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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】便秘を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20241024BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P1/10
A61P43/00 121
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533112
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 AU2022051445
(87)【国際公開番号】W WO2023097375
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】2021903906
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022902480
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519367599
【氏名又は名称】セルバトゥス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンレイソン,ウェイン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB03
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD86
4B018ME14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA10
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA34
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA72
4C087ZC75
(57)【要約】
本明細書において、便秘、又は便秘の少なくとも1つの症状、任意に特発性便秘を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの組合せ、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を被験体に投与することを含む、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における便秘を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)の組合せ、又は前記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記便秘は、機能性便秘である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記便秘は、慢性便秘である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体は、特発性便秘を患っている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体は、便秘型過敏性腸症候群(constipation-predominant irritable bowel syndrome)を患っている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を投与することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、液体若しくは固体の単位剤形、食品、又は飲料の形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarranginis)、又は前記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)から選択される1種以上の追加薬剤を投与することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
便秘を患う被験体における便秘の少なくとも1つの症状を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの組合せ、又は前記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項10】
前記便秘の少なくとも1つの症状は、腹部不快感、腹痛、腹部膨満感、腹部痙攣、痛みを伴う排便(bowel movements)、排便中又は排便後の直腸灼熱感、不完全排便、排便時のいきみ、及び/又は排便不能を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記便秘は、機能性便秘である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記便秘は、慢性便秘である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体は、特発性便秘を患っている、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体は、便秘型過敏性腸症候群を患っている、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を投与することを含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、液体若しくは固体の単位剤形、食品又は飲料の形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・プランタルム、及びラクトバチルス・パラファラギニス、又は前記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)から選択される1種以上の追加薬剤を投与することを更に含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、便秘の治療及びその症状の緩和を補助する方法であって、1種以上の微生物、又は1種以上の微生物が培養された培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液を含む組成物を投与することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘は、低頻度の便通及び/又は硬便の通過による痛み及び困難を伴う排便をもたらす消化管の障害である。便秘は一次性便秘又は二次性便秘のいずれかと呼ばれる場合がある。二次性便秘は、典型的には、オピオイドなどの医薬の使用に応答して発生したり、又は甲状腺機能低下症などの別の病態に起因する合併症である場合もある。一次性便秘は、特発性便秘又は便秘型過敏性腸症候群のいずれかとして分類される。
【0003】
機能性便秘は、地域社会全体に重大な健康上及び経済的な負担となり、多数の研究では、オーストラリアの成人人口のほぼ4分の1が便秘に悩まされていると報告されている(Werth et al., 2019, BMC Gastroenterol 19:75)。地域社会内での便秘の負担は、性別、年齢、社会経済的地位、文化、食事、及び環境を含む多数の要因に基づき大きく異なる(Peppas et al., 2008, BMC Gastroenterol 8:5)。便秘を医療関係者に報告する人の割合は低く、多くの人がサプリメント摂取及び/又は市販の緩下剤の使用を通じてその症状を自己管理することを試みる。オーストラリアにおける最近の研究では、2024人の参加者のうち37%が便秘の症状を示し、排便を達成するのに緩下剤を使用する必要があると報告されたが、この群のうち医療関係者に相談したのはわずか13%であった(Werth et al., 2019(同上))。機能性便秘には患者への大きな負担が付き物であり、身体的にも精神的にも生活の質に影響が及ぼされ、サプリメント及び治療が必要になるため経済的にも影響が及ぼされる。
【0004】
特発性便秘及び便秘型過敏性腸症候群はいずれも機能性便秘の範疇に属し、病因を容易に特定することができない慢性の病態である。推定によれば、機能性便秘には成人人口の最大4分の1が罹患しているらしく、罹患者に多大な身体的かつ精神的な負担をかけている。機能性便秘は更に、大腸通過正常型便秘、大腸通過遅延型便秘、又は排便障害として分類され得る。大腸通過正常型便秘は機能性便秘の最も一般的な形態であると考えられており、便が正常な速度で腸を通過するものの、患者は硬便又は排便困難などの症状を訴え、膨満感及び腹部の不快感又は痛みを伴うことが多い。
【0005】
便秘の罹患者の多くは医療関係者に相談せずに、市販のサプリメント及び医薬を使用して病態を自己管理することを試みる。最も一般的には、緩下剤が投与される。症状の重症度に応じて最初は緩下剤の使用が指示される場合もあるが、典型的には1週間未満の一時的な使用に留めるべきである。緩下剤の長期使用は、電解質の不均衡及び便秘の悪化を含む消化器系の問題を引き起こす可能性があり、推奨されない。緩下剤の使用には、吐き気、膨満、腹痛、及び嘔吐などの副作用も伴う。
【0006】
慢性便秘の治療において、食生活の改善及び食物繊維の摂取量の増加を含む生活習慣の調整が指示されることもある。小麦ふすま又はサイリウムハスクなどの不溶性繊維の形態の食物繊維の摂取は、膨化作用によって緩下効果を有し、それによって消化管輸送の増加を促すと考えられている。しかしながら、機能性便秘を患う患者を食物繊維で治療すると、特に一部の繊維(すなわち、短鎖炭水化物)の急速な発酵によりガスの過剰な発生がもたらされる可能性がある便秘型過敏性腸症候群を患う患者においては、膨満感及び腹痛の症状が悪化する可能性がある。
【0007】
機能性便秘の治療には多くの選択肢があるが、安全性の懸念又は効力が不十分なため、大部分の罹患者はそれらの治療に満足していない。便秘についての新たな治療法の開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、被験体における便秘を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)の組合せ、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
便秘は機能性便秘であってよい。便秘は慢性便秘であってよい。
【0010】
被験体は特発性便秘又は便秘型過敏性腸症候群を患っていてよい。
【0011】
特定の実施形態において、上記方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を投与することを含む。
【0012】
上記方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を液体若しくは固体の単位剤形、食品又は飲料の形態で投与することを含み得る。
【0013】
上記方法は更に、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarranginis)から任意に選択される1種以上のラクトバチルス属の種、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液などの1種以上の追加薬剤を投与することを含み得る。
【0014】
本開示の別の態様は、便秘を患う被験体における便秘の少なくとも1つの症状を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの組合せ、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
便秘の少なくとも1つの症状は、腹部不快感、腹痛、腹部膨満感、腹部痙攣、痛みを伴う排便、排便中又は排便後の直腸灼熱感、不完全排便、排便時のいきみ、及び/又は排便不能を含み得る。
【0016】
便秘は機能性便秘であってよい。便秘は慢性便秘であってよい。
【0017】
被験体は特発性便秘又は便秘型過敏性腸症候群を患っていてよい。
【0018】
特定の実施形態において、上記方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を投与することを含む。
【0019】
上記方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む組成物を液体若しくは固体の単位剤形、食品又は飲料の形態で投与することを含み得る。
【0020】
上記方法は更に、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・プランタルム、及びラクトバチルス・パラファラギニスから任意に選択される1種以上のラクトバチルス属の種、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液などの1種以上の追加薬剤を投与することを含み得る。
【0021】
本開示の別の態様は、便秘又はその少なくとも1つの症状を治療するのに使用される場合の、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランス、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を含む組成物を提供する。
【0022】
本開示の態様及び実施形態によれば、上記方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む微生物バイオ治療組成物を被験体に投与することを含み得る。微生物バイオ治療組成物は、例えば、液体若しくは固体の単位剤形、食品又は飲料の形態で投与され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と同様又は同等の方法及び材料はいずれも本開示の実施又は試験に使用することができるが、代表的な方法及び材料について説明する。
【0024】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指示するのに使用される。例えば、「an element」は1つ以上の要素を意味する。
【0025】
本明細書の文脈において、「約」という用語は、同じ機能又は結果を達成する文脈において、記載された値と同等であると当業者が考える数値の範囲を指すものと理解される。
【0026】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上特段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語、及び「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などの変形形態は、指定された整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群が含まれることを意味するものと理解されるが、その他の整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を一切除外することを意味するものではない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語には、その意味の範囲内で、無毒であるが、所望の効果及び/又は生理学的応答を与えるのに十分な組成物の量が含まれる。必要とされる正確な量は、治療される種、被験体の年齢及び全般的な状態、治療される病態の重症度、投与される特定の薬剤、及び投与方式などのような要因に応じて被験体ごとに異なることになる。どのような場合においても、適切な「有効量」を、当業者が日常的な実験のみを使用して決定することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「治療(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は、便秘の重症度の軽減を含む、便秘又は便秘の少なくとも1つの症状を療治するか、又はその他にその進行を阻止、遅延、若しくは退行させるあらゆる全ての適用を指す。本開示による治療は、便秘又は便秘に関連する症状の解消をもたらし得る。一方で、治療は便秘の1つ以上の症状の改善をもたらし得る。したがって、治療は必ずしも、便秘が完全に解消されるか又は回復するまで被験体が治療されることを意味するわけではない。
【0029】
「任意に」という用語は、本明細書では、続いて記載される特徴が存在しても若しくは存在しなくてもよく、又は続いて記載される事象若しくは状況が発生しても若しくは発生しなくてもよいことを意味するのに使用される。したがって、本明細書は、特徴が存在する実施形態及び特徴が存在しない実施形態、並びに事象又は状況が発生する実施形態だけでなく、事象又は状況が発生しない実施形態も含み、包含するものと理解される。
【0030】
本明細書の文脈において、「微生物バイオ治療」という用語は、その最も広い解釈が与えられるべきであり、有効量で被験体に投与されると被験体における健康上の利益が促進される微生物細胞集団若しくは調製物、又は微生物細胞集団若しくは調製物の成分を指すものと理解される。細胞集団は、1つの種又は株からの細菌、あるいは多数の種若しくは株からの細菌を含み得る。
【0031】
本明細書の文脈において、「プレバイオティクス」という用語は、その最も広い解釈が与えられるべきであり、消化器系における有益な共生細菌の成長及び/又は活動を刺激するあらゆる非消化性物質を指すものと理解される。
【0032】
本明細書の文脈において、「食品」及び「飲料」という用語には、限定されるものではないが、健康食品及び健康飲料、機能性食品及び機能性飲料、並びに特定保健用途向けの食品及び飲料が含まれる。本発明のそのような食品又は飲料がヒト以外の被験体に使用される場合、これらの用語は飼料を含むように使用され得る。
【0033】
本明細書では、便秘を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの組合せ、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を被験体に投与する、方法が提供される。
【0034】
また、本明細書では、便秘の少なくとも1つの症状を治療する方法であって、有効量のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの組合せ、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)を便秘を患う被験体に投与する、方法も提供される。
【0035】
本開示による治療を必要とする被験体は、当該技術分野において知られるどの方法によって便秘を患っていると診断されてもよい。診断には、医師による臨床評価(例えば、身体検査又はX線検査を含む)及び/又は1つ以上の自己申告式質問票への回答が含まれ得る。例えば、便秘の診断を、ローマIII診断基準(Longstreth et al., 2006, Gastroenterol 130:1480-1491)又はローマIV診断基準(Lacy et al., 2016, Gastroenterol 150:1393-1407)を使用して行うことができる。受け取る側が熟練していれば、本開示の範囲が、便秘のどの特定の診断尺度への参照によっても限定されないと認識されるであろう。
【0036】
本開示により治療される被験体は、急性又は慢性の便秘に罹患していてもよい。便秘は、機能性便秘、痙攣性便秘、弛緩性便秘、過敏性腸症候群に伴う便秘、器質性便秘、腸麻痺性イレウスに伴う便秘、先天性消化管機能不全に伴う便秘、及びイレウスに伴う便秘、又はそれらの組合せであってよい。特定の実施形態において、便秘は機能性便秘であってよい。特定の実施形態において、被験体は特発性便秘又は便秘型過敏性腸症候群を患っていてよい。
【0037】
本開示の方法は、便秘を患う被験体における便秘の1つ以上の症状を治療又は改善することができる。そのような症状としては、例えば、腹部不快感、腹痛、腹部膨満感、腹部痙攣、痛みを伴う排便、排便中又は排便後の直腸灼熱感、不完全排便、排便時のいきみ、及び/又は排便不能を挙げることができる。症状としては、例えば、排便に伴う身体的不快感、感情的不快感、及び/又は心理社会的不快感、及び排便の質又は頻度に伴うイライラ、困惑、及び/又はストレスを含む、便秘を患う被験体の日々の生活の質に影響を及ぼす症状を挙げることもできる。
【0038】
本開示によれば、便秘の治療は、便秘の改善若しくは解消、又は便秘の少なくとも1つの症状の改善若しくは解消を含み得る。便秘又は便秘の症状の解消又は改善を、当業者に知られるあらゆる手段によって判定することもできる。これには、例えば、医師による臨床評価(例えば、身体検査又はX線検査を含む)及び/又は1つ以上の自己申告式質問票への回答が含まれ得る。例えば、被験体は、患者便秘症状評価(PAC-SYM)質問票(Frank et al., 1999, Scand J Gastroenterol 34:870-877)及び/又は患者便秘QOL評価(PAC-QOL)質問票(Dubois et al., 2010, Neurogastroenterol Motil 22 e54-63)に回答することができる。PAC-SYMは、患者報告症状の重症度を評価し、腹部、直腸、及び便の3つの症状グループに分けられ、それぞれ5段階の重症度スケールで採点される。PAC-QOLは、便秘患者の日常生活における便秘の影響及び負担の尺度を提供する。質問は、身体的不快感に関する4項目、心理社会的不快感に関する8項目、治療満足度に関する5項目、及び心配事及び不快感に関する11項目にカテゴリー分けされ、それぞれ5段階の重症度スケールで採点される。PAC-SYM及びPAC-QOLのそれぞれについて、最小重要差(MID)を決定することによって肯定的な奏効の判定を得ることができる(例えば、Yiannakou et al., 2017, Ailment Pharmacol Ther 46:1103-1111、Marquis et al., 2005, Scand J Gastroenterol 40:540-551を参照)。当業者であれば、本開示の範囲が、被験体における便秘、排便、又は便秘症状の改善を評価又は判定するどの特定の手段への参照によっても限定されないと理解するであろう。
【0039】
一実施形態において、本開示による便秘の治療は、PAC-SYMにおいて評価されるパラメーターの1つ以上の改善を含み得る。別の実施形態において、本開示による便秘の治療は、PAC-QOLにおいて評価されるパラメーターの1つ以上の改善を含み得る。
【0040】
幾つかの実施形態において、本開示の方法は、有効量の本明細書に記載される組成物を1日1回以上の用量、任意に1日1回又は1日2回の用量で投与することを含む。例えば、組成物を朝若しくは夕方に単回用量で投与しても、又は一日を通して間隔を空けて2回の用量で投与してもよい。
【0041】
典型的には、本開示の方法による組成物の投与は、少なくとも便秘の少なくとも1つの症状が改善するまで継続される。投与は、例えば、約7日間、約10日間、約14日間、約21日間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、又はそれより長く継続され得る。投薬計画は、被験体の必要に応じて、又は医師若しくはその他の医療専門家の助言に基づいて、投与の過程で修正又は変更される場合がある。
【0042】
本開示の方法は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランス、又は上記ラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)若しくは無細胞濾液(複数を含む)の投与を企図している。幾つかの分類学上の食い違い及び不確実性を考慮すると、L.ゼアエは他ではL.カゼイ(L. casei)と呼ばれることもある。しかしながら、これは確定しておらず、L.ゼアエは別物と見なされ得る(http://lactotax.embl.de/wuyts/lactotax/を参照)。本開示の目的では、L.ゼアエの命名法は保留される。
【0043】
特定の実施形態において、本開示の方法は、同じ組成物中でのラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの投与を企図している。
【0044】
ラクトバチルス・パラカゼイは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(Belgian Coordinated Collections of Microorganisms)(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31290として寄託されたL.パラカゼイSVT-09(他では代替名称SVT 04P1により参照される場合もある)であり得る。
【0045】
ラクトバチルス・ゼアエは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31295として寄託され、WO 2020/073088において既に記載されたL.ゼアエSVT 08Z1であり得る。
【0046】
ラクトバチルス・ディオリボランスは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31287として寄託されたL.ディオリボランスSVT-03(他では代替名称SVT 01D1により参照される場合もある)であり得る。
【0047】
以下の議論では、ラクトバチルス属の種、又はラクトバチルスが培養された培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液の投与の文脈、及びそれを含む組成物の文脈において、「ラクトバチルス」という用語は、本明細書で定義される特定のラクトバチルス属の種の細菌細胞(典型的には生細胞)自体を指すだけでなく、本明細書で定義される特定のラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清又は無細胞濾液を指すのにも使用され得る。上記ラクトバチルスが培養された培養培地から得られた培養上清又は無細胞濾液が使用される実施形態において、それぞれの種の細菌を一緒に若しくは別個に培養してもよく、又は一部を一緒に培養し、その他を別個に培養してもよい。したがって、多数の培養上清又は無細胞濾液を合わせることができる。
【0048】
また、本明細書では、本明細書で定義される1つ以上のラクトバチルス属の種の細菌細胞と、本明細書で定義される1つ以上のラクトバチルス属の種が培養された培養培地から得られた培養上清(複数を含む)又は無細胞濾液(複数を含む)とを合わせた組合せも企図される。
【0049】
本開示の方法は更に、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・プランタルム、及びラクトバチルス・パラファラギニスの1つ以上、又は上記ラクトバチルスが培養された培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液を投与することを含み得る。このような実施形態において、細菌を一緒に培養しても、又は別々に培養してもよい。
【0050】
ラクトバチルス・パラファラギニスは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31292として寄託されたL.パラファラギニスSVT-18(他では代替名称SVT 05P2により参照される場合もある)であり得る。
【0051】
ラクトバチルス・ブフネリは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31293として寄託されたL.ブフネリSVT-23(他では代替名称SVT 06B1により参照される場合もある)であり得る。
【0052】
ラクトバチルス・ラピは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31294として寄託されたL.ラピSVT-24(他では代替名称SVT 07R1により参照される場合もある)であり得る。
【0053】
ラクトバチルス・プランタルムは、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策(Federal Public Planning Service Science Policy)、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8(8 rue de la Science B-1000, Brussels, Belgium))で2020年8月10日に受託番号LMG P-31923として寄託されたL.プランタルムSVT 09P1であり得る。
【0054】
本開示の方法により投与される個々のラクトバチルス属の種の濃度は、使用される個々の種の個性及び数、被験体の一般的な健康及びウェルビーイング、治療される便秘の重症度、並びに組成物が投与される形態及び経路を含む様々な要因に依存することになる。どのような場合においても、適切な濃度を、当業者によって日常的な実験のみを使用して決定することができる。ほんの一例として、ラクトバチルス属の種の濃度、又は組合せの場合に存在するそれぞれの種の濃度は、約1×102cfu/ml~約1×1011cfu/mlであってよく、かつ約1×103cfu/ml、約2.5×103cfu/ml、約5×103cfu/ml、1×104cfu/ml、約2.5×104cfu/ml、約5×104cfu/ml、1×105cfu/ml、約2.5×105cfu/ml、約5×105cfu/ml、1×106cfu/ml、約2.5×106cfu/ml、約5×106cfu/ml、1×107cfu/ml、約2.5×107cfu/ml、約5×107cfu/ml、1×108cfu/ml、約2.5×108cfu/ml、約5×108cfu/ml、1×109cfu/ml、約2.5×109cfu/ml、又は約5×109cfu/ml、約1×1010cfu/ml、約1.5×1010cfu/ml、約2.5×1010cfu/ml、約5×1010cfu/ml、又は約1×1011cfu/mlであってよい。
【0055】
また、本開示によって、本明細書に記載されるラクトバチルス属の種の変異体の使用も企図される。本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、本明細書に開示され例示される種の天然に存在する変異体又は突然変異体と特別に開発された変異体又は突然変異体との両方を指す。変異体は、便秘の治療、便秘の少なくとも1つの症状の治療、又は便秘の少なくとも1つの症状の改善に関して同様の有利な特性を共有する限り、本明細書で例示される特定の種と同じ識別生物学的特性を有しても又は有しなくてもよい。本明細書で例示される変異体を調製するのに適した方法の実例としては、限定されるものではないが、挿入エレメント若しくはトランスポゾン又は相同組換えによって媒介される技術などの遺伝子組み込み技術、遺伝子を改変、挿入、欠失、活性化、又はサイレンシングする他の組換えDNA技術、種内プロトプラスト融合、紫外光若しくはX線の照射又はニトロソグアニジン、メチルメタンスルホネート、ナイトロジェンマスタードなどのような化学変異原での処理による突然変異誘発、及びバクテリオファージ媒介形質導入が挙げられる。適切かつ適用可能な方法は当該技術分野においてよく知られており、例えば、とりわけ、J. H. Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1972)、J. H. Miller, A Short Course in Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1992)、及びJ. Sambrook, D. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)に記載されている。
【0056】
また、本明細書で使用される「変異体」という用語には、本明細書に開示される種と系統学的に密接に関連する微生物株、並びにrRNA遺伝子、伸長因子及び開始因子の遺伝子、RNAポリメラーゼサブユニット遺伝子、DNAジャイレース遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子、並びにrecA遺伝子などの系統学的な情報を与える1つ以上のマーカーにおいて本明細書に開示される種と実質的な配列同一性を有する株も包含される。例えば、本明細書で企図される「変異体」株の16S rRNA遺伝子は、本明細書に開示される株と約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を共有し得る。
【0057】
本明細書に記載されるラクトバチルス属の種、及びそれらの組合せ、又は培養培地から得られた培養上清若しくは無細胞濾液は、典型的には、本開示によれば組成物の形態で投与される。種の組合せ、又は多数の種の培養から得られた培養上清若しくは無細胞濾液の実施形態において、投与される種、上清、又は濾液のそれぞれが同じ組成物中に含まれる必要がないことは、当業者には理解されるであろう。投与が別々である場合、投与は逐次又は同時であってよい。
【0058】
本開示により使用される組成物は、関連成分を混合し、得られた混合物を製剤化して被験体への投与に適した剤形にすることによって調製され得る。したがって、組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、及び/又はアジュバントを含み得る。担体、希釈剤、賦形剤、及びアジュバントは、組成物の他の成分と相容性であり、組成物が投与されるべき被験体に有害ではないという点で「許容可能」でなければならない。
【0059】
本開示により投与される組成物は、あらゆる適切な形態において、典型的には経口投与によって投与され得る。組成物は単位剤形で存在し得る。「単位用量」という用語は、ヒトでの使用に適した剤形の物理的に個別の単位を指し、各単位には有効量を提供するのに予め決められた量の組成物が含まれている。組成物は、あらゆる適切な形態において、典型的には固体形態又は液体形態で投与され得る。例えば、当業者によく知られる方法及び技術を使用して組成物を製剤化して、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、カプレット剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウエハース剤、顆粒剤、粉剤、ゲル剤、ペースト剤、溶剤、クリーム剤、スプレー剤、懸濁液剤、可溶性サシェ剤、ロゼンジ剤、発泡錠剤、チュアブル錠剤、多層錠剤などにすることができる。
【0060】
一例として、組成物は、使用者があらゆる種類の飲料若しくは食料品(例えば、水、フルーツジュース、又はヨーグルト)に混ぜるのに適した粉末形態、又は飲料若しくは追加の食料品が存在しない場合に粉末として消費するのに適した粉末形態で使用者に提供され得る。組成物を、様々な食料品及び/又は飲料品、栄養補助食品、サプリメント、食品添加物、及び市販の製剤に適宜組み込むことができる。食品又は食品添加物は、粉末などの固体形態又は液体形態であってもよい。飲料又は食品の種類の具体的な例としては、限定されるものではないが、水ベースの飲料、ミルクベースの飲料、ヨーグルトベースの飲料、その他の乳製品ベースの飲料、豆乳若しくはオートミルクなどの代替乳ベースの飲料、又はジュースベースの飲料、水、ソフトドリンク、炭酸飲料、及び栄養飲料(飲料の濃縮原液及びそのような飲料の調製用の乾燥粉末を含む)、クラッカー、パン、マフィン、ロールパン、ベーグル、ビスケット、シリアルなどの焼き製品、ミューズリーバー、健康食品バーなどのバー、ドレッシング、ソース、カスタード、ヨーグルト、プリン、包装済み冷凍食品、スープ、及び菓子類が挙げられる。
【0061】
特定の実施形態において、本開示により投与される組成物を、栄養サプリメントとして使用することができる。
【0062】
当業者には理解されるように、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤の選択は当業者によって容易に決定され得る。当業者であれば、従来の手法を使用して、本開示の方法に有用な適切な製剤を容易に決定することができるであろう。
【0063】
経口投与用の固体形態は、薬務において許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、フレーバー、コーティング剤、保存料、滑沢剤、及び/又は時間遅延剤(time delay agents)を含み得る。適切な結合剤としては、アカシアガム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又はポリエチレングリコールが挙げられる。適切な甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、ステビア、キシリトール、アスパルテーム、又はサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、又は寒天が挙げられる。適切な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又はリン酸二カルシウムが挙げられる。適切なフレーバー剤としては、ペパーミントオイル、ウィンターグリーンオイル、チェリーフレーバー、オレンジフレーバー、又はラズベリーフレーバーが挙げられる。適切なコーティング剤としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそれらのエステルのポリマー若しくはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック、又はグルテンが挙げられる。適切な保存料としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。適切な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又はタルクが挙げられる。適切な時間遅延剤としては、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートが挙げられる。
【0064】
経口投与用の液体形態は液体担体を含み得る。適切な液体担体としては、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、落花生油、ココナッツ油などの油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、又はそれらの混合物が挙げられる。経口投与用の懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁剤を更に含み得る。適切な懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、又はアセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、若しくはポリオキシエチレンソルビトールモノラウレート又はポリオキシエチレンソルビトールジオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールジステアレート、若しくはポリオキシエチレンソルビトールジラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、若しくはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート又はポリオキシエチレンソルビタンジオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、若しくはポリオキシエチレンソルビタンジラウレートなどが挙げられる。経口投与用のエマルジョンは1種以上の乳化剤を更に含み得る。適切な乳化剤としては、上記に例示したような分散剤、又はグアーガム、アカシアガム、若しくはトラガカントガムなどの天然ガムが挙げられる。
【0065】
例示的な実施形態において、液体組成物の各用量は、約105cfu/mlから約1011cfu/mlの間の最終濃度のラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスの約1ml~約25mlの液体製剤を含み得る。液体製剤の容量は、例えば、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、約10ml、約11ml、約12ml、約13ml、約14ml、約15ml、約16ml、約17ml、約18ml、約19ml、約20ml、約21ml、約22ml、約23ml、約24ml、又は約25mlであり得る。
【0066】
本開示により使用される組成物は1種以上のプレバイオティクス成分を含み得る。適切なプレバイオティクスとしては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、フルクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マンナンオリゴ糖、タンパク質ベースのミドリガイ抽出物、並びに生のタマネギ、生のネギ、生のチコリー根、及び生のアーティチョークなどの様々なプレバイオティクス含有食品が挙げられる。或る特定の実施形態において、プレバイオティクスはフルクトオリゴ糖である。
【0067】
或る特定の実施形態において、本開示の方法は、便秘を治療し、被験体の排便並びに全体的な消化器系及び消化管の健康を改善するより広範なレジメンの一部として使用され得る。したがって、本発明の方法を、便秘又は便秘の症状を治療するのに知られている他の方法と組み合わせて使用することができる。さらに、本開示により使用される組成物は、便秘を治療し、便秘の症状を改善し、被験体の排便を改善し、及び/又は被験体の全体的な消化器系及び消化管の健康を改善することが知られている追加の成分を含み得る。
【0068】
本明細書におけるあらゆる以前の刊行物(又はそれから派生した情報)又は既知のあらゆる事項への言及は、その以前の刊行物(又はそれから派生した情報)又は既知の事項が本明細書の関係する努力傾注分野における一般的な共通知識の一部を形成するという承認若しくは容認又はあらゆる形式の示唆ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0069】
次に、本開示を以下の具体的な実施例を参照して説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0070】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本明細書全体にわたる説明の開示の一般的な性質を決して制限するものと解釈されるべきではない。
【0071】
実施例1
【0072】
ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、及びラクトバチルス・ディオリボランスを含む生きたバイオ治療製品を使用して、慢性機能性便秘を患う成人ヒト被験体において第I相研究を実施した。バイオ治療製品を、0.9%の生理食塩水中に懸濁された1用量当たり1.5×1010CFUのL.パラカゼイ、L.ゼアエ、及びL.ディオリボランスを含む10mLの用量(それぞれ1用量当たり0.5×109CFUのL.パラカゼイSVT 04P1、L.ゼアエSVT 08Z1、及びL.ディオリボランスSVT 01D1)で8週間の期間にわたって1日2回経口投与した。組成物中の他の賦形剤としては、合成ラズベリーフレーバー(0.3%)、ステビア(0.01%)、及び精製水が挙げられる。
【0073】
参加者を18歳以上の成人男性及び成人女性から募集した。組み入れ基準には、ローマIII診断基準(例えば、Longstreth et al., 2006, Gastroenterology 130:1480-1491)に従った特発性便秘又は便秘型過敏性腸症候群の診断の確認が含まれていた。除外基準には、下痢型過敏性腸症候群又は交替型過敏性腸症候群、免疫低下又は免疫不全、抗TNF治療薬又はその他の免疫抑制医薬の服用歴、1日当たり15mg以上又は経口プレドニゾロン(又は同等品)の現在の使用、及び/又は過去3ヶ月以内の3日を超える1日当たり40mg以上又は経口プレドニゾロン(又は同等品)の間欠的コルチコステロイドの使用歴、並びにベースライン来院(0日目)から2週間以内及び研究期間にわたる経口抗生物質の使用が含まれていた。
【0074】
参加者は、ベースライン(0日目)、4週目(治療期間中)、8週目(治療終了)、及び治療終了から再び4週間後(12週目)に2つの検証済みの自己記入式患者便秘評価(PAC)質問票に回答した。
【0075】
患者便秘症状評価(PAC-SYM)質問票(Frank et al., 1999, Scand J Gastroenterol 34:870-877)は、腹部、直腸、及び便の3つの症状グループに分けられ、それぞれ5段階の重症度スケールで採点される。-0.6(すなわち、少なくとも0.6の合計PAC-SYMスコアの減少)又は-0.75の最小重要差(MID)を、治療に対する肯定的な奏効を定義する閾値として使用した。-0.6のMID閾値は、臨床的奏効を定義するPAC-SYMスコアの減少として推奨される閾値と一致しているが、臨床試験ではプラセボ奏効率を下げるのに-0.75のMID閾値を使用する場合がある(Yiannakou et al., 2017, Ailment Pharmacol Ther 46:1103-1111)。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
患者便秘QOL評価(PAC-QOL)質問票(Dubois et al., 2010, Neurogastroenterol Motil 22 e54-63)は、便秘患者の日常生活における便秘の影響及び負担の尺度を提供する。質問は、身体的不快感に関する4項目、心理社会的不快感に関する8項目、治療満足度に関する5項目、並びに心配事及び不快感に関する11項目にカテゴリー分けされ、それぞれ5段階の重症度スケールで採点される。-0.5のMID(すなわち、少なくとも0.5の合計PAC-QOLスコアの減少)を、治療に対する肯定的な奏効を定義する閾値として使用した(Marquis et al., 2005, Scand J Gastroenterol 40:540-551)。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
参加者の生活の質に対する治療の有益な効果は、以下の表3~表6に示されるようにPAC-QOLのサブカテゴリスコアの分析で明らかである。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
実施例2
【0085】
実施例1に記載された生きたバイオ治療製品を使用して、ローマIII診断基準に従って、特発性便秘(IC)、便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)、又は便秘及び下痢の両方の混合診断(IBS-M)と診断された成人ヒト被験体において、更なる第I相研究を実施した。参加者を18歳以上の成人男性及び成人女性から募集した。参加者がそれぞれ下痢型過敏性腸症候群、免疫低下、ベースライン来院の2週間前~12週間前の経口抗生物質若しくはコルチコステロイドの使用、又は妊娠中若しくは授乳中の場合には、その参加者を除外した。登録された38人の参加者のうち、32人が女性であり、17人がIBS-C、10人がIC、そして11人がIBS-Mの診断を受けていた。参加者の平均年齢は49歳であり、平均BMIは26.5(±5.8)であった。
【0086】
実施例1に記載されるように、参加者にバイオ治療製品を、0.9%の生理食塩水中に懸濁された1用量当たり1.5×1010CFUのL.パラカゼイ、L.ゼアエ、及びL.ディオリボランスを含む10mLの用量(それぞれ1用量当たり0.5×109CFUのL.パラカゼイSVT 04P1、L.ゼアエSVT 08Z1、及びL.ディオリボランスSVT 01D1)で8週間の期間にわたって1日2回経口投与した。参加者は、ベースライン(0日目)、4週目(治療期間中)、8週目(治療終了)、及び治療終了から再び4週間後(12週目)にPAC-SYM質問票及びPAC-QOL質問票に回答した。研究に登録された38人の参加者のうち、32人が4週目まで回答し、29人が8週目まで回答し、22人が12週目まで回答した。PAC-SYM質問票及びPAC-QOL質問票については実施例1で説明されている。
【0087】
バイオ治療製品の投与は極めて安全でかつ忍容性が高いと判定された。便秘の性質上、鼓腸、腹部膨満感及び腹部痙攣、並びに吐き気の既存の症状を含む予想通りの事象が発生した。血液病理学試験、生化学試験、及び肝機能試験では有害なアウトカムは示されなかった。
【0088】
合計15人の参加者が、ベースライン及び12週目にローマIII基準の質問票に回答した。ローマIII基準スコアにおいては統計的に有意な改善(p=0.0027)が見られ、スコアの平均減少は9.80(SE=2.696)であった。12週目のローマIII基準の分析により、2人の参加者は症状の十分な解消を示し、もはやIBSのサブタイプ又はICのいずれの基準も満たさなくなったことが示された。
【0089】
各時点での平均PAC-SYMスコアを表7に示す。PAC-SYMについての最小二乗平均の差を表8に示す。
【0090】
腹部症状についてのPAC-SYMスコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.00(0.16)、1.52(0.17)、1.43(0.17)、1.40(0.20)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.01)。直腸症状についてのPAC-SYMスコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ1.43(0.15)、1.04(0.16)、0.76(0.17)、0.91(0.19)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.02)。便症状についてのPAC-SYMは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.31(0.15)、1.82(0.16)、1.73(0.17)、1.82(0.19)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.02)。PAC-SYM合計平均スコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.04(0.12)、1.57(0.13)、1.46(0.14)、1.51(0.15)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.002)。
【0091】
-0.5(すなわち、少なくとも0.5の合計PAC-SYMスコアの減少)の最小重要差(MID)を、治療に対する肯定的な奏効を定義する閾値として使用した。1.0ポイントの変化は、中程度の差の改善に相当する。4週目及び8週目にはベースラインと比較して全体的なPAC-SYMスコアにおいて統計的に有意な改善が見られ(p<0.001)、その改善は12週目まで継続した(p=0.002)(表8を参照)。治療企図集団としての38人の参加者のうち14人で、8週目と比較したベースラインからの減少が0.5以上のMIDであったことが観察された(p<0.001)。プロトコル準拠集団からは、29人中14人が観察された(p<0.001)。
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】
各時点での平均PAC-QOLスコアを表9に示す。PAC-QOLについての最小二乗平均の差を表10に示す。参加者の生活の質に対する治療の有益な効果は、以下の表9及び表10に示されるようにPAC-QOLのサブカテゴリスコアの分析で明らかである。
【0095】
身体的不快感についてのPAC-QOLスコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.24(0.16)、1.63(0.17)、1.55(0.18)、1.45(0.20)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.001)。心理的不快感についてのPAC-QOLスコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ1.51(0.15)、0.92(0.16)、0.82(0.17)、0.95(0.19)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.006)。心配事/懸念事項についてのPAC-QOLスコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.16(0.17)、1.63(0.18)、1.60(0.19)、1.67(0.21)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p<0.05)。満足度についてのPAC-QOLは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ3.15(0.15)、2.36(0.16)、2.36(0.17)、及び2.52(0.19)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.009)。PAC-QOLの合計平均スコアは、ベースライン、4週目、8週目、及び12週目の平均(SE)がそれぞれ2.16(0.14)、1.56(0.14)、1.51(0.15)、1.59(0.17)であったことを示している。ペアワイズ治療比較により、4週目、8週目、及び12週目の平均がベースライン平均よりも有意に低いことが示される(p≦0.003)。
【0096】
-0.5(すなわち、少なくとも0.5の合計PAC-QOLスコアの減少)のMIDを、治療に対する肯定的な奏効を定義する閾値として使用した。4週目及び8週目にはベースラインと比較して全体的なPAC-QOLスコアにおいて統計的に有意な改善が見られ(p<0.001)、その改善は12週目まで継続した(p=0.003)(表10を参照)。治療企図集団としての38人の参加者のうち18人で、8週目と比較したベースラインからの減少が0.5以上のMIDであったことが観察された(p<0.001)。プロトコル準拠集団からは、29人中18人が観察された(p<0.001)。
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【受託番号】
【0099】
ブダペスト条約に基づいて寄託された生物学的材料の詳細は本明細書において上述されている。
【0100】
以下の乳酸桿菌は、例えばWO 2020/073088において既に記載されており、その開示内容は本明細書において援用される。以下に要約する:
・ラクトバチルス・パラカゼイSVT 04P1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31290として寄託された。
・ラクトバチルス・ゼアエSVT 08Z1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31295として寄託された。
・ラクトバチルス・ディオリボランスSVT 01D1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31287として寄託された。
・ラクトバチルス・パラファラギニスSVT 05P2は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31292として寄託された。
・ラクトバチルス・ブフネリSVT 06B1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31293として寄託された。
・ラクトバチルス・ラピSVT 07R1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2019年2月27日に受託番号LMG P-31294として寄託された。
【0101】
ラクトバチルス・プランタルムSVT 09P1は、ブダペスト条約に基づきベルギー総合微生物収集所(BCCM)(連邦公共計画サービス科学政策、ベルギー、B-1000ブリュッセル、シアンス通り8)で2020年8月10日に受託番号LMG P-31923として寄託された。これは、PCT/AU2021/051432において既に記載されており、その開示内容は本明細書において援用される。
【国際調査報告】