(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アシルフルベン及び放射線によるがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/17 20060101AFI20241024BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20241024BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/17
A61K41/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529819
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 US2022080150
(87)【国際公開番号】W WO2023092076
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400268
【氏名又は名称】ランタン ファルマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バティア、キショー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA29
4C206KA04
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本方法は、有効量のアシルフルベンを必要とする対象へのその投与及び有効量の放射線の投与によってがんを治療することを含む。照射は、有効量のアシルフルベンの投与前又は投与と同時に行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、
(a)アシルフルベンと、
(b)治療に有効な量の放射線と、を投与することを含み、前記対象が、前記有効量の前記放射線後に、基準レベルと比較して上昇したレベルのPTGR1を発現するがん細胞を有すると同定される、方法。
【請求項2】
前記アシルフルベンが(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アシルフルベンがイロフルベンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記有効量の放射線後であるが前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの前記投与前に、基準レベルと比較して増加したPTGR1の発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、膵臓がん、肺がん、乳がん、結腸がん、肝臓がん、皮膚がん、脳がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、又は脳と診断される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
放射線による前記治療後の前記がん由来のがん細胞におけるPTGR1発現のレベルを測定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線に曝露された細胞が、更なるレベルのPTGR1を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記放射線が、前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが前記対象に投与される前に前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、扁平上皮がん腫瘍(SCC腫瘍)、膵臓がん腫瘍及び結腸がん腫瘍からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化学療法剤が、シスプラチン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5FU)、タキソール及びドキソルビシンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アシルフルベンが(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが化学療法に耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
対象におけるがんを治療する方法であって、(a)治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを、それを必要とする対象に投与すること、及び(b)前記腫瘍に治療有効量の放射線を照射すること、を含み、前記照射が、前記有効量の前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの前記投与の前又は同時に行われる、方法。
【請求項16】
放射線による前記治療後の前記がんにおけるPTGR1発現の前記レベルを測定することを
更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、前記有効量の放射線後に基準レベルと比較して増加したPTGR1の発現を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍が、乳房、肺、脳、肝臓、皮膚、腎臓、GI器官、前立腺、膀胱及び婦人科器官からなる群より選択される器官にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記対象を放射線療法に供することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線療法が、照射、分割放射線療法、放射線手術、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記対象又は哺乳動物が、ヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの投与前の前記有効量の後に、基準レベルと比較して増加したPTGR1の発現を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
患者における固形腫瘍を治療する方法であって、前記患者に
(a)複数用量の(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと、
(b)治療に有効な量の放射線と、を投与することを含み、前記対象は、前記有効量の前記放射線の後に、基準レベルと比較して上昇したレベルのPTGR1を発現するがん細胞を有すると同定され、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与する前に、前記放射線が前記患者に投与される、方法。
【請求項25】
放射線による前記治療後の前記がんにおけるPTGR1発現のレベルを測定することを
更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記放射線が2~5Gyである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記放射線が3~6Gyである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線が、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの複数回投与のうちの1回以上の前に投与される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月18日に出願された米国特許仮出願第63/264,290号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、化学及び腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本出願は、アシルフルベン(例えば、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン)及び放射線を使用して固形がんを治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、人々における最も一般的な死因の1つである。進行がんを有する患者のための治療戦略の開発は、全生存期間を著しく改善した。しかしながら、抗がん試薬に対する耐性は避けられず、進行がんの予後は依然として悪い。薬物輸送体に対する変化、アポトーシスの抑制、ミトコンドリア変化、DNA損傷修復の促進、オートファジー、上皮間葉転換、及びがん幹細胞(cancer stem cell、CSC)を含む、がん薬物耐性のいくつかの潜在的な供給源が存在する。機構を考慮する適切な戦略が、がんを治癒するために必要である。
【0004】
放射線療法(放射線治療とも呼ばれる)は、がん細胞を死滅させ、腫瘍を縮小させるために高線量の放射線を使用するがん治療である。高用量では、放射線療法はがん細胞を死滅させるか、又はそれらのDNAを損傷することによってがん細胞の増殖を遅らせる。DNAが修復を超えて損傷されたがん細胞は、分裂を停止するか、又は死滅する。損傷した細胞が死滅すると、それらは破壊され、身体によって除去される。放射線は、がん細胞においてプログラムされた細胞死(アポトーシス)を引き起こすDNA及びRNAと反応するフリーラジカルを形成するイオン化反応を生じさせるために使用される。
【0005】
がんの併用療法の治療は、一部には複数の経路を介して疾患を攻撃するという認識された利点に起因して、より一般的になってきている。例えば、外科手術又は放射線療法は、局所的に限局されたがんを治療する一方で、抗がん剤はまた、離れた部位に広がったがん細胞を死滅させる。多くの有効な併用療法の治療が、過去数十年にわたって特定されてきた。がんから生じる毎年の死亡数が引き続き多いことを考慮すると、抗がん治療に使用するための有効な治療レジメンを特定することが引き続き必要とされている。
【0006】
したがって、がんを治療するための改善された方法が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、放射線及びアシルフルベンを用いて固形がん又は腫瘍を治療するための方法又は併用療法を開示する。一態様は、ある対象におけるがんを治療する方法であって、アシルフルベン、及び治療に有効な量の放射線を対象に投与することを含み、対象が、有効量の放射線による治療後に基準レベルと比べて上昇したレベルのPTGR1を発現するがん細胞を有すると同定される、方法を含む。放射線は、アシルフルベンの投与若しくは投薬の前に、又はアシルフルベンを含む治療レジメンの開始時に投与することができる。この対象は、有効量の放射線照射後であるがヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの投与前に、基準レベルと比較してPTGR1の発現が増加している。このアシルフルベンは、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフベン又はイロフルベンであり得る。このがんは、化学療法に対して耐性であり得るか、又は(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに対して耐性であり得る。
【0008】
別の態様は、治療されたがんが固形がんである方法を含む。
【0009】
別の態様は、対象が、膵臓がん、肺がん、乳がん、結腸がん、肝臓がん、皮膚がん、脳がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、又は脳がんと診断される方法を含む。
【0010】
別の態様は、放射線に曝露されたがん又はがん細胞が、更なるレベル又はより高いレベルのPTGR1(放射線への曝露前よりも)を発現する方法を含む。
【0011】
別の態様は、アシルフルベン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(又はそれらの追加用量)が対象に投与される前に、放射線が対象に投与される方法を含む。
【0012】
別の態様は、腫瘍が、扁平上皮がん腫瘍(SCC腫瘍)、膵臓がん腫瘍及び結腸がん腫瘍からなる群から選択される方法を含む。
【0013】
別の態様は、対象におけるがん又は腫瘍を治療する方法であって、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを、それを必要とする対象に投与することと、ガン又は腫瘍に治療有効量の放射線を照射することとを含み、照射が、有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの投与の前又は同時に行われる、方法を含む。腫瘍は、有効量の放射線による治療後に、基準レベルと比較して増加したPTGR1発現を有し得る。腫瘍は、乳房、肺、脳、肝臓、皮膚、腎臓、GI器官、前立腺、膀胱、脳及び婦人科器官からなる群から選択される器官内に存在し得る。放射線療法は、肺照射、分割放射線療法、放射線手術及びそれらの組み合わせから選択することができる。対象は、動物又は哺乳動物であり得る。
【0014】
別の態様は、腫瘍又はがんが、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの投与前の有効量の後に基準レベルと比べて増加したPTGR1の発現を有する方法を含む。
【0015】
別の態様は、患者内の固形腫瘍を治療する方法であって、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はアシルフルベンの1つ以上又は複数の用量と、治療に有効な量の放射線とを患者内に投与することを含む方法を含む。対象は、有効量の放射線による治療後に、基準レベルと比較して上昇したレベルのPTGR1を発現するがん細胞を有すると同定され、放射線は、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与する前に患者に投与される。放射線は、治療サイクルにおける各投与の前後に、又は複数の投与のうちの投与とともに断続的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】放射線及びヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが、Panc03.27異種移植片又は細胞における腫瘍の縮小において相乗作用を有したことを示す。
【
図2】放射線(RT)及びヒドロキシウレアメチルアシルフルベンで治療した群からの21日目の終末腫瘍が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン単独又は放射線単独のいずれかでのみ治療したものよりも統計的に小さい(p値0.017)ことを示す。
【
図3】種々の治療アームから切除された終末腫瘍を示す。
【0017】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書の主題が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、本発明の理解を容易にするために、以下の定義が提供される。
【0018】
「投与する」、「投与すること」又は「投与された」という用語は、生理学的系(例えば、対象又はインビボ、インビトロ、若しくはエクスビボの細胞、組織、及び器官)に薬剤又は治療的処置を与える行為を指す。
【0019】
「有効量」という用語とは、本明細書で使用する場合、疾患又は障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減するために必要な薬剤の量を指し、所望の効果を実現するのに十分な薬理学的組成物の量に関する。したがって、用語「治療有効量」とは、典型的な対象に投与されると、特定の効果を実現するのに十分な薬剤の量を指す。有効量は、放射線とアシルフルベン(例えば、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン)との組み合わせに応答する病気の症状を減少させるのに十分な量であり得る。がん治療の場合、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(time to disease progression、TTP)、応答率(response rate、RR)、応答期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定することができる。有効量は、当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤との併用に応じて変化し得る。さまざまな状況における有効量はまた、本明細書において使用する場合、疾患の症状の発症を遅延させる、疾患症状の経過を改変させる(例えば、以下に限定されないが、疾患の症状の進行を減速させる)、又は疾患の症状を反転させるのに十分な量も含む。したがって、正確な「有効量」を指定することは一般に現実可能ではない。しかし、いずれの所与の場合においても、適切な「有効量」は、型通りの実験だけを使用して、当業者によって決定することができる。
【0020】
「患者」、「対象」、「個体」、及び「宿主」という用語は、異常な生物学的又は細胞増殖活性と関連する疾患若しくは障害に罹患しているか、又は罹患していると疑われるヒト又はヒトでない動物のいずれかを指す。
【0021】
「治療する」という用語が使用され、治療的処置及び予防的治療(発症の可能性を減少させる)の両方を含む。どちらの用語も、疾患の発症若しくは進行(例えば、本明細書において記載されている疾患又は障害)を低減する、抑制する、弱化させる、消滅させる、停止させる、又は安定化させる、疾患の重症度を低下させる、又は疾患に関連する症状を改善することを意味する。
【0022】
がんなどの状態又は疾患に関連して使用される場合の「予防する」という用語は、状態又は疾患の症状の頻度の減少又は発症の遅延を指す。したがって、がんの予防には、例えば、未治療の対照集団と比較して予防的治療を受けている患者の集団における検出可能ながん性増殖の数を減らすこと、及び/又は例えば、統計的及び/又は臨床的に有意な量によって、治療された集団対未治療の集団における検出可能ながん性増殖の出現を遅らせることが含まれる。
【0023】
本明細書で使用される「発現レベル」及び「発現のレベル」という用語は、細胞、組織、生物学的試料、生物、又は患者における遺伝子産物、例えば、DNA、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))の量、又は所与の遺伝子に対応するタンパク質の量を指す。
【0024】
「電磁放射(波)」又は「電磁放射(波)」という用語は、光(紫外線、可視光、及び赤外線)、マイクロ波、及び無線周波数放射(波)を含む(がこれらに限定されない)電気及び磁気成分を有する放射(波)を指す。
【0025】
「薬学的に許容される」という用語は、一般に安全で毒性がなく、生物学的にも他の方法でも望ましい薬学的組成物を調製するのに有用であることを意味し、獣医並びにヒトの医薬使用に許容されるものを含む。
【0026】
「同様の線量の電離放射線」という用語は、別の対象の腫瘍に投与されるか、又は既存の治療過程を受けている同じ対象の腫瘍に投与される有効線量と同一、ほぼ同じ、又は実質的に同じ電離放射線の線量を指す。この用語は、電離放射線を対象の腫瘍に投与する当業者である医療技術者によって送達される電離放射線量の正常な変動及び予想される変動を包含する。例えば、この用語は、腫瘍に投与される有効用量の10%未満、5%未満、又は1%未満の変動を包含する。対象は、ヒト又は非ヒト動物、例えば、ペット(例えば、ネコ、イヌ)又は家畜(例えば、ウシ、ウマなど)であり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「選択的に」という用語は、1つの集団において別の集団よりも高い頻度で生じる傾向があることを意味する。比較される集団は、細胞集団であり得る。好ましくは、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、がん又は前がん細胞に選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。好ましくは、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1つの分子標的(例えば、ヌクレオチド除去修復(NER)プレーヤーERCC3又はPTGR1(プロスタグランジンレダクターゼ1))を調節するように選択的に作用する。本発明はまた、酵素(例えば、NERタンパク質)の活性を選択的に阻害する方法を提供する。好ましくは、ある事象が、集団Bと比較して集団Aにおいて2倍よりも高い頻度で発生する場合、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に発生する。ある事象は、集団Aにおいて5倍よりも高い頻度で発生する場合、選択的に発生する。ある事象は、集団Bと比較して集団Aにおいて10倍よりも高い頻度で発生する場合、より好ましくは、50倍より高い頻度で発生する場合、更により好ましくは、100倍より高い頻度で発生する場合、最も好ましくは、1000倍より高い頻度で発生する場合、選択的に発生する。例えば、細胞死は、正常細胞と比較して、がん細胞において2倍を超えて頻繁に起こる場合、がん細胞において選択的に起こると言われる。
【0028】
「難治性がん又は抵抗性がん」は、治療に応答しないがんを意味する。がんは、治療の開始時に抵抗性であってもよく、治療中に抵抗性になってもよい。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、直近の療法での寛解後のがん再発を有する。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、がん治療のための全ての既知の有効な療法を受け、失敗した。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、少なくとも1つの以前の療法を受けた。特定の実施形態では、以前の療法は、単剤療法である。特定の実施形態では、以前の療法は、併用療法である。
【0029】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、特定された疾患若しくは状態を治療、改善若しくは予防するための、又は検出可能な治療効果若しくは阻害効果を示すための薬学的薬剤の量を指す。効果は、当該技術分野で既知の任意のアッセイ方法によって検出することができる。対象に対する正確な有効量は、対象の体重、サイズ、及び健康、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択される治療薬又は治療薬の組み合わせに依存するだろう。所与の状況に対する治療有効量は、臨床医の技量及び判断の範囲内にある型通りの実験によって決定することができる。好ましい態様では、治療される疾患又は状態は、がんである。別の態様では、治療される疾患又は状態は、細胞増殖性障害である。一部の実施形態では、アシルフルベン又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、20mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日及び720mg/日からなる群から選択される。一部の実施形態では、ヒドロキシウレアメチル-アシルフルベン又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、0.5mg/日、1mg/日、2.5mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日及び720mg/日からなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願は、放射線及びアシルフルベンを使用した固形がんを治療するための併用療法を提供する。いくつかの実施形態では、併用療法を使用して、固形がん(肺がん、乳がん、前立腺がん、結腸がん、直腸がん、及び膀胱がん)、神経膠芽腫及び非定型奇形腫様腫瘍ラブドイド、並びに腎細胞がん)の発生又は再発を治療することができる。他の実施形態では、本療法は、アシルフルベン(例えば、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン)又はその塩及び放射線が(例えば、治療サイクルにおける薬物投与の前及び同時に)治療有効量で患者に投与される、血液がんの生化学的発生及び再発を治療するために使用することができる併用療法を含む。実施形態では、本療法は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)及び放射線を含む活性薬剤の組み合わせを投与することを含む。他の実施形態では、本療法は、他の療法の組み合わせを投与することを含む。特定の実施形態では、治療は、原発性腫瘍細胞の増殖を阻害すること、転移の形成を阻害すること、転移の増殖を阻害すること、循環がん細胞を死滅させること、がん幹細胞の増殖及び/若しくは生存を阻害すること、寛解を誘導すること、寛解を延長すること、又は再発を阻害することを含む。一部の実施形態では、治療は、がん幹細胞の増殖及び/又は生存を阻害することを含む。
【0031】
イルジン又はアシルフルベン
一実施形態では、本出願は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)の使用を含む。アシルフルベンは、ジャック・オ・ランタンキノコ(Omphalotus olearius)から抽出することができる天然産物であるイルジンの細胞傷害性半合成誘導体の一種である。酸による処理(逆プリンス反応)によってセスキテルペンイルジンSから誘導されるアシルフルベンは、イルジンSよりも、チオールに対してはるかに反応性が低い。
【0032】
一実施例では、アシルフルベンは、(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(Lantern Pharma Inc.によってLP-184と呼ばれる)であり、これは光を正にシフトさせ、以下に示される。
【0033】
【0034】
別の実施例では、アシルフルベンは、(+)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(Lantern Pharma Inc.によってLP-284と呼ばれる)であり、これは光を正にシフトさせ、以下に示される。
【0035】
【0036】
(+)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、エナンチオマーであり、現在では公的に知られている。
【0037】
別の例では、アシルフルベンは、イロフルベンである。
【0038】
固形腫瘍又はがんを治療する方法に関する具体的な実施形態は、有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを、それを必要とする対象に、1回以上の放射線投与と一緒に(その前、後、又は同時に)投与することを含む方法に関する。対象を放射線で治療して、対象をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンによる治療に対して感作させるための方法が提供される。一例では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、単剤療法として投与され得る。
【0039】
放射線
放射線でがんを治療する方法は、周知である。放射線療法(radiation therapy又はradiotherapy)は、電離放射線の医学的使用であり、一般に、悪性細胞を制御又は死滅させるためのがん治療の一部である。
【0040】
光子放射線治療において使用される放射線の量は、グレイ(Gy)で測定され、治療されるがんのタイプ及びステージに依存して変動する。治癒症例では、固形上皮性腫瘍のための典型的な用量は60~80Gyの範囲である。リンパ腫は20~40Gyで治療される。
【0041】
放射線の総線量は、多くの場合、いくつかの重要な理由のために分割される(経時的に分散される)。分割は、正常細胞に回復する時間を与えるが、腫瘍細胞は、一般に、フラクション(照射)間の修復において効率が低い。分割はまた、1回の治療周期中に細胞周期の比較的放射線耐性期にあった腫瘍細胞が、次のフラクションが投与される前に周期の感受性期に循環することを可能にする。同様に、慢性的又は急性的に低酸素性であった(したがって、より放射線抵抗性であった)腫瘍細胞は、トラクション間に再酸素化され、腫瘍細胞死滅を改善し得る。
【0042】
分割レジメンは、異なる放射線治療センター間で、更には個々の医師間で個別化される。北米、オーストラリア、及び欧州では、成人の典型的な分割スケジュールは、1日あたり1.8~2Gy、週5日である。いくつかのがんタイプでは、フラクションスケジュールの長すぎる延長は、腫瘍が再増殖し始めることを可能にし得、頭頸部及び子宮頸部扁平上皮細胞がんを含むこれらの腫瘍タイプについて、放射線治療は、好ましくは、特定の量の時間内に完了される。小児の場合、典型的なフラクションサイズは、1日当たり1.5~1.8Gyであり得るが、これは、より小さいフラクションサイズが、正常組織における遅発性副作用の発生率及び重症度の低減に関連するためである。
【0043】
いくつかの場合において、1日あたり2回のフラクションが、治療過程の終わり近くに使用される。同時ブーストレジメン又はハイパーフラクションとして知られるこのスケジュールは、腫瘍がより小さい場合により迅速に再生する腫瘍に対して使用される。特に、頭頸部の腫瘍は、この挙動を示す。
【0044】
ますます使用され、研究され続けている1つのフラクションスケジュールは、ハイポフラクションである。これは、放射線の総線量が大きな線量に分割される放射線治療である。典型的な線量は、2.2Gy/フラクション~20Gy/フラクションまで、がんの種類によって有意に異なる。ハイポフラクションの背後にある論理は、細胞に再生するのに十分な時間を与えないことによってがんが再発する可能性を低下させ、またいくつかの腫瘍の固有の生物学的放射線感受性を利用することである。このような治療について非常に良好な証拠がある1つの一般的に治療される部位は、乳がんである。3~4週間にわたる短期のハイポフラクション治療、例えば、15フラクションで40Gy又は16フラクションで42.5Gyは、がん制御及び美容術(患者の外観の回復)の両方に関して、より長期の5~6週間の治療と同程度に有効であることが示されている。当業者は、治療スケジュール、並びに本発明の方法と組み合わせて投薬及び治療スケジュールをどのように変化させるかを理解するであろう。
【0045】
予防(アジュバント)線量(がんの初期治療後に適用される療法を意味する)は、典型的には、1.8~2Gyフラクションで約45~60Gyである(乳がん、頭部がん、及び頸部がんについて)線量を選択する場合、患者が化学療法を受けているか否か、患者の共存症、放射線療法が手術の前又は後に施されているか否か、及び手術の成功の程度を含む多くの他の因子が放射線腫瘍学者によって考慮される。
【0046】
処方線量の送達パラメータは、治療計画(線量測定の一部)中に決定される。治療計画は、一般に、専用の治療計画ソフトウェアを使用して専用コンピュータ上で実行される。放射線送達方法に依存して、いくつかの角度又は線源が、必要な総線量を合計するために使用され得る。熟練した医師は、均一な処方用量を腫瘍に送達し、周囲の健康な組織への線量及び副作用を最小限に抑える計画を設計する。
【0047】
一実施形態において、放射線は、アシルフルベン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの治療サイクルにおいて、各薬物投与の前又は各薬物投与と同時に与えられる。例えば、患者に放射線を照射し、アシルフルベン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの用量を投与し、次いで再び放射線を照射し、アシルフルベン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの用量を投与することができる。放射線は、治療サイクル中のいずれか又は全ての薬物投与の前に施される必要はない。いくつかの実施形態において、放射線は、アシルフルベンの投与のいくらか前に与えられ、他の実施形態において、放射線は、アシルフルベンの投与のいくらか前に与えられる。更に他の実施形態において、アシルフルベンの投与は、放射線照射後であって、PTGR1のレベルが以前のレベルから上昇した後に行われてもよい。放射線は、3~6Gy、2~4Gy、1~2Gy、又は4~6Gyであり得る。
【0048】
一部の実施形態では、腫瘍試料中のすべてのバイオマーカーの平均及び/又はランク付けされた発現レベルは、正常組織における発現レベルと比較して増加又は減少している。したがって、一部の実施形態では、腫瘍試料中のすべてのバイオマーカーの平均及び/又はランク付けされた発現レベルは、正常組織中の発現レベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上増加又は減少する。いくつかの態様において、正常組織における発現レベルは、対照又はベースラインレベルに対して正常化される。発現レベルはまた、治療、治療の過程、治療計画の前、後、又は間に、腫瘍試料における発現レベルと比較され得ることが理解されよう。一実施例において、バイオマーカーは、PTGR1であり、放射線曝露の結果として発現するか、又は更に発現する。この実施形態では、PTGR1のレベルは、任意の放射線照射の前又は後に測定することができる。
【0049】
一実施形態は、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び追加の治療薬を別々の組成物又は同じ組成物で同時投与することを含む。したがって、いくつかの実施形態は、(a)安全かつ治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はその薬学的に許容される塩と、(b)第2の薬学的組成物とを含む第1の薬学的組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象を放射線療法に供することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの投与の前、後、又は同時に投与することができる放射線治療は、全臓器照射、分割放射線療法、又は放射線手術であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本方法は、線量閾値を使用して放射線治療計画の限界を指定することを含み、限界は、標的内の各サブ体積の照射時間の限界と、ターゲット外の各サブボリュームに対する照射時間の限界と、前記ターゲット内の各サブボリュームに対する線量率の限界と、前記ターゲット外の各サブボリュームに対する線量率の限界と、からなる群から選択される。
【0051】
一部の実施形態では、用量閾値は、組織型及び/又は免疫学的プロファイルを含むがこれらに限定されない複数の生物学的因子に依存する。
【0052】
いくつかの実施形態では、ビームは、陽子、電子、光子、原子核、及びイオンから成る群から選択されるタイプのビームを含む。
【0053】
いくつかの実施形態は、腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する方法に関し、前記方法は、放射線照射の前、後、又は同時に、腫瘍細胞をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、腫瘍細胞を有する対象に、放射線照射の前、後、又は同時に、有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与することを含む。
【0054】
別の実施形態では、第2の治療薬は、カンプトテシン誘導体、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンB、5-FU、ゲムシタビン、オキサリプラチン、シスプラチナム、カルボプラチン、メルファラン、ダカルバジン、テモゾロミド、ドキソルビシン、イマチニブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、セツキシマブ及びRafキナーゼ阻害剤から選択される、1つ以上の化学療法剤である。
【0055】
別の実施形態では、第2の治療薬は、パクリタキセル又はシスプラチナムから選択される1つ以上の化学療法剤である。
【0056】
「併用療法」という用語は、他の生物学的に活性な成分及び非薬物療法(例えば、外科手術又は放射線治療)と更に組み合わせた、上述の治療薬剤の投与を含むことができるか、又は含む。併用療法が非薬物治療を更に含む場合、非薬物治療は、治療薬剤と非薬物治療との組み合わせの同時作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時間に行われ得る。例えば、適切な場合では、有益な効果は、非薬物治療が治療薬剤の投与から一時的に(おそらく数日又は更に数週間)除去される場合にでも達成される。
【0057】
併用療法の方法は、化合物又は他の治療薬剤の併用の効果が、単剤としての化合物又は他の治療薬剤のいずれかの投与から生じる効果の合計よりも大きい、相乗効果をもたらし得るか、又はもたらすべきである。相乗効果はまた、化合物又は他の治療薬剤のいずれかを単剤として投与することによって達成することができない効果であってもよい。相乗効果としては、腫瘍サイズを減少させること、腫瘍成長を阻害すること、又は対象の生存を増加させることによって、がんを治療する効果が挙げられ得るが、これらに限定されない。相乗効果はまた、がん細胞生存を減少させること、がん細胞死を誘導すること、及びがん細胞成長を阻害又は遅延させることを含み得る。
【0058】
治療有効用量は、当業者によって認識されるように、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の年齢及び全身健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療的処置との併用の可能性、並びに治療する医師の判断に応じて変わり得る。例えば、有効用量を選択するためのガイダンスは、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの処方情報又はその雑誌の議論を参照することによって決定することができる。
【0059】
本明細書に記載されている方法に準拠する薬剤の投与の投薬量範囲は、例えば、薬剤の形態、その効力、及び本明細書に記載されている状態の症状、マーカー又は指標が低減することが望ましい程度、例えば、腫瘍成長に対して望ましい低下率に依存する。投薬量は、有害な副作用を引き起こすほど多くあるべきではない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、及び性別に応じてさまざまとなり得、当業者によって決定することができる。投薬量は、いかなる合併症の事象も個々の医師によってやはり調節可能である。
【0060】
例えば、本明細書に記載されている状態の治療における、又は本明細書に記載されている応答(例えば、固形がん又は血液がん)を誘導するための、本明細書に記載されている薬剤の効力は、熟練した臨床医によって決定することができる。しかし、本明細書に記載されている状態の徴候又は症状の1つ以上が有益に変化し、他の臨床的に許容される症状が好転する、若しくは改善さえする、又は所望の応答が、例えば、本明細書に記載されている方法による治療後に少なくとも10%誘導される場合、治療は、この用語が本明細書で使用される場合、「有効な治療」と考えられる。例えば、効力は、本明細書に記載されている方法により治療される状態のマーカー、指標、症状及び/若しくは出現率、又は任意の他の測定可能な適切なパラメータ、例えば腫瘍サイズ及び/若しくは成長速度を測定することによって評価することができる。効力はまた、入院によって評価される個体が悪化するという不良、又は医学的介入(すなわち、疾患の進行が停止される)の必要性によって測定され得る。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知である、及び/又は本明細書に記載されている。治療は、個体又は動物(いくつかの非限定例には、ヒト又は動物を含む)における疾患の任意の治療を含み、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状(例えば、疼痛若しくは炎症)の悪化を予防すること、又は(2)疾患の重症度を軽減すること、例えば、症状の後退を引き起こすことを含む。疾患の治療のための有効量は、それを必要とする対象に投与した場合、その用語がその疾患に対して本明細書に定義されるような有効な治療をもたらすのに十分な量であることを意味する。薬剤の効力は、状態の物理的な指標又は所望の応答を評価することによって判定することができる。このようなパラメータのいずれか1つ、又はパラメータの任意の組み合わせを測定することにより、投与及び/又は治療の効力をモニタリングすることは、当業者の能力の範囲内に十分ある。効力は、本明細書に記載されている状態の動物モデルにおいて、例えば、マウスモデルにおける血液がんの治療において評価することができる。実験動物モデルを使用する場合、治療の効力は、マーカーの統計学的に有意な変化、例えば、腫瘍サイズ及び/又は腫瘍成長速度を観察すると立証される。一部の実施形態では、ヒドロキシウレアメチル-アシルフルベン又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、0.5mg/日、1mg/日、2.5mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日及び720mg/日からなる群から選択される。
【0061】
化合物を利用する投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;治療される状態の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;並びに使用される特定の化合物又はその塩を含む種々の因子に従って選択される。通常の熟練した医師又は獣医は、状態の進行を予防し、逆行させ、又は停止させるのに必要な薬物の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0062】
投与期間は、腫瘍が制御下にあり、レジメンが臨床的に耐用されるかぎり、数週間の治療サイクルであり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又は他の治療薬の単回投薬量は、週に1回、好ましくは3週間(21日)治療サイクルの1日目及び8日目に各1回投与することができる。一部の実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又は他の治療薬の単回投薬量は、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間の治療サイクル中に、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、又は毎日投与することができる。投与は、治療サイクルの各週の同じ日又は異なる日とすることができる。
【0063】
別の実施形態は、対象における固形腫瘍又はがんを治療する方法であって、(a)腫瘍に放射線を照射することと、(b)複数の標的について、対象由来の試料中の、免疫組織化学によるタンパク質の発現レベル、又はFISHによるRNA若しくはコード領域の喪失、又はDNA配列決定を得るか、又は得たことと、(b)対象がヒドロキシウレアメチルアシルフルベンによる治療に対して感受性であることを決定することと、(c)ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを含むがん治療を施すことと、を含む、方法を含む。
【0064】
本発明にしたがって使用するためのヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、主に、具体的には皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、髄腔内投与、硬膜外投与、関節内投与及び局所投与を含む非経口投与によって投与することができ、又は例えば、可能な場合、経口投与によって、さまざまな剤形で投与されてもよい。
【0065】
非経口投与のための注射剤としては、例えば、無菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液が挙げられる。水溶液及び懸濁液としては、例えば、注射用蒸留水及び生理食塩水が挙げられる。非水性溶液及び懸濁液としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、及びポリソルベート80(商品名)が挙げられる。このような組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤(例えば、ラクトース)及び溶解補助剤(例えば、メグルミン)などの補助剤を含有してもよい。これらは、細菌保持フィルターによる濾過、殺菌剤の配合又は照射によって殺菌される。代替的に、これらは、無菌固体組成物に一度製造され、次いで、使用前に注射用の無菌水若しくは無菌溶媒に溶解又は懸濁されてもよい。
【0066】
任意の特定の患者のための具体的な投与量及び治療レジメンは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食事、投与時間、排出速度、併用薬物、並びに治療医師の判断及び治療される特定の疾患の重症度を含めた、さまざまな因子に依存することもやはり理解されるべきである。組成物中の本発明の化合物の量はまた、組成物中の特定の化合物に依存するであろう。
【0067】
本発明の開示された化合物の処方及び投与のための技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19.sup.th edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1995)に見出され得る。一実施形態では、本明細書に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて薬学的調製物中で使用される。適切な薬学的に許容される担体としては、不活性固体充填剤又は希釈剤及び滅菌水溶液若しくは有機溶液が挙げられる。化合物は、このような薬学的組成物中に、本明細書に記載の範囲内の所望の投薬量を提供するのに十分な量で存在する。
【0068】
本明細書で使用される全ての割合及び比率は、別段の指示がない限り、重量基準である。本発明の他の特徴及び利点は、異なる例から明らかである。提供される例は、本発明を実施するのに有用な異なる構成要素及び方法論を例示する。例は、特許請求の範囲に記載された発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の成分及び方法論を特定し、使用することができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」は、前がん状態を有する対象である。好ましくは、それを必要とする対象は、がんを有する。「対象」は、哺乳動物を含む。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、鳥類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ又はブタであり得る。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。本発明の対象には、がん若しくは前がん状態と診断されたか、がん若しくは前がん状態の症状を有するか、又はがん若しくは前がん状態を発症するリスクがある任意のヒト対象が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、以前の療法の結果として続発性がんを有し得る。「続発性がん」は、化学療法などの以前の発がん療法に起因して、又はその結果として生じるがんを意味する。
【0071】
がんは、ほとんど任意の徴候又は症状を引き起こし得る疾患群である。徴候及び症状は、がんがどこにあるか、がんのサイズ、及びがんがどの程度近くの器官又は構造に影響を及ぼすかに依存する。がんが広がる(転移する)場合、症状は、身体の異なる部分に現れ得る。
【0072】
がんを治療することで、腫瘍のサイズを減少させることができる。腫瘍のサイズの減少はまた、「腫瘍退縮」とも称されることがある。好ましくは、治療後、腫瘍サイズは、治療前のそのサイズに対して、5%以上減少し、より好ましくは、腫瘍サイズは、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%以上減少する。腫瘍のサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定されてもよい。
【0073】
がんを治療することで、腫瘍の数及びサイズが低下する。好ましくは、治療後、腫瘍の数又はサイズは、治療前の数に対して、5%以上減少し、より好ましくは、腫瘍の数又はサイズは、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%より大きく減少する。腫瘍の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍の数は、裸眼に目視可能な、又は特定の倍率で、腫瘍を計数することによって測定され得る。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
【0074】
がんを治療することで、原発腫瘍部位から離れた他の組織又は器官における転移性病変の数の低下をもたらし得る。好ましくは、治療後に、転移性病変の数は、治療前の数に対して、5%以上減少し、より好ましくは、転移性病変の数は、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%より大きく減少する。転移性病変の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。転移性病変の数は、裸眼で目視可能な、又は特定の倍率で、転移性病変を計数することによって測定され得る。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
【0075】
がんを治療することで、担体を単独で受ける集団と比較して、治療された対象の集団の平均生存期間が増大し得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて、増大する。集団の平均生存期間の増大は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増大は、例えば、活性化合物による治療の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の増大はまた、例えば、活性化合物による治療の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。
【0076】
がんの治療により、未治療対象の集団と比べ、治療対象の集団の平均生存期間の増大がもたらされ得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて、増大する。集団の平均生存期間の増大は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増大は、例えば、活性化合物による治療の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の増大はまた、例えば、活性化合物による治療の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。
【0077】
がんを治療することで、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物ではない薬物による単剤療法を受けている集団と比較して、治療対象の集団の平均生存期間の増大がもたらされ得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて、増大する。集団の平均生存期間の増大は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増大は、例えば、活性化合物による治療の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。集団の平均生存期間の増大はまた、例えば、活性化合物による治療の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定することができる。
【0078】
がんを治療することで、担体を単独で受ける集団と比較して、治療対象の集団の致死率の低下がもたらされ得る。がんを治療することで、未治療の集団と比較して、治療対象の集団の致死率の低下がもたらされ得る。がんを治療することで、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物ではない薬物による単剤療法を受けている集団と比較して、治療対象の集団の致死率の低下がもたらされ得る。好ましくは、致死率は、2%より大きく低下し、より好ましくは、5%より大きく低下し、より好ましくは、10%より大きく低下し、最も好ましくは、25%より大きく低下する。治療対象の集団の致死率の低下は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の致死率の低下は、例えば、活性化合物による治療の開始後に、集団に関して、単位時間あたりの疾患関連死の数平均を計算することによって測定することができる。集団の致死率の低下はまた、例えば、活性化合物による治療の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、単位時間あたりの疾患関連死の数平均を計算することによって測定することができる。
【0079】
がんを治療することで、腫瘍成長速度の低下がもたらされ得る。好ましくは、治療後に、腫瘍成長速度は、治療前の数に対して、少なくとも5%低下し、より好ましくは、腫瘍成長速度は、少なくとも10%減少し、より好ましくは、少なくとも20%減少し、より好ましくは、少なくとも30%減少し、より好ましくは、少なくとも40%減少し、より好ましくは、少なくとも50%減少し、更により好ましくは、少なくとも50%減少し、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。腫瘍成長速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍成長速度は、単位時間あたりの腫瘍の直径の変化により測定され得る。
【0080】
がんを治療することで、腫瘍の再成長の低下がもたらされ得る。好ましくは、治療後に、腫瘍再成長は、5%未満であり、より好ましくは、腫瘍再成長は、10%未満であり、より好ましくは、20%未満であり、より好ましくは、30%未満であり、より好ましくは、40%未満であり、より好ましくは、50%未満であり、更により好ましくは、50%未満であり、最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再成長は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍の再成長は、例えば、治療の後に続く以前の腫瘍収縮後の腫瘍の直径の増加を測定することによって測定される。腫瘍の再成長の低下は、治療が停止された後に腫瘍が再発生しないことによって示される。
【0081】
細胞増殖性障害の治療又は予防は、細胞増殖の速度の低下をもたらし得る。好ましくは、治療後に、細胞増殖速度は、少なくとも5%減少し、より好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖の速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。細胞増殖の速度は、例えば、単位時間当たりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することによって測定される。
【0082】
細胞増殖性障害の治療又は予防は、増殖細胞の割合の減少をもたらし得る。好ましくは、治療後に、増殖細胞の割合は、少なくとも5%減少し、より好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。増殖細胞の割合は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。好ましくは、増殖細胞の割合は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量することによって測定される。増殖細胞の割合は、分裂指数と同等であり得る。
【0083】
細胞増殖性障害の治療又は予防は、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズの低下をもたらし得る。好ましくは、治療後に、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、治療前のそのサイズに対して、少なくとも5%減少し、より好ましくは、少なくとも10%減少し、より好ましくは、少なくとも20%減少し、より好ましくは、少なくとも30%減少し、より好ましくは、少なくとも40%減少し、より好ましくは、少なくとも50%減少し、更により好ましくは、少なくとも50%減少し、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、細胞増殖の領域又はゾーンの直径又は幅として測定され得る。
【0084】
細胞増殖性障害の治療又は予防により、外観又は幾何形状の異常を有する細胞の数又は割合の低下がもたらされ得る。好ましくは、治療後に、異常な形態を有する細胞の数は、治療前のそのサイズに対して、少なくとも5%減少し、より好ましくは、少なくとも10%減少し、より好ましくは、少なくとも20%減少し、より好ましくは、少なくとも30%減少し、より好ましくは、少なくとも40%減少し、より好ましくは、少なくとも50%減少し、更により好ましくは、少なくとも50%減少し、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。異常な細胞の外観又は形態は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。異常細胞の幾何形状は、例えば、倒立組織培養顕微鏡を使用することによって測定することができる。異常細胞の幾何形状は、核多形成の形態をとり得る。
【0085】
本発明の組成物を、それを必要とする細胞又は対象に投与することは、目的のタンパク質メチルトランスフェラーゼの活性の調節(すなわち、刺激又は阻害)をもたらし得る。
【0086】
がん又は細胞増殖性障害を治療することで、細胞死を引き起こすことができ、好ましくは、細胞死は、集団における細胞数の少なくとも10%の低下をもたらす。より好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の低下、より好ましくは、少なくとも30%の低下、より好ましくは、少なくとも40%の低下、より好ましくは、少なくとも50%の低下、最も好ましくは、少なくとも75%の低下を意味する。集団における細胞数は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団中の細胞数は、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting、FACS)、免疫蛍光顕微鏡法及び光学顕微鏡法によって測定することができる。細胞死を測定する方法は、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.100(5):2674-8,2003に示される通りである。一態様では、細胞死は、アポトーシスによって生じる。
【0087】
好ましくは、有効量の本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が正常細胞の10%を超える細胞死を誘導しない場合、正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が正常細胞の10%を超える細胞死を誘導しない場合、正常細胞の生存率に有意に影響しない。一態様では、細胞死は、アポトーシスによって生じる。
【0088】
細胞を、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と接触させることで、がん細胞において、選択的に細胞死が誘導又は活性化され得る。それを必要とする対象に、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することにより、がん細胞において、選択的に細胞死が誘導又は活性化され得る。細胞を、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と接触させることで、細胞増殖性障害によって影響を受ける1つ以上の細胞において、選択的に細胞死が誘導され得る。好ましくは、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することで、細胞増殖性障害によって影響を受ける1つ以上の細胞において選択的に細胞死を誘導する。
【0089】
本発明は、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することによって、がんを治療又は予防する方法であって、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞周期の1つ以上の期(例えば、G1、G1/S、G2/M)における細胞の蓄積によるがん細胞増殖の予防、又は細胞老化の誘導、又は腫瘍細胞分化の促進、正常細胞における有意な量の細胞死を伴わない、細胞傷害性、壊死又はアポトーシスによるがん細胞における細胞死の促進、少なくとも2の治療指数を有する動物における抗腫瘍活性のうちの1つ以上をもたらす。本明細書で使用される場合、「治療指数」は、最大耐用量を有効用量で割ったものである。
【0090】
当業者は、本明細書で論じられる既知の技術又は同等の技術の詳細な説明について一般的な参照テキストを参照することができる。これらのテキストは、もちろん、本発明の態様を作製又は使用する際にも参照することができる。
【実施例】
【0091】
(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(又はLP-184)による放射線照射後治療を使用する併用療法アプローチが有効であることを示す。治療戦略は、放射線を使用して膵臓がんにおけるPTGR1の発現を上昇させることを含んだ。PTGR1の発現は、少なくとも部分的に、核因子赤血球由来2(NRF2)によって調節され、これは、抗酸化応答遺伝子の主要な転写調節因子であり、腫瘍における放射線耐性の確認された決定因子である。NRF 2誘導遺伝子は、放射線傷害及びフリーラジカルを中和する。PTGR1は、NRF2誘導遺伝子の中の1つであり、細胞毒性部分へのLP-184の排他的なコンバータでもある。したがって、放射線治療(RT)は、照射された腫瘍において任意選択的にPTGR1発現(及び結合(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン抗腫瘍細胞毒性)を増加させる機会を提供する。
【0092】
膵臓腫瘍の放射線(RT)前治療及びその後のインビボでの(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン治療、4Gy RTを週1回投与し、その翌日、Panc03.27異種移植片中の3mg/kg i.p.LP-184を合計3週間投与した。マウスは、予め確立された皮下を有する。Panc03.27異種移植片を、ビヒクル対照、4Gy RT単独、3mg/kg LP-184単独又はそれらの組合せで治療した。LP-184+RT群は、
図1に示すように、LP-184単独又はRT単独と比較して、平均終末期腫瘍体積において統計的有意差を示した。この図は、
図2に示されるように、平均腫瘍体積が、LP-184単独動物(p=0.017)と比較して、LP-184+RT動物において約2倍(約1.8倍)低かったことを示す。様々な治療群から切除した終末腫瘍を
図3に示す。
【0093】
図1は、Panc03.27異種移植片においてLP-184と相乗作用した放射線を示す。ビヒクル対照(灰色の丸、N=6)、4Gy RT単独(赤色の四角、N=5)、3mg/kg i.p.LP-184単独(緑色の三角、N=6)、及びRT+LP-184(青色の逆三角、N=10)で治療したPanc03.27皮下異種移植片腫瘍における、治療開始後の日数にわたる立方ミリメートルでの平均腫瘍体積のラインプロットを示す。エラーバーはSEMを表す。
【0094】
図2は、RT+LP-184治療群からの終末期腫瘍(21日目)が、LP-184単独又はRT単独治療群における終末期腫瘍より統計的に小さい(p値0.017)ことを示す。
図3は、研究終了時(21日目)のPanc03.27異種移植片腫瘍とLP-184+RT群からの腫瘍との比較が、最小平均体積を有するようであることを示す。
【国際調査報告】