(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】水耕栽培されたセルロース性材料をサイロ貯蔵するためのプロセスおよび組成物
(51)【国際特許分類】
A23K 30/18 20160101AFI20241024BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A23K30/18
A01G7/00 601Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530453
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021060629
(87)【国際公開番号】W WO2023096636
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521362379
【氏名又は名称】ハイドログリーン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス,ショーン
【テーマコード(参考)】
2B022
2B150
【Fターム(参考)】
2B022DA19
2B150AA02
2B150AB01
2B150EA03
2B150EB01
2B150EE01
(57)【要約】
水耕栽培されたセルロース性材料をサイロ貯蔵するためのシステム、方法、および装置が開示される。植物および作物を栽培するための栽培機システムは、植物または作物周囲の環境ストレスを減少させる複数の環境因子を制御することにより好気環境を提供する。環境ストレスの減少は、加水分解酵素活性を増大させ、かつ追加の加水分解酵素を放出させる。加水分解酵素は、植物または作物の複数の複合貯蔵分子を単純貯蔵分子へと分解する。複数の複合貯蔵分子の分解は、サイロ貯蔵されたセルロース性材料の栄養素利用可能性および乾物ならびにサイロ貯蔵されたセルロース性材料の保存寿命を増加させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、水耕栽培されたセルロース性材料をサイロ貯蔵するための方法:
栽培機システムの苗床上の複数の種子のジベレリン酸の量を増加させるステップであって、該栽培機システムは、複数の環境因子を制御するために構成されるステップ;
該複数の種子のうちの少なくとも1個の種子内の少なくとも2つのタイプの酵素を放出させるステップであって、該少なくとも2つのタイプの酵素がジベレリン酸の量の増加により放出されるステップ;
該少なくとも2種の酵素のうちの少なくとも1種の酵素により、該少なくとも1個の種子内の複数の複合貯蔵分子を複数の単純分子へと分解するステップ;
該少なくとも1個の種子をセルロース性材料として成熟まで成長させるステップであって、動物飼料の酵素活性が該複数の複合貯蔵分子の分解により最大化されるステップ;
該複数の種子を該苗床から収穫するステップ;
該セルロース性材料をサイロ貯蔵するステップであって;該酵素活性はサイロ貯蔵中のタンパク質分解を減少させるステップ。
【請求項2】
前記複合貯蔵分子がセルロースを含み、かつ前記複数の単純分子がヘミセルロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の単純分子が単糖を含み、かつ該単糖が前記サイロ貯蔵ステップ中に乳酸菌によりエネルギー源として利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
好気相の持続時間が、酵素活性の最大化により短縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つのタイプの酵素のうちの少なくとも1種が炭水化物を分解し、前記セルロース性材料中の単糖レベルを上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種の酵素のうちの少なくとも1種の酵素がプロテアーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の酵素が前記セルロース性材料の乾物を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下を含む、水耕栽培された動物飼料をサイロ貯蔵するための方法:
複数の環境因子を制御するために構成される栽培機システムを利用して好気環境を提供するステップ;
複数の種子に対する酸素供給を増加させるステップ;
液体を用いて該複数の種子に灌水するステップ;
加水分解により該複数の種子内の複数の複合貯蔵分子を複数の単純分子へと分解するステップ;
複数の単糖を利用してアデノシン三リン酸を生成させるステップ;
少なくとも1個の種子を動物飼料へと成長させるステップであって、該動物飼料のタンパク質分解がアデノシン三リン酸の生成により増加するステップ;および
該動物飼料をサイロ貯蔵するステップ。
【請求項9】
前記液体が少なくとも1種の活性酸素種を含み、かつ該少なくとも1種の活性酸素種が酵素活性を増大させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の複合貯蔵分子が炭水化物を含み、かつ前記単純貯蔵分子が単糖を含み、かつ該単糖が前記サイロ貯蔵ステップ中に乳酸菌へとエネルギーを提供する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記好気環境がジベレリン酸を増加させ、かつ該ジベレリン酸が前記複数の複合貯蔵分子の分解を増加させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の種子のうちの少なくとも1個の種子内の少なくとも2つのタイプの酵素を放出させるステップであって、該少なくとも2つのタイプの酵素は、ジベレリン酸の量の増加により放出されるステップ
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
乳酸菌が前記サイロ貯蔵ステップ中にエネルギー源として単純分子を利用する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
複合貯蔵分子の分解が前記サイロ貯蔵ステップ中の乾物縮小を減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
以下を含む、水耕栽培された動物飼料をサイロ貯蔵するためのサイロ貯蔵システム:
さらに以下を含む栽培機システム:
フレーム構造によって動作可能に支持され、かつ第2の側部に対向する第1の側部および第2の末端部に対向する第1の末端部を有する該フレーム構造の長さおよび幅にわたって配置される苗床であって、複数の種子を収納し、かつ種子を動物飼料として成熟まで成長させるために構成される、苗床;
該苗床の複数の環境因子を制御するための制御システムであって、該複数の環境因子が該複数の種子を成長させるための好気環境を提供し、該複数の環境因子が酸素および水を含む、制御システムであって;
該好気環境が該複数の種子内のジベレリン活性を増加させ;
該複数の種子のうちの少なくとも1個の種子内の少なくとも2つのタイプの酵素が放出され、該少なくとも2つのタイプの酵素がジベレリン酸の量の増加により放出され;
複数の複合貯蔵分子が、該少なくとも2種の酵素のうちの少なくとも1種の酵素により該少なくとも1個の種子内で複数の単純分子へと分解される、制御システム;
苗床から動物飼料を取り出すための収穫機構;および
植物を発酵させ、かつ植物を貯蔵するためのサイロ貯蔵装置であって、乳酸菌が発酵中に該複数の単純分子を利用する、サイロ貯蔵装置。
【請求項16】
複合貯蔵分子の分解が発酵中の乾物縮小を減少させる、請求項15に記載のサイロ貯蔵システム。
【請求項17】
前記複数の環境因子が、温度および光をさらに含む、請求項15に記載のサイロ貯蔵システム。
【請求項18】
前記複数の複合貯蔵分子が炭水化物を含み、かつ前記単純貯蔵分子が単糖を含み、かつ該単糖が発酵中に乳酸菌へとエネルギーを提供する、請求項15に記載のサイロ貯蔵システム。
【請求項19】
前記複合貯蔵分子がセルロースを含み、かつ前記複数の単純分子がヘミセルロースを含む、請求項15に記載のサイロ貯蔵システム。
【請求項20】
酵素活性の増大が、発酵中の貯蔵相の持続時間を増加させる、請求項15に記載のサイロ貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サイロ貯蔵に関する。より詳細には、しかし排他的でなく、本開示は、水耕栽培されたセルロース性材料をサイロ貯蔵するためのプロセスおよび組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜は、その健康を維持するために、1日当たりに一定量の乾物および栄養素を摂取することを必要とする。かびの生えたサイレージは、比較的多量の乾物損失または縮小および家畜出来高の不良をもたらす。腐敗および品質の低下は、好気条件、不適切なサイロ貯蔵準備もしくは充填、または植物材料の不十分な分解の結果であり得る。サイレージプロセス中には、様々な細菌の集団が糖を利用し、これによりサイロ貯蔵プロセスを可能にする。セルロース性材料からヘミセルロースなどのより容易に利用可能な形態への変換は、サイロ貯蔵生成物の品質を向上させる。したがって、一貫しており(consistent)、容易に消化可能で、かつ単糖が上昇した生成物が必要とされ、これは乳酸菌(LAB)に対してより多量のエネルギー源を提供し、それにより、より効率的かつ適時にサイロ貯蔵プロセスを完了させることにより、サイロ貯蔵プロセスに対する利点を提供する。より効率的なサイロ貯蔵プロセスを用いて、タンパク質分解および損失は最小化されることが期待され、それにより保存寿命およびサイロ貯蔵材料の品質が向上するであろう。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様では、水耕栽培された動物飼料をサイロ貯蔵するための方法が開示される。方法は、栽培機システムの苗床上の複数の種子のジベレリン酸の量を増加させるステップを含むことができる。栽培機システムは、複数の環境因子を制御するために構成することができる。方法はまた、複数の種子のうちの少なくとも1個の種子内で少なくとも2つのタイプの酵素を放出させるステップも含むことができる。少なくとも2つのタイプの酵素は、ジベレリン酸の量の増加により放出させることができる。方法は、少なくとも2種の酵素のうちの少なくとも1種の酵素により、少なくとも1個の種子内で複数の複合貯蔵分子を複数の単純分子へと分解するステップをさらに含むことができる。方法はまた、少なくとも1個の種子を成熟まで成長させるステップも含むことができる。少なくとも1個の種子の酵素活性は、複数の複合貯蔵分子の分解により最大化させることができる。方法は、苗床から複数の種子を収穫するステップおよび複数の種子をサイロ貯蔵するステップを含むことができる。酵素活性は、サイロ貯蔵の好気相中のタンパク質分解を増加させることができる。方法は、複数の環境因子を制御するために構成された栽培機システムを利用して、好気環境を提供するステップを含むことができる。方法はまた、複数の種子に対する酸素供給を増加させるステップおよび液体を用いて複数の種子に灌水するステップも含むことができる。方法は、加水分解により、複数の種子内で複数の複合貯蔵分子を複数の単純分子へと分解するステップをさらに含むことができる。方法はまた、複数の単糖を利用してアデノシン三リン酸を生成させるステップおよび少なくとも1個の種子を動物飼料へと成長させるステップも含むことができる。動物飼料のタンパク質分解は、アデノシン三リン酸の生成により増加させることができる。最後に、方法は、動物飼料をサイロ貯蔵するステップを含むことができる。
【0004】
本開示の別の態様では、水耕栽培された動物飼料をサイロ貯蔵するためのサイロ貯蔵システム。サイロ貯蔵システムは、栽培機システムおよびサイロ貯蔵装置を含むことができる。栽培機システムは、フレーム構造によって動作可能に支持され、かつ第2の側部に対向する第1の側部および第2の末端部に対向する第1の末端部を有するフレーム構造の長さおよび幅にわたって配置される苗床をさらに含むことができる。苗床は、複数の種子を収納し、かつ種子を成熟まで成長させるために構成することができる。栽培機システムはまた、苗床の複数の環境因子を制御するための制御システムも含むことができる。複数の環境因子は、複数の種子を成長させるための好気環境を提供することができる。好気環境は、複数の種子内での酵素活性を増加させることができる。栽培機システムはまた、苗床から動物飼料を取り出すための収穫機構も含むことができる。サイロ貯蔵装置は、植物を発酵させかつ植物を貯蔵するために構成することができる。
【0005】
したがって、本開示の主な目的、特徴、または利点は、最先端の技術を上回って改善することである。
【0006】
本開示のさらなる目的、特徴、または利点は、サイロ貯蔵されたセルロース性材料の保存寿命を増加させることである。
【0007】
本開示のまたさらなる目的、特徴、または利点は、制御された環境中でサイロ貯蔵されたセルロース性材料のうちの少なくとも一部を成長させることにより、サイロ貯蔵されたセルロース性材料の品質を向上させることである。
【0008】
別の目的、特徴、または利点は、セルロース性材料内での酵素活性を増加させることにより、サイロ貯蔵されたセルロース性材料中の乾物を増加させることである。
【0009】
別の目的、特徴、または利点は、より効率的なサイロ貯蔵プロセスを通じて乾物の縮小を最小化することである。
【0010】
また別の目的、特徴、または利点は、サイロ貯蔵されたセルロース性材料中の栄養素利用可能性を増加させることである。
【0011】
本開示の、これら、および/または他の目的、特徴、または利点のうちの1種以上が、後続の本明細書および特許請求の範囲から明らかになるであろう。単一の態様が、それぞれ、および全部の、目的、特徴、または利点を提供する必要はない。異なる態様は、異なる目的、特徴、または利点を有し得る。したがって、本開示は、本明細書中で述べられるいずれかの目的、特徴、または利点に対して、またはそれにより限定されるべきではない。
【0012】
本開示の図示の態様について、参照により本明細書に組み込まれている添付の図面を参照して、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の例示的な態様による植物ホルモンと乾物との間の相互作用を図示したものである。
【
図2】
図2Aは、低酸素条件下で栽培される動物飼料を図的に表現したものである。
図2Bは、好気条件下で栽培される動物飼料を図的に表現したものである。
【
図3】異なる環境条件下でのアデノシン三リン酸(ATP)生成を示す図である。
【
図4】本開示の例示的な態様による植物ホルモン間の相互作用を図示したものである。
【
図5】本開示の例示的な態様による植物ホルモンとの活性酸素種(ROS)相互作用を示すフローチャートである。
【
図6】セルロースおよびキシランの加水分解反応を図示したものである。
【
図7】2個のグルコース分子へのマルトースの加水分解を描写して図示したものである。
【
図8】アデノシン三リン酸生成を描写して図示したものである。
【
図9】本開示の例示的な態様による、異なる過酸化水素濃度および塩分処理に対するオオムギの発芽パーセンテージを示す図である。
【
図10】3回の混合物収集時点に対する、パーセンテージとして表わされる可消化中性デタージェント繊維画分の図である。
【
図11】4回の混合物収集時点に対する、推定上の総可消化栄養素パーセンテージを示す図である。
【
図12】3回の混合物収集時点に対する、パーセンテージとして表わされるデンプン消化を示す図である。
【
図13】4回の混合物収集時点に対する、パーセンテージとして表わされる可消化中性デタージェント繊維画分を示す図である。
【
図14】本開示の一態様によるサイロ貯蔵システムを図示したものである。
【
図15】本開示の例示的な態様による栽培機システムを図示したものである。
【
図16】本開示の例示的な態様による栽培システムの苗床の一部分の側面斜視図である。
【
図17】その苗床を示す栽培機システムの一部分の別の側面斜視図である。
【
図18】その別の苗床を示す栽培機システムの一部分の側面斜視図である。
【
図19】
図18に示される苗床をさらに示す栽培機システムの一部分の端面斜視図である。
【
図20】その別の苗床を示す栽培機システムの一部分の側面斜視図である。
【
図21】本開示の例示的な態様による収穫機構の上面図である。
【
図22】栽培機システムの別の観点を示すブロック図である。
【
図23】水耕栽培された種子をサイロ貯蔵するための方法を示すフローチャートである。
【
図24】水耕栽培された種子をサイロ貯蔵するための方法を示す別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、飼料濃縮物、牧草、およびミネラル補給剤をはじめとする動物飼料およびセルロース性材料中の乾物および栄養素を増加させるための、種子の制御された水耕での発芽中に生成される、酸素に富む環境の使用に関する。発芽および実生発達中の高等植物に共通する代謝プロセスならびに植物の環境を活用して、栽培機システムは、デンプンおよびセルロースをはじめとする複合多糖、複合タンパク質、ならびにトリグリセリドの、それぞれ、その還元された、単糖、アミノ酸、および脂肪酸前駆体への変換を可能にする。したがって、LABに対してより多量のより大きなエネルギー源を提供することによりサイロ貯蔵プロセスに対する利点を提供する、一貫しており、容易に消化可能で、かつ単糖が上昇した生成物は、より効率的かつ適時にサイロ貯蔵プロセスを完了させる。より効率的なサイロ貯蔵プロセスを用いて、タンパク質分解および損失は最小化されることが期待され、それにより容易に利用可能な栄養源を含むサイロ貯蔵材料の保存寿命および品質が向上するであろう。有害な細菌の低減は、乾物および栄養素の損失を制限し、かつサイロ貯蔵材料の保存寿命を増加させる。
【0015】
植物または種子とは、植物界または顕花植物、穀物、マメ科穀類、イネ科植物、根菜作物および塊茎作物、野菜作物、果実植物、菽穀類、薬用作物、香料作物、飲料植物、糖およびデンプン、香辛料、油脂植物、繊維作物、ラテックス作物、食用作物、飼料作物、プランテーション作物もしくは牧草作物をはじめとする被子植物由来のいずれかの植物を意味し得る。
【0016】
穀物としては、イネ(Oryza sativa)、コムギ(コムギ属(Triticum))、トウモロコシ(Zea mays)、ライムギ(Secale cereale)、エンバク(Avena sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、モロコシ(Sorghum bicolor)、トウジンビエ(Pennisetum glacucum)、シコクビエ(Eleusine coracana)、ヒエ(Echinochloa frumentacea)、アワ(Setaria italica)、スズメノコビエ(Paspalum scrobiculatum)、キビ(Panicum millaceum)が挙げられる。
【0017】
菽穀類としては、ケツルアズキ(black gram、kalai、またはurd)(ビグナ・ムンゴ変種ラジアツス(Vigna mungo var, radiatus))、ガラスマメ(Lathyrus sativus)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)、ササゲ(Vigna sinensis)、リョクトウ(Vigna radiatus)、ホースグラム(Macrotyloma uniflorum)、レンズマメ(Lens esculenta)、モスビーン(Phaseolus aconitifolia)、エンドウマメ(Pisum sativum)、キマメ(Cajanas cajan、Cajanus indicus)、フィリペサラ(philipesara)(ファセオルス・トリロブス(Phaseolus trilobus))、ダイズ(Glycine max)が挙げられる。
【0018】
油糧種子とは、クロガラシ(Brassica nigra)、トウゴマ(Ricinus communis)、ココナツ(Cocus nucifera)、ラッカセイ(Arachis hypgaea)、カラシナ(Brassica juncea)、トリア(toria)(ナプス(Napus))、ニガー(Guizotia abyssinica)、アマニ(Linum usitatissumun)、ベニバナ(Carthamus tinctorious)、ゴマ(Seasmum indicum)、ヒマワリ(Helianthus annus)、シロガラシ(Brassica alba)、アブラヤシ(Elaeis guniensis)が挙げられる。繊維作物としては、クロタラリア(Crotalaria juncea)、コウマ(ツナソ属(Corchorus))、ワタ(ワタ属(Gossypium))、メスタ(mesta)(フヨウ属(Hibiscus))、またはタバコ(タバコ属(Nicotiana))が挙げられる。
【0019】
糖およびデンプン作物としては、バレイショ(Solanum tberosum)、サツマイモ(Ipomea batatus)、キャッサバ(Manihunt esculenta)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ビート(Beta vulgaris)が挙げられる。香辛料としては、コショウ(Piper nigrum)、キンマ(Piper betle)、ショウズク(Elettaria cardamomum)、ニンニク(Allium sativum)、ショウガ(Zingiber officinale)、タマネギ(Allium cepa)、トウガラシもしくはチリ(Capsicum annum)、またはウコン(Curcuma longa)が挙げられる。牧草としては、ブッフェルグラスもしくはアニャン(anjan)(センチルス・シリアリス(Cenchrus ciliaris))、シマスズメノヒエ(Paspalum dilatatum)、ディナナスグラス(dinanath grass)(チカラシバ属(Pennisetum))、ギニアグラス(guniea grass)(Panicum maximum)、マーベルグラス(ヒメオニササガヤ(Dicanthium annulatum))、ネピアグラスもしくはエレファントグラス(Pennisetum purpureum)、パンゴラグラス(Digitaria decumbens)、パラグラス(Brachiaria mutica)、スーダングラス(Sorghum sudanense)、テオシント(Echlaena mexicana)、またはブルーパニックグラス(Panicum antidotale)が挙げられる。牧草マメ科作物としては、ベルシームまたはエジプトクローバー(Trifolium alexandrinum)、セントロセマ(セントロセマ・プベセンス(Centrosema pubescens))、グアーマメまたはクラスタマメ(Cyamopsis tetragonoloba)、アルファルファまたはルーサン(Medicago sativa)、サイラトロ(sirato)(Macroptlium atropurpureum)、ベルベットビーン(velvet bean)(ムクナ・コチンチネンシス(Mucuna cochinchinensis))が挙げられる。
【0020】
プランテーション作物としては、バナナ(Musa paradisiaca)、アレカヤシ(Areca catechu)、クズウコン(Maranta arundinacea)、カカオ(Theobroma cacao)、ココヤシ(cocos nucifera)、コーヒー(Coffea arabica)、チャ(Camellia theasinesis)が挙げられる。野菜作物としては、トウガン(Beniacasa cerifera)、ニガウリ(Momordica charantia)、ユウガオ(Lagenaria leucantha)、ナス(Solanum melongena)、ソラマメ(Vicia faba)、キャベツ(アブラナ属(Brassica))、ニンジン(Daucus carota)、カリフラワー(アブラナ属)、サトイモ(Colocasia esulenta)、キュウリ(Cucumis sativus)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、タロイモもしくは食用アルム(コロカシア・アンチクオルム(Colocasia antiquorum))、ゾウコンニャクもしくはヤムイモ(Amorphophallus campanulatus)、サヤマメ(インゲンマメ(Phaseolus vlugaris))、コールラビ(アブラナ属)、ヤムイモ(ヤマノイモ属(Dioscorea))、レタス(Lactuca sativa)、マスクメロン(must melon)(メロン(Cucumis melo))、食用カラスウリ(pointed gourd)もしくはパルワル(Trchosanthes diora)、カボチャ(カボチャ属(Cucrbita))、ダイコン(Raphanus sativus)、オクラ(bhendi)(Abelmoschus esculentus)、トカドヘチマ(Luffa acutangular)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、ヘビウリ(Trichosanthes anguina)、トマト(Lycoperscium esculentus)、カブ(アブラナ属)、またはスイカ(Citrullus vulgaris)が挙げられる。
【0021】
薬用作物としては、アロエ(Aloe vera)、アシュワガンダ(ashwagnatha)(Withania somnifera)、ベラドンナ(Atropa belladonna)、ビショップボウフウ(アンミ・ビスナガ(Ammi visnaga))、ブリンガラージ(アメリカタカサブロウ(Eclipta alba))、キナ(キナノキ属種(Cinchona sp.))、コレウス(coleus)(コレウス・フォルスコリ(Coleus forskholli))、ヤマノイモ(ヤマノイモ属)、グロリオサ(Gloriosa superba)、トコン(ipecae)(Cephaelis ipecauanha)、ヒハツ(Poper longum)、サクラソウ(オエノテラ・ラマレキアナ(Oenothera lamarekiana))、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)、サルパガンダ(Rauvalfia serpentine)、センナ(Cassia angustifolia)、ショウブ(Acorus calamus)、またはバレリアン(valeriana)(バレリアナ・ワリチイ(Valeriana wallaichii))が挙げられる。
【0022】
香料作物としては、アンブレット(ambrette)(リュウキュウトロロアオイ(Abelmoschus moschatus))、セロリ(Apium graveolens)、シトロネラ(Cymbopogon winterianus)、ゼラニウム(Pelargonium graveolens)、ジャスミン(Jasminum grantiflorum)、ベチバー(khus)(Vetiveria zizanoids)、ラベンダー(ラベンダー属種(Lavendula sp.))、レモングラス(Cymbopogon flexuosus)、ミント、パルマローザ(cymbopogon martini)、パチョリ(Pogostemon cablin)、サンダルウッド(Santalum album)、ホーリーバジル(Ocimum sanctum)、またはチューベローズ(Polianthus tuberosa)が挙げられる。食用作物はヒト消費のために収穫され、飼料作物は家畜消費のために収穫される。牧草作物としては、動物が直接的に給餌されるか、または裁断して家畜に給餌されることができる作物が挙げられる。
【0023】
乾物は、その水分が除去された後に残る、動物飼料または作物の一部分である。乾物としては、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、栄養素、または抗酸化物質が挙げられる。家畜は、その健康を維持するために、1日当たりに一定量の乾物を摂取することを必要とする。新鮮な牧草地は高い含水量および比較的低いパーセンテージの乾物を有する。動物飼料、牧草作物、または食用作物中の乾物を増加させるためのプロセス、装置、およびシステムが必要とされている。植物成長および乾物の量は、環境により強く影響される。乾物の減少などの大部分の植物の課題は、環境ストレスにより引き起こされる。水、湿度、栄養、光、温度、および/または存在する酸素のレベルなどの環境因子が、
図1~3に示される通り、植物の成長および発達に影響を及ぼし得る。
【0024】
栄養素消化率は、個体または動物により吸収される栄養素の量であり、一般的に、糞便中に残った栄養素の量を差し引いた、摂取された栄養素の量として算出される。乳製品および牛肉食糧中への酵素の取り込みは、入り混じった結果を生じるとともに、主に畜牛体内のアミラーゼに焦点を当てられてきた。乳製品および牛肉食糧中へのアミラーゼの取り込みは、15,000KNUがデンプンに富む飼料中に供給された場合に、12パーセントまで牛乳-飼料変換を増加させることが示されてきた(Gencoglu et al., 2011)。肉牛では、12,000KNUの外因性(exogenouse)アミラーゼの添加は、8パーセント%まで1日増加率を改善した(Tricarico et al., 2007)。牛乳の収量および成分のアミラーゼの直接的な影響は、わずかな著者により報告された牛乳および牛乳成分の増加と混ぜられる(Klingerman et al., 2009)。試験同士の間で一貫して、アミラーゼの添加は、栄養素消化率および飼料利用効率を改善させることが報告されてきた(Gencoglu et al, 2011;Tricarico et al., 2007;Klingerman et al., 2009;Andreazzi et al., 2018;Noziere et al., 2014;Meschiatti et al., 2019)。一般的に、酵素が高デンプン食に取り込まれ、かつ動物消化までの作用時間が与えられる実験は、全体的な影響が比較的高い傾向にあるように見える(Tricarico et al., 2007;Klingerman et al., 2009)。穀物の発芽プロセス中に生成される酵素の使用は、麦芽生成産業に対する応用で長く用いられてきたが、最適化された種子の水耕発芽中に生成される酵素を活用するプロセスは、飼料の消化を改善するために飼料産業では未だ実行されていない。酵素を活用し、かつ正しい条件を用いて植物を提供することにより、植物乾物は増加し、添加剤を用いないか、または限定された添加剤を用いて、酵素がサイロ貯蔵プロセスを開始することができる。
【0025】
酸素は、呼吸および土壌から根への栄養素移動を含む多数の植物プロセスでの必須成分である。酸素の量は、呼吸の効率に影響し得る。酸素は、拡散を通じて植物中へと受動的に移動する。嫌気条件で成長した植物では、酸素の取り込みまたは消失はより大きいか、または周囲環境からの物理的輸送による拡散は、発芽の可能性および早期実生発達を妨げるかもしくは減少させ得る。嫌気条件は、栄養素欠乏もしくは植物内での毒性、根もしくは植物死、植物の成長の低減、または乾物の低減を引き起こし得る。酸素は、解糖または酸化的リン酸化での電子受容体として利用可能でない。嫌気条件は、空気または酸素循環を有しない室内で植物または種子を成長させるなどの、空気中の酸素の量の低下により引き起こされる場合がある。しかしながら、硝酸塩(NO
3)、亜硝酸塩(NO
2)、および亜硫酸塩(SO
3)などの化合物中の結合型酸素は、それでも、環境中に存在し得る。空気とのガス交換を阻害する、植物の根域中または土壌中に過剰の水がある湛水もまた、嫌気条件を引き起こし得る。低酸素条件は、植物の環境中に不十分な酸素がある場合に起こり、植物は、それに従ってその成長および代謝を順応させなければならない。過剰な散水または湛水した土壌は、低酸素条件を引き起こし得る。嫌気または低酸素条件が持続する場合、微生物、真菌、および植物の活動が、いかなる残余の酸素をも迅速に使い尽くす。植物は、根による栄養素取り込みの欠如に起因してストレスを受け、植物の気孔は閉じ始め、光合成は低減され、乾物が減少する。長期間の酸素欠乏は、
図2Aに示される通り、収量低減、根枯れ、植物死、または疾患および有害生物に対するより高い感受性をもたらし得る。
図2Bに示される通り、好気条件下では、植物成長は強くなり得る。好気条件とは、酸化反応を行なうために十分な酸素分子または化合物およびエネルギーが存在する場合であり、
図3に示される通り、植物代謝を増加させ、かつ乾物を増加させる。
【0026】
光は、植物成長ならびに乾物を増加させる酵素、糖およびデンプンの生成の増加に対して必須の成分である。植物が受ける光が多い程、光合成および酵素利用可能性を高める他の植物メカニズムを介して食物およびエネルギーを生成するその能力はより大きい。酵素は、水酸化物または栄養素の単量体単位に固定された水素などの代謝的に利用可能な形態への水中に貯蔵される化学的エネルギーの変換を通して、乾物を増加またはつくり出すための加水分解を促進する。光は、早期発芽および早期実生発達を促進し、それにより、酵素の利用可能性を増加させることができる。エネルギーは、酵素を産生させるか、またはその発現を増加させるために用いることができ、これが乾物および酵素活性を増加させる。温度は、光合成、蒸散、呼吸、発芽、および花成をはじめとする大部分の植物プロセスに影響を及ぼす。温度が特定の点まで上昇するにつれ、光合成、蒸散、および呼吸は増加する。温度が低すぎるか、または最大点を超過する場合、光合成、蒸散、および呼吸は減少する。日照時間と組み合わせた場合、温度はまた、栄養成長から生殖成長への変化にも影響を及ぼす。発芽のための温度は、植物種により変わり得る。一般的に、寒候期作物(例えば、ホウレンソウ、ダイコン、およびレタス)は55°~65°Fで発芽し、暖候期作物(例えば、トマト、ペチュニア、およびロベリア)は65°~75°Fで発芽する。低い温度はエネルギー利用を低減させ、単糖貯蔵を増加させるが、しかしながら、有害な温度は、成長不全および低品質の植物を生じる。温度の特異的な制御は、発達全体を通して最大の酵素加水分解を促しながら、光合成の開始付近での細胞分裂を妨げ、それにより乾物および酵素活性を増加させる可能性がある。種子の基本的範囲付近の温度は、概ね最初の120時間を通じて最大の酵素加水分解を支持すると考えられる。120時間で基本値未満に温度を低減させることは、環境に容易に曝露される組織中の代謝活性を低減させながら、セルロース性材料層内の種子に対する影響を低減させており、乾物および酵素活性を減少させると考えられる。
【0027】
水および湿度は、乾物の増加および酵素活性の活用で重要な役割を果たす。大部分の成長中の植物は、90パーセントの水を含有する。水は、光合成および呼吸の主な成分である。水はまた、細胞形状を維持し、かつ細胞成長を確実にするために必要とされる膨圧の原因でもある。水は、植物を通して移動するミネラルおよび炭水化物に対する溶媒として機能し、一部の植物生化学反応に対する媒体として機能し、酵素産生および発現を増加させ、かつ蒸散中に蒸発する際に植物を冷却する。水は、気孔の開閉を調節し、それにより蒸散および光合成を制御することができ、かつ土壌などの成長媒体を通した根の移動のための圧力源である。湿度とは、現在の温度および圧力で空気が保持することができる水の量に対する空気中の水蒸気の比率である。暖かい空気は、冷たい空気よりも多くの水蒸気を保持することができる。水蒸気は、高湿度の領域から低湿度の領域へと移動する。水蒸気は、高湿度の領域と低湿度の領域との間の差異がより大きい場合に、より早く移動する。植物の気孔が開いている場合、植物の水蒸気は、植物の外側へと周囲の空気中に迅速に移動する。高湿度の領域が気孔の周囲で形成され、植物内部の空隙と植物に隣接する空気との間の湿度の差異を低減させ、蒸散を減速させる。空気が植物周囲の高湿度の領域を吹き飛ばす場合、蒸散は増加する。
【0028】
植物栄養は、乾物の増加および酵素の活用で重要な役割を果たす。植物栄養は、基本的化学元素に対する植物の要求およびその使用である。植物は、正常な成長のために少なくとも17種類の化学元素を必要とする。炭素、水素、および酸素は、大気または水中に見出すことができる。多量要素である窒素、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、および硫黄は、植物により比較的多量に用いられる。窒素は、エネルギー代謝、タンパク質合成で基礎的な役割を果たし、植物成長に直接的に関連付けられる。窒素は光合成活性および葉緑素形成に対して不可欠である。窒素は、細胞増殖を促進する。窒素欠乏は、生命力および色の喪失をもたらす。成長は遅くなり、葉は植物の下部から落ち始める。カルシウムは、植物組織の壁に結合し、細胞壁を安定化し、細胞壁形成に好都合である。カルシウムは、細胞成長、細胞発達を助け、かつ根の形成およびその成長を活性化することにより植物の生命力を改善する。カルシウムは、数種類の異なるプロセスを安定化および調節する。マグネシウムは、光合成に必須であり、かつリンの吸収および輸送を促進する。マグネシウムは、植物内での糖の貯蔵に寄与する。マグネシウムは、酵素活性化因子の機能を果たす。硫黄は、光合成を行なうために必要であり、かつタンパク質合成および組織形成を仲介する。
【0029】
植物微量要素または微量元素である鉄、亜鉛、モリブデン、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、および塩素は、比較的少量で植物により用いられる。多量要素および微量要素は、水により溶解され、続いて植物根により吸収されることができる。これらのうちのいずれかの不足は欠乏症を引き起こし、どの栄養素が失われるか、およびどの程度であるかに応じて、植物の全体的な状態に対する様々な有害作用を伴う。施肥は、乾物および酵素活性に影響を及ぼし得る。施肥とは、栄養素が植物周囲の環境に添加される場合である。肥料は、水または土壌などの植物栽培表面に添加することができる。追加の微量要素および多量要素を、栽培機システムにより植物に添加することができる。
【0030】
発芽および実生発達は、4つの成長段階へと分けることができる:吸水、安定、発芽、および実生。一部の態様では、水耕プロセスを利用する成長は、より発達した植物に対して一般的であるものとは異なる、成長段階中の環境設定を有する場合がある。異なる環境設定は、植物がより早く発芽および発達することを可能にし、酵素活性を増加させるか、または乾物を増加させることができる。栽培機システム10を利用して環境条件を制御することにより、炭水化物および乾物を増加させるために酵素を活用することができる。環境条件は、植物タイプに基づいて変えることができる。吸水は、乾燥種子による水の取り込みである。種子が水を取り込むと、種子は膨張し、酵素が放出され、食料供給物には水分が与えられる。酵素は活性になり、種子はその代謝活性を増加させる。吸水中には、相対湿度は高く、90%~98%相対湿度の範囲であり得る。温度は、76°F~82°Fまたは22℃~28℃の範囲であり得る。空気の移動は最小限である。吸水は、18~24時間続く場合がある。安定段階とは、水の取り込みが非常にわずかしか増加しない場合である。安定段階は、アブシジン酸およびジベレリン酸(GA)合成または不活性化などのホルモン代謝と関連付けられる。安定段階中には、湿度および温度は吸水段階よりも低いことができる。相対湿度は70%~90%の範囲であり得、温度は72°F~77°Fまたは22℃~26℃の範囲であり得る。空気の移動は、未だ最小限であり得る。安定段階は、18~24時間続く場合がある。発芽は、種子、胞子、または他の生殖体の芽生えである。水の吸収、温度、酸素利用可能性、および光曝露が、プロセスの開始に影響し得る。発芽中には、相対湿度は吸水および安定段階よりも低い場合がある。相対湿度は、60%~70%の範囲であり得る。温度は安定段階と同じであり得、72°F~77°Fまたは22℃~26℃の範囲であり得る。空気の移動は穏やかであり得る。発芽は、24~48時間続く場合がある。最終相は、実生または植物発達期であり、ここで植物の根が発達して広がり、栄養素が吸収されて、植物の迅速な成長を加速させる。実生段階は、植物が成熟するまで続く場合がある。実生段階はまた、追加の相へと分けることもできる:実生、発蕾、花成、および熟成。相対湿度はこの段階で最も低いことができ、40%~60%であり得る。温度もまたこの段階で最も低いことができ、68°F~72°Fまたは20℃~22℃の範囲であり得る。空気の移動は高度である。実生期は、72時間からであるか、または植物が成熟に達するまでの範囲であり得る。
【0031】
活性酸素種(ROS)は、種皮、病原体、または細胞内の分子などの他の分子と容易に反応し得る、酸素を含有する不安定分子のタイプである。ROSは、O2の電子受容性に起因して形成されることができる。ROSは、正常な植物の成長を調節するシグナル伝達分子およびストレスに対する応答などの機能で重要な役割を有する。ROSは、光保護および異なるタイプのストレスに対する植物または種子の抵抗性に関与する。しかしながら、多過ぎるROSは、それが酸化させる場合にDNA、RNA、または他の分子に対する損傷を引き起こし、一部の場合には細胞機能を妨げる場合がある。酸素毒性は、制御されない生成および抗酸化物質によるROSの非効率的な除去の両方から起こり得る。UV曝露、熱曝露、渇水、塩分、低温、病原体からの防御、栄養素欠乏または他のタイプの環境ストレス因子などの環境ストレスの期間に、ROSレベルは天然に増加し得る。ROSとしては、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシルラジカル(OH)、次亜塩素酸(HOCL)、硝酸(NO)、アルキルペルオキシルおよびヒドロペルオキシルの両方をはじめとするペルオキシルラジカル(ROO、RはHであり得る)、ペルオキシ亜硝酸アニオン(ONOO-)、酸素(O2)、スーパーオキシドアニオン(O2
-)、過酸化物(O2
-2)が挙げられる。H2O2は、やや反応性であり、相対的に長い半減期を有し、これにより、元の放出部位または生成部位から幾分かの距離を拡散することが可能になる。
【0032】
植物中での内部ROS生成は、葉緑体、ミトコンドリア、およびペルオキシソームで主に見出されるが、小胞体、細胞膜、細胞壁およびアポプラストでも見出され得る。葉緑体光化学系であるPSIおよびPSIIは、内部ROS生成の主要な供給源である。非生物的ストレス因子は、メーラー反応またはフェントン反応を通してROSの形成を引き起こし、その後にO・-
2をH2O2へと変換する。ミトコンドリアでは、ROSは、正常条件で生成されるが、生成は、非生物的ストレス条件により大きく増大される。ペルオキシソームは、その酸化的代謝に起因するROS生成の主要部位である。ストレスの多い条件では、水の利用可能性が低く、かつ気孔が閉じたままである場合、増加した光呼吸が、グリコール酸塩形成につながる。グリコール酸塩は、ペルオキシソーム中のグリコール酸オキシダーゼにより酸化されて、H2O2を放出し、これにより光呼吸中のH2O2の主要な製造因子となる。有害環境条件にある期間には、アブシジン酸(ABA)と組み合わせられたストレスシグナルは、アポプラストをH2O2生成に対する顕著な部位とし、気孔閉鎖を誘導する。細胞膜は、植物細胞の生存に必要な情報を提供する。小胞体の電子伝達系は、局所ROSを生成する。
【0033】
外部ROSとは、植物または種子により内部で生成されないROSである。外部ROSは、散布器により植物もしくは植物の種子に対して外部から散布するか、または植物栽培表面もしくは土壌を通して導入することができる。外部ROSは、H2O2などの単一のタイプのROS、またはH2O2およびO2
-2などの複数のタイプのROSを含むことができる。
【0034】
植物、種子、または細胞内での内部および外部ROSの蓄積は、様々な細胞応答につながる。植物応答は、ROS用量依存的であり得る。ROSは、生命に必要なホルモンバランスを可能にする。ROSは、植物シグナル伝達因子として機能することができ、生体膜を通過することができ、かつ酵素を不活性化または活性化する場合がある。したがって、植物に導入されるROSの量の制御が必要であり得る。ROSは、ABAを酸化してABAを不活性にすることができる。ROSは、
図5に示される通り、ジベレリン(GA)を活性化することによりそれを行なうことができる。
【0035】
ROSは、種子または細胞壁の外部化学と相互作用することができる。一部の種子は、ろう状の外膜を有し、これは発芽を妨げるか、または種子へと水が侵入することを妨げる、化学物質または物理的障壁を含み得る。ろう状の外層を有する種子としては、コムギ、オオムギ、およびライムギなどの穀物が挙げられる。一部の態様では、ROSのO2成分は、細胞壁または種皮の外層と反応して、細胞壁またはろう状外層を弱めるか、緩めるか、または気泡を生じさせ、それにより細胞壁を軟化させる。ROSは、種皮または細胞壁をこじ開ける場合さえある。ROSはまた、多糖分解を媒介し、かつカルシウムチャネルおよびマイトジェン活性化型タンパク質キナーゼを活性化し、細胞壁を拡大し、かつ緩めて、細胞壁中の弱点を引き起こすことにより、細胞壁を破壊することもできる。外部ROSは、種子の環境に導入されて種皮中に弱いスポットをつくり出し、それにより水がより迅速に種子に侵入することを可能にすることができる。これは、種子が発芽し始めるのを助ける場合がある。外部ROSによる弱いスポットの生成は、種子が種子内で追加の内部ROSを放出させ、これが細胞壁または種皮の内部と相互作用して、壁をさらに弱らせる。ROSの非存在下では、細胞壁は強くなり、休眠が継続される場合がある。
【0036】
アブシジン酸(ABA)、GAおよびエチレン(ET)などの植物ホルモンは、種子休眠および種子発芽を調節し、ならびに酵素産生の平衡を保つか、または決定付ける。ABAとGAとの比率は、種子休眠を調節する。ABAのレベルが高い場合、気孔閉鎖、ストレスシグナル伝達、および細胞分裂の遅延が引き起こされ、代謝はダウンレギュレーションされ、かつ乾物が減少する。高いABA/GA比は休眠に好都合である一方で、低いABA/GA比は種子発芽をもたらす。GAの増加は種子発芽が起こるために必要であり、
図4に示される通り、GA発現が増加するにつれ、ABA発現が減少する。ROSの外部導入は、種子の発芽を活性化し、かつ休眠を終了させることができる。
図5に示される通り、種子発芽中のROS作用は、ABA、GA、およびエチレン(ET)などの種子休眠または種子発芽を調節する植物ホルモン同士の間の相互作用に基づく。ABAは、ROS消去酵素活性の促進により、種子発芽に対するROS媒介作用を阻害する。
図5に示される通り、ABAとGAとの比率は、種子休眠を調節する。高いABA/GA比は休眠に好都合である一方で、低いABA/GA比は種子発芽をもたらす。高いABA/GA比は、土壌もしくは栽培表面への、または直接的に種子もしくは植物上への制御されたROSの導入により無効にすることができる。ROSは種子または植物により吸収される。GAはまた、酵素をダウンレギュレーションすることにより、ROS消去酵素を無効にすることもできる。ROSはまた、同様にABAを酸化させることもでき、これによりGAに対するABAの量を減少させる。一部の場合には、ROSは、ABAシグナル伝達またはABA異化の抑制ではなくむしろ、GAシグナル伝達および合成を活性化することにより、種子休眠を解除することができる。続いて、ROSは引き続いてシグナル分子として機能し、ABAシグナル伝達に拮抗する。外部ROSは、種子の内部ROS含有量を増加させ、追加のGAを合成もしくは活性化するか、またはより多くのABAシグナルを抑制することができる。ROSの外部散布(the external application)は、ABAレベルを低下させ、かつGA濃度を増加させ、これが種子発芽を引き起こす。しかしながら、ROSの量または濃度は、モニタリングする必要がある場合がある。一定の限界を超えて、ROSは、低過ぎて発芽を可能にするか、または高過ぎて胚生存率に影響を及ぼし、したがって発芽を防止もしくは遅延させるかのいずれかである。このことは、発芽に関する「酸化ウインドウ」をつくり出し、これは増加したROSレベルの特定の境界内での上首尾な実生発達を制限する。
【0037】
水耕環境でのROSの散布を通じて、ジベレリンの酸化的作用様式がin vivoで模倣され、これがアリューロン層および他の植物細胞組織からの加水分解酵素の放出を支持する。加えて、ROSが存在しない場合の木化反応とは対照的に、ROSが存在する場合には、ペルオキシダーゼなどのリグニン分解酵素は、脱リグニン経路に好都合である。リグニン分解酵素加水分解により促進される脱リグニンは、リグニンが一般的に高等植物での最も複雑かつ不消化性の繊維複合体であると考えられるので、改善された繊維消化性を支持する。外部ROSは、水耕栽培されたセルロース性材料の乾物の量を増加させ、かつ酵素活性を最大化する。高等植物では、発芽プロセス中の酵素放出は、通常、胚からのジベレリン酸(GA)の放出により制御される。光合成に先立って、GA放出速度は、幼植物の代謝要求と正に相関する。より大きな代謝要求は、ジベレリン酸の放出速度の増加を伝える。リグニンペルオキシダーゼは、エネルギー的に、木化ではなくむしろリグニン分解性経路に対して好都合である。
【0038】
好気条件下の水分が与えられた種子では、ROS生成および外部ROS散布は、葉緑体、ミトコンドリア、グリオキシソーム、ペルオキシソーム、および原形質膜中での増加した代謝に相関する。種子吸水中、異なる細胞内構造中でのROSおよびそれらの標的分子のコンパートメント化は、様々な遺伝子の発現を調節する。水は、ROSが輸送されるか、またはより長い距離を移動することを可能にする一方で、乾燥種子中では、ROS生成は種子吸水中の標的付近でなければならない。種子または植物に水分が与えられる場合、外部ROSは、細胞、種子、または植物の外側から、細胞、種子、または植物の内部へと容易に移行することができ、それにより酵素活性および乾物が増加する。
図9は、異なるH
2O
2濃度および塩分処理に対するオオムギの発芽パーセンテージを図示する。塩分処理は、1000分の1での塩分濃度として表わすことができる。
図9中に示される値は、周囲の推定値を図示する、95パーセント信頼区間を伴う固定効果線形モデル推定で表わされる。ROSの散布を通じて、低減された茎伸長および発芽を含めたABAの阻害的影響は低減される。
【0039】
GAは、細胞分裂、茎伸長、および根発達を引き起こす。酵素発現は、発芽中の代謝要求と密接に関連する。吸水直後に植物が代謝的に活発になると、GAが種子胚から放出され、種子の多糖およびタンパク質に富む内胚乳周囲のアリューロン層からのものをはじめとする、種子内からの広いプロフィールの酵素の放出のシグナルを伝える。発芽中、GAはアリューロン層へと移行し、かつこれと相互作用し、それにより、α-アミラーゼを含む加水分解酵素を放出または合成する。用語「アミラーゼ」とは、以下のクラスの酵素をはじめとする、オリゴ糖および多糖中の1,4-α-グルコシド結合を加水分解する酵素を意味する:α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、およびα-グルコシダーゼ。
【0040】
加水分解酵素は、最もエネルギー効率のよい酵素のうちの一部である。1,3;1,4-β-グルカナーゼ(β-グルカナーゼ)、α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼなどの加水分解酵素が放出される。用語「β-グルコシダーゼ」とは、β-D-グルコースの放出を伴って末端非還元性β-D-グルコース残基の加水分解を触媒するβ-D-グルコシドグルコヒドロラーゼを意味する。加水分解酵素が放出されると、それらは、細胞壁多糖、プロテアーゼ、貯蔵タンパク質、および、発芽に対して必須であり、根成長を駆動する糖を提供するデンプン質エネルギー貯蔵をはじめとする複合貯蔵分子の、それらのより単純な単量体サブユニットへの加水分解を促進する。貯蔵分子の加水分解は、植物の主なエネルギー源のうちの1つである。
図6に示される通り、加水分解酵素は、化学結合を水分解することにより、ポリマーを二量体または可溶性オリゴマーへと、かつ続いて単量体へと分解する。
【0041】
β-グルカナーゼは、優勢な細胞壁多糖である1,3;1,4-β-グルカンを加水分解することができる。α-アミラーゼは、内部アミロースおよびアミロペクチン残基を切断する。β-アミラーゼエキソヒドロラーゼは、
図7に示される通り、デンプン分子からマルトースおよびグルコースを遊離させる。これらの還元型栄養素形態は、通常、続いて胚へと輸送されて戻り、ここで解糖および細胞呼吸経路がグルコースを使用して、エネルギーを多量に消費する細胞分裂および生合成反応に必要なATPを生じる。幼植物の代謝要求が増加するにつれ、種子胚からのGAの放出およびアリューロン層からの酵素の放出が同様に増加する。幼植物内での酵素活性は、効率的な光合成の開始時にピークになる。この点で、植物の総代謝要求は、光合成によっては満たすことができず、多量の貯蔵分子が、解糖およびATP生成のためにグルコースへと加水分解されなければならない。
【0042】
大多数の哺乳動物は、セルロースをはじめとする食物繊維を消化するのに苦労する。セルロース多糖は、一次細胞壁の突出したバイオマスであり、ヘミセルロースおよびペクチンがこれに続く。セルロース性材料は、セルロースを含有するいずれかの材料である。細胞が成長を止めた後に生成される二次細胞壁もまた多糖を含有し、ヘミセルロースに共有的に架橋されたポリマー性リグニンにより強化される。セルロースは、無水セロビオースのホモポリマーであり、直鎖β-(1-4)-D-グルカンである。ヘミセルロースは、あるスペクトルの置換基を含む複雑な分岐構造中のキシラン、キシログルカン、アラビノキシラン、およびマンナンなどの、様々な化合物を含むことができる。セルロースは、多形性であるが、平行なグルカン鎖の不溶性結晶性マトリックスとして主に見出される。ヘミセルロースは、通常、セルロースならびに他のヘミセルロースに水素結合し、細胞壁マトリックスを安定化する。セルロース分解酵素またはセルラーゼとは、セルロース材料を加水分解する1種以上の酵素を意味する。酵素は、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β-グルコシダーゼ、またはそれらの組み合わせを含むことができる。酵素は、セルロース性材料をセロデキストリンへと、またはグルコースへと完全に分解する。ヘミセルロース分解酵素またはヘミセルラーゼ(hemicullase)は、ヘミセルロース性材料を加水分解してフルフラールまたはアラビノースおよびキシロースを形成させる1種以上の酵素である。
【0043】
β-キシロシダーゼ、またはβ-D-キシロシドキシロヒドロラーゼは、短いβ(1→4)-キシロオリゴ糖のエキソ型加水分解を触媒し、非還元性末端から連続的d-キシロース残基を除去し、かつキシロビオースを加水分解することができる。β-キシロシダーゼは、ヘミセルロースの最終的分解に従事する。用語「キシラナーゼ」とは、キシラン中の1,4-β-D-キシロシド結合のエンド型加水分解を触媒する、1,4-β-D-キシラン-キシロヒドロラーゼを意味する。用語「エンドグルカナーゼ」とは、セルロース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースなど)、リケニン中の1,4-β-D-グリコシド結合、穀物β-D-グルカンまたはキシログルカンなどの混合型β-1,3-グルカン、およびセルロース性成分を含有する他の植物材料中のβ-1,4-結合のエンド型加水分解を触媒するエンド-1,4-(1,3:1,4)-β-D-グルカン4-グルカノヒドロラーゼを意味する。
【0044】
リグニンは、細胞壁の別の主な成分である。リグニンは、大部分の植物で、一次細胞壁などの支持組織中の主要な構造的材料を形成する複合ポリマーのクラスである。架橋してリグニンを形成するリグノールは、すべてフェニルプロパンから誘導される、3種類の主なタイプのものである:コニフェリルアルコール(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルプロパン)、シナピルアルコール(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニルプロパン)、およびパラクマリルアルコール(4-ヒドロキシフェニルプロパン)。リグニンは、セルロース、ヘミセルロース、およびペクチン成分間の細胞壁中の空間を埋める。リグニンはヘミセルロースへと共有的に架橋して、細胞壁を機械的に強化することができる。リグニン分解酵素は、リグニンポリマーを加水分解する酵素である。リグニン分解酵素としては、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼおよびフェルロイルエステラーゼ、ならびにリグニンポリマーを解重合するか、またはそれ以外の様式で分解することが公知である当技術分野で記載された他の酵素が挙げられる。ヘミセルロース性糖(特にアラビノース)とリグニンとの間で形成される結合を加水分解することが可能な酵素もまた含められる。
【0045】
ストレス中には、細胞壁に局在したリポキシゲナーゼが、多価不飽和脂肪酸(PUFA)のヒドロペルオキシド化を引き起こし、これをROSの活性な供給源とする。病原体の攻撃中、リグニン前駆体は、ROS媒介経路を介して過剰な架橋を受け、リグニンを用いて細胞壁を補強する。リグニンは、特に維管束および支持組織:木部仮道管、道管要素および厚膜細胞中の、セルロース材料、ヘミセルロース、およびペクチン成分間の細胞壁中の空間を埋める。外部ROSが種子または植物へと散布される場合、外部ROSは、種子もしくは植物を消毒するか、または病原体のうちの一部もしくは全部を死滅させることができる。これにより、リグニン前駆体が架橋を停止し、細胞壁を強化して、植物の発芽および成長を妨げる。
【0046】
リグニン解重合は、細胞外ROSまたは外部ROSの存在下で細胞外オキシダーゼおよびペルオキシダーゼにより触媒される一電子酸化反応によって主に達成することができる。ヒドロキシルラジカルはリグニン構造を攻撃し、全細胞、酵素、または他の化学物質による加水分解に対するアクセスポイントをつくり出す。ROSの外部散布は、追加のROSがリグニン構造を攻撃することを可能にし、これによりリグニン分解酵素、ヘミセルロース分解酵素またはヘミセルロース、セルロース分解酵素またはセルラーゼ、およびエンドグルカナーゼによるリグニン、セルロースおよびヘミセルロースの加水分解に対する追加のアクセスポイントをつくり出す。
【0047】
脂質は、水喪失および病原体感染を制限するための構造成分として用いられる。これらの脂質としては、脂肪酸から誘導されるワックス、ならびにクチンおよびスベリンが挙げられる。リパーゼは、脂質、脂肪酸、およびホスホグリセリドをはじめとするアシルグリセリド、リポタンパク質、ジアシルグリセロール等を加水分解する酵素である。リパーゼとしては、以下のクラスの酵素が挙げられる:トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、リソホスホリパーゼ、アシルグリセロールリパーゼ、ガラクトリパーゼ、ホスホリパーゼA1、ジヒドロクマリンリパーゼ、2-アセチル-1-アルキルグリセロホスホコリンエステラーゼ、ホスファチジルイノシトールデアシラーゼ、クチナーゼ、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、1-ホスファチジルイノシトールホスホジエステラーゼ(1-hosphatidylinositol phosphodiesterase)、およびアルキルグリセロホスホエタノールアミン19-ホスホジエステラーゼ(alkylglycerophospho ethanolamine19-hosphodiesterase)。リパーゼは、脂質を糖、二糖、および単量体へと可消化性に分解することにより、脂質の消化性を増大させる。
【0048】
フィチン酸塩は、植物中でのリンの主要な貯蔵形態である。しかしながら、多くの動物が、フィチン酸塩を分解する酵素を欠損しているために、酵素を消化することに問題を抱えているか、または消化することができない。リンは必須元素であるので、無機リンが動物飼料に通常添加される。フィターゼは、フィチン酸塩に対して特異的に作用する加水分解酵素であり、フィチン酸塩を分解して、有機リンを放出する。用語「フィターゼ」とは、ミオ-イノシトール-ヘキサキスリン酸塩またはフィチン内のエステル結合を加水分解する酵素を意味する。4-フィターゼ、3-フィターゼ、および5-フィターゼ(5-phyates)が挙げられる。加水分解酵素の活性を増大させることにより、有機リンが放出され、かつ無機リンは動物飼料に添加する必要がない。
【0049】
プロテアーゼは、ペプチド結合を加水分解することにより、タンパク質および糖などの他の部分を、より小さなポリペプチドおよび単一アミノ酸へと分解する。タンパク質のうちの多くは、貯蔵タンパク質として機能する。プロテアーゼの一部の特異的なタイプとしては、ペプシン、パパインをはじめとするシステインプロテアーゼ、およびキモトリプシンをはじめとするセリンプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、およびメタロエンドペプチダーゼ(metalloen dopeptidase)が挙げられる。プロテアーゼは、種子中に蓄積したタンパク質の加水分解および可動化を通して、発芽で重要な役割を果たす。プロテアーゼはまた、プログラム細胞死、老化、落葉、果実の熟成、植物成長、およびNホメオスタシスでも機能する。非生物的および生物的ストレスに応答して、プロテアーゼは、葉および根タンパク質分解の栄養素再可動化に関与して、収量を改善する。
【0050】
細胞呼吸は、
図8に示される通り、酸素分子または栄養素からの化学エネルギーをアデノシン三リン酸(ATP)へと変換するために、種子の細胞中で起こる代謝反応のセットである。糖、アミノ酸および脂肪酸などの栄養素が、細胞呼吸中に用いられる。酸素は、最も一般的な酸化剤である。好気呼吸は、ATPをつくり出すために酸素を必要とし、解糖への分解でのピルビン酸塩の好ましい方法である。伝達されるエネルギーは、アデノシン二リン酸(ADP)中の結合を破壊して、第3のリン酸基を付加し、リン酸化によりATP、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FADH
2)を形成するために用いられる。NADHおよびFADH
2は、末端電子受容体である酸素および水素を含む電子伝達鎖を用いてATPへと変換される。好気細胞呼吸中に産生されるATPのうちの大部分は、酸化的リン酸化によりつくられる。酸素は化学エネルギーを放出し、これが膜を通してプロトンを押し出し、ATP合成酵素を駆動するための化学浸透ポテンシャルをつくり出す。
【0051】
好気的代謝は、グルコース1分子当たり34分子のATPの代わりにグルコース1分子当たり2分子のATPを生じる嫌気的代謝よりもはるかに効率が高い。酸素中の二重結合は、他の一般的な生物圏分子の二重結合または単結合よりも高いエネルギーを有する。好気的代謝は、クエン酸またはクレブス回路および酸化的リン酸化を継続する。
【0052】
植物細胞呼吸の効率は、酸素の利用可能性により影響を受ける。具体的には、酸化的リン酸化代謝経路または電子伝達連結リン酸化経路は、NADHまたはFADH
2からの電子の移動のために酸素の存在を必要とする。飽和環境中または膨張のための空間がない受け皿系などの圧縮環境中で実生が芽生える間に予期される低酸素条件は、それにより、酸化的リン酸化の最大効率を直接的に制限する。排水および種子膨張のための空間を含む穀類の発芽を可能とするプロセスは、発達全体を通して利用可能な酸素濃度の増加を促進することができる。酸化的リン酸化の効率を強化することは、グルコースなどの単量体の蓄積を通して、乾物が増加することを可能にする。
図6に示される通り、オリゴ糖などの複合分子がそれらのより単純な単量体単位へと加水分解される場合、水分子からの化学エネルギーは、乾物形態へと変換される。水分子および二糖の酸素結合の切断は、代謝的に利用可能な形態への水内の化学エネルギーの変換を可能にする。最も効率的な様式で単量体を利用することにより、効率的な光合成の開始時に乾物を増加させる酵素の放出を増加させることが可能になる。
【0053】
解糖は、酸素の存在を伴うか、または伴わずに起こる。好気条件下では、プロセスは、1分子のグルコースを2分子のピルビン酸塩(ピルビン酸)および2分子のATPへと変換する。グルコースの最初のリン酸化が、酵素アルドラーゼにより分子が2個のピルビン酸塩へと切断されるための反応性を増加させるために必要である。解糖の報酬期の間、4個のリン酸基が基質レベルのリン酸化によりADPへと移動されて4個のATPをつくり出し、ピルビン酸塩が酸化される場合には2個のNADHが生成される。クエン酸回路は、酸素が存在する場合にピルビン酸分子からアセチル-CoAを生成する。アセチル-CoAはCO2へと酸化され、NADはNADHへと還元されて、これが電子伝達鎖により用いられてさらなるATPをつくり出すことができる。酸素が存在しない場合、アセチル-CoAは発酵される。
【0054】
酸化的リン酸化は電子伝達鎖を含み、クエン酸回路中に生成されるNADHを酸化することにより化学浸透ポテンシャルまたはプロトン勾配を確立する。ATPがATP合成酵素を用いて合成され、このとき、化学浸透ポテンシャルが、ADPのリン酸化を駆動するために用いられる。電子伝達は、外因性酸素から提供される化学エネルギーにより駆動される。
【0055】
ROSは、植物子房の果皮を酸化することができる。果皮は、植物子房の熟成し、かつ様々に改質された壁である。果皮は、外側の外果皮、中央の中果皮、および内側の内果皮を有し、これは子房壁から発達する植物果実の壁である。外部ROSは、果実熟成および花の発達をはじめとする植物器官発達中にレドックスシグナル伝達を惹起することができる。ROS生成とROS除去との間の不均衡である酸化的ストレスは、糖が律速因子となり熟成を開始させる際に、熟成中の増加した呼吸速度に起因してミトコンドリア中で起こり、レドックス状態に影響を及ぼす。外部ROSは、不均衡を増大させ、植物が熟成することを可能にすることができる。酸化的ストレスはまた、果実熟成の開始時の葉緑体から有色体への移行中に色素体でも起こる。
【0056】
環境ストレスを減少させ、かつ代謝活性を増大させることにより、植物を、植物の生活環内での酵素活性の最高点に密接に一致する期間中に収穫することができ、増加した発達がもたらされる。酵素活性の最高点で植物を収穫することにより、サイロ貯蔵の第1相中のタンパク質の最大分解が可能になり、サイロ貯蔵された動物飼料の乾物、保存寿命、および品質が増大する。
【0057】
動物飼料または植物組織の栄養素またはミネラル含有量は、乾物基準または材料中の総乾物の割合に対して表わすことができる。酵素活性が最大化される場合、乾物比率は、92%または95%の代わりに、オオムギで118%およびコムギで115%までなど、増大させることができる。収穫された産物は、酵素が豊富である。穀物の麦芽製造特性を調べる場合に報告される酵素値に基づいて、オオムギは、乾物1kg当たり約12,000キロノボ(novo)単位(KNO)のアミラーゼ活性、タンパク質1ミリグラム当たり400単位のプロテアーゼおよびタンパク質1ミリグラム当たり200単位のリパーゼを有すると推定される。コムギは、それぞれ同等および100%多くのリパーゼおよびプロテアーゼ値を伴って、平均でオオムギの量の約50%~75%のアミラーゼレベルを有すると予期される。繊維異化に関連するペルオキシダーゼおよびヘミセルロースなどの酵素もまた、環境ストレスの減少に起因して、サイロ貯蔵プロセスの第1段階の間には非常に活性である可能性が高い。
【0058】
例えば、酵素活性の最高点で収穫されたオオムギでは、見かけの粗タンパク質の量は増加する。見かけの粗タンパク質は、真のタンパク質および非タンパク質窒素(尿素およびアンモニア)を含む、総窒素を表わす、動物飼料またはその植物の含有物である。見かけの粗タンパク質は、牧草作物のタンパク質含有量の重要な指示因子である。一例では、オオムギ中の見かけの粗タンパク質は、酵素活性が大化された時点の6日目に収穫した場合に、117%および125%の代わりに143%まで増加させることができる。別の例では、コムギを、6日目などの最高酵素点で収穫することができ、見かけの粗タンパク質の量は、129%まで増加させることができる。作物、植物、または飼料サンプル含有物の中性デタージェント繊維消化率(NDFd)または中性デタージェント繊維(NDF)は、作物の総繊維構成成分の緊密な推定値である。NDFは、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、シリカ、タンニン、およびクチンなどの植物細胞壁成分を含み、一部のペクチンを含まない。構造炭水化物であるヘミセルロース、セルロース、およびリグニンは、作物の繊維性のかさを表わす。リグニンは不消化性であるが、ヘミセルロースおよびセルロースは、それらの消化管の一部分として、ウシ、ヤギもしくはヒツジなどの第一胃発酵、またはウマ、ウサギ、モルモットなどの後腸発酵のいずれかを有する動物体内で微生物により(様々な程度で)消化されることができる。NDFのパーセンテージは動物が比較的少ない作物を消費する場合に増加するので、NDFは乾物摂取と負に相関すると考えられる。一例では、オオムギでのNDFは、酵素活性が最大化される6日目に収穫した場合に、132%および155%の代わりに178%まで増加させることができる。別の例では、コムギを6日目などの最高酵素点で収穫することができる場合、NDFの量は173%まで増加させることができる。水溶性炭水化物(WSC)は、水中に可溶化および抽出することができる炭水化物である。WSCとしては、単糖、二糖、および主要な貯蔵炭水化物であるフルクタンなどの数種類の短鎖多糖が挙げられる。一例では、オオムギ中のWSCは、酵素活性が最大化された6日目に収穫した場合に、182%および191%の代わりに442%まで増加させることができる。別の例では、コムギを6日目などの最高酵素点で収穫することができる場合、WSCの量は553%まで増加させることができる。パーセンテージでの増加は、植物中の酵素活性を増加させることにより、複合貯蔵分子がより単純な単量体貯蔵分子へと分解されており、栄養素消化率を増大させるという証拠である。デンプンは、容易に利用可能なエネルギー源として、植物の穀粒、種子、または根部分中に主に見出される細胞内炭水化物である。GA活性が増大した作物中では、飼料中に存在するデンプンの量は低減される。これは、飼料の栄養素消化率を増大させる酵素による、グルコースおよびマルトースなどのより単純な糖へのデンプンの分解に起因し得る。酵素活性が最大化される場合、オオムギ中のデンプンの量は17%まで、およびコムギでは26%まで増加させることができる。乾物とは、水を除外するすべての植物材料を意味する。動物飼料または植物組織中の栄養素またはミネラル含有量は、乾物基準または材料中の総乾物の割合に対して表わすことができる。酵素活性が最大化される場合、乾物比率は、92%または95%の代わりに、オオムギでは118%およびコムギでは115%までなど、増加させることができる。これらの増加は、サイロ貯蔵されたセルロース性材料中の栄養素および乾物の増加を可能にする。酵素活性の最大化は、サイロ貯蔵プロセス中に失われる乾物の量および栄養素利用可能性を制限し得る。
【0059】
栄養素の可消化単量体サブユニットへの貯蔵分子の分解は、水耕環境中でGAを活用することにより増大させることができる。GA活性が作物中で増大される場合、粗タンパク質含有量は、ライムギでの15.9%から20.4%へとなど、増加させることができる。ABA活性が増大される場合、粗タンパク質含有量は、例えば、15.9%から13.7%へと減少する。作物、植物、または飼料サンプル中の粗タンパク質含有量は、タンパク質および非タンパク質窒素を含む、食餌中の窒素の総量を表わす。作物、植物または飼料サンプル含有物中の繊維性成分は、最も消化性が低い繊維部分を表わす。最も消化性が低い部分としては、リグニン、セルロース、シリカ、および不溶性形態の窒素が挙げられる。ヘミセルロースは、最も消化性が低い部分には含められない。より高い酸性デタージェント繊維(ADF)を有する作物は、より低い可消化エネルギーを有する。ADFレベルが上昇するにつれ、可消化エネルギーレベルは低下する。GA活性が増大する場合、ADFパーセンテージは、ライムギでの9.2%から12.8%へとなど、増加する。ABA活性が増大する場合、ADFパーセンテージは、9.2%から4.2%へとなど、減少する。GA活性が増大する作物中では、NDFのパーセンテージは、ライムギでの21.6%から27.1%へとなど、増加する。ABA活性が増大する作物中では、NDFパーセンテージは、ライムギでの21.6%から15.2%へとなど、減少する。植物のエタノール可溶性炭水化物(ESC)としては、グルコースおよびフルクトースなどの単糖、ならびに二糖が挙げられる。GA活性が増大する場合、植物または作物を成長させるためにエネルギーが必要とされるので、ESCパーセンテージは若干減少する。ライムギでは、ESCパーセンテージは、35.3%から31.7%へと減少し得る。ライムギでは、デンプンパーセンテージは、19.1%から9.6%へと減少した。しかしながら、環境ストレス因子に起因してABA活性が増大した場合、ライムギ中のデンプンの量は、19.1%から42.2%へと増加した。粗脂肪は、作物または飼料サンプルの総脂肪含有量の推定値である。粗脂肪は、真の脂肪(トリグリセリド)、アルコール、ワックス、テルペン、ステロイド、色素、エステル、アルデヒド、および他の脂質を含む。GA活性が環境ストレスの低減に起因して増大した飼料サンプル中では、粗脂肪の量は増加した。ライムギ作物中では、粗脂肪は、1.39%から2.78%へと増加し得る。粗脂肪はまた、ABA活性が増加する場合にも増加する。ライムギ作物中では、粗脂肪パーセンテージは、1.39から1.44%へと増加し得る。植物の発達中のより早期で貯蔵分子を分解することによるか、または酵素活性を最大化することにより、発酵またはサイロ貯蔵の好気相中に生成される熱は、制限されるか、または存在しない。
【0060】
図13は、3回の混合物収集時点に対するパーセンテージとして表わされるin vitro 48時間可消化NDF画分を図示する。95%信頼区間を伴う、固定効果線形モデル推定として表わされる値は、周囲の推定値を図示した。乾物基準で25%の水耕栽培されたコムギを75%のトウモロコシ乾燥蒸留粕と混合した後の、下部に示される時点で収集されたサンプル。NDFのパーセンテージは、サンプルがより遅く収集される場合に増加し、このことは、植物の天然に産生された酵素がNDFの消化率を増加させることを可能にする。
図12は、3回の混合物収集時点に対するパーセンテージとして表わされるin vitro 7時間デンプン消化を図示する。95%信頼区間を伴う、固定効果線形モデル推定として表わされる値は、周囲の推定値を図示した。乾物基準で25%の水耕栽培されたコムギを75%のトウモロコシ乾燥蒸留粕と混合した後の、下部に示される時点で収集されたサンプル。デンプン消化は、栄養素消化率を増加させるために酵素が活用される場合に増加する。
図11は、4回の混合物収集時点に対する、推定上の総可消化栄養素パーセンテージを図示する。95%信頼区間を伴う、固定効果線形モデル推定として表わされる値は、周囲の推定値を図示した。示される時点で収集されたサンプルは、乾物基準で25%の水耕栽培されたオオムギが75%のひき割りトウモロコシと混合された後である。
図10は、3回の混合物収集時点に対するパーセンテージとして表わされるin vitro 48時間可消化NDF画分を図示する。95%信頼区間を伴う、固定効果線形モデル推定として表わされる値は、周囲の推定値を図示した。示される時点で収集されたサンプルは、乾物基準で25%の水耕栽培されたコムギが75%のトウモロコシサイレージと混合された後である。
【0061】
図14は、栽培機システム10、サイロ貯蔵装置84、およびバッグなどの密閉環境86を含むことができるサイロ貯蔵システム88を図示する。栽培機システム10は、植物が乾物を増加させ、かつ酵素活性を最大化することを可能にする好気条件を提供し、それによりサイロ貯蔵された動物飼料の品質を改善することができる。
図14~22に示される栽培機システム10は、複数の垂直部材12および複数の水平部材14を含むことができ、これらの部材は、1つ以上の苗床18を有する直立型種子栽培台16を形成するように、取り外し可能に相互接続される。本開示の一部の態様では、栽培機システム10は、1つ以上の苗床18を有することができる。各垂直部材12は、高さ調整可能な脚部20において下部で終端するように構成することができる。各脚部20は、種子栽培台16の1つの垂直部材12の別の垂直部材(number)12に対する相対垂直位置または高さを変化させるように調整することができる。水平部材14は、1つ以上の長手方向部材24に取り外し可能に相互接続された1つ以上の横方向部材を含むように構成することができる。1対の垂直部材12が、横方向部材22によって横方向に分離され、それによって種子栽培台16の幅または奥行を画定することができる。長手方向部材24は、1つ以上のコネクタ26によって、横方向部材22に取り外し可能に相互接続することができる。
【0062】
各苗床18は、種子栽培台16によって動作可能に支持された種子フィルムなどの種子ベルト28を含むことができる。種子ベルト28は、種子栽培台16の幅/奥行に従って構成することができる。例として、種子ベルト28の幅/奥行は、種子栽培台16の幅/奥行の変化に従って変更することができる。種子ベルト28の材料は、液体に対して疎水性、半疎水性、または透過性であり得る。少なくとも1つの態様では、種子ベルト28の上で液体を維持するために、疎水性の材料を用いることができる。別の態様では、液体が種子ベルト28を通過することを可能にするために、透過性または半透過性の材料を用いることができる。両者の利点および欠点は、本明細書中に論じる。従来の受け皿は、苗床の一部分として疎水性材料を用いる。これにより、長期間にわたって苗床内に水が留まる場合に水ストレスを増加させ、低酸素条件をつくり出し、かつABAの濃度を増加させる場合がある。種子は利用可能な酸素を使い尽くす。一態様では、種子ベルト28は不連続であり得、離れたか、または分離された末端部を有することができる。種子ベルト28は、少なくとも苗床18の長さの長さと、概ね苗床18の幅とを有することができ、種子を保持する苗床を提供するように構成することができる。種子ベルト28は、苗床18にわたって動くように構成することができる。種子ベルト28はまた、水平部材14の上に載っており、水平部材14の上を摺動することもできる。種子ベルト28と水平部材14との間には、種子ベルト28が束縛されるか、または動かなくなることなく水平部材14の上を摺動することが可能になるように、1つ以上のスキッドまたはスキッド板(図示せず)を配置することができる。苗床18または種子ベルト28は、受け皿型の飼い葉設定と比較した場合に、排水を強化し、酸素が増加した環境を支援するために、傾斜して配置することができる。
【0063】
膨張のための空間を提供するために、種子ベルト28または苗床18は、第1の側部70および反対側の第2の側部72などの、苗床18の1つ以上の側部上に種子出口68を有することができる。種子出口68は、種子74が成長する際に膨張のための空間を配分し、種子74の成長圧縮を軽減する。苗床18が第1の側部70または第2の側部72上に壁を有する場合、壁は、種子74が膨張することを妨げ、それにより種子の一部または全部を圧縮する場合がある。圧縮された種子は、酸素をほとんどからまったく受け取らず、低酸素または嫌気条件をもたらす場合がある。種子出口68は、芽生えの間、種子によって覆われてはならない。空いた空間は、最初の24時間などの最初の数段階の成長段階中に種子の体積が倍増する際に、膨張を可能にする。種子が膨張するための空間を有しない場合、種子は、低減された熱、水、および酸素交換能を伴う隙間のない環境に供される場合がある。
【0064】
各苗床18は、各苗床18の上に配置された種子に灌水するように各苗床18の上に動作可能に構成された液体散布器46A、46B、および/または46Cを含むことができる。種子に、水によって灌水することができる。苗床18の寸法は、必要な所望の植物生産量を収納するか、または酵素活性の最大化のために構成することができる。液体散布器46Aは、苗床18の少なくとも1つの縦方向の縁に隣接して構成することができる。液体散布器46Aはまた、苗床18の少なくとも1つの横方向の縁に隣接して動作可能に構成することもできる。好ましくは、液体散布器46Aは、苗床18の縦方向の縁に隣接して構成され、それによって苗床18および苗床18の上に配置された種子74にドリップフラッド灌水を提供することができる。液体散布器46Aは、液体ガイド48と、液体出口52を有する液体分配器50A、50B、50Cとを含むことができ、液体出口52は、概して山(より高い)および谷(より低い)部分を提供する鋸歯状または波状の外形などの概して起伏のある外形を有している。液体散布器46Aは、液体収集器58または配管された液体源56などの液体源56からの液体62を運ぶように構成された液体管路54を含むことができる。液体62は、1つ以上の開口を通って液体管路54を出ることができ、液体管路54を出るときに液体ガイド48および液体分配器50Aによって捕捉することができる。液体管路54内の1つ以上の開口は、設定された時間枠にわたって、既知の、または定量化可能な量の液体62を液体ガイド48内へ断続的に滴らせる液体ドリッパとして構成することができる。1つ以上の開口は、液体管路54の長さに沿って断続的に構成することができるか、または液体管路54の長さに沿ってグループごとに分散させることができる。液体管路54内の1つ以上の開口は、液体62を苗床18へ等しく分散させて液体を苗床18へとゆっくりと滴らせるように動作可能に構成することができる。栽培表面のドリップまたはフラッド灌水は、種子を浸すための液体62の層を提供し、制御された均一な分配による流れで、苗床18上の種子74に液体62を提供することができる。液体分配器50Aは、液体62が液体管路54を出るときに液体62を収集するように適合された液体ガイド48を有して構成することができる。収集された液体は、液体分配器50Aによって均一に分散され、液体出口52を介して液体分配器50Aを出て苗床18上に落ちることができる。
【0065】
少なくとも1つの態様によれば、
図17に示される通り、液体分配器50Aから出た液体62は、種子ベルト28の上で、種子ベルト28の上の種子塊74の下および/またはその間を進むことができる。液体散布器46の他の構成も本明細書中で企図される。例えば、一態様では、液体62は、液体管路54を通って液体散布器46に入り、複数の開口を通って液体管路54を出ることができる。液体管路54からの液体62は、まとまって小さい液溜りを形成し、液体分配器50Aの長さにわたって液体62の均衡な分配をもたらすことができる。この小さい液溜りが満杯になったとき、液体62は、液体出口52の歯同士の間など、液体出口52から溢れ出ることができる。このようにして、液体62は、苗床18の全長にわたって、かつ全幅にわたって等しく分散することができる。液体出口52から出た液体62は、種子ベルト28上へ滴り落ちることができ、種子ベルト28上の種子の塊の下を流れて種子74を浸すか、または種子74と接触することができる。種子ベルト28上の種子74の根系は、毛細管作用と共に、種子を通って液体62を持ち上げて、すべての種子および/または植物に水を与えることができる。
【0066】
液体散布器46Bを、各苗床18の上に配置することができる。液体散布器46Bは、液体源56に動作可能に配管された液体管路54内に動作可能に構成された複数の液体分配器50Bを含むことができる。液体分配器50Bは、各苗床18の上に配置された種子に噴霧灌水するための単一または2重帯の噴霧ヘッド/先端部などの噴霧ヘッドを含むことができる。一態様では、複数の液体管路54を、各苗床18の上に隔置された配列で配置することができる。
図18に示される通り、各液体管路54は、保持容器の長さを横断することができ、液体源56に接続するように配管することができる。他の液体管路54は、苗床18の幅を横断するように構成することができる。液体62は、各苗床18の上の種子に噴霧灌水するように、各液体分配器50Bから放出することができる。別の態様では、各液体管路54は、各苗床18の上の種子の表面積全体に及ぶように、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、またはそれ以上の移動半径にわたって、前後に振動させられることができる。2重角度の噴霧ヘッドを液体分配器50Bに使用することができる場合、各液体管路54の振動行程を低減させることができ、それによって液体散布器46Bの摩擦および摩耗および引き裂けを低減させることができる。種子または植物に液体を散布するプロセスは、コントローラ76(
図22)、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。
図19に示される通り、駆動機構66は、各管路を移動半径にわたって振動または回転させるように、各液体管路54に動作可能に接続することができる。液体散布器46は、制御システムによって動作させられる1つ以上のコントローラ76を使用して、手動または自動で動作させることができる。
【0067】
液体散布器46は、苗床18から破片、汚染物質、かび、真菌、細菌、および他の異物/不要物質を取り除くように構成することができる。液体散布器46はまた、種子が種子分注器から苗床18上へ解放されるとき、消毒剤、栄養素、または活性酸素種によって種子74に灌水するために使用することもできる。時間遅延を使用して、新鮮な水の散布または灌水を施す前にROSまたは栄養素が所望の時間にわたって種子上に留まることを可能にすることができる。液体散布器46Dを使用して苗床18に洗浄、スケール除去、および消毒を施すプロセスは、コントローラ76、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。
【0068】
液体散布器46は、苗床18への種まきの直後に、種子を液体で濡らすように動作させることができる。成長の初期、中期、および後期の段階の種子74に、液体散布器46を使用して液体62によって灌水することができる。液体散布器46A~Dは、同時に、断続的に、交互に、また互いに独立して動作させることができる。種子成長の初期段階中には、芽生えおよび発芽を促すために、種子を最もよく濡らすように、両方の液体散布器46A~Bが動作させられる。成長の後期段階中には、液体散布器46Aを使用して、液体散布器46Bより多く灌水することができる。別法として、種子栽培物の浸潤の度合いに応じて、液体散布器46Bを使用して、液体散布器46Aより多く灌水することができる。液体散布器46Cは、苗床18への種まきおよび第2の方向への苗床18の移動中に、苗床18の上に分注された種子に噴霧して種子を液体で濡らすように動作させることができる。液体散布器46A~Dに提供される液体は、消毒剤、活性酸素種、肥料、および/または栄養素などの添加物を含むことができる。液体散布器46A~Dから分注される液体には、健康な植物の成長を促し、かつ/または収穫された種子における所望の栄養素の存在を増大させるために、カルシウムおよびマグネシウムなどの一般に知られている植物栄養素などの栄養素を加えることができる。液体散布器46C~Dはまた、種子ベルト、苗床18、または種子ベルトの種子出口68の巻取りまたは繰出しの前および/または後に、苗床18を衛生化するためにも使用することができる。
【0069】
各液体分配器50A~Dによって使用される活性酸素種などの1つ以上の消毒剤を含むことによって、液体分配器46A~Dおよびその様々な構成要素を、栽培機システム10の他の構成要素と共に衛生化することができる。例えば、液体ガイド48、液体管路54、液体出口52、排水溝60、液体収集器58、苗床18、液体分配器50A~C、および栽培システムの他の構成要素を衛生化することができる。別の態様では、種まきおよび収穫の前、途中、または後に、液体散布器46A~Dを使用して、苗床18を洗浄および衛生化することができる。灌水および裁断のための液体を運ぶか、または1つ以上の保持容器からの灌水もしくは裁断流出水を受け取る栽培機システムのいずれかの構成要素を消毒または衛生化するように、別個の液体分配器またはマニホルドを構成することができる。
【0070】
液体62は一定に散布することができるか、または散布器が設定された時間枠もしくは定量化可能な量で液体62を散布することができる。例えば、液体散布器46A~Dは、1分間などの第1の時間にわたって液体62を散布することができ、続いて、液体散布器は、4分間などの第2の時間にわたって液体62の散布を停止することができるか、または5分間毎に1分間の液体散布である。サイクルを、発達期または芽生え期が終了するまで継続することができる。別の例では、液体62は、2時間毎に10分間にわたって散布することができる。液体散布器46は、制御された均一な分配による流れを提供することができ、液体62が種子の最大数に達することを可能にする。過剰な液体62は、栽培機システム10によって捕捉、再循環、および再使用されることができる。苗床18が出口または斜面を有する場合、斜面は、苗床18を通って出るときの、液体の均一な分配を補助し得る。一部の態様では、液体散布器46は、さらなる散布を必要とする苗床18、種子74の一部分、または植物74の一部分内の領域への液体の分配を導くことができる。液体散布器46はまた、振動して、苗床18のより大きな面積または苗床18もしくは種子ベルト28の長さおよび幅全体に及ぶこともできる。
【0071】
図16に示される通り、各苗床18は、種子ベルト28の上の種子または種子塊の水耕栽培を容易にするために、種子ベルト28の上の種子に照明する1つ以上の照明要素38または収納照明を含むことができる。照明要素38は、各苗床18の上に直接的/間接的に動作可能に配置することができる。照明要素38は、コントローラ76を使用して、高さ位置ごとにオフおよびオンにすることができる。照明要素38は、電気化学源もしくは電力貯蔵デバイス、電源差込み口、および/または太陽光発電によって動力供給することができる。一態様では、照明要素38は、直流電力によって動力供給することができる。企図される照明要素38としては、例えば、ハロゲン化物、ナトリウム、蛍光性、およびLEDのストリップ/パネル/ロープが挙げられるが、本明細書中に明示的に提供するものに限定されるものではない。1つ以上の反射器(図示せず)を用いて、各苗床18の上に配置されていない遠隔源からの光の向きを変えることができる。照明要素38は、コントローラ76、タイマ、ユーザインターフェースによって、または遠隔で動作可能に制御することができる。照明要素38の動作は、栽培機10の1つ以上の動作によって引き起こすことができる。例えば、種子ベルト28の動作は、照明要素38の動作を引き起こすことができる。苗床18に照明するプロセスは、コントローラ76、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。一態様では、照明要素38は、低熱放射で全紫外(UV)スペクトルの発光ダイオードであり得、コントローラ76によって周期的にオフおよびオンにされ、好ましくは24時間周期で18時間はオン、6時間はオフにされる。
【0072】
図21は、例示的態様に従う収穫機構100を図示する。各苗床18は、収穫機構100を含むことができる。収穫機構100は、荷降ろし板102を含むことができ、荷降ろし板102は、ローラ30に隣接して栽培機10に動作可能に取り付けられており、発芽した種子、根の塊、茎部分、および葉からなる栽培植物を収穫するために苗床18の幅にわたって延びる。本開示の目的のために、発芽した種子、根の塊、茎部分、および葉を参照するとき、用語「栽培植物」が使用される。栽培植物とは、栽培機10から収穫され得るものである。荷降ろし板102を再び参照すると、板は、入口側104と放出口側106との間に隔置された両側の外縁部103A~Bを含むように構成することができる。放出板102は、種子ベルト28と概ね同じ幅を有し得る。入口側104は、種子ベルト28の方を向いており、降ろされた栽培植物を受け取るように、ローラ30にすぐ隣接して配置することができる。放出口側106は、外方を向いており、裁断された栽培植物を降ろすために、ローラ30から離れる方へ延びることができる。少なくとも1つの高圧液体ノズル108が、荷降ろし板102の上面に動作可能に取り付けられており、入口側104と放出口側106との間の幅の概ね中間に配置することができる。液体ノズル108は、高圧液体流を直接上方へ誘導するように向けられていることができる。1つ以上のポート107が、放出口側106と液体ノズル108との間で幅にわたって荷降ろし板102を通って延びることができる。一態様では、ポート107は、液体流が通過するのにちょうど十分な幅の狭いチャネルとして構成することができ、概ね荷降ろし板102の幅にわたって延び、ノズル108と放出口側106との間に配置されることができる。液体ノズル110は、荷降ろし板102内のポート107を通って高圧液体流を直接上方へ誘導するように向けられていることができる。駆動機構37Gが、第1の位置と第2の位置との間で収穫機構100を動かすように、収穫機構100に動作可能に取り付けられることができる。駆動機構37Gは、ACもしくはDC電流で動作する高トルク電気モータ、または空圧/油圧モータもしくはシリンダとすることができる。一態様では、電気モータは、断続負荷12VDC、10+アンペアのモータとすることができる。駆動機構37Gは、電気式、空圧式、油圧式、またはさらには手動で動力供給されるモータとすることができる。一態様では、駆動機構37Gは、電源からの直流電力によって電気的に駆動することができる。駆動機構37Gを制御して、第1の位置と第2の位置との間で相反する第1および第2の方向に収穫機構100の動きを制御するように、1つ以上のスイッチまたはセンサ(図示せず)を動作可能に構成することができる。一態様では、液体ノズル110のうちの第1の液体ノズルは、外縁部103Aにほぼ隣接して位置することができ、液体ノズル110のうちの第2の液体ノズルは、荷降ろし板102の概ね中間に位置することができる。収穫機構100の第2の位置で、液体ノズル110のうちの第1の液体ノズルは、荷降ろし板102の概ね中間に位置することができ、液体ノズル110のうちの第2の液体ノズルは、外縁部103Bにほぼ隣接して位置することができる。動作中、液体ノズル110は、駆動機構37Gの作動によって、収穫機構100の第1の位置と第2の位置との間を前後に往復することができる。収穫機構100を第1の位置と第2の位置との間で動かすように駆動機構37Gを作動させるプロセスは、制御システム82のコントローラ76、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。このようにして、動作の際、液体ノズル108は、降ろされた栽培植物を第1の方向に裁断することができ、液体ノズル110は、液体ノズル108の第1の方向とは反対の第2の方向に、降ろされた栽培植物を裁断することができる。
【0073】
一態様では、液体ノズル108は、降ろされた栽培植物の中間点に沿って長手方向に裁断することができ、液体ノズル110は、降ろされた栽培植物の幅にわたって横断方向に裁断することができる。このようにして、降ろされた栽培植物は、種子ベルト28上の栽培植物の質量より小さい部分に裁断することができる。栽培植物の各裁断片の長さは、種子ベルト28の速度の増大もしくは減少、または収穫機構100の往復速度の増大もしくは減少によって制御することができる。栽培植物の裁断片のサイズを増大させるには、種子ベルト28または収穫機構100の速度を低減させることができる。別法として、栽培植物の裁断片のサイズを減少させるには、種子ベルト28または収穫機構の速度を増大させることができる。種子ベルト28および収穫機構100の速度を制御するように駆動機構37Aおよび37Gを制御するプロセスは、コントローラ76、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。本明細書中に論じる通り、液体ノズル110を有する収穫機構100は、荷降ろし板102の下面に動作可能に固定されており、カバー板114を使用して、液体ノズル108および液体ノズル110からの液体による下からの影響から保護されることができる。
【0074】
栽培機システム10は、
図22に示されるものなどの、異なる環境条件または栽培機システムの動作条件を制御するための制御システム76を有することができる。制御システム76は、
図22に示される通り、苗床周囲の空気の移動を制御するためのファンまたはHVACシステムなどの少なくとも1つの気流要素(air element)78を制御することができる。気流要素78は、コントローラ76に動作可能に接続することができる。栽培機システム10が保管されることができる部屋または環境もまた、空気の移動を制御するために用いられる1つ以上のファンを有することができる。空気の移動または流れは、苗床上の種子の発達段階に応じて変化させることができる。HVACユニットなどの温度要素80は、苗床18の環境の温度を制御するために、栽培機システム10、コントローラ76、または苗床18に動作可能に接続することができる。温度要素80は、65~85°Fまたは18~30℃の範囲の温度を維持することができる。湿度要素82は、苗床18の環境の湿度を制御するために、コントローラ76、栽培システム10、または苗床18に動作可能に接続することができる。湿度ユニット82は、相対湿度レベルを50%~90%に維持することができる。温度要素80、気流要素78、および湿度要素82はすべて、同じHVACユニットを含むことができる。温度および大気湿度は、苗床18上の種子の発達段階に応じて変化させることができる。苗床18の空気の移動、温度、および湿度を制御するプロセスは、コントローラ76、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。照明、温度、気流、および液体散布のすべてが、苗床18の湿度に影響を与え得る。
【0075】
植物または種子が成熟または最大酵素活性点に達したら、種子または植物を、種子ベルト18から取り出すことができる。植物をミキサへと移動させることができ、ここで植物は混合されて動物飼料を形成することができる。ミキサに到達する前に、植物を、適切な飼料サイズへと裁断または細切することができる。植物は、他の水耕栽培植物または田畑、苗畑、もしくは菜園などの他の方法により栽培された植物と混合することができる。追加の植物物質を栽培機システムで栽培された植物に添加することが必要であり得る場合、追加の植物物質は、単に例えば、混合物のうちの2/3が栽培機システムで栽培された植物を含み、かつ混合物のうちの1/3が追加の植物物質であるなど、一定の比率で添加することができる。本開示の一部の態様では、比率は、1:1または45パーセントの栽培機システムを利用する水耕栽培セルロース性材料および55パーセントの他の植物もしくはセルロース性材料であり得る。本開示の他の態様では、混合ステップは、サイロ貯蔵プロセスが完了した後に行なうことができる。一部の態様では、サイロ貯蔵された動物製品は、45%~60%の乾物または乾物含有物を含有する。本開示の一部の態様では、乾物のパーセンテージはより低いことができる。水耕栽培された動物飼料、セルロース性材料、または植物は、収穫時には湿っている場合があり、限定された好気相が必要とされるか、または好気相は一斉に除去される。サイロ貯蔵(enisling)プロセスは、動物飼料の含水量、サイロ貯蔵プロセスで用いられる保存料または接種材料(innoculant)、乾物含有量および混合比率を考慮する。一部の態様では、水耕栽培材料が高い含水量を有する場合、混合比率はより大きいことができるか、または必要とされる乾物の量はより多いことができる。
【0076】
接種材料としては、乳酸菌(LAB)が挙げられる。一部の態様では、サイロ貯蔵プロセスは、ホモ発酵型菌株またはヘテロ発酵型菌株のみを用いることができ、本発明の他の態様では、両方のタイプのLABの組み合わせを用いることができる。ホモ発酵型細菌としては、乳酸産生を強化するためのラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)およびラクトコッカス属(Lactococcus)が挙げられ、これらは、より早いpH値の低下、限定された好気相、および改善された発酵をもたらし、したがって、乾物損失、有害タンパク質分解および望ましくない微生物の成長を低減させる。ヘテロ発酵型細菌としては、牧草糖を乳酸および酢酸に変換し、好気相の持続時間を低減させるための、ラブレ菌(Lactobacillus brevis)、ケフィリ菌(L.kefiri)およびL.ブフネリ(L.buchneri)が挙げられる。酢酸の産生は、望ましくない酵母およびかびの増殖を妨げることにより、サイレージの好気的安定性を改善し、サイレージを非常に栄養豊富かつ衛生的に保つであろう。保存料としては、プロピオン酸およびギ酸などの有機酸が挙げられる。有機酸は、サイレージのpHを低下させることができ、クロストリジウム綱(Clostridia)などの望ましくない細菌に対して好都合でなくし、かつ好気相を低減させて、低温発酵を起こすことを可能にする。他の有機酸ならびにソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウムをはじめとするそれらの塩は、発酵および供給中のいずれかでの酵母およびかび真菌の成長を標的とする。接種材料および保存料は、好気相が終了した後に動物飼料またはセルロース性材料へと酸素が導入される場合に、動物飼料が腐敗することの防止を助ける。
【0077】
動物飼料が混合、収穫または裁断された後、サイロ貯蔵プロセスは、サイロ貯蔵装置84の利用を開始することができる。飼料を、サイロまたは密閉バッグなどの酸素不含環境86中に密閉することができる。動物飼料はまた、サイロ貯蔵プロセスが完了した後に密閉バッグ中に詰めることもできる。サイロ貯蔵プロセスは、動物飼料またはセルロース性材料中に存在するアルコールの量を制限することができる。サイロ貯蔵プロセスは、サイロ貯蔵プロセスの開始中に密閉環境から酸素を除去することができる。例えば、酸素は、真空包装によるか、またはバッグ、サイロ、もしくは他の貯蔵容器から酸素を除去するために十分ないずれかの他の方法により、除去することができる。
【0078】
サイロ貯蔵プロセス中には、植物または動物飼料は、嫌気環境中に置くことができる。第1相である植物呼吸は、植物が裁断された直後に始まる。植物細胞はまだ生存しており、酵素活性は未だ最大である。酵素は、セルロース性材料および炭水化物を分解し続け、炭水化物の量を低減させ、それにより、腐敗しにくい、より高品質の飼料をもたらす。しかしながら、湿った動物飼料またはセルロース性材料は、好気相を制限することにより、サイロ貯蔵プロセス中に低温発酵を利用する。糖および残留酸素が反応して、二酸化炭素および水を形成し、この間に好気性細菌は熱を生成する。植物細胞プロテアーゼによる植物タンパク質から非タンパク質窒素(NPN)、ペプチド、アミノ酸、およびアンモニアへの分解は、pHを低下させる。動物飼料のpHが一定レベルまで低下し、酸素供給が一定量を超えて減少したら、第2相である酢酸産生が開始される。栽培機システムで栽培される植物中の酵素活性を最大化することにより、より多くの植物炭水化物が分解され、それにより効率的なサイロ貯蔵プロセスのための条件を提供する。本開示の一部の態様では、収穫中に酵素活性を最大化することにより、好気相または第1相の持続時間を減少または除去することができ、それにより、より低い乾物取り込みに伴うアンモニア窒素の量を制限する。糖の保存は、貯蔵相(storage phase)中の動物飼料の保存に対して非常に重要である。LABによる発酵に起因する糖の喪失はpHを低下させ、より多くの貯蔵を確実にする。糖の上昇がない場合、LABは、許容可能なレベルまでpHを低下させるために十分な酢酸イオンまたは他の酸を生成することができない。炭水化物の利用可能性を増加させることは、プロセスを促進し、サイロ貯蔵生成物のpHを低下させる。
【0079】
サイロ貯蔵プロセスの第2相である嫌気性発酵相の間、嫌気性細菌が酸素の欠乏に起因して成長し始め、植物細胞によるタンパク質の分解は減速する。様々な嫌気性細菌の集団が糖を発酵させ、糖を主に乳酸もしくは酢酸、エタノールまたは二酸化炭素へと変換する。乳酸の生成が動物飼料のpHを低下させ続け、特定の微生物の成長を阻害する。
【0080】
第3相中、動物飼料を貯蔵することができる。動物飼料のpHは、貯蔵相の間、比較的安定に保たれる。酵素および微生物活性は最小限であり、それにより、動物飼料の保存寿命が増大する。動物飼料は、酸素の侵入を妨げるサイロまたは密閉バッグ中に入れることができる。酸素が貯蔵容器に侵入することを許される場合、酵母およびかびが成長する場合があり、乾物を減少させ、かつ動物飼料を腐敗させる可能性がある。
【0081】
第4相は、供給段階を含むことができる。第4相の間、動物飼料は酸素に曝露され、動物へと給餌されることができる。動物飼料が酸素に再び曝露されると、酵母およびかびの活性が始動または増加し、残余の糖、発酵酸および他の可溶性栄養素を二酸化炭素、水および熱へと変換する場合がある。
【0082】
本開示の一態様では、水耕栽培されたセルロース性材料をサイロ貯蔵するための方法が開示され、
図23に示される。方法は、栽培機システムの苗床上の複数の種子のジベレリン酸の量を増加させるステップを含むことができる(ステップ200)。栽培機システムは、コントローラを利用して複数の環境因子を制御するために構成することができる。次に、複数の種子内の少なくとも2つのタイプの酵素を放出させることができる(ステップ202)。少なくとも2つのタイプの酵素は、複数の種子内のジベレリン酸の量の増加により放出させることができる。次に、複数の複合貯蔵分子を、酵素のタイプのうちの少なくとも1種により、複数の単純分子へと分解することができる(ステップ204)。次に、少なくとも1個の種子を、セルロース性材料として成熟まで成長させることができる(ステップ206)。セルロース性材料の酵素活性は、複数の複合貯蔵分子の分解により最大化することができる。次に、セルロース性材料を、苗床から収穫することができる(ステップ208)。次に、セルロース性材料を、サイロ貯蔵することができる(ステップ210)。酵素活性は、サイロ貯蔵の好気相中にタンパク質分解を増加させることができる。サイロ貯蔵に先立つか、またはサイロ貯蔵後に、セルロース性材料を、第2のセルロース性材料と混合することができる。2種類のセルロース性材料の混合またはブレンドは、特定の配合量で行なうことができる。サイロ貯蔵プロセスが終了したら、セルロース性材料を貯蔵容器中に密閉することができる。
【0083】
本開示の別の態様では、
図24に示される通り、水耕栽培された動物飼料をサイロ貯蔵するための方法が開示される。方法は、複数の環境因子を制御するために構成される栽培機システムを利用して好気環境を提供するステップを含むことができる(ステップ300)。次に、複数の種子への酸素供給を増加させることができる(ステップ302)。増加は、栽培機システムの種子出口上への複数の種子の膨張から起こることができる。次に、液体を用いて種子に灌水することができる(ステップ304)。液体としては、水、肥料、ROS、または植物の栽培に対して有益ないずれかの他の液体が挙げられる。液体または酸素の増加は、複数の種子中のジベレリン酸の量を増加させることができる。ジベレリン酸の増加は、複数の種子内の少なくとも2つのタイプの酵素を放出させる。次に、複数の複合貯蔵分子を、加水分解により複数の単糖分子へと分解することができる(ステップ306)。次に、複数の単糖を利用して、ATPを生成させることができる(ステップ308)。次に、種子を動物飼料へと成長させることができる(ステップ310)。動物飼料内のタンパク質分解は、ATPの生成により増加させることができる。最後に、動物飼料をサイロ貯蔵することができる(ステップ312)。サイロ貯蔵プロセス中に、動物飼料を酸素不含環境で貯蔵することができる。
【0084】
本開示は、本明細書中に記載される特定の態様に限定されるものではない。特に、本開示では、水耕栽培された動物飼料のサイロ貯蔵について、多数の変形例が企図される。上記の説明は、例示および説明を目的として提示されている。網羅的な一覧であること、または開示される厳密な形態に本開示のうちのいずれかを限定することを意図したものではない。他の代替形態または例示的な態様が、本発明に包含されると見なされることが企図される。本説明は、本開示の態様、プロセス、または方法の単なる例である。任意の他の修正、置換え、および/または追加を加えることができ、これらは本開示の意図した精神および範囲内であることが理解される。
【符号の説明】
【0085】
10 栽培機システム
12 垂直部材
14 水平部材
16 種子栽培台
18 苗床
20 脚部
22 横方向部材
24 長手方向部材
26 コネクタ
28 種子ベルト
30 ローラ
37A 駆動機構
37G 駆動機構
38 照明要素
46A~D 液体散布器
50A~C 液体分配器
52 液体出口
54 液体管路
56 液体源
58 液体収集器
60 排水溝
62 液体
66 駆動機構
68 種子出口
70 第1の側部
72 第2の側部
74 種子
76 コントローラ、制御システム
78 気流要素
80 温度要素
82 湿度要素
84 サイロ貯蔵装置
86 酸素不含環境
100 収穫機構
102 荷降ろし板
103A~B 外縁部
104 入口側
106 放出口側
107 ポート
108 液体ノズル
110 液体ノズル
114 カバー板
【国際調査報告】