(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】接触分解反応器、システムおよび応用
(51)【国際特許分類】
C07C 4/06 20060101AFI20241024BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20241024BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20241024BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07C4/06
C07C11/04
C07C11/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532469
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2022136055
(87)【国際公開番号】W WO2023098843
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111466481.1
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】魏暁麗
(72)【発明者】
【氏名】張執剛
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼剣洪
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC26
4H006BA71
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD81
4H006BD82
4H006DA12
4H039CA29
4H039CK10
(57)【要約】
開示されているのは、流動接触分解反応器、ならびにそのシステムおよびその応用である。前記流動接触分解反応器は、接触分解反応ゾーンおよび出口ゾーンを、底部から頂部へ順次に備え、前記反応ゾーンの頂端は、前記出口ゾーンの底端と連通しており;前記反応ゾーンは、少なくとも1つの縮径反応部を備え、当該縮径反応部の内径は底端から頂端に向かって連続的に縮小し、且つ前記頂端の内径は前記出口ゾーンの内径以上であり、前記少なくとも1つの縮径反応部の全高と前記反応器の全高との比は0.15:1~0.8:1である。前記流動接触分解反応器およびシステムを使用することにより、エチレンおよびプロピレンなどの化学原料を、軽質石油炭化水素から効率的に製造することができ、接触分解反応のために使用する場合、原料と触媒との接触効率が高く、触媒反応の選択性が良好であり、エチレンおよびプロピレンなどの高付加価値生成物の収率が高く、メタンなどの副生成物の収率が低い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解反応ゾーンおよび出口ゾーンを底部から頂部へ順次に備える流動接触分解反応器であって、
前記反応ゾーンの頂端は、前記出口ゾーンの底端と連通しており、
前記反応ゾーンは、底端から頂端に向かって内径が連続的に縮小し且つ前記頂端の内径が前記出口ゾーンの内径以上である、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの縮径反応部を備え、
前記少なくとも1つの縮径反応部の全高と前記反応器の全高との比が、0.15:1~0.8:1、好ましくは0.2:1~0.75:1であり;
好ましくは、前記少なくとも1つの縮径反応部の全高と前記反応ゾーンの全高との比は、0.7:1~0.95:1、好ましくは0.75:1~0.90:1であり、および/または、
前記少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と頂端の内径との比は、独立して、1.2:1超~10:1、好ましくは1.5:1~5:1である、流動接触分解反応器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの縮径反応部の底部に触媒分配器が設けられており、
好ましくは、複数の縮径反応部が設けられる場合、前記触媒分配器は、流れの移動方向に沿って、最も上流側の縮径反応部の下部に設けられ;さらに好ましくは、前記触媒分配器は、各縮径反応部の下部に設けられている、請求項1に記載の流動接触分解反応器。
【請求項3】
触媒リフトゾーンをさらに備え、
前記触媒リフトゾーンの頂端は、前記反応ゾーンの前記底端と連通し、
少なくとも1つ、好ましくは1~3つの接触分解触媒用入口が、前記触媒リフトゾーンおよび/または前記反応ゾーンに設けられ、および
少なくとも1つ、好ましくは1~3つの原料用入口が、前記触媒リフトゾーンおよび/または前記反応ゾーンに設けられ、および
前記少なくとも1つの縮径反応部の底端における内径は、前記触媒リフトゾーンの内径よりも大きく、
好ましくは、前記少なくとも1つの縮径反応部の頂端における内径は、前記触媒リフトゾーンの内径以上であり、
さらに好ましくは、n個の縮径反応部が設けられ、ここでn≧2であり、触媒用の追加の入口および/または原料用の追加の入口が、流れの移動方向に沿って、第2番目~第n番目の縮径反応部の少なくとも1つの底部、好ましくはそれぞれの1つの底部に設けられている、請求項1または2に記載の流動接触分解反応器。
【請求項4】
少なくとも1つ、好ましくは1~3つの追加材料用入口が、前記反応ゾーンの上部に設けられており、
前記少なくとも1つの追加材料用入口と、前記反応ゾーンの頂端との間の距離は、独立して、前記反応ゾーンの全高の0~20%、好ましくは0~15%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの縮径反応部は、等脚台形形状の縦断面を有する中空円錐台形状であり;前記少なくとも1つの縮径反応部の頂端の内径と高さとの比は、独立して、0.005~0.3:1、好ましくは0.02~0.2:1であり;前記少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と高さとの比は、独立して、0.015~0.25:1、好ましくは0.05~0.2:1であり;前記少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と頂端の内径との比は、独立して、1.2:1超~10:1、好ましくは1.5:1~5:1であり;
好ましくは、前記少なくとも1つの縮径反応部の高さと前記反応器の全高との比は、独立して、0.15:1~0.8:1、例えば0.2:1~0.75:1であり;
さらに好ましくは、前記少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と前記反応器の全高との比は、独立して、0.01:1~0.5:1、好ましくは0.05:1~0.2:1であり;
さらに好ましくは、前記少なくとも1つの縮径反応部の頂端における内径は、独立して、0.2~5メートル、好ましくは0.4~3メートルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器。
【請求項6】
前記触媒リフトゾーンの内径と高さとの比は、0.02~0.4:1、好ましくは0.05~0.2であり;前記触媒リフトゾーンの高さと前記反応器の全高との比は、0.01~0.2:1、好ましくは0.05~0.15:1であり;
好ましくは、前記触媒リフトゾーンの内径は0.2~5m、好ましくは0.4~3mである、請求項3~4のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器。
【請求項7】
前記触媒リフトゾーンは、第1の移行部を介して前記反応ゾーンに接続され、当該第1の移行部は、等脚台形形状の縦断面を有し、当該等脚台形の側辺の外傾斜角αが5~85°、好ましくは15~75°である、逆さの中空円錐台形である、請求項3~5のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器。
【請求項8】
前記出口ゾーンの内径と高さとの比は、0.01~0.3:1であり、前記出口ゾーンの高さと前記反応器の全高との比は、0.05:1~0.5:1、好ましくは0.1:1~0.35:1であり、
好ましくは、前記出口ゾーンの内径は、0.2~5メートル、好ましくは0.4~3メートルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器。
【請求項9】
接触分解反応装置、触媒分離装置、ストリッピング装置、任意に反応生成物分離装置、および再生装置を備える接触分解システムであって、前記接触分解反応装置は、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの、請求項1~8のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器を備え、
好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの燃料油用入口は、前記ストリッピング装置の下部および/または前記ストリッピング装置と前記再生装置との間の接続パイプラインに設けられる、接触分解システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つ、好ましくは1~3つの燃料油用入口は、前記ストリッピング装置の下部に設けられ、且つ前記少なくとも1つの燃料油用入口と前記ストリッピング装置の底端との間の距離は、独立して、前記ストリッピング装置の高さの0~30%、好ましくは5~25%である、請求項9に記載の接触分解システム。
【請求項11】
前記触媒分離装置は、前記流動接触分解反応器と同軸上に配置されたまたは高位置および低位置で前記流動接触分解反応器と並列に配置された、沈降器を備える、請求項9または10に記載の接触分解システム。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の流動接触分解反応器、好ましくは請求項9~11のいずれか一項に記載の接触分解システムの流動接触分解反応器において、炭化水素含有原料および接触分解触媒を接触および反応させる工程を含み、
好ましくは、前記原料は、C4-C20炭化水素からなる群から選択される、接触分解方法。
【請求項13】
前記流動接触分解反応器は請求項4において定義づけられ、且つ前記方法は、反応案内剤を前記流動接触分解反応器の追加材料用入口を通して前記流動接触分解反応器に供給する工程をさらに含み、前記反応案内剤は、水および石油留分からなる群から選択され、石油留分油は、ナフサ、中間留分、ガス油、スラリー油、またはそれらの組合せからなる群から選択され、
好ましくは、前記反応案内剤および原料は、0.03~0.3:1、好ましくは0.05~0.2:1の重量比で供給される、請求項12に記載の接触分解方法。
【請求項14】
前記ストリッピング装置の下部および/または前記接触分解システムの前記ストリッピング装置と前記再生装置との間の前記接続パイプラインに設けられた燃料油用入口を通して燃料油を注入し、その結果、ストリッピングされた使用済み触媒および前記燃料油が再生のために再生装置に入る工程をさらに含み、
好ましくは、再生された触媒は、680~780℃の温度である、請求項12または13に記載の接触分解方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、石油化学の分野に関する。特に、本開示は、流動接触分解反応器、当該流動接触分解反応器を備える接触分解システム、およびそれらの応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
エチレンおよびプロピレンは石油化学工業における最も基本的な原料であり、様々な重要な有機化学品を生産するための基盤である。エチレンおよびプロピレンを生産するための生産規模、生産量、および技術水準は、その国の石油化学工業の発展水準を測るための重要な指標である。中国のエチレンに関する生産能力および生産量は世界第2位、プロピレンに関する生産能力および生産量は世界第1位であるが、国家の経済発展と中国人の生活水準の向上に伴う需要をまだ満たすことができない。2020年に、中国におけるエチレンおよびプロピレンの等価需要はそれぞれ5,863万トンおよび4,750万トンである。等価需要に基づくと、エチレンおよびプロピレンの自給率はそれぞれ約51.4%および79.9%である。したがって、オレフィンの生産は需要を満たすにはまだ不十分である。現在、ナフサなどの軽質炭化水素の水蒸気分解は、依然としてエチレンおよびプロピレンのための主な生産技術である。分解に必要な温度を達成するために、分解炉は炉管の加熱に化石燃料を使用することがある。そのため、水蒸気分解炉は二酸化炭素の主な排出源となり、エネルギー消費量が多く、生成物の選択性に乏しく、生成物中にメタンが多量に生成される。そのため、研究者はナフサのような軽質炭化水素を接触分解してオレフィンを製造する技術を継続的に開発している。
【0003】
中国特許出願CN106221786Aは、ナフサを転化する方法を開示している。ナフサの接触分解を、低炭素アルカンの水蒸気分解ならびに高炭素アルカンおよび高炭素オレフィンの接触分解と組み合わせて、低炭素オレフィン、軽質芳香族炭化水素および高オクタン価ガソリンを得る。ほとんどの反応物は、比較的低温での接触分解の間に転化される。したがって、全体としてエネルギー消費量を削減することができる。
【0004】
中国特許出願CN111484386Aは、ナフサ含有原料を転化するための装置を開示している。この転化プロセスでは、ナフサ含有原料を高速流動床反応器中で処理して、生成ガスと再生が必要な触媒とを生成する。その後、再生が必要な触媒の一部は、スチームストリッピング後に高速流動床反応器に戻され、別の一部は再生装置に導かれる。この装置により解決される技術的課題は、熱分解反応がナフサ接触分解に与える影響を低減し、生成物中のメタンの収率を低減することである。
【0005】
中国特許出願CN109280561Aは、ナフサまたは軽質炭化水素を原料として用いる低温触媒反応によりプロペンを調製し、且つ芳香族炭化水素を併産するプロセスを開示している。原料であるナフサまたは軽質炭化水素は、熱交換器上での熱交換および/またはヒーターによる加熱に供された後、固定床反応器に送られて、特定の触媒の存在下で低温接触反応を受け、反応生成物は分離システムを通過して、エチレン、プロペン、C4-5炭化水素ならびに副生成物であるトルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素が得られ、C4-5炭化水素の一部は反応器にリサイクルされる。
【0006】
中国特許出願CN111715152Aは、アルカンの脱水素と炭化水素の接触分解とによってオレフィンを調製するための複合反応器を開示しており、アルカンの接触脱水素-分解によってオレフィンを調製するための反応装置は、接触脱水素-分解のための反応器と、沈降器部とを備える。沈降器部は反応器の上に位置する。反応器は脱水素反応部と分解反応部とを備え、脱水素反応部は分解反応部の下に位置し、再生触媒立て管の一端は脱水素反応部と接続されている。この関連方法は、脱水素反応および接触分解反応の両方に有益である。
【0007】
水蒸気分解と比較して、ナフサの固定床接触分解は反応温度がより低いという特徴がある。しかし、低炭素アルカンの転化率が低い場合がある。接触分解をナフサの水蒸気分解と組み合わせることにより、エチレンの収率をある程度向上させることが可能である。しかし、炭素排出の問題があり得る。アルカンの脱水素と組み合わせることは、有望な技術的経路かもしれない。しかし、この脱水素と分解とを組み合わせるためのメカニズムについては、触媒およびプロセス技術の観点で未だ模索中である。
【0008】
ナフサのような軽質原料は分子が小さく、反応活性化エネルギーが高い。これらはより高い反応温度を必要とし、多くの場合、副生成物メタン収率が高くなる可能性がある。接触分解反応は正のエンタルピー変化を伴い、且つ大量の熱を必要とする可能性がある。分解プロセスから生成されるコークスは、反応-再生システムの熱収支要件を満たせないことが多い。ナフサのような軽質炭化水素の接触分解反応では、コークスの生成量が少なく、そのため大量の追加燃料油が必要となる。接触分解において触媒の活性成分としてモレキュラーシーブが使用されているため、再生装置内での燃料油の燃焼によるホットスポットは、モレキュラーシーブ由来の骨格アルミニウムを徐々に破壊する可能性がある。その結果、触媒活性が徐々に低下し、転化率がさらに低下する可能性がある。したがって、ナフサなどの軽質原料を接触分解し、より高い転化率と選択性とを得るための技術の改良と開発が、継続的に求められている。上記の既存技術は、石油系炭化水素原料を接触分解反応により軽質オレフィンに転化するための方法および触媒を提案している。しかし、これらは、軽質原料の分解中の反応熱量不足およびメタンの高収率の問題を解決できていない。
【0009】
〔発明の概要〕
本開示は、エチレンおよびプロピレンを生成するための軽質原料の接触分解における反応選択性を改善し且つメタンの収率を低減することができる、流動接触分解反応器、システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記の目的を達成するために、1つの態様において、本開示において、接触分解反応ゾーンおよび出口ゾーンを底部から頂部へ順次に備える流動接触分解反応器であって、前記反応ゾーンの頂端は前記出口ゾーンの底端と連通しており、前記反応ゾーンは、底端から頂端に向かって内径が連続的に縮小し且つ前記頂端の内径が前記出口ゾーンの内径以上である、少なくとも1つの縮径反応部を備え、前記少なくとも1つの縮径反応部の全高と反応器の全高との比が0.15:1~0.8:1である、流動接触分解反応器が提供される。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の全高と反応ゾーンの全高との比は、0.7:1~0.95:1である。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の底部に触媒分配器が設けられる。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの追加材料用入口が反応ゾーンの上部に設けられ、ここで、少なくとも1つの追加材料用入口と反応ゾーンの頂端との間の距離は、独立して、反応ゾーンの全高の0~20%である。
【0014】
別の態様において、本開示において、接触分解反応装置、触媒分離装置、ストリッピング装置、任意に反応生成物分離装置および再生装置を備える接触分解システムであって、前記接触分解反応装置が本開示による少なくとも1つの流動接触分解反応器を備える、接触分解システムが提供される。
【0015】
好ましくは、ストリッピング装置の下部におよび/またはストリッピング装置を再生装置と接続する接続パイプラインに、少なくとも1つの燃料油用入口が設けられる。
【0016】
さらなる態様において、本開示において、本開示による流動接触分解反応器においてまたは本開示による接触分解システムの流動接触分解反応器において、炭化水素含有原料および接触分解触媒を接触および反応させる工程を含む、接触分解方法が提供される。
【0017】
本開示による流動接触分解反応器において、大きな底部空間を有することにより、流体の平均線速度が低下する、縮径反応部を備える。縮径反応部は、その中で触媒密度を効果的に増加させることができ、それによって、原料に対する触媒の比率を著しく増加させることができる。縮径反応部は、原料の一次分解反応を強化し、反応転化率を向上させるだけでなく、低炭素オレフィンの収率を向上させることもできる。さらに、縮径反応部の縮径構造は、反応油およびガスの反応ゾーンからの離脱を促進し、反応時間を短縮するのに有利である。同時に、縮径反応部は、触媒の逆混合を減少させ、一次反応で生成される低炭素オレフィンの二次転化反応を減少させ、低炭素オレフィンの選択率を向上させるのに有利である。
【0018】
本開示による流動接触分解反応器において、好ましくは、縮径反応部の底部に触媒分配器が設けられる。前記分配器と縮径反応部の特殊な構造との組合せは、縮径反応部において反応器蒸気と接触する触媒の乱流レベルを改善するのに役立つ。それは触媒の活性中心での原料分子の吸脱着頻度を高め、触媒表面における静電効果を弱め、触媒の表面拡散性能を向上させ、生成物の選択性を高め得る。
【0019】
本開示による流動接触分解反応器において、反応案内剤を接触分解反応ゾーンの上部に注入してもよい。反応案内剤は、反応器内の温度分布を効果的に改善することができ、それによって分解反応の経過を変化させ、メタンを低減させるという技術的効果をもたらす。さらに、石油留分を反応案内剤として使用する場合には、石油留分は燃料油の供給における役割も果たすことができ、ヒートバランスの改善に役立つ。
【0020】
本開示による接触分解システムでは、燃料油をストリッパーの下部に注入して、燃料油から触媒上に追加のコークスを形成させてもよい。再生装置に注入後、コークスは触媒床内に均一に分散され、酸素含有ガスの作用下で安定的に且つ均一に燃焼されて熱を放出してもよい。これにより、燃料油の分散と触媒上のコークスの燃焼とを相乗的に制御し、局所的なホットスポットが回避され、それによって触媒の性能が効果的に保護されてもよい。
【0021】
本開示による流動接触分解反応器およびシステムを使用することにより、軽質石油炭化水素からエチレンおよびプロピレンなどの化学原料を効率的に製造することができ、精製から化学原料製造への製油所の転換、発展および拡張を支援することができる。前記流動接触分解反応器およびシステムは石油化学原料不足の問題を解決するだけでなく、製油所の経済効果も向上させる。本開示による反応器およびシステムを接触分解反応に使用する場合、原料と触媒との高い接触効率、触媒反応の良好な選択性、エチレンおよびプロピレンなどの高付加価値生成物の高い収率、ならびにメタンなどの副生成物の低い収率が達成される。
【0022】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部であり、以下の詳細な説明とともに本発明を説明するが、その範囲を限定するものではない。図面において、
図1Aは、本開示による流動接触分解反応器の好ましい実施形態を概略的に示す;
図1Bは、本開示による流動接触分解反応器の別の好ましい実施形態を概略的に示す;
図2は、本開示による流動接触分解反応器のさらに好ましい実施形態を概略的に示す;
図3は、本開示の一実施形態による接触分解システムを概略的に示す;および
図4は、本開示の別の実施形態による接触分解システムを概略的に示す。
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
以下、添付の図面および実施形態に基づいて、本開示を詳細に説明する。本発明の特徴および利点は、発明の詳細な説明を通じてより明らかになるであろう。
【0024】
本明細書において特に使用される「実例となる」または「例示的な」という表現は、「実施例、実施形態、または説明として使用される」ことを意味する。本明細書に記載される「実例となる」または「例示的な」実施形態は、他の実施形態よりも良好である、または他の実施形態よりも優れていると解釈されてはならない。添付の図面には、実施形態の様々な態様が示されているが、特に断らない限り、図面は必ずしも縮尺通りではない。
【0025】
本明細書において開示された値(値の範囲の端点を含む)は、正確な値に限定されるものではなく、これらの正確な値に近い値、例えば、これらの正確な値の±5%以内のすべての可能な値を包含することを理解すべきである。本明細書において開示された値の範囲については、各範囲の端点間、各範囲の端点と個々の点との間、および個々の点間で組み合わせて、あたかもこれらの値の範囲が本明細書に具体的に開示されているかのように、1つまたは複数の新しい値の範囲を与えることが可能である。
【0026】
本明細書において使用される「上流」および「下流」という表現は、いずれも反応流の移動方向に基づく。例えば、反応流が底部から頂部に流れる場合、「上流」は下方の位置を表し、「下流」は上方の位置を表す。
【0027】
本明細書において使用される「等脚台形の側辺の外傾斜角α」という表現は、
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、等脚台形の下側の角を補完する角度を意味する。
【0028】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有し、用語が本明細書において定義され、その定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書において提供される定義を優先するものとする。
【0029】
さらに、以下に説明する本開示による異なる実施形態に関与する技術的特徴を、それらが互いに矛盾しない限り、組み合わせることが可能である。
【0030】
上述のように、第1の態様において、本開示において、接触分解反応ゾーンおよび出口ゾーンを底部から頂部へ順次に備える流動接触分解反応器であって、前記反応ゾーンの頂端は、前記出口ゾーンの底端と連通しており、前記反応ゾーンは、底端から頂端に向かって内径が連続的に縮小し且つ前記頂端の内径が前記出口ゾーンの内径以上である、少なくとも1つの縮径反応部を備える流動接触分解反応器が提供される。
【0031】
本開示による流動接触分解反応器において、接触分解反応ゾーンは流動床であり、好ましくは、希薄相輸送流動床、乱流流動床、高速流動床、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0032】
本開示によれば、少なくとも1つの縮径反応部は、接触分解反応ゾーンの主要部を構成する。例えば、反応ゾーンは、少なくとも1つの縮径反応部と、任意に、隣接する縮径反応部を接続する接続部と、任意に、反応ゾーンを反応器の他の部分(出口ゾーン、触媒リフトゾーンなど)と接続する移行部とから成ってよい。実施形態において、少なくとも1つの縮径反応部の全高と接触分解反応ゾーンの全高との比は、0.70:1~0.95:1、例えば0.75:1~0.9:1である。
【0033】
本開示による実施形態において、縮径反応部は、ほぼ円形の断面を有し、且つ底端および頂端に開口部を有する中空のカラムであり、その内径は、その底端からその頂端まで連続的に縮小している。具体的には、縮径反応部の内径は、直線的にまたは非直線的に、連続的に減少してもよい。直線的に減少した内径を有する縮径反応部の例は、中空円錐台形の反応部を覆ってもよい。好ましくは、反応ゾーンは、中空円錐台の少なくとも1つのセグメント、好ましくは1~3つのセグメントと、任意に、中空円錐台の隣接するセグメントを接続する接続部と、任意に、反応ゾーンを反応器の他の部分と接続する移行部とからなる円筒である。
【0034】
特定の理論に束縛されるものではないが、本開示による流動接触分解反応器において、縮径反応部(例えば、中空円錐台の反応部)は大きな底部空間を有し、その結果、流体の平均線速度が低下すると考えられる。その結果、その中での触媒密度を効果的に増加させることができ、それにより、原料に対する触媒の比率を大幅に増加させることができる。さらに、底部空間は、乱流流動化操作ゾーンまたは急速流動化操作ゾーンにあり、そこでは気泡の激しい合流および破壊が粒子の混合および逆混合の激化を導き、乱流の程度が増大する。したがって、これにより気固接触効率を高め、物質移動および熱移動を改善し、原料の一次分解反応を強化することができる。反応転化率を向上させるだけでなく、低炭素オレフィンの収率を増加させることができる。さらに、縮径反応部の縮径構造は、反応器蒸気の反応ゾーンからの離脱を促進し、反応時間を短縮するのに有利である。同時に、それは、気相および固相の移動方向を変えることができる。縮径反応部の底部では、縮径構造の加速効果により、一定の初速度を有する流れは中心に向かって集まることができる。したがって、従来のライザーにおけるコア-アニュラス構造が破壊される。これにより触媒の逆混合を低減させることができ、これは、一次反応において生成された低炭素オレフィンの二次転化反応を低減し、且つ低炭素オレフィンの選択性を向上させるのに有利である。
【0035】
好ましい実施形態において、触媒分配器は、流動接触分解反応器の少なくとも1つの縮径反応部の底部に設けられる。更に好ましくは、複数の縮径反応部が設けられる場合、触媒分配器は、流れの移動方向に沿って最も上流の縮径反応部の底部に設けられる。より更に好ましくは、触媒分配器は、各縮径反応部の底部に設けられる。
【0036】
このような好ましい実施形態において、縮径反応部の底部に設けられた分配器と縮径反応部の特殊な構造との組合せは、縮径反応部において反応器蒸気と接触する触媒の乱流レベルを向上させるのに役立つ。これにより、触媒の活性中心での原料分子の吸着脱離頻度を高め、触媒表面における静電効果を弱め、触媒の表面拡散性能を向上させ、生成物の選択性を高め得る。
【0037】
本開示において適用可能な触媒分配器は、一般的に使用される工業用流体分配器であってよく、例えば、平型分配器、アーチ型分配器、円盤型分配器、環状分配器、傘型分配器およびバブルキャップ分配器からなる群から選択される1つまたは複数の分配器であり、好ましくは、アーチ型分配器またはバブルキャップ分配器である。
【0038】
本開示によれば、流動接触分解反応器において触媒リフトゾーンは必要ではない。例えば、本開示による反応器は、ライザー反応器などの他の反応器と直列に使用される場合、接触分解反応ゾーンは、触媒リフトゾーンの使用を避けて、他の上流反応器の出口に直接接続されてもよい。特定の実施形態において、本開示による流動接触分解反応器は、触媒リフトゾーンを含まなくてもよい。そのような場合、少なくとも1つの接触分解触媒用入口および/または少なくとも1つの原料用入口を、接触分解反応ゾーンに、例えば反応ゾーンの底部に設けて、触媒および/または原料等が接触分解反応ゾーンに入りやすくしてもよい。もちろん、反応ゾーンは、触媒用入口および原料用入口と切りはなしてもよい。その代わりに、触媒および原料は、他の反応器の流れ中に運ばれる触媒および供給原料由来であってもよい。それらの実施形態はすべて本開示の保護範囲内である。
【0039】
好ましい実施形態において、流動接触分解反応器は、触媒リフトゾーンをさらに備え、触媒リフトゾーンの頂端は反応ゾーンの底端と連通しており、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの接触分解触媒用入口が触媒リフトゾーンおよび/または反応ゾーン(反応ゾーンの底部および/または中間部など)に設けられ、且つ少なくとも1つ、好ましくは1~3つの原料用入口が触媒リフトゾーンおよび/または反応ゾーン(反応ゾーンの底部および/または中間部など)に設けられ、少なくとも1つの縮径反応部の底端における内径が、触媒リフトゾーンの内径よりも大きい。さらに好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の頂端における内径は、触媒リフトゾーンの内径以上である。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、n個の縮径反応部が設けられ、ここでn≧2である場合、接触分解触媒用の追加の入口および/または原料用の追加の入口が、流れの移動方向に沿って、第2番目から第n番目の縮径反応部の少なくとも1つの底部、好ましくはそれぞれの1つの底部に設けられる。
【0041】
本開示によれば、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つまたはそれより多くの、原料用入口が、流動接触分解反応器中に設けられてもよく、少なくとも1つの原料用入口は、独立して、触媒リフトゾーンの頂部出口に、ならびに/または接触分解反応ゾーンの底部および/もしくは中間部に設けられてもよい。特定の実施形態において、複数(2~3個など)の原料用入口が流動接触分解反応器内に設けられ、複数の原料用入口は、触媒リフトゾーンおよび/または接触分解反応ゾーンに、同じ高さまたは異なる高さで独立して配置される。例えば、1つの原料用入口を触媒リフトゾーンの頂部出口に配置し、別の原料用入口を接触分解反応ゾーンにおける2つの縮径反応部間の接続部に配置してもよい。このようにすることで、異なる性質を持つ原料を異なる原料用入口から別々に供給することが可能となる。例えば、C4-C12炭化水素原料は触媒リフトゾーンにおける原料用入口を通して供給されてもよく、C12-C20炭化水素原料は反応ゾーンの中間の原料用入口を通して供給されてもよい。
【0042】
好ましい実施形態において、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの追加材料用入口が反応ゾーンの上部に設けられ、少なくとも1つの追加材料用入口と反応ゾーンの頂端との間の距離は、独立して、反応ゾーンの全高の0~20%、好ましくは0~15%である。
【0043】
本開示によれば、反応案内剤は、追加材料用入口を通して、流動接触分解反応器の接触分解反応ゾーンの上部に注入されてもよい。このようにすることで、反応器内の温度分布を効果的に改善することができ、その結果、分解反応の経過を変化させ、メタンを低減させるという技術的効果をもたらすことができる。本開示において適用可能な反応案内剤は、水および石油留分からなる群から選択してもよく、石油留分は、ナフサ、中間留分、ガス油、スラリー油、およびこれらの組合せからなる群から選択される。さらに、石油留分の油が反応案内剤として使用される場合、それらはまた燃料油を供給する役割を果たすことができ、反応器-再生装置システムにおけるヒートバランスの改善に役立つ。
【0044】
本開示によれば、生成されたC4および/またはC5留分はまた、追加材料用入口を通して流動接触分解反応器の反応ゾーンの上部に注入されてもよい。このようにして、低炭素オレフィンの収率および選択性をさらに向上させ、且つ原料の利用率を向上させることが可能である。
【0045】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの縮径反応部の全高と反応器の全高との比は、0.15:1~0.8:1、例えば0.2:1~0.75:1である。
【0046】
好ましい実施形態において、接触分解反応ゾーンの全高は2~50メートル、好ましくは5~40メートル、より好ましくは8~20メートルであり、流動接触分解反応器の全高は40~70メートルである。
【0047】
好ましい実施形態において、接触分解反応ゾーンは1~10、好ましくは1~5つ、より好ましくは1~3つの縮径反応部を備える。反応ゾーンが2つ、3つまたはそれより多い縮径反応部を備える場合、各縮径反応部は、同じまたは異なる高さ、内径および構造を有してもよく、これらは本開示において厳密に限定されるものではない。
【0048】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と頂端の内径との比は、独立して、1.2:1超~10:1、好ましくは1.5:1~5:1である。さらに好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と反応器の全高との比は、独立して、0.01:1~0.5:1、好ましくは0.05:1~0.2:1である。
【0049】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの縮径反応部は、等脚台形形状の縦断面を有する中空円錐台形である。少なくとも1つの縮径反応部の頂端の内径と高さとの比は、独立して、0.005~0.3:1、好ましくは0.02~0.2:1である。少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と高さとの比は、独立して、0.015~0.25:1、好ましくは0.02~0.2である。少なくとも1つの縮径反応部の底端の内径と頂端の内径との比は、独立して1.2:1超~10:1、好ましくは1.5:1~5:1である。さらに好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の高さと反応器の全高との比は、独立して、0.15:1~0.8:1、例えば0.2:1~0.75:1である。さらに好ましくは、少なくとも1つの縮径反応部の頂端の内径は、独立して、0.2~5メートル、好ましくは0.4~3メートルである。
【0050】
好ましい実施形態において、触媒リフトゾーンの内径と高さとの比は0.02~0.4:1、好ましくは0.04~0.3である。触媒リフトゾーンの高さと反応器の全高との比は、0.01:1~0.2:1、好ましくは0.05:1~0.15:1である。さらに好ましくは、触媒リフトゾーンの内径は0.2~5メートル、好ましくは0.4~3メートルである。
【0051】
好ましい実施形態において、触媒リフトゾーンは、第1の移行部を介して接触分解反応ゾーンに接続される。第1の移行部は、等脚台形形状の縦断面を有し、当該等脚台形の側辺の外傾斜角αが5~85°、好ましくは15~75°である、逆さの中空円錐台の形状である。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態において、反応ゾーンの頂部における内径は出口ゾーンの内径よりも大きく、反応ゾーンおよび出口ゾーンは第2の移行部を介して接続される。好ましくは、第2の移行部は、等脚台形形状の縦断面を有し、当該等脚台形の側辺の外傾斜角αが95~175°、好ましくは105~165°である、中空円錐台形である。
【0053】
好ましい実施形態において、出口ゾーンの内径と高さとの比は0.01~0.3:1、好ましくは0.05~0.2である。出口ゾーンの高さと反応器の全高との比は0.05:1~0.5:1、好ましくは0.1:1~0.35:1である。さらに好ましくは、出口ゾーンの内径は0.2~5メートル、好ましくは0.4~3メートルである。
【0054】
本開示によれば、出口ゾーンの出口端は、開放されていてもよく、またはサイクロン分離器の入口に直接接続されていてもよい。
【0055】
特定の理論に拘束されるものではないが、本開示による流動接触分解反応器において、出口ゾーンは、粒子に対する重力の影響を打ち消す十分な速度場を生成し得ると考えられる。出口ゾーンは、流れに上向きの力を与えて、壁摩擦および半径方向拡散の影響を相殺する可能性がある。したがって、流れは、「プラグフロー」に類似した形態で反応器内を流れることができ、これは二次反応を低減することができる。
【0056】
以下、本開示に係る流動接触分解反応器の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、これらの好ましい実施形態に限定されない。
【0057】
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、好ましい実施形態において、本開示による流動接触分解反応器は、触媒リフトゾーンI、接触分解反応ゾーンIIおよび出口ゾーンIIIを、底部から頂部へ備え、触媒リフトゾーンIの頂端は反応ゾーンIIの底端と連通し、反応ゾーンIIの頂端は出口ゾーンIIIの底端と連通する。触媒リフトゾーンIの下部には触媒用入口110が設けられ、入口110を通して供給された触媒は、触媒リフト媒体によって上昇し、反応ゾーンIIに輸送される。触媒リフトゾーンIは、内径と高さとの比が0.02~0.4:1であり、その高さと前記反応器の全高との比が0.01:1~0.2:1であり、および内径が0.2~5メートルである、中空円筒の構造としてもよい。
【0058】
触媒リフトゾーンIは、第1の移行部I-1を介して反応ゾーンIIに接続されており、第1の移行部I-1は、等脚台形の側辺の外傾斜角αが5~85°である等脚台形の縦断面を有している。原料用入口9が、触媒リフトゾーンIの上部である、第1移行部I-1に、および/または反応ゾーンIIの下部に、設けられている。さらに、原料用の追加の入口16が、
図2に示す反応器の反応ゾーンIIの中間部、すなわち上方の縮径反応部の底端に、他の原料またはリサイクル流を供給するために設けられている。
【0059】
反応ゾーンIIは、少なくとも1つの縮径反応部を含む。縮径反応部は、ほぼ円形の断面を有し且つ底端と頂端とに開口部を有する中空のカラムであり、その内径はその底端からその頂端に向かって連続的に縮小している。反応ゾーンIIにおける各縮径反応部の底端の内径は、触媒リフトゾーンIの内径よりも大きく、各縮径反応部の頂端の内径は、触媒リフトゾーンIの内径および出口ゾーンIIIの内径に等しい。
【0060】
少なくとも1つの追加材料用入口10は、頂部出口付近の反応ゾーンIIの上部に設けられている。少なくとも1つの追加材料用入口10は、追加材料用入口10と反応ゾーンIIの頂端との間の距離が反応ゾーンの全高の0~20%になるように、独立して配置される。
【0061】
特に、
図1Aおよび
図1Bに示すように、好ましい実施形態において、反応ゾーンIIは、1つの縮径反応部100を備え、この縮径反応部100は、等脚台形の縦断面を有する中空円錐台形である。縮径反応部100は、頂端の内径D
220とその高さ(
図1Aおよび
図1Bでは、縮径反応部100の高さは反応ゾーンIIの高さh
IIに等しい)との比が0.005~0.3:1であり、底端の内径D
210とその高さとの比は0.015~0.25:1であり、底端の内径D
210と頂端の内径D
220との比は1.2:1超~10:1であり、その高さと反応器の全高hとの比は0.15:1~0.8:1である。
図1Aにおける反応器と比較して、
図1Bにおける反応器は、縮径反応部100の底部に設けられた触媒分配器300をさらに備える。
【0062】
図2に示すように、別の好ましい実施形態において、反応ゾーンIIは、直列に接続された2つの縮径反応部100、100’を備える。2つの縮径反応部は、いずれも等脚台形形状の縦断面を有する中空円錐台形である。頂端の内径D
220およびD
220’と、対応する縮径反応部の高さh
1およびh
1’との比は、それぞれ独立に0.005~0.3:1である。底端の内径D
210およびD
210’と、対応する縮径反応部の高さh
1およびh
1’との比は、それぞれ独立に0.015~0.25:1である。底端の内径D
210およびD
210’と頂端の内径D
220およびD
220’との比は、それぞれ独立に1.2:1超~10:1である。縮径反応部100、100’の高さh
1およびh
1’と反応器の全高hとの比は、独立して0.15:1~0.8:1である。縮径反応部100、100’の底端の内径D
210およびD
210’と反応器の全高hとの比は、それぞれ独立に0.01:1~0.5:1である。反応ゾーンIIの全高h
IIと反応器の全高hとの比は、0.15:1~0.8:1である。縮径反応部100、100’は、接続部II-1によって接続されており、この接続部II-1は、縦断面が等脚台形であり、当該等脚台形の側辺の外傾斜角αは5~85°である。
【0063】
図1A、1Bおよび2に示すように、流動接触分解反応器の出口ゾーンIIIは中空円筒の形状であり、出口ゾーンIIIは、内径と高さh
IIIとの比が0.01~0.3:1であり、出口ゾーンの高さh
IIIと反応器の全高hとの比が0.05:1~0.5:1である。
【0064】
第2の態様において、本開示において、接触分解反応装置、触媒分離装置、ストリッピング装置、任意に反応生成物分離装置、および再生装置を備える接触分解システムであって、前記接触分解反応装置が少なくとも1つ、好ましくは1~3つの、本開示による流動接触分解反応器を備える、接触分解システムが提供される。
【0065】
本開示による接触分解システムにおいて、1つまたは複数の流動接触分解反応器を備えていてもよく、本開示による1つの流動接触分解反応器と他の既存の流動接触分解反応器との組合せであってもよく、または本開示による複数の流動接触分解反応器の組合せであってもよい。これらの反応器は、並列に接続され、さらに触媒分離装置に接続されてもよい。
【0066】
好ましい実施形態において、少なくとも1つ、好ましくは1~3つの燃料油用入口が、使用済み触媒に追加の燃料油を供給するために、ストリッピング装置の下部に、および/またはストリッピング装置と再生装置との間の接続パイプラインに設けられる。このようにして、使用済み触媒が再生装置に入る前に、当該使用済み触媒上に燃料油からコークスを追加形成することができる。再生装置に入った後、燃料油は触媒床内に均一に分散し、酸素含有ガスの作用下で安定的且つ均一に燃焼し、熱を放出することができる。その結果、燃料油の分散と触媒上のコークスの燃焼とが相乗的に制御され、局所的なホットスポットが回避され、それによって触媒の使用性能が効果的に保護される。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの、好ましくは1~3つの燃料油用入口は、ストリッピング装置の下部に設けられ、少なくとも1つの燃料油用入口からストリッピング装置の底端までの距離は、独立して、ストリッピング装置の高さの0~30%、好ましくは5~25%である。
【0068】
本開示による接触分解システムにおいて、ストリッピング装置、触媒分離装置、再生装置、反応生成物分離装置などは、当業者に周知の装置であってよい。それらの装置間の接続は、当技術分野で公知の方法で行うことができる。例えば、触媒分離装置は、サイクロン分離器と出口急速分離器とを含んでもよい。特定の実施形態において、触媒分離装置は、流動接触分解反応器と同軸に配置されるかまたは高位置および低位置で並列に配置された沈降器を備える。反応生成物分離装置は、蒸留塔などの、当該技術分野において一般的に使用される種々の反応器蒸気分離装置であってよい。反応生成物の蒸留範囲に応じて、乾燥ガス、液化ガス、分解ガソリン、分解ディーゼル、および分解重油などの成分を分離するために、乾燥ガス用出口、液化ガス用出口、分解ガソリン用出口、分解ディーゼル用出口、および分解重油用出口を備えていてもよい。
【0069】
本開示に係る接触分解システムの好ましい実施形態が、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明される。しかしながら、本開示の範囲は、これらの好ましい実施形態に限定されない。
【0070】
図3および
図4に示すように、好ましい実施形態において、本開示による接触分解システムは、流動接触分解反応器1、触媒分離装置5、沈降器3、ストリッピング装置4および再生装置2を備え、
図3に示す流動接触分解反応器1は、
図1Aまたは
図1Bに示す反応器であり、
図4に示す流動接触分解反応器1は、
図2に示す反応器である。
【0071】
触媒用入口13は流動接触分解反応器1の触媒リフトゾーンIに設けられ、原料用入口9はその底端に設けられ、反応器の蒸気および触媒用の出口150は接触分解反応ゾーンIIの頂端に設けられる。
図4に示す接触分解反応ゾーンIIについては、原料のための追加の入口16が反応ゾーンIIの中間部にさらに設けられている。触媒分離装置5は、流動接触分解反応器1の反応流出液から反応器蒸気および触媒を分離するために使用される。沈降器3は、触媒分離装置5によって分離された触媒を沈降させ、ストリッピング装置4にそれらを送るために使用される。ストリッピング装置4は、油蒸気を回収するために触媒をストリッピングするために使用される。再生装置2は、使用済み触媒傾斜管12を介してストリッピング装置4に接続されている。使用済み触媒傾斜管12は、ストリッピング装置4から再生装置2に使用済み触媒を送って再生するために使用される。再生装置2はまた、再生触媒立て管13を介して流動接触分解反応器1の触媒リフトゾーンIに接続されている。再生触媒立て管13は、再生された触媒を流動接触分解反応器1に戻して反応させるために再利用するために使用される。
【0072】
分離装置5によって分離された反応器蒸気(即ち、反応生成物)は、集気室6に集められ、蒸気ライン7を通って後続の反応生成物分離装置(図示せず)に輸送されて分離される。再生装置2では、パイプライン14を通して導入された酸素含有ガスの作用下で使用済み触媒が燃焼されて、再生触媒が得られる。再生触媒は、再生触媒立て管13を通して反応器1に送られる。排ガスはパイプライン15を通じてエネルギー回収システムに排出される。
【0073】
少なくとも1つの燃料油用入口11が、ストリッピング装置4の下部に設けられ、少なくとも1つの燃料油用入口11とストリッピング装置の底端との間の距離L11は、独立して、ストリッピング装置の高さh4の0~30%である。
【0074】
第3の態様において、本開示において、本開示による流動接触分解反応器、好ましくは本開示による接触分解システムの流動接触分解反応器において、炭化水素含有原料および接触分解触媒を接触および反応させる工程を含む、接触分解方法が提供される。
【0075】
本開示による流動接触分解反応器およびシステムは、種々の原料の接触分解反応、例えば、軽質炭化水素もしくは軽質留分油、酸素含有炭化水素、シェールオイル、水素化VGO、水素化分解ガス油、水素化分解ボトム、または上記の材料の1つ以上の混合原料を接触分解して低炭素オレフィンを生成する反応、特に、低炭素オレフィンを生成するための軽質炭化水素または軽質留分油を接触分解して低炭素オレフィンを生成する反応に適している。
【0076】
例えば、軽質炭化水素または軽質留分油は、ガス状炭化水素、蒸留範囲が25~350℃の石油炭化水素、酸素含有化合物、バイオマスからの留分油または廃プラスチック生成油であってよい。ガス状炭化水素は、飽和液化ガス、不飽和液化ガス、C4留分、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。石油炭化水素は、直留ナフサ、直留灯油、ワンスランプロセスで得られる直留ディーゼル、またはそれらの組み合わせ、ならびに二次処理されたデカント油、ラフィネート油、水素化分解された軽質ナフサ、ペンタン油、コークス化ガソリン、フィッシャー・トロプシュ合成油、接触分解された軽質ガソリン、水素化ガソリン、水素化ディーゼル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましい実施形態において、原料はC4-C20の軽質原料油からなる群から選択される。
【0077】
好ましい実施形態において、流動接触分解反応器の接触分解反応ゾーンは、反応温度510~750℃、反応時間0.5~10秒、触媒と油との重量比10:1~50:1、および水と油との重量比0.05:1~2.0:1の反応条件で操作してもよい。
【0078】
さらに好ましい実施形態において、接触分解反応ゾーンは、反応温度550~700℃、反応時間1~5秒、触媒と油との重量比20:1~40:1、および水と油との重量比0.2:1~0.8:1の反応条件で操作してもよい。
【0079】
好ましい実施形態において、接触分解触媒は、触媒の乾燥重量を基準として、乾燥ベースで計算して、1~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%のゼオライト;5~99重量%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~70重量%の無機酸化物;および0~70重量%、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~50重量%の粘土を含む。
【0080】
さらに好ましい実施形態において、ゼオライトは、メソポーラスゼオライトおよび任意にマクロポーラスゼオライトを含み、メソポーラスゼオライトは、ZSMシリーズのゼオライト、ZRPゼオライトおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択され、マクロポーラスゼオライトは、希土類Y型ゼオライト、希土類水素Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、高ケイ素Y型ゼオライトおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。さらに好ましくは、乾燥ベースで、メソポーラスゼオライトは、ゼオライトの総重量に対して10~100重量%、好ましくは50~90重量%の量で存在する。
【0081】
本開示において、メソポーラスゼオライトおよびマクロポーラスゼオライトは、当技術分野における従来の定義に従う。すなわち、メソポーラスゼオライトは約0.5~0.6nmの平均細孔径を有し、マクロポーラスゼオライトは約0.7~1.0nmの平均細孔径を有する。マクロポーラスゼオライトの例としては、希土類Y(REY)ゼオライト、希土類水素Y(REHY)ゼオライト、種々の方法で得られる超安定Yゼオライト、および高ケイ素Yゼオライトからなる群から選択される1種または複数種であってよい。メソポーラスゼオライトは、ZSMシリーズゼオライトなどのMFI構造を有するゼオライト、および/またはZRPゼオライトからなる群から選択されてもよい。任意に、上記のメソポーラスゼオライトは、リンなどの非金属元素および/または鉄、コバルト、およびニッケルなどの遷移金属元素でさらに修飾されていてもよい。ZRPゼオライトに関するより詳細な説明は、米国特許US5232675Aに記載されている。ZSMシリーズゼオライトは、好ましくは、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48および類似構造を有する他のゼオライトからなる群から選択される1種または複数種のゼオライトの混合物である。ZSM-5に関するより詳細な説明は、米国特許US3702886Aに記載されている。
【0082】
本開示によれば、無機酸化物はバインダーとして機能し、好ましくはシリカ(SiO2)および/またはアルミナ(Al2O3)である。粘土は、マトリックス(すなわち、支持体)として機能し、好ましくは、カオリンおよび/または多水和カオリンである。
【0083】
好ましい実施形態において、本方法は、反応案内剤を、流動接触分解反応器の追加材料用入口を通して、流動接触分解反応器に供給する工程をさらに含み、前記反応案内剤は、水および石油留分からなる群から選択され、前記石油留分は、ナフサ留分、中間留分、ガス油留分、スラリー油、またはそれらの組合せよりなる群から選択される。
【0084】
さらに好ましい実施形態において、反応案内剤および原料は0.03~0.3:1、好ましくは0.05~0.2の重量比で供給される。
【0085】
好ましい実施形態において、本方法はさらに、ストリッピング装置の下部および/または接触分解システムのストリッピング装置と再生装置との間の接続パイプラインに設けられた燃料油用入口を通して燃料油を注入し、その結果、取り除かれた使用済み触媒および燃料油が、再生のために再生装置に入る工程を含む。さらに好ましくは、注入される燃料油の量および供給される原料の量は、0.05~0.2:1の重量比である。
【0086】
好ましい実施形態において、再生装置により再生された再生触媒は、680~780℃の温度である。
【0087】
本開示による接触分解方法の好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、これらの好ましい実施形態に限定されない。
【0088】
図3に示すように、好ましい実施形態において、触媒リフト媒体は、パイプライン8を通して触媒リフトゾーンIの底部から流動接触分解反応器1内に送られ、触媒リフト媒体は、乾燥ガス、水蒸気、またはそれらの混合物であってもよい。高温の再生触媒は、再生触媒立て管13から触媒リフトゾーンIの下部に送られ、触媒リフト媒体の上昇作用を受けて上方に移動する。予熱された軽質原料油および噴霧化された蒸気などの原料は、供給パイプライン9を通して触媒リフトゾーンIの上部および/または反応ゾーンIIの底部に注入される。これらは流動接触分解反応器内で触媒と混合および接触され、反応ゾーンIIを底部から頂部へと通過する際に接触分解反応を受ける。反応生成物は上方に流れ、追加材料用注入口10を通して注入された反応案内剤と接触して、時間内に反応を終了させる。コークスとともに堆積した得られた触媒および反応器蒸気は、出口ゾーンIIIを通して、触媒と炭化水素蒸気との分離のためにサイクロン分離器などの分離装置5に送られる。分離された蒸気は、集気室6と蒸気ライン7とを通って装置から排出され、後続の分離システムに入る。分離された使用済み触媒はストリッパーに送られる。ストリッピングされた使用済み触媒は、燃料油用入口11を通して注入された燃料油と接触してコークスをさらに堆積させた後、使用済み触媒傾斜管12を通って再生装置2に送られて、再生装置の底部で空気14と混合してコークスを燃焼させる。再生された触媒は、再生触媒立て管13を通って反応器1にリサイクルされる。再生の排ガスはパイプライン15を通してエネルギー回収システムに送られる。
【0089】
図4に示すように、別の好ましい実施形態において、触媒リフト媒体は、パイプライン8を通して触媒リフトゾーンIの底部から流動接触分解反応器内に送られ、触媒リフト媒体は乾燥ガス、水蒸気、またはそれらの混合物であってもよい。再生触媒立て管13からの高温の再生触媒は、冷却されるか、または冷却されることなく、触媒リフトゾーンIの下部に送られ、触媒リフト媒体の上昇作用を受けて上方に移動する。予熱された軽質原料油および噴霧化された蒸気などの原料は、供給パイプライン9を通して触媒リフトゾーンIの上流および/または第1の縮径反応部100の底端に注入され、流動接触分解反応器内で触媒との混合、接触および反応に供される。反応流は、第2の縮径反応部100’の底端のパイプライン16を通して導入されたリサイクルC4と混合され、さらに反応する。反応生成物は上方に流れ、パイプライン10を通して注入された反応案内剤と接触して分解反応を時間内に終了させる。使用済み触媒および反応器蒸気は、出口ゾーンIIIを通って、炭化水素蒸気から触媒を分離するための、サイクロンなどの分離装置5に送られる。分離された反応器蒸気は、集気室6およびベーパーライン7を通って、装置から排出され、後続の分離システムに送られる。分離された使用済み触媒はストリッパーに送られる。ストリッピングされた使用済み触媒は、燃料油用入口11を通して注入された燃料油と接触してコークスをさらに堆積させた後、使用済み触媒傾斜管12を通って再生装置2に送られて、再生装置の底部で空気14と混合して、再生のためにコークスを燃焼させる。再生された触媒は、再生触媒立て管13を通って反応器1にリサイクルされる。再生の排ガスはパイプライン15を通してエネルギー回収システムに送られる。
【0090】
本開示による流動接触分解反応器、システムおよび方法を用いることにより、軽質石油炭化水素からエチレンおよびプロピレンなどの化学原料を効率的に製造することができ、精製から化学原料製造への製油所の転換、発展および拡張を支援することができる。それは、石油化学原料不足の問題を解決するだけでなく、製油所の経済的利益を向上させる。
【0091】
特定の好ましい実施形態において、本開示において、以下の技術的解決策が提供される:
1.流動接触分解反応器であって、
底部から頂部へ順次に、
任意で、触媒リフトゾーンと、
接触分解反応ゾーンであって、当該反応ゾーンは、少なくとも1つの縮径反応部を備え、当該縮径反応部は、ほぼ円形の断面を有し且つ底端および頂端に開口部を有する中空のカラムであり、その内径は、その底端からその頂端に向かって連続的に縮小している、接触分解反応ゾーンと、
出口ゾーンと、を備え、
前記任意の触媒リフトゾーンは前記反応ゾーンの底端と連通し、前記反応ゾーンの頂端は前記出口ゾーンと連通し、少なくとも1つの原料用入口が前記任意の触媒リフトゾーンおよび/または前記反応ゾーンの底部に設けられ;
前記反応ゾーンの底端における断面の内径は、前記任意の触媒リフトゾーンの断面の内径以上であり、頂端における断面の内径は、前記任意の触媒リフトゾーンの断面の内径および前記出口ゾーンの断面の内径以上であり;
1つまたは複数の反応案内剤用入口が前記反応ゾーンの上部に設けられ、当該1つまたは複数の反応案内剤用入口と前記反応ゾーンの出口端との距離が、前記反応ゾーンの全高の0~20%である、流動接触分解反応器。
【0092】
2.前記反応ゾーンの底端における断面の内径と前記反応器の全高との比が0.01:1~0.5:1であり;前記反応ゾーンの全高と前記反応器の全高との比が0.15:1~0.8:1である、項目1に記載の流動接触分解反応器。
【0093】
3.前記反応ゾーンは、1~3つの縮径反応部を備える、項目1に記載の流動接触分解反応器。
【0094】
4.前記縮径反応部は、等脚台形形状の縦断面を有する中空円錐台形であり、前記縮径反応部の頂端の断面の内径と高さとの比は、独立して0.005~0.3:1であり、前記縮径反応部の底端の断面の内径と高さとの比は、独立して0.015~0.25:1であり、頂端の断面の内径に対する底端の断面の内径の比は、独立して1.2より大きく10以下であり、前記縮径反応部の高さと前記反応器の全高との比は、独立して0.15:1~0.8:1である、項目3に記載の流動接触分解反応器。
【0095】
5.前記縮径反応部の頂端の断面の内径は、独立して0.2~5メートルである、項目4に記載の流動接触分解反応器。
【0096】
6.前記触媒リフトゾーンの内径と高さとの比は0.02~0.4:1であり、前記触媒リフトゾーンの高さと前記反応器の全高との比は0.01:1~0.2:1である、項目1に記載の流動接触分解反応器。
【0097】
7.前記触媒リフトゾーンの内径は、0.2~5メートルである、項目6に記載の流動接触分解反応器。
【0098】
8.前記触媒リフトゾーンは、第1の移行部を介して前記反応ゾーンに接続され、当該第1の移行部は、等脚台形形状の縦断面を有し、当該等脚台形の側辺の外傾斜角αは5~85°である、項目6に記載の流動接触分解反応器。
【0099】
9.前記出口ゾーンの断面の内径と高さとの比は0.01~0.3:1であり、前記出口ゾーンの高さと前記反応器の全高との比は0.05:1~0.5:1である、項目1に記載の流動接触分解反応器。
【0100】
10.前記出口ゾーンの断面の内径は0.2~5メートルである、項目9に記載の流動接触分解反応器。
【0101】
11.接触分解反応装置、触媒分離装置、ストリッピング装置、任意に反応生成物分離装置、および再生装置を備える接触分解システムであって、前記接触分解反応装置は、項目1~10のいずれかによる1つまたは複数の流動接触分解反応器を備える、接触分解システム。
【0102】
12.少なくとも1つの燃料油用入口は、前記ストリッピング装置の下部におよび/または前記ストリッピング装置と前記再生装置との間の接続パイプラインに設けられる、項目11に記載の接触分解システム。
【0103】
13.前記少なくとも1つの燃料油用入口は、前記ストリッピング装置の下部に設けられ、
前記燃料油用入口と前記ストリッピング装置の底端との間の距離は、独立して、前記ストリッピング装置の高さの0~30%である、項目12に記載の接触分解システム。
【0104】
14.前記触媒分離装置は、前記流動接触分解反応器と同軸上に配置された、または高位置および低位置で前記流動接触分解反応器と並列に配置された、沈降器を備える、項目12または13に記載の接触分解システム。
【0105】
15.項目12~14のいずれかに記載の接触分解システムにおいて、原料および触媒を接触および反応させる工程を含む、接触分解方法。
【0106】
16.前記原料は、C4-C20炭化水素からなる群から選択される、項目15に記載の接触分解方法。
【0107】
17.反応案内剤は、流動接触分解反応器の反応案内剤用入口を通して流動接触分解反応器に供給され、前記反応案内剤は、水および石油留分油からなる群から選択され、前記石油留分油は、ナフサ、中間留分、ガス油およびスラリー油からなる群より選択される1種または複数種である、項目16に記載の接触分解方法。
【0108】
18.前記反応案内剤および前記原料は、0.03~0.3:1の重量比で供給される、項目17に記載の接触分解方法。
【0109】
19.少なくとも1つの燃料油用入口が、ストリッピング装置の下部に、および/または接触分解システムのストリッピング装置と再生装置との間の接続パイプラインに設けられ;
当該方法は、前記燃料油用入口を通して燃料油を注入し、その結果、ストリッピングされた使用済み触媒および燃料油が再生のために再生装置に入る工程をさらに含む、項目16に記載の接触分解方法であり
【0110】
20.再生装置により再生された再生触媒は、680~780℃の温度である、項目19に記載の触媒分解方法。
【0111】
〔実施例〕
以下の実施例は、本開示をさらに説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0112】
以下の実施例および比較例において、使用した原料油は直留ナフサであり、その特性は表1に記載した。使用した触媒は市販の接触分解触媒であり、中国石油化工股フン有限公司の触媒支公司から入手可能であり、商品ブランドはNCCであった。
【0113】
【0114】
実施例1
表1に示す原料油およびNCC触媒をパイロットプラントで実験に供した。パイロットプラントは、
図3に示すような構成であり、使用した反応器は以下のような構造であった。
【0115】
反応器は全高10メートルであり、且つ高さ2メートルおよび内径0.2メートルの触媒リフトゾーンと、高さ5メートル、頂端の内径0.2メートルおよび底端の内径0.3メートルの反応ゾーンと、高さ3メートルおよび内径0.2メートルの出口ゾーンとを備える。上方の追加材料用入口は、当該上方の追加材料用入口と反応ゾーンの頂端の出口との距離が0.5メートルとなる位置に設けた。
【0116】
ストリッパーにおいて、燃料油用入口は、当該燃料油用入口とストリッパーの底端との間の距離がストリッパーの高さの10%となる位置に設けた。
【0117】
運転中に、注入した反応案内剤の量と供給した原料の量とは0.05:1(重量比)の比率であり、注入した燃料油の量は供給した原料の量の6%であった。
【0118】
運転条件および生成物の分布を表2に示した。表2から分かるように、本実施例では、エチレンの収率は25.53重量%、プロピレンの収率は24.21重量%、ならびにメタンおよびコークスの収率はそれぞれ10.07重量%および3.70重量%であった。
【0119】
実施例2
表1に示す原料油およびNCC触媒をパイロットプラントで実験に供した。パイロットプラントは、
図4に示すような構成であり、使用した反応器は以下のような構造であった。
【0120】
反応器は、全高10メートルであり、且つ高さ2メートルおよび内径0.2メートルの触媒リフトゾーンと;高さ5メートルであり、且つ高さh1が2.5メートル、頂端での内径が0.2メートルおよび底端での内径が0.3メートルである中空円錐台の第1のセグメントならびに高さh2が2.45メートル、頂端での内径が0.2メートルおよび底端での内径が0.3メートルである中空円錐台の第2のセグメントを備える反応ゾーンと;高さ3メートルおよび内径0.2メートルの出口ゾーンと、を備えていた。上方の追加材料用入口は、当該上方の追加材料用入口と中空円錐台の第2のセグメントの頂端の出口との間の距離が0.2メートルとなる位置に設けた。
【0121】
ストリッパーにおいて、燃料油用入口は、当該燃料油用入口とストリッパーの底端との間の距離がストリッパーの高さの10%となる位置に設けた。
【0122】
運転中に、注入した反応案内剤の量と供給した原料の量とは0.05:1(重量比)の比率であり、注入した燃料油の量は供給した原料の量の6%であった。
【0123】
運転条件および生成物の分布を表2に示した。表2から分かるように、本実施例では、エチレンの収率は26.53重量%、プロピレンの収率は26.13重量%、ならびにメタンおよびコークスの収率はそれぞれ10.77重量%および3.86重量%であった。
【0124】
実施例3
反応ゾーンIIの縮径反応部の底部にバブルキャップ触媒分配器を追加したこと以外は、実施例1に準じて実験を行なった。
【0125】
運転条件および生成物の分布を表2に示した。表2から分かるように、本実施例では、エチレンの収率は25.76重量%、プロピレンの収率は24.96重量%、ならびにメタンおよびコークスの収率はそれぞれ9.16重量%および3.65重量%であった。
【0126】
比較例1
表1に示す原料油およびNCC触媒をパイロットプラントで実験に供した。使用した反応器は従来のライザー反応器であった。予熱した原料油を、ライザー反応器の下部に送り、接触分解触媒と接触させて接触分解反応を行なった。反応後に得られた流れを、後続の触媒分離装置および生成物分離装置に送った。運転条件および生成物の分布を表2に示した。
【0127】
表2から分かるように、本比較例では、エチレンの収率はわずか18.19重量%、プロピレンの収率はわずか20.14重量%、ならびにメタンおよびコークスの収率はそれぞれ12.95重量%および3.92重量%であった。
【0128】
比較例2
表1に示す原料油およびNCC触媒をパイロットプラントで実験に供した。使用した反応器は、直径が大きくなる反応部を有する可変直径ライザー反応器であった(中国特許CN1152119C号参照)。予熱した原料油を、ライザー反応器の下部に送り、接触分解触媒と接触させて接触分解反応を行なった。反応後に得られた流れを、後続の触媒分離装置および生成物分離装置に送った。運転条件および生成物の分布を表2に示した。
【0129】
表2から分かるように、本比較例では、エチレンの収率は18.96重量%、プロピレンの収率はわずか22.15重量%、ならびにメタンおよびコークスの収率はそれぞれ15.70重量%および5.01重量%であった。
【0130】
【0131】
上記の実施例および比較例の結果から分かるように、本開示による流動接触分解反応器およびシステムを炭化水素含有原料の接触分解反応に使用した場合、エチレンおよびプロピレンの収率は大幅に向上したが、メタンおよびコークスの収率は低下した。さらに、本開示による流動接触分解反応器およびシステムにおいて、縮径反応部の底部に触媒分配器を設けることで、生成物の分布にさらなる改善をもたらし、メタンおよびコークスの収率が減少し、エチレンおよびプロピレンの収率が増加した。
【0132】
本発明の好ましい実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態の特定の詳細に限定されるものではない。本発明の技術的範囲内で、本発明の実施形態に様々な簡単な変更を加えることができる。このような簡単な変更は、本発明の保護範囲内である。
【0133】
また、上記の実施形態で説明した様々な特徴は、互いに矛盾しない限り、任意の適切な方法で組み合わせることができることにも留意すべきである。本開示では、不必要な繰り返しを避けるために、可能な組み合わせを詳細に説明しない。
【0134】
さらに、本発明の精神から逸脱しない限り、本発明の実施形態の任意の組み合わせも可能であり、本発明の開示とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1A】
図1Aは、本開示による流動接触分解反応器の好ましい実施形態を概略的に示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示による流動接触分解反応器の別の好ましい実施形態を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本開示による流動接触分解反応器のさらに好ましい実施形態を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による接触分解システムを概略的に示す。
【
図4】
図4は、本開示の別の実施形態による接触分解システムを概略的に示す。
【国際調査報告】