(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】核酸の正規化のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20241024BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241024BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N15/10 114Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6834 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530026
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 US2022080403
(87)【国際公開番号】W WO2023097257
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522329087
【氏名又は名称】バイオオー サイエンティフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BIOO SCIENTIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ガニング,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス‐メンデス,アラセレ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR41
4B063QR50
4B063QR54
4B063QR90
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化し、実質的に等量の核酸が分析対象の各サンプル中に存在するように核酸分析法において使用される、本開示の方法、組成物及びキットが提供される。本発明は、ヒドロキシル官能基を有する磁性粒子を使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法であって、以下を含む方法:
水性液体中に核酸を含む複数の投入サンプルを提供すること、前記複数の投入サンプルの各々は別個の容器内に存在する;
結合混合物を各容器に添加して、各容器内に正規化混合物を生成すること、
前記結合混合物は、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記複数の投入サンプルの各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい質量の核酸を含む;
結合条件下で、各正規化混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させること;
磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する前記磁性粒子を、非結合核酸から分離すること;及び、
前記可逆的且つ非特異的に結合した核酸を、前記磁性粒子から溶出させ、複数のテストサンプルを生成すること、
ここで、前記複数のテストサンプルの各々は、質量を有する単離された核酸を含み、
前記単離された核酸の前記質量は、前記磁性粒子の前記結合容量と略等しく、それにより、前記複数のテストサンプルの各々において、正規化された核酸の質量を提供する。
【請求項2】
前記容器に内部標準物質を添加しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投入サンプルにおける核酸の前記質量は、定量化されない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性粒子は、前記核酸に特異的に結合する結合パートナーを含まない、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記磁性粒子は、核酸、ビオチン、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法であって、更に、以下を含む方法:前記複数のテストサンプルをプールし、プールされたテストサンプルを生成し、前記プールされたテストサンプルにおける核酸の少なくとも一部をシーケンシングすること。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法であって、前記カオトロープは、以下の1つ又は複数を含む方法:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸塩又はグアニジン一臭化水素酸塩)、ヨウ化グアニジウム(グアニジンヨウ化水素酸塩)、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(チオシアン酸グアニジニウム)、グアニジン硝酸塩(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。
【請求項8】
前記結合バッファは、PEGを含まない、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子は、カルボキシル官能基部分及び/又はアミン官能基部分を含まない、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法であって、前記キレート剤は、以下の1つ又は複数である方法:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の方法であって、前記アルコールは、以下の1つ又は複数である方法:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
【請求項13】
前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の方法であって、更に以下を含む方法:1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を回収すること。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法であって、以下を含む方法:
1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を、対応する容器に移すこと;
結合混合物を、対応する各容器に添加し、対応する各容器内に回収混合物を生成すること、
前記結合混合物は、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記回収混合物の各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい、又は小さい、又は当該結合容量に等しい、質量の核酸を含む;
結合条件下で、各回収混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の全て又は一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させ、前記回収核酸に可逆的且つ非特異的に結合した磁性粒子を生成すること;
磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に前記回収核酸に結合した前記磁性粒子を分離すること;及び
前記磁性粒子から、前記可逆的且つ非特異的に結合した回収核酸を溶出させること。
【請求項16】
前記磁性粒子から前記核酸を溶出させることは、前記ビーズを溶出バッファ内でインキュベートすることを含む、請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む、請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の方法であって、更に、以下を含む方法:磁場の印加後且つ溶出前に、前記核酸に可逆的且つ非特異的に結合した前記磁性粒子を、洗浄液により洗浄すること。
【請求項19】
前記洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノールを含む、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である、請求項1乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である、請求項1乃至21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
以下を含むキット:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;
カオトロープの緩衝水溶液を含む結合バッファ;
洗浄液;及び
溶出バッファ。
【請求項24】
請求項23に記載のキットであって、更に、キレート剤及びアルコールを含む。
【請求項25】
前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する、請求項23又は24に記載のキット。
【請求項26】
前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む、請求項23乃至25のいずれかに記載のキット。
【請求項27】
前記洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノールを含む、請求項23乃至26のいずれかに記載のキット。
【請求項28】
請求項23乃至27のいずれかに記載のキット:ここで、
ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、
前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月23日に提出された、米国仮出願第63/282,469号に基づく優先権を主張し、その内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の態様は、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化するための方法、組成物、及びキットに関するものであり、これにより、使用者は個々のテストサンプルの手動による定量化を回避し得る。
【背景技術】
【0003】
次世代シーケンシング(NGS)などの、高度に精緻な核酸分析は、多くの理由から有力であるが、少なくともそのうちの一つは、何千ものサンプルを、同時に分析できることである。しかしながら、実際には、分析予定の全てのサンプル中において実質的に同量の核酸の存在を保証する同じく精緻な方法が現時点で乏しいために、このような最先端技術の効力が制限される可能性がある。現在の方法では、個々のサンプルの手動による定量化が必要であり、相当の時間及び労力を要する。
【0004】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化するための方法、組成物、及びキットに対しては継続的なニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様によれば、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法が提供され、当該方法は、以下を含む:
1)水性液体中に核酸を含む複数の投入サンプルを提供すること、前記複数の投入サンプルの各々は別個の容器内に存在する;
2)結合混合物を各容器に添加して、各容器内に正規化混合物を生成すること、
前記結合混合物は、以下を含む:
i)ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
ii)キレート剤、
iii)結合バッファ、及び
iv)アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記複数の投入サンプルの各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい質量の核酸を含む;
3)結合条件下で、各正規化混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させること;
4)磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する前記磁性粒子を、非結合核酸から分離すること;及び
5)前記可逆的且つ非特異的に結合した核酸を、前記磁性粒子から溶出させ、複数のテストサンプルを生成すること、ここで、前記複数のテストサンプルの各々は、質量を有する単離された核酸を含み、ここで、前記単離された核酸の前記質量は、前記磁性粒子の前記結合容量と略等しく、それにより、前記複数のテストサンプルの各々において、正規化された核酸の質量を提供する。
【0006】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記容器に内部標準物質を添加しない。
【0007】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記投入サンプルにおける核酸の前記質量は、定量化されない。
【0008】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記磁性粒子は、前記核酸に特異的に結合する結合パートナーを含まない。
【0009】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記磁性粒子は、核酸、ビオチン、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない。
【0010】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、更に、以下が含まれる:6)前記複数のテストサンプルをプールし、プールされたテストサンプルを生成し、前記プールされたテストサンプルにおける核酸の少なくとも一部をシーケンシングすること。
【0011】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記カオトロープは、以下の1つ又は複数を含む:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸塩又はグアニジン一臭化水素酸塩)、ヨウ化グアニジウム(グアニジンヨウ化水素酸塩)、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(チオシアン酸グアニジニウム)、グアニジン硝酸塩(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。
【0012】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記結合バッファは、PEGを含まない。
【0013】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記磁性粒子は、カルボキシル官能基部分及び/又はアミン官能基部分を含まない。
【0014】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0015】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記キレート剤は、以下の1つ又は複数である:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
【0016】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記アルコールは、以下の1つ又は複数である:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
【0017】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する。
【0018】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、更に以下が含まれる:7)1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を回収すること。本開示の方法の態様によれば、1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を回収することは、以下を含む:
7a)1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を、対応する容器に移すこと;
7b)結合混合物を、対応する各容器に添加すること;
7c)各対応する容器内に回収混合物を生成すること、
前記結合混合物は、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記回収混合物の各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい、又は小さい、又は当該結合容量に等しい、質量の核酸を含む;
7d)結合条件下で、各回収混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の全て又は一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させ、前記回収核酸に可逆的且つ非特異的に結合した磁性粒子を生成すること;
7e)磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に前記回収核酸に結合した前記磁性粒子を分離すること;及び
7f)前記磁性粒子から、前記可逆的且つ非特異的に結合した回収核酸を溶出させること。
【0019】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記磁性粒子から前記核酸を溶出させることは、前記ビーズを溶出バッファ内でインキュベートすることを含む。
【0020】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。
【0021】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、更に、以下が含まれる:磁場の印加後且つ溶出前に、前記核酸に可逆的且つ非特異的に結合した前記磁性粒子を、洗浄液により洗浄すること。
【0022】
本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記洗浄液は、約80%のエタノールを含む。本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である。本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である。本開示の、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である。
【0023】
本開示の態様に係るキットは、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;
カオトロープの緩衝水溶液を含む結合バッファ;
洗浄液;及び
溶出バッファ。
【0024】
本開示の態様によれば、ペンダントヒドロキシル官能基を有する前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0025】
本開示の態様によれば、前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。本開示の態様によれば、前記洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノールを含む。
【0026】
本開示の態様に係るキットは、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;
カオトロープの緩衝水溶液を含む結合バッファ;
洗浄液;
溶出バッファ;
キレート剤;及び
アルコール。
【0027】
本開示の態様によれば、ペンダントヒドロキシル官能基を有する前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0028】
本開示の態様によれば、前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。本開示の態様によれば、前記洗浄液は、約80%のエタノールを含む。
【0029】
本開示の態様に係るキットは、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;
グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含む結合バッファ、当該結合バッファは、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する;
洗浄液;及び、
溶出バッファ。
【0030】
本開示の態様によれば、ペンダントヒドロキシル官能基を有する当該磁性粒子は、当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、当該スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0031】
本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は、濃度約80%のエタノールを含む。
【0032】
本開示の態様に係るキットは、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;
グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含む結合バッファ、当該結合バッファは、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する;
洗浄液;
溶出バッファ;
キレート剤;及び
アルコール。
【0033】
本開示の態様によれば、ペンダントヒドロキシル官能基を有する当該磁性粒子は、当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、当該スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0034】
本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は、濃度約80%のエタノールを含む。
【0035】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、以下を含む:
1つの投入サンプル又は複数の投入サンプル、各投入サンプルは、水性液体中に核酸を含み、前記複数のサンプルの各々が、別個の容器内に存在する;及び
各容器内の結合混合物、これは各容器内に正規化混合物を生成し、
前記結合混合物は以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、核酸に可逆的且つ非特異的に結合することができ、且つ
前記複数の投入サンプルの各々は、前記一定量の磁性粒子の前記結合容量よりも大きい質量の核酸を含む。
【0036】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、当該スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む。
【0037】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記容器内には内部標準が存在しない。
【0038】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記磁性粒子は、前記核酸に特異的に結合する結合パートナーを含まない。
【0039】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記磁性粒子は、核酸、ビオチン、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない。
【0040】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記カオトロープは、以下の1つ又は複数を含む:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸塩又はグアニジン一臭化水素酸塩)、ヨウ化グアニジウム(グアニジンヨウ化水素酸塩)、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(チオシアン酸グアニジニウム)、グアニジン硝酸塩(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。
【0041】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記結合バッファは、PEGを含まない。
【0042】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記磁性粒子は、カルボキシル官能基部分及び/又はアミン官能基部分を含まない。
【0043】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記キレート剤は、以下の1つ又は複数である:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
【0044】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記アルコールは、以下の1つ又は複数である:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
【0045】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する。
【0046】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である。
【0047】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である。
【0048】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物は、本開示の態様に従って提供され、ここで、前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本開示の態様に係る方法の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、エタノールの、結合バッファに対する比が変化すると、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲が変化することを示すグラフであり、エタノールが増加すると、より小さなDNAフラグメントの単離が増加した。
【
図2B】
図2Bは、単離DNAの大きさのゲル分析の画像であり、エタノールの結合バッファに対する比に応じて、大きさの範囲が異なるDNAフラグメントが単離されることを示す。
【
図3】
図3は、エタノールの、結合バッファに対する比の変化についてのゲル分析の結果を示す。左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)を、エタノールの、結合バッファに対する様々な比を使用して単離されたDNAのサンプルと比較した場合において、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲の変化を示す。エタノールが増加すると、より小さなDNAフラグメントの単離が増加した。
【
図4】
図4は、単離DNAの大きさのゲル分析の画像であり、エタノールの、結合バッファに対する比に応じて、大きさの範囲が異なるDNAフラグメントが単離されることを示す。エタノールの、結合バッファに対する比が1.125のとき、大きさの分布は、釣鐘曲線状になった。
【
図5】
図5は、エタノールの、結合バッファに対する比の変化についてのゲル分析の結果を示す。左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)を、水性液体中のDNAを含む「正規化混合物」の水性成分(Aqu)の、結合バッファ(BB)に対する様々な比を用いて単離したDNAのサンプルと、大きさの分布に関して比較したところ、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲に対して有意な影響を示さなかった。
【
図6】
図6は、正規化混合物のpHの変化についてのゲル分析の結果を示す。左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)を、指定のpHを用いて単離したDNAのサンプルと、大きさの分布に関して比較したところ、pHの上昇は、150bp以下のフラグメントを除いて、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲に、軽微な影響を与えた。
【
図7】
図7は、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子を、二人の別個の操作者により、25ng、50ng、100ng、250ng、350ng、500ng、625ng、及び750ngの、様々なDNA投入量で使用した、本開示の方法による結果を示すグラフである。
図10は、ペンダントヒドロキシル官能基を有する同量の磁性粒子を、異なる量のDNAを含む各サンプルに添加した場合に、等量のDNAが回収されたことを示し、本開示の方法が総DNA質量による正規化を実現することが示唆された。
【
図8】
図8は、本開示に係る方法を用いて達成される、ライブラリ回収率及びクラスター均衡百分率(percent cluster balancing)を示し、複製可能性および再現性を実証するグラフである。500ng乃至1100ngの間の、様々な推定DNA投入量を採用した。使用した、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子は、PCR後500ng以上で正規化が可能であった。回収DNA量(+/-1.35倍の差。総平均回収DNA:約100ng(約11.5nM))により88ライブラリ全体に亘り100%正規化を達成した。クラスタリングにより約94%の正規化を達成した。%クラスタ閾値を下回った5つのライブラリを除いて、+/-1.38倍の差であり、88ライブラリ全体では+/-1.48倍の差であった。
【
図9】
図9は、24の正規化された増幅ライブラリの各々のサンプルを使用した、ゲル電気泳動の結果の画像である。
【
図10】
図10は、24の正規化された増幅ライブラリの各々のサンプルを使用した、フラグメントの大きさ分析の結果のグラフである。
【
図11】
図11は、8の正規化された増幅ライブラリの各々のサンプルを使用した、ゲル電気泳動の結果の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものである。このような用語は、J. Sambrook and D.W. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd Ed., 2001; F.M. Ausubel, Ed., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 5th Ed., 2002; B. Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, 4th Ed., Garland, 2002;Next Generation Sequencing: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology), 2018, Humana Press, Springer Nature; D.L. Nelson and M.M. Cox, Lehninger Principles of Biochemistry, 4th Ed., W.H. Freeman & Company, 2004; and Herdewijn, P. (Ed.), Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications, Methods in Molecular Biology, Humana Press, 2004を含む、様々な標準的文献中の文脈において、定義され、例示的に使用されることがわかる。
【0051】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、限定を意図するものではなく、そうではないと明示的に記載されていない限り、或いは、そうではないと文脈が明らかに示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0052】
「含む(includes/comprises/including/comprising)」、「有する(has/having)」という用語,及びそれらの文法上の変形は、本明細書において使用される場合、限定を意図するものではなく、記載された特徴、要素、及び/又は成分の存在を特定するものであり、1つ又は複数の他の特徴、要素、成分、及び/又はそれらのグループの存在、又は追加を排除しない。
【0053】
本明細書において参照数値に関連して使用される用語「約」、及びその文法的同義語は、当該参照数値、及び当該参照数値の10%以内の数値を指し、参照数値のプラス又はマイナス(+/-)1%、+/-2%、+/-3%、+/-4%、+/-5%、+/-6%、+/-7%、+/-8%、+/-9%、又は+/-10%の数値を含む。参照数値の記載された範囲の文脈において、用語「約」及びその文法的同義語は、本明細書で使用されるように、当該数値範囲の参照下限値の+/-1%、+/-2%、+/-3%、+/-4%、+/-5%、+/-6%、+/-7%、+/-8%、+/-9%、又は+/-10%である数値、及び当該数値範囲の参照上限値の+/-1%、+/-2%、+/-3%、+/-4%、+/-5%、+/-6%、+/-7%、+/-8%、+/-9%、又は+/-10%である数値を含む範囲を指す。更に、特に指定のない限り、本明細書の数値の項目には、一覧表示された数値の全ての中間値及び小数値が含まれると理解され、例えば、50%、60%、75%には、55%、64.5%、74%が含まれると理解される。
【0054】
複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法は、本開示の態様に従って提供され、以下を含む:
1)水性液体中に核酸を含む複数の投入サンプルを提供すること、当該複数のサンプルの各々は、別個の容器に存在する;
2)結合混合物を各容器に添加すること、これは各容器内で、正規化混合物を生成し、ここで、
当該結合混合物は、以下を含む:
i)ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
ii)キレート剤、
iii)結合バッファ、及び
iv)アルコール、
ここで、当該結合バッファはカオトロープの緩衝水溶液を含み、
磁性粒子の当該量は約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に、核酸に結合することができ、且つ
当該複数の投入サンプルの各々は、当該量の磁性粒子の結合容量より大きな核酸の質量を含み;
3)結合条件下で、各正規化混合物を、インキュベートし、それにより、当該核酸の一部を、可逆的且つ非特異的に、当該磁性粒子に結合させること;
4)磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する当該磁性粒子を、非結合核酸から分離すること;
5)当該磁性粒子から、可逆的且つ非特異的に結合した当該核酸を溶出させ、複数のテストサンプルを生成し、
ここで、当該複数のテストサンプルの各々は、特定の質量を有する単離核酸を含み、
当該単離核酸の質量は、当該磁性粒子の結合容量と略同等であり、それにより、当該複数のテストサンプルの各々において、正規化された核酸の質量が提供される。
【0055】
図1は、本開示の態様に係る、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法を示し、当該方法は、以下を含む:水性液体中において核酸を含む複数の投入サンプルを提供し、当該複数の投入サンプルの各々が、別個の容器内に存在し、
図1において「投入DNA」と呼ばれる。
【0056】
図1の2では、結合混合物を各容器に加え、各容器内で正規化混合物を生成し、各正規化混合物を結合条件下でインキュベートし、それにより、当該核酸の一部を、可逆的且つ非特異的に、当該磁性粒子に結合させた後に、核酸が、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合することが、図解で示される。
図1の3では、磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した当該核酸を有する当該磁性粒子の、非結合核酸からの分離が、図解で示される。ここで「非結合DNA」として示される当該非結合核酸を含む当該上清の除去もまた、*において、示される。当該非結合核酸を含む当該上清を除去したら、当該磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合した当該核酸を、洗浄液で、この場合では、4に示すように、エタノール洗浄液で洗浄する。
【0057】
図1の5では、当該磁性粒子から、可逆的且つ非特異的に結合した当該核酸を溶出させ、複数のテストサンプルを生成するステップが示され、ここでは当該複数のテストサンプルの各々は、特定の質量を有する単離核酸を含み、当該単離核酸の質量は、当該磁性粒子の結合容量と略同等であり、これにより、当該複数のテストサンプルの各々において、正規化された核酸の質量、すなわち、この図における「正規化DNA」が提供される。更に、
図1は、当該非結合核酸の随意の回収を示し、2Bで、各容器に、結合混合物を添加し、結合条件下で、インキュベートした後、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に、以前に非結合であった核酸を結合させ、これにより、以前に非結合であった核酸の一部又は全てを、可逆的且つ非特異的に、当該磁性粒子に結合させることが含まれる。3Bでは、磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する当該磁性粒子の、当該上清からの分離が示される。4Bでは洗浄ステップを示し、5Bでは当該核酸の溶出を示し、精製非結合核酸が生成される。本明細書で用いられる、「正規化」という用語は、複数のテストサンプルの生成を含むプロセスを指し、当該複数に含まれる個々のテストサンプルの各々は、当該複数に含まれる他のテストサンプルの各々と比較して、実質的に同量の核酸を含む。当該複数のテストサンプルは、核酸を含む対応する複数の投入サンプルに由来する。当該投入サンプル中の核酸は、対応する複数のテストサンプルの生成前に定量化されてもよいし、されなくてもよい。当該テストサンプル中の核酸は、定量化されてもよいし、されなくてもよい。本開示の態様に係る、複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の利点は、テストサンプルにおいて、当該核酸の定量化が必要とされないことである。
【0058】
当該テストサンプルにおける核酸の量に関して、本明細書で使用される「実質的に等しい」という用語は、差異が40%以下、例えば40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の、又はより少ない差異の量を指す。
【0059】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、互いに共有結合した、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド類似体のようなヌクレオチドのポリマーを指す。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、DNA増幅産生物などのDNA、及び/又はmRNA、rRNA、tRNA、siRNA、miRNA、piRNA、及び低分子RNAなどのRNAを含むが、これらに限定されない。
【0060】
「核酸」は、含まれる塩基に関して、典型的にはアデニン(A)、グアニン(G)、シチジン(C)、チミジン(T)、及びウリジン(U)と呼ばれる標準ヌクレオチドを含んでもよい。本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、塩基部分、糖部分、及びリン酸部分を含む分子を指す。核酸は、1つ又は複数の非標準ヌクレオチド、すなわちヌクレオチド類似体を含んでもよい。「ヌクレオチド類似体」という用語は、参照標準ヌクレオチドと比較して、当該ヌクレオチド類似体に対してその意図した機能を遂行させる他の特性を保持する一方で、当該ヌクレオチド類似体の化学的性質の、少なくとも1つの態様を修飾する、当該塩基部分及び/又は糖部分、及び/又はリン酸部分に対する一つ又は複数の修飾を含むヌクレオチドを指す。ヌクレオチド類似体、及びそれらを含む核酸は、当技術分野で周知であり、標準的な手順に従って合成、及び/又は商業的に入手してもよい。
【0061】
本開示の態様によれば、当該投入サンプル中の核酸は、任意の生物、任意の細胞、又は、単細胞生物、多細胞生物、原核生物、真核生物、無脊椎動物、脊椎動物、又はウイルスやマイコプラズマなどの、任意の核酸含有体を含む任意の生物に由来する細胞から得た生物学的サンプルに由来する。本開示の態様によれば、当該投入サンプル中の核酸は、植物、細菌、古細菌、又は真菌から得られた生物学的サンプルに由来する。本開示の態様によれば、当該投入サンプル中の核酸は、哺乳類被験体又は非哺乳類被験体に由来する。被験体から得られる生物学的サンプルは、唾液、血液、血漿、血清、粘液、尿、糞便、鼻腔内物質、脳脊髄液、脳室液、胸水、肺及び気管支洗浄サンプル、汗、涙、精液、膀胱洗浄サンプル、羊水、リンパ、毛髪、皮膚、腫瘍、及び腹膜液のサンプルであり得るが、これらに限定されない。
【0062】
哺乳類被験体は、以下を含む任意の哺乳類であり得るが、それらに限定されない:ヒト;ヒト以外の霊長類;マウス、ラット、又はモルモットなどのげっ歯類;猫又は犬などの家畜化されたペット;牛、豚、羊、山羊、ラクダ、ビクーニャ、又はウサギ;クジラ;イルカ、アザラシ、又はアシカなどの海洋哺乳類。
【0063】
非哺乳類被験体は、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫、魚類、線虫などを含む非哺乳類であり得るが、これらに限定されない。
【0064】
被験体は、性別を問わず、あらゆる年齢であり得る。本開示の方法の態様によれば、当該被験体はヒトである。
【0065】
本開示の態様によれば、当該投入サンプル中の核酸は、環境サンプル由来である。環境サンプルは、水サンプル、下水サンプル、大気サンプル、表層スワブ、食品サンプル、飲料サンプル、衣類サンプル、及び土壌サンプルを含む液状、ガス状、又は固体サンプルであり得るが、これらに限定されない。
【0066】
特定の態様によれば、当該投入サンプル及びテストサンプルは、増幅反応により得られたDNAなどの増幅DNAを含む。特定の態様によれば、当該投入サンプル及びテストサンプルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成された増幅DNAを含む。特定の態様によれば、当該投入サンプル及びテストサンプルは、等温増幅により生成された増幅DNAを含む。当該増幅反応のテンプレート核酸は、生物学的サンプル又は環境サンプルを含む、任意の起源の核酸であり得る。
【0067】
インビトロ増幅法を使用して、核酸の増幅を達成する。「増幅法」という用語は、テンプレート標的核酸をコピーし、それにより、テンプレート標的核酸の全て又は一部のコピーを含む核酸を生成する方法を指す。
【0068】
本発明の実施の形態に含まれる増幅方法は、標的核酸に隣接する一対のプライマーを使用して、核酸ポリメラーゼにより触媒される鋳型特異的なプライマー伸長を含む増幅方法であり、例えば、C.W. Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2003; V. Demidov et al., DNA Amplification: Current Technologies and Applications, Taylor & Francis, 2004; and Kroneis, T. (Ed.), Whole Genome Amplificationmethods and Protocols (Methods inmolecular Biology), 2015, Humana Press ISBN-10: 1493929895に記述されているように、例示的にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写 PCR(RT-PCR)、ライゲーション媒介PCR(LM-PCR)、pHi-29PCR、リアルタイム定量PCR(qPCR)、全ゲノム増幅、及び他の核酸増幅方法を含むが、これらに限定されない。
【0069】
「等温増幅」という用語は、単一温度増幅を含み、それにより(PCRのように)サーマルサイクリングを必要としない核酸増幅を指す。等温増幅の例は、環状ヘリカーゼ依存性増幅(cHDA)、ゲノム指数関数的増幅反応(GEAR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、等温多重置換増幅(IMDA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、多重置換増幅(MDA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、分岐増幅(RAM)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ローリングサークル増幅(RCA)、自律的配列複製(3SR)、RNAシグナル媒介増幅技術(SMART)、鎖置換増幅(SDA)、単一プライマー等温増幅(SPIA)、及び転写媒介増幅(TMA)を含むが、これらに限定されない。
【0070】
「増幅核酸」及び「増幅DNA」という用語、並びに、それらの複数形は、標的核酸鋳型を複製するプロセスの産生物を指す。
【0071】
増幅核酸は、プライマーには存在するが、元の核酸鋳型には存在しない、核酸配列、化学反応のための官能基、及び検出可能なラベルなどの追加的な物質を随意に含むが、これらに限定されない。このようなプライマー由来の物質により、更なる増幅反応のためのプライマー結合部位及び/又は基質に化学結合するための官能基などの機能が追加される。
【0072】
本明細書で使用される「質量」という用語は、例えばマイクログラム又はナノグラムの、質量単位で表されるDNAの量を指す。
【0073】
本開示に係る方法においては、任意の容器を使用することができる。特定の態様によれば、当該容器は、チューブ、バイアル、チャンバ、ウェル、又は窪みであり得る。特定の態様によれば、当該容器は、複数の個別サンプルを分けて保持し得る多区画容器でもよく、各サンプルは複数の窪みを有するスライド、チップ、又はトレイ、もしくはマルチウェルプレートなどの個別に分かれた区画に入っているが、これらに限定されない。
【0074】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、内部標準は使用されない。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、外因性内部標準は、投入サンプル又はテストサンプルが存在する当該容器に添加されない、又は当該容器に含まれない。
【0075】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、投入サンプル中の核酸の質量は定量化されない。従って、例えば、投入サンプル中の核酸は定量化されず、及び/又は当該テストサンプル中の核酸は定量化されず、それにより、テストサンプルの生成における、時間及び労力を要する工程が排除される。
【0076】
複数のテストサンプルの各々において、質量が正規化された核酸を有する複数のテストサンプルは、ハイスループットシーケンシングを含むシーケンシング、メチル化分析、一本鎖高次構造多型分析法、質量分析、キャピラリー電気泳動、高解像度溶融分析、及び制限断片長多型などの様々な核酸分析手順において有用であるが、これらに限定されない。
【0077】
複数のテストサンプルの各々において、質量が正規化された核酸を有する複数のテストサンプルは、超並列シーケンシング(次世代シーケンシング(NGS)とも呼ばれる)、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、パイロシーケンシング、一分子リアルタイムシーケンシング、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、コンビナトリアルプローブアンカー合成、ナノポアシーケンス、及びチェーンターミネーションシーケンシング等の様々な核酸分析手順において有用であるが、これらに限定されない。
【0078】
可逆的且つ非特異的に核酸と結合することができる磁性粒子は、本開示の態様に係る方法、組成物、及びキットに含まれる。
【0079】
本明細書に開示されるように、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子は、本開示の態様に係る方法、組成物、及びキットに含まれ、可逆的且つ非特異的に核酸と結合することができる。ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子に関して、本明細書で使用される「非特異的結合」という用語は、本明細書に記載されるような結合条件下での結合混合物におけるイオン相互作用及び/又は水素結合などの非限定的な例における非特異的相互作用による、磁性粒子の、核酸との会合を指す。本明細書で使用される「非特異的結合」という用語は更に、磁場の印加、上清の除去、及び洗浄液を用いた洗浄により非結合核酸から分離する時に、核酸は磁性粒子に非特異的に結合したままであるが、磁性粒子から核酸が溶出することにより会合が容易に逆転する程度の、磁性粒子と核酸との会合を指す。
【0080】
本明細書で使用される「磁性」という用語には、常磁性、超常磁性、強磁性、及びフェリ磁性原料を含む磁性原料が含まれる。従って、可逆的且つ非特異的に、核酸と結合できる磁性粒子は、常磁性、超常磁性、強磁性、及びフェリ磁性原料を含む、一つ又は複数の磁性原料を含んでもよい。このような磁性原料の例として、Fe、Co、CrO2、Dy、EuO、Gd、Ni、MnAs、MnBi、NiO/Fe、NiFe2O4、Fe3O4を含む。
【0081】
磁性粒子は、様々な形状、規則的、不規則的、又は規則的と、不規則的と、の混合、例えば球、回転楕円体、楕円、楕円体、棒、及び棒状のいずれでもあり得るが、これらに限定されない。磁性粒子はビーズであり得る。
【0082】
磁性粒子は、典型的には、50ミクロン未満の平均直径又は平均最長寸法を有する。当該磁性粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子、又はそれらの混合物であってもよく、ここでマイクロ粒子の平均直径又は平均最長寸法は約1nm乃至約1000nmの範囲であり、マイクロ粒子の平均直径又は平均最長寸法は約1ミクロン乃至約50ミクロンの範囲である。本開示の態様によれば、当該磁性粒子は、約1nm乃至約1000nm、例えば約1nm乃至約10nm、例えば約1nm乃至約100nm、例えば約10nm乃至約50nm、例えば約10nm乃至約100nm、例えば約50nm乃至約200nm、例えば約100nm乃至約250nm、例えば約200nm乃至約500nm、例えば約300nm乃至約600nm、例えば約500nm乃至約750nm、例えば約700nm乃至約1000nm、例えば約1ミクロン乃至10ミクロン、例えば約10ミクロン乃至約20ミクロン、又は例えば約25ミクロン乃至約50ミクロンの範囲の平均直径又は平均最長寸法を有する。本開示の態様によれば、当該磁性粒子は約0.5ミクロン乃至約5ミクロンの範囲の平均直径又は平均最長寸法を有する。本開示の態様によれば、当該磁性粒子は約1ミクロン乃至約3ミクロンの範囲の平均直径又は平均最長寸法を有する。
【0083】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該磁性粒子は、官能化された表面を含み、当該表面からぶら下がるヒドロキシル官能基、すなわちペンダントヒドロキシル官能基を含有する。当該磁性粒子は、ヒドロキシル官能基を含む、又はヒドロキシル官能基を含むように官能化することができる、一つ又は複数の非磁性層に封入された固体磁性コアを含んでもよい。
【0084】
本開示の態様によれば、磁性粒子は、ポリマー原料に封入された磁性原料の断片のコアを含んでもよく、ヒドロキシル官能基を含むように、表面が官能化される。本開示の態様によれば、当該磁性粒子は、ポリビニルアルコール(PVA)に封入された磁性原料の断片のコアを含んでもよく、その粒子の表面には、シラン化などによる、ヒドロキシル官能基を含む。
【0085】
本開示の態様によれば、当該磁性粒子はシリカを含む。
【0086】
本開示の態様によれば、当該磁性粒子はシリカを被膜した磁性粒子である。
【0087】
本開示の態様によれば、ヒドロキシル官能基を持つスペーサは、当該ヒドロキシル官能基が磁性粒子の表面及び/又はシリカ又はポリマーの被膜などの磁性粒子表層の被膜から離間するように、磁性粒子表面及び/又は磁性粒子表層の被膜に共有結合し且つ当該表面及び/又は当該表層の被膜から延びている。本開示の態様によれば、当該スペーサは、多原子基又は原子鎖であり得る。多原子基であるスペーサの非限定的な例は、C(O)である。
【0088】
本開示の態様によれば、スペーサは、3乃至20個、又はそれ以上の原子の、分岐鎖又は直鎖などの原子鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは、4乃至20個、又はそれ以上の原子の、直鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の原子の直鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは6、7、8、9、10、11、又は12個の原子の直鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の原子の直鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の原子の直鎖であるか、又はそれを含む。本開示の態様によれば、スペーサは、10、11、12、13、14、又は15個の原子の直鎖であるか、又はそれを含む。
【0089】
本開示の態様によれば、スペーサは、置換又は非置換のC3-C20アルキル、置換又は非置換のC3-C20アルケニル、置換又は非置換のC3-C20アルキニル、置換又は非置換のC6-C12アリール、置換又は非置換のC3-C12シクロアルキル、置換又は非置換のC5-C12ヘテロアリール、又は、置換又は非置換のC5-C12ヘテロシクリルなどの原子鎖であるか、又はそれらを含むが、これらに限定されず、ここで、当該鎖は少なくとも一つのヒドロキシル官能基、好ましくは少なくとも一つの末端ヒドロキシル官能基を含む。本明細書で使用される「末端ヒドロキシル官能基」という用語は、スペーサにおける原子鎖の最終原子、すなわち磁性粒子から最も遠い原子鎖の原子上のヒドロキシル基、又は、スペーサにおける原子鎖の最終原子から2、3、又は4原子以内にある原子上のヒドロキシル基、を指す。
【0090】
本開示の態様によれば、スペーサは、置換又は非置換のC3アルキル、置換又は非置換のC4アルキル、置換又は非置換のC5アルキル、置換又は非置換のC6アルキル、置換又は非置換のC7アルキル、置換又は非置換のC8アルキル、置換又は非置換のC9アルキル、置換又は非置換のC10アルキル、置換又は非置換のC11アルキル、置換又は非置換のC12アルキル、置換又は非置換のC13アルキル、置換又は非置換のC14アルキル、置換又は非置換のC15アルキル、置換又は非置換のC16アルキル、置換又は非置換のC17アルキル、置換又は非置換のC18アルキル、置換又は非置換のC19アルキル、又は、置換又は非置換のC20アルキルなどの原子鎖であるか、又はそれらを含み、ここで当該鎖は、少なくとも一つのヒドロキシル官能基、好ましくは少なくとも一つの末端ヒドロキシル官能基を含む。当該表面から垂れ下がるヒドロキシル官能基、すなわちペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子は、周知の技術により生成すること、又は市販品を購入することができ、例えば、米国特許第7,129,308号及びYang, H., et al., ACS Appl. Mater. Interfaces, 2015, 7, 1, 774-781を参照。
【0091】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量(binding capacity)で、可逆的且つ非特異的に、核酸と結合することができる磁性粒子の量が当該結合混合物中に含まれ、ここで当該複数の投入サンプルの各々は、当該量の磁性粒子の結合容量よりも大きい核酸の質量を含む。当該量の磁性粒子の結合容量は、実験数値に基づく決定、及び/又は、当該磁性粒子の特性に基づく推定、及び/又は予測を含むが、これらに限定されない、任意の様々な方法を用いて決定することができる。したがって、例えば、規定された結合条件下で、既知の核酸量と共に既知の磁性粒子量を用いて、磁性粒子に結合する核酸の量を決定することにより、当該磁性粒子の結合容量を、実験数値から決定することができる。別の例では、磁性粒子の表面積、磁性粒子上の官能基の密度、及び磁性粒子と非特異的に結合した個々の核酸分子に関連する官能基の数を含む、当該磁性粒子の特性を用いて、計算により、結合容量を推定、又は予測することができる。したがって、例えば、直径1ミクロンの磁性粒子の表面積を3.14×106nm2と仮定し、当該磁性粒子の表面から垂れ下がっている一つのヒドロキシル官能基の、当該磁性粒子の表面積1nm2あたりの密度を仮定し、当該磁性粒子の表面から垂れ下がっている、核酸分子の非特異な結合に関与するヒドロキシル官能基の数を1乃至10と推定すると、単一磁性粒子の結合容量は、直径1ミクロンの磁性粒子あたり約30,000乃至300,000個の核酸分子の範囲にあると予測される。異なる磁性粒子の大きさ、異なる官能基密度、及び異なる核酸分子の大きさを用いて、結合容量を同様に推定することができる。
【0092】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、磁性粒子はペンダントカルボキシル官能基部分及び/又はペンダントアミン官能基部分を含まない。
【0093】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該磁性粒子は、特異的に当該核酸に結合する結合パートナーを含まない。態様によれば、「特異的に当該核酸と結合する結合パートナー」という用語は、当該核酸に特異的に結合することができる、タンパク質、ペプチド、及び/又は核酸を指す。例えば、当該磁性粒子は、当該投入サンプル又はテストサンプル中の核酸に相補的な核酸、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該磁性粒子はビオチンを含まない。
【0094】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、結合混合物を各容器に添加し、各容器内に正規化混合物を生成するステップが含まれる。
【0095】
当該結合混合物には以下のものを含む:i)ペンダントヒドロキシル官能基を有する、一定量の磁性粒子、ii)キレート剤、iii)結合バッファ、及びiv)アルコール。
【0096】
結合混合物に含有される、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子の量は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸と結合するのに十分である。当該結合混合物中に含有される、ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子の量は、例えば、ペンダントヒドロキシル官能基を有する当該磁性粒子の結合容量を決定し、テストサンプルにおいて望ましい核酸量を考慮することにより、計算できる。
【0097】
本開示の態様記載の当該結合混合物中に含まれるキレート剤は、約0.5mM乃至約5mMの濃度で、結合混合物中に存在する。本開示の態様記載の当該結合混合物中に含まれるキレート剤は、以下のうちの一つ又は複数である:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
【0098】
結合混合物に含まれる、当該結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含む。含有カオトロープは以下うちの一つ又は複数である:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸又はグアニジン一臭化水素酸)、ヨウ化グアニジニウム(グアニジンヨウ化水素酸)、塩化グアニジン(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(グアニジニウムチオシアネート)、硝酸グアニジン(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。本開示の態様に係る、当該結合バッファ中に含まれるカオトロープは、当該結合バッファ中に約0.1M乃至約6Mの濃度で存在する。
【0099】
当該結合バッファ中に含まれる当該緩衝液は、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有するように酢酸で調整された、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムを含む酢酸緩衝液であってもよい。
【0100】
本開示の態様によれば、当該結合バッファはPEGを含まない。
【0101】
本開示の態様によれば、当該結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム、又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する。
【0102】
当該結合混合物中に含まれるアルコールは、以下のうちの一つ又は複数が含まれる:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
【0103】
本開示の態様によれば、結合混合物中の、アルコールの、当該結合混合物に対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該アルコールの、当該結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該アルコールの、当該結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である。
【0104】
本開示の態様によれば、アルコールの、結合バッファに対する体積対体積比を変化させることにより、磁性粒子に結合した核酸の平均サイズを制御することができる。
【0105】
図3及び
図4に示すように、アルコールの、結合バッファに対する体積対体積比が大きくなると、磁気ビーズに対して、より小さな核酸(アルコールと結合バッファとの比が1.75:1、長さが約100bp乃至約300bpの平均サイズに濃縮されている)が結合するように選択され、したがって、最終テストサンプルにおいて、より小さな核酸が選択的に回収される。逆に、当該アルコールの、当該結合バッファに対する体積比が小さくなると、当該磁気ビーズに対する結合に、より大きな核酸(アルコール:結合バッファが0.25:1であって、長さが約500bp乃至約1000bp)が選択され、したがって、最終テストサンプルにおいて、より大きな核酸が選択的に回収される。したがって、結合混合物中のアルコールの結合バッファに対する体積対体積比を0.25:1乃至1.75:1の範囲で適切に選択することにより、所望の大きさの核酸を選択的に回収することができる。
【0106】
前述したように、結合混合物を各容器に添加することで、各容器中に正規化混合物を生成する。次いで、各容器中の正規化混合物を、結合条件下でインキュベートし、正規化混合物中において核酸の当該磁性粒子への結合を促進する。結合条件には、約15℃乃至約30℃の範囲の温度、約5分乃至約2時間の範囲の時間、例えば約20℃乃至約25℃の範囲の温度、約5分乃至約15分間の範囲の時間など、が含まれる。温度は、例えば、約4℃乃至約40℃の範囲など、より高く、又は、より低くてもよく、保温時間は、それに応じてより長く、又は、より短く調節してもよい。
【0107】
可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する当該磁性粒子の、各容器中における、非結合核酸からの分離を、磁場の印加により達成してもよい。次に、当該上清を除去し、各容器中において、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する当該磁性粒子を各容器中に残す、すなわち、非結合核酸から分離することができる。
【0108】
可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する当該磁性粒子を、当該非結合核酸から分離すると、可逆的且つ非特異的に結合した核酸が当該磁性粒子から溶出し、複数のテストサンプルが生成される。本開示の態様によれば、当該磁性粒子からの当該核酸の溶出には、ビーズの溶出バッファ中でのインキュベートを含む。本開示の態様によれば、「溶出バッファ」は、非特異的に結合した核酸の、磁性粒子からの解離を促進する水性液体であるので、当該核酸はほとんど分解されず、当該溶出バッファに放出される。当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH7.0乃至8.5、10mM Tris酢酸, pH7.0乃至8.5、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、水などの水性液体であり得るが、これらに限定されず、更に0.1mM EDTAなどのEDTAを含んでもよい。本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。
【0109】
溶出後、それにより生成された複数のテストサンプルの各々は、特定の質量を有する単離核酸を含み、当該単離核酸の質量は、実質的に、当該磁性粒子の結合容量と同等であり、それにより、複数のテストサンプルの各々において核酸の正規化された質量が提供される。
【0110】
本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、更に以下が含まれる:磁場の印加後、及び溶出の前に、可逆的且つ非特異的に、当該核酸と結合した当該磁性粒子を、洗浄液で洗浄する。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該洗浄液は、約60%乃至約100%の範囲のエタノールを含む。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該洗浄液は、約60%エタノール、約70%エタノール、約80%エタノール、約90%エタノール、又はそれ以上のエタノールを含有するエタノール水溶液を含む。本開示の複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法の態様によれば、当該洗浄液は、約80%エタノールの水溶液を含む。
【0111】
本開示の態様によれば、テストサンプルを得ると、2つ又はそれ以上の当該テストサンプルを、分析の前に、プールできる。本開示の態様によれば、当該テストサンプルを得ると、2つ又はそれ以上の当該テストサンプルを、分析の前に、必要ならば、均等又は不均等な体積でプールすることができる。当該プールされたサンプルに対して、一つ又は複数の核酸分析方法を実行することができる。
【0112】
本開示の態様によれば、一つ又は複数の正規化混合物の非結合核酸を、後に使用するために回収することができる。回収された一つ又は複数の正規化混合物の非結合核酸は、保存することができ、及び/又は任意の様々な核酸分析で使用することができる。
【0113】
本開示の方法の態様によれば、一つ又は複数の正規化混合物の非結合核酸を回収することは、
一つ又は複数の正規化混合物の非結合核酸を、対応する容器に移すこと;
結合混合物を対応する各容器に添加し、対応する各容器中に回収混合物を生成すること;
ここで、当該結合混合物は以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を有する一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、当該結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
当該一定量の磁性粒子は、1ナノグラム乃至5マイクログラムの範囲における結合容量で、核酸に可逆的且つ非特異的に結合することができ、且つ
当該回収混合物の各々は、当該一定量の磁性粒子の結合容量よりも大きい、小さい、又は等しい核酸の質量を含む;
結合条件下で各回収混合物を保温し、それにより、当該磁性粒子に対して当該核酸の全て、又は一部を可逆的且つ非特異的に結合させ、可逆的且つ非特異的に回収核酸に結合した磁性粒子を生成すること;
磁場の印加により回収核酸に対して可逆的且つ非特異的に結合した磁性粒子を分離すること;及び
可逆的且つ非特異的に結合している回収核酸を、当該磁性粒子から溶出させること、を含む。
【0114】
本開示の態様に係るキットは以下を含む:ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子;カオトロープの緩衝水溶液含有の結合バッファ;洗浄液;及び溶出バッファ。本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mMEDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は約80%のエタノールを含む。
【0115】
本開示の態様に係るキットは、以下を含む:ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子;カオトロープの緩衝水溶液含有の結合バッファ;洗浄液;溶出バッファ;キレート剤、及びアルコール。本開示の態様によれば、溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mMEDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は約80%のエタノールを含む。
【0116】
本開示の態様に係るキットは以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子;
グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含む結合バッファで、当該結合バッファのpHは、約pH4乃至約pH6の範囲;
洗浄液;及び
溶出バッファ。
【0117】
本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び 0.1mMEDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液には、約80%のエタノールが含まれる。
【0118】
本開示の様態に記載のキットは、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を有する磁性粒子;
グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含む結合バッファで、当該結合バッファのpHは、約pH4乃至約pH6の範囲;
洗浄液;
溶出バッファ;
キレート剤;及び
アルコール。
【0119】
本開示の態様によれば、当該溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノール本を含む。本開示の態様によれば、当該洗浄液は、エタノールの水溶液を含み、当該エタノールは、当該水溶液中で、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれ以上である。本開示の態様によれば、洗浄液は、約80%のエタノールを含む水溶液である。
【0120】
本発明の組成物及び方法の実施の形態を、以下の実施例で説明する。これらの実施例は説明を目的として提供されており、本発明の組成物及び方法の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0121】
当該実施例で使用される原料及び方法、示されている場合には変更を伴う。
【0122】
36mLのpH調整酢酸カリウムを作るには:
【表1】
【0123】
当該溶液約10mLを清潔なチューブに移し、pHを測定する。pHは5.1乃至5.3の間である。
【0124】
【0125】
この実施例における、結合バッファ成分の最終濃度:4.35Mグアニジン塩酸塩、0.58M 酢酸カリウム、酢酸を使用して最終pHをpH4.1乃至4.4に調整した。
【0126】
溶液約10mLを清潔なチューブに移し、pHを測定する。pHは4.15乃至4.35の間である。
【0127】
洗浄バッファ
80%エタノール
【0128】
溶出バッファ
10mM Tris-HCl, pH8.0、0.1mM EDTA。
【0129】
正規化される核酸を含むサンプル50μLを含有する各反応容器のマスター結合混合物:
・25μL 20mM EDTA
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL) - 合計22.5μg
・結合バッファ80μL
・100%エタノール90μL
【0130】
[実施例1]
【0131】
正規化されるPCR反応物50μLを含む各反応容器毎に、
以下を含むマスター結合混合物を作成する:
・25μL 20mM EDTA
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL) - 合計22.5μg
・結合バッファ80μL
・100%エタノール90μL。
【0132】
マスター結合混合物を準備したら、それを含むチューブを十分にボルテックスする(>5秒)。当該ビーズが均等に分散していることを確認する。
【0133】
マスター結合混合物196μL(シングルチャネル)を、DNA含有水溶液(投入サンプル)50マイクロリットルを含む各反応容器(チューブ)に添加し、ピペット操作を3サイクル(サイクル=吸引/吐出)行う。
【0134】
マスター結合混合物を各反応容器に等分して、正規化混合物を形成したら、マルチチャンネルピペットを150μLに設定し、混合物を10サイクルピペッティングして正規化混合物中にビーズを完全に分散させる。
【0135】
ビーズを適切に分散させるために、追加の混合が必要なことも有り得る。
【0136】
正規化混合物を室温で、10分間、静置してインキュベートする。
【0137】
10分間インキュベートした後、当該チューブを磁石上に1分間置く。磁石の強さにより時間は異なってもよい。溶液が透明になるまで、ビーズを磁石上に置いたままにする。
【0138】
200μLに設定したマルチチャンネルピペットで上清を除去する - 注:上清の総量は約246μL。全ての上清を除去するために2回の吸引が必要である。
【0139】
非結合DNAの回収が期待される場合は、上清を清潔なチューブに移す。ペンダントヒドロキシル官能基を含む、50mg/mLの磁性粒子3μLを加え、ピペットで10サイクル混合して当該ビーズを完全に分散させ、その後、室温で、10分間静置してインキュベートする。
【0140】
非結合DNAの回収が不要な場合、上清を廃棄する。
【0141】
チューブ内の溶液が透明になったら、磁場を印加することで、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子と、結合核酸と、が非結合核酸から分離したことを示し、当該チューブを磁石に接触させたままで、新たに作った80%エタノール200μLを加え、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子と、結合核酸と、を洗浄する。
【0142】
磁石上で、室温で、30秒間インキュベートする。
【0143】
上清を除去、及び廃棄する。
【0144】
80%エタノールを200μL加えることにより、80%エタノール洗浄段階を繰り返し、室温で、30秒間、磁石上でインキュベートし、上清を除去、及び廃棄する。清潔なp20マルチチャンネルピペットチップのセットを用いて、当該p20容量を15μLに設定し、当該チューブの底から全ての残留エタノールを慎重に除去する。
【0145】
チューブを磁石上に3分間放置して、核酸結合ペンダントヒドロキシル官能基含有磁性粒子を含む当該ペレットを、空気乾燥させる。チューブのキャップは開けたままにしておく。
【0146】
磁石からチューブを取り外し、溶出バッファ22μLをペレットに加え、全てのビーズが十分に再懸濁するまで繰り返しピペッティングする(10ピペットサイクル)。
【0147】
磁石を外して、室温で2分間、インキュベートする。
【0148】
チューブを磁石上に2分間置く。磁石の強さにより、当該時間は異なってもよい。当該溶液が透明になるまで、ビーズを磁石の上に置いたままにする。
【0149】
上清20μLを新しいチューブに移す。
【0150】
予想されるDNA回収量は、合計約100乃至150ng(約5乃至6.5ng/μL)。
【0151】
シーケンシングする場合は、全てのライブラリを等量、ライブラリごとに最小2μL以上プールする。
【0152】
結合ライブラリを十分に混合する。最終プールをQubitで定量化する。最終プールの大きさをLabChipで評価する。
【0153】
[実施例2]
【0154】
捕捉されたDNAの大きさ分布について、エタノールの、結合バッファに対する、様々な比の影響
【0155】
エタノールと結合バッファの比率を変えて、実施例1の方法に従った。等量の、剪断DNA400ngが、各投入サンプルに含まれた。
【0156】
使用したマスター結合混合物には次のものが含まれた:
水性液体50μL中の剪断DNA400ngのサンプルを含む各反応容器に対して、
・25μL 20mM EDTA
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL) - 合計22.5μg
・結合バッファ80μL
・10μL、20μL、30μL、又は40μLの100%エタノール。
【0157】
図2Aのグラフに示されるように、エタノールの、結合バッファに対する比の変化の結果、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲が変化する。エタノールの量を増やすと、より小さなDNAフラグメントの分離が増加する。
図2Bは、単離されたDNAの大きさのゲル分析の画像であり、エタノールの、結合バッファに対する比に応じて、異なる範囲の大きさのDNAフラグメントが単離されることを示す。
【0158】
[実施例3]
【0159】
捕捉されたDNAの大きさの分布についての、エタノールの、結合バッファに対する様々な比の影響
【0160】
エタノール(EtOH)と結合バッファ(BB)の比率を変えて、実施例1の方法に従った。等量の、剪断されたDNA400ngが各投入サンプルに含まれた。
【0161】
使用したマスター結合混合物には次のものが含まれた:
水性液体50μL中の、剪断DNAサンプル400ngが含まれる各反応容器に対して、
・25μL20mM EDTA、
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μ(22.5μg/μL) - 合計22.5μg、
・結合バッファ80μL(BB)、
・エタノール:結合バッファが0.25:1、エタノール:結合バッファが0.50:1、エタノール:結合バッファが0.75:1、エタノール:結合バッファが1.00:1、エタノール:結合バッファが1.25:1、エタノール:結合バッファが1.50:1、エタノール:結合バッファが1.75:1の、比を達成する体積の100%エタノール。対照として、エタノールを省略した。
【0162】
図3は、エタノールの、結合バッファに対する比の変化を、ゲル分析した結果を示す。エタノールの、結合バッファに対する様々な比を使用して単離したDNAサンプルと比較して、左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)は、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲にばらつきがあることを示す。エタノールを増やした結果、より小さなDNAフラグメントの分離が増加する。
図4は、当該単離DNAの大きさのゲル分析の画像であり、エタノールの、結合バッファに対する比に応じて、異なる大きさのDNAフラグメントが単離されることを示す。エタノールの、結合バッファに対する比が1.125の結果は、釣鐘曲線状の大きさ分布となる。表3は、エタノールの、結合バッファに対する、様々な比を使用して単離した、剪断DNAフラグメントの塩基対(bp)における平均大きさを示す。
【表3】
【0163】
[実施例4]
【0164】
捕捉されたDNAの大きさの分布に対する、結合バッファ(BB)対水性液体中にDNAを含む「正規化混合物」の水性成分(Aqu)、の影響。
【0165】
実施例1の方法に従い、各投入サンプルは、結合バッファの、当該水性成分に対する比で置換した、同等量の、剪断DNA400ngを含んだ。
【0166】
使用したマスター結合混合物には以下を含んだ:
水性液体50μL中に、剪断DNAサンプル400ngを含む各反応容器に対して、
・25μL 20mM EDTA、
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL) - 合計22.5μg、
・結合バッファ:Aquが2.55:1、結合バッファ:Aquが2.35:1、結合バッファ:Aquが2.16:1、結合バッファ:Aquが1.96:1、結合バッファ:Aquが1.76:1、結合バッファ:Aquが1.57:1、結合バッファ:Aquが1.37:1、結合バッファ:Aquが1.18:1、の比を達成する体積の結合バッファ、
・100%エタノール90μL。
【0167】
図5は、エタノールの、結合バッファに対する比の変化についてのゲル分析の結果を示す。大きさの分布に関しては、水性液体中にDNAを含む「正規化混合物」の水性成分(Aqu)の、結合バッファ(BB)に対する様々な比を使用した単離DNAサンプルと比較して、左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)は、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲に対して、有意な影響を及ぼさないことを示す。
【0168】
[実施例5]
【0169】
正規化混合物のpHが、捕捉DNAの大きさ分布に及ぼす影響。
【0170】
pHを変化させて実施例1の方法に従う。等量の剪断DNA400ngが、各投入サンプルに含まれた。
【0171】
使用したマスター結合混合物には次を含んだ:
水性液体50μL中に、剪断DNAサンプル400ngを含む各反応容器に対して、
・25μL 20mM EDTA
・ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL) - 合計22.5μg
・結合バッファ80μL
・100%エタノール90μL。
【0172】
最終正規化混合物は4.15乃至4.35(「標準」)、pH5.0、pH5.5、又はpH6のpHを有した。
【0173】
図6は、正規化混合物のpHの変化についてのゲル分析の結果を示す。左端のレーンのDNAラダー(Gene Ladder 50 bp)を、大きさの分布に関して、指定のpHを使用して単離したDNAサンプルと比較する。pHの上昇は、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子に結合し且つ当該磁性粒子から溶出するDNAフラグメントの大きさの範囲に、軽微な影響を及ぼし、150bp以下のフラグメントを除去する。
【0174】
[実施例6]
【0175】
本開示の方法は、二人の別個の操作者により、25ng、50ng、100ng、250ng、350ng、500ng、625ng、及び750ngの様々な量の投入DNAで実施された。しかしながら、
図7に見ることができるように、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子を、同量、異なる量のDNAを含む各サンプルに添加すると、等量のDNAが回収され、この産生物及び手順が、DNAの総質量による正規化を実現することを示す。
【0176】
XPビーズは、PEG:NaCl溶液中のカルボン酸塩ビーズであり、チューブ内の全てのDNAに結合するように設計され、洗浄して塩を除去し、溶出する。これらは、DNAを精製するために使用される、標準的なビーズ及びバッファのタイプであり、市販されている例としてはBeckman AgencourtBeadsがある。
【0177】
図8は、ライブラリ回収率及びクラスター均衡百分率(percent cluster balancing)を示し、本開示に係る方法を使用することで達成される、複製可能性及び再現性を示すグラフである。500ngと1100ngの間の、様々な推定投入DNA量が使用された。使用した、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子は、PCR後に、500ng以上で正規化できた。回収されたDNA量により、88ライブラリ全体で100%の正規化が達成された(+/-1.35倍の差。回収したDNAの総平均:約100ng(約11.5nm)。クラスタリングにより約94%の正規化が達成された;+/-1.38倍の差で、%クラスタの閾値を下回った5ライブラリは除外;88ライブラリ全体で+/-1.48倍の差。)。
【0178】
[実施例7]
【0179】
ビーズベースのライブラリの正規化
【0180】
この実施例において、24のゲノムDNAサンプルを使用して、24の増幅されたライブラリを生成した。このために、ゲノムDNA投入原料10ngを使用し、断片化時間は10分だった。増幅には7サイクルのPCRを含み、24の増幅されたライブラリを生成した。これらを、次のように正規化した:
【0181】
ペンダントヒドロキシル官能基を含む正規化磁気ビーズを、100%エタノール中に懸濁し、濃度が22.5μg/μLの磁気ビーズを生成した。
【0182】
次に、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子を1μL(22.5μg/μL、すなわち合計22.5μg)、結合バッファ108μLに添加することにより、当該正規化磁気ビーズを、結合バッファと混合した。この例における使用した当該結合バッファは、3.31MグアニジンHCl、0.44M酢酸カリウム、及び4.76M EDTAを含んだ。
【0183】
磁性ビーズを含む、エタノール:結合バッファマスター混合物を、100%エタノール75μLと、結合バッファ/磁気ビーズ109μLと、を混合して生成した。100%エタノール対結合バッファの容量比は0.69:1だった。
【0184】
正規化のために、増幅された各ライブラリ25μLを、96ウェルPCRプレートの、離れたウェルに入れ、次いで、正規化磁気ビーズを含むマスター混合物184μLを、各ウェルに加えた。EDTAの最終濃度は2.79mMだった。各ウェルの原料は均質化するまで十分に混合した後、室温で8分間インキュベートした。
【0185】
次に、上清が完全に透明になり、当該正規化磁気ビーズがウェルの底に沈殿するまで、当該96ウェルPCRプレートを磁気スタンド上に、室温で5分間置いた。
【0186】
次に、正規化磁気ビーズのペレットを乱すことなく、透明な当該上清を除去した。除去したら、当該上清、正規化されていないライブラリを含む、を清潔なチューブに移し、凍結した。必要に応じて、当該チューブを解凍、精製して更に回収してもよい。
【0187】
磁気正規化ビーズのペレットを含む当該96ウェルプレートを、当該磁気スタンド上に置いたままで、80%エタノール200μLを、各正規化磁気ビーズペレットに添加し、当該プレートを室温で30秒間、インキュベートした。次に、当該エタノール上清を、ピペットで注意して除去した。これを繰り返し、80%エタノールで合計2回、洗浄した。当該エタノールを除去したら、正規化磁気ビーズの当該洗浄済みペレットを室温で3分間、風乾した。
【0188】
次に、乾燥させた当該正規化磁気ビーズを、各ウェルにおける、溶出バッファ23μLで再懸濁し、均質化するまで十分に混合した。この実施例で使用した溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0及び0.1mM EDTAの溶液だった。次に、再懸濁した当該正規化磁気ビーズを、室温で2分間、インキュベートした。
【0189】
インキュベーション後、当該96ウェルPCRプレートを当該磁気スタンド上に、室温で2分間置き、その後、当該上清は完全に透明になった。
【0190】
透明な当該上清(溶出サンプル)20μLを、各ウェルから、新しい96ウェルプレートの対応するウェルに移した。
【0191】
各溶出サンプル5μLを除去し、他のサンプルと共に、単一の1.5mLチューブにプールし、プールされたライブラリを作成した。当該プールされたライブラリの定量は、濃度を決定する蛍光分析法を用いて実行することができる。DNAライブラリのテンプレートを定量化し、最適なクラスタ密度を得るために、qPCRを使用してもよい。
【0192】
プールされたライブラリのサンプルを電気泳動で調べ、目的のライブラリのサイジングが得られたことを確認した。正規化後の24個の増幅ライブラリに亘って、1.20倍の差、
図9及び
図10を参照。
図9は、正規化された24個の当該増幅ライブラリの各々のサンプルを使用した、ゲル電気泳動の結果の画像である。
図10は、正規化された24個の当該増幅ライブラリの各サンプルを使用した、フラグメントサイズの分析結果のグラフである。
【0193】
この段階では、当該プールされたライブラリを、標準のIllumina(登録商標)プロトコルにより、クラスタ生成に使用した。
【0194】
[実施例8]
【0195】
ビーズベースのライブラリの正規化
【0196】
この実施例における、8個のゲノムDNAサンプルを使用して、8個の増幅ライブラリを生成した。このために、ゲノムDNA投入原料10ngを使用し、断片化時間は10分だった。増幅には7サイクルのPCRを含み、8つの当該増幅ライブラリを生成した。次に、これらを次のように正規化した:
【0197】
ペンダントヒドロキシル官能基を含む正規化磁気ビーズを、100%エタノール中に懸濁し、濃度が22.5μg/μLの磁気ビーズを生成した。
【0198】
次に、ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子1μL(22.5μg/μL、すなわち合計22.5μg)を、結合バッファ108μLに加えることで、当該正規化磁気ビーズを、結合バッファと混合した。この実施例で使用した結合バッファには、3.31MグアニジンHCl、0.44M酢酸カリウム、及び4.76M EDTAが含まれた。
【0199】
磁性ビーズを含む、エタノール:結合バッファのマスター混合物は、100%エタノール75μLを、結合バッファ/磁気ビーズ109μLと混合することで生成した。100%エタノール対結合バッファの体積対体積比は0.69:1だった。
【0200】
正規化のために、増幅された各ライブラリ25μLを、96ウェルPCRプレートの、離れたウェルに入れ、次に、正規化磁気ビーズを含有するマスター混合物184μLを、各ウェルに加えた。EDTAの最終濃度は2.79mMだった。次に、各ウェルの原料を、均質化するまで十分に混合し、その後、室温で8分間インキュベートした。
【0201】
次に、当該96ウェルPCRプレートを、当該上清が完全に透明になり、当該正規化磁気ビーズが当該ウェルの底に沈殿するまで、磁気スタンド上に室温で5分間置いた。
【0202】
次に、正規化磁気ビーズの当該ペレットを乱すことなく、透明な当該上清を除去した。除去したら、正規化されていないライブラリを含む当該上清、を清潔なチューブに移し、凍結した。必要に応じて、当該チューブを解凍、精製して更に回収してもよい。
【0203】
正規化磁気ビーズの当該ペレットを含む、96ウェルプレートを当該磁気スタンド上に置いたまま、80%エタノール200μLを、各正規化磁気ビーズペレットに添加し、次に、当該プレートを室温で30秒間、インキュベートした。次いで、当該エタノール上清を、ピペットで注意深く除去した。これを繰り返し、80%エタノールで合計2回、洗浄した。当該エタノールを除去したら、洗浄した正規化磁気ビーズの当該ペレットを、室温で3分間、風乾した。
【0204】
次に、乾燥させた正規化磁気ビーズを、各ウェル中で、溶出バッファ23μLで再懸濁し、均質化するまで十分に混合した。この実施例で使用した溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAの溶液だった。次に、再懸濁した当該正規化磁気ビーズを、室温で2分間、インキュベートした。
【0205】
インキュベーション後、当該96ウェルPCRプレートを磁気スタンド上に、室温で2分間置いた後、当該上清が完全に透明になった。
【0206】
透明な当該上清(溶出サンプル)20μLを、各ウェルから、新しい96ウェルプレートの対応するウェルに移した。
【0207】
各溶出サンプル5μLを除去し、他のサンプルと共に、単一の1.5mLチューブにプールし、プールされたライブラリを作成した。当該プールされたライブラリの定量化は、濃度を決定する蛍光分析を使用することで実行できる。DNAライブラリテンプレートを定量化し、最適なクラスタ密度を得るために、qPCRを使用してもよい。
【0208】
当該プールされたライブラリのサンプルを電気泳動により調べ、目的のライブラリーサイジングが得られたことを確認した。正規化後の8個の当該増幅ライブラリに亘って、1.38倍の差、
図11を参照。
図11は、8個の正規化された増幅ライブラリの各々のサンプルを使用した、ゲル電気泳動の結果の画像である。
【0209】
この段階では、当該プールされたライブラリを、標準のIllumina(登録商標)プロトコルにより、クラスタ生成に使用した。
【0210】
項目
【0211】
項目1. 複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法であって、以下を含む方法:
水性液体中に核酸を含む複数の投入サンプルを提供すること、前記複数の投入サンプルの各々は別個の容器内に存在する;
結合混合物を各容器に添加して、各容器内に正規化混合物を生成すること;
前記結合混合物は、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記複数の投入サンプルの各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい質量の核酸を含む;
結合条件下で、各正規化混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させること;
磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に結合した核酸を有する前記磁性粒子を、非結合核酸から分離すること;及び
前記可逆的且つ非特異的に結合した核酸を、前記磁性粒子から溶出させ、複数のテストサンプルを生成すること、
ここで、前記複数のテストサンプルの各々は、質量を有する単離された核酸を含み、
前記単離された核酸の前記質量は、前記磁性粒子の前記結合容量と略等しく、それにより、前記複数のテストサンプルの各々において、正規化された核酸の質量を提供する。
項目2. 前記容器に内部標準物質を添加しない、項目1に記載の方法。
項目3. 前記投入サンプルにおける核酸の前記質量は、定量化されない、項目1又は2に記載の方法。
項目4. 前記磁性粒子は、前記核酸に特異的に結合する結合パートナーを含まない、項目1乃至3のいずれかに記載の方法。
項目5. 前記磁性粒子は、核酸、ビオチン、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない、項目4に記載の方法。
項目6. 項目1乃至5のいずれかに記載の方法であって、更に、以下を含む:前記複数のテストサンプルをプールし、プールされたテストサンプルを生成し、前記プールされたテストサンプルにおける核酸の少なくとも一部をシーケンシングすること。
項目7. 項目1乃至6のいずれかに記載の方法であって、前記カオトロープは、以下の1つ又は複数を含む:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸塩又はグアニジン一臭化水素酸塩)、ヨウ化グアニジウム(グアニジンヨウ化水素酸塩)、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(チオシアン酸グアニジニウム)、グアニジン硝酸塩(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。
項目8. 前記結合バッファは、PEGを含まない、項目1乃至7のいずれかに記載の方法。
項目9. 前記磁性粒子は、カルボキシル官能基部分及び/又はアミン官能基部分を含まない、項目1乃至8のいずれかに記載の方法。
項目10. 項目1乃至9のいずれかに記載の方法であって、前記キレート剤は、以下の1つ又は複数である:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
項目11. 項目1乃至10のいずれかに記載の方法であって、前記アルコールは、以下の1つ又は複数である:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
項目12. 前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する、項目1乃至11のいずれかに記載の方法。
項目13. 項目1乃至12のいずれかに記載の方法であって、更に以下を含む:1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を回収すること。
項目14. 項目1乃至13のいずれかに記載の方法であって、以下を含む方法:
1つ又は複数の正規化混合物の前記非結合核酸を、対応する容器に移すこと;
結合混合物を、対応する各容器に添加し、対応する各容器内に回収混合物を生成すること、
前記結合混合物は、以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、可逆的且つ非特異的に核酸に結合することができ、且つ
前記回収混合物の各々は、前記一定量の磁性粒子の結合容量より大きい、又は小さい、又は当該結合容量に等しい、質量の核酸を含む;
結合条件下で、各回収混合物をインキュベートし、それにより、前記核酸の全て又は一部を前記磁性粒子に可逆的且つ非特異的に結合させ、前記回収核酸に可逆的且つ非特異的に結合した磁性粒子を生成すること;
磁場の印加により、可逆的且つ非特異的に前記回収核酸に結合した前記磁性粒子を分離すること;及び
前記磁性粒子から、前記可逆的且つ非特異的に結合した回収核酸を溶出させること。
項目15. 前記磁性粒子から前記核酸を溶出させることは、前記ビーズを溶出バッファ内でインキュベートすることを含む、項目1乃至14のいずれかに記載の方法。
項目16. 前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む、項目1乃至15のいずれかに記載の方法。
項目17. 項目1乃至16のいずれかに記載の方法であって、更に、以下を含む:磁場の印加後且つ溶出前に、前記核酸に可逆的且つ非特異的に結合した前記磁性粒子を、洗浄液により洗浄すること。
項目18. 前記洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノールを含む、項目1乃至17のいずれかに記載の方法。
項目19. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である、項目1乃至18のいずれかに記載の方法。
項目20. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である、項目1乃至19のいずれかに記載の方法。
項目21. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である、項目1乃至20のいずれかに記載の方法。
項目22. ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む、項目請求項1乃至21のいずれかに記載の方法。
項目23. 以下を含むキット:ペンダントヒドロキシル官能基を含む磁性粒子;カオトロープの緩衝水溶液を含む結合バッファ;洗浄液;及び溶出バッファ。
項目24. 項目23に記載のキットであって、更に、キレート剤及びアルコールを含む。
項目25. 前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する、項目23又は24に記載のキット。
項目26. 前記溶出バッファは、10mM Tris-HCl, pH8.0、及び0.1mM EDTAを含む、項目23乃至25のいずれかに記載のキット。
項目27. 前記洗浄液は、約60%乃至約100%のエタノールを含む、項目23乃至26のいずれかに記載のキット。
項目28. ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ当該磁性粒子及び/又は当該磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む、項目23乃至27のいずれかに記載のキット。
項目29. 複数のテストサンプルの各々において核酸の質量を正規化する方法で使用される組成物であって、以下を含む組成物:
1つの投入サンプル又は複数の投入サンプル、各投入サンプルは、水性液体中に核酸を含み、前記複数のサンプルの各々が、別個の容器内に存在する;
各容器内の結合混合物、各容器内に正規化混合物を生成し、
前記結合混合物は以下を含む:
ペンダントヒドロキシル官能基を含む一定量の磁性粒子、
キレート剤、
結合バッファ、及び
アルコール、
ここで、前記結合バッファは、カオトロープの緩衝水溶液を含み、
前記一定量の磁性粒子は、約1ナノグラム乃至約5マイクログラムの範囲の結合容量で、核酸に可逆的且つ非特異的に結合することができ、且つ
前記複数の投入サンプルの各々は、前記一定量の磁性粒子の前記結合容量よりも大きい質量の核酸を含む。
項目30. ペンダントヒドロキシル官能基を含む前記磁性粒子は、前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜に共有結合し且つ前記磁性粒子及び/又は前記磁性粒子の被膜から延びるヒドロキシル官能基をもつスペーサを含み、ここで、前記スペーサは、ヒドロキシル官能基に共有結合した少なくとも3原子の鎖を含む、項目29記載の組成物。
項目31. 前記容器内には、内部標準が存在しない、項目29又は項目30記載の組成物。
項目32. 前記磁性粒子は、前記核酸に特異的に結合する結合パートナーを含まない、項目29乃至31のいずれかに記載の組成物、
項目33. 前記磁性粒子は、核酸、ビオチン、アビジン、抗体、アプタマ、受容体、又は受容体リガンドである結合パートナーを含まない、項目29乃至32のいずれかに記載の組成物。
項目34. 項目29乃至33のいずれかに記載の組成物であって、前記カオトロープは、以下の1つ又は複数を含む:尿素、臭化グアニジニウム(グアニジン臭化水素酸塩又はグアニジン一臭化水素酸塩)、ヨウ化グアニジウム(グアニジンヨウ化水素酸塩)、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、グアニジンチオシアン酸塩(チオシアン酸グアニジニウム)、グアニジン硝酸塩(硝酸グアニジニウム)、グアニジン硫酸塩(硫酸グアニジニウム)、グアニジン炭酸塩(炭酸グアニジニウム)、ヨウ化ナトリウム、及び過塩素酸ナトリウム。
項目35. 前記結合バッファは、PEGを含まない、項目29乃至34のいずれかに記載の組成物。
項目36. 前記磁性粒子は、カルボキシル官能基部分及び/又はアミン官能基部分を含まない、項目29乃至35のいずれかに記載の組成物。
項目37. 項目29乃至36のいずれかに記載の組成物であって、前記キレート剤は、以下の1つ又は複数である:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)。
項目38. 項目29乃至37のいずれかに記載の組成物であって、前記アルコールは、以下の1つ又は複数である:メタノール、エタノール、及びイソプロパノール。
項目39. 前記結合バッファは、グアニジン塩酸塩及び酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムの緩衝水溶液を含み、約pH4乃至約pH6の範囲のpHを有する、項目29乃至38のいずれかに記載の組成物。
項目40. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約0.25:1乃至約1.75:1の範囲内である、項目29乃至39のいずれかに記載の組成物。
項目41. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1:1乃至約1.25:1の範囲内である、項目29乃至40のいずれかに記載の組成物。
項目42. 前記アルコールの、前記結合バッファに対する体積対体積比は、約1.125:1である、項目29乃至41のいずれかに記載の組成物。
【0212】
本明細書で言及した特許又は刊行物は、いずれも、個々の刊行物が各々具体的且つ個別的に参照により組み込まれることが示されているかの如く、参照により本明細書に組み込まれる。
【0213】
本明細書に記載された組成物および方法は、現時点で好適な実施形態を表すものであり、例示的であり、本発明の範囲の限定を意図したものではない。当業者であれば、その変更及び他の使用を想起し得よう。斯かる変更及び他の使用は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、為し得る。
【符号の説明】
【0214】
[
図1]
Input DNA: 投入DNA
Binding: 結合
Separation: 分離
Ethanol Wash: エタノール洗浄
Elution: 溶出
Transfer: 移し換え
Normalized DNA: 正規化DNA
60 Minutes: 60分間
Unbound DNA: 非結合DNA
Purified Unbound DNA: 精製非結合DNA
Optional Unbound DNA Recoverry Protocol (B): 随意的非結合DNA回収プロトコル(B)
[
図2A]
Fluorescence: 蛍光
Aligned Time (sec): 整列時間(秒)
[
図2B]
+10uL EtOH: +10μL エタノール
+20uL EtOH: +20μL エタノール
+30uL EtOH: +30μL エタノール
+40uL EtOH: +40μL エタノール
400ng input: 400ng 投入
Promega Sheared DNA: プロメガ剪断DNA
[
図3]
GeneRuler 50 bp: ジーンルーラ50bp
[
図4]
Promega Sheared DNA: プロメガ剪断DNA
EtOH:BB: エタノール:結合バッファ
(Sheared): (剪断)
[
図5]
GeneRuler 50 bp: ジーンルーラ50bp
BB:Aqu: 結合バッファ:水性成分
[
図6]
Ladder: ラダー
Standard: 標準
[
図7]
Normalization Beads Comparison: 正規化ビーズ比較
Replicate: 複製
Beads: ビーズ
DNA Recovered: 回収DNA
DNA Input into Library Prep: ライブラリ調製に投入したDNA
[
図8]
Library Recoverry Ratio and % Cluster Balancing: ライブラリ回収率及びクラスタ均衡百分率
Cluntering: クラスタリング
Lib Yield Ratio: ライブラリ産生率
[
図10]
Fluorescence: 蛍光
Size: 大きさ
【国際調査報告】