IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-540644ジンセノシド化合物K又は複合ジンセノシド組成物を含む歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ジンセノシド化合物K又は複合ジンセノシド組成物を含む歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K8/63
A61P1/02
A61K31/704
A61K9/08
A61K9/06
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530496
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 KR2022012482
(87)【国際公開番号】W WO2023113139
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0179760
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514012085
【氏名又は名称】ビーティージン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】オー、ジン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ユル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ヒュン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ユ-ジン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD64
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF12
4C076AA06
4C076AA11
4C076BB22
4C076CC09
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE32
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA28
4C086MA34
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】
[課題]副作用が少ないか又はなく、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制活性を示す天然物由来の組成物を提供すること。
[解決手段]本発明者らは、紅参などに由来するジンセノシド化合物K、又はジンセノシド化合物K、ジンセノシドRg3(R+S)、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2及びジンセノシドRb1が混合された複合ジンセノシド組成物が、顕著な歯表面細菌膜減少及び歯表面有機酸生成抑制の効果を示すことを確認した。この組成物は、歯磨き粉、口腔洗浄剤をはじめとする口腔用組成物として利用可能であり、その他にもガム、飲料、菓子などの食品組成物にも応用可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ジンセノシド化合物K;又は
(ロ)ジンセノシド化合物K100重量部に対してジンセノシドRg3(R+S)、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2、及びジンセノシドRb1がそれぞれ7重量部以上含まれた複合ジンセノシド組成物;を有効成分として含有する、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物。
【請求項2】
前記(ロ)の複合ジンセノシド組成物は、
1)紅参を抽出及び濃縮して紅参濃縮物を得る段階;
2)紅参濃縮物を溶解させた後、合成吸着樹脂カラムに通過させて吸着させた後、エタノールで脱離し、ジンセノシドRb1、Rb2、Rc及びRdを含む複合ジンセノシドを得る段階;
3)複合ジンセノシドをアルファ-ガラクトシダーゼで処理し、発酵複合ジンセノシドを得る段階;及び
4)前記1)段階で得た紅参濃縮物に、前記3)段階で得た発酵複合ジンセノシドを加え、複合ジンセノシド組成物を得る段階;によって得たことを特徴とする、請求項1に記載の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物。
【請求項3】
前記複合ジンセノシド組成物は、ジンセノシド化合物K100mg/g以上、ジンセノシドRg3(R+S)、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2、及びジンセノシドRb1がそれぞれ8mg/g以上含まれることを特徴とする、請求項1に記載の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物。
【請求項4】
1)、2)及び4)段階の紅参濃縮物は、粉末状又は液状であることを特徴とする、請求項2に記載の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物。
【請求項5】
前記ジンセノシドK又は複合ジンセノシド組成物は、液状、クリーム状、ペースト状、又は固状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項の複合ジンセノシド組成物を含有する歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む歯磨き粉組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項の複合ジンセノシド組成物を含有する歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む口腔洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項の複合ジンセノシド組成物を含有する歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む食品組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅参から抽出及び/又は加工した複合ジンセノシド組成物又はジンセノシド化合物Kを含む歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0002】
本発明は、大韓民国中小ベンチャー企業部の支援で行った課題の結果であることを明らかにする(課題固有番号:1425147780、課題名:抗ムシ歯効能を有する紅参特異サポニン抽出物の事業化及び効能検定)。
【背景技術】
【0003】
ムシ歯は、世界的に最も蔓延する口腔内疾病の一つで、近年、糖類摂取量の増加などの食生活パターンの変化によって罹患率が益々増加している。歯牙齲蝕症(ムシ歯)は、齒苔内細菌、食物、唾液の相互作用によって誘発される多因性疾患で、齒苔内細菌の中でもストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans;S.mutans)とストレプトコッカスソブリヌス(Streptococcus sobrinus;S.sobrinus)が主原因菌であり、このムシ歯菌が歯表面に付着して増殖及び酸生成の過程を経ることで、歯牙中の無機質が脱灰し、象牙質が破壊され、歯牙組織の欠損を招く細菌性歯牙硬組織疾患である。また、上のようなムシ歯原因菌によって生成された有機酸が歯質に直接作用するには、酸生成菌が歯表面に滞留しなければならず、そのためには不溶性グルカンが形成されるべきである。これらの細菌が分泌するGTase(glucosyltransferase)は、スクロースを用いて、グルコース重合体として90%以上のα-1,3グルコシド結合(glucosidic linkage)と、残りはα-1,6グルコシド結合からなる不溶性グルカンを形成する。これは、水に溶けずに歯の表面に付着する能力があるため、歯表面細菌膜を形成し、菌塊を形成する。この菌塊が歯の表面を覆えば歯表面細菌膜(dental plaque)を形成することになり、齲蝕原因菌によって乳酸(lactic acid)などの有機酸が歯表面細菌膜内に蓄積され、pHが低下しながら歯牙の脱灰が誘発される。歯表面細菌膜は、唾液中のカルシウム、リン酸が付着しながら硬くなりつつ歯石が形成され、歯石に比例して歯牙齲蝕症が促進される(健康機能食品機能性評価ガイド、食薬処2017.12、ボク等,Kor.J.Food & Nutr.13(2)、139(2000)、キム等,J.Kor.Fish.Soc.35(2)、191(2002))。
【0004】
歯牙齲蝕症の治療、予防製剤の開発のために様々な方法が研究されてきており、有力な方法としては、歯牙に形成されたバイオフィルムの生成を阻害することでムシ歯を抑制する方法がある(保健医療技術研究開発事業報告書、歯牙齲蝕症の予防及び治療剤のためのバイオフィルム制御研究,2013)。また、バイオフィルムの形成を防ぐGTase阻害剤を開発する方法(Ren.Z.等,Antimicrob Agents Chemother.2015)も頻繁に利用されるバイオフィルム抑制法の一つである。また、歯牙齲蝕症の治療、予防のために、ムシ歯原因菌の増殖を抑制する抗菌製剤の開発(J.Periodont.Res.,21(16 suppl.)33(1986)、Arch.Oral Biol.,17,147(1972)、J.Periodont.Res.,21(16 suppl.)74(1986))が活発になされている。特に、毒性が少なく、安定性に優れた天然抽出物を用いた坑菌活性製剤の開発が活発に行われ、アロエ抽出物(Kor.J.Food & Nutr.13(2)、139(2000))、昆布抽出物(J.Korean Fish.Soc.35(2)、191(2002))、又は五味子抽出物などを用いたムシ歯抑制剤が研究、開発されている(韓国登録特許10-0296775号)。このような天然抽出物は食用植物を原料とするので、毒性がほとんどなく、摂取しやすいという利点がある。しかしながら、天然抽出物は、様々な物質が混合された単純抽出物の形態であるため、特定の薬理活性成分が極微量入っており、しかも、その成分の大量生産及び成分含有量の調節が難しいため薬理効能に対する再現性が強くなく、よって、機能性食品や医薬品への開発が難しいという限界がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、歯牙齲蝕の肝心な発生機序である歯表面細菌膜生成と歯表面細菌膜酸性化を抑制してムシ歯を予防する効果的な天然物由来組成物又はこれを用いたムシ歯予防方法を探索することになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、副作用が少ないか又はなく、歯表面細菌膜減少効果及び/又は歯表面細菌膜酸性化抑制効果を示す天然物質由来組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、紅参又は人参から抽出したジンセノシド化合物K、又は溶媒を用いて紅参又は人参から複合ジンセノシドを抽出し、これを吸着樹脂に吸着させた後、溶媒で脱離させ、部分精製し、紅参濃縮物を混合した複合ジンセノシド組成物が、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制の機能を示すことを確認し、これらの組成物を含む歯磨き粉組成物、口腔洗浄剤組成物、食品組成物、及び薬学組成物を発明するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明のジンセノシドK又は複合ジンセノシド組成物は、歯表面細菌膜減少及び歯表面有機酸生成抑制の効果を示した。
【0009】
したがって、本発明のジンセノシドK又は複合ジンセノシド組成物は、歯磨き粉、口腔洗浄剤をはじめとする口腔用組成物として利用可能であり、その他にもガム、飲料、菓子などの食品組成物にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】歯表面細菌膜減少の実験結果と、実験後にガラスチューブに付着した齲蝕菌写真を示すものである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001は対照群と対比)。
【0011】
図2】有機酸生成をHPLC分析した結果を示すものである。
【0012】
図3】乳酸(Lactic acid)標準試料をHPLC分析した結果及び濃度別標準曲線を示すものである。
【0013】
図4】有機酸生成をHPLC分析して定量統計処理した結果を示すものである(****p<0.0001は対照群と対比;**p<0.01は化合物K及びBTEX-Kと対比)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
【0015】
(イ)ジンセノシド化合物K;又は
【0016】
(ロ)ジンセノシド化合物K100重量部に対してジンセノシドRg3(R+S)、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2、及びジンセノシドRb1がそれぞれ7重量部以上含まれた複合ジンセノシド組成物;を有効成分として含有する、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、前記(ロ)の複合ジンセノシド組成物が、
【0018】
1)紅参を抽出及び濃縮して紅参濃縮物を得る段階;
【0019】
2)紅参濃縮物を溶解させた後、合成吸着樹脂カラムに通過させて吸着させた後、エタノールで脱離させ、ジンセノシドRb1、Rb2、Rc及びRdを含む複合ジンセノシドを得る段階;
【0020】
3)複合ジンセノシドをアルファ-ガラクトシダーゼで処理し、発酵複合ジンセノシドを得る段階;及び
【0021】
4)前記1)段階で得た紅参濃縮物に、前記3)段階で得た発酵複合ジンセノシドを加え、複合ジンセノシド組成物を得る段階;によって得られることを特徴とする、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0022】
前記合成吸着樹脂カラムは、特に限定されないが、多孔性吸着樹脂カラムが好ましく、より好ましくは、HP2MG又はHP-20のいずれ一つ以上であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明において、前記複合ジンセノシド組成物は、ジンセノシド化合物K100mg/g以上、ジンセノシドRg3(R+S)、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2、及びジンセノシドRb1がそれぞれ、8mg/g以上、好ましくは8mg/g以上30mg/g以下、より好ましくは10mg/g以上30mg/g以下で含まれることを特徴とする、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0024】
また、本発明において、前記1)、2)及び4)段階の紅参濃縮物は、粉末状又は液状であることを特徴とする、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0025】
また、本発明において、前記ジンセノシドK又は複合ジンセノシド組成物は、液状、クリーム状、ペースト状、又は固状であることを特徴とする、歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物に関する。
【0026】
また、本発明は、前記歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む、ムシ歯予防又は治療用の薬学組成物に関する。
【0027】
前記ジンセノシド化合物K及び/又は複合ジンセノシド組成物BTEX-Kを有効成分として含有するムシ歯予防又は治療用の薬学組成物は、薬剤学的分野において一般に許容される担体と共に配合し、通常の方法によって注射形態、経口投与、塗布剤の形態などに剤形化できる。例えば、液剤、シロップ剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末、軟膏、エマルジョン、ゲル、クリームなどに製剤化でき、これを様々な経路で投与できる。様々な剤形のうち、例えば、注射用組成物は、等張性水溶液又は懸濁液が好ましく、言及した組成物は滅菌され、及び/又は補助剤(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤溶液促進剤、浸透圧調節のための塩/又は緩衝剤)を含有する。また、それらは、その他治療的に有用な物質を含有してよい。薬剤学的に許容可能な担体には、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、澱粉、ガムアカシア、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどが含まれる。前記組成物には、また、潤滑剤、ウェット剤、風味剤、乳化剤、及び防腐剤などがさらに含まれてよい。本発明の組成物は、顆粒剤、散剤、液剤、錠剤、カプセル剤、又は乾燥シロップ剤などの経口用製剤、又は注射剤などの非経口用剤形に製剤化できるが、このような剤形に限定されるものではない。
【0028】
このように製造された薬剤学的製剤は、目的に応じて、皮下投与、筋肉投与、経口投与、静脈投与、口腔塗布、歯肉塗布などで投与でき、用量は、1日投与量が0.001μg/kg~100mg/kgの量を1回又は多回に分けて投与できる。特定患者に対する投与用量レベルは、患者の体重、年齢、性別、健康状態、投与時間、投与方法、疾患の重症度などによって変わってよい。
【0029】
また、前記ジンセノシド化合物K及び/又は複合ジンセノシド組成物BTEX-Kを有効成分として含有するムシ歯予防又は治療用の薬学組成物は、特に、歯肉塗布又は口腔塗布用の外用剤であることを特徴とする。本発明のムシ歯予防又は治療用の組成物を有効成分とする塗布剤は、通常の製造方法によっていかなる形態でも容易に製造できる。例えば、クリーム型塗布剤を製造する場合には、一般の水中油型(O/W)又は油中水型(W/O)のクリームベースに本発明の抗炎症組成物を含有させ、ここに香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤などを必要によって使用する一方、物性改善を目的にタンパク質、ミネラル、ビタミンなどの合成又は天然素材を併用してよい。
【0030】
また、本発明は、前記歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む歯磨き粉組成物に関する。
【0031】
また、本発明は、前記歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む口腔洗浄剤組成物に関する。
【0032】
また、本発明は、前記歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む食品組成物に関する。
【0033】
本発明で使われる用語「食品」とは、栄養素を1種又はそれ以上含有している天然物又は加工品を意味し、好ましくは、ある程度の加工工程を経て直接食べられるような状態のものを意味し、通常の意味として、食品、食品添加剤、機能性食品、健康機能食品、健康補助食品、及び飲料などのいずれをも含んでよい。本発明の食品組成物は、非制限的な例として、各種の飲料、ガム、茶、菓子、ビタミン複合体、健康補助食品などの形態で製造されてよい。本発明の食品組成物の好ましい摂取量は、摂取者の状態、体重、症状の程度、食品形態、摂取期間によって異なり、適切に選択されてよい。本発明の食品組成物は、有効成分が1日に0.2mg/kg~200mg/kgで摂取されるようにすることが、最適の効果のために好ましい。
【0034】
また、本発明は、前記ジンセノシド化合物K又は複合ジンセノシド組成物を有効成分として含有する歯磨き粉組成物に関する。マスティックオイル、プロポリス抽出物、ピロリン酸ナトリウム、フルオロ化ナトリウム、酢酸トコフェロール、ヒドロキシアパタイト、甘味剤、粘増剤、研磨剤、湿潤剤、又は界面活性剤などを必要によって付加し、通常の歯磨き粉組成物の製造方法によって剤形化できる。
【0035】
また、本発明は、前記ジンセノシド化合物K又は複合ジンセノシド組成物を有効成分として含有する口腔洗浄剤組成物に関する。可溶化剤、湿潤剤、界面活性剤、潤滑剤、香料、甘味剤、防腐剤、又は薬効剤などを必要によって付加し、通常の口腔洗浄剤組成物の製造方法によって剤形化でき、ガム(gum)、口腔洗浄剤、口腔清潔剤、口腔用スプレー、口腔用軟膏剤、口腔用パッチ、又はそれらの組合せからなる群から選ばれる剤形に製造できる。
【実施例
【0036】
以下、本発明の具体的な方法を、実施例を挙げてより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲がこれらの実施例の記載によって限定されるものでないことは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0037】
【0038】
実施例1:複合ジンセノシド製造
【0039】
韓国産乾燥紅参(4年根)を購入して実験原料とした(チュンチョンナムドクムサン,ドクウォン人参)。複合ジンセノシドは乾燥紅参から抽出した。乾燥紅参10kgを50%エタノールで60℃で12時間3回反復抽出及び濃縮して紅参濃縮液を得た。
【0040】
紅参濃縮液は合計5.6kg(63brix)であったし、その5.5kgを水に溶かした後、合成吸着樹脂(HP2MG,ミツビシケミカル、又はHP-20,Diaion)が充填されているカラムに通過させて吸着させた後に95%エタノールで脱離させ、ジンセノシドRb1、Rb2、Rc及びRdなどを含む複合ジンセノシド460gを得た。
【0041】
【0042】
実施例2:紅参濃縮液粉末製造
【0043】
実施例1で製造した紅参濃縮液5.6kgのうち100gを別に取って減圧濃縮し、71gの紅参濃縮液粉末を得た。
【0044】
【0045】
実施例3:発酵複合ジンセノシド製造
【0046】
上の実施例1で得た複合ジンセノシド100gを基質にして50mM酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH 4.5)でアスペルギルス属由来のアルファ-ガラクトシダーゼ(0.75g)と60℃恒温水槽で84時間以上反応させ、発酵複合ジンセノシド(41g)を製造した。
【0047】
このように製造した発酵複合ジンセノシドには、ジンセノシド化合物K、ジンセノシドF2、ジンセノシドRh2などが含まれている。
【0048】
【0049】
実施例4:複合ジンセノシド組成物(以下、「BTEX-K」と混用)製造
【0050】
実施例3で製造した発酵複合ジンセノシド100gに、実施例2で調製した紅参濃縮液粉末40gを混合し、複合ジンセノシド組成物BTEX-Kを製造した。
【0051】
複合ジンセノシド組成物BTEX-Kには、ジンセノシド化合物K=100mg/gの他にもジンセノシドF2、ジンセノシドRh2などの様々なジンセノシドが含まれている。
【0052】
[表1]
【0053】
実験例1:歯表面細菌膜減少分析
【0054】
1)50mLのガラスチューブに、1%スクロースを含有しているBHI(brain heart infusion)液体培地(broth)を5mL入れ、下表2の濃度別試料抽出物を50ulで入れ、対照群は、試料抽出物の代わりに滅菌水を添加した。
【0055】
[表2]
【0056】
2)S.mutansが10となるように接種した。3)ガラスチューブを30゜傾けた状態で37℃の培養器で24時間静置培養した。
【0057】
4)培養した後、0.5M NaOH溶液を5mL加え、壁面に付着している菌体を懸濁させた。
【0058】
5)懸濁液1mLを取り、550nmで吸光度を測定した。
【0059】
【0060】
実験例2:歯表面細菌膜有機酸生成量
【0061】
1)2mL BHI(brain heart infusion)液体培地に、下表3の濃度別試料抽出物20ulを入れ、対照群は、試料抽出物の代わりに滅菌水を添加した。
【0062】
2)菌数が10~10となるようにS.mutansを接種した。
【0063】
3)37℃の培養器で48時間培養した。
【0064】
4)培地中に分泌された酸生成量を、HPLCを用いて測定した。
【0065】
[表3]
【0066】
**HPLC:ダングク大学校産学協力団共同機器研究室(Citric,pyruvic,succinic,lactic,formic,acetic,propionic,isobutyric,butyric,isovaleric acid)分析依頼
【0067】
結果1:歯表面細菌膜減少
【0068】
S.mutans菌株接種後に24時間、30゜傾けた状態で静置培養した。静置培養後に培養液を慎重に注いで捨てると、ガラスチューブ壁面に菌が付着していることが確認できた(図1、赤矢印)。その後、0.5M NaOHを入れて懸濁し、懸濁した溶液1mlを550nmで吸光度を測定した結果、50ug/mlのBTEX-K濃度から歯表面細菌膜減少が起き始めた。特に、BTEX-K濃度100ug/mlにおいて有意の減少を示した(p<0.0001)。
【0069】
【0070】
結果2:歯表面細菌膜有機酸生成量
【0071】
2mL BHI(brain heart infusion)液体培地に、S.mutans菌株を1×10CFU/ml濃度で接種し、一定量の試料濃度を接種した後、48時間培養した。培養液を13,000rpmで5分間遠心分離した後、上澄液を新しいチューブに移し、0.45umシリンジフィルターでフィルタリングした後、HPLC分析を行った。HPLC分析条件は、次の通りである。移動相(Isocratic elution) 10mM第1リン酸カリウム(Potassium phosphate monobasic)(pH 3、リン酸塩)/MeOH=(98/2);カラムオーブン温度 30℃;流れ速度 1mL/min;波長 220nm;注射量 10uL
【0072】
歯表面細菌膜減少実験から確認できるように、100ug/mlのジンセノシド化合物Kと100ug/mlのBTEX-Kの濃度においてS.mutans菌株の成長が抑制された。
【0073】
HPLC分析の結果、これらの濃度において対照群に比して、4.6分に出るピーク(peak)が減少した。有機酸標準試料と比較したとき、乳酸(Lactic acid)が同一の保持時間に検出されることを確認した。
【0074】
乳酸標準試料濃度グラフを作成した後、対照群と実験群の乳酸含有量の差異を分析して統計処理した結果、ジンセノシド化合物Kは、対照群に比して乳酸含有量が約2倍減少した結果を得たし(p<0.0001)、BTEX-Kでは、対照群に比して約3.2倍減少した結果を得た(p<0.0001)。
【0075】
その他、対照群のHPLC結果、6~6.5分帯にピーク(peak)がジンセノシド化合物KとBTEX-Kにおいて減少することが見られるが、有機酸標準試料と比較した結果、一致する有機酸はなかった。
【0076】
その他、ジンセノシド化合物KとBTEX-KのHPLCピーク中、13.5分帯の保持時間で確認されるピークが対照群では確認されなかった。
【0077】
歯表面細菌膜減少は、ジンセノシド化合物KとBTEX-Kにおいてそれぞれ、20ug/mlと100ug/mlで減少が確認された。
【0078】
【0079】
また、歯表面有機酸生成抑制は、HPLC方法で分析した。10個の有機酸標準試料を使用してジンセノシド化合物KとBTEX-Kを濃度別に液体培地に添加した後、一定量のS.mutansを接種し、48時間、37℃で培養した後、対照群と比較して培養液に生成された有機酸の変化を観察した結果、対照群に比べて、高濃度(100ug/ml)の紅参抽出物、ジンセノシド化合物K及びBTEX-Kを添加した液体培養培地のHPLC結果に差異か見られた。
【0080】
HPLC保持時間を基準に約4.6分で検出されるピークは、ジンセノシド化合物KとBTEX-Kが添加された培養液で減少することを確認した。標準試料との比較結果、4.6分保持時間帯に検出されるピークは乳酸(lactic acid)として確認された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のジンセノシドK又は複合ジンセノシド組成物は、歯磨き粉、口腔洗浄剤をはじめとする口腔用組成物として利用可能であり、その他にもガム、飲料、菓子などの食品組成物にも応用可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項の歯表面細菌膜減少及び歯表面細菌膜酸性化抑制用の組成物を含む薬学組成物。
【国際調査報告】