(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】トルクドライバー
(51)【国際特許分類】
B25B 23/142 20060101AFI20241025BHJP
B25B 23/157 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B25B23/142
B25B23/157 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516712
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 DE2022100965
(87)【国際公開番号】W WO2023143660
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202022100447.1
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507079356
【氏名又は名称】ハツエト - ヴエルク ヘルマン ツエルフエル ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフトウング ウント コンパニー コマンデイートゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】クラット・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バルズィーパー・クリスチャン
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA02
3C038BC01
3C038BC06
3C038CD03
3C038EA06
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、トルクドライバー1に関し、このトルクドライバーが、把手2と、設定された回転トルクのための表示部3と、従動部4とを有している。前記把手2内において、回転トルクの設定のための設定装置5と、回転トルク機構17が配置されており、前記回転トルク機構17が、回転トルクの伝達のための駆動軸18と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構23とを備えている。前記駆動軸18と前記従動部4とは、フリーホイール機構33を介して、連結されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクドライバー(1)であって、このトルクドライバーが、
把手(2)と、設定された回転トルクのための表示部(3)と、従動部(4)とを有しており、
前記把手(2)内において、回転トルクの設定のための設定装置(5)と、回転トルク機構(17)が配置されており、前記回転トルク機構(17)が、回転トルクの伝達のための駆動軸(18)と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構(23)とを備えており、
前記解除機構(23)が、クラッチ(24)を有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断し、
前記クラッチ(24)が、第1のクラッチ構造部材(25)と第2の相手方クラッチ構造部材(26)とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部(27)を介して、形状による係合状態で連結されている、
上記トルクドライバーにおいて、
前記駆動軸(18)と前記従動部(4)とが、フリーホイール機構(33)を介して、連結されており、
前記フリーホイール機構(33)が、内側軸(34)と、外側リング(35)と、切替ケージ(36)と、少なくとも1つの締付け体(38)、特に締付けローラーとを有しており、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)の軸部分(39)の上に、および、前記締付け体(38)が、前記切替ケージ(36)の円筒部分(41)内における切欠き部(40)内に、配置されており、且つ、前記外側リング(35)が、少なくとも間接的に、前記駆動軸(18)と結合されており、
前記締付け体(38)が、締付け位置(R、L)において、回転トルクを、前記外側リング(35)と前記内側軸(34)との間で伝達する、
ことを特徴とするトルクドライバー(1)。
【請求項2】
前記締付け体(38)は、前記軸部分(39)の平坦面(42)と、前記外側リング(35)の内側周囲面(43)とにおいて支持されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクドライバー。
【請求項3】
前記フリーホイール機構(33)は、切り替え可能であり、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)及び/または前記外側リング(35)に対して旋回可能であり、且つ、前記締付け体(38)が、このことによって、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置(N)から、第1の締付け位置(R)または第2の締付け位置(L)へと移動可能であり、
前記第1の締付け位置(R)において、回転トルク伝達が、第1の回転方向(締め付け方向)へと、および、前記第2の締付け位置(L)において、回転トルク伝達が、第2回転方向(解離方向)へと行われ、
第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項4】
係止装置(45)が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージ(36)を、前記ニュートラル位置(N)、前記第1の締付け位置(R)、または、前記第2の締付け位置(L)において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする請求項3に記載のトルクドライバー。
【請求項5】
係止装置(45)は、
前記内側軸(34)の穿孔(46)内において、ばね(47)の組み込みのもとで配置されている係止要素(48)と、
前記切替ケージ(36)に設けられた係止部(49)とを有していることを特徴とする請求項4に記載のトルクドライバー。
【請求項6】
切替本体(66)、特に切替リングまたは切替円板が設けられており、
この切替本体(66)が、前記切替ケージ(36)を切り替えることのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項7】
前記切替ケージ(36)は、前記内側軸(34)の溝部(51)内における止め輪(50)によって、軸線方向に固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項8】
前記内側軸(34)の駆動軸側の端部分において、カラー部(52)が設けられており、このカラー部が、前記外側リング(35)または円筒スリーブ(19)の床部(28)において支持されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項9】
前記内側軸(34)の駆動軸側の前記端部分において、ピン部(53)が設けられており、このピン部が、前記床部(28)内における中心の穿孔(54)内へと突出していることを特徴とする請求項8に記載のトルクドライバー。
【請求項10】
前記切替ケージ(36)の従動側に、蓋(55)が配置されており、この蓋が、前記把手(2)に固定されており、且つ、
前記切替ケージ(36)が、カラー本体(56)を有しており、このカラー本体が、前記蓋(55)において支持されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項11】
前記蓋(55)は、ソケット部分(57)を有しており、
前記把手(2)の前方の円筒部分(59)内における前記蓋(55)の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために、前記ソケット部分(57)に、接合要素(58)、特に切断歯または切断条片が設けられていることを特徴とする請求項10に記載のトルクドライバー。
【請求項12】
前記内側軸(34)は、従動部分(69)を有しており、
この従動部分が、前記従動部(4)と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部(4)が形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項13】
前記従動部(4)は、工具保持システム(12)を有していることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項14】
前記従動部分(69)は、内側多角形収容部(70)と、この内側多角形収容部(70)の領域内において、前記従動部分(69)の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット(73)とを有しており、および、
前記工具保持システム(12)が、前記従動部分(69)の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ(76)と、係止ばね(77)とを有しており、
前記引張スリーブ(76)が、前方のカラー部(78)と、後方の詰め体(80)とを備えており、且つ、前記係止ばね(77)が、螺旋体部分(83)と直線的な脚部(84)とを備えており、
前記係止ばね(77)が、前記螺旋体部分(83)によって、前記従動部分(69)を外側で取り囲んでおり、且つ、リング要素(86)において支持されており、且つ、前記脚部(84)が、前記スリット(73)を通って、前記内側多角形収容部(70)内へと係合しており、
前記脚部(84)が、前記内側多角形収容部(70)内へと装入された工具(72)を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されており、および、
前記係止ばね(77)と向かい合って位置する前記リング要素(86)の側面に、圧縮ばね(88)が配置されており、および、
前記引張スリーブ(76)が、前記係止ばね(77)と前記圧縮ばね(88)とを外側で取り囲んでおり、且つ、前記圧縮ばね(88)が、前記詰め体(80)に当接しており、
前方の前記カラー部(78)の内側稜部(89)が、前記係止ばね(77)を移動することによって、前記係止ばね(77)が、前記引張スリーブ(76)の引き戻しによってロック解除可能であり、従って、前記脚部(84)が、前記工具(72)を解放する、
ことを特徴とする請求項12または13に記載のトルクドライバー。
【請求項15】
前記スリット(73)は、前記内側多角形収容部(70)の内側面(74)から、傾斜して後方に向かって、前記従動部分(69)の外側面(75)に至るまで延びていることを特徴とする請求項14に記載のトルクドライバー。
【請求項16】
前記設定装置(5)は、予負荷可能な圧縮ばね(6)と、調節ナット(7)と、調節ねじ(8)とを有しており、且つ、
この設定装置(5)が、前記把手(2)の前記長手方向軸線(LA)を中心として回転可能な調節体(9)と、回転トルクの設定のために協働することを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項17】
前記表示部(3)は、前記把手(2)の中空円筒形の長手方向部分(13)内において配置されている数字ローラー計数機構(14)を有していることを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項18】
調整装置(30)が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整が実施可能であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念内における特徴に従うトルクドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクドライバーのようなトルクツールは、手動操作される工具であり、これらトルクツールによって、コントロールされた回転トルクが、加工材料、通常は、ねじまたはナットに対して作用され得る。結合されるべき構造部材の間の必要な締付け力、もしくは、組付け予負荷を保証するために、設定可能なトルクツールによって、所定の締付けトルクが作用され得る。
【0003】
トルクドライバーにおいて、解除機構は、把手内において格納されている。把手内において、または、把手において、同様に、設定装置も、設定されるべき回転トルクの表示部と共に設けられている。
把手における調節機構、通常は、ねじ付きスピンドルと結合された調節体が、この把手の固定状態の部分に対して相対的に回転されることによって、所望された回転トルクは、圧縮ばねの圧縮によって設定される。
【0004】
設定可能なトルクドライバーは、特許文献1によって公知である。
【0005】
特許文献2および特許文献3は、ラチェットドライバーを開示している。
【0006】
更に、特許文献4から、切り替え可能なトルクドライバーを従来技術の一部と見なしている。
【0007】
上述されたトルクドライバーは、回転力を一方の回転方向において伝達可能とするために、切り替え可能なラチェット機構でもって作動し、他方、逆回転方向において、如何なる力も伝達されず、むしろ、ラチェットが空転状態で回転する。そのような機械的なラチェット機構は、システムに応じて、逆戻し抵抗を備えており、この逆戻し抵抗が、戻し回転の際に感じ取れる。逆戻し抵抗の大きさは、それぞれのラチェット機構の構成に応じて変化する。抵抗無しの逆戻しは、公知の機構において可能ではない。
逆戻し抵抗が、解離されたねじ結合の締め付けもしくは予締め付けの際に、特に不利な影響を及ぼす。何故ならば、ねじの締付けトルクが、しばしば、この逆戻し抵抗よりも小さいからである。その結果として、そのような使用状況において、ラチェット機構は機能しない。
匹敵可能な問題は、極めて小さな締付けトルクでもってのねじ結合の際に生じる。何故ならば、そこで、締付けトルクが逆戻し抵抗よりも小さい可能性があるからである。
【0008】
特許文献5内において開示された切り替え可能なドライバーにおいて、回転力伝達は、ローラーを用いて行われる。回転方向の切り替えは、制御装置を介して行われる。
これらローラーは、軸、および、ドライバーの柄の内側穿孔と協働し、従って、回転トルク伝達の際に、これらローラーが、制御装置によって設定可能な回転方向においてくさび状に固定し、且つ、回転トルクが、一方の回転方向において伝達され得る。回転方向転換は、制御装置を用いての切り替えによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,421,675 B2明細書
【特許文献2】独国実用新案第298 00 921 U1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 661 139 B1号明細書
【特許文献4】独国特許発明第10 2005 034 114 B9号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第25 03 372 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、この公知技術を出発点として、トルクドライバーを、使用技術的に、並びに、機能的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決策は、本発明により、請求項1に従うトルクドライバーにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従うトルクドライバーの有利な実施形態および更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0013】
単独でまたは組み合わせにおいて本発明を技術的に有利に構成するトルクドライバーの特徴の構成および修正は、同様に明細書および添付された図から与えられる。
【0014】
このトルクドライバーは、把手と、設定された回転トルクのための表示部と、従動部とを有している。前記把手内において、回転トルクの設定のための設定装置と、回転トルク機構が配置されている。
前記回転トルク機構は、回転トルクの伝達のための駆動軸と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構とを備えている。
【0015】
前記解除機構は、クラッチを有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断する。前記クラッチは、第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。
第1のクラッチ構造部材は、第2の相手方クラッチ構造部材と協働し、且つ、圧縮ばねによって付勢される。第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とは、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。これら歯は、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
従動部において対抗トルクが作用し、且つ、この対抗トルクが駆動側に伝達されるや否や、両方のクラッチ要素は、これら歯における接触面に沿って互いに離間するように移動する。この移動は、圧縮ばねのばね力に抗して行われ、その際、把手において導入される回転トルク、並びに、対抗トルクが、量に関して同一である。
設定された回転トルク(解除回転トルク)から、第1のクラッチ構造部材と、第2の相手方クラッチ構造部材とは、両方の構造部材に間の形状による係合が解除される程に、互いに離れるように移動する。このことによって、より高い回転トルクの導入が、従動部において阻止され、且つ、噛み合い部が後続の位置に係止する。
把手において導入された回転トルクが低減されない場合、この工程が繰り返される。把手における回転トルクが解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0016】
圧縮ばねのばね力の上昇または低下により、クラッチにおける解除機構の所望された解除トルクは、変化され得る。この調節は、調節ねじの回転運動によって行われる。
【0017】
本発明に従い、駆動軸と従動部とは、フリーホイール機構を介して、連結されている。フリーホイール機構は、一方の回転方向に、回転トルクを伝達もしくは支持し、他方、このフリーホイール機構が、逆方向において、回転運動(空転)を許容することのために構成され、且つ、規定されている。
フリーホイール機構を有するトルクドライバーの本発明に従う構成により、把手の逆回転の際の逆戻し抵抗は、除去されるか、もしくは、ほぼ完全に除去される。このフリーホイール機構は、握り直しの際の抵抗無しの逆戻しを可能にする。締め付け方向における操作の際に、フリーホイール機構は、セルフロック式にロックし、且つ、回転トルクを伝達する。
本発明に従う機能態様は、緊張されていない(ungespannten)ねじもしくはナットの締め付けを可能にする。極めて小さな締付けトルクが必要であるねじ結合も、本発明に従うトルクドライバーでもって有利に確立され得る。
【0018】
本発明に従い、前記フリーホイール機構は、内側軸と、外側リングと、切替ケージと、少なくとも1つの締付け体とを有している。特に、この締付け体は、締付けローラーである。前記切替ケージは、前記内側軸の軸部分の上に配置されている。
前記締付け体は、前記切替ケージの円筒部分内における切欠き部内において配置されている。前記外側リングは、少なくとも間接的に、前記駆動軸と結合されている。有利には、外側リングは、同一材料で、1つの部分から成るように、駆動軸の従動側の端部において形成されている。
有利には、外側リングは、駆動軸の従動側の端部における床部を有する、円筒スリーブの構成要素である。外側リングの外側周囲において、周囲に延在するリングカラー部が設けられている。このリングカラー部は、把手の収容部分内における当接部と協働し、且つ、把手内における駆動軸の軸線方向の位置を固定する。
【0019】
締付け体は、内側軸と外側リングとの間に配置されている。締付け位置において、締付け体は、回転トルクを、外側リングと内側軸との間で伝達する。
前記締付け体は、前記軸部分の平坦面と、前記外側リングの内側周囲面とにおいて支持されている。空転方向における回転運動の際に、締付け体は、内側軸と外側リングの走行面において滑動する。
【0020】
締め付け方向における把手の回転運動が行われた場合、軸部分の平坦面と、外側リングの内側周囲面との間の接触面における静止摩擦によって、摩擦による係合が生じる。回転トルクは、1つ、もしくは、複数の締付け体を介して伝達される。
繰り返される方向の切り替えを伴う駆動運動は、歩進的に、同じ方向に整向された回転方向に、従動側もしくは従動部へと、締付け方向において伝達される。回転方向が締付け方向から空転方向へと交番した場合、回転トルク伝達無しに、復帰運動が行われる。
【0021】
前記フリーホイール機構は、切り替え可能である。トルクドライバーは、ニュートラル位置を有しており、このニュートラル位置において、回転トルクが、両方の回転方向に伝達可能である。ニュートラル位置において、本発明に従うトルクドライバーは、旧来のドライバーのように作動する。
フリーホイール機構の切り替えによって、このフリーホイール機構は、第1の締付け位置と第2の締付け位置との間で交番可能であり、これに伴って、締め付け方向が設定され得る。フリーホイール機構の切り替えのために、切替ケージが、内側軸及び/または外側リングに対して回転可能である。このことによって、締付け体は、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置から、第1の締付け位置または第2の締付け位置へと移動可能である。
前記第1の締付け位置において、回転トルク伝達は、一方の回転方向(締め付け方向)へと行われる。前記第2の締付け位置において、回転トルク伝達は、第2の回転方向(解離方向)へと行われる。第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。回転トルク機構は、フリーホイール方向(自由走行方向)において、空転状態で、戻し回転され得る。
【0022】
切替ケージが、自動的に、この切替ケージの切替位置、もしくは、それぞれの締付け位置を変化可能でないために、係止装置が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージを、前記ニュートラル位置、前記第1の締付け位置、または、前記第2の締付け位置において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
【0023】
特に、係止装置は、係止要素を有しており、この係止要素が、内側軸の穿孔内において配置されている。係止要素は、ばねと協働し、このばねが、穿孔内において装入されており、且つ、この係止要素に対して作用し、従って、この係止要素が、ばね弾性的に、この穿孔から外方へと付勢されている。
切替ケージは、係止部を有しており、これら係止部内へと、係止要素が、それぞれの締付け位置もしくはニュートラル位置において、反力支承状態で係合する。係止部の輪郭は、係止要素の外側幾何学的形状に対して適合させられている。特に、この係止要素は、球体である。
【0024】
フリーホイール機構の切り替えは、切替本体を介して行われ、この切替本体が、前記切替ケージを切り替えることのために構成され、且つ、規定されている。切り替えは、トルクドライバーの長手方向軸線を中心としての、切替本体の回転運動によって行われる。特に、この切替本体は、切替リングまたは切替円板である。
この切替円板は、手動で操作され得る。切替本体の回転により、切替ケージは、締付け位置またはニュートラル位置に移動される。
【0025】
更に有利な構成は、前記内側軸の駆動軸側の端部分において、カラー部が設けられており、このカラー部が、前記外側リングの床部において支持されていることを意図している。
【0026】
更に、前記内側軸の駆動軸側の前記端部分において、ピン部が設けられており、このピン部が、外側リングの前記床部内における中心の穿孔内へと突出している。フリーホイールの使用の際に、生じる摩擦トルクによる切替状態の変化を防止するために、内側軸内におけるカラー部は、外側リングの床部において支持されている。
このことによって、切替ケージと外側リングとの間の摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。外側リングの床部内における穿孔内へと突出するピン部は、配置状態を調心し、且つ、傾斜位置を防止する。
【0027】
フリーホイール機構の軸線方向の固定は、蓋によって行われる。蓋は、前記切替ケージの従動側に配置されており、且つ、把手、もしくは、この把手内に固定されている。
前記切替ケージは、カラー本体を有しており、このカラー本体が、前記蓋において支持されている。
【0028】
蓋は、把手の従動側の端部へと整向された状態で、切欠き部内へと挿入される。引き続いて、この蓋は、把手に対して相対的な回転運動によって固定される。前記蓋は、ソケット部分を有している。このソケット部分に、接合要素、特に切断歯または切断条片が設けられている。
この蓋の組み付けのための、この蓋の回転の際に、接合要素が、把手の材料内へとはめ込まれる。組み付けのため、もしくは、この組み付け工程の容易化のために、蓋は、係合面、例えばスリットを備えており、このスリット内において工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手と蓋とは、協働する当接面を備えている。更に、把手と蓋との間の結合が自動的に解離可能ではないために、把手と蓋とにおいて、係止要素が設けられている。蓋のねじ込みの際に、この蓋は、摩擦による係合状態および形状による係合状態において、把手の前方の円筒部分内において固定される。有利には、把手は合成物質から成り、他方、蓋が金属材料から製造されている。
【0029】
更に有利な構成は、前記内側軸は、従動部分を有しており、この従動部分が、前記従動部と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部が形成されていることを意図している。
従動部分が、工具のための保持システム、例えばナット(Nuesse)またはビットホルダーを有する、外側多角形部として構成されていることは可能である。更に、従動部分が、内側多角形部として形成されていることは可能である。
【0030】
前記従動部は、有利には、工具保持システムを有している。
【0031】
実務のために特に有利な実施形態は、前記従動部分が、内側多角形収容部と、この内側多角形収容部の領域内において、前記従動部分の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリットとを有していることを意図している。前記工具保持システムは、前記従動部分の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブと、係止ばねとを有している。
前記引張スリーブは、従動部分に対して同心的に配置されており、且つ、前方のカラー部と、後方の詰め体とを備えている。前記係止ばねは、螺旋体部分と直線的な脚部とを備えている。
前記係止ばねは、前記螺旋体部分によって、前記従動部分を外側で取り囲んでいる。螺旋体部分は、リング要素において支持されている。前記脚部は、前記内側多角形収容部内へと装入された工具、特にビットによって、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。
係止ばねの前記脚部は、前記スリットを通って、前記内側多角形収容部内へと係合している。このことによって、係止ばねの直線的な脚部が、工具、特にビットの規格化された係止溝部内へと係止し、且つ、内側多角形収容部内へと挿入されたビットを固定することは可能である。
前記係止ばねと向かい合って位置する前記リング要素の側面に、圧縮ばねが配置されている。この圧縮ばねは、工具、特にビットが内側多角形収容部内へと装入されている際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばねは、引張スリーブを、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。この目的のために、圧縮ばねは、引張スリーブの端部側の詰め体に対して作用する。引張スリーブと詰め体とは、互いに加圧されており、且つ、強固な1つのユニットを形成している。
【0032】
工具を、内側多角形収容部から取り外すために、工具保持システムは、ロック解除される。この目的のために、引張スリーブは引き戻される。
引張スリーブの前方のカラー部の内側稜部が、係止ばねを引き戻しの際に移動することによって、係止ばねは、この引張スリーブの引き戻しによってロック解除可能であり、従って、直線的な脚部が、保持位置から移動され、且つ、収容されている工具を解放する。
【0033】
従動部分内における前記スリットは、前記内側多角形収容部の内側面から、傾斜して後方に向かって整向されており、且つ、前記従動部分の外側面に至るまで延びている。
【0034】
本発明に従うトルクドライバーを、総じて、使用技術的および機能的に改善する構成は、設定装置が、予負荷可能な圧縮ばねと、調節ナットと、調節ねじとを有していることを意図する。回転トルクの設定のために、この設定装置は、前記把手の前記長手方向軸線を中心として旋回可能な調節体と協働する。
【0035】
それぞれに設定された回転トルクは、前記表示部において、数値的に表示される。この目的のために、本発明に従うトルクドライバーにおいて、前記把手の中空円筒形の長手方向部分内において配置されている数字ローラー計数機構が設けられている。
【0036】
更に、本発明に従うトルクドライバーの有利な構成は、調整装置が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整(アジャスト)が実施可能であることにある。
【0037】
本発明を、以下で、図に基づいて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に従うトルクドライバーの側面図である。
【
図3】線A-Aに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図4】線B-Bに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図5】線C-Cに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図6】線D-Dに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図7】線E-Eに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図8】トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図10】線F-Fに沿っての、
図9の図示の透視断面図である。
【
図11】把手の図示の無い、トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図13】線G-Gに沿っての、
図12に従う構造部材の図示の断面図である。
【
図14】フリーホイール機構と従動部との構造部材の側面図である。
【
図15】線H-Hに沿っての、
図14に相応する図示の断面図である。
【
図17】前方から傾斜しての、切替ケージの透視図である。
【
図19】フリーホイール機構と従動部との構造部材の透視分解図である。
【
図20】把手の従動側の端部の開口した側の端面図である。
【
図21】装入されたフリーホイール機構と位置決めされた蓋とを有する、把手の従動側の端部の端面図である。
【
図22】回転によって端部へと装入された蓋を有する、
図21の図示に相応する図である。
【
図23】トルクドライバーの更に別の実施形態の透視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から22に基づいて、本発明に従うトルクドライバー1、および、このトルクドライバーの構造部材を説明する。
図23から
図25は、トルクドライバー1の変形例を示している。
【0040】
トルクドライバー1は、把手2、並びに、設定された回転トルクのための表示部3、および、従動部4を有している。把手2内において、所定の回転トルクもしくは規定された解除回転トルクの設定のための設定装置5が組み込まれている。
設定装置5は、把手2内において回転可能に配置された調節ナット7において支持されている、予負荷可能な圧縮ばね6を有する調節機構と、調節ねじ8とを備えている。圧縮ばね6の圧縮もしくは弛緩によって、所望された回転トルクが設定される。
【0041】
設定装置5とこの設定装置の調節機構とは、把手2における調節体9と協働する。調節体9は、把手2に対して相対的に、この把手2の長手方向軸線LAを中心として回転可能である。把手2の固定状態の部分に対して相対的な調節体9の旋回によって、回転トルクは設定される。それぞれに設定された回転トルクを予期せぬ調節に対して保護するために、調節体9は、ロック部材10を用いて固定され、このロック部材が、ロックノブ11を介して操作される。
【0042】
トルクドライバー1の従動部4は、端面側で、把手2に配置されている。従動部4は、交換可能な工具の収容のために形成されている。ビットの形態の異なる差込み工具の交換可能な収容のために、従動部4は、このために規定された工具保持システム12を備えている。
【0043】
回転トルクのための表示部3は、相前後して配置された複数の数字ローラー15を備える、把手2の中空円筒形の長手方向部分13内において配置されている、数字ローラー計数機構14を有しており、これら数字ローラーが、把手2内における覗き窓16を通して読み取り可能である。
【0044】
従動部4に対する、把手2からの回転トルク伝達は、回転トルク機構17を介して行われる。従動部4は、回転トルク伝達可能に、駆動軸18と連結されている。
駆動軸18は、把手2内において支承されており、且つ、リングカラー部20を備える従動側の円筒スリーブ19と、中間の軸部分21と、端部分22とを有している。
【0045】
把手2内において、クラッチ24を有する解除機構23が配置されており、このクラッチが、所定の解除回転トルクの到達の際に、回転トルク伝達を中断する。クラッチ24は、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とを備えている。
把手2を介して、回転トルクが導入された場合、この回転トルクは、クラッチ構造部材25へと伝達される。クラッチ構造部材25は、相手方クラッチ構造部材26と協働し、且つ、圧縮ばね6によって付勢される。
第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、噛み合い部27を介して、形状による係合状態で連結されている。第1のクラッチ構造部材25の歯と、第2の相手方クラッチ構造部材26の歯とは、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
螺旋形状と、これによって予め与えられたねじラインとによって、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26との間の少ない面圧は、保証されている。
【0046】
第2の相手方クラッチ構造部材26は、六面角結合部を介して、駆動軸18と半径方向に連結されており、且つ、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。
対抗モーメントが従動部4において作用し、且つ、この対抗モーメントが駆動軸18へと伝達されるや否や、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、これら歯における接触面に沿って、互いに離れるように移動する。この移動は、圧縮ばね6のばね力に抗して行われ、その際、把手2において導入された回転トルクと対抗モーメントとが、量に関して同一である。
設定された回転トルク、即ち解除回転トルクから、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、両方の構造部材の間の形状による係合が解除される程度に、互いに離れるように移動する。このことによって、従動部4におけるより高い回転トルクの導入が阻止され、且つ、噛み合い部27が、後続の位置に係止する。
把手2において導入された回転トルクが、低減しない場合、この工程は繰り返される。把手2における回転トルクが、解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0047】
圧縮ばね6のばね力の増大または低減によって、クラッチ24における解除機構23の所望された解除回転トルクは、比例的に変化され得る。この調節は、スラスト軸受29によって支持されている、調節ねじ8の回転運動によって生起する。スラスト軸受29は、調節ねじ8に付与されるべき調節回転トルクが低減されることのために利用される。
調節ねじ8において回転運動が実施される場合、結合された調節ナット7が軸線方向に移動し、且つ、その際、調節ナット7において支持されている圧縮ばね6の予負荷が変化する。ねじ山回転方向が、その際、それぞれの回転方向がどのような効果を発生させるかを予め設定する。
調節ねじ8の回転の際に、調節ナット7が随伴回転可能でないために、この調節ナットは、把手2内において半径方向に拘束されている。長手方向軸線LAにおいて、調節ナット7は軸線方向に移動可能である。
【0048】
トルクドライバー1は、調整クラッチ31と調整軸32とを備える調整装置30を有している。調整装置30を介して、解除回転トルクの調整は行われ得る。
調整クラッチ31と調整軸32とを介して、特に、調節ねじ8の設定もしくは調整(アジャスト)は行われ、および、これに伴って、解除回転トルクの設定のための回転トルク伝達が行われる。このようにして、表示部3の上で数字ローラー計数機構14を介して表示された設定値、および、解除回転トルクは、相互に正しく合わせられる。
【0049】
駆動軸18と従動部4とは、フリーホイール機構33を介して連結されている。このフリーホイール機構33は、内側軸34と、外側リング35と、切替ケージ36とを有している。
外側軸35は、駆動軸18の従動側の端部37における、円筒スリーブ19の構成要素である。その円筒スリーブの外側リング35と、床部28とを備える該円筒スリーブ19、並びに、リングカラー部20は、駆動軸18の、同一材料で1つの部材から成るような構成要素である。
【0050】
特に、フリーホイール機構33は、締付けローラーの形態での締付け体38を備えている。トルクドライバー1の図示された実施例内において、2つの締付け体38が設けられている。
【0051】
切替ケージ36は、内側軸34の軸部分39の上に配設されている。締付け体38は、切替ケージ36の円筒部分41内における切欠き部40内に配置されている。
締付け体38は、それぞれに、軸部分39の平坦面42において支持されている。それぞれに、締付け体38と協働する、両方の平坦面42は、円筒部分41の上で、直径方向に相対して位置している。外側リング35において、締付け体38は、この外側リング35の内側周囲面43において支持されている。
【0052】
締付け位置において、締付け体38は、回転トルクを、外側リング35と内側軸34との間で伝達する。逆方向において、如何なる回転トルクも伝達されない。把手2は、逆方向において空転状態である。
繰り返される方向の切り替えを伴う把手2の駆動回転運動は、歩進的に、従動部4に対して同じ方向に整向された回転運動に、それぞれに、締付け方向において伝達される。
【0053】
右回りの回転運動のための締付け位置R、もしくは、左回りの回転運動のための締付け位置Lにおいて、締付け体38は、切替ケージ36の切欠き部40内における、右側もしくは左側の当接稜部44に当接する。右側もしくは左側の当接稜部44は、セルフロックの状態が生起し、且つ、回転トルク伝達が、一方の回転方向だけに可能であり、他方、逆方向において空転が達せられることのための働きをする。
当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。この回転方向において、この機構は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことによって、快適な握り直しが可能である。逆方向において、この機構は、セルフロック式にロックする。
【0054】
トルクドライバー1の今ここで問題になっている実施例において、2つの締付け体38が設けられている。それぞれの締付け体38のために、それぞれに1つの平坦面42が必要とされる。両方の平坦面42は、軸部分39において、締付け位置Lに対して同じ間隔をおいて、互いに向かい合って位置している。
【0055】
設備された切替ケージ36は、セルフロックの制御のために利用される。
【0056】
フリーホイール機構33の3つの作動位置を設定するために、切替ケージ36は、3つの切替位置に配置され得る。これら切替位置は、ニュートラル位置Nと、右回りの操作のための第1の締付け位置Rと、左回りの操作のための第2の締付け位置Lとを提供する。
【0057】
ニュートラル位置Nにおいて、切替ケージ36は、締付け体38に、機構が右側および左側へのそれぞれの回転方向においてセルフロック式にロックし且つこのことによってフリーホイールが作動を中止する程に、多くの自由性を与える。トルクドライバー1は、右回りと同様に左回りに、回転トルクを伝達する。
両方の他の締付け位置R、Lにおいて、それぞれに、切替ケージ36の切欠き部40内における右側または左側の当接稜部44は、セルフロックがそれぞれに1つの回転方向だけにおいて機能化されることのための働きをする。当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。
この回転方向において、このフリーホイール機構33は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことは、快適な握り直しを可能にする。逆方向において、このフリーホイール機構33は、セルフロック式にロックする。
第2の締付け位置Lは、フリーホイール機構33の操作方向もしくはフリーホイール方向だけを変化する。これに伴って、トルクドライバー1は、それぞれの要求に応じて、右方向の締め付け(Rechtsanzug)と、左方向の締め付け(Linksanzug)と、ニュートラル位置Nにおける制動機能との間で設定され得る。
【0058】
フリーホイール機構33は切り替え可能であり、その際、切替ケージ36が、内側軸34と外側リング35とに対して旋回可能である。このことによって、締付け体38は、回転トルクが両方の回転方向(右回りまたは左回り)に伝達可能であるニュートラル位置Nから、第1の締付け位置Rまたは第2の締付け位置Lへと移動される。
第1の締付け位置Rにおいて、回転トルクは、右回りの第1の回転方向(締め付け方向)に伝達される。第2の締付け位置Lにおいて、回転トルク伝達は、左回りの第2の回転方向(解離方向)へと行われる。
第1の回転方向および第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。
【0059】
切替ケージ36が、自動的に、この切替ケージのそれぞれの切替位置を変化可能でないために、係止装置45が設けられており、これら係止装置は、切替ケージ36を、ニュートラル位置N、第1の締付け位置R、または、第2の締付け位置Lにおいて位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
係止装置45は、内側軸34内において、半径方向に配置された穿孔46を有しており、この穿孔内において、ばね47によって付勢された、球体の形態の係止要素48が位置している。切替ケージ36において、係止部49が設けられている。この係止要素48とこれら係止部49とは、協働する。
係止要素48は、それぞれの切替位置において、切替ケージ36における係止部49内へと係合可能であり、且つ、自動的な切り替えを防止する。係止部49は、構成的に、係止要素48の外側輪郭に対して適合されている。特に、係止部49は、切替ケージ36内における球形部分形状的な窪み部として形成されている。
穿孔46と、当接稜部44と、係止部49とは、内側軸34の平坦面42に対して位置決めされている必要がある。切替ケージ36は、内側軸34の、取り囲んでいる溝部51内において配置されている止め輪50を用いて、軸線方向に固定される。
【0060】
トルクドライバー1の使用の際の、生じる摩擦トルクによる切り替え状態の変化を防止するために、内側軸34のカラー部52は、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。このことによって、切替ケージ36と外側リング35との間の、相応する摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。
カラー部52は、内側軸34の駆動軸側の端部分において設けられている。カラー部52の端部において、付加的に、ピン部53が位置しており、このピン部は、床部28内における穿孔54内へと没入する。このピン部53の役目は、外側リング35と内側軸34との間の傾斜位置を防止する、もしくは、制限することである。
【0061】
フリーホイール機構33の軸線方向の固定は、蓋55を介して行われる。蓋55は、切替ケージ36の従動側に配置されており、且つ、把手2において、もしくは、把手2内において固定されている。切替ケージ36は、カラー本体56を有しており、このカラー部本体に、蓋55が支持されている。
蓋55は、ソケット部分57を備えている。ソケット部分57において、切断歯の形態での接合要素58が設けられている。これら切断歯は、把手2の前方の円筒部分59内における、蓋55の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために構成されている。蓋55は、整向された状態で、前方の円筒部分59内において設けられた切欠き部60内へと挿入される。
把手2に対して相対的な引き続いての回転運動によって、ソケット部分57の外側周囲において配置された接合要素58が、ねじ込み式に、把手2の材料内へとはめ込む。この目的のために、蓋55は、スリット61を備えており、このスリット内において、相応する工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手2および蓋55において、当接面62が設けられている。付加的に、把手2および蓋55において、係止要素63が設けられており、これに伴って、結合は自動的に解離可能ではない。
【0062】
把手2は、合成物質から製造されており、他方、蓋55が、金属材料から成っている。
【0063】
蓋55の内径において、溝部64が設けられている。この溝部は、切替ケージ36の連行体65の傍らを通り過ぎることのために利用される。連行体65は、切替本体66に対する半径方向の結合を形成するために必要とされる。切替本体66は、特に、切替円板として構成されている。
切替本体66を用いて、切替ケージ36は切り替えられ得、その際、この切替本体66が、2つの機能を満たす。一方では、蓋55は、切替本体66によって覆われ、他方では、この切替本体66が、より良好な切替時の快適性のための働きをする。何故ならば、切替本体66が、より大きな周囲を備えており、且つ、付加的に、外側の溝成形部を備えることが可能であるからである。
切替本体66の軸線方向の固定は、係止突起部67を介して行われ、これら係止突起部が、切替ケージ36内における相応する切欠き部68内へと係止する。
【0064】
内側軸34は、従動部分69を有しており、この従動部分が、従動部4と連結可能であるか、または、この従動部分に従動部4が形成されている。
【0065】
図1から22までに基づいて説明されたトルクドライバー1において、従動部4は、工具保持システム12を有している。
【0066】
従動部分69は内側多角形収容部70を有している。この内側多角形収容部は、工具72、特にドライバービットの多角形部分71を収容することのために設けられている。
内側多角形収容部70の領域内において、従動部分69は、この従動部分69の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット73を有している。スリット73は、内側多角形収容部70の内側面74から、傾斜して後方に向かって、従動部分69の外側面75に至るまで延びている。
【0067】
工具保持システム12は、特に、従動部分69の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ76と、係止ばね77とを有している。引張スリーブ76は、前方のカラー部78を備えており、且つ、開口部79でもって、従動部分69の前方の端部を周囲側で囲繞している。
後方の詰め体80は、引張スリーブ76によって加圧されており、且つ、この引張スリーブと強固に結合されている。駆動軸側で、詰め体80は、半径方向の切欠き部81を有している。この切欠き部によって、この詰め体は、内側軸34の中間部分82を、半径方向に取り囲み可能であり、且つ、引張スリーブ76の引き戻しの際に、制限された状態で、中間部分82の上に案内され得る。
【0068】
係止ばね77は、螺旋体部分83と、直線的な脚部84とを有している。係止ばね77は、螺旋体部分83によって、従動部分69の上で案内されており、且つ、この従動部分を外側で取り囲んでいる。従動部分69内における溝部85内において、止め輪の形態でのリング要素86が配置されている。リング要素86において、螺旋体部分83が支持されている。
直線的な脚部84は、スリット73を通って、内側多角形収容部70内へと至るまで係合している。この脚部84は、内側多角形収容部70内へと装入された工具72を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。係止ばね77の脚部84は、この目的のために、工具72の規格化された係止溝部87内へと係止する。
【0069】
係止ばね77と向かい合って位置するリング要素86の側面に、圧縮ばね88が配置されている。この圧縮ばね88は、工具72が内側多角形収容部70内へと装入されており且つ引張スリーブ76の前方の内側稜部89と係止ばね77との間の遊隙を引き起こす際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばね88は、引張スリーブ76を、詰め体80を介して、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。作用するばね力は、係止ばね77がこのばね力から影響を及ぼされない程に少しである。
【0070】
引張スリーブ76の引き戻しによって、係止ばね77は、ロック解除される。その際、引張スリーブ76の内側稜部89は、係止ばね77をスリット73に沿って引き戻し、且つ、工具72を解放する。
【0071】
図23から25まで内において図示されたトルクドライバー1は、その従動部分に外側多角形部90が形成されている該従動部分69を備える従動部4を有している。外側多角形部90を備える従動部分69において、係止装置91が統合されている。
外側多角形部90と係止装置91とを有する従動部4は、市場で一般に通用する工具、例えばソケットレンチを収容および駆動することのために規定され、且つ、構成されている。
【0072】
その他の点では、回転トルクの設定のためのトルクドライバーの設定装置5と、回転トルク機構17と、フリーホイール機構33とを有するトルクドライバー1の実施形態は、前記された構成に相応する。
【符号の説明】
【0073】
1 トルクドライバー
2 把手
3 表示部
4 従動部
5 設定装置
6 圧縮ばね
7 調節ナット
8 調節ねじ
9 調節体
10 ロック部材
11 ロックノブ
12 工具保持システム
13 長手方向部分
14 数字ローラー計数機構
15 数字ローラー
16 覗き窓
17 回転トルク機構
18 駆動軸
19 円筒スリーブ
20 リングカラー部
21 軸部分
22 端部分
23 解除機構
24 クラッチ
25 クラッチ構造部材
26 相手方クラッチ構造部材
27 噛み合い部
28 円筒スリーブ19の床部
29 スラスト軸受
30 調整装置
31 調整クラッチ
32 調整軸
33 フリーホイール機構
34 内側軸
35 外側リング
36 切替ケージ
37 駆動軸18の端部
38 締付け体
39 軸部分
40 切欠き部
41 円筒部分
42 平坦面
43 内側周囲面
44 当接稜部
45 係止装置
46 穿孔
47 ばね
48 係止要素
49 係止部
50 止め輪
51 溝部
52 カラー部
53 ピン部
54 穿孔
55 蓋
56 カラー本体
57 ソケット部分
58 接合要素
59 前方の円筒部分
60 切欠き部
61 蓋55のスリット
62 当接面
63 係止要素
64 溝部
65 連行体
66 切替本体
67 係止突起部
68 切欠き部
69 従動部分
70 内側多角形収容部
71 多角形部分
72 工具
73 スリット
74 内側面
75 外側面
76 引張スリーブ
77 係止ばね
78 カラー部
79 開口部
80 詰め体
81 切欠き部
82 中間部分
83 螺旋体部分
84 脚部
85 溝部
86 リング要素
87 係止溝部
88 圧縮ばね
89 内側稜部
90 外側多角形部
91 係止装置
LA 長手方向軸線
N ニュートラル位置
R 第1の締付け位置
L 第2の締付け位置
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念内における特徴に従うトルクドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクドライバーのようなトルクツールは、手動操作される工具であり、これらトルクツールによって、コントロールされた回転トルクが、加工材料、通常は、ねじまたはナットに対して作用され得る。結合されるべき構造部材の間の必要な締付け力、もしくは、組付け予負荷を保証するために、設定可能なトルクツールによって、所定の締付けトルクが作用され得る。
【0003】
トルクドライバーにおいて、解除機構は、把手内において格納されている。把手内において、または、把手において、同様に、設定装置も、設定されるべき回転トルクの表示部と共に設けられている。
把手における調節機構、通常は、ねじ付きスピンドルと結合された調節体が、この把手の固定状態の部分に対して相対的に回転されることによって、所望された回転トルクは、圧縮ばねの圧縮によって設定される。
【0004】
設定可能なトルクドライバーは、特許文献1によって公知である。
【0005】
特許文献2および特許文献3は、ラチェットドライバーを開示している。
【0006】
更に、特許文献4から、切り替え可能なトルクドライバーを従来技術の一部と見なしている。
【0007】
上述されたトルクドライバーは、回転力を一方の回転方向において伝達可能とするために、切り替え可能なラチェット機構でもって作動し、他方、逆回転方向において、如何なる力も伝達されず、むしろ、ラチェットが空転状態で回転する。そのような機械的なラチェット機構は、システムに応じて、逆戻し抵抗を備えており、この逆戻し抵抗が、戻し回転の際に感じ取れる。逆戻し抵抗の大きさは、それぞれのラチェット機構の構成に応じて変化する。抵抗無しの逆戻しは、公知の機構において可能ではない。
逆戻し抵抗が、解離されたねじ結合の締め付けもしくは予締め付けの際に、特に不利な影響を及ぼす。何故ならば、ねじの締付けトルクが、しばしば、この逆戻し抵抗よりも小さいからである。その結果として、そのような使用状況において、ラチェット機構は機能しない。
匹敵可能な問題は、極めて小さな締付けトルクでもってのねじ結合の際に生じる。何故ならば、そこで、締付けトルクが逆戻し抵抗よりも小さい可能性があるからである。
【0008】
特許文献5内において開示された切り替え可能なドライバーにおいて、回転力伝達は、ローラーを用いて行われる。回転方向の切り替えは、制御装置を介して行われる。
これらローラーは、軸、および、ドライバーの柄の内側穿孔と協働し、従って、回転トルク伝達の際に、これらローラーが、制御装置によって設定可能な回転方向においてくさび状に固定し、且つ、回転トルクが、一方の回転方向において伝達され得る。回転方向転換は、制御装置を用いての切り替えによって行われる。
トルクドライバーにおける、回転トルクの設定のための構造は、特許文献6により、一般的な公知技術として見なされる。
把手内において、回転トルクの設定のための設定装置と、回転トルク機構とが配置されており、この回転トルク機構が、回転トルクの伝達のための駆動軸と、設定された回転トルクの達成の際の回転トルク伝達の中断のための解除機構とを備えている。
方向切替え可能なフリーホイールロック装置を有するねじ締付け工具は、特許文献7内において記載されている。
更に、特許文献8から、設定可能なトルクドライバーが読み取れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,421,675 B2明細書
【特許文献2】独国実用新案第298 00 921 U1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 661 139 B1号明細書
【特許文献4】独国特許発明第10 2005 034 114 B9号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第25 03 372 A1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2013 009 358A1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第197 07 792 A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2015/0090078号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、この公知技術を出発点として、トルクドライバーを、使用技術的に、並びに、機能的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決策は、本発明により、請求項1に従うトルクドライバーにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従うトルクドライバーの有利な実施形態および更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0013】
単独でまたは組み合わせにおいて本発明を技術的に有利に構成するトルクドライバーの特徴の構成および修正は、同様に明細書および添付された図から与えられる。
【0014】
このトルクドライバーは、把手と、設定された回転トルクのための表示部と、従動部とを有している。前記把手内において、回転トルクの設定のための設定装置と、回転トルク機構が配置されている。
前記回転トルク機構は、回転トルクの伝達のための駆動軸と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構とを備えている。
【0015】
前記解除機構は、クラッチを有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断する。前記クラッチは、第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。
第1のクラッチ構造部材は、第2の相手方クラッチ構造部材と協働し、且つ、圧縮ばねによって付勢される。第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とは、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。これら歯は、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
従動部において対抗トルクが作用し、且つ、この対抗トルクが駆動側に伝達されるや否や、両方のクラッチ要素は、これら歯における接触面に沿って互いに離間するように移動する。この移動は、圧縮ばねのばね力に抗して行われ、その際、把手において導入される回転トルク、並びに、対抗トルクが、量に関して同一である。
設定された回転トルク(解除回転トルク)から、第1のクラッチ構造部材と、第2の相手方クラッチ構造部材とは、両方の構造部材に間の形状による係合が解除される程に、互いに離れるように移動する。このことによって、より高い回転トルクの導入が、従動部において阻止され、且つ、噛み合い部が後続の位置に係止する。
把手において導入された回転トルクが低減されない場合、この工程が繰り返される。把手における回転トルクが解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0016】
圧縮ばねのばね力の上昇または低下により、クラッチにおける解除機構の所望された解除トルクは、変化され得る。この調節は、調節ねじの回転運動によって行われる。
【0017】
駆動軸と従動部とは、フリーホイール機構を介して、連結されている。フリーホイール機構は、一方の回転方向に、回転トルクを伝達もしくは支持し、他方、このフリーホイール機構が、逆方向において、回転運動(空転)を許容することのために構成され、且つ、規定されている。
フリーホイール機構を有するトルクドライバーの本発明に従う構成により、把手の逆回転の際の逆戻し抵抗は、除去されるか、もしくは、ほぼ完全に除去される。このフリーホイール機構は、握り直しの際の抵抗無しの逆戻しを可能にする。締め付け方向における操作の際に、フリーホイール機構は、セルフロック式にロックし、且つ、回転トルクを伝達する。
本発明に従う機能態様は、緊張されていない(ungespannten)ねじもしくはナットの締め付けを可能にする。極めて小さな締付けトルクが必要であるねじ結合も、本発明に従うトルクドライバーでもって有利に確立され得る。
【0018】
本発明に従い、前記フリーホイール機構は、内側軸と、外側リングと、切替ケージと、少なくとも1つの締付け体とを有している。特に、この締付け体は、締付けローラーである。前記切替ケージは、前記内側軸の軸部分の上に配置されている。
前記締付け体は、前記切替ケージの円筒部分内における切欠き部内において配置されている。前記外側リングは、少なくとも間接的に、前記駆動軸と結合されている。有利には、外側リングは、同一材料で、1つの部分から成るように、駆動軸の従動側の端部において形成されている。
有利には、外側リングは、駆動軸の従動側の端部における床部を有する、円筒スリーブの構成要素である。外側リングの外側周囲において、周囲に延在するリングカラー部が設けられている。このリングカラー部は、把手の収容部分内における当接部と協働し、且つ、把手内における駆動軸の軸線方向の位置を固定する。
【0019】
締付け体は、内側軸と外側リングとの間に配置されている。締付け位置において、締付け体は、回転トルクを、外側リングと内側軸との間で伝達する。
前記締付け体は、前記軸部分の平坦面と、前記外側リングの内側周囲面とにおいて支持されている。空転方向における回転運動の際に、締付け体は、内側軸と外側リングの走行面において滑動する。
【0020】
締め付け方向における把手の回転運動が行われた場合、軸部分の平坦面と、外側リングの内側周囲面との間の接触面における静止摩擦によって、摩擦による係合が生じる。回転トルクは、1つ、もしくは、複数の締付け体を介して伝達される。
繰り返される方向の切り替えを伴う駆動運動は、歩進的に、同じ方向に整向された回転方向に、従動側もしくは従動部へと、締付け方向において伝達される。回転方向が締付け方向から空転方向へと交番した場合、回転トルク伝達無しに、復帰運動が行われる。
【0021】
前記フリーホイール機構は、切り替え可能である。トルクドライバーは、ニュートラル位置を有しており、このニュートラル位置において、回転トルクが、両方の回転方向に伝達可能である。ニュートラル位置において、本発明に従うトルクドライバーは、旧来のドライバーのように作動する。
フリーホイール機構の切り替えによって、このフリーホイール機構は、第1の締付け位置と第2の締付け位置との間で交番可能であり、これに伴って、締め付け方向が設定され得る。フリーホイール機構の切り替えのために、切替ケージが、内側軸及び/または外側リングに対して回転可能である。このことによって、締付け体は、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置から、第1の締付け位置または第2の締付け位置へと移動可能である。
前記第1の締付け位置において、回転トルク伝達は、一方の回転方向(締め付け方向)へと行われる。前記第2の締付け位置において、回転トルク伝達は、第2の回転方向(解離方向)へと行われる。第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。回転トルク機構は、フリーホイール方向(自由走行方向)において、空転状態で、戻し回転され得る。
【0022】
切替ケージが、自動的に、この切替ケージの切替位置、もしくは、それぞれの締付け位置を変化可能でないために、係止装置が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージを、前記ニュートラル位置、前記第1の締付け位置、または、前記第2の締付け位置において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
【0023】
特に、係止装置は、係止要素を有しており、この係止要素が、内側軸の穿孔内において配置されている。係止要素は、ばねと協働し、このばねが、穿孔内において装入されており、且つ、この係止要素に対して作用し、従って、この係止要素が、ばね弾性的に、この穿孔から外方へと付勢されている。
切替ケージは、係止部を有しており、これら係止部内へと、係止要素が、それぞれの締付け位置もしくはニュートラル位置において、反力支承状態で係合する。係止部の輪郭は、係止要素の外側幾何学的形状に対して適合させられている。特に、この係止要素は、球体である。
【0024】
フリーホイール機構の切り替えは、切替本体を介して行われ、この切替本体が、前記切替ケージを切り替えることのために構成され、且つ、規定されている。切り替えは、トルクドライバーの長手方向軸線を中心としての、切替本体の回転運動によって行われる。特に、この切替本体は、切替リングまたは切替円板である。
この切替円板は、手動で操作され得る。切替本体の回転により、切替ケージは、締付け位置またはニュートラル位置に移動される。
【0025】
本発明は、前記内側軸の駆動軸側の端部分において、カラー部が設けられており、このカラー部が、前記外側リングの床部において支持されていることを意図している。
【0026】
更に、本発明に従い、前記内側軸の駆動軸側の前記端部分において、ピン部が設けられており、このピン部が、外側リングの前記床部内における中心の穿孔内へと突出している。フリーホイールの使用の際に、生じる摩擦トルクによる切替状態の変化を防止するために、内側軸内におけるカラー部は、外側リングの床部において支持されている。
このことによって、切替ケージと外側リングとの間の摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。外側リングの床部内における穿孔内へと突出するピン部は、配置状態を調心し、且つ、傾斜位置を防止する。
【0027】
フリーホイール機構の軸線方向の固定は、蓋によって行われる。蓋は、前記切替ケージの従動側に配置されており、且つ、把手、もしくは、この把手内に固定されている。
前記切替ケージは、カラー本体を有しており、このカラー本体が、前記蓋において支持されている。
【0028】
蓋は、把手の従動側の端部へと整向された状態で、切欠き部内へと挿入される。引き続いて、この蓋は、把手に対して相対的な回転運動によって固定される。前記蓋は、ソケット部分を有している。このソケット部分に、接合要素、特に切断歯または切断条片が設けられている。
この蓋の組み付けのための、この蓋の回転の際に、接合要素が、把手の材料内へとはめ込まれる。組み付けのため、もしくは、この組み付け工程の容易化のために、蓋は、係合面、例えばスリットを備えており、このスリット内において工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手と蓋とは、協働する当接面を備えている。更に、把手と蓋との間の結合が自動的に解離可能ではないために、把手と蓋とにおいて、係止要素が設けられている。蓋のねじ込みの際に、この蓋は、摩擦による係合状態および形状による係合状態において、把手の前方の円筒部分内において固定される。有利には、把手は合成物質から成り、他方、蓋が金属材料から製造されている。
【0029】
更に有利な構成は、前記内側軸は、従動部分を有しており、この従動部分が、前記従動部と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部が形成されていることを意図している。
従動部分が、工具のための保持システム、例えばナット(Nuesse)またはビットホルダーを有する、外側多角形部として構成されていることは可能である。更に、従動部分が、内側多角形部として形成されていることは可能である。
【0030】
前記従動部は、有利には、工具保持システムを有している。
【0031】
実務のために特に有利な実施形態は、前記従動部分が、内側多角形収容部と、この内側多角形収容部の領域内において、前記従動部分の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリットとを有していることを意図している。前記工具保持システムは、前記従動部分の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブと、係止ばねとを有している。
前記引張スリーブは、従動部分に対して同心的に配置されており、且つ、前方のカラー部と、後方の詰め体とを備えている。前記係止ばねは、螺旋体部分と直線的な脚部とを備えている。
前記係止ばねは、前記螺旋体部分によって、前記従動部分を外側で取り囲んでいる。螺旋体部分は、リング要素において支持されている。前記脚部は、前記内側多角形収容部内へと装入された工具、特にビットによって、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。
係止ばねの前記脚部は、前記スリットを通って、前記内側多角形収容部内へと係合している。このことによって、係止ばねの直線的な脚部が、工具、特にビットの規格化された係止溝部内へと係止し、且つ、内側多角形収容部内へと挿入されたビットを固定することは可能である。
前記係止ばねと向かい合って位置する前記リング要素の側面に、圧縮ばねが配置されている。この圧縮ばねは、工具、特にビットが内側多角形収容部内へと装入されている際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばねは、引張スリーブを、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。この目的のために、圧縮ばねは、引張スリーブの端部側の詰め体に対して作用する。引張スリーブと詰め体とは、互いに加圧されており、且つ、強固な1つのユニットを形成している。
【0032】
工具を、内側多角形収容部から取り外すために、工具保持システムは、ロック解除される。この目的のために、引張スリーブは引き戻される。
引張スリーブの前方のカラー部の内側稜部が、係止ばねを引き戻しの際に移動することによって、係止ばねは、この引張スリーブの引き戻しによってロック解除可能であり、従って、直線的な脚部が、保持位置から移動され、且つ、収容されている工具を解放する。
【0033】
従動部分内における前記スリットは、前記内側多角形収容部の内側面から、傾斜して後方に向かって整向されており、且つ、前記従動部分の外側面に至るまで延びている。
【0034】
本発明に従うトルクドライバーを、総じて、使用技術的および機能的に改善する構成は、設定装置が、予負荷可能な圧縮ばねと、調節ナットと、調節ねじとを有していることを意図する。回転トルクの設定のために、この設定装置は、前記把手の前記長手方向軸線を中心として旋回可能な調節体と協働する。
【0035】
それぞれに設定された回転トルクは、前記表示部において、数値的に表示される。この目的のために、本発明に従うトルクドライバーにおいて、前記把手の中空円筒形の長手方向部分内において配置されている数字ローラー計数機構が設けられている。
【0036】
更に、本発明に従うトルクドライバーの有利な構成は、調整装置が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整(アジャスト)が実施可能であることにある。
【0037】
本発明を、以下で、図に基づいて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に従うトルクドライバーの側面図である。
【
図3】線A-Aに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図4】線B-Bに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図5】線C-Cに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図6】線D-Dに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図7】線E-Eに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図8】トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図10】線F-Fに沿っての、
図9の図示の透視断面図である。
【
図11】把手の図示の無い、トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図13】線G-Gに沿っての、
図12に従う構造部材の図示の断面図である。
【
図14】フリーホイール機構と従動部との構造部材の側面図である。
【
図15】線H-Hに沿っての、
図14に相応する図示の断面図である。
【
図17】前方から傾斜しての、切替ケージの透視図である。
【
図19】フリーホイール機構と従動部との構造部材の透視分解図である。
【
図20】把手の従動側の端部の開口した側の端面図である。
【
図21】装入されたフリーホイール機構と位置決めされた蓋とを有する、把手の従動側の端部の端面図である。
【
図22】回転によって端部へと装入された蓋を有する、
図21の図示に相応する図である。
【
図23】トルクドライバーの更に別の実施形態の透視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から22に基づいて、本発明に従うトルクドライバー1、および、このトルクドライバーの構造部材を説明する。
図23から
図25は、トルクドライバー1の変形例を示している。
【0040】
トルクドライバー1は、把手2、並びに、設定された回転トルクのための表示部3、および、従動部4を有している。把手2内において、所定の回転トルクもしくは規定された解除回転トルクの設定のための設定装置5が組み込まれている。
設定装置5は、把手2内において回転可能に配置された調節ナット7において支持されている、予負荷可能な圧縮ばね6を有する調節機構と、調節ねじ8とを備えている。圧縮ばね6の圧縮もしくは弛緩によって、所望された回転トルクが設定される。
【0041】
設定装置5とこの設定装置の調節機構とは、把手2における調節体9と協働する。調節体9は、把手2に対して相対的に、この把手2の長手方向軸線LAを中心として回転可能である。把手2の固定状態の部分に対して相対的な調節体9の旋回によって、回転トルクは設定される。それぞれに設定された回転トルクを予期せぬ調節に対して保護するために、調節体9は、ロック部材10を用いて固定され、このロック部材が、ロックノブ11を介して操作される。
【0042】
トルクドライバー1の従動部4は、端面側で、把手2に配置されている。従動部4は、交換可能な工具の収容のために形成されている。ビットの形態の異なる差込み工具の交換可能な収容のために、従動部4は、このために規定された工具保持システム12を備えている。
【0043】
回転トルクのための表示部3は、相前後して配置された複数の数字ローラー15を備える、把手2の中空円筒形の長手方向部分13内において配置されている、数字ローラー計数機構14を有しており、これら数字ローラーが、把手2内における覗き窓16を通して読み取り可能である。
【0044】
従動部4に対する、把手2からの回転トルク伝達は、回転トルク機構17を介して行われる。従動部4は、回転トルク伝達可能に、駆動軸18と連結されている。
駆動軸18は、把手2内において支承されており、且つ、リングカラー部20を備える従動側の円筒スリーブ19と、中間の軸部分21と、端部分22とを有している。
【0045】
把手2内において、クラッチ24を有する解除機構23が配置されており、このクラッチが、所定の解除回転トルクの到達の際に、回転トルク伝達を中断する。クラッチ24は、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とを備えている。
把手2を介して、回転トルクが導入された場合、この回転トルクは、クラッチ構造部材25へと伝達される。クラッチ構造部材25は、相手方クラッチ構造部材26と協働し、且つ、圧縮ばね6によって付勢される。
第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、噛み合い部27を介して、形状による係合状態で連結されている。第1のクラッチ構造部材25の歯と、第2の相手方クラッチ構造部材26の歯とは、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
螺旋形状と、これによって予め与えられたねじラインとによって、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26との間の少ない面圧は、保証されている。
【0046】
第2の相手方クラッチ構造部材26は、六面角結合部を介して、駆動軸18と半径方向に連結されており、且つ、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。
対抗モーメントが従動部4において作用し、且つ、この対抗モーメントが駆動軸18へと伝達されるや否や、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、これら歯における接触面に沿って、互いに離れるように移動する。この移動は、圧縮ばね6のばね力に抗して行われ、その際、把手2において導入された回転トルクと対抗モーメントとが、量に関して同一である。
設定された回転トルク、即ち解除回転トルクから、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、両方の構造部材の間の形状による係合が解除される程度に、互いに離れるように移動する。このことによって、従動部4におけるより高い回転トルクの導入が阻止され、且つ、噛み合い部27が、後続の位置に係止する。
把手2において導入された回転トルクが、低減しない場合、この工程は繰り返される。把手2における回転トルクが、解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0047】
圧縮ばね6のばね力の増大または低減によって、クラッチ24における解除機構23の所望された解除回転トルクは、比例的に変化され得る。この調節は、スラスト軸受29によって支持されている、調節ねじ8の回転運動によって生起する。スラスト軸受29は、調節ねじ8に付与されるべき調節回転トルクが低減されることのために利用される。
調節ねじ8において回転運動が実施される場合、結合された調節ナット7が軸線方向に移動し、且つ、その際、調節ナット7において支持されている圧縮ばね6の予負荷が変化する。ねじ山回転方向が、その際、それぞれの回転方向がどのような効果を発生させるかを予め設定する。
調節ねじ8の回転の際に、調節ナット7が随伴回転可能でないために、この調節ナットは、把手2内において半径方向に拘束されている。長手方向軸線LAにおいて、調節ナット7は軸線方向に移動可能である。
【0048】
トルクドライバー1は、調整クラッチ31と調整軸32とを備える調整装置30を有している。調整装置30を介して、解除回転トルクの調整は行われ得る。
調整クラッチ31と調整軸32とを介して、特に、調節ねじ8の設定もしくは調整(アジャスト)は行われ、および、これに伴って、解除回転トルクの設定のための回転トルク伝達が行われる。このようにして、表示部3の上で数字ローラー計数機構14を介して表示された設定値、および、解除回転トルクは、相互に正しく合わせられる。
【0049】
駆動軸18と従動部4とは、フリーホイール機構33を介して連結されている。このフリーホイール機構33は、内側軸34と、外側リング35と、切替ケージ36とを有している。
外側軸35は、駆動軸18の従動側の端部37における、円筒スリーブ19の構成要素である。その円筒スリーブの外側リング35と、床部28とを備える該円筒スリーブ19、並びに、リングカラー部20は、駆動軸18の、同一材料で1つの部材から成るような構成要素である。
【0050】
特に、フリーホイール機構33は、締付けローラーの形態での締付け体38を備えている。トルクドライバー1の図示された実施例内において、2つの締付け体38が設けられている。
【0051】
切替ケージ36は、内側軸34の軸部分39の上に配設されている。締付け体38は、切替ケージ36の円筒部分41内における切欠き部40内に配置されている。
締付け体38は、それぞれに、軸部分39の平坦面42において支持されている。それぞれに、締付け体38と協働する、両方の平坦面42は、円筒部分41の上で、直径方向に相対して位置している。外側リング35において、締付け体38は、この外側リング35の内側周囲面43において支持されている。
【0052】
締付け位置において、締付け体38は、回転トルクを、外側リング35と内側軸34との間で伝達する。逆方向において、如何なる回転トルクも伝達されない。把手2は、逆方向において空転状態である。
繰り返される方向の切り替えを伴う把手2の駆動回転運動は、歩進的に、従動部4に対して同じ方向に整向された回転運動に、それぞれに、締付け方向において伝達される。
【0053】
右回りの回転運動のための締付け位置R、もしくは、左回りの回転運動のための締付け位置Lにおいて、締付け体38は、切替ケージ36の切欠き部40内における、右側もしくは左側の当接稜部44に当接する。右側もしくは左側の当接稜部44は、セルフロックの状態が生起し、且つ、回転トルク伝達が、一方の回転方向だけに可能であり、他方、逆方向において空転が達せられることのための働きをする。
当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。この回転方向において、この機構は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことによって、快適な握り直しが可能である。逆方向において、この機構は、セルフロック式にロックする。
【0054】
トルクドライバー1の今ここで問題になっている実施例において、2つの締付け体38が設けられている。それぞれの締付け体38のために、それぞれに1つの平坦面42が必要とされる。両方の平坦面42は、軸部分39において、締付け位置Lに対して同じ間隔をおいて、互いに向かい合って位置している。
【0055】
設備された切替ケージ36は、セルフロックの制御のために利用される。
【0056】
フリーホイール機構33の3つの作動位置を設定するために、切替ケージ36は、3つの切替位置に配置され得る。これら切替位置は、ニュートラル位置Nと、右回りの操作のための第1の締付け位置Rと、左回りの操作のための第2の締付け位置Lとを提供する。
【0057】
ニュートラル位置Nにおいて、切替ケージ36は、締付け体38に、機構が右側および左側へのそれぞれの回転方向においてセルフロック式にロックし且つこのことによってフリーホイールが作動を中止する程に、多くの自由性を与える。トルクドライバー1は、右回りと同様に左回りに、回転トルクを伝達する。
両方の他の締付け位置R、Lにおいて、それぞれに、切替ケージ36の切欠き部40内における右側または左側の当接稜部44は、セルフロックがそれぞれに1つの回転方向だけにおいて機能化されることのための働きをする。当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。
この回転方向において、このフリーホイール機構33は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことは、快適な握り直しを可能にする。逆方向において、このフリーホイール機構33は、セルフロック式にロックする。
第2の締付け位置Lは、フリーホイール機構33の操作方向もしくはフリーホイール方向だけを変化する。これに伴って、トルクドライバー1は、それぞれの要求に応じて、右方向の締め付け(Rechtsanzug)と、左方向の締め付け(Linksanzug)と、ニュートラル位置Nにおける制動機能との間で設定され得る。
【0058】
フリーホイール機構33は切り替え可能であり、その際、切替ケージ36が、内側軸34と外側リング35とに対して旋回可能である。このことによって、締付け体38は、回転トルクが両方の回転方向(右回りまたは左回り)に伝達可能であるニュートラル位置Nから、第1の締付け位置Rまたは第2の締付け位置Lへと移動される。
第1の締付け位置Rにおいて、回転トルクは、右回りの第1の回転方向(締め付け方向)に伝達される。第2の締付け位置Lにおいて、回転トルク伝達は、左回りの第2の回転方向(解離方向)へと行われる。
第1の回転方向および第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。
【0059】
切替ケージ36が、自動的に、この切替ケージのそれぞれの切替位置を変化可能でないために、係止装置45が設けられており、これら係止装置は、切替ケージ36を、ニュートラル位置N、第1の締付け位置R、または、第2の締付け位置Lにおいて位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
係止装置45は、内側軸34内において、半径方向に配置された穿孔46を有しており、この穿孔内において、ばね47によって付勢された、球体の形態の係止要素48が位置している。切替ケージ36において、係止部49が設けられている。この係止要素48とこれら係止部49とは、協働する。
係止要素48は、それぞれの切替位置において、切替ケージ36における係止部49内へと係合可能であり、且つ、自動的な切り替えを防止する。係止部49は、構成的に、係止要素48の外側輪郭に対して適合されている。特に、係止部49は、切替ケージ36内における球形部分形状的な窪み部として形成されている。
穿孔46と、当接稜部44と、係止部49とは、内側軸34の平坦面42に対して位置決めされている必要がある。切替ケージ36は、内側軸34の、取り囲んでいる溝部51内において配置されている止め輪50を用いて、軸線方向に固定される。
【0060】
トルクドライバー1の使用の際の、生じる摩擦トルクによる切り替え状態の変化を防止するために、内側軸34のカラー部52は、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。このことによって、切替ケージ36と外側リング35との間の、相応する摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。
カラー部52は、内側軸34の駆動軸側の端部分において設けられている。カラー部52の端部において、付加的に、ピン部53が位置しており、このピン部は、床部28内における穿孔54内へと没入する。このピン部53の役目は、外側リング35と内側軸34との間の傾斜位置を防止する、もしくは、制限することである。
【0061】
フリーホイール機構33の軸線方向の固定は、蓋55を介して行われる。蓋55は、切替ケージ36の従動側に配置されており、且つ、把手2において、もしくは、把手2内において固定されている。切替ケージ36は、カラー本体56を有しており、このカラー部本体に、蓋55が支持されている。
蓋55は、ソケット部分57を備えている。ソケット部分57において、切断歯の形態での接合要素58が設けられている。これら切断歯は、把手2の前方の円筒部分59内における、蓋55の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために構成されている。蓋55は、整向された状態で、前方の円筒部分59内において設けられた切欠き部60内へと挿入される。
把手2に対して相対的な引き続いての回転運動によって、ソケット部分57の外側周囲において配置された接合要素58が、ねじ込み式に、把手2の材料内へとはめ込む。この目的のために、蓋55は、スリット61を備えており、このスリット内において、相応する工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手2および蓋55において、当接面62が設けられている。付加的に、把手2および蓋55において、係止要素63が設けられており、これに伴って、結合は自動的に解離可能ではない。
【0062】
把手2は、合成物質から製造されており、他方、蓋55が、金属材料から成っている。
【0063】
蓋55の内径において、溝部64が設けられている。この溝部は、切替ケージ36の連行体65の傍らを通り過ぎることのために利用される。連行体65は、切替本体66に対する半径方向の結合を形成するために必要とされる。切替本体66は、特に、切替円板として構成されている。
切替本体66を用いて、切替ケージ36は切り替えられ得、その際、この切替本体66が、2つの機能を満たす。一方では、蓋55は、切替本体66によって覆われ、他方では、この切替本体66が、より良好な切替時の快適性のための働きをする。何故ならば、切替本体66が、より大きな周囲を備えており、且つ、付加的に、外側の溝成形部を備えることが可能であるからである。
切替本体66の軸線方向の固定は、係止突起部67を介して行われ、これら係止突起部が、切替ケージ36内における相応する切欠き部68内へと係止する。
【0064】
内側軸34は、従動部分69を有しており、この従動部分が、従動部4と連結可能であるか、または、この従動部分に従動部4が形成されている。
【0065】
図1から22までに基づいて説明されたトルクドライバー1において、従動部4は、工具保持システム12を有している。
【0066】
従動部分69は内側多角形収容部70を有している。この内側多角形収容部は、工具72、特にドライバービットの多角形部分71を収容することのために設けられている。
内側多角形収容部70の領域内において、従動部分69は、この従動部分69の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット73を有している。スリット73は、内側多角形収容部70の内側面74から、傾斜して後方に向かって、従動部分69の外側面75に至るまで延びている。
【0067】
工具保持システム12は、特に、従動部分69の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ76と、係止ばね77とを有している。引張スリーブ76は、前方のカラー部78を備えており、且つ、開口部79でもって、従動部分69の前方の端部を周囲側で囲繞している。
後方の詰め体80は、引張スリーブ76によって加圧されており、且つ、この引張スリーブと強固に結合されている。駆動軸側で、詰め体80は、半径方向の切欠き部81を有している。この切欠き部によって、この詰め体は、内側軸34の中間部分82を、半径方向に取り囲み可能であり、且つ、引張スリーブ76の引き戻しの際に、制限された状態で、中間部分82の上に案内され得る。
【0068】
係止ばね77は、螺旋体部分83と、直線的な脚部84とを有している。係止ばね77は、螺旋体部分83によって、従動部分69の上で案内されており、且つ、この従動部分を外側で取り囲んでいる。従動部分69内における溝部85内において、止め輪の形態でのリング要素86が配置されている。リング要素86において、螺旋体部分83が支持されている。
直線的な脚部84は、スリット73を通って、内側多角形収容部70内へと至るまで係合している。この脚部84は、内側多角形収容部70内へと装入された工具72を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。係止ばね77の脚部84は、この目的のために、工具72の規格化された係止溝部87内へと係止する。
【0069】
係止ばね77と向かい合って位置するリング要素86の側面に、圧縮ばね88が配置されている。この圧縮ばね88は、工具72が内側多角形収容部70内へと装入されており且つ引張スリーブ76の前方の内側稜部89と係止ばね77との間の遊隙を引き起こす際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばね88は、引張スリーブ76を、詰め体80を介して、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。作用するばね力は、係止ばね77がこのばね力から影響を及ぼされない程に少しである。
【0070】
引張スリーブ76の引き戻しによって、係止ばね77は、ロック解除される。その際、引張スリーブ76の内側稜部89は、係止ばね77をスリット73に沿って引き戻し、且つ、工具72を解放する。
【0071】
図23から25まで内において図示されたトルクドライバー1は、その従動部分に外側多角形部90が形成されている該従動部分69を備える従動部4を有している。外側多角形部90を備える従動部分69において、係止装置91が統合されている。
外側多角形部90と係止装置91とを有する従動部4は、市場で一般に通用する工具、例えばソケットレンチを収容および駆動することのために規定され、且つ、構成されている。
【0072】
その他の点では、回転トルクの設定のためのトルクドライバーの設定装置5と、回転トルク機構17と、フリーホイール機構33とを有するトルクドライバー1の実施形態は、前記された構成に相応する。
【符号の説明】
【0073】
1 トルクドライバー
2 把手
3 表示部
4 従動部
5 設定装置
6 圧縮ばね
7 調節ナット
8 調節ねじ
9 調節体
10 ロック部材
11 ロックノブ
12 工具保持システム
13 長手方向部分
14 数字ローラー計数機構
15 数字ローラー
16 覗き窓
17 回転トルク機構
18 駆動軸
19 円筒スリーブ
20 リングカラー部
21 軸部分
22 端部分
23 解除機構
24 クラッチ
25 クラッチ構造部材
26 相手方クラッチ構造部材
27 噛み合い部
28 円筒スリーブ19の床部
29 スラスト軸受
30 調整装置
31 調整クラッチ
32 調整軸
33 フリーホイール機構
34 内側軸
35 外側リング
36 切替ケージ
37 駆動軸18の端部
38 締付け体
39 軸部分
40 切欠き部
41 円筒部分
42 平坦面
43 内側周囲面
44 当接稜部
45 係止装置
46 穿孔
47 ばね
48 係止要素
49 係止部
50 止め輪
51 溝部
52 カラー部
53 ピン部
54 穿孔
55 蓋
56 カラー本体
57 ソケット部分
58 接合要素
59 前方の円筒部分
60 切欠き部
61 蓋55のスリット
62 当接面
63 係止要素
64 溝部
65 連行体
66 切替本体
67 係止突起部
68 切欠き部
69 従動部分
70 内側多角形収容部
71 多角形部分
72 工具
73 スリット
74 内側面
75 外側面
76 引張スリーブ
77 係止ばね
78 カラー部
79 開口部
80 詰め体
81 切欠き部
82 中間部分
83 螺旋体部分
84 脚部
85 溝部
86 リング要素
87 係止溝部
88 圧縮ばね
89 内側稜部
90 外側多角形部
91 係止装置
LA 長手方向軸線
N ニュートラル位置
R 第1の締付け位置
L 第2の締付け位置
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクドライバー(1)であって、このトルクドライバーが、
把手(2)と、設定された回転トルクのための表示部(3)と、従動部(4)とを有しており、
前記把手(2)内において、回転トルクの設定のための設定装置(5)と、回転トルク機構(17)が配置されており、前記回転トルク機構(17)が、回転トルクの伝達のための駆動軸(18)と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構(23)とを備えており、
前記解除機構(23)が、クラッチ(24)を有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断し、
前記クラッチ(24)が、第1のクラッチ構造部材(25)と第2の相手方クラッチ構造部材(26)とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部(27)を介して、形状による係合状態で連結されている、
上記トルクドライバーにおいて、
前記駆動軸(18)と前記従動部(4)とが、フリーホイール機構(33)を介して、連結されており、
前記フリーホイール機構(33)が、内側軸(34)と、外側リング(35)と、切替ケージ(36)と、少なくとも1つの締付け体(38)、特に締付けローラーとを有しており、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)の軸部分(39)の上に、および、前記締付け体(38)が、前記切替ケージ(36)の円筒部分(41)内における切欠き部(40)内に、配置されており、且つ、前記外側リング(35)が、少なくとも間接的に、前記駆動軸(18)と結合されており、
前記締付け体(38)が、締付け位置(R、L)において、回転トルクを、前記外側リング(35)と前記内側軸(34)との間で伝達する
こと、および、
前記内側軸(34)の駆動軸側の端部分において、カラー部(52)が設けられており、このカラー部が、前記外側リング(35)または円筒スリーブ(19)の床部(28)において支持されており、且つ、
前記内側軸(34)の駆動軸側の前記端部分において、ピン部(53)が設けられており、このピン部が、前記床部(28)内における中心の穿孔(54)内へと突出していること、
を特徴とするトルクドライバー(1)。
【請求項2】
前記締付け体(38)は、前記軸部分(39)の平坦面(42)と、前記外側リング(35)の内側周囲面(43)とにおいて支持されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクドライバー。
【請求項3】
前記フリーホイール機構(33)は、切り替え可能であり、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)及び/または前記外側リング(35)に対して旋回可能であり、且つ、前記締付け体(38)が、このことによって、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置(N)から、第1の締付け位置(R)または第2の締付け位置(L)へと移動可能であり、
前記第1の締付け位置(R)において、回転トルク伝達が、第1の回転方向(締め付け方向)へと、および、前記第2の締付け位置(L)において、回転トルク伝達が、第2回転方向(解離方向)へと行われ、
第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項4】
係止装置(45)が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージ(36)を、前記ニュートラル位置(N)、前記第1の締付け位置(R)、または、前記第2の締付け位置(L)において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする請求項3に記載のトルクドライバー。
【請求項5】
係止装置(45)は、
前記内側軸(34)の穿孔(46)内において、ばね(47)の組み込みのもとで配置されている係止要素(48)と、
前記切替ケージ(36)に設けられた係止部(49)とを有していることを特徴とする請求項4に記載のトルクドライバー。
【請求項6】
切替本体(66)、特に切替リングまたは切替円板が設けられており、
この切替本体(66)が、前記切替ケージ(36)を切り替えることのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項7】
前記切替ケージ(36)は、前記内側軸(34)の溝部(51)内における止め輪(50)によって、軸線方向に固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項8】
前記切替ケージ(36)の従動側に、蓋(55)が配置されており、この蓋が、前記把手(2)に固定されており、且つ、
前記切替ケージ(36)が、カラー本体(56)を有しており、このカラー本体が、前記蓋(55)において支持されていることを特徴とする請求項1
から7のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項9】
前記蓋(55)は、ソケット部分(57)を有しており、
前記把手(2)の前方の円筒部分(59)内における前記蓋(55)の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために、前記ソケット部分(57)に、接合要素(58)、特に切断歯または切断条片が設けられていることを特徴とする
請求項8に記載のトルクドライバー。
【請求項10】
前記内側軸(34)は、従動部分(69)を有しており、
この従動部分が、前記従動部(4)と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部(4)が形成されていることを特徴とする請求項1
から9のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項11】
前記従動部(4)は、工具保持システム(12)を有していることを特徴とする請求項1
から10のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項12】
前記従動部分(69)は、内側多角形収容部(70)と、この内側多角形収容部(70)の領域内において、前記従動部分(69)の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット(73)とを有しており、および、
前記工具保持システム(12)が、前記従動部分(69)の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ(76)と、係止ばね(77)とを有しており、
前記引張スリーブ(76)が、前方のカラー部(78)と、後方の詰め体(80)とを備えており、且つ、前記係止ばね(77)が、螺旋体部分(83)と直線的な脚部(84)とを備えており、
前記係止ばね(77)が、前記螺旋体部分(83)によって、前記従動部分(69)を外側で取り囲んでおり、且つ、リング要素(86)において支持されており、且つ、前記脚部(84)が、前記スリット(73)を通って、前記内側多角形収容部(70)内へと係合しており、
前記脚部(84)が、前記内側多角形収容部(70)内へと装入された工具(72)を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されており、および、
前記係止ばね(77)と向かい合って位置する前記リング要素(86)の側面に、圧縮ばね(88)が配置されており、および、
前記引張スリーブ(76)が、前記係止ばね(77)と前記圧縮ばね(88)とを外側で取り囲んでおり、且つ、前記圧縮ばね(88)が、前記詰め体(80)に当接しており、
前方の前記カラー部(78)の内側稜部(89)が、前記係止ばね(77)を移動することによって、前記係止ばね(77)が、前記引張スリーブ(76)の引き戻しによってロック解除可能であり、従って、前記脚部(84)が、前記工具(72)を解放する、
ことを特徴とする
請求項10または11に記載のトルクドライバー。
【請求項13】
前記スリット(73)は、前記内側多角形収容部(70)の内側面(74)から、傾斜して後方に向かって、前記従動部分(69)の外側面(75)に至るまで延びていることを特徴とする
請求項12に記載のトルクドライバー。
【請求項14】
前記設定装置(5)は、予負荷可能な圧縮ばね(6)と、調節ナット(7)と、調節ねじ(8)とを有しており、且つ、
この設定装置(5)が、前記把手(2)の前記長手方向軸線(LA)を中心として回転可能な調節体(9)と、回転トルクの設定のために協働することを特徴とする請求項1
から13のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項15】
前記表示部(3)は、前記把手(2)の中空円筒形の長手方向部分(13)内において配置されている数字ローラー計数機構(14)を有していることを特徴とする請求項1
から14のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【請求項16】
調整装置(30)が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整が実施可能であることを特徴とする請求項1
から15のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念内における特徴に従うトルクドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクドライバーのようなトルクツールは、手動操作される工具であり、これらトルクツールによって、コントロールされた回転トルクが、加工材料、通常は、ねじまたはナットに対して作用され得る。結合されるべき構造部材の間の必要な締付け力、もしくは、組付け予負荷を保証するために、設定可能なトルクツールによって、所定の締付けトルクが作用され得る。
【0003】
トルクドライバーにおいて、解除機構は、把手内において格納されている。把手内において、または、把手において、同様に、設定装置も、設定されるべき回転トルクの表示部と共に設けられている。
把手における調節機構、通常は、ねじ付きスピンドルと結合された調節体が、この把手の固定状態の部分に対して相対的に回転されることによって、所望された回転トルクは、圧縮ばねの圧縮によって設定される。
【0004】
設定可能なトルクドライバーは、特許文献1によって公知である。
【0005】
特許文献2および特許文献3は、ラチェットドライバーを開示している。
【0006】
更に、特許文献4から、切り替え可能なトルクドライバーを従来技術の一部と見なしている。
【0007】
上述されたトルクドライバーは、回転力を一方の回転方向において伝達可能とするために、切り替え可能なラチェット機構でもって作動し、他方、逆回転方向において、如何なる力も伝達されず、むしろ、ラチェットが空転状態で回転する。そのような機械的なラチェット機構は、システムに応じて、逆戻し抵抗を備えており、この逆戻し抵抗が、戻し回転の際に感じ取れる。逆戻し抵抗の大きさは、それぞれのラチェット機構の構成に応じて変化する。抵抗無しの逆戻しは、公知の機構において可能ではない。
逆戻し抵抗が、解離されたねじ結合の締め付けもしくは予締め付けの際に、特に不利な影響を及ぼす。何故ならば、ねじの締付けトルクが、しばしば、この逆戻し抵抗よりも小さいからである。その結果として、そのような使用状況において、ラチェット機構は機能しない。
匹敵可能な問題は、極めて小さな締付けトルクでもってのねじ結合の際に生じる。何故ならば、そこで、締付けトルクが逆戻し抵抗よりも小さい可能性があるからである。
【0008】
特許文献5内において開示された切り替え可能なドライバーにおいて、回転力伝達は、ローラーを用いて行われる。回転方向の切り替えは、制御装置を介して行われる。
これらローラーは、軸、および、ドライバーの柄の内側穿孔と協働し、従って、回転トルク伝達の際に、これらローラーが、制御装置によって設定可能な回転方向においてくさび状に固定し、且つ、回転トルクが、一方の回転方向において伝達され得る。回転方向転換は、制御装置を用いての切り替えによって行われる。
トルクドライバーにおける、回転トルクの設定のための構造は、特許文献6により、一般的な公知技術として見なされる。
把手内において、回転トルクの設定のための設定装置と、回転トルク機構とが配置されており、この回転トルク機構が、回転トルクの伝達のための駆動軸と、設定された回転トルクの達成の際の回転トルク伝達の中断のための解除機構とを備えている。
方向切替え可能なフリーホイールロック装置を有するねじ締付け工具は、特許文献7内において記載されている。
更に、特許文献8から、設定可能なトルクドライバーが読み取れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,421,675 B2明細書
【特許文献2】独国実用新案第298 00 921 U1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 661 139 B1号明細書
【特許文献4】独国特許発明第10 2005 034 114 B9号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第25 03 372 A1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2013 009 358A1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第197 07 792 A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2015/0090078号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、この公知技術を出発点として、トルクドライバーを、使用技術的に、並びに、機能的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決策は、本発明により、請求項1に従うトルクドライバーにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従うトルクドライバーの有利な実施形態および更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0013】
単独でまたは組み合わせにおいて本発明を技術的に有利に構成するトルクドライバーの特徴の構成および修正は、同様に明細書および添付された図から与えられる。
【0014】
このトルクドライバーは、把手と、設定された回転トルクのための表示部と、従動部とを有している。前記把手内において、回転トルクの設定のための設定装置と、回転トルク機構が配置されている。
前記回転トルク機構は、回転トルクの伝達のための駆動軸と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構とを備えている。
【0015】
前記解除機構は、クラッチを有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断する。前記クラッチは、第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。
第1のクラッチ構造部材は、第2の相手方クラッチ構造部材と協働し、且つ、圧縮ばねによって付勢される。第1のクラッチ構造部材と第2の相手方クラッチ構造部材とは、噛み合い部を介して、形状による係合状態で連結されている。これら歯は、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
従動部において対抗トルクが作用し、且つ、この対抗トルクが駆動側に伝達されるや否や、両方のクラッチ要素は、これら歯における接触面に沿って互いに離間するように移動する。この移動は、圧縮ばねのばね力に抗して行われ、その際、把手において導入される回転トルク、並びに、対抗トルクが、量に関して同一である。
設定された回転トルク(解除回転トルク)から、第1のクラッチ構造部材と、第2の相手方クラッチ構造部材とは、両方の構造部材に間の形状による係合が解除される程に、互いに離れるように移動する。このことによって、より高い回転トルクの導入が、従動部において阻止され、且つ、噛み合い部が後続の位置に係止する。
把手において導入された回転トルクが低減されない場合、この工程が繰り返される。把手における回転トルクが解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0016】
圧縮ばねのばね力の上昇または低下により、クラッチにおける解除機構の所望された解除トルクは、変化され得る。この調節は、調節ねじの回転運動によって行われる。
【0017】
駆動軸と従動部とは、フリーホイール機構を介して、連結されている。フリーホイール機構は、一方の回転方向に、回転トルクを伝達もしくは支持し、他方、このフリーホイール機構が、逆方向において、回転運動(空転)を許容することのために構成され、且つ、規定されている。
フリーホイール機構を有するトルクドライバーの本発明に従う構成により、把手の逆回転の際の逆戻し抵抗は、除去されるか、もしくは、ほぼ完全に除去される。このフリーホイール機構は、握り直しの際の抵抗無しの逆戻しを可能にする。締め付け方向における操作の際に、フリーホイール機構は、セルフロック式にロックし、且つ、回転トルクを伝達する。
本発明に従う機能態様は、緊張されていない(ungespannten)ねじもしくはナットの締め付けを可能にする。極めて小さな締付けトルクが必要であるねじ結合も、本発明に従うトルクドライバーでもって有利に確立され得る。
【0018】
本発明に従い、前記フリーホイール機構は、内側軸と、外側リングと、切替ケージと、少なくとも1つの締付け体とを有している。特に、この締付け体は、締付けローラーである。前記切替ケージは、前記内側軸の軸部分の上に配置されている。
前記締付け体は、前記切替ケージの円筒部分内における切欠き部内において配置されている。前記外側リングは、少なくとも間接的に、前記駆動軸と結合されている。有利には、外側リングは、同一材料で、1つの部分から成るように、駆動軸の従動側の端部において形成されている。
有利には、外側リングは、駆動軸の従動側の端部における床部を有する、円筒スリーブの構成要素である。外側リングの外側周囲において、周囲に延在するリングカラー部が設けられている。このリングカラー部は、把手の収容部分内における当接部と協働し、且つ、把手内における駆動軸の軸線方向の位置を固定する。
【0019】
締付け体は、内側軸と外側リングとの間に配置されている。締付け位置において、締付け体は、回転トルクを、外側リングと内側軸との間で伝達する。
前記締付け体は、前記軸部分の平坦面と、前記外側リングの内側周囲面とにおいて支持されている。空転方向における回転運動の際に、締付け体は、内側軸と外側リングの走行面において滑動する。
【0020】
締め付け方向における把手の回転運動が行われた場合、軸部分の平坦面と、外側リングの内側周囲面との間の接触面における静止摩擦によって、摩擦による係合が生じる。回転トルクは、1つ、もしくは、複数の締付け体を介して伝達される。
繰り返される方向の切り替えを伴う駆動運動は、歩進的に、同じ方向に整向された回転方向に、従動側もしくは従動部へと、締付け方向において伝達される。回転方向が締付け方向から空転方向へと交番した場合、回転トルク伝達無しに、復帰運動が行われる。
【0021】
前記フリーホイール機構は、切り替え可能である。トルクドライバーは、ニュートラル位置を有しており、このニュートラル位置において、回転トルクが、両方の回転方向に伝達可能である。ニュートラル位置において、本発明に従うトルクドライバーは、旧来のドライバーのように作動する。
フリーホイール機構の切り替えによって、このフリーホイール機構は、第1の締付け位置と第2の締付け位置との間で交番可能であり、これに伴って、締め付け方向が設定され得る。フリーホイール機構の切り替えのために、切替ケージが、内側軸及び/または外側リングに対して回転可能である。このことによって、締付け体は、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置から、第1の締付け位置または第2の締付け位置へと移動可能である。
前記第1の締付け位置において、回転トルク伝達は、一方の回転方向(締め付け方向)へと行われる。前記第2の締付け位置において、回転トルク伝達は、第2の回転方向(解離方向)へと行われる。第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。回転トルク機構は、フリーホイール方向(自由走行方向)において、空転状態で、戻し回転され得る。
【0022】
切替ケージが、自動的に、この切替ケージの切替位置、もしくは、それぞれの締付け位置を変化可能でないために、係止装置が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージを、前記ニュートラル位置、前記第1の締付け位置、または、前記第2の締付け位置において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
【0023】
特に、係止装置は、係止要素を有しており、この係止要素が、内側軸の穿孔内において配置されている。係止要素は、ばねと協働し、このばねが、穿孔内において装入されており、且つ、この係止要素に対して作用し、従って、この係止要素が、ばね弾性的に、この穿孔から外方へと付勢されている。
切替ケージは、係止部を有しており、これら係止部内へと、係止要素が、それぞれの締付け位置もしくはニュートラル位置において、反力支承状態で係合する。係止部の輪郭は、係止要素の外側幾何学的形状に対して適合させられている。特に、この係止要素は、球体である。
【0024】
フリーホイール機構の切り替えは、切替本体を介して行われ、この切替本体が、前記切替ケージを切り替えることのために構成され、且つ、規定されている。切り替えは、トルクドライバーの長手方向軸線を中心としての、切替本体の回転運動によって行われる。特に、この切替本体は、切替リングまたは切替円板である。
この切替円板は、手動で操作され得る。切替本体の回転により、切替ケージは、締付け位置またはニュートラル位置に移動される。
【0025】
本発明は、前記内側軸の駆動軸側の端部分において、カラー部が設けられており、このカラー部が、前記外側リングの床部において支持されていることを意図している。
【0026】
更に、本発明に従い、前記内側軸の駆動軸側の前記端部分において、ピン部が設けられており、このピン部が、外側リングの前記床部内における中心の穿孔内へと突出している。フリーホイールの使用の際に、生じる摩擦トルクによる切替状態の変化を防止するために、内側軸内におけるカラー部は、外側リングの床部において支持されている。
このことによって、切替ケージと外側リングとの間の摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。外側リングの床部内における穿孔内へと突出するピン部は、配置状態を調心し、且つ、傾斜位置を防止する。
【0027】
フリーホイール機構の軸線方向の固定は、蓋によって行われる。蓋は、前記切替ケージの従動側に配置されており、且つ、把手、もしくは、この把手内に固定されている。
前記切替ケージは、カラー本体を有しており、このカラー本体が、前記蓋において支持されている。
【0028】
蓋は、把手の従動側の端部へと整向された状態で、切欠き部内へと挿入される。引き続いて、この蓋は、把手に対して相対的な回転運動によって固定される。前記蓋は、ソケット部分を有している。このソケット部分に、接合要素、特に切断歯または切断条片が設けられている。
この蓋の組み付けのための、この蓋の回転の際に、接合要素が、把手の材料内へとはめ込まれる。組み付けのため、もしくは、この組み付け工程の容易化のために、蓋は、係合面、例えばスリットを備えており、このスリット内において工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手と蓋とは、協働する当接面を備えている。更に、把手と蓋との間の結合が自動的に解離可能ではないために、把手と蓋とにおいて、係止要素が設けられている。蓋のねじ込みの際に、この蓋は、摩擦による係合状態および形状による係合状態において、把手の前方の円筒部分内において固定される。有利には、把手は合成物質から成り、他方、蓋が金属材料から製造されている。
【0029】
更に有利な構成は、前記内側軸は、従動部分を有しており、この従動部分が、前記従動部と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部が形成されていることを意図している。
従動部分が、工具のための保持システム、例えばナット(Nuesse)またはビットホルダーを有する、外側多角形部として構成されていることは可能である。更に、従動部分が、内側多角形部として形成されていることは可能である。
【0030】
前記従動部は、有利には、工具保持システムを有している。
【0031】
実務のために特に有利な実施形態は、前記従動部分が、内側多角形収容部と、この内側多角形収容部の領域内において、前記従動部分の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリットとを有していることを意図している。前記工具保持システムは、前記従動部分の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブと、係止ばねとを有している。
前記引張スリーブは、従動部分に対して同心的に配置されており、且つ、前方のカラー部と、後方の詰め体とを備えている。前記係止ばねは、螺旋体部分と直線的な脚部とを備えている。
前記係止ばねは、前記螺旋体部分によって、前記従動部分を外側で取り囲んでいる。螺旋体部分は、リング要素において支持されている。前記脚部は、前記内側多角形収容部内へと装入された工具、特にビットによって、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。
係止ばねの前記脚部は、前記スリットを通って、前記内側多角形収容部内へと係合している。このことによって、係止ばねの直線的な脚部が、工具、特にビットの規格化された係止溝部内へと係止し、且つ、内側多角形収容部内へと挿入されたビットを固定することは可能である。
前記係止ばねと向かい合って位置する前記リング要素の側面に、圧縮ばねが配置されている。この圧縮ばねは、工具、特にビットが内側多角形収容部内へと装入されている際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばねは、引張スリーブを、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。この目的のために、圧縮ばねは、引張スリーブの端部側の詰め体に対して作用する。引張スリーブと詰め体とは、互いに加圧されており、且つ、強固な1つのユニットを形成している。
【0032】
工具を、内側多角形収容部から取り外すために、工具保持システムは、ロック解除される。この目的のために、引張スリーブは引き戻される。
引張スリーブの前方のカラー部の内側稜部が、係止ばねを引き戻しの際に移動することによって、係止ばねは、この引張スリーブの引き戻しによってロック解除可能であり、従って、直線的な脚部が、保持位置から移動され、且つ、収容されている工具を解放する。
【0033】
従動部分内における前記スリットは、前記内側多角形収容部の内側面から、傾斜して後方に向かって整向されており、且つ、前記従動部分の外側面に至るまで延びている。
【0034】
本発明に従うトルクドライバーを、総じて、使用技術的および機能的に改善する構成は、設定装置が、予負荷可能な圧縮ばねと、調節ナットと、調節ねじとを有していることを意図する。回転トルクの設定のために、この設定装置は、前記把手の前記長手方向軸線を中心として旋回可能な調節体と協働する。
【0035】
それぞれに設定された回転トルクは、前記表示部において、数値的に表示される。この目的のために、本発明に従うトルクドライバーにおいて、前記把手の中空円筒形の長手方向部分内において配置されている数字ローラー計数機構が設けられている。
【0036】
更に、本発明に従うトルクドライバーの有利な構成は、調整装置が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整(アジャスト)が実施可能であることにある。
【0037】
本発明を、以下で、図に基づいて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に従うトルクドライバーの側面図である。
【
図3】線A-Aに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図4】線B-Bに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図5】線C-Cに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図6】線D-Dに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図7】線E-Eに沿っての、
図2の図示の断面図である。
【
図8】トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図10】線F-Fに沿っての、
図9の図示の透視断面図である。
【
図11】把手の図示の無い、トルクドライバーの構造部材の透視分解図である。
【
図13】線G-Gに沿っての、
図12に従う構造部材の図示の断面図である。
【
図14】フリーホイール機構と従動部との構造部材の側面図である。
【
図15】線H-Hに沿っての、
図14に相応する図示の断面図である。
【
図17】前方から傾斜しての、切替ケージの透視図である。
【
図19】フリーホイール機構と従動部との構造部材の透視分解図である。
【
図20】把手の従動側の端部の開口した側の端面図である。
【
図21】装入されたフリーホイール機構と位置決めされた蓋とを有する、把手の従動側の端部の端面図である。
【
図22】回転によって端部へと装入された蓋を有する、
図21の図示に相応する図である。
【
図23】トルクドライバーの更に別の実施形態の透視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から22に基づいて、本発明に従うトルクドライバー1、および、このトルクドライバーの構造部材を説明する。
図23から
図25は、トルクドライバー1の変形例を示している。
【0040】
トルクドライバー1は、把手2、並びに、設定された回転トルクのための表示部3、および、従動部4を有している。把手2内において、所定の回転トルクもしくは規定された解除回転トルクの設定のための設定装置5が組み込まれている。
設定装置5は、把手2内において回転可能に配置された調節ナット7において支持されている、予負荷可能な圧縮ばね6を有する調節機構と、調節ねじ8とを備えている。圧縮ばね6の圧縮もしくは弛緩によって、所望された回転トルクが設定される。
【0041】
設定装置5とこの設定装置の調節機構とは、把手2における調節体9と協働する。調節体9は、把手2に対して相対的に、この把手2の長手方向軸線LAを中心として回転可能である。把手2の固定状態の部分に対して相対的な調節体9の旋回によって、回転トルクは設定される。それぞれに設定された回転トルクを予期せぬ調節に対して保護するために、調節体9は、ロック部材10を用いて固定され、このロック部材が、ロックノブ11を介して操作される。
【0042】
トルクドライバー1の従動部4は、端面側で、把手2に配置されている。従動部4は、交換可能な工具の収容のために形成されている。ビットの形態の異なる差込み工具の交換可能な収容のために、従動部4は、このために規定された工具保持システム12を備えている。
【0043】
回転トルクのための表示部3は、相前後して配置された複数の数字ローラー15を備える、把手2の中空円筒形の長手方向部分13内において配置されている、数字ローラー計数機構14を有しており、これら数字ローラーが、把手2内における覗き窓16を通して読み取り可能である。
【0044】
従動部4に対する、把手2からの回転トルク伝達は、回転トルク機構17を介して行われる。従動部4は、回転トルク伝達可能に、駆動軸18と連結されている。
駆動軸18は、把手2内において支承されており、且つ、リングカラー部20を備える従動側の円筒スリーブ19と、中間の軸部分21と、端部分22とを有している。
【0045】
把手2内において、クラッチ24を有する解除機構23が配置されており、このクラッチが、所定の解除回転トルクの到達の際に、回転トルク伝達を中断する。クラッチ24は、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とを備えている。
把手2を介して、回転トルクが導入された場合、この回転トルクは、クラッチ構造部材25へと伝達される。クラッチ構造部材25は、相手方クラッチ構造部材26と協働し、且つ、圧縮ばね6によって付勢される。
第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、噛み合い部27を介して、形状による係合状態で連結されている。第1のクラッチ構造部材25の歯と、第2の相手方クラッチ構造部材26の歯とは、傾斜して形成されており、且つ、螺旋形状の歯輪郭を有している。
螺旋形状と、これによって予め与えられたねじラインとによって、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26との間の少ない面圧は、保証されている。
【0046】
第2の相手方クラッチ構造部材26は、六面角結合部を介して、駆動軸18と半径方向に連結されており、且つ、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。
対抗モーメントが従動部4において作用し、且つ、この対抗モーメントが駆動軸18へと伝達されるや否や、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、これら歯における接触面に沿って、互いに離れるように移動する。この移動は、圧縮ばね6のばね力に抗して行われ、その際、把手2において導入された回転トルクと対抗モーメントとが、量に関して同一である。
設定された回転トルク、即ち解除回転トルクから、第1のクラッチ構造部材25と第2の相手方クラッチ構造部材26とは、両方の構造部材の間の形状による係合が解除される程度に、互いに離れるように移動する。このことによって、従動部4におけるより高い回転トルクの導入が阻止され、且つ、噛み合い部27が、後続の位置に係止する。
把手2において導入された回転トルクが、低減しない場合、この工程は繰り返される。把手2における回転トルクが、解除回転トルクよりも小さい場合に初めて、この工程は中断される。
【0047】
圧縮ばね6のばね力の増大または低減によって、クラッチ24における解除機構23の所望された解除回転トルクは、比例的に変化され得る。この調節は、スラスト軸受29によって支持されている、調節ねじ8の回転運動によって生起する。スラスト軸受29は、調節ねじ8に付与されるべき調節回転トルクが低減されることのために利用される。
調節ねじ8において回転運動が実施される場合、結合された調節ナット7が軸線方向に移動し、且つ、その際、調節ナット7において支持されている圧縮ばね6の予負荷が変化する。ねじ山回転方向が、その際、それぞれの回転方向がどのような効果を発生させるかを予め設定する。
調節ねじ8の回転の際に、調節ナット7が随伴回転可能でないために、この調節ナットは、把手2内において半径方向に拘束されている。長手方向軸線LAにおいて、調節ナット7は軸線方向に移動可能である。
【0048】
トルクドライバー1は、調整クラッチ31と調整軸32とを備える調整装置30を有している。調整装置30を介して、解除回転トルクの調整は行われ得る。
調整クラッチ31と調整軸32とを介して、特に、調節ねじ8の設定もしくは調整(アジャスト)は行われ、および、これに伴って、解除回転トルクの設定のための回転トルク伝達が行われる。このようにして、表示部3の上で数字ローラー計数機構14を介して表示された設定値、および、解除回転トルクは、相互に正しく合わせられる。
【0049】
駆動軸18と従動部4とは、フリーホイール機構33を介して連結されている。このフリーホイール機構33は、内側軸34と、外側リング35と、切替ケージ36とを有している。
外側軸35は、駆動軸18の従動側の端部37における、円筒スリーブ19の構成要素である。その円筒スリーブの外側リング35と、床部28とを備える該円筒スリーブ19、並びに、リングカラー部20は、駆動軸18の、同一材料で1つの部材から成るような構成要素である。
【0050】
特に、フリーホイール機構33は、締付けローラーの形態での締付け体38を備えている。トルクドライバー1の図示された実施例内において、2つの締付け体38が設けられている。
【0051】
切替ケージ36は、内側軸34の軸部分39の上に配設されている。締付け体38は、切替ケージ36の円筒部分41内における切欠き部40内に配置されている。
締付け体38は、それぞれに、軸部分39の平坦面42において支持されている。それぞれに、締付け体38と協働する、両方の平坦面42は、円筒部分41の上で、直径方向に相対して位置している。外側リング35において、締付け体38は、この外側リング35の内側周囲面43において支持されている。
【0052】
締付け位置において、締付け体38は、回転トルクを、外側リング35と内側軸34との間で伝達する。逆方向において、如何なる回転トルクも伝達されない。把手2は、逆方向において空転状態である。
繰り返される方向の切り替えを伴う把手2の駆動回転運動は、歩進的に、従動部4に対して同じ方向に整向された回転運動に、それぞれに、締付け方向において伝達される。
【0053】
右回りの回転運動のための締付け位置R、もしくは、左回りの回転運動のための締付け位置Lにおいて、締付け体38は、切替ケージ36の切欠き部40内における、右側もしくは左側の当接稜部44に当接する。右側もしくは左側の当接稜部44は、セルフロックの状態が生起し、且つ、回転トルク伝達が、一方の回転方向だけに可能であり、他方、逆方向において空転が達せられることのための働きをする。
当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。この回転方向において、この機構は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことによって、快適な握り直しが可能である。逆方向において、この機構は、セルフロック式にロックする。
【0054】
トルクドライバー1の今ここで問題になっている実施例において、2つの締付け体38が設けられている。それぞれの締付け体38のために、それぞれに1つの平坦面42が必要とされる。両方の平坦面42は、軸部分39において、締付け位置Lに対して同じ間隔をおいて、互いに向かい合って位置している。
【0055】
設備された切替ケージ36は、セルフロックの制御のために利用される。
【0056】
フリーホイール機構33の3つの作動位置を設定するために、切替ケージ36は、3つの切替位置に配置され得る。これら切替位置は、ニュートラル位置Nと、右回りの操作のための第1の締付け位置Rと、左回りの操作のための第2の締付け位置Lとを提供する。
【0057】
ニュートラル位置Nにおいて、切替ケージ36は、締付け体38に、機構が右側および左側へのそれぞれの回転方向においてセルフロック式にロックし且つこのことによってフリーホイールが作動を中止する程に、多くの自由性を与える。トルクドライバー1は、右回りと同様に左回りに、回転トルクを伝達する。
両方の他の締付け位置R、Lにおいて、それぞれに、切替ケージ36の切欠き部40内における右側または左側の当接稜部44は、セルフロックがそれぞれに1つの回転方向だけにおいて機能化されることのための働きをする。当接稜部44は、締付け体38の自由空間を減少させ、従って、この締付け体が、内側軸34と外側リング35との間でくさび状に固定しない。
この回転方向において、このフリーホイール機構33は、抵抗無しに戻し回転させられ得、このことは、快適な握り直しを可能にする。逆方向において、このフリーホイール機構33は、セルフロック式にロックする。
第2の締付け位置Lは、フリーホイール機構33の操作方向もしくはフリーホイール方向だけを変化する。これに伴って、トルクドライバー1は、それぞれの要求に応じて、右方向の締め付け(Rechtsanzug)と、左方向の締め付け(Linksanzug)と、ニュートラル位置Nにおける制動機能との間で設定され得る。
【0058】
フリーホイール機構33は切り替え可能であり、その際、切替ケージ36が、内側軸34と外側リング35とに対して旋回可能である。このことによって、締付け体38は、回転トルクが両方の回転方向(右回りまたは左回り)に伝達可能であるニュートラル位置Nから、第1の締付け位置Rまたは第2の締付け位置Lへと移動される。
第1の締付け位置Rにおいて、回転トルクは、右回りの第1の回転方向(締め付け方向)に伝達される。第2の締付け位置Lにおいて、回転トルク伝達は、左回りの第2の回転方向(解離方向)へと行われる。
第1の回転方向および第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない。
【0059】
切替ケージ36が、自動的に、この切替ケージのそれぞれの切替位置を変化可能でないために、係止装置45が設けられており、これら係止装置は、切替ケージ36を、ニュートラル位置N、第1の締付け位置R、または、第2の締付け位置Lにおいて位置固定することのために構成され、且つ、規定されている。
係止装置45は、内側軸34内において、半径方向に配置された穿孔46を有しており、この穿孔内において、ばね47によって付勢された、球体の形態の係止要素48が位置している。切替ケージ36において、係止部49が設けられている。この係止要素48とこれら係止部49とは、協働する。
係止要素48は、それぞれの切替位置において、切替ケージ36における係止部49内へと係合可能であり、且つ、自動的な切り替えを防止する。係止部49は、構成的に、係止要素48の外側輪郭に対して適合されている。特に、係止部49は、切替ケージ36内における球形部分形状的な窪み部として形成されている。
穿孔46と、当接稜部44と、係止部49とは、内側軸34の平坦面42に対して位置決めされている必要がある。切替ケージ36は、内側軸34の、取り囲んでいる溝部51内において配置されている止め輪50を用いて、軸線方向に固定される。
【0060】
トルクドライバー1の使用の際の、生じる摩擦トルクによる切り替え状態の変化を防止するために、内側軸34のカラー部52は、円筒スリーブ19の床部28において支持されている。このことによって、切替ケージ36と外側リング35との間の、相応する摩擦トルクは回避され、且つ、切り替えが防止される。
カラー部52は、内側軸34の駆動軸側の端部分において設けられている。カラー部52の端部において、付加的に、ピン部53が位置しており、このピン部は、床部28内における穿孔54内へと没入する。このピン部53の役目は、外側リング35と内側軸34との間の傾斜位置を防止する、もしくは、制限することである。
【0061】
フリーホイール機構33の軸線方向の固定は、蓋55を介して行われる。蓋55は、切替ケージ36の従動側に配置されており、且つ、把手2において、もしくは、把手2内において固定されている。切替ケージ36は、カラー本体56を有しており、このカラー部本体に、蓋55が支持されている。
蓋55は、ソケット部分57を備えている。ソケット部分57において、切断歯の形態での接合要素58が設けられている。これら切断歯は、把手2の前方の円筒部分59内における、蓋55の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために構成されている。蓋55は、整向された状態で、前方の円筒部分59内において設けられた切欠き部60内へと挿入される。
把手2に対して相対的な引き続いての回転運動によって、ソケット部分57の外側周囲において配置された接合要素58が、ねじ込み式に、把手2の材料内へとはめ込む。この目的のために、蓋55は、スリット61を備えており、このスリット内において、相応する工具が係合可能である。
過回転を回避するために、把手2および蓋55において、当接面62が設けられている。付加的に、把手2および蓋55において、係止要素63が設けられており、これに伴って、結合は自動的に解離可能ではない。
【0062】
把手2は、合成物質から製造されており、他方、蓋55が、金属材料から成っている。
【0063】
蓋55の内径において、溝部64が設けられている。この溝部は、切替ケージ36の連行体65の傍らを通り過ぎることのために利用される。連行体65は、切替本体66に対する半径方向の結合を形成するために必要とされる。切替本体66は、特に、切替円板として構成されている。
切替本体66を用いて、切替ケージ36は切り替えられ得、その際、この切替本体66が、2つの機能を満たす。一方では、蓋55は、切替本体66によって覆われ、他方では、この切替本体66が、より良好な切替時の快適性のための働きをする。何故ならば、切替本体66が、より大きな周囲を備えており、且つ、付加的に、外側の溝成形部を備えることが可能であるからである。
切替本体66の軸線方向の固定は、係止突起部67を介して行われ、これら係止突起部が、切替ケージ36内における相応する切欠き部68内へと係止する。
【0064】
内側軸34は、従動部分69を有しており、この従動部分が、従動部4と連結可能であるか、または、この従動部分に従動部4が形成されている。
【0065】
図1から22までに基づいて説明されたトルクドライバー1において、従動部4は、工具保持システム12を有している。
【0066】
従動部分69は内側多角形収容部70を有している。この内側多角形収容部は、工具72、特にドライバービットの多角形部分71を収容することのために設けられている。
内側多角形収容部70の領域内において、従動部分69は、この従動部分69の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット73を有している。スリット73は、内側多角形収容部70の内側面74から、傾斜して後方に向かって、従動部分69の外側面75に至るまで延びている。
【0067】
工具保持システム12は、特に、従動部分69の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ76と、係止ばね77とを有している。引張スリーブ76は、前方のカラー部78を備えており、且つ、開口部79でもって、従動部分69の前方の端部を周囲側で囲繞している。
後方の詰め体80は、引張スリーブ76によって加圧されており、且つ、この引張スリーブと強固に結合されている。駆動軸側で、詰め体80は、半径方向の切欠き部81を有している。この切欠き部によって、この詰め体は、内側軸34の中間部分82を、半径方向に取り囲み可能であり、且つ、引張スリーブ76の引き戻しの際に、制限された状態で、中間部分82の上に案内され得る。
【0068】
係止ばね77は、螺旋体部分83と、直線的な脚部84とを有している。係止ばね77は、螺旋体部分83によって、従動部分69の上で案内されており、且つ、この従動部分を外側で取り囲んでいる。従動部分69内における溝部85内において、止め輪の形態でのリング要素86が配置されている。リング要素86において、螺旋体部分83が支持されている。
直線的な脚部84は、スリット73を通って、内側多角形収容部70内へと至るまで係合している。この脚部84は、内側多角形収容部70内へと装入された工具72を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されている。係止ばね77の脚部84は、この目的のために、工具72の規格化された係止溝部87内へと係止する。
【0069】
係止ばね77と向かい合って位置するリング要素86の側面に、圧縮ばね88が配置されている。この圧縮ばね88は、工具72が内側多角形収容部70内へと装入されており且つ引張スリーブ76の前方の内側稜部89と係止ばね77との間の遊隙を引き起こす際の、生じる遊隙を防止することのために設けられている。
圧縮ばね88は、引張スリーブ76を、詰め体80を介して、永続的に軽度に後方へと押圧することの役目を有している。作用するばね力は、係止ばね77がこのばね力から影響を及ぼされない程に少しである。
【0070】
引張スリーブ76の引き戻しによって、係止ばね77は、ロック解除される。その際、引張スリーブ76の内側稜部89は、係止ばね77をスリット73に沿って引き戻し、且つ、工具72を解放する。
【0071】
図23から25まで内において図示されたトルクドライバー1は、その従動部分に外側多角形部90が形成されている該従動部分69を備える従動部4を有している。外側多角形部90を備える従動部分69において、係止装置91が統合されている。
外側多角形部90と係止装置91とを有する従動部4は、市場で一般に通用する工具、例えばソケットレンチを収容および駆動することのために規定され、且つ、構成されている。
【0072】
その他の点では、回転トルクの設定のためのトルクドライバーの設定装置5と、回転トルク機構17と、フリーホイール機構33とを有するトルクドライバー1の実施形態は、前記された構成に相応する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. トルクドライバー(1)であって、このトルクドライバーが、
把手(2)と、設定された回転トルクのための表示部(3)と、従動部(4)とを有しており、
前記把手(2)内において、回転トルクの設定のための設定装置(5)と、回転トルク機構(17)が配置されており、前記回転トルク機構(17)が、回転トルクの伝達のための駆動軸(18)と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構(23)とを備えており、
前記解除機構(23)が、クラッチ(24)を有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断し、
前記クラッチ(24)が、第1のクラッチ構造部材(25)と第2の相手方クラッチ構造部材(26)とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部(27)を介して、形状による係合状態で連結されている、
上記トルクドライバーにおいて、
前記駆動軸(18)と前記従動部(4)とが、フリーホイール機構(33)を介して、連結されており、
前記フリーホイール機構(33)が、内側軸(34)と、外側リング(35)と、切替ケージ(36)と、少なくとも1つの締付け体(38)、特に締付けローラーとを有しており、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)の軸部分(39)の上に、および、前記締付け体(38)が、前記切替ケージ(36)の円筒部分(41)内における切欠き部(40)内に、配置されており、且つ、前記外側リング(35)が、少なくとも間接的に、前記駆動軸(18)と結合されており、
前記締付け体(38)が、締付け位置(R、L)において、回転トルクを、前記外側リング(35)と前記内側軸(34)との間で伝達する、
ことを特徴とするトルクドライバー(1)。
2. 前記締付け体(38)は、前記軸部分(39)の平坦面(42)と、前記外側リング(35)の内側周囲面(43)とにおいて支持されていることを特徴とする上記1に記載のトルクドライバー。
3. 前記フリーホイール機構(33)は、切り替え可能であり、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)及び/または前記外側リング(35)に対して旋回可能であり、且つ、前記締付け体(38)が、このことによって、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置(N)から、第1の締付け位置(R)または第2の締付け位置(L)へと移動可能であり、
前記第1の締付け位置(R)において、回転トルク伝達が、第1の回転方向(締め付け方向)へと、および、前記第2の締付け位置(L)において、回転トルク伝達が、第2回転方向(解離方向)へと行われ、
第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない、
ことを特徴とする上記1または2に記載のトルクドライバー。
4. 係止装置(45)が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージ(36)を、前記ニュートラル位置(N)、前記第1の締付け位置(R)、または、前記第2の締付け位置(L)において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする上記3に記載のトルクドライバー。
5. 係止装置(45)は、
前記内側軸(34)の穿孔(46)内において、ばね(47)の組み込みのもとで配置されている係止要素(48)と、
前記切替ケージ(36)に設けられた係止部(49)とを有していることを特徴とする上記4に記載のトルクドライバー。
6. 切替本体(66)、特に切替リングまたは切替円板が設けられており、
この切替本体(66)が、前記切替ケージ(36)を切り替えることのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする上記1から5のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
7. 前記切替ケージ(36)は、前記内側軸(34)の溝部(51)内における止め輪(50)によって、軸線方向に固定されていることを特徴とする上記1から6のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
8. 前記内側軸(34)の駆動軸側の端部分において、カラー部(52)が設けられており、このカラー部が、前記外側リング(35)または円筒スリーブ(19)の床部(28)において支持されていることを特徴とする上記1から7のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
9. 前記内側軸(34)の駆動軸側の前記端部分において、ピン部(53)が設けられており、このピン部が、前記床部(28)内における中心の穿孔(54)内へと突出していることを特徴とする上記8に記載のトルクドライバー。
10. 前記切替ケージ(36)の従動側に、蓋(55)が配置されており、この蓋が、前記把手(2)に固定されており、且つ、
前記切替ケージ(36)が、カラー本体(56)を有しており、このカラー本体が、前記蓋(55)において支持されていることを特徴とする上記1から9のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
11. 前記蓋(55)は、ソケット部分(57)を有しており、
前記把手(2)の前方の円筒部分(59)内における前記蓋(55)の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために、前記ソケット部分(57)に、接合要素(58)、特に切断歯または切断条片が設けられていることを特徴とする上記10に記載のトルクドライバー。
12. 前記内側軸(34)は、従動部分(69)を有しており、
この従動部分が、前記従動部(4)と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部(4)が形成されていることを特徴とする上記1から11のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
13. 前記従動部(4)は、工具保持システム(12)を有していることを特徴とする上記1から12のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
14. 前記従動部分(69)は、内側多角形収容部(70)と、この内側多角形収容部(70)の領域内において、前記従動部分(69)の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット(73)とを有しており、および、
前記工具保持システム(12)が、前記従動部分(69)の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ(76)と、係止ばね(77)とを有しており、
前記引張スリーブ(76)が、前方のカラー部(78)と、後方の詰め体(80)とを備えており、且つ、前記係止ばね(77)が、螺旋体部分(83)と直線的な脚部(84)とを備えており、
前記係止ばね(77)が、前記螺旋体部分(83)によって、前記従動部分(69)を外側で取り囲んでおり、且つ、リング要素(86)において支持されており、且つ、前記脚部(84)が、前記スリット(73)を通って、前記内側多角形収容部(70)内へと係合しており、
前記脚部(84)が、前記内側多角形収容部(70)内へと装入された工具(72)を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されており、および、
前記係止ばね(77)と向かい合って位置する前記リング要素(86)の側面に、圧縮ばね(88)が配置されており、および、
前記引張スリーブ(76)が、前記係止ばね(77)と前記圧縮ばね(88)とを外側で取り囲んでおり、且つ、前記圧縮ばね(88)が、前記詰め体(80)に当接しており、
前方の前記カラー部(78)の内側稜部(89)が、前記係止ばね(77)を移動することによって、前記係止ばね(77)が、前記引張スリーブ(76)の引き戻しによってロック解除可能であり、従って、前記脚部(84)が、前記工具(72)を解放する、
ことを特徴とする上記12または13に記載のトルクドライバー。
15. 前記スリット(73)は、前記内側多角形収容部(70)の内側面(74)から、傾斜して後方に向かって、前記従動部分(69)の外側面(75)に至るまで延びていることを特徴とする上記14に記載のトルクドライバー。
16. 前記設定装置(5)は、予負荷可能な圧縮ばね(6)と、調節ナット(7)と、調節ねじ(8)とを有しており、且つ、
この設定装置(5)が、前記把手(2)の前記長手方向軸線(LA)を中心として回転可能な調節体(9)と、回転トルクの設定のために協働することを特徴とする上記1から15のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
17. 前記表示部(3)は、前記把手(2)の中空円筒形の長手方向部分(13)内において配置されている数字ローラー計数機構(14)を有していることを特徴とする上記1から16のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
18. 調整装置(30)が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整が実施可能であることを特徴とする上記1から17のいずれか一つに記載のトルクドライバー。
【符号の説明】
【0073】
1 トルクドライバー
2 把手
3 表示部
4 従動部
5 設定装置
6 圧縮ばね
7 調節ナット
8 調節ねじ
9 調節体
10 ロック部材
11 ロックノブ
12 工具保持システム
13 長手方向部分
14 数字ローラー計数機構
15 数字ローラー
16 覗き窓
17 回転トルク機構
18 駆動軸
19 円筒スリーブ
20 リングカラー部
21 軸部分
22 端部分
23 解除機構
24 クラッチ
25 クラッチ構造部材
26 相手方クラッチ構造部材
27 噛み合い部
28 円筒スリーブ19の床部
29 スラスト軸受
30 調整装置
31 調整クラッチ
32 調整軸
33 フリーホイール機構
34 内側軸
35 外側リング
36 切替ケージ
37 駆動軸18の端部
38 締付け体
39 軸部分
40 切欠き部
41 円筒部分
42 平坦面
43 内側周囲面
44 当接稜部
45 係止装置
46 穿孔
47 ばね
48 係止要素
49 係止部
50 止め輪
51 溝部
52 カラー部
53 ピン部
54 穿孔
55 蓋
56 カラー本体
57 ソケット部分
58 接合要素
59 前方の円筒部分
60 切欠き部
61 蓋55のスリット
62 当接面
63 係止要素
64 溝部
65 連行体
66 切替本体
67 係止突起部
68 切欠き部
69 従動部分
70 内側多角形収容部
71 多角形部分
72 工具
73 スリット
74 内側面
75 外側面
76 引張スリーブ
77 係止ばね
78 カラー部
79 開口部
80 詰め体
81 切欠き部
82 中間部分
83 螺旋体部分
84 脚部
85 溝部
86 リング要素
87 係止溝部
88 圧縮ばね
89 内側稜部
90 外側多角形部
91 係止装置
LA 長手方向軸線
N ニュートラル位置
R 第1の締付け位置
L 第2の締付け位置
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクドライバー(1)であって、このトルクドライバーが、
把手(2)と、設定された回転トルクのための表示部(3)と、従動部(4)とを有しており、
前記把手(2)内において、回転トルクの設定のための設定装置(5)と、回転トルク機構(17)が配置されており、前記回転トルク機構(17)が、回転トルクの伝達のための駆動軸(18)と、設定された回転トルクの到達の際の、回転トルク伝達の中断のための解除機構(23)とを備えており、
前記解除機構(23)が、クラッチ(24)を有しており、このクラッチが、設定された回転トルクの到達の際に、前記回転トルク伝達を中断し、
前記クラッチ(24)が、第1のクラッチ構造部材(25)と第2の相手方クラッチ構造部材(26)とを備えており、前記第1のクラッチ構造部材と前記第2の相手方クラッチ構造部材とが、噛み合い部(27)を介して、形状による係合状態で連結されている、
上記トルクドライバーにおいて、
前記駆動軸(18)と前記従動部(4)とが、フリーホイール機構(33)を介して、連結されており、
前記フリーホイール機構(33)が、内側軸(34)と、外側リング(35)と、切替ケージ(36)と、少なくとも1つの締付け体(38)、特に締付けローラーとを有しており、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)の軸部分(39)の上に、および、前記締付け体(38)が、前記切替ケージ(36)の円筒部分(41)内における切欠き部(40)内に、配置されており、且つ、前記外側リング(35)が、少なくとも間接的に、前記駆動軸(18)と結合されており、
前記締付け体(38)が、締付け位置(R、L)において、回転トルクを、前記外側リング(35)と前記内側軸(34)との間で伝達すること、および、
前記内側軸(34)の駆動軸側の端部分において、カラー部(52)が設けられており、このカラー部が、前記外側リング(35)または円筒スリーブ(19)の床部(28)において支持されており、且つ、
前記内側軸(34)の駆動軸側の前記端部分において、ピン部(53)が設けられており、このピン部が、前記床部(28)内における中心の穿孔(54)内へと突出していること、
を特徴とするトルクドライバー(1)。
【請求項2】
前記締付け体(38)は、前記軸部分(39)の平坦面(42)と、前記外側リング(35)の内側周囲面(43)とにおいて支持されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクドライバー。
【請求項3】
前記フリーホイール機構(33)は、切り替え可能であり、
前記切替ケージ(36)が、前記内側軸(34)及び/または前記外側リング(35)に対して旋回可能であり、且つ、前記締付け体(38)が、このことによって、回転トルクが両方の回転方向に伝達可能であるニュートラル位置(N)から、第1の締付け位置(R)または第2の締付け位置(L)へと移動可能であり、
前記第1の締付け位置(R)において、回転トルク伝達が、第1の回転方向(締め付け方向)へと、および、前記第2の締付け位置(L)において、回転トルク伝達が、第2回転方向(解離方向)へと行われ、
第1の回転方向または第2の回転方向の、それぞれの逆方向(フリーホイール方向)において、如何なる回転トルク伝達も行われない、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項4】
係止装置(45)が設けられており、これら係止装置は、前記切替ケージ(36)を、前記ニュートラル位置(N)、前記第1の締付け位置(R)、または、前記第2の締付け位置(L)において、位置固定することのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする請求項3に記載のトルクドライバー。
【請求項5】
係止装置(45)は、
前記内側軸(34)の穿孔(46)内において、ばね(47)の組み込みのもとで配置されている係止要素(48)と、
前記切替ケージ(36)に設けられた係止部(49)とを有していることを特徴とする請求項4に記載のトルクドライバー。
【請求項6】
切替本体(66)、特に切替リングまたは切替円板が設けられており、
この切替本体(66)が、前記切替ケージ(36)を切り替えることのために構成され、且つ、規定されていることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項7】
前記切替ケージ(36)は、前記内側軸(34)の溝部(51)内における止め輪(50)によって、軸線方向に固定されていることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項8】
前記切替ケージ(36)の従動側に、蓋(55)が配置されており、この蓋が、前記把手(2)に固定されており、且つ、
前記切替ケージ(36)が、カラー本体(56)を有しており、このカラー本体が、前記蓋(55)において支持されていることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項9】
前記蓋(55)は、ソケット部分(57)を有しており、
前記把手(2)の前方の円筒部分(59)内における前記蓋(55)の摩擦による係合状態および形状による係合状態での固定のために、前記ソケット部分(57)に、接合要素(58)、特に切断歯または切断条片が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のトルクドライバー。
【請求項10】
前記内側軸(34)は、従動部分(69)を有しており、
この従動部分が、前記従動部(4)と連結可能であるか、または、この従動部分に、前記従動部(4)が形成されていることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項11】
前記従動部(4)は、工具保持システム(12)を有していることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項12】
前記従動部分(69)は、内側多角形収容部(70)と、この内側多角形収容部(70)の領域内において、前記従動部分(69)の長手方向延在に対して横向きに整向されたスリット(73)とを有しており、および、
前記工具保持システム(12)が、前記従動部分(69)の上で制限されて移動可能に配置された引張スリーブ(76)と、係止ばね(77)とを有しており、
前記引張スリーブ(76)が、前方のカラー部(78)と、後方の詰め体(80)とを備えており、且つ、前記係止ばね(77)が、螺旋体部分(83)と直線的な脚部(84)とを備えており、
前記係止ばね(77)が、前記螺旋体部分(83)によって、前記従動部分(69)を外側で取り囲んでおり、且つ、リング要素(86)において支持されており、且つ、前記脚部(84)が、前記スリット(73)を通って、前記内側多角形収容部(70)内へと係合しており、
前記脚部(84)が、前記内側多角形収容部(70)内へと装入された工具(72)を、反力支承状態で保持することのために規定され、且つ、構成されており、および、
前記係止ばね(77)と向かい合って位置する前記リング要素(86)の側面に、圧縮ばね(88)が配置されており、および、
前記引張スリーブ(76)が、前記係止ばね(77)と前記圧縮ばね(88)とを外側で取り囲んでおり、且つ、前記圧縮ばね(88)が、前記詰め体(80)に当接しており、
前方の前記カラー部(78)の内側稜部(89)が、前記係止ばね(77)を移動することによって、前記係止ばね(77)が、前記引張スリーブ(76)の引き戻しによってロック解除可能であり、従って、前記脚部(84)が、前記工具(72)を解放する、
ことを特徴とする
請求項10に記載のトルクドライバー。
【請求項13】
前記スリット(73)は、前記内側多角形収容部(70)の内側面(74)から、傾斜して後方に向かって、前記従動部分(69)の外側面(75)に至るまで延びていることを特徴とする請求項12に記載のトルクドライバー。
【請求項14】
前記設定装置(5)は、予負荷可能な圧縮ばね(6)と、調節ナット(7)と、調節ねじ(8)とを有しており、且つ、
この設定装置(5)が、前記把手(2)の前記長手方向軸線(LA)を中心として回転可能な調節体(9)と、回転トルクの設定のために協働することを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項15】
前記表示部(3)は、前記把手(2)の中空円筒形の長手方向部分(13)内において配置されている数字ローラー計数機構(14)を有していることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【請求項16】
調整装置(30)が統合されており、この調整装置を介して、前記回転トルク設定の調整が実施可能であることを特徴とする
請求項1または2に記載のトルクドライバー。
【国際調査報告】