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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】テクスチャ改良剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20241024BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20241024BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241024BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20241024BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20241024BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20241024BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20241024BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20241024BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20241024BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L29/269
A23L5/00 K
A23J3/00 502
A23J3/14
A23J3/16 501
A23L13/00 A
A23L13/00 Z
A23L13/60 A
A23L13/40
A23L35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530516
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 CN2022136677
(87)【国際公開番号】W WO2023103987
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111478762.9
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(71)【出願人】
【識別番号】511208911
【氏名又は名称】浙江帝斯曼中肯生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】フー, シャンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, フェイ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG27
4B035LG31
4B035LK12
4B035LK19
4B035LP21
4B036LF13
4B036LH11
4B036LH13
4B036LH16
4B036LH26
4B036LH48
4B036LK01
4B036LP01
4B036LP14
4B036LP17
4B042AC05
4B042AD03
4B042AD20
4B042AD21
4B042AD36
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK13
4B042AK16
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP21
(57)【要約】
カードラン及び菜種タンパクを含み、その重量比が1:9乃至9:1であるテクスチャ改良剤に関する。前記テクスチャ改良剤が食品、特に肉製品又は植物肉製品で用いられる場合、そのテクスチャ及び食感を顕著に改善させ、クリーンラベルに対する食品のニーズを満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードラン及び菜種タンパクを含み、菜種タンパクに対するカードランの重量比が1:9乃至9:1である、テクスチャ改良剤。
【請求項2】
菜種タンパクに対するカードランの重量比が1:4乃至4:1であり、好ましくは重量比が2:3乃至3:2である、請求項1に記載のテクスチャ改良剤。
【請求項3】
前記菜種タンパクが菜種タンパクの分離物である、請求項1に記載のテクスチャ改良剤。
【請求項4】
メチルセルロースを含まないか実質的に含まない、請求項1乃至3のいずれかに記載のテクスチャ改良剤。
【請求項5】
肉製品又は植物肉製品のバインダーである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテクスチャ改良剤。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテクスチャ改良剤を含む、食品又は飲料。
【請求項7】
請求項5に記載のテクスチャ改良剤を含む、肉製品又は植物肉製品。
【請求項8】
テクスチャ改良剤は、肉製品又は植物肉製品におけるカードランの重量百分率が0.1~15%になるように添加される、請求項7に記載の肉製品又は植物肉製品。
【請求項9】
重量百分率で、
1)20~80%の水と、
2)0.1~20%の菜種タンパクと、
3)1~30%の組織化植物タンパクと、
4)1~20%のオイルと、
5)0.1~15%のカードランと、
6)0~10%の着色剤及びエッセンスと、
を含む、請求項7に記載の植物肉製品。
【請求項10】
前記組織化植物タンパクは、組織化されたエンドウタンパク、ソラマメタンパク、レンズ豆タンパク、大豆タンパク、菜種タンパクから選択される一種類又は複数種類である、請求項9に記載の植物肉製品。
【請求項11】
ソーセージ、ミートパイ、ミートボール又は肉塊から選択される、請求項9に記載の植物肉製品。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテクスチャ改良剤の製造方法であって、
a)重量比でカードラン及び菜種タンパク粉末を秤量する工程と、
b)秤量した粉末を均一に混合する工程と、
c)オプションして、分散剤を添加する工程と、
を含む、テクスチャ改良剤の製造方法。
【請求項13】
製造過程において、バインダーとしてカードラン及び菜種タンパクを添加する工程を含み、前記カードランの添加量は、重量比で0.1~15%であり、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9乃至9:1であり、好ましくは1:4乃至4:1であり、より好ましくは2:3乃至3:2である、
肉製品又は植物肉製品の製造方法。
【請求項14】
カードランを含む組成物のゲル強度の改善における菜種タンパクの使用であって、
前記組成物は、肉製品又は植物肉製品である、
菜種タンパクの使用。
【請求項15】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテクスチャ改良剤の使用であって、
前記テクスチャ改良剤は、肉製品又は植物肉製品中のメチルセルロースを代替してバインダーとして用いられる、
テクスチャ改良剤での使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、カードラン及び菜種タンパクを含むテクスチャ改良剤及びその製造方法並びに使用に関する。本発明は、さらに、食品の製造におけるカードラン及び菜種タンパクの組み合わせによる使用、並びに前記カードラン及び菜種タンパクを含む食品に関する。
【0002】
[背景技術]
カードラン(curdlan)は、ゲル形成多糖、熱ゲルとも呼ばれ、1964年にHarada et al.によって発見されて命名された微生物細胞外多糖であり、グルコース構造単位がβ-1,3-D-グルコシド結合で連結された線形高分子であり、その低温可逆性や高温不可逆性のゲル特性及び耐冷凍性、熱安定性などの特性により食品業界に注目されている。カードランは、食品への直接添加が中国衛生部によって2006年に正式に承認され、例えば、安定剤、凝固剤、増粘剤、保水剤、バインダー、皮膜形成剤などとして肉類食品、麺類食品、水産食品、ベーキング食品、冷凍食品、揚げ物などの製造に使用される。
【0003】
カードランが肉製品又は植物肉製品で使用される場合、食品の保水性、耐煮付け性、耐冷凍性などを向上させることができるが、理想的なゲルテクスチャを実現するために、通常トランスグルタミナーゼを添加する必要があるか、又は、理想的な製品テクスチャ(例えば、ゲル強度、弾性など)を実現するために、カードランを別のハイドロコロイドと配合する必要がある。しかしながら、このような技術は、コストが高く、操作が複雑で、スラリーの常温での放置時間を長くすることができないか、又は、ハイドロコロイドの使用量が高くなり、製品の栄養価及び食感に影響を与えるなどの問題がある。
【0004】
そのため、如何にカードランの耐冷凍性や熱安定性などに優れたゲル特性を発揮しつつ、理想的なゲル強度を取得して、食品のゲルテクスチャ又は食感を改善するかというニーズは、依然として存在している。
【0005】
[発明の概要]
本発明は、テクスチャ改良剤を提供し、前記テクスチャ改良剤は、カードランと菜種タンパクとを含み、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9~9:1であり、好ましくは1:4~4:1であり、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、約1:1である。本発明において、前記テクスチャ改良剤におけるカードランは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%を占めることができ、好ましくは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、又は55%を占めることができる。本発明において、前記テクスチャ改良剤において、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9、1:4、3:7、2:3、1:1、3:2、7:3、4:1又は9:1であってもよく、好ましくは、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1又は3:1であってもよく、より好ましくは、2:3、2.5:3、1:1、3:2.5又は3:2であってもよい。前記テクスチャ改良剤中の菜種タンパクは、組織化植物タンパクではない。
【0006】
本発明において、前記テクスチャ改良剤とは、食品に添加されて食品の一種類又は複数種類のテクスチャ特性を改善できる物質を意味し、前記テクスチャ特性は、強度、硬度、粘度、弾性、凝集性、咀嚼性、接着性又は回復性などであってもよい。前記テクスチャ改良剤は、バインダー、増粘剤又はゲル剤であってもよい。
【0007】
いかなる理論や説明に限定されることを望まず、発明者らは、カードランと植物ベースのタンパク質(大豆タンパク及び/又はジャガイモタンパク)とを共に使用すると、カードランのゲル強度が著しく弱まることを見出した。大豆タンパク及び/又はジャガイモタンパクなどを菜種タンパクで代替してカードランと共に使用する場合、カードランのゲル強度に顕著な影響を与えず、別のタンパク質(特に大豆タンパク)に比べて、菜種タンパクを使用すると添加系のテクスチャ特性、特にゲル強度を顕著に改善することができる。肉製品又は植物肉製品中にバインダーとしてカードランと菜種タンパクが添加されると、理想的なテクスチャ特性、特に製品の硬度、弾性及び咀嚼性を実現することができる。
【0008】
本発明のテクスチャ改良剤は、別の多糖又はその誘導体成分、例えばメチルセルロース、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン及びコンニャクガムのうちの一種類又は複数種類を含んでも含まなくてもよく、好ましくは、デンプン及び/又はキサンタンガムを含んでもよく、又は好ましくは、デンプン以外の多糖又はその誘導体を含まず、又は好ましくは、別の多糖又はその誘導体を含まない。本発明において、カードランは、前記テクスチャ改良剤中の唯一のハイドロコロイドであってもよい。本発明において、前記テクスチャ改良剤は、メチルセルロースを含まないか実質的に含まなくてもよい。
【0009】
本発明において、前記テクスチャ改良剤は、液体に添加されてもよく、固形分に添加されてもよい。前記テクスチャ改良剤の添加量は、添加しようとする系の種類、状態、使用されるテクスチャ改良剤中のカードランの含有量などに応じて適宜調節すればよく、添加系におけるカードランの重量百分率が0.1~15%、好ましくは0.2~10%となるように添加すればよい。
【0010】
本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、バインダーである。本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、肉製品のバインダーである。本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、植物肉製品のバインダーである。
【0011】
本発明において、「バインダー」という用語は、粒子及び/又は繊維を接着する物質を意味する。本発明におけるバインダーは、食用可能な物質であり、最終製品においてマトリックスを接着して粘性製品を形成することができる。前記バインダーは、より平滑な製品のテクスチャを形成し、水分及び/又は粘性製品の形状を維持するのに役立つ。好ましくは、本発明に係るバインダーは、肉製品又は植物肉製品用のバインダーであり、より好ましくは、前記バインダーは、植物肉製品用のバインダーである。本発明において、肉製品又は植物肉製品は、水産製品も含む。
【0012】
本発明において、前記バインダーは、ハイドロコロイド及び/又はタンパクの凝集を低減する分散剤をさらに含んでもよく、前記分散剤は、アルカリ剤、アルカリ金属塩、有機酸塩、無機酸塩のうちの一種類又は複数種類であってもよく、前記分散剤は水であってもよく、好ましくは、前記分散剤は水である。本発明において、前記バインダーは、別の多糖又はその誘導体成分、例えばメチルセルロース、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン及びコンニャクガムのうちの一種類又は複数種類を含んでも含まなくてもよく、好ましくは、本発明のバインダーは、従来の肉製品又は植物肉製品のバインダーに比べてより少ない含有量のメチルセルロースを含み、より好ましくは、本発明のバインダーは、メチルセルロースを含まないか実質的に含まない。本発明において、前記バインダーは、別のタンパク質成分(例えば、別の植物ベースのタンパク質及び/又は動物タンパク質)を含んでも含まなくてもよく、好ましくは、本発明のバインダーは、鶏卵、卵白及び/又は卵黄を含まないか実質的に含まない。本発明において、前記バインダーは、液体又は粉末であってもよい。
【0013】
本発明の一実施例において、前記バインダーにおけるカードラン及び菜種タンパクの総重量は、バインダーの重量の少なくとも2%であってもよい。本発明の他の実施例において、前記バインダーにおけるカードラン及び菜種タンパクの総重量は、バインダーの重量の80%以上であってもよい。本発明の一実施例において、前記バインダーは、主にカードラン及び菜種タンパクからなる。本発明の一実施例において、前記バインダーは、植物肉製品用のバインダーである。
【0014】
本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、増粘剤である。
【0015】
本発明において、増粘剤という用語は、系の粘度を増加させることができる物質を意味し、系(例えば、食品)を均一に安定した懸濁状態に維持したり、乳濁状態にしたり、ゲルを形成したりすることができる。
【0016】
本発明において、前記増粘剤は、ハイドロコロイド及び/又はタンパク質の凝集を低減する分散剤をさらに含んでもよく、前記分散剤は、アルカリ剤、アルカリ金属塩、有機酸塩、無機酸塩のうちの一種類又は複数種類であってもよく、前記分散剤は、水であってもよい。本発明において、前記増粘剤には、別の多糖又はその誘導体成分、例えばメチルセルロース、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン及びコンニャクガムのうちの一種類又は複数種類が含まれても含まなくてもよく、好ましくは、本発明の増粘剤は、従来の増粘剤に比べて、より少ない含有量のメチルセルロースを含み、より好ましくは、本発明の増粘剤は、メチルセルロースを含まないか実質的に含まない。本発明において、増粘剤は、液体又は粉末であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例において、前記増粘剤におけるカードラン及び菜種タンパクの総重量は、増粘剤の重量の少なくとも2%であってもよい。本発明の他の実施例において、前記増粘剤におけるカードラン及び菜種タンパクの総重量は、増粘剤の重量の80%以上であってもよい。本発明の一実施例において、前記増粘剤は、主にカードラン及び菜種タンパクからなる。
【0018】
本発明は、さらに、前記テクスチャ改良剤を含む食品を提供する。本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、食品においてバインダーとして使用される。本発明の一実施例において、前記テクスチャ改良剤は、食品において増粘剤として使用される。
【0019】
本発明において、特に説明しない限り、前記テクスチャ改良剤が食品中に使用される際に、わざわざ適用系のpH値を調整しなくてもよい。
【0020】
本発明の一実施例において、前記食品は、肉製品である。本発明において、前記肉製品は、成型肉、加工肉、ソーセージ、ミンチ、ミートパイ、ミートボール、ハムなどであってもよい。本発明の一実施例において、前記肉製品は、ランチョンミートである。本発明において、前記テクスチャ改良剤がバインダーとして肉製品に使用される場合、その添加量は、肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%又は0.5%となるように添加されるか、肉製品におけるカードランの重量百分率が0.1~5%、0.1~2.5%、0.1~2%、又は0.1~1%となるように添加される。好ましくは、前記テクスチャ改良剤がバインダーとして肉製品に使用される場合、その添加量は、肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.2%となるように添加される。
【0021】
本発明の一実施例において、前記食品は、植物肉製品である。
【0022】
本発明において、「植物肉」とは、植物ベースのタンパク質肉を意味し、人造肉、素食肉製品、肉類代替品、肉代替物と呼ばれてもよく、特定のタイプの肉製品のテクスチャ、風味、外観又は化学的特徴を有する。一般的に、植物肉とは、素食成分からなる食品を意味し、乳製品及び/又は動物製品を含まない場合がある。本発明において、好ましくは、植物肉製品は、組織化大豆タンパク及び/又は大豆分離タンパクを含む。
【0023】
本発明において、前記テクスチャ改良剤がバインダーとして植物肉製品に使用される場合、その添加量は、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1%となるように添加されか、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が0.1~15%、0.5~10%、2~7%、又は3~6%となるように添加されてもよい。好ましくは、前記テクスチャ改良剤がバインダーとし植物肉製品に使用される場合、その添加量は、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.5%となるように添加される。好ましくは、前記テクスチャ改良剤がバインダーとして植物肉製品に使用される場合、その添加量は、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも2%となるように添加される。
【0024】
本発明において、前記テクスチャ改良剤をバインダーとして使用して製造された肉製品又は植物肉製品は、トランスグルタミナーゼを添加しなくてもよく、又は別のハイドロコロイドを添加しなくてもよく、又はメチルセルロースを添加しなくてもよく、理想的なゲルテクスチャ及び食感(例えば、ゲル強度、硬度、弾性、咀嚼性など)を有することができる。本発明の一実施例において、本発明に記載のテクスチャ改良剤をバインダーとして使用して製造された肉製品又は植物肉製品は、そのゲルテクスチャ及び/又は食感(例えば、硬度、弾性及び咀嚼性)が、メチルセルロースをバインダーとして使用する肉製品又は植物肉製品のゲルテクスチャ及び/又は食感に相当している。
【0025】
本発明の一実施例において、前記食品はゼリー又はプリンであり、好ましくは、前記ゼリー又はプリン中のタンパク質の重量百分率は、1~3%である。前記テクスチャ改良剤が増粘剤としてゼリー又はプリンに使用される場合、その添加量は、ゼリー又はプリンにおけるカードランの重量百分率が0.5~3%、好ましくは1~2%となるように添加される。ゼリー及びプリンは、製造において、高温殺菌処理を経て、安定的、熱不可逆的かつ理想的なゲルを形成することができ、製品のシェルフライフ(shelf life)がより長い。
【0026】
本発明の一実施例において、前記食品は、嚥下障害者用飲食物、介護食、細砕飲食物、泥状飲食物、又は流動食などである。前記食品における前記テクスチャ改良剤の添加量は、食品におけるカードランの重量百分率が0.2~6%、好ましくは0.4~6%となるように添加される。
【0027】
本発明の一実施例において、前記飲料は、植物ベースのタンパク質飲料であり、好ましくは、前記植物ベースの飲料には、乳タンパク及び/又は動物タンパクが含まれていない。
【0028】
本発明の一態様は、本発明に記載のテクスチャ改良剤を含む肉製品又は植物肉製品を提供する。
【0029】
本発明の一態様は、肉製品又は植物肉製品を提供し、前記肉製品又は植物肉製品は、カードランと菜種タンパクとを含み、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9乃至9:1であり、好ましくは1:4~4:1であり、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、約1:1である。前記肉製品又は植物肉製品におけるカードランは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%を占めることができ、好ましくは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%又は55%を占めることができる。前記肉製品又は植物肉製品において、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9、1:4、3:7、2:3、1:1、3:2、7:3、4:1又は9:1であってもよく、好ましくは、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1又は3:1であってもよく、より好ましくは、2:3、2.5:3、1:1、3:2.5又は3:2であってもよい。前記肉製品におけるカードランの重量百分率は、少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%又は0.5%であってもよく、又は、0.1~5%、0.1~2.5%、0.1~2%、又は0.1~1%であってもよく、好ましくは、肉製品におけるカードランの重量百分率は、少なくとも0.2%である。植物肉製品における前記カードランの重量百分率は、少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1%であってもよく、又は、0.1~15%、0.5~10%、2~7%、又は3~6%であってもよく、好ましくは、植物肉製品におけるカードランの重量百分率は、少なくとも0.5%であり、より好ましくは、植物肉におけるカードランの重量百分率は、少なくとも2%である。
【0030】
本発明の一態様は、植物肉製品を提供し、前記植物肉製品は、
1)20~80%の水と、
2)0.1~20%の菜種タンパクと、
3)1~30%の組織化植物タンパクと、
4)1~20%のオイルと、
5)0.1~15%のカードランと、
6)0~10%の着色剤及びエッセンスと、を含む。
【0031】
前記百分率は重量百分率であり、好ましくは、前記各成分の総量は植物肉製品の100%を超えず、好ましくは、前記0.1~20%の菜種タンパクは、組織化植物タンパクの一部ではない。上記植物肉製品は、前記0.1~20%の菜種タンパクを等量の大豆分離タンパク(非組織化)に代替した植物肉製品に比べて、その硬度は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%を向上させることができ、その咀嚼性は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、又は少なくとも約35%向上させることができる。
【0032】
前記植物肉製品における菜種タンパクの重量百分率は、2~15%、好ましくは3~13%、より好ましくは4~10%、さらに好ましくは5~10%であってもよい。
【0033】
前記植物肉製品中の残りの成分は、水であってもよく、好ましくは水である。より好ましくは、前記植物肉製品は、水で残量を補う。好ましくは、前記植物肉製品の含水量は、40~75%(w/w)であり、より好ましくは、含水量は50~70%(w/w)である。
【0034】
前記植物肉製品は、ソーセージ、スモークソーセージ、フランクフルトソーセージ、ミートパイ、ミートボール、肉塊、ホットドッグ、モルタデッラ、パテ、又はウィナーソーセージであってもよい。本発明の一実施例において、前記植物肉製品は、ソーセージである。本発明の一実施例において、前記植物肉製品は、ミートパイであり、例えば、ハンバーグである。
【0035】
前記植物肉製品は、2%~30%の重量比の組織化植物タンパク(TVP)を含むことができ、好ましくは4%~25%であり、より好ましくは6%~20%である。
【0036】
本発明において、「組織化植物タンパク」(Textured vegetable protein、TVP)という用語は、植物に基づいて抽出され、圧搾により得られるタンパク製品を意味し、植物は、豆類、穀類(好ましくは、グルテン、例えばオートファイバー、トウモロコシ繊維、米繊維を含まない)又は油糧種子から由来するものであることが好ましく、構造化植物タンパクと呼ばれてもよい。豆類は、大豆又はエンドウマメであってもよい。油糧種子は、ヒマワリの種又は菜種であってもよい。本発明の一実施例において、組織化植物タンパクは圧搾により製造される。本発明において、前記植物タンパクは、明記しない限り、非組織化(又は非構造化)の植物タンパクである。
【0037】
本発明において、組織化植物タンパクは、組織化されたエンドウタンパク、ソラマメタンパク、レンズ豆タンパク、大豆タンパク、菜種タンパクのうちの一種類又は複数種類であってもよい。好ましくは、組織化植物タンパクは、組織化大豆タンパクを含む。別の豆類、例えば、ルパンマメ、エンドウマメ(黄エンドウマメ、緑エンドウマメ)、ソラマメ、キドニービーンズ、緑豆、レンズ豆、ピントビーンズ、ムング豆、ベニバナインゲンマメ、ヒヨコマメ、ミニエンドウ、大豆、及びピーナッツなどから誘導されるタンパク質は、本発明に係る組織化植物タンパクとして用いられることができる。
【0038】
前記植物肉製品には、繊維が添加されてもよく、前記繊維は、植物繊維、例えば、エンドウ繊維、油糧種子繊維(例えば、ヒマワリの種の繊維又は綿実繊維)、果実繊維(例えば、リンゴ繊維、カボチャ繊維)、穀類繊維(例えば、オートファイバー、トウモロコシ繊維、米繊維)、竹繊維、ジャガイモ繊維、イヌリン又はそれらの組み合わせであってもよい。繊維は、通常、植物性食品中に存在し、人体内の消化酵素によって分解できないか完全に分解することができず、可溶性又は不溶性の繊維である。
【0039】
前記植物肉製品は、重量比で、1~20%のオイルを含むことができ、好ましくは2~18%、好ましくは5~15%、より好ましくは7~12%のオイルを含むことができる。前記油は、藻油、真菌油、コーン油、オリーブ油、大豆油、落花生油、クルミ油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ババス油、シアバター油、マンゴー油、カカオ油、瑠璃萵苣油、ブラックカラント油、サージ油、マカデミアナッツ油、ソーパーム油、共役リノール酸、アラキドン酸富化油、ドコサヘキサエン酸(DHA)富化油、エイコサペンタエン酸(EPA)富化油、パームステアリン酸、こめ油又はマーガリン、或いは別の水素化脂肪であってもよい。好ましくは、前記油は菜種油である。
【0040】
前記着色剤及びエッセンスの含有量は、植物肉製品の重量の0.01~10%、好ましくは0.1~8%、より好ましくは0.5~6%を占めることができる。
【0041】
前記着色剤は、ビート根又はビート根粉末を含み、又はビート根又はビート根粉末である。本発明において、前記着色剤は、カロテノイドを含んでもよく、又はカロテノイドであってもよい。好ましくは、前記カロテノイドは、α-カロテン、β-カロテン、β-アポ-8’-カロテナール、β-アポ-8’-カロチン酸エステル(例えば、エチルエステル)、カンタキサンチン、アスタキサンチン、アスタキサンチンエステル、リコピン、キサントフィル、ゼアキサンチン、クロセチン又はそれらの誘導体のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0042】
前記エッセンスは、酵母エキス又は加工エッセンス(process flavours)を含んでもよい。
【0043】
前記植物肉製品は、ビタミン及び/又はミネラルをさらに含んでもよく、好ましくは、前記ビタミンは、B2、B3、B6、B12のうちの一種類又は複数種類であり、及び/又は、前記ミネラルは、鉄、セレン、亜鉛の一種類又は複数種類である。前記栄養物質を添加することにより、本発明の植物肉製品の栄養価は、肉製品により近く、且つ臭いを与えない。
【0044】
本発明の一態様は、前記テクスチャ改良剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、
a)重量比でカードラン及び菜種タンパク粉末を秤量する工程と、
b)秤量した粉末を均一に混合する工程と、
c)選択可能に、分散剤を添加する工程と、を含み、
菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9乃至9:1、好ましくは1:4~4:1、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、約1:1である。前記秤量及び混合は、本分野の通常の方法に従って行うことができる。オプションとして、前記テクスチャ改良剤の製造方法は、均一な混合物を混合して造粒する工程をさらに含む。
【0045】
本発明の一態様は、前記テクスチャ改良剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、
a)重量比でカードラン及び菜種タンパク粉末を秤量する工程と、
b)秤量したカードランを水で分散させて溶液を得る工程と、
c)秤量した菜種タンパクを工程b)の溶液に分散させる工程と、を含み、
菜種タンパクに対するカードランの重量比は、1:9乃至9:1、好ましくは1:4~4:1、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、菜種タンパクに対するカードランの重量比は、約1:1である。前記秤量及び分散は、本分野の通常の方法に従って行うことができる。
【0046】
本発明の一態様は、肉製品又は植物肉製品の製造方法を提供し、前記製造方法は、製造過程において、バインダーとしてカードラン及び菜種タンパクを添加する工程を含み、添加されたカードラン対菜種タンパクの重量比は、1:9乃至9:1、好ましくは1:4~4:1、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、添加されたカードラン対菜種タンパクの重量比は、約1:1である。本発明の一実施例において、前記製造方法において添加されたカードラン対菜種タンパクの重量比は、約1:1である。前記カードランは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%を占めることができ、好ましくは、カードラン及び菜種タンパクの総重量の45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、又は55%を占めることができる。前記カードラン対菜種タンパクの重量比は、1:9、1:4、3:7、2:3、1:1、3:2、7:3、4:1又は9:1であってもよく、好ましくは、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1又は3:1であってもよく、より好ましくは、2:3、2.5:3、1:1、3:2.5又は3:2であってもよい。前記製造方法において、肉製品におけるカードランの添加量は、肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%又は0.5%となるように添加されるか、肉製品におけるカードランの重量百分率が0.1~5%、0.1~2.5%、0.1~2%、又は0.1~1%となるように添加され、好ましくは、肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.2%となるように添加されてもよい。前記製造方法において、植物肉製品におけるカードランの添加量は、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.5%、0.9%又は1%となるように添加されるか、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が0.1~15%、0.5~10%、2~7%、又は3~6%となるように添加され、好ましくは、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも0.5%となるように添加され、より好ましくは、植物肉製品におけるカードランの重量百分率が少なくとも2%となるように添加されてもよい。好ましくは、2:3~3:2である。本発明の製造方法において、カードラン及び菜種タンパクは同時に添加してもよく、異なるタイミングで添加してもよい。本発明の一実施例において、肉製品又は植物肉製品を製造する場合、まず、カードランを添加した後、菜種タンパクを添加する。本発明の一実施例において、肉製品又は植物肉製品を製造する場合、カードランの水分散液を添加した後、さらに菜種タンパク又は菜種タンパクの水分散液を添加する。
【0047】
本発明の一態様において、植物肉製品の製造方法を提供し、前記植物肉製品は、重量百分率で、
1)20~80%の水と、
2)0.1~20%の菜種タンパクと、
3)1~30%の組織化植物タンパクと、
4)1~20%のオイルと、
5)0.1~15%のカードランと、
6)0~10%の着色剤及びエッセンスと、を含み、
好ましくは、前記各成分の総量は、植物肉製品の100%を超えず、
前記製造方法は、
1)前記カードランを水で分散させ、前記菜種タンパクを添加し、均一に混合して分散液を得る工程と、
2)工程1)の分散液に前記オイルを添加し、均一に撹拌して乳化スラリーを得る工程と、
3)工程2)で得られた乳化スラリーを組織化植物タンパクに添加する工程と、
4)オプションとして、着色剤及びエッセンスを添加する工程と、
5)オプションとして、全ての成分を均一に撹拌し、均一に混練し、放置して成形する工程と、を含む。
【0048】
本発明において、前記植物肉製品の製造方法は、組織化植物タンパク及び/又は菜種タンパクを水和化する工程を含むことができる。
【0049】
本発明において、前記製造方法は、前記肉製品又は植物肉製品を冷凍する工程をさらに含むことができる。
【0050】
本発明において、前記肉製品又は植物肉製品は、製造時に、特別な説明がない限り、本分野の通常の方法に従って製造することができ、カードラン及び/又は菜種タンパクを添加する場合、系のpH値又は温度をわざわざ調整しなくてもよい。
【0051】
本発明に係る方法によって製造される肉製品又は植物肉製品は、カードランの耐冷凍性、熱安定性のゲル特性を発揮しつつ、理想的なゲルテクスチャ及び食感を得ることができる。メチルセルロースは、植物肉において一般的に使用されるハイドロコロイドの1つであるが、食品のクリーンラベルに対する消費者のニーズに合致せず、さらに、メチルセルロースは、加熱によってゲル化されるが、冷却後にゲルのテクスチャを失ってしまう。バインダーとして鶏卵タンパクを添加すると、植物肉の食感及びテクスチャを改善することができるが、その欠点とは、感作性や純粋な素食の主旨に合わないことである。本発明に係る方法を用いて肉製品又は植物肉製品を製造することにより、製品の良好なゲルテクスチャ及び食感を付与することができるとともに、ハイドロコロイドの全体の使用量を減少させ、及び/又はメチルセルロース又は卵類バインダーの使用量を減少させることができる。
【0052】
本発明の一態様によれば、肉製品又は植物肉製品のテクスチャを改善する方法を提供し、その特徴とは、前記方法は、製造過程において、カードラン及び菜種タンパクを添加し、添加されたカードラン対菜種タンパクの重量比は、1:9乃至9:1であり、好ましくは1:4~4:1であり、より好ましくは2:3~3:2であり、さらに好ましくは、添加されたカードラン対菜種タンパクの重量比は、約1:1である。本発明の一実施例において、前記カードラン及び菜種タンパクは製造系に同時に添加されることができる。本発明の一実施例において、前記カードラン及び菜種タンパクは製造系に同時に添加されることではない。本発明の一実施例において、前記方法は、肉製品又は植物肉製品のゲル強度を改善する。本発明の一実施例において、前記方法は、肉製品又は植物肉製品の弾性又は咀嚼性を改善する。本発明の一実施例において、前記方法は、肉製品又は植物肉製品の接着性を改善する。本発明の一実施例において、前記方法は、肉製品又は植物肉製品のゲル強度、咀嚼性及び接着性を改善する。
【0053】
本発明の一態様は、カードランを含む組成物のゲル強度の改善における菜種タンパクの使用を提供し、好ましくは、前記組成物には、菜種タンパク以外の第2種のタンパク質が含まれ、好ましくは、前記第2種のタンパク質は植物ベースのタンパク質であり、より好ましくは、前記植物ベースのタンパク質は非組織化されたものであり、例えば、大豆タンパク及び/又はジャガイモタンパクである。本発明の一実施例において、前記組成物は、肉製品又は植物肉製品である。
【0054】
本発明の一態様は、肉製品又は植物肉製品中のメチルセルロースを代替してバインダーとして用いられる前記テクスチャ改良剤の使用を提供する。前記テクスチャ改良剤は、肉製品及び/又は植物肉製品中のメチルセルロースの使用量を減少させることができ、好ましくは、前記テクスチャ改良剤は、肉製品及び/又は植物肉製品中のメチルセルロースを代替することができる。メチルセルロースは、植物肉において一般的に使用されるハイドロコロイドの1つであるが、食品のクリーンラベルに対する消費者のニーズに合致せず、さらに、メチルセルロースは、加熱によってゲル化されるが、冷却後にゲルのテクスチャを失ってしまう。
【0055】
本発明において、カードランは、微生物、動物又は植物由来であってもよい。カードランの分子式は、(C10で表されることができ、好ましくは、n>250である。カードランの分子量は、40kD~3000kD(キロダルトン)であってもよく、例えば50kD~500kDであってもよく、1000kDを超えてもよく、2000kDを超えてもよい。
【0056】
本発明において、好ましくは、前記カードランは微生物発酵によって生成され、前記微生物はカードランを生成できる微生物であり、例えば、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、アグロバクテリウム(Agrobacterium sp.)又はリゾビウム(Rhizobium sp.)微生物である。本発明の一実施例において、カードランは、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis var.myxogenes)菌株10C3の変異株(HARADA,T.、MASADA,M.、FUJIMORI.K.及びMEADA,I.(1966).Agric.Biol.Chem.、30、196~198)により製造することができる。カードランの微生物発酵は、本分野の通常の方法に従って行うことができる。カードランは、本分野の通常の方法を用いて発酵液から抽出することができ、例えば、発酵生成物をアルカリ性溶液で処理した後、酸性溶液でハイドロコロイドを沈殿させ、さらにエタノールで脱水、乾燥させ、最後に粉砕して得られる。本発明において、カードランは市販品を用いてもよい。
【0057】
本発明において、菜種タンパクは、分離物又は濃縮物の形態であってもよい。菜種タンパクの分離物は、WO2018/007492に記載の方法で製造することができ、低温圧搾法により菜種油の粗粉からタンパクの含有量が50~98%(w/w)、又はタンパクの含有量が70~95%(w/w)、又はタンパクの含有量が90±5%(w/w)の分離物が製造される。本発明の一実施例において、菜種タンパクの分離物には、40~65%(w/w)のアブラナ科植物素(cruciferins)と35~60%(w/w)のナタネタンパク(napins)とを含むことができる。
【0058】
本発明の一実施例において、前記菜種タンパクは菜種タンパクの分離物であり、タンパクの含有量は、乾燥基準で少なくとも90重量%である(Kjeldahl N×6.25で計算される)。
【0059】
本発明に用いられる菜種タンパクを製造する菜種は、通常、Brassica napus及びBrassica juncea品種に属する。これらの品種は、低レベルのエルカ酸とグルコシノレートのみを含み、カナダ菜種(Canola)とも呼ばれる。カナダ菜種は、現在、一般用語であり、2%未満のエルカ酸と30mmol/g未満のグルコシノレートを含有する菜種として定義されている。菜種中に発見された主な貯蔵タンパクは、アブラナ科植物素(cruciferins)及びナタネタンパク(napins)である。
【0060】
本発明の一実施例において、菜種タンパクは、アブラナ科植物素及び/又はナタネタンパクを含み、好ましくは、アブラナ科植物素及びナタネタンパクを含む。
【0061】
本発明において、菜種タンパクは、40~65%(w/w)のアブラナ科植物素と35~60%(w/w)のナタネタンパクを含むか、又は、15~65%(w/w)のアブラナ科植物素と35~85%(w/w)のナタネタンパクを含むか、又は、60~80%(w/w)のアブラナ科植物素と20~40%(w/w)のナタネタンパクを含むか、又は、80~100%(w/w)のアブラナ科植物素と0%~20%(w/w)のナタネタンパクを含むか、又は、0~20%(w/w)のアブラナ科植物素と80~100%(w/w)のナタネタンパクを含む。好ましくは、アブラナ科植物素とナタネタンパクの総重量が菜種タンパクの重量の100%を超えない。
【0062】
本発明の一実施例において、菜種タンパクは、抗栄養因子の含有量が低く、フィチン酸塩の含有量が1.5%(w/w)未満、好ましくは0.5%(w/w)未満であり、グルコシノレートの含有量が低く(例えば5μmol/g未満)、フェノール類の含有量が低い(例えば10mg/g未満)。本発明の一実施例において、菜種タンパクは、pH 3~10の測定条件において、溶解度が少なくとも88%である。
【0063】
本発明において、サンプルのテクスチャは、例えば、硬度、咀嚼性、粘着性、凝集性、弾性などのパラメータで評価することができる。サンプルのテクスチャパラメータは、テクスチャプロファイル解析 TPA(texture profile analysis)により測定することができ、前記解析は、2回咀嚼測定とも呼ばれ、主にテクスチャ解析機器の探触子により人間の口腔の咀嚼運動を模擬し、サンプルを2回圧縮し、測定は、マイコンに接続し、インターフェースを介してテクスチャ測定曲線を出力し、ソフトウェアによりサンプルの複数の物性指標、例えば、硬度(Hardness)、接着性(Adhesiveness)、弾性(Springiness)、凝集性(Cohesiveness)、粘着性(Gumminess)、咀嚼性(Chewiness)、回復性(Resilience)を得ることができる。ここで、硬度とは、1回目の咀嚼(又は1回目の圧縮)時の最大ピークの値を指す。
【0064】
本発明において、サンプルのTPA解析は、以下のようなモードで測定することができる。
(a)測定前の速度(Pre-Test Speed):2.00mm/s
(b)測定速度(Test Speed):2.00mm/s
(c)測定後の速度(Post-Test Speed):2.00mm/s
(d)目標モード(Target Mode):歪み(Strain)
(e)歪み(Strain):75%
(f)時間(Time):5s
(g)探触子(プローブ):P/1KSS
【0065】
本発明において、前記植物肉製品のテクスチャ解析は、テクスチャプロファイル解析方法 TPAを用い、テクスチャ解析機器(例えば、TA.XT.plus、SMS(登録商標)、重量:最大10kg)により測定することができる。本発明の一実施例において、植物肉製品のテクスチャ解析において、TPA測定は、探触子P/100、歪み40%、測定前の速度1mm/s、測定速度1mm/s、測定後の速度1mm/sの二重圧縮測定とすることができる。
【0066】
本発明に係るテクスチャ改良剤は、カードランと菜種タンパクとを組み合わせて使用することにより、カードランを含む組成物のゲル強度を顕著に改善し、適用系におけるタンパク質によるカードランのゲル強度の弱め作用が効果的に低下される。本発明に係る肉製品又は植物肉製品、又は本発明の製造方法によって製造された肉製品又は植物肉製品は、トランスグルタミナーゼを添加しなくてもよく、又はカードランを他のハイドロコロイドと配合しなくてもよく、又はメチルセルロースを添加しなくても、理想的なゲルテクスチャ及び食感(例えば、ゲル強度、硬度、弾性、咀嚼性など)を有し、ハイドロコロイドの全体の使用量を効果的に減少させ、製造プロセスを簡略化し、素因性を低下させ、クリーンラベルのニーズを満たすことができる。
【0067】
[発明を実施するための形態]
本発明は、実施例の形態でさらに説明する。これらの説明は、例示的なものに過ぎず、本発明を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
実験材料
【0068】
菜種分離タンパク(RPI)は、WO2018/007492に記載の方法により、低温圧搾法により菜種油の粗粉から製造され、タンパクの含有量が90%(w/w)であり、アブラナ科植物素(cruciferins)の含有量が40~65%(w/w)であり、ナタネタンパク(napins)の含有量が35~60%(w/w)であり、フィチン酸塩の含有量が0.26%(w/w)未満であり、23±2℃の温度、3~10のpH範囲で測定された溶解度が少なくとも88%である。pHは、PHC3085-8カロメルpH電極(D=5MM)を備えたPHM220 pH計で測定された。
【0069】
カードランは、中国浙江帝斯曼中肯生物科学有限会社(Zhejiang Disimanzhongken Biological Technology Co., Ltd.)から購入された。大豆分離タンパクは、デュポン社から購入された。ジャガイモタンパクは、AVEBE社から購入された。植物油は、益海嘉里社から購入された(コーン油)。メチルセルロースは、JRS社から購入された。菜種油は、中糧金竜魚社から購入された。構造タンパクは、中国台湾泓揚社から購入された。酵母エキスは、DSM社から購入された。色素、グルメパウダー(Gourmet powder)及び香辛料は市販品である。
実施例1:カードランと異なるタンパクとの相互作用
実験工程:
【0070】
表1の実験群の欄に示すように、所望のカードラン及び菜種分離タンパクなどの成分を秤量し、以下の操作を行った。
1)カードランを40℃の水で分散させ、2min、600r/minで撹拌分散を行う。
2)菜種分離タンパクを工程1)の溶液で分散させ、同じ回転速度で5min撹拌する。
3)植物油をゆっくり添加し、5min撹拌し続ける。
4)ゲルカップに入れ、30min蒸気で加熱する(100℃)。
5)冷却後に、25℃で2h静置し、TPA(TA.XT.plus)を用いて相応パラメータを測定する。
【0071】
TPAモードの測定は、以下のように設けられる。
-測定前の速度(Pre-Test Speed):2.00mm/s
-測定速度(Test Speed):2.00mm/s
-測定後の速度(Post-Test Speed):2.00mm/s
-目標モード(Target Mode):歪み(Strain)
-歪み(Strain):75%
-時間(Time):5s
-探触子(プローブ):P/1KSS
【0072】
測定結果が実験群の測定結果である。
【0073】
対照群1:実験群の菜種分離タンパクを等量の大豆分離タンパクで代替し、別の操作及び測定方法を実験群と同じくして、対照群1の測定結果を得た。
【0074】
対照群2:実験群の菜種分離タンパクを等量のジャガイモタンパクで代替し、別の操作及び測定方法を実験群と同じくして、対照群2の測定結果を得た。
【0075】
実験群と対照群のTPA測定結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表2における硬度は、ゲル強度であり、表2における実験データから分かるように、異なるタンパクとカードランとが共にゲル化されると、菜種タンパクを含む方のゲル強度及びテクスチャが別のタンパクより顕著に優れ、次が大豆分離タンパクであり、ジャガイモタンパクとカードランのゲル強度が最も弱い。
実施例2:ハンバーグ
実験工程:
【0079】
表3に示す配合比で、所望の原料成分を秤量し、以下のプロセスフローで操作し、50g又は70gのハンバーグを製造した。
1)水、色素を均一に分散させた後、構造タンパクを浸漬させる(>1時間)。
2)ハイドロコロイドを水で分散させ(カードランを常温の水で分散させ、MCは氷水で分散させる)、均一に十分撹拌させた後、タンパク粉末を添加して、均一に撹拌し、その後、菜種油をゆっくり添加し、撹拌しながら添加して、バインダーの乳化スラリーを取得する。
3)浸漬されたタンパク粒子を小さい粒子に切る。
4)全ての調味料及びエッセンスをいずれも秤量して構造タンパクに直接添加し、工程2)で得られた乳化スラリーも添加する。
5)均一に十分撹拌し、均一に混練する。
6)0.5~1時間放置し、MCのサンプルを4℃の条件下で放置する必要があり、カードランのサンプルを40℃の条件下で放置してもよく、その後に成形される。
7)成形された後に冷凍保存する。
8)ハンバーグの各面を約3~4min焼き、中心温度が70℃以上になるまで焼けばよい。
【0080】
焼いたハンバーグに対してテクスチャ測定を行い、テクスチャ機器(TA.XT plus)により硬度と咀嚼性の2つのパラメータを測定して評価し、食品のテクスチャパラメータは、食用温度50℃で測定される。
【0081】
テクスチャ測定方法:サンプルを製造し、探触子はHDP/BSである。測定条件は以下の通りである。
-モード(Mode):圧縮力(Force in Compression)の測定
-測定前の速度(Pre-Test Speed):1.50mm/s
-測定速度(Test Speed):1.50mm/s
-測定後の速度(Post-Test Speed):10.00mm/s
-目標モード(Target Mode):距離(Distance)
-距離(Distance):8.00mm
-トリガータイプ(Trigger Type):自動(圧力、Force)
-トリガー力(Trigger Force):10.0g
【0082】
ハンバーグのテクスチャ測定結果を表4に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表4のデータから分かるように、安定化剤としてメチルセルロースを使用する(実験1)ハンバーグは、テクスチャが最も強く、次がカードランと菜種タンパクとの組み合わせ(実験3)であり、当該組み合わせにより得られたもののテクスチャは、メチルセルロースを用いたテクスチャに相当するため、当該組み合わせはメチルセルロースを代替してバインダーとして使用できると考えられる。また、実験2及び実験4のテクスチャの比較から、同じタンパクの含有量で、カードランと菜種タンパクとの組み合わせがハンバーグのテクスチャ強度を有意に増強できることが見出される。
【国際調査報告】