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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ガスを貯留するためのタンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F17C1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549251
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081071
(87)【国際公開番号】W WO2023083783
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21306566.7
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】524173512
【氏名又は名称】コフェス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オシュステテール,ジル
(72)【発明者】
【氏名】サバール,チボー
(72)【発明者】
【氏名】バボー,アルチュール
(72)【発明者】
【氏名】サリニエ,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】バンスビンゲンホーフェン,トニー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・クリプルイール,ジョアン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BC04
(57)【要約】
圧縮ガスを、好ましくは高圧で、より詳細には水素を貯蔵するための多層体構造であって、内側から外側に連続して以下の少なくとも3つの層、-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTmが280°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを主成分として含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°C未満、好ましくは80°C以下、より詳細には60°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを主成分として含む組成物を含浸させた長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが80°C超、好ましくは100°C超である少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物を含浸させた長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層とを含み、最も外側の封止層が最も内側の中間複合補強層に溶着され、最も外側の中間複合補強層が最も内側の側外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含むタンク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガス、優先的には高圧下で、より詳細には水素の貯蔵のための多層体構造であって、内側から外側に向かって少なくとも以下の3つの連続する層、すなわち
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定された溶融温度(Tf)が280°C以下、優先的には260°C以下、優先的には230°C以下、より詳細には200°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を主成分として含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたガラス転移温度(Tg)が100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、
-ISO 11357-3 2013の規格に従って測定されたガラス転移温度(Tg)が80°Cより高い、優先的には100°C以上である少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層と、を含み、
最も外側の封止層が、最も内側の中間複合補強層に溶着され、
最も外側の中間複合補強層が、最も内側の外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含むタンク。
【請求項2】
前記封止層に含まれる前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、5以上、優先的には8以上、より詳細には9以上、より詳細には10以上のC/N比率を有することを特徴とする、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記封止層に含まれる前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PAII、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、優先的にはPA 6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、より優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項4】
前記封止層に含まれる前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、優先的には、PA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、より優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から選択される脂肪族ポリアミドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項5】
前記中間複合補強層の前記長繊維を含浸させる前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、より優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のタンク。
【請求項6】
前記中間複合補強層の前記長繊維を含浸させる前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、さらに優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から優先的に選択される脂肪族ポリアミドであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のタンク。
【請求項7】
前記複合外側補強層の前記長繊維を含浸する前記半結晶性熱可塑性ポリアミドが、PA MPMDT/6T、PA 11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/4T PA、MXDT/6T PA、MXDT/10T PA、MPMDT/4T PA、MPMDT/6T PA、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/4T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/4T、PA 11/BACT/6T、PA 11/BACT/10T、PA 11/MXDT/4T、PA 11/MXDT/6T、PA 11/MXDT/10T、PA 11/MPMDT/4T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/MXDT/10T、PA11/5T/10T、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のタンク。
【請求項8】
前記中間複合補強層が、前記構造体の前記複合補強層の総厚に対して1~30%の厚さ、より詳細には1~10%の厚さ、さらにより優先的には1~5%の厚さを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のタンク。
【請求項9】
前記中間複合補強層及び前記外側複合補強層に存在する前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維、又はバサルト含有から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のタンク。
【請求項10】
半結晶性、優先的には脂肪族の熱可塑性ポリマーの1つ又は複数の射出成形インサートを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のタンク。
【請求項11】
以下の連続するステップ、
-前記封止層の上に前記中間複合補強層を溶着する少なくとも1つのステップ、及び
-前記中間複合補強層の上に前記外側複合補強層を溶着する少なくとも1つのステップ、
を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに定義されるタンクを製造する方法。
【請求項12】
圧力下、優先的には高圧下で、ガス、より詳細には水素、LPG又はCNG、圧縮空気を貯蔵するための、請求項1~10のいずれかに定義されているタンクの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、特に高圧の圧縮ガスを貯蔵するための特定の多層構造体を備えるタンク、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送の分野、特に自動車の分野で求められる目的の1つは、汚染のいっそう少ない車両を提案することである。そのため、バッテリを含む電気自動車又はハイブリッド車両に、ガソリン又はディーゼル車両などの内燃機関車両を徐々に置き換えていくことが目的とされている。しかしながら、バッテリは車両の比較的複雑な構成要素であることが判明している。車両内のバッテリの位置に応じて、極端な温度及び可変の湿度であり得る衝撃及び外部環境からバッテリを保護することが必要な場合がある。また、発火のいずれかの危険性を防止する必要がある。
【0003】
加えて、バッテリセルを損傷せず、その寿命を維持するために、車両の動作温度が55°Cを超えないことが重要である。逆に、例えば冬期の間、バッテリの動作を最適化するためにバッテリの温度を上昇させることが必要な場合がある。
【0004】
さらに、電気自動車は、バッテリの自立性、資源が枯渇しないバッテリにおける希土類の使用、並びにバッテリを再充電できるようにするための様々な国における電気の生産の問題など、いくつかの問題を依然として抱えている。
【0005】
したがって、水素は燃料電池によって電気に変換され、それによって電気自動車に動力を供給することができるので、水素は電気バッテリの代替物である。
【0006】
それにもかかわらず、水素の貯蔵は、特に移動式貯蔵に関して、水素の非常に低い分子量及び非常に低い液化温度のために技術的に困難かつ高価である。しかしながら、効果的であるためには、貯蔵は少量で行われるべきであり、このことは、車両が使用される温度を考慮し、水素を高圧下に保つことを必要とする。これは、特に燃料電池ハイブリッド道路車両に当てはまる。これに対し、バッテリ駆動の電気のベースを補完するものとして、600~700km程度において、又は本質的に都市での使用ではさらに少ない程度において、自助努力が求められている。
【0007】
水素タンクは、一般に金属ライナからなり、シェルの外側への水素の拡散を防止すべきものである。したがって、第1のシェルは、タンクの内圧(例えば700バール)に耐え、起こり得る衝撃又は熱源に耐えるように意図された第2のケーシング(一般に複合材料で作られる)によって保護されるべきである。さらに、タンクは弁システムを含み、これも安全なものにすべきである。
【0008】
2016年12月改訂の、Memorandum on Hydrogen of the French Association for Hydrogen and fuel cell(AFHYPAC(Association Francaise pour l’hydrogene et la pile a combustible))シート4.2によれば、加圧下での水素の貯蔵及び分配は、長年にわたって標準的な慣行で、20又は25MPa(タイプI及びII)に加圧された鋼製のシリンダ又はシリンダアセンブリを用いていた。このような貯蔵方法の欠点は、バルク-20MPa及び常温(21°C)でわずか14kg/mであるのに対して、メタンでは100kg/m-であり、特に重量である。重量の欠点、は水素によって引き起こされる脆化の問題を回避するために低い応力のレベルの鋼を使用することから生じる。いわゆるIII型及びIV型複合タンクの技術の出現により、状況は根本的に変化した。前記タンクの基本原理は、一方を他方とは独立して管理するために、封止及び機械抵抗という2つの本質的な機能を分離することである。前記タイプのタンクでは、封止ライナ又はシースと呼ばれる(熱硬化性又は熱可塑性)樹脂で作られたブラダは、補強シース又は層と呼ばれる繊維(ガラス、アラミド、炭素)からなる補強構造体と関連付けられる。前記タイプのタンクは、タンクの質量を低減し、激しい外部の攻撃の場合に爆発的破裂のリスクを防止しながら、はるかに高い圧力で作動することを可能にする。これにより、70MPa(700バール)の圧力が事実上現在の標準となっている。
【0009】
タイプIVのタンクでは、封止層及び補強層は、互いに接着せず、しばしば封止層の崩壊の原因となる異なる材料で作られ、封止層と補強層との間の界面でのガスの蓄積及びタンクの内圧の低下の両方が同時に起こる。さらに、水圧試験後に行われるタイプIVタンクの乾燥は、封止層の崩壊の危険性のために真空下でしか乾燥を行うことができないため、時間がかかり、費用がかかる。
【0010】
このような問題は、2つの層の間の優れた耐久性のある溶着性を提供するために、封止層及び補強層のマトリックスに同じポリマーを使用することに基づくタイプVタンクの開発をもたらし、それによって一体型タンクを得るために使用される。
【0011】
複合シェルを製造するために、ガラス転移温度(以下、Tg)が高い、すなわちTgが100°Cを超えることができるタンクを製造するために、複合材のマトリックスとしてエポキシ樹脂を使用する方法が知られている。熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂を含む複合材の欠点は、一般に微小亀裂が発生し、これが大きな変動性又は機械的強度の損失さえ引き起こすことである。さらに、このような現象は、タンクの連続的な充填/排出サイクルによって経時的に増幅される。そのため、炭素繊維含有量、したがってタンクの重量及びコストを増加させる必要がある。
【0012】
さらに、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の場合、微小亀裂は複合補強材の不透過性に悪影響を及ぼし、タンクの内側に厚い封止層を使用する必要がある(すなわち、タイプIVのタンク)。
【0013】
最後に、リサイクル可能性の観点から、現在のタンクは、リサイクル可能ではない熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂で作られた補強層を使用する。
【0014】
しかしながら、タイプIVのタンクに改良が加えられているにもかかわらず、タイプIVのタンクには依然として欠点がある。特に、タンクの充填速度を加速することが求められている。しかし、ガスタンク、特に水素タンクの温度抵抗は、現在の解決策では低すぎる。タンクの充填速度を加速することは、特に充填前に水素を-60°Cに冷却することをさらに必要とせずに、消費者にとって有利であり、特にコストを節約する。
【0015】
ガラス転移温度(以下、Tg)が高いポリフタルアミド補強層(以下、PPAと称する)の使用は、高温での機械的抵抗の観点から重要な利点となる。さらに、前記タイプの樹脂は熱可塑性であり、これは容易にリサイクル可能なタンクを得るのに役立つ。樹脂の熱可塑性は、複合シェルの微小亀裂のレベルを低減し、それによって複合シェルの機械的抵抗を強化し、機械的抵抗の変動性を低減し、使用される炭素繊維の量、したがってタイプIVのタンクと比較してタイプVのタンクのコスト及びカーボンフットプリントを大幅に低減する。さらに、樹脂の半結晶性は、ガス、特に水素に対する封止を増加させる。したがって、複合シェルは、タンクの不透過性に寄与し、それによって封止層の厚さを減少させ、それによりタンクの内側封止層のコスト及び重量を減少させる。
【0016】
しかしながら、熱可塑性ポリマー封止層に高温複合テープを巻き付けることによるそのようなタイプのタンクの製造は、タンクの冷却中に、その製造の終わりに、関与する材料の膨張差に固有の、より詳細には封止層を構成する繊維とポリマーとの間の膨張差に固有の、熱起源の著しい残留応力の発生に関連して、困難を引き起こす。上記は、炭素繊維複合強化材を構成するPPAマトリックスの場合に特に悪化する。実際、PPAを含有する複合テープを使用するための高温は、そのようなタイプの樹脂の高い融点並びにその高いTgに起因して、タンク内の追加の残留応力の主な原因である。タンクが低いTgである、典型的にはTgが50°C程度であるポリアミド樹脂、より詳細にはポリアミド11(PA11)の成形インサートを含む場合、前記残留応力はインサートの変形をもたらし、タンクの完全な製造、特にタンクを閉じる基部の締結を妨げる可能性がある。タンクがタイプVであり(又は4.5、すなわち、複合材のマトリックスを構成するポリマーは、封止層のポリマーとは異なる性質のものであるが、2つのポリマーは、互いに適合性があり、溶着可能なままである)、タンクが低いTg、より詳細にはタイプPA11のポリアミド封止層を有する場合、残留する応力は、複合補強層自体の中で剥離をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、高温での良好な機械的抵抗を有し、リサイクルすることができ、良好なガスの封止があり、製造が容易なタンクが現在求められている。特に、タンクの製造中にタンクが受ける熱の差に関する、複合材と封止層との間及び複合材と成形されるインサートとの間の残留機械的応力のレベルを低減するタンク構造体が求められている。それにより、そのようなタンクは、圧力下、特に高圧下で水素及び任意の種類のガスを貯蔵するのに役立つ。
【0018】
このような問題は、特定の多層構造体を含むタンクによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、圧縮ガス、優先的には高圧下で、より詳細には水素の貯蔵のための多層体構造であって、内側から外側に向かって、少なくとも以下の3つの連続する層、すなわち
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定された溶融温度(Tf)が280°C以下、優先的には260°C以下、優先的には230°C以下、より詳細には200°C以下である、主成分が少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、
-ISO 11357-3 2013の規格に従って測定されたTgが80°Cより高く、優先的には100°C超である少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層と、を含み、
最も外側の封止層は、最も内側の中間複合補強層に溶着され、
最も外側の中間複合補強層は、最も内側の外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含むタンクに関する。
【0020】
本発明者らは、特定の封止層と、PPAで作られる特定の複合補強層との間に、Tg<100°Cの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的に脂肪族の複合補強層を挿入することによって、上記の問題が解決されることを見出した。
【0021】
実際、本発明によるタンクは製造が容易であり、これにより迅速な充填及び排出が可能になる。タンクは、高いガス封止を有し、軽量であることを特徴とする。
【0022】
本発明はさらに、本発明によるタンクの製造方法に関する。
【0023】
最後に、本発明は、加圧下でガス、より詳細には水素、LPG又はCNG、圧縮空気を貯蔵するための本発明によるタンクの使用に関する。
【0024】
本発明の他の特徴、態様、目的及び利点は、以下の説明を読めばさらに明らかになるであろう。
【0025】
さらに、本明細書で使用される「...~...に含まれる」及び「...~...」という表現は、言及された境界のそれぞれを含むものとして理解されるべきであることが規定されている。
【0026】
タンク
本発明によるタンクは、圧縮ガス、より詳細には水素の貯蔵のための多層構造体を含み、内側から外側に向かって、少なくとも以下の3つの連続する層、すなわち
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTfが280°C以下、優先的には260°C以下、優先的には230°C以下、より詳細には200°C以下である、主成分が少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、
-ISO 11357-3 2013の規格に従って測定されたTgが80°Cより高く、優先的には100°C以上である少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層と、を含み、
最も外側の封止層は、最も内側の中間複合補強層に溶着され、
最も外側の中間複合補強層は、最も内側の複合補強層に溶着されている。
【0027】
本発明による構造体の層はすべて、ポリアミドを主成分として含む。
【0028】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO 1874-1:2011「Plastics-Polyamide(PA)molding and extrusion materials-Part 1:Description」の規格、特に3ページ(表1及び2)に記載されており、また当業者に周知である。PALの表記において、PAはポリアミドを表し、Lはアミノ酸又はラクタムの炭素原子数を表す。これにより、L個の炭素原子を含むアミノ酸又はラクタムの重縮合によってポリアミドが得られる。PAMNの表記において、Mはジアミンの炭素原子数を表し、Nは二酸の炭素原子数を表す。
【0029】
本発明によれば、「半結晶性熱可塑性ポリアミド」は、一般に室温で固体であり、温度が上昇すると軟化する、より詳細にはガラス転移温度(Tg)を超えた後に軟化し、いわゆる溶融温度(Tf)を超えると明確な溶融を示すことができ、温度が結晶化温度(TC)未満に低下すると再び固体になる材料を意味する。
【0030】
ガラス転移温度Tg、結晶化温度TC及び溶融温度Tfは、それぞれ、規格11357-2:2013及び11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0031】
封止層について
本発明によるタンクの多層構造体には、1つ又は複数の封止層が存在するか、又は存在してもよい。
【0032】
前記層の各々は、ISO 11357-3:2013規格に従って測定されたTfが280°C以下、優先的には260°C以下、優先的には230°C以下、より詳細には200°C以下である少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを主成分として含む組成物からなる。
【0033】
「主成分として」という用語は、前記少なくとも1つのポリアミドが、組成物の総重量に対して50重量%を超える量で存在することを意味する。
【0034】
有利には、前記少なくとも1つの主成分のポリアミドは、組成物の総重量に対して60重量%を超える量、特に70重量%を超える量、特に80重量%を超える量、より詳細には90重量%以上の量で存在する。
【0035】
組成物はまた、衝撃改質剤及び/又は添加剤を含んでもよい。しかしながら、バリア層は、貯蔵ガスの中に有害な化合物を放出すべきではなく、その透過性を低下させる可能性のある粒子を含むべきではない。それにより、当業者は、そのような放出を防止するように、組成物の添加剤及びその含有量を選択するように注意するであろう。
【0036】
添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤、染料、カーボンブラック及び炭素質ナノ充填剤の中から選択することができる。
【0037】
有利には、前記組成物は、主成分が、上で定義された1つ又は複数の半結晶性熱可塑性ポリアミド、0~5重量%の衝撃改質剤、0~5重量%の添加剤からなり、組成物の成分の合計は、重量基準で100%に等しい。
【0038】
本発明によるタンクの一実施形態では、単一の主成分であるポリアミドが封止層に存在する。
【0039】
有利には、封止層を形成する組成物は黒色であり、溶着に適した放射線を吸収することができる。
【0040】
同じ吸収剤を製造するために、ポリマーに黒色を付与し、溶着に適した放射線のより良好な吸収をもたらす、例えばカーボンブラックを含む様々な添加剤を添加する方法が知られている。
【0041】
半結晶性熱可塑性ポリアミド
半結晶性熱可塑性ポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリアミドであってもよい。
【0042】
有利には、封止層に含まれる半結晶性熱可塑性ポリアミドは、C/Nで示されるポリアミドの炭素原子数と窒素原子数との比が5以上、優先的には8以上、特に9以上、より詳細には10以上である。
【0043】
優先的には、半結晶性熱可塑性ポリアミドは、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、極めて優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から選択される。
【0044】
半芳香族コポリアミドの単位11の含有量は、コポリアミドの融点が280°C以下、優先的には260°C以下、優先的には230°C以下、より詳細には200°C以下であるように調整される。
【0045】
好ましい実施形態では、半結晶性熱可塑性ポリアミドは脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドである。
【0046】
優先的には、封止層に含まれる半結晶性熱可塑性ポリアミドは、脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドであり、より詳細には、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、極めて優先的にはPA 11、又はPA12、及びそれらの混合物から選択される。
【0047】
より詳細には、脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドは、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、より詳細にはPA11及びPA12の中から選択される。
【0048】
封止層を形成する組成物は、主成分が上で定義されたポリアミド、又は上で定義されたポリアミドの混合物を含む。そのような混合物は、主成分が組成物に存在する。
【0049】
中間複合補強層について
1つ又は複数の複合補強層は、中間層として存在するか、又は存在し得る。
【0050】
前記層の各々は、規格ISO 11357-3:2013に従って測定されたTgが100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下である、主成分が少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を含む組成物を含浸させた長繊維の形態の繊維材料からなる。
【0051】
「主成分として」という用語は、前記少なくとも1つのポリマーが、組成物の総重量に対して50重量%を超える量で存在することを意味する。
【0052】
有利には、前記少なくとも1つの多数ポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%を超える量、特に70重量%を超える量、特に80重量%を超える量、より詳細には90重量%以上の量で存在する。
【0053】
組成物はまた、衝撃改質剤及び/又は添加剤を含んでもよい。
【0054】
添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤、染料、カーボンブラック及び炭素質ナノ充填剤の中から選択することができる。
【0055】
有利には、前記組成物は、主成分が、上で定義された1つ又は複数の半結晶性熱可塑性ポリアミド、0~5重量%の衝撃改質剤、0~5重量%の添加剤からなり、組成物の成分の合計は、重量基準で100%に等しい。
【0056】
本発明によるタンクの一実施形態では、単一の主成分であるポリアミドが、中間複合補強層の繊維材料を含浸させる層に存在する。
【0057】
有利には、中間複合補強層の繊維材料を含浸させる層の中の層を形成する組成物は、黒色であり、溶着に適した放射線を吸収することができる。
【0058】
同じ吸収剤を製造するために、ポリマーに対して黒色を付与し、溶着に適した放射線のより良好な吸収をもたらす、例えばカーボンブラックを含む様々な添加剤を添加する方法が知られている。
【0059】
半結晶性熱可塑性ポリアミド
脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリアミドであってもよい。
【0060】
優先的に、半結晶性熱可塑性ポリアミドは、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、極めて優先的にはPA 11又はPA12、及びそれらの混合物から選択される。
【0061】
半芳香族コポリアミドの単位11の含有量は、コポリアミドのガラス転移温度が100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下であるように調整される。
【0062】
好ましい実施形態では、半結晶性熱可塑性ポリアミドは、脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドである。
【0063】
有利には、繊維材料を含浸する組成物に含まれる脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドは、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、及びそれらの混合物から選択される。
【0064】
より詳細には、脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドは、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、より詳細にはPA11及びPA12の中から選択される。
【0065】
外側複合補強層について
1つ又は複数の複合補強層が外層として存在してもよい。
【0066】
前記層の各々は、ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが80°C超、優先的には100°C以上である少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物からなる。
【0067】
「主成分として」という用語は、前記少なくとも1つのポリマーが、組成物の総重量に対して50重量%を超える量で存在することを意味する。
【0068】
有利には、前記少なくとも1つの多数ポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%を超える量、特に70重量%を超える量、特に80重量%を超える量、より詳細には90重量%以上の量で存在している。
【0069】
組成物はまた、衝撃改質剤及び/又は添加剤を含んでもよい。
【0070】
添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤、染料、カーボンブラック及び炭素質ナノ充填剤の中から選択することができる。
【0071】
有利には、前記組成物は、主成分が、上で定義された1つ又は複数の半結晶性熱可塑性ポリアミド、0~5重量%の衝撃改質剤、0~5重量%の添加剤からなり、組成物の成分の合計は、重量基準で100%に等しい。
【0072】
本発明によるタンクの一実施形態では、単一の主成分であるポリアミドが、外側複合補強層の繊維材料を含浸させる層の中の層に存在する。
【0073】
有利には、組成物は黒色であり、溶着に適した放射線を吸収することができる。
【0074】
同じ吸収剤を製造するために、ポリマーに黒色を付与し、溶着に適した放射線のより良好な吸収をもたらす、例えばカーボンブラックを含む様々な添加剤を添加する方法が知られている。
【0075】
ポリフタルアミド
ポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリアミドであり得る。
【0076】
有利には、半結晶性ポリアミドは、半芳香族ポリアミド、特にEP1505099に記載されているような式X/YArを有する半芳香族ポリアミド、特に式A/XTを有する半芳香族ポリアミドであり、式中、Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位及び式(Caジアミン)を有する単位から選択される。(Cb二酸)であり、aはジアミンの炭素原子の数であり、bは二酸の炭素原子の数であり、a及びbはそれぞれ4~36、有利には9~18に含まれ、単位(Caジアミン)は直鎖又は分岐脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及びアルキル芳香族ジアミンから選択され、単位(Cb二酸)は直鎖又は分岐脂肪族二酸、脂環式二酸及び芳香族二酸から選択される。
【0077】
X.Tは、Cxジアミンとテレフタル酸との重縮合から得られる単位を表し、xはCxジアミンの炭素原子の数を表し、xは5~36、有利には9~18に含まれる。
【0078】
優先的には、外側複合補強層の繊維材料を含浸させる層に含まれるポリアミドは、式A/5T、A/6T、A/9T、A/10T、A/11T、a/BACT、A/MPMDT 又はA/MXDTを有し、Aは本明細書で定義される通りであり、より詳細には、PA MPMDT/6T、PA 11/10T、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/4T、PA MXDT/6T PA、MXDT/10T PA、MPMDT/4T PA、MPMDT/6T PA、MPMDT/10T PA、PA 11/MXDT/4T、PA 11/MXDT/6T、PA 11/MXDT/10T、PA 11/MPMDT/4T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/MXDT/10T、PAII/5T/10T、PA 11/BACT、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/4T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/4T、PA 11/BACT/6T、PA 11/BACT/10T及びそれらの混合物から選択されるコポリアミドである。
【0079】
Tはテレフタル酸を表し、MXDはm-キシリレンジアミンを表し、MPMDは2-メチルペンタメチレンジアミンを表し、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンを表す。
【0080】
組成物はまた、衝撃改質剤及び/又は添加剤を含んでもよい。
【0081】
添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤及び着色剤の中から選択することができる。
【0082】
有利には、前記組成物は、ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが80°C超、衝撃改質剤が0~5重量%、添加剤が0~5重量%である、1つ又は複数のポリフタルアミドからなり、組成物の成分の合計は100%に等しい。
【0083】
各層の前記少なくとも1つの主成分であるポリマーは、同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
一実施形態では、単一のポリフタルアミドが、中間層に溶着された外側複合補強層の主成分として存在する。
【0085】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、非凝集(non-agglomerated又はnon-aggregated)である。
【0086】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、100ppm~500ppm、優先的には100ppm~250ppmの量で組成物に組み込まれる。
【0087】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、グラフェン、ナノメートルカーボンブラック及びそれらの混合物から選択される。
【0088】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、ナノメートルカーボンブラックを含まない。
【0089】
繊維材料について
中間層及び外層に存在する前記繊維材料を形成する繊維に関し、これは、特に鉱物、有機又は植物起源の繊維である。
【0090】
有利には、前記繊維材料は、サイジングされていてもよいし、サイジングされていなくてもよい。
【0091】
したがって、前記繊維材料は最大0.1重量%の有機性材料(熱硬化性又は熱可塑性樹脂)を含むことができ、サイジングと呼ばれる。
【0092】
鉱物起源の繊維には、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト又はバサルトベースの繊維、シリカ繊維又は炭化ケイ素繊維が含まれる。
【0093】
有機起源の繊維には、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリオレフィン繊維などの熱可塑性又は熱硬化性ポリマーに基づく繊維が含まれる。優先的には、非晶質熱可塑性ポリマーを含有し、予備含浸マトリックスが非晶質である場合、予備含浸マトリックスの構成的な熱可塑性ポリマー又はポリマー混合物のTgより高い、又は予備含浸マトリックスが半結晶性である場合、予備含浸マトリックスの構成的な熱可塑性ポリマー又はポリマー混合物のTfより高いガラス転移温度Tgを有する。有利には、これは半結晶性熱可塑性ポリマーを含有し、予備含浸マトリックスが非晶質である場合、予備含浸マトリックスの構成的な熱可塑性ポリマー又はポリマー混合物のTgより高い、又は予備含浸マトリックスが半結晶性である場合、予備含浸マトリックスの構成的な熱可塑性ポリマー又はポリマー混合物のTfより高い溶融温度Tfを有する。したがって、最終複合材が熱可塑性マトリックスによって含浸される場合、繊維材料の有機繊維が溶融するリスクはない。
【0094】
植物起源の繊維には、亜麻、麻、リグニン、竹、絹、特にクモ糸、サイザル及び他のセルロース系繊維、より詳細にはビスコースを含む天然繊維が含まれる。植物起源の繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着及び含浸を容易にするために、純粋なもの、処理されたもの、又はコーティング層でコーティングされたものを使用することができる。
【0095】
繊維材料はまた、繊維で編まれた、又は織られた織物であってもよい。
【0096】
これは、保持糸を有する繊維にも対応し得る。
【0097】
このような構成的な繊維は、単独で又は混合して用いることができる。これにより、有機繊維を鉱物繊維と混合して熱可塑性ポリマー粉末を予備含浸させ、予備含浸繊維材料を形成することができる。
【0098】
有機繊維の糸は、複数の織物の重量を有することができる。さらに、それはまた、複数の幾何学的形状を有してもよい。繊維材料の構成的な繊維は、異なる幾何形状を有する強化繊維の混合物の形態であってもよい。繊維は長繊維である。
【0099】
優先的には、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維又はバサルトを含む繊維、より詳細には炭素繊維から選択される長繊維からなる。これは、糸又は複数の糸の形態で使用される。
【0100】
多層構造体について
したがって、前記多層構造体は、少なくとも1つの封止層と、少なくとも1つの中間複合補強層と、少なくとも1つの外側複合補強層とを備える。互いに隣接する層はすべて互いに溶着されている。
【0101】
一実施形態では、前記多層構造体において、各封止層を形成する組成物に含まれる各ポリアミドは、それに隣接する封止層を各々形成する組成物に含まれる各ポリアミドと部分的又は完全に混和性である。
【0102】
構造体が複数の層を含む場合、同じことが中間複合補強層にも当てはまる。
【0103】
構造体が複数の層を含む場合、外側複合補強層についても同様である。
【0104】
また、最も外側の封止層は最も内側の中間複合補強層に溶着され、最も外側の中間複合補強層は最も内側の外側複合補強層に溶着される。
【0105】
様々な層のそのような溶着は、層に含まれる組成物及び/又はマトリックスの全体的又は部分的な混和性をもたらす。
【0106】
前記組成物の全体又は部分的な混和性は、2つの隣接する層の2つの組成物のガラス転移温度の差と、2つの組成物の溶着による混合前の2つの組成物のガラス転移温度の差との間の化合物の比率によって定められる。
【0107】
混和性は、絶対値において、前記比率が0に等しい場合は全体であり、前記比率が0と異なり1未満である場合は部分的である。封止層を形成する組成物に含まれるポリアミドと、中間層の繊維材料に含浸する組成物に含まれるポリアミドとの不混和性は除外される。同様に、中間層の繊維材料を含浸させる組成物に含まれるポリアミドの、外層の繊維材料を含浸させる組成物のポリアミドとの不混和性は除外される。
【0108】
有利には、前記組成物の混和性が部分的である場合、前記比率は絶対値で30%未満、優先的には20%未満である。
【0109】
一実施形態では、1又は複数の混合物のガラス転移温度は、混和性が全体的であるか部分的であるかに応じて、混合前の前記ポリアミドのガラス転移温度の間に含まれるべきであり、少なくとも5°C、優先的には少なくとも10°Cそれと異なる。
【0110】
「完全に混和性」という表現は、例えば、Tga及びTgbをそれぞれ有する、PAa及びPAbと記される2つのポリアミドが、2つの隣接する封止層又は補強層にそれぞれ存在し、TgaがTgbより低い場合、2つのポリアミドの混合物はただ1つのTgabを有し、その値はTgaと1つのTgbとの間に含まれることを意味する。
【0111】
その場合、Tgab値の値は、Tgaよりも少なくとも5°C、より詳細には少なくとも10°C大きく、Tgbよりも少なくとも5°C、より詳細には少なくとも10°C小さい。
【0112】
「部分的に混和性」という表現は、例えば、Tga及びTgbをそれぞれ有する2つのポリアミドPAa及びPAbが2つの隣接する封止層又は補強層に存在する場合、2つのポリアミドの混合物が2つのTg、Tg’a及びTg’bを有し、Tga<Tg’a<Tg’b<Tgbであることを意味する。
【0113】
その場合、Tg’a及びTg’bの値は、Tgaよりも少なくとも5°C、より詳細には少なくとも10°C大きく、Tgbよりも少なくとも5°C、より詳細には少なくとも10°C低い。
【0114】
2つのポリアミドの不混和性は、別々に得られた純粋なポリマーのそれぞれのTg、Tga及びTgbに対応する2つのポリアミドの混合物中に2つのTg、Tga及びTgbが存在することをもたらす。
【0115】
2つのポリアミドの混合物のガラス転移温度が混合前の温度で同一又は異なっていたが、2つのポリアミドが互いに反応性であった場合、前記は本発明の範囲外ではない。
【0116】
有利には、前記溶着封止層及び中間補強層は、それぞれ異なるポリアミドを含む組成物からなり、前記中間補強層及び外側補強層は、それぞれ異なるポリアミドを含む組成物からなる。
【0117】
多層構造体は、最大300の封止層、最大10の中間複合補強層及び最大300の外側複合補強層を含むことができる。
【0118】
前記多層構造体は必ずしも対称的ではなく、したがって複合層よりも多くの封止層を含むことができ、又はその逆も可能であることは非常に明白である。
【0119】
有利には、前記多層構造体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の封止層と、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の中間複合補強層と、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の外側複合補強層とを含む。
【0120】
有利には、前記多層構造体は、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの封止層と、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの中間複合補強層と、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの外側複合補強層とを含む。
【0121】
有利には、前記多層構造体は、1つ、2つ又は3つの封止層と、1つ又は3つの複合補強層とを備える。有利には、多層構造体は、それぞれ異なるポリアミドを含む組成物からなる。
【0122】
好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、1つの封止層のみ、1つの中間複合補強層のみ、及び1つの外側複合補強層のみを含む多層構造体を含み、前記封止層は前記隣接する中間複合補強層に溶着され、前記中間複合補強層は前記隣接する外側複合補強層に溶着され、前記中間複合補強層は、多層構造体のすべての複合補強層、すなわち中間複合補強層及び外側複合補強層の厚さに対して、1~30%の厚さを優先的に有し、より詳細には1~10%の厚さを優先的に有し、さらにより優先的には1~5%の厚さを有する。
【0123】
別の実施形態では、本発明によるタンクは、1つの封止層のみ、1つの中間複合補強層のみ、及び1つの外側複合補強層のみを含む多層構造体を含み、前記封止層は、前記隣接する中間複合補強層に溶着され、前記中間複合補強層は、前記隣接する外側複合補強層に溶着され、前記封止層の組成物は、前記中間複合補強層及び前記中間複合補強層の組成物と同一であり、多層構造体のすべての複合補強層の厚さに対して、1~30%の厚さ、より詳細には1~10%の厚さ、さらにより優先的には1~5%の厚さを優先的に有する。
【0124】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
ISO 11357-3:2013の規格に従って測定された溶融温度(Tf)が230°C以下である、主成分が少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を含む組成物からなるただ1つの封止層と、
ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが60°C未満である、主成分が少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族を含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなるただ1つの中間複合補強層と、
ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°Cを超える、主成分が少なくとも1つのポリフタルアミドを含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなるただ1つの外側複合補強層と、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0125】
好ましい実施形態によれば、すべての複合補強層が炭素繊維を含む。
【0126】
好ましい実施形態によれば、本発明によるタンクは、圧縮ガス、優先的には高圧下、より詳細には水素の貯蔵のための多層構造体であって、内側から外側に向かって、少なくとも以下の3つの連続する層、すなわち
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTfが280°C以下である、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、優先的にはPA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11及びPA12、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを主成分として含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下であり、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、25 PA1218、PA11、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11又はPA12及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、
-ISO 11357-3 2013の規格に従って測定されたTgが80°Cより高く、優先的には100°C以上である、PA MPMDT/6T、PA 11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、MXDT/4T PA、MXDT/6T PA、MXDT/10T PA、PAMPMDT/4T PA、MPMDT/6T PA、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/4T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/4T、PA 11/BACT/6T、PA 11/BACT/10T、PA 11/MXDT/4T、PA 11/MXDT/6T、PA 11/MXDT/10T、PA11/MPMDT/4T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/MXDT/10T、PA11/5T/10T及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層と、を含み、
最も外側の封止層は、最も内側の中間複合補強層に溶着され、
最も外側の中間複合補強層は、最も内側の外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0127】
好ましい実施形態によれば、本発明によるタンクは、圧縮ガス、優先的には高圧下、より詳細には水素の貯蔵のための多層構造体であって、内側から外側に向かって、少なくとも以下の3つの連続する層、すなわち
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTfが280°C以下である、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、優先的にはPA 6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11及びPA12、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの半結晶性熱可塑性脂肪族ポリアミドを主成分として含む組成物からなる少なくとも1つの封止層と、
-ISO 11357-3:2013の規格に従って測定されたTgが100°C未満、優先的には80°C以下、より詳細には60°C以下であり、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、優先的にはPA 6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11又はPA12及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの半結晶性熱可塑性脂肪族ポリアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの中間複合補強層と、
-ISO 11357-3 2013の規格に従って測定されたTgが80°Cより高く、優先的には100°C以上である、PA MPMDT/6T、PA 11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/4T、PA MXDT/6T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/4T、PA MPMDT/6T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/4T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/4T、PA 11/BACT/6T、PA 11/BACT/10T、PA 11/MXDT/4T、PA 11/MXDT/6T、PA 11/MXDT/10T、PA11/MPMDT/4T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/MXDT/10T、PA11/5T/10T及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリフタルアミドを主成分として含む組成物が含浸された長繊維の形態の繊維材料からなる少なくとも1つの外側複合補強層と、を含み、
最も外側の封止層は、最も内側の中間複合補強層に溶着され、
最も外側の中間複合補強層は、最も内側の外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0128】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
-ポリアミド6のただ1つの封止層、
-そのマトリックスがポリアミド6である1つのみの中間複合強層、及び
そのマトリックスがBACT単位を含む、すなわち式A/BACTを有するコポリアミドである、ただ1つの外側複合補強層、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0129】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
-ポリアミド66のただ1つの封止層、
-そのマトリックスがポリアミド66である1つのみの中間複合強層、及び
そのマトリックスがBACT単位を含む、すなわち式A/BACTを有するコポリアミドであり、Aは上で定義される通りである、ただ1つの外側複合補強層、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0130】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
-ポリアミド11/10Tのただ1つの封止層、
-そのマトリックスがポリアミド11/10Tである1つのみの中間複合強層、及び
そのマトリックスが10T単位を含む、すなわち式A/10Tを有するコポリアミドであり、Aは上で定義される通りである、ただ1つの外側複合補強層、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0131】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
-ポリアミド11のただ1つの封止層、
-そのマトリックスがポリアミド11である1つのみの中間複合強層、及び
そのマトリックスが10T単位を含む、すなわち式A/10Tを有するコポリアミドであり、Aは上で定義される通りである、ただ1つの外側複合補強層、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0132】
別の好ましい実施形態では、本発明によるタンクは、多層構造体であって、
-ポリアミド11のただ1つの封止層、
-そのマトリックスがポリアミド11である1つのみの中間複合強層、及び
そのマトリックスが10T単位を含む、すなわち式A/10Tを有するコポリアミドであり、Aは上で定義される通りである、ただ1つの外側複合補強層、を含み、
封止層は、中間複合補強層に溶着されており、中間複合補強層は、外側複合補強層に溶着されている、多層構造体を含む。
【0133】
優先的には、前記中間複合補強層は、優先的には、多層構造体のすべての複合補強層の厚さに対して、1~10%の厚さ、さらにより優先的には1~5%の厚さを有する。
【0134】
有利には、本発明のタンクの多層構造体は、上記の異なる実施形態で定義された3つの層からなる。
【0135】
タンクについて
一実施形態によれば、本発明によるタンクは、上で定義された多層構造体と、1つ又は複数のインサートとを備えることができる。
【0136】
別の実施形態によれば、本発明によるタンクは、上で定義された多層構造体と、1つ又は複数の基部とを備えてもよい。
【0137】
さらに別の実施形態によれば、本発明によるタンクは、上で定義された多層構造体と、1つ又は複数のインサートと、1つ又は複数の基部とを備えることができる。
【0138】
本発明によって定義される「インサート」は、複合補強層の堆積前又は堆積中に挿入される部品を指す。
【0139】
インサートは、タンク及び基部の組み立てに使用されることが意図されている。
【0140】
インサートは、タンク製造ステップの開始時に挿入することができる。そのような場合、インサートは封止層の構成要素である。インセットは、例えば、その後、車両内のタンクの接続要素を支持することができる。これにより、そのような部品を初期封止層に直接連結することができる。
【0141】
優先的には、タンクは、半結晶性、優先的には脂肪族の熱可塑性ポリマーで作られた1つ又は複数の射出成形インサートを含む。
【0142】
優先的には、インサートは、主成分が、Tf<280°Cの、優先的には脂肪族の、少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリアミドを含む。
【0143】
優先的には、インサートは、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11又はPA12及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリアミドを含む。
【0144】
構造体のインサートの位置に応じて、インサートは、封止層と同じ半結晶性熱可塑性ポリアミド、又は中間複合補強層に含まれる脂肪族半結晶性熱可塑性ポリアミドで作られた射出部である。
【0145】
本発明によるタンクの一実施形態によれば、タンクは、上で定義した多層構造体と、1つ又は複数のインサートと、1つ又は2つの基部、より詳細には金属製であり、Tf<280°Cの半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族でオーバーモールドされたものとを含む。
【0146】
タンクが基部を含む場合、基部は、半結晶性熱可塑性ポリアミド、優先的には脂肪族ポリアミドでオーバーモールドされてもよい。
【0147】
優先的には、基部又は複数の基部をオーバーモールドするためのポリアミドは、PA410、PA 56、PA59、PA510、PA512、PA513、PA 514、PA6、PA 66、PA 69、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、PA1012、PApip10、PApip12、PA1014、PA1018、PA1210、PA1212、PA1214、PA1218、PA11、PA12、PA 11/5T、PA 11/6T及びPA11/10T、優先的にはPA6、PA66、PA410、PA510、PA 69、PA610、PA 512、PA612、PA 514、PA614、PA618、PA PA1010、PA1012、PA1014、PA1018、PA1214、PA1218、PA11及びPA12、優先的にはPA 11又はPA12及びそれらの混合物から選択される。
【0148】
優先的には、インサートの材料、基部をオーバーモールドする層の材料、及び封止層に含まれる材料は同じである。
【0149】
タンクの基部とインサート又は封止層との間の溶着が誘導によって行われる場合、基部の金属部分をオーバーモールドするために使用される組成物及び/又はインサートを成形するために使用される組成物は、強磁性金属粒子を含む。
【0150】
方法
本発明のさらなる主題は、上で定義されたタンクの製造方法である。方法は、以下の連続するステップ、
-中間複合補強層を封止層上に溶着する少なくとも1つのステップ、及び
-外側複合補強層を中間複合補強層上に溶着する少なくとも1つのステップ、
を含む。
【0151】
一実施形態では、タンク上に溶着する前の複合テープの加熱は、赤外線(IR)加熱、LED加熱、誘導加熱もしくはマイクロ波加熱又は高周波(HF)加熱から選択されるシステムによって行われる。前記単数又は複数の複合材テープをタンクと接触させて配置するシステムは、前記単数又は複数のテープの温度が、前記単数又は複数テープを構成する前記複合材のマトリックスを形成する樹脂の結晶化温度より高く、優先的には結晶化温度より20°C高いままであるように、十分に迅速である。
【0152】
有利には、この方法は、中間複合補強層を堆積させ、インサート及び封止層からなるアセンブリの上部に外側複合補強層の一部を堆積させることが続くか、又は堆積させず、次いでインサートに基部を溶着し、次いで外側複合補強[層]の堆積を完了させることからなる。
【0153】
別の実施形態では、基部は封止層に直接溶着されてもよい。次いで、全ての複合層:中間及び外側が堆積される。
【0154】
使用
最後に、本発明は、圧力下でのガス、特に水素、LPG、CNG、例えばエネルギー貯蔵のための圧縮空気の貯蔵のための上記のタンクの使用に関する。
【0155】
以下の実施例は本発明を例示するが、これに限定されない。
【実施例
【0156】
以下の実施例では、本発明によるタンク及び比較用タンクを製造した。本発明によるタンクは、中間複合補強層を含む多層構造体を備える。比較タンクは、いずれの中間複合補強層をも含まない多層構造体を含む。
【0157】
全ての例において、タンクは熱可塑性テープを巻くことによって製造される。熱可塑性テープは、IR加熱によって加熱される。熱可塑性テープは、12m/分の速度でロボットによって堆積される。
【0158】
本発明によるタンクに関して、本方法は、封止層の周りにテープを巻き付けることからなり、テープは、中間複合補強層の組成物で事前に予備含浸される。
【0159】
次に、熱可塑性テープを巻き付けるステップが再び実行されるが、今回、テープは外側複合補強層の組成物が事前に含浸されて、中間複合材補強材の周りに巻き付けていく。
【0160】
[実施例1及び2]
タンクの製造
タンク1及び2の封止層は、溶融温度Tf=190°CのPA11フィルムを金属マンドレルに巻き付けることによって得た。PA11フィルムを溶融すると、その場で封止層が生成される。コンポジットテープを堆積する前に、射出成形PA11インサートもマンドレル上に配置した。基部はPA11でオーバーモールドされる。
【0161】
複合補強材の厚さの合計の約1~30%の堆積後に金属マンドレルを除去した。ガラス転移温度Tg=50°CのPA11を用いて、中間複合補強層の炭素繊維に含浸させた。次いで、基部をタンクのブランクに溶着し、複合テープの巻き付けを最終タンクの製造が終了するまで続けた。下記表1に、タンクの多層構造体の材料を示す。
【0162】
【表1】
【0163】
外層の他の材料を試験して、本発明によるタンクを製造した。以下の表2は、外側複合補強層の炭素繊維を含浸する組成物について試験した材料を示す。
【0164】
【表2】
【0165】
中間複合補強層の複数の層厚、つまり構造体の全複合補強層に対して1、3、5、10、15及び30%を試験した。
【0166】
タンクの評価
タンクを目視で評価した。インサートが変形したかどうか、特に封止面の変形及びインサートの真円度のずれがあったかどうかが観察されている。
【0167】
基部とインサートとの間の溶着の質も観察された。目視検査後に質が十分に良好であると思われる場合、インサート上の基部の溶着の質は、タンクブランクを4バールで12時間加圧することによって試験される。そのような期間の終了前に溶着が漏れる場合、溶着の質は低い。そうでなければ、溶着は良好であると考えられる。
【0168】
結果が表1に示されている。
【0169】
[実施例3~4]
実施例1、2の製造方法に従い、実施例3、4を行った。
【0170】
【表3】
【0171】
本発明によるタンクを製造するために、外層の異なる材料を試験した。以下の表4は、外側複合補強層の炭素繊維を含浸する組成物について試験した材料を示す。
【0172】
【表4】
【0173】
中間複合補強層の複数の層厚、つまり構造体の全複合補強層に対して1、3、5、10、15及び30%を試験した。
【0174】
[実施例5及び6]
実施例1、2の製造方法に従い、実施例5、6を行った。
【0175】
【表5】
【0176】
本発明によるタンクを製造するために、外層の異なる材料を試験した。以下の表6は、外側複合補強層の炭素繊維を含浸する組成物について試験した材料を示す。
【0177】
【表6】
【0178】
中間複合補強層の複数の層厚、つまり構造体の全複合補強層に対して1、3、5、10、15及び30%を試験した。
【0179】
[実施例7]
実施例7のタンク内の封止層は、回転成形によって得られた。実施例7のタンクはインサートを有さない。
【0180】
2つの部分に切断した後、タンクを目視で評価した。封止層上の中間複合層の溶着の質、並びにタンクの断面を観察することによる複合層の互いの溶着の質を評価した。目視検査がタンクの厚さの剥離を見つけることにつながる場合、封止層上のテープ又はテープ同士の溶着は不十分であると結論付けられる。
【0181】
【表7】
【0182】
これらのすべての実施例の結果は、タンクの構造体に中間層が存在することに関連する利点を示している。
【国際調査報告】