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特表2024-540624プロセスの実行中の望ましくないイベントを予測するための予測モデルの訓練
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  • 特表-プロセスの実行中の望ましくないイベントを予測するための予測モデルの訓練 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プロセスの実行中の望ましくないイベントを予測するための予測モデルの訓練
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241024BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G06N20/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530025
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022080267
(87)【国際公開番号】W WO2023088665
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209620.0
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブクワイク、ハディル
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ディブヤシール
(72)【発明者】
【氏名】クレッパー、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】コトリワラ、アルザム・ムザッファー
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス、パブロ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】タン、ルオム
(72)【発明者】
【氏名】ケー・アール、チャンドリカ
(72)【発明者】
【氏名】ボリソン、ロイベン
(72)【発明者】
【氏名】ディックス、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ドッペルハマー、イェンス
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF26
(57)【要約】
訓練サンプル(3)を使用してプロセス(2)の実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するための予測モデル(1)を訓練するための方法(100)であって、各訓練サンプル(3)は、プロセス(2)の状態を特徴付けるデータを備え、本方法(100)は、望ましくないイベントを引き起こさないプロセス(2)の状態を表す訓練サンプル(3)を取得し(110)、これらの訓練サンプルを、望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けすることと、プロセスモデル(2a)と、プロセス(2)のどの状態において望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルール(2b)のセットとに少なくとも部分的に基づいて、望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有するプロセス(2)の状態を表す更なる訓練サンプル(4)を取得し(120)、これらの訓練サンプル(4)を、該増加した可能性でラベル付けすることと、それぞれのサンプル(3、4)によって表されるプロセス(2)の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を予測モデル(1)から取得するために、訓練対象の予測モデル(1)に訓練サンプル(3、4)を提供すること(130)と、所定の損失関数(6)によって、予測(5)とそれぞれのサンプル(3、4)のラベルとの差をレーティングすること(140)と、更なるサンプル(3、4)に関する予測(5)が行われたときに、損失関数(6)によるレーティング(6a)が改善する可能性が高くなるように、予測モデル(1)の挙動を特徴付けるパラメータ(1a)を最適化すること(150)と、を行うステップを備える方法(100)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練サンプル(3)を使用してプロセス(2)の実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するための予測モデル(1)を訓練するための方法(100)であって、各訓練サンプル(3)は、前記プロセス(2)の状態を特徴付けるデータを備え、前記方法(100)は、
・ 前記望ましくないイベントを引き起こさない前記プロセス(2)の状態を表す訓練サンプル(3)を取得し(110)、前記訓練サンプルを、前記望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けすることと、
・ プロセスモデル(2a)と、前記プロセス(2)のどの状態において前記望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルール(2b)のセットとに少なくとも部分的に基づいて、前記望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有する前記プロセス(2)の状態を表す更なる訓練サンプル(4)を取得し(120)、前記訓練サンプル(4)を、前記増加した可能性でラベル付けすることと、
・ それぞれの訓練サンプル(3、4)によって表される前記プロセス(2)の状態における前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を前記予測モデル(1)から取得するために、訓練対象の前記予測モデル(1)に前記訓練サンプル(3、4)を提供すること(130)と、
・ 所定の損失関数(6)によって、前記予測(5)とそれぞれの前記訓練サンプル(3、4)の前記ラベルとの差をレーティングすること(140)と、
・ 更なるサンプル(3、4)に関する予測(5)が行われたときに、前記損失関数(6)によるレーティング(6a)が改善する可能性が高くなるように、前記予測モデル(1)の挙動を特徴付けるパラメータ(1a)を最適化すること(150)と、
を行うステップを備える方法(100)。
【請求項2】
前記望ましくないイベントは、前記プロセス(2)、及び/又は前記プロセス(2)を実行している産業プラント若しくは電気ネットワークの少なくとも部分的な停止及び/又はシャットダウンを強制する安全インターロックイベントを備える、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記望ましくないイベントが発生する可能性は、
・ 前記望ましくないイベントが発生する確率の尺度で、及び/又は、
・ 前記望ましくないイベントを発生させる状態に対する前記プロセス(2)の前記状態の近接性の尺度で、
測定される、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記プロセスモデル(2a)は、前記プロセス(2)の少なくとも1つの現在の状態及び/又は過去の状態に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態の将来の進展を予測するように特に構成される(121)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記プロセスモデル(2a)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(122)、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
・ 前記所定のルール(2b)に少なくとも部分的に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態を特徴付ける変数のうちのどれが、前記望ましくないイベントが発生する可能性に影響を有するかを決定すること(111)と、
・ 前記変数、及び/又は前記変数から取得された処理結果を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(112、123)と、
を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記プロセス(2)の少なくとも1つの状態変数の少なくとも1つの統計モーメント、及び/又は時系列を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(113、124)を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記予測モデル(1)によって、所定の時間ウィンドウ内のサンプル(3、4)に基づいて、前記時間ウィンドウの終わりに、前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得すること(131)を更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記訓練された予測モデル(1*)よりも評価するための計算コストが低いサロゲートモデル(1**)によって、前記訓練された予測モデル(1*)の挙動を近似すること(160)を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
少なくとも1つの産業プラント上で、又は少なくとも1つの電気ネットワーク内でプロセス(2)を実行するための方法(200)であって、
・ 前記プロセス(2)の状態を表す1つ又は複数のサンプル(7)を、前記1つ又は複数のサンプルによって表される前記プロセス(2)の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得するために、訓練された予測モデル(1*)及び/又はそのサロゲート近似(1**)に提供すること(210)と、
・ 前記予測(5)を少なくとも1つの所定の基準(8)に照らしてテストすること(220)と、
・ 前記基準(8)が満たされたことに応答して、前記プロセス(2)のオペレータ(16)にアラームを出力すること(230)、及び/又は前記望ましくないイベントの発生の可能性を低減することを目標として前記プロセス(2)の実行を修正すること(240)と、
を行うステップを備える、方法(200)。
【請求項11】
前記プロセスの実行を修正すること(240)は、
・ 前記プロセス(2)の現在の状態とは異なる前記プロセス(2)の複数の候補状態を表すサンプル(7)を前記予測モデル(1)に提供し(241)、それによって、前記候補状態についての前記望ましくないイベントの発生の可能性を取得することと、
・ ターゲット状態として前記望ましくないイベントの発生の可能性が最も少ない候補状態に向かって、前記プロセス(2)の実行を導くこと(242)と、
を備える、請求項10に記載の方法(200)。
【請求項12】
・ 前記プロセス(2)の実行に関与する産業プラント又は他の現場のエッジシステム(10)によって、前記プロセス(2)の状態を表すサンプル(7)を収集すること(211)と、
・ 前記エッジシステム(10)によって、前記サンプル(7)をクラウドプラットフォーム(11)に提供すること(250)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)上で、前記エッジシステム(10)から取得された前記サンプル(7)に基づいて、前記予測モデル(1)を訓練及び/又は更新すること(260)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記訓練及び/又は更新された予測モデル(1*)のためのサロゲート近似(1**)、及び/又は前記サロゲート近似(1**)に対する更新を作成すること(270)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記サロゲート近似(1**)及び/又は前記サロゲート近似に対する前記更新を前記エッジシステム(10)に提供すること(280)と、
・ 前記エッジシステム(10)上で、前記望ましくないイベントが発生する可能性の前記予測(5)を取得するために、前記サロゲート近似(1**)を評価すること(212)と、
を更に備える、請求項11に記載の方法(200)。
【請求項13】
1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法(100、200)を行わせる機械可読命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラム、並びに/又は請求項14に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/若しくはダウンロード製品を有する、1つ又は複数のコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの望ましくないイベントが発生する可能性を低減させるように、産業プラント及び/又は電気ネットワーク上でのプロセスの実行を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
産業プロセスを実行するための産業プラント、及び電気ネットワークは、インターロック条件によって保護されている。このようなインターロック条件は、オペレータエラー、例えば電源によって通電されている間に同時に電気回路を接地する(それによって電源を接地に短絡させる)といったことから保護するために機器上で非常に頻繁に使用されている。プラント又はネットワークにおけるプロセスの実行のためには、プラントの状態変数又は他の変数に対して特定の制限を課す安全インターロックルールがより多く存在する。例えば、材料処理機器を収容する真空チャンバの圧力計が、システムにとって許容可能である圧力を超える圧力の増加を記録した場合、システムの損傷を防止するために、機器はオフにされ得る。
【0003】
安全インターロックルールは、多くの場合、安全でない状態に対する徹底的な対応策を定めている。例えば、プラント又はその一部は電力供給源から容赦なく遮断される場合があり、これは、その場合にプロセスを立ち上げて再び実行することがどれほど冗長又は困難になるかに関係なく行われる。例えば、化学反応容器内の熱をオフにすることにより、その液体内容物が冷え、凝固する場合がある。この場合、反応容器を再び使用するには、よくてもハンマーやチゼルを使用した大変な手作業による除去が必要となり、最悪の場合には不可能である。したがって、安全インターロックイベントをトリガすることは、大きい支障である場合がある。
【発明の概要】
【0004】
[本発明の目的]
したがって、本発明の目的は、安全インターロックイベントの発生を予測することを可能にすることによって、及び/又はそのような予測に基づいてそれらのイベントを能動的に回避することによって、そのようなイベントの発生を低減することである。
【0005】
[本発明の開示]
本発明は、プロセスの実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するための予測モデルを訓練するための方法を提供する。プロセスは、産業プラントにおいて実行される産業プロセス、例えば、1つ又は複数の抽出物を少なくとも1つの化学反応によって1つ又は複数の生成物に変換する化学プロセスなどであり得る。プロセスは、送電網の運転など、電気ネットワークにおける電気プロセスであってもよい。本方法は、産業プロセスの状態を特徴付けるデータを有する訓練サンプルを使用する。
【0006】
本方法の過程において、望ましくないイベントを引き起こさないプロセスの状態を表す訓練サンプルが取得される。望ましくないイベントが発生しない運転は、プラント又はネットワークの通常の運転状態であり、したがって、そのような訓練サンプルは豊富に供給される。訓練サンプルは、望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けされ、これは、この可能性が測定される尺度に依存している。例えば、可能性が確率として測定される場合、実行時にゼロ除算エラーを回避するために、ゼロではなく非常に低い非ゼロ値に設定され得る。
【0007】
プラント又はネットワークの通常運転中に望ましくないイベントが幸いにもめったにないか又は全く発生しないことは、そのような望ましくないイベントをトリガするプロセスの状態についての訓練サンプルが(もしあったとしても)ごくわずかしか利用可能でないという逆境に結び付いている。すなわち、訓練サンプルのセットは、通常運転を表す訓練サンプルに対して強く均衡がとれていない。望ましくないイベントの可能性を確実に予測するように予測モデルを訓練するためには、より均衡のとれた訓練サンプルのセットが必要である。
【0008】
このために、プロセスモデルと、プロセスのどの状態において望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルールのセットとに少なくとも部分的に基づいて、更なる訓練サンプルが取得される。これらの更なる訓練サンプルは、望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有するプロセスの状態を表しており、したがって、この増加した可能性でラベル付けされる。
【0009】
プロセスモデルは、全体としてプロセスのモノリシックモデルであってもよいが、任意の所望のレベルの粒度のサブモデルから構成されていてもよい。例えば、異なるサブモデルは、プラント又はネットワークの異なるサブユニットに対応し得る、プロセスの状態の異なる態様の将来の展開を予測し得る。明確にするために、以下では1つのみのプロセスモデルについて言及する。
【0010】
具体的には、プロセスモデルは、プロセスの少なくとも1つの現在の状態及び/又は過去の状態に基づいて、プロセスの状態の将来の進展を予測するように特に構成され得る。そのようにして予測された将来の状態は、次いで、例えば、望ましくないイベントの発生についての所定のルールに照らしてチェックされ得る。プロセスの予測された進展が、所定のルールにしたがって、望ましくないイベントを引き起こす状態につながる場合、この予測された進展が決定された現在の状態及び/又は過去の状態は、望ましくないイベントの原因であると見なされ得る。
【0011】
好ましくは、プロセスモデルは、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ このシミュレーションモデルのサロゲート近似(surrogate approximation)、を備え得る。
【0012】
どのタイプのプロセスモデルが最も有利であるかは、プロセス(又はその任意の部分)の内部構造についての知識がどれだけ利用可能であるかに依存する。例えば、プロセスが「ブラックボックス」である場合、機械学習モデルは、プロセスの内部構造に深く入り込む必要なしに、この「ブラックボックス」への入力及び応答時に取得された出力に関して訓練され得る。プロセスの内部構造がよく知られており、理解されている場合、そのプロセスについての知識に基づくプロセスのシミュレーションモデルが使用され得る。
【0013】
シミュレーションモデルは、プロセスの将来の進展を高い忠実度で予測することができる。しかしながら、これは、シミュレーションモデルの計算するコストが高くなり得るという代償を払うことになる。複雑な計算は、数時間又は更にはそれ以上かかる場合がある。しかしながら、プロセスのリアルタイム実行中に望ましくないイベントを回避するためには、結果をより速く取得可能であることのほうが、最高レベルの忠実度よりも重要である。
【0014】
ここで、シミュレーションモデルのサロゲート近似が大量の計算時間を節約することができる。忠実度をわずかに犠牲するのと引き換えに、計算は、リアルタイムよりもはるかに速くなり得るほどに高速化され得る。これにより、今度は、複数のシナリオを計算し、現在行われているアクションに依存して、プロセスが進展し得る複数の可能な経路を探索することが可能になる。これは、品質の一部を取り去るがデータをリアルタイムでストリーミングすることができるほどに帯域幅要件を低減する、オーディオ及びビデオデータの不可逆圧縮に幾分似ている。
【0015】
プロセスモデル及びルールのセットを使用して、望ましくないイベントをトリガし得る状態についての以前は不十分だった訓練サンプルのセットが任意の程度まで増強され、訓練サンプルのより均衡のとれたセットに到達するようになり得る。これにより、今度は、予測モデルの教師あり訓練が可能になる。このコンテキストにおいて、所定のルールのセットを利用することにより、これらのルールが、実際のプロセスの正確な内部挙動からのあるレベルの抽象化を提供するという更なる利点をもたらす。この正確な内部挙動は常に知られているわけではない。例えば、産業プラントでは、一部の機器には、その内部構造へのアクセスのない抽象的な技術仕様を有する「ブラックボックス」として購入され、使用されるものもあり得る。大規模な電力供給網は、異なるオペレータによって運営されている多くのサブネットワークから構成されており、これらのサブネットワークの内部の複雑さは、抽象仕様の背後に隠されている。地球が一部の天文計算のために点質量に抽象化され得るのと同様に、発電所は、結局のところ最大電力出力及び電力出力のスルーレートなどわずかな数量になり得る。
【0016】
教師あり訓練の過程で、訓練サンプルが、訓練対象の予測モデルに提供される。次いで予測モデルは、それぞれのサンプルによって表されるプロセスの状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測を出力する。一方でのそのようにして取得された予測と、他方でのそれぞれのサンプルのラベルとの差が、所定の損失関数(又は「コスト関数」)によってレーティングされる。そのような損失関数の例には、クロスエントロピー及び対数尤度がある。
【0017】
予測モデルの挙動を特徴付けるパラメータが、更なるサンプルに関する予測が行われたときに損失関数によるレーティングが改善する可能性が高くなるように最適化される。訓練は、訓練サンプルに関する特定の予測精度の達成、訓練エポックの数、又は収束(すなわち、パラメータが更に変化しないこと)などの任意の好適な停止基準に応答して停止し得る。例えば、ニューラルネットワーク予測モデルでは、パラメータは、各ニューロンへの入力がそのニューロンの活性化に合計される重みを備える。
【0018】
所定のルールは、例えば、安全インターロックイベントがどの状況下でトリガされるべきかを指定する安全インターロックルールを備え得る。そのような安全インターロックルールの多くが、プラント内で特定のアラームが出されたことに応答して、並びに/又はプラント及び/若しくはプロセスの特定の状態変数が特定の事前設定された閾値を超えたことに応答して、安全インターロックイベントをトリガする。電気ネットワークでは、サブネットワークは、通常、それら間の電流がハードリミットを超えて上昇した場合に互いに切断するように設定されている。それぞれの条件が満たされた場合、これは必ずイベントの発生につながる。すなわち、イベントが発生する可能性は、そのとき最大である(すなわち、確率の尺度で1)。
【0019】
したがって、特に有利な実施形態では、望ましくないイベントは、プロセス、及び/又はプロセスを実行している産業プラント若しくは電気ネットワークの少なくとも部分的な停止及び/又はシャットダウンを強制する安全インターロックイベントを備える。以前に反応的に対処されたこれらのイベントを予測することができることにより、それらが実際に発生する前に、先回りしてそれらに対処することが可能になる。例えば、これらのイベントの発生を回避することができ、及び/又は結果を緩和することができる。
【0020】
他のタイプの望ましくないイベントについては、プロセスの状態をイベントが発生する増加した可能性につなげるルールはより穏やかであり得る。例えば、各ルールは、特定の量の「ペナルティポイント」を持っていてよく、プロセスの状態が一度に複数のルールを満たした場合に、これらの「ペナルティポイント」が生じる。この場合、望ましくないイベントは、例えば、少なくとも閾値量の「ペナルティポイント」が生じたという条件に結合され得る。このような状況では、特定の条件下でイベントが発生することをそれ自体で規定するルールはないが、満たされた各ルールは、イベントの可能性を増加させる。
【0021】
望ましくないイベントが発生する可能性は、任意の好適な尺度で測定され得る。例えば、可能性は、このイベントが発生する確率の尺度で測定され得る。これは、容易に解釈可能な尺度である。例えば、安全要件は、特定のイベントの確率が特定の閾値を下回る必要があることを規定し得る。
【0022】
リアルタイムプロセス実行における望ましくないイベントの発生を回避するために、可能性の別の概念も有利であり得る。可能性は、プロセスの状態の、望ましくないイベントを発生させる状態に対する近接性(closeness)の尺度で測定されてもよい。これは、望ましくないイベントの可能性を低減するために何を行えるかに関する直接的なガイダンスを与える。これは、ドローン操作のリスクが、重要な空域又は地上の設備と操作との近接性の観点から測定されるのに幾分似ている。
【0023】
更なる有利な実施形態では、本方法は更に、所定のルールに少なくとも部分的に基づいて、プロセスの状態を特徴付ける変数のうちのどれが、望ましくないイベントが発生する可能性に影響を有するかを決定することを備える。これらの変数、及び/又はこれらの変数から取得された処理結果は、次いで、訓練サンプルに含められ得る。すなわち、状態変数は、予測モデルの複雑さを低減するために事前にフィルタリングされ得る。
【0024】
訓練サンプルは、例えば、プロセスの任意の種類の状態変数を備え得る。例えば、化学プロセスでは、状態変数は、物質の温度、濃度、若しくは他の物理的特性、圧力、又は質量流量を備え得る。電気プロセスでは、状態変数は、電圧、電流、電力量、温度、又は、切り替え可能な接続の切り替え状態を備え得る。
【0025】
更なる有利な実施形態では、プロセスの少なくとも1つの状態変数の少なくとも1つの統計モーメント、及び/又は時系列が、訓練サンプルに含められる。特に、再帰型ニューラルネットワーク及びトランスフォーマネットワークなどのいくつかの種類の予測モデルが、時系列を備えるサンプルを処理して、そのような時系列において明らかな傾向から直接学習するように特に適応されている。状態変数の統計モーメントは、状態変数の情報を圧縮するために訓練サンプルに含められ得る。
【0026】
更なる特に有利な実施形態では、予測モデルは、所定の時間ウィンドウ内のサンプルに基づいて、この時間ウィンドウの終わりに、望ましくないイベントが発生する可能性の予測を取得する。このようにして、因果関係についての時間的範囲が設定され得る。またこの場合、望ましくないイベントを回避することを目的とした任意の是正アクションのためにどれだけの時間が残っているかが明らかである。
【0027】
更なる特に有利な実施形態では、訓練された予測モデルの挙動は、訓練された予測モデルよりも評価するための計算コストが低いサロゲートモデルによって近似される。このようにして、予測の精度の一部が、予測をより速く取得するためにトレードインされる。特に、前述のように、予測をリアルタイムよりも速く取得することができる場合、望ましくないイベントの発生を回避するための複数の候補アクションが、予測モデルを使用してテストされ得る。すなわち、「what-if」シナリオが分析されてよく、次いで、最良のアクションがプロセス上で実施され得る。
【0028】
訓練された予測モデルの最終的な目的は、プロセスの実行を改善し、望ましくないイベントの差し迫った発生に先回りして反応して、それらを回避することである。本発明はまた、少なくとも1つの産業プラント上で、又は少なくとも1つの電気ネットワーク内でプロセスを実行するための方法を提供する。
【0029】
本方法の過程で、プロセスの状態を表す1つ又は複数のサンプルが、1つ又は複数のサンプルによって表されるプロセスの状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測を取得するために、訓練された予測モデル及び/又はそのサロゲート近似に提供される。
【0030】
この予測は、少なくとも1つの所定の基準に照らしてテストされる。例えば、この基準は、望ましくないイベントが発生する確率の閾値、又は望ましくないイベントをトリガする状態に対するプロセスの現在の状態のパラメータ空間における近接性の閾値を備え得る。
【0031】
基準が満たされたことに応答して、プロセスのオペレータにアラームが出力され、及び/又は望ましくないイベントの発生の可能性を低減することを目標としてプロセスの実行が修正される。そのような修正は、実行のデグラデーションを伴う場合がある。例えば、製品の生産速度が低減される若しくは完全に休止される場合があり、又は一部の負荷が電気ネットワークから取り除かれる場合がある。当然のことながら、デグラデーションなしにプロセスを実行することが最も望ましいが、デグラデーションは、通常、安全インターロックイベントが発生するよりもはるかにグレースフルである。例えば、化学プロセスから取り出す製品が一時的に少なくなることは、ハンマーやチゼルによって反応容器から凝固した物質を片付けなければならないことよりもはるかに弊害が少なく、電気ネットワークから一部の負荷を取り除くことは、ネットワーク内の電力を完全に失うことよりもはるかに良い。
【0032】
更なる特に有利な実施形態では、プロセスの実行を修正するために、プロセスの現在の状態とは異なる、プロセスの複数の候補状態を表すサンプルが予測モデルに提供される。これは、候補状態についての望ましくないイベントの発生の可能性をもたらす。すなわち、プロセスをそれに向けて動かせる状態のためのオプションが、「what-if」方式で探索され得る。プロセスの実行は、次いで、ターゲット状態として望ましくないイベント可能性が最も少ない候補状態に向かって導かれ(steered)得る。
【0033】
プロセスを導くことは、例えば、プロセスを実行する産業プラント若しくは電気ネットワークの低レベルコントローラに提供された設定点値を変更すること、及び/又はプラント若しくはネットワーク内の機器若しくは相互接続をイネーブル若しくはディセーブルにすることを備え得る。
【0034】
産業プラント又は電気設備がプロセスを実行するために稼働している多くの現場では、多くのモノのインターネット(IoT)デバイスがこの稼働に関与している。これらのデバイスは、プロセス制御を目的としてIoTエッジシステムと通信している。このエッジシステムは、予測モデルを評価するためのいくらかの処理能力を有するが、そのような予測モデルを訓練するための十分な処理能力は有していない。しかし、エッジシステムは、この作業を、より多くの処理能力を有するクラウドプラットフォームに委任することができる。
【0035】
したがって、更なる特に有利な実施形態では、プロセスの状態を表すサンプルは、プロセスの実行に関与する産業プラント又は他の現場のエッジシステムによって収集される。サンプルは、エッジシステムによってクラウドプラットフォームに提供される。これらのサンプルに基づいて、予測モデルは、クラウドプラットフォーム上で訓練及び/又は更新される。クラウドプラットフォームはまた、訓練及び/又は更新された予測モデルのためのサロゲート近似、及び/又はそのような既存の近似に対する更新を作成する。サロゲート近似、及び/又はその更新は、エッジシステムに提供し戻される。エッジシステム上で、望ましくないイベントが発生する可能性の予測を取得するために、サロゲート近似が評価される。
【0036】
本方法は、全体的又は部分的にコンピュータ実装され得る。したがって、本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータ及び/又は計算インスタンス上で実行されると、1つ又は複数のコンピュータに上述の方法のうちの1つを行わせる機械可読命令を有する1つ又は複数のコンピュータプログラムにも関する。このコンテキストでは、仮想化プラットフォーム、ハードウェアコントローラ、ネットワークインフラストラクチャデバイス(スイッチ、ブリッジ、ルータ、又はワイヤレスアクセスポイントなど)、及び機械可読命令を実行することができるネットワーク内のエンドデバイス(センサ、アクチュエータ、又は他の産業分野デバイスなど)も、コンピュータとして見なされるものとする。
【0037】
したがって、本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータプログラムを有する非一時的記憶媒体及び/又はダウンロード製品に関する。ダウンロード製品は、ダウンロードによる即時フルフィルメントのためにオンラインショップで販売され得る製品である。本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータプログラム、及び/若しくは1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体、及び/若しくはダウンロード製品を有する1つ又は複数のコンピュータ並びに/又は計算インスタンスを提供する。
【0038】
以下では、本発明の範囲を限定する意図なしに図を使用して本発明が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】予測モデルを訓練するための方法100の例示的な実施形態である。
図2】プロセスを実行するための方法200の例示的な実施形態である。
図3】予測モデルのサロゲート近似を更新された状態に保つためのエッジシステム及びクラウドプラットフォームの例示的な配置構成である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、予測モデル1を訓練するための方法100の例示的な実施形態の概略的なフローチャートである。予測モデル1は、プロセス2の実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するためのものである。
【0041】
ステップ110において、訓練サンプル3が取得される。これらの訓練サンプル3は、望ましくないイベントを引き起こさないプロセス2の状態を表す。それらは、望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けされる。
【0042】
ステップ120において、プロセスモデル2aと、プロセス2のどの状態において望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルール2bのセットとに少なくとも部分的に基づいて、更なる訓練サンプル4が取得される。これらの更なる訓練サンプル4は、望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有するプロセスの状態を表す。したがって、それらはこの増加した可能性でラベル付けされる。
【0043】
ステップ130において、訓練サンプル3、4が、訓練対象の予測モデル1に提供される。次いで、予測モデル1は、それぞれのサンプル3、4によって表されるプロセス2の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測5を出力する。
【0044】
ステップ140において、予測5とそれぞれのサンプル3、4のラベルとの差が、所定の損失関数6によってレーティングされる。損失関数6は、レーティング6aをもたらす。
【0045】
ステップ150において、予測モデル1の挙動を特徴付けるパラメータ1aが、更なるサンプル3、4に関する予測5が行われたときに損失関数6によるレーティング6aが改善する可能性が高くなるように最適化される。パラメータ1aの最終的に訓練された状態は、参照符号1a*でラベル付けされている。これらの最終的に最適化されたパラメータ1a*は、参照符号1*でラベル付けされた完全に訓練された予測モデルの挙動を特徴付ける。
【0046】
ステップ160において、訓練された予測モデル1*の挙動は、訓練された予測モデル1*よりも評価するための計算コストが低いサロゲートモデル1**によって近似される。
【0047】
ブロック111にしたがって、所定のルール2bに少なくとも部分的に基づいて、プロセス2の状態を特徴付ける変数のうちのどれが、望ましくないイベントが発生する可能性に影響を有するかが決定され得る。これらの変数、及び/又はこれらの変数から取得された処理結果は、次いで、ブロック112にしたがって、訓練サンプル3に含められ、ブロック123にしたがって、訓練サンプル4に含められ得る。
【0048】
それぞれブロック113又は124にしたがって、プロセス2の少なくとも1つの状態変数の少なくとも1つの統計モーメント、及び/又は時系列が、それぞれ訓練サンプル3又は4に含められ得る。
【0049】
ブロック121にしたがって、プロセスモデル2aは、プロセス2の少なくとも1つの現在の状態及び/又は過去の状態に基づいて、プロセス2の状態の将来の進展を予測するように特に構成され得る。
【0050】
ブロック122にしたがって、プロセスモデル2aは、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ このシミュレーションモデルのサロゲート近似、を備え得る。
【0051】
ブロック131にしたがって、予測モデル1は、所定の時間ウィンドウ内のサンプル3、4に基づいて、この時間ウィンドウの終わりに、望ましくないイベントが発生する可能性の予測5を生成し得る。
【0052】
図2は、少なくとも1つの産業プラント上で、又は少なくとも1つの電気ネットワーク内でプロセス2を実行するための方法200の例示的な実施形態の概略的なフローチャートである。
【0053】
ステップ210において、プロセス2の状態を表す1つ又は複数のサンプル7が、訓練された予測モデル1*、及び/又はそのサロゲート近似1**に提供される。次いで、訓練された予測モデル1*、又はサロゲート近似1**はそれぞれ、1つ又は複数のサンプルによって表されるプロセス2の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測5を出力する。
【0054】
ステップ220において、予測5は、少なくとも1つの所定の基準8に照らしてテストされる。
【0055】
基準8が満たされた場合(真理値1)、ステップ230において、プロセス2のオペレータ16にアラームが出力され得る。代替的に、又はこれと組み合わせて、ステップ240において、プロセス2の実行が、望ましくないイベントの発生の可能性を低減することを目標として修正され得る。
【0056】
ブロック211にしたがって、プロセス2の状態を表すサンプルが、プロセス2の実行に関与する産業プラント又は他の現場のエッジシステム10によって収集され得る。ステップ250において、エッジシステム10は次いで、サンプルをクラウドプラットフォーム11に提供し得る。
【0057】
ステップ260において、クラウドプラットフォーム11は、次いで、エッジシステム10から受信されたサンプル7に基づいて予測モデル1を訓練及び/又は更新し得る。クラウドプラットフォーム11は、次いで、ステップ270において、訓練及び/又は更新された予測モデル1*のためのサロゲート近似1**、及び/又はそのような近似1**に対する更新を作成し得る。
【0058】
このサロゲート近似1**、及び/又はその更新は、次いで、ステップ280においてエッジシステム10に提供し戻され得る。エッジシステム10上で、この新しい及び/又は更新されたサロゲート近似1**は、次いで、ブロック212にしたがって、予測5を取得するために評価され得る。
【0059】
図3は、方法200を行うために使用され得るエッジシステム10及びクラウドプラットフォーム11の例示的な配置構成を示す。
【0060】
図3に示す例では、プロセス2を実行する産業プラントは、センサ12a、アクチュエータ12b、及びコントローラ12cを備える。センサ12a及びアクチュエータ12bは、プロセス2の状態を示すデータのサンプル7を生成する。これらのサンプルは、エッジシステム10のエッジデータマネージャ14によって取り込まれ、前処理される。それらはプロセス制御システム13に渡され、プロセス制御システム13は次に、サンプル7に反映されたプロセス2の状態に反応するための制御アクション9をアクチュエータ12b及びコントローラ12cに供給する。
【0061】
制御アクション9を決定するとき、プロセス制御システム13はまた、望ましくないイベントの発生の可能性に関して、サロゲート近似1**によって出力された予測5を考慮する。すなわち、プロセス制御システム13は、制御アクション9によって、望ましくないイベントの発生が回避されるようにプロセス2を導き得る。また、プロセス制御システム13は、産業プラントのオペレータ16と通信する。
【0062】
サンプル7は、訓練された予測モデル1*が存在するクラウドプラットフォーム11に渡される。それらは、このモデル1*を更に訓練するために使用される。予測モデル1*に対する更新の後、クラウドプラットフォーム11はまた、サロゲート近似1**に対する対応する更新を生成する。この更新は、エッジシステム10に渡し戻される。
【0063】
クラウドプラットフォーム11はまた、プラントのオペレータ16と通信する運転安全インターフェース15を備える。
【符号の説明】
【0064】
1…予測モデル
1*…モデル1の完全に訓練された状態
1**…訓練されたモデル1*のサロゲート近似
1a…予測モデル1の挙動を特徴付けるパラメータ
1a*…パラメータ1aの完全に最適化された状態
2…プロセス
2a…プロセスモデル
2b…望ましくないイベントの増加した可能性についてのルール
3…望ましくないイベントの増加した可能性を有さない訓練サンプル
4…望ましくないイベントの増加した可能性を有する訓練サンプル
5…望ましくないイベントの可能性の予測
6…損失関数
6a…損失関数によるレーティング
7…プロセス2の実行中に獲得されたサンプル
8…予測5のための基準
9…制御アクション
10…エッジシステム
11…クラウドプラットフォーム
12a…センサ
12b…アクチュエータ
12c…コントローラ
13…プロセス2のためのプロセス制御システム
14…エッジデータマネージャ
15…運転安全インターフェース
16…産業プラントのオペレータ
100…予測モデル1を訓練するための方法
110…訓練サンプル3を取得する
111…望ましくないイベントの可能性に影響を有する変数を決定する
112…影響を有する変数を訓練サンプル3に含める
113…統計モーメントを訓練サンプル3に含める
120…更なる訓練サンプル4を取得する
121…将来の状態を予測するプロセスモデル2aを選ぶ
122…プロセスモデル2aの具体的な種類を選ぶ
123…影響を有する変数を更なる訓練サンプル4に含める
124…統計モーメントを更なる訓練サンプル4に含める
130…訓練サンプル3、4を予測モデル1に提供する
131…時間フレームの終わりに予測を取得する
140…予測5とサンプル3、4のラベルとの差をレーティングする
150…パラメータ1aを最適化する
160…訓練されたモデル1*のためのサロゲート近似1**を作成する
200…プロセス2を実行するための方法
210…訓練された予測モデル1*にサンプル7を提供する
211…エッジシステム10によってサンプルを収集する
212…エッジシステム10上でサロゲート近似1**を評価する
220…予測を基準8に照らしてテストする
230…オペレータ16にアラームを出力する
240…プロセスの実行を修正する
241…候補状態のサンプルを予測モデル1に提供する
242…望ましくないイベントを回避するようにプロセスを導く
250…クラウドプラットフォーム11にサンプル7を提供する
260…予測モデル1を訓練及び/又は更新する
270…サロゲート近似1**を作成する
280…更新をエッジシステム10に提供する
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練サンプル(3)を使用してプロセス(2)の実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するための予測モデル(1)を訓練するための方法(100)であって、各訓練サンプル(3)は、前記プロセス(2)の状態を特徴付けるデータを備え、前記方法(100)は、
・ 前記望ましくないイベントを引き起こさない前記プロセス(2)の状態を表す訓練サンプル(3)を取得し(110)、前記訓練サンプルを、前記望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けすることと、
・ プロセスモデル(2a)と、前記プロセス(2)のどの状態において前記望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルール(2b)のセットとに少なくとも部分的に基づいて、前記望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有する前記プロセス(2)の状態を表す更なる訓練サンプル(4)を取得し(120)、前記訓練サンプル(4)を、前記増加した可能性でラベル付けすることと、
・ それぞれの訓練サンプル(3、4)によって表される前記プロセス(2)の状態における前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を前記予測モデル(1)から取得するために、訓練対象の前記予測モデル(1)に前記訓練サンプル(3、4)を提供すること(130)と、
・ 所定の損失関数(6)によって、前記予測(5)とそれぞれの前記訓練サンプル(3、4)の前記ラベルとの差をレーティングすること(140)と、
・ 更なるサンプル(3、4)に関する予測(5)が行われたときに、前記損失関数(6)によるレーティング(6a)が改善する可能性が高くなるように、前記予測モデル(1)の挙動を特徴付けるパラメータ(1a)を最適化すること(150)と、
を行うステップを備える方法(100)。
【請求項2】
前記望ましくないイベントは、前記プロセス(2)、及び/又は前記プロセス(2)を実行している産業プラント若しくは電気ネットワークの少なくとも部分的な停止及び/又はシャットダウンを強制する安全インターロックイベントを備える、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記望ましくないイベントが発生する可能性は、
・ 前記望ましくないイベントが発生する確率の尺度で、及び/又は、
・ 前記望ましくないイベントを発生させる状態に対する前記プロセス(2)の前記状態の近接性の尺度で、
測定される、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記プロセスモデル(2a)は、前記プロセス(2)の少なくとも1つの現在の状態及び/又は過去の状態に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態の将来の進展を予測するように特に構成される(121)、請求項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記プロセスモデル(2a)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(122)、請求項に記載の方法(100)。
【請求項6】
・ 前記所定のルール(2b)に少なくとも部分的に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態を特徴付ける変数のうちのどれが、前記望ましくないイベントが発生する可能性に影響を有するかを決定すること(111)と、
・ 前記変数、及び/又は前記変数から取得された処理結果を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(112、123)と、
を更に備える、請求項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記プロセス(2)の少なくとも1つの状態変数の少なくとも1つの統計モーメント、及び/又は時系列を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(113、124)を更に備える、請求項1又は6に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記予測モデル(1)によって、所定の時間ウィンドウ内のサンプル(3、4)に基づいて、前記時間ウィンドウの終わりに、前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得すること(131)を更に備える、請求項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記訓練された予測モデル(1*)よりも評価するための計算コストが低いサロゲートモデル(1**)によって、前記訓練された予測モデル(1*)の挙動を近似すること(160)を更に備える、請求項に記載の方法(100)。
【請求項10】
少なくとも1つの産業プラント上で、又は少なくとも1つの電気ネットワーク内でプロセス(2)を実行するための方法(200)であって、
・ 前記プロセス(2)の状態を表す1つ又は複数のサンプル(7)を、前記1つ又は複数のサンプルによって表される前記プロセス(2)の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得するために、訓練された予測モデル(1*)及び/又はそのサロゲート近似(1**)に提供すること(210)と、
・ 前記予測(5)を少なくとも1つの所定の基準(8)に照らしてテストすること(220)と、
・ 前記基準(8)が満たされたことに応答して、前記プロセス(2)のオペレータ(16)にアラームを出力すること(230)、及び/又は前記望ましくないイベントの発生の可能性を低減することを目標として前記プロセス(2)の実行を修正すること(240)と、
を行うステップを備える、方法(200)。
【請求項11】
前記プロセスの実行を修正すること(240)は、
・ 前記プロセス(2)の現在の状態とは異なる前記プロセス(2)の複数の候補状態を表すサンプル(7)を前記予測モデル(1)に提供し(241)、それによって、前記候補状態についての前記望ましくないイベントの発生の可能性を取得することと、
・ ターゲット状態として前記望ましくないイベントの発生の可能性が最も少ない候補状態に向かって、前記プロセス(2)の実行を導くこと(242)と、
を備える、請求項10に記載の方法(200)。
【請求項12】
・ 前記プロセス(2)の実行に関与する産業プラント又は他の現場のエッジシステム(10)によって、前記プロセス(2)の状態を表すサンプル(7)を収集すること(211)と、
・ 前記エッジシステム(10)によって、前記サンプル(7)をクラウドプラットフォーム(11)に提供すること(250)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)上で、前記エッジシステム(10)から取得された前記サンプル(7)に基づいて、前記予測モデル(1)を訓練及び/又は更新すること(260)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記訓練及び/又は更新された予測モデル(1*)のためのサロゲート近似(1**)、及び/又は前記サロゲート近似(1**)に対する更新を作成すること(270)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記サロゲート近似(1**)及び/又は前記サロゲート近似に対する前記更新を前記エッジシステム(10)に提供すること(280)と、
・ 前記エッジシステム(10)上で、前記望ましくないイベントが発生する可能性の前記予測(5)を取得するために、前記サロゲート近似(1**)を評価すること(212)と、
を更に備える、請求項11に記載の方法(200)。
【請求項13】
1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、請求項1又は10に記載の方法(100、200)を行わせる機械可読命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを有する、1つ又は複数のコンピュータ。
【請求項16】
請求項14に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品を有する、1つ又は複数のコンピュータ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
クラウドプラットフォーム11はまた、プラントのオペレータ16と通信する運転安全インターフェース15を備える。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
訓練サンプル(3)を使用してプロセス(2)の実行中に少なくとも1つの所定の望ましくないイベントが発生する可能性を予測するための予測モデル(1)を訓練するための方法(100)であって、各訓練サンプル(3)は、前記プロセス(2)の状態を特徴付けるデータを備え、前記方法(100)は、
・ 前記望ましくないイベントを引き起こさない前記プロセス(2)の状態を表す訓練サンプル(3)を取得し(110)、前記訓練サンプルを、前記望ましくないイベントが発生する事前設定された低い可能性でラベル付けすることと、
・ プロセスモデル(2a)と、前記プロセス(2)のどの状態において前記望ましくないイベントが発生する増加した可能性があるかを規定する所定のルール(2b)のセットとに少なくとも部分的に基づいて、前記望ましくないイベントを引き起こす増加した可能性を有する前記プロセス(2)の状態を表す更なる訓練サンプル(4)を取得し(120)、前記訓練サンプル(4)を、前記増加した可能性でラベル付けすることと、
・ それぞれの訓練サンプル(3、4)によって表される前記プロセス(2)の状態における前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を前記予測モデル(1)から取得するために、訓練対象の前記予測モデル(1)に前記訓練サンプル(3、4)を提供すること(130)と、
・ 所定の損失関数(6)によって、前記予測(5)とそれぞれの前記訓練サンプル(3、4)の前記ラベルとの差をレーティングすること(140)と、
・ 更なるサンプル(3、4)に関する予測(5)が行われたときに、前記損失関数(6)によるレーティング(6a)が改善する可能性が高くなるように、前記予測モデル(1)の挙動を特徴付けるパラメータ(1a)を最適化すること(150)と、
を行うステップを備える方法(100)。
[C2]
前記望ましくないイベントは、前記プロセス(2)、及び/又は前記プロセス(2)を実行している産業プラント若しくは電気ネットワークの少なくとも部分的な停止及び/又はシャットダウンを強制する安全インターロックイベントを備える、C1に記載の方法(100)。
[C3]
前記望ましくないイベントが発生する可能性は、
・ 前記望ましくないイベントが発生する確率の尺度で、及び/又は、
・ 前記望ましくないイベントを発生させる状態に対する前記プロセス(2)の前記状態の近接性の尺度で、
測定される、C1又は2に記載の方法(100)。
[C4]
前記プロセスモデル(2a)は、前記プロセス(2)の少なくとも1つの現在の状態及び/又は過去の状態に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態の将来の進展を予測するように特に構成される(121)、C1~3のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C5]
前記プロセスモデル(2a)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(122)、C1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C6]
・ 前記所定のルール(2b)に少なくとも部分的に基づいて、前記プロセス(2)の前記状態を特徴付ける変数のうちのどれが、前記望ましくないイベントが発生する可能性に影響を有するかを決定すること(111)と、
・ 前記変数、及び/又は前記変数から取得された処理結果を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(112、123)と、
を更に備える、C1~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C7]
前記プロセス(2)の少なくとも1つの状態変数の少なくとも1つの統計モーメント、及び/又は時系列を、前記訓練サンプル(3、4)に含めること(113、124)を更に備える、C1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C8]
前記予測モデル(1)によって、所定の時間ウィンドウ内のサンプル(3、4)に基づいて、前記時間ウィンドウの終わりに、前記望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得すること(131)を更に備える、C1~7のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C9]
前記訓練された予測モデル(1*)よりも評価するための計算コストが低いサロゲートモデル(1**)によって、前記訓練された予測モデル(1*)の挙動を近似すること(160)を更に備える、C1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
[C10]
少なくとも1つの産業プラント上で、又は少なくとも1つの電気ネットワーク内でプロセス(2)を実行するための方法(200)であって、
・ 前記プロセス(2)の状態を表す1つ又は複数のサンプル(7)を、前記1つ又は複数のサンプルによって表される前記プロセス(2)の状態における望ましくないイベントが発生する可能性の予測(5)を取得するために、訓練された予測モデル(1*)及び/又はそのサロゲート近似(1**)に提供すること(210)と、
・ 前記予測(5)を少なくとも1つの所定の基準(8)に照らしてテストすること(220)と、
・ 前記基準(8)が満たされたことに応答して、前記プロセス(2)のオペレータ(16)にアラームを出力すること(230)、及び/又は前記望ましくないイベントの発生の可能性を低減することを目標として前記プロセス(2)の実行を修正すること(240)と、
を行うステップを備える、方法(200)。
[C11]
前記プロセスの実行を修正すること(240)は、
・ 前記プロセス(2)の現在の状態とは異なる前記プロセス(2)の複数の候補状態を表すサンプル(7)を前記予測モデル(1)に提供し(241)、それによって、前記候補状態についての前記望ましくないイベントの発生の可能性を取得することと、
・ ターゲット状態として前記望ましくないイベントの発生の可能性が最も少ない候補状態に向かって、前記プロセス(2)の実行を導くこと(242)と、
を備える、C10に記載の方法(200)。
[C12]
・ 前記プロセス(2)の実行に関与する産業プラント又は他の現場のエッジシステム(10)によって、前記プロセス(2)の状態を表すサンプル(7)を収集すること(211)と、
・ 前記エッジシステム(10)によって、前記サンプル(7)をクラウドプラットフォーム(11)に提供すること(250)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)上で、前記エッジシステム(10)から取得された前記サンプル(7)に基づいて、前記予測モデル(1)を訓練及び/又は更新すること(260)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記訓練及び/又は更新された予測モデル(1*)のためのサロゲート近似(1**)、及び/又は前記サロゲート近似(1**)に対する更新を作成すること(270)と、
・ 前記クラウドプラットフォーム(11)によって、前記サロゲート近似(1**)及び/又は前記サロゲート近似に対する前記更新を前記エッジシステム(10)に提供すること(280)と、
・ 前記エッジシステム(10)上で、前記望ましくないイベントが発生する可能性の前記予測(5)を取得するために、前記サロゲート近似(1**)を評価すること(212)と、
を更に備える、C11に記載の方法(200)。
[C13]
1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、C1~12のいずれか一項に記載の方法(100、200)を行わせる機械可読命令を備える、コンピュータプログラム。
[C14]
C13に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
[C15]
C13に記載のコンピュータプログラム、並びに/又はC14に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/若しくはダウンロード製品を有する、1つ又は複数のコンピュータ。
【国際調査報告】