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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電圧変換器を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530426
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022082184
(87)【国際公開番号】W WO2023088992
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2112341
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524192063
【氏名又は名称】ワイズ-インテグレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ベルゴニュ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・バイイ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB26
5H730CC01
5H730EE04
5H730EE07
5H730FG26
(57)【要約】
本発明は、出力電圧(Vout)を供給するため、1次回路(100)および2次回路(200)のインバータアーム(110、210)のスイッチ(Q1~Q4)の切換からなる、電圧変換器(1000)を制御するための方法であって、1次回路(100)の入力端子(B1、B2)間で吸収される電力が2つの所定のしきい値の間に含まれるとき、1次回路(100)のスイッチ(Q1、Q2)は、所与の周期にわたって2次回路(200)のスイッチ(Q3、Q4)の切換の2倍の回数の切換をするように制御されることを特徴とする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧(Vin)を供給する発生源(10)に接続されることが意図される2つの主端子(B1、B2)、
2つのスイッチ(Q1、Q2)を含む少なくとも1つの第1のインバータアーム(110)であって、前記入力端子に接続される第1のインバータアーム(110)、
少なくとも2つの容量素子(C1、C2)を含む第1の容量性アーム(120)であって、前記第1のインバータアーム(110)と並列に取り付けられる第1の容量性アーム(120)、および
前記第1のインバータアーム(110)の前記スイッチ(Q1、Q2)間に位置する第1の相互接続点(P1)と前記第1の容量性アーム(120)の容量素子(C1、C2)間に位置する第2の相互接続点(P2)との間に接続される、変圧器(20)の第1の巻線(E1)
を含む1次回路(100)と、
2つのスイッチ(Q3、Q4)を含む少なくとも1つの第2のインバータアーム(210)、
少なくとも2つの容量素子(C3、C4)を含む第2の容量性アーム(220)であって、前記第2のインバータアーム(210)と並列に取り付けられる第2の容量性アーム(220)、および
前記第2のインバータアーム(210)の前記スイッチ(Q3、Q4)間に位置する第3の相互接続点(P3)と前記第2の容量性アーム(220)の容量素子(C3、C4)間に位置する第4の相互接続点(P4)との間に接続される、前記変圧器(20)の第2の巻線(E2)
を含む2次回路(200)と、
を含む電圧変換器(1000)を制御するための方法であって、
前記方法は、出力電圧(Vout)を供給するため、前記1次回路(100)および2次回路(200)の前記インバータアーム(110、210)の前記スイッチ(Q1~Q4)の切換を実施し、
前記1次回路(100)の前記直流電圧源(10)によって前記主端子(B1、B2)間で吸収される電力が2つの所定のしきい値の間に含まれるとき、前記1次回路(100)の前記スイッチ(Q1、Q2)は、所与の周期(P)にわたって前記2次回路(200)の前記スイッチ(Q3、Q4)の切換の2倍の回数の切換をするように制御されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
交流電圧源(30)に接続されることが意図される2つの主端子(B3、B4)、
直流電圧を出す整流器段(50)であって、前記整流器段の入力端子のうちの1つが前記主入力端子(B3、B4)のうちの1つに接続される、整流器段(50)、
2つのスイッチ(Q11、Q12)を含む少なくとも1つの第1のインバータアーム(310)であって、前記整流器段(50)の出力端子間に接続される第1のインバータアーム(310)、
少なくとも2つの容量素子(C11、C12)を含む第1の容量性アーム(320)であって、前記整流器段(50)の前記出力端子間にやはり接続される第1の容量性アーム(320)、および
前記第1のインバータアーム(310)の前記スイッチ間に位置する第1の相互接続点(P11)と前記他の主端子(B3、B4)に接続される第2の相互接続点(P12)との間に接続される変圧器(40)の第1の巻線(E1)であって、前記第2の相互接続点(P12)が前記第1の容量性アーム(320)の容量素子(C11、C12)間に位置する、第1の巻線(E1)
を含む1次回路(300)と、
2つのスイッチ(Q13、Q14)を含む少なくとも1つの第2のインバータアーム(410)、
少なくとも2つの容量素子(C13、C14)を含む第2の容量性アーム(420)であって、前記第2のインバータアーム(410)と並列に取り付けられる第2の容量性アーム(420)、および
前記第2のインバータアーム(410)の前記スイッチ(Q13、Q14)間に位置する第3の相互接続点(P13)と前記第2の容量性アーム(420)の前記容量素子(C13、C14)間に位置する第2の相互接続点(P14)との間に接続される、前記変圧器(40)の第2の巻線(E2)
を含む2次回路(400)と、
を含む電圧変換器(2000)を制御するための方法であって、
前記方法は、出力電圧(Vout)を供給するため、前記1次回路(300)および2次回路(400)の前記インバータアーム(310、410)の前記スイッチ(Q11~Q14)の切換を実施し、
前記1次回路(300)の前記主端子(B3、B4)間で吸収される電力が2つの所定のしきい値の間に含まれるとき、前記1次回路(300)の前記スイッチ(Q11、Q12)は、所与の周期(P)にわたって前記2次回路(400)の前記スイッチ(Q13、Q14)の切換の2倍の回数の切換をするように制御されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記変圧器(20、40)の前記第1の巻線(E1、E11)が誘導素子(L1、L11)によって前記第1の相互接続点(P1、P11)に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記整流器段(50)が前記出力においてコンデンサ(C15)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記周期(P)の継続時間が経時的に可変であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記1次回路(100)が2つのインバータアーム(110)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スイッチ(Q1~Q4、Q11~Q14)が単方向スイッチであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記1次回路(100)の前記スイッチ(Q1~Q2)が双方向スイッチであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記所与の周期(P)にわたって、前記2次回路(200、400)の前記スイッチ(Q1~Q2、Q11~Q12)の切換が、前記第2の巻線(E2、E12)の前記インダクタンス中の前記電流(Is)が、前記所与の電流(Is)の変化方向について、ゼロ値を通過する度に実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記所与の周期(P)にわたって、前記1次回路(100、300)の前記スイッチ(Q11、Q12、Q1、Q2)の切換後に、前記1次回路(100、300)の前記スイッチ(Q11、Q12、Q1、Q2)のさらなる切換が行われ、前記変圧器の前記第2の巻線(E2、E12)の前記電流(Is)が方向を変えた後に、前記電流(Is)の新しいゼロ通過が起こるように、前記新しいゼロ通過と同期して、前記2次回路(200、400)の前記スイッチ(Q13、Q14、Q3、Q4)の切換が行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を供給することを可能にする電力変換器の分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、特に、所定のしきい値未満の電力について、スイッチの切換期間のエネルギー損失を制限することを可能にする電圧変換器に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、DC電圧変換器は、所与の電圧レベルを有する直流電気エネルギーを、より高いまたは低い他の電圧レベルを有する直流エネルギーへと変換することを可能にする。
【0004】
多くの応用例がある。たとえば、オンボードのアビオニクスもしくは鉄道網内でのDC変換を挙げることができ、または、電子デバイスもしくは電気自動車の電池充電器も挙げることができる。
【0005】
本発明は、より具体的には、「デュアルアクティブブリッジ」(DAB)変換器に関する。これらの変換器は、変圧器などの中心誘導素子に基づいた特定の電子構造を有する。変圧器の第1の巻線は、交流または直流電圧源に直接または間接的に接続するように意図される2つの端子を含む1次回路に接続される。1次回路は、2つのスイッチを含むインバータアームをさらに含み、したがっていわゆる「ハーフブリッジ」構造を形成する、または、2つのインバータアームが存在するときは、「フルブリッジ」構造を形成する。誘導素子の第2の巻線は、直流出力電圧を供給する2次回路に接続される。2次回路は、2つのスイッチを含むインバータアームをやはり含み、したがってハーフブリッジ構造を形成する、または、2つのインバータアームが存在するときは、フルブリッジ構造を形成する。
【0006】
交流電圧源によって電力供給されるDABタイプ変換器の例が、文書FR3099663に説明されている。
【0007】
1次回路および2次回路のスイッチを、さらに経時的に変えることができる所定の周波数で切り換えさせることによって、変換器の出力電圧を変調することが可能である。
【0008】
しかし、ある所定の電力範囲の外では、変換器の構成要素が過剰に熱くなり、このことによって、変換器の性能が低下すること、さらにはその寿命が短くなることにつながる可能性がある。
【0009】
したがって、変換器の端子の電圧がゼロであるときに、変換器のインバータアームのスイッチを切り換えさせることによって、この加熱を制限することが求められる。「ゼロ電圧切換」(ZVS)への切換は、インバータアームのスイッチの端子に存在する干渉容量を放電するため、変換器の誘導素子中に存在する電流を使用することによって行うことができる。干渉容量が放電されると、したがって電圧がゼロに等しくなり、スイッチの導通は、熱の形で散逸されるエネルギーを最小にして行うことができる。しかし、この解決策は、一般的に、瞬間的な電流の値を知っていることが必要である。しかも、ほとんど即時の活動についての、瞬間的な大きさの検出およびその即時の判断は、電圧変換器内に実装するには非常に複雑である。
【0010】
さらに、DABタイプ変換器の現在の動作では、伝送される電力の全範囲にわたるZVSへの切換条件を維持することを可能にすることができない。実際に、伝送される電力が低下し所定のしきい値を下回るとき、中心誘導素子を通過する電流が低すぎて、ZVSへの切換を実施するのを可能にできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】FR3099663
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明を解決するため提案される技術的な問題は、特に所定のしきい値未満の電力について、スイッチの切換期間のエネルギー損失を制限するのを可能にする、電圧変換器を制御するための方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この問題を解決するため、本出願人は、電圧変換器の2つの主なカテゴリーを制御するための方法を開発した。第1のカテゴリーは、電池などといった直流電圧源によって直接電力供給される変換器に関する。第2のカテゴリーは、交流電圧源によって電力供給される変換器に関する。
【0014】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、
直流入力電圧を供給する発生源に接続されることが意図される2つの主端子、
2つのスイッチを含む少なくとも1つの第1のインバータアームであって、前記入力端子に接続される第1のインバータアーム、
少なくとも2つの容量素子を含む第1の容量性アームであって、第1のインバータアームと並列に取り付けられる第1の容量性アーム、および
第1のインバータアームのスイッチ間に位置する第1の相互接続点と第1の容量性アームの容量素子間に位置する第2の相互接続点との間に接続される、変圧器の第1の巻線
を含む1次回路と、
2つのスイッチを含む少なくとも1つの第2のインバータアーム、
少なくとも2つの容量素子を含む第2の容量性アームであって、第2のインバータアームと並列に取り付けられる第2の容量性アーム、および
第2のインバータアームのスイッチ間に位置する第3の相互接続点と第2の容量性アームの容量素子間に位置する第4の相互接続点との間に接続される、前記変圧器の第2の巻線
を含む2次回路と、
を含む電圧変換器を制御するための方法に関する。
【0015】
本方法は、出力電圧を供給するため、1次回路および2次回路のインバータアームのスイッチの切換を実施する。
【0016】
本方法は、1次回路の直流電圧源によって入力端子間で吸収される電力が2つの所定のしきい値の間に含まれるとき、1次回路のスイッチは、所与の周期にわたって2次回路のスイッチの切換の2倍の回数の切換をするように制御されるという点で特徴づけられる。
【0017】
言い換えると、直流電圧源によって供給される電圧がAと呼ばれ、第2の容量性アーム上に存在する電圧がBと呼ばれる場合、1次回路および2次回路のインバータアームのスイッチの切換によって、このように、電圧源Aと電圧源Bの間のエネルギー交換を制御するのが可能になる。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、
交流電圧源に接続されることが意図される2つの主端子、
直流電圧を出す整流器段であって、整流器段の入力端子のうちの1つが主入力端子のうちの1つに接続される、整流器段、
2つのスイッチを含む少なくとも1つの第1のインバータアームであって、整流器段の出力端子間に接続される第1のインバータアーム、
少なくとも2つの容量素子を含む第1の容量性アームであって、整流器段の出力端子間にやはり接続される第1の容量性アーム、および
第1のインバータアームのスイッチ間に位置する第1の相互接続点と他の主端子に接続される第2の相互接続点との間に接続される変圧器の第1の巻線であって、前記第2の相互接続点が第1の容量性アームの容量素子間に位置する、第1の巻線
を含む1次回路と、
2つのスイッチを含む少なくとも1つの第2のインバータアーム、
少なくとも2つの容量素子を含む第2の容量性アームであって、第2のインバータアームと並列に取り付けられる第2の容量性アーム、および
第2のインバータアームのスイッチ間に位置する第3の相互接続点と第2の容量性アームの容量素子間に位置する第2の相互接続点との間に接続される、前記変圧器の第2の巻線
を含む2次回路と、
を含む電圧変換器を制御するための方法にやはり関する。
【0019】
本方法は、出力電圧を供給するため、1次回路および2次回路のインバータアームのスイッチの切換を実施する。
【0020】
本方法は、1次回路の入力端子間で吸収される電力が2つの所定のしきい値の間に含まれるとき、1次回路のスイッチは、所与の周期にわたって2次回路のスイッチの切換の2倍の回数の切換をするように制御されるという点で特徴づけられる。
【0021】
こうして、1次回路のスイッチに2倍の回数の切換をさせることによって、誘導素子中の電流は、2つの所定のしきい値の間で伝送される電力について、1次回路中でのZVSへの切換を維持することが可能になる十分なレベルで維持される。ZVSへの切換のために必要な時間の決定は、たとえば、方程式系の実時間デジタル解法あるいはルックアップテーブルによって得られる。
【0022】
ZVSへの切換のおかげで、変換器の構成要素は、ほとんど熱くならず、このことによって、変換器の寿命を延ばし、そのエネルギー効率を向上させることが可能になる。
【0023】
本発明によれば、所与の周期は、特定の時間間隔に対応するが、これは、必ずしも時間がたっても同一に再現されるわけではない。特に、周期の長さは、変換器によって供給される電力にしたがって、経時的に変わる場合がある。例として、周期は、約数マイクロ秒の長さを有する。
【0024】
実際には、前記変圧器の第2の巻線が誘導素子によって第1の相互接続点に接続され、これは、変圧器の漏れインダクタンスを構成する、または誘導性があり他の誘導素子と直列の漏れを含む可能性がある。同様に、直流電圧を出す整流器段は、実際には、2つのスイッチを含むインバータアームおよびインバータアームと並列に取り付けられる1つの出力コンデンサを含む。
【0025】
有利な実施形態では、ジュール効果によるエネルギー損失を制限するために、スイッチを通過する電流がゼロであるときに、スイッチを切り換えさせることも求められる。ゼロ電流切換(ZCS)が2次回路のスイッチに適用される。したがって、所与の周期にわたる2次回路のスイッチの切換は、第2の巻線のインダクタンス中の電流が、所与の電流の変化方向について、ゼロ値を通過する度に実施される。
【0026】
したがって、電流のゼロ通過切換は、系統的には生成されない。したがって、電流は、出力電圧の極性を変えることなく符号を変えることができる。ある量のエネルギーが、こうして、1次回路に戻ることができる。これをすると、ZVSおよびZCSへの切換が維持される伝送される電力の範囲は、従来技術の制御方法と比較して低い、下側端子を有する。こうして、損失が減る動作範囲が拡大される。
【0027】
実際には、所与の周期にわたって、1次回路のスイッチの切換後に、1次回路のスイッチのさらなる切換が行われ、変圧器の第2の巻線の電流が方向を変えた後に、前記電流の新しいゼロ通過が起こるように、前記新しいゼロ通過と同期して、2次回路のスイッチの切換が行われる。
【0028】
本発明によれば、1次回路のインバータアームのスイッチは、対になって切り換わる。これは、1次回路中の電圧が高い状態から低い状態に、または低い状態から高い状態に移るときに、インバータアームのスイッチがほぼ同時に切り換わり、その結果、同時に導通することさえなく、第1のスイッチが閉状態から開状態に移り、第2のスイッチが開状態から閉状態に移ることを意味する。この動作は、2次回路のスイッチにやはり適用される。
【0029】
直流電圧源によって電力供給される変換器の電子構造に関して、1次回路は、いわゆるフルブリッジ構造を形成するように2つのインバータアームを含むことができる。
【0030】
原理的に、スイッチは、単方向スイッチである。しかし、ある種の用途では、1次回路のスイッチは、双方向スイッチであって、したがって、直流電圧の代わりに交流電圧を印加するのを可能にすることができる。後者は一般的に、直列の2つのスイッチから形成され、両方向の電流の通過の制御を可能にすることができる。たとえば、双方向スイッチは、直列の2つのトランジスタから形成され、それらのソースによって説側されることができる。
【0031】
本発明ならびに本発明からもたらされる利点を実施するための方法は、添付図面をサポートする以下の実施形態の記載から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態にしたがった電圧変換器の電気回路図である。
図2】本発明の第2の実施形態にしたがった電圧変換器の電気回路図である。
図3図1の電圧変換器についての所与の周期の間の、1次回路および2次回路中の電圧ならびにインダクタンス中の電流の発生を図示する図である。
図4図1の電圧変換器のスイッチの切換時間を決定するのを可能にする方程式系の式である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本明細書において、1に等しい比率を有する理想的変圧器について考える。言い換えると、第2の巻線E2、E12のコイルの数Nsと、第1の巻線E1、E11のコイルの数Npとの間の比率m=Ns/Npが、1に等しい。このイベントによって、以下の例を簡略化することが可能になる。しかし、本発明は、任意の値mにやはり適用される。こうして、m=1で、変圧器の2次回路を通過する電流Isと変圧器の1次回路を通過する電流Ipは、Is=Ipとなる。
【0034】
さらに、特に図3において、スイッチQ1~Q4、Q11~Q14の状態表記を簡略化するため、開状態は「0」と言及され閉状態は「1」と言及される。
【0035】
図1および図2に図示されるものなど、電圧変換器1000、2000は、インダクタンスL1、L11と直列に取り付けられる変圧器20、40を含み、インダクタンスL1、L11は、変圧器の漏れインダクタンスから構成されてよく、または、特定の誘導素子と直列な漏れインダクタンスを含んでよい。変圧器20、40は、1次回路100、300に接続される第1の巻線E1、E11、および、2次回路200、400に接続される第2の巻線E2、E12を含む。
【0036】
1次回路100、300内で、第1の巻線E1、E11の第1の端子P1、P11は、インダクタンスL1、L11によって、またはこのインダクタンスが変圧器20、40に含まれる場合は直接に、インバータアーム110、310の2つのスイッチQ1、Q2、Q11、Q12間に接続される。
【0037】
図1に図示されるなどの第1の実施形態では、第1の巻線E1の第2の端子P2は、容量性アーム120の2つのコンデンサC1、C2間に接続される。入力電圧Vinは、容量性アーム120の端子に接続される主端子B1とB2の間で測定される。主端子B1、B2は、直流電圧源10によって電力供給される。
【0038】
図2に図示されるなどの第2の実施形態では、第1の巻線E11の第2の端子P12は、主端子B4に接続され、典型的には電力網から来る交流電圧源30によって電力供給される。交流電圧源30は、それ自体が整流器段50に接続される第2の主端子B3にやはり接続される。入力電圧Vinは、主端子B3とB4の間で測定される。
【0039】
変形形態では、インダクタンスL1、L11と変圧器20、40を交換することができ、すなわち、第1の巻線E1の第2の端子P2がインダクタンスL1によって、容量性アーム120の2つのコンデンサC1、C2間に接続されることができ、第1の巻線E11の第2の端子P12がインダクタンスL11によって、主端子B4に接続されることができる。
【0040】
整流器段50は、その間に主端子B3が接続される2つのスイッチQ15、Q16を含むインバータアームを含む。整流器段50は、インバータアームの端子に接続されるコンデンサC15を含む容量性アームをさらに含む。整流器段50の出力端子は、インバータアーム310の端子に接続される。さらに、インバータアーム310は、それ自体が、少なくとも2つのコンデンサC11、C12を含む容量性アームに接続される。
【0041】
2つの図1および図2において、2次回路200、400内で、第2の巻線E2、E12の第1の端子P3、P13は、インバータアーム210、410の2つのスイッチQ3、Q4、Q13、Q14に接続される。第2の巻線E2、E12の第2の端子P4、P14は、容量性アーム220、420の2つのコンデンサC3、C4、C13、C14の間に接続される。出力電圧Voutは、容量性アーム220、420の端子で得られる。
【0042】
スイッチQ1~Q4、Q11~Q14は、本発明の制御方法を実施するように構成される制御回路500、600によって制御される。これを行うために、制御回路500、600は、1次回路100および2次回路200のインバータアーム110、210のスイッチQ1~Q4、Q11~Q14を開閉して、電力レベルが何であれ、要求された出力電圧Voutを供給する。
【0043】
実際には、本発明の方法は、入力端子B1~B4間で吸収される電力が2つの所定の電力しきい値の間に含まれるときに適用される。
【0044】
1次回路100、300のスイッチQ1、Q2、Q11、Q12は、こうして、所与の周期Pにわたって2次回路200、400のスイッチQ3、Q4、Q13、Q14の切換の2倍の回数の切換をするように制御される。
【0045】
本発明が適用される所定の電力しきい値は、変換器のパラメータに依存する。例として、しきい値は、変換器を構成する構成要素のサイズまたは寿命に依存する場合があり、または、変換器の出力に含まれる、要求される電力および電圧および電流に依存する場合もある。
【0046】
上側しきい値は、1次回路のスイッチについて2倍の回数の切換を行うことへの関心にしたがって決定される。実際に、このしきい値から、電流の値は、体系的に動作をZVSにするのに一般的に十分である。本発明によって提供されるさらなる切換の原理では、もはや関心を起こすことができない。
【0047】
下側しきい値は、切換によってもたらされるエネルギー損失比率にしたがって決定される。実際には、このしきい値未満の電力では、1次回路のスイッチについて2倍の回数の切換を行うことによって、パルス切換によるハードまたはパルスなどといった、従来の切換方法より多いエネルギー損失がもたらされる。したがって、このしきい値より下では、これらの従来の方法のうちの1つによってスイッチを制御しなければならない。
【0048】
実際には、図3の図面は、図1に対応する回路における所与の周期Pにわたった、インダクタンスL1および第1の巻線E1によって形成される組立体の端子での電圧Up、および、第2の巻線E2の端子での電圧Us、ならびに、変圧器20の第2の巻線E2中の電流Isの発生を図示する。下の記載は、図2の回路に適用することもできる。
【0049】
期間dt1の第1のフェーズにわたって、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ3が閉である一方で、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ4は開である。
【0050】
第1の近似として、電圧Upおよび電圧Usは、高い状態および低い状態という2つの値を採用できる信号である。第1のフェーズdt1にわたって、電圧Upおよび電圧Usは高い状態にある。電流Isは増加しており、その勾配は、インダクタンスの値およびUpとUs間の電位差に比例する。
【0051】
期間Ti1の第2のフェーズにわたって、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ3が閉である一方で、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ4は開である。言い換えると、スイッチQ1が閉状態から開状態に移る一方で、スイッチQ2が閉である。
【0052】
したがって、電圧Upは高い状態から低い状態に移り、電圧Usは変化しないままである。こうして、電流Isは減少しており、その勾配は常に、UpとUs間の電位差に比例する。したがって、電流Isの変化は、先行するシーケンスのフェーズに対して方向を変えている。
【0053】
第3のフェーズTr1にわたって、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ3が閉である一方で、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ4は開である。言い換えると、スイッチQ1が閉である一方で、スイッチQ2が再び開である。2次回路のスイッチQ3、Q4が状態を変えていないので、出力電圧Voutは変化しない。
【0054】
したがって、電圧Upは再び高い状態に移り、電圧Usは常に変化しないままである。電流Isはこうして再び増加しており、その勾配は、フェーズdt1の勾配と同一である。このことによって、電流が時間T4でゼロ値を再び通過することが可能になり、これはZCS条件に対応し、第4のフェーズをトリガして、最小切換損失でスイッチQ3およびQ4を切り換える。
【0055】
この第4のフェーズTr2にわたって、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ4が閉である一方で、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ3は開である。
【0056】
したがって、電圧Upが換わらないままである一方で、電圧Usは、高い状態から低い状態に移る。電流Isは増加したままであるが、勾配は、UpとUs間の電位差に比例する、すなわち、フェーズdt1およびTr1についてより大きい。
【0057】
第5のフェーズTc2にわたって、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ4が閉である一方で、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ3は開である。
【0058】
電圧Upは高い状態から低い状態に移る一方で、電圧Usは低い状態のままである。変圧器の第2の巻線E12中の電流Isはこうして減少しており、正の値から負の値に移る。
【0059】
第6のフェーズdt2にわたって、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ4が閉である一方で、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ3は開である。
【0060】
電圧Upは低い状態から高い状態に移る一方で、電圧Usは低い状態のままである。変圧器の第2の巻線E2中の電流IsはこうしてフェーズTr2のものに等しい勾配で増加している。
【0061】
第7のフェーズに対応する続くフェーズは第1のフェーズと同一であり、周期Pがちょうど完全に説明された。したがって、1次回路のスイッチQ1および2次回路のスイッチQ3が再び閉である一方で、1次回路のスイッチQ2および2次回路のスイッチQ4が再び開である。電圧Upおよび電圧Usは両方が高い状態であり、電流Isは、フェーズdt1およびTr1のものと等しい勾配で再び増加している。これが新しい周期Pの開始である。
【0062】
スイッチQ1~Q4の切換時間を決定するため、8個の式および8個の未知数を含む系を確立して実時間でデジタル的に解くことができる。変形形態では、ルックアップテーブルを使用することができる。この系の式は、図面の電気的パラメータとリンクするいくつかの条件の実装および経時的なそれらの進展によって、得られる。
【0063】
第1の条件は、スイッチQ1~Q2のZVSへの切換に関する。リマインダとして、これらの切換は、スイッチの端子での電圧をゼロにすることを可能にし、したがって、エネルギー損失を制限することによって、スイッチを閉じることを可能にする。これらの切換は、電圧Upの状態変化を引き起こす。本発明によって、こうして2つのさらなる切換を追加することが可能になり、これらの2つの切換は、ZVSでやはり行われる。
【0064】
図3では、これらの切換は、フェーズTr1およびTr2の点T1およびT2に対応する。これらの2つの点では、電流I2はそれぞれ-Ir1とIr2である。こうして、図4に説明された式(1)および(2)が得られる。
【0065】
第2の条件は、スイッチQ3~Q4のZCSへの切換に関する。念のため記しておくと、これらの切換は、電流Isがゼロを通過すると選択されるときに行われる。図3では、これらの切換は、点T3およびT4に対応する。式を確立させるため、電流の増加の合計は、周期Pにわたった、その減少に等しくなければならないことが知られている。こうして、電流の増加が起こる一方で、電圧Usは、すなわち周期P1にわたった、期間P1~Ti1および周期P2にわたった、期間P2~Tc2の間で正である。こうして、図4に説明された式(3)および(4)が得られる。
【0066】
第3の条件は、容量性アーム220の端子で測定される出力電圧Voutに関する。こうして、出力電圧Voutは、容量性アームのコンデンサC3、C4の電圧の合計であり、それは図3ではUc1+Uc2である。こうして、図4に説明された式(5)が得られる。
【0067】
第4の条件は、図3に記載される周期Pに関する。周期Pは、電圧Usが高い状態である周期P1と、電圧Usが低い状態である周期P2の合計に等しい。こうして、図4に説明された式(6)が得られる。
【0068】
第5の条件は、変圧器20の第1の巻線E1の端子で平均電圧がゼロであるという事実を反映する。こうして、コンデンサC1およびC2の端子の電圧が決められる。図4に図示される式(7)によって、1次回路のインバータアーム310の端子での電圧と、入力電圧Vinの間の所望の比率にしたがって、期間Ti1、Tc2、P1、およびP2をリンクすることが可能になる。図1に対応する連続的な入力電圧源の場合、比率Uc/Vinは、1/2に等しい。図2に対応する交流電圧源の場合、比率Uc/Vinは変化することができ、構成要素の降伏電圧にしたがって、変換器の設計者が選択する。
【0069】
第6の条件は、2次回路200の2つのコンデンサC3とC4の中間点における安定した電圧の取得に関する。この電圧が安定でない場合、電流が直流成分を有すると、コンデンサC3とC4の間の中間点の電圧が無限に上がる可能性があり、このことは、変換器を損傷させるおそれがある。確立した系では、C3とC4は直列で、順番に電力供給される。中間点を安定化するために、電圧は、コンデンサC3とC4間で等しく分配されなければならない。したがって、周期Pにわたって、C3の全電荷は、C4の全電荷に等しくなければならない。言い換えると、期間P1およびP2の間、電流の曲線下の面積の差異はゼロでなければならない。こうして、図4に説明された式(8)が得られる。
【0070】
実際には、制御回路500は、入力電圧Vin、出力電圧Vout、コンデンサC2の端子における電圧Uc、および変圧器20の第2の巻線E2中の電流Isを測定するように構成される。したがって、系の未知の変数は、変数Uc1、Uc2、Tr1、Tr2、P1、Ti1、P2、Tc2である。
【0071】
式を解くための任意のデジタル的方法によって、変数の値をデジタル的に決定するのを可能にすることができる。特に、解くのは実時間で行うことができる。有利には、解くのは数マイクロ秒で行われる。
【0072】
さらに、変換器の動作周波数は固定ではなく、したがって、計算においては生じない。切換時間は式から直接計算され、その結果、特に2つの所定のしきい値の間に含まれる電力について、スイッチの切換期間のエネルギー損失を制限するために、1次回路のスイッチにZVS切換を課すこと、および2次回路のスイッチにZCS切換を課すことが可能になる。
【0073】
また、スイッチQ1およびQ4の切換時間を決定するための代替方法があり、これは、単一の未知数での計算に関連するたとえばピーク電流の値といったある値の推定を含み、それは、周波数およびデューティ比に作用する調整ループによって完全に完了する。切換時間は、こうして、周波数およびデューティ比から直接決定される。
【0074】
さらに、変圧器の1次および2次段階、すなわち、一方で構成要素Q1、Q2、C1、およびC2によって形成される段階、他方で構成要素Q3、Q4、C3、およびC4によって形成される段階に直接リンクされる段階の対称性に起因して、上で記載した1次スイッチのものではなく、2次スイッチの切換周波数を2倍にすることによって、本発明の利点を得ることも可能である。上で述べた制御方法の原理は、特に、「1次」と「2次」という用語を交換することによって適合させて、所与の周期Pにわたって、2次回路のスイッチQ3、Q4を、1次回路のスイッチQ1、Q2の2倍の回数の切換をさせることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 発生源、直流電圧源
20 変圧器
30 交流電圧源
40 変圧器
50 整流器段
100 1次回路
110 第1のインバータアーム
120 第1の容量性アーム
200 2次回路
210 第2のインバータアーム
220 第2の容量性アーム
300 1次回路
310 第1のインバータアーム
320 第1の容量性アーム
400 2次回路
410 第2のインバータアーム
420 第2の容量性アーム
500 制御回路
600 制御回路
1000 電圧変換器
2000 電圧変換器
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】