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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】心臓アブレーション病変の急性評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530447
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 US2022050578
(87)【国際公開番号】W WO2023096859
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,521
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516317447
【氏名又は名称】カーディオフォーカス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジロアード,スティーブン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ハグフォルス,クリスタ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ニール 二世,ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】カステルヴィ,キム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK16
4C160KK22
4C160KK30
(57)【要約】
心臓の疾患、特に不整脈、より具体的には心房細動の発生を治療するためのデバイス、システム及び方法が提供される。心房細動の治療では、治療用のパルス電場エネルギーは、組織修正を提供するために心臓の部分、特に肺静脈の入口に送達される。そのような組織修正により、異常な電気信号の伝達を防ぐために組織内で伝導ブロックとして機能する1つの病変または一連の病変が作成される。心臓脈管病変分析システム及び方法は、長期にわたって永続性があり、有効性があり続ける心臓内での電気的遮断を作り出すために、処置中の治療の有効性に関する情報を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓脈管病変分析システムであって、
心臓脈管病変の少なくとも一部の少なくとも1つの電圧値を測定するように構成された器具と、
前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の永続性を決定するために前記少なくとも1つの電圧値を評価するアルゴリズムであって、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部がパルス電場アブレーションによって作成される、前記アルゴリズムと、
前記永続性を伝達するフィードバックシステムと
を備える、前記システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電圧値が、少なくとも1つのアブレーション前電圧値と、少なくとも1つのアブレーション後電圧値とを含み、前記アルゴリズムが、前記少なくとも1つのアブレーション前電圧値と前記少なくとも1つのアブレーション後電圧値との間の前記差から代表的な電圧低下値を決定することによって前記少なくとも1つの電圧値を評価し、前記アルゴリズムが、前記代表的な電圧低下値に基づいて前記永続性の可能性を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルゴリズムが、前記代表的な低下値を、その値を超えると前記病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較して永続性を決定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、請求項2~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含み、前記アブレーション後電圧値が個々のアブレーション後電圧値の平均を含む、請求項2~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記代表的な電圧低下値が、前記アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、請求項3~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記閾値電圧低下値が89%である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、請求項3~9に記載のシステム。
【請求項11】
前記閾値電圧低下値がベースライン電圧値に依存する、請求項3~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対して離散的なステップで変化する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対して連続的に変化する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記閾値電圧低下値が信頼水準とともに変化する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィードバックシステムが、経時的に変化する連続変数として前記永続性を伝達する、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記連続変数が電圧のパーセント低下として伝達される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記フィードバックシステムが、電圧の目標パーセント低下をさらに伝達する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記器具、前記アルゴリズム、及び/または前記フィードバックシステムのいずれかが電気解剖マッピングシステムと一体化している、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記フィードバックシステムが、前記電気解剖マッピングシステムによって提供される既存の視覚マップと統合される、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記フィードバックシステムが、アラートを提供することによって前記永続性を伝達する、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記アラートが視覚アラートを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示すカラーコードを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示す少なくとも1つの文字、単語、数字、及び/または記号を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記アラートが聴覚アラートを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記アラートがバイナリである、請求項21~24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記アラートが漸次変色される、請求項21~24のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前記フィードバックシステムが、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の解剖学的位置を示すマップを含む、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記フィードバックシステムが、前記マップ上の前記解剖学的位置にある前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部分の前記永続性の指標を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記フィードバックシステムが、前記器具が移動するにつれ、リアルタイムでユーザーに前記永続性を伝達する、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項30】
前記器具が前記パルス電場エネルギーを送達するように構成される、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
前記器具が、前記パルス電場エネルギーが送達される電極を備え、前記電極が、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部を作成するために、組織に対してまたは組織に隣接して配置されるように構成される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部が、前記組織に対してまたは隣接して前記電極を単回適用することから形成され、前記アルゴリズムが、前記電極の次の単回適用の位置を決定する、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記電極の前記次の単回適用の前記位置が、前記電極の前記単回適用から形成された前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部と重なる、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記電極の前記次の単回適用の前記位置が、死滅ゾーン間に気絶ゾーンの十分な重なりを提供して、連続した永続性のある病変を形成する、請求項32~33のいずれかに記載のシステム。
【請求項35】
前記パルス電場エネルギーが前記心臓脈管病変の細胞外マトリックスを無傷のまま残す、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項36】
前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、先行請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項37】
病変の配置を決定するシステムであって、
病変を生成するために心臓脈管組織に向けてパルス電場エネルギーを送達するように構成された電極を有するカテーテルであって、第1の病変が、第1の位置にある前記心臓脈管組織に向けて前記パルス電場エネルギーを送達することによって生成される、前記カテーテルと、
前記第1の病変の決定された永続性に基づいて第2の病変の第2の位置を決定するアルゴリズムと、
前記第2の位置を伝達するフィードバックシステムと
を備える、前記システム。
【請求項38】
前記第1の病変の前記決定された永続性が、代表的な低下値を、その値を超えると前記第1の病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較することによって、前記アルゴリズムによって生成される、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記代表的な電圧低下値が、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値との差として計算される、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含み、前記アブレーション後電圧値が個々のアブレーション後電圧値の平均を含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記代表的な電圧低下値が、前記アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、請求項39~42のいずれかに記載のシステム。
【請求項44】
前記閾値電圧低下値が89%である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、請求項43~45のいずれかに記載のシステム。
【請求項47】
前記心臓脈管組織の前記インピーダンスが、熱アブレーションによって生成されるインピーダンスに対応する閾値未満のままとなる、請求項37~46のいずれかに記載のシステム。
【請求項48】
前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、請求項37~47のいずれかに記載のシステム。
【請求項49】
心臓脈管病変分析システムであって、
少なくとも1つの電極を有するカテーテルと、
前記カテーテルと接続可能なパルス電場発生器であって、前記パルス電場発生器が、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つを通して心臓脈管組織の領域に少なくとも1回分のパルス電場エネルギーを送達して病変を作成し、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つを通る心臓脈管病変の少なくとも一部の少なくとも1つの電圧値を測定するように構成されたアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムが、前記少なくとも1つの電圧値を使用して前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の永続性を決定する、前記パルス電場発生器と
を備える、前記システム。
【請求項50】
前記少なくとも1つの電圧値が代表的な電圧低下値を含み、前記アルゴリズムが、前記代表的な低下値を、その値を超えると前記病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較して永続性を決定する、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記代表的な電圧低下値が、アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記閾値電圧低下値が89%である、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、請求項51に記載のシステム。
【請求項54】
前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、請求項51~53のいずれかに記載のシステム。
【請求項55】
前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含む、任意の請求項51~53に記載のシステム。
【請求項56】
前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、請求項50~56のいずれかに記載のシステム。
【請求項58】
前記パルス電場エネルギーが前記心臓脈管病変の細胞外マトリックスを無傷のまま残す、請求項49~57のいずれかに記載のシステム。
【請求項59】
前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、請求項49~58のいずれかに記載のシステム。
【請求項60】
前記アルゴリズムが、前記心臓脈管の組織の領域を含む視覚マップに前記永続性を提供する、請求項49~59のいずれかに記載のシステム。
【請求項61】
前記視覚マップが電気解剖マッピングシステムによって提供される、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記視覚マップが、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の解剖学的位置を示す、請求項60~61のいずれかに記載のシステム。
【請求項63】
前記フィードバックシステムが、前記マップ上の前記解剖学的位置にある前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部分の前記永続性の指標を含む、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記アルゴリズムがアラートとして前記永続性を提供する、請求項49~63のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月23日に出願され、「Acute Assessment of Cardiac Ablation Lesions」と題する米国特許出願第63/282521号の優先権及び利益を主張し、その開示はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
治療エネルギーは、(特に血管形成術後の再狭窄の予防における)アテローム性動脈硬化症及び心房細動を含む様々な症状の治療のために心臓及び血管系に適用できる。心房細動は最も一般的な持続性心不整脈であり、特に脳卒中を引き起こすことによって、罹患患者の死亡リスクを大幅に高める。この現象では、誤った電気刺激の発生により心臓が正常な洞調律から外れる。心房細動は、肺静脈(PV)の心筋組織内の細胞に自動性が存在するため、PVの心筋スリーブで開始すると考えられている。これらの細胞のペースメーカー活動により、心房細動を起こす異所性収縮が形成されると考えられている。PVはまた、その無秩序な構造及び電気生理学的特性により、心房細動が持続する環境を提供するため、心房細動の維持に重要であると考えられている。したがって、PVの心筋スリーブ内でこれらの異常なペースメーカー細胞を破壊または除去することが目標であり、心房細動は、多くの場合、肺静脈に治療エネルギーを送達することによって治療される。しかし、PV狭窄の報告により、この手法は、PVと左心房の間に伝導ブロックを達成するためにPV洞を標的とする方法に従来修正されてきた。PV洞は、肺静脈に加えて、左心房の天井及び後壁を包含し、右肺静脈洞の場合は、心房中隔の一部を包含する。いくつかの例では、この技術は肺静脈口隔離術に比べて高い成功率及び低い合併症率を提供する。
【0003】
熱アブレーション療法、特に高周波(RF)アブレーションは、現在、局所組織壊死による心房細動の治療における「絶対的基準」である。通常、RFアブレーションは、4つの肺静脈のそれぞれの口の外側の周りにアブレーション病変のリングを作成させるために使用される。RF電流は局所的な熱領域を作り出すことによって組織の乾燥を引き起こし、その結果、個別の凝固壊死を生じさせる。壊死した組織は、伝導ブロックとして機能し、それによって静脈を電気的に絶縁する。
【0004】
利用可能な方法を使用して洞調律を回復する技術は改善されているにも関わらず、成功率と安全性の両方はこれらの処置の熱的性質により制限されている。合併症は、いくつか例を挙げると、肺静脈狭窄、横隔膜神経損傷、食道損傷、房食道瘻、食道周囲迷走神経損傷、穿孔、血栓塞栓症、血管合併症、及び急性冠動脈閉塞を含む。したがって、技術を臨床診療に保ちながら、パルス電場療法(PEF)など、異常な組織を除去または置換するためのより安全で用途の広い方法が使用されてきた。しかしながら、PEF療法は組織に異なる細胞効果を与えるため、組織は、RFアブレーションを受けるときとは異なった反応を示す。最も注目すべきことに、PEF治療を受けた細胞によって、細胞内及び細胞外の濃度勾配を維持する能力が変わった。これにより細胞死が生じ、創傷治癒に匹敵する線維形成効果が引き起こされるか、または細胞は数分から数時間、またはそれ以上の時間をかけて回復できる。両方の場合とも、心筋細胞などの興奮性組織が活動電位を伝導する能力は、少なくとも当初は損なわれ、細胞は非興奮性にされる。残念なことに、細胞のどの領域がこの欠陥を維持するのかを判断することは容易に検出可能ではない。治療PEF処置時に、一時的な効果として電気伝導及び収縮性の変化を経験している組織と、数秒から数十時間にかけて、壊死またはプログラムされた細胞死を介して究極的に死ぬ組織を区別することはできない。結果的に、医師がアブレーション処置を通して監視するRFエネルギーに基づいた従来の手がかりはほとんど適用不可であり、異常な電気リズムの不完全なブロックなど、誤解を招く急性の結果及び劣悪な慢性結果につながる可能性がある。急性アブレーションの成功の判断は、すべてのアブレーション方法を用いた心不整脈の治療にとって依然として困難な問題のままである。患者の不整脈からの長期の解放に関する複数の臨床試験のデータは、初期処置中に効果のない治療を受けている患者の割合が高いことを確認している。早期の心房細動の再発率は依然として50~70%の範囲である。アブレーション処置中の病変の永続性及び処置の成功を予測するためのより優れた技術を確立する必要がある。これらの目的の少なくとも一部は、本明細書で説明するシステム、デバイス、及び方法によって達成される。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、標的組織、特に心臓組織を治療するための装置、システム、及び方法の実施形態を説明する。同様に、本発明は、以下の番号を付した条項に関する。
【0006】
条項1.心臓脈管病変分析システムであって、
心臓脈管病変の少なくとも一部の少なくとも1つの電圧値を測定するように構成された器具と、
前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の永続性を決定するために前記少なくとも1つの電圧値を評価するアルゴリズムであって、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部がパルス電場アブレーションによって作成される、前記アルゴリズムと、
前記永続性を伝達するフィードバックシステムと
を備える、前記システム。
【0007】
条項2.前記少なくとも1つの電圧値が、少なくとも1つのアブレーション前電圧値と、少なくとも1つのアブレーション後電圧値とを含み、前記アルゴリズムが、前記少なくとも1つのアブレーション前電圧値と前記少なくとも1つのアブレーション後電圧値との間の前記差から代表的な電圧低下値を決定することによって前記少なくとも1つの電圧値を評価し、前記アルゴリズムが、前記代表的な電圧低下値に基づいて前記永続性の可能性を決定する、条項1に記載のシステム。
【0008】
条項3.前記アルゴリズムが、前記代表的な低下値を、その値を超えると前記病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較して永続性を決定する、条項2に記載のシステム。
【0009】
条項4.前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、条項2~3のいずれかに記載のシステム。
【0010】
条項5.前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含み、前記アブレーション後電圧値が個々のアブレーション後電圧値の平均を含む、条項2~4のいずれかに記載のシステム。
【0011】
条項6.前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、条項5に記載のシステム。
【0012】
条項7.前記代表的な電圧低下値が、前記アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、条項3~6のいずれかに記載のシステム。
【0013】
条項8.前記閾値電圧低下値が89%である、条項7に記載のシステム。
【0014】
条項9.前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、条項7に記載のシステム。
【0015】
条項10.前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、条項3~9に記載のシステム。
【0016】
条項11.前記閾値電圧低下値がベースライン電圧値に依存する、条項3~10のいずれかに記載のシステム。
【0017】
条項12.前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対して離散的なステップで変化する、条項11に記載のシステム。
【0018】
条項13.前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対して連続的に変化する、条項11に記載のシステム。
【0019】
条項14.前記閾値電圧低下値が信頼水準とともに変化する、条項11に記載のシステム。
【0020】
条項15.前記フィードバックシステムが、経時的に変化する連続変数として前記永続性を伝達する、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0021】
条項16.前記連続変数が電圧のパーセント低下として伝達される、条項15に記載のシステム。
【0022】
条項17.前記フィードバックシステムが、電圧の目標パーセント低下をさらに伝達する、条項16に記載のシステム。
【0023】
条項18.前記器具、前記アルゴリズム、及び/または前記フィードバックシステムのいずれかが電気解剖マッピングシステムと一体化している、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0024】
条項19.前記フィードバックシステムが、前記電気解剖マッピングシステムによって提供される既存の視覚マップと統合される、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0025】
条項20.前記フィードバックシステムが、アラートを提供することによって前記永続性を伝達する、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0026】
条項21.前記アラートが視覚アラートを含む、条項20に記載のシステム。
【0027】
条項22.前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示すカラーコードを含む、条項21に記載のシステム。
【0028】
条項23.前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示す少なくとも1つの文字、単語、数字、及び/または記号を含む、条項21に記載のシステム。
【0029】
条項24.前記アラートが聴覚アラートを含む、条項21に記載のシステム。
【0030】
条項25.前記アラートがバイナリである、条項21~24のいずれかに記載のシステム。
【0031】
条項26.前記アラートが漸次変色される、条項21~24のいずれかに記載のシステム。
【0032】
条項27.前記フィードバックシステムが、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の解剖学的位置を示すマップを含む、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0033】
条項28.前記フィードバックシステムが、前記マップ上の前記解剖学的位置にある前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部分の前記永続性の指標を含む、条項27に記載のシステム。
【0034】
条項29.前記フィードバックシステムが、前記器具が移動するにつれ、リアルタイムでユーザーに前記永続性を伝達する、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0035】
条項30.前記器具が前記パルス電場エネルギーを送達するように構成される、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0036】
条項31.前記器具が、前記パルス電場エネルギーが送達される電極を備え、前記電極が、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部を作成するために、組織に対してまたは組織に隣接して配置されるように構成される、条項30に記載のシステム。
【0037】
条項32.前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部が、前記組織に対してまたは隣接して前記電極を単回適用することから形成され、前記アルゴリズムが、前記電極の次の単回適用の位置を決定する、条項31に記載のシステム。
【0038】
条項33.前記電極の前記次の単回適用の前記位置が、前記電極の前記単回適用から形成された前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部と重なる、条項32に記載のシステム。
【0039】
条項34.前記電極の前記次の単回適用の前記位置が、死滅ゾーン間に気絶ゾーンの十分な重なりを提供して、連続した永続性のある病変を形成する、条項32~33のいずれかに記載のシステム。
【0040】
条項35.前記パルス電場エネルギーが前記心臓脈管病変の細胞外マトリックスを無傷のまま残す、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0041】
条項36.前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、先行条項のいずれかに記載のシステム。
【0042】
条項37.病変の配置を決定するシステムであって、
病変を生成するために心臓脈管組織に向けてパルス電場エネルギーを送達するように構成された電極を有するカテーテルであって、第1の病変が、第1の位置にある前記心臓脈管組織に向けて前記パルス電場エネルギーを送達することによって生成される、前記カテーテルと、
前記第1の病変の決定された永続性に基づいて第2の病変の第2の位置を決定するアルゴリズムと、
前記第2の位置を伝達するフィードバックシステムと
を備える、前記システム。
【0043】
条項38.前記第1の病変の前記決定された永続性が、代表的な低下値を、その値を超えると前記第1の病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較することによって、前記アルゴリズムによって生成される、条項37に記載のシステム。
【0044】
条項39.前記代表的な電圧低下値が、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値との差として計算される、条項38に記載のシステム。
【0045】
条項40.前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、条項39に記載のシステム。
【0046】
条項41.前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含み、前記アブレーション後電圧値が個々のアブレーション後電圧値の平均を含む、条項39に記載のシステム。
【0047】
条項42.前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、条項41に記載のシステム。
【0048】
条項43.前記代表的な電圧低下値が、前記アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、条項39~42のいずれかに記載のシステム。
【0049】
条項44.前記閾値電圧低下値が89%である、条項43に記載のシステム。
【0050】
条項45.前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、条項43に記載のシステム。
【0051】
条項46.前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、条項43~45のいずれかに記載のシステム。
【0052】
条項47.前記心臓脈管組織の前記インピーダンスが、熱アブレーションによって生成されるインピーダンスに対応する閾値未満のままとなる、条項37~46のいずれかに記載のシステム。
【0053】
条項48.前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、条項37~47のいずれかに記載のシステム。
【0054】
条項49.心臓脈管病変分析システムであって、
少なくとも1つの電極を有するカテーテルと、
前記カテーテルと接続可能なパルス電場発生器であって、前記パルス電場発生器が、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つを通して心臓脈管組織の領域に少なくとも1回分のパルス電場エネルギーを送達して病変を作成し、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つを通る心臓脈管病変の少なくとも一部の少なくとも1つの電圧値を測定するように構成されたアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムが、前記少なくとも1つの電圧値を使用して前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の永続性を決定する、前記パルス電場発生器と
を備える、前記システム。
【0055】
条項50.前記少なくとも1つの電圧値が代表的な電圧低下値を含み、前記アルゴリズムが、前記代表的な低下値を、その値を超えると前記病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較して永続性を決定する、条項49に記載のシステム。
【0056】
条項51.前記代表的な電圧低下値が、アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、条項50に記載のシステム。
【0057】
条項52.前記閾値電圧低下値が89%である、条項51に記載のシステム。
【0058】
条項53.前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、条項51に記載のシステム。
【0059】
条項54.前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、条項51~53のいずれかに記載のシステム。
【0060】
条項55.前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含む、任意の条項51~53に記載のシステム。
【0061】
条項56.前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、条項55に記載のシステム。
【0062】
条項57.前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、条項50~56のいずれかに記載のシステム。
【0063】
条項58.前記パルス電場エネルギーが前記心臓脈管病変の細胞外マトリックスを無傷のまま残す、条項49~57のいずれかに記載のシステム。
【0064】
条項59.前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、条項49~58のいずれかに記載のシステム。
【0065】
条項60.前記アルゴリズムが、前記心臓脈管の組織の領域を含む視覚マップに前記永続性を提供する、条項49~59のいずれかに記載のシステム。
【0066】
条項61.前記視覚マップが電気解剖マッピングシステムによって提供される、条項60に記載のシステム。
【0067】
条項62.前記視覚マップが、前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部の解剖学的位置を示す、条項60~61のいずれかに記載のシステム。
【0068】
条項63.前記フィードバックシステムが、前記マップ上の前記解剖学的位置にある前記心臓脈管病変の前記少なくとも一部分の前記永続性の指標を含む、条項62に記載のシステム。
【0069】
条項64.前記アルゴリズムがアラートとして前記永続性を提供する、条項49~63のいずれかに記載のシステム。
【0070】
条項65.前記アラートが視覚アラートを含む、条項64に記載のシステム。
【0071】
条項66.前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示すカラーコードを含む、条項65に記載のシステム。
【0072】
条項67.前記視覚アラートが、永続性または永続性のレベルを示す少なくとも1つの文字、単語、数字、及び/または記号を含む、条項65に記載のシステム。
【0073】
条項68.前記アラートが聴覚アラートを含む、条項64に記載のシステム。
【0074】
条項69.前記アラートがバイナリである、条項64~68のいずれかに記載のシステム。
【0075】
条項70.前記アラートが漸次変色される、条項64~68のいずれかに記載のシステム。
【0076】
条項71.患者の心臓脈管組織における病変の永続性を評価する方法であって、
前記心臓脈管組織の領域に少なくとも1回分のパルス電場エネルギーを送達して病変を作成することと、
前記病変の代表的な電圧低下値を決定することと、
前記代表的な電圧低下値を、その値を超えると前記病変が永続性があると見なされる閾値電圧低下値と比較することによって前記病変の永続性を決定することと
を含む、前記方法。
【0077】
条項72.前記代表的な電圧低下値が、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値との差として計算される、条項71に記載の方法。
【0078】
条項73.前記アブレーション前電圧値が少なくとも0.1ボルトである、条項72に記載の方法。
【0079】
条項74.前記アブレーション前電圧値が、個々のアブレーション前電圧値の平均を含み、前記アブレーション後電圧値が個々のアブレーション後電圧値の平均を含む、条項72に記載の方法。
【0080】
条項75.前記個々のアブレーション前電圧値のそれぞれが少なくとも0.1ボルトである、条項74に記載の方法。
【0081】
条項76.前記代表的な電圧低下値が、前記アブレーション前電圧値のパーセンテージとして表される、条項71に記載の方法。
【0082】
条項77.前記閾値電圧低下値が89%である、条項76に記載の方法。
【0083】
条項78.前記閾値電圧低下値が89~100%の範囲内にある、条項76に記載の方法。
【0084】
条項79.前記閾値電圧低下値が、少なくとも95%の信頼水準を有する、条項71に記載の方法。
【0085】
条項80.前記病変が全体的な病変の一部を含む、条項71に記載の方法。
【0086】
条項81.前記全体的な病変がリング形状を有する、条項80に記載の方法。
【0087】
条項82.前記リング形状が、肺静脈への少なくとも1つの入口を取り囲む、条項81に記載の方法。
【0088】
条項83.前記全体的な病変が直線形状を有する、条項80に記載の方法。
【0089】
条項84.前記直線形状が大静脈三尖弁峡部線を形成する、条項83に記載の方法。
【0090】
条項85.少なくとも1回分のパルス電場エネルギーを送達することが、前記心臓脈管組織の前記領域の近くにまたは前記領域に対して電極を配置することによって達成される、条項71に記載の方法。
【0091】
条項86.前記電極が、少なくとも10グラムの接触力で前記領域に対して配置される、条項85に記載の方法。
【0092】
条項87.前記電極が、前記病変が円盤形状を有するように、前記心臓脈管組織の前記領域の近くにまたは前記領域に対して配置可能な連続した固体表面を有する、条項85に記載の方法。
【0093】
条項88.前記代表的な低下値が前記閾値電圧低下値を下回る場合に、前記病変に少なくとも1回分の追加のパルス電場エネルギーを送達することをさらに含む、条項71に記載の方法。
【0094】
条項89.前記決定するステップが、前記送達するステップの約30分以内に達成される、条項71に記載の方法。
【0095】
条項90.前記パルス電場エネルギーが、前記心臓脈管組織内で凝固熱損傷を誘発するための閾値を下回る、条項71に記載の方法。
【0096】
条項91.前記パルス電場エネルギーが一連のパケットを含み、各パケットが二相パルスを含む、条項71に記載の方法。
【0097】
条項92.各パケットが最大1秒の長さを有する、条項90に記載の方法。
【0098】
条項93.前記閾値電圧低下値がベースライン電圧値に依存する、条項71に記載の方法。
【0099】
条項94.前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対して連続的に変化する、条項93に記載の方法。
【0100】
条項95.前記閾値電圧低下値が、前記ベースライン電圧値に対してステップで変化する、条項93に記載の方法。
【0101】
条項96.前記閾値低下が信頼水準に依存する、条項93に記載の方法。
【0102】
条項97.前記閾値電圧低下値が、電圧低下閾値曲線から決定される、条項71に記載の方法。
【0103】
条項98.患者の心臓脈管組織に永続性のある病変を生成する方法であって、
前記心臓脈管組織の領域に1回分のパルス電場エネルギーを送達することと、
前記1回分を送達した後に前記心臓脈管組織の前記領域の電圧低下値を決定することと、
前記電圧低下値が、前記永続性のある病変を形成する少なくとも89%となるまで、前記心臓脈管組織の前記領域に1回分以上の追加分のパルス電場エネルギーを送達することと
を含む、前記方法。
【0104】
条項99.前記電圧低下値を決定することが、
前記1回分の前記電圧低下値を前記送達する前に、前記心臓脈管組織の前記領域内で代表的なアブレーション前電圧値を決定することと、
前記1回分の前記電圧低下値を前記送達した後に、前記心臓脈管組織の前記領域内で代表的なアブレーション後電圧値を決定することと、
前記代表的なアブレーション前電圧値と前記代表的なアブレーション後電圧値との差を計算することと
を含む、条項98に記載の方法。
【0105】
条項100.前記代表的なアブレーション前値が少なくとも0.1mVである、条項99に記載の方法。
【0106】
条項101.前記代表的なアブレーション前電圧値が、アブレーション前電圧値の平均を含む、及び/または前記代表的なアブレーション後電圧値がアブレーション後電圧値の平均を含む、条項99に記載の方法。
【0107】
条項102.前記永続性のある病変が複数の重複する線量を含む、条項98に記載の方法。
【0108】
これら及び他の実施形態は、添付の図面に関連した以下の説明でさらに詳しく説明する。
【0109】
参照による組み込み
この本明細書に記述されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
図面中、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないが、同様の数字が、異なる図の同様のコンポーネントを説明する場合がある。異なる文字の接尾辞を有する同様の数字は、類似したコンポーネントの異なる例を表す場合がある。図面は、本明細書で説明する様々な実施形態を、限定ではなく例として一般的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1】組織修正システムの一実施形態を示す。
図2】同様の組織修正システムの概略図を提供する。
図3】治療カテーテルを使用してポイントごとに組織を治療する実施例を示す。
図4】死滅ゾーンと気絶ゾーンを有する病変を示す。
図5】左上肺静脈と左下肺静脈の周りに形成された、セクションに分割された病変の連続リングを示す。
図6A】表1の患者の電圧マップを示す。
図6B】表1の患者の電圧マップを示す。
図6C】表1の患者の電圧マップを示す。
図7A】例示的なベースライン電圧値とともに変化する、例示的な所望の電圧低下値の閾値を示す。
図7B】例示的なベースライン電圧値とともに変化する、例示的な所望の電圧低下値の閾値を示す。
図7C】例示的なベースライン電圧値とともに変化する、例示的な所望の電圧低下値の閾値を示す。
図8】信頼水準を含む例示的なベースライン電圧値とともに変化する、例示的な所望の電圧低下値の閾値を視覚的な図を提供する。
図9】エネルギー送達アルゴリズムによって規定される信号の波形の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
心臓の疾患、特に不整脈、より具体的には心房細動の発生を治療するためのデバイス、システム及び方法が提供される。デバイス、システム、及び方法は、心房細動の治療において組織修正を行うために心臓の部分、特に肺静脈の入口に治療エネルギーを送達する。そのような組織修正により、異常な電気信号の伝達を防ぐために組織内で伝導ブロックとして機能する1つの病変または一連の病変が作成される。一般に、組織修正システムは、特殊治療カテーテルと、高圧波形発生器と、少なくとも1つの異なるエネルギー送達アルゴリズムとを含む。特に電気解剖マッピング(EAM)システムなど、追加の付属品及び機器も利用される。EAMシステムによって、オペレータは、心臓の解剖学的形状を生成し、測定された電気信号メトリック(強度、遠隔刺激からの信号到着の遅延など)を取り込むことによって心臓内の特定の解剖学的位置に関して心臓内電気活性化を記録することが可能になる。したがって、EAM技術によって、人は、不整脈の発生場所を正確に決定し、心室の形状を三次元で画定し、解剖学的に重要な領域を描写し、蛍光透視鏡の誘導なしにカテーテルの操作及び位置決めすることが可能になる。さらに、本明細書に説明するデバイス、システム、及び方法は、長期にわたって永続性があり、有効性があり続ける心臓内での電気的遮断を作り出すために、処置中の治療の有効性に関する情報を提供する。いくつかの例では、本明細書で説明するデバイス、システム、及び方法は、いくつか例を挙げると、単一の病変内(例えば、病変内の異なる治療効果のゾーンを識別して、次にその病変を利用して追加の病変をどこに作成するのかを決定するため)、単一の病変内(例えば、単一の病変が経時的に永続性があり続ける可能性があるかどうかを識別するため)、または連続した一連の病変内(例えば、病変間のギャップ、または病変の経路もしくは遮断に沿った不十分な領域を特定するため)でなどの所望の特性のレベルで標的組織の特性を評価する。そのようなデバイス、システム、及び方法は、EAM技術によって提供される機能を少なくとも部分的に利用し得る。いくつかの例では、EAM情報はマッピングカテーテルを使用して生成され、他の例では、これは、特殊治療カテーテルに組み込まれる技術によって達成される。説明を容易にするために、技術を特殊治療カテーテルに組み込んだ実施形態が提供されるが、そのように限定されない。
【0113】
図1は、組織修正システム100の一例を示す。本実施形態では、組織修正システム100は、特殊カテーテル102と、高電圧波形発生器108と、少なくとも1つの異なるエネルギー送達アルゴリズム152とを含む。本実施形態では、発生器108は、ユーザーインターフェース150と、1つ以上のエネルギー送達アルゴリズム152と、プロセッサ154と、データ格納/取得ユニット156(メモリ及び/またはデータベースなど)と、送達されるエネルギーを生成して貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンデンサがエネルギー貯蔵/送達に使用されるが、任意の他の適切なエネルギー貯蔵要素が使用されてもよい。さらに、1つ以上の通信ポートが含まれる。本実施形態では、外部心臓モニタ110が含まれ、患者Pに適用されてECGを取得する外部電極172に接続される。本実施形態では、治療カテーテル102は単極となるように設計されており、カテーテル102の遠位端は少なくとも1つの送達電極を有し、戻り電極106は体の外側の皮膚の上、通常は、太腿部、腰部、または背中に配置される。本実施形態では、心臓Hは、セルジンガー法などの適切なアクセス処置によって右大腿静脈FVを介してアクセスされる。通常、導入器シース112は、治療カテーテル102を含む様々なカテーテル及び/またはツールが前進し得る導管として機能する大腿静脈FVに挿入される。カテーテル102の遠位端は、下大静脈を通して、右心房を通して、経中隔穿刺を介して左心房まで進められて、肺静脈の入口にアクセスする。本実施形態では、カテーテル102は、特定の心調律の間の心筋電位の時間的及び空間的な分布を識別するプロセスを指す心臓マッピングを行うために使用される。異常な心調律の間の心臓マッピングは、心調律のメカニズムの解明、関心領域内での活性化の開始から完了までの伝搬の記述、及び治療の標的として機能するための発生部位または重要な伝導部位の特定を目的とする。所望の治療箇所が特定されると、カテーテル102は、治療エネルギーが送達するために使用される。
【0114】
本明細書で説明する実施形態は、遠位面が連続面を有する円筒形の形状を有する「固体先端」電極として示される送達電極122を備えたカテーテル102を含む。いくつかの実施形態では、円筒形状は、約2~3mmの遠位面の直径、約1mm、2mm、1~2mm、3mm、4mm、3~4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmなどのシャフト120に沿った長さを有する。そのような電極は典型的には中空であるが、視覚的な外観のため中実と呼ばれることを理解されたい。同様に、そのような電極は、灌注の流れ及び/または機械的柔軟性のために穴を含み得る。エネルギーは、発生器108に接続可能であるケーブル130を介してカテーテル102に提供され、したがって送達電極122に提供される。エネルギーは、円形の治療ゾーンを作り出すために肺静脈の周りに、またはラインに沿ってなど、ポイントごとにエネルギーを繰り返し適用するなど、順々に送達される。これは、「標的局所療法」と見なされる。様々な他のカテーテル102の設計が利用され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、「ワンショット」療法を行うように設計されている。ワンショット療法は、エネルギーが、送達電極を介して、肺静脈の入口の全周に「ワンショット」の1回限りのエネルギーの送達で送達される療法であると見なされるが、そのような送達は、所望される場合、繰り返し得る。したがって、電極122は、多くの場合、ループ状または花形状を有する。電極122は任意選択で再適用し得、所望される場合、「ショット」間で電極122を回転させ得る。
【0115】
標的局所療法を提供するように構成されたエネルギー送達カテーテル102の追加の例示的な実施形態は、2017年12月26日に出願された仮特許出願第62/610,430号及び2018年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/693,622号に対する優先権を主張する、国際特許出願第PCT/US2018/067504号、「OPTIMIZATION OF ENERGY DELIVERY FOR VARIOUS APPLICATIONS」に記載されており、このすべてはあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。別の実施例として、いくつかの実施形態では、エネルギー送達カテーテル102は、すべてがあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる2021年3月10日に出願された「DEVICES FOR THE DELIVERY OF PULSED ELECTRIC FIELDS IN THE TREATMENT OF CARDIAC TISSUE」と題された仮特許出願63/159,331による様々なエンドエフェクタを有し得る。同様に、治療エネルギーは、様々なカテーテル設計で、任意選択で、例えば、2019年12月18日に出願された仮特許出願第62/949,633号、2020年3月26日に出願された仮特許出願第63/000,275号、及び2020年9月25日に出願された仮特許出願第63/083,644号に対する優先権を主張する、2020年12月18日に出願された「TREATMENT OF CARDIAC TISSUE WITH PULSED ELECTRIC FIELDS」と題された国際特許出願第PCT/US2020/066205号による様々な付属品を使用して送達され得、このすべてはあらゆる目的で参照により組み込まれる。
【0116】
図1の実施形態では、治療カテーテル102の近位端は、波形発生器108と、例えば、電気解剖マッピング処置を提供する機能を有する装置(例えば、CARTO(登録商標)システム、EnSite(商標)システム、RHYTHMIA HDX(商標)システム、KODEX-EPDシステム、AcQMap(商標)システムなど)などの別個の外部デバイス12と電気的に接続されたインターフェースコネクタ10に電気的に接続される。インターフェースコネクタ10は、心臓治療カテーテルの接点(例えば、電極、センサなど)に接続された様々な機器間のあらゆる干渉可能性を最小限に抑える。しかし、いくつかの実施形態では、治療カテーテル102が発生器108、外部デバイス12、及び/または他のデバイスに直接的に接続されていることを理解されたい。さらに、本実施形態では、発生器108は外部心臓モニタ110と接続されて、患者Pから検知された心臓信号との協調したエネルギーの送達を可能にする。
【0117】
いくつかの例では、インターフェースコネクタ10は、ケーブルを使用して、例えば電気解剖マッピングシステムの患者インターフェースユニットなど電気解剖マッピングシステムに直接的に接続されることを理解されたい。ただし、他の実施形態では、インターフェースコネクタ10が、図2に示すように、次に専用ケーブルなどを使用して電気解剖マッピングシステムに接続されるピンボックス、ブレークアウトボックス、入出力ボックス、ジャンクションボックス、またはその他の入力モジュール171に接続されることも理解されたい。専用ケーブルによって、マルチケーブルラインは、ピンボックスのレセプタクルに挿入可能である個々のコンポーネントコネクタまたはチップピン内に広がる。これにより、各電極への個別のアクセスが可能になる。次に、ピンボックスは電気解剖マッピングシステムに接続する。また、インターフェースコネクタ10が、別個のピンボックスを排除するためにピンボックスの機能を含み得ることも理解されたい。したがって、インターフェースコネクタ10は、先端ピン及び関連する電子機器を受け入れるためのレセプタクルを含む場合がある。
【0118】
いくつか例を挙げると、例示的なEAMシステムは、Biosense Webster/Johnson & JohnsonのCARTO(登録商標)システム、St. Jude Medical/Abbott のEnSite(商標)システム、PhilipsのKODEX-EPDシステム、Acutus MedicalのAcQMapシステム、Boston ScientificのRhythmia HDX(商標)システムを含む。CARTOマッピングシステムは最も広く使用されているマッピングシステムの1つであり、例えば本明細書で使用する。CARTOマッピングシステムは、患者の下にあるロケータパッド内の3つの別々になったコイルから送信される低レベルの磁場を利用する。各コイルからの磁場の強さは、特殊治療カテーテルの先端近くに埋め込まれた位置センサによって検出される。位置センサによって測定される各コイルの磁場の強さは、センサとコイルとの間の距離に反比例する。したがって、各コイルの地場強度を積分し、この測定値を距離に変換することによって、位置センサ(したがって、カテーテル先端位置)を空間内で三角測量できる。特殊治療カテーテルは通常、近位電極対と遠位電極対、及び治療エネルギーを送達可能な先端電極を含む。カテーテルを心臓の表面に沿って動かして、不整脈マッピングのための局所的な心内膜活性化時間を記録し、同時に位置ポイントを記録して 3D心室形状を生成することができる。カテーテルは心臓の表面に沿って動かして、不整脈マッピングのための局所的な心内膜活性化時間を記録し、同時に位置ポイントを記録して3D心室形状を生成することができる。CARTOは、心室の形状を正確に表現し、等時活性化マップ及び再生可能な伝搬マップを生成する機能を提供する。CARTOはまた、重要な解剖学的ランドマーク(例えば、ヒス束)、電気瘢痕領域(例えば、電圧/瘢痕マップを作成するため)、及び血管(例えば、冠状静脈洞、肺静脈)の位置を記録する機能も有する。CARTOは、アブレーションラインの作成を容易にするアブレーション病変の位置の記録を可能にする。
【0119】
不整脈マッピングの前に、安定した位置基準が確立される。これは、患者及びテーブルの下に、3つの磁気コイルを含む三角形の装置である位置磁石を配置することによって達成される。この磁石の位置は、処置の開始時に画定された円周内の任意の場所と位置合わせされる。参照パッチは、対象の心室の上におおよそ位置する患者の背中に貼り付けられる。位置基準磁石またはパッチが処置中に万一変位すると、CARTOによって元の位置が記録され、適切な再配置を可能にする。これによって、マッピングカテーテルの位置の正確な追跡、解剖学的ランドマーク及びアブレーション病変の位置の一貫性、ならびに心室形状の正確な再構築が可能になる。
【0120】
位置基準が安定して配置されると、適切なタイミング基準及びウィンドウが選択される。タイミング基準は、不整脈の起源の心室の活性化を表す、心内電位図(EGM)または表面ECGリードなどの選択された記録である。心臓内EGMは、多くの場合、一般的に表面ECG記録よりも見た目が一貫しており、タイミングが正確であり、結果的により信頼性が高いため、タイミング基準として選択される。タイミング基準には、最大(ピーク正)偏向、最小(ピーク負)偏向、最大上昇勾配(dV/dT)、または最大下降勾配を含む電気記録図の任意のコンポーネントが選ばれ得る。入信信号内のタイミングに基づいた電気信号メトリックを使用することに加え、電気信号自体が自然なまたは誘発された伝搬イベントから対象の位置に到達するための時間遅延も測定し得る。
【0121】
EAMシステムは、活性化マッピングを容易にすることに加え、解剖学的に関連性がある部位、瘢痕を表す心内膜電圧が低い領域、及びアブレーションの領域を記録できる位置マッピング機能を提供する。アブレーションは、本明細書でさらに詳しく説明するように、気絶から死に至るまで及び死亡に及ぶ、様々な細胞反応を引き起こす。これらの段階のそれぞれでの心筋細胞は、アブレーション直後に電気を伝導しない。気絶した心筋細胞は回復し、数分から数時間以上にわたって発生するプロセスである電気を伝導する能力を取り戻す。死んだ心筋細胞または死につつある心筋細胞は、長期的には電気を伝導しなくなる。アブレーション後1~4週間で、死んだ細胞は体内から除去され、瘢痕組織に置き換えられ、蓄積されたデッドゾーンが永続性のある伝導遮断を作り出すために使用される。標的となる特定の解剖位置は、いくつか例を挙げると、上大静脈、下大静脈、右肺静脈、左肺静脈、右心房、右心耳、左心房、左心耳、右心室、左心室、右心室流出路、左心室流出路、心室中隔、左心室頂上、心筋瘢痕領域、心筋梗塞境界領域、心筋梗塞チャネル、心室内膜、心室外膜、乳頭筋、及びプルキンエ系を含む。治療は、分離した部位で、または連続した一連の治療として実施される。治療の種類は、左房天井線、左房後部/下方線、後壁隔離、外側僧帽弁峡部線、中隔僧帽弁峡部線、左心耳、右側大静脈三尖弁峡部 (CTI)の作成、肺静脈隔離、上大静脈隔離、マーシャル静脈、複雑性分裂心房電位 (CFAE)を目標とした病変作成、局所衝動及びローター変調 (FIRM)を目標とした病変作成、及び標的神経節アブレーションの作成を含む。そのような組織修正により、異常な電気信号の伝達を防ぐために組織内で伝導ブロックが作成される。
【0122】
本明細書に説明する実施形態では、組織修正はパルス電場エネルギーの使用によって達成され、その実施例は本明細書の後のセクションで提供される。パルス電場(PEF)は、発生器108によって提供され、心臓H内の標的組織領域上または標的組織領域の近くに配置された送達電極122を介して組織に送達される。1つ以上のエネルギー送達アルゴリズム152は、心臓組織に送達されるPEFエネルギーを提供する電気信号を指定し、非熱効果(例えば、熱アブレーションの閾値未満のエネルギー、凝固熱損傷を誘発する閾値未満のエネルギー、細胞外マトリックスへの閾値損傷未満のエネルギーなど)によって細胞死を引き起こし、炎症を低減または回避する、及び/または例えば、横隔神経、食道、及び血管構造など、治療の罹患率または死亡率に関与する敏感な部位における、解剖学的構造内の間質タンパク質の変性を防ぐ(例えば狭窄を防ぐ)。したがって、標的組織へのエネルギーの送達は、細胞外マトリックス間の組織レベルの構築タンパク質などの重要な解剖学的構造をほとんどまたは全く破壊せず、それにより細胞外マトリックスは無傷のまま残る。非熱エネルギーも極低温ではない(つまり、凍結によって引き起こされる熱損傷の閾値を超えている)ことを理解されたい。したがって、標的組織の温度は、ベースライン体温(35°C~37°Cなど、ただし30°Cまで下がる場合がある)と熱アブレーションの閾値との間の範囲に留まる。したがって、組織温度の目標範囲は、30~65°C、30~60°C、30~55°C、30~50°C、30~45°C、30~35°Cを含む。したがって、組織の温度は熱アブレーションの閾値(例えば、65°C)を下回ったままとなるため、心臓組織内亜の病変は熱損傷によって作成されない。さらに、組織のインピーダンスは通常、熱アブレーションによって生成される閾値を下回ったままになる。組織の焦げまたは熱損傷によって、心臓組織の伝導性は変化する。このインピーダンスの増加/伝導率の低下は、多くの場合、熱傷を示しており、組織がさらなるエネルギーを受け取る能力を低下させる。いくつかの例では、カソードからアノードまでのシステム回路のインピーダンスは、PEFエネルギーの送達中、25~250Ω、50~200Ω、または75~125Ωの範囲に留まる。一般に、アルゴリズム152は、所定の深度及び/または体積まで組織に影響を与えるように、及び/または送達されたエネルギーに対する特定の種類の細胞反応を目標にするように調整される。
【0123】
様々な電気信号はPEFエネルギーを生成するために使用できる。そのような信号は通常、エネルギーが連続的に送達される時間の長さを特徴とする。連続なエネルギーの送達は、熱損傷につながる可能性がある。したがって、PEFエネルギーは連続的ではなく、パケットで送達される。各エネルギーパケットは、休止期間で区切られた一連の高電圧パルスを含む。通常、一連のパケットは、病変が作成するために送達される。パケット長は変化する場合があるが、通常は最大1秒である。いくつかの実施形態では、パケット長は最大0.5秒、最大0.1秒、または最大1ミリ秒である。そのような信号は、後のセクションで詳しく説明する、様々な追加パラメータを特徴とする。
【0124】
上述のように、いくつかの実施形態では、組織修正は、治療カテーテル102を使用して組織をポイントごとに治療することによって達成される。図3は、治療カテーテル102を使用して(マッピングの支援により)、ポイントごとに左上肺静脈LSPV及び左下肺静脈LIPVの開口部の周りの組織を治療して、肺静脈LSPV、LIPVの周りに重なり合う病変Lの楕円形の治療ゾーンを作成することを示している。カテーテル102は送達電極122を含み、いくつかの実施形態では、カテーテル102は送達電極122の近位のシャフト120に沿って配置された1つ以上の追加の電極125(例えば、リング電極)を含む。いくつかの実施形態では、追加の電極の一部またはすべては、刺激及び記録のために(電気生理学的マッピングのために)使用できるため、病変作成のためにまたは検知など他の目的のためにカテーテル102を使用するときに、別個の心臓マッピングカテーテルは必要とされない。
【0125】
治療中、医師はいくつかの手がかりを見て、ポイントごとに次にどこを治療すべきかを判断する。例えば、医師はインピーダンス測定値、電気記録図信号、マッピングシステムの配置 (例えば、マークされた以前の治療投与部位に対する測定距離、透視検査など)を考慮し得る。高周波アブレーションの分野では、多くの場合、CLOSEプロトコルなどの既知のプロトコルが採用される。しかしながら、そのようなプロトコルはPEFエネルギーの送達には適用できず、意図したアブレーション領域にギャップを生じさせ、したがって伝導ブロックを失敗させ、治療の失敗につながるであろう病変の配置を利用するように医師に誤って指示するであろう。これは多くの場合、細胞に対する「気絶」効果と考えられる、病変部分でのエネルギー送達の一時的な影響による。
【0126】
上述のように、PEFエネルギーを使用して病変Lを作成すると、エネルギーを受け取った細胞の一部はPEF療法によって死滅し、最終的に組織は貫壁線維性瘢痕に置き換わる。また、組織の別の部分はPEF療法によって気絶し、電気伝導の顕著な低下(つまり「気絶」)を急性に経験するが、最終的にはPEF障害から回復する。この気絶現象は、致命的な影響を受けた組織を取り囲む領域の傷ついているが死滅していない細胞の周縁帯の結果である可能性がある。傷ついた細胞は、膜の完全性が一時的に損なわれるため、細胞内と細胞外の環境間の濃度勾配を維持する能力を失う。これにより、傷ついた細胞は、隣接する細胞によって興奮する能力、及び隣接する興奮性細胞に電気信号を受動的に伝導する能力を一時的に失う。この影響は、処置中の治療効果を正確に判断する能力を混乱させることにより、臨床結果に顕著な影響を及ぼす場合がある。PEF心臓アブレーション処置の永続性のある臨床効果を確実にするためには、急性の電気的絶縁が、気絶した細胞に依存するのではなく、代わりに永続性のある線維性瘢痕を生じさせる死滅した細胞を反映することが重要である。したがって、気絶効果は、心臓アブレーション処置において「偽陽性」の電気的絶縁結果を生じさせる可能性がある。
【0127】
図4は、死滅ゾーン107と気絶ゾーン109を有する病変Lを示す。PEFエネルギーは通常、送達電極122から放射状に外側に広がるこれらの治療ゾーンを作成する。図示のように、送達電極122に最も近いゾーン(つまり、ゾーン107)は、起動したプログラムされた細胞死メカニズムによって即時または最終的な細胞死に耐え、周囲のゾーン(つまり、ゾーン109)は気絶し、持続的または永久的な細胞死にはつながらない場合がある。
【0128】
気絶した領域と死滅した領域の境界を特定するために、様々な対策が行われてきた。いくつかの例では、豚の心臓モデルが利用されている。3.5mmアブレーション電極(TactiCath、Abbott)を備えた7Fカテーテルが、パルス電場(PEF)発生器(CENTAURI、Galaxy Medical)に接続され、EnSite誘導下で2匹の閉胸豚の右心室RVと左心室LVに配置された。アブレーション電極と皮膚パッチとの間で、RVの13の部位 (28Amp、合計パルス幅1.4ms、4パルス)とLVの19の部位(35Amp、1.6ms、7パルス)に二相性PEF電流が送達された。アブレーションの2時間後、トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC、ミトコンドリア活性マーカー)が投与された。豚は殺され、心臓が摘出され、ホルマリンで固定された。心臓は切片化され、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)及びマッソントリクロームで染色された。ミトコンドリア活性を調べて、気絶病変と死滅病変の境界を描写するために、シトクロムcオキシダーゼ(COX)染色も実施された。
【0129】
アブレーション病変はTTC染色で明確に区別され、淡い境界に囲まれた濃い中心領域が示された。組織構造は、淡い境界内で筋細胞構造の破壊を示した。淡い境界線を越えた過染色(暗赤色)の縁が、気絶ゾーンを示していた。COX染色は、淡い境界内でミトコンドリア活性がなかったか、または低いことを示し、アブレーションされた領域と一致している。COX染色の増強された活性は、影響を受けていない正常な心筋まで広がり、気絶ゾーンと一致している。この領域は、アブレーションゾーンの周囲のTTCの過剰染色された赤い縁と一致している。このミトコンドリア活性の増加は、細胞が、PEFによって傷つき、プロセス中でATP(例えば、適切な電解質濃度勾配を回復するためのNa-Kポンプ活性の増加)を使用してこの傷から回復するための回復プロセスを受けていることから生じる。これらの余分なエネルギー需要は、ミトコンドリア活性を上方に調節することを必要とする。したがって、PEFアブレーションによって生じた急性心室病変は、TTC染色による明確な区別を示す。COX染色は、病変の死滅部分が、気絶領域(細胞の電気伝導と収縮性を妨げる一時的な細胞傷害)を示す、細胞傷害からの回復を活発に行っている領域に囲まれていることを示唆している。
【0130】
さらに、局所PEFプロトコルに応える電圧信号の変化の時間的進化を評価して、気絶組織対死滅組織の回復パターンを決定するための研究が行われた。臨床前動物実験研究は、予測可能な経時的な治療サイズ減少率があるかどうかを判断するために気絶効果の時間的進化を特徴付けた。そのような前臨床研究は、気絶組織の存在を補償するために臨床的に作成された病変の適切な治療重複を確実にし、急性効果を評価するための最適な追跡時点を選択するために使用される。
【0131】
これらの臨床前動物実験研究の1つでは、豚モデルが使用され、心臓内の複数の部位がPEFエネルギーの標的とされ、従来のEAMシステムを用いて特定の時間画で、電圧信号が測定された。研究の開始時、豚の心室はEAMシステムで電圧マッピングされた。次に、病変間に十分なスペースを保つためにEAMシステム上でPEFエネルギー送達の位置が画定された。提案されたPEF送達場所を中心とした8mmサイズの球体がEAMシステム上に画定された。治療用カテーテルを使用し、10gの接触力を目標として、提案された各位置にある心室内に局所病変が作成された。明確な重なり合わない病変を提供するアブレーションパラメータ及び分離距離が使用された。この研究では、4つの心室のそれぞれに1つずつ、4つの治療部位が生成された。各心室は、次に、電圧測定値がPEFエネルギーが適用された場所の及び場所の周りの位置で各心室の心内膜表面から採取されるように再マッピングされた。
【0132】
さらに、大静脈三尖弁峡部(CTI)ラインが作成された。下大静脈三尖弁峡部の線状アブレーションは、典型的な心房粗動の標準治療法となっている。動物実験では、治療カテーテルが繰り返し配置され、CTIに沿って3mm間隔のEAMマーカーで一連のPEF活性化が実施されて、隔離ラインを生成した。マッピング及び/または治療カテーテルを使用して、CTIアブレーションラインの反対側のポイント間の時間的遅延が測定され、そこを通過するエネルギー伝達の遮断を検証した。
【0133】
PEF治療後約5分から5時間以上までの電圧測定値の時間的進化を決定するために、連続電圧再マッピングが行われた。さらに、アデノシンテストを利用して、電圧マップがそれに応じて変化するかどうかを判断した。アデノシンは、所与の局所的な部位で電圧マップを生成しながら、AVブロックに達するまで段階的に増加させながら(6、12、18、…mg)で送達された。標的部位における適切なマップ生成に続き、次の局所病変に移動する前に、心臓がアデノシン負荷から回復するための時間が与えられ、アデノシン負荷中の電圧マップが新しい部位で繰り返された。このプロセスは局所病変ごとに繰り返された。
【0134】
次に、標的組織は心臓から外植された。心臓肺複合体は、自然血管系(大動脈から冠状動脈)を使用して、500mlのヘパリン添加NaCl溶液とともに生理食塩水を注入された。洗浄後、心肺複合体は、固定中に解剖学的形状を保存するために10%ホルマリン500mlを1時間注入された。最低2日間のホルマリン固定の後、心臓は、アブレーション病変を肉眼で測定し、組織構造評価のために組織を処理するために開かれた。
【0135】
電圧マップ中に測定された電圧の減少は、アブレーションの対象となる領域が興奮性の低下を示すため、エネルギー伝達の減少を意味することを理解されたい。これは、病変を作成するときの所望の結果である。連続再マッピング中、電圧振幅減少領域のサイズは、治療後少なくとも1時間まで、及びそれを超える時間をかけて小さくなった。経時的に電圧振幅サイズが縮小したというこの結果は、少なくとも病変の外周に沿って明確な「気絶」効果が発生していたことを示しており、気絶組織は経時的に回復していることが示された。電圧振幅低下領域のサイズは少なくとも時間にわたって小さくなり続けたため、適切なアブレーションを確認するためのアブレーションの20分後での従来の再マップのタイミングは、アブレーションされた組織が永続性のある慢性的な電圧低下を有することを正確に確認することができないことが示された。電圧振幅の回復と関連する期間は、送達された病変からの距離と相関しており、最も遠い領域が最も早く回復し、続いて、時間の経過とともに最終的な病変に近づくにつれて電圧は徐々に回復した。これは、治療強度(治療強度はPEF送達のための組織電極界面から離れるにつれて指数関数的に減少するため)と電気記録図の電圧回復との間の相関関係を示している。
【0136】
気絶効果の回復は少なくとも数時間のタイムスケールにわたって起こるため、熱アブレーション法のために開発された従来の急性術中病変永続性評価は、PEFエネルギーを使用した治療を指導するために信頼することはできない。こうすることにより、ユーザーは、実際には可逆的に影響を受けた、気絶組織である特定の領域または関連する病変が効果的に除去されたと誤って考えることになるであろう。このエラーは、伝導遮断に必要な慢性の連続貫壁性瘢痕の形成にギャップを生じさせ、永続性ではなく、最終的には不整脈症状の再発につながる場合がある病変の孤立を生じさせる場合がある。
【0137】
ここで、この気絶効果を説明し、長期的な完全な伝導ブロックを達成できるように、病変の永続性の信頼できる急性術中評価を提供する方法、システム、及びデバイスが提供される。一実施形態では、電気的遮断(例えば、全体的な病変)の作成で連続した一連の個々の病変を術中に評価し、そのような遮断が長期に永続性であることを確実にするための方法、システム、及びデバイスが提供される。本実施形態では、組織修正システム100は、例えば、心房細動の治療においてのように、図3に示すような肺静脈への入口の周りに病変Lのリングを作成するためになど、心臓の部分に治療用PEFエネルギーを送達するために利用される。そのような組織修正は、異常な電気信号の伝達を防ぐために組織内で伝導ブロックを作成することを目的とする。本実施形態では、病変Lの作成前後にEAMシステムを使用して電圧マップが生成される。そのような電圧マップは、病変Lに沿って及び病変Lの周りの位置の複数の電圧値を提供する。したがって、アブレーション前電圧値のセットが生成され、様々な位置のためにアブレーション後電圧のセットが生成される。
【0138】
図5は、左上肺静脈LSPVと左下肺静脈LIPVの周りに形成された、図3の個々の病変を表す病変L’の連続リングを示す。本実施形態では、病変L’のリングは、例えば、図4に示すような8つのセクションなど、複数のセクションに分割される。ここで、複数のセクションは、第1のセクション300と、第2のセクション302と、第3のセクション304と、第4のセクション306と、第5のセクション308と、第6のセクション310と、第7のセクション312と、第8のセクション314とを含む。各セクション内に、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値の両方を有する少なくとも3つの解剖学的ポイントを含む領域が画定される。したがって、解剖学的ポイントは、それらがアブレーション前電圧マップとアブレーション後電圧マップで相関付けられる能力により選ばれる。本実施形態では、アブレーション前電圧が、例えば0.1mVまたは0.2mVなどの最小活性閾値を超える解剖学的ポイントが選ばれる。所与の解剖学的ポイントでは、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値の差が決定され、その解剖学的ポイントでの電圧低下値と見なされる。本実施形態では、電圧低下値は、アブレーション前電圧値とアブレーション後電圧値の間の電圧のパーセント低下として表される。次に、本実施形態では、3つの解剖学的ポイントのそれぞれでの電圧低下値が収集され、その中央値が代表的な電圧低下値と見なされる。代表的な電圧低下値が89%未満である場合、そのセクションは永続性ではない病変Lが少なくとも1つ含まれていると見なされる。したがって、永続性の所望の代表的な電圧低下値は、89%、少なくとも89%、90%、少なくとも90%、91%、少なくとも91%、92%、少なくとも92%、93%、少なくとも93%、94%、少なくとも94%、95%、少なくとも95%、96%、少なくとも96%、97%、少なくとも97%、98%、少なくとも98%、99%、少なくとも99%、100%を含む、89%以上である。セクションの識別により、経時的な病変形成の逆転を回避するために、処置中にセクションの少なくとも一部を再治療できる。再治療は、1つのセクション、複数のセクション、またはすべてのセクションの分析後に実行できる。各セクションが永続性があると判断されるまで、このプロセスを所望の回数繰り返すことができることを理解されたい。このプロセスが完了すると、病変L’のリング全体が永続性があり、電気的遮断が完了したと見なされる。
【0139】
代表的な電圧低下値を決定するために、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~5、3~4、5~10、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10など、任意の数の解剖学的ポイントが選ばれ得ることを理解されたい。また、例えば病変のリングL’などの連続した一連の病変は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~5、3~4、6~8、5~10、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10など、任意の数のセクションに分割され得ることを理解されたい。同様に、いくつか例を挙げると、線、円弧、角度、不規則な形状を含むリング以外の形状も分析し得る。さらに、各セクションが単一の病変Lを含むようにセクションが選ばれ得ることも理解されたい。そのような例では、一度に複数の病変が評価されるのではなく、各病変Lが、永続性または非永続性でとして評価され得る。
【0140】
上述の実施形態では、対象の%低下の閾値は、治療前電圧マップと治療後電圧マップを分析する実際の臨床データ、及び組織に対する気絶効果により不適切な電気絶縁永続性がどこで生じたのかを導出するための90日間の再治療データを用いた、説明した代表的な技術を使用して導出された(すべての患者は、処置時に急性の電気伝導ブロックを達成した)。≧89%の代表的な電圧低下値の所望の閾値は、ECLIPSE AF(心房細動)臨床試験データのデータ分析に基づいている。ECLIPSE AF臨床試験は、Galaxy Medical,Inc.(San Carlos、CA)によって行われ、CEマーク付きの局所接触力感知カテーテル(治療カテーテル102など)に接続されたCENTAURI(商標)システム(発生器108など)によるパルス電場(PEF)アブレーションを使用した心房細動のカテーテルアブレーションを評価した。この多施設共同研究は、発作性心房細動(PAF)または短期間(<1年)の持続性心房細動(PerAF)に対する初めてのカテーテルアブレーションを受ける患者が含まれていた。データは、アブレーション前とアブレーション後の電圧マッピング測定値を含んでいた。病変の永続性は、90日間の再マッピング中にチェックされた。分析は、上記のように画定及び測定された160のセクションが含まれていた。統計分析は、88.7%(89%)の最適電圧低下値の閾値に対する97.9%の感度、及び98.6%(p<0.05)の陽性適中率を明らかにした。したがって、この分析は高い感度率と高い予測力を有していた。
【0141】
患者の病変の例示的な電圧マッピングデータは表1に提供されている。Xの値が計算にデータが不十分であることを示していることに留意されたい。ここで、病変L’のリングは左肺静脈LPVの周りで分析され、別の病変L’のリングは右肺静脈RPVの周りで分析された。病変L’の各リングは8つのセクションに分割された。電圧低下のパーセンテージは、同じ近似場所での処理後の電圧を処理前の電圧で除算することによって計算された。電圧低下の中央値は、それに対応するアブレーション前及びアブレーション後の電圧値とともに示される。
【0142】
【表1】
【0143】
図6A図6Cは、表1の患者の電圧マップを示す。図6Aは、治療前に撮影された電圧マップ600である。電圧マップは、心臓Hの解剖学的構造のその後側からの3次元レンダリングである。したがって、左上肺静脈LSPVと左下肺静脈LIPVは左に見え、右上肺静脈RSPVと右下肺静脈RIPVは右に見える。通常、そのような電圧マップは色分けされており、灰色の領域は非興奮性組織(電気記録図振幅<0.2mV)に相当し、紫色の領域は正常な電圧振幅(電気記録図振幅>0.5mV)に相当し、赤色/黄色は電気記録図電圧振幅が低下した(低い)領域(電気記録図振幅0.2~0.5mV)を表す。ここで、紫色の領域がハッチマークで表され、心臓Hの表面から各肺静脈LSPV、LIPV、RSPV、RIPV まで広がっている。この患者の治療は、図3に示すように、左肺静脈LPVの周囲に病変L’のリングを形成し、右肺静脈RPVの周囲に別の病変L”のリングを形成することを含んでいた(二重ハッチマークで示されている)。図6Bは、同じ患者の電圧マップと、治療後に術中に撮影された心臓の同様の画像である。図示のように、病変L’、L”のリングは、紫色の領域(電位振幅>0.5mV)を表すハッチマーク領域が病変L’、L”のリングを越えて肺静脈LSPV、LIPV、RSPV、RIPVまで延びないように電気的遮断を作り出している。病変L’、L”の反対側の領域(肺静脈LSPV、LIPV、RSPV、RIPVを覆う)は、振幅が0.2mV未満であることを表す灰色である。図6Cは、同じ患者の電圧マップと、治療後90日後に撮影された心臓Hの同様の画像である。図示のように、右肺静脈RSPV、RIPV周りの病変L”は電気的遮断を維持している。これは、右肺静脈の周囲の8つのセクションのそれぞれにおける電圧低下値が89%を超えていた表1に示すデータと一致している。したがって、すべての病変は永続性であった。しかしながら、左肺静脈LSPV、LIPVの周りの病変L’は電気的遮断を維持しておらず、紫色の領域を表すハッチマークの領域はここでは病変L’を越えて左肺静脈LSPV、LIPVに広がっている。これは、セクション2とセクション4の電圧低下値が89%未満であった表1に示されているデータと一致している。したがって、これらの部分の病変は長期的には永続性ではなかった。
【0144】
したがって、いくつかの例では、標的組織領域が3つの一般的な状態の1つを有することを理解されたい。対象組織領域のベースライン電圧が0.1mVまたは0.2mVなどの最小活性閾値を下回る場合、領域は当初非興奮性であると見なされる。標的組織の電圧低下値が、最小活性閾値を超えていたが、治療され、その後、例えば少なくとも89%などの所望の電圧低下値であるか、または所望の電圧低下値を超えた場合、領域は永続的に治療されたと見なされる。標的組織の電圧低下値が、最小活性閾値を超えていたが、治療され、その後、例えば少なくとも89%などの所望の電圧低下値を下回った場合、領域は非永続的に治療されたと見なされ、再治療または補足治療の恩恵を受けて永続性に到達するであろう。
【0145】
いくつかの実施形態では、所望の電圧低下値はベースライン電圧値とともに変化する。例えば、いくつかの実施形態では、最初に中程度のベースライン電圧を有していた組織領域は、治療が永続性があると見なされるための治療を受けると、より低い所望の電圧低下値の閾値を満たすことになるであろう。例えば、図7Aは、例示的なベースライン電圧値とともに変化する例示的な所望の電圧低下値の閾値の視覚的な図を提供する。ここでは、4つの異なる閾値、つまり、第1のベースライン電圧値までのベースライン電圧(例えば、0.1mV)の第1の閾値レベル650、第1のベースライン電圧値と第2のベースライン電圧値の間のベースライン電圧(例えば、0.1mV~0.5mV)の第2の閾値レベル652、第2のベースライン電圧値と第3のベースライン電圧値の間のベースライン電圧(例えば、0.5mV~1.0mV)の第3の閾値レベル654、第3のベースライン電圧値と第4のベースライン電圧値の間のベースライン電圧(例えば、1.0mV以上)の第4の閾値レベル656が示されている。この実施例では、第1の閾値レベル650は、組織領域が最初から適切に非興奮性であると見なされているため、組織領域が治療なしで閾値を満たしている点で本質的にゼロである。さらに、第2の閾値レベル652は第1の閾値レベルを超えており、第3の閾値レベル654は第2の閾値レベル652を超えており、第4の閾値レベル656は第3の閾値レベル654を超えている。閾値レベルの数及び各閾値レベルの値が状況によって変わり得ることを理解されたい。同様に、いくつかの実施形態では、所望の電圧低下値は、離散的なステップではなく、ベースライン電圧値とともに連続的に変化する。例えば、図7B図7Cは、例示的なベースライン電圧値とともに連続的に変化する例示的な所望の電圧低下値の閾値の視覚的な図を提供し、このようにして所望の電圧低下値の閾値曲線660を作成する。
【0146】
他の実施形態では、各所望の電圧低下値に信頼値が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、所望の電圧低下値は、所望の信頼度値または信頼水準に基づいて利用または選択できる。例えば、本明細書で上述した実施形態の所望の電圧低下値は、95%の信頼水準などの高い信頼水準に基づいていた。そのような所望の電圧低下値は、状況から永続性の信頼性が高いことが示唆される場合に使用されるであろう。ただし、特定の組織の種類または治療位置などのいくつかの例では、より低い信頼水準が適切な場合がある。そのような例では、病変を永続性があると見なすために、より低い所望電圧低下値(例えば、89%未満の所望電圧低下値)が許容される場合がある。いくつかの実施形態では、ユーザーは、処置中に電圧低下値及び/または信頼値を提供される。これにより、ユーザーは永続性のデータ及び感覚を得ることができ、心臓の領域、ユーザーの経験、この領域における心臓の厚さ、またはその領域に適用されたアブレーション治療の密度及び線量などの周辺データに基づいて、病変の適切な永続性を決定するために、ユーザーがある程度解釈できるようになる。図8は、例示的なベースライン電圧値とともに変化する、例示的な所望の電圧低下値の閾値の視覚的な図を提供し、信頼水準も示されている。ここでは、永続性情報が正確であるという95%の信頼水準を有するなど、例示的なベースライン電圧値とともに変化する、所望の電圧低下値の閾値の高い信頼曲線670が示されている。さらに、永続性情報が正確であるという90%の信頼水準を有するなど、例示的なベースライン電圧値とともに変化する、所望の電圧低下値の閾値の低い信頼曲線672が示されている。さらに、永続性情報が正確であるという85%の信頼水準を有するなど、例示的なベースライン電圧値とともに変化する、所望の電圧低下値の閾値のさらに低い信頼曲線674が示されている。これらの信頼水準が、例えば、実験データに基づいているか、または絶対閾値からの標準偏差として選択される可能性があることを理解されたい。例示的な信頼区間は、永続性に対する95%の信頼度、90%の信頼度、85%の信頼度、80%の信頼度などを含む。そのような信頼値は、いくつか例を挙げると、図形形式または数値形式でユーザーに提供され得る。代わりに、連続可変信頼水準がユーザーに提供され得る。例えば、そのような信頼値が、ユーザーがアブレーションカテーテルを心臓の領域上で動かすにつれて経時的にグラフ化される場合もあれば、信頼値が最終的な電圧マップ上に提供される場合もある。
【0147】
いくつかの実施形態では、代表的な電圧低下値はパーセント低下として表現されるのではなく、電圧値はむしろ電圧値自体として絶対値(例えばミリボルト単位)で表現されることを理解されたい。他の実施形態では、代表的な電圧低下値は、代わりに、いくつか例を挙げると、0.05mV、0.1mV、0.2mV、0.3mV、0.4mV、0.5mV、0.6mV、0.7mV、0.8mV、0.9mV、または1.0mVなどの目標の最低電圧閾値である。そのような実施形態では、1つ以上のPEF治療を実施した後、病変、tつまり電圧値のセクションまたは領域のが生成され、目標の最低電圧閾値と比較される。例えば、治療処置を完了してから20分後に、ユーザーは電圧マップを生成し、目標の最低電圧閾値を超えている領域がないか調べることができる。この目標の最低電圧閾値を超える電圧を有するいずれの領域も、気絶の影響のみを受けていると見なし得る。ユーザーは次にこの領域を修正し、完全に治療されていない領域に戦略的に病変を配置して、これらの領域における電気伝導ブロックの永久性に対する信頼度を向上させ得る。いくつかの実施形態では、EAMシステムは、閾値が満たされていない特定の領域も強調表示し、追加の治療がどこで所望されるのかをユーザーに案内するために役立つ。
【0148】
病変分析が様々な方法でユーザーに提供され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、病変分析及びユーザーに対するフィードバックは、EAMシステムに組み込まれた分析システムによって提供されるか、またはEAMシステムの既存の機能性を統合するか、または既存の機能性と調整するアルゴリズムを使用してなど、別個であるが、EAMシステムと連携して機能する分析システムによって提供される。例えば、いくつかの実施形態では、病変分析(例えば、セクション分析)は、アルゴリズムを使用して治療進行中に自動的に行われ、その結果、フィードバックは、病変の各セクションの生成後など、治療全体を通じてリアルタイムでユーザーに提供される。そのような例では、セクションの完了がトリガイベントとなるように、セクションは事前に決定されている。そのような事前決定は、アルゴリズムに組み込まれる場合もあれば、いくつか例を挙げると、処置の種類、病変の種類、病変の位置、治療カテーテルなどのデバイスの幾何学的配置、時間期間、またはこれらの任意の組み合わせなどの情報を入力することによってなど、ユーザー入力によって決定され得る。セクションが単一の病変と見なされるとき、病変の完了がトリガイベントとなる。
【0149】
いくつかの実施形態では、フィードバックは、視覚的及び/または聴覚的はアラートなどのアラートによって提供される。例示的な視覚的なアラートは、「完全」、「永続性」、「一時的」などの単語を含む。他の視覚的なアラートは、永久性を示すDまたは不完全を示すIなどの数字または文字を含む。あるいは、永続性の場合は1、永続性がない場合は0となる。そのような視覚的なアラートが、いくつか例を挙げると、少なくとも1つの文字、単語、数字、及び/または記号を含むことを理解されたい。他の実施形態では、視覚的なアラートは、永続性がある場合は緑、永続性がない場合は赤など、永続性または永続性のレベルを示すカラーコードを含む。あるいは、永続性と非永続性の間の色の濃淡は、病変がどれほど永続性に近いのかを示すか、または永続性評価の信頼水準を示す。いくつかの実施形態では、アラートは、永続性のある病変の生成を示す特定の音、または任意選択で永続性のない病変の生成を示す異なる音などの聴覚アラートである。いくつかの実施形態では、フィードバックはバイナリ(例えば、永続性がある/永続性がない)であり、他の実施形態では、フィードバックは漸次移行する(例えば、特定の信頼水準を有する永続性、または病変が十分な永続性にどれほど近いかの指標)。いくつかの実施形態では、フィードバックは、描かれるか、または表に示される連続変数(例えば、%低下)として提供される。経時的に描かれる場合、推奨される基準%低下値(例えば、89%低下、90%低下など)が重ねて表示され得るため、ユーザーは任意の所与の電圧低下領域の永続性に対してある程度の信頼度を獲得し得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、フィードバックは、EAMシステムによって提供される既存の視覚マップと統合された方法で提供され、他の実施形態では、セクションのそれぞれにおいてなど、病変の永続性のステータスに関する別個のマップまたは情報表示が提供される。他の実施形態では、病変分析及びフィードバックはEAMシステムとは別であり、発生器108、外部心臓モニタ110、他のシステム付属品、またはこれらの組み合わせなど、1つ以上の他のデバイスによって生成された情報を利用する。そのような実施形態では、病変分析は、同様に、アルゴリズムを使用して治療進行中に自動的に行われ得、その結果、フィードバックは、各病変または病変のセクションの生成後など、治療全体を通してリアルタイムでユーザーに提供される。
【0151】
病変の永続性の分析が、EAMシステムまたは発生器、心臓モニタ、または付属品など、他のシステムから生成された他のデータを使用して同様に行われ得ることを理解されたい。そのような使途のための例示的なパラメータは、いくつか例を挙げると、単極または双極の電気記録図の振幅の減少(絶対値または%)、周波数領域の変化(周波数成分、高周波成分対低周波成分の比率、特定の周波数または周波数帯域での電力など)、局所的な電圧勾配の変化、絶対電圧の変化、絶対電圧の大きさ、電圧振幅のパーセント低下、電圧の局所的な勾配、周波数成分、局所的な勾配の変化、時間領域の特徴(立ち上がり時間、分別の測定、ゼロ交差のタイミング、局所的な伝導遅延、0などの閾値を超える波形上昇の持続時間など)、単極EGM、双極EGM、単極EGMと双極EGMの組み合わせ、セクター別の領域分析、ベースラインマップへの正規化、電圧の空間パターン、変化の空間パターン、電位が低下した領域の次元、周波数成分を含む。いくつかの実施形態では、EAMシステムまたは電気記録図記録システムは、アブレーションカテーテルが移動するにつれて、所定の閾値に対する対象のメトリックをリアルタイムで追跡または示すことを理解されたい。
【0152】
他の実施形態では、EAMシステムを使用して、治療セッション全体の前後の情報を比較し、疑わしい永続性の領域をチェックする。一実施形態では、EAMシステムは、ユーザーが、より強いまたはより弱い信号低下を経験した領域化を視覚化するために、治療前と治療後の電圧マップを(例えば、並べて)描き、表示する。別の実施形態では、EAMシステムは、処理前と処理後の信号メトリック間で数学的演算を実行する。例えば、一実施形態では、EAMシステムは治療後マップ上で取り込んだ電圧値を、同じ近似(または補間)位置からの治療前値で除算する。このようにして、%低下EAMマップが生成され、それによってユーザーは、強い低下及び弱い低下を受けた領域を迅速に視覚化できる。この領域によって89%低下などの特定の閾値基準が使用され得、それによってEAMシステムは>89%低下基準を満たさないすべての領域にフラグを立てる。これにより、ユーザーは、治療の成功と、生成された電気絶縁の予想される永続性を一目で素早く把握する。いくつかの実施形態では、領域が基準を満たさない場合、ユーザーはさらにフォローアップして、追加の病変配置で対象領域を「修正」し、電気伝導ブロックの永続性に対する信頼度を高め得る。
【0153】
別の実施形態では、同じ領域の治療前及び治療後のマップは、絶対電圧低下、または他の適切な電気的特性(例えば、位相、分割時間領域)の変化など、他の信号について比較され得る。これらのマップは、上述と同様の方法で使用し得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療前マップと治療後マップの間の経過時間は、結果として得られる結果メトリックを調整するために使用される。これは、特に一連のポイントごとの病変を完了するためにかなりの時間が費やされる場合に、一部の病変が処置中にすでに回復し始めるためである。処置の開始時に治療した病変の回復率は、処置の後半で治療した病変の回復率よりも高くなると予想される。したがって、記録されたメトリックは相対的な時間に従って拡大縮小され、治療後のマップに関係なく均一な評価が得られる。
【0155】
いくつかの実施形態では、決められた量の気絶回復時間に続く電気信号低下の永続性を評価するために、治療後マップが1つ以上の間隔で生成される。例えば、治療後マップは、1つ以上の病変を完了した直後、病変セット全体を完了した直後、または治療後5分、10分、20分、30分、45分、60分、120分、または180分などの間隔で生成し得る。例えば、20分の滞留期間が、治療再マップを実行する前に使用され得、このようにして、最も影響を受けていない気絶組織領域はすでに信号を回復しているため、より微妙な気絶領域はより少ない干渉で検出し、視覚化し得る。
【0156】
上述のように、いくつかの実施形態では、病変分析は、アルゴリズムを使用して治療進行中に自動的に行われ、その結果、フィードバックは、治療全体を通じてリアルタイムで提供される。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、リングまたはラインに沿ってポイントごとにアブレーションを実行するときなど、この情報を利用して次の病変の位置を決定する。上述のように、特に気絶ゾーンの回復後に、病変間にギャップが残っていないことを確実にするために、病変の重なりが望ましい。したがって、次にエネルギーを1回だけ適用する位置は、死滅ゾーン間に気絶ゾーンの十分な重なりを提供して、連続した永続性のある病変を形成する。
【0157】
いくつかの実施形態では、次のエネルギーの適用は、最初のエネルギーの適用と同じ場所に向けられる。これは、最初の適用または線量が永続性にとって不十分な場合に所望されるであろう。例えば、電圧低下値は、89%未満など、永続性の閾値を下回っていた可能性がある。そのような例では、病変が十分に永続性があると判断されるまで、追加のエネルギー適用が提供され得る。
【0158】
上述のように、PEFエネルギーを使用して生成された病変L及び病変のセクションが分析され得る。図1に示すシステム100では、パルス電場(PEF)は発生器108によって提供され、標的組織領域の上または標的組織領域の近くに配置された送達電極122を介して組織に送達される。いくつかの実施形態では、高電圧の短時間の二相電気パルスが、標的組織の近傍の電極122を通して送達される。これらの電気パルスは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。いくつかの実施形態では、各エネルギー送達アルゴリズム152は、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは一連の高電圧パルスを含む。そのような実施形態では、アルゴリズム152は、いくつか例を挙げると、パケットの数、パケット内のパルスの数、及びパルスシーケンスの基本周波数から成る、エネルギー振幅(例えば、電圧)及び適用されたエネルギーの持続時間などの信号のパラメータを指定する。追加のパラメータは、本明細書でより詳しく説明する、二相パルスの極性間のスイッチ時間、二相性サイクル間のデッドタイム、及びパケット間の休止時間を含み得る。パケット間に一定の休止時間がある場合もあれば、パケットが心臓周期に合わせてゲート制御され、患者の心拍数とともに変化する場合もある。意図的な変化する休止期間アルゴリズムがある場合もあれば、パケット間に休止期間が適用されない場合もある。センサ情報及び自動停止仕様などに基づくフィードバックループが含まれる場合がある。
【0159】
図9は、エネルギー送達アルゴリズム152によって規定される信号の波400形の一実施形態を示す。ここで、2つのパケット、つまり第1のパケット402及び第2のパケット404が示されており、パケット402、404は休止期間406によって分離される。本実施形態では、各パケット402、404は、第1の二相性サイクル(第1の正のパルスピーク408と、第1の負のパルスピーク410とを含む)と、第2の二相性サイクル(第2の正のパルスピーク408’と、第2の負のパルスピーク410’とを含む)から成る。第1及び第2の二相パルスは、各二相性サイクル間のデッドタイム412(つまり、休止)によって分離される。本実施形態では、二相パルスは、設定電圧416が正のピークと負のピークで同じになるように対称的である。ここで、二相性の対称波は、正の電圧波の大きさと時間が負の電圧波の大きさと時間とほぼ等しくなるように方形波である。
【0160】
A.電圧
使用及び検討される電圧は、方形波形の頂点である場合もあれば、正弦波形もしくはのこぎり波形のピークである場合もあれば、正弦波形もしくはのこぎり波形のRMS電圧である場合もある。いくつかの実施形態では、エネルギーは単極方式で供給され、各高電圧パルスまたは設定電圧416は約500V~10,000Vの間であり、具体的には約3500V~4000V、約3500V~5000V、約3500V~6000Vであり、いくつか例を挙げると、約250V、500V、1000V、1500V、2000V、2500V、3000V、3500V、4000V、4500V、5000V、5500V、6000Vを含むその間のすべての値及びサブ範囲を含む。組織に供給される電圧は、デバイス102の固有のインピーダンスによるデバイス102の長さに沿った電気損失を考慮した上で、または長さに沿った損失を考慮しない上で、発生器104の設定点に基づいて決定され得、すなわち、供給される電圧は、発生器または器具の先端で測定され得る。
【0161】
設定電圧416は、エネルギーが単極方式で送達されるのか、それとも双極方式で送達されるかに応じて変化する場合があることを理解されたい。双曲送達では、より小さく、より方向性のある電界のため、より低い電圧が使用される場合がある。治療に使用するために選択される双極電圧は電極の分離距離に依存するが、1つ以上の離れた分散パッド電極を使用する単極電極構成では、身体に配置されるカテーテル電極と分散電極の正確な配置をあまり考慮せずに送達され得る。単極電極の実施形態では、身体を通過して分散電極に到達する送達されるエネルギーの分散挙動のため、通常は10cm~100cm程度の有効分離距離でより大きな電圧が使用される。逆に、双極電極構成では、電極の活性領域が1mm~1cmを含む0.5mm~10cm程度で比較的近いため、分離距離から組織に送達される電気エネルギーの集中と実効線量に大きな影響が与えられる。例えば、適切な組織深度(1.3mm)で所望の臨床効果を引き出すために目標とする電圧対距離比が3000V/cmである場合、分離距離が1mmから1.2mmに変更されると、これにより治療電圧は300Vから約360Vに増加し、20%の変化となるであろう。
【0162】
様々な実施形態では、出力が電圧ではなく所望の電流を達成するように制御または変更されることを理解されたい。いくつかの実施形態では、エネルギーは単極方式で送達され、いくつか例を挙げると、20アンペア、21アンペア、22アンペア、23アンペア、24アンペア、25アンペア、26アンペア、27アンペア、28アンペア、29アンペア、30アンペア、31アンペア、32アンペア、33アンペア、34アンペア、または35アンペアの電流を有する。
【0163】
B.周波数
信号が連続している場合、1秒の時間あたりの二相性サイクルの数が周波数であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、望ましくない筋肉刺激、特に心筋刺激を低減するために二相パルスが利用される。他の実施形態では、パルス波形は単相であり、明確な固有周波数はない。代わりに、基本周波数は、周波数を導き出すために単相パルスの長さを倍にすることによって考えられ得る。いくつかの実施形態では、信号の周波数は50kHz~1MHzの範囲であり、より具体的には50kHz~1000kHzの範囲である。一部の電圧では、100~250kHzのまたは100~250kHz以下の周波数により所望されない筋肉刺激が引き起こされる場合があることを理解されたい。したがって、いくつかの実施形態では、信号は、例えば300kHz、400kHz、450kHz、500kHz、550kHz、600kHz、650kHz、700kHz、750kHz、800kHzなど、300~800kHz、400~800kHz、または500~800kHzの範囲の周波数を有する。さらに、心臓同期は通常、敏感なリズム期間中の所望されない心筋刺激を軽減または回避するために利用される。信号アーティファクトを最小限に抑えるコンポーネントを使用すれば、さらに高い周波数を使用し得ることを理解されたい。
【0164】
C.電圧と周波数の平衡
送達される波形の周波数は、適切な治療効果を保持するために同期している治療電圧に対して変化する場合がある。そのような相乗的な変化は、より弱い効果を引き起こす電圧の低下と組み合わされ、より強い効果を引き起こす周波数の低下を含むであろう。例えば、いくつかの場合、波形周波数が600kHzで単極方式の3000Vを使用して治療が行われる場合があるが、他の場合には、波形周波数が400kHzで2000Vを使用して治療が行われる場合がある。
【0165】
D.パケット
上述のように、アルゴリズム152は、通常、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは一連の高電圧パルスを含む。サイクル数420は、各二相性パケット内のパルス数の半分である。図9を参照すると、第1のパケット402のサイクル数420は2(つまり、4つの二相パルス)である。いくつかの実施形態では、サイクル数420は、その間のすべての値及びサブ範囲を含む、パケットあたり2と1000の間に設定される。いくつかの実施形態では、サイクル数420は、パケットあたり5~1000、パケットあたり2~10、パケットあたり2~20、パケットあたり2~25、パケットあたり10~20、パケットあたり20、パケットあたり20~30、パケットあたり25、パケットあたり20~40、パケットあたり30、パケットあたり30~45、パケットあたり45、パケットあたり20~50、パケットあたり30~60、パケットあたり最大60、パケットあたり最大80、パケットあたり最大100、パケットあたり最大1,000、またはパケットあたり最大2,000であり、その間のすべての値及びサブ範囲を含む。
【0166】
パケットの持続時間は、他の要因の中でもサイクル数によって決まる。一致するパルス持続時間(または二相性波形の正と負のパルス持続時間のシーケンス)の場合、サイクル数が多いほど、パケット持続時間が長くなり、送達されるエネルギーの量が多くなる。いくつかの実施形態では、パケット持続時間は、いくつか例を挙げると、例えば、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、100μs、125μs、150μs、175μs、200μs、250μs、100~250μs、150~250μs、200~250μs、500~1000μsなど、約50~1000マイクロ秒の範囲である。他の実施形態では、パケット持続時間は、150μs、200μs、250μs、500μs、または1000μsなど、約100~1000マイクロ秒の範囲である。
【0167】
治療中に送達されるパケットの数、つまりパケット数は、通常、その間のすべての値とサブ範囲を含む1~250パケットを含む。いくつかの実施形態では、治療中に送達されるパケットの数は、2~5パケット、3パケット、5パケット、5~10パケット、10パケット、12パケット、10~15パケット、15パケット、20パケット、15~20パケット、25パケット、30パケット、または30パケット超を含む。
【0168】
E.休止時間
いくつかの実施形態では、休止期間406と呼ばれるパケット間の時間は、その間のすべての値及びサブ範囲を含む約0.001秒と約5秒の間に設定される。他の実施形態では、休止期間406は、約0.01~0.1秒の範囲であり、その間のすべての値及びサブ範囲を含む。いくつかの実施形態では、休止期間406は、いくつか例を挙げると、約0.5ミリ秒~500ミリ秒、1ミリ秒~250ミリ秒、または10ミリ秒~100ミリ秒である。
【0169】
F.バッチ
いくつかの実施形態では、各パケットが心拍を基準として指定された期間内に同期して送達されるように、信号は心調律と同期しているため、休止期間は心拍と一致する。心拍を基準として各指定期間内に送達されるパケットは、バッチまたはバンドルと見なされ得ることを理解されたい。したがって、各バッチは、治療期間の終わりに所望の総数のパケットが送達されるように所望数のパケットを有する。各バッチは同数のパケットを有する場合があるが、いくつかの実施形態では、バッチは様々な数のパケットを有する。
【0170】
いくつかの実施形態では、心拍間に1つのパケットしか送達されない。そのような例では、休止期間はバッチ間の期間と同じと見なし得る。ただし、バッチ間で複数のパケットが送達される場合、休止時間は通常、バッチ間の期間とは異なる。そのような例では、休止時間は通常、バッチ間の期間よりもはるかに短い。いくつかの実施形態では、各バッチは、いくつか例を挙げると、1~10パケット、1~5パケット、1~4パケット、1~3パケット、2~3パケット、2パケット、3パケット、4パケット、5パケット、5~10パケットを含む。いくつかの実施形態では、各バッチは、いくつか例を挙げると、0.5ms~1秒、1ms~1秒、10ms~1秒、10ms~100msの期間を有する。いくつかの実施形態では、バッチ間の期間は患者の心拍数に応じて可変である。いくつかの例では、バッチ間の期間は0.25~5秒である。
【0171】
組織領域の治療は、所望の数のバッチが組織領域に送達されるまで続く。いくつかの実施形態では、治療ごとに2~50のバッチが送達され、治療は特定の組織領域の治療と見なされる。他の実施形態では、治療は、5~40バッチ、5~30バッチ、5~20バッチ、5~10バッチ、5バッチ、6バッチ、7バッチ、8バッチ、9バッチ、10バッチ、10~15バッチなどを含む。
【0172】
G.スイッチ時間とデッドタイム
相間遅延としても知られるスイッチ時間は、図9に示すように、二相パルスの正のピークと負のピークの間に送達されるエネルギーの遅延またはエネルギーのない期間である。いくつかの実施形態では、スイッチ時間は約0と約1マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値とサブ範囲を含む。他の実施形態では、スイッチ時間は1と20マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値及びサブ範囲を含む。他の実施形態では、スイッチ時間は約2と約8マイクロ秒の範囲であり、その間のすべての値及びサブ範囲を含む。
【0173】
遅延はまた、各二相性サイクルの間に差し込まれる場合があり、「デッドタイム」またはパルス間遅延と呼ばれる。デッドタイムはパケット内であるが、二相パルス間で発生する。これは、パケット間で発生する休止期間またはパケット間遅延とは対照的である。他の実施形態では、デッドタイム412は、約0~0.5マイクロ秒、0~10マイクロ秒、2~5マイクロ秒、0~20マイクロ秒、約0~約100マイクロ秒、または約0~約100ミリ秒の範囲にあり、その間のすべての値及びサブ範囲を含む。いくつかの実施形態では、デッドタイム412は0.2~0.3マイクロ秒の範囲である。デッドタイムは、パケット内の個別の単相パルス間の期間を定義するためにも使用し得る。
【0174】
スイッチ時間またはデッドタイムなどの遅延は、波形内の二相性キャンセルの影響を軽減するためにパケットに導入される。いくつかの例では、スイッチ時間とデッドタイムの両方は、効果を強化するためにともに増加される。他の例では、スイッチ時間のみ、またはデッドタイムのみが増加されてこの効果を誘発する。
【0175】
G.波形
図9は、一方向(つまり、正または負)のパルスの電圧及び持続時間が、他方向のパルスの電圧及び持続時間と等しくなるように、対称パルスを有する波形400の実施形態を示す。他の実施形態では、波形400が電圧不平衡を有することを理解されたい。例えば、各パケット402、404は、第1の二相性サイクル(第1の電圧V1を有する第1の正のパルスピーク408と、第2の電圧V2を有する第1の負のパルスピーク410とを含む)と、第2の二相性サイクル(第1の電圧V1を有する第2の正のパルスピーク408’と、第2の電圧V2を有する第2の負のパルスピーク410’とを含む)から成る。ここで、第1の電圧V1は第2の電圧V2を超えている。第1の二相性サイクルと第2の二相性サイクルは、各パルス間のデッドタイム412によって分離される。したがって、一方向(つまり、正または負)の電圧は、曲線の正の部分の下の面積が曲線の負の部分の下の面積と等しくならないように他方向の電圧を超えている。この不平衡な波形により、より顕著な治療効果が得られ得る。いくつかの実施形態では、不平衡が、不均等な持続時間のパルス幅を有するパルスを含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、二相性波形は不平衡であるため、一方向の電圧は他方向の電圧に等しいが、一方向(つまり、正または負)の持続時間は他方向の持続時間を超えているため、波形の正の部分の曲線下の面積は、波形の負の部分の下の面積と等しくない。
【0176】
本明細書に含まれる詳細な実施例はPEFエネルギーの観点から説明されているが、本明細書で説明されている方法、システム、及びデバイスの態様は、すべてのエネルギー源(例えば、無線周波数療法、極低温療法、レーザー療法など)に適用可能であることを理解されたい。
【0177】
上記の発明を実施するための形態は、発明を実施するための形態の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、実例として本発明を実施できる特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では「実施例」とも呼ばれる。そのような実施例は、図示または説明した要素に加えて要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らはまた、図示または説明した要素のみが提供される実施例も企図する。さらに、本発明者らは、特定の実施例(またはその1つ以上の態様)に関して、または本明細書に図示または説明する他の実施例(またはその1つ以上の態様)に関して、図示または説明する要素(またはその1つ以上の態様)の任意の組み合わせまたは順列を使用する実施例も企図する。
【0178】
この文書と参照により組み込まれた文書との間で使用法に矛盾がある場合は、この文書の使用法が優先される。
【0179】
本文書では、特許文書で一般的であるように、用語「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の任意の他の例または使用法とは関係なく、1つまたは2つ以上を含むために使用される。本文書では、用語「または」は、非排他的またはを指すために使用され、したがって「AまたはB」は、特に明記されない限り、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、「A及びB」を含む。本文書では、用語「含む(including)」及び「その中で(in which)」は、それぞれ用語「含む(comprising)」及び「その中で(wherein)」の平易な英語の同義語として使用される。また、以下の特許請求項の範囲では、用語「含む(including)」及び「備える(comprising)」はオープンエンドである。すなわち、請求項においてそのような用語の後に記載される要素に加えて要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、製剤、またはプロセスは、依然としてその請求項の範囲内にあると見なされる。さらに、以下の特許請求項の範囲では、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、単にラベルとして使用されており、それらの対象に数値要件を課すことを意図していない。
【0180】
上記説明は、限定的ではなく、例示的であることを意図するものである。例えば、上述の実施例(またはその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用し得る。当業者であれば、上記の説明を検討することにより、他の実施形態を使用することもできる。要約書は、読者が技術開示の性質を迅速に確認できるように、連邦法施行規則第37巻第1.72条(b)に準拠して提供されている。要約書は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または制限するために使用されるものではないという理解のもとに提出される。また、上記の発明を実施するための形態では、開示を合理化するために、様々な特徴がグループ化される場合がある。これは、請求されていない開示された特徴が、いかなる請求項にも必須であることを意図すると解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、特定の開示される実施形態のすべての特徴にない場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、実施例または実施形態として発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態として独立しており、そのような実施形態が、様々な組み合わせまたは順列で互いに組み合わせることができることが企図されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって権利が与えられる均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
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図7B
図7C
図8
図9
【国際調査報告】