のメタノールの投入量を5gから25gに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0101】
実施例16
実施例14のメタノールの投入量を5gから50gに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0102】
実施例17
実施例14のメタノールの投入量を5gから150gに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0103】
実施例18
実施例16の蒸留水の投入量を200mLから1、000mLに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0104】
実施例19
実施例15の撹拌時間を10分から1時間に増加した以外、同様の方法で行った。
【0105】
比較例8
実施例16の蒸留水の投入量を200mLから40mLに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0106】
比較例9
実施例16の蒸留水の投入量を200mLから2,000mLに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0107】
比較例10
[表1]の実施例2で製造された樹脂のAshの分析結果を示した。
【0108】
比較例11
実施例14のメタノールの投入量を5gから3gに減量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0109】
比較例12
実施例14のメタノールの投入量を5gから550gに増量し、蒸留水の投入量を200mLから1,000mLに増量して投入した以外、同様の方法で行った。
【0110】
比較例13
比較例11の攪拌時間を10分から1時間に増加した以外、同様の方法で行った。
【0111】
超高分子量ポリプロピレン樹脂の無機物含量の測定結果
本発明の触媒残渣の除去工程の各制御条件及び実施例14~19と比較例8~13により製造された超高分子量ポリプロピレン樹脂のAsh成分を分析して無機物含量の測定結果を下記表2に示した。
【0112】
【表2】
【0113】
前記表2を参照すると、本発明による触媒残渣の除去工程時に前記製造された超高分子量ポリプロピレンに極性有機溶媒(x)を混合し、蒸留水(y)または濾過水(y’)を
用いて分離、精製及び乾燥するステップを行うことによって、無機物含量が30ppm以下の超高分子量ポリプロピレン樹脂を得ることができることを確認することができる。
【0114】
一方、比較例10による超高分子量ポリプロピレン樹脂は、別途の触媒残渣の除去工程を経ていない状態の樹脂を意味する。
【0115】
特に、実施例14~17と比較例11及び12による超高分子量ポリプロピレン樹脂から、超高分子量ポリプロピレン100重量部に対して10~1000重量部の極性有機溶媒(x)を混合する時、超高分子量ポリプロピレンの無機物含量が30ppm以下の水準を維持することを確認することができる。
【0116】
また、実施例16及び18と比較例8及び9による超高分子量ポリプロピレン樹脂から、極性有機溶媒(x)100重量部に対して100~3000重量部の蒸留水(y)または濾過水(y’)を混合する時、超高分子量ポリプロピレンの無機物含量が30ppm以
下の水準を維持することを確認することができる。
【0117】
また、実施例15及び19による超高分子量ポリプロピレン樹脂から、メタノール投入後の撹拌時間が10~60分である時、超高分子量ポリプロピレンの無機物含量が30ppm以下の水準を維持することを確認することができる。
【0118】
上述した本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、一般的な重合条件での分子量の調節剤として使用される水素を添加せずとも、主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合によって超高分子量ポリプロピレンの製造のための分子量の調節が可能な効果を奏する。
【0119】
また、本発明によって製造される超高分子量ポリプロピレンは、触媒残渣の除去工程によって一般的に製造されるポリプロピレン樹脂に比べて低い水準の無機物を含有することによって、二次電池の分離膜及び絶縁性が要求される用途に適した物性を有することができる。
【0120】
また、本発明の超高分子量ポリプロピレンの製造方法によれば、粒度調節によって二次電池の分離膜に使用される超高分子量ポリエチレンとの混練性及び溶融速度を改善させることによって、優れた性能の超高分子量ポリプロピレン分離膜及び超高分子量ポリエチレンと超高分子量ポリプロピレンとの異種分離膜を製造することができる。
【0121】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能である。
【0122】
したがって、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にあるあらゆる技術思想は、本発明の権利範囲に含まれると解釈されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、一般的な重合条件での分子量の調節剤として使用される水素を添加せずとも、主触媒、共触媒及び助触媒の投入割合によって超高分子量ポリプロピレンの製造のための分子量の調節が可能な効果を奏する。
【0124】
また、本発明による超高分子量ポリプロピレンは、触媒残渣の除去工程によって一般的に製造されるポリプロピレン樹脂に比べて低い水準の無機物を含有することによって、二次電池の分離膜及び絶縁性が要求される用途に適した物性を有することができる。
【0125】
また、本発明によれば、粒度調節によって二次電池の分離膜に使用される超高分子量ポリエチレンとの混練性及び溶融速度を改善させることによって、優れた性能の超高分子量ポリプロピレン分離膜及び超高分子量ポリエチレンと超高分子量ポリプロピレンとの異種分離膜を製造することができる。
【国際調査報告】