(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】軽量骨材の調製方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20241024BHJP
B09B 3/25 20220101ALI20241024BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20241024BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20241024BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20241024BHJP
C04B 18/30 20060101ALI20241024BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B09B3/40
B09B3/25 ZAB
B09B3/70
C04B14/02 B
C04B14/10 Z
C04B18/30
C04B22/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530416
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2022082630
(87)【国際公開番号】W WO2023089176
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524191675
【氏名又は名称】セジェ
【氏名又は名称原語表記】SEEGEX
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】ガンビエ,ダーヴィド,クロード
【テーマコード(参考)】
4D004
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA50
4D004AB03
4D004AB05
4D004AC05
4D004BA02
4D004CA22
4D004CA36
4D004CA37
4D004CA42
4D004CB09
4D004CB32
4D004CC01
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA06
4G112MB06
(57)【要約】
本発明は、粘土系軽量骨材の調製方法であって、該骨材は土木施工、特に道路用途、及び建設での使用に適している。本発明は、軽量骨材の調製方法であって、少なくとも次の工程:a)粘土系混合物を粒状化して、骨材を得る工程、b)得られた前記骨材を乾燥させて、乾燥骨材を得る工程、c)前記乾燥骨材を熱処理する工程であって、i)還元雰囲気中、900~1200℃の温度T1で実施される、第1の熱処理小工程、ii)酸化雰囲気中、1050~1300℃の温度T2で実施される、第2の熱処理小工程、の2つの連続する小工程を含む工程、及びd)前記骨材を冷却する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量骨材の調製方法であって、少なくとも次の工程:
a)粘土系混合物を粒状化して、骨材を得る工程、
b)得られた前記骨材を乾燥させて、乾燥骨材を得る工程、
c)前記乾燥骨材を熱処理する工程であって、
i)還元雰囲気中、900~1200℃の温度T1で実施される、第1の熱処理小工程、
ii)酸化雰囲気中、1050~1300℃の温度T2で実施される、第2の熱処理小工程、
の2つの連続する小工程を含む、工程、及び
d)前記骨材を冷却する工程、
を含む、軽量骨材の調製方法。
【請求項2】
前記粘土系混合物は、(i)10~25%、好ましくは20%の不活性粘土材料と、(ii)汚泥及び/又は産業副産物から得た少なくとも1種の材料と、を含み、前記材料は、
- 下水処理場汚泥などの、有機汚泥、
- 浚渫土砂、
- 濾過ケーク、又は
- 上記材料の組み合わせ、
から選択され、
前記材料は、事前にいかなる異物も除去されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘土系混合物を粒状化する工程a)は、前記粘土と、汚泥及び/又は産業副産物から得た少なくとも1種の材料とを混合し、前記混合物を粉砕及び成形して均質な混合物を得ることを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘土系混合物は、少なくとも1種の添加剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥工程b)は、250℃未満の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)の間に前記骨材の前記冷却からカロリーを回収する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥工程b)に必要なエネルギーは、少なくとも部分的に、前記冷却工程d)の間に回収されたカロリーから得ることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の熱処理小工程は、1050~1150℃、好ましくは1110~1150℃の温度T1で実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の熱処理小工程は、30~150分間、好ましくは120分間の時間で実施されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の熱処理小工程は、内部の雰囲気が還元性である回転炉内で実施されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の熱処理小工程は、1050~1150℃、好ましくは1110~1150℃、より好ましくは約1125℃の温度T2における酸化的燃焼からなることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の熱処理小工程は、30~150分間、好ましくは60分間の時間で実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度T1は前記温度T2以下であること、好ましくは、T1はT2に等しいことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
建設、公共事業、造園業又は農産業、特に道路用途における、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法によって得られた骨材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、軽量粘土系骨材を調製する方法であって、上記骨材が特に公共事業、具体的には道路用途、及び建設での使用に適している方法である。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物、特に都市又は産業排水処理場で発生する汚泥は、有機物、多少の粘土細粒の画分を含有する鉱物、金属及び有毒汚染物質を含有する。この廃棄物は非常に大量であり、多くの方法がその処理と再生利用(reclamation)に向けられている。
【0003】
したがって、産業界又は他の用途にとって興味深い材料を生成しながら、産業廃棄物を再生利用する方法を開発することが常に必要とされている。
【0004】
廃棄物、特に汚泥及び産業副産物の再生利用は、該廃棄物が不活性とみなされること、つまり、分解、燃焼、物理若しくは化学反応の発生、接触した他の材料の劣化を、環境又は人体に有害な形で起こさないことを意味する。
【0005】
欧州規格NF X30-402-2は、定められた実験条件下での断片化した廃棄物及び汚泥の浸出(leaching)に関する情報を提供する適合試験を規定している。この欧州規格は、廃棄物の特性評価、特に断片化された廃棄物及び汚泥の浸出についての準拠に関する。したがって、多くの元素又は化合物の浸出可能な画分は、現行の規制によって設定された一定の濃度閾値、特にリスク・環境・移動・国土整備に関する研究・技術センター(CEREMA:Center for Studies on Risks,the Environment,Mobility and Urban Planning)が定めるガイド値を超えてはならない。1つの指標として、不活性廃棄物貯蔵施設(ISDI)に関する規制(2014年12月命令(Order of December 2014の附属書II)に定められている許容限度を、乾燥物質のmg/kg単位で、下の表1に示す。
【0006】
【0007】
欧州特許出願公開第1,571,135号明細書は、有機汚泥由来の材料の画分を含む膨張粘土骨材の製造方法を記載している。この方法は、500~750℃の温度で実施され、有機物の除去及び骨材の体積膨張を可能にする第1の熱処理工程と、900~1200℃の温度で実施される第2の熱処理工程とを含み、上記第2の工程は、一方で骨材の体積の最終的膨張を可能にし、他方では、粘土及び汚泥のそれぞれの鉱物画分間の共晶効果による骨材の決定的凝集の獲得を可能にする。しかし、この方法は、現行規制に準拠する骨材を生成しないという点、特に、この方法に従って調製された骨材から得られるいくつかの元素又は化合物の浸出可能な画分は、規格NF X30-402-2で設定された濃度閾値を超えることから、完全に満足できるわけではない。
【0008】
したがって、粘土系混合物から軽量骨材を調製する方法が必要である。「粘土」とは、粘土鉱物を意味する。「粘土系混合物」とは、主に水処理、水路及び港湾浚渫業、並びに都市工学及び公共事業からの廃棄物からなる粘土生成物を意味する。先行技術の欠点の克服を可能にし、特に規制の観点から許容可能な骨材を得る方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、少なくとも以下の工程を含む、軽量骨材を調製する方法である:
a)粘土系混合物を粒状化して、骨材を得る工程、
b)得られた骨材を乾燥させて、乾燥骨材を得る工程、
c)乾燥骨材を熱処理する工程であって、
i)還元雰囲気中、約900~1200℃の温度T1で実施される、第1の熱処理小工程、
ii)酸化雰囲気中、約1050~1300℃の温度T2で実施される、第2の熱処理小工程、
の2つの連続する小工程を含む、工程、及び
d)骨材を冷却する工程。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特定の実施形態によると、熱処理工程の各々は回転炉(rotary furnace)で実施され、好ましくは生成物の炉内滞留時間は、炉の回転速度を制御し、その結果、骨材の駆動速度を制御することによって、調節可能である。
【0011】
本発明の方法によると、上記の2つの熱処理小工程(heat treatment sub-steps)をこの順序で実施することで、驚くべきことに、多数の化学元素又は化合物の浸出可能な画分のかなりの大部分を除去することが可能になり、その結果、骨材中のこれらの化学元素及び化合物のかなりの大部分の濃度が規制によって設定された濃度閾値を下回る骨材を得ることが可能になる。実際、還元雰囲気で実施される第1の熱処理小工程は、マトリックスに含まれる重金属を所定の温度条件下で抽出することを可能にする。これは、重金属が最初に還元され、その後気相に抽出されるからである。同様に、硫酸塩の分解は、還元雰囲気下で、上記温度範囲でのみ可能である。第2の小工程は、いくつかの金属汚染物質を、鉱物マトリックス内で、スピネル型化合物などの不溶性化合物としてブロックすることを可能にする。
【0012】
本発明による方法は、金属汚染物質及び有機汚染物質を含む材料から軽量骨材を製造するという利点を有する。「有機汚染物質」及び「金属汚染物質」は、それぞれ、規格NF X30-402-2で設定された濃度閾値を超える量で存在した場合に、環境又は人体に有害である有機物又は金属元素を意味する。
【0013】
したがって、本発明による方法は、汚染物質が除去された骨材を製造する。実際、本発明による方法の実施は、有機物の破壊、細菌やウイルスなどの病原因子の熱破壊、水銀、カドミウム、鉛及び亜鉛などの重金属の抽出、並びに硫酸塩及び炭酸塩の部分的分解又は全分解をもたらす。この方法を実施すると、上記の汚染物質の骨材への閉じ込めを生じない。
【0014】
特に、本発明の方法により調製された骨材は、非熱処理骨材と比較して、以下の元素の少なくとも1種、好ましくは数種について、汚染物質が除去されている、つまり、現行規格に従って原材料の代替物として再生利用可能であるという大きな利点を有する:
- 金属のヒ素(As)、バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、全クロム(全Cr)、銅(Cu)、水銀(Hg)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、及び/又は
- 塩化物、フッ化物、硫酸塩、及び/又は
- フェノール指数(phenol index)。
【0015】
抽出効率は、汚染物質に応じて99%の有効性に達し得る。
【0016】
本発明による方法は、浸出液中の汚染物質の濃度を、その初期濃度と比較して少なくとも95%低減することを可能にする。具体的には、濃度は以下のように低減する:
・銅及び銅化合物は99.6%
・ニッケルは97.6%
・亜鉛は99.6%
・有機化合物は99.9%
・硫酸塩は95.9%。
【0017】
特に、本発明の方法により調製された骨材は、硫酸塩が除去されている。上記の元素について、骨材の汚染物質除去レベルを、規格NF X30-402-2に従って、L/S=10L/Kgで実施した浸出試験により、実証できる。本発明の方法により調製された骨材はまた、非熱処理骨材と比較して、以下の元素の少なくとも1種、好ましくは数種について、汚染物質が除去されている、つまり、実際に再利用可能であるという大きな利点も有する:
- 全有機炭素(TOC)、
- ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン(BTEX)、
- ポリ塩化ビフェニル同族体7種(PCB)、
- 炭化水素(HCT)、及び
- 多環芳香族炭化水素(PAH)。
【0018】
上記の種々の汚染物質の合計は、処理前の粘土系混合物の30質量%に達し得る。
【0019】
上記の元素について、骨材の汚染物質除去のレベル、つまり本発明の方法によって得られる処理の有効性は、規格NF-X-30-402-2に記載のように、未処理廃棄物(raw waste)の浸出試験によって実証できる。
【0020】
本発明の方法によって得られる骨材の化学的及び物理的特性から、この方法は、特に公共事業及び建設の分野において、種々の用途を意図した材料の調製に適している。
【0021】
本発明による方法は、質量で5%~30%、10%~30%、又は20%~30%の汚染元素を含む粘土系混合物から軽量骨材を製造することを可能にするという利点を有する。本発明による方法は更に、産業汚泥及び産業副産物を大きな割合で含む粘土系混合物から軽量骨材を調製することを可能にすることから、大量の産業廃棄物の再生利用を可能にするという利点を有する。
【0022】
本発明による方法は、省エネルギーの可能性があるという利点を有する。実際、本発明の方法の特定の実施によると、骨材を乾燥させるために必要なエネルギーは、本方法の間に、例えば、骨材を熱処理後に冷却するときに回収することができる。さらに、本発明の方法の特定の実施形態によると、還元雰囲気中で行われる第1の熱処理小工程は自己熱(autothermal)である。実際、この実施形態では、必要なエネルギーは、粘土系混合物中に存在する有機化合物の分解及び部分燃焼によって供給される。このように生成された合成ガスは、回収ボイラーへと送り込まれ、ガスの完全燃焼とエネルギー回収を確実とする。エネルギーは、プロセスの必要性に応じて熱風又は蒸気の形態で回収される。
【0023】
更に、前記第1の熱処理工程と前記第2の熱処理工程との間の温度差は小さい場合があり、これは本方法の化石エネルギー消費を他の処理方法と比べて制限する一因となる。
【0024】
本発明の方法では、還元条件下での熱処理工程は、最先端の方法と比較して、処理される煙霧の体積を大幅に削減することも可能にし、他の用途のため煙霧の再生利用を可能にする。
【0025】
更に、先行技術の方法と比較して、酸化条件下での熱処理工程はガスをほとんど必要とせず、天然ガスの必要量は、不活性粘土(noble clay)から骨材を製造するための従来方法と比較して約10分の1であり、それが本方法の二酸化炭素排出量の削減に寄与している。
【0026】
最後に、本発明による方法は、異なる反応器を分離できることから、段階的に実施され、その結果、反応器内の骨材の温度、雰囲気又は滞留時間のいずれについても、各工程を完全に独立した形で最適化することができる。
【0027】
「軽量骨材」とは、密度が1未満、好ましくは0.6~0.95、より好ましくは約0.8である骨材を意味する。本発明の方法によって調製された骨材は、多孔質で、硬く、耐性がある。
【0028】
本発明の方法によって製造された骨材は、建設産業、公共事業、造園及び農業で再生利用可能である。
【0029】
本発明による方法の他の利点及び特徴は、本発明及び種々の実施形態の詳細な説明を検討することによって明らかになるが、これらは実例として示されるものであり、本発明の範囲を制限するものではない。値の範囲が示されている場合、下限及び上限の値を含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による方法は、粘土系混合物を粒状化する第1の工程a)を含む。上記粘土系混合物は、異なる材料の混合物からなり、各材料は、ある程度の割合の粘土及び有機物を含有し、上記材料は当業者に公知の技法で均質に混合されている。
【0031】
本発明の方法に使用可能な材料は、
- 特に粘土採取場に由来する、いわゆる「不活性」粘土、及び/又は汚泥及び産業副産物に由来する粘土材料中に存在する粘土、を含んでもよく、上記粘土材料は、好ましくは、浚渫からの粘土土砂、汚染土壌の洗浄からの微粉、濾過ケーク(filter cake)であって、遠心分離又は濾過プレス通過後の液体廃棄物処理由来のケーク、排水処理場由来の汚泥(WWTP汚泥)、都市排水処理場(UWWTP)からの汚泥から選択される。
【0032】
本発明による方法で使用可能な粘土系混合物は、特に、乾燥物質の重量に対する重量で表して10~90%の粘土を含む。本発明による方法で使用可能な粘土系混合物において、粘土は、一方では、いわゆる「不活性」粘土の存在によって、及び/又は他方では、粘土を含む少なくとも1種の汚染物質の存在によって存在する。より具体的には、本発明による方法で使用可能な粘土系混合物は、乾燥物質の重量に対する重量で表して10~90%の粘土を含む。
【0033】
本発明による方法の工程a)において、粘土系混合物に組み込まれる可能性の高い粘土材料の調製には、特に、30%~50%、好ましくは40%の含水率を得るのに十分な量の液体を組み込むことによって塑性状態の粘土マトリックスを調製することを含み得る。この液体は、好ましくは水であるが、工業用水、廃水又は浸出液からも選択することができる。本発明の特定の実施形態によると、液体又は固体形態の1種以上の添加剤も粘土材料に添加されてもよい。
【0034】
本発明による方法において、添加される可能性の高い添加剤は、いくつかの化学反応を促進すること、又は軽量骨材の機械的特性を改善することを目的としている。該添加剤は、例えば、
- 炭酸バリウム(硫酸塩を中和する)、
- 固定炭素(一部の重金属の抽出を可能にし、雰囲気の還元性を強化する)
である。
【0035】
本発明による方法の工程a)において使用される粘土系混合物に組み込まれる有機物は、特に、汚泥及び産業副産物から選択される材料に由来する。好ましくは、この材料は、排水処理場からの汚泥(WWTP汚泥)、又は都市排水処理場(UWWTP)からの汚泥である。
【0036】
本発明による方法のより具体的な実施によると、上記粘土系混合物は、(i)10~25%、好ましくは20%の不活性粘土材料と、(ii)汚泥及び/又は産業副産物から得た少なくとも1種の材料と、を含み、前記材料は、
- 下水処理場汚泥などの、有機汚泥、
- 浚渫土砂(dredging sediments)、
- 濾過ケーク、及び
- 上記材料の組み合わせ、
から選択され、
前記材料は、石、貝殻、木片などの異物が事前に除去されている。
【0037】
更により具体的には、本発明による方法の実施において、粘土系混合物は、20%の不活性粘土と、40%の粘土質の浚渫土砂と、40%のWWTP汚泥とを混合することによって得られる。上記WWTP汚泥は、最大で40%の有機物、つまり1%~40%の有機物、好ましくは20%~30%の有機物を含む。この特定の事例において、このような粘土系混合物の有機物含有量は8~12%のオーダーである。
【0038】
本発明による方法で使用可能な粘土系混合物は、好ましくは全乾燥重量に対する百分率で表して、5重量%~40重量%の有機乾燥物質、より具体的には10重量%~30重量%の有機乾燥物質を含む。「有機乾燥物質」とは、高温に加熱されるとオフガス(その放出が、得られる材料の特定の多孔性に寄与する)を生じる、炭素化合物又は窒素化合物を意味する。
【0039】
上記有機材料はまた、好ましくはいかなる異物、特に石、木片及びプラスチック片も含まない。該材料を、次いで、好ましくは粉砕及び混合して、均質な混合物を得る。液体又は固体形態の1種以上の添加剤も、上記有機物質に添加することができる。
【0040】
本発明による方法では、上記有機材料は、任意選択で、由来の異なる汚泥及び産業副産物からなってもよく、それらは次に一緒に混合される又は組み合わされる。
【0041】
本発明による方法の工程a)で使用可能な粘土系混合物の調製は、材料を均質に混合することを含む。粘土系混合物の含水率は、適量の液体を添加することで、好ましくは30%~50%、好ましくは約40%の水分量を得るように適応できる。特に、混合物の含水率は、好適な量の水、工業用水、又は浸出液を添加することによって調節できる。液体又は固体形態の1種以上の添加剤も、上記粘土系混合物に添加することができる。
【0042】
本発明の方法の特定の実施形態によると、本方法は、添加剤の添加を含まない。
【0043】
本発明の方法の特定の態様によると、粘土系混合物を粒状化する工程a)は、粘土系混合物を粉砕及び成形して均質な混合物を得ることを含む。上記の原材料の混合、粉砕及び成形は、好ましくは1つの同じ装置内で実施される。本発明の方法の好ましい実施形態によると、上記粘土系混合物は、乾燥物質の全重量に対する重量で表して10~25%、好ましくは約20%の不活性粘土を含む。
【0044】
したがって、本発明の方法の好ましい実施形態によると、粘土系混合物を粒状化する工程a)は、粘土と上記少なくとも1つの材料とを混合し、当該混合物を粉砕及び成形して、均質な混合物を得ることを含む。
【0045】
粒状化は、当業者に公知の任意の手段によって、特に押出によって又はペレット化ディスク上を通すことによって、実施されてもよい。
【0046】
次いで、本発明に従う方法の工程b)において、骨材は、好ましくは20%未満の含水率まで乾燥される。乾燥工程b)は、当業者に公知の任意の手段によって、有機元素の放出及び骨材の破裂を避けるために、好ましくは低温で、つまり250℃未満の温度で、実施できる。乾燥工程は、骨材の水分量を低下し、硬度を増大する。乾燥工程は、適合した乾燥機で実施できる。乾燥に必要なエネルギーは、骨材の熱処理後、例えば直接熱交換器によって、冷却工程d)で回収されたカロリー(carlories)から得てもよい。
【0047】
したがって、本発明の方法の特定の好ましい実施形態によると、上記方法は、工程d)において骨材の冷却からカロリーを回復する工程を更に含む。
【0048】
乾燥工程b)の後、骨材は、工程c)において、2つの連続する小工程で、適切な温度及び定められた条件下で、本発明の方法に従って熱処理を施される。
【0049】
この熱処理は、重金属の抽出、合成ガスの生成、硫酸塩及び炭酸塩の分解、病原体の破壊、多孔質の生成、部分ガラス化を可能にする。
【0050】
第1の熱処理小工程、又は熱分解は、還元雰囲気中、骨材を約900~1200℃の温度T1で処理することを含む。
【0051】
「還元雰囲気」とは、酸素を含まず、一酸化炭素、揮発性炭化水素、水素、又はこれらの気体の組み合わせから選択された気体を含む雰囲気を意味する。還元雰囲気は、例えば、混合物中に存在する有機化合物と空気との準化学量論的燃焼によって得られる。
【0052】
第1の熱処理小工程は、当業者に公知の任意の好適な手段によって実施されてもよい。当該工程は、特に、例えば、内部の雰囲気が還元性である回転炉などの炉内で実施される。この工程は、好ましくは準化学量論的条件下で実施される。この工程は、一酸化炭素(CO)及び揮発性炭化水素(CxHy)に富み、かつ酸素を含まない合成ガスの製造をもたらす。
【0053】
第1の熱処理小工程の間に、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、及び鉛(Pb)などの重金属が部分的又は全体的に還元され、揮発する。
【0054】
これらの金属は、反応中に生成される合成ガス中で気体状態である。主な硫酸塩は分解され、硫黄化合物と、塩素化合物とは気相中に抽出される。
【0055】
この第1の熱処理小工程で使用される条件は、生成される合成ガスの量を最適化する。この第1の小工程で生成する合成ガスは、特に、ボイラー、エンジン又は別の装置へと向けることができる。酸化雰囲気中での熱処理工程からの合成ガスを使用して、還元雰囲気中での熱処理工程の反応を開始することが可能である。
【0056】
第1の熱処理小工程の温度T1は、約900~1200℃、好ましくは約950~1200℃、より好ましくは約1050~1150℃、更により好ましくは約1110~1150℃である。
【0057】
この温度範囲は、特に硫黄化合物を硫酸塩へと酸化させることなく硫黄化合物を抽出することを可能にする。
【0058】
第1の熱処理小工程の正確な温度は、粘土系混合物と、熱処理が行われる封入容器内に注入される可能性のある合成ガスの組成とに依存する。
【0059】
第1の熱処理小工程の時間は、一般に約30~150分、好ましくは約60~120分、より好ましくは約120分である。
【0060】
第2の熱処理小工程は、酸化雰囲気中、約1050~1300℃の温度T2における燃焼からなる。
【0061】
「酸化雰囲気」とは、少なくとも1種の酸化剤、好ましくは酸素(O2)を含む雰囲気を意味する。酸化雰囲気は、例えば、メタンと空気との過剰化学量論的燃焼によって、酸素の割合が3%を超える雰囲気を生じることによって得られる。
【0062】
第2の熱処理小工程は、当業者に公知の任意の好適な手段によって実施することができる。第2の熱処理小工程は、特に、回転炉内で実施される。
【0063】
第2の熱処理小工程の温度T2は、約1050~1300℃、好ましくは約1050~1150℃、より好ましくは約1110~1150℃、更により好ましくは約1125℃である。
【0064】
この第2の熱処理小工程は、炭酸塩の分解と、有機化合物の完全燃焼とを完了し、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)などの金属は、更に互いに反応して不溶性スピネル化合物を形成し得る。有機化合物、硫酸塩及び炭酸塩の分解は、軽量骨材、つまり好ましくは約1未満の密度を有する骨材を生じる多孔質構造をもたらす。この反応の高い温度は、材料のセラミック化と部分的ガラス化とをもたらし、これは骨材に硬度と機械的強度とを付与する。
【0065】
第2の熱処理小工程の正確な温度は、骨材の融点に依存し、これは粘土系混合物の化学組成に依存する。
【0066】
第2の熱処理小工程の時間は、一般に約30~150分、好ましくは約60~120分、より好ましくは約60分である。
【0067】
本発明の方法の特定の実施形態によると、温度T1は温度T2以下である。
【0068】
本発明の方法のより具体的な実施形態によると、T1はT2に等しい。
【0069】
工程c)の熱処理後、密度が一般に約0.6~1であり、粒径が1~15mmである骨材が得られる。
【0070】
本発明の方法の特定の実施形態によると、第2の熱処理小工程で発生した燃焼ガスは、第1の熱処理小工程が行われる封入容器内に注入される。
【0071】
工程d)において、こうして得られた骨材を、任意の公知で適した手段によって、特に冷却器への導入によって、冷却できる。上記冷却器は、周囲空気下で作動する。この工程は、骨材を、約100℃未満の温度に冷却できる。骨材から周囲空気へのカロリーの移動は、この空気を約15℃の温度から約250℃の温度へと温めることから、この冷却工程はカロリーの回収も可能にする。このようにして生成された熱風は、特に熱処理工程c)の前に骨材を乾燥させる工程で使用するために回収することができる。
【0072】
したがって、本発明の方法の実施は、1未満の密度を特徴とする軽量骨材をもたらす。上記骨材は、その球形の外観とその硬度によっても特徴づけられる。上記骨材は、規格NF X30-402-2に従う浸出試験を実施したときに、本発明の方法の2つの小工程における熱処理の前に採取された骨材と比較して、有機汚染物質及び/又は金属汚染物質の放出がない若しくは低レベルであること、あるいは有機汚染物質及び/又は金属汚染物質の放出が、例えば道路技術又は建設材料における再生利用に関して定義されたパラメータに対応するレベルであることも特徴とする。
【0073】
本発明の方法によって得られる軽量骨材は、排液材料、除雪基板、砂、絶縁材料、絶縁軽量ブロック、屋上緑化などの材料の製造にとって特に興味深い。本発明の方法によって得られる軽量骨材は、軽量コンクリート等の建設材料の製造においても特に興味深い。
【0074】
したがって、本発明の1つの目的は、本発明に従った方法によって得られる骨材を含む材料でもある。
【0075】
本発明の第2の目的は、建設、公共事業、造園業又は農産業における、本発明の方法によって得られる骨材の使用である。
【0076】
より具体的には、本発明の1つの目的は、好ましくは第1種道路用途、第2種道路用途及び第3種道路用途から選択される、道路用途のための、本発明の方法によって得られる骨材の使用である。
【0077】
第1種道路用途は、道路の下層路盤又は舗装道路構造の路肩として、特に構造の下の築堤、下層路盤、上層路盤及び基層(道路)としての、3メートル以下の高さの使用である。第2種道路用途は、対象の道路構造内での使用である限り、道路インフラに関連する技術的築堤における、又は路肩上の、6メートル以下の使用である。第2種道路用途はまた、道路の下層路盤又は舗装道路構造の路肩における、3メートル超の厚さ及び6メートル以下の高さの使用も含む。第3種道路用途は、実装厚さに関する制約を受けない。第3種道路用途は、特に、例えば、車道の下層路盤又は路肩としての使用、建設現場の走路(track)、林道又は引き船道の建設のための使用である。
【実施例】
【0078】
実施例1:混合前の生成物の調製及び特性評価
3種類の汚泥を更に含む粘土系混合物を、それぞれ以下の割合で調製した。WWTP汚泥:40%;浚渫土砂、20%;濾過ケーク、20%;不活性粘土、20%。
【0079】
前記混合物への組み込みが意図されるそれぞれの産物について、浸出の分析を実施した。下の表2は、この分析の結果と、前記混合物に対する外挿した値とを統合したものである。
【0080】
【0081】
未処理廃棄物浸出液の分析の結果は、規格で定められたガイド値の一部を超えることがわかる。
【0082】
実施例2:焼成試験
種々の成分をそれぞれ最初に秤量し、次いで各種成分をミキサー内で混合した。調製された粘土系混合物(重さ約30kg)を、乾燥物質のH2Oの%として表して約20%の含水率まで空気乾燥した。水分測定は、Mettler-Toledo赤外乾燥器で実施した。次いで、500グラムの上記基本混合物を、ブレンダー型ミキサーで粉砕して微粉末にした。石、貝殻、木片などの不要な要素はふるい分けた。得られた生成物を、ミキサーで再度混合し、選択した任意の種類の添加剤を添加した。混合を続けながら、生成物を水和して、骨材を生成するための塊を得た。次いで、得られた骨材を、120℃の電気オーブン内で24時間乾燥した。乾燥後、500gの試料に、2工程の熱処理を施した。
【0083】
予備試験では、試料に次の2つの処理工程を連続的に施した:700℃で20~30分間の第1の焼成、次いで1075℃で60分間の熱処理。熱処理の実施後、ビーズを空気中で冷却した。浸出試験をNF X30-402-2(NF EN12457-2)規格に従って実施した。次いで、上記規格に記載の推奨事項に従って化学分析を実施した。処理前後に得られた結果を比較した。平均結果を下の表3に示す。
【0084】
【0085】
処理後に実施した前記分析で得られた平均値は、ISDIで許容される閾値を超えており、したがって再生利用可能ではない。特に、高濃度のMo、有機炭素及び硫酸塩が浸出液中に認められた。
【0086】
実施例3:本発明に従って処理した試料、第1シリーズの試験
実施例1に記載の粘土系混合物を調製した。次いで、実施例2に記載のように骨材を調製した。次いで、得られた骨材を、120℃の電気オーブン内で24時間乾燥した。乾燥後、500gの試料に、2工程の熱処理を施した。密閉石英管内の管炉で、制御雰囲気試験を実施した。必要であれば、Air Liquide製の純粋なガス(空気、CO、CO2、N2)の混合物を用いて、炉内の雰囲気を再構成した。各種ガスの注入は、事前に較正された容積式微小流量計によって調整及び制御される。熱処理の実施後、ビーズを空気中で冷却した。
【0087】
浸出試験はNF X30-402-2(NF EN12457-2)規格に従って実施した。次いで、規格NF X30-402-2で参照されている条件に従って化学分析を実施した。得られた結果を、CEREMAガイドの道路工学における代替材料の再生利用に関する許容閾値と比較した。該ガイドは、浸出液で得られた限度値に応じて、3種類の用途を定めている。
【0088】
第1種、第2種又は第3種の道路用途に使用できる道路材料は、その組成に加わる代替材料は、それぞれ第1種、第2種又は第3種用途の限度値に適合する材料である。下の表4は、規格NF X30-0402-2に従う浸出試験で測定された、第1種、第2種、又は第3種の道路用途の許容値を示す。これらの値は、乾燥物質のmg/kg単位で表されている。添加剤又は熱処理なしの未処理試料の浸出試験で得られた値の結果を、下の表4の「試験0」の欄に記載している。
【0089】
【0090】
上記の結果は、得られた混合物が多数のガイド値超過(太字で示した数字)を有し、そのままでは再生利用できないことを示す。
【0091】
実施例4:本発明に従って処理した試料、第1シリーズの試験
この実施例では、基本混合物が、実施例1に記載の手順に従って、実施例2による骨材の形態で調製され、実施例3に記載のように加熱されており、試験4及び6では添加剤が添加されている。この混合物は、還元雰囲気で実施される第1の小工程の後に、酸化雰囲気で実施される第2の小工程を含む熱処理を施された(試験4~6)。
【0092】
試験4は、混合(酸化/還元)雰囲気で、未処理混合物に対して実施した。試験5は、混合(酸化/還元)雰囲気で、5%のBaCO3が添加された未処理混合物に対して実施した。試験6は、混合(酸化/還元)雰囲気で、5%の還元剤(炭素)が添加された未処理混合物に対して実施した。下の表5は、製造された混合物(添加剤の存在下又は不存在下)と熱処理中に使用されたシーケンスとを示す。
【0093】
【0094】
結果を、下の表6に示す。
【0095】
【0096】
結果を未処理試料と比較すると、処理方法にかかわらず、モリブデンを除く金属は、処理後に浸出しないことがわかる。
【0097】
全有機炭素は、9600mg/kgの濃度から、処理後に20mg/kg未満に低下した。浸出液中の硫酸塩の濃度は、6で除算して、平均4600mg/kgに達した。しかし、この値は、本研究の目的に対してまだ高すぎる。最も低い硫酸塩濃度は、試験No.5で得られた(2400mg/kg)。この結果は、未処理試料(添加剤なし)で、還元雰囲気中、1075℃で60分間の後、酸化雰囲気中で同じ温度で30分間の焼成という熱処理シーケンスにより、得られた。試験4及び試験5と比較して、基本混合物への添加剤の添加は処理の質にプラスの影響を与えなかったこともわかる。
【0098】
実施例4:本発明に従って処理した試料、第2シリーズの試験
この実施例では、実施例1に記載のように、基本混合物を最初に還元雰囲気中で処理した後、酸化雰囲気中で熱処理した。温度と滞留時間は、試験に応じて異なり、下の表7に記載されている。
【0099】
【0100】
下の表8は、処理後の生成物の浸出について得られた分析を統合したものである。
【0101】
【0102】
得られた結果から、モリブデンを除く金属が、処理後に浸出しないことが確認された。全有機炭素(TOC)は、9600mg/kgの濃度から、処理後に10mg/kg未満に低下した。浸出液中の硫酸塩の濃度は、12で除算して、処理後に平均2300mg/kgに達した。試験11及び12では、硫酸塩濃度が閾値である1300mg/kg未満まで低下した。この値は、第3種道路材料への再生利用に関する現行規制であり、最も厳しい限度である。これらの結果は、還元雰囲気中で120分間と、酸化雰囲気中で60分間の滞留時間で得られた。最適な温度範囲は1110~1125℃と考えられる。
【0103】
還元雰囲気中での第1段階の熱処理と、その直後に酸化雰囲気中での熱処理とを交代で行う2段階熱処理を含むプロトコルの実施により、処理なしの場合と比較して、又は特に欧州特許出願公開第1,571,135号明細書に記載のような最先端の処理と比較して、効率が大幅に改善された。
【0104】
特に、1110~1125℃の温度範囲では、硫酸塩変換効率により、浸出液中の硫酸塩レベルを道路工学における骨材の再生利用に関する現行の閾値未満とすることが可能となった。
【0105】
この研究は、種々の試薬の添加が処理品質に無効であることを示す。特に炭酸バリウムの添加は、試験において硫酸塩の処理に影響しなかった。
【国際調査報告】