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特表2024-540630リチウム金属電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウム金属電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20241024BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530433
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022016078
(87)【国際公開番号】W WO2023101214
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170522
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ホンヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ウォン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ラク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウン キョン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050BA17
5H050CB12
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】
本実施例は、リチウム金属電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。一実施例によれば、集電体および前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム成分を含む金属層を含み、前記金属側表面には非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進セラミック粒子とを含む保護層が形成されるリチウム金属電極を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体;
前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム合金を含む金属層;および
前記金属層上に位置する保護層;を含み、
前記保護層は、非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進セラミック粒子を含む、リチウム金属電極。
【請求項2】
リチウムイオン伝導促進セラミック粒子は、LiTiO、LiNbO、LiTaO、LiZrO、LiTi12、LiCO、LiBO、SrTiOのうち1種以上を含むものである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項3】
前記保護層は、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の重量比で99.5:0.5~40:60を含むものである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項4】
前記リチウム合金を含む金属層は、
前記集電体上に位置するリチウム合金層および前記リチウム合金層上に位置するリチウム金属層を含むものである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項5】
前記リチウム合金を含む金属層は、リチウムおよびリチウム合金を含む複合層である、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項6】
前記リチウム合金を含む金属層は、In、Ag、Sn、Zn、Si、Al、およびBiのうち1種以上を含む複合層である、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項7】
前記金属層の平均厚さは、1μm~100μmである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項8】
前記保護層の平均厚さは、1μm~20μmである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項9】
前記保護層は、
前記保護層の表面に位置する皮膜層をさらに含み、
前記皮膜層は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物、LiFおよびLiNからなる群より選択された1種以上の物質を含むものである、請求項1に記載のリチウム金属電極。
【請求項10】
親リチウム成分を含むコーティング組成物を利用して、集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成するステップ;
非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進セラミック粒子を含むスラリーを利用して、前記コーティング層表面に保護層を形成するステップ;
メッキ液内に前記コーティング層および保護層が形成された集電体を位置させた後、前記保護層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させるステップ;
前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加し、前記コーティング層に含まれている親リチウム成分と、前記リチウム供給源から析出されたリチウムが合金化されたリチウム合金を含む金属層を形成するステップ;を含む、リチウム金属電極の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング層を形成するステップで、
前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層の厚さは、0.001μm~10μm範囲である、請求項10に記載のリチウム金属電極の製造方法。
【請求項12】
非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進セラミック粒子を含むスラリーを利用して、前記コーティング層表面に保護層を形成するステップで、
前記非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の重量比は、99.5:0.5~40:60である、請求項10に記載のリチウム金属電極の製造方法。
【請求項13】
前記金属層を形成するステップで、
前記金属層は、
前記リチウム合金を含むリチウム合金層;
前記リチウム合金層上に形成されたリチウム金属層を含む多層構造で形成されるものである、請求項10に記載のリチウム金属電極の製造方法。
【請求項14】
前記金属層を形成するステップで、
前記金属層は、
前記リチウム合金および前記リチウム供給源から析出されたリチウム金属を含む単層構造で形成されるものである、請求項10に記載のリチウム金属電極の製造方法。
【請求項15】
前記リチウム合金を含む金属層を形成するようにするステップで、
前記金属層の厚さは、1μm~100μmである、請求項10に記載のリチウム金属電極の製造方法。
【請求項16】
負極;
正極;および
電解質を含み、
前記負極は、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム金属電極である、リチウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施例は、リチウム金属電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の爆発的な需要及び走行距離の増大要求に伴い、これに対応するための高容量、高エネルギー密度を有する二次電池の開発が世界的に活発に行われている。
【0003】
二次電池の低価格化及び高エネルギー密度向上のために、リチウム二次電池の負極にリチウム金属電極を使用することが提案されている。
【0004】
このようなリチウム金属負極を形成するために、一般的に集電体にリチウム箔(foil)を圧延する方法を使用している。しかし、圧延の場合、20μm以下の厚さを有するリチウム金属負極を実現することが難しいという問題がある。
【0005】
一方、実質的にリチウム金属負極を利用して高エネルギー密度を有する二次電池を実現するためには、10~20μmmの厚さを有する薄膜のリチウム金属負極が必要である。
【0006】
しかし、全固体電池でリチウム金属を負極として使用する場合、リチウムと全固体電解質との反応によって高抵抗相が生成され、充放電の過程で電流密度の局所的な不均一性によってリチウムデンドライトが持続的に生成されたり、高抵抗のリチウム副産物が生成されることにより、充放電中に短絡または過電圧によって故障が発生したり、容量が低下する。
【0007】
このような問題を解決するために、全固体電池との反応を防ぎ、リチウムデンドライトの析出成長を防ぐ目的で、リチウム金属の上に保護コーティング層を形成したり、リチウム合金層を形成するなど、様々な方法が提案されているが、まだ電気自動車(EV)に使用可能なレベルの十分な寿命特性が得られていない。
【0008】
このようなニーズを満足させるために、最近、韓国特許出願第10-2018-0136041号(特許文献1)、韓国特許出願第10-2019-0134804号(特許文献2)、韓国特許出願第10-2020-7006820号(特許文献3)、Nature Energy 5、299(2020)(非特許文献1)などでは、非晶質炭素と銀(Ag)ナノ粒子を混合した無負極コーティング層を利用して充放電過程でリチウムを沈殿させる方法で前記の問題を解決しようとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2018-0136041号
【特許文献2】韓国特許出願第10-2019-0134804号
【特許文献3】韓国特許出願第10-2020-7006820号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature Energy 5、299(2020)
【0011】
しかし、充放電過程中に無負極コーティング層内または界面にリチウムベースの合金またはリチウムが含有された化合物のような電子伝導性を有する物質が生成され、電流集中化およびリチウムデンドライトを誘発し、寿命が短くなるという問題がある。
【0012】
また、無負極コーティング層の主材料である非晶質炭素による不可逆反応の問題により、初期クーロン効率が低いという問題がある。
【0013】
これらの問題を解決するために犠牲正極を使用するだけでなく、貴金属ナノ粒子を多量に使用するため、価格競争力が大きく低下し、商用化が難しいという問題がある。
【0014】
したがって、初期効率に優れ、充放電特性に優れた電極を製造できる技術の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本実施例では、上述したように、負極層内の電子導電性物質によるリチウムデンドライト形成および寿命低下の問題、無負極コーティング層内の非晶質炭素による初期不可逆による初期クーロン効率低下の問題およびこれを補償するために犠牲正極を使用しなければならない問題、充電過程でリチウムとの合金を生成するために銀(Ag)のような貴金属ナノ粒子を多量に使わなければならない問題などを解決しようとする。
【0016】
また、電極層に含まれている保護層によってデンドライト形成を防止し、優れた充放電特性を有するリチウム金属電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施例によるリチウム金属電極は、集電体、および前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム合金を含む金属層および前記金属層上に位置する保護層を含み、前記保護層は非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進セラミック粒子を含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本実施例によれば、リチウム金属電極にリチウムイオン伝導促進保護層を形成し、これを適用したリチウム二次電池の充放電過程でのリチウムデンドライト形成を制御し、リチウム二次電池の寿命低下を緩和することができる。
【0019】
また、リチウム二次電池の初期クーロン効率低下を制御し、充放電特性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施例により製造されたリチウム金属電極を概略的に示した図である。
図2】他の実施例によるリチウム金属電極を概略的に示した図である。
図3】一実施例によるリチウム金属電極を製造する過程を概略的に示した図である。
図4】実施例1によりリチウム金属電極を製造する過程における合金素材コーティング層が形成された集電体の断面を示すSEM写真である。
図5】実施例1によりリチウム金属電極を製造する過程における合金素材コーティング層およびリチウムイオン伝導促進保護層が形成された集電体の断面を示すSEM写真である。
図6a】実施例1により製造されたリチウム金属電極の断面を示すSEM写真である。
図6b】比較例1により製造されたリチウム金属電極の断面を示すSEM写真である。
図6c】比較例2により製造されたリチウム金属電極の断面を示すSEM写真である。
図6d】比較例3により製造されたリチウム金属電極の断面を示すSEM写真である。
図7a】実施例1により製造されたリチウム金属電極の表面微細構造を示す写真である。
図7b】実施例1により製造されたリチウム金属電極の成分分析結果を示す写真である。
図8a】比較例1により製造されたリチウム金属電極の表面微細構造を示す写真である。
図8b】比較例1により製造されたリチウム金属電極の成分分析結果を示す写真である。
図9a】比較例2により製造されたリチウム金属電極の表面微細構造を示す写真である。
図9b】比較例2により製造されたリチウム金属電極の成分分析結果を示す写真である。
図10a】比較例3により製造されたリチウム金属電極の表面微細構造を示す写真である。
図10b】比較例3により製造されたリチウム金属電極の成分分析結果を示す写真である。
図11】実施例1および比較例1~3により製造された二次電池の初期効果を評価した結果を示した図面である。
図12】実施例1および比較例1~3により製造された二次電池の充放電寿命を評価した結果を示した図面である。
図13】実施例1~4および比較例2により製造された二次電池の充放電寿命を評価した結果を示した図面である。
図14】本発明により製造されたリチウム金属電極を適用した二次電池概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1、第2および第3などの用語は、様々な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、第2の部分、成分、領域、層またはセクションとして言及することができる。
【0022】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形は、文言が明確に反対の意味を示さない限り、複数形も含む。本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分を具体化するものであり、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又は成分の存在又は付加を排除するものではない。
【0023】
ある部分が他の部分「上」または「の上」にあると記載されている場合、それはまさに他の部分の上または上にある可能性があり、またはその間に他の部分を伴う可能性がある。対照的に、ある部分が他の部分の「直上」にあると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0024】
特に定義されていないが、ここで使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書で定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加的に解釈され、定義されない限り、理想的または非常に正式な意味に解釈されない。
【0025】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲の範囲によって定義されるだけである。
【0026】
図1は、一実施例により製造されたリチウム金属電極を概略的に示した図であり、図2は、他の実施例によるリチウム金属電極を概略的に示した図であり、図3は、一実施例による二次電池用リチウム金属電極を製造する方法を概略的に示した図である。
【0027】
図1を参照すると、一実施例によるリチウム金属電極100は、集電体11および前記集電体11の少なくとも一面に位置する金属層12を含み、また、集電体11と対面する金属層12の他面に位置する保護層30を含む。
【0028】
集電体11は、リチウム二次電池内での電気的接続のためのものである。
【0029】
集電体11は、薄膜(Foil)の形態を有することができるが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ(mesh)、フォーム(foam)、縫製(rod)、線材(wire)、および線材(wire、fiber)を織った薄板(sheet)の形態を有することもできる。
【0030】
集電体11の素材としては、電気導電性を有し、リチウムとの反応が制約的な素材を使用することができる。集電体11の素材としては、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステレンス鋼、金、白金、銀、タンタル、ルテニウム、およびこれらの合金、炭素、導電性ポリマー、非導電性ポリマー上に導電層がコーティングされた複合繊維のいずれか一つまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0031】
集電体11の厚さが厚いと、電池重量が増加し、電池のエネルギー密度が低くなり、集電体11の厚さが薄いと、高電流動作時に過熱破損の危険があり、電池製造プロセス中に張力によって破損する可能性がある。従って、集電体11の厚さは、1μm~50μmの範囲であることができる。
【0032】
前記金属層12は、集電体11上に位置し、リチウム合金を含むリチウム合金層21および前記リチウム合金層21上に位置するリチウム金属層41を含む。ここで、リチウム合金層21は、前記集電体11およびリチウム供給源の間に電流を印加して、前記集電体11のコーティング層に含まれている親リチウム成分と前記リチウム供給源から析出されたリチウムが合金化されたリチウム合金を含む層であることができる。金属層形成時に電着の速度を増加させるために、高電流を印加して電着プロセスを進行する場合、リチウム二次電池の性能が低下する問題点がある。しかし、本実施例のように、リチウム成分を含むリチウム合金層21を含む構造で金属層12を形成する場合、高電流を印加して電着プロセスを行っても、微細なリチウム粒子が過剰に生成されたり、電着プロセスで既に生成されたリチウム金属層の表面保護層である皮膜が破壊されることを防止することができる。
【0033】
より具体的に、本実施例の金属層12は、リチウム成分を含むリチウム合金層を含むため、電着プロセスで高電流を印加して前記リチウム合金層上にリチウム金属層を形成する場合、初期に生成されたリチウム粒子がよく成長するように誘導して粗大な構造の粒子が形成されるようにすると同時に、リチウム金属層、結果的に金属層12が均一な表面を有するようにすることができる。
【0034】
従って、本実施例によるリチウム金属電極を適用した二次電池の性能、具体的には充放電特性を著しく向上させることができる。また、高電流を印加して高速で電着プロセスを行う場合にも、高性能を有する二次電池用リチウム金属電極を製造することができるので、二次電池用リチウム金属電極の生産性も著しく向上させることができる。
【0035】
前記リチウム合金層21は、リチウムと親リチウム金属からなる合金であってもよく、ここで、前記親リチウム金属は、In、Ag、Sn、Zn、Si、AlおよびBiからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本実施例において、リチウム合金層は、親リチウム金属を含む。このようにリチウム合金層が親リチウム金属を含む場合、電子導電度が高い親リチウム金属を含むため、集電体から電子が円滑に供給され、リチウムイオンが還元されることにより、リチウム金属層の電着が容易に行われるという長所がある。
【0037】
一方、前記の金属層は、電池の充電過程でより効果的にリチウムが保護層下部に析出されるようにするのに役立つ役割を果たす。
【0038】
前記金属層12の厚さは、1μm~100μm、より具体的に、5μm~30μmの範囲であることができる。
【0039】
金属層12の厚さが厚すぎると、本実施例のリチウム金属電極を二次電池に適用する場合、電池の重量および体積が増加し、エネルギー密度が低くなる問題がある。また、金属層12形成時、厚さに比例して電着プロセスの時間と費用が増加するため、前記金属層12の厚さは100μm以下であることが好ましい。
【0040】
また、金属層12の厚さが薄すぎると、本実施例のリチウム金属電極を二次電池に適用する場合、電池の充放電寿命が低下する問題がある。具体的に、電池の充放電中には負極活物質層、即ち、本発明の金属層に含まれているリチウムと電解液との副反応などで電池内のリチウムが徐々に消耗され、電池容量が減少する。ところで、金属層12の厚さが薄いと、充放電中に消耗されたリチウムを補充できるリチウムの保有量が少なくなるため、電池の充放電寿命が低下する。従って、金属層12の厚さは1μm以上であることが好ましい。
【0041】
前記保護層30は、金属層12上に位置し、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子とを含む。
【0042】
全固体電池でリチウム金属を負極として使用する場合、全固体電解質とリチウムとの反応によって高抵抗が生成され、充放電の過程で電流密度の局部的な不均一によってリチウムデンドライトが持続的に生成されたり、高抵抗のリチウム副産物が生成されることによって、充放電中に短絡または過電圧によって故障が発生したり、電池用量が低下する。
【0043】
しかし、本実施例のように、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子とを含む保護層は、リチウム金属電極の出力特性と寿命特性だけでなく、さらに構造的安全性を向上させることができる。
【0044】
より具体的に、本実施例のリチウム金属電極は、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子をと含む保護層30を含むため、充電および放電時に電極表面でリチウムイオンの移動を促進させることができ、界面で電子導電性物質が生成されることを抑制することができる。また、前記保護層30内部の電子導電性を低下させる役割を果たすことができる。
【0045】
従って、本実施例によるリチウム金属電極を適用した二次電池の性能、具体的に電池の出力特性および寿命特性を著しく向上させることができる。
【0046】
前記非晶質炭素は、アセチレンブラック、スーパーP(super P)ブラック、カーボンブラック、デンカ(denka)ブラック、活性カーボン(activated carbon)、黒鉛(grapite)、ハードカーボンおよびソフトカーボンからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
また、前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子は、代表的にLiTiO、LiNbO、LiTaO、LiZrO、LiTi12、LiCO、LiBO、SrTiOなどのように、リチウムイオンの伝導を促進し、電子の伝導を抑制する粒子からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記のリチウムイオン導電性セラミック粒子は、リチウム負極を使用する電池の充電過程中において、保護層内部および界面でリチウムイオンの伝導を促進し、電子の伝導を抑制することによって、リチウムが保護層の下部によく移動できるようにする役割を果たす。
【0048】
本実施例において、前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の平均粒子大きさD(50)が100nm~1,000nmの範囲であることができる。前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の平均粒子大きさD(50)が100nm未満の場合、1次粒子間の凝集により、コーティング層内のセラミック粒子の分布が不均一な問題があり、1,000nmより大きい場合、巨大粒子が抵抗層の役割を果たし、リチウムイオン導電度を低下させる問題がある。
【0049】
また、特に、このような素材は、全固体電池の硫化物系電解質素材とよく反応せず、化学的安定性が優れているため、全固体電池の界面安定性の向上および充放電寿命の向上に有利である。イオン伝導促進保護層は、前記複合体をスラリー形態に製造して塗布することができ、このようなスラリーで製造するためには、さらにバインダーを含めることができる。
【0050】
前記リチウムイオン伝導促進保護層は、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の重量比で99.5:0.5~40:60を含むことができる。具体的に、98.5:1.5~50:50を含むことができ、より具体的に、97:3~70:30を含むことができる。
【0051】
リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子が少なすぎると、リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の混合によるリチウムイオン伝導促進の効果を十分に得ることができず、リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子が多すぎると、常温でセラミック粒子間の接続が良くないため、保護層の緻密度が低下し、これにより、むしろリチウムイオン伝導を妨げる場合が発生したり、非晶質炭素に比べて相対的に密度が高いセラミック粒子が過剰に含まれる場合、電池エネルギー密度の低下を引き起こすという問題がある。
【0052】
一方、本実施例の保護層はバインダーを含むことができる。
【0053】
このとき、前記バインダーは、水系バインダーであることができ、前記水系バインダーは、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber;SBR)およびアクリルゴムからなる群より選択されるゴム系バインダーと、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびポリフッ化ビニリデンなどの高分子樹脂からなる群より選択された1種以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
ここで、前記バインダーは、前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子、非晶質炭素および水を混合して形成されるスラリー重量基準で1~15重量部添加することができ、より具体的に3~10重量部添加することができる。
【0055】
バインダー添加量が前記範囲を満足する場合、重量および体積の増加で電池エネルギー密度の低下を誘発することなく、前記保護層を構成する粒子を効率的に結着させて性能に優れた保護層を形成し、二次電池の寿命特性をより向上させることができる。バインダー添加量が少なすぎると、保護層を形成する際に粒子間の結合力が低下する問題があり、バインダー添加量が多すぎると、エネルギー密度の低下を引き起こすだけでなく、保護層の抵抗が大きく増加し、リチウムイオン伝導を妨げるという問題がある。
【0056】
前記非晶質炭素、リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子およびバインダーを含む保護層の厚さは、0.01μm~50μm、より具体的に、1μm~20μmの範囲であることができる。保護層の厚さが前記範囲を満足する場合、上述した非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子とを含むことによって得られる効果により、保護層の表面にリチウムデンドライトが形成されるのを防止し、リチウムイオン保護層内部をよく貫通して伝導できるようにすることで、保護層の下面からリチウムが析出できるようにする。これに対し、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子とを含む保護層の厚さが薄すぎる場合、保護層の役割を果たすことができないという短所がある。一方、前記保護層の厚さが厚すぎると、保護層の抵抗が過度に大きくなり、二次電池動作中に過電圧の上昇を引き起こす可能性があり、また、重量および体積の増加で電池エネルギー密度の低下を引き起こす問題がある。但し、このような保護層の厚さは、二次電池構造の設計により可変的に調節することができる。
【0057】
一方、図示していないが、本実施例の金属層12は、前記金属層12の表面に位置する皮膜層(SEI、Solid-Electrolyte Interphase)をさらに含むことができる。
【0058】
前記皮膜層は、金属層12製造過程において、電着されたリチウム供給源のリチウム金属とメッキ液との反応などで形成されるもので、使用するメッキ液の組成および電着プロセスの条件を調節することにより、皮膜の厚さおよび組成、特性などを制御することができる。
【0059】
前記皮膜層の厚さは、例えば、2nm~2μm、より具体的に10nm~500nmの範囲であることができる。
【0060】
金属層12表面に位置する前記皮膜層の厚さが厚すぎると、リチウムイオンの導電度が低下し、界面抵抗が増加し、電池適用時の充放電特性が低下する可能性がある。また、皮膜層の厚さが薄すぎると、実施例によるリチウム金属電極を電池に適用する過程で皮膜層が容易に流失する可能性がある。
【0061】
従って、前記皮膜層は、前記厚さ範囲を満足する範囲で、薄い厚さで、金属層12表面全体に均一かつ緻密に形成されることが好ましい。
【0062】
このとき、前記皮膜層は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物、LiFおよびLiNからなる群より選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0063】
図2は、他の実施例によるリチウム金属電極を概略的に示した図である。
【0064】
図2を参照すると、他の実施例による二次電池用リチウム金属電極100は、集電体11および前記集電体11の少なくとも一面に位置し、リチウムおよびリチウム合金が混合されて構成される金属層12を含む。ここで、前記リチウム合金は、前記集電体11およびリチウム供給源の間に電流を印加し、前記集電体11の上に形成されたコーティング層に含まれている親リチウム成分と前記リチウム供給源から析出されたリチウムが合金化されて形成されたものであることができる。
【0065】
このとき、前記金属層12は、親リチウム金属を含むことができる。ここで、前記親リチウム金属は、例えば、In、Ag、Sn、Zn、Si、Al、Biからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
本実施例では、金属層12が親リチウム金属を含む形態である。このように親リチウム金属を含む金属層12を形成する場合、電着プロセスでリチウム粒子の核生成初期に核生成自由エネルギーを下げることができるため、高電流および過電圧条件でも粗大な粒子構造を有するリチウム金属層を形成することができる。
【0067】
本実施例では、前記金属層12の厚さは、1μm~100μm、より具体的に、5μm~30μmの範囲であることができる。本実施例において、金属層12が前記厚さ範囲を満足する場合、電池の充放電寿命を向上させながら、電池のエネルギー密度を極大化することができるだけでなく、金属層12形成時の電着プロセスの時間と費用を最小化することができる長所がある。金属層の厚さが薄すぎる場合、初期不可逆によって初期クーロン効率が低下し、余剰リチウムが不足するため、充放電性能が低下する。一方、金属層の厚さが厚すぎる場合、電池のエネルギー密度が低下するだけでなく、金属層形成時のプロセス時間および金属原材料の使用量が増加する問題がある。
【0068】
一方、図2に図示していないが、本実施例の金属層は、前記金属層の表面に位置する皮膜層をさらに含むことができる。
【0069】
このような皮膜層については、前述した一実施例による二次電池用リチウム金属電極で説明したものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0070】
一実施例によるリチウム金属電極の製造方法は、親リチウム成分を含むコーティング組成物を利用して、集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成するステップ;非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進粒子を含むスラリーを利用して、前記コーティング層表面に保護層を形成するステップ;メッキ液内に前記コーティング層および保護層が形成された集電体を位置させた後、前記保護層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させるステップ;そして、前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加し、前記コーティング層に含まれている親リチウム成分と前記リチウム供給源から析出されたリチウムが合金化されたリチウム合金を含む金属層を形成するステップ;を含む。
【0071】
前記非晶質炭素およびリチウムイオン伝導促進セラミック粒子を含むスラリーを利用して、前記コーティング層表面に保護層を形成するステップで、前記リチウムイオン伝導促進保護層は、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の重量比で99.5:0.5~40:60を含むことができる。具体的に、98.5:1.5~50:50を含むことができ、より具体的に、97:3~70:30を含むことができる。
【0072】
まず、親リチウム金属を含むコーティング組成物を利用して、集電体の少なくとも一面に合金素材コーティング層を形成するステップを行う。
【0073】
このとき、前記親リチウム金属は、例えば、In、Ag、Sn、Zn、Si、Al、Biからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0074】
また、前記合金素材コーティング層は、例えば、電解および無電解メッキ、スパッタリング、電子ビームおよび熱気相蒸着のうち少なくとも一つの方法を利用して行うことができる。
【0075】
一方、前記合金素材コーティング層を形成するステップで、前記集電体の少なくとも一面に形成された合金素材コーティング層の厚さは、0.001μm~10μm、具体的に、0.01μm~1μm、より具体的に、100nm~500nmの範囲であることができる。
【0076】
前記合金素材コーティング層の厚さが薄すぎると、リチウムとリチウム合金を形成する役割を果たすのに不十分であり、前記厚さが厚すぎると、前記合金素材コーティング層を形成するのに費用および時間が大量に消耗されるので、生産効率および経済性が低下し、電池の重量および重量が増加し、エネルギー密度が低下する問題がある。
【0077】
前記合金素材コーティング層形成ステップ後、前記形成された合金素材コーティング層表面に、保護層を塗布するステップを行う。
【0078】
このとき、前記保護層は、リチウムイオン伝導促進保護層であって、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子とを含むことができる。
【0079】
このとき、前記非晶質炭素は、アセチレンブラック、スーパーピーブラック、カーボンブラック、デンカブラック、活性カーボン、黒鉛、ハードカーボンおよびソフトカーボンからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0080】
また、前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子は、LiTiO、LiNbO、LiTaO、LiZrO、LiTi12、LiCO、LiBO、SrTiOなどのように電子導電度は低く、リチウムイオン導電度が高い粒子からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0081】
一方、このとき、前記リチウムイオン伝導促進保護層は、バインダーを添加することができる。
【0082】
前記バインダーは、水系バインダーであってもよく、前記水系バインダーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber;SBR)およびアクリルゴムからなる群より選択されるゴム系バインダーと、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびポリフッ化ビニリデンなどの高分子樹脂からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記リチウムイオン伝導促進保護層は、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、押出法、ブラシ塗布法のうち少なくとも一つの方法を利用して、前記非晶質炭素、リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子およびバインダーを水に混合して形成されるスラリーを塗布することができる。
【0084】
ここで、前記リチウムイオン伝導促進保護層は、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進性セラミック粒子の重量比で99.5:0.5を含むことができ、具体的に、98.5:1.5~50:50を含むことができ、より具体的に、97:3~70:30を含むことができる。
【0085】
また、前記バインダーは、前記リチウムイオン伝導促進性セラミック粒子、非晶質炭素および水を混合した重量基準で0.5~10重量部添加することができ、より具体的に、1~3重量部添加することができる。
【0086】
一方、前記リチウムイオン伝導促進保護層を形成するステップで、前記合金素材コーティング層の表面に形成された前記リチウムイオン伝導促進保護層の厚さは、0.01μm~50μm、より具体的に、1μm~20μmの範囲であることができる。
【0087】
合金素材コーティング層およびリチウムイオン伝導促進保護層の厚さが前記範囲を満足する場合、一実施例による二次電池用リチウム金属電極、より具体的に、図1または図2に示したようなリチウム金属電極構造を有するように製造することができる。
【0088】
前記リチウムイオン伝導促進保護層形成ステップの後に、メッキ液内に前記合金素材コーティング層およびリチウムイオン伝導促進保護層が順次形成された集電体を位置させた後、前記集電体と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させるステップ、そして、前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加して金属層を形成するステップを行う。
【0089】
図3を参照して、金属層を形成するステップをより具体的に説明する。
【0090】
まず、メッキ液50内に合金素材コーティング層20およびリチウムイオン伝導促進保護層30が形成された集電体11を位置させた後、リチウムイオン伝導促進保護層30と所定の間隔をおいてリチウム供給源40を位置させる。
【0091】
前記リチウム供給源40は、例えば、リチウム金属、リチウム合金、前記リチウム金属またはリチウム合金を集電体に圧着した箔、リチウム塩が溶解したメッキ液などを使用することができる。
【0092】
集電体11は前述したものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0093】
前記メッキ液50は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解して製造することができる。
【0094】
より具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiCO、LiNO、LiFSI、LiTFSI、LiBF、LiPF、LiAsF、LiClO、LiN(SOCF、LiBOB、またはこれらの組み合わせであることができる。前記リチウム塩の濃度は、全電解液を基準として0.1~3.0Mであってもよい。
【0095】
より具体的に、本実施例で、メッキ液は、前記リチウム塩および非水系溶媒のうち少なくとも一つに窒素系化合物を含むことを特徴とする。
【0096】
前記窒素系化合物は、例えば、硝酸リチウム(lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis fluorosulfonyl imide)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(lithium bis trifluoromethane sulfonimide)、カプロラクタム(e-caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(triethylamine)およびトリブチルアミン(tributylamin)からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0097】
前記窒素系化合物のうち、硝酸リチウム(lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis fluorosulfonyl imide)およびリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(lithium bis trifluoromethane sulfonimide)のうち少なくとも一つをリチウム塩として使用することができる。
【0098】
前記窒素系化合物のうち、カプロラクタム(e-caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(triethylamine)およびトリブチルアミン(tributylamin)のうち少なくとも一つを、非水系溶媒として使用することができる。
【0099】
一方、前記メッキ液は、メッキ液の粘性(viscosity)などを考慮して、一般的な非水系溶媒を溶媒として追加することができる。メッキ液の粘性が高すぎると、リチウムイオンの移動度(mobility)が低下し、メッキ液のイオン導電度が低下するため、電着プロセスに所要する時間が増加し、生産性が減少するためである。
【0100】
前記溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diethylene glycol dimethyl ether)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(tetraethylene glycol dimethyl ether)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)および1,3,5-トリオキサン(1,3,5-Trioxane)からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0101】
前記電流を印加し、前記集電体の少なくとも一面にリチウム金属層を形成するステップで印加する電流の電流密度は、0.1mA/cm~100mA/cmの範囲、より具体的に、0.2mA/cm~50mA/cmの範囲、5mA/cm~30mA/cmの範囲または7mA/cm~25mA/cmの範囲であってもよい。
【0102】
また、前記電流を印加する時間は、0.05時間~50時間の範囲、より具体的に、0.25時間~25時間の範囲であってもよい。
【0103】
このように、本実施例では、高電流条件下でも微細なリチウム粒子が過剰生成されるのを防止し、初期に生成されたリチウム粒子がよく成長するように誘導して、粗大な粒子構造を有するリチウム金属層を含む金属層が形成されたリチウム金属電極を製造することができる。また、このように製造された金属層は、表面均一度も優れている。従って、具体的に図1に示したように、リチウム成分を含むリチウム合金層21および前記リチウム合金層21上に位置するリチウム金属層41を、金属層12を備えるリチウム金属電極構造または図2に示したようなリチウムおよびリチウム合金が混合されて構成される金属層12を備えたリチウム金属電極構造を有するように製造することができる。前記金属層12の厚さは、1μm~100μm、より具体的に、5μm~30μmの範囲であることができる。
【0104】
本実施例により製造されたリチウム金属電極を適用する場合、二次電池の充放電特性を著しく向上させることができる。
【0105】
一実施例による二次電池は、正極、負極、そして前記正極および負極の間に位置する電解質を含む。ここで、負極は、本発明によるリチウム金属電極であることができる。
【0106】
図14は、一実施例による二次電池の構造を概略的に示した図である。
【0107】
図14を参照すると、本実施例の二次電池200は、正極70、負極100、そして前記正極70と前記負極100との間に配置される分離膜90を含む電極アセンブリを含むことができる。
【0108】
このような電極アセンブリは、ワインディングされたり、フォルディングされて電池ケース95に収容される。
【0109】
その後、前記電池ケース95に電解質80が注入され、密封されて二次電池200が完成することができる。このとき、電池ケース95は、円筒形、角型、パウチ型、コイン型などの形態を有することができる。
【0110】
図14には、便宜上、前記負極100として一実施例による負極を示したが、前記負極としては、前述した実施例による二次電池用リチウム金属電極を全て適用することができる。
【0111】
前記正極70は、正極活物質層および正極集電体を含むことができる。
【0112】
前記正極活物質層は、例えば、Ni、Co、Mn、Al、Cr、Fe、Mg、Sr、V、La、Ceのうち少なくとも一つの金属とO、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの非金属元素を含むLi化合物とを含むことができる。正極活物質層は、ほぼ0.01μm~200μmの平均粒子大きさを有する活物質粒子を含むことができ、電池の要求特性により適切に選択することができる。
【0113】
場合によって、前記正極活物質層には導電剤が添加されることもできる。
【0114】
前記導電剤は、例えば、カーボンブラックおよび超微細グラファイト粒子、アセチレンブラックのようなファインカーボン(fine carbon)、ナノ金属粒子ペーストなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0115】
前記正極集電体は、前記正極活物質層を支持する役割を果たす。正極集電体としては、例えば、アルミニウム薄板(foil)、ニッケル薄板またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
前記リチウム二次電池200に充填される電解質80には、非水系電解液または固体電解質などを使用することができる。
【0117】
前記非水系電解液は、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウムなどのリチウム塩とエチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸ブチレンなどの溶媒を含むことができる。また前記固体電解質は、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、LiNなどの無機固体電解質を使用することができる。
【0118】
前記分離膜90は、正極と負極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するもので、リチウム二次電池で通常使用されるものであればいずれも使用可能である。即ち、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、電解液含浸能力が優れたものを使用できる。ここで、分離膜は、例えば、ガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせから選択されたものであり、不織布または織布形態であってもよい。一方、前記電解質80として固体電解質が使用される場合、固体電解質が分離膜90を兼ねることもできる。
【実施例
【0119】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0120】
[実施例1]
図1と同じプロセスで実施例1による二次電池用リチウム金属電極を製造した。
【0121】
まず、銅集電体11の一面に無電解メッキ方法を利用して、銀(Ag)が含まれているコーティング層20を約300nm程度の厚さに形成した(図4参照)。
【0122】
その後、前記コーティング層20の表面にコンマコーターを利用したスラリーコーティングで保護層30を約5μmの厚さで形成し、具体的には、リチウムイオン伝導促進性保護層を形成した(図5参照)。
【0123】
ここで、保護層30は、アセチレンブラック(Acetylene black)を使用した非晶質炭素と酸化チタンリチウム(LiTiO)を使用したリチウムイオン伝導促進セラミック粒子の重量比を7:3とし、水を使用した溶媒に混合した。このとき、前記アセチレンブラック、酸化チタンリチウム(LiTiO)および水で構成された混合物の重量基準でカルボキシルメチルセルロースおよびスチレン-ブタジエンゴムバインダーをそれぞれ1.5重量%添加してスラリーを製作した。
【0124】
メッキ液50内に前記のようにコーティング層20および保護層30が形成された集電体11を位置させた後、前記保護層30と所定の間隔をおいてリチウム供給源40を位置させる。
【0125】
前記メッキ液50は、1,2-ジメトキシエタン溶媒に、窒素系化合物のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと硝酸リチウムをメッキ液100重量%を基準にそれぞれ40重量%と10重量%を投入し、フッ素系化合物のフルオロエチレンカーボネートをメッキ液100重量%を基準に10重量%投入して製造した。
【0126】
また、リチウム供給源40としては、純度99.9%以上の、厚さ500μmのリチウム金属板を銅集電板(Cu plate)に圧着して使用した。
【0127】
メッキ液50内にリチウム供給源40と集電体11を電気的に絶縁された状態で積層した後、電源供給装置を使用してリチウム供給源40と集電体11をそれぞれ(+)と(-)の電極として電流を印加する方法で集電体11とリチウムイオン伝導促進保護層30との間にリチウムを析出させて金属層を形成した。
【0128】
このとき、プロセスの平均電流密度は、4mA/cm、プロセス時間は、約15分とし、約5μm厚さの金属層が形成されたリチウム金属電極、即ち負極を製造した。
【0129】
[実施例2、3、4および参考例1]
保護層製造時、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進セラミック粒子の重量比を下記表3のように調整したことを除いて、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0130】
[比較例1]
集電体の一面にコーティング層を形成せず、非晶質炭素を100%使用して保護層を形成し、集電体と保護層との間に金属層を形成しないことを除いて、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0131】
[比較例2]
非晶質炭素を100%使用して保護層を形成することを除いて、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0132】
[比較例3]
集電体の一面にコーティング層を形成せず、また、集電体と保護層との間に金属層を形成しないことを除いて、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0133】
(実験例1)
実施例1および比較例1、2、3により製造された負極の断面構造を分析し、それぞれ図6a、図6b、図6cおよび図6dに示した。
【0134】
即ち、図6a、図6b、図6cおよび図6dは、実施例1および比較例1、2、3により製造された負極の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用して分析した写真を示した図である。
【0135】
図6bおよび図6dを参照すると、実施例1および比較例2により製造された負極は、保護層と集電体との間に金属層が均一に形成されたことが確認できる。
【0136】
(実験例2)
実施例1と比較例1、2、3により製造された負極の表面微細構造を、それぞれ図7a、図8a、図9aおよび図10aに示し、実施例1と比較例1、2、3により製造された負極の表面の成分を分析して図7b、図8b、図9bおよび図10bに示した。
【0137】
前記負極表面微細構造は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用して分析し、前記負極表面の成分分析は、エネルギー分散型分光分析法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で行った。
【0138】
図7a、図7b、図10aおよび図10bを図8a、図8b、図9aおよび図9bと比較してみると、リチウムイオン伝導促進セラミック粒子が含まれている実施例1および比較例3によって製造された負極の表面にはチタン(Ti)元素が観察されることが確認できる。これは、リチウムイオン伝導促進セラミック粒子として酸化チタンリチウム(LiTiO)を使用したためであると判断される。一方、電着メッキプロセスを適用した実施例1および比較例2に従って製造された負極の表面では、追加的にフッ素(F)および硫黄(S)が観察される。これは、電着プロセスにおいて、メッキ液の分解反応により生成される表面皮膜層(SEI)に起因したと判断される。このことから、負極の表面には、Li-N-C-H-O系イオン性化合物を含む皮膜層と、メッキ液に含まれるフッ素系化合物によって形成されたLiFのようなイオン導電性物質とが含まれていることが確認できる。
【0139】
(実験例3)
実施例1および比較例1、2、3によって製造された負極、即ちリチウム金属電極を利用して、図14のように全固体電池を製造した後、初期クーロン効率を評価した。
【0140】
全固体電池セルの初期クーロン効率評価のために、不活性雰囲気を維持できる加圧型専用評価セルを使用した。
【0141】
具体的に、固体電解質は硫化物系アジロダイト(LiPSCl)を使用した。前記固体電解質は、約0.7mmの厚さを有するペレット状に製作し、370MPaの圧力で加圧することで密度を向上させた。
【0142】
前記固体電解質の一面には、0.5mmの厚さを有するリチウムを配置し、他面には、実施例1および比較例1、2、3によって製造された負極を配置した。ここで、50MPaの圧力で加圧し、前記正極および本発明による負極を前記固体電解質に付着させた。
【0143】
初期クーロン効率評価中には、前記専用評価セルに16MPaの圧力で加圧した。
【0144】
ここで、初期クーロン効率は、最初の充電過程で、1mA/cmの定電流で3時間充電して合計3mAh/cmを充電した後、1mA/cmの定電流で放電し、放電電圧が1Vが超えた時点で放電を終了して放電容量を測定して計算した。
【0145】
二次電池の初期クーロン効率を評価した結果を図11および下記表1に示した。
【0146】
【表1】
【0147】
図8a、8b、10a、10bおよび表1を参照すると、集電体と保護層との間に金属層が形成されていない比較例1および比較例3によって製造された負極を適用した全固体電池は、それぞれ81.3%、92.3%の低い初期クーロン効率を示した。これから充電過程中に相当量のリチウムが初期不可逆反応に消耗されていることが確認でき、これは主に保護層内の非晶質炭素による不可逆反応によるものであると思われる。
【0148】
一方、電着メッキプロセスを通じて集電体と保護層との間に金属層を形成した実施例1および比較例2によって製造された負極を適用した二次電池は、それぞれ131.0%および138.2%の高い初期クーロン効果を示した。これは、金属層に含まれているリチウムおよびリチウム合金内の余剰リチウムにより、初期放電容量が充電容量より大きくなったと思われる。
【0149】
従って、本実施例と同じ方法で金属層が形成される負極を製造する場合、初期不可逆による放電容量が減少する問題が発生しないことが確認できる。
【0150】
(実験例4)
(実験例4-1)
実施例1および比較例1、2、3により製造された負極、即ちリチウム金属電極を利用して、図14のように全固体電池を製造した後、充放電特性を評価した。
【0151】
充放電評価に使用された全固体電池セルは、前記実験例3で使用した加圧型専用評価セルを使用した。
【0152】
充放電性能評価は次のように行った。
【0153】
1mA/cmの定電流で1時間充電し、1mA/cm定電流で1時間放電することを1サイクルと定義した。
【0154】
また、充放電寿命は、充放電過程で正極と本発明により製造された負極間に短絡が発生したり、両電極間の電圧が2Vが超える場合、寿命が終了するものと定義した。
【0155】
前記充放電性能を評価した結果を図12および下記表2に示した。
【0156】
【表2】
【0157】
図12および表2を参照すると、集電体と保護層との間に金属層が形成されていない比較例1および比較例3によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命は、それぞれ68回、220回であり、集電体と保護層との間に金属層が形成されている比較例2および実施例1によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命は、それぞれ292回、921回であることが分かった。即ち、集電体と保護層との間に金属層が形成されている負極を適用した全固体電池は、集電体と保護層との間に金属層が形成されていない負極を適用した全固体電池に比べて充放電寿命が著しく優れていることが確認できる。
【0158】
従って、集電体と保護層との間に金属層が形成された負極を適用するとき、二次電池の充放電寿命が著しく向上することが確認できる。
【0159】
また、集電体と保護層との間に金属層が形成されている比較例2と実施例1とを比較すると、保護層にセラミック粒子を含む実施例1によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命は、921回で、保護層にセラミック粒子を含まない比較例2によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命292回に比べて著しく優れていることが分かった。
【0160】
同様に、集電体と保護層との間に金属層が形成されていない比較例1と比較例3とを比較すると、保護層にセラミック粒子を含む比較例3によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命は220回で、保護層にセラミック粒子を含まない比較例1によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命68回に比べて著しく優れていることが分かった。
【0161】
従って、保護層にセラミック粒子を含む二次電池の充放電寿命が著しく向上することが確認できる。
【0162】
特に、集電体と保護層との間に金属層が形成されており、保護層にセラミック粒子を含む実施例1によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命は921回で、比較例1、2および3によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電寿命に比べて格段に優れていることが分かった。
【0163】
従って、本発明による、セラミック粒子を含む保護層と集電体との間に金属層を形成する負極を適用するとき、二次電池の充放電寿命を著しく向上させることができることが確認できる。
【0164】
(実験例4-2)
リチウムイオン伝導促進保護層製造時、非晶質炭素とリチウムイオン伝導促進セラミック粒子の重量比を変えた実施例2、3、4および参考例1によって製造された負極を適用した全固体電池の充放電特性を評価し、図13および下記表3に示した。
【0165】
【表3】
【0166】
図13および前記表3を参照すると、リチウムイオン伝導促進保護層内のリチウムイオン伝導促進セラミック粒子量が増加することによって、全固体電池の充放電寿命が増加した後、再び減少する傾向を示した。
【0167】
リチウムイオン伝導促進保護層に含まれるリチウムイオン伝導促進セラミック粒子と非晶質炭素の重量比が70:30である場合、100%非晶質炭素で構成された保護層を含む全固体電池より充放電寿命が短いことが分かった。
【0168】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術思想や本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施することができることを理解できるであろう。したがって、前記で説明した実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的ではないと理解されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】