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特表2024-540655連続する円周波状リブを備える浸漬ノズル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】連続する円周波状リブを備える浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20241024BHJP
   B22D 41/50 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B22D11/10 330J
B22D41/50 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531069
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2022083144
(87)【国際公開番号】W WO2023094528
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210310.5
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500180226
【氏名又は名称】ベスビウス グループ,ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】マルティン クライアーホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ラーベ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン リショー
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FB04
4E004FB10
4E014DB03
(57)【要約】
本発明は、溶融金属をモールドに鋳造するための浸漬ノズルであって、管状部分の上に設けられており、長手方向軸(Z)に沿って延在する、侵食に対して耐性のある材料で作製された耐食性スリーブ(2)を備え、耐食性スリーブが、耐食性スリーブ(2)の全周にわたって耐食性スリーブの凹部分(2r)を越えて半径方向外向きに延在する少なくとも1つの環状突出部(2p)を備え、少なくとも1つの環状突出部(2p)が、第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する周期的な波状軌道に従い、周期的な波状軌道が、5mmを超える振幅(A)、及び2π rad当たり1~20の山点~谷~山点の周期を含む周波数(P)によって画定されている、浸漬ノズルに関する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属をモールドに鋳造するための浸漬ノズルであって、前記浸漬ノズルが、
・第1の材料で作製された管状部分(1)であって、前記管状部分が、
・ 前記浸漬ノズルの第1の端部と第2の端部との間の管長(L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・ 前記長手方向軸(Z)に沿って、前記第1の端部で又は前記第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から前記第2の端部で又は前記第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで延在する内側ボア(1b)を備える、管状部分(1)と、
・前記第1の材料とは異なる、侵食に対してより耐性のある第2の材料で作製された耐食性スリーブ(2)であって、前記耐食性スリーブが、
・ 前記管状部分の全周に外接し、かつ前記管長(L1)よりも短いスリーブ長(L2)(すなわち、L2<L1)にわたって前記長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・ 長径(DM)及び短径(dm)によって画定された最も薄い断面の凹部分(2r)を備え、前記長径に対する前記短径の比(dm/DM)が、0.7~1.0である、耐食性スリーブ(2)、を備え、
前記耐食性スリーブが、前記耐食性スリーブ(2)の円周の全体にわたって突出距離(a)だけ前記凹部分(2r)を越えて半径方向外向きに延在する少なくとも1つの環状突出部(2p)を備え、前記少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、前記第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する前記管状部分の周りの軌道に従うことを特徴とする、浸漬ノズル。
【請求項2】
前記軌道が、波状軌道、又は好ましくは周期的な波状軌道であり、前記周期的な波状軌道が、
・隣接する山点と谷点との間の前記長手方向軸(Z)に沿って測定された、5mmを超える振幅(A)(すなわち、A>5mm)、及び
・円周の2π rad当たりの山点から谷までの周期の数として定義された周波数(P)であって、2π rad当たり1~20の山点~谷~山点の周期(すなわち、P=1~20)を含み、好ましくは、前記周波数(P)が、2~5を含む、周波数(P)によって画定されている、請求項1に記載の浸漬ノズル。
【請求項3】
前記スリーブ長(L2)に対する前記振幅(A)の振幅比(A/L2)が、2%~100%、好ましくは5%~50%である、請求項2に記載の浸漬ノズル。
【請求項4】
前記周期的な波状軌道が、丸みを帯びた波状軌道、好ましくは正弦曲線軌道、又はシェブロン軌道の形態であり、環状突出部(2p)の隣接する山点と谷点との間で測定された前記振幅(A)が、前記環状突出部(2p)の全ての隣接する山点及び谷点に対して好ましくは一定である、請求項2又は3に記載の浸漬ノズル。
【請求項5】
前記長手方向軸(Z)に沿って分布された1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の環状突出部(2p)を備え、2つ以上の突出部の場合、前記突出部が、互いに接触せず、好ましくは互いに同一であり、より好ましくは互いに対して平行である、請求項1~4のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項6】
前記長手方向軸(Z)を含む平面に沿った1つ以上の前記環状突出部(2p)の断面が、丸みを帯びた、台形の、正方形の、及び三角形のうちの1つ以上の中から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項7】
前記環状突出部(2p)が、前記凹部分(2r)の平均凹部直径(Dra)に対する前記環状突出部(2p)の前記突出距離(a)の比(a/Dra)が1~30%(すなわち、a/Dra=1~30%)、好ましくは5~20%であるように、前記凹部分(2r)から前記突出距離(a)だけ半径方向に突出し、前記平均凹部直径(Dra)が、前記凹部分(2r)の前記長径及び前記短径の平均として定義される(すなわち、Dra=1/2(DM+dm))、請求項1~6のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項8】
前記環状突出部(2p)が、前記凹部分(2r)から、5~50mm(すなわち、a=5~50mm)、好ましくは8~25mmの突出距離(a)だけ半径方向に突出する、請求項1~7のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項9】
前記管長(L1)に対する前記スリーブ長(L2)の長さ比(L2/L1)が、10~50%、好ましくは20~40%であり、少なくとも2つの環状突出部(2p)が、前記耐食性スリーブ(2)の前記スリーブ長(L2)にわたって分布されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項10】
前記長手方向軸(Z)に沿って測定された環状突出部(2p)の幅(b)が、5~50mm、好ましくは10~40mmであり、より好ましくは、前記幅(b)が、25±10mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項11】
前記第2の材料が、ジルコニアを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項12】
前記少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記浸漬ノズルの前記管状部分の周りに閉ループを形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項13】
溶融金属をモールドに連続鋳造する際の浸漬ノズルの侵食を低減するためのプロセスであって、
・浸漬ノズルの入口(1i)を、前記浸漬ノズルの出口(1o)がモールド(21)と流体連通する状態で、溶融金属容器(31)に結合すること、
・前記溶融金属容器から前記浸漬ノズルのボア(1b)を介して前記モールドに金属を鋳造すること、を含み、
・ 前記浸漬ノズルが、先行請求項のいずれか一項に記載のものであり、少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記モールド(11)内のスラグ(22)の高さよりも下に浸漬されることを特徴とする、プロセス。
【請求項14】
鋳造設備であって、
・溶融金属を包有し鋳造出口(31o)を備える溶融金属容器(31)、
・前記鋳造出口(31o)の下に設けられたモールド(11)、
・第1の端部で又は前記第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から第2の端部で又は前記第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで長手方向軸(Z)に沿って延在する内側ボア(1b)を備える浸漬ノズル、を備え、
・前記浸漬ノズルは、前記浸漬ノズルの前記入口(1i)が前記鋳造出口(31o)と流体連通するように、かつ前記浸漬ノズルの前記出口(1o)が前記モールドの内側にあるように、前記溶融金属容器に結合されており、
前記浸漬ノズルが、請求項1~10のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、鋳造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬エントリーノズル(SEN)、浸漬エントリーシュラウド(SES)、及びモノブロックタンディッシュノズルプレート(MTNP)などを含み、これらはまとめて浸漬ノズルと称される、溶融金属の連続鋳造のための浸漬ノズルに関する。本発明の様々な実施形態による浸漬ノズルは、タンディッシュ及び取鍋などの溶融金属容器に結合されるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
連続的な金属成形プロセスでは、金属溶融物は、ある冶金容器から別の冶金容器、モールド、又は金型に移送される。例えば、取鍋は、炉から金属溶融物を充填され、タンディッシュの上で駆動されて、溶融金属を取鍋から取鍋シュラウドを介してタンディッシュ内に吐出する。次に、金属溶融物は、タンディッシュ出口からモールド又は金型に注入ノズルを通して鋳造され、スラブ、ビレット、ビーム、及び薄いスラブなどを連続的に形成することができる。金属溶融物の汚染及び酸化を回避するために、容器から別の容器、又はモールド若しくは金型への流れを誘導するノズルは、溶融金属の高さよりも下に浸漬される。金属溶融物の取鍋からタンディッシュへの流れ及びタンディッシュからモールド又は金型への流れは、重力によって駆動される。流量は、取鍋及びタンディッシュの出口と流体連通するスライドゲートによって制御することができる。取鍋スライドゲートを使用して、取鍋からの流量を制御することができ、更に、密閉された位置で流れを中断することができる。同様に、タンディッシュスライドゲートを使用して、タンディッシュからの流量を制御し、密閉された位置で流れを中断することができる。多くの場合、タンディッシュからの流量は、スライドゲートの代わりにストッパによって制御される。
【0003】
モールドフラックスは、モールド又は金型内のメニスカスの高さ(すなわち、液体金属の表面で)に適用された酸化物、鉱物、及び炭素質材料の複合混合物によって構成された合成スラグであり、遮熱、再酸化の防止、及び包含物の捕捉などを含む様々な機能を保証する。モールドフラックスは、様々な組成を有し得るが、通常、シリカ、カルシア、酸化ナトリウム、アルミナ、及びマグネシアのうちの1つ以上の選択を含む。それらの組成によって、モールドフラックスは、一般に、液体金属自体よりも浸漬ノズルを形成する耐火材料に対してより腐食性がある。引き続き、「スラグ」及び「モールドフラックス」という用語は、互換的に使用される。
【0004】
モールドへの連続鋳造プロセスは非常に複雑なものであり、鋳造速度、モールドの振動特性、鋼種、モールド寸法を含む多くの変数を伴い、それらの全てが浸漬ノズルからモールド内への金属の流れ条件に影響する。図1に例解するように、浸漬ノズルの出口から流出する液体金属は、ノズルから急速に流出する金属がモールドの壁に当たる際に形成される渦による複雑な流れパターンに従う。モールド(11)の冷たい壁に到達する溶融金属(21)の一部分は、フローズンメタルのシェル(21s)を形成する。液体金属流の更なる部分は上向きに駆動され、モールドパウダー(22p)及び溶融モールドパウダー(22m)を含むスラグ又はモールドフラックス(22)に到達する。この上向きの流れにより、モールドフラックス(モールドパウダー及び溶融モールドパウダーの両方)の一部が捕捉され、浸漬ノズルの外壁に沿って高速で再び下方に駆動され、浸漬ノズルの外壁上にかなりの摩擦力が生じる。浸漬ノズルに対する異なる方向から来る流れの衝突により、渦が生じ得る。浸漬ノズルの外壁上のモールドフラックス(22)の上で考察された腐食作用に加えて、これらの渦は、同じ外壁の摩擦侵食を追加し、したがって、浸漬ノズルの外壁の侵食率を増加させる。引き続き、「侵食」という用語は、摩擦及び腐食などのうちのいずれか1つによって引き起こされる浸漬ノズル外壁の材料のあらゆる損失又は劣化を包含するために使用される。引き続き、「腐食」という用語は、材料及びその特質の荒廃を生じる材料の化学的又は電気化学的侵食のプロセスである。
【0005】
前述の理由により、浸漬ノズルの管状本体を形成する耐火材料よりも腐食に強い材料で作製された耐食性スリーブは、しばしば管状本体の上に設けられ、スラグの位置に対応する管状本体のセクションの上に延在する。耐食性スリーブは当該技術分野で周知であり、その例は、例えば、異なるタイプの耐食性スリーブを説明するKR2012/0134451、浸漬ノズルの管状部分上にねじ込むことができる耐食性スリーブを説明するKR2006/0101717、及び耐食性スリーブの組成を説明するKR2016/0060986などに記載されている。
【0006】
FR27163011は、浸漬ノズルの管状部分内の嵌合外ねじに係合するように構成された内ねじが設けられた可動耐食性スリーブを記載している。したがって、耐食性スリーブの位置は、管状部分の軸に沿って変動され得る。JPS57115953は、浸漬ノズルの管状部分の上にクランプされ得、非晶質耐火物で覆われたワイヤによって所定の位置に保持され得る2つの半シェルで作製された耐食性スリーブを記載している。CN207127252Uは、浸漬ノズルの管状部分の周りに半径方向に延在する突出部を備える耐食性スリーブを記載している。突出部は、管状部分の長手方向軸に対して垂直な平面に対し対称である。
【0007】
現在までに、侵食率を低減するために提案された解決策は、主に、そのようなシステムの攻撃的な環境に対してより耐性のある材料を見つけることに焦点を当てている。耐食性スリーブに対してこれまで以上に耐性のある材料を使用することが浸漬ノズルの耐用年数に有益であるが、耐食性スリーブを形成するこれらの材料にかかる摩擦力の大きさを低減するための解決策は、当該技術分野では提案されていない。任意の耐食性材料で作製された耐食性スリーブが設けられた浸漬ノズルの耐用年数をより更に延ばすことが可能である、そのような解決策に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の様々な実施形態による浸漬ノズルは、一方では、
・侵食が最も激しい場所のノズルを取り囲む耐食性スリーブ、他方では、
・侵食の大部分の原因になる溶融金属渦の振幅を低減するための、特定のパターンに従って耐食性スリーブを取り巻く少なくとも1つの環状突出部により、侵食に対する高められた耐性を有する。
【0009】
本発明の目的は、溶融金属をモールドに鋳造するための改良された浸漬ノズルを含む。少なくとも1つの実施形態によれば、浸漬ノズルは、管状部分及び耐食性スリーブを備える。
【0010】
管状部分は、第1の材料で作製されており、第1の端部と第2の端部との間の管長(L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在する。管状部分は、長手方向軸(Z)に沿って、第1の端部で又は第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口から第2の端部で又は第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口まで延在する内側ボア(1b)を備える。
【0011】
耐食性スリーブは、第1の材料とは異なる、侵食及び腐食に対してより耐性のある第2の材料で作製されている。換言すれば、第2の材料は、第1の材料よりも侵食に対してより耐性があるように選択され、同様に、第2の材料は、第1の材料よりも腐食に対してより耐性があるように選択される。一実施形態では、第2の材料は、例えばジルコニアを含む。耐食性スリーブは、管状部分の上に設けられており、管状部分の全周にわたって円周方向に延在し(例えば、外接し)、管長(L1)よりも短いスリーブ長(L2)(すなわち、L2<L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在する。耐食性スリーブは、長径(DM)及び短径(dm)によって画定された最も薄い断面の凹部分を備え、長径に対する短径の比(dm/DM)は、0.7~1.0を含む。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、溶融金属をモールドに鋳造するための浸漬ノズルは、
・第1の材料で作製された管状部分(1)であって、管状部分が、
・ 浸漬ノズルの第1の端部と第2の端部との間の管長(L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・ 長手方向軸(Z)に沿って、第1の端部で又は第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から第2の端部で又は第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで延在する内側ボア(1b)を備える、管状部分(1)、
・第1の材料とは異なる、侵食に対してより耐性のある第2の材料で作製された耐食性スリーブ(2)であって、耐食性スリーブが、
・ 管状部分の全周に外接し、かつ管長(L1)よりも短いスリーブ長(L2)(すなわち、L2<L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・ 長径(DM)及び短径(dm)によって画定された最も薄い断面の凹部分(2r)を備え、長径に対する短径の比(dm/DM)が、0.7~1.0である、耐食性スリーブ(2)、を備える。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、耐食性スリーブは、耐食性スリーブ(2)の円周の全体にわたって突出距離(a)だけ凹部分(2r)を越えて半径方向外向きに延在する少なくとも1つの環状突出部(2p)を備え、少なくとも1つの環状突出部(2p)は、第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する軌道に従う。少なくとも1つの環状突出部は、明らかに第2の材料で作製されており、好ましくは、耐食性スリーブと一体である。少なくとも1つの環状突出部は、好ましくは、本発明の浸漬ノズルの管状部分の周りに閉ループを形成する。少なくとも1つの環状突出部は、耐食性スリーブの外面上に位置する。少なくとも1つの環状突出部は、溶融金属と直接接触するように設計されている。
本発明は、少なくとも1つの環状突出部(2p)を有する耐食性スリーブであって、少なくとも1つの環状突出部(2p)が、耐食性スリーブの全周にわたって突出距離(a)だけ凹部分を越えて半径方向外向きに延在する、耐食性スリーブを提供する。少なくとも1つの環状突出部(2p)は、第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する周期的な波状軌道に従う。周期的な波状軌道は、振幅(A)及び周波数(P)によって画定されている。閉ループの環状突出部には、谷点と同じ数の山点がある。換言すれば、各山点には、1つの山点及び1つの谷点のみが対応する。長手方向軸(Z)に沿って測定された、山点を谷点から分離する距離は、環状突出部が辿る軌道の振幅(A)を画定する。管状部分の周りの1回転当たりの山点(又は谷点の)の数は、環状突出部が辿る軌道の周波数(P)を画定する。
【0014】
周期的な波状軌道の振幅(A)は、隣接する山点と谷点との間を長手方向軸(Z)に沿って測定すると5mmよりも大きい(すなわち、A>5mm)。周期的な波状軌道の周波数(P)は、円周の2π rad当たりの山点から谷までの周期の数として定義され、2π rad当たり1~20の山点~谷~山点の周期(すなわち、P=1~20)を含み、好ましくは、周波数(P)は、2~5を含む。
【0015】
周期的な波状軌道は、丸みを帯びた波状軌道、好ましくは正弦曲線軌道の形態であり得るか、又はシェブロン軌道の形態であり、環状突出部の隣接する山点と谷点との間で測定された振幅(A)は、環状突出部の全ての隣接する山点及び谷点に対して好ましくは一定である。
【0016】
本発明による浸漬ノズルは、長手方向軸(Z)に沿って分布された1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の環状突出部(2p)を備え得る。いくつかの実施形態によれば、2つ以上の突出部の場合、突出部は互いに接触せず、好ましくは互いに同一であり、より好ましくは互いに平行である。
【0017】
1つ以上の環状突出部の長手方向軸(Z)を含む平面に沿った断面は、丸みを帯びた、台形の、正方形の、又は三角形の中から選択され得る。
【0018】
環状突出部は、凹部分の平均凹部直径(Dra)に対する環状突出部の突出距離(a)の比(a/Dra)が1~30%(すなわち、a/Dra=1~30%)、好ましくは5~20%を含み得るように、凹部分から突出距離(a)だけ半径方向に突出し、平均凹部直径(Dra)は、凹部分(2r)の長径及び短径の平均として定義されている(すなわち、Dra=1/2(DM+dm))。例えば、環状突出部は、凹部分から、5~50mm(すなわち、a=5~50mm)、好ましくは8~25mmを含む突出距離(a)だけ半径方向に突出する。
【0019】
管長(L1)に対するスリーブ長(L2)の長さ比(L2/L1)は、10~50%、好ましくは20~40%を含み得る。少なくとも2つの環状突出部は、好ましくは、耐食性スリーブのスリーブ長(L2)にわたって分布されている。スリーブ長(L2)に対する振幅(A)の振幅比(A/L2)は、2%~100%、好ましくは5%~50%を含み得る。
【0020】
環状突出部(2p)は、長手方向軸(Z)に沿って測定された、5~50mm、好ましくは10~40mmを含む幅(b)を有し得、より好ましくは、幅(b)は、25±10mmである。
【0021】
本発明は、浸漬ノズルの壁に沿って流れる金属の速度を低減し、それに応じて摩擦力を低減することを可能にする、耐食性スリーブの特定の設計を提案する。これは、侵食率を低減し、したがって、浸漬ノズルの耐用年数を更に延ばすという利点を有する。本発明のこれら及び他の利点は、以下のセクションでより詳細に説明される。
【0022】
本発明は、溶融金属をモールドに連続鋳造する際の浸漬ノズルの侵食を低減するプロセスにも関する。このプロセスは、浸漬ノズルの入口を、出口がモールドに係合した状態で、溶融金属容器に結合すること、及び溶融金属容器から浸漬ノズルのボアを介してモールドに金属を鋳造することを含む。本プロセスの浸漬ノズルは、上述のとおりであり、少なくとも1つの環状突出部は、モールド内のスラグの高さよりも下に浸漬される。このようにして、侵食の主な原因になる渦の形成は、連続的に拡大することができない。
【0023】
本発明は、
・溶融金属を包有し鋳造出口を備える溶融金属容器、
・長手方向軸(Z)に沿って鋳造出口の下に設けられたモールド又はタンディッシュ、
・第1の端部で又は第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口から第2の端部で又は第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口まで長手方向軸(Z)に沿って延在する内側ボアを備える浸漬ノズル、を備え、
・浸漬ノズルが、浸漬ノズルの入口が鋳造出口と流体連通するように、かつ浸漬ノズルの出口がモールド又はタンディッシュの内側にあるように、溶融金属容器に結合されている、鋳造設備にも関する。
【0024】
本発明の鋳造設備は、浸漬ノズルが、上述のものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】対応する流動挙動及びスラグ捕捉を伴ってモールド内に液体金属を分注する、先行技術(P.A.)の浸漬ノズルの側面切断図を示す。
図2図2(a)は、本発明の様々な実施形態による、本発明による浸漬ノズルの側面切断図を示し、液体金属をモールド内に分注する浸漬エントリーノズル(SEN)である。 図2(b)は、本発明の様々な実施形態による、本発明による浸漬ノズルの側面切断図を示し、モノブロックタンディッシュノズルプレート(MTNP)である。
図3図3(a)は、本発明の様々な実施形態による、浸漬ノズルの2つの実施形態の側面切断図及び断面図(B-B)を示す。 図3(b)は、本発明の様々な実施形態による、浸漬ノズルの2つの実施形態の側面切断図及び断面図(A-A)を示す。
図4図4(a)は、本発明の様々な実施形態による、長手方向軸(Z)に沿って測定された長さ(L2)の耐食性スリーブにおける異なる周波数(P)、振幅(A)の異なる数(N)の環状突出部を備える浸漬ノズルを示す。 図4(b)は、本発明の様々な実施形態による、長手方向軸(Z)に沿って測定された長さ(L2)の耐食性スリーブにおける異なる周波数(P)、振幅(A)の異なる数(N)の環状突出部を備える浸漬ノズルを示す。 図4(c)は、本発明の様々な実施形態による、長手方向軸(Z)に沿って測定された長さ(L2)の耐食性スリーブにおける異なる周波数(P)、振幅(A)の異なる数(N)の環状突出部を備える浸漬ノズルを示す。 図4(d)は、本発明の様々な実施形態による、2つの環状突出部を示すノズルの部分断面図を示す。
図5図5(a)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=1のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、斜視図を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。 図5(b)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=1のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、耐食性スリーブの広げられた円周を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。
図6図6(a)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、斜視図を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。 図6(b)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、耐食性スリーブの広げられた円周を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。
図7図7(a)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=1のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、斜視図を示す。環状突出部の波状軌道は、丸みを帯びている(正弦曲線)。 図7(b)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=1のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、耐食性スリーブの広げられた円周を示す。環状突出部の波状軌道は、丸みを帯びている(正弦曲線)。
図8図8(a)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、斜視図を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、丸みを帯びている(正弦曲線)。 図8(b)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2のN=5の同一の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、耐食性スリーブの広げられた円周を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、丸みを帯びている(正弦曲線)。
図9図9(a)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2の異なる振幅(A)を有するN=5の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、斜視図を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。 図9(b)は、本発明の少なくとも1つの実施形態による、周波数P=2の異なる振幅(A)を有するN=5の環状突出部を備える浸漬ノズルの一実施形態を示し、耐食性スリーブの広げられた円周を示す。環状突出部の波状軌道は、本発明の少なくとも1つの実施形態により、シェブロンを画定する。
図10図10(a)は、環状突出部の断面幾何学形状の様々な実施形態を示す。 図10(b)は、環状突出部の断面幾何学形状の様々な実施形態を示す。 図10(c)は、環状突出部の断面幾何学形状の様々な実施形態を示す。 図10(d)は、環状突出部の断面幾何学形状の様々な実施形態を示す。 図10(e)は、環状突出部の断面幾何学形状の様々な実施形態を示す。
図11】本発明の少なくとも1つの実施形態に従って製作された(c)第3の浸漬ノズルと比較した、先行技術の第1(a)及び第2(b)の浸漬ノズルの耐食性スリーブの表面で測定された摩擦力のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2に例解するように、本発明による浸漬ノズルは、溶融金属(21)をモールド(11)に鋳造するように構成されている。本発明による浸漬ノズルは、取鍋からのタンディッシュの充填にも使用され得る。「浸漬ノズル」という表現は、1つ以上の出口を介して液体金属を分注するように構成された任意のノズルを総称して指すために本明細書で使用され、1つ以上の出口は、液体金属の高さよりも下に浸漬される。これには、とりわけ、浸漬エントリーノズル(SEN)(図2(a)を参照)、浸漬エントリーシュラウド(SES)、及びモノブロックタンディッシュノズルプレート(MTNP)(図2(b)を参照)などが含まれる。図3(a)及び図3(b)に例解するように、浸漬ノズルは、管状部分(1)及び管状部分(1)の上に設けられた耐食性スリーブ(2)を備える。
【0027】
管状部分(1)は、第1の材料、典型的には、熱的に安定しており、流れる金属から放出されるガスに対して透過性である耐火セラミック材料で作製されている。浸漬ノズルの管状部分(1)に使用される材料は、当該技術分野で周知であり、例えば、Al-Cベースの耐火材料を含み得る。他の材料には、二酸化ケイ素及びスピネルなどが含まれ得る。
【0028】
管状部分は、第1の端部と第2の端部との間の管長(L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在する。管状部分は、長手方向軸(Z)に沿って、第1の端部で又は第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から第2の端部で又は第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで延在する、内側ボア(1b)を備える。1つの出口(1o)は、図3(b)に示すように、長手方向軸(Z)と同軸に第2の端部で開口し得、かつ/又は1つ以上の出口(1o)は、図2図3(a)、及び図4(a)~図4(c)に示すように、半径方向に開口し得る。本発明は、1つ以上の出口(1o)の任意の特定の構成に限定されない。
【0029】
耐食性スリーブ(2)は、第1の材料とは異なる、侵食及び腐食に対してより耐性のある第2の材料で作製されている。第2の材料は、当該技術分野において周知であり、例えば、JPS6397344及びKR1020160060986などに記載されている。第2の材料は、典型的には、ジルコニアを含み、時にはグラファイト及びSiCなどの他の材料とともに含む。耐食性スリーブは、一方では、モールドフラックス(又はスラグ)(22)の腐食作用、及びそれよりも少ない程度であるが溶融金属(21)の腐食作用に対してより高い耐性を提示し、かつ他方では、時に浸漬ノズルの壁の表面に形成される捕捉されたモールドフラックス(22)と混合され、最終的に浸漬ノズルの劣化につながる摩擦力を生じさせる液体金属の渦の侵食作用に対してより高い抵抗を提示する。第2の材料は、当業者が容易に理解するように、第2の材料の耐食性が第1の材料の耐食性よりも高い限り、ジルコニアに類似する別の材料を含み得る。
【0030】
耐食性スリーブ(2)は、管状部分(1)の上に設けられており、管状部分の全周にわたって円周方向に延在する。例えば、耐食性スリーブは、管状部分の全周に外接する。また、耐食性スリーブは、長手方向軸(Z)に沿って、管長(L1)よりも短いスリーブ長(L2)にわたって延在する(すなわち、L2<L1)。KR2006/101717は、浸漬ノズルの管状部分の上に可逆的にねじ込むことができる耐食性スリーブを記載している。耐食性スリーブ(2)は、管状部分(1)と同じ高さにすることができる。耐食性スリーブ(2)は、管状部分(1)に対して凹むことができるが、耐食性スリーブは、好ましくは、管状部分(1)から突出して、1~5mm、好ましくは2~3mm程の小さい段を形成する。
【0031】
本発明は、0.7~1.0を含む長径(DM)に対する短径(dm)のアスペクト比(dm/DM)の略円形の断面又は楕円形の断面を有する浸漬ノズル(及び対応する耐食性スリーブ(2))に焦点を当てる。耐食性スリーブ(2)は、短径(dm)及び長径(DM)によって画定された最も薄い断面の凹部分(2r)を有する。DM=dmである円形の断面については、読み取りを簡素化するために、直径Dr=DM=dmを参照することにした。これは、図3(a)及び図3(b)の各々の下の2つの断面切断図に例解されており、長径及び短径(DM、dm)の楕円形の断面(上図)及び直径(Dr)の円形の断面(下図)を示している。
【0032】
本発明の更なる有利な態様は、耐食性スリーブが、耐食性スリーブ(2)の全周にわたって突出距離(a)だけ凹部分(2r)を越えて半径方向外向きに延在するリブを形成する、少なくとも1つの環状突出部(2p)を備えることである。少なくとも1つの環状突出部(2p)は、第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する耐食性スリーブの周りの波状軌道に従う。いくつかの実施形態では、波状軌道は周期的であり得る。いくつかの実施形態では、周期的な波状軌道は、振幅(A)及び周波数(P)によって画定され得る閉軌道である。
【0033】
振幅(A)は、山点を谷点まで分離する長手方向軸(Z)に沿って測定された距離である。周期がいくつかの谷点及び山点を含む場合、振幅は、谷点を該周期内の隣接する山点から分離する最大距離として画定される。本発明による環状突出部の振幅は、隣接する山点と谷点との間を長手方向軸(Z)に沿って測定すると5mmよりも大きい(すなわち、A>5mm)。環状突出部の振幅は、好ましくは、10mm~450mm、より好ましくは15mm~150mm、より好ましくは20mm~100mm、最も好ましくは25mm~75mmを含む。
【0034】
周波数(P)は、円周の2π rad当たりの山点から谷までの周期の数として定義される。本発明による環状突出部の周波数は、2π rad当たり1~20の山点~谷~山点の周期(すなわち、P=1~20)を含み、好ましくは、周波数(P)は、2~10、より好ましくは3~5を含む。図4(a)、図5(a)及び図5(b)、並びに図7(a)及び図7(b)は、周波数P=1の環状突出部(2p)を示している。図4(b)、図6(a)及び図6(b)、並びに図8(a)及び図8(b)は、周波数P=2の環状突出部(2p)を示しており、図’4(c)は、周波数P=10の環状突出部を示している。周波数P=1は、図5(b)、図7(b)、及び図9(b)の広げられた表現で見ることができるように、2π radにわたる周期的な波状軌道を画定しないが、本明細書では、いくつかの(n)回転(n 2π rad)にわたって周期的な波状軌道を画定するものとみなされる。好ましくは、周波数P=1の場合、波状軌道は、周期的であるとみなされるように、長手方向軸(Z)に対して平行な少なくとも1つの対称軸を含まなければならない。
【0035】
環状突出部の幾何学形状に関して、1つ以上の環状突出部の各々は、閉ループの周期的な波状軌道を画定する。図7(a)、図7(b)、及び図8(a)、図8(b)に例解されるように、第1の実施形態では、周期的な波状軌道は、丸みを帯びた波状軌道の形態であり得る。例えば、周期的な波状軌道は、正弦曲線軌道であり得る。図5(a)、図5(b)、及び図6(a)、図6(b)に例解する代替の実施形態では、周期的な波状軌道は、シェブロンの形態であり得る。好ましい実施形態では、環状突出部の隣接する山点と谷点との間で測定される振幅(A)は、環状突出部の全ての隣接する山点と谷点に対して一定である。上記で述べたように、P=1の周波数の場合、図5(a)、図5(b)、及び図7(a)、図7(b)に示すように、角度π radで長手方向軸(Z)に対して平行な少なくとも1つの対称軸を有することが好ましい。周期P=1、2、3、4、又は5は、各回転(2π rad)に対して好ましい。
【0036】
図4(d)、図10(a)~図10(e)に示すように、1つ以上の環状突出部(2p)の長手方向軸(Z)を含む平面に沿った断面は、丸みを帯びた、台形の、正方形の、又は三角形の中から選択され得る。他の幾何学形状も想定することができる。環状突出部(2p)の突出距離(a)は、長手方向軸(Z)の周りの各方位角に対して、環状突出部(2p)に直接隣接する凹部分(2r)と該凹部分から最も遠い先端部分とを分離する最大距離として画定される。環状突出部(2p)が線形隆起(例えば、図10(a)及び図10(e)に例解するような丸みを帯びた又は三角形の断面を有する)を画定する場合、先端部分は隆起に従い、環状突出部(2p)の波状幾何学形状を画定する。環状突出部(2)の断面が、図10(b)~図10(d)に例解するように長手方向軸に対して平行な平坦な台地を画定する場合、先端部分は台地自体であり、環状突出部(2p)の波状幾何学形状は、台地の縁から等距離にある台地に含まれる線に従う。
【0037】
好ましい実施形態では、環状突出部(2p)は、凹部分(2r)の平均凹部直径(Dra)に対する環状突出部(2p)の突出距離(a)の比(a/Dra)が1~30%(すなわち、a/Dra=1~30%)、好ましくは5~20%を含むように、それに直接隣接する凹部分(2r)から突出距離(a)だけ半径方向に突出する。平均凹部直径(Dra)は、凹部分(2r)の長径及び短径の平均として定義される(すなわち、Dra=1/2(DM+dm))。円形の断面の浸漬ノズルの場合、Dra=Drである。環状突出部(2p)は、それに直接隣接する凹部分(2r)から、5mm~50mm(すなわち、a=5~50mm)、好ましくは8mm~25mmを含む突出距離(a)だけ半径方向に突出し得る。突出距離(a)は、必ずしも一定ではなく、方位角に応じて変動し得ることに留意されたい。例えば、モールドは、一般に、広い側面及び狭い側面を有し、場合によっては、突出距離(a)は、広い側面と環状突出部(2)との間に、金属がそれらの間を自由に流れるのに十分な空間を残すために、広い側面に面する位置でより低くあり得る。代替的に、突出距離(a)は、環状突出部(2p)の全周にわたって一定であり得る。
【0038】
図4(a)~図4(c)を参照すると、スリーブ長(L2)に対する振幅(A)の振幅比(A/L2)は、2%~100%、好ましくは5%~50%を含み得る。浸漬ノズルが単一の環状突出部(2p)を備える場合、振幅は、前述の範囲の全体に及び得る。浸漬ノズルが2つ以上の環状突出部(2p)を備える場合、振幅比は、40%未満(すなわち、A/L2<40%)であることが好ましい。管長(L1)に対するスリーブ長(L2)の長さ比(L2/L1)は、10~50%、好ましくは20~40%を含み得る。
【0039】
図4(d)、図10(a)~図10(e)に例解するように、環状突出部(2p)の長手方向軸(Z)に沿って測定された幅(b)は、5~50mm、好ましくは10~40mmを含み得、より好ましくは、幅(b)は25±10mmである。幅(b)は、環状突出部の各側部の傍らに位置する、2つの凹部分(2r)を分離する長手方向軸(Z)に沿って測定された距離(b)として画定される。これは、例えば、図10(d)に示すように、環状突出部の各側部の傍らに位置する2つの凹部分(2r)が同じ直径を有さない場合にも適用される。好ましい実施形態では、環状突出部(2p)の幅(b)は、その全周にわたって一定である。代替的に、環状突出部(2p)の幅(b)は、長手方向軸(Z)の周りの方位角とともに変動し得る。
【0040】
上記に記載されているように、第2の材料は、例えば、JPS6397344及びKR1020160060986などに記載されているものなどの、当該技術分野で既知の任意の耐食性材料であり得る。第2の材料には、典型的には、純粋な、又はグラファイト及びSiCなどの他の材料を含むジルコニアが含まれる。
【0041】
様々な実施形態は、2つ以上の環状突出部(2p)を有する。図4(a)は、耐食性スリーブ(2)内に単一の環状突出部(2p)を有する浸漬ノズルを示すが、浸漬ノズルは、例えば、図4(b)~図4(d)、図5(a)及び図5(b)~図9(a)及び図9(b)に示すように、1よりも大きい数(N≧1)の環状突出部を備えることができる。環状突出部の数(N)は、2、3、4、5、6、又は更にそれ以上であり得る。2つ以上の環状突出部(2p)は、耐食性スリーブ(2)の長さ(L2)に沿って互いに接触することなく分布されている。例えば、図5(a)及び図5(b)~図8(a)及び図8(b)に例解する好ましい実施形態では、少なくとも2つの環状突出部(2p)、好ましくは全ての環状突出部は互いに同一である。最も好ましい実施形態では、同一の環状突出部は、互いに平行に配置されている。第1の環状突出部の山点を、第1の環状突出部に隣接する第2の環状突出部の山点から分離する距離(d2p)は、2つの環状突出部(2p)の全周にわたって一定であり得る。浸漬ノズルの全ての環状突出部(2p)は、好ましくは、同じ距離(d2p)だけ互いに分離される。
【0042】
代替的に、2つ以上の環状突出部は同一ではなく、必ずしも互いに平行ではない(図9(a)及び図9(b)を参照)。2つの隣接する環状突出部を分離する距離(d2p)は、長手方向軸(Z)に対する方位角とともに変動し得る。全ての環状突出部は、互いから異なる距離(d2p)だけ分離され得る。
【0043】
管長(L1)に対するスリーブ長(L2)の長さ比(L2/L1)が10~50%、好ましくは20~40%を含む場合、少なくとも2つの環状突出部(2p)は、耐食性スリーブ(2)のスリーブ長(L2)にわたって分布され得る。2つ以上の環状突出部(2p)は、好ましくは、スリーブ長(L2)の50%~100%、好ましくは80%~95%にわたって分布される。
【0044】
図3(b)及び図4(a)に示すように、耐食性スリーブ(2)の1つ以上の環状突出部(2p)に加えて、本発明の浸漬ノズルは、耐食性スリーブ(2)と1つ以上の出口(1o)との間に含まれた管状部分(1)のセクション内の位置にある1つ以上の追加の環状突出部(1p)を備え得る。追加の環状突出部は、耐食性スリーブ(2)内の環状突出部(2p)に関して考察されたものと同じ幾何学形状を有し得、材料のみがそれとは異なり得、その材料は、管状部分(1)で使用されているものと同じ第1の材料である。追加の突出部(1p)は、同一であり得、好ましくは、耐食性スリーブ(2)内の環状突出部(2p)に対して平行であり得、又は異なり得る。
【0045】
浸漬ノズルの侵食を低減するためのプロセスには、以下のステップが伴い得る。本発明は、溶融金属をモールドに連続鋳造する際の浸漬ノズルの侵食を低減するためのプロセスにも関する。プロセスは、
・浸漬ノズルの入口(1i)を、出口(1o)がモールド(11)に係合した状態で、溶融金属容器(31)に結合すること、
・溶融金属容器から浸漬ノズルのボア(1b)を介してモールドに金属を鋳造すること、を含む。
【0046】
浸漬ノズルは、上で考察されたように、少なくとも1つの環状突出部(2p)が設けられた耐食性スリーブを備え、少なくとも1つの環状突出部(2p)は、モールド(11)内のスラグ又はモールドフラックス(22)の高さよりも下に浸漬される。スラグの高さは、本明細書ではメニスカスと称される。
【0047】
メニスカスの高さは、鋳造動作中に変化する。鋳造動作の全ての時点で、入口に最も近い第1の環状突出部(2p)からメニスカスを分離する距離は、入口に最も近い凹部分(2r)の平均直径(Dra)の2倍未満(すなわち、距離<2Dra)、好ましくはDra未満(すなわち、距離<Dra)であることが好ましく、楕円形の浸漬ノズルの場合、Dra=(DM+dm)/2、及びDM=dm=Drを有する円形の浸漬ノズルの場合、Dra=Drである。
【0048】
少なくとも1つの環状突出部(2p)は、鋳造動作全体を通してメニスカスの下に完全に沈められることが好ましい。
【0049】
鋳造設備は、以下の態様を含み得る。本発明は、(1)溶融金属を包有し鋳造出口(31o)を備える溶融金属容器(31)と、(2)長手方向軸(Z)に沿って鋳造出口(31o)の下に設けられたモールド(11)又は第2の金属容器と、(3)第1の端部で又は第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から第2の端部で又は第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで長手方向軸(Z)に沿って延在する内側ボア(1b)を備える浸漬ノズルと、を備える鋳造設備にも関する。
【0050】
浸漬ノズルは、浸漬ノズルの入口(1i)が鋳造出口(31o)と流体連通するように、かつ浸漬ノズルの出口(1o)がモールド又は第2の金属容器の内側にあるように、溶融金属容器に結合されており、本発明の設備では、浸漬ノズルは、上で考察されたように、少なくとも1つの環状突出部(2p)が設けられた耐食性スリーブを備える。
【0051】
溶融金属容器(31)は、典型的には、本発明の浸漬ノズルを介してモールドに金属を鋳造するタンディッシュである。浸漬ノズルは、代替的に、浸漬ノズルを介してタンディッシュに液体金属を分注する取鍋に結合され得る。
【0052】
本発明は、所与の寸法の浸漬ノズルの耐用年数を延ばすことができるか、又は逆に、より薄い壁及び使用されるより少ない材料で同様の耐用年数を維持することができる。浸漬ノズルの壁に「静的に」接触するモールドフラックスによって引き起こされる腐食は、当該技術分野で一般的に知られているように、耐食性スリーブの使用によって減速される。他方では、本発明は、液体金属及びスラグの渦が浸漬ノズルに擦れることによって生じる摩擦力を大幅に低減することによって、先行技術の浸漬ノズルと比較して、浸漬ノズルの侵食に対する耐性を大幅に高める。最も激しい侵食は、スラグの表面からフラックス粉末を浸漬ノズルに対して引きずり下ろす渦によって引き起こされる(図1を参照)。この侵食プロセスは、耐食性スリーブ(2)と浸された出口(1o)に最も近い管状部分(1)との間の境界面で特に顕著である。浸漬ノズルの環状突出部(2p)は、この境界面侵食現象を大幅に低減する。
【0053】
図11は、先行技術の第1(a)及び第2(b)の浸漬ノズル並びに(c)本発明による第3の浸漬ノズルの耐食性スリーブの表面で測定された摩擦力をグラフ化している。図11は、高粉末濃度の領域における摩擦力のグラフを示している。全ての浸漬ノズルの管状部分(1)は、同一直径(D1)の円形の断面を有する。全ての浸漬ノズルの耐食性スリーブは、同じスリーブ長(L2)を有し、同じ第2の材料で作製されている。先行技術の第1及び第2の浸漬ノズル(a)及び(b)の耐食性スリーブは、一定の直径の平滑な円筒形表面を有し、(1)先行技術の第1の浸漬ノズル(a)の耐食性スリーブ(2)は、管状部分の直径に等しいスリーブ直径(Dr)を有し(Dr=D1)、(2)先行技術の第2の浸漬ノズル(b)の耐食性スリーブ(2)は、管状部分の直径(D1)+突出距離(a)の2倍に等しいスリーブ直径(Dp)を有する(Dp=D1+2a)。
【0054】
本発明の第3の浸漬ノズル(c)の耐食性スリーブ(2)は、スリーブ長(L2)にわたって均等に分布された周波数P=2のN=5の同一の環状突出部(2p)を有する。環状突出部は、管状部分(1)と同じ直径(Dr)(Dr=D1)の凹部分(2r)によって互いに分離されている。突出部(2p)は、先行技術の第2の浸漬ノズル(b)のスリーブ直径に等しい突出直径(Dp)を画定する、凹部分(2r)を越えて半径方向に距離(a)だけ延在する。突出直径(Dp)は、管状部分の直径(D1)よりも約10~40%大きくてもよく(すなわち、Dp=110%D1~140%D1)、好ましくは、D1の約20~30%大きくてもよい(すなわち、Dp=120%D1~130%D1)。突出直径(Dp)は、必ずしも一定ではない。一方、突出距離(a)は一定であり得るが、浸漬ノズルは楕円形の断面を有し、その結果、D1+2aはD1と同じように変動する。他方では、突出距離(a)自体は、方位角とともに変動し得、その結果、円形の断面の直径を有する浸漬ノズルであっても、突出直径(Dp)は、突出距離(a)が変動するのと同じように変動し得、楕円形の断面のノズルの場合、管状部分直径(D1)はまた同じように変動する。
【0055】
テストは水モデルで実行され、モールドフラックスをシミュレートするために、メニスカスに浮遊する粉末が追加された。浸漬ノズルの外面上にセンサを適用し、摩擦力を時間の関数として記録した。図11は、上記の3つの浸漬ノズル上で時間の関数として測定された結果の一例を示している。以下の観察がなされた。
・約14mNの平均摩擦力をもって、管状部分と同じ高さにある平滑な耐食性スリーブ(2)を有する第1の先行技術の浸漬ノズル(図11の点線の曲線(a)を参照)は、浸漬ノズルの外壁に対して最も高いレベルの摩擦力を記録し、テストした3つの浸漬ノズルの中で最も高い侵食率をもたらした。
・平滑な耐食性スリーブ(2)が管状部分から突出距離(a)だけ突出した状態の、第2の先行技術の浸漬ノズル(図11の破線の曲線(b)を参照)は、第1の先行技術の浸漬ノズルよりも大幅に低い9mNの平均摩擦力をもたらした。
・管状部分と同じ高さの凹部分(2r)によって互いに分離されたN=5の環状突出部(2p)を備え、凹部分から突出距離(a)だけ突出している耐食性スリーブ(2)を有する本発明の浸漬ノズル(図11の実線曲線(c)を参照)は、約0.3mN、すなわち、第2の先行技術の浸漬ノズル(曲線(b))よりも約30倍、第1の先行技術の浸漬ノズル(曲線(a))よりも40~50倍低い、大幅により低い平均摩擦の摩擦をもたらした。
【0056】
上記の結果からいくつかの結論を導き出すことができる。第一に、第1の先行技術の浸漬ノズルと第2の先行技術の浸漬ノズルとを比較することによって(図11の曲線(a)及び(b))、耐食性スリーブを突出距離(a)だけ隆起させることによって、平均摩擦力を約35%減少させることができると結論付けることができる。この解決策は、より多くの量の第2の材料を使用する必要があり、これは、第1の材料よりも高価である。第二に、本発明による浸漬ノズルを第1及び第2の先行技術の浸漬ノズルと比較する(図11の曲線(c)を曲線(a)及び(b)と比較する)ことによって、
・最大厚さが突出距離(a)に等しい、本発明による環状突出部(2p)を、同じ高さの第1の先行技術の浸漬ノズルの耐食性スリーブ(2)に加えることにより、平均摩擦力を約98%減少させることができ、
・第2の先行技術の浸漬ノズル(=曲線(b))の隆起した耐食性スリーブ(2)から第2の材料の一部を除去して、管状部分の直径(D1)に等しい直径(Dr)(すなわち、Dr=D1)の凹部分(2r)によって互いに分離された本発明による環状突出部(2p)を形成することにより、平均摩擦力を約97%減少させることができると結論付けることができる。
【0057】
浸漬ノズルの外壁上に加えられる侵食力のそのような劇的な低減により、本発明による浸漬ノズルの耐用年数は明らかに高められる。侵食が減速されるため、必要な第2の材料の量はより少なくなる。
【0058】
本発明の浸漬ノズルは、浸漬ノズルからモールド(11)に流出する液体金属が辿る複雑な流れパターンに関連する侵食問題の改善における画期的なものである。浸漬ノズルの外壁上に加えられる平均的な摩擦力は、事実上排除された。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、1つ以上の突出部は、液体金属が浸漬ノズルの壁に対して、該壁に向かってかつそれに沿って流れているときに衝突する際に、液体金属によって形成された渦の強さの連続的な成長を防止すると考えられる。例えば、図11の第1の先行技術の浸漬ノズル(=曲線(a))の場合のように、平滑な表面の場合、壁の1点で形成された渦は、異なる方向から自由に流れる液体金属によって供給されて成長する。隆起した耐食性スリーブ(例えば、図11の曲線(b)のように)では、頂部から底部へ、出口(1o)に向かって流れる液体金属の流れは、突出距離(a)の段によって逸らされ、渦の連続的な成長に同様に効率的に寄与することができない。しかしながら、図11において、約30秒後に、曲線(a)及び(b)が合流しているのが見られ、これは、この垂直方向の流れが最終的に安定化し、より定常的になり、したがって、このように形成された任意の渦の成長に安定的に寄与することを示唆している。
【0059】
本発明による環状突出部(2p)では、様々な方向から流れる液体金属の流れが逸らされると考えられる。それらは閉ループを形成するため、隆起した耐食性スリーブに関して上で考察されたように、トップダウンの垂直方向の流れを逸らすが、振幅(A)の波状幾何学形状により、壁に対して(すなわち、長手方向軸(Z)に対して横方向に)流れる液体金属も逸らす。渦の形成及び成長の原因になると考えられる2つの主要な流れ方向を逸らすことにより、渦は小さく隔絶されたままであり、図11の曲線(c)を先行技術の曲線(a)及び(b)と比較することによって示すように、摩擦力低減に対する効果は驚くほど明確である。
【0060】
主要な流れの途絶はまた、モールドフラックス(22)の量、特に、浸漬ノズルの壁に対して液体金属に引きずり込まれるモールドパウダー(22p)の量を減少させると考えられ、これにより、モールドフラックス(22)層を安定的に維持するために補充される粉末の量が減少し、金属部品の汚染が低減し、かつモールドパウダー(22p)は非常に侵食性が高いため、浸漬ノズル壁の侵食率が低下する。
【0061】
この侵食の大幅な低減により、浸漬ノズルの必要な耐用年数を維持するために必要な耐食性スリーブ(2)の厚さがそれに応じて低減されることが可能になる。第2の材料は、一般に、管状部分(1)の第1の材料よりも高価であるため、これは、金属板及び部品の生産における節約をもたらす。
【表1】
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)-8(b)】
図9(a)-9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属をモールド又はタンディッシュに鋳造するための浸漬ノズルであって、前記浸漬ノズルが、
・第1の材料で作製された管状部分(1)であって、前記管状部分が、
・前記浸漬ノズルの第1の端部と第2の端部との間の管長(L1)にわたって長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・前記長手方向軸(Z)に沿って、前記第1の端部で又は前記第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から前記第2の端部で又は前記第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで延在する内側ボア(1b)を備える、管状部分(1)、
・前記第1の材料とは異なる、侵食に対してより耐性のある第2の材料で作製された耐食性スリーブ(2)であって、前記耐食性スリーブが、
・前記管状部分の全周に外接し、かつ前記管長(L1)よりも短いスリーブ長(L2)(すなわち、L2<L1)にわたって前記長手方向軸(Z)に沿って延在し、
・長径(DM)及び短径(dm)によって画定された最も薄い断面の凹部分(2r)を備え、前記長径に対する前記短径の比(dm/DM)が、0.7~1.0である、耐食性スリーブ(2)、を備え、
前記耐食性スリーブが、前記耐食性スリーブ(2)の円周の全体にわたって突出距離(a)だけ前記凹部分(2r)を越えて半径方向外向きに延在する少なくとも1つの環状突出部(2p)を備え、前記少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記第1の端部に最も近い位置にある1つ以上の山点と、前記第2の端部に最も近い位置にある対応する数の1つ以上の谷点との間で往復する前記管状部分の周りの軌道に従うことを特徴とする、浸漬ノズル。
【請求項2】
前記軌道が、波状軌道、又は好ましくは周期的な波状軌道であり、前記周期的な波状軌道が、
・隣接する山点と谷点との間の前記長手方向軸(Z)に沿って測定された、5mmを超える振幅(A)(すなわち、A>5mm)、及び
・円周の2π rad当たりの先端から谷までの周期の数として定義された周波数(P)であって、2π rad当たり1~20の先端~谷~先端の周期(すなわち、P=1~20)を含み、好ましくは、前記周波数(P)が、2~5を含む、周波数(P)によって画定されている、請求項1に記載の浸漬ノズル。
【請求項3】
前記スリーブ長(L2)に対する前記振幅(A)の振幅比(A/L2)が、2%~100%、好ましくは5%~50%である、請求項2に記載の浸漬ノズル。
【請求項4】
前記周期的な波状軌道が、丸みを帯びた波状軌道、好ましくは正弦曲線軌道、又はシェブロン軌道の形態であり、環状突出部(2p)の隣接する山点と谷点との間で測定された前記振幅(A)が、前記環状突出部(2p)の全ての隣接する山点及び谷点に対して好ましくは一定である、請求項2又は3に記載の浸漬ノズル。
【請求項5】
前記長手方向軸(Z)に沿って分布された1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の環状突出部(2p)を備え、2つ以上の突出部の場合、前記突出部が、互いに接触せず、好ましくは互いに同一であり、より好ましくは互いに対して平行である、請求項1~4のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項6】
前記長手方向軸(Z)を含む平面に沿った1つ以上の前記環状突出部(2p)の断面が、丸みを帯びた、台形の、正方形の、及び三角形のうちの1つ以上の中から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項7】
前記環状突出部(2p)が、前記凹部分(2r)の平均凹部直径(Dra)に対する前記環状突出部(2p)の前記突出距離(a)の比(a/Dra)が1~30%(すなわち、a/Dra=1~30%)、好ましくは5~20%であるように、前記凹部分(2r)から前記突出距離(a)だけ半径方向に突出し、前記平均凹部直径(Dra)が、前記凹部分(2r)の前記長径及び前記短径の平均として定義される(すなわち、Dra=1/2(DM+dm))、請求項1~6のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項8】
前記環状突出部(2p)が、前記凹部分(2r)から、5~50mm(すなわち、a=5~50mm)、好ましくは8~25mmの突出距離(a)だけ半径方向に突出する、請求項1~7のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項9】
前記管長(L1)に対する前記スリーブ長(L2)の長さ比(L2/L1)が、10~50%、好ましくは20~40%であり、少なくとも2つの環状突出部(2p)が、前記耐食性スリーブ(2)の前記スリーブ長(L2)にわたって分布されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項10】
前記長手方向軸(Z)に沿って測定された環状突出部(2p)の幅(b)が、5~50mm、好ましくは10~40mmであり、より好ましくは、前記幅(b)が、25±10mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項11】
前記第2の材料が、ジルコニアを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項12】
前記少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記浸漬ノズルの前記管状部分の周りに閉ループを形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の浸漬ノズル。
【請求項13】
溶融金属をモールド又はタンディッシュに連続鋳造する際の浸漬ノズルの侵食を低減するためのプロセスであって、前記プロセスが、
・浸漬ノズルの入口(1i)を、前記浸漬ノズルの出口(1o)がモールド(11)又はタンディッシュと流体連通する状態で、溶融金属容器(31)に結合すること、
・前記溶融金属容器から前記浸漬ノズルのボア(1b)を介して前記モールド又は前記タンディッシュに金属を鋳造すること、を含み、
・前記浸漬ノズルが、先行請求項のいずれか一項に記載のものであり、少なくとも1つの環状突出部(2p)が、前記モールド(11)又は前記タンディッシュ内のスラグ(22)の高さよりも下に浸漬されることを特徴とする、プロセス。
【請求項14】
鋳造設備であって、
・溶融金属を包有し鋳造出口(31o)を備える溶融金属容器(31)、
・前記鋳造出口(31o)の下に設けられたモールド(11)又はタンディッシュ
・第1の端部で又は前記第1の端部に隣接して軸方向に開口する入口(1i)から第2の端部で又は前記第2の端部に隣接して開口する少なくとも1つの出口(1o)まで長手方向軸(Z)に沿って延在する内側ボア(1b)を備える浸漬ノズル、を備え、
・前記浸漬ノズルは、前記浸漬ノズルの前記入口(1i)が前記鋳造出口(31o)と流体連通するように、かつ前記浸漬ノズルの前記出口(1o)が前記モールド又は前記タンディッシュの内側にあるように、前記溶融金属容器に結合されており、
前記浸漬ノズルが、請求項1~10のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、鋳造設備。
【国際調査報告】