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特表2024-540632ケミカルリサイクルPETの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ケミカルリサイクルPETの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20241024BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
C08G63/183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530437
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022018257
(87)【国際公開番号】W WO2023096269
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164913
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ポク、チャンスク
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェヨン
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA40
4F401BA06
4F401CA58
4F401CB01
4F401CB14
4F401DC01
4F401EA60
4F401EA65
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4J029AA03
4J029AB05
4J029AC01
4J029BA03
4J029BB06A
4J029BE07
4J029CB06A
4J029HD03
4J029KE02
4J029KE03
4J029KG01
4J029KG02
(57)【要約】
本発明は、ジカルボン酸化合物、およびジオール化合物を混合容器に供給し、ジカルボン酸-ジオールスラリーを得るステップと、BHETパウダーを溶融ドラムに供給し、溶融BHETを得るステップと、前記ジカルボン酸-ジオールスラリーおよび前記溶融BHETを重合反応器に供給し、エステル化反応を誘導するステップと、前記重合反応器の上部ストリームから残余エチレングリコールを回収するステップと、前記残余エチレングリコールを前記混合容器に供給するステップと;を含む、ケミカルリサイクルPETの製造工程に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸化合物、およびジオール化合物を混合容器に供給し、ジカルボン酸-ジオールスラリーを得るステップと、
BHETパウダーを溶融ドラムに供給し、溶融BHETを得るステップと、
前記ジカルボン酸-ジオールスラリーおよび前記溶融BHETを重合反応器に供給し、エステル化反応を誘導するステップと、
前記重合反応器の上部ストリームから残余エチレングリコールを回収するステップと、
前記残余エチレングリコールを前記混合容器に供給するステップと;を含む、ケミカルリサイクルPETの製造方法。
【請求項2】
前記溶融ドラムは、110℃乃至130℃の温度範囲下で前記BHETパウダーを溶融することを特徴とする、請求項1に記載のケミカルリサイクルPETの製造方法。
【請求項3】
前記重合反応器でのエステル化反応は、200℃乃至260℃の温度範囲および1bar乃至4barの圧力範囲下で行われることを特徴とする、請求項1に記載のケミカルリサイクルPETの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルリサイクルPETの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の消費量は年々増大している。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ビン容器、フィルム、繊維などの原料として多く用いられており、その中でも、ビン容器としての消費量の増加が顕著である。しかしながら、このようなPETなどのプラスチック製品は、使用後に環境で分解されないなど、環境的な問題によりリサイクルの必要性が持続的に強調されており、廃PET製品の回収率およびリサイクル率の向上のための努力が全世界的に持続している。
【0003】
PET製品のリサイクル方法としては、廃PETをフィジカルリサイクルおよびケミカルリサイクルとに区別してもよい。フィジカルリサイクルは、廃PET製品を洗浄、精製および分類、粉砕した後、改めて精製して分類し、不純物が除去されたフレークを生成し、引き続き、押出-ろ過ステップを経て再生PETを製造し、このように製造された再生PETをバージン(virgin)PETとの混合物として再使用しており、これにより新たなビン、繊維、フィルムなどの製品を生産している。しかし、このようなメカニカルリサイクル方法によって製造されたPETは、顔料などを含む有色PETに対しては適用することが困難であり、飲み物などの食品保管用の製品としては用いることができないなど、再生PETを含む場合には、その使用先に制限が伴われる。
【0004】
そこで、最近のところ、廃PETを解重合してBHET(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate)を製造し、これを原料として用いてPETを重合し、再生PETを製造するケミカルリサイクル方法に関する研究が行われている。前記PETのケミカルリサイクル方法の例として、中国公開特許第103132175号などには、ポリエステル廃棄物を金属触媒を利用して解重合する方法を提案する。
【0005】
ケミカルリサイクルを利用したリサイクルPETへの要求は持続しているが、バージン(virgin)PET製造工程にBHETを取り入れてバージン(virgin)PETに準ずる物性を有するリサイクルPETを製造するのに多くの困難性が存在していることから、関連研究開発の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケミカルリサイクルPETの製造工程を提供しようとする。具体的に、ケミカルリサイクルPETの製造の際、エステル化反応でのエチレングリコールをリサイクルし、ジカルボン酸-ジオールスラリーの流動性を確保して円滑なケミカルリサイクルPETの製造が可能な工程を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施様態は、ジカルボン酸化合物、およびジオール化合物を混合容器に供給し、ジカルボン酸-ジオールスラリーを得るステップと、
BHETパウダーを溶融ドラムに供給し、溶融BHETを得るステップと、
前記ジカルボン酸-ジオールスラリーおよび前記溶融BHETを重合反応器に供給し、エステル化反応を誘導するステップと、
前記重合反応器の上部ストリームから残余エチレングリコールを回収するステップと、
前記残余エチレングリコールを前記混合容器に供給するステップと;を含む、ケミカルリサイクルPETの製造工程を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施様態によるケミカルリサイクルPETの製造工程は、既存のPET製造設備を最大限活用することができ、工程過程でエチレングリコールを回収し、これをリサイクルしてジカルボン酸-ジオールスラリーの流動性を確保し、円滑なケミカルリサイクルPETの重合が可能な利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0010】
ケミカルリサイクルPET(chemically recycled PET、C-rPET)を製造するために、PETの解重合によって得られるリサイクルされたBHET(bis(2-hydroxylethyl)terephthalate)を利用するようになり、既存のバージンPET製造工場の量産ラインを改造するのが経済的である。しかし、OH作用基を含むBHETが添加されることで、バージンPET重合工程の原料投入量の調節が必要である。一例として、前記BHETはPET重合の原料であるPTA(terephthalic acid)およびEG(ethylene glycol)とともにエステル化反応および縮重合反応を通じてC-rPETが製造される。既存のPET製造工程にBHETが投入されるようになると、BHETが含むOH作用基によって原料内のOH/COOHモル比の均衡が合わなくなる。そのため、BHETを追加することに従ってOH/COOHモル比の均衡を合わせるためには、エチレングリコールの量を減少させる必要があるが、エチレングリコールの量が減少する場合、ジカルボン酸-ジオールスラリーの粘度が高くなり、エステル化反応器への移送が困難になる問題が発生する可能性がある。
【0011】
すなわち、PET重合工程は、液相重合工程に該当するES(Esterification)、PC(Polycondensation)工程、および固相重合工程に該当するSSP工程(Solid-state polymeriation)が順次行われてもよく、ケミカルリサイクルPETの製造のためのBHETの投入により、エステル化反応のために供給されるジカルボン酸-ジオールスラリーの粘度が高くなり、既存のPET製造設備を活用し難い問題が発生する可能性がある。
【0012】
このようなジカルボン酸-ジオールスラリーの流動性低下の問題を解決するために、本発明者らは、エステル化反応での生成物からエチレングリコールを回収し、これをジカルボン酸-ジオールスラリーに投入してジカルボン酸-ジオールスラリーの流動性を確保することで解決できることを明らかにした。
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
本発明の一実施様態は、ジカルボン酸化合物、およびジオール化合物を混合容器に供給し、ジカルボン酸-ジオールスラリーを得るステップと、
BHETパウダーを溶融ドラムに供給し、溶融BHETを得るステップと、
前記ジカルボン酸-ジオールスラリーおよび前記溶融BHETを重合反応器に供給し、エステル化反応を誘導するステップと、
前記重合反応器の上部ストリームから残余エチレングリコールを回収するステップと、
前記残余エチレングリコールを前記混合容器に供給するステップと;を含む、ケミカルリサイクルPETの製造工程を提供する。
【0015】
本発明の一実施様態によれば、前記ジカルボン酸化合物は、炭素数8乃至20の芳香族ジカルボン酸化合物および炭素数4乃至12の脂肪族ジカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。前記芳香族ジカルボン酸化合物は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびジフェニルジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであってもよい。また、前記脂肪族ジカルボン酸化合物は、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マイレン酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸およびアゼライン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであってもよい。具体的に、前記ジカルボン酸化合物は、テレフタル酸およびイソフタル酸のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施様態によれば、前記ジオール化合物は、炭素数8乃至40の芳香族ジオール化合物および炭素数2乃至12の脂肪族ジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。前記芳香族ジオール化合物は、ポリオキシエチレン-(a)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(b)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよびポリオキシプロピレン-(c)-ポリオキシエチレン-(d)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。ここで、前記(a)、(b)、(c)、(d)は、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン単位の個数を意味してもよい。また、前記脂肪族ジオール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオールおよびシクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。具体的に、前記ジオール化合物は、エチレングリコールおよびジエチレングリコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0017】
本発明によるケミカルリサイクルPETの製造工程は、既存PET製造設備を活用するので、既存PET製造工程におけるように混合容器でジカルボン酸化合物とエチレングリコールを混合してジカルボン酸-ジオールスラリーを得て、これを重合反応器に供給する。
【0018】
本発明の一実施様態によれば、前記BHETパウダーは、廃PETの解重合によって得られる。具体的に、前記BHETパウダーは、BHETを含む重合反応物であって、BHETの含量は25モル%乃至50モル%であってもよい。100モル%のBHETである場合、エステル化反応が必要でないので、既存PET製造工程を活用する本発明におけるケミカルリサイクルPETの製造工程に適合していないので、好ましくない。
【0019】
本発明によるケミカルリサイクルPETの製造工程は、既存PET製造設備を活用するので、バージンPET製造工程におけるようにエステル化(ES)反応および縮重合(PS)反応を順次行うようになる。エステル化反応および縮重合反応は液相重合工程であるので、既存のPET製造設備を最大限活用するためには、固相のBHETパウダーを液相化して重合反応器に供給する必要がある。従って、本発明は、固相のBHETパウダーを溶融するための溶融ドラムを追加し、液相である溶融BHETで重合反応器に供給する。
【0020】
本発明の一実施様態によれば、前記溶融ドラムは、110℃乃至130℃の温度範囲下で前記BHETパウダーを溶融してもよい。具体的に、前記溶融ドラムは、110℃乃至125℃の温度範囲下で前記BHETパウダーを溶融してもよい。前記温度範囲内で、前記BHETパウダーは福反応なく溶融状態で前記重合反応器に供給されてもよい。
【0021】
本発明の一実施様態によれば、前記重合反応器でエステル化反応による気相反応物からエチレングリコールを回収することができる。具体的に、前記重合反応器の上部ストリームを蒸溜器へ移送し、エチレングリコールを回収することができる。このように回収された残余エチレングリコールは、前記混合容器へ供給されてもよい。前記残余エチレングリコールは、高い粘度のジカルボン酸-ジオールスラリーの粘度を下げて前記重合反応器への流動を可能にすることができる。
【0022】
前述のように、BHETの投入により、OH/COOHモル比の均衡のための前記混合容器内でのジオール化合物、すなわち、エチレングリコールの量が減少されて、前記ジカルボン酸-ジオールスラリーの粘度は、既存PET製造設備内の移送管で円滑に流動しにくい可能性がある。本発明によるケミカルリサイクルPETの製造工程は、前記混合容器への前記残余エチレングリコールのリサイクリングを通じて、投入されるジカルボン酸化合物およびジオール化合物の割合を調節することなくても高くなったジカルボン酸-ジオールスラリーの粘度を20poise以下に下げて、前記重合反応器へ流動され得るようにすることができる。
【0023】
本発明の一実施様態によれば、前記重合反応器でのエステル化反応は、200℃乃至260℃の温度範囲および1bar乃至4barの圧力範囲下で行われてもよい。すなわち、本発明によるケミカルリサイクルPETの製造工程におけるエステル化反応は、250℃乃至300℃の温度範囲および1bar乃至2barの圧力範囲下で行われる既存のバージンPETの製造工程におけるエステル化反応条件に比べて低い温度範囲および高い圧力範囲の条件で調整されてもよい。
【0024】
本発明の一実施様態によれば、エステル化反応および縮重合反応は、チタニウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム係化合物、スズ係化合物またはそれらの混合物からなる群より選ばれる金属触媒の存在下で行われてもよい。前記触媒の含量は重合されるPET樹脂に対して中心金属原子を基準として1ppm乃至500ppmであってもよい。
【0025】
また、本発明の一実施様態によれば、エステル化反応および縮重合反応でリン系安定剤が用いられてもよい。具体的に、前記エステル化反応および縮重合反応でリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスホノアセテートまたはこれらの2以上の混合物からなる群より選ばれるリン系安定剤を投入してもよい。
【0026】
本発明の一実施様態によれば、前記エステル化反応でのジカルボン酸とジオールのモル比は、1:1.05乃至1:3.0、具体的に、1:1.05乃至1:1.3であってもよい。
【0027】
本発明の一実施様態によれば、前記縮重合反応は、250℃乃至330℃、具体的に、270℃乃至290℃の温度範囲下で行われてもよい。また、前記縮重合反応は、0.1torr乃至5torr、具体的に、0.5torr乃至2torrの圧力範囲下で行われてもよい。
【0028】
前述のように、本発明によるケミカルリサイクルPETの製造工程は、残余エチレングリコールを活用することで、既存のPET製造設備を利用してBHETを利用したケミカルリサイクルPETを製造してもよい。
【国際調査報告】