(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】刺激応答性ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20241024BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20241024BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20241024BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/00
A61L31/04 110
A61L31/14 300
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530459
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022050764
(87)【国際公開番号】W WO2023096923
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】タン、イーチン
(72)【発明者】
【氏名】ブサット、ニコラス ヴァン リュック
(72)【発明者】
【氏名】クーダ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス、ショーン レオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE09
4C076EE13
4C076EE49
4C076FF31
4C076FF35
4C081AC10
4C081BA11
4C081BB09
4C081CA08
4C081CA10
4C081CB04
4C081CC02
4C081CE02
4C081DA12
(57)【要約】
様々な実施形態では、本開示は、医療用途のための組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーの水溶液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は25℃で液体形態である。他の実施形態は、そのような組成物を患者に送達することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーの水溶液を含む医療用組成物であって、各C
3~5アルキル基が、プロピル、ブチルおよびペンチル基から独立に選択され、25℃で液体形態である、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックが、ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、5~6の範囲のpHを有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、pH7.4および37℃の温度を有するリン酸緩衝生理食塩水に注入されるとゲルになる、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが、2つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つのポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーであるか、または前記ブロックコポリマーが、1つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび2つのポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマー中の前記1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックのその各々が、長さが5~600モノマー単位の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマー中の前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックの各々が、長さが50~300モノマー単位の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ブロックコポリマーの数平均分子量が2000~500,000Daの範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、25℃の温度で50 1/sの剪断速度で測定したときに、10mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーが、アミン基を含む、長さが1~500モノマー単位の範囲の追加のポリマーブロックをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基およびカルボキシレート基から選択される負に帯電した基を含むアニオン性ポリマーをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アニオン性ポリマーが、スルホネートポリマー、ポリホスフェート、ポリ(カルボン酸)および負に帯電した多糖類から選択され、好ましくは、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
イメージング剤または治療剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、バイアルまたはシリンジバレルで提供される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の、塞栓剤、基準マーカー、組織充填剤、組織離間材、または治療剤デポとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月23日に出願された米国仮特許出願第63/282,349号の優先権の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、刺激応答性ブロックコポリマー、そのような刺激応答性ブロックコポリマーを含有する組成物、およびそのような刺激応答性ブロックコポリマーを使用する方法に関する。本開示の刺激応答性ブロックコポリマーは、例えば、塞栓形成を含む様々な生物医学的用途において有用である。
【背景技術】
【0003】
液体塞栓システムは、血管過多腫瘍、動静脈奇形、動脈瘤、およびエンドリークなどの神経疾患および末梢疾患の塞栓形成または充填のための有効な薬剤として、ますます受け入れられている。Onyx(登録商標)(Medtronic)、Squidperi(商標)(Emboflu/Balt)、PHIL(商標)(Terumo)、およびEasyx(商標)(Antia AG)などの市販製品または開発中の製品で使用されるDMSO溶媒系の技術は、DMSO溶媒から血中の水分への移行中の塞栓性ポリマーの溶解性の変化に基づく。これらは、組織壊死および血管痙攣を引き起こし得るDMSOの固有の毒性に起因する制限を有する。製剤中のDMSOの存在はまた、患者が処置後にニンニクと同様の強い臭気に気づくことをもたらし得、これは、各患者にこの潜在的な副作用を認識させるために、インフォームドコンセントなどの追加の事務手続きを必要とすることを意味する。
【0004】
水性系システムは、DMSOを排除するので、この分野の医師および患者に対して多くの魅力を有する。それはまた、より大きな生体適合性および使用の容易さの可能性を有する。これはまた、様々な適応症における当たり障りのない塞栓としてだけでなく、所望であれば、薬物装填用途の可能性を有し得る。
【0005】
いくつかの顕著な水性系製品は、開発および前臨床試験を経てきた。例えば、高分子電解質GPX(商標)システム(Fluidx Medical)は、静電的に縮合された、反対に帯電した高分子電解質、ポリカチオン硫酸サルミン(Sal)およびポリアニオンイノシトール六リン酸ナトリウム(IP6)から電荷相互作用により生成されたコアセルベートを使用する。高分子電解質複合体の具体的な特性は、ポリマー鎖間の電荷相互作用が高イオン強度NaCl溶液(1200mM)によって遮蔽され得ることであり、これは透明で均質な低粘度の流体をもたらす。インビボ送達中のNaClのその後の放出は、高粘度コアセルベートへのゾル-ゲル転移をもたらす。タンタル粉末を製剤と混合して、フルオロスコープ下で必要とされる放射線不透過性にする。Obsidioヒドロゲルは、新規の生体工学によるタンタル装填ナノコンポジットゲル塞栓材料(Ta-GEM)である。システムは、ゼラチン(タイプA、18%)、ケイ酸塩ナノプレートレット(Laponite XLG、9%)、超純水およびタンタル粉末(2μm、20%、w/w)を混合することによって配合される。ディスク様のLaponiteナノプレートレットは、2つの面上に負電荷を有し、これは、正に帯電したゼラチンと相互作用し、複合ゲル構造を形成することができる。報告されている他の水性ヒドロゲルは、ポリペプチドヒドロゲルであるPuraMatrix(商標)、および温度感受性システムであるSELP(Silk-elastin-like Protein Polymer、ユタ大学)である。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施形態では、本開示は、医療用途のための組成物に関する。組成物は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーを含み、各C1~5アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチル基から独立して選択される。いくつかの実施形態では、C1~5アルキル基の各々は、他と同じである。
【0007】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレートブロックを含むブロックコポリマーの水溶液を含み、各C1~5アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチル基から独立に選択される。いくつかの実施形態では、C1~5アルキル基の各々は、他と同じである。
【0008】
上記の実施形態と併せて使用され得る様々な実施形態では、ブロックコポリマー中の1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックは、ポリ(2-(ジ-(C3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックであり、より典型的には、ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックである。
【0009】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、25℃で液体形態である。
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、1~7.4の範囲、典型的には4.5~6.5の範囲、より典型的には5~6の範囲のpHを有する。
【0010】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、pH7.4および37℃の温度を有するリン酸緩衝生理食塩水中に(例えば、20~25℃で)注入されるとゲルになる。
【0011】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、患者(例えば、ヒトなどの哺乳動物患者)の血管系内に(例えば、20~25℃で)注入されるとゲルになる。
【0012】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、2つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つのポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロック、より典型的には、2つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つのポリ(2-(ジ-(C3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーである。
【0013】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、1つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび2つのポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロック、より典型的には、1つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび2つのポリ(2-(ジ-(C3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーである。
【0014】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマー中の1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックの各々は、長さが5~1000モノマー単位、より典型的には、長さが100~600モノマー単位の範囲である。
【0015】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマー中の1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックの各々は、長さが10~500単位、より典型的には、長さが50~300モノマー単位の範囲である。
【0016】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、数平均分子量が2000~500,000Daの範囲である。
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、組成物の重量に対して1~50%wt/wtの範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0017】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、25℃の温度で50 1/sの剪断速度で測定したときに、10mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0018】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、アミン基を含む、長さが1~500モノマー単位の範囲の追加のポリマーブロックをさらに含む。例えば、アミン基は、とりわけ、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基およびジアルキルアミノアルキル基から選択され得る。
【0019】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、ブロックコポリマーに加えて、とりわけ、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基およびカルボキシレート基から選択される負に帯電した基を含むアニオン性ポリマーをさらに含む。
【0020】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、アニオン性ポリマーは、1000~5,000,000Daの範囲の数平均分子量を有する。
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、アニオン性ポリマーは、組成物の重量に対して0.1~50%wt/wtの範囲の量で存在する。
【0021】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、アニオン性ポリマーは、とりわけ、スルホネートポリマー、ポリホスフェート、ポリ(カルボン酸)および負に帯電した多糖類から選択される。
【0022】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、イメージング剤をさらに含む。例えば、イメージング剤は、放射線造影剤であり得、これは、例えば、いくつかの場合において金属粒子を含み得る。
【0023】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、とりわけ、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの無機塩をさらに含む。無機塩は、他の可能な値の中でも、0.2M~5.0M、より典型的には0.5M~2.0Mの範囲の濃度で存在し得る。
【0024】
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、治療剤をさらに含む。
上記の実施形態と併せて使用することができる様々な実施形態では、組成物は、バイアルまたはシリンジバレルで提供される。
【0025】
様々な実施形態では、本開示は、上記の実施形態のいずれかによる組成物を患者に送達することを含む方法に関する。
いくつかの実施形態では、本方法は、治療方法であり、組成物は、患者の血管系内に送達される。例えば、治療方法は、とりわけ、腫瘍を治療する方法、動静脈奇形を治療する方法、動脈瘤を治療する方法、エンドリークを治療する方法、消化管出血を治療する方法、または疾患もしくは外傷によって引き起こされる出血を治療する方法から選択され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を基準マーカーとして患者に送達することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を患者の第1の組織と第2の組織との間に送達し、それによって、第1の組織を第2の組織から離間させるステップを含む。
【0027】
様々な実施形態では、本開示は、とりわけ、塞栓剤、基準マーカー、組織充填材、組織離間材、または治療剤デポとしての、上記実施形態のいずれかの組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本明細書においてNIPAAM-DBA-NIPAAMトリブロックコポリマー、pNIPAAM-pDBA-pNIPAAMトリブロックコポリマー、またはpNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMトリブロックコポリマーとも呼ばれる、ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)-ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)-ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)トリブロックコポリマーの概略図。
【
図2】本開示の一実施形態による、追加のアミノ基を有するNIPAAM-DBA-NIPAAMトリブロックコポリマーの概略図。
【
図3】本開示の一実施形態による、(a)プロトン化トリブロックコポリマーをポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート)(ポリAMPS)と混合してコアセルベートを形成する間の相変化(
図3A)、(b)NIPAAM凝集を導入する温度上昇(
図3B)、および(c)DBAの部分的脱プロトン化およびゲル疎水性の増強を引き起こすインビボpH変化(
図3C)の概略図。
【
図4】本開示の一実施形態による、pNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMトリブロックコポリマーの合成の概略図。
【
図5A】本開示の一実施形態による、初期pNIPAAMブロックの形成後のポリマーのプロトンNMRを示す図。
【
図5B】本開示の一実施形態による、pNIPAAM-b-pDBAジブロックコポリマーの形成後のポリマーのプロトンNMRを示す図。
【
図5C】本開示の一実施形態による、pNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMaトリブロックコポリマーの形成後のポリマーのプロトンNMRを示す図。
【
図5D】本開示の一実施形態による、メタノールに対する透析(透析膜MWCO 12000~14000Da)による精製後のpNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMaトリブロックコポリマーのプロトンNMRを示す図。
【
図6】本開示の一実施形態による、37℃のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中への送達後のヒドロゲル形成の画像。
【
図7】本開示の複数の実施形態による、ポリマー複合体のレオロジー特性に対する、pNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMaトリブロックコポリマーのpDBAブロックとポリAMPSとの間のいくつかの電荷比についての貯蔵弾性率および損失弾性率対温度の図。黒塗りの記号は貯蔵弾性率(G’)であり、白抜きの記号は損失弾性率(G’’)である。
【
図8】本開示の複数の実施形態による、温度勾配に対する様々なpNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMaトリブロックコポリマーサンプルの貯蔵弾性率および損失弾性率の図。黒塗りの記号は貯蔵弾性率(G’)であり、白抜きの記号は損失弾性率(G’’)である。
【
図9】本開示の一実施形態による、PBSを添加することによって、およびpH増加によって導入された弾性率変化を示す図。
【
図10】本開示の複数の実施形態による、NIPAAM-DEA-NIPAAM/ポリAMPS複合ゲル(黒塗りの記号)およびNIPAAM-DBA-NIPAAM/ポリAMPS複合ゲル(白抜きの記号)の弾性率変化を示す図。正方形の記号は貯蔵弾性率(G’)を示し、三角形の記号は損失弾性率(G’’)を示す。
【
図11】本開示の一実施形態による、流動モデル(PBS媒質、37℃)へのNIPAAM-DBA-NIPAAM/ポリAMPS複合体のカテーテル送達を示す図。流動モデルでは、発泡体パッドが、PBSの流動に対して発泡体を維持するバネによって、ポリマー管内の定位置に保持される。
【
図12】
図12A~12Cは、ブタ腎臓モデルに注入したNIPAAM-DBA-NIPAAM/ポリAMPS複合体の塞栓形成試験を示す図。
図12Aは、塞栓形成前に対応する。
図12Bは、塞栓形成後に対応する。
図12Cは、塞栓形成後の造影剤注入に対応する。
【
図13】
図13A~13Cは、本開示の一実施形態による、ブタ腎臓モデルに注入された参照組成物の塞栓形成試験を示す図。
図13Aは、塞栓形成前に対応する。
図13Bは、塞栓形成後に対応する。
図13Cは、塞栓形成後の造影剤注入に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
様々な態様において、本開示は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーを含む医療用途のための組成物に関し、各C1~5アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(ここで、プロピルは、n-プロピルおよびイソプロピルを含む)、ブチル(ここで、ブチルは、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを含む)およびペンチル(ここで、ペンチルは、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、sec-イソペンチル、活性ペンチルを含む)基から独立に選択される。様々な態様では、前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックは、ポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックであり、より典型的には、ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックである。
【0030】
そのような組成物には、体内への注入に適した液体組成物が含まれる。本開示の組成物は、バイアルまたはシリンジバレルで提供され得る。いくつかの実施形態では、バイアルまたはシリンジバレル中の組成物は、液体組成物、例えば、水性液体組成物であり得る。いくつかの実施形態では、バイアルまたはシリンジバレル中の組成物は、乾燥組成物であり得、これに、適切な流体(例えば、注入用水、ブドウ糖5%水溶液(D5W)、生理食塩水、緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)など)が添加されて、液体組成物が形成され得る。いくつかの実施形態では、バイアルまたはシリンジは、2~8℃の範囲の温度で冷蔵条件下で保存され得る。本開示の組成物は、滅菌形態で提供され得る。
【0031】
様々な実施形態では、本開示の組成物は、体内への注入時にin situでゲル材料(本明細書ではヒドロゲル材料または固化材料とも呼ばれる)を形成する液体組成物である。そのような液体組成物には、インビボ条件に応答してゲルを形成することができる液体組成物が含まれる。様々な実施形態では、前記液体組成物は、pHの変化および温度の変化の両方に応答してゲルを形成する。
【0032】
様々な実施形態では、本開示の組成物は、室温(例えば、25℃未満、またはいくつかの実施形態では30℃未満)で液体形態であり、7.0未満、典型的には4.5~6.5の範囲、より典型的には5~6の範囲のpHを有し得る。患者の身体への(例えば、温度が約37℃であり、pHが約7であるインビボ条件への)送達後、液体組成物は自発的にゲルを形成する。
【0033】
そのような液体組成物は、液体塞栓組成物、基準マーカー、組織充填材、組織離間材、および、治療剤を含み、そこからその治療剤が周囲組織に溶出するデポとしての使用を含む、いくつかの医療用途で使用することができる。
【0034】
本開示の液体組成物が対象の体内に注入される実施形態では、前記液体組成物は、注入に用いられる特定の送達デバイスを、好ましくは手動圧力で通過するように適合させ得る。例えば、典型的な注入では、親指でプランジャを押し、同側の人差し指および中指でシリンジバレルの側面を安定させ、50N未満の注入力が好ましい。所望の粘度レベルは、典型的には、手順および送達方法に依存するであろう。針およびシリンジを用いた直接注入のために、必要とされる圧力の量は、例えば、針のゲージに依存するであろう。同様に、カテーテルを介する注入については、必要とされる圧力の量は、例えば、カテーテルの内径に依存するであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示の液体組成物は、25℃の温度で剪断速度50 1/sで測定したときに、10mPa・s以下~5000mPa・s以上の範囲の粘度を有する。例えば、前記組成物は、剪断速度50 1/sおよび温度25℃で、10mPa・s~25mPa・s~50mPa・s~100mPa・s~250mPa・s~500mPa・s~1000mPa・s~2500mPa・s~5000mPa・sの範囲のいずれかの粘度を有し得る。
【0036】
前述のように、本開示の組成物は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロック、より典型的には、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロック、例えば、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックの各々は、長さが5モノマー単位以下~1000モノマー単位以上の範囲であり、例えば、5~10~25~50~100~300~600~1000モノマー単位のいずれかの範囲である(すなわち、上記の数値のいずれか2つの間の範囲である)。特定の有益な実施形態において、前記ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックの各々は、長さが100モノマー単位より長く、長さが600モノマー単位未満である。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックの各々は、長さが10モノマー単位以下~500モノマー単位以上の範囲であり、例えば、長さが10~25~50~75~100~200~250~300~500モノマー単位のいずれかの範囲である。特定の有益な実施形態において、前記ポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックの各々は、長さが50モノマー単位超であり、長さが300モノマー単位未満である。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記ブロックコポリマーの数平均分子量は、2000Da以下~500,000Da以上の範囲である。例えば、前記ブロックコポリマーの数平均分子量は、数平均分子量で、2000Da~5000Da~10,000Da~20,000Da~50,000Da~100,000Da~200,000Da~500,000Daのいずれかの範囲であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記ブロックコポリマーは、ポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)中央ブロックおよび2つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)外側ブロックを有するトリブロックコポリマーである。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記ブロックコポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)中央ブロックおよび2つのポリ(2-(ジ-(C
1~5)アルキルアミノ)(C
1~5)アルキルメタクリレート)外側ブロックを有するトリブロックコポリマーである。そのようなトリブロックコポリマーであってポリ(2-(ジ-(C
1~5)アルキルアミノ)(C
1~5)アルキルメタクリレート)ブロックは、ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックであり、
図1に示され、ここで、lおよびnは整数である。例えば、lは10~500の範囲の整数であってもよく、nは5~1000の範囲の整数であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記ブロックコポリマーは、アミン含有モノマーから形成することができるアミン基を含む追加のポリマーブロックをさらに含む。例えば、前記追加のポリマーブロックは、アミノアルキル基(例えば、アミノ-C
1~C
4-アルキル基)、アルキルアミノアルキル基(例えば、C
1~C
4-アルキルアミノ-C
1~C
4-アルキル基)、またはジアルキルアミノアルキル基(例えば、ジ-C
1~C
4-アルキル-アミノ-(C
1~C
4-アルキル)基)から選択されるアミン基を含み得、その具体例には、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、メチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、ジメチルアミノプロピル、エチルアミノプロピルまたはジエチルアミノプロピル基が含まれる。いくつかの実施形態では、前記追加のポリマーブロックは、長さが1~500以上のモノマー単位の範囲であり、例えば、長さが1~2~5~10~20~50~100~200~500のモノマー単位の範囲である。そのようなブロックコポリマーの一例は
図2に示されており、ここで前記アミン含有モノマーは2-アミノエチルメタクリレートである。そのようなモノマーは、他の目的の中でも、分子(例えば、トロンビンペプチド)との後の連結のための追加の官能基を提供し得る。
図2に図示されるRAFT技術による前記ブロックコポリマーの合成の間、2-アミノエチルメタクリレート中のアミノ基は、一般的な保護基を使用することによって、連鎖移動剤との干渉を回避するために保護され得る。典型的な保護基としては、とりわけ、9-フルオレニルメチルカルバメート、t-ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、アセトアミド、およびトリフルオロアセトアミドが挙げられる。重合後、保護基はそれに応じて脱保護される。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記ブロックコポリマーは、例えば、水性液体組成物などの液体組成物であり得る前記組成物の重量に対して、1%wt/wt以下~50%wt/wt以上の範囲の濃度で存在する。例えば、前記ブロックコポリマーは、前記組成物中に、1%wt/wt~2%wt/wt~5%wt/wt~10%wt/wt~20%wt/wt~30%wt/wt~40%wt/wt~50%wt/wtのいずれかの範囲の濃度で存在し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基またはカルボキシレート基から選択される1つ以上の基を含む少なくとも1つのアニオン性ポリマーをさらに含み、これらの基は、pH7で負に帯電しており、好ましくは、4または5より高いpHで負に帯電しており、そしていくつかの場合において、2より高いpHで負に帯電している。そのようなアニオン性ポリマーは、前記ブロックコポリマーと組み合わされ/混合されて、他の特性の中でもとりわけ、ゲル強度、柔軟性、凝集性、流動性、および/またはゲル安定性を含む、本明細書に記載のゲル組成物の特性を更に調整し得る。アニオン性ポリマーの特定の例としては、例えばポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート)(ポリAMPS)またはポリスチレンスルホネートなどのスルホネートポリマー、ポリホスフェート、例えばポリ(アクリル酸)またはポリ(メタクリル酸)などのポリ(カルボン酸)、例えばアルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、アラビアガム、グアーガムまたはキサンタンガムを含む、負に帯電した多糖類が挙げられる。前記アニオン性ポリマーは、塩形態、例えば、とりわけ、ナトリウム塩形態またはカリウム塩形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、前記アニオン性ポリマーは、1,000Da~5,000,000Daの範囲、例えば1,000Da~2,000Da~5,000Da~10,000Da~20,000Da~50,000Da~100,000Da~200,000Da~500,000Da~1,000,000Da~2,000,000Da~5,000,000Daのいずれかの範囲の数平均分子量を有し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーは、例えば、水性液体組成物などの液体組成物であり得る前記組成物の重量に対して、0.1%wt/wt以下~50%wt/wt以上の範囲の量で存在する。例えば、前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーは、前記組成物の重量に対して、0.1%wt/wt~0.2%wt/wt~0.5%wt/wt~1%wt/wt~2%wt/wt~5%wt/wt~10%wt/wt~20%wt/wt~30%wt/wt~40%wt/wt~50%wt/wtのいずれかの範囲であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記DBAブロック中の正に帯電したアミノ基(100%イオン化を仮定する)対前記アニオン性ポリマー中の負に帯電した基(100%イオン化を仮定する)のモル比は、0.1:1~10:1、典型的には0.5:1~2:1、より典型的には1:1~1:1.5の範囲である。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つのイメージング剤をさらに含み得る。イメージング剤の例としては、放射線造影剤、画像化可能な放射性同位体、蛍光色素、磁気共鳴画像化(MRI)造影剤、超音波造影剤および近赤外(NIR)イメージング造影剤が挙げられる。放射線造影剤の特定の例としては、タンタル、タングステン、レニウム、ニオブ、モリブデン、およびそれらの合金の粒子などの金属粒子が挙げられ、この金属粒子は、球状であり得るか、または非球状であり得る。放射線造影剤の特定の例としては、さらに、非イオン性放射線造影剤(例えば、イオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、イオキシラン、またはイオプロミド)、イオン性放射線造影剤(例えば、ジアトリゾエート、イオタラメート、メトリゾエート、またはイオキサグレート)、およびヨード化油(ヨード化されたケシ油(ethiodized poppyseed oil)(Lipiodol(登録商標)として入手可能)を含む)が挙げられる。イメージング剤のさらなる特定の例には、(a)フルオレセイン、インドシアニングリーン、または蛍光タンパク質(例えば、緑色、青色、シアン蛍光タンパク質)などの蛍光色素、(b)Gd(III)、Mn(II)、Fe(III)などの常磁性イオンを形成する元素を含有する造影剤およびジエチレントリアミン五酢酸でキレート化されたガドリニウムイオンなどのそれを含有する化合物(キレートを含む)を含む、磁気共鳴画像法(MRI)と共に使用するための造影剤、(c)有機および無機エコー源性粒子(すなわち、反射超音波エネルギーの増加をもたらす粒子)または有機および無機エコー透過性粒子(すなわち、反射超音波エネルギーの減少をもたらす粒子)を含む、超音波イメージングと共に使用するための造影剤、(d)本開示のヒドロゲルに近赤外蛍光を付与するように選択することができ、深部組織イメージングおよびデバイスマーキングを可能にする、近赤外(NIR)イメージングと共に使用するための造影剤、例えば、とりわけ、金ナノシェル、カーボンナノチューブ(例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシル基で誘導体化されたナノチューブ、例えば、部分的に酸化されたカーボンナノチューブ)などのNIR感受性ナノ粒子、色素ドープナノファイバーおよび色素封入ナノ粒子などの色素含有ナノ粒子、ならびに半導体量子ドット、ならびにとりわけ、シアニン色素、スクアライン、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体およびボロンジピロメタン(BODIPY)類似体などのNIR感受性色素、ならびに(e)とりわけ、99mTc、201Th、51Cr、67Ga、68Ga、111In、64Cu、89Zr、59Fe、42K、82Rb、24Na、45Ti、44Sc、51Crおよび177Luを含む画像化可能な放射性同位体が含まれる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのイメージング剤は、例えば、水性液体組成物などの液体組成物であり得る前記組成物の重量に対して、1%wt/wt以下~50%wt/wt以上の範囲の量で存在する。例えば、前記少なくとも1つのイメージング剤は、1%wt/wt~2%wt/wt~5%wt/wt~10%wt/wt~20%wt/wt~30%wt/wt~40%wt/wt~50%wt/wtのいずれかの範囲の濃度で前記組成物中に存在し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、1つ以上の治療剤をさらに含み得る。治療剤の例としては、小分子治療剤(本明細書では、2000g/mol未満、典型的には1500g/mol未満、より典型的には1000g/mol未満の分子量を有する治療剤として定義される)、生体分子(例えば、抗体および抗体断片およびオリゴペプチドなどのタンパク質およびタンパク質断片を含むポリペプチド、ならびに、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、およびそれらの断片などの核酸および核酸アナログを含むポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに放射性同位体が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の治療剤は、例えば、水性液体組成物などの液体組成物であり得る前記組成物の重量に対して、0.001%wt/wt(10ppm)以下~80%wt/wt以上の範囲の量で存在する。例えば、前記1つ以上の治療剤は、0.001%wt/wt~0.002%wt/wt~0.005%wt/wt~0.01%wt/wt~0.02%wt/wt~0.05%wt/wt~0.1%wt/wt~0.2%wt/wt~0.5%wt/wt~1%wt/wt~2%wt/wt~5%wt/wt~10%wt/wt~20%wt/wt~50%wt/wt~80%wt/wtのいずれかの範囲の濃度で前記組成物中に存在し得る。
【0051】
治療剤の具体的な例としては、とりわけ、抗血管新生剤、細胞毒性剤、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、免疫調節サイトカイン、T細胞アゴニスト、およびSTING(インターフェロン遺伝子刺激因子)アゴニストが挙げられる。
【0052】
治療剤の例としては、とりわけ、PD-1のPD-L1への結合の阻害剤、CTLA-4のCD80および/またはCD86への結合の阻害剤、TIGITのCD-112への結合の阻害剤、およびLAG-3のMHCクラスII分子への結合の阻害剤を含むチェックポイント阻害剤;PD-1(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブドンバナリマブなど)、PD-L1(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブなど)、LAG-3(例えば、レラトリマブなど)、TIM-3(例えば、LY3321367、MBG453、TSR-022など)、TIGIT(例えば、エチジリマブ、チラゴルマブ、ビボストリマブなど)、またはCTLA-4(例えば、イピリムマブトレメリムマブなど)に結合する抗体またはその抗原結合断片;CD3、CD19、CD20、CD22、CD52、CD79B、CD30、CD33、CD38、CD52、CD79B、HER2、EGFR、VEGF、VEGFR2、EPCAM/CD3、GD2、IL-6、RANKL、SLAMF7、CCR4、PDGFRα、Nectin-4またはTROP2に結合する抗体またはその抗原結合断片;IL-2、IL-12、IL-15、IL-23、インターフェロンガンマ(IFN-γ)およびgm-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などの免疫調節サイトカイン;TLR3アゴニスト(例えば、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸、二本鎖RNAなど)、TLR7アゴニスト(例えば、TMX-202、ガーディキモド、イミキモドなど)、TLR8アゴニスト(例えば、VTX-2337など)、TLR7/8アゴニスト(例えば、MEDI9197、R848、レジキモドなど)、TLR9アゴニスト(例えば、レフィトリモド(MGN1703)、チルソトリモド、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(例えば、アガトリモド)など)などのT細胞アゴニスト;GSK532、環状ジヌクレオチド(例えば、環状グアノシンモノホスフェートアデノシン一リン酸)、CRD5500(LB-061)、E7766、ADU-S100、SB11285 MSA2、MK1454、TTI-10001などのSTINGアゴニストが挙げられる。
【0053】
治療剤の例としてはまた、カンプトテシン(例えば、イリノテカン、トポテカンおよびエキサテカン)およびアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンおよびエピルビシン)、抗血管形成剤(例えば、血管内皮成長因子レセプター(VEGFR)阻害剤(例えば、アクシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブカネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブゲフィニチブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、マスチニブ、ムビチニブ、パゾパニブ、パゾパニブセマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タンヅチニブ、バンデタニブ、バタラニブおよびビスモデギブ)、微小管アセンブリ阻害剤(例えば、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンクリスチン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストラゾール)、白金薬物(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンおよびミリプラチン)、ヌクレオシドアナログ(例えば、5-FU、シタラビン、フルダラビンおよびゲムシタビン)、パクリタキセル、ドセタキセル、ミトマイシンC、ミトザントロン、ブレオマイシン、ピンヤグマイシン、アビラテロン、アミホスチン、ブセレリン、デガレリクス、フォリン酸、ゴセレリン、ランレオチド、レナリドマイド、レトロゾール、リュープロレリン、オクトレオチド、タモキシフェン、トリプトレリン、ベンダムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、メルファリン、プロカルバジン、テモゾロマイド、ラパミシン(およびアナログ、例えば、ゾタロリムス、エバロニチブ、ウミロリムス、シロリムスなど)、代謝拮抗物質(例えば、5-フルオロウラシル)、マルチチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、ブリバニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブおよびバンデチニブ)、メトトレキサート、ペメトレキセド、またはラルチトレキセドが挙げられる。
【0054】
治療用放射性同位体には、177Lu、90Y、131I、89Sr、153Sm、223Ra、224Ra、211At、225Ac、227Th、212Bi、213Bi、および/または212Pbが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、生理学的pHで帯電および/または非帯電である治療剤を含み得る。帯電治療剤は、ゲル組成物内に静電的に保持され、その後、イオン交換機構によってそこから放出され得る(例えば、前記組成物が、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基、またはカルボキシレート基から選択される1つ以上の負に帯電した基を含むアニオン性ポリマーをさらに含む場合)。前記ゲル組成物中に静電的に保持された帯電治療剤は、電解質媒質(例えば、生理食塩水(0.90%w/v NaCl))またはインビボ(例えば、血液または組織中)中で前記ゲル組成物から溶出して、数時間、数日間またはさらに数週間にわたって、治療剤の徐放を提供し得る。前記ゲル組成物中の非帯電治療剤はまた、インビボで前記ゲル組成物から溶出し得る。これは、例えば、迅速な溶出または「バースト効果」が、例えば、組織への迅速な治療剤送達のために所望される場合、または生理学的条件下での治療剤の低い溶解度が、イオン性相互作用よりもむしろ放出プロフィールを決定する場合、特に有利であり得る。
【0056】
本開示の複数の実施形態はまた、先行する実施形態のいずれかの液体組成物に対応するか、またはそれから形成される医療用組成物に関する。例えば、先に述べたように、このような液体組成物は、塞栓形成、基準マーカー、組織充填材、組織離間材、および治療剤デポのインビボ形成のために使用され得る。
【0057】
本開示の複数の実施形態は、本明細書に記載の液体組成物を用いる医療処置にさらに関する。例えば、いくつかの実施形態では、医療処置は、組織に栄養を供給する1つ以上の血管内に前記液体組成物を送達することを含む組織塞栓形成の方法である。そのような処置は、動静脈奇形の治療、消化管出血の治療、エンドリークの治療、動脈瘤の充填、疾患または外傷によって引き起こされる出血の治療、固形腫瘍(特に、肝臓、前立腺、腎臓、脳、結腸、骨および肺の腫瘍のような血管過多腫瘍)の治療、ならびに良性過形成症状(例えば、前立腺肥大の治療または子宮筋腫の治療)を含む種々の症状を治療するために使用され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記医療処置は、本明細書に記載される液体組成物を患者(例えば、患者の組織上、患者の組織内、患者の組織間など)に送達する(例えば、注入、噴霧などによって)ことを含む、局所的または全身的な治療剤放出の方法である。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記医療処置は、本明細書に記載される液体組成物を患者の腫瘍内または腫瘍上に(例えば、注入、噴霧などによって)送達することを含む治療方法であり、治療剤は腫瘍内に放出される。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記医療処置は、第1の組織と第2の組織との間(例えば、前立腺組織と直腸組織との間)に本明細書に記載される液体組成物を送達すること(例えば、注入することなど)を含む、第1の組織を第2の組織から離間させる方法である。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記医療処置は、本明細書に記載される液体組成物を基準マーカーとして患者内に(例えば、注入、噴霧などによって)送達することを含む治療方法である。
【0062】
またさらなる実施形態では、本開示は、動静脈奇形の治療、消化管出血の治療、動脈瘤の充填、固形腫瘍(特に、肝臓、前立腺、腎臓、脳、結腸、骨、および肺の腫瘍のような血管過多腫瘍)の治療、ならびに前立腺肥大または子宮筋腫等の良性過形成症状の治療を含む、様々な疾患および症状の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載される液体組成物の使用に関する。
【0063】
本開示はまた、そのような疾患および症状の治療のための医薬の製造における本明細書に記載される治療剤のいずれかの使用に関し、ここで、この治療剤は、本明細書に記載される液体組成物またはゲル組成物に組み込まれる。本開示はまた、そのような疾患および症状の治療における本明細書中の治療剤のいずれかの使用に関し、ここで、この治療剤は、本明細書に記載される液体組成物またはゲル組成物に組み込まれる。前記液体組成物は、特に、前記液体組成物が経カテーテル経路によって、注入によって、移植によって、噴霧などによって送達される場合に使用され得る。
【0064】
前述の実施形態は、1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックを含有するブロックコポリマーに関する。しかしながら、本明細書に記載される複数の実施形態のいずれかにおいて、前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C1~5)アルキルアミノ)(C1~5)アルキルメタクリレート)ブロックの代わりに、以下のブロックのいずれかを用いてもよいことを理解すべきである:とりわけ、1つ以上のポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(テトラメチレンイミノ)エチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ペンタメチレンイミノ)エチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ヘキサメチレンイミノ)エチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ピペリジノ)エチルメタクリレート))ブロック、1つ以上のポリ(ジオクチルアミノエチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(ピペリジルエチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジイソプロピルアミノエチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジ(n-ブチル)-アミノエチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(テトラメチレンイミノ)エチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ペンタメチレンイミノ)エチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ヘキサメチレンイミノ)エチルアクリレート)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジエチルアミノエチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジイソプロピルアミノエチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジ(n-ブチル)アミノエチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(テトラメチレンイミノ)エチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ペンタメチレンイミノ)エチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ヘキサメチレンイミノ)エチルメタクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ピペリジノ)エチルメタクリルアミド))ブロック、1つ以上のポリ(ジオクチルアミノエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(ピペリジルエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジイソプロピルアミノエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(N,N-ジ(n-ブチル)-アミノエチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(テトラメチレンイミノ)エチルアクリルアミド)ブロック、1つ以上のポリ(2-(ペンタメチレンイミノ)エチルアクリルアミド)ブロック、または1つ以上のポリ(2-(ヘキサメチレンイミノ)エチルアクリルアミド)ブロックが挙げられる。
【0065】
実験
ABAトリブロックコポリマーがpH応答性中心ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックおよび2つの熱応答性ポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)末端ブロックを含む、ABAトリブロックコポリマー組成物に関する特定の例をここで示す(
図1を参照)。ABAトリブロックコポリマーは、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ACVA)および連鎖移動剤4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸(CETCPA)によって開始されるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAM)の重合で開始するRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動ラジカル重合)技術を使用することによって合成した。第1のブロックを合成した後、プロトン化2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレートモノマー(DBA)を使用してDBAブロックを重合し、続いてNIPAAMの第3のブロックを共重合した(
図4を参照)。メタノールを反応溶媒として使用した。
【0066】
理論に束縛されるものではないが、得られたNIPAAM-DBA-NIPAAMコポリマーの溶液は、生理学的条件、pH7および37℃で、疎水性相互作用によって物理的に架橋されたヒドロゲルを形成すると考えられる。これに関して、周囲温度(20~25℃)およびpH5~6において、得られたNIPAAM-DBA-NIPAAMコポリマーの水溶液は、NIPAAMおよびDBAブロックの両方が水溶性であるので、自由流動性を有する液体形態である。ポリAMPSと混合されると、DBAブロックの正に帯電したアミン基は、ポリAMPSの負に帯電したスルホネート基と複合体を形成して、コアセルベート粘性液相を生成する(
図3Aに概略的に示される)。この粘性液体は、1mLまたは3mLのシリンジを用いて2.7~2.8Frのカテーテルを通して比較的容易に送達可能である。カテーテル送達の間、カテーテルが位置する血管の温度は、約37℃であり、その結果、複合液体の温度は、およそ30~37℃まで上昇する。NIPAAMブロックのゾル-ゲル転移は、より高い温度でのNIPAAMの増加した疎水性に起因して起こり、そして混合されたミセルおよび複合体から構成される物理的に架橋された「流動可能な」ヒドロゲル構造が形成される(
図3Bに概略的に示される)。ミセルコアはNIPAAMであり、コロナ部分は、ポリAMPSと相互作用する親水性でプロトン化されたDBAブロックによってバランスがとられている。次いで、このゲルをpH7~7.4の生理学的溶液中(例えば、血管系内)に配置すると、DBAはpKa=5を有するので、部分的なDBA脱プロトン化が起こる。ヒドロゲル構造は、DBAブロックの増加した疎水性によってさらに増強され、ヒドロゲル強度および粘度は、有意に増加する(
図3Cに概略的に示される)。
【0067】
実施例1.pNIPAAM
300の合成
CETCPA(0.0272g、0.09mmol)、NIPAAM(3g、26.51mmol、NIPAAM/CPATTCモル比=300)およびACVA(5mg、0.02mmol、ACVA/CETCPAモル比=0.2)を丸底フラスコ(RBF)に添加し、3mLのメタノールで溶解した。RBFをゴム栓で密閉し、反応混合物をN
2で最低30分間脱気した。脱気工程は、短い針(栓に、出口として)および長い針(入口として)を用いて、RBFを氷浴中で一定の撹拌下に維持しながら、反応混合物中にN
2を直接吹き込みながら実施した。脱気後、RBFを70℃に予熱した油浴に入れ、反応を一定の磁気撹拌下で24時間進行させた。RBFを空気に開放し、RBFを氷浴に入れることによって反応を停止させた。反応混合物のアリコート(50μL)を
1H NMR分析のために採取した(
図5A参照)。精製は行わなかった。混合物のプロトンNMR分析は、98%を超えるNIPAAMモノマーが反応したことを示した。
【0068】
実施例2.pNIPAAM
300-pDBA
100の合成
2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA)(2.13g、8.84mmol、DBA/pNIPAAM
300モル比=100)および脱イオン水(2mL)をRBF中で混合し、マグネチックスターラーで撹拌した。HCl 25重量%溶液(1.151mL、DBA/HClモル比=1)を添加しながらRBFを氷浴に入れ、全てのDBAが溶解するまで一定の撹拌下で室温に維持した。NaOH 1M溶液(0.673mL)で混合物のpHを6に調整した。プロトン化DBA溶液を、前のステップで調製したpNIPAAM
300を含有するRBFに移した。次いで、ACVA(5mg、0.02mmol、ACVA/pNIPAAM
300モル比=0.2)を反応混合物に加えた。同様に、反応混合物をN
2で30分間脱気した後、RBFを70℃に予熱した油浴中に24時間置いた。反応混合物のアリコート(50μL)を
1H NMR分析のために取り出した(
図5B参照)。精製は行わなかった。
【0069】
実施例3.pNIPAAM
300-pDBA
100-pNIPAAM
300の合成
pNIPAAM
300-pDBA
100を含有するRBFに、NIPAAM(3g、26.51mmol、NIPAAM/pNIPAAM
300-pDBA
100モル比=300)をACVA(5mg、0.02mmol、ACVA/pNIPAAM
300-pDBA
100モル比=0.2)およびメタノール(4mL)と共に添加した。反応混合物をN
2で最低30分間脱気した後、RBFを70℃に予熱した油浴に24時間入れた。反応混合物のアリコート(50μL)を
1H NMR分析のために取り出した(
図5C参照)。次いで、透析精製を行い、精製されたサンプルを
1H NMR分析によって分析した(
図5Dを参照)。トリブロックコポリマーの合成を
図4に概略的に示す。この技術を用いて合成されたコポリマーのリストを表1に示す。
【0070】
【0071】
実施例4.NIPAAM-DEA-NIPAAMトリブロックコポリマーの合成
トリブロックコポリマーはATRP法により合成した。ジエチルメソ-2,5-ジブロモアジペート0.11g(1当量)開始剤、DEA(2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)モノマー5.6g(100当量)、HMTETA(1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン)触媒0.138g(2当量)、および臭化銅(I)0.086g(2当量)を、6mLの無水メタノールと共に250mLの三つ口丸底フラスコに入れた。フラスコ内の混合物を液体窒素によって凍結させ、3回の凍結融解プロセスによって脱気した後、70℃の油浴中で一晩重合させた。得られたDEAポリマーをシリカゲルカラムに通して銅触媒を除去することにより精製した。ポリDEAをさらに40℃で24時間真空乾燥した。
【0072】
2.5gの得られたポリDEAマクロマーを15mLの無水メタノール中で6.0gのNIPAAMモノマーと混合し、続いて50分間窒素で脱気した。窒素雰囲気下、触媒臭化銅(I)0.038g(2当量)およびMe4Cyclam(1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)0.068g(2当量)を周囲温度で添加した。反応を窒素下で一晩撹拌し、反応が完了した後、溶液をシリカゲルカラムに通して、溶離液としてMeOHを使用して触媒を除去した。溶媒を回転蒸発によって除去し、ポリマーを真空下40℃で24時間さらに乾燥させた。
【0073】
実施例5.トリブロックコポリマーとポリAMPSとを混合することによるポリマー塞栓の製剤のための典型的な手順
複合ヒドロゲルの調製の典型的な手順として、20%wt/wtポリマー溶液を作製するために、2gのトリブロックコポリマー(サンプル4、表1)を、溶液のバイアルを氷水浴または冷蔵庫(2~8℃)のいずれかに1~2時間繰り返し入れることによって、8gの脱イオン水に溶解し、続いて、固体ポリマーの大部分が溶解するまで、1時間ローラー混合した。次いで、溶液を冷蔵庫内に一晩保持し、再び2時間ローラー混合し、均質な溶液を得た。
【0074】
この溶液を10mLシリンジ中で0.9gのタンタル粉末(20%固形分)と均一に混合した。シリンジを軽く叩くことによって気泡を除去した。撹拌しながらNaOH粉末をポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)溶液(MW約200万Da、15%濃度)にゆっくりと添加してpHをおよそpH4に調整することによって、ポリAMPSナトリウム形態を調製した。およそ1:1.5の電荷比を提供するために、第2の10mLシリンジ中の0.54gのポリAMPSを、三方活栓を通してタンタルポリマー懸濁液と混合して、均一な混合物を形成した。次いで、混合物を1つの10mLシリンジに押し込み、121℃、30分間で蒸気滅菌のために蓋をした。懸濁液を、室温で三方活栓を通して別のシリンジと交換することによって繰り返し混合した。最後に、懸濁液をカテーテル送達用の1mLシリンジに分注した。最終組成物は、11.1%wt/wtのトリブロックコポリマー、3.7%wt/wtのポリAMPS、および20%wt/wtのタンタルを含有していた。
図6は、18G針を通して37℃のPBS緩衝液中に組成物を注入した後に形成されたヒドロゲルを示す。PBS緩衝液組成は、140mM NaCl、10mMリン酸緩衝液、および3mM KCl、pH7.4である。
【0075】
同様のプロセスを使用して、NIPAAM-DEA-NIPAAMトリブロックコポリマーとポリAMPSとの代表的な複合ゲルを作製した。
実施例6.DBAブロックとポリAMPSとの間の異なる電荷比を有する複合ゲルのレオロジー研究
NIPAAM-DBA-NIPAAMコポリマー溶液をわずかに酸性の条件下で調製して、DBAブロックを完全にプロトン化させ、得られた溶液のpHを測定したところ、およそpH5~6の範囲であった。ポリAMPS溶液を2つのシリンジ混合を介してコポリマー溶液と混合した場合、粘性のコアセルベート溶液が室温で形成された。組成物中のDBAとポリAMPSの電荷の比率を制御することによって、溶液のレオロジー特性を変化させることができた。
【0076】
図7は、DBAとポリAMPSとの間の異なる電荷比、具体的には1:0、1:1および1:1.5を有するNIPAAM300-DBA100-NIPAAM300複合ゲルのレオロジー挙動を示す。この試験ではタンタル粉末は使用しなかった。
図7は、AMPSを添加しない場合(1:0比)、電荷-電荷相互作用がなく、その結果、軟らかいゲルが形成されることを示す。低温(<30℃)の溶液中では、1:1.5比を有するコポリマーのヒドロゲルは比較的軟らかく、わずかに硬いゲルである1:1比のゲルと比較して、より軟らかい固体(G’<100Pa)のように挙動した。これは、貯蔵弾性率および損失弾性率の両方を低下させるための余分なポリAMPS鎖の寄与に起因し得る。およそ37℃の高温では、全てのゲルはより固体様(G’>G’’)であり、1:1比のゲルは1:1.5比のゲルと比較してより硬い。NIPAAM400-DBA200-NIPAAM400を含有するサンプルについて、1:1および1:1.5の比のゲルは、ほぼ同じ挙動を示し、これは、高分子量および強い鎖の絡み合いによって説明し得る。
【0077】
実施例7.温度およびpH応答性複合ゲルのレオロジー特性に対するDBAおよびNIPAAM鎖の効果
図8は、温度勾配に対する様々なpNIPAAM-b-pDBA-b-pNIPAAMaトリブロックコポリマーサンプルの貯蔵弾性率および損失弾性率を示す。結果は、NIPAAMブロックの鎖長の増加が、およそ37℃の高温でヒドロゲルの貯蔵弾性率を増加させる傾向があることを示唆している。この試験ではタンタル粉末は使用しなかった。温度が33~37℃を超えると、DBA100コポリマーゲルの貯蔵弾性率は、4kPaから7kPaに増加し、NIPAAM200からNIPAAM300にそれぞれ変化した。DBA200コポリマーゲルの貯蔵弾性率は、NIPAAM300からNIPAAM400への変化に伴って、それぞれ約10kPaから11kPaに増加した。
【0078】
図8のグラフから分かるように、30℃未満の温度では、短鎖コポリマーの複合ゲルはより液体様の挙動を示し、損失弾性率は貯蔵弾性率よりも大きかった(10~50Pa)。(サンプル7、表1)まで分子量が増加すると、貯蔵弾性率および損失弾性率はほぼ同じで、200~300Paであり、より固体様の複合ゲルを示唆する。測定は、サンプル3および4(表1)は送達するのが比較的容易であり、サンプル6および7(表1)はカテーテル送達に、より大きな力を必要とする、はるかに硬いゲルであったという観察と一致する。
【0079】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ヒドロゲルの形成においてDBAブロックが果たす役割は、pH7未満のpHでポリAMPSと相互作用するDBA成分との複合体であり、一方、疎水性部分は、37℃およびpH7でNIPAAMと共にゲル強度を増強するようである。
図8は、同じNIPAAM300長を有するDBA100およびDBA200の2つのコポリマーを示す。DBA200コポリマーは、DBA100と比較して増加した貯蔵弾性率を有する。
【0080】
DBAの長さの効果を研究するために、DBA300およびDBA400を有するコポリマーを合成し、関連する複合ヒドロゲルサンプルを調製した。表2は、サンプルの形態および特性を列挙する。サンプル4および6(表2)は両方とも、100または200単位のいずれかのDBAブロックを有するNIPAAM300ブロックを有し、サンプル3、8および9は、100~400単位のDBAブロックを有するNIPAAM200ブロックを有する。一般に、100~200単位の短いDBA鎖を有するゲルサンプルは、より均質で液体様である。ゲルは、2.7~2.8Frカテーテルを通して送達することが比較的容易である。
【0081】
【0082】
より長いDBA単位(すなわち、300~400単位)を有するサンプルは、ポリAMPSと混合された場合、直ちに複合沈殿物を形成した。複合ゲルは混合するのが困難であることが見出され、これはサンプル調製段階においてさえ真実であった。ゲルは、破壊されて小さな粒子になる傾向があり、その後、凝集してシリンジ内に閉塞をもたらす傾向があった。均一なゲルを作製することができなかったので、ポリAMPSと混合したNIPAAM400-DBA300-NIPAAM400を用いたレオロジー研究は行わなかった。
【0083】
実施例8.複合ゲル特性に対するpH変化の効果
この実施例における複合ヒドロゲルは、プロトン化NIPAAM-DBA-NIPAAMトリブロックコポリマーおよびポリAMPSから構成され、送達前および送達後の状態で、5~6のpH範囲を有する。生理学的環境への送達後、DBAブロックは、部分的に脱プロトン化され始め、疎水性になり、37℃でNIPAAMと一緒になった複合ゲルの疎水性をさらに増強した。ゲル弾性率を測定するために、振動法によって予備レオロジー研究を実施した。ゲル特性に対するpH変化の効果を理解するために、最初の研究を37℃でゲルに対して行い、続いて試験セルにPBS緩衝液を添加した。セルは、レオメータの試験プレートに接続された底部で密閉されたOリングを有する3Dプリントされたプラスチックシリンダーから作製された。pH5~6でのゲル挙動を研究するため、最初に、ゲルを25mmの平行プレート形状下に配置して、空気中での振動試験を行い、カテーテル内でのゲルの事前送達を模倣した。次いで、pH7.4のPBS緩衝液を細胞に添加して、生理学的環境への送達後のゲルを模倣するゲルpH変化を引き起こした。貯蔵弾性率および損失弾性率の変化を記録して、送達前および送達後のゲル挙動を実証した。
【0084】
図9は、1:1.5の電荷比でポリAMPSを有するコポリマーサンプル、NIPAAM300-DBA100-NIPAAM300(サンプル4、表2)およびNIPAAM400-DBA200-NIPAAM400(サンプル7、表2)の2つの複合ゲルの試験結果を示した。
図9に示される弾性率の増加は、DBA部分の脱プロトン化が、高温で形成されたヒドロゲルネットワークの疎水性相互作用を増強し得ることを実証した。PBS緩衝液を添加した後、両方のサンプルで観察された弾性率の増加は比較的小さかったが、これはおそらく、ゲルとPBS溶液との間の接触が最初に形状の縁部でのみ起こったためであり、内部ゲルの脱プロトン化はより長い時間を必要とし得る。ポリマー中のNIPAAMのより高い画分が、プレート下のサンプルディスクへのPBS拡散を減速させる、より疎水性のバリアを形成したこともあり得る。したがって、観察された弾性率の増加は、インビボでの実際のゲル硬化よりもはるかに低く、サンプルディスク縁部の非常に小さい接触面積に起因すると考えられる。
【0085】
レオロジー研究は、温度を15℃から40℃に上昇させることによってポリマーの熱応答性を確認し、ポリマー溶液のゾル-ゲル転移が約32~34℃で観察された。これらは、0.1%の固定剪断歪みおよび角振動数10rad/sで測定した。ヒドロゲルの弾性率に対するpHの影響を、37℃で25mmの平坦な形状下で捕捉されたポリマー溶液の上部にPBSを添加することによって研究した。同じ剪断歪みおよび角振動数を適用した。
【0086】
実施例9.NIPAAM-DEA-NIPAAMトリブロックコポリマーとNIPAAM-DBA-NIPAAMトリブロックコポリマーとの比較
トリブロックコポリマーNIPAAM200-DBA100-NIPAAM200と比較して、NIPAAM200-DEA100-NIPAAM200のDEAブロックは、ジエチルアミノ基とジブチルアミノ基との間の4つの炭素の違いのために疎水性が低い。
図10は、ポリAMPSで形成された複合ゲルのレオロジーに対するこの差の影響を示す。NIPAAM-DEA-NIPAAMの複合ゲルは、より固体様であり、G’>G’’であった。それは温度感受性であるが、およそ37℃の温度でのその貯蔵弾性率(G’約200Pa)は、25℃での貯蔵弾性率と比較して有意に増加せず、これは弱いゲルを示唆した。ゲルの目視検査はまた、DEAブロックとポリAMPSとの間の均一な混合物および複合体化を示した(表2)。沈殿試験および流動モデル試験は、レオロジー試験データ、すなわち、撹拌中のゲル断片形成および流動モデルの細孔の通過を確認した。さらに、DEAブロックは7.4のpKaを有し、これは、NIPAAM-DEA-NIPAAMコポリマーが生理学的条件下で顕著なpH応答性を示さないことを示唆する。
【0087】
実施例11.異なる組成を有するタンタル混合複合ゲルの沈殿試験
20%のタンタル粉末と混合したコポリマー-ポリAMPS複合ゲルのサンプルを、針(18ゲージ)を通して溶液をPBS中に送達して沈殿を観察することによって、最初に、37℃でPBS中で試験した。サンプル3、サンプル4、サンプル6およびサンプル7を、電荷比1:1または1:1.5で2つのレベルのポリAMPSを用いて試験した。組成物は、9.2~12.9%wt/wtのトリブロックコポリマー、2.4~4.0%wt/wt(1:1比)または3.2~5.1%wt/wt(1:1.5比)のポリAMPS、および20%wt/wtのタンタルを含有した。試験結果を表3に示す。サンプル13、14および15を、1:1、1:1.2、1:1.5および1:2の電荷比でpAMPSと配合した。タンタル粉末および1.0~1.2MのNaCl溶液も同様に製剤に添加した。試験した組成物は、5.0~7.3%wt/wtのトリブロックコポリマー、5.0~7.7%wt/wtのポリAMPS、および20%wt/wtのタンタル粉末を含有していた。NaClの添加は、電荷-電荷相互作用を遮蔽し、製剤のより遠位の送達を可能にするためである。流体からの濃縮NaClの拡散により、コアセルベート化ゲルは固化し、細い血管を塞栓した。
【0088】
【0089】
【0090】
8つ全てのサンプルは、ゲル形態において糸状であり、これは、ゲルが送達前に針内で既に形成し始めていたことを示唆した。サンプル3およびサンプル4は、PBS中のゲル粒子/断片がより少なく、より高い凝集性を示した。サンプル4は、サンプル3と比較して改善された凝集性を有するようであった。加えて、より高いポリAMPS(1:1.5比)を有するゲルは、1:1比を有するサンプルと比較してより軟らかく、これは他のレオロジー試験結果と一致する。サンプルは、およそ37℃の温度での強いバイアル振盪に耐え、壊れた断片は観察されなかった。PBSの温度が30℃未満に低下すると、ゲルは崩壊し始め、タンタル粉末がゲルから浸出した。一方、溶液は半透明になったが、これはNIPAAM-DBA-NIPAAMブロックコポリマーからの分散ミセル形成によるものであろう。
【0091】
より長いDBAおよびNIPAAM鎖を有するサンプル6および7は、37℃でPBS緩衝液中に送達された場合、より凝集性が低いようであり、そしてポリマーの大きな断片および少量のタンタル粉末が、35℃より高い温度でさえ溶液中に見られた。サンプル3および4と同様に、より長いDBAおよびNIPAAM鎖を有するゲルは、PBSの温度が30℃未満に低下したとき、より小さい断片および分散したタンタル粉末の形成をもたらす。
【0092】
試験結果に基づいて、サンプル4は、バイアルを激しく振盪した後でさえ、より高いゲル強度および凝集性を有したが、6kPaの貯蔵弾性率を有し、これは、比較的剛性のゲルを示唆した。
【0093】
実施例12.流動モデルで送達されるタンタル混合複合ゲル
低温およびpH5~6で調製されたNIPAAM-DBA-NIPAAMトリブロックコポリマーの溶液もまた、液体塞栓組成物としてカテーテルを通して容易に送達することができた(
図11)。PBS流動モデルシステムにおけるカテーテル送達の間、ポリマー溶液は、温度が周囲温度から37℃に上昇するにつれて、カテーテル内でゲル化し始める傾向があった。それにもかかわらず、ゲルは、過度の力なしに押し込み可能なままであり、これは、血流に入った後、適切なゲル強度で(すなわち、断片に剪断されることなく)迅速なゲル化を可能にする。生理食塩水がゲル中の水と交換し始めると、ゲルのpHはpH7に上昇し、DBAの脱プロトン化を引き起こし、ゲル強度を増強し、好ましい長期ゲル安定性をもたらした。
【0094】
放射線不透過性造影剤およびタンタル粉末を組成物に添加して、蛍光透視誘導下での手術手順を容易にし得る。例えば、液体造影剤、例えば、ヨード化されたケシ油のようなヨード化油もまた、塞栓形成の質を確認するために使用され得る。これは、例えば、塞栓形成が完了した後に造影剤を注入することができるように、カテーテルの近位側でシリンジに取り付けられた三方活栓を使用して、容易に達成することができる。
【0095】
実施例13.ブタ腎臓および肝臓モデルにおける複合ゲルの前臨床試験
ブタモデルにおける複合ゲルの送達性、取り扱い、塞栓形成性能、および可視性を評価するために、サンプル4(表3)および参照サンプル(水と混合したゼラチン、ラポナイト、およびタンタルを含有する)を腎臓および肝臓の動脈に送達した。
【0096】
18%濃度のゲルサンプルを最初に3mLシリンジ中で121℃で30分間オートクレーブ処理した。試験は、処理されたゲルサンプルがその熱応答性ゲル化特性およびpH応答性ゲル化特性を維持し、オートクレーブ処理前のサンプルと有意に異ならなかったことを示した。医師のユーザ経験による予備観察は、サンプルの送達が容易で、困難を伴わなかったということであった。カテーテル先端部を出るゲルは、近位分布を有するコイル様ひもとして現れた。直径およそ1.8~2.5mmの3つの血管を最初に塞栓形成し、続いて造影剤を流したところ、良好な塞栓形成効率が実証された。深部血管の塞栓形成も成功した(
図12A~12C)。試験は、参照サンプルと比較して、フルオロスコープ下でゲルのより良好な可視性を示した(
図13A~13C)。
【0097】
実施例14.複合ゲル液体塞栓製剤への薬物の添加および複合ゲル液体塞栓製剤からの薬物の放出
ドキソルビシン溶液(25mg/mL)を、三方活栓を通して2つのシリンジの間に押し込むことによって、トリブロックコポリマーの水溶液(20%)と完全に混合した。37℃のPBS中に送達した後、薬物が装填され固化された塞栓ヒドロゲルは、ドキソルビシンを徐々に放出し始めた。24時間後、溶液は薬物放出を示す赤色であった。次いで、溶液を37℃の新鮮なPBSと交換し、これは24時間後に再び赤色になり、薬物放出の継続を示した。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを含むブロックコポリマーの水溶液を含む医療用組成物であって、各C
3~5アルキル基が、プロピル、ブチルおよびペンチル基から独立に選択され、25℃で液体形態である、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックが、ポリ(2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、5~6の範囲のpHを有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、pH7.4および37℃の温度を有するリン酸緩衝生理食塩水に注入されるとゲルになる、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが、2つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび1つのポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーであるか、または前記ブロックコポリマーが、1つのポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックおよび2つのポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックを有するトリブロックコポリマーである、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマー中の前記1つ以上のポリ(N-イソプロピルアミノアクリルアミド)ブロックのその各々が、長さが5~600モノマー単位の範囲である、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマー中の前記1つ以上のポリ(2-(ジ-(C
3~5)アルキルアミノ)エチルメタクリレート)ブロックの各々が、長さが50~300モノマー単位の範囲である、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記ブロックコポリマーの数平均分子量が2000~500,000Daの範囲である、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、25℃の温度で50 1/sの剪断速度で測定したときに、10mPa・s~5000mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーが、アミン基を含む、長さが1~500モノマー単位の範囲の追加のポリマーブロックをさらに含む、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基、ホスホネート基およびカルボキシレート基から選択される負に帯電した基を含むアニオン性ポリマーをさらに含む、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記アニオン性ポリマーが、スルホネートポリマー、ポリホスフェート、ポリ(カルボン酸)および負に帯電した多糖類から選択され、好ましくは、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
イメージング剤または治療剤をさらに含む、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、バイアルまたはシリンジバレルで提供される、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1
または請求項2に記載の組成物の、塞栓剤、基準マーカー、組織充填剤、組織離間材、または治療剤デポとしての使用。
【国際調査報告】