(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】不織布、該不織布の製造方法及びその物品
(51)【国際特許分類】
D04H 3/147 20120101AFI20241024BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20241024BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20241024BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20241024BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
D04H3/007
D04H3/14
D01F8/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529821
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022016364
(87)【国際公開番号】W WO2023090674
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159409
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0115003
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】グム・シグ・シン
【テーマコード(参考)】
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BB07
4L041BC04
4L041BD03
4L041CA38
4L041DD04
4L041EE20
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA19
4L047AA27
4L047AB03
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB02
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA05
4L047EA06
(57)【要約】
不織布、該不織布の製造方法及びその物品が開示される。開示された不織布は、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D4440-08による、100sec
-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)である、不織布。
【請求項2】
前記不織布は、芯鞘型複合繊維を含み、
前記芯鞘型複合繊維は、ASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が20~50g/10分である芯部、及びASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が40~120g/10分である鞘部を含む、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記鞘部は、溶融指数(MFR)が、前記芯部より10~100g/10分ほど大きい、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記鞘部対前記芯部の重量比は、1~5:9~5である、請求項2に記載の不織布。
【請求項5】
前記芯部は、第1ポリプロピレンを含み、前記鞘部は、第2ポリプロピレンを含む、請求項2に記載の不織布。
【請求項6】
下記数式1で表されるタフネスが100~300である、請求項1に記載の不織布:
【数1】
【請求項7】
前記不織布は、スパンボンド不織布である、請求項1に記載の不織布。
【請求項8】
前記不織布は、2以上の層によってなる、請求項1に記載の不織布。
【請求項9】
芯部形成用重合体と鞘部形成用重合体とを、それぞれ別個の押出機で溶融させ、芯部形成用溶融物及び鞘部形成用溶融物を形成する段階(S10)と、
前記各溶融物を、複合紡糸ノズルを有する紡糸口金を介して吐出させ、複合長繊維を放出させる段階(S20)と、
前記放出された複合長繊維を、冷却させて延伸させる段階(S30)と、
前記冷却されて延伸された複合長繊維を、捕集ベルト上に捕集し、既定の厚みに堆積させ、不織布を形成する段階(S40)と、を含み、
前記段階(S20)において、前記紡糸口金の温度は、230~250℃に維持される、不織布の製造方法。
【請求項10】
前記段階(S40)において形成された不織布に、機械的物性を付与する段階(S50)をさらに含む、請求項9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の不織布を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、該不織布の製造方法及びその物品に係り、さらに詳細には、ボンディング性及び強度にいずれも優れる不織布、該不織布の製造方法及びその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、医療用、防護服用及びマスク用のような産業用、及びおむつや、生理用ナプキンのような衛生材用のような多様な用途に使用されている。
【0003】
また、不織布は、一般的に、2以上の層がボンディングされた多層構造に製造されて使用されるが、ほとんどの用途において、すぐれた強度を有することが要求される。従って、多くの研究者らが優れた強度を有する多層構造の不織布開発に没頭している実情である。
【0004】
また、最近のトレンドにより、既存不織布の低重量化を追い求める場合、既存不織布の物性をそのまま維持するか、さらには不織布の物性を追加して向上させるのにおいては、工程上の限界や設備的な限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現例は、ボンディング性及び強度にいずれも優れる不織布を提供する。
本発明の他の具現例は、前記不織布の製造方法を提供する。
本発明のさらに他の具現例は、前記不織布を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)である不織布を提供する。
【0007】
前記不織布は、芯鞘型複合繊維を含み、前記芯鞘型複合繊維は、ASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が20~50g/10分である芯部、及びASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が40~120g/10分である鞘部を含むものでもある。
【0008】
前記鞘部は、溶融指数が、前記芯部より10~100g/10分ほど大きくなりうる。
【0009】
前記鞘部対前記芯部の重量比は、1~5:9~5でもある。
【0010】
前記芯部は、第1ポリプロピレンを含み、前記鞘部は、第2ポリプロピレンを含むものでもある。
【0011】
前記不織布は、下記数式1で表されるタフネスが100~300でもある:
【数1】
【0012】
前記不織布は、スパンボンド不織布でもある。
【0013】
前記不織布は、2以上の層によってなるものでもある。
【0014】
本発明の他の態様は、
芯部形成用重合体と鞘部形成用重合体とを、それぞれ別個の押出機で溶融させ、芯部形成用溶融物及び鞘部形成用溶融物を形成する段階(S10)と、
前記各溶融物を、複合紡糸ノズルを有する紡糸口金を介して吐出させ、複合長繊維を放出させる段階(S20)と、
前記放出された複合長繊維を、冷却させて延伸させる段階(S30)と、
前記冷却されて延伸された複合長繊維を、捕集ベルト上に捕集し、既定の厚みに堆積させ、不織布を形成する段階(S40)と、を含み、
前記段階(S20)において、前記紡糸口金の温度は、230~250℃に維持される不織布の製造方法を提供する。
【0015】
前記不織布の製造方法は、前記段階(S40)において形成された不織布に、機械的物性を付与する段階(S50)をさらに含むものでもある。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、前記不織布を含む物品を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一具現例による不織布、及びそれを含む物品は、ボンディング性及び強度にいずれも優れる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一具現例による不織布を構成する芯鞘型複合繊維の断面図である。
【
図2】比較例11による不織布を構成するサイドバイサイド型複合繊維の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一具現例による不織布について詳細に説明する。
【0020】
本発明の一具現例による不織布は、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)でもある。
【0021】
前記不織布の溶融粘度が、前記範囲以内であるならば、前記不織布は、優れたボンディング性及び強度を有しうる。
【0022】
また、前記不織布の溶融粘度が、500ポアズ(poise)未満であるならば、前記不織布を構成する個別繊維の強度が低下し、前記不織布の強度も低下することになる。また、前記不織布の溶融粘度が、740ポアズ(poise)を超えるならば、前記不織布を構成する個別繊維のボンディング性が低減され、個別繊維間の結合力が弱化され、それにより、個別繊維を積層して製造された不織布の強度も低下することになる。
【0023】
前記不織布の溶融粘度は、前記不織布を構成する繊維の構造、前記繊維を構成する原料の種類、原料の比率及び物性、前記繊維の製造条件及び製造方法、並びに前記繊維を利用した前記不織布の製造条件及び製造方法によって決定されうる。
【0024】
前記不織布は、芯鞘型複合繊維を含むものでもある。
【0025】
前記芯鞘型複合繊維は、ASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が20~50g/10分である芯部、及びASTM D1238によって測定された溶融指数(MFR(測定温度230℃、荷重2.16kg))が40~120g/10分である鞘部を含むものでもある。前記芯部の溶融指数(MFR)と、前記鞘部の溶融指数(MFR)とがそれぞれ前記範囲以内であるならば、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)において、タフネスが100~300である不織布を得ることができる。
【0026】
また、前記鞘部は、溶融指数(MFR)が、前記芯部より10~100g/10分ほど大きくなりうる。前記芯部の溶融指数(MFR)対比における前記鞘部の溶融指数(MFR)が、前記範囲以内であるならば、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)において、タフネスが100~300である不織布を得ることができる。
【0027】
前記鞘部対前記芯部の重量比は、1~5:9~5でもある。前記鞘部対前記芯部の重量比が前記範囲以内であるならば、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)において、タフネスが100~300である不織布を得ることができる。
【0028】
また、前記芯部は、第1ポリプロピレンを含み、前記鞘部は、第2ポリプロピレンを含むものでもある。
【0029】
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、高立体規則性重合触媒を使用して製造されたものでもある。
【0030】
前記高立体規則性重合触媒は、ジエステル成分の触媒、スクシネート成分の触媒、メタロセン触媒、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0031】
図1は、本発明の一具現例による不織布を構成する芯鞘型複合繊維100の断面図である。
【0032】
図1を参照すれば、芯鞘型複合繊維100は、芯部110、及びそれを取り囲むように構成された鞘部120を含むものでもある。
【0033】
前記不織布は、下記数式1で表されるタフネスが100~300でもある:
【数2】
【0034】
前記不織布は、スパンボンド不織布でもある。
【0035】
前記不織布は、2以上の層によってもなる。例えば、前記不織布は、不織布積層体でもある。
【0036】
前記不織布の繊度及び基本重量は、用途によって適切に選択されうるが、通常繊度は、1.0~2.5デニール、例えば、0.7~2.0デニールであり、基本重量は、15~100g/m2、例えば、7~30g/m2でもある。
【0037】
前記芯鞘型複合繊維は、前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体以外に、本発明の目的を損なわない範囲において、必要により、添加剤をさらに含むものでもある。前記添加剤は、公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤(anticlouding agent)、充填剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0038】
前記安定剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)のような老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’-オキサミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのようなフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムのような脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリトリトールモノステアレート、ペンタエリトリトールジステアレート、ペンタエリトリトールトリステアレートのような多価アルコール脂肪酸エステル;またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0039】
前記充填剤は、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、白雲石、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、滑石、クレイ、雲母、石綿、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0040】
前述のプロピレン系重合体と、必要によって使用される前記添加剤は、公知の方法を利用して混合されうる。
【0041】
以下、本発明の一具現例による不織布の製造方法について詳細に説明する。
【0042】
本発明の一具現例による不織布の製造方法は、芯部形成用重合体と鞘部形成用重合体とを、それぞれ別個の押出機で溶融させ、芯部形成用溶融物及び鞘部形成用溶融物を形成する段階(S10)、前記各溶融物を、所望する繊維構造を形成して吐出するように構成された複合紡糸ノズルを有する紡糸口金を介して吐出させ、複合長繊維を放出させる段階(S20)、前記放出された複合長繊維を、冷却させて延伸させる段階(S30)、及び前記冷却されて延伸された複合長繊維を、捕集ベルト上に捕集し、既定の厚みに堆積させ、不織布を形成する段階(S40)を含む。
【0043】
前記段階(S20)において、前記紡糸口金の温度は、230~250℃に維持されうる。前記段階(S20)において、前記紡糸口金の温度が前記範囲以内であるならば、ASTM D4440-08による、100sec-1の剪断速度、及び230℃の温度で測定された溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)において、タフネスが100~300である不織布を得ることができ、不織布製造工程においても、良好な工程安定性(紡糸性)を得ることができる。
【0044】
前記段階(S30)は、前記段階(S20)において放出された複合長繊維を、冷却用空気によって冷却し、また延伸用空気によって張力を加え、所定の繊度を有させる段階でもある。
【0045】
また、前記不織布の製造方法は、前記段階(S40)において形成された不織布に、機械的物性を付与する段階(S50)をさらに含むものでもある。
【0046】
前記段階(S50)は、交絡処理として、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波などの手段を利用する方法;加熱エンボシングロールを利用するエンボシング加工、または高温通気によって熱融着する方法によって遂行されうる。
【0047】
以下、本発明の一具現例による物品について詳細に説明する。
【0048】
本発明の一具現例による物品は、前述の不織布を含む。
【0049】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層(support layer)、トップシート(top sheet)、医療服、防護服またはマスクでもある。
【0050】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであるが、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1~11、及び比較例1~10:不織布の製造
図1の構造を有する芯鞘型複合繊維100によってなる不織布を、下記のような方法で製造した。具体的には、芯部形成用第1ポリプロピレンと、鞘部形成用第2ポリプロピレンとを、それぞれ別個の押出機で溶融させ、芯部形成用溶融物及び鞘部形成用溶融物を形成した。その後、前記各溶融物を、複合紡糸ノズルを有する紡糸口金を介して吐出させた。その後、前記吐出された各溶融物を冷却用空気によって冷却し、さらに延伸用空気によって張力を加え、所定の繊度を有させた。その後、前記冷却されて延伸された複合長繊維を、捕集ベルト上に捕集し、既定の厚みに堆積させ、不織布を形成した。その後、加熱エンボシングロールを利用するエンボシング加工により、前記形成された不織布に、機械的物性を付与した。
【0052】
また、前記芯部形成用第1ポリプロピレンの溶融指数(MFR)、前記鞘部形成用第2プロピレンの溶融指数(MFR)、第2プロピレンと第1プロピレンとの溶融指数(MFR)差、及び鞘部と芯部との重量比を、下記表1に示した。下記表1において、「不織布の製造温度」というのは、紡糸口金の温度を意味する。
【0053】
比較例11:不織布の製造
図2の構造を有するサイドバイサイド型複合繊維(1)によってなる不織布を、下記のような方法で製造した。具体的には、サイドA形成用第1ポリプロピレンとサイドB形成用第2ポリプロピレンとを、それぞれ別個の押出機で溶融させ、サイドA形成用溶融物及びサイドB形成用溶融物を形成した。その後、前記各溶融物を、複合紡糸ノズルを有する紡糸口金を介して吐出させた。その後、前記吐出された各溶融物を冷却用空気によって冷却し、さらに延伸用空気によって張力を加え、所定の繊度を有させた。その後、前記冷却されて延伸された複合長繊維を、捕集ベルト上に捕集し、既定の厚みに堆積させ、不織布を形成した。その後、加熱エンボシングロールを利用するエンボシング加工により、前記形成された不織布に、機械的物性を付与した。
【0054】
また、前記サイドA形成用第1ポリプロピレンの溶融指数(MFR)、前記サイドB形成用第2プロピレンの溶融指数(MFR)、第2プロピレンと第1プロピレンとの溶融指数(MFR)差、及びサイドAとサイドBとの重量比を、下記表1に示した。下記表1において、「不織布の製造温度」というのは、紡糸口金の温度を意味する。
【0055】
【0056】
評価例:不織布の物性評価
前記実施例1~11及び比較例1~11で製造されたそれぞれの不織布の物性を、下記のような方法で評価し、その結果を下記表2に示した。
(1)溶融粘度:ASTM D4440-08による、100sec
-1の剪断速度、及び230℃の温度における不織布の溶融粘度を測定した。
(2)引っ張り強度:引っ張り引っ張り強伸度器(Instron)測定設備を利用し、KSK 0520法により、試験片の幅5cm、間隔10cm、引っ張り速度500mm/分の条件でもって引っ張り試験を行い、最大引っ張り荷重を求めた。
(3)引っ張り伸度:前記(3)の方法で測定された最大伸長時の伸度を求めた。
(4)基本重量(重量:g/m
2):ASTM D3776-1985によって測定した。
(5)タフネス:前記(2)において得られた引っ張り強度(N/5cm)と、前記(3)において得られた引っ張り伸度(%)とを使用し、下記数式1によってタフネスを求めた。
【数3】
(6)工程安定性(紡糸性):溶融紡糸時、フィラメント揺れを肉眼で観察し、ポリマードリップ(drip)を欠点検出器で検出した。
【0057】
【0058】
前記表2を参照すると、実施例1~10で製造された不織布は、溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)の範囲に属し、タフネスが100~300の範囲に属するだけではなく、MD引っ張り強度及びMD引っ張り伸度もいずれも優れているということを知ることができる。また、実施例1~10の不織布製造工程は、工程安定性(紡糸性)に優れているということを知ることができる。
【0059】
一方、比較例1~11で製造された不織布は、溶融粘度が、500~740ポアズ(poise)の範囲を外れ、タフネスが100~300の範囲を外れるということが分かる。また、比較例1~3の不織布製造工程は、工程安定性(紡糸性)が不良であるということが分かる。
【0060】
本発明を、図面及び実施例を参照して説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の通常の知識を有する者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。
【国際調査報告】