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特表2024-540690誘導ステロイド生成細胞を産生する方法及び細胞治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】誘導ステロイド生成細胞を産生する方法及び細胞治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241024BHJP
   C12P 33/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/867 Z
C12P33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549575
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022081212
(87)【国際公開番号】W WO2023083839
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/263,795
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】22160480.4
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524172261
【氏名又は名称】テクニシェ ウニヴェルジテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ルイス バボット,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ボーンシュタイン,ステファン アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AH07
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA05
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する方法に関し、この方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供することを含み、好ましい実施形態において、始原細胞は多能性細胞である。本発明は更に、本発明の方法に従って生成されたか、又はプロモーター若しくはプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む、誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。本発明は更に、医薬品として使用される上記iSCに関し、好ましくはステロイド欠乏、副腎不全、又は先天性副腎過形成のいずれかの治療に使用するためのものである。本発明は更に、上記iSCを産生するためのキット、発現ベクター、及びiSC内でステロイド生成ホルモンを産生する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法であって、前記方法が、
少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を前記始原細胞に提供すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記始原細胞が、多能性細胞であり、好ましくは始原細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのTFが、前記始原細胞内の1つ以上の外因性核酸分子から、好ましくは1つ以上のウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターから発現される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記始原細胞に、前記少なくとも1つのTFが少なくとも3日間、好ましくは少なくとも7日間提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのTFが、一過性に発現され、及び/又は前記始原細胞において発現が誘導される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって生成された、誘導ステロイド生成細胞(iSC)。
【請求項7】
プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む、誘導ステロイド生成細胞(iSC)。
【請求項8】
前記外因性核酸が、ウイルスベクター、より好ましくはレンチウイルスベクターを含み、及び/又は前記プロモーターが、構成的プロモーター若しくは誘導性プロモーターである、請求項7に記載の誘導ステロイド生成細胞(iSC)。
【請求項9】
前記誘導ステロイド生成細胞(iSC)が、人工多能性幹細胞(iPSC)で発現されるレベルよりも高いレベルでSF-1を発現する、請求項7又は8に記載の誘導ステロイド生成細胞(iSC)。
【請求項10】
前記細胞が、ステロイド生成酵素のde novo発現、ステロイドホルモンのde novo産生、副腎刺激応答性、及びinvivo成長を含む群から選択される1つ以上の特徴を備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の誘導ステロイド生成細胞(iSC)。
【請求項11】
医薬品として使用される、請求項7~10のいずれか一項に記載のiSC。
【請求項12】
ステロイド欠乏、副腎不全、又は先天性副腎過形成症(CAH)の治療における使用される、請求項11に記載の使用のためのiSC。
【請求項13】
請求項5~8のいずれか一項に記載の複数のiSCが、免疫隔離デバイス内にカプセル化されている、請求項11又は12に記載の使用のためのiSC。
【請求項14】
誘導ステロイド生成細胞(iSC)においてステロイド生成ホルモンを産生する方法であって、前記方法が、
請求項7~10のいずれか一項に記載のiSCを準備することと、
iSCを培養することと、
前記培養されたiSCによって分泌されたホルモンを細胞培養物から分離することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法に従って、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生するためのキットであって、
SF1/NR5A1、及び任意に、更なるタンパク質を前記始原細胞に提供するためのベクターシステムと、
始原細胞から生成された誘導ステロイド生成細胞を検出するための試薬、例えば、
i.SF1、STAR、CYP11A1、CYP11A2、CYP11B1、CYP11B2、HSD3B2、HSD17B、HSD11B1、HSD11B2、CYP21A2、CYP17A1、GATA4、GATA6、Pax8、WT1、Dax1、MC2R、MRAP及び/又はSox2等の1つ以上のマーカータンパク質の検出のための抗体、及び/又は、
ii.NR5A1/SF1、STAR、CYP11A1、CYP11A2、HSD17B、HSD3B2、HSD11B1、HSD11B2、CYP21A2、CYP17A1、CYP11B1、GATA4、GATA6、Pax8、WT1、Dax1、Sox2、MC2R、MRAP、若しくはCYP11B2等の1つ以上のマーカーのPCRによる検出のためのプライマーと、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法に関し、この方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供することを含み、好ましい実施形態において、始原細胞は多能性細胞である。本発明は更に、本発明の方法に従って生成されたか、又はプロモーター若しくはプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む、誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。本発明はまた、医薬品として使用されるiSCに関し、好ましくはステロイド欠乏、副腎不全、又は先天性副腎過形成のいずれかの治療に使用するためのものである。本発明は更に、上記iSCを産生するためのキット、発現ベクター、及びiSC内でステロイド生成ホルモンを産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
副腎は生命維持に不可欠であり、ステロイドの合成及びホルモンの分泌を通じて基本的な生理機能を制御する。腎臓の上に位置する副腎は、体液量(volumestatus)及び塩分の恒常性、炭水化物代謝の調節に重要な役割を果たし、ストレス応答の中心的な媒介物である。副腎皮質は、下垂体前葉によって分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の制御下で糖質コルチコイドを、またレニン-アンジオテンシン系の制御下で鉱質コルチコイドを放出する重要なステロイド産生器官である。原発性又は続発性の副腎不全は、副腎の機能不全又は視床下部-下垂体軸の機能障害に起因する。どちらの場合でも、副腎皮質は十分な量の糖質コルチコイド及び副腎アンドロゲンを分泌することができない。副腎ステロイドを生成することができない原発性副腎不全は、生涯にわたるホルモン補充を必要とする生命を脅かす障害であり、慢性疲労、筋力低下、食欲不振、及び体重減少に関連する重大な病状を引き起こす可能性がある。しかしながら、これまでのところ、ホルモン補充療法はこれらの症状を部分的に緩和するだけであり、不適切な用量を受けた患者では重大な副作用につながる場合がある。副腎領域のステロイド欠乏に対する現在の治療は、ホルモン補充療法(HRT)に基づいており、1日2用量~3用量の糖質コルチコイドと、場合によっては鉱質コルチコイドの補充とからなる。実際、糖質コルチコイドの過剰補充又は不足補充は、身体機能の低下を伴い、活力及び全般的な健康状態に対する認識の低下を招き、結果として作業能力の低下につながる。その他の合併症としては、高血圧及び幾つかの代謝変化が挙げられる。
【0003】
健康な個体のコルチゾールパターンは、概日リズムに従い、不足補充期間及び過剰補充期間を伴う現在のHRTレジーム(regimes)ではそれを模倣することは困難である。糖質コルチコイドのレベルが不適切であると、活力が低下し、身体機能の低下を伴って全般的な健康状態に対する認識が低下する可能性がある。糖質コルチコイド療法による慢性的な過剰治療は、高血圧及びメタボリックシンドロームを引き起こす可能性もある。慎重に治療したとしても、患者には病気になったり、怪我をしたり、身体的ストレスを受けたりしたときに疾患関連の合併症のリスクが残り、その間は追加の投薬が必要になる。治療しないと、ホルモン欠乏により副腎クリーゼ及び死に至る可能性がある。
【0004】
副腎不全の治療における細胞療法の使用は、以前に非特許文献1及び非特許文献2によって試みられたことがある。どちらの研究でも、胚樣集合体の中で多能性細胞を培養する。多能性細胞を胚樣集合体で培養することの欠点は、分化がゆっくりと進行し、全ての細胞が望ましい系統に分化するわけではないことである。したがって、分化後、所望の細胞を集合体から分離し、面倒な細胞選別によって不要な細胞から分離する必要がある。したがって、これらの方法では副腎由来ホルモンのハイスループット生産は実現不可能である。前述の方法、並びに非特許文献3、非特許文献4、特許文献1、及び特許文献2等の多くの従来技術は、ホルモン産生細胞を生成するアプローチにおいて、血清を含む定義されていない培養培地を使用する。血清は多数の因子を含むため、かかる培養培地は分化条件の制御が不十分となり、望ましい分化状態を示す細胞の産出量が減少する。特許文献2は、生殖腺のホルモン産生細胞を生成する方法を記載する。従来技術の方法では、アルドステロン、コルチコステロン、及びコルチゾールの産生を可能にする手段は提供されていない。
【0005】
非特許文献5及び特許文献3等の他の研究は、SF-1をコードするレトロウイルス又はアデノウイルス発現コンストラクトによる感染を通じてステロイド産生細胞を生成するために、間葉系幹細胞又は骨髄細胞等の多分化能細胞を使用した。しかしながら、多分化能細胞から生成されたステロイド生成細胞は、長期にわたる増殖及び拡大の可能性を欠いており、そのため生成されたステロイド生成細胞の培養拡大及び長期維持には限界がある。
【0006】
要約すると、副腎不全及びその他の関連疾患の細胞療法に使用することができる、副腎由来のあらゆるホルモンを分泌することができる細胞を、制御してハイスループットで産生する手段を提供する従来技術の方法はない。
【0007】
従来技術を考慮すると、ステロイド産生細胞を生成するとともに、副腎不全又は他のステロイド欠乏関連疾患を治療するための手段を生成するための新たなアプローチを提供することが、当該技術分野において依然として大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080313752号
【特許文献2】国際公開第2019195828号
【特許文献3】国際公開第2006/038462号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sonoyama et al. 2012
【非特許文献2】Matsuo et al. 2017
【非特許文献3】Tanaka et al. 2020
【非特許文献4】Yazawa et al. 2016
【非特許文献5】Miyamoto et al., 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術に鑑みて、本発明の根底にある技術的課題は、ステロイド産生細胞を生成するため、及び/又は副腎不全及び他のステロイド欠乏を治療するための改良された手段又は代替手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項により提供される。
【0012】
本発明者らは、副腎不全及び他のステロイド欠乏を有する患者の治療において使用するための細胞置換プラットフォームとして使用され得るヒト細胞を提供する新たなアプローチを開発した。
【0013】
したがって、本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する方法であって、方法が、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供することを含む、方法に関する。
【0014】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する本発明による方法の一実施形態において、始原細胞は、多能性細胞である。
【0015】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する本発明による方法の別の実施形態において、始原細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0016】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する本発明による方法の更なる実施形態において、始原細胞は多能性幹細胞株であり、好ましくは人工多能性幹細胞株又はiPSC由来の多能性幹細胞株である。
【0017】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する本発明による方法の更なる実施形態において、始原細胞は、胚性幹細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞である。
【0018】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する本発明による方法の更なる実施形態において、始原細胞は、胚性幹細胞株、好ましくはヒト胚性幹細胞株である。
【0019】
本明細書においてESCに関して提示されるあらゆる実施形態又は実施例は、PSC又はiPSCでも同様の方法で行われ得る。iPSCに関する実施形態又は実施例は、ESC又はPSCを使用して行われてもよい。PSCによる実施形態又は実施例は、ESC又はiPSCを使用して行われてもよい。かかる実施形態又は実施例のいずれか1つ以上で開示される任意の特徴は、他の細胞型に関しても開示されているとみなされる。かかる実施形態は、当業者によって適宜適合され得る。
【0020】
幾つかの実施形態において、ステロイド生成細胞は、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に対して感受性であり、及び/又は応答性である。この実施形態において、細胞、ひいてはステロイド産生は概日リズムに従い、時間及び用量に応じて適切なホルモン分泌に反応することができる。
【0021】
発明者らは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からステロイド産生細胞を産生する新たな方法を開発し、従来技術で知られている方法に対する大幅な改善を提供する。本発明の方法により、ヒト胚性幹細胞(hESC)とヒト人工多能性幹細胞(iPSC)の両方のヒト多能性幹細胞からステロイドホルモンを産生することができる数十億個の細胞を生成できるようになったことは全く驚くべきことであった。これらの細胞を生成するために、本発明の方法は、転写因子であるステロイド生成因子1(SF-1、遺伝子NR5A1)を過剰発現するレンチウイルスを使用する。SF1遺伝子を含むレンチウイルスに細胞が感染すると、ステロイド生成酵素をdenovo発現し、培地中に検出可能なレベルのステロイド生成ホルモンを分泌する。本発明に従って生成されるステロイド産生細胞の驚くべき技術的効果は、副腎不全の治療に使用できることである。これまで、hESC又はiPSCベースの治療法は知られておらず、現在使用されている標準的なホルモン補充療法には多くの制限があり、不適切な糖質コルチコイド補充による副作用、糖質コルチコイドレベルの日内リズムの不十分さ、及びストレス時の糖質コルチコイド放出の欠如等、数多くの欠点がある。
【0022】
ホルモン補充療法による現在の治療と比較すると、本発明によるステロイド産生細胞の使用は、本発明が生理的ホルモン分泌の回復、視床下部-下垂体-副腎(HPA)内分泌軸の再構築を促進し、現在の治療アプローチの臨床症状及び副作用を最小限に抑えるため、ステロイドホルモンの恒常性及び患者の健康において明らかな臨床的利点を提供する。
【0023】
本発明は、一実施形態において、(ヒト)人工多能性幹細胞又はヒト胚性幹細胞(又は細胞株)のいずれかから大量のステロイド産生細胞を産生する方法に関する。一実施形態において、多能性幹細胞を対応するレンチウイルスベクターに感染させ、その結果、転写因子SF1が過剰発現され、ステロイドホルモンが分泌される。幾つかの実施形態において、ステロイド産生細胞がACTH(副腎皮質刺激ホルモン)によっても調節され、それによって概日リズムに従い、時間及び用量に応じて適切なホルモン分泌に反応することができることが重要であり得る。従来のホルモン補充療法とは対照的に、本発明の実施形態は、昼夜に必要なステロイドホルモンのパルス状の概日性の放出が回復されるという利点を有する。
【0024】
副腎不全又は他のステロイド欠乏を有する患者の治療(細胞療法)に関する本発明の実施形態において、本発明に従って生成された細胞を包み込むか隔離し、栄養を与え、同時に患者の免疫系から保護するために免疫隔離デバイスが使用される。免疫隔離デバイスの使用により、細胞を容易に監視し、細胞の交換が可能になり、細胞の発癌又は免疫拒絶の懸念を回避することができる。免疫隔離デバイスは、患者に部分的若しくは全体的に埋め込むこともでき、又は適切な手段で患者の身体に接続することもできる。患者の身体にデバイスを埋め込み、及び/又は接続することにより、患者は細胞及びステロイドホルモン等の細胞から排出される物質に常に曝露されることが可能になる。
【0025】
したがって、一実施形態において、本発明は、本発明に従って生成された細胞を(ヒトの)患者の免疫系から保護するための免疫隔離デバイスの使用にも関する。この方法は既に糖尿病を対象とした治療の臨床試験に応用されている。
【0026】
本発明の一般的な目的は、副腎不全又は他のステロイド欠乏(すなわち、性腺機能低下症)の患者の治療である。この技術の全体的な意義及び重要性は、1)視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸及びレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)からの刺激によって適切に調節することができ、2)時間及び用量依存に適切なホルモン分泌に反応することができる、ステロイド生成細胞を移植できることである。この細胞アプローチを使用することで、患者は、従来のホルモン補充療法に固有の大きな課題の1つである、昼夜を通じて必要なホルモンのパルス状及び概日性の放出を回復するという追加の潜在的利点を有する。
【0027】
一実施形態において、本発明に従って生成されたこれらのステロイド生成細胞は、鉱質コルチコイド、及び/又は糖質コルチコイド、及び/又はアンドロゲンを産生する。一実施形態において、本発明に従って生成されたこれらのステロイド生成細胞は、性ステロイドも産生し、性腺ホルモンを欠く患者の治療に使用することができる。
【0028】
本発明は、一実施形態において、副腎不全又は性腺機能低下症等のステロイド欠乏を引き起こす他の疾患を有する患者の治療を可能にすることを意図している。治療しないと、副腎不全は副腎クリーゼを引き起こし、最終的には死に至る可能性がある。これまでの治療法は、概日リズムを模倣するように設計されたホルモン補充療法に基づいていた。しかしながら、ホルモン補充療法では、生理的ニーズへのこの応答性は依然として限られている。一方では、毎日のリズムに応じて、対応するステロイドホルモンの供給が段階的に過剰になるか、又は不足する。一方では、ホルモン補充療法を中止することは、特にストレス及び病気がある場合には非常に困難である。その結果、患者は、例えば、健康状態の重篤な障害及び全般的な健康状態の悪化(例えば、肥満、骨粗鬆症、高血圧、耐糖能障害)を示す。したがって、より良い治療解決策が早急に必要とされている。本発明は、かかる改善された治療解決策を提供する。従来のホルモン補充療法とは対照的に、本発明の実施形態による細胞療法は、昼夜に必要なステロイドホルモンのパルス状の概日性放出が回復されるという利点を有する。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する方法に関し、少なくとも1つのTFが始原細胞内の1つ以上の外因性核酸分子、好ましくは1つ以上のウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターから発現される。他の実施形態において、レトロウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルスベクターが使用されてもよい。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する方法に関し、始原細胞には、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも7日間少なくとも1つのTFが提供される。他の実施形態において、始原細胞には、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、32日間、33日間、34日間、35日間、36日間、37日間、38日間、39日間、40日間、45日間、50日間、55日間、60日間、65日間、70日間、75日間、80日間、85日間、90日間、100日間、150日間、200日間、250日間、300日間、350日間、又は365日間、少なくとも1つのTFが提供される。特定の実施形態において、始原細胞には少なくとも1つのTFが永続的に提供される。他の実施形態において、始原細胞には、1日~365日、1日~250日、1日~100日、1日~50日、5日~25日、1日~7日、1日~14日、1日~8日、7日~14日、1日~21日、1日~28日、1日~35日、1日~42日、1日~49日の間、又は本発明による細胞培養の長期維持の場合には1日から数年の間、少なくとも1つのTFが提供される。他の実施形態において、始原細胞には、1週間~2週間、1週間~3週間、1週間~4週間、1週間~5週間、1週間~6週間、1週間~7週間、1週間~8週間、1週間~9週間、若しくは1週間~10週間、又は1年~2年、1年~3年、1年~4年、1年~5年、1年~6年、1年~7年、1年~8年、1年~9年、1年~10年、1年~20年、1年~30年、1年~40年、1年~50年、1年~60年、1年~70年、1年~80年、1年~90年、若しくは更には1年~100年の間少なくとも1つのTFが提供される。別の実施形態において、始原細胞には、培養、又は始原細胞の播種/プレーティング/解凍、又は継代後1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目、45日目、50日目、55日目、60日目、65日目、70日目、75日目、80日目、85日目、90日目、95日目、100日目、150日目、200日目、250日目、300日目、350日目若しくは365日目、又は更に後の時点で少なくとも1つのTFが提供される。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのTFが一過性に発現され、及び/又は発現が始原細胞内で誘導される、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を生成する方法に関する。
【0032】
特定の実施形態において、少なくとも1つのTFの発現は誘導可能である。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのTFの発現は、特定の刺激によって誘導(開始又は始動)され、刺激は、幾つかの実施形態において、抗生物質又はシグナル伝達分子等の特定の物質であり得る。特定の実施形態において、抗生物質は、ブラストサイジン、ドキシサイクリン、ピューロマイシン又はテトラサイクリンを含む群から選択される。幾つかの実施形態において、発現は、始原細胞の培養の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目、45日目、50日目、55日目、60日目、65日目、70日目、75日目、80日目、85日目、90日目、95日目、100日目、150日目、200日目、250日目、300日目、350日目若しくは365日目、又は始原細胞に少なくとも1つのTFを提供した後の各日において誘導される。
【0033】
特定の実施形態において、本発明の方法は、PSC(多能性幹細胞)からステロイド産生3D培養物、3D細胞集合体又はオルガノイドを生成する方法にも関する。本発明の幾つかの特定の実施形態によれば、PSC、iPSC、又は(h)ESCのステロイド生成細胞への分化は、好ましくは小分子及びモルフォゲン、例えば一実施形態において転写因子SF1を使用して、ヒト副腎皮質の発達の確立された段階を再現することによって達成され得る。一実施形態において、モルフォゲンは、例えばウイルスベクターを使用する外因性発現ベクターを介して導入されてもよい。
【0034】
更なる実施形態において、本発明はステロイド産生オルガノイドに関する。幾つかの実施形態において、上記ステロイド産生オルガノイドは、特異的なステロイド生成酵素の発現及び/又はホルモン産生を特徴とする。
【0035】
幾つかの実施形態において、これらの細胞の検証は、PSCのCRISPR-Cas9遺伝子編集によって達成され得て、原発性副腎不全の最も一般的な原因である先天性副腎過形成(CAH)を引き起こす変異を含む細胞株を操作する。幾つかの実施形態において、これらの細胞の分化により、CAHのinvitroモデリングが可能になる。幾つかの実施形態は、遺伝子編集を使用してステロイド産生オルガノイドの酵素活性を修正できるという原理証明も提供する可能性がある。
【0036】
本発明は、別の態様において、副腎不全の動物モデル、例えばマウス又はラットモデル等における移植を用いたステロイド産生オルガノイドの機能分析に関する。幾つかの実施形態において、確立された副腎不全のマウスモデルを使用して、細胞療法のためのヒトステロイド産生オルガノイドの可能性を評定してもよい。更なる実施形態において、オルガノイドの成長、生存、及びホルモン産生をinvivoで評定することができる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態において、始原細胞は、多能性幹細胞株である。幾つかの実施形態において、始原細胞は、iPSC由来の多能性細胞株である。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態において、始原細胞は、ヒト胚性幹細胞株である。幾つかの実施形態において、始原細胞は、H9又はH1 hESC株である。
【0039】
幹細胞株は、幾つかの実施形態において、以下の利点を提供する:i)ステロイド生成能:H9 hESC株は、SF16の過剰発現(陽性対照として使用可能)を使用してステロイド生成系統に再プログラムできる;ii)十分に確立された株:H9hESC株は完全に特徴付けられており、世界中で広く使用されている;iii)疾患モデリングのための優れたプラットフォーム:CRISPR/Cas9編集されたhESC及びアイソタイプ対照株は、異なる遺伝的背景を持つ細胞間の比較を回避しながら、所与の変異の影響を評定するための優れたモデルである。さらに、CRISPR-Cas9ゲノム編集は、以前にH9 hESCの複数の遺伝子座で成功している;iv)実験結果のばらつきの低減:hESCは(個々の患者由来のiPSCと比較して)安定した遺伝的背景を提供し、再現性のある分化結果を実現する;v)多能性及び自己複製能力:hESCは体内で任意の細胞型を生成することができ、その自己複製能力により、オルガノイド内で幹細胞プールを長期維持することを可能にし得る;幾つかの実施形態において、H9hESC株の使用により、同様の特性を持つステロイド産生オルガノイドを生成するための普遍的で均質な細胞源を提供することができ、これは品質管理が可能であり、幾つかの実施形態において、副腎不全に罹患している患者に対する将来の細胞療法のために免疫隔離チャンバーにカプセル化することができる。
【0040】
hESC(ヒト胚性幹細胞)からのステロイド産生オルガノイドの生成のための本発明の方法の幾つかの実施形態において、中間中胚葉を生成するための始原細胞としてH9hESC細胞株が使用される(一実施形態について、図11を参照されたい)。幾つかの実施形態において、遺伝子発現プロフファイルを、RT-qPCR及び免疫染色によって実施し、各発達段階の進行を検証することができる(多能性マーカー:OCT4、SOX2;後期原始線条:TBXT;中間中胚葉マーカー:WT1、OSR1、HOXD11)。幾つかの実施形態において、hESCから生成された中間中胚葉をスクリーニングプラットフォームとして使用し、SF1発現を誘導する能力を持つ小分子及び/又はモルフォゲンを同定することができる。幾つかの実施形態において、かかる因子は、副腎皮質の発達に関与することが知られている因子、又は副腎シグナル伝達経路を調節することが知られている因子(Wnt4、Rspo1、Rspo3、CHIR99021、BIO、SANT1、シクロパミン、フォルスコリン、db-cAMP、br-cAMP、FGF-2、FGF-9、アクチビン-A、インヒビン-α、SB431542、IGF-1、IGF-2、ダサチニブ、パゾパニブ、ロットレリン、レチノイン酸及びBMP4)を含む。幾つかの実施形態において、ウイルス導入を用いた中間中胚葉細胞におけるSF1の過剰発現は、ステロイド生成系統への誘導の陽性対照として使用され得る。
【0041】
幾つかの実施形態において、ACTH受容体(MC2R)及び/又はその共受容体(MRAP)の過剰発現を使用して、iSCにおける基礎コルチゾール産生及びACTH刺激によるコルチゾール産生を増加させ得る。幾つかの実施形態において、特異的なプロモーター、好ましくはCMVプロモーターの下でMC2R及び/又はMRAPをコードするバイシストロニックベクターを使用して、本発明によるレンチウイルスベクター及び/又はレンチウイルス粒子を生成し得る(図14B及び表1、列1を参照されたい)。
【0042】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、方法は、ACTH受容体及び/又はその共受容体を始原細胞に提供することを更に含む。実施形態において、ACTH受容体はMC2Rであり、その共受容体はMRAPである。
【0043】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、方法は、少なくとも1つの転写因子(TF)及び/又はACTH受容体及び/又はその共受容体の発現を含む。
【0044】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)、及び/又はACTH受容体MC2R及び/又はその共受容体MRAPの発現を含む。
【0045】
実施形態において、上記遺伝子(複数の場合もある)は、始原細胞で発現される。実施形態において、上記遺伝子(複数の場合もある)は、iSC内で発現される。実施形態において、上記遺伝子(複数の場合もある)は始原細胞に提供され、特定の時間で発現が誘導されるか、又は上記遺伝子(複数の場合もある)は継続的に発現される。
【0046】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、方法は、少なくとも1つの転写因子(TF)及び/又はACTH受容体及び/又はその共受容体の過剰発現を含む。
【0047】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)、及び/又はACTH受容体MC2R及び/又はその共受容体MRAPの過剰発現を含む。
【0048】
実施形態において、少なくとも1つの転写因子(TF)及び/又はACTH受容体及び/又はその共受容体は、始原細胞及び/又はiSC内の1つ以上の外因性核酸分子から発現される。
【0049】
実施形態において、方法は、始原細胞に少なくとも1つの転写因子(TF)、ACTH受容体、及びその共受容体を提供することを含む。実施形態において、方法は、少なくとも1つの転写因子(TF)、ACTH受容体及びその共受容体の発現を含む。実施形態において、ACTH受容体はMC2Rであり、共受容体はMRAPであり、少なくとも1つの転写因子(TF)は少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む。
【0050】
実施形態において、1つ以上の外因性核酸分子はウイルスベクターであり、好ましくはレンチウイルスベクターである。
【0051】
実施形態において、方法は、1つ以上の外因性核酸分子を含む1つ以上のウイルス粒子、好ましくはレンチウイルス粒子で始原細胞を感染させることを含む。
【0052】
実施形態において、1つ以上の外因性核酸分子は、SF1をコードする領域及び/又はMC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む。
【0053】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の実施形態において、iSCは、好ましくはACTH受容体及び/又は共受容体の発現がないか又は発現が低い細胞と比較して、増強されたACTH応答性を示す。実施形態において、ACTH応答性の増強は、ACTH受容体及び/又はその共受容体の(過剰)発現に少なくとも部分的に起因する。
【0054】
始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法の幾つかの実施形態において、方法は、
少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供し、更にACTH受容体MC2R及び/又はその共受容体MRAPを始原細胞に提供し、好ましくは、少なくとも1つのTF及び/又はMC2R及び/又はMRAPは、始原細胞内の1つ以上の外因性核酸分子から、好ましくは1つ以上のウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターから発現される。実施形態において、SF-1とMC2R及びMRAPの両方が1つ以上の外因性核酸分子から発現される。好ましい実施形態において、MC2R及びMRAPは、同じ外因性核酸分子からバイシストロニックに発現される。
【0055】
実施形態において、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供し、更にACTH受容体、好ましくはMC2Rを始原細胞に提供することを含む。実施形態において、ACTH受容体、好ましくは、MC2Rは、始原細胞内の外因性核酸分子、好ましくはウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターから発現される。
【0056】
幾つかの実施形態において、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法は、少なくともステロイド生成因子1(SF-1)を含む少なくとも1つの転写因子(TF)を始原細胞に提供し、更にACTH受容体共受容体、好ましくはMRAPを始原細胞に提供することを含む。実施形態において、ACTH受容体共受容体、好ましくは、MRAPは、始原細胞内の外因性核酸分子、好ましくはウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターから発現される。
【0057】
上記実施形態の幾つかでは、MC2R及びMRAPは、始原細胞内の同じ外因性核酸分子から、好ましくは同じウイルスベクターから、より好ましくは同じレンチウイルスベクターから発現される(例えば、図7B及び図14Bを参照されたい)。他の実施形態において、MC2R及びMRAPは、始原細胞内の2つの別々の外因性核酸分子から、好ましくは2つのウイルスベクターから、より好ましくは2つのレンチウイルスベクターから発現される。
【0058】
図7Eに示すように、細胞内にACTH受容体MC2R及び/又はその共受容体MRAPが存在すると、ACTH刺激は細胞内シグナル伝達カスケードを誘導し、培養上清へのコルチゾールの産生及び分泌が上方制御される。MC2R及びMRAPをコードするレンチウイルスベクターによる感染により、本発明による細胞のACTH応答性が増加したことの実験的証明が、図15B図15Dの棒グラフに示される。
【0059】
理論に縛られるものではないが、驚くべきことに、SF-1及びMC2R及び/又はその共受容体MRAPの外因性発現による、本発明の細胞のACTHに対する応答性の改善という予期せぬ相乗効果は、外因性SF-1単独発現によるACTH下流機構の発現が不十分なことに少なくとも部分的に起因している可能性があることが観察される。SF-1のみが外因的に発現されると、機能的なACTH下流シグナル伝達が欠如するように見える。SF-1及びMC2R及び/又はその共受容体MRAPの外因性発現により、細胞は分化プロセス後に機能的なACTH応答性を獲得する。
【0060】
実施形態において、外因性核酸分子、好ましくはウイルスベクター、より好ましくは、レンチウイルスベクターは、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、蛍光タンパク質は、標的遺伝子(複数の場合もある)、例えば、SF1、MRAP、及び/又はMC2Rが上記外因性核酸分子から発現される場合にのみ、同時に発現される。幾つかの実施形態において、標的遺伝子は、上記標的遺伝子によってコードされるタンパク質が蛍光タンパク質を含む(蛍光タンパク質で標識される)ように発現される。好ましい実施形態において、標的遺伝子は蛍光タンパク質とは別のタンパク質(複数の場合もある)として発現され、その結果、標的遺伝子(複数の場合もある)は別のタンパク質(複数の場合もある)(蛍光タンパク質と融合されていない)として発現され、蛍光タンパク質は別のタンパク質として発現される。上記実施形態において、両方の/全ての遺伝子は、好ましくは同時に又はほぼ同時に発現され、その結果、標的遺伝子(複数の場合もある)をコードする外因性核酸分子が細胞にうまく提供されたことが蛍光タンパク質の発現によって検出することができる。実施例を図16に開示し(SF-1は、蛍光タンパク質EGFPと共に発現する)、また、レンチウイルス発現ベクター骨格の非限定的な例を図18に開示する。図16に示す実験では、外因性核酸(図18に示すウイルス発現ベクター)がIRES及びSF-1と共にEGFPをバイシストロニックにコードするため、EGFPとSF-1は同じ細胞で同時に発現するが、「標的遺伝子」であるSF-1自体は標識されない(EGFP融合遺伝子はない)。
【0061】
ここで、蛍光タンパク質は、限定されるものではないが、GFP、EGFP、YFP、BFP、mCherry、iRFP、及びAzuriteを含む。当業者は、それぞれの実験状況に応じて選択され、標的遺伝子と組み合わせることができる適切な蛍光タンパク質を知っている。
【0062】
別の態様において、本発明は、本発明による方法によって生成された誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。
【0063】
別の態様において、本発明は、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、好ましくは、上記外因性核酸で遺伝子改変されている。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、外因性核酸は、ウイルスベクター、より好ましくはレンチウイルスベクターを含む。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、プロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターである。
【0066】
別の実施形態において、本発明は、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、人工多能性幹細胞(iPSC)で発現されるレベルよりも高いレベルでSF-1を発現する。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、細胞は、ステロイド生成酵素のdenovo発現、ステロイドホルモンのde novo産生、副腎刺激応答性、in vitro成長及びin vivo成長を含む群から選択される1つ以上の特徴を備える。
【0068】
実施形態において、本発明の誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、転写因子SF-1を発現する。
【0069】
実施形態において、本発明の誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、転写因子SF-1を過剰発現する。
【0070】
実施形態において、本発明の誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、ACTH受容体及び/又はACTH受容体共受容体を発現する。
【0071】
実施形態において、本発明の誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、ACTH受容体及び/又はACTH受容体共受容体を過剰発現する。
【0072】
実施形態において、ACTH受容体はMC2Rであり、共受容体はMRAPである。
【0073】
実施形態において、ACTH受容体及び/又はACTH受容体共受容体を発現又は過剰発現する誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、好ましくはACTH受容体及び/又は共受容体の発現がない又は発現が低い細胞と比較して、増強されたACTH応答性を示す。
【0074】
幾つかの実施形態において、本発明は、SF1コード化領域及び/又はMC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む1つ以上の外因性核酸分子を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。実施形態において、1つ以上の外因性核酸分子は、ACTH受容体MC2R及びその共受容体MRAPをバイシストロニックにコードする領域を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、本発明は、SF1コード化領域及び/又はMC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む1つ以上の外因性核酸分子を含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、上記領域は、同じ又は別のプロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(複数の場合もある)に作動可能に連結されている。
【0076】
幾つかの実施形態において、本発明は、SF1コード化領域を含む1つの外因性核酸分子と、MC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む1つの外因性核酸分子とを含む誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、各外因性核酸分子上の上記領域は、同じ又は別々のプロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(複数の場合もある)に作動可能に連結されている。
【0077】
実施形態において、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(複数の場合もある)のプロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターである。実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーターである。実施形態において、エンハンサーは、CMVエンハンサーである。
【0078】
実施形態において、外因性核酸分子、好ましくは、ウイルスベクターは、MC2R及び/又はその共受容体MRAPを含み、好ましくはバイシストロニックに共発現する。
【0079】
幾つかの実施形態において、外因性核酸分子はウイルスベクター、より好ましくはレンチウイルスベクターを含む。
【0080】
実施形態において、本発明によるiSCは、SF1コード化領域を含む1つの外因性核酸と、MC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む1つの外因性核酸とを含む。上記外因性核酸の好ましい実施形態において、MC2R及び/又はMRAPをコードする領域は、同じ又は別のプロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(複数の場合もある)に作動可能に連結されている。
【0081】
実施形態において、本発明によるiSCは、SF1コード化領域を含む1つの外因性核酸と、MC2Rをコードする領域及び/又はその共受容体MRAPをコードする領域を含む1つの外因性核酸とを含み、細胞は、ステロイド生成酵素のdenovo発現、ステロイドホルモンのde novo産生、副腎刺激応答性、in vitro成長及びin vivo成長を含む群から選択される1つ以上の特徴を備える。
【0082】
幾つかの実施形態において、ウイルスベクターはまた、GFP若しくは任意の他の蛍光タンパク質を含んでもよく、好ましくはバイシストロニックに共発現してもよく、及び/又は選択に使用され得る哺乳動物耐性カセットを含んでもよい。幾つかの実施形態において、SF1の形質導入によってSTARの発現が誘導され得るため、ステロイド生成急性調節タンパク質(STAR)の発現を初期実験の読み出し情報として使用することができる。
【0083】
別の態様において、本発明は、医薬品として使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。
【0084】
更なる実施形態において、本発明は、ステロイド欠乏の治療に使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。
【0085】
更なる実施形態において、本発明は、副腎不全の治療に使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。
【0086】
更なる実施形態において、本発明は、先天性副腎過形成(CAH)の治療に使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関する。
【0087】
幾つかの実施形態において、本発明は、医薬品として使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、iSCは、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーの組み合わせに作動可能に連結されたSF1コード化領域を含む外因性核酸を含み、誘導ステロイド生成細胞(iSC)は、好ましくは、上記外因性核酸で遺伝子改変されている。
【0088】
幾つかの実施形態において、本発明は、医薬品として使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、複数のiSCが免疫隔離デバイス内にカプセル化されている。更なる実施形態において、本発明は、ステロイド欠乏、副腎不全、又はCAH(先天性副腎過形成症)の治療に使用される誘導ステロイド生成細胞(iSC)に関し、複数のiSCが免疫隔離デバイス内にカプセル化されている。実施形態において、複数のiSCは、本発明によるiSCを含む。
【0089】
別の態様において、本発明は更に、誘導ステロイド生成細胞(iSC)においてステロイド生成ホルモンを産生する方法であって、方法が、
本発明に記載のiSCを準備することと、
iSCを培養することと、
培養されたiSCによって分泌されたホルモンを細胞培養物から分離することと、
を含む、方法に関する。
【0090】
幾つかの特定の実施形態において、始原細胞は個々の患者から得られたiPSCであり、その後、患者は「自身の」iPSCから得られた本発明による細胞又は細胞産物で治療される。この個別化医療アプローチは、幾つかの実施形態において、導入されたステロイド生成細胞又は細胞産物に対する患者の免疫系の攻撃を軽減することができる。
【0091】
更なる態様において、本発明は、本発明の方法に従って、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生するためのキットであって、
SF1/NR5A1、及び任意に、更なるタンパク質を始原細胞に提供するためのベクターシステムと、
始原細胞から生成された誘導ステロイド生成細胞を検出するための試薬、例えば、
i.SF1、STAR、CYP11A1、CYP11A2、CYP11B1、CYP11B2、HSD3B2、HSD17B、HSD11B1、HSD11B2、CYP21A2、CYP17A1、GATA4、GATA6、Pax8、WT1、Dax1、MC2R、MRAP及び/又はSox2等の1つ以上のマーカータンパク質の検出のための抗体、及び/又は、
ii.NR5A1/SF1、STAR、CYP11A1、CYP11A2、HSD17B、HSD3B2、HSD11B1、HSD11B2、CYP21A2、CYP17A1、CYP11B1、GATA4、GATA6、Pax8、WT1、Dax1、Sox2、MC2R、MRAP、若しくはCYP11B2等の1つ以上のマーカーのPCRによる検出のためのプライマーと、
を含む、キットに関する。
【0092】
別の態様において、本発明は、1つ以上のプロモーターに作動可能に結合された1つ以上の核酸配列を含む発現ベクターシステムに関し、上記配列は、少なくともSF1を含む1つ以上の転写因子(TF)及び任意に更なるタンパク質をコードする。
【0093】
一実施形態において、本発明は、hESCをステロイド生成細胞に分化させる方法に関する。これは、幾つかの実施形態において、小分子及びステロイド生成因子1(SF-1)の過剰発現を使用して、ヒト副腎皮質の発達の初期段階を再現し、hESCからステロイド産生オルガノイド又は3D培養物を生成するためのプロトコルを最適化することによって達成され得る。この特定の実施形態は、SF-1発現を誘導して機能的かつホルモン応答性のステロイド生成オルガノイドを生成するために、導入遺伝子フリー戦略を採用することを目的としている。
【0094】
一実施形態において、本発明は、現在の治療上の限界の幾つかを克服し得る、ホルモン産生、刺激応答性ステロイド生成細胞(iSC)を使用して、CAH患者を治療する方法に関する。この分野におけるこの実施形態の全体的な意義及び重要性は、1)視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸及びレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)からの刺激によって適切に調節することができ、2)時間及び用量に依存的に適切なホルモン分泌により反応することができるステロイド生成細胞を移植できることである。この特定の実施形態の細胞アプローチを使用すると、患者は、従来のHRTに固有の大きな課題の1つである、昼夜を通じて必要なホルモンのパルス状の概日性放出を回復するという追加の潜在的な利点を得ることができる。
【0095】
本発明の一態様について本明細書に記載される実施形態は、本発明の他の態様のいずれかの実施形態であってもよい。したがって、本発明による方法に関して記載される実施形態は、iSC細胞、細胞の医薬品としての使用、ステロイド生成ホルモンを産生する方法、及び本明細書に開示されるキットの実施形態であり得る。さらに、本明細書に記載のいずれの実施形態も、本発明の任意の他の実施形態の特徴を含み得る。
【0096】
発明の詳細な説明
特許及び非特許文献の言及された全ての文献はその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0097】
一実施形態において、本発明は、始原細胞から誘導ステロイド生成細胞(iSC)細胞を産生する方法に関し、方法は、始原細胞に少なくとも1つの転写因子(TF)を提供することを含み、少なくとも1つの転写因子(TF)はSF1であり、始原細胞は、幾つかの実施形態において、好ましくは胚性幹細胞、胚性幹細胞株、人工多能性幹細胞(iPSC)、人工多能性幹細胞株、又はiPSC由来の多能性細胞株のいずれかである多能性細胞であってもよい。
【0098】
副腎で生成される主なホルモンとしては、コルチゾール、アルドステロン、DHEA、及びアンドロゲンステロイド、エピネフリン(アドレナリン)、及びノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が挙げられる。副腎皮質は、鉱質コルチコイド(最も重要なのはアルドステロン)、糖質コルチコイド(主にコルチゾール)、及び副腎アンドロゲン(例えば、主にデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びテストステロンの男性ホルモン)の3つのホルモンを生成する。下垂体前葉から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、主に副腎による糖質コルチコイド及び副腎アンドロゲンの放出に影響を及ぼし、ごくわずかであるがアルドステロンの放出も刺激する。副腎髄質はアドレナリン、ノルアドレナリン、及び少量のドーパミンを含むカテコールアミンを産生する。
【0099】
「副腎皮質刺激ホルモン受容体」(ACTH受容体)は、メラノコルチン受容体2(MC2R)としても知られており、メラノコルチン受容体(2型)の一種である。MC2RはACTHに特異的であり、ACTHに結合するにはメラノコルチン2受容体アクセサリタンパク質1(MRAP1)への結合が必要であると理解されている。
【0100】
本明細書において、CAHは、ステロイド生成酵素における変異によって引き起こされ、原発性副腎不全の最も一般的な原因であり、世界中で約18000人に1人の割合で発症する、先天性副腎過形成(CAH)を指す。CYP21A2遺伝子の欠陥は、CAHの最も一般的な形態である。
【0101】
本発明の方法は、1つ以上の転写因子を提供することに関する。本発明の文脈において、転写因子又はマイクロRNA等の他の因子を提供することは、TFを提供又は利用可能にすること、TFを始原細胞と接触させること若しくはTFを細胞内に導入すること、又はTFを始原細胞内若しくは始原細胞の近くで産生させることに関する。TFは、タンパク質レベルで提供される場合もあれば、TFをコードする核酸の形で提供される場合もある。したがって、TFをコードする外因性核酸分子を送達する場合、外因性核酸分子からのタンパク質の発現時にTFが提供される。TFを、任意の所与の核酸分子からの発現を通じて提供することができる。これは、内因性又は外因性の核酸分子からのそれぞれのTFの発現の活性化を含む。さらに、TFは、例えばタンパク質トランスフェクションによって細胞に直接送達することができる。好ましくは、TFの発現は、始原細胞、例えばiPSCよりも多くの量で起こる。
【0102】
TFの提供は、外因性核酸分子等の核酸分子からの発現によって起こり得る。本明細書において使用される場合に、「核酸」は、DNA、RNA、及びそれらのハイブリッド又は改変変異体を含むがこれらに限定されない任意の核酸分子を意味するものとする。「外因性核酸」又は「外因性遺伝要素」は、細胞に導入された任意の核酸に関し、細胞の「元の」又は「天然の」ゲノムの成分ではない。本明細書では、「(外因性)核酸分子」及び「(外因性)核酸」という用語は区別なく使用され得る。外因性核酸は、標的幹細胞の遺伝物質に組み込まれているか、若しくは組み込まれていないか、又は安定して形質導入された核酸に関連している場合がある。外因性核酸の送達は、外因性核酸分子が始原細胞において永久的に組み込まれることによって、始原細胞の遺伝子改変につながる可能性がある。しかしながら、外因性核酸の送達は一過性である可能性もあり、これは、1つ以上のTFの提供のために送達された遺伝物質が、一定時間後に細胞から消失することを意味する。
【0103】
核酸分子の送達及び、哺乳動物細胞又はヒト細胞、好ましくはヒトiPSC等の始原細胞の潜在的な遺伝子改変は、一般に利用可能な技術を使用して当業者によって実施及び決定され得る。例えば、遺伝子改変を検出するために、始原細胞のゲノム又はその一部の配列決定が可能であり、それによって外因性の核酸が存在するかどうかを識別することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の他の分子生物学的手法を適用して、外因性遺伝物質を識別/増幅してもよい。外因性核酸は、ベクター配列、又は遺伝子改変部位に残っているベクター配列の一部によって検出される場合がある。ベクター配列(例えば、治療用導入遺伝子を挟むベクター配列)をゲノムから除去できる場合でも、治療用導入遺伝子の付加は、ゲノム内の「非天然」の位置に治療用遺伝子を組み込んだゲノム配列を検出することによって、配列決定作業によって検出される可能性がある。
【0104】
核酸分子を送達するための任意の所与の遺伝子送達方法が本発明によって包含され、好ましくは、ウイルス又は非ウイルスベクター、及び生物学的又は化学的トランスフェクション方法に関する。これらの方法により、使用されるシステムで安定した遺伝子発現又は一過性の遺伝子発現を得ることができる。さらに、1つ以上の転写因子及び/又はマイクロRNA又はその他の因子の提供について言及する場合、哺乳類細胞へのタンパク質の送達に関する当業者に知られているあらゆる方法が本発明に包含される。核酸分子及びタンパク質、並びに本発明の方法の文脈において因子として作用し得る他の生物学的分子及び化学的分子を送達するためのあらゆる既知の方法が包含される。これは特に、マイクロインジェクション、トランスフェクション、形質導入、小胞融合、及び電気穿孔法を含む。
【0105】
一実施形態において、本発明は、誘導ステロイド生成細胞(iSC)を産生する方法に関し、TFは、始原細胞内の1つ以上の外因性核酸分子から発現され、外因性核酸は、ウイルスベクター、より好ましくはレンチウイルスベクターを含む。遺伝子組み換えウイルスは、哺乳動物細胞、特に幹細胞への遺伝子の送達に広く応用されてきた。本発明の文脈において、ウイルスベクターが使用され得る。
【0106】
本明細書に記載の始原細胞の遺伝子改変のための好ましいウイルスベクターは、レンチウイルスベクターに関する。当業者は、多能性細胞の遺伝子改変におけるレンチウイルスの利用に必要な技術を認識している。
【0107】
レンチウイルスは、レトロウイルス科のウイルスのメンバーであり、レンチウイルスベクターは、LTRとシス作用パッケージングシグナルを除くウイルス配列全体を欠失させることによって生成される。得られたベクターは、約8 kbのクローニング容量を有する。これらのベクターとレトロウイルスベクターとを区別する特徴の1つは、分裂細胞及び非分裂細胞、並びに最終分化細胞に形質導入する能力である。
【0108】
本発明は、発現ベクターを、それを必要とする対象に投与することを更に包含する。「ベクター」とは、核酸を宿主細胞に移行させるための任意の手段である。好ましいベクターは、別のDNAセグメントが結合されて結合されたセグメントの複製を引き起こすことができるレプリコンに関する。本明細書において使用される場合に、「ベクター」という用語は、具体的には、核酸をin vitro、ex vivo、又はin vivoで細胞に導入するための手段を指す。ウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックス、バキュロウイルス、ワクシニア、単純ヘルペス、エプスタイン-バー、アデノウイルのスベクターが挙げられる。
【0109】
アデノウイルス、又はレンチウイルス等のRNAウイルス、又はその他のレトロウイルスを適用してもよい。アデノウイルスは、遺伝子導入細胞工学のための一連のベクターを生成するために使用されてきた。アデノウイルスベクターの最初の世代は、El遺伝子(ウイルス複製に必要)を欠失させて4 kbのクローニング能力を持つベクターを生成することによって産生された。E3(宿主免疫応答を担う)を更に欠失させることで、8 kbのクローニング能力が可能になった。E2及び/又はE4の欠失を含む更なる世代が産生された。
【0110】
始原細胞のウイルス感染のための感染上清は、幾つかの実施形態において、例えば、1×103 gc/ml、1×103 gc/ml~5×103 gc/ml、1×105 gc/ml、1×105 gc/ml~5×105 gc/ml、1×1010 gc/ml、1×1010 gc/ml~5×1010 gc/ml、1×1011 gc/ml、1×1011 gc/ml~5×1011 gc/ml、1×1012 gc/ml、1×1012 gc/ml~5×1012 gc/ml、1×1013 gc/ml、1×1013 gc/ml~5×1013 gc/ml、1×1014 gc/ml、又は1×1014 gc/ml~5×1014 gc/mlの濃度(1 mLあたりのゲノムコピー数)のウイルス粒子を含み得る。
【0111】
従来のプラスミド導入、及びインテグラーゼ又はトランスポザーゼ技術を使用した標的遺伝子組み込みの適用を含む代替戦略等の非ウイルス的方法も採用され得る。これらは、効率的であり、組み込みにおいて部位特異的であることが多いという利点を持つベクター変換のアプローチを表している。ベクターを細胞に導入する物理的な方法は、当業者に知られている。1つの例は、電気穿孔法に関し、電気穿孔法では、短時間の高電圧電気パルスを使用して静電容量を克服することにより、膜に一過性の孔を形成する。この方法の利点の1つは、ほとんどの細胞型において、安定した遺伝子発現と一過性の遺伝子発現の両方に利用できることである。代替方法は、リポソーム又はタンパク質導入ドメインの使用に関する。適切な方法は当業者に知られており、本発明の実施形態を限定するものではない。さらに、mRNAトランスフェクション等のRNA分子の送達は、外因性核酸からTFを提供するための本発明の方法の文脈に含まれる。
【0112】
さらに、因子の提供のための外因性核酸分子の送達は、転移因子によって達成され得る。
【0113】
本発明の方法で使用されるTF及びその他の因子の提供は、一過性であってもよく、永続的であってもよい。例えば、核酸分子からの発現によって提供が達成される場合、TF発現は、構成的プロモーター又は始原細胞だけでなく誘導細胞でも活性なプロモーターの制御下で永続的に活性である可能性がある。あるいは、TFをコードする核酸分子が細胞から除去されるか若しくは消失するため、又は例えば制御された転写活性化を使用することにより発現が制御可能であり、オンとオフを切り替えることができるため、TFの発現、ひいては提供が一過性である場合がある。本発明の文脈において、一過性の発現は、永続的発現とは対照的に、核酸分子からの因子の一時的な発現のみを指す。
【0114】
他の例では、一過性の発現は、コード化された遺伝子の発現を駆動する制御可能な遺伝的要素を含む外因性DNA分子からの遺伝子発現の誘導によって発生する可能性があり、したがって誘導性遺伝子発現を含む。かかるシステムでは、遺伝子発現は、化学化合物、例えば、遺伝子発現の活性化につながる抗生物質分子又は薬物等の化合物の投与により、外部から制御することができる。かかるシステムは当該技術分野で十分に説明されており、当業者には知られている。
【0115】
本明細書において、「バイシストロニック(な)」又は「バイシストロニックに」という用語は、2つのシストロンを有するか又は含む核酸分子を指し、シストロンは、タンパク質の生成を担う遺伝子座(例えば、遺伝子)、又は言い換えれば、タンパク質をコードする遺伝物質(例えば、DNA又はRNA)の単位である。バイシストロニックな核酸分子によってコードされる遺伝子/シストロンの発現は、バイシストロニック発現と呼ばれることがある。
【0116】
本発明の文脈で使用され得る遺伝子発現システムは、選択された遺伝子産物の産生のために特別に設計されたシステムである。これは通常タンパク質であるが、マイクロRNA等のRNAである場合もある。発現システムは、通常DNAによってコード化される遺伝子と、提供された試薬を使用してDNAをmRNAに転写し、mRNAをタンパク質に翻訳するのに必要な分子機構とからなる。したがって、発現システムは何らかの形で人工的であることが多いが、遺伝子発現に必要な機構の特定の部分は、標的細胞によって提供される場合がある。
【0117】
例えば、幾つかの実施形態において、抗生物質制御転写活性化の使用により、誘導性及び/又は制御された遺伝子発現を達成することができる。抗生物質制御転写活性化は、抗生物質又はその誘導体(例えば、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ドキシサイクリン、又はテトラサイクリン)の存在下で転写が可逆的にオン又はオフになる誘導性遺伝子発現の方法である。
【0118】
本発明の文脈において、転写因子(TF)という用語は、特定のDNA配列に結合することによってDNAからメッセンジャーRNAへの遺伝情報の転写速度を制御するタンパク質を指す。TFの機能は、細胞及び生物の生涯を通じて、遺伝子が適切な細胞で適切なタイミングで適切な量で発現されるように、遺伝子を制御(オン及びオフ)することである。TFのグループは協調して機能し、生涯を通じて細胞分化、細胞分裂、細胞成長、及び細胞死;胚発生中の細胞遊走及び組織化(ボディプラン)を指揮し、ホルモン等の細胞外からのシグナルに断続的に反応する。TFは、RNAポリメラーゼ(DNAからRNAへの遺伝情報の転写を実行する酵素)の特定の遺伝子への動員を促進(活性化因子として)又は阻害(抑制因子として)することにより、単独で、又は複合体内の他のタンパク質と共に作用する。TFを決定づける特徴は、少なくとも1つのDNA結合ドメイン(DBD)を含み、これが制御する遺伝子に隣接する特定のDNA配列に結合していることである。
【0119】
転写因子は、哺乳動物細胞を異なる細胞型に再プログラムするため、又は分化を指揮するために使用され得る。始原細胞/開始細胞における異なる細胞型の誘導は、1つ以上のTFを提供することによって達成され得る。本発明の文脈において、「始原細胞」という用語は、この細胞内でステロイド生成表現型を誘導するための出発点として使用される細胞を指し、この細胞内には少なくともTFであるSF1が提供される。本発明の文脈において、任意の種類の細胞、好ましくは哺乳動物細胞を始原細胞として使用することができる。好ましくは、始原細胞は、ヒト細胞である。細胞は、全ての既知の生物の基本的な構造、機能、及び生物学的な単位である。細胞は、生命の最小単位である。細胞は、しばしば「生命の構成要素」と呼ばれる。
【0120】
本発明の好ましい始原細胞は、幹細胞を含む多能性又は多分化能の哺乳動物細胞である。好ましくは、始原細胞は哺乳動物、好ましくはヒト胚性幹細胞、ヒト胚性幹細胞株、又は人工多能性幹細胞(iPSC)である。本明細書において、「胚(の)」及び「胚性」という用語は、区別なく使用され得る。したがって、胚幹細胞は胚性幹細胞である可能性があり、逆もまた同様である。ここで、「多能性幹細胞、PSC」という用語は、幾つかの実施形態において、「人工多能性幹細胞、iPSC」と「胚性幹細胞、ESC」の両方を要約するか、又は両方を含む場合がある。言い換えれば、幾つかの実施形態において、PSCはiPSCとESCの両方の総称である。
【0121】
iPSCは、成体細胞から直接生成できる多能性幹細胞の一種である。iPSCは細胞培養で無限に増殖できるだけでなく、ニューロン、心臓細胞、膵臓細胞、及び肝臓細胞を含む、ヒト生物等のそれぞれの哺乳類生物の体内のあらゆる細胞型を生み出すことができ、損傷又は疾患で失われた細胞を置き換えるために使用することができる単一の細胞源となっている。最もよく知られている多能性幹細胞の種類は、胚性幹細胞(ESC)である。しかしながら、胚性幹細胞の生成には着床前段階の胚の操作が含まれるため、その使用をめぐっては多くの倫理的論争が巻き起こっている。さらに、胚性幹細胞は胚からしか得られないため、患者に適合した胚性幹細胞株を作製することはこれまで実現不可能であった。iPSCは成人の組織から直接導くことができるため、胚を必要とせず、患者に適合した様式で作製することができ、これは、各個人が独自の多能性幹細胞株を持つことができることを意味する。これらの無制限に供給される自己細胞を用いることで、免疫拒絶のリスクなしに移植細胞を生成することができる。さらに、iPSC及びiPSC由来の細胞は、個別化創薬の取り組み、及び患者固有の疾患の基礎の理解にも使用することができる。これは、ヒト患者特有のiPSCから誘導され得る本発明の誘導ステロイド生成細胞にも当てはまる。iPSCは通常、多能性関連遺伝子の特定のセットの産物、又は「再プログラミング因子」を所与の細胞型に導入することによって誘導される。再プログラミング因子のオリジナルのセットは、転写因子Oct4(Pou5f1)、Sox2、cMyc、及びKlf4である。この組み合わせはiPSCの生成において最も一般的であるが、各因子は関連する転写因子、miRNA、小分子、又は更には系統指定子等の関連のない遺伝子によって機能的に置き換えることができる。細胞の再プログラミングに必要な因子のこのような置き換えは、他の細胞の再プログラミングの取り組みにも当てはまる。
【0122】
ステロイド生成酵素は、ステロイド生成及びステロイド生合成に関与する酵素である。これらは、コレステロールからの性ステロイド(アンドロゲン、エストロゲン、及びプロゲストーゲン)及びコルチコステロイド(糖質コルチコイド及び鉱質コルチコイド)を含むステロイドホルモン、並びに神経ステロイドの生合成を担う。ステロイド生成酵素は、精巣、卵巣、及び副腎皮質等の古典的なステロイド生成組織で最も多く発現しているが、体内の他の組織にも存在する。ステロイド生成は、コレステロールからステロイドが生成され、他のステロイドに変化する生物学的プロセスである。前述のように、ステロイドホルモンの主なクラスは、プロゲストーゲン、コルチコステロイド(コルチコイド)、アンドロゲン、及びエストロゲンである。
【0123】
本明細書において、ステロイド生成細胞とは、幾つかの実施形態において、ステロイド生成及びステロイド生合成のためのステロイド生成酵素を産生することができる細胞である。好ましい実施形態において、細胞は、ステロイド生成及び/又はステロイド生合成も可能である。幾つかの実施形態において、本発明によるステロイド生成細胞は、ステロイドホルモン、性ステロイド(アンドロゲン、エストロゲン、及びプロゲストーゲン)、コルチコステロイド(糖質コルチコイド及び鉱質コルチコイド)、神経ステロイド、及びコレステロールを含む群から選択される1つ以上のステロイドホルモンを合成及び/又は産生することができる。実施形態において、ステロイド生成及びステロイド生合成に必要な必須の酵素をコードする遺伝子は、細胞内に天然に存在する場合があり、及び/又は外部から細胞に導入されている場合もある。一実施形態において、ステロイド生成細胞は、ステロイド生成細胞に分化しており、ステロイド生成及びステロイド生合成に必須の遺伝子の一部又は全てを自然に発現する多能性細胞(始原細胞)から産生される。
【0124】
好ましい実施形態において、本発明の細胞のステロイド生成酵素の(de novo)発現及び/又はステロイドホルモンの(de novo)産生及び/又は分泌は、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)刺激等の副腎刺激に対して応答性及び/又は感受性である。好ましい実施形態において、本発明の細胞、及びそのステロイド産生は、好ましくはin vivoで概日リズムに従い、時間及び刺激量に応じて適切なホルモン分泌に反応することができる。幾つかの実施形態において、ステロイド産生は、ACTH刺激の用量の増加と共に増加する。ACTH投与量の増加に伴う本発明の細胞のこのようなホルモン分泌/産生の増加の例を図15B/Cに示す。
【0125】
本発明の細胞の副腎刺激、例えばACTH刺激に対する「応答性」は、実施形態において、時間及び/又は副腎(ACTH)刺激量に応じて、de novoステロイドホルモン分泌及び/又はステロイドホルモン分泌の増加を含み得る。実施形態において、副腎刺激に対する「応答性」とは、基礎ステロイドホルモン分泌/産生を有し、好ましくは時間及び/又はACTH用量に応じてACTH刺激時にステロイドホルモン分泌の増加を示す細胞を指す。
【0126】
本明細書の好ましい実施形態において、細胞の「ステロイドホルモン産生」は「ステロイドホルモンの分泌」を含む。
【0127】
幾つかの実施形態において、本発明による細胞は、多能性細胞からiSCへの部分的な分化後及び/又は分化中に、in vitroで成長することができる。幾つかの実施形態において、本発明による細胞は、多能性細胞からiSCに分化した後、in vitroで成長することができる。本発明の細胞のこの増殖能力により、複数の細胞培養継代にわたって上記細胞を拡大させることが可能となり、その結果、本発明に従って大量の本発明の細胞を生成することができる(例えば、図7及び図8を参照されたい)。
【0128】
理論に縛られるものではないが、驚くべきことに、本発明の始原細胞が、iPSC細胞株、ESC細胞株又はESC細胞株等の多能性細胞である場合、本発明の細胞の増殖能力の改善又は増加が、多能性細胞からiSCへの分化の前、特にその最中及び/又はその後に観察できることが認められる。本発明の細胞の優れた増殖能力は、始原細胞が間葉系幹細胞又は多分化能骨髄細胞等の多分化能細胞のみである場合には達成され得ない。本発明の方法を、多能性細胞である始原細胞と組み合わせて使用することにより、少数の始原細胞、例えば患者由来のiPS細胞又は胚性幹細胞(株)から多数のiSCを生成できるという、従来技術に対する驚くべき利点が達成され、これは、細胞治療におけるこのiSCの使用に不可欠な前提条件である。
【0129】
好ましくは、実施形態において、本発明の細胞の「増殖能力」若しくは「増殖能」及び/又は分化中若しくは分化後の細胞成長能の存在を、細胞内のKi67発現の検出によって検出又は判定することができる。特に細胞の核におけるKi67陽性は、細胞の成長能が陽性及び/又は増加していること、したがって細胞の拡大能が高まっていることを示す可能性がある。実施例を図17に示す。
【0130】
Ki67タンパク質は、ヒトMKI67遺伝子によってコードされる、異なるスプライシングを受けたmRNA変異体から派生した2つのアイソフォームとして発現される。両方のKi-67アイソフォームは、有糸分裂中及び核膜分解後に同様の機能を果たす。Ki-67タンパク質は細胞周期依存的に発現し、プロテアソームによって細胞周期の終了時に、また細胞周期のG1期に分解される。
【0131】
図17Bは、本発明の細胞の実施形態が少なくとも6回の継代にわたって拡大され得ることを示す。一例では、15000個のヒト多能性(幹)細胞の開始集団は、倍増時間約28時間で少なくとも10億個を超える細胞にまで拡大され得る。
【0132】
ステロイド生成因子1(SF1)は、核受容体サブファミリー5、グループA、メンバー1(NR5A1)によってコードされる副腎-性腺の発達及び機能のマスター制御因子である。SF1は、胚性(間葉系)細胞又は多能性(幹)細胞をステロイド生成表現型/系統に導く遺伝子プログラムを開始するため、細胞運命の真のエフェクターである。SF1変異は、副腎不全を引き起こす可能性がある。
【0133】
ステロイド生成急性調節タンパク質(STAR)は、コレステロールをミトコンドリアの外膜から内膜に移送する役割を果たし、コレステロールは、ここで切断されてプレグネノロンなるため、ステロイドの合成に不可欠であり、合成を制限する。
【0134】
本発明によるステロイド生成細胞は、タンパク質送達ビヒクルとして説明される場合があり、本質的には、対象の身体の特定の組織又は領域における治療遺伝子産物の局在化及び発現を可能にする。幾つかの実施形態において、かかる治療用細胞は、他の治療法では治療が困難な疾患に対する細胞療法を提供できる可能性を秘めている。治療用細胞のそれぞれのタイプについて、最終的な目標は同じであり、細胞は特定の遺伝子レパートリー、好ましくは治療用遺伝子産物をコードする外因性核酸を発現し、それによって細胞のアイデンティティを変更して上記遺伝子産物を発現させ、ステロイドホルモンの産生を回復する等の治療効果を提供する。
【0135】
別の態様において、本発明は、医薬品として使用されるiSCに関し、ここでは、複数のiSCが免疫隔離デバイス内にカプセル化されて提供される。
【0136】
免疫隔離デバイスは、免疫抑制薬を必要とせずに、様々な疾患の治療において細胞移植に使用することができる。移植された細胞は、材料の中に封入されており、患者の免疫系から移植された細胞を保護する。同時に、酸素、二酸化炭素、可溶性栄養素、シグナル伝達分子、及び治療用タンパク質を含む生理活性細胞分泌物の拡散により、移植細胞の持続的な生存と、目的の治療用分子の宿主への送達の両方が可能になる。現在、(1)血管内、(2)血管外マクロカプセル、及び(3)マイクロカプセルの3種類の免疫バリアデバイスが利用可能である。免疫隔離の技術は、同種細胞及び異種細胞は、選択透過性膜内に隔離されると、宿主の免疫防御から全体的又は部分的に保護され、同時に特定の治療用タンパク質が長期間にわたって患者に送達されるという原理に基づいている。移植された細胞が免疫介在性破壊に対して脆弱であることは、半透膜によって更に軽減され、カプセル化された細胞が患者の実質へと増殖するのも防止する。したがって、有糸分裂活性細胞も移植することができる。一般的な免疫隔離デバイスは、Enscaptra (Viacyte)、PEC Direct、PEC-Encap、及びPEC-QTであるが、本発明はこれらの具体的なデバイスに限定されるものではない。したがって、本発明は、好ましくは免疫隔離デバイス又は類似のデバイスを使用して、治療有効数の細胞を対象に導入することによる患者の治療も包含する。
【0137】
本発明によるiSCは、幾つかの実施形態において、これらの細胞が、ステロイド生成酵素及びステロイド生成ホルモンの産生源として機能することができるため、「バイオポンプ」又は「薬物工場」とも記述される。iSCを対象に投与することで、ホルモン産生を回復させることができる。ある意味では、バイオポンプ、つまりiSCは、一実施形態において副腎ホルモンの継続的な供給を可能にする。
【0138】
本発明を添付の図面によって更に説明する。これらは、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本明細書に記載される本発明の更なる説明のために提示される本発明の態様の好ましい実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1】iSCを産生するための本発明による方法の一実施形態の工程の概要を示す図である。この図は、ステロイド産生細胞の発生における天然の工程、及び本発明の一実施形態のin vitro工程を示す。
図2】iSCを産生するための本発明による製造方法の一実施形態の工程の概要を示す図である。この図は、ブラストサイジン誘導性SF1又はブラストサイジン誘導性制御遺伝子(対照ベクター内のRFP)のいずれかを含む発現ベクターによる多能性始原細胞のレンチウイルス感染の一実施形態を示す。一実施形態において、始原細胞は、古典的な胚様細胞集合体ではなく、2D培養物(「2D株」)として培養される。
図3】SF1を過剰発現する本発明によるステロイド生成細胞の一実施形態における遺伝子発現の分析を示す図である。SF1(NR5A1)発現及びStAR発現を、ステロイド生成経路の模式図(中央)及び関連する酵素(色付きのボックス)と共に図示する。
図4】本発明によるステロイド生成細胞の一実施形態におけるステロイド生成酵素及びPKAシグナル伝達の遺伝子発現の分析を示す図である。SF1を発現するiSCでは、ステロイド生成酵素の上方制御を検出することができる。CMVプロモーター駆動を使用してSF1を発現させた。
図5】本発明によるステロイド生成細胞の一実施形態におけるホルモン産生の分析を示す図である。
図6】本発明による細胞の一実施形態における、刺激なし、br-cAMP刺激又はbr-cAMPパルス(S-U-S-U)による刺激のいずれかのコルチゾール産生及びStARレベルの分析を示す図である。Y軸は、(0)日目、2日目、4日目、6日目、及び8日目(d0、d2/D2、d4/D4、d6/D6、d8/D8)についてのデータを示す。
図7】本発明に従って生成されたiSCの幾つかの実施形態を、ハイスループットの生産又は拡大に使用することができることを示す図である。継代間の時間枠及び希釈度を示す。
図8】本発明に従って生成されたiSCの幾つかの実施形態を、ハイスループットの生産又は拡大に使用することができ、2D培養物の場合(胚樣集合体の代わりに)、上記培養物を容易に、かつ空間効率よく拡大及び培養することができる。
図9】本発明による細胞の幾つかの実施形態(多能性細胞から開始、図の右側の1番上のグラフ;遺伝子はSOX2及びOct3/4である)についての分化の最初の6日間のタイムライン及び遺伝子発現を、in vivoの胚性幹細胞/胚のタイムライン及び遺伝子発現と比較する図である。原始線条(上から2つ目のグラフ;遺伝子はTBXT、MIXL1である)、中間中胚葉(上から3つ目のグラフ;遺伝子はOSR1、GATA3、SALL1、LHX1、及びMESP1である)、初期副腎発生中の遺伝子(1番下のグラフ;遺伝子はGATA6、Dax1、WT1、及びGATA4である)。各グラフのX軸(図の右側)は、0日目から6日目(d0~d6)のデータを示す。各グラフのY軸には、それぞれの遺伝子発現を示す。
図10】本発明による細胞の異なる実施形態(異なる多能性始原細胞から)についての分化の最初の6日間(右側のグラフのX軸;d0~d6)の遺伝子発現(右側のグラフのY軸)及び表現型の外観(左側の写真)を示す図である。始原細胞として、H9-ESC細胞株、H1-ESC細胞株、ACS-iPSC、又はBJFF-iPSCのいずれかを使用した。
図11】本発明の一実施形態を示す図である。多能性幹細胞からヒトステロイド産生オルガノイドを生成するための戦略を示す。副腎皮質と腎臓は両方とも原始線条における中間中胚葉前駆細胞に由来するため、本発明によるプロトコルを使用して、PSCから中間中胚葉を生成した。
図12】図は、本発明の一実施形態を示す図である。SF1 CRISPR-Cas9ゲノム編集戦略。SF1の最後のイントロン/エクソン及び3'UTR領域によってloxPが導入された(floxed)2A-EGFP-loxP-PGK-Puro-loxP-pAを含むテンプレートは、H9 hESC株においてクローニングされ、Cas9と共に電気穿孔され、gRNAを設計した。得られたピューロマイシン耐性クローンを選択し、Creリコンビナーゼを使用してピューロマイシン耐性を切除した。プライマーFW1及びRW1を使用して、カセットがゲノムDNAに正しく組み込まれていることを確認した。
図13】本発明の2つの実施形態を示す図である。細胞カプセル化デバイスの2つの模式図を示す。最初の模式図(上)は、アルギン酸塩で固定化されたステロイド産生細胞/オルガノイドが、デバイスのコアにあるガスチャンバーを介してアルギン酸塩及び酸素を含浸させた多孔質膜を通して溶質及び刺激を受け取ることを示す。このデバイスは、外来の酸素補給用のアクセスポートを備える。2つ目の模式図(下)は、本発明の一実施形態によるhiSCの医療用免疫隔離デバイスへのカプセル化を示す。この実施形態において、デバイスは、カプセル化されたhiSCによる患者への副腎ホルモンの提供(患者に埋め込まれるか、又は患者に接続された場合)と、同時に患者からカプセル化された細胞への栄養素及びACTHの提供を可能にする。さらに、このデバイスは患者の免疫系から細胞を保護する。
図14】(A)中胚葉細胞を生成するためのプロトコルの概略図。得られた細胞は、レンチウイルスに感染していないか、又はMC2R/MRAP及び/又はSF1をコードするレンチウイルスに感染していた。(B)CMVプロモーター/エンハンサー(CMVprom/CMVenh)下でのバイシストロニックMC2R/MRAPの過剰発現に利用されるベクターの概略図。
図14-1】(C~E)(A)に示されたプロトコルに従って生成された細胞、すなわち対照細胞(NI)又はMC2R/MRAP及び/又はSF1をコードするレンチウイルスに感染した本発明による細胞において、(+)ACTHで処理/刺激した際の又は(-)刺激なしの(X軸)、RT-qPCRによって決定されるNR5A1(SF1;C)、MC2R(D)、及びMRAP(E)(アクチン発現レベルに対して正規化)の発現レベル。Y軸は、SF-1+MC2R+ACTHと比較した各遺伝子発現の倍数変化を示す。
図14-2】(A)に示されたプロトコルに従って生成された細胞、すなわち、対照細胞(NI)又はMC2R/MRAP及び/又はSF1をコードするレンチウイルスに感染した本発明による細胞の、(+)ACTHで処理/刺激した際の又は(-)刺激なしの(X軸)、(F)コルチゾール及び(G)アルドステロンの産生。Y軸は、(細胞から分泌されるステロイド)(F)コルチゾール(ng/ml単位)、又は(G)アルドステロン(pg/ml単位)の濃度を表す。
図15】(A)ステロイド生成細胞におけるACTHシグナル伝達経路の概略図。(B~C)ACTHで刺激/ACTHを投与した際のSF1遺伝子又はSF1+MC2R+MRAP遺伝子による感染後の本発明による細胞のコルチゾール(B)又はアルドステロン(C)の分泌。ACTHの漸増投与量を投与することに伴って、コルチゾール(B)及びアルドステロン(C)の産生/分泌が増加する。コルチゾール(B)及びアルドステロン(C)についての棒グラフは、2つのパネルにおいて、左から右に0 nM(-)ACTH、10 nM ACTH、及び1 μM ACTHのACTH投与量を示す。各グラフ(B/C)の左側のパネル(3つのバー)は、SF1遺伝子に感染した細胞についてのデータを示し、右側のパネル(3つのバー)は、SF1、MC2R、及びMRAP(SF1+M/M)をコードする遺伝子が複合感染した細胞についてのデータを示す。コルチゾール(B)のデータはy軸にng/ml単位で示され、アルドステロン(C)についてのデータはy軸にpg/ml単位で示される。
図15-1】(D)は、導入遺伝子SF1+MC2R+MRAPにより感染した際の本発明による細胞のコルチゾール排泄を示す。細胞を、in vitroで、4日間処理なし(-)(条件1、グラフの左から1つ目及び3つ目のバー)、ACTHで4日間処理(+)(条件2、グラフの左から2つ目及び4つ目のバー)、又はACTHで2日間処理しACTHを中止して2日間処理(-)(条件3、グラフの右端のバー)した。ホルモン測定を、2日目及び4日目に実施した。コルチゾール濃度を、Y軸にng/ml単位で示す。
図16】本発明によるhiSC細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。図のパネル/個別の写真は以下を示す:一番左の列の写真はSF1遺伝子のみに感染した細胞(X軸を参照されたい)を示し、左から2列目の写真はSF1遺伝子、MC2R遺伝子、及びMRAP遺伝子に感染した細胞を示す。右から2列目の写真は、SF1遺伝子、MC2R遺伝子、及びMRAP遺伝子に感染し、ACTHで刺激(ACTHの投与)した細胞を示す。一番右側の列の写真は、SF1遺伝子、MC2R遺伝子、及びMRAP遺伝子に感染し、ACTHで刺激した細胞を示すが、MC2R抗体の特異性を保証するために、一次抗体なし(二次抗体のみ)の「対照」染色が行われる。写真の一番上の行は、細胞の核DAPI染色を示す。上から2行目は、SF1ベクター感染時の細胞の固有のEGFPシグナルを示す(ベクターはEGFPとバイシストロニックである)。下から2行目の写真は、抗MC2R抗体によるMC2R特異的染色を示す。一番下の行の写真は、3つの染色全てのマージ又はオーバーレイ表示を示し、ACTH刺激によりSF1及びMC2R/MRAP及びhiSCの二重陽性染色(発現)を示す細胞を明らかにする。この図は、細胞のACTH応答性を証明する。
図17】本発明によるhiSC細胞の増殖能力を複数の継代にわたって分析した実験の結果を示す写真である。(A)は、本発明によるhiSC細胞の蛍光顕微鏡写真を示し、左端のパネルは核(DAPI)染色、及び中央のパネルは抗Ki67染色が行われた後の写真である。Ki67染色陽性細胞は中央/真ん中の写真に白い矢印で示されている。写真(A)の右側の写真における核染色とKi67染色を組み合わせた染色/オーバーレイ写真は、白い矢印で示されるように、Ki67の核局在を証明している。Ki-67タンパク質(MKI67とも呼ばれる)は増殖の細胞マーカーであり、休止細胞(細胞周期のG0期)には存在しない。B.は、本発明による培養されたhiSC細胞の7継代にわたる細胞数を示す。増殖能力は、少なくとも7回の継代にわたって高く、本明細書に記載される細胞の驚くほど高く安定した増殖及び拡大の能力を示す。
図18】マルチクローニングサイトとEGFP遺伝子をバイシストロニックに含むベクターを示す図であり、これは、図17に示すSF1による感染の実験で使用され(空ベクターは市販されている)、感染細胞内でEGFPとSF-1の並行発現を可能にした。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0140】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。これらは、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本明細書に記載される本発明の更なる説明のために提示される本発明の態様の好ましい実施形態を示す。
【0141】
実施例1
PSCのステロイド産生細胞への分化プロトコル
実施例で採用した方法
試薬
アキュターゼ(StemCell Technologies、カタログ番号07920)
Advanced RPMI 1640(Life Technologies、カタログ番号12633-020)
CHIR99021(Tocris、カタログ番号4423)
DMEM/F12(Life Technologies、カタログ番号11320-033)
DMSO(Tocris、5×5 ml、カタログ番号3176)
Geltrex(LDEVフリーhESC認定)(Life Technologies、カタログ番号A1413302)
H9 hESC株(WiCell、カタログ番号WA09)又はH1(WiCell、カタログ番号WA01)
iPSC、継代数22~42
ヒトFGF2(Peprotech、カタログ番号100-18B)
I-GlutaMAX(Life Technologies、カタログ番号35050-061)
PBS(Life Technologies、カタログ番号10010-049)
StemFit基本培地(Ajinomoto、カタログ番号ASB01)
Y-27632二塩酸塩(Tocris、カタログ番号1254)
BMP4(Peprotech、カタログ番号120-05)
レチノイン酸0695/50 R&D Systems
ペニシリン-ストレプトマイシン(10000 U/mL)(Gibco 15140122)
NR5A1レンチウイルス粒子(Dharmacon OHS5900-219582130、クローンPLOHS_100073346
【0142】
プロトコル
StemFit Basicを使用したフィーダーフリー培養におけるhPSCの維持
全てのプレートは、DMEM/F12で希釈した1%LDEVフリーhESC認定Geltrexでコーティングする必要がある。
6ウェルプレートの1ウェルあたり100000個のhPSCを、1.5 mlのStemFit Basic+10 ng/ml FGF2+10 μM ROCK阻害剤Y27632中で解凍する。
3日後、培地を1.5 mlのStemFit Basic+10 ng/ml FGF2に変更する。
細胞が80%の培養密度に達したら、PBSで2回洗浄し、0.5 mlのアキュターゼを5分間添加し、すぐに0.5 mlのStem Fitを添加する。
細胞を数え、1.5 mlのStemFit Basic+10 ng/ml FGF2+10 μM ROCK阻害剤Y27632を含む1%LDEVフリーhESC認定Geltrexでコーティングした6ウェルプレートの1ウェルあたり100000個の細胞をプレーティングする。
【0143】
hPSCのステロイド産生細胞への分化
-3日目:0.5 mlのStemFit Basic+10 ng/ml FGF2+10 μM ROCK阻害剤Y27632を含む、1%LDEVフリーhESC認定Geltrexでコーティングした24ウェルプレートの1ウェルあたり15000個の細胞をプレーティングする。
0日目:培地をAdv RPMI 1640+1%GlutaMAX+1%ペニシリン-ストレプトマイシン(培地A)+3 μM CHIR99021に変更する。
2日目:培地を培地A+3 μM CHIR99021に変更する。
3日目:培地を培地A+10 μMレチノイン酸に変更する。
4日目:培地を培地A+10 ng/ml BMP4に変更する。
5日目:培地を培地A+10 ng/ml BMP4に変更する。
6日目:細胞をPBSで洗浄し、0.5 mlのアキュターゼと共に37℃で5分間インキュベートする。1 M細胞を懸濁液中の1.5 μlのSF1レンチウイルス粒子(1×1012 gc/ml)で感染させ、1.5 mlの培地A+10 ng/ml FGF2+10 μM ROCK阻害剤Y27632中、1%LDEVフリーhESC認定Geltrexでコーティングした6ウェルプレートの2つのウェルにプレートする。
8日目:培地を培地A+10 ng/ml FGF2に変更する。8日目以降は、1%LDEVフリーhESC認定Geltrexでコーティングしたプレート/フラスコで、培地A+10 ng/ml FGF2+10 μM ROCK阻害剤Y27632を使用して細胞を1/3継代することができる。細胞を、培地A+10%DMSOと共に凍結することができる。
【0144】
細胞をin vitroで生成し、遺伝子発現(gPCR及び免疫細胞化学)とホルモンプロファイル(ELISA 及び質量分析)の両方によってステロイド生成能を確認した。
【0145】
実施例の結果及び考察
本発明の方法及び本発明に従って生成された細胞の従来技術に対する利点
【0146】
【表1】
表1:本発明による細胞と従来技術に従って生成された細胞の比較
【0147】
本発明の方法には、Sonoyama et al.の方法に対して幾つかの利点がある。1つは、Sonoyamaの方法は、マイトマイシンC処理したマウス胎児線維芽細胞のフィーダー層でhESC-iPSC培養物を使用するという点である。さらに、Sonoyama et al.の方法は、胚様体の形成が必要であるのに対し、本発明の実施形態は2D培養物のみを使用する。2D培養物は、例えば、維持及び継代が容易であること、全ての細胞が培養培地及びそこに含まれる因子に均等に曝露されるのを容易にすること、並びに必要な保管スペースが少ないこと等、多くの利点を有する。さらに、2D培養された幹細胞では、同じ系統(各細胞について同じ条件)に分化しやすい場合があるが、胚樣集合体内の細胞は異なる系統に分化する傾向があるため、その後集合体を溶解して細胞を選別する必要がある。Sonoyama et al.の方法は、分化が始まる前に14日間の胚様体形成が必要である。本発明の方法の実施形態は、細胞をプレーティングした後2日~3日の間に分化を開始することを可能にする。Sonoyama et al.は、さらに、彼らのプロトコルを使用しても40%~60%のトランスフェクション効率しか達成されないのに対し、本発明の方法の実施形態は、レンチウイルス感染及び、例えばブラストサイジン選択によって100%のSF-1陽性細胞を達成する。本発明の方法の実施形態は、細胞選別は不要であるが、Sonoyama et al.の方法はTRA 1-60細胞の選別が必要である。さらに、本発明の方法の実施形態は、規定の分子のみが使用されるのに対し、Sonoyama et al.は血清を使用する。最後に、本発明の方法は、幾つかの実施形態において、15000個の細胞から10億個の細胞まで拡大することができるが、これはSonoyama et al.のプロトコルでは不可能であるか、又は望ましくない。
【0148】
実施例2
CRISPR-Cas9ノックイン技術を使用したhESC SF1レポーター株の生成
中間中胚葉を生成するために、H9 hESCを使用した。RT-qPCR及び免疫染色により遺伝子発現プロファイリングを実施し、各発達段階を通して進行を検証した(多能性マーカー:OCT4、SOX2;後期原始線条:TBXT;中間中胚葉マーカー:WT1、OSR1、HOXD11)。次いで、hESCから生成された中間中胚葉をスクリーニングプラットフォームとして使用し、SF1発現を誘導する能力を持つ小分子及び/又はモルフォゲンを同定した。かかる因子は、1)副腎皮質の発達に関与することが知られている因子、又は2)副腎シグナル伝達経路を調節することが知られている因子を含む。小分子経路調節因子は以下のとおりであった:β-カテニン経路:Wnt4、Rspo1、Rspo3、HIR99021、BIO;Shh経路:SANT1、シクロパミン;PKA経路:フォルスコリン、db-cAMP、br-cAMP;FGF経路:FGF-2、FGF-9;TGF-β経路:アクチビン-A、インヒビン-α、SB431542;IGF経路:IGF-1、IGF-2;Hippo経路:ダサチニブ、パゾパニブ、及びロットレリン。ウイルス導入を用いた中間中胚葉細胞におけるSF1の過剰発現を、ステロイド生成系統への誘導の陽性対照として使用した。
【0149】
SF1発現を増強するための小分子のスクリーニングを容易にするため、CRISPR-Cas9ゲノム工学を採用して、H9 hESCの内因性SF1 3'UTRにインフレーム2A-EGFP配列を導入し、続いてクローン選択を行って個々のSF1-2A-EGFP-hESCレポーター株(SF1REP)を生成した。SF1末端領域(STOPコドンなし)、loxP隣接PKG-ピューロマイシンカセット、及び3'-UTR相同アームを有するテンプレートベクターを生成し、最適なgRNA配列を選択した(図12)。Creリコンビナーゼを使用して選択カセットを除去した後、組込み部位に隣接する外部プライマーを用いて内因性SF1遺伝子座を配列決定することにより、正しい組込みを確認した。同様の戦略は、以前にもH9 hESCにおける転写因子MIXL1の発現を報告するために使用され、成功している。SF1REP株を、96ウェル形式で、様々な濃度の上に列挙される化合物で個別に、及び様々な組み合わせで処理する。GFP発現を、EVOS FL Auto 2イメージングシステムを使用して定量化する。このスクリーニング戦略の結果により、内因性SF1発現を誘導し、結果としてステロイド生成細胞の再プログラミングを開始し得る重要なシグナル伝達分子を定義することができる。
【0150】
小分子由来のステロイド産生オルガノイドを使用して生成されたオルガノイドの代替として、SF1の過剰発現によって生成されたオルガノイドを使用した。
【0151】
ステロイド産生オルガノイドの生化学分析
GFP発現オルガノイドを、RT-qPCR、免疫ブロット、及び/又は免疫細胞化学を使用して、StAR、CYP11A1、CYP17A1、CYP21A2、HSD3B2、CYP11B1、CYP11B2、HSD11B1、HSD11B2、及びHSD17βを含むステロイド生成酵素パネルの発現について完全に特性評価した。次いで、質量分析法を用いてオルガノイドの副腎ホルモンを産生する能力を定量化した。凍結前と解凍後の生存率(Almar blueベースのアッセイ)、増殖能力(PCNA発現、Ki-67染色)、及びACTH刺激に対する応答性も評定し、確認した。
【0152】
副腎不全をモデル化するためのステロイド産生オルガノイドの使用
先天性副腎過形成(CAH)は、ステロイド生成酵素における変異によって引き起こされ、原発性副腎不全の最も一般的な原因であり、世界中で約18000人に1人の割合で罹患する。CYP21A2遺伝子の欠陥は、CAHの最も一般的な形態である。本発明の技術の概念実証として、CAHを有する患者の50%超に影響を与える最も一般的な2つの変異:(1)一塩基変異体c.293-13A>G(CYP21A2活性を1%未満に低下させる)、及び(2)アミノ酸変異p.I172N(CYP21A2の残存活性を1%~10%にする)を研究した。
【0153】
これらの変異がステロイド生成に与える影響を試験するために、CRISPR-Cas9を使用してこれらの変異をhESCに導入した。次いで、CYP21A2の両対立遺伝子ターゲティングを伴う細胞を、本明細書において先に確立されたプロトコルを使用してステロイド産生オルガノイドに分化させた。その後、CAH変異を持つhESC及び野生型hESCに由来するオルガノイドのホルモンプロファイルを評定し、確認した。
【0154】
CAH変異を持つオルガノイドは、重度のコルチゾール機能低下症を示した。これらの実験は、遺伝子編集戦略がCAHの個別化された細胞ベースの治療に有用であるという最初の原理証明の証拠を提供する。
【0155】
副腎不全のマウスモデルにおける移植を用いたステロイド産生オルガノイドの機能的in vivo分析
in vivoでの副腎不全の前臨床動物モデルにおける、in vitroで生成されたステロイド産生オルガノイドの生存率及び機能性を評定した。
【0156】
最初の実験は、腎臓被膜下又は副腎内に移植されたステロイド産生オルガノイドの生着可能性、細胞生存及び機能性を評定した。マウスを異なる時点で屠殺した。インプラントの生存、完全性、及び血管新生を評定するために免疫組織化学分析を実施した。血漿コルチゾールレベル(マウス細胞からは分泌されず、ヒト細胞から分泌される)の測定を週2回評定した。
【0157】
第2の段階では、副腎摘出の有無にかかわらず、ステロイド産生オルガノイドを免疫不全齧歯類の腎臓被膜の下に移植した。これらの実験は、ステロイド産生オルガノイドの副腎不全の代替治療としての潜在的な可能性の前臨床的な裏付けを提供する。
【0158】
考察
このアプローチは、副腎領域に3Dオルガノイド樣構造を生成する最初の試みとなる。この方法論は、hESCの分化を駆動するために小分子を使用するという新規性を伴い、その結果、ウイルスフリー、遺伝子導入フリー、拡大可能、スケーラブル、及び臨床(GMP)プロトコルに移行可能なステロイド生成細胞をもたらす。このアプローチは、中間中胚葉の形成から副腎形成に関与する主要な転写因子の調節まで、副腎のin vivo発達段階を模倣するように設計されている。副腎様細胞の生成に使用されるプロトコルは、生殖腺組織等の類似の系統の細胞型を生成するために必要なプロセスについての洞察も提供し得る。最後に、3Dオルガノイドにおいて機能的なステロイド産生細胞を生成する能力は、i)AI(副腎不全)に対する次世代の細胞ベースの治療、ii)副腎特有の疾患をモデル化すること、及びiii)副腎不全に罹患している患者に見られる共通の変異を有する細胞に対する個別化された介入を試験すること(薬物スクリーニングプラットフォーム)を促進する。
【0159】
実施例3
内因性SF-1発現を誘導するために、hESC由来の副腎前駆細胞を使用して小分子スクリーニングを実施した。本発明者らのSF-1レポーター株を使用して、副腎皮質の発達に関与する確立された分子を使用した方向づけられた小規模なスクリーニングを実施した。さらに、追加の分子を同定するために、自動化された大規模スクリーニングを実施した。レポーター株の感度がEGFP強度の変化を検出するのに十分でない場合、フローサイトメトリーと組み合わせたqPCRと免疫細胞化学を使用してSF-1発現を評定した。
【0160】
最初の実験は、副腎摘出した免疫不全ラットの腎臓被膜下に移植されたステロイド産生オルガノイドの生着可能性、細胞生存及び機能性を評定した。ラットを異なる時点(30日及び3か月)で屠殺し、免疫組織化学分析を行って、インプラントの生存、完全性、及び血管新生を評定した。研究期間中、血漿コルチゾールレベル(ラット細胞からは分泌されず、ヒト細胞から分泌される)の測定を週2回評定し、確認した。これらの実験は、ステロイド産生オルガノイドの副腎不全の代替治療としての潜在的な可能性の前臨床的な裏付けを提供する。
【0161】
第2の段階では、カプセル化デバイスにステロイド産生オルガノイドを充填し、免疫能のある副腎摘出ラットの皮下に移植した。この試験からの結果は、この技術を使用した副腎不全表現型の回復に関する有望な情報を提供する。hESC由来のステロイド生成オルガノイドは宿主の免疫系によって拒絶されるため、これらの実験による成功した結果はカプセル化された細胞の免疫保護を証明する。細胞療法は、ホルモン放出病態に対する薬物ベースの治療に代わる魅力的な治療として浮上している。前臨床動物試験は、この技術を研究室から臨床現場へ移行するための必須の第一歩である。
【0162】
実施例4
本発明のhiSCのACTH応答性を高めるために、ACTH受容体MC2Rとその共受容体(MRAP)をレンチウイルスベクターにクローニングし、更に抗生物質耐性遺伝子を含め、hiSCを上記発現ベクターに感染させた。このようにして、ステロイド生成能及びACTH応答性を備えた、MC2R及びMRAP遺伝子の安定した発現を有する細胞株を生成した。細胞株におけるSF1、MC2R、及びMRAPの安定した(過剰)発現を、遺伝子発現分析によって評定した。SF1及びMC2Rの発現を、特異的な抗体を使用して更に検出した。実験は、細胞のACTH応答性は用量及び時間に依存し、細胞はACTH刺激に対して動的に応答することを示した。重要なことは、生成された細胞が、継続的な成長能力を示し、増幅/拡大して数十億個の細胞を得ることができることであり、これは細胞療法に不可欠な要件である。結果を、図15図17に示す。
【0163】
図面訳
図1
REPROGRAMMING OF hPSCs TOWARDS STEROIDOGENIC PHYENOTYPE hPSCをステロイド生成表現型に再プログラムする
Zygote 接合子
Intermediatemesoderm 中間中胚葉
Steroid-producingcells ステロイド産生細胞
Cell culture andmaintenance 細胞培養及び維持
6 days 6日間
Differentiation tomesoderm 中胚葉への分化
1-2 weeks 1週間~2週間
Generation of celllines 細胞株の生成
NO steroidogenicenzymes ステロイド生成酵素なし
No steroid hormones ステロイドホルモンなし
Human inducedsteroidogenic cells (hiSCs) ヒト誘導ステロイド生成細胞(hiSC)
De novo expressionof steroidogenic enzymes ステロイド生成酵素のde novo発現
De novo productionof steroid hormones ステロイドホルモンのde novo産生
Responsive toadrenal stimuli in vitro in vitroで副腎刺激に反応する

図2
DIFFERENTIATIONPROTOCOL SCHEMATIC 分化プロトコル概略図
hESCs(Pluripotent) hESC(多能性)
Lentiviralinfection with SF1 (-/+ MC2R/MRAP) SF1(-/+MC2R/MRAP)によるレンチウイルス感染
Cell line with Blasticidin RFP ブラストサイジンRFPを含む細胞株
RFP (mock) infectedcell line RFP(模擬)感染細胞株
2D lines 2D株
Cell line with Blasticidin/Puro SF1 ブラストサイジン/Puro SF1を含む細胞株
SF1 infected cellline SF1感染細胞株

図3
SF1 OVEREXPRESSIONLINES: GENE EXPRESSION ANALYSIS SF1過剰発現株:遺伝子発現分析
Cholesterol コレステロール
Pregnenolone プレグネノロン
Progesterone プロゲステロン
Corticosterone コルチコステロン
Aldosterone アルドステロン
17-OH-Pregnenolone 17-OH-プレグネノロン
17-OH-Progesterone 17-OH-プロゲステロン
11-Deoxycortisol 11-デオキシコルチゾール
Cortisol コルチゾール
NR5A1/Actin NR5A1/アクチン
StAR/Actin StAR/アクチン

図4
PKA ACTIVATION ONSF1-OVEREXPRESSING LINES SF1過剰発現株に対するPKA活性化
SF1 Line SF1株
PKA signalling PKAシグナル伝達
NR5A/Actin NR5A/アクチン
CYP11A1/Actin CYP11A1/アクチン
CYP17A1/Actin CYP17A1/アクチン
StAR/Actin StAR/アクチン
CYP21A2/Actin CYP21A2/アクチン
HSD3B2/Actin HSD3B2/アクチン
CYP11B1/Actin CYP11B1/アクチン
CYP11B2/Actin CYP11B2/アクチン

図5
PKA ACTIVATION ONSF1-OVEREXPRESSING LINES SF1過剰発現株に対するPKA活性化
Cholesterol コレステロール
Pregnenolone プレグネノロン
Progesterone プロゲステロン
Corticosterone コルチコステロン
Aldosterone アルドステロン
17-OH-Pregnenolone 17-OH-プレグネノロン
17-OH-Progesterone 17-OH-プロゲステロン
11-Deoxycoresterol 11-デオキシコレステロール
Cortisol コルチゾール
Cortisone コルチゾン
bromo ブロモ

図6
DYNAMIC REGULATIONOF GENE EXPRESSION AND HORMONE PRODUCTION WITH PKA ACTIVATORS PKA活性化因子による遺伝子発現及びホルモン産生の動的調節
Unstimulated 未刺激
Stimulated 刺激あり
StAR/Actin StAR/アクチン
StAR/Actincompared to d0 d0と比較したStAR/アクチン
Cortisol コルチゾール
At D0 D0時
At D2 D2時
At D4 D4時
At D6 D6時
Stimulation 刺激

図7
GENERATION OFBILLIONS OF STEROID-PRODUCING CELLS 数十億個のステロイド産生細胞の生成
1 week 1週間
SF1 infection SF1感染
human embryonicstem cells (hESCs) ヒト胚性幹細胞(hESC)
Aprox. 1billion cells human steroid-producing cells およそ10億個のヒトステロイド産生細胞

図8
SCALE UP PRODUCTIONOF hPSCs-DERIVED STEROIDOGENIC CELLS hPSC由来ステロイド生成細胞のスケールアップ産生
700,000 cells 700000個の細胞
1 billion cells 10億個の細胞
Cryogenic vial 極低温バイアル
Flask フラスコ
Corning® CellSTACK® Cell Culture Chamber (2-layer) Corning(商標)CellSTACK(商標)細胞培養チャンバー(2層)
Corning CellSTACK Cell Culture Chamber (10-layer) CorningCellSTACK細胞培養チャンバー(10層)

図9
FIRST 6 DAYS OFDIFFERENTIATION OF PSCs PSCの分化の最初の6日間
Zygote 接合子
Primitive streak 原始線条
Intermediatemesoderm 中間中胚葉
Urogenital ridge 泌尿生殖器隆起
CranialIntermediate mesoderm 頭蓋中間中胚葉
Gene/Actin 遺伝子/アクチン
Pluripotency 多能性
Gene early adrenaldevelopment 早期副腎発生遺伝子

図10
FIRST 6 DAYS OFDIFFERENTIATION OF PSCs PSCの分化の最初の6日間

図11
ADRENAL AND KIDNEYDEVELOPMENTAL STAGES 副腎及び腎臓の発生段階
Zygote 接合子
Primitive streak 原始線条
Intermediatemesoderm 中間中胚葉
Urogenital ridge 泌尿生殖器隆起
AdrenogonadalPrimordium 副腎性腺原基
Nephric Primordium 腎原基
Adrenal cortex 副腎皮質
Gonads 生殖腺
Kidney 腎臓
Day 0 0日目
Day 4 4日目
Late Primitivestreak 後期原始線条
Day 7 7日目
Posteriorintermediate mesoderm 後部中間中胚葉
Day 9 9日目
Metanephric mesenchyme 後腎間充織
Small molecules 小分子
Day ? ?日目
Day 11 11日目
Pre-tubularaggregate 細管集合前
Day 14 14日目
Renal vesicle 後腎胞
Nephron ネフロン
+/- Noggin 5-25 ng/ml +/-ノギン 5 ng/ml~25 ng/ml
Activin 10 ng/ml アクチビン 10 ng/ml
Transferred to low attachmentplates 低アタッチメントプレートに移す
FGF9 removed FGF9の除去

図12
GENERATION OF SF1REPORTER LINE SF1レポーター株の生成
Cas9 protein + DNAtemplate Cas9タンパク質+DNAテンプレート
Endogenous SF1locus H9 hESCs 内因性SF1遺伝子座H9 hESC
Intron6 イントロン6
Exon 7 エクソン7
+Cre recombinase +Creリコンビナーゼ
SF1-2A-EGFP in H9 hESCs after editing 編集後のH9 hESCにおけるSF1-2A-EGFP
DNA template DNAテンプレート

図13
MACRO ENCAPSULATIONDEVICES マクロカプセル化デバイス
Silicon gaspermeable membrane シリコンガス透過膜
Steroid-producingcells ステロイド産生細胞
Oxygen chamber 酸素チャンバー
O2 ports O2ポート
Alginate to immobilizesteroidogenic cells ステロイド生成細胞を固定化するためのアルギン酸塩
Teflon porousmembrane impregnated with alginate アルギン酸塩を含浸させたテフロン(登録商標)多孔質膜
Lab-made,cortisol-producing cells 実験室で作製されたコルチゾール産生細胞
Medical device 医療デバイス
Nutrients 栄養素
Immune system 免疫系
Adrenal hormones 副腎ホルモン

図14
Cell culture andmaintenance 細胞の培養及び維持
6 days 6日間
Differentiation tomesoderm 中胚葉への分化
(No infection) (感染なし)
(No virus) (ウイルスなし)
Fold-change 倍率変化
(compared toSF1+MC2R+ACTH) (SF1+MC2r+ACTHと比較)
NR5A1/Actin NR5A1/アクチン
MC2R/Actin MC2R/アクチン
MRAP Actin MRAPAアクチン
Cortisol コルチゾール
Aldosterone アルドステロン

図15
Extracellular 細胞外
Cortisol コルチゾール
Intracellular 細胞内
Aldosterone アルドステロン
ACTH dosedependence ACTH用量依存性
Unstimulated 未刺激
CONDITION 条件
Day2 2日
Day4 4日
With (+) or without(-) ACTH あり(+)又はなし(-)

図16
Merged マージ
Negative (hiSCs-SF1MC2R/MRAP+ACTH) 陰性(hiSC-SF1 MC2R/MRAP+ACTH)

図17
Cell proliferationafter long term passaging of human steroid-producing cells ヒトステロイド産生細胞の長期継代後の細胞増殖
Generation ofsteroidogenic cells ステロイド生成細胞の生成
Number of cells 細胞の数
Passage 継代

図18
Multi Tag CloningSite マルチタグクローニングサイト
pLOClentiviral ORF clone pLOCレンチウイルスORFクローン
【0164】
引用文献
Matsuo, K., Sone, M., Honda-Kohmo, K. et al. Significance of dopamine D1 receptor signalling for steroidogenic differentiation of human induced pluripotent stem cells. Sci Rep 7, 15120 (2017). https://doi.org/10.1038/s41598-017-15485-4.
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Ruiz-Babot G, Balyura M, et al., Modeling Congenital Adrenal Hyperplasia and Testing Interventions for Adrenal Insufficiency Using Donor-Specific Reprogrammed Cells. Cell Rep. 2018 Jan 30;22(5):1236-1249. doi: 10.1016/j.celrep.2018.01.003. PMID: 29386111; PMCID: PMC5809617.
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Tanaka T, Aoyagi C, Mukai K, Nishimoto K, Kodama S, Yanase T. Extension of Survival in Bilaterally Adrenalectomized Mice by Implantation of SF-1/Ad4BP-Induced Steroidogenic Cells. Endocrinology. 2020 Mar 1;161(3):bqaa007. doi: 10.1210/endocr/bqaa007. PMID: 31950150.
Tomoko Tanaka, Chikao Aoyagi, Kuniaki Mukai, Koshiro Nishimoto, Shohta Kodama, Toshihiko Yanase, Extension of Survival in Bilaterally Adrenalectomized Mice by Implantation of SF-1/Ad4BP-Induced Steroidogenic Cells, Endocrinology, Volume 161, Issue 3, March 2020, bqaa007, https://doi.org/10.1210/endocr/bqaa007.
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14-1】
図14-2】
図15
図15-1】
図16
図17
図18
【国際調査報告】